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JP6930441B2 - アンテナ装置 - Google Patents

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JP6930441B2
JP6930441B2 JP2018010579A JP2018010579A JP6930441B2 JP 6930441 B2 JP6930441 B2 JP 6930441B2 JP 2018010579 A JP2018010579 A JP 2018010579A JP 2018010579 A JP2018010579 A JP 2018010579A JP 6930441 B2 JP6930441 B2 JP 6930441B2
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Description

本開示は、アンテナ装置に関する。
従来、特許文献1に開示されているように、グランドとして機能する平板状の金属導体(以降、地板)と、当該地板に対向するように配置されるとともに任意の位置に給電点が設けられた平板状の金属導体(以降、パッチ部)と、地板とパッチ部とを電気的に接続する短絡部と、を備えるアンテナ装置がある。
この種のアンテナ装置では、地板とパッチ部との間に形成される静電容量と、短絡部が備えるインダクタンスとによって、その静電容量とインダクタンスに応じた周波数において並列共振を生じさせる。地板とパッチ部との間に形成される静電容量は、パッチ部の面積や、地板とパッチ部との距離に応じて定まる。また、短絡部が備えるインダクタンスは、短絡部の径に応じて定まる。したがって、例えばパッチ部の面積や短絡部の径を調整することで、当該アンテナ装置において送受信の対象とする周波数(以降、対象周波数)を所望の周波数とすることができる。
また、特許文献2には、パッチ部の中心を通る直線を軸として線対称又は点対称となるようにパッチ部を複数のサブパッチ部に分割するとともに、パッチ部の外側にループ状の導体部材であるループ部を配置した構成が開示されている。特許文献2の構成において給電点はループ部に設けられており、各サブパッチ部にはループ部を介して給電される。なお、特許文献2に記載の構成は、本願の発明者らの一部が創出したものである。
米国特許第7911386号公報 特開2017−153032号公報
アンテナ装置は小型化が要求されている。発明者らは、さらなる小型化、広帯域化のため、特許文献2に開示の構成においてパッチ部の概形を長方形や平行四辺形とする構成を検討したところ、以下の知見が得られた。
特許文献2の創出時点では、特許文献2の段落[0028]に記載の通り、「パッチ中心点から短絡部までの距離を調整することで、短絡部が提供するインダクタンスは調整できる。」と認識していた。
しかしながら、パッチ部の概形を長方形や平行四辺形とする構成では、パッチ中心点から各サブパッチ部の短絡部までの距離を等しく設定しても、各短絡部が提供するインダクタンスは異なることが分かった。これは、パッチ部の概形を長方形や平行四辺形とする構成では、パッチ部に形成される2組のサブパッチ部の形状は異なり、サブパッチ部においてループ部と対向する縁部(以降、ループ対向縁部)から短絡部までの距離が異なるためであると考えられる。
つまり、短絡部が提供するインダクタンスは、パッチ中心点から短絡部までの距離ではなく、ループ対向縁部から短絡部までの距離によって定まることがわかった。ループ対向縁部から短絡部までの距離が大きいほどサブパッチ部に形成されるインダンタンスが大きくなり、動作周波数が低下する。動作周波数を低減可能であるということは、換言すれば、アンテナ装置の小型化が可能であることを意味する。
本開示は、上記の知見に基づいて成されたものであって、その目的は、より小型化、広帯域化が可能なアンテナ装置を提供することにある。
その目的を達成するための本開示は、平板状の導体部材である地板(10)と、地板と所定の間隔をおいて対向するように配置されている、長方形状又は平行四辺形状の平板状の導体部材であるパッチ部(30)と、パッチ部の周りにパッチ部の縁部と所定の間隔を有するように配置されているループ状の導体部材であるループ部(50)と、を備え、給電線と電気的に接続する給電点は、ループ部に設けられており、パッチ部は、縁部からパッチ部の中心とする点であるパッチ中心点に向かう方向に形成された複数の直線状のスリット部(31)によって分割されてなる複数のサブパッチ部(32)を備え、複数のスリット部は、パッチ中心点に対して点対称な位置に他のスリット部が存在するように形成されており、複数のサブパッチ部のそれぞれ、パッチ部の中央部で電気的に接続されており、複数のサブパッチ部のそれぞれには、導電素子(40)を介して地板と電気的に接続されている短絡部(34)が設けられており、短絡部は、パッチ中心点からの距離が、サブパッチ部においてループ部と対向する縁部であるループ対向縁部からパッチ中心点までの距離の4分の1以下となる領域に配置されている。
上記構成において短絡部は、サブパッチ部の中でもパッチ中心点寄りの位置に設けられている。そのため、サブパッチ部においてループ対向部から短絡部までの距離は相対的に大きい値となる。発明者らがシミュレーションの実施を含む種々の検討の結果として得られた知見に基づけば、ループ対向縁部から短絡部までの距離が大きいほど、短絡部が提供するインダクタンスが大きくなる。
つまり、上記の構成によれば、同一寸法のサブパッチ部において短絡部をループ対向縁部寄りに配置した構成よりも、動作周波数を低い値に設定することができる。また、所定の周波数で動作させることを目的とする場合には、短絡部をループ対向縁部寄りに配置した構成よりも小型化を図ることができる。
なお、特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
本実施形態におけるアンテナ装置100の外観斜視図である。 アンテナ装置100の上面図である。 図2に示すIII−III線におけるアンテナ装置100の断面図である。 パッチ中心点Pc付近の構成を拡大して示す概念図である。 サブパッチ部32Aの構成を説明するための図である。 サブパッチ部32Bの構成を説明するための図である。 サブパッチ部32Aの等価回路を示す図である。 サブパッチ部32Bの等価回路を示す図である。 第1実施形態の作動を説明するための図である。 参考例としての構成を示した図である。 参考例におけるVSWRを示す図である。 第2実施形態のアンテナ装置100の概略的な構成を示す上面図である。 第2実施形態のサブパッチ部32Aの構成を説明するための図である。 第2実施形態のサブパッチ部32Bの構成を説明するための図である。 変形例1のアンテナ装置100の概略的な構成を示す上面図である。 変形例2のアンテナ装置100の概略的な構成を示す上面図である。
[第1実施形態]
以下、本開示の第1の実施形態について図を用いて説明する。図1は、本実施形態に係るアンテナ装置100の概略的な構成の一例を示す外観斜視図である。また、アンテナ装置100の上面図を図2に示す。図3は、図2に示すIII−III線におけるアンテナ装置100の断面図である。なお、一部の図においては、図の視認性確保のために他の図において記載済みの符号及び引き出し線の図示を省略している。
このアンテナ装置100は、所定の周波数(以降、対象周波数)の電波を送受信するように構成されている。もちろん、他の態様としてアンテナ装置100は、送信と受信の何れか一方のみに利用されても良い。電波の送受信には可逆性があるため、或る周波数の電波を送信可能な構成は、当該周波数の電波を受信可能な構成でもある。対象周波数は、適宜設計されればよく、ここでは一例として850MHzとする。アンテナ装置100は、対象周波数だけでなく、対象周波数の前後所定範囲内の周波数の電波もまた送受信可能である。便宜上以降では、アンテナ装置100が送受信可能な周波数の帯域を、動作帯域とも記載する。
アンテナ装置100は、例えば同軸ケーブルを介して無線機と接続されており、アンテナ装置100が受信した信号は逐次無線機に出力される。また、アンテナ装置100は無線機から入力される電気信号を電波に変換して空間に放射する。無線機は、アンテナ装置100が受信した信号を利用するとともに、当該アンテナ装置100に対して送信信号に応じた高周波電力を供給するものである。
なお、本実施形態ではアンテナ装置100と無線機とを同軸ケーブルで接続する場合を想定して説明するが、フィーダ線など、その他の多様な通信ケーブル(ワイヤ等を含む)を用いて接続しても良い。また、アンテナ装置100と無線機とは、同軸ケーブルのほかに、整合回路やフィルタ回路などを介して接続される構成となっていても良い。
以下、アンテナ装置100の具体的な構成について述べる。アンテナ装置100は、図1〜3に示すように、地板10、支持部20、パッチ部30、短絡素子40、ループ部50、及び給電線路60を備える。
地板10は、銅などの導体を素材とする板状の導電部材である。ここでの板状には、箔のような薄膜状も含まれる。つまり、地板10はプリント配線板等の樹脂製の板の表面にパターン形成されたものでもよい。この地板10は、同軸ケーブルの外部導体と電気的に接続されて、アンテナ装置100におけるグランド電位(換言すれば接地電位)を提供する。地板10はパッチ部30以上の大きさを有するように形成されていればよい。
また、地板10を上側から見た形状(以降、平面形状)は適宜設計されればよい。ここでは一例として地板10の平面形状を長方形状とするが、他の態様として地板10の平面形状は、六角形などその他の多角形状であってもよい。また、円形状であってもよい。もちろん、直線部分と曲線部分とを組み合わせた形状であってもよい。
支持部20は、地板10に対するパッチ部30の位置及び姿勢を支持するための部材である。ここでは一例として支持部20は、樹脂などの電気絶縁材料を素材とする、所定の厚みを備える板状の部材とする。支持部20により地板10とパッチ部30とは所定の間隔をおいて互いに対向した状態が保持される。支持部20の厚み(換言すれば高さ)は適宜設計されればよい。便宜上、支持部20において、パッチ部30が配置される面を上面、地板10が配置される面を下面と称する。
なお、支持部20は前述の役割を果たせればよく、支持部20の形状は板状に限らない。支持部20は、地板10とパッチ部30とを所定の間隔をおいて対向するように支持する複数の柱であってもよい。また、本実施形態において地板10とパッチ部30の間は、樹脂(すなわち支持部20)で充填される構成としているが、これに限らない。地板10とパッチ部30の間は、中空や真空となっていてもよいし、所定の誘電比率を有する誘電体で充填されていても良い。さらに、以上で例示した構造が組み合わさっていてもよい。なお、アンテナ装置100がプリント配線板を用いて実現される場合には、プリント配線板が備える複数の導体層(例えば両面プリント配線板の両面または内層の導体層)を、地板10や、パッチ部30として利用するとともに、導体層を隔てる樹脂層を支持部20として利用してもよい。
パッチ部30は、銅などの導体を素材とする板状の部材である。ここでの板状には、箔のような薄膜状も含まれる。つまり、パッチ部30はプリント配線板等の、樹脂製の板の表面にパターン形成された導体でもよい。パッチ部30は、全体の概形が長方形状に形成されている。ここでの長方形とは、4つの角部が90度であって、互いに直交する辺の長さが異なる(つまり縦と横の長さが異なる)四角形を指すものとする。つまり、正方形を除く長方形である。
このパッチ部30は、支持部20を介して地板10と平行となるように対向配置されている。ここでの平行とは完全な平行に限らない。数度から十度程度傾いていても良い。つまり概ね平行である状態(いわゆる略平行な状態)を含みうる。なお、ここでは一例としてパッチ部30の形状は長方形とするが、その他の構成として、角部が90度以外に設定されている平行四辺形であってもよい。パッチ部30の縁部はミアンダ形状であってもよいし、角部が丸められていてもよい。
以降では便宜上、パッチ部30に直交する方向のことを上下方向と記載する。地板10からパッチ部30に向かう方向が上方向であり、パッチ部30から地板10に向かう方向が下方向である。また、上下方向に直交する方向であって、パッチ部30の長辺に平行な方向を長手方向、短辺に平行な方向を短手方向と記載する。図1等の種々の図に示すX軸は長手方向を、Y軸は短手方向を、Z軸は上下方向をそれぞれ表している。これらX軸、Y軸、及びZ軸は右手系の3次元座標系は、アンテナ装置100の構成を説明するための概念である。
パッチ部30には、パッチ部30の縁部の各頂点(つまり角部)からパッチ部30の中心(以降、パッチ中心点Pc)に向かって、所定の長さを有する直線状の切り欠きであるスリット部31が形成されている。つまり、合計4つのスリット部31が各角部から対角線に沿って延設されている。各スリット部31のそれぞれを区別する場合にはスリット部31A〜Dと記載する。なお、パッチ中心点Pcは、対角線の交点であって、パッチ部30の概ね重心に相当する。
上記の構成は、複数のスリット部31を、パッチ中心点Pcに対して点対称な位置に他のスリット部31が存在するように配置した構成に相当する。例えばスリット部31Aとスリット部31Cはパッチ中心点Pcを対称中心として互い点対称な位置に配置されている。また、スリット部31Bとスリット部31Dはパッチ中心点Pcを対称中心として互い点対称な位置に配置されている。なお、本実施形態では複数のスリット部31はそれぞれ、ひとつながりの切り欠き部として形成されているがこれに限らない。スリット部31は複数のスリットを断続的に配置することで実現されていても良い。
パッチ部30は、これら4つのスリット部31によって電気的に4つのサブパッチ部32に分割される。ただし、各スリット部31の長さであるスリット長Dsは、複数のサブパッチ部32がパッチ中心点Pc付近で電気的に接続するように、対角線の長さの半分である半対角線長よりも短い値に設定されている。例えばスリット長Dsは、半対角線長を0.9倍した値に設定されている。半対角線長は、パッチ中心点Pcから各頂点(換言すれば角部)までの長さに相当する。
もちろん、スリット長Dsの具体的な長さは上記に限らない。スリット長Dsは、半対角線長を0.8倍した値や、0.7倍した値に設定されていても良い。スリット長Dsは、スリット部31のパッチ中心点Pc側の端部からパッチ中心点Pcまでの距離が、対象周波数の電波の波長(以降、対象波長)の100分の1以上となる値に設定されていることが好ましい。また、スリット長Dsは、半対角線長の半分よりも大きい値に設定されているものとする。
スリット長Dsを上記のように設定することにより、複数のサブパッチ部32はパッチ中心点Pc付近で電気的に接続する。つまり、パッチ部30は、複数のスリット部31によって分割されてなる4つのサブパッチ部32と、これらのサブパッチ部32と接続する中央部33とを備える。各サブパッチ部32は、ループ部50と対向する縁部であるループ対向縁部を備える。
各サブパッチ部32のそれぞれを区別する場合にはサブパッチ部32A〜Dと記載する。サブパッチ部32Aは、スリット部31Aとスリット部31Bとに挟まれている領域であり、サブパッチ部32Bはスリット部31Bとスリット部31Cで挟まれている領域である。サブパッチ部32Cは、スリット部31Cとスリット部31Dとに挟まれている領域であり、サブパッチ部32Dはスリット部31Dとスリット部31Aで挟まれている領域である。
図4は、パッチ中心点Pc付近を拡大して示す概念図である。図4においてパッチ中心点Pcを囲むように配置している破線は、サブパッチ部32と中央部33との境界部分を示している。パッチ中心点Pcを含む破線で囲まれる領域が中央部33に相当する。サブパッチ部32と中央部33との境界は、当該サブパッチ部32を形成する2つのスリット部31のパッチ中心点Pc側の端部を結ぶ線に相当する。各スリット部31は、対角線に沿って同一寸法で形成されている結果として、中央部33はパッチ部30と同等の縦横比を有する略長方形状となる。便宜上以降では、サブパッチ部32においてパッチ中心点Pc側の端部のことを中央側端部と称する。
個々のスリット部31がパッチ中心点Pcを対称中心として点対称に配置されているため、複数のサブパッチ部32もまた、パッチ中心点Pcに対して点対称な位置に他のサブパッチ部32が存在する配置態様となっている。つまり、上記の構成は、互いに点対称な関係にあるサブパッチ部32が2組存在するように複数のスリット部31を配置した構成に相当する。具体的には、サブパッチ部32Aとパッチ中心点Pcを対称中心として互いに点対称な関係にあるサブパッチ部32とはサブパッチ部32Cである。また、サブパッチ部32Bとパッチ中心点Pcを対称中心として互いに点対称な関係にあるサブパッチ部32とはサブパッチ部32Dである。
図5は、サブパッチ部32A付近を拡大して示す概念図であり、図6はサブパッチ部32B付近を拡大して示す概念図である。図5においてはサブパッチ部32Aとする領域を明示するために、サブパッチ部32Aに相当する領域にドットパターンのハッチングを施している。同様に、図6においてはサブパッチ部32Bとする領域を明示するために、サブパッチ部32Bに相当する領域にドットパターンのハッチングを施している。特に、各サブパッチ部32において中央側端部の近傍と見なすことができる領域には、ドット密度が高いハッチングを付与している。中央側端部の近傍は、例えば中央側端部からの距離が、ループ対向縁部から中央側端部までの長さD10(又はD20)の4分の1以下となる領域とすればよい。サブパッチ部32の中央側端部の近傍が、パッチ中心点側の端部近傍に相当する。
パッチ部30が長方形状であるため、サブパッチ部32A及びサブパッチ部32Cは、サブパッチ部32B及びサブパッチ部32Dとは異なる形状となる。具体的には、サブパッチ部32A及びサブパッチ部32Cにおけるループ対向縁部から中央側端部までの長さD10は、サブパッチ部32A及びサブパッチ部32Cにおけるループ対向縁部から中央側端部までの長さD20よりも長い。サブパッチ部32A及びサブパッチ部32Cにおけるループ対向縁部の長さは、パッチ部30の短手方向の長さに対応する値となっている。また、サブパッチ部32B及びサブパッチ部32Dにおけるループ対向縁部の長さは、パッチ部30の長手方向の長さに対応する値となっている。
各サブパッチ部32は、地板10と対向配置しているため、サブパッチ部32の面積及び離隔に応じた静電容量を地板10との間に形成する。つまり、サブパッチ部32と地板10は、サブパッチ部32の面積及び離隔に応じた静電容量を提供するコンデンサとして作用する。
各サブパッチ部32は、中央側端部の近傍において短絡素子40によって地板10と電気的に接続されている。便宜上、サブパッチ部32において短絡素子40が配置されている部分を短絡部34と記載する。短絡部34はサブパッチ部32毎に1つずつ配置されている。なお、短絡部34は図3に示すように短絡素子40とパッチ部30との電気的な接続箇所である。図1などの種々の図では便宜上、短絡部34の位置を実線丸印で示しているが、実際にはアンテナ装置100の外側からは視認されない、又は、視認されにくい構成要素である。
上記の短絡部34を形成する短絡素子40は、サブパッチ部32と地板10と電気的に接続する導電性の部材(つまり導電素子)である。短絡素子40は複数のサブパッチ部32のそれぞれに対応するように複数存在する。このような構成は、アンテナ装置100が、パッチ部30と地板10とを電気的に接続する複数の短絡素子40を備える構成に相当する。短絡素子40は、高さ方向の長さに対して相対的に径が小さい(つまり細い)円柱状の導電部材を用いて実現することができる。例えば短絡素子40は、導電性のピン(以降、ショートピン)で実現されれば良い。ここでの円柱状には針状も含まれる。
短絡素子40の一端はサブパッチ部32と接続されており、短絡部34を形成する。また、短絡素子40の他端は地板10と接続されている。なお、プリント配線板を用いてアンテナ装置100を実現する場合には、プリント配線板が備えるビアを短絡素子40として利用可能である。短絡素子40は、円柱状である必要はなく、角柱状であってもよい。また、断面形状が半円や扇型となる柱状であってもよい。短絡素子40としての導電素子の径(換言すれば太さ)によって、短絡素子40が備えるインダクタンスを調整することができる。短絡素子40の径が大きいほど、短絡素子40が提供するインダクタンスの値は小さくなる。
また、或るサブパッチ部32において短絡素子40が提供するインダクタンスは、当該サブパッチ部32のループ対向縁部の中点から短絡部34までの距離に応じて定まる。具体的には、ループ対向縁部の中点から短絡部34までの距離が大きいほど短絡素子40が提供するインダクタンスは大きくなる。換言すれば短絡部34が中央側端部に寄っているほど、短絡素子40が提供するインダクタンスは大きくなる。
加えて、短絡素子40が提供するインダクタンスが大きいほど、サブパッチ部32の共振周波数を低周波化することが可能となる。換言すれば、短絡素子40が提供するインダクタンスが大きいほど、サブパッチ部32の励振に必要なサブパッチ部32の面積を低減できる。故に、アンテナ装置100の小型化の観点からは短絡部34は、中央側端部の近傍に配置されていることが好ましい。
なお、サブパッチ部32において短絡素子40を設ける位置(つまり短絡部34の位置)は、指向性の観点から、パッチ中心点Pcとループ対向縁部の中点とを接続する直線(以降、サブパッチ中心線)上とすることが好ましい。ただし、短絡部34は必ずしもサブパッチ中心線上に配置する必要はない。サブパッチ中心線上以外の位置に配置すると、サブパッチ中心線からのずれ量に応じた指向性の偏りが生じる。指向性の偏りが所定の許容範囲内に収まる範囲においては、サブパッチ中心線からずれた位置に短絡部34を配置してもよい。
ループ部50は、ループ状の導体部材である。ループ部50は、支持部20の上面において、パッチ部30の縁部と所定の間隔Gを有するように形成される。間隔Gは、対象波長に対して十分に小さければ良く、具体的な値はシミュレーションや試験(以降、試験等)によって適宜決定されれば良い。間隔Gは、少なくとも対象波長の50分の1以下とすることが好ましい。ループ部50の幅もまた、対象波長に対して十分に小さければ良く、その具体的な値は適宜設計されればよい。
給電線路60は、ループ部50に給電するために支持部20のパッチ側面に設けられたマイクロストリップ線路である。給電線路60の一端は、同軸ケーブルの内部導体と電気的に接続されており、他端は、ループ部50と電磁結合するようにパッチ側面に形成する。給電線路60から入力された電流は、ループ部50を介して、パッチ部30に伝搬し、パッチ部30を励振させる。
なお、ループ部50とパッチ部30との間隔Gが対象波長に対して大きすぎると、ループ部50からパッチ部30の電流の流入が低減し、アンテナ装置100としての性能(例えば利得など)が劣化する。そのため、間隔Gは前述のとおり、対象波長の50分の1以下とすることが好ましい。
以降では便宜上、給電線路60においてループ部50側の端部をループ側端部と称する。ループ部50において、ループ側端部と最も近い点が給電点51として機能する。本実施形態ではより好ましい態様としてサブパッチ境界線の延長線上に給電点51が位置するように、給電線路60が配置されている。このような構成によれば給電線路60からの電流を同時に(換言すれば並列的に)複数のサブパッチ部32に流入させることができる。
なお、本実施形態ではループ部50への給電方式として、マイクロストリップ線路等を用いた電磁結合給電方式を採用しているが、これに限らない。他の態様として、給電線路60をループ部50に直接接続させた直結給電方式を採用しても良い。直結給電方式は、導電性のピンやビアを用いて実現されても良い。
以上で述べたアンテナ装置100は、例えば、車両などの移動体で用いられる。当該アンテナ装置100を車両で用いる場合には、車両の屋根部において、地板10が略水平であって、地板10からパッチ部30に向かう方向が天頂方向と略一致するように設置されればよい。
<作動について>
次に、図7及び図8を用いて上記構成の作動について説明する。まずは図7を用いてサブパッチ部32Aの作動について説明する。図7の(A)は、サブパッチ部32Aの等価回路を示している。なお、サブパッチ部32Aとサブパッチ部32Cは対称構造であるため、図7はサブパッチ部32Cの等価回路でもある。
図7に示す静電容量Cgp1はループ部50とサブパッチ32Aのループ対向縁部との間隔(換言すればギャップ)に由来する静電容量を表しており、静電容量Cs1はサブパッチ部32Aのうち、短絡素子40の外側部分と地板10とが形成する静電容量を表している。静電容量Cs1は、前述の通り、サブパッチ部32において短絡素子40の外側の面積と地板10との離隔によって決まる。
インダクタンスLaは、短絡素子40自体が提供するインダクタンスであり、短絡素子40の形状によって定まる。インダクタンスLb1は、ループ対向縁部から短絡部34までの電流経路が提供するインダクタンスを表している。従ってインダクタンスLb1は、ループ対向縁部から短絡部34までの距離D11が長いほど大きい値となる。なお、サブパッチ部32Aにおけるループ対向縁部からの短絡部34までの距離D11としては、近似的にサブパッチ部32Aにおけるループ対向縁部の中点M1から短絡部34までの距離を採用することができる。中点M1から短絡部34までの距離が、ループ対向縁部上の各点から短絡部34までの距離を代表的に表すためである。
インダクタンスLc1は、パッチ部30において短絡部34からパッチ中心点Pcまでの区間が提供するインダクタンスを表している。抵抗値Rは放射損失の効果を表している。インダクタンスLd1は、短絡部34からスリット部31までの区間が提供するインダンクタンスである。静電容量Cdは、サブパッチ部32同士の間隔(換言すればスリット部31の幅)が提供する静電容量である。
ただし、ループ部50からサブパッチ部32に流入した励振電流は、主としてループ対向縁部から短絡素子40を通って地板10に流れる経路をとる。故に、静電容量Cd1や抵抗値R、インダクタンスLd1はアンテナ動作の観点から無視することができる。換言すれば、これらの要素は共振周波数には影響しない。サブパッチ部32Aの等価回路は、図7の(B)に示すアンテナ設計上、点線で表した構成を無視して、実線で表した構成と見なすことができる。
図7の(B)に示す等価回路において、短絡素子40が提供するインダクタンスLaと、ループ対向縁部から短絡部34までの区間が提供するインダクタンスLb1とは直列接続しており、合成インダクタンスとしてLa+Lb1を提供する。また、ループ部50とサブパッチ部32との間隔Dが形成する静電容量Cgp1は大きく短絡とみなせるので、合成容量としてCs1を提供する。すなわち、インダクタンスLa+Lb1に並列接続する静電容量の総和はCs1である。故に、サブパッチ部32Aは、下記式1で定まる周波数f1において並列共振を生じさせる。
Figure 0006930441
この共振周波数f1は、サブパッチ部32Aにおけるループ対向縁部から短絡部34までの距離D11、サブパッチ部32の大きさ、地板10とパッチ部30との間隔、短絡素子40の太さ等に応じて定まる。故に、これらのパラメータを調整することにより、共振周波数f1を所望の対象周波数と略一致させることができる。つまりサブパッチ部32Aは対象周波数で並列共振し、対象周波数の電波を送受信可能となる。特に、ループ対向縁部から短絡部34までの距離D11を大きく設定すれば静電容量Cs1及びインダクタンスLb1が大きくなり、共振周波数f1を低周波化することができる。換言すれば、サブパッチ部32Aの面積を低減することができる。以上ではサブパッチ部32Aの作動について説明したが、サブパッチ部32Cも同様である。
なお、給電線路60もまた、その形状及び材質に応じた大きさのインダクタンス及び抵抗値を備える。ただし、これら給電線路60に対応する要素については、アンテナ装置100の動作原理を説明する上は省略可能であるため、図7に示す等価回路においては図示を省略している。
次に、図8を用いてサブパッチ部32Bの作動について説明する。図8の(A)はサブパッチ部32Bの等価回路を示している。なお、サブパッチ部32Bとサブパッチ部32Dは対称構造であるため、図8はサブパッチ部32Dの等価回路でもある。図8に示す静電容量Cgp2、インダクタンスLa、抵抗値Rは図7で説明した通りである。静電容量Cs2、Cd2、インダクタンスLb2、Lc2、及びLd2は、サブパッチ部32Aにおける静電容量Cs1、Cd1、インダクタンスLb1、Lc1、及びLd1に順に対応する要素である。
すなわち、静電容量Cs2はサブパッチ部32Bと地板10とが形成する静電容量を表している。静電容量Cs2は、前述の通り、サブパッチ部32Bにおいて短絡素子40の外側部分の面積と地板10との離隔によって決まる。インダクタンスLb2は、サブパッチ部32Bにおけるループ対向縁部から短絡部34までの電流経路が提供するインダクタンスを表している。インダクタンスLc2は、サブパッチ部32Bの短絡部34からパッチ中心点Pcまでの区間が提供するインダクタンスを表している。なお、サブパッチ部32Bにおけるループ対向縁部からの短絡部34までの距離D21としては、近似的にサブパッチ部32Bにおけるループ対向縁部の中点M2から短絡部34までの距離を採用することができる。中点M2から短絡部34までの距離が、ループ対向縁部上の各点から短絡部34までの距離を代表的に表すためである。
インダクタンスLd2は、サブパッチ部32Bの短絡部34からスリット部31までの距離が提供するインダンクタンスである。静電容量Cd2は、サブパッチ部32同士の間隔(換言すればスリット部31の幅)が提供する静電容量である。
サブパッチ部32Bにおいてもサブパッチ部32Aと同様に、ループ部50からサブパッチ部32に流入した励振電流は、主としてループ対向縁部から短絡素子40を通って地板10に流れる経路をとる。故に、静電容量Cd2や抵抗値R、インダクタンスLd2はアンテナ設計上、無視することができる。換言すれば、これらの要素は共振周波数には影響しない。サブパッチ部32Bの等価回路は、図8の(B)に示す構成と見なすことができる。
図8の(B)に示す等価回路において、短絡素子40が提供するインダクタンスLaと、ループ対向縁部から短絡部34までの区間が提供するインダクタンスLb2とは直列接続しており、合成インダクタンスとしてLa+Lb2を提供する。また、ループ部50とサブパッチ部32との間隔Dが形成する静電容量Cgp2は十分大きいので短絡とみなすことができ、合成容量としてCs2を提供する。すなわち、インダクタンスLa+Lb2に並列接続する静電容量の総和はCs2である。故に、サブパッチ部32Bは、下記式2で定まる周波数f2において並列共振を生じさせる。
Figure 0006930441
この共振周波数f2は、サブパッチ部32Bにおけるループ対向縁部から短絡部34までの距離D21、サブパッチ部32の大きさ、地板10とパッチ部30との間隔、短絡素子40の太さ等に応じて定まる。故に、これらのパラメータを調整することにより、共振周波数f2を所望の対象周波数と略一致させることができる。つまりサブパッチ部32Bは対象周波数で並列共振し、対象周波数の電波を送受信可能となる。特に、ループ対向縁部から短絡部34までの距離D21を大きく設定すればインダクタンスLb2が大きくなり、共振周波数f2を低周波化することができる。換言すれば、サブパッチ部32Bの面積を低減することができる。以上ではサブパッチ部32Bの作動について説明したがサブパッチ部32Dについても同様である。
ところで、共振周波数f1及び共振周波数f2は対象周波数と必ずしも完全に一致させる必要はない。図9に示すように共振周波数f1と共振周波数f2を対象周波数fから微小量Δf1,Δf2ずつ互いに逆方向にずらした値に設定することによって、サブパッチ部32A、32Cの動作帯域と、サブパッチ部32B、32Dの動作帯域が組み合わさり、アンテナ装置100全体としての動作帯域を広げることができる。すなわち、広帯域性を提供しつつ、動作周波数の低周波化や、小型化を実現することができる。ここで、実際の帯域幅は、上記のf1およびf2の相対関係ではなく、パッチ全体の総容量と、複数のビアが作る総インダクタンスで決まる基本共振モードの周波数(一様な界分布)と、パッチアンテナとして動作する1次共振モードの周波数との相対関係で、帯域が調整できると考えられる。1次共振モードの動作周波数はアンテナ装置100の動作帯域における総合特性を考慮して適宜調整されれば良い。
なお、図9はアンテナ装置100の周波数毎の電圧定在波比(VSWR:Voltage Standing Wave Ratio)の概念図である。一点鎖線がサブパッチ部32Aの動作特性を概念的に表しており、二点鎖線がサブパッチ部32Bの動作特性を概念的に表している。実線は、アンテナ装置100としての特性を表している。当技術分野では一般的に、VSWRが3以下となる範囲が実用可能な周波数(換言すれば動作帯域)と見なされる事が多い。なお、図9では、サブパッチ部32Aの共振周波数f1がサブパッチ部32Bの共振周波数f2よりも低い場合を例示しているが、必ずしもこれに限らない。パッチ部30の形状等に応じてこれらの高低関係は入れ替わりうる。
<実施形態のまとめ>
上記の構成において短絡部34は、サブパッチ部32の中でもパッチ中心点Pc寄りの位置に設けられているため、ループ対向部から短絡部34までの距離は相対的に大きい値となる。また、発明者らが種々のシミュレーションを含む検討を重ねた結果によれば、ループ対向縁部から短絡部34までの距離が大きいほど、電流経路が長くなり、容量およびインダクタンスが大きくなる。
その結果、同一寸法のサブパッチ部32において短絡部34をループ対向縁部寄りに配置した構成よりも、動作周波数を低い値に設定することができる。また、所定の周波数で動作させることを目的とする場合には、短絡部34をループ対向縁部寄りに配置した構成よりも小型化を図ることができる。
なお、サブパッチ部32においてパッチ中心点Pc寄りとなる領域とは、サブパッチ部32においてパッチ中心点Pcとの距離が、ループ対向縁部との距離よりも小さくなる領域に相当する。すなわち、サブパッチ部32においてパッチ中心点Pc寄りに短絡部34を設けた構成は、サブパッチ部32においてパッチ中心点Pcとの距離が、ループ対向縁部との距離よりも小さくなる領域に短絡部34を設けた構成に相当する。
<参考例>
図10は、他の態様として、対象周波を2.9GHzに設定した上で、パッチ部30を正方形状とした構成を示している。図11は、当該参考例としての構成でのVSWRの実測結果を示すグラフである。
図10、図11に示す通り、正方形状のパッチ部30においてスリット部31を点対象配置した構成によれば、所定の周波数で動作する。また、パッチ部30を上述した実施形態と同様に長方形状に設定した構成や、第2実施形態として後述するようにパッチ部30を平行四辺形状に設定した構成に於いても同様に、スリット部31を点対象配置し、各部の位置を調整することにより動作周波数を所望の周波数に設定できる。
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、以降で述べる種々の変形例も本開示の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。例えば下記の種々の変形例は、技術的な矛盾が生じない範囲において適宜組み合わせて実施することができる。
なお、前述の実施形態で述べた部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。また、構成の一部のみに言及している場合、他の部分については先に説明した実施形態の構成を適用することができる。
[第2実施形態]
上述した第1実施形態ではパッチ部30を長方形状とする態様を開示したが、これに限らない。パッチ部30は平行四辺形であっても良い。そのような態様を第2実施形態として以下に開示する。
本実施形態のパッチ部30は図12に示す通り、平行四辺形状に形成されている。ここでの平行四辺形とは、2組の対辺がそれぞれ平行であって、かつ、1組の対角が90度未満に設定されている四角形を指すものとする。ここでの平行四辺形には、正方形や長方形を除く菱形も含まれうる。つまり、第2実施形態のパッチ部30は、正方形や長方形を除く平行四辺形状に形成されている。このようなパッチ部30は、1組の鈍角な対角と、1組の鋭角な対角とを備える。便宜上、平行四辺形において鈍角に設定されている角部のことを鈍角部、鋭角に設定されている角部を鋭角部とそれぞれ称する。また、鈍角な対角のことを鈍対角、鋭角な対角を鋭対角とそれぞれ称する。
なお、パッチ部30の概形としては、上述した定義に基づく平行四辺形のなかでも、1組の対角が30度以上80度未満に設定されている平行四辺形であることが好ましい。1組の対角が30度未満に設定された平行四辺形(換言すれば傾斜度合いが強い平行四辺形)では、サブパッチ部32として機能しにくくなるためである。また、そのような知見から、パッチ部30の1組の対角は、45度以上80度未満に設定されていることがより好ましい。
パッチ部30には、第1実施形態と同様に、パッチ部30の縁部の各頂点(つまり角部)からパッチ中心点Pcに向かって、所定の長さを有する直線状の切り欠きであるスリット部31A〜Dが形成されている。なお、スリット部31Aとスリット部31Cは、鈍角部からパッチ中心点Pcに向かって設けられているスリット部31である。スリット部31Bとスリット部31Dは、鋭角部からパッチ中心点Pcに向かって設けられているスリット部31である。上記の構成もまた、複数のスリット部31を、パッチ中心点Pcに対して点対称な位置に他のスリット部31が存在するように配置した構成に相当する。
これら4つのスリット部31によってパッチ部30は、電気的に4つのサブパッチ部32に分割される。ただし、各スリット部31は、複数のサブパッチ部32がパッチ中心点Pc付近で電気的に接続するように設けられている。平行四辺形において鈍角部を結ぶ対角線(以降、鈍対角線)は、鋭角な角部を結ぶ対角(以降、鋭対角線)よりも短いため、スリット部31A及びスリット部31Cは、スリット部31B及びスリット部31Dよりも短く設定される。
例えばスリット部31A及びスリット部31Cの長さ(以降、第1スリット長)は、鈍対角線の長さの半分である半鈍対角線長よりも短い値に設定されている。半鈍対角線長は、別の観点によれば、鈍角部からパッチ中心点Pcまでの直線距離に相当する。例えばスリット長は、半鈍対角線長を0.9倍した値に設定されている。第1スリット長は、半鈍対角線長の半分よりも大きい値に設定されている。
また、スリット部31B及びスリット部31Dの長さ(以降、第2スリット長)は、鋭対角線の長さの半分である半鋭対角線長よりも短い値に設定されている。半鋭対角線長は、別の観点によれば、鋭角部からパッチ中心点Pcまでの直線距離に相当する。例えばスリット長は、半鋭対角線長を0.9倍した値に設定されている。第2スリット長は、半鋭対角線長の半分よりも大きい値に設定されている。
もちろん、第1、第2スリット長の具体的な長さは上記に限らない。例えば第1スリット長は、半鈍対角線長を0.8倍した値や、0.7倍した値に設定されていても良い。第2スリット長も同様である。第1、第2スリット長は、スリット部31のパッチ中心点Pc側の端部からパッチ中心点Pcまでの距離が、ゼロよりも大きい所定の値(以降、残余長)よりも大きくなるように設定されていれば良い。残余長は、例えば対象周波数の電波の波長(以降、対象波長)の100分の1以上とすることが好ましい。
第1、第2スリット長を上記のように設定することにより、複数のサブパッチ部32はパッチ中心点Pc付近で電気的に接続する。これにより、パッチ部30は、複数のスリット部31によって分割されてなる4つのサブパッチ部32A〜Dと、これらのサブパッチ部32と接続する中央部33とを備える。なお、本実施形態では中央部33がパッチ部30の概形と相似な平行四辺形状となるように各スリット部31の長さを設定しているが、これに限らない。各スリット部31の長さは中央部33が長方形状となるように設定されていても良い。
本実施形態においても個々のスリット部31がパッチ中心点Pcを対称中心として点対称に配置されているため、複数のサブパッチ部32もまた、パッチ中心点Pcに対して点対称な位置に他のサブパッチ部32が存在する配置態様となる。すなわち、上記の構成は、互いに点対称な関係にあるサブパッチ部32が2組存在するように配置した構成に相当する。具体的には、サブパッチ部32Aとサブパッチ部32Cがパッチ中心点Pcを対称中心として互いに点対称な関係にあり、サブパッチ部32Bとサブパッチ部32Dがパッチ中心点Pcを対称中心として互いに点対称な関係にある。
図13は、サブパッチ部32A付近を拡大して示す概念図であり、図14はサブパッチ部32B付近を拡大して示す概念図である。図13においてはサブパッチ部32Aとする領域を明示するために、サブパッチ部32Aに相当する領域にドットパターンのハッチングを施している。同様に、図14においてはサブパッチ部32Bとする領域を明示するために、サブパッチ部32Bに相当する領域にドットパターンのハッチングを施している。特に、各サブパッチ部32において中央側端部の近傍と見なすことができる領域には、ドット密度が高いハッチングを付与している。中央側端部の近傍は、例えば中央側端部からの距離が、ループ対向縁部から中央側端部までの長さD10(又はD20)の4分の1以下となる領域とすればよい。
上記の構成によっても、前述の第1実施形態と同様の動作原理によって各サブパッチ部32が並列共振する。故に前述の第1実施形態と同様の効果を奏する。加えて、パッチ部30を平行四辺形にすることで、搭載スペースのY軸方向の長さがX軸方向に比べて短いといった条件下において、ループ対応縁部−短絡部34間の距離を長く設定でき、共振周波数を低周波化できる。また、サブパッチ部32Aとサブパッチ部32Bとの共振周波数の差を低減しやすいといった、設計上の利点を有する。
[変形例1]
上述した第1、第2実施形態では、パッチ部30の対角線に沿ってスリット部31を形成することによって、略三角形状のサブパッチ部32を形成する構成を開示したが、これに限らない。例えば図15に示すように、平行四辺形上のパッチ部30に対してパッチ中心点Pcを通る各辺に平行な線に沿ってスリット部31を形成してもよい。各サブパッチ部32が中央部33において電気的に接続している等の構成は前述の第2実施形態と同様である。
また、変形例1の構成におけるループ対向縁部の中点とは、L字型のループ対向縁部の両端の中間点とすればよい。ループ対向縁部の端部とは、スリット部31の端部に対応する。図15では平行四辺形状のパッチ部30が備える各辺の中点からパッチ中心点Pcに向かってスリット部31を形成した態様を示しているがこれに限らない。パッチ部30の平面形状を長方形とする第1実施形態において、各辺の中点からパッチ中心点Pcに向かってスリット部31を形成してもよい。
[変形例2]
サブパッチ部32の数は4つに限定されない。図16に示すようにパッチ中心点Pcを対称中心とする2つのスリット部31を合計4組設け、8つのサブパッチ部32を形成しても良い。また、サブパッチ部32の数は12個であっても良い。4の倍数とすることができる。図16ではパッチ部30の平面形状を平行四辺形としているが、長方形であっても良く、さらに六角形などの多角形でも、さらに円形を含む楕円形であっても良い。
100 アンテナ装置、10 地板、20 支持部、30 パッチ部、31 スリット部、32 サブパッチ部、33 中央部、34 短絡部、40 短絡素子、50 ループ部、60 給電線路、Pc パッチ中心点

Claims (6)

  1. 平板状の導体部材である地板(10)と、
    前記地板と所定の間隔をおいて対向するように配置されている、長方形状又は平行四辺形状の平板状の導体部材であるパッチ部(30)と、
    前記パッチ部の周りに前記パッチ部の縁部と所定の間隔を有するように配置されているループ状の導体部材であるループ部(50)と、を備え、
    給電線と電気的に接続する給電点は、前記ループ部に設けられており、
    前記パッチ部は、前記縁部から前記パッチ部の中心とする点であるパッチ中心点に向かう方向に形成された複数の直線状のスリット部(31)によって分割されてなる複数のサブパッチ部(32)を備え、
    複数の前記スリット部は、前記パッチ中心点に対して点対称な位置に他の前記スリット部が存在するように形成されており、
    複数の前記サブパッチ部のそれぞれ、前記パッチ部の中央部で電気的に接続されており、
    複数の前記サブパッチ部のそれぞれには、導電素子(40)を介して前記地板と電気的に接続されている短絡部(34)が設けられており、
    前記短絡部は、前記パッチ中心点からの距離が、前記サブパッチ部において前記ループ部と対向する縁部であるループ対向縁部から前記パッチ中心点までの距離の4分の1以下となる領域に配置されているアンテナ装置。
  2. 請求項1に記載のアンテナ装置であって、
    前記短絡部は、前記サブパッチ部において前記パッチ中心点側の端部近傍に配置されているアンテナ装置。
  3. 請求項1又は2に記載のアンテナ装置であって、
    前記パッチ部は長方形状であって、
    前記スリット部は長方形状に形成されている前記パッチ部の角部から前記パッチ部の対角線に沿って設けられているアンテナ装置。
  4. 請求項1又は2に記載のアンテナ装置であって、
    前記パッチ部は平行四辺形であって、
    前記スリット部は平行四辺形に形成されている前記パッチ部の角部から前記パッチ部の対角線に沿って配置されているアンテナ装置。
  5. 請求項4に記載のアンテナ装置であって、
    前記パッチ部は、1組の対角が30度以上80度未満に設定されている平行四辺形状に形成されているアンテナ装置。
  6. 請求項3から5の何れか1項に記載のアンテナ装置であって、
    前記スリット部の長さは、前記パッチ部の角部から前記パッチ中心点までの距離の半分以上に設定されているアンテナ装置。
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