以下、本開示の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。そして、複数の実施形態及び変形例に記述された構成同士の明示されていない組み合わせも、以下の説明によって開示されているものとする。
(第一実施形態)
本開示の第一実施形態による燃料噴射装置10は、図1に示す燃料供給システム1に用いられている。燃料噴射装置10は、内燃機関であるディーゼルエンジン(以下、「エンジン2」)の各燃焼室2bに、燃料タンク4に貯留された燃料を供給する。燃料供給システム1は、フィードポンプ5、高圧燃料ポンプ6、コモンレール3、及び制御装置70等を、燃料噴射装置10と共に備えている。
フィードポンプ5は、例えばトロコイド式の電動ポンプである。フィードポンプ5は、高圧燃料ポンプ6に内蔵されている。フィードポンプ5は、燃料タンク4に貯留された燃料としての軽油を、高圧燃料ポンプ6に圧送する。フィードポンプ5は、高圧燃料ポンプ6と別体で、例えば燃料タンク4の内部に配置される構成であってもよい。
高圧燃料ポンプ6は、例えばプランジャ式のポンプである。高圧燃料ポンプ6は、エンジン2の出力軸によって駆動される。高圧燃料ポンプ6は、燃料配管6aによってコモンレール3と接続されている。高圧燃料ポンプ6は、フィードポンプ5により供給された燃料をさらに昇圧し、高圧燃料としてコモンレール3に供給する。
コモンレール3は、高圧燃料配管3bを介して複数の燃料噴射装置10と接続されている。コモンレール3は、余剰燃料配管8aを介して燃料タンク4と接続されている。コモンレール3は、高圧燃料ポンプ6から供給される高圧燃料を一時的に蓄え、圧力を保持したまま各燃料噴射装置10に分配する。コモンレール3には、圧力センサ3a及び減圧弁8が備えられている。圧力センサ3aはコモンレール3に蓄えられた燃料圧力を検出する。減圧弁8は、圧力センサ3aによる検出値が目標圧力よりも高い場合に、余剰になった燃料を余剰燃料配管8aへ排出する。
制御装置70は、図1及び図2に示すECU(Electronic Control Unit)70a及びEDU(Electronic Driver Unit)70bを含む電子制御ユニットである。制御装置70は、燃料噴射装置10と共に燃料噴射システム90を構成する。制御装置70は、各燃料噴射装置10と電気的に接続されている。制御装置70は、エンジン2の稼動状態に応じて、各燃料噴射装置10による燃料の噴射を制御する。
ECU70aは、マイクロコンピュータ又はマイクロコントローラを主体に構成された演算回路を備えている。演算回路には、プロセッサ、RAM、及び書き換え可能な不揮発性のメモリ装置が含まれている。EDU70bは、ECU70aから入力される指令信号に基づき、燃料噴射装置10の駆動部30に駆動電圧を印加する。
燃料噴射装置10は、燃焼室2bを形成するヘッド部材2aの挿入孔に挿入された状態で、ヘッド部材2aに取り付けられている。燃料噴射装置10は、高圧燃料配管3bを介して供給される高圧燃料を、噴孔23から燃焼室2bへ向けて直接的に噴射する。燃料噴射装置10は、噴孔23からの燃料の噴射を制御する弁構造を備えている。燃料噴射装置10は、高圧燃料の一部を、噴孔23の開閉に使用する。燃料噴射装置10に供給された燃料の一部は、戻り配管8b及び余剰燃料配管8aを通じて燃料タンク4へ戻される。
燃料噴射装置10は、図2及び図3に示すように、弁ボデー20、ノズルニードル50、ニードルシリンダ60、駆動部30、並びに制御弁体110及びピストン120を有する圧力制御機構100を備えている。
弁ボデー20は、インジェクターボデー部材20a、流路形成部材20b、バルブボデー部材20c、ノズルボデー部材20d、リテーニングナット20e等の複数の金属部材を組み合わせることによって構成されている。弁ボデー20の内部には、高圧燃料通路21、低圧燃料通路22、高圧室21a、弁室25、及び制御室27が設けられている。加えて弁ボデー20には噴孔23が形成されている。
高圧燃料通路21は、インジェクターボデー部材20a、流路形成部材20b、及びバルブボデー部材20cに形成されている。高圧燃料通路21は、高圧燃料配管3b(図1参照)と接続されている。高圧燃料通路21は、高圧燃料配管3bを通じてコモンレール3(図1参照)から供給される高圧燃料を、高圧室21aに供給する。
低圧燃料通路22は、流路形成部材20bに形成されている。低圧燃料通路22は、燃料噴射装置10に供給された燃料を戻り配管8b(図1参照)に流出させる通路である。低圧燃料通路22は、流路形成部材20bの中央を軸方向に貫通するピン収容孔20fと接続されており、ピン収容孔20fに対して傾斜した姿勢で延伸している。ピン収容孔20fに臨む低圧燃料通路22の入口部分には、アウトオリフィス22aが形成されている。アウトオリフィス22aは、ピン収容孔20fから低圧燃料通路22に流出する燃料の流量を制限する。アウトオリフィス22aの通過によって低圧燃料通路22に供給される燃料は、高圧燃料通路21を流通する高圧燃料よりも低圧となる。
高圧室21aは、ノズルボデー部材20dに円柱状に形成された空間である。高圧室21aには、ノズルニードル50及びニードルシリンダ60が収容されている。高圧室21aは、高圧燃料通路21と接続されている。高圧室21aは、高圧燃料通路21を通じて供給される高圧燃料で満たされている。高圧室21aは、高圧燃料を噴孔23まで流通させる。尚、高圧室21aの燃料圧力が「第一圧力」であり、第一圧力よりも低圧な低圧燃料通路22の燃料圧力が「第二圧力」である。
弁室25には、高圧燃料が充填されている。弁室25は、高圧室21a及び低圧燃料通路22に接続可能である。弁室25は、駆動部30と制御室27との間に位置している。弁室25は、制御弁体110によって上下に区分けされている。弁室25のうちで、圧力制御機構100及び流路形成部材20bの間に形成されている空間が、上弁室部25bである。弁室25のうちで、圧力制御機構100の内部に区画されている空間が、下弁室部25aである。上弁室部25b及び下弁室部25aは、互いに接続されている。
制御室27には、弁室25を通じて高圧燃料が供給される。制御室27は、弁室25に接続されている。制御室27は、弁室25を介して高圧室21a及び低圧燃料通路22にそれぞれ接続可能である。制御室27には、高圧燃料が充填されている。制御室27は、ピストン120、ノズルニードル50、及びニードルシリンダ60によって区画された扁平な円柱状の空間である。制御室27は、ノズルニードル50を挟んで噴孔23の反対側に位置している。
噴孔23は、ヘッド部材2a(図1参照)へ挿入される弁ボデー20において、挿入方向の先端部に形成されている。噴孔23は、燃焼室2b(図1参照)に露出している。弁ボデー20の先端部は、円錐状又は半球状に形成されている。噴孔23は、弁ボデー20の内側から外側に向けて放射状に複数設けられている。各噴孔23は、燃焼室2bへ向けて高圧燃料を噴射する。高圧燃料は、噴孔23を通過することによって霧化され、空気と混合し易い状態となる。
ノズルニードル50は、金属材料により円柱形に形成されている。ノズルニードル50の噴孔23側の先端は円錐形に形成されている。ノズルニードル50は、高圧室21aに収容されており、高圧室21aの高圧燃料から噴孔23を開く方向(以下、「開弁方向」)の力を受ける。ノズルニードル50には、ニードル受圧面51、スプリングシート部53、及びニードル摺動面54が形成されている。
ニードル受圧面51は、制御室27に臨むノズルニードル50の円状の端面である。ニードル受圧面51は、制御室27に充填された高圧燃料から、噴孔23を閉じる方向(以下、「閉弁方向」)の力を受ける。ノズルニードル50は、制御室27の燃料圧力によって閉弁方向に押圧されている。ノズルニードル50は、制御室27の燃料圧力の変動により、軸方向に沿って弁ボデー20に対し相対変位し、噴孔23の開閉を行う。
スプリングシート部53は、ノズルニードル50に鍔状に設けられている。スプリングシート部53及びニードルシリンダ60の間には、ニードルスプリング52が軸方向に押し縮められた状態で設置されている。ニードルスプリング52は、円筒螺旋状に形成されたコイルスプリングである。ニードルスプリング52は、閉弁方向への付勢力をスプリングシート部53に印加している。
ニードル摺動面54は、ノズルニードル50の外周壁面のうちで、ニードルシリンダ60に内嵌される部分である。ニードル摺動面54は、ニードルシリンダ60に対し摺動可能に支持されている。ニードル摺動面54は、ニードルシリンダ60の内周壁面との間で、制御室27及び高圧室21aの間の油密を形成している。
以上のノズルニードル50は、制御室27の減圧により、高圧室21aの燃料に押し上げられ、開弁方向へ向けて変位する。その結果、高圧室21aに充填された高圧燃料は、噴孔23から燃焼室2b(図1参照)へ向けて噴射される。一方、制御室27の圧力回復によれば、ノズルニードル50は閉弁方向に押し下げられる。その結果、噴孔23からの燃料噴射は、停止される。尚、開弁方向及び閉弁方向は、共にノズルニードル50の変位方向である。
ニードルシリンダ60は、金属材料等により円筒状に形成されている。ニードルシリンダ60は、ニードル摺動面54に外嵌される。ニードルシリンダ60は、ニードル摺動面54との間で油密を形成している。ニードルシリンダ60は、ニードルスプリング52の付勢力により、ピストン120の下端面に押し当てられている。ニードルシリンダ60は、ニードルスプリング52の付勢力をピストン120に伝達する。
駆動部30は、圧力制御機構100を駆動する。駆動部30は、ピエゾアクチュエータ31及び駆動伝達ピン32を有している。ピエゾアクチュエータ31は、ピエゾ素子によって構成された層と薄い電極層とが交互に積まれた積層体である。ピエゾアクチュエータ31には、指令信号に基づいて規定された駆動電圧がEDU70bによって印加される。ピエゾアクチュエータ31は、EDU70bによって投入される駆動エネルギの充電により、ピエゾ素子の特性である逆電圧効果によって伸長する。ピエゾアクチュエータ31は、投入された駆動エネルギの放電により、縮んだ状態となる。以上のように、ピエゾアクチュエータ31は、ノズルニードル50の変位方向に沿った伸縮作動を行う。
駆動伝達ピン32は、ピエゾアクチュエータ31の伸長作動を圧力制御機構100に伝達する押圧軸部である。駆動伝達ピン32は、流路形成部材20bのピン収容孔20fに収容されている。駆動伝達ピン32の先端部は、制御弁体110に突き当てられる。駆動部30は、電荷の蓄積によって伸長したピエゾアクチュエータ31により、駆動伝達ピン32を弁室25に突き出す方向へ変位させる。一方、駆動部30は、電荷の放出によるピエゾアクチュエータ31の収縮により、駆動伝達ピン32をピン収容孔20fへと引き戻す。
圧力制御機構100は、バルブボデー部材20cに形成された機構収容孔20gに収容されている。圧力制御機構100は、全体として円柱状を呈しており、バルブボデー部材20cの内周壁面に内嵌されている。機構収容孔20gは、円柱状を呈するバルブボデー部材20cの径方向の中央に形成され、バルブボデー部材20cを軸方向に貫通する貫通孔である。機構収容孔20gは、円柱状の収容空間を形成している。
圧力制御機構100は、駆動部30によって閉弁方向に押圧されることにより、制御室27の燃料圧力を増減させる機構である。圧力制御機構100は、駆動伝達ピン32の変位により、制御室27に燃料を流入させる流入状態と制御室27からの燃料を流出させる流出状態とを切り替える三方弁の機能を有している。加えて圧力制御機構100は、駆動伝達ピン32の変位を、制御室27の燃料を用いて方向を反転させつつ、ノズルニードル50に伝達する駆動伝達部材の機能を有している。
圧力制御機構100は、制御弁体110、ピストン120、及びバルブスプリング140等によって構成されている。
制御弁体110は、全体として円柱状を呈しており、弁室25に収容されている。制御弁体110は、ピエゾアクチュエータ31が縮んだ状態で、制御室27から低圧燃料通路22への燃料流出を停止させる。制御弁体110は、ピエゾアクチュエータ31の伸長作動による変位で制御室27から低圧燃料通路22への燃料流出を可能にする。制御弁体110は、金属材料によって形成された閉弁部材111及び伝達部材113等を組み合わせてなる。
閉弁部材111は、弁室25に臨むピン収容孔20fの流出開口26を開閉する部材である。閉弁部材111は、弁室25のうちで上弁室部25bに配置されている。閉弁部材111は、閉塞部112a及び球状面部112bを有している。
閉塞部112aは、流出開口26よりも直径の大きい円形の平面状に形成されている。閉塞部112aは、流出開口26の周囲を円環状に囲む第一シート面部28と対向している。閉塞部112aの中央には、駆動伝達ピン32が当接している。駆動伝達ピン32を通じて閉弁部材111にピエゾアクチュエータ31の伸長作動が伝達されることで、閉塞部112aは、第一シート面部28から離座する。その結果、流出開口26が開状態となる。一方、ピエゾアクチュエータ31が縮んだ状態で、閉塞部112aは、第一シート面部28に着座している。その結果、流出開口26が閉じられる。球状面部112bは、閉塞部112aの外縁と連続した部分球面状に形成されている。
伝達部材113は、大径部113a及び小径部113bを有する二段円柱状に形成されている。小径部113bは、大径部113aに対し、後述するメインピストン部材120a側に位置している。伝達部材113には、弁体摺動面114、接触部115、及び弁連通路117が形成されている。
弁体摺動面114は、大径部113aの外周壁面である。弁体摺動面114は、円筒面状に形成されている。弁体摺動面114は、後述するサブピストン部材130の内周壁面に内嵌されている。弁体摺動面114は、サブピストン部材130に対して摺動可能である。
接触部115は、軸方向にてバルブボデー部材20cと対向する伝達部材113の上端面に設けられた凹部である。接触部115は、上端面の径方向の中央に位置しており、閉弁部材111を収容している。接触部115は、凹球面状に形成されており、球状面部112bに面接触している。接触部115及び球状面部112bの間の摺動により、伝達部材113は、閉弁部材111に対する相対的な傾きを許容される。
弁連通路117は、伝達部材113を軸方向に沿って貫通する貫通孔によって形成されている。弁連通路117は、接触部115の外周側に配置されている。弁連通路117は、下弁室部25aと上弁室部25bとを連通する燃料通路である。弁連通路117は、制御弁体110の位置に係らず、下弁室部25a及び上弁室部25bの間を常に連通している。
ピストン120は、バルブボデー部材20cの内周壁面に摺動可能に支持されている。ピストン120は、ノズルニードル50の変位方向に沿って変位可能である。ピストン120は、ピエゾアクチュエータ31が縮んだ状態で、制御弁体110との間に変位方向の隙間GPを形成している。隙間GPの大きさは、例えば10〜30μm程度である。隙間GPは、ピエゾアクチュエータ31の伸長作動に伴う制御弁体110の閉弁方向への変位によって消失する。ピストン120は、ピエゾアクチュエータ31の伸長作動によって変位した制御弁体110と当接する。ピストン120は、制御弁体110から伝達される力によって閉弁方向に変位することで、上弁室部25bの容積を増加させる。その結果、ピストン120は、制御室27に減圧を生じさせる。ピストン120は、金属材料によって円柱状に形成されたメインピストン部材120aと、金属材料によって円筒状に形成されたサブピストン部材130等とを組み合わせてなる。
メインピストン部材120aは、サブピストン部材130及びニードルシリンダ60の間に位置している。メインピストン部材120aの両端面のうちで制御弁体110に対向する上端面には、サブピストン部材130及びバルブスプリング140が載置されている。メインピストン部材120aの下端面は、制御室27及び高圧室21aに臨んでいる。メインピストン部材120aには、流入流路122、ピストン連通路127、ピストン摺動面124、及び第二シート面部128が形成されている。
流入流路122は、メインピストン部材120aの下端面の外縁部分から、上端面の中央へ向けて延伸する貫通孔によって形成されている。流入流路122は、高圧室21aと弁室25との連通を形成している。弁室25に臨む流入流路122の流入開口122aは、上端面の中央に開口している。流入開口122aは、高圧室21aから下弁室部25aに燃料を流入させる。流入開口122aは、メインピストン部材120aへの制御弁体110の当接によって閉じられる。流入開口122aの閉塞によれば、高圧室21aと弁室25との接続が遮断される。流入流路122には、インオリフィス123が形成されている。インオリフィス123は、流入開口122aが開状態の場合にて、高圧室21aから弁室25に流入する燃料の流量を制限する。
ピストン連通路127は、サブピストン部材130を軸方向に沿って貫通する貫通孔によって形成されている。ピストン連通路127は、サブピストン部材130の中心から外れた位置に設けられている。ピストン連通路127は、制御室27と下弁室部25aとを連通する燃料通路である。ピストン連通路127は、制御弁体110の位置に係らず、制御室27及び下弁室部25aの間を常に連通している。ピストン連通路127及び弁連通路117により、制御室27は、上弁室部25bと常に連通されている。
ピストン摺動面124は、メインピストン部材120aの外周壁面である。ピストン摺動面124は、円筒面状に形成されている。ピストン摺動面124は、バルブボデー部材20cの内周壁面に内嵌されている。ピストン摺動面124は、バルブボデー部材20cに対して摺動可能である。
第二シート面部128は、軸方向にて制御弁体110の下端面と対向するメインピストン部材120aの上端面に設けられている。第二シート面部128は、平坦な平面状に形成されている。第二シート面部128は、流入開口122aを囲む円環状である。ピエゾアクチュエータ31が縮んだ状態にて、第二シート面部128と制御弁体110の下端面との間には、上述の隙間GPが形成される。制御弁体110のピストン120への当接により、第二シート面部128は、制御弁体110の下端面との間で油密を形成する。
サブピストン部材130は、メインピストン部材120aとバルブボデー部材20cとの間に、メインピストン部材120aと同軸配置されている。サブピストン部材130の外径は、メインピストン部材120aの外径と実質同一である。サブピストン部材130には、ピストン受圧面131及び円筒壁部132が形成されている。
ピストン受圧面131は、軸方向にて流路形成部材20bと対向するサブピストン部材130の上端面である。ピストン受圧面131は、円環状に形成されている。ノズルニードル50の変位方向に沿って見たピストン受圧面131の投影面積は、当該変位方向に沿って見たニードル受圧面51の投影面積よりも大きい。ピストン受圧面131は、ピエゾアクチュエータ31が縮んだ状態でニードルスプリング52の付勢力によって流路形成部材20bの下端面に押し当てられている。ピストン受圧面131は、制御弁体110及びピストン120の閉弁方向への変位によって流路形成部材20bの下端面から離間し、上弁室部25bの容積を拡大させる。一方で、ピストン120の閉弁方向への変位によれば、制御室27の容積は減少する。上弁室部25bの容積の増加分は、制御室27の容積の減少分よりも大きくなる。以上により、上弁室部25bの容積増加によって、制御室27の減圧が生じる。
円筒壁部132は、制御弁体110の大径部113aを軸方向に変位可能に支持し、且つ、バルブボデー部材20cの内周壁面によって変位可能に支持されている。円筒壁部132の軸方向の長さは、伝達部材113の軸方向の長さよりも、隙間GPの間隔分だけ、長くされている。円筒壁部132及び小径部113bの間には、円筒状の下弁室部25aが形成されている。
バルブスプリング140は、円筒螺旋状に形成されたコイルスプリングである。バルブスプリング140は、軸方向に押し縮められた状態で、大径部113aとメインピストン部材120aとの間に配置されている。バルブスプリング140は、下弁室部25aに収容されており、小径部113bの外周側に位置している。バルブスプリング140は、流出開口26へ向けて制御弁体110を付勢している。
ここまで説明した燃料噴射装置10は、低速開弁モードと高速開弁モードとを切り替え可能である。以下、各開弁モードにおける燃料噴射装置10の詳細を、圧力制御機構100の作動と共に、図3〜図6に基づき、図2を参照しつつ説明する。
図3には、ピエゾアクチュエータ31の無通電時、即ち、ピエゾアクチュエータ31の縮んだ状態が示されている。この状態における制御弁体110は、初期位置として、閉塞部112aを第一シート面部28に着座させている。ピストン120は、初期位置として、ピストン受圧面131を流路形成部材20bの下端面に当接させている。ピエゾアクチュエータ31が縮んだ状態では、低圧燃料通路22と弁室25との接続が遮断されている。
一方、制御弁体110の下端面は、第二シート面部128からの離座しており、第二シート面部128との間に微小な隙間GPを形成している。こうした制御弁体110の初期位置により、弁室25と高圧室21aとが連通状態となる。故に、制御室27は、弁室25を介して高圧室21aと接続される。制御室27の燃料圧力は、高圧室21aの燃料圧力と実質同一となる。以上の結果、ノズルニードル50は、制御室27の燃料から受ける油圧力により、噴孔23の閉弁状態を維持する。
図4に示す低速開弁モードでは、ピエゾアクチュエータ31に第一駆動エネルギが投入される。低速開弁モードにおける圧力制御機構100は、油圧サーボアクチュエータとして機能し、高圧燃料の油圧を利用したノズルニードル50の開閉弁を行う。尚、第一駆動エネルギは、制御弁体110を変位させる一方で、ピストン120の変位を実質的に生じさせない駆動エネルギである。
詳記すると、低速開弁モードにおける駆動部30は、ピエゾアクチュエータ31の伸長作動により、駆動伝達ピン32によって制御弁体110を押し下げる。制御弁体110の変位に伴う流出開口26の開弁により、上弁室部25bは、ピン収容孔20fを介して、低圧燃料通路22と連通する。制御室27及び弁室25の間がピストン連通路127によって互いに接続されているため、流出開口26の開弁によれば、制御室27から低圧燃料通路22への燃料流出が可能となる。
燃料流出に伴って制御室27に減圧が生じると、ニードル受圧面51に作用する閉弁方向の油圧力は減少する。そして、閉弁方向の油圧力が開弁方向の油圧力を下回ることにより、ノズルニードル50は、開弁方向への変位を開始する。以上により、噴孔23が開弁状態となる。
ノズルニードル50の上昇に伴う制御室27の容積減少によれば、燃料流出によって減少した制御室27の燃料圧力が復帰する。故に、燃料圧力の復帰以降、ノズルニードル50は、アウトオリフィス22aを流通する燃料の流出量に応じて、実質的に一定の速度で開弁方向へのリフトを継続する。
また低速閉弁モードにおける駆動部30は、制御弁体110の下端面を第二シート面部128に押し付けて、流入開口122aを閉じる。その結果、高圧室21aと弁室25との接続が遮断される。故に、高圧室21aから低圧燃料通路22への燃料リークが抑制される。尚、高圧室21aと弁室25との接続遮断によれば、高圧室21aと制御室27との接続も遮断状態となる。
図5に示す高速開弁モードでは、ピエゾアクチュエータ31に第二駆動エネルギが投入される。第二駆動エネルギは、第一駆動エネルギよりも大きな駆動エネルギである。高速開弁モードにおける圧力制御機構100は、燃料流出に伴う制御室27の減圧によって得られる油圧力をアシスト力として利用しつつ、ピエゾアクチュエータ31の伸長作動の伝達により、ノズルニードル50を変位させる。高速開弁モードにおける駆動部30は、ノズルニードル50を直接的に駆動する。油圧力の利用によれば、ノズルニードル50を駆動する駆動部30の負荷の軽減が図られる。
詳記すると、高速開弁モードにおける駆動部30は、低速開弁モードよりも大きな伸長作動を行い、駆動伝達ピン32によって制御弁体110をさらに押し下げる。制御弁体110は、ピストン120との間の隙間GPを消失させ、当接したピストン120を変位させる。制御弁体110及びピストン120は、ニードルシリンダ60を押し下げつつ、ノズルニードル50へ向けて一体的に変位する。これにより、制御室27の容積が減少する一方で、上弁室部25bの容積が増加する。ピストン受圧面131の受圧面積がノズルニードル50の受圧面積よりも大きいため、ピストン120の変位に伴う上弁室部25bの容積増加分は、制御室27の容積減少分を上回る。その結果、ピストン連通路127によって互いに接続された弁室25及び制御室27の総容積の増加により、制御室27の減圧が生じる。こうしてピストン120は、制御弁体110から伝達される力で弁室25の容積を増加させる方向に変位し、制御室27を減圧する。そして、ニードル受圧面51に作用する閉弁方向の油圧力が減少することで、ノズルニードル50のリフトが開始され、噴孔23(図2参照)は開弁状態となる。
以上の高速開弁モードにおける制御室27の減圧スピードは、低速開弁モードよりも速い。加えて、弁室25及び制御室27の総容積が拡大されるため、ノズルニードル50の上昇に伴う制御室27の圧力復帰が抑制される。故に、高速開弁モードでの圧力復帰のタイミングは、低速開弁モードよりも遅くなる。そのため、高速開弁モードにおけるノズルニードル50の加速開弁期間は、低速開弁モードよりも長く確保される。したがって、高速開弁モードにおけるノズルニードル50の開弁速度は、低速開弁モードよりも長い期間、高速に維持される。
図6に示す閉弁期間では、ピエゾアクチュエータ31(図2参照)への通電が遮断される。通電停止後、ピエゾアクチュエータ31に蓄えられていた電荷が放出されると、ピエゾアクチュエータ31は、軸方向に収縮する。制御弁体110は、駆動部30における駆動力の消失に伴い、ピン収容孔20f及び下弁室部25aの間の圧力差とバルブスプリング140から作用する復元力とにより、流出開口26へ向けて変位する。その結果、制御弁体110は、閉塞部112aを第一シート面部28に着座させ、流出開口26を閉弁する。以上により、上弁室部25bと低圧燃料通路22との接続が遮断され、弁室25及び制御室27から低圧燃料通路22への燃料流出が停止される。
加えて制御弁体110は、下端面を第二シート面部128から離座させ、流入開口122aを開弁する。その結果、弁室25を介して高圧室21aと接続される制御室27には、流入流路122、下弁室部25aの隙間GP、及びピストン連通路127を通じて、高圧室21aの燃料が流入する。以上により、制御室27の燃料圧力は、高圧室21aと同程度の初期圧力まで回復する。制御室27の圧力回復によれば、ニードル受圧面51に作用する油圧力が増加し、ノズルニードル50は、閉弁方向の油圧力及びニードルスプリング52(図3参照)の復元力によって押し下げられる。以上により、噴孔23(図2参照)は閉弁状態となる。
次に、制御装置70による噴射制御の一態様として、駆動エネルギの低減を図った高速開弁モードの詳細を、図2及び図7に基づき説明する。
制御装置70のECU70aには、噴射圧取得部71及び充電制御部72が設けられている。噴射圧取得部71及び充電制御部72は、噴射制御プログラムに基づいて構築される機能ブロックであってもよく、複数の集積回路及び受動素子等を組み合わせてなる専用の電気回路部であってもよい。
噴射圧取得部71は、燃料噴射装置10における噴射圧Pcを取得する。噴射圧Pcは、コモンレール3から燃料噴射装置10の間のいずれの箇所で検出されてもよい。例えば噴射圧Pcは、圧力センサ3aによって取得される燃料圧力であってよい。噴射圧Pcは、各燃料噴射装置10に内蔵された圧力センサにて検出される燃料圧力の値であってもよい。
充電制御部72は、ピエゾアクチュエータ31の充電を制御する。充電制御部72は、EDU70bに出力する指令信号の値(以下「指令値」)の増減により、EDU70bからピエゾアクチュエータ31に投入される駆動エネルギの大きさを増減させる。充電制御部72は、指令値の切り替えにより、燃料流出に伴う制御室27の減圧でノズルニードル50のリフトを開始させた後に、弁室25の容積増加に伴う制御室27の減圧で直接的なノズルニードル50の駆動を行う。
詳記すると、充電制御部72は、時刻t0にて、初期駆動エネルギのピエゾアクチュエータ31への投入を開始させる。初期駆動エネルギは、ピストン120に当接する位置まで制御弁体110を変位させることが可能な伸長作動を、ピエゾアクチュエータ31に生じさせる駆動エネルギである。初期駆動エネルギは、低速開弁モードの第一駆動エネルギと同程度であってもよく、第一駆動エネルギよりも僅かに大きくてもよい。また初期駆動エネルギは、第二駆動エネルギよりも小さい。
時刻t0は、初期駆動エネルギの投入開始時刻である。時刻t0での初期駆動エネルギの投入により、制御弁体110は、流出開口26を開弁し、燃料流出に伴う減圧を制御室27に生じさせる。そして、制御弁体110は、初期駆動エネルギの投入開始後の時刻t1にて、ピストン120に当接する。隙間GPを消失させるのに要する時刻t0から時刻t1までの時間が、空走時間T0となる。充電制御部72は、時刻t1にて、ピエゾアクチュエータ31の充電を一時的に停止する。時刻t1は、制御弁体110がピストン120に当接する当接時刻である。
時刻t2にて、制御室27の圧力は、ノズルニードル50の開弁圧Poまで降下する。これにより、ノズルニードル50のリフトが開始される。時刻t2は、ノズルニードル50の変位開始時刻である。噴孔23の開弁に要する時刻t0から時刻t2までの時間が、開弁時間Tsとなる。充電制御部72は、時刻t2にて、指令値を第一指令値S1から第二指令値S2へと切り替える。これにより、停止されていたピエゾアクチュエータ31の充電が再開される。充電の再開により、ピエゾアクチュエータ31は、制御弁体110と共にピストン120を変位させる。その結果、弁室25の容積増加に伴う制御室27の減圧により、ノズルニードル50の変位速度が高速化される。
以上の制御において、時刻t1から時刻t2までの時間が、ピエゾアクチュエータ31の充電を一時的に停止する待機時間Tdとなる。充電制御部72は、開弁時間Tsから空走時間T0を差し引いた時間を、充電を一時的に停止する待機時間Tdとして設定する。尚、待機時間Tdが経過する時刻は、開弁時間Tsの経過する時刻t2よりも僅かに遅くされてよい。こうした設定によれば、充電を再開するタイミングは、ノズルニードル50のリフト開始後となり得る。
ここで、開弁時間Tsは、燃料噴射装置10の噴射圧Pcが高圧になるに従い、長くなる(図8参照)。故に、充電制御部72は、噴射圧取得部71にて取得される噴射圧Pcの値に基づき、待機時間Tdを調整可能である。具体的に、充電制御部72は、噴射圧Pcが高くになる従って、待機時間Tdを長く調整し、噴射圧Pcが低くなるに従って、待機時間Tdを短く調整する。
ここまで説明した第一実施形態の高速開弁モードにて、燃料噴射装置10は、制御弁体110、ピストン120及び燃料を介して、ピエゾアクチュエータ31でノズルニードル50を駆動し、噴孔23を開弁させることができる。このように、燃料噴射装置10は、ピエゾアクチュエータ31でノズルニードル50を直動可能な構成である。
そして、制御弁体110とピストン120との間には、変位方向の隙間GPが形成されている。故に、制御弁体110は、ピストン120を変位させることなく、ピエゾアクチュエータ31の伸長作動によって流出開口26を開くよう変位し、制御室27から低圧燃料通路22への燃料流出を行わせる。その結果、ノズルニードル50は、燃料流出に伴う制御室27の減圧により、開弁方向に変位する。したがって、燃料噴射装置10は、ノズルニードル50を直動可能であっても、燃料流出に伴う制御室27の減圧を主として、実質的には燃料流出に伴う制御室27の減圧のみで、噴孔23の開弁を行うことができる。
加えて第一実施形態では、ニードル受圧面51の投影面積よりもピストン受圧面131の投影面積が小さい。故に、ピストン120の変位による弁室25の容積増加分は、制御室27の容積減少分よりも大きくなる。さらに第一実施形態では、制御弁体110の変位によっても、上弁室部25bの容積が拡大する。故に、弁室25の容積増加分は、制御室27の容積減少分よりもいっそう大きくなる。以上によれば、高速開弁モードでは、ピストン120の変位に伴う制御室27の減圧が顕著に生じ得る。したがって、ピエゾアクチュエータ31の直動によるノズルニードル50の開弁が高速化される。
また第一実施形態では、ノズルニードル50を開弁させる際に、流入開口122aが制御弁体110によって閉じられる。故に、高圧室21aから弁室25への燃料の流入が停止される。以上によれば、ノズルニードル50の駆動に用いられないリーク燃料の消費量が低減され得る。
加えて、弁室25を経由した制御室27から低圧燃料通路22への燃料の流出は、高圧室21aから弁室25に流入する燃料に妨げられない。よって、制御室27の減圧は、流出開口26の開弁後、速やかに生じ得る。以上によれば、低速開弁モードにて、ピエゾアクチュエータ31の伸長作動に対するノズルニードル50の応答性が確保可能となる。
さらに第一実施形態のように、バルブボデー部材20cの内周壁面ではなく、円筒壁部132が制御弁体110を摺動可能に支持する構成であれば、制御弁体110と弁ボデー20との間の空間容積が低減容易となる。即ち、弁室25の容積が低減され得る。以上によれば、弁室25と低圧燃料通路22との接続後、低圧燃料通路22への燃料流出に伴う制御室27の減圧は、速やかに生じ得る。したがって、ノズルニードル50の応答性は、いっそう確保される。
また高速開弁モードにおいては、弁室25の容積の抑制により、弁室25の容積拡大に伴う制御室27の減圧が顕著に生じ得る。故に、ノズルニードル50の開弁速度が高速化され得る。
さらに第一実施形態のピストン120では、円筒状のサブピストン部材130が円柱状のメインピストン部材120aとは別体に設けられている。このように、ピストン120を単純な形状の部材に分割した構成であれば、個々の部材の加工は容易となる。故に、高い寸法精度を有するピストン120の提供が可能となる。
加えて第一実施形態の充電制御部72は、ピエゾアクチュエータ31への初期駆動エネルギの投入により、燃料流出に伴う制御室27の減圧を利用して、ノズルニードル50のリフトを開始させる。そして、充電制御部72は、初期駆動エネルギの投入によってノズルニードル50の変位が開始されたタイミング、即ち待機時間Tdの経過時に、ピエゾアクチュエータ31の充電を再開する。こうした待機時間Tdの設定の効果が、図9に示されている。待機時間Tdを設定しない場合と比較して、待機時間Tdを設定した場合では、ピエゾアクチュエータ31にて消費される駆動エネルギが低減可能になる。
また第一実施形態における充電再開の待機時間Tdは、開弁時間Tsから空走時間T0を差し引いた値に設定される。このような待機時間Tdの設定によれば、充電を一時停止する待機時間Tdは、最低限に抑えられる。その結果、充電制御部72は、ノズルニードル50のリフト開始後に遅滞なく充電を再開できる。
加えて第一実施形態の充電制御部72は、噴射圧Pcが高くになる従って、待機時間Tdを長く調整する。上述したように、噴射圧Pcが高くなるほど、開弁時間Tsは長くなる。故に、噴射圧Pcに基づいて待機時間Tdを調整すれば、充電制御部72は、待機時間Tdを適切な長さに設定し、ノズルニードル50のリフト開始後に遅滞なく充電を再開できる。
尚、第一実施形態では、弁ボデー20が「本体」に相当し、高圧室21aが「第一室」に相当し、低圧燃料通路22が「第二室」に相当し、ピエゾアクチュエータ31が「アクチュエータ」に相当し、ノズルニードル50が「ニードル」に相当する。また、ニードル受圧面51が「ニードル受圧部」に相当し、ニードルスプリング52が「ニードル付勢部材」に相当し、ニードルシリンダ60が「制御室部材」に相当し、制御弁体110が「弁体」に相当する。そして、ピストン受圧面131が「ピストン受圧部」に相当し、円筒壁部132が「ピストン壁部」に相当する。
(第二実施形態)
図10〜図13に示す第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。第二実施形態の燃料噴射装置では、圧力制御機構200及びニードルシリンダ260の構成が、第一実施形態とは異なっている。以下、第二実施形態の圧力制御機構200及びニードルシリンダ260の詳細を順に説明する。
圧力制御機構200は、図10に示すように、制御弁体210、ピストン220、及びピストンスプリング240等によって構成されている。
制御弁体210は、金属材料によって円柱状に形成されている。制御弁体210は、弁室25に収容されており、弁室25を上弁室部25b及び下弁室部25aに区分けしている。制御弁体210の上端面と流路形成部材20bの下端面との間に形成される空間が上弁室部25bである。制御弁体210を挟んで上弁室部25bの反対側に位置する空間が、下弁室部25aである。制御弁体210は、駆動伝達ピン32の押圧に伴う流路形成部材20bの下端面からの離間により、上弁室部25bの容積を拡大させる。制御弁体210には、第一実施形態と実質同一の閉塞部112a、弁体摺動面114、及び弁連通路117が形成されている。
閉塞部112aは、流出開口26の周囲を囲む第一シート面部28に離着座可能である。閉塞部112aの第一シート面部28への着座により、制御弁体210は、弁室25と低圧燃料通路22との接続を遮断する。弁体摺動面114は、円筒面状に形成された制御弁体210の外周壁面である。弁体摺動面114は、ピストン220の円筒壁部132によって摺動可能に支持されている。弁連通路117は、制御弁体210の上端面と下端面との間を貫通する貫通孔によって形成されている。弁連通路117は、下端面の径方向の中央から、上端面のうちで閉塞部112aの外周側の部分へ向けて、軸方向に対し傾斜した姿勢で延伸している。
ピストン220は、金属材料によって円筒状に形成されている。ピストン220には、大径孔220a及び小径孔220bが形成されている。大径孔220a及び小径孔220bは、ピストン220の軸方向に並ぶ配置にて、ピストン220と同軸となるよう形成されている。小径孔220bは、大径孔220aに対し制御室27側に位置している。ピストン220は、バルブボデー部材20cの内周壁面に摺動可能に支持されている。ピストン220は、第一実施形態と実質同一の流入流路122、ピストン摺動面124、第二シート面部128、ピストン受圧面131及び円筒壁部132に加えて、ニードルシリンダ摺動面224及び段差面225を有している。
流入流路122は、ピストン220の下端面の外縁部分から、段差面225へ向けて延伸する貫通孔によって形成されている。流入流路122の流入開口122aは、段差面225に開口している。流入開口122aは、ピストン220への制御弁体210の当接によって閉じられる。
ピストン摺動面124は、円筒面状に形成されたピストン220の外周壁面である。ピストン摺動面124は、バルブボデー部材20cに対して摺動可能な状態で、内周壁面に内嵌されている。
第二シート面部128は、段差面225に形成されている。第二シート面部128は、軸方向にて制御弁体210の下端面と対向している。第二シート面部128は、小径孔220bの開口を囲む円環状である。制御弁体210の段差面225への当接により、第二シート面部128は、制御弁体210の下端面との間で油密を形成する。
ピストン受圧面131は、円環状に形成されたピストン220の上端面である。ピストン受圧面131は、駆動伝達ピン32の押圧によるピストン220の閉弁方向への変位により、流路形成部材20bの下端面から離間する。これにより、上弁室部25bの容積が拡大する。円筒壁部132は、大径孔220aの周囲を囲む円筒状の壁部である。円筒壁部132は、制御弁体210を軸方向に変位可能に支持している。円筒壁部132は、弁体摺動面114との間で油密を形成している。
ニードルシリンダ摺動面224は、小径孔220bの周囲を囲む円筒面状の内周壁面である。ニードルシリンダ摺動面224は、ニードルシリンダ260に外嵌されている。ニードルシリンダ摺動面224は、ニードルシリンダ260を摺動可能に支持している。
段差面225は、大径孔220aと小径孔220bの間に、径方向に沿って形成された円環状の平面である。段差面225は、制御弁体210の下端面と対向している。段差面225と制御弁体210の下端面との間には、扁平な円盤状の下弁室部25aが区画されている。
ピストンスプリング240は、円筒螺旋状に形成されたコイルスプリングである。ピストンスプリング240は、弁室25の外部に設置されている。ピストンスプリング240は、高圧室21aに収容されており、ニードルシリンダ260とピストン220との間に軸方向に押し縮められた状態で配置されている。ピストンスプリング240の軸方向の一端は、ピストン220の下端面に載置されている。ピストンスプリング240は、上弁室部25bの容積を減少させる方向へ向けて、ピストン220を押圧している。
ニードルシリンダ260は、本体部261及び押圧部262を有している。ニードルシリンダ260には、シリンダ連通路263及び頂面連通路264が形成されている。本体部261は、有底の円筒状に形成されている。本体部261は、ニードル摺動面54に外嵌されている。本体部261は、ニードル受圧面51と共に制御室27を区画している。本体部261には、制御弁体210側へ向かう付勢力がニードルスプリング52によって印加されている。
押圧部262は、本体部261の底壁の中央から、制御弁体210へ向けて円柱状に突出している。押圧部262は、本体部261と同軸に設けられている。押圧部262は、小径孔220bに挿通されており、ニードルシリンダ摺動面224に内嵌されている。押圧部262の外周壁面は、ニードルシリンダ摺動面224との間で実質的な油密を形成している。
押圧部262の突出方向の先端面は、制御弁体210の下端面に当接可能である。押圧部262は、本体部261に作用するニードルスプリング52の付勢力を制御弁体210に伝達し、制御弁体210を流路形成部材20bの下端面に押し当てる。即ち、押圧部262は、ニードルシリンダ260に作用するニードルスプリング52の付勢力を用いて、制御弁体210を押圧する。押圧部262に押圧された制御弁体210は、流出開口26を閉じ、上弁室部25bと低圧燃料通路22との接続を遮断する。尚、押圧部262から制御弁体210に作用する押圧力の方向(以下、「遮断方向」)は、ノズルニードル50の開弁方向と同一である。
シリンダ連通路263は、本体部261の底壁及び押圧部262を軸方向に貫通する貫通孔によって形成されている。シリンダ連通路263は、制御室27及び下弁室部25aの間を連通させている。シリンダ連通路263及び弁連通路117により、制御室27と上弁室部25bとの連通状態が維持される。
頂面連通路264は、押圧部262の先端面に形成されている。頂面連通路264は、シリンダ連通路263の開口から外周側へ向かって延伸する溝部によって形成されている。頂面連通路264は、押圧部262の先端面が制御弁体210の下端面と当接した状態でも、下弁室部25aとシリンダ連通路263との連通状態を維持させる。
次に、第二実施形態の燃料噴射装置及び圧力制御機構200の作動を、図10〜図13に基づき、図2を参照しつつ説明する。
図10に示すように、非通電時にてピエゾアクチュエータ31が縮んだ状態では、制御弁体210は、閉塞部112aを第一シート面部28に着座させている。これにより、流出開口26が閉じられることで、弁室25と低圧燃料通路22との接続が遮断される。一方、制御弁体210の下端面は、第二シート面部128からの離座しており、第二シート面部128との間に微小な隙間GPを形成している。これにより、高圧室21aと弁室25とが連通し、制御室27は、弁室25を介して高圧室21aと接続される。そのため、制御室27の燃料圧力は、高圧室21aの燃料圧力相当となっている。故に、ノズルニードル50は、制御室27の燃料から受ける油圧力により、噴孔23の閉弁状態を維持する。
図11に示す低速開弁モードにおける駆動部30は、ピエゾアクチュエータ31の伸長作動により、駆動伝達ピン32によって制御弁体210を押し下げる。制御弁体210は、ピストン220に押し当てられた状態で静止する。制御弁体210の変位に伴う流出開口26の開弁により、上弁室部25bは、低圧燃料通路22と連通する。制御室27及び上弁室部25bの間がシリンダ連通路263及び弁連通路117によって接続されているため、流出開口26の開弁によれば、制御室27から低圧燃料通路22への燃料流出が可能となる(図11の矢印参照)。燃料流出に伴って制御室27に減圧が生じると、ノズルニードル50は、開弁方向への変位を開始する。以上により、噴孔23が開弁状態となる。
加えて、低速閉弁モードにおける駆動部30は、隙間GPを消失させ、制御弁体210の下端面を第二シート面部128に押し当てる。その結果、流入開口122aが閉じられることで、高圧室21aと弁室25との接続が遮断される。以上により、高圧室21aから低圧燃料通路22への燃料リークが抑制される。
図12に示す高速開弁モードにおける駆動部30は、低速開弁モードよりも大きな伸長作動を行い、駆動伝達ピン32によって制御弁体210をさらに押し下げる。制御弁体210の変位によって隙間GPが消失すると、制御弁体210及びピストン220は、ニードルシリンダ260を押し下げつつ、ノズルニードル50の閉弁方向へ向けて一体的に変位する。ピストン220の変位によれば、制御室27の容積が減少する一方で、上弁室部25bの拡張に伴って弁室25の容積が増加する。弁室25及び制御室27の総容積の増加により、制御室27から上弁室部25bへの燃料の移動を伴いつつ(図12の矢印参照)、低速開弁モードよりも急速な制御室27の減圧が生じる。その結果、ノズルニードル50は、低速開弁モードよりも高速で開弁方向へ向けて変位可能となる。尚、高速開弁モードにて、流入開口122aは、制御弁体210によって閉じられている。一方、流出開口26は、開いた状態が維持されている。
図13に示す閉弁期間では、通電を遮断されたピエゾアクチュエータ31が軸方向に収縮する。これにより、駆動伝達ピン32は、ピン収容孔20fの内部へ引き戻される。制御弁体210は、軸方向に生じる圧力差と、押圧部262によって伝達されるニードルスプリング52の復元力とにより、遮断方向へ向けて変位する。制御弁体210は、流出開口26を閉じ、上弁室部25bと低圧燃料通路22との接続を遮断する。その結果、制御室27から低圧燃料通路22への燃料流出は、停止される。また、高速開弁モードにて制御弁体210によって押し下げられたピストン220も、ピストンスプリング240の付勢力によって、遮断方向に押し上げられる。故に、拡張された上弁室部25b及び縮小された制御室27の各容積は、それぞれ初期状態に戻る。
加えて制御弁体210は、第二シート面部128から下端面を離座させ、流入開口122aを開ける。これにより、制御室27には、流入流路122、頂面連通路264及びシリンダ連通路263を通じて、高圧室21aから燃料が流入する(図13の矢印参照)。制御室27の圧力回復によれば、ニードル受圧面51に作用する油圧力が復帰し、ノズルニードル50は、閉弁方向へ押し下げられる。その結果、噴孔23は、閉弁状態に戻される。
ここまで説明した第二実施形態でも、第一実施形態と同様の効果を奏し、ノズルニードル50を直動可能であっても、低圧側への燃料流出に伴う制御室27の減圧を主として、噴孔23の開弁を行うことができる。
加えて第二実施形態では、ニードルスプリング52の復元力が押圧部262を介して制御弁体210に伝達され、制御弁体210を遮断方向に付勢している。こうした構成であれば、制御弁体210を遮断方向に付勢する付勢構成を弁室25に配置する必要がなくなる。故に、弁室25の容積の低減が可能になる。そのため高速開弁モードでは、ピストン220の変位に伴う弁室25の容積拡大により、弁室25及び制御室27の減圧が顕著に生じ得る。故に、ノズルニードル50の開弁速度の高速化が可能になる。加えて、低速開弁モードでは、弁室25と低圧燃料通路22との接続後、低圧側への燃料流出に伴う制御室27の減圧は、速やかに生じ得る。したがって、低速開弁モードにおけるノズルニードル50の開弁速度も、高速化可能となる。
また第二実施形態では、ニードルシリンダ260及び制御弁体210に、シリンダ連通路263及び弁連通路117が互いに連続するように形成されている。そして、シリンダ連通路263及び弁連通路117により、制御室27及び上弁室部25bとの連通が確保されている。こうした構成によれば、制御弁体210及びピストン220の変位による上弁室部25bの拡張に伴い、制御室27の燃料は、上弁室部25bに円滑に流通し得る。したがって、高速開弁モードにて、制御弁体210及びピストン220の動きは、ノズルニードル50に円滑に伝達され得る。
さらに第二実施形態のピストンスプリング240は、弁室25の容積を減少させる方向へ向けて、ピストン220を付勢している。故に、ピエゾアクチュエータ31の収縮作動に伴い、ピストン220は、ピエゾアクチュエータ31の伸長前の初期位置に確実に戻り得る。このように、ピストン220の変位がピエゾアクチュエータ31の作動に円滑に追従できれば、ピエゾアクチュエータ31は、ノズルニードル50を正確に駆動可能となる。
尚、第二実施形態では、弁連通路117及びシリンダ連通路263がそれぞれ「連通路」に相当し、制御弁体210が「弁体」に相当し、ピストンスプリング240が「ピストン付勢部材」に相当し、ニードルシリンダ260が「制御室部材」に相当する。
(第三実施形態)
図14〜図18に示す第三実施形態は、第一実施形態の別の変形例である。第三実施形態の燃料噴射装置では、圧力制御機構300の構成が第一実施形態とは異なっている。以下、第三実施形態の圧力制御機構300の詳細を説明する。
圧力制御機構300は、図14に示すように、第一実施形態と実質同一のバルブスプリング140に加えて、制御弁体310及びピストン320を備えている。
制御弁体310は、大径部113a及び小径部113bを有する二段円柱状に形成されている。制御弁体310からは、第一実施形態の弁連通路117(図3参照)に相当する構成が省略されている。制御弁体310には、第一実施形態と実質同一の閉塞部112a及び弁体摺動面114が形成されている。
ピストン320は、全体として円柱状に形成されている。ピストン320は、バルブボデー部材20cによって摺動可能に支持されている。ピストン320には、収容穴320aが設けられている。収容穴320aは、上端面に開口する円柱状の空間をピストン320に形成している。弁室25は、収容穴320aによって形成されている。収容穴320aには、制御弁体310が、ピストン320に対して摺動可能な状態で収容されている。
ピストン320は、第一実施形態と実質同一の流入流路122、ピストン摺動面124、第二シート面部128、ピストン受圧面131及び円筒壁部132を有している。加えてピストン320には、収容底面325、流入連通路327a及び流出連通路327bがさらに設けられている。
収容底面325は、収容穴320aを区画する円状の底面である。収容底面325には、下弁室部25aに臨む流入流路122の流入開口122aが開口している。収容底面325には、流入開口122aを囲む円環状の第二シート面部128が形成されている。制御弁体310の収容底面325への当接により、流入開口122a及び流入連通路327aの開口が閉じられる。
流入連通路327aは、ピストン320の収容底面325及び下端面の間を軸方向に沿って貫通する貫通孔によって形成されている。流入連通路327aは、制御室27と下弁室部25aとを連通する燃料通路である。流入連通路327aは、高圧室21aから下弁室部25aに流入した燃料を、制御室27に流入させる。
流出連通路327bは、ピストン320の上端面及び下端面の間を軸方向に沿って貫通する貫通孔によって形成されている。流出連通路327bは、収容穴320aの外周側に配置されている。ピストン受圧面131に開口する流出連通路327bの一端は、ピストン受圧面131に設けられた径方向の溝と接続されている。ピストン320の下端面に開口する流出連通路327bの他端は、ニードルシリンダ60の上端面に設けられた径方向の溝と接続されている。流出連通路327bは、各溝と共に、制御室27と上弁室部25bとを連通する燃料通路となる。流出連通路327bは、制御室27の燃料を上弁室部25bに流出させることができる。
次に、第三実施形態の燃料噴射装置及び圧力制御機構300の作動を、図14〜図17に基づき、図2を参照しつつ説明する。
図14に示すように、非通電時にてピエゾアクチュエータ31が縮んだ状態では、制御弁体310は、閉塞部112aを第一シート面部28に着座させている。これにより、流出開口26が閉じられ、弁室25と低圧燃料通路22との接続が遮断される。一方、制御弁体310の下端面は、第二シート面部128からの離座しており、ピストン320との間に微小な隙間GPを形成している。以上により、制御室27は、流入流路122、下弁室部25a及び流入連通路327aを通じて高圧室21aと接続されて、高圧室21aと同程度の圧力となる。そのため、ノズルニードル50は、制御室27の燃料から受ける油圧力により、噴孔23の閉弁状態を維持する。
図15に示す低速開弁モードにおける駆動部30は、駆動伝達ピン32によって制御弁体310を押し下げ、制御弁体310をピストン320に押し当てられた状態で静止させる。制御弁体310による流出開口26の開弁により、各溝及び流入連通路327aと上弁室部25bとを通じて、制御室27から低圧燃料通路22への燃料流出が可能となる(図15の矢印参照)。低圧側への燃料流出に伴う制御室27の減圧により、ノズルニードル50は、噴孔23を開弁させる。加えて制御弁体310は、隙間GPを消失させ、第二シート面部128に下端面を押し当てている。故に、流入開口122aが閉じられ、高圧室21aから低圧燃料通路22への燃料リークが抑制される。
図16に示す高速開弁モードにおける駆動部30は、駆動伝達ピン32によって制御弁体310をさらに押し下げる。隙間GPの消失に伴って一体的に変位する制御弁体310及びピストン320は、上弁室部25bの容積を増加させつつ、ニードルシリンダ60の押し下げによって制御室27の容積を減少させる。その結果、弁室25及び制御室27の総容積が増加するため、流出連通路327bを通じた制御室27から上弁室部25bへの燃料の移動を伴いつつ(図16の矢印参照)、低速開弁モードよりも急速な制御室27の減圧が生じる。以上により、ノズルニードル50は、低速開弁モードよりも高速で開弁方向へ向けて変位可能となる。その結果、図18に示すように、高速開弁モードにおける開弁開始後の噴射率が、低速開弁モードよりも急速に立ち上がる。
図17に示す閉弁期間では、ピエゾアクチュエータ31の収縮により、駆動伝達ピン32がピン収容孔20fの内部へ引き戻される。制御弁体310は、軸方向に生じる圧力差と、バルブスプリング140の復元力とにより、遮断方向へ向けて変位して流出開口26を閉じる。上弁室部25bと低圧燃料通路22との接続が遮断されると、制御室27から低圧燃料通路22への燃料流出は、停止される。また高速開弁モードでは、制御弁体310によって押し下げられたピストン320が、ピエゾアクチュエータ31の収縮に伴い、ニードルスプリング52(図14参照)の付勢力によって遮断方向に押し上げられる。故に、上弁室部25b及び制御室27の各容積は、それぞれ初期状態に戻る。
制御弁体310は、第二シート面部128から下端面を離座させ、流入開口122aを開ける。これにより、制御室27には、流入流路122及び流入連通路327aを通じて、高圧室21aから燃料が流入する(図17の矢印参照)。制御室27の圧力回復によれば、ニードル受圧面51に作用する油圧力が復帰し、ノズルニードル50は、閉弁方向への変位によって噴孔23を閉弁状態に戻す。
ここまで説明した第三実施形態でも、第一実施形態と同様の効果を奏し、ノズルニードル50を直動可能であっても、低圧側への燃料流出に伴う制御室27の減圧を主として、噴孔23の開弁を行うことができる。尚、第三実施形態では、制御弁体310が「弁体」に相当する。
(第四実施形態)
図19〜図23に示す第四実施形態は、第三実施形態の変形例である。第四実施形態の燃料噴射装置では、圧力制御機構400の構成が第三実施形態とは異なっている。以下、第四実施形態の圧力制御機構400の詳細を説明する。
圧力制御機構400は、第三実施形態と実質同一のバルブスプリング140及び制御弁体310に加えて、ピストン420を備えている。ピストン420からは、弁室25を区画する収容穴320a(図14参照)が省略されている。弁室25は、主にバルブボデー部材20cに形成された円筒面状の内周壁面20hによって区画されている。制御弁体310は、弁室25に収容され、内周壁面20hから離間した状態で軸方向に変位可能である。
ピストン420は、全体として円柱状に形成されている。ピストン420は、バルブボデー部材20cによって摺動可能に支持されている。ピストン420は、第一実施形態と実質同一の流入流路122、ピストン摺動面124、ピストン連通路127、及び第二シート面部128を有している。加えてピストン420には、ピストン受圧面431が形成されている。
ピストン受圧面431は、ピストン420の上端面によって形成された円状の平坦面である。ノズルニードル50の変位方向に沿って見たピストン受圧面431の投影面積は、当該変位方向に沿って見たニードル受圧面51の投影面積よりも大きい。ピストン受圧面431は、ピエゾアクチュエータ31が縮んだ状態で、バルブボデー部材20cの規制面20jに押し当てられている。規制面20jは、閉弁方向を向く円環状の平坦面である。ピストン420は、ピストン受圧面431の規制面20jへの当接により、ピストン420は、遮断方向への変位を規制される。
以上の第四実施形態による燃料噴射装置及び圧力制御機構400の作動を、図19〜図22に基づき、図2を参照しつつ説明する。
図19に示すように、非通電時にてピエゾアクチュエータ31が縮んだ状態では、制御弁体310は、閉塞部112aを第一シート面部28に着座させている。これにより、流出開口26が閉じられ、弁室25と低圧燃料通路22との接続が遮断される。一方、制御弁体310の下端面は、第二シート面部128からの離座しており、ピストン420との間に微小な隙間GPを形成している。以上により、制御室27は、流入流路122、弁室25及びピストン連通路127を通じて高圧室21aと接続されて、高圧室21aと同程度の圧力となる。そのため、ノズルニードル50は、制御室27の油圧力により、噴孔23の閉弁状態を維持する。
図20に示す低速開弁モードにおける駆動部30は、駆動伝達ピン32によって制御弁体310を押し下げ、制御弁体310をピストン420に押し当てられた状態で静止させる。これにより、隙間GPは消失する。制御弁体310による流出開口26の開弁によれば、ピストン連通路127及び弁室25を通じて、制御室27から低圧燃料通路22への燃料流出が可能となる(図20の矢印参照)。燃料流出に伴う制御室27の減圧により、ノズルニードル50は、噴孔23を開弁させる。一方、流入開口122aは、制御弁体310によって閉じられる。
図21に示す高速開弁モードにおける駆動部30は、駆動伝達ピン32によって制御弁体310をさらに押し下げる。制御弁体310及びピストン420は、閉弁方向へ向けて一体的に変位し、ピストン受圧面431の規制面20jからの離間によって弁室25の容積を増加させつつ、制御室27の容積を減少させる。その結果、弁室25及び制御室27の総容積が増加するため、ピストン連通路127を通じた制御室27から弁室25への燃料の移動を伴いつつ(図21の矢印参照)、低速開弁モードよりも急速な制御室27の減圧が生じる。以上により、ノズルニードル50は、低速開弁モードよりも高速で開弁方向へ向けて変位可能となる。その結果、図23に示すように、高速開弁モードにおける開弁開始後の噴射率が、低速開弁モードよりも急速に立ち上がる。
図22に示す閉弁期間では、ピエゾアクチュエータ31の収縮により、駆動伝達ピン32がピン収容孔20fの内部へ引き戻される。制御弁体310の遮断方向へ向けた変位によって流出開口26が閉じられ、弁室25と低圧燃料通路22との接続が遮断される。その結果、制御室27からの燃料流出は、停止される。また高速開弁モードでは、制御弁体310によって押し下げられたピストン420が、ピエゾアクチュエータ31の収縮に伴い、ニードルスプリング52(図19参照)の付勢力によって遮断方向に押し上げられる。故に、拡張された弁室25及び縮小された制御室27の各容積は、それぞれ初期状態に戻る。
制御弁体310は、第二シート面部128からの離座によって流入開口122aを開ける。その結果、制御室27には、流入流路122及びピストン連通路127を通じて、高圧室21aから燃料が流入する(図22の矢印参照)。制御室27の圧力回復によれば、ノズルニードル50は、閉弁方向への変位によって噴孔23を閉弁状態に戻す。
ここまで説明した第四実施形態でも、第三実施形態と同様の効果を奏し、ノズルニードル50を直動可能であっても、低圧側への燃料流出に伴う制御室27の減圧を主として、噴孔23の開弁を行うことができる。尚、第四実施形態では、ピストン受圧面431が「ピストン受圧部」に相当する。
(第五実施形態)
図24〜図28に示す第五実施形態は、第四実施形態の変形例である。第五実施形態の燃料噴射装置では、圧力制御機構500の構成が第四実施形態とは異なっている。以下、第五実施形態の圧力制御機構500の詳細を説明する。
圧力制御機構500は、図24及び図25に示すように、第二実施形態と実質同一のニードルシリンダ260及びピストンスプリング240と組み合わされている。圧力制御機構500は、第四実施形態と実質同一のバルブスプリング140及び制御弁体310に加えて、扁平な円筒状に形成されピストン520を備えている。
ピストン520は、バルブボデー部材20cによって摺動可能に支持されている。ピストン520は、第四実施形態と実質同一の流入流路122、ピストン摺動面124、第二シート面部128、ピストン受圧面431を有している。加えてピストン520には、中央孔520a及びピストン連通溝527が形成されている。
中央孔520aは、ピストン520の径方向の中央に設けられている。中央孔520aは、ピストン520を軸方向に貫通している。中央孔520aを区画している円筒面状の内周壁面は、ニードルシリンダ摺動面224として、ニードルシリンダ260の押圧部262に外嵌されている。
ピストン連通溝527は、ピストン520の上端面に形成されている。ピストン連通溝527は、中央孔520aから径方向に沿って外周側に延伸する溝部である。上端面には、複数(三つ)のピストン連通溝527が周方向に等間隔で形成されている。ピストン連通溝527の外周側の端部は、制御弁体310の小径部113bよりも外周側に位置している。ピストン連通溝527は、頂面連通路264と連続している。ピストン520の上端面及びニードルシリンダ260の先端面が制御弁体310の下端面と当接した状態で、ピストン連通溝527は、頂面連通路264と連続し、シリンダ連通路263及び弁室25の間を連通させている。
以上の第五実施形態による燃料噴射装置及び圧力制御機構500の作動を、図2を参照しつつ説明する。
図24に示すように、非通電時にてピエゾアクチュエータ31が縮んだ状態では、制御弁体310は、閉塞部112aを第一シート面部28に着座させている。これにより、流出開口26が閉じられ、弁室25と低圧燃料通路22との接続が遮断される。一方、制御弁体310の下端面は、第二シート面部128からの離座しており、ピストン520との間に微小な隙間GPを形成している。以上により、制御室27は、流入流路122、弁室25及びシリンダ連通路263を通じて高圧室21aと接続されて、高圧室21aと同程度の圧力となる。そのため、ノズルニードル50は、制御室27の燃料から受ける油圧力により、噴孔23の閉弁状態を維持する。
図26に示す低速開弁モードでの駆動部30は、駆動伝達ピン32によって制御弁体310を押し下げ、制御弁体310をピストン520に押し当てられた状態で静止させる。制御弁体310による流出開口26の開弁により、シリンダ連通路263、頂面連通路264、ピストン連通溝527及び弁室25を通じて、制御室27から低圧燃料通路22への燃料流出が可能となる(図26の矢印参照)。低圧側への燃料流出に伴う制御室27の減圧により、ノズルニードル50は、噴孔23を開弁させる。加えて制御弁体310は、隙間GPを消失させ、第二シート面部128に下端面を押し当てることで、流入開口122aを閉じる。
図27に示す高速開弁モードでの駆動部30は、駆動伝達ピン32によって制御弁体310と共にピストン520も押し下げる。これにより一体的に変位する制御弁体310及びピストン520は、弁室25の容積を増加させつつ、ニードルシリンダ260の押し下げによって制御室27の容積を減少させる。その結果、シリンダ連通路263、頂面連通路264及びピストン連通溝527を通じた制御室27から弁室25への燃料の移動を伴いつつ(図27の矢印参照)、低速開弁モードよりも急速な制御室27の減圧が生じる。以上により、ノズルニードル50は、低速開弁モードよりも高速で開弁方向へ向けて変位する。
図28に示す閉弁期間では、ピエゾアクチュエータ31の収縮により、駆動伝達ピン32がピン収容孔20fの内部へ引き戻される。制御弁体310は、軸方向に生じる圧力差と、押圧部262によって伝達されるニードルスプリング52(図24参照)の復元力とにより、遮断方向へ向けて変位し、流出開口26を閉じる。弁室25と低圧燃料通路22との接続が遮断されると、制御室27からの燃料流出は停止される。
また高速開弁モードにおける閉弁期間では、制御弁体310によって押し下げられたピストン520が、ピエゾアクチュエータ31の収縮に伴い、ピストンスプリング240の付勢力によって遮断方向に押し上げられる。故に、弁室25及び制御室27の各容積は、それぞれ初期状態に戻る。
制御弁体310は、第二シート面部128から下端面を離座させ、流入開口122aを開ける。これにより、制御室27には、流入流路122、弁室25及びシリンダ連通路263を通じて、高圧室21aから燃料が流入する(図28の矢印参照)。制御室27の圧力回復によれば、ノズルニードル50は、噴孔23を閉弁状態に戻す。
ここまで説明した第五実施形態でも、第四実施形態と同様の効果を奏し、ノズルニードル50を直動可能であっても、低圧側への燃料流出に伴う制御室27の減圧を主として、噴孔23の開弁を行うことができる。
(第六実施形態)
図29〜図32に示す第六実施形態は、第一実施形態のさらに別の変形例である。第六実施形態のバルブボデー部材20cには、弁室25及び中間室29を区画する内周壁面20h、ニードルシリンダ60の変位を規制する規制面20j、第一シート面部28及び流出開口26が形成されている。一方、第六実施形態の圧力制御機構600は、バルブスプリング140及び制御弁体610等によって構成されている。
バルブスプリング140は、中間室29に収容されている。バルブスプリング140は、制御弁体610及びニードルシリンダ60の間に、軸方向に押し縮められた状態で配置されている。
制御弁体610は、大径部113a及び小径部113bを有する二段円柱状に形成されている。制御弁体610は、内周壁面20hに内嵌されており、弁室25及び中間室29を区分けしている。弁室25は、制御弁体610の軸方向にて、第一シート面部28と大径部113aの上端面との間に区画された空間である。中間室29は、制御弁体610の径方向にて、小径部113bの外周壁面と内周壁面20hとの間に区画された空間である。中間室29は、ニードルシリンダ60に形成された流入流路622により、高圧室21aと連通されている。流入流路622には、インオリフィス623が形成されている。
制御弁体610は、上端面を第一シート面部28に当接させた状態で、ニードルシリンダ60との間に隙間GPを形成している。制御弁体610は、第一実施形態と実質同一の閉塞部112aを有している。制御弁体610には、制御室27と弁室25とを連通する弁連通路617が形成されている。
以上の第六実施形態による燃料噴射装置及び圧力制御機構600の作動を、図29〜図32に基づき、図2を参照しつつ説明する。
図29に示すように、非通電時にてピエゾアクチュエータ31が縮んだ状態では、制御弁体610は、閉塞部112aを第一シート面部28に着座させている。こうして流出開口26が閉じられることで、弁室25と低圧燃料通路22との接続が遮断される。一方、制御弁体610の下端面は、ニードルシリンダ60の上端面から離座しており、ニードルシリンダ60との間に微小な隙間GPを形成している。これにより、高圧室21a、中間室29及び制御室27は、互いに連通した状態となる。故に、ノズルニードル50は、制御室27の燃料から受ける油圧力により、噴孔23の閉弁状態を維持する。
図30に示す低速開弁モードでの駆動部30は、ピエゾアクチュエータ31の伸長作動により、駆動伝達ピン32によって制御弁体610を押し下げる。制御弁体610は、ニードルシリンダ60の上端面に押し当てられた状態で静止する。隙間GPの消失によれば、中間室29及び制御室27の接続が遮断される。加えて、制御弁体610の変位に伴う流出開口26の開弁により、制御室27の燃料は、弁連通路617及び弁室25を通じて、低圧燃料通路22に流出可能となる(図30の矢印参照)。その結果、制御室27に生じる減圧により、ノズルニードル50は、開弁方向への変位し、噴孔23を開弁状態とする。
図31に示す高速開弁モードでの駆動部30は、低速開弁モードよりも大きな伸長作動を行い、駆動伝達ピン32によって制御弁体610と共にニードルシリンダ60を押し下げる。ニードルシリンダ60の閉弁方向への変位によれば、制御室27の容積が減少する。加えて、制御弁体610の変位の閉弁方向への変位によれば、弁室25の容積が増加する。その結果、弁連通路617を通じた制御室27から弁室25への燃料の移動を伴いつつ(図31の矢印参照)、低速開弁モードよりも急速な制御室27の減圧が生じる。故に、ノズルニードル50は、低速開弁モードよりも高速で開弁方向へ向けて変位可能となる。
図32に示す閉弁期間では、通電を遮断されたピエゾアクチュエータ31が軸方向に収縮するため、駆動伝達ピン32は、ピン収容孔20fの内部へ引き戻される。制御弁体610は、中間室29及び弁室25の間の圧力差及びニードルスプリング52の復元力等により、第一シート面部28に着座し、流出開口26を閉じる。その結果、制御室27から低圧燃料通路22への燃料流出が停止される。
加えて制御弁体610は、ニードルシリンダ60の上端面から離座し、中間室29と制御室27とを接続させる。これにより、制御室27には、流入流路622及び中間室29を経由して、高圧室21a燃料が流入する(図32の矢印参照)。制御室27の圧力回復によれば、ノズルニードル50は、閉弁方向へ押し下げられ、噴孔23を閉弁状態に戻す。
ここまで説明した第六実施形態の制御弁体610は、ピエゾアクチュエータ31の伸長作動によって弁室25の容積を増加させる方向へ変位する。その結果、弁室25と連通する制御室27に減圧が生じ、ノズルニードル50は、開弁方向に変位する。以上のように、燃料噴射装置は、弁体及び燃料を介して、ピエゾアクチュエータ31でノズルニードル50を直接的に駆動し、噴孔23を開弁できる。
加えて、制御弁体610とニードルシリンダ60との間には変位方向の隙間GPが形成されている。故に、制御弁体610は、ピエゾアクチュエータ31の伸長作動によってニードルシリンダ60を変位させなくても、弁室25を低圧燃料通路22に接続させ、且つ、高圧室21aと制御室27との接続を遮断できる。その結果、制御室27の燃料が弁室25を経て低圧燃料通路22に流出するため、ノズルニードル50は、制御室27の減圧によって開弁方向に変位する。
したがって、第六実施形態の燃料噴射装置は、ノズルニードル50を直動可能であっても、低圧側への燃料流出に伴う制御室27の減圧を主として、噴孔23の開弁を行うことができる。尚、第六実施形態では、制御弁体610が「弁体」に相当し、弁連通路617が「連通路」に相当する。
(他の実施形態)
以上、複数の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
上記第一実施形態の充電を一時停止する噴射制御は、第六実施形態の燃料噴射装置にも適用可能である。また、充電を再開するタイミングは、ノズルニードルの変位開始後に限定されず、ノズルニードルの変位開始前であってもよい。さらに、制御装置は、一回の燃料噴射期間において、ピエゾアクチュエータに投入する駆動エネルギを適宜切り替え可能である。例えば、直動状態での開弁後、油圧駆動状態に切り替える制御が実施されてもよい。
上記実施形態では、駆動部のアクチュエータとして、ピエゾアクチュエータが採用されていた。しかし、アクチュエータは、例えば磁電アクチュエータ等であってもよい。
上記実施形態では、制御弁体の変位よって流出開口が開かれると、高圧室と弁室との連通が遮断されていた。こうした圧力制御機構の三方弁の機能より、リーク燃料が抑制される。しかし、流出開口が開かれた状態でも、高圧室と弁室との接続は、維持されてもよい。
上記実施形態では、燃料として軽油を噴射する燃料噴射装置に本開示の圧力制御機構等を適用した例を説明したが、上記の圧力制御機構は、軽油以外の燃料、例えばジメチルエーテル等の液化ガス燃料を噴射する燃料噴射装置にも適用可能である。