以下、本発明の物理量センサー、物理量センサーの製造方法、複合センサー、慣性計測ユニット、携帯型電子機器、電子機器、および移動体を、添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
1.物理量センサー、および物理量センサーの製造方法
<第1実施形態>
先ず、物理量センサーの第1実施形態として、ジャイロセンサー(角速度センサー)を例示し、図1、図2、および図3を参照して説明する。図1は、本発明の物理量センサーの第1実施形態に係るジャイロセンサー(角速度センサー)の概略構成を示す斜視図である。図2は、図1に示すジャイロセンサーの概略構成を示す断面図である。図3は、図1に示すジャイロセンサー素子を模式的に示す平面図である。なお、図1では、基板(ベース)を概略的に図示し、また、蓋部材の図示を省略している。
また、以下の説明(第1実施形態、第2実施形態、および変形例を含む)では、特に指示の無い限り、互いに直交する三つの軸をX軸、Y軸およびZ軸とする。また、X軸に沿う方向を「X軸方向」とも言い、Y軸方向に沿う方向を「Y軸方向」とも言い、Z軸に沿う方向を「Z軸方向」とも言う。また、Z軸は基板と蓋部材とが重なる厚み方向(固定電極部としての固定検出部と可動部とが対向している方向)を示す軸であり、Y軸はジャイロセンサー素子の駆動方向に沿った軸である。さらに、説明の便宜上、Z軸方向から視たときの平面視において、蓋部材側である+Z軸方向側を「上方」もしくは+Z軸方向側の面を「上面」、これと反対側となる-Z軸方向側を「下方」もしくは-Z軸方向側の面を「下面」として説明することがある。また、各図では、説明の便宜上、必要に応じて各部の寸法を適宜誇張して図示しており、各部間の寸法比は実際の寸法比とは必ずしも一致しない。
[ジャイロセンサー]
図1に示すように、物理量センサーの実施形態に係るジャイロセンサー1は、X軸まわりの角速度を検知することのできる角速度センサーである。このジャイロセンサー1は、図2に示すように、ジャイロセンサー素子(角速度センサー素子)4と、ジャイロセンサー素子4を収納しているパッケージ10と、を有している。
(パッケージ)
パッケージ10は、ジャイロセンサー素子4を支持している基板2(ベース)と、基板2に接合されている蓋部材3と、を有している。基板2と蓋部材3との間には、ジャイロセンサー素子4を収納している空間Sが形成されている。基板2および蓋部材3は、それぞれ、板状をなし、X軸およびY軸を含む平面であるXY平面(基準面)に沿って配置されている。
基板2には、上方(ジャイロセンサー素子4側)に開放する凹部21が設けられている。凹部21の中央部には、凹部21の底面212から突出した突出部22が設けられている。また、基板2の凹部21を除く上面23には、ジャイロセンサー素子4の一部(後述する固定部42および固定駆動部45,46)が固定されている。
蓋部材3には、下方(基板2側)に開放する凹部31が設けられている。蓋部材3は、ジャイロセンサー素子4を非接触で覆うようにして基板2上に設けられており、凹部31を除く下面33が基板2の上面23に接合している。
また、キャビティーとして機能する空間Sは、凹部21と凹部31とで形成された気密空間であり、減圧状態(例えば、1×102~1×10-2Pa程度)となっている。これにより、角速度の検出感度を向上させることができる。
基板2の構成材料としては、特に限定されないが、絶縁性を有する材料を用いることが好ましく、具体的には、高抵抗なシリコン材料、ガラス材料を用いるのが好ましく、例えば、アルカリ金属イオン(可動イオン)を一定量含むガラス材料(例えば、パイレックス(登録商標)ガラスのような硼珪酸ガラス)を用いるのが好ましい。これにより、ジャイロセンサー素子4がシリコンを主材料として構成されている場合、基板2とジャイロセンサー素子4とを陽極接合することができる。それ以外であっても石英基板、水晶基板、或いはSOI(Silicon on Insulator)基板であっても良い。
また、蓋部材3の構成材料としては、特に限定されず、例えば、前述した基板2と同様の材料を用いることができる。
このような基板2と蓋部材3との接合方法としては、特に限定されず、基板2および蓋部材3の構成材料によっても異なる。基板2と蓋部材3との接合方法としては、例えば、接着剤、ロウ材等の接合材を用いた接合法、直接接合法、陽極接合等の固体接合法等を用いることができる。
(ジャイロセンサー素子)
図3に示すように、ジャイロセンサー素子(角速度センサー素子)4は、Y軸方向に並んだ二つの構造体40(40a,40b)と、二つの固定検出部49(49a,49b)と、を有している。二つの構造体40a,40bは、図3において、+(プラス)Y軸方向および-(マイナス)Y軸方向の上下対称に構成されており、互いに同様の構成を有する。
各構造体40a,40bは、質量部41と、複数の固定部42と、複数の弾性部43と、複数の駆動部44(可動駆動電極)と、複数の固定駆動部45,46(固定駆動電極)と、可動部としての検出部471,472(可動検出電極)と、複数の支持梁部48と、を有している。質量部41は、駆動部44と、フレーム473、検出部471,472および支持梁部48を含んで一体的に形成されている。即ち、検出部471,472は質量部41に含まれる形状となっている。
質量部41の外形は、Z軸方向から見た平面視(以下、単に「平面視」という)において、四角形の枠状をなしており、前述のように、駆動部44、フレーム473、および検出部471,472を含んで構成されている。質量部41の外形は、具体的には、互いに平行にY軸方向に沿って延びている一対の部分と、この一対の部分の端部同士を接続していて互いに平行にX軸方向に沿って延びている一対の部分と、で構成されている。
固定部42は、一つの構造体40に対して四つ設けられており、各固定部42は、前述した基板2の上面23に固定されている。また、各固定部42は、平面視において、質量部41の外側に配置されており、本実施形態では、質量部41の各角部に対応した位置に配置されている。なお、図示では、構造体40aの-Y軸側に位置する固定部42と構造体40bの+Y軸側に位置する固定部42とを共通の固定部としている。
弾性部43は、一つの構造体40に対して本実施例では四つ設けられており、各弾性部43は、質量部41の一部と固定部42とを接続している。弾性部43は、駆動部44の駆動方向(Y軸方向)に沿って、平面視において、質量部41の重心Gを通る線分Jに対して両側に設けられている。弾性部43は、線分Jに対して線対称に設けられることが好ましい。このような弾性部43の配置により、線分Jに対する両側のバランスが取れるため、駆動部44の駆動方向以外の弾性部43の振動成分を減少させることができる。
本実施形態において弾性部43は、質量部41におけるフレーム473の角部に接続されているが、これに限らず質量部41を固定部42に対して変位可能な位置であれば良い。図3に示す本形態では、Y軸方向に質量部41を変位し得るように構成されている。また、各弾性部43は、図示では、平面視において、蛇行形状をなし、X軸方向に沿って延びる複数の梁部としての第1部分4301と、Y軸方向に沿って延びている連結部としての第2部分4302とを有する(図4参照)。そして、各弾性部43は、複数の第1部分4301と、対向する第1部分4301間を折り返すように連結する第2部分4302とによって、平面視において、蛇行形状をなしている。なお、弾性部43の形状は、所望の駆動方向(本実施形態ではY軸方向)に弾性変形することが可能な構成であれば図示の形状に限定されない。
駆動部44は、一つの構造体40に対して八つ設けられており、各駆動部44は、質量部41のY軸方向に沿って延びている部分に接続されている。具体的には、四つの駆動部44が質量部41の+X側に位置し、残りの四つの駆動部44が質量部41の-X側に位置している。各駆動部44は、質量部41からX軸方向に延出している幹部と、該幹部からY軸方向に延出している複数の枝部と、を備えた櫛歯形状をなしている。
固定駆動部45,46は、それぞれ、一つの構造体40に対して八つ設けられており、各固定駆動部45,46は、前述した基板2の上面23に固定されている。また、各固定駆動部45,46は、駆動部44に対応した櫛歯形状をなし、駆動部44を間に挟んで設けられている。
可動部としての検出部471,472は、それぞれ、平面視形状が四角形状をなす板状部材であり、質量部41の内側に配置され、支持梁部48によって質量部41に接続されている。検出部471,472は、それぞれ、回動軸J4まわりに回動(変位)可能となっている。
また、固定電極部としての固定検出部49(固定検出電極)は、基板2の凹部21内に位置する突出部22上に設けられている(図2参照)。この固定検出部49は、それぞれ、平面視で四角形状をなし、検出部471,472に対向している。また、固定検出部49は、検出部471,472と離間している。
また、上述した構成の質量部41と、弾性部43と、駆動部44と、固定駆動部45の一部と、固定駆動部46の一部と、検出部471,472と、支持梁部48とは、基板2の凹部21の上方に設けられ、基板2と離間している。
上述したような構造体40は、リン、ボロン等の不純物がドープされた導電性のシリコン基板を、例えば反応性プラズマガスを用いたエッチングプロセスとデポジション(堆積)プロセスとを組み合わせたボッシュ法(Bosch process)を用いることによってパターニングすることで一括形成されている。
また、固定検出部49の構成材料としては、例えば、アルミニウム、金、白金、ITO(Indium Tin Oxide)、ZnO(酸化亜鉛)等を用いることができる。
なお、図示はしないが、固定部42と、固定駆動部45と、固定駆動部46と、固定検出部49aと、固定検出部49bとは、それぞれ、図示しない配線および端子に電気的に接続されている。これら配線および端子は、例えば基板2上に設けられている。
以上、ジャイロセンサー1の構成について簡単に説明した。このような構成のジャイロセンサー1は、次のようにして角速度ωxを検出することができる。
まず、ジャイロセンサー1が有する駆動部44と固定駆動部45,46との間に駆動電圧を印加すると、固定駆動部45,46と駆動部44との間に周期的に強度が変化する静電引力が生じる。これにより、各弾性部43の弾性変形を伴って各駆動部44がY軸方向に振動する。このとき、構造体40aが有する複数の駆動部44と、構造体40bが有する複数の駆動部44とは、Y軸方向に互いに逆位相で振動(駆動振動)する。
このように駆動部44がY軸方向に振動している状態で、ジャイロセンサー1に角速度ωxが加わると、コリオリ力が働き、検出部471,472が回動軸J4まわりに変位する。このとき、構造体40aが備える検出部471,472と、構造体40bが備える検出部471,472とは、互いに反対方向に変位する。例えば、構造体40aが備える検出部471,472が、それぞれ+Z軸方向に変位したとき、構造体40bが備える検出部471,472が、それぞれ-Z軸方向に変位する。また、構造体40aが備える検出部471,472が、それぞれ-Z軸方向に変位したとき、構造体40bが備える検出部471,472が、それぞれ+Z軸方向に変位する。
このように検出部471,472が変位(検出振動)することにより、検出部471,472と固定検出部49との間の距離が変化する。この距離の変化に伴って、検出部471,472と固定検出部49との間の静電容量が変化する。そして、この静電容量の変化量に基づいて、ジャイロセンサー1に加わった角速度ωxを検出することができる。
上述のように、駆動部44がY軸方向に振動(駆動振動)するにあたり、理想的には、駆動部44は、非駆動時の状態からY軸方向にほぼ平行に振動することが好ましい。しかし、加工誤差等によりジャイロセンサー素子4の形状、特に弾性部43の形状が理想的な矩形形状にならず、そのため、弾性部43に質量部41を介して接続されている駆動部44の振動は、所望の駆動振動の方向であるY軸方向の振動成分だけでなく、それ以外の振動方向であるX軸方向またはZ軸方向の振動成分(不要振動成分)も含んでしまう、いわゆるクアドラチャ信号が増大してしまうことがある。
本実施形態では、このようなクアドラチャ信号の増大を低減できるよう、弾性部43に特徴を持たせている。以下、図4、図5、図6、図7、図8、図9、および図10を参照して、弾性部43について、詳細に説明する。
(弾性部)
図4は、図3に示す弾性部の一部(A部)を模式的に示す平面図である。図5は、図4に示す弾性部の一部を模式的に示す斜視断面図である。図6は、図4に示す弾性部を構成する梁部の横断面図である。図7は、弾性部における切欠き部としての形状調整部の配置例を示す平面図である。図8は、シミュレーションに用いた弾性部のモデルを示す斜視図である。図9は、シミュレーションに用いた形状調整部を有していない弾性部のモデルを示す拡大斜視図である。図10は、シミュレーションに用いた形状調整部を有する弾性部のモデルを示す拡大斜視図である。なお、図4には、図3に示す一点鎖線で囲まれた領域A内にある弾性部43を代表して図示している。
図4に示すように、弾性部43は、平面視において、蛇行形状をなし、X軸方向(長手方向)に沿って延びる長手形状の複数の梁部としての第1部分4301と、Y軸方向(短手方向)に沿って延びる複数の連結部としての第2部分4302と、を有する。第1部分4301は、第2部分4302よりも長い。なお、第1部分4301は、概ねの境界線として、それぞれ図中に示す想像線QL1,QL2,QL3,QL4,QL5,QL6,QL7,QL8によって区切られた部分をいう。第2部分4302は、第1部分4301と隣の第1部分4301との二つの第1部分4301を連結して折り返す連結部を構成している。複数の第1部分4301は、第2部分4302を含む連結部によって折り返されて蛇行形状を成している。また、弾性部43は、その一端が図中想像線QL8および想像線QL9で示す第2部分4302を介して質量部41の端部に接続され、他端が図中想像線QL1で示す固定部42の端部に接続されている。
図5および図6に示すように、弾性部43は、X軸方向に沿った方向からの断面形状が(Y軸およびZ軸を含む平面であるYZ平面に平行な横断面形状が)、ほぼ平行四辺形状をなす。この弾性部43の外周面430は、Z軸方向に向き、互いに表裏の関係にある第1主面431および第2主面432と、一対の側面としての第1側面433および第2側面434と、を有している。
第1主面431および第2主面432は、それぞれ、X軸およびY軸を含む平面であるXY平面に沿った平坦面である。第1主面431が、+Z軸側の面(上面)であり、第2主面432が-Z軸側の面(基板2側の下面)である。本実施形態では、第1主面431および第2主面432は、それぞれ、蛇行形状をなし、X軸方向に沿って延びる部分と、Y軸方向に沿って延びている部分とを有する。
第1側面433は、-Y軸側の面であり、第2側面434は、+Y軸側の面である。本実施形態では、第1側面433および第2側面434は、それぞれ、一つの弾性部43に対して四つ設けられている(図4参照)。第1側面433は、第1主面431の一方端と第2主面432の一方端とに接続している。また第2側面434は、第1主面431の他方端と第2主面432の他方端とに接続している。また、図5および図6に示すように、第1側面433および第2側面434は、それぞれ、X軸およびZ軸を含む平面であるXZ平面に対して傾斜した平坦面である。具体的には、第1側面433とXZ平面とのなす角度(傾斜角度)は、例えば加工誤差により理想形状からずれておりθ1でみたとき、0°<θ1<3°(または-3°<θ1<0°)程度である。なお、第2側面434についても同様に-3°<θ1<0°(または0°<θ1<3°)である。また、第1側面433は、その+Z軸側の辺が第1主面431に繋がり、-Z軸側の辺が第2主面432に繋がっている。一方、第2側面434の+Z軸側の辺は、第1主面431に繋がり、第2側面434の-Z軸側の辺は、第2主面432に繋がっている。
X軸方向(長手方向)に沿って延びる複数の梁部としての長手形状の第1部分4301は、上述のように配置された第1主面431および第2主面432と、一対の側面としての第1側面433および第2側面434とによって構成される外周面430を有している。このような構成の外周面430を有する弾性部43の横断面形状は、前述したように、ほぼ平行四辺形状である。そして、本実施形態では、第1主面431を延出させた仮想面431cと第1側面433を延出させた仮想面433cとのなす角度θ1は、90°未満である。すなわち、角度θ1は、鋭角である。また、第2主面432と第2側面434とのなす角度θ2も、鋭角である。一方、第1主面431と第2側面434とのなす角度θ3と、第2主面432と第1側面433とのなす角度θ4とは、90°を超える。すなわち、角度θ3、θ4は、それぞれ、鈍角である。
なお、梁部としての第1部分4301の数としては、二つ以上であればよく、四つに限定されない。また、設計段階から各梁部の横断面形状が例えば略平行四辺形となっていてもよいし、設計では矩形であったが、前述したような加工誤差や加工装置の特性等により各梁部の横断面形状が例えば略平行四辺形、台形、側面の幅が上面や下面よりも広い形状、側面の幅が上面や下面よりも薄いくびれた形状となってしまってもよい。
弾性部43を構成する第1部分4301には、図7に示すように、平面視で、質量部41の重心Gを通る線分Jに対して線対称に設けられた切欠き部としての形状調整部435が設けられている。本実施形態における切欠き部としての形状調整部435は、所謂面取り形状をなしている。なお、「切欠き部」とは、弾性部43の不要振動成分を減少させるために、弾性部43を後加工(調整加工)することによって形状を変えた部分のことであり、第1実施形態では、形状調整部435、後述する変形例の第1の形状調整部435aおよび第2の形状調整部435bが相当し、後述する第2実施形態では、凹部438、変形例の第1の凹部438aおよび第2の凹部438bが相当する。
特に、ジャイロセンサー素子4のうち弾性部43は、基板2に固定された固定部42に接続された部分であり、加工誤差により理想の形状でないことで、駆動振動成分以外の成分を含む振動(不要振動)が生じ易い。そのため、弾性部43に曲面部401を有する形状調整部435を備える構成とすることは、ジャイロセンサー1においてクアドラチャ信号の増大を低減する上で特に有効である。これは弾性部43が駆動振幅の方向を決めているからであり、弾性部43の理想形状からのずれがクアドラチャ信号を生じさせる主要因となっているからである。したがって、本実施形態のように固定部42に接続された弾性部43に、切欠き部としての形状調整部435を設けることがクアドラチャ信号抑制に効果的である。
前述したように、弾性部43は、Y軸とZ軸との双方に交差する方向(本実施形態ではX軸)に延びる部分である第1部分4301を有する。そして、Y軸とZ軸との双方に平行な断面視で、第1主面431および第1側面433の各延長線同士のなす角度θ1は、90°未満である。すなわち、前述したように、仮想面431cと仮想面433cとのなす角度θ1は、90°未満である。このように、角度θ1が鋭角である箇所(頂部)に切欠き部としての形状調整部435が設けられている。これにより、弾性部43の断面視形状が非対称な形状であっても、クアドラチャ信号の増大を低減する効果をより顕著に発揮することができる。
切欠き部としての形状調整部435は、長手形状の第1部分4301の第1主面431と第1側面433との接続領域、つまり基板2と反対側の接続領域に設けられ、且つ、曲面状の曲面部401を含んでいる。このような構成の形状調整部435は、第1部分4301の第1主面431と第1側面433との接続領域に設けられた面取り部分であるということができる。曲面部401は、丸み付けされた面であり、また、曲率を有する面であるとも言える。なお、曲面部401の曲率半径は、弾性部43の構成や形状等によって適宜設定され、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上20μm以下程度である。このような、形状調整部435を第1部分4301に設けることにより、X軸方向から見た弾性部43の断面視形状が、本実施形態のようにほぼ平行四辺形状や、その他、台形等の非対称な形状であっても、クアドラチャ信号の増大を低減することができる。そのため、検出精度の低下を低減することができる。
なお、形状調整部435は、レーザー光を照射する方法、もしくはエッチング法などによって設けることができる。特に、曲面部401を含む形状調整部435は、レーザー光を照射する方法によって設けることができる。なお、形状調整部435は、レーザー光を照射することにより形成された加工変質層を含んでいてもてもよい。一般に、レーザー光を単結晶シリコンに照射すると、レーザー光の波長によりシリコン表面(例えば1~100nmの深さ)にアモルファスシリコン層、或いはポリシリコン層、が形成される。特に図示はしないが形状調整部435の表層、或いは表面から所定の深さに亘ってそのようなシリコンの変質層が含有されている。
上述のように、弾性部43に設けられている形状調整部435に質量部41の重心Gを通る線分Jに対する対称性を持たせることによって、弾性部43において、線分Jに対して両側のバランスが取れるため、駆動方向以外の弾性部43の振動成分が減少する。その結果、不要な信号の一種であるクアドラチャ信号を低減することができる。
その一方で、図7において、質量部41の重心Gを通る線分Jに対し、後加工となる形状調整部435を線対称でなく、線分Jの片側のみに形成した場合、後加工となる形状調整部435を線対称となるように形成した場合と比べて、クアドラチャ信号の低減効果は、半分以下であった。即ち、形状調整部435が線分Jに対し対称性がないと、線分Jを中心としたときの両側のバランスが崩れ、駆動振動の振動方向以外の振動成分が発生の十分に低減しきれていない。よって、切り欠き部として形状調整部435を、質量部41の重心Gを通る線分Jに対し線対称に設けることにより、より効率的にクアドラチャ信号を低減することができる。
また、本実施形態では、梁部としての第1部分4301の長手方向に配置されている接続領域の一部(長手形状の一部)に切欠き部としての形状調整部435(曲面部401)が設けられている。このように、接続領域の一部に形状調整部435(曲面部401)を設けることにより、クアドラチャ信号を低減するために、過度の形状変化をさせてしまうなどの調整過多を防ぐことができ、クアドラチャ信号を低減する効果をより顕著に発揮させることができる。
なお、本実施形態では、形状調整部435を基板2と反対側の接続領域に設けている例を示したがこれに限らず、形状調整部435は、基板2側、および基板2と反対側の少なくともいずれかに設けられていることが好ましい。このように、形状調整部435を、基板2側、および基板2と反対側の少なくともいずれかに設けることにより、駆動方向以外の弾性部43の振動成分を減少させることができ、クアドラチャ信号を低減することができる。
次に、上述したように、ジャイロセンサー1の弾性部43が、曲面部401を有する形状調整部435を備えることにより、クアドラチャ信号の増大を低減できることについて、以下のようなシミュレーション結果を基に説明する。なお、図8~図10では、互いに直交する3つの軸をx軸、y軸およびz軸とする。また、x軸に沿う方向を「x軸方向」とも言い、y軸方向に沿う方向を「y軸方向」とも言い、z軸に沿う方向を「z軸方向」とも言う。
シミュレーションで用いるモデルとして、図8に示す平板状をなす弾性部9(9a,9b)を用いた。弾性部9の外周面90は、一対の第1主面91および第2主面92と、一対の第1側面93および第2側面94と、-y軸側に位置する基端面97と、+y軸側に位置する先端面98とを有する。また、弾性部9は、x軸方向の幅が3μmで、z軸方向の幅が25μmで、y軸方向の幅が100μmである。また、弾性部9は、その断面形状がほぼ平行四辺形であり、y軸およびz軸を含む平面であるyz平面に対して0.3°傾いている。
また、弾性部9として、図9に示すような弾性部9aと、図10に示すような弾性部9bとを用いた。弾性部9bは、曲面状の曲面部901で構成された形状調整部95を有する。すなわち、弾性部9aは、「曲面部」を有さず、弾性部9bは、曲面部901を有する。
このような構成の弾性部9(9a,9b)を+x軸方向に変位(振動)させた際の、弾性部9のz軸方向の変位(振動)をシミュレーションした。具体的には、図8に示すように、弾性部9の基端面97を所望の固定箇所(上述の弾性部43であれば固定部42)に支持された接続面とし、基端面97がその固定箇所に支持された状態で、弾性部9の先端面98側を+x軸方向に変位させたときの、先端面98のz軸方向の変位をシミュレーションした。+x軸方向の変位量は、10μmとした。
その結果、弾性部9a,9bは、それぞれ、基端面97側が+z軸方向に変位し、先端面98が-z軸方向に変位し、弾性部9aの先端面98の方が、弾性部9bの先端面98よりも、-z軸方向に大きく変位することが解った。このように、弾性部9aの方が、弾性部9bよりも、変位させた方向であるx軸方向とは異なる方向であるz軸方向に大きく変位する。
したがって、弾性部9bのように、曲面部901を有する形状調整部95を接続領域に備えることで、所望の駆動振動の方向であるx軸方向以外の方向であるz軸方向の振動成分を低減することができる。また、「曲面部901」を備えていない弾性部9aに比べて、不要振動成分を半分程度に大きく低減することができる。このため、弾性部9bによれば、弾性部9aに比べてクアドラチャ信号の増大を効果的に低減することができる。
ここで、上述したように、ジャイロセンサー1は、基板2と、基板2に固定されている固定部42と、Y軸に沿って駆動する駆動部44と、駆動部44に作用するコリオリ力によりY軸およびX軸に直交しているZ軸に沿って変位可能な検出部471,472と、駆動部44と固定部42とを接続している質量部41と、質量部41と固定部42とを接続している弾性部43と、を有する。
ジャイロセンサー素子4のうち弾性部43は、基板2に固定された固定部42に接続された部分であり、加工誤差により理想の形状でない、例えば、平行四辺形状や台形などとなることで、駆動振動成分以外の成分を含む振動が生じ易い。そのため、弾性部43に上述した形状調整部435(曲面部401)を備えることは、ジャイロセンサー1においてクアドラチャ信号の増大を低減する上で特に有効である。これは弾性部43が駆動振幅の方向を決めているからであり、弾性部43の理想形状からのずれがクアドラチャ信号を生じさせる主要因となっているからである。つまり、本実施形態のように、弾性部43を構成する第1部分4301に形状調整部435(曲面部401)を備えることにより、弾性部43のZ軸方向の振動成分を減少させることができ、クアドラチャ信号の抑制に効果的である。なお、形状調整部435(曲面部401)のX軸方向(長手方向)の長さを変えたり、形状調整部435(曲面部401)を設ける第1部分4301の本数を変えたり(形状調整部435(曲面部401)の数を変える)することによって、弾性部43のZ軸方向の振動成分をさらに減少させることができる(好ましくは0とすることができる)。
ここで、図11、図12、および図13A~図13Cを参照して、確認することができたクアドラチャ信号の抑制効果について説明する。図11は、形状調整部の長さ(割合)と不要信号との相関を示すグラフである。図12は、角速度を検出する検出回路の一例を示す回路図である。図13Aは、形状調整部形成前のチャージアンプ出力の波形図である。図13Bは、形状調整部形成後のチャージアンプ出力(帰還容量1000fF)の波形図である。図13Cは、形状調整部形成後のチャージアンプ出力(帰還容量2400fF)の波形図である。
図11に示すグラフは、第1部分4301の長手方向の長さに対する形状調整部435(曲面部401)の長さの割合[%]と、不要振動であるクアドラチャ信号の大ききさとの相関をプロットした図である。なお、図11に示すグラフでは、横軸に、形状調整部435の長さ(加工長)と、第1部分4301の長さとの割合を、「加工長/ばね長(割合)[%]」で示し、縦軸に、クアドラチャ信号の大きさを「Quad信号」で示している。また、同グラフの横軸「0%」は、形状調整部435が設けられていない状態を示す。図11に示すように、複数のサンプル(図では四つのサンプルAD,BD,ED,FDを示す)に対して、所定の割合の長さで形状調整部435を設けた結果、サンプルごとの挙動にばらつきがあるものの、全てのサンプルAD,BD,ED,FDにおいてクアドラチャ信号が「0(ゼロ)」に近づいている。即ち、全てのサンプルAD,BD,ED,FDにおいて、不要信号であるクアドラチャ信号の絶対値が低減した。この時、各サンプルが持つ8箇所の弾性部43は全て線分Jに線対称となるように加工した。前述したように弾性部43の加工を線分Jに対して片側の1箇所のみにすると、その低減効果は1/8以下であった。また、後述する変形例(図14参照)において詳述するが、サンプルEDのように、1回目の形状調整部435の形成(図中線分ED1で示す)に加えて、更に追加の形状調整部435の形成(図中線分ED2で示す)を行った所、クアドラチャ信号をほぼゼロに近い状態までに消滅させることができた。つまり、第1部分4301に対する形状調整部435の加工面積(加工長さ)を調整することによって、クアドラチャ信号の大きさを調整することができる。
このときの検出信号について、図12および図13A~図13Cを参照して説明する。図12に示すような検出回路を用いたチャージアンプ後(図12中のポイントS10P,S20P)の検出信号(チャージアンプ出力信号)は、以下のような出力波形を呈する。
先ず、第1部分4301に対して形状調整部435を設けていない場合、図13Aに示すように、二つのチャージアンプ出力信号S10,S20は、不要振動により、位相の異なるアンバランスな波形状態を示している。
これに対し、第1部分4301に対して形状調整部435を設けた場合のチャージアンプ出力信号S10a,S20a(帰還容量1000fF)は、図13Bに示すように、略フラットに重なった波形となり、安定した波形状態を示している。即ち、殆んどクアドラチャ信号が見られない状態を示している。但し、チャージアンプの帰還容量の値を、例えば2400fFに増加させると、図13Cに示すように、同相の波形信号S10b,S20bが出現する。このとき、二つの信号強度差は5%以下であり、位相差は2.7°であった。しかしながら、ジャイロ特性としては、信号強度差は10%以内、位相差は10°以内が望まれていることから、帰還容量の値を2400fFに増加させた場合においても、ジャイロ特性に悪影響を与えることの無いレベルである。
また、本実施形態では、駆動部44の振動により変位する弾性部43と、駆動部44の振動と相対的に変位せずコリオリ力に応じて変位する支持梁部48とを有するため、弾性部43の加工による支持梁部48への影響が少ない特徴がある。支持梁部48は、Z軸方向に変位可能とするものであればよく、例えば、捻ればね(トーションバネ)、折返し状のばね、Z方向に薄い板状のばねであってもよい。
以上、説明したジャイロセンサー1によれば、平面視で駆動部44の駆動方向(Y軸方向)に沿って、且つ質量部41の重心Gを通る線分Jに対して両側に設けられた弾性部43のそれぞれに、当該線分Jに対して線対称に設けられた切欠き部(形状調整部435)が設けられている。このように、弾性部43に設けられた切欠き部(形状調整部435)に対称性を持たせることによって、弾性部43において、質量部41の重心Gを通る線分Jに対して両側のバランスが取れるため、駆動方向以外の弾性部43の振動成分が減少する。その結果、不要な信号の一種であるクアドラチャ信号が低減され、ジャイロセンサー1の検出精度の低下を低減させることができる。
また、切欠き部(形状調整部435)は、第1主面431と第1側面433との接続領域、つまり第1主面431および第1側面433の各延長線同士のなす角度θ1が鋭角である箇所(頂部)に設けられている。これにより、弾性部43の断面視形状が非対称な形状であっても、クアドラチャ信号の増大を低減する効果をより顕著に発揮することができる。
なお、上述した第1実施形態では、全ての第1部分4301に形状調整部435(曲面部401)が備えられている例を示したが、これに限らない。切欠き部としての形状調整部435(曲面部401)は、必要(調整量)に応じて、1または2以上の第1部分4301に設けられていればよい。
[切欠き部(形状調整部)の変形例]
次に、第1実施形態に係る切欠き部の変形例について、図14を参照して説明する。図14は、第1実施形態の形状調整部の変形例を示す平面図である。なお、以下の説明では、前述した第1実施形態と異なる構成を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については、同符号を付し、説明を省略することがある。
本変形例の切欠き部は、梁部としての第1部分4301の長手方向に配置されている接続領域に、第1の形状調整部435aと、第2の形状調整部435bとを含んでいる。つまり、本変形例の切欠き部は、第1の形状調整部435a、および第2の形状調整部435bが相当する。切欠き部としての第1の形状調整部435aは、長手形状の第1部分4301の第1主面431と第1側面433との接続領域に設けられ、且つ、第1実施形態と同様な曲面状の曲面部(不図示)を含んでいる。また、切欠き部としての第2の形状調整部435bは、長手形状の第1部分4301の第1主面431と第1側面433との接続領域に設けられている。第2の形状調整部435bは、第1の形状調整部435aと僅かな隙間を有して並んで設けられ、且つ、第1の形状調整部435aと同様な曲面状の曲面部(不図示)を含んでいる。換言すれば、曲面部は、互いに離間して配置されている。
本変形例によれば、接続領域の一部に複数の切欠き部として、第1の形状調整部435a、および第2の形状調整部435bを設ける。これにより、例えば、第1の形状調整部435aを設けた後にクアドラチャ信号の状態を確認し、その結果に基づいて第2の形状調整部435bの長さを設定し、第2の形状調整部435bを設けることができる。このように、クアドラチャ信号を低減するために、過度の形状変化をさせてしまうなどの調整過多を防ぐことができ、クアドラチャ信号を低減する効果をより顕著に発揮させることができる。
また、第2の形状調整部435bを設けることにより、弾性部43のZ軸方向の振動成分の微調を行うことができる。前述したように、第1の形状調整部435aを設けることで、Z軸方向の振動成分を粗調し、第2の形状調整部435bを設けることで、Z軸方向の振動成分を微調することができる。これにより、より精度よく、弾性部43のZ軸方向の振動成分を減少させることができる。
なお、上述では、切欠き部として、第1の形状調整部435a、および第2の形状調整部435bの二つの形状調整部での構成例を示したがこれに限らない。切欠き部としては、三つ以上の形状調整部で構成されてもよい。
<第2実施形態>
次に、物理量センサーの第2実施形態として、ジャイロセンサー(角速度センサー)を例示し、図15、図16、図17、および図18を参照して説明する。第2実施形態としてのジャイロセンサー(角速度センサー)は、第1実施形態と比し、弾性部に設けられる切欠き部としての形状調整部(凹部)の構成が異なる。したがって、以下の説明では、異なる構成の形状調整部(凹部)を中心に説明する。なお、第1実施形態と同様な構成については同符号を付し、その説明を省略することが有る。
図15は、本発明の物理量センサーの第2実施形態に係るジャイロセンサー(角速度センサー)の弾性部における切欠き部としての凹部の配置例を示す平面図である。図16は、図15に示す弾性部の一部を模式的に示す平面図である。図17は、図16に示す弾性部の一部を模式的に示す斜視断面図である。図18は、弾性部の一部を模式的に示す断面図である。
[ジャイロセンサー]
第2実施形態に係るジャイロセンサー(角速度センサー)は、図1~図3を参照して説明した第1実施形態のジャイロセンサー1と同様に、X軸まわりの角速度を検知することのできる角速度センサーである。したがって、第2実施形態に係る説明では、ジャイロセンサー1に係る構成および部位の説明は省略する。
(切欠き部としての凹部)
弾性部43は、第1実施形態と同様に、一つの構造体40(図2参照)に対して本実施形態では四つ設けられており、各弾性部43は、質量部41の一部と固定部42とを接続している。弾性部43は、図15に示すように、駆動部44の駆動方向(Y軸方向)に沿って、平面視において、質量部41の重心Gを通る線分Jに対して両側に設けられている。弾性部43は、線分Jに対して線対称に設けられることが好ましい。このような弾性部43の配置により、線分Jに対する両側のバランスが取れるため、駆動部44の駆動方向以外の弾性部43の振動成分を減少させることができる。
図16に示すように、弾性部43は、平面視において、蛇行形状をなし、X軸方向(長手方向)に沿って延びる長手形状の複数の梁部としての第1部分4301と、Y軸方向(短手方向)に沿って延びる複数の第2部分4302と、を有する。なお、この構成は、第1実施形態と同様であるので、詳細な説明は省略する。
弾性部43を構成する第1部分4301には、平面視で、質量部41の重心Gを通る線分Jに対して線対称に設けられた切欠き部としての凹部438が設けられている。第1部分4301の凹部438が設けられた部分は、図18に示すように、弾性部43の他の部分よりも厚さT(Z軸方向の長さ)が薄い薄肉部439となる。なお、本実施形態の凹部438は、第1部分4301の第1主面431側に設けられている。
弾性部43は、図1に示されているように、基板2に固定された固定部42に接続された部分であり、加工誤差により理想の形状でないことで、駆動振動成分以外の成分を含む振動が生じ易い。そのため、弾性部43に、切欠き部としての凹部438を備える構成とすることは、クアドラチャ信号の増大を低減する上で特に有効である。これは弾性部43が駆動振幅の方向を決めているからであり、弾性部43の理想形状からのずれがクアドラチャ信号を生じさせる主要因となっているからである。したがって、本実施形態のように固定部42に接続された弾性部43に、切欠き部としての凹部438を設けることがクアドラチャ信号抑制に効果的である。
また、本実施形態では、図16および図17に示すように、第1部分4301の長手方向の一部に凹部438が設けられている。このように、第1部分4301の長手方向の一部に凹部438を設けることにより、クアドラチャ信号を低減するために、過度の形状変化をさせてしまうなどの調整過多を防ぐことができ、クアドラチャ信号を低減する効果をより顕著に発揮させることができる。
なお、切欠き部としての凹部438の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、ドライエッチングにより形成することが好ましい。ドライエッチングでは、マスクを用いるため、より精度よくかつ微細に、凹部438(薄肉部439)を形成することができる。
上述のように、弾性部43に設けられている凹部438に質量部41の重心Gを通る線分Jに対する対称性を持たせることによって、弾性部43において、線分Jに対して両側のバランスが取れるため、駆動方向以外の弾性部43の振動成分が減少する。その結果、不要な信号の一種であるクアドラチャ信号を低減することができる。
具体的には、第1部分4301の傾き方向(-Y軸方向側)の先端側(中央よりも先端側)に位置する第1部分4301の少なくとも1つに凹部438(薄肉部439)を設けることで、弾性部43のZ軸方向の振動成分を減少させることができ、反対に、基端側(中央よりも基端側)に位置する第1部分4301の少なくとも1つに凹部438(薄肉部439)を設けることで、弾性部43のZ軸方向の振動成分を増大させることができる。なお、「第1部分4301の傾き方向」とは、本実施形態では、図18中の第1部分4301の下面(第2主面432)に対する上面(第1主面431)のずれ方向、すなわち、-Y軸方向を意味している。
これは、四つの第1部分4301を一体の梁部として捉えた場合、平行四辺形の角部のうちの鋭角部分を除去することで、弾性部43のZ軸方向の振動成分を減少させることができ、鈍角部分を除去することで、弾性部43のZ軸方向の振動成分を増大させることができるのと同じ理由であると考えられる。
ここで、本実施形態のように、複数の第1部分4301に凹部438(薄肉部439)が設けられている場合には、各薄肉部439の厚さT(または凹部438の深さ)は、互いに等しいことが好ましい。また、複数(四つ)の弾性部43に形成される全ての薄肉部439の厚さTは、互いに同じであることが好ましい。これにより、複数の凹部438(薄肉部439)を同じ工程で形成することができる。なお、前述した「厚さTが互いに等しい」とは、完全に一致する場合に限らず、例えば、製造上の不可避的な誤差を有する場合を含む意味である。
なお、凹部438の深さによって規定される薄肉部439の厚さTとしては、特に限定されないが、弾性部43の他の部分の厚さの5/10以上、9/10以下であることが好ましい。薄肉部439の厚さTを薄くするほど弾性部43のZ軸方向の振動成分を大きく減少させることができる。そのため、弾性部43のZ軸方向の振動成分を効果的に減少させることができると共に、薄肉部439の機械的強度の過度な低下を防止することができる。
以上説明した第2実施形態によれば、平面視で駆動部44の駆動方向(Y軸方向)に沿って、且つ質量部41の重心Gを通る線分Jに対して両側に設けられた弾性部43のそれぞれに、当該線分Jに対して線対称に設けられた切欠き部(凹部438)が設けられている。このように、弾性部43に設けられた切欠き部(凹部438)に対称性を持たせることによって、弾性部43において、質量部41の重心Gを通る線分Jに対して両側のバランスが取れるため、駆動方向以外の弾性部43の振動成分が減少する。その結果、不要な信号の一種であるクアドラチャ信号が低減され、ジャイロセンサーの検出精度の低下を低減させることができる。
なお、上述した第2実施形態では、全ての第1部分4301に切欠き部としての凹部438(薄肉部439)が備えられている例を示したが、これに限らない。切欠き部として凹部438(薄肉部439)は、必要(調整量)に応じて、1または2以上の第1部分4301に設けられていればよい。
また、上述した第2実施形態では、凹部438を第1主面431側に設ける例を示して説明したが、凹部438を第2主面432側に設けてもよいし、第1主面431側と第2主面432側の双方に設けてもよい。
[切欠き部(凹部)の変形例]
次に、第2実施形態に係る切欠き部の変形例について、図19を参照して説明する。図19は、第2実施形態の切欠き部としての凹部の変形例を示す平面図である。なお、以下の説明では、前述した第1実施形態と異なる構成を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については、同符号を付し、説明を省略することがある。
本変形例の切欠き部は、梁部としての第1部分4301の長手方向に配置されている接続領域に、第1の凹部438aと、第2の凹部438bとを含んでいる。つまり、本変形例の切欠き部は、第1の凹部438a、および第2の凹部438bが相当する。切欠き部としての第1の凹部438aは、長手形状の第1部分4301の第1主面431側に設けられている。また、切欠き部としての第2の凹部438bは、長手形状の第1部分4301の第1主面431側に設けられている。第2の凹部438bは、第1の凹部438aと僅かな隙間を有して並んで設けられている。換言すれば、第2の凹部438b、および第1の凹部438aは、互いに離間して配置されている。
本変形例によれば、接続領域の一部に複数の切欠き部として、第1の凹部438a、および第2の凹部438bを設ける。これにより、例えば、第1の凹部438aを設けた後にクアドラチャ信号の状態を確認し、その結果に基づいて第2の凹部438bの長さを設定し、第2の凹部438bを設けることができる。このように、クアドラチャ信号を低減するために、過度の形状変化をさせてしまうなどの調整過多を防ぐことができ、クアドラチャ信号を低減する効果をより顕著に発揮させることができる。
また、第1の凹部438aに加え第2の凹部438bを設けることにより、弾性部43のZ軸方向の振動成分の微調を行うことができる。前述したように、第1の凹部438aを設けることで、Z軸方向の振動成分を粗調し、第2の凹部438bを設けることで、Z軸方向の振動成分を微調することができる。これにより、より精度よく、弾性部43のZ軸方向の振動成分を減少させることができる。
また、上述では、切欠き部として、第1の凹部438a、および第2の凹部438bの二つの形状調整部での構成例を示したがこれに限らない。切欠き部としては、三つ以上の凹部(薄肉部)で構成されてもよい。
[ジャイロセンサーの製造方法]
次に、本発明のジャイロセンサーの製造方法について、図20を参照して説明する。図20は、第1実施形態および第2実施形態に係るジャイロセンサーの製造方法を示す工程フローチャートである。なお、以下の(製造方法1)では、上述した第1実施形態に係るジャイロセンサー1の製造方法を説明し、構成部位については第1実施形態と同様の構成名および符号を用いて説明する。また、(製造方法2)では、上述した第2実施形態に係るジャイロセンサーの製造方法を説明し、構成部位については第2実施形態と同様の構成名および符号を用いて説明する。
(製造方法1)
ここでの製造方法1は、前述した第1実施形態に係るジャイロセンサー1の製造方法を示している。図20のフローチャートに示すように、ジャイロセンサー1の製造方法は、[1]基板2を用意する工程(ステップS101)と、[2]素子を形成する工程(ステップS103)と、[3]切欠き部(第1の切欠き部)を形成する第1加工工程(ステップS105)と、[4]不要信号が規定値以上か否かを判定する工程(ステップS107)と、[5]該判定に基づいて第2の切欠き部の大きさを決定し、形成する第2加工工程(ステップS109)と、[6]基板に蓋部材を接合する工程(ステップS111)と、を有する。以下、各工程を順次説明する。
なお、以下では、基板2がアルカリ金属イオンを含むガラス材料で構成され、ジャイロセンサー素子4となる部材がシリコン材料で構成され、蓋部材3がシリコン材料で構成されている場合を例に説明する。なお、ウェーハの面内にジャイロセンサー素子4が、複数配置される構成とすることができる。
[1]基板2を用意する工程(ステップS101)
先ず、基板2を用意する工程(ステップS101)では、平板状の母材をフォトリソグラフィーおよびエッチングによりパターニングすることにより、突出部22を有する凹部21を備えた基板2(図2参照)を用意する。
[2]素子を形成する工程(ステップS103)
次に、素子を形成する工程(ステップS103)では、前述の図3で示したような質量部41と、複数の固定部42と、複数の弾性部43と、複数の駆動部44と、複数の固定駆動部45,46と、検出部471,472と、複数の支持梁部48とを有する素子を形成する。なお、ここでの素子とは、後述する工程を経てジャイロセンサー素子4となるものである。また、突出部22の上面に固定検出部49を形成することができる。
具体的には、まず、板状の部材を用意し、基板2上に部材を例えば陽極接合法により接合する。そして接合された部材上にハードマスクを形成し、部材をエッチングによりパターニングすることにより、素子を形成する。本実施形態では、部材のエッチングとして、反応性プラズマガスを用いたエッチングプロセスとデポジション(堆積)プロセスとを組み合わせた深掘りエッチング技術であるボッシュ法(Bosch process)を好適に用いている。なお、部材は、パターニングする前に、例えば研磨することにより薄肉化してもよい。
[3]切欠き部(第1の切欠き部)を形成する第1加工工程(ステップS105)
次に、弾性部43に切欠き部(第1の切欠き部)としての形状調整部435(第1の形状調整部435a)を形成する第1加工工程(ステップS105)では、弾性部43の第1部分4301の第1主面431と第1側面433との接続領域を加工し、所定の長さの切欠き部(第1の切欠き部)としての形状調整部435(第1の形状調整部435a)を形成する(図4、図14参照)。形状調整部435(第1の形状調整部435a)は、弾性部43を加工し、Z軸方向からの平面視で、駆動方向(Y軸方向)に沿って、且つ質量部41の重心Gを通る線分Jに対して線対称に形成する。なお、弾性部43を加工することは、弾性部43の一部を除去または変形させることを含む。また、この加工により、切欠き部(第1の切欠き部)としての形状調整部435(第1の形状調整部435a)が形成される。
また、本実施形態では、接続領域の一部を加工する。これにより、第1部分4301の第1主面431と第1側面433との接続領域の一部に曲面部401で構成された形状調整部435(第1の形状調整部435a)を形成することができる。ここで形成する形状調整部435(第1の形状調整部435a)の大きさ(長さ)は、ジャイロセンサー素子4ごとに、予め測定された弾性部43のZ軸方向の振動成分の大きさに基づいて設定される。形状調整部435(第1の形状調整部435a)を第1部分4301の一部に形成することにより、クアドラチャ信号を低減させるために必要な、適度な大きさの切欠き部として形状調整部435(第1の形状調整部435a)を形成することができる。
また、第1部分4301の第1主面431と第1側面433とが接続する角度θ(内角)は、90°未満であり、すなわち鋭角である。弾性部43を加工する箇所としては、第1部分4301の第1主面431と第1側面433との接続領域の角度θのように鋭角をなす部分であることが好ましい。これにより、不要振動成分(不要信号)を低減する効果を高めることができる。
また、本第1加工工程(ステップS105)における加工は、弾性部43の上方から第1部分4301の第1主面431と第1側面433との接続領域に対してレーザー光を照射することにより行う。レーザー光は、特に第1側面433の傾斜方向側から照射することが好ましい。これにより、曲面部401で構成された形状調整部435(第1の形状調整部435a)を高精度に形成することができる。
ここで用いるレーザー光の波長は、例えば、200nm以上1110nm以下であることが好ましく、260nm以上1100nm以下であることがより好ましい。このような範囲内であると、ドロスやデブリ等が多くなり過ぎることを低減することができる。また、レーザー光としては、YAGレーザーを用いることが好ましい。特に、本実施形態では、基本波長が1064nmあるYAGレーザーの第2高調波(532nm)のレーザー光を好適に用いている。YAGレーザーの第2高調波(532nm)よりも小さい波長をシリコン材から成る弾性部43に適用するとアブレーション(蒸散)現象が発生し適度な加工を施すことができる。
また、照射される箇所におけるレーザー光の形状(断面形状)および大きさは、特に限定されず、例えば、1辺の長さが1μm~200μmの正方形や、直径が1μm~300μmの円形とすることができる。ただし、本実施形態のようにレーザー光を照射する場合、レーザー光の形状および大きさは、1辺の長さが1μm~100μm程度の正方形または直径が1μm~100μm程度の円形であることが好ましい。特に、本実施形態では、直径が3μm程度の円形をなすレーザー光を好適に用いている。
また、レーザー光を用いることで、弾性部43の曲面部401における部分(頂部)には、レーザー光が照射されることにより材質が変化した変質部(変質層)411(図6参照)が形成される。
本実施形態では、シリコン材(単結晶シリコン材)により形成された弾性部43の第1部分4301の第1主面431と第1側面433との接続領域に、YAGレーザーの第2高調波である波長532nmのレーザー光を、第1主面431の垂線に対して20°~45°と成るように、約0.5mJの強度で数回照射した。その結果、照射された部分(接続領域)には、丸みを帯び、第1側面433よりも-Y軸方向に突出した変質部411(切欠き部としての形状調整部435(第1の形状調整部435a)が形成された(図6参照)。この変質部411は、レーザー光により、結晶性が変化していると考えられ、具体的には、溶融して再結晶化していると考えられる。このような変質部411を備えることで、不要振動成分(不要信号)を低減する効果を高めることができる。
なお、第1部分4301の第1主面431と第1側面433との接続領域を加工する方法としては、前述したレーザー光を照射する方法に限定されず、ハロゲンヒーター等によりランプ加熱する方法、集束イオンビーム(FIB)等で物理的に除去する方法等を用いることも可能である。
[4]不要信号が規定値以上か否かを判定する工程(ステップS107)
次に、不要信号が規定値以上か否かを判定する工程(ステップS107)では、弾性部43の第1部分4301の第1主面431と第1側面433との接続領域に、所定の長さの曲面部401を含む形状調整部435(第1の形状調整部435a)を形成した結果、ジャイロセンサー1の不要信号が規定値以内となったかを判定する。この判定で、不要信号が規定値以上である場合(ステップS107:Yes)、即ち不要信号が規定値まで減少していない場合は、次の第2加工工程(ステップS109)に進み、追加する第2の切欠き部として第2の形状調整部435b(図14参照)を形成する。また、この判定で、不要信号が規定値以下である場合(ステップS107:No)、即ち不要信号が規定値以下にまで減少している場合は、次の基板2に蓋部材3を接合する工程(ステップS111)に進む。
[5]第2の切欠き部の大きさを決定し、形成する第2加工工程(ステップS109)
次に、第2の切欠き部の大きさを決定し、形成する第2加工工程(ステップS109)では、前段の工程(ステップS107)における不要信号の判定結果に基づいて、第2の切欠き部としての第2の形状調整部435b(曲面部401)の大きさ(長さ)を決定する。そして、決定された第2の形状調整部435bの大きさに基づいて、第2の形状調整部435bを形成する。
第2の形状調整部435bは、先の工程(ステップS105)において形成された形状調整部435(第1の形状調整部435a)と間隙を有して配置され、第1部分4301の第1主面431と第1側面433との接続領域の一部に形成する。第2の形状調整部435bは、Z軸方向からの平面視で、駆動方向(Y軸方向)に沿って、且つ質量部41の重心Gを通る線分Jに対して線対称に形成する。ここで、形状調整部435(第1の形状調整部435a)および第2の形状調整部435b、共に切欠き部を構成する。第2の形状調整部435bは、先の第1加工工程(ステップS105)における形状調整部435(第1の形状調整部435a)の形成と同様な加工で形成することができる。第2の形状調整部435bは、第1加工工程(ステップS105)と同様のレーザー光を照射することにより形成することが好適である。
[6]基板に蓋部材を接合する工程(ステップS111)
次に、基板2に蓋部材3を接合する工程(ステップS111)では、図2に示して説明したように、基板2の上面23に、凹部31を有する蓋部材3を接合する。これにより、基板2の凹部21と蓋部材3の凹部31とによりジャイロセンサー素子4を収納する空間Sが形成される。以上の工程により、図2に示すようなジャイロセンサー1を得ることができる。
なお、図示しないが、ジャイロセンサー1は、後述する製造方法2も同様であるが、ウェーハWFの面内(ウェーハWF上)に、複数配置されて加工されてもよく、この場合、基板2に蓋部材3を接合する工程(ステップS111)の後に設けられる個片化する工程において、ダイシングブレード(不図示)などを用いて個片化されてもよい。この工程において、個片化されたジャイロセンサー1を得ることができる。
また、図示はしないが、蓋部材3に空間Sの内外を連通する貫通孔が設けられていてもよい。蓋部材3に当該貫通孔を有する場合は、空間Sを形成した後に、当該貫通孔を用いて空間Sを真空引きした後に貫通孔を封止することで、空間Sを減圧(真空)状態とすることができる。これは、後述する製造方法2も同様である。
(製造方法2)
ここでの製造方法2は、前述した第2実施形態に係るジャイロセンサーの製造方法を示している。ジャイロセンサーの製造方法2は、前述の製造方法1と同様に、[1]基板2を用意する工程(ステップS101)と、[2]素子を形成する工程(ステップS103)と、[3]切欠き部(第1の切欠き部)を形成する第1加工工程(ステップS105)と、[4]不要信号が規定値以上か否かを判定する工程(ステップS107)と、[5]該判定に基づいて第2の切欠き部の大きさを決定し、形成する第2加工工程(ステップS109)と、[6]基板に蓋部材を接合する工程(ステップS111)と、を有する。
但し、製造方法2は、[3]切欠き部(第1の切欠き部)を形成する第1加工工程(ステップS105)と、[5]該判定に基づいて第2の切欠き部の大きさを決定し、形成する第2加工工程(ステップS109)とが、前述の製造方法1と異なり、他の工程は製造方法1と同様である。したがって、以下では、製造方法1と異なる工程である、[3]切欠き部(第1の切欠き部)を形成する第1加工工程(ステップS105)、および[5]該判定に基づいて第2の切欠き部の大きさを決定し、形成する第2加工工程(ステップS109)について説明し、製造方法1と同様の工程につては説明を省略する。以下、第1加工工程(ステップS105)、および第2加工工程(ステップS109)を順次説明する。
[3]切欠き部(第1の切欠き部)を形成する第1加工工程(ステップS105)
弾性部43に切欠き部(第1の切欠き部)としての凹部438、もしくは第1の凹部438aを形成する第1加工工程(ステップS105)では、製造方法1と同様な工程である、[1]基板2を用意する工程(ステップS101)と、[2]素子を形成する工程(ステップS103)とを経て形成された部材に加工を行う。
弾性部43に切欠き部(第1の切欠き部)としての凹部438、もしくは第1の凹部438aを形成する第1加工工程(ステップS105)では、弾性部43の第1部分4301の第1主面431側を加工し、所定の長さの切欠き部としての凹部438(第1の凹部438a)を形成する(図16、図19参照)。
凹部438(第1の凹部438a)は、第1部分4301の一部を加工して設ける。ここで形成する凹部438(第1の凹部438a)の大きさ(長さ)、および配置は、ジャイロセンサー素子4ごとに、予め測定された弾性部43のZ軸方向の振動成分の大きさに基づいて設定される。また、凹部438(第1の凹部438a)は、弾性部43を加工し、Z軸方向からの平面視で、駆動方向(Y軸方向)に沿って、且つ質量部41の重心Gを通る線分Jに対して線対称に形成する。凹部438(第1の凹部438a)の形成方法としては、特に限定されないが、例えば、ドライエッチングにより形成することが好ましい。ドライエッチングでは、マスクを用いるため、より精度よくかつ微細に、凹部438(第1の凹部438a)を形成することができる。凹部438(第1の凹部438a)を第1部分4301の一部に形成することにより、クアドラチャ信号を低減させるために必要な、適度な大きさの切欠き部として凹部438(第1の凹部438a)を形成することができる。
[5]第2の切欠き部の大きさを決定し、形成する第2加工工程(ステップS109)
前段の工程である、[4]不要信号が規定値以上か否かを判定する工程(ステップS107)に続く、[5]第2の切欠き部の大きさを決定し、形成する第2加工工程(ステップS109)では、ステップS107における不要信号の判定結果に基づいて、第2の切欠き部としての第2の凹部438bの大きさ(長さ)を決定する。そして、決定された第2の凹部438bの大きさに基づいて、第2の凹部438bを形成する。
第2の凹部438bは、先の工程(ステップS105)において形成された凹部438(第1の凹部438a)と間隙を有して配置され、第1部分4301の第1主面431側の一部に追加して形成する。第2の凹部438bは、Z軸方向からの平面視で、駆動方向(Y軸方向)に沿って、且つ質量部41の重心Gを通る線分Jに対して線対称に形成する。ここで、凹部438(第1の凹部438a)および第2の凹部438b、共に切欠き部を構成する。第2の凹部438bは、先の第1加工工程(ステップS105)における凹部438(第1の凹部438a)の形成と同様な加工で形成することができる。第2の凹部438bは、第1加工工程(ステップS105)と同様のドライエッチングにより形成することが好適である。
そして、基板2に蓋部材3を接合する工程(ステップS111)において、基板2の上面23に、凹部31を有する蓋部材3を接合する。これにより、基板2の凹部21と蓋部材3の凹部31とによりジャイロセンサー素子4を収納する空間Sが形成される。以上の工程により、第2実施形態に係るジャイロセンサーを得ることができる。
以上説明した製造方法1および製造方法2によれば、第1加工工程(ステップS105)において、弾性部43を加工し、Z軸方向からの平面視で、駆動方向(Y軸方向)に沿って、且つ質量部41の重心Gを通る線分Jに対して線対称に加工された切欠き部(形状調整部435、第1の形状調整部435a、もしくは凹部438、第1の凹部438a)を設ける。そして、第2の加工工程(ステップS109)において、第1加工工程(ステップS105)での加工結果に基づいて、さらに弾性部43を加工し、第1加工工程(ステップS105)で形成した切欠き部(形状調整部435、第1の形状調整部435a、もしくは凹部438、第1の凹部438a)に加えて、質量部41の重心Gを通る線分Jに対して線対称に設ける第2の切欠き部(第2の形状調整部435b、第2の凹部438b)により、線分Jに対して両側のバランスやクアドラチャ信号の低減量などの微調整を行うことができる。これにより、クアドラチャ信号の出現量を詳細にコントロールすることができ、より高い検出精度の物理量センサー(ジャイロセンサー)を製造することができる。
[物理量センサーデバイス]
次に、物理量センサーとしてのジャイロセンサー1を備えた物理量センサーデバイスについて、図21を参照して説明する。図21は、物理量センサーデバイスの概略構成を示す断面図である。
物理量センサーデバイス800は、図21に示すように、ベース基板810と、ベース基板810上に設けられた物理量センサーとしてのジャイロセンサー1と、ジャイロセンサー1上に設けられた回路素子820(IC)と、ジャイロセンサー1と回路素子820とを電気的に接続するボンディングワイヤーBW1と、ベース基板810と回路素子820とを電気的に接続するボンディングワイヤーBW2と、ジャイロセンサー1および回路素子820をモールドするモールド部830と、を有している。ここで、ジャイロセンサー1としては、例えば、前述した第1実施形態もしくは第2実施形態のいずれかを用いることができる。
ベース基板810は、ジャイロセンサー1を支持する基板であり、例えば、インターポーザー基板である。このようなベース基板810の上面には複数の接続端子811が配置されており、下面には複数の実装端子812が配置されている。また、ベース基板810内には、図示しない内部配線が配置されており、この内部配線を介して、各接続端子811が、対応する実装端子812と電気的に接続されている。このようなベース基板810としては、特に限定されず、例えば、シリコン基板、セラミック基板、樹脂基板、ガラス基板、ガラスエポキシ基板等を用いることができる。
また、ジャイロセンサー1は、基板2を下側(ベース基板810側)に向けてベース基板810上に配置されている。そして、ジャイロセンサー1は、接合部材を介してベース基板810に接合されている。
また、回路素子820は、ジャイロセンサー1上に配置されている。そして、回路素子820は、接合部材を介してジャイロセンサー1の蓋部材3に接合されている。また、回路素子820は、ボンディングワイヤーBW1を介してジャイロセンサー1の各電極パッド(不図示)と電気的に接続され、ボンディングワイヤーBW2を介してベース基板810の接続端子811と電気的に接続されている。このような回路素子820には、ジャイロセンサー1を駆動する駆動回路や、ジャイロセンサー1からの出力信号に基づいて角速度を検出する検出回路や、検出回路からの信号を所定の信号に変換して出力する出力回路等が、必要に応じて含まれている。
また、モールド部830は、ジャイロセンサー1および回路素子820をモールドしている。これにより、ジャイロセンサー1や回路素子820を水分、埃、衝撃等から保護することができる。モールド部830としては、特に限定されないが、例えば、熱硬化型のエポキシ樹脂を用いることができ、例えば、トランスファーモールド法によってモールドすることができる。
以上のような物理量センサーデバイス800は、ジャイロセンサー1を有している。そのため、ジャイロセンサー1の効果を享受でき、高精度な物理量センサーデバイス800が得られる。
なお、物理量センサーデバイス800の構成としては、上記の構成に限定されず、例えば、ジャイロセンサー1がセラミックパッケージに収納された構成となっていてもよい。
[複合センサー]
次に、図22を参照して、前述の物理量センサーとしてのジャイロセンサー1を備えた複合センサーの構成例について説明する。図22は、複合センサーの概略構成を示す機能ブロック図である。なお、以下では、第1実施形態に係るジャイロセンサー1を用いた例を示して説明する。
図22に示すように、複合センサー900は、上述したようなジャイロセンサー素子4を含むジャイロセンサー1を用いたX軸角速度センサー920x、Y軸角速度センサー920y、およびZ軸角速度センサー920zと、加速度センサー素子を含む加速度センサー950と、を備えている。X軸角速度センサー920x、Y軸角速度センサー920y、およびZ軸角速度センサー920zは、それぞれ一軸方向の角速度を高精度に計測することができる。加速度センサー950は、3軸方向の加速度をそれぞれ測定するために、三つの加速度センサー素子を備えている。また、複合センサー900は、例えば、ジャイロセンサー素子4を駆動する駆動回路や、ジャイロセンサー1からの信号に基づいてX軸、Y軸およびZ軸の各軸方向の角速度を検出する検出回路や、検出回路からの信号を所定の信号に変換して出力する出力回路等を含む制御回路部(IC)を備えることができる。
このような複合センサー900によれば、ジャイロセンサー1で構成されるX軸角速度センサー920x、Y軸角速度センサー920y、およびZ軸角速度センサー920zと加速度センサー950とによって容易に複合センサー900を構成することができ、例えば加速度データや角速度データを取得することができる。
[慣性計測ユニット]
次に、図23および図24を参照して、慣性計測ユニット(IMU:Inertial Measurement Unit)について説明する。図23は、慣性計測ユニットの概略構成を示す分解斜視図である。図24は、慣性計測ユニットの慣性センサー素子の配置例を示す斜視図である。
図23に示す慣性計測ユニット2000(IMU:Inertial Measurement Unit)は、自動車や、ロボットなどの運動体(被装着装置)の姿勢や、挙動(慣性運動量)を検出する装置である。慣性計測ユニット2000は、3軸の加速度センサーと、3軸の角速度センサーと、を備えた、いわゆる6軸モーションセンサーとして機能する。
慣性計測ユニット2000は、平面形状が略正方形の直方体である。また、正方形の対角線方向に位置する2箇所の頂点近傍に、固定部としてのネジ穴2110が形成されている。この2箇所のネジ穴2110に2本のネジを通して、自動車などの被装着体の被装着面に慣性計測ユニット2000を固定することができる。なお、部品の選定や設計変更により、例えば、スマートフォンや、デジタルカメラに搭載可能なサイズに小型化することも可能である。
慣性計測ユニット2000は、アウターケース2100と、接合部材2200と、センサーモジュール2300と、を有し、アウターケース2100の内部に、接合部材2200を介在させて、センサーモジュール2300を挿入した構成となっている。また、センサーモジュール2300は、インナーケース2310と、基板2320と、を有している。
アウターケース2100の外形は、慣性計測ユニット2000の全体形状と同様に、平面形状が略正方形の直方体であり、正方形の対角線方向に位置する2箇所の頂点近傍に、それぞれネジ穴2110が形成されている。また、アウターケース2100は、箱状であり、その内部にセンサーモジュール2300が収納されている。
インナーケース2310は、基板2320を支持する部材であり、アウターケース2100の内部に収まる形状となっている。また、インナーケース2310には、基板2320との接触を防止するための凹部2311や後述するコネクター2330を露出させるための開口2312が形成されている。このようなインナーケース2310は、接合部材2200(例えば、接着剤を含浸させたパッキン)を介してアウターケース2100に接合されている。また、インナーケース2310の下面には接着剤を介して基板2320が接合されている。
図24に示すように、基板2320の上面には、コネクター2330、Z軸まわりの角速度を検出する角速度センサー2340z、X軸、Y軸およびZ軸の各軸方向の加速度を検出する加速度センサー2350などが実装されている。また、基板2320の側面には、X軸まわりの角速度を検出する角速度センサー2340xおよびY軸まわりの角速度を検出する角速度センサー2340yが実装されている。なお、角速度センサー2340z,2340x,2340yとしては、特に限定されず、コリオリの力を利用した前述のジャイロセンサー1を用いることができる。また、加速度センサー2350としては、特に限定されず、静電容量型の加速度センサーなどを用いることができる。
また、基板2320の下面には、制御IC2360が実装されている。制御IC2360は、MCU(Micro Controller Unit)であり、不揮発性メモリーを含む記憶部や、A/Dコンバーターなどを内蔵しており、慣性計測ユニット2000の各部を制御する。記憶部には、加速度、および角速度を検出するための順序と内容を規定したプログラムや、検出データをデジタル化してパケットデータに組込むプログラム、付随するデータなどが記憶されている。なお、基板2320には、その他にも複数の電子部品が実装されている。
以上、慣性計測ユニット2000について説明した。このような慣性計測ユニット2000は、角速度センサー2340z,2340x,2340yおよび加速度センサー2350と、これら各センサー2340z,2340x,2340y,2350の駆動を制御する制御部としての制御IC2360(制御回路)と、を含んでいる。これにより、上述したジャイロセンサー1の効果を享受でき、信頼性の高い慣性計測ユニット2000が得られる。
[携帯型電子機器]
次に、ジャイロセンサー1を用いた携帯型電子機器について、図25および図26に基づき、詳細に説明する。以下、携帯型電子機器の一例として、腕時計型の活動計(アクティブトラッカー)を示して説明する。
腕時計型の活動計(アクティブトラッカー)であるリスト機器1000は、図25に示すように、バンド1032,1037等によってユーザーの手首等の部位(被検体)に装着され、デジタル表示の表示部150を備えるとともに無線通信が可能である。上述した本発明に係るジャイロセンサー1は、角速度を測定する角速度センサー114(図26参照)として、加速度を計測するセンサーなどと共にリスト機器1000に組込まれている。
リスト機器1000は、少なくとも角速度センサー114(図26参照)が収容されているケース1030と、ケース1030に収容され、角速度センサー114からの出力データを処理する処理部100(図26参照)と、ケース1030に収容されている表示部150と、ケース1030の開口部を塞いでいる透光性カバー1071と、を備えている。ケース1030の透光性カバー1071のケース1030の外側には、ベゼル1078が設けられている。ケース1030の側面には、複数の操作ボタン1080,1081が設けられている。以下、図26も併せて参照しながら、さらに詳細に説明する。
加速度センサー113は、互いに交差する(理想的には直交する)3軸方向の各々の加速度を検出し、検出した3軸加速度の大きさ、および向きに応じた信号(加速度信号)を出力する。また、角速度センサー114は、互いに交差する(理想的には直交する)3軸方向の各々の角速度を検出し、検出した3軸角速度の大きさ、および向きに応じた信号(角速度信号)を出力する。
リスト機器1000は、GPS(Global Positioning System)センサー110を備えている。GPSは、全地球測位システムとも呼ばれ、複数の衛星信号に基づいて地球上の現在位置を測定するための衛星測位システムである。GPSは、GPS時刻情報と軌道情報とを使用して測位計算をおこないユーザーの位置情報を取得する機能やユーザーの移動距離や移動軌跡を計測する機能、および時計機能における時刻修正機能を備えている。GPSセンサー110は、GPS衛星からの衛星信号に基づいて地球上の現在位置を測定することができる。
表示部150を構成する液晶ディスプレイ(LCD)では、種々の検出モードに応じて、例えば、GPSセンサー110や地磁気センサー111を用いた位置情報、移動量や加速度センサー113、もしくは角速度センサー114などを用いた運動量などの運動情報、脈拍センサー115などを用いた脈拍数などの生体情報、もしくは現在時刻などの時刻情報などが表示される。なお、温度センサー116を用いた環境温度を表示することもできる。
通信部170は、ユーザー端末と図示しない情報端末との間の通信を成立させるための各種制御を行う。通信部170は、例えば、Bluetooth(登録商標)(BTLE:Bluetooth Low Energyを含む)、Wi-Fi(登録商標)(Wireless Fidelity)、Zigbee(登録商標)、NFC(Near field communication)、ANT+(登録商標)等の近距離無線通信規格に対応した送受信機やUSB(Universal Serial Bus)等の通信バス規格に対応したコネクターを含んで構成される。
処理部100(プロセッサー)は、例えば、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等により構成される。処理部100は、記憶部140に格納されたプログラムと、操作部120(例えば操作ボタン1080,1081)から入力された信号とに基づき、各種の処理を実行する。処理部100による処理には、GPSセンサー110、地磁気センサー111、圧力センサー112、加速度センサー113、角速度センサー114、脈拍センサー115、温度センサー116、計時部130の各出力信号に対するデータ処理、表示部150に画像を表示させる表示処理、音出力部160に音を出力させる音出力処理、通信部170を介して情報端末と通信を行う通信処理、バッテリー180からの電力を各部へ供給する電力制御処理などが含まれる。
このようなリスト機器1000では、少なくとも以下のような機能を有することができる。
1.距離:高精度のGPS機能により計測開始からの合計距離を計測する。
2.ペース:ペース距離計測値から、現在の走行ペースを表示する。
3.平均スピード:走行開始から現在までの平均スピードを算出し表示する。
4.標高:GPS機能により、標高を計測し表示する。
5.ストライド:GPS電波が届かないトンネル内などでも歩幅を計測し表示する。
6.ピッチ:1分あたりの歩数を計測し表示する。
7.心拍数:脈拍センサーにより心拍数を計測し表示する。
8.勾配:山間部でのトレーニングやトレイルランにおいて、地面の勾配を計測し表示する。
9.オートラップ:事前に設定した一定距離や一定時間を走った時に、自動でラップ計測を行う。
10.運動消費カロリー:消費カロリーを表示する。
11.歩数:運動開始からの歩数の合計を表示する。
なお、リスト機器1000は、ランニングウォッチ、ランナーズウォッチ、デュアスロンやトライアスロン等マルチスポーツ対応のランナーズウォッチ、アウトドアウォッチ、および衛星測位システム、例えばGPSを搭載したGPSウォッチ、等に広く適用できる。
また、上述では、衛星測位システムとしてGPS(Global Positioning System)を用いて説明したが、他の全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)を利用してもよい。例えば、EGNOS(European Geostationary-Satellite Navigation Overlay Service)、QZSS(Quasi Zenith Satellite System)、GLONASS(GLObal NAvigation Satellite System)、GALILEO、BeiDou(BeiDou Navigation Satellite System)、等の衛星測位システムのうち1又は2以上を利用してもよい。また、衛星測位システムの少なくとも一つにWAAS(Wide Area Augmentation System)、EGNOS(European Geostationary-Satellite Navigation Overlay Service)等の静止衛星型衛星航法補強システム(SBAS:Satellite-based Augmentation System)を利用してもよい。
このような携帯型電子機器は、ジャイロセンサー1、および処理部100を備えているので、優れた信頼性を有している。
[電子機器]
次に、ジャイロセンサー1を用いた電子機器について、図27~図29に基づき、詳細に説明する。
先ず、図27を参照して、電子機器の一例であるモバイル型のパーソナルコンピューターについて説明する。図27は、電子機器の一例であるモバイル型のパーソナルコンピューターの構成を模式的に示す斜視図である。
この図において、パーソナルコンピューター1100は、キーボード1102を備えた本体部1104と、表示部1108を備えた表示ユニット1106とにより構成され、表示ユニット1106は、本体部1104に対しヒンジ構造部を介して回動可能に支持されている。このようなパーソナルコンピューター1100には、角速度センサーとして機能するジャイロセンサー1が内蔵されており、ジャイロセンサー1の検出データに基づいて制御部1110が、例えば姿勢制御などの制御を行なうことができる。
図28は、電子機器の一例であるスマートフォン(携帯電話機)の構成を模式的に示す斜視図である。
この図において、スマートフォン1200は、上述したジャイロセンサー1が組込まれている。ジャイロセンサー1によって検出された検出データ(角速度データ)は、スマートフォン1200の制御部1201に送信される。制御部1201は、CPU(Central Processing Unit)を含んで構成されており、受信した検出データからスマートフォン1200の姿勢や、挙動を認識して、表示部1208に表示されている表示画像を変化させたり、警告音や、効果音を鳴らしたり、振動モーターを駆動して本体を振動させることができる。換言すれば、スマートフォン1200のモーションセンシングを行い、計測された姿勢や、挙動から、表示内容を変えたり、音や、振動などを発生させたりすることができる。特に、ゲームのアプリケーションを実行する場合には、現実に近い臨場感を味わうことができる。
図29は、電子機器の一例であるディジタルスチールカメラの構成を示す斜視図である。なお、この図には、外部機器との接続についても簡易的に示されている。
この図において、ディジタルスチールカメラ1300のケース(ボディー)1302の背面には、表示部1310が設けられ、CCDによる撮像信号に基づいて表示を行う構成になっており、表示部1310は、被写体を電子画像として表示するファインダーとしても機能する。また、ケース1302の正面側(図中裏面側)には、光学レンズ(撮像光学系)やCCDなどを含む受光ユニット1304が設けられている。
撮影者が表示部1310に表示された被写体像を確認し、シャッターボタン1306を押下すると、その時点におけるCCDの撮像信号が、メモリー1308に転送・格納される。また、このディジタルスチールカメラ1300では、ケース1302の側面に、ビデオ信号出力端子1312と、データ通信用の入出力端子1314とが設けられている。そして、図示されるように、ビデオ信号出力端子1312にはテレビモニター1430が、データ通信用の入出力端子1314にはパーソナルコンピューター1440が、それぞれ必要に応じて接続される。さらに、所定の操作により、メモリー1308に格納された撮像信号が、テレビモニター1430や、パーソナルコンピューター1440に出力される構成になっている。このようなディジタルスチールカメラ1300には、角速度センサーとして機能するジャイロセンサー1が内蔵されており、ジャイロセンサー1の検出データに基づいて制御部1316が、例えば手振れ補正などの制御を行なうことができる。
このような電子機器は、ジャイロセンサー1、および制御部1110,1201,1316を備えているので、優れた信頼性を有している。
なお、ジャイロセンサー1を備える電子機器は、図27のパーソナルコンピューター、図28のスマートフォン(携帯電話機)、図29のディジタルスチールカメラの他にも、例えば、タブレット端末、時計、インクジェット式吐出装置(例えばインクジェットプリンター)、ラップトップ型パーソナルコンピューター、テレビ、ビデオカメラ、ビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳(通信機能付も含む)、電子辞書、電卓、電子ゲーム機器、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、防犯用テレビモニター、電子双眼鏡、POS端末、医療機器(例えば電子体温計、血圧計、血糖計、心電図計測装置、超音波診断装置、電子内視鏡)、魚群探知機、各種測定機器、計器類(例えば、車両、航空機、船舶の計器類)、フライトシミュレーター、地震計、歩数計、傾斜計、ハードディスクの振動を計測する振動計、ロボットやドローンなど飛行体の姿勢制御装置、自動車の自動運転用慣性航法に使用される制御機器等に適用することができる。
[移動体]
次に、ジャイロセンサー1を用いた移動体を図30に示し、詳細に説明する。図30は、移動体の一例である自動車の構成を示す斜視図である。
図30に示すように、自動車1500にはジャイロセンサー1が内蔵されており、例えば、ジャイロセンサー1によって車体1501の姿勢を検出することができる。ジャイロセンサー1の検出信号は、車体の姿勢を制御する姿勢制御部としての車体姿勢制御装置1502に供給され、車体姿勢制御装置1502は、その信号に基づいて車体1501の姿勢を検出し、検出結果に応じてサスペンションの硬軟を制御したり、個々の車輪1503のブレーキを制御したりすることができる。また、ジャイロセンサー1は、他にもキーレスエントリーシステム、イモビライザー、カーナビゲーションシステム、カーエアコン、アンチロックブレーキシステム(ABS)、エアバック、タイヤ・プレッシャー・モニタリング・システム(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)、エンジンコントロールシステム(エンジンシステム)、自動運転用慣性航法の制御機器、ハイブリッド自動車や電気自動車の電池モニター等の電子制御ユニット(ECU:electronic control unit)に広く適用できる。
また、移動体に適用されるジャイロセンサー1は、上記の例示の他にも、例えば、二足歩行ロボットや電車などの姿勢制御、ラジコン飛行機、ラジコンヘリコプター、およびドローンなどの遠隔操縦あるいは自律式の飛行体の姿勢制御、農業機械(農機)、もしくは建設機械(建機)などの姿勢制御、ロケット、人工衛星、船舶、AGV(無人搬送車)、および二足歩行ロボットなどの制御において利用することができる。以上のように、各種移動体の姿勢制御の実現にあたって、ジャイロセンサー1、およびそれぞれの制御部(不図示)が組み込まれる。
このような移動体は、ジャイロセンサー1、および制御部(例えば、姿勢制御部としての車体姿勢制御装置1502)を備えているので、優れた信頼性を有している。
以上、物理量センサー、慣性計測ユニット、携帯型電子機器、電子機器、および移動体を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
また、前述した実施形態では、X軸、Y軸およびZ軸が互いに直交しているが、互いに交差していれば、これに限定されず、例えば、X軸がYZ平面の法線方向に対して若干傾いていてもよいし、Y軸がXZ平面の法線方向に対して若干傾いていてもよいし、Z軸がXY平面の法線方向に対して若干傾いていてもよい。なお、若干とは、物理量センサー(ジャイロセンサー1)がその効果を発揮することができる範囲を意味し、具体的な傾き角度(数値)は、構成等によって異なる。