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JP6924376B2 - 熱間鍛造用金型および鍛造製品の製造方法 - Google Patents

熱間鍛造用金型および鍛造製品の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、熱間鍛造用金型およびそれを用いた鍛造製品の製造方法に関するものであり、より具体的には型鍛造用の熱間鍛造用金型等に関するものである。
航空機エンジンや蒸気タービンに用いられるタービンブレード(以下単に「ブレード」という。)用素材を製造する場合、鍛造用素材を上型と下型の間に挟み込んで、大型のプレス鍛造でブレード用素材に成形する方法が主流である。近年、蒸気タービンの高効率化の要請により、蒸気タービンに用いられるブレードも長尺化してきており。例えば、約1500mmを超える長尺のブレード用素材も製造される。かかる長尺のブレード用素材を製造する場合には、非常に高い加圧力を有する鍛造装置およびそれに耐えうる金型が必要になる。
例えば、荷重が1万トンを超える規模の大型熱間鍛造装置に用いられる熱間鍛造用金型を一体物で製造すると、金型は、その素材重量が50トンを超えるような大型のものになる。かかる場合には、金型の一部に割れ等の修復不能な欠陥が生じると、金型全体を廃棄する必要があり、非常に不経済であった。
これに対し、特開2014−208379号公報(特許文献1)には、長尺材用の熱間鍛造用金型であって、複数個の熱間鍛造用金型片が長尺材の長手方向に一列に並べられた一体の組立て体である熱間鍛造用金型の提案がある。かかる提案によれば、個々の金型片を小さくすることができるため、廃棄する部分を削減し、鍛造製品の製造コストを低減できる利点がある。
特開2014−208379号公報
しかしながら、特開2014−208379号公報による提案では、金型片を交換する場合に、金型全体を分解して組み直す必要があり、金型片の交換に係る作業は十分に簡略化されたものではなかった。また、割れ等の欠陥以外に、摩耗によっても金型交換は必要になるが、かかる摩耗の程度は金型の部位によって大きく異なるため、特開2014−208379号公報に開示された提案をもってしても、金型の材料ロスが大きく、製造コストの低減は十分なものとは言えなかった。
上記課題に鑑み、本発明は、熱間鍛造用金型の交換にかかる作業を簡略化すること、および製造コストを低減することが可能な熱間鍛造用金型およびそれを用いた鍛造製品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、凹状の型彫り面を有する熱間鍛造用金型であって、前記熱間鍛造用金型は、本体部分と、前記本体部分より熱間強度が高く、かつ着脱可能な補強部材と、を備え、前記型彫り面の縁部分の少なくとも一部が前記補強部材で構成されている熱間鍛造用金型である。
また、前記熱間鍛造用金型において、前記補強部材は、前記型彫り面の縁に沿って隣接配置された複数の補強部材片を有することが好ましい。
また、前記型彫り面の輪郭が長方形状であり、前記輪郭の角の少なくとも一つに前記補強部材が配置されていることが好ましい。
また、前記熱間鍛造用金型において、前記型彫り面の輪郭が長方形状であり、前記補強部材が、少なくとも前記長方形状の長辺側に配置されていることが好ましい。
さらに、前記熱間鍛造用金型において、前記補強部材は、前記型彫り面の彫り込み方向に垂直な方向の凹凸を有し、前記金型の本体部分は、前記凹凸に嵌合する凹凸を有し、前記補強部材の凹凸が前記金型の本体部分の凹凸に嵌合することにより、前記補強部材が前記型彫り面の彫り込み方向で拘束されることが好ましい。
別の本発明は、加熱された鍛造用素材を上記いずれかの熱間鍛造用金型を用いて熱間鍛造し、鍛造製品を得る鍛造製品の製造方法である。
なお、上記構成は互いに適宜組み合わせることもできる。
本発明によれば、熱間鍛造用金型の廃棄、交換にかかる作業を簡略化し、製造コストを低減することが可能な熱間鍛造用金型およびそれを用いた鍛造製品の製造方法を提供することができる。
本発明に係る熱間鍛造用金型の一実施形態を示す図である。 本発明に係る熱間鍛造用金型の他の実施形態を示す図である。 本発明に係る熱間鍛造用金型の他の実施形態を示す図である。 本発明に係る熱間鍛造用金型の他の実施形態の変形例を示す図である。
本発明は、鍛造製品の形状に応じた凹状の型彫り面を有する、いわゆる型鍛造用の熱間鍛造用金型に係るものである。かかる型鍛造の場合、実際の使用において凹状の型彫り面の縁の部分の摩耗が特に顕著である。この場合、特開2014−208379号公報で提案される構成では、摩耗が少ない部位も含めて金型を交換、廃棄等しなければならず、コストを十分に低減することができないという課題がある。本発明は、型彫り面の縁部分の少なくとも一部に、金型の本体部分よりも熱間強度が高い、着脱可能な補強部材を配置することで、かかる課題を解決するものである。
以下、本発明に係る熱間鍛造用金型の実施形態を、図を用いて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、各実施形態において説明する構成は、他の実施形態の趣旨を損なわない限りにおいて、他の実施形態においても適用することおよび互いに組み合わせることが可能であり、その場合、重複する説明は適宜省略する。
<第1の実施形態>
図1(a)は、本発明に係る熱間鍛造用金型の一実施形態を示す斜視図であり、図1(b)は図1(a)のA−Aの位置における断面のうち左側の部分を拡大した部分断面図である。図1(a)に示す熱間鍛造用金型(以下、単に金型ともいう)は、例えば、棒状の鍛造用素材を熱間鍛造によってブレードのような長尺の製品形状に成形するものである。図1(a)に示す熱間鍛造用金型100(以下、単に金型100ともいう)の本体部分1の表面には製品形状に応じた凹状(掘り込み部分)の型彫り面2が形成されている。本発明では前記の掘り込み部分を「型彫り面」として説明する。なお、図1(a)に示す金型は、鍛造用素材を押圧するための上型および下型のうち、下型である。図示は省略するが、上型にも下型の型彫り面に対応する位置に型彫り面が形成されている。長尺の鍛造製品に対応して、図1(a)に示す金型100の型彫り面2の輪郭(加圧によって鍛造用素材が充満する凹部の縁3がなす形状)は、一方向に長い形状を有する。より具体的には、かかる輪郭は長方形状である。
なお、型彫り面の輪郭の形状は図1に示す実施形態の形状に限るものではない。例えば、図1に示す形状以外の長方形状であってもよい。ここで、長方形状とは、実質的に四つの角部を有し、相対的に一方向に長い形状を意味し、例えば、一般的な長方形の他、角にアールまたは面取り部を有する長方形、各辺に凹凸を有する長方形を含む。また、実質的に四つの角部を有し、相対的に一方向に長い形状であれば、根部と翼部を有するブレード素材用の場合のように長手方向に幅が変化している形状も長方形状に含まれる。さらに、型彫り面の輪郭の形状は長方形状に限らず、例えば、長手方向および短手方向を観念できるが長手方向の先端全体が曲線であるレーストラックのような形状や異形状でもよい。
型彫り面を形成した金型で型鍛造を行う場合、欠肉を防ぐとともに、上型と下型による圧下の終盤で加圧力が急激に上昇して過負荷になることを防ぐため、型彫り面の縁を超えて鍛造用素材をはみ出させるための隙間(ばり道)を上型と下型の間に設けるのが一般的である。この場合、型彫り面の縁の部分の金型の摩耗や損傷が特に著しくなり、型彫り面の縁の部分と、その内側の型彫り面の中央寄りの部分とで、摩耗や損傷の程度が大きく異なることになる。かかる問題に対して、特開2014−208379号公報で提案されている構成では、一方向に長い型彫り面を有する金型が長手方向に分割されているため、摩耗等が生じた部分を交換しようとすると内側の部分も含む全体を交換せざるを得なくなり、金型の交換等にかかるコストを十分に低減することができない。
これに対して、図1に示す実施形態では、型彫り面2の縁3に、金型の本体部分1よりも熱間強度が高い、着脱可能な補強部材4を備えている。摩耗等が激しい縁3の部分に相対的に熱間強度が高い補強部材4を配置することで、金型の寿命を延ばすことができる。さらに、かかる補強部材4が着脱可能であるため、補強部材4が摩耗等して使用不能になった場合には、補強部材4のみを交換すればよい。従って、金型の交換作業が大幅に簡略化され、材料ロスも低減される。また、後述する超耐熱合金等の補強部材用の材料は金型の本体部分に比べて高価になるが、補強部材の部分だけ交換すればよいので、金型の維持・交換コストの大幅な低減が可能である。着脱可能な補強部材を用いる構成は、型彫り面、引いてはそれを形成する金型が大きくなればなるほどその効果が大きくなるため、例えば型彫り面(輪郭)の最大寸法(最長部)が1000mm以上の場合に好適であり、2000mm以上の場合に特に好適である。
型彫り面を補強する技術としては肉盛溶接があるが、肉盛溶接を施すためには金型自体を予熱する必要があるうえ、型彫り面が複雑な形状である場合には肉盛溶接をするためのトーチの配置自体が困難な場合もあり、金型の補強や手直しに係る工程が非常に煩雑になる。かかる問題を抱える肉盛溶接に比べて、図1に示す実施形態は、極めて優れた効果を発揮するものである。
補強部材に係る構成についてさらに詳述する。図1(b)の断面図に示すように、型彫り面の縁3に配置された補強部材4の一部は、型彫り面の彫り込み方向(鍛造の加圧方向:z方向)に垂直な方向で型彫り面に露出し、該型彫り面の一部を構成する。補強部材4の他の一部はz方向上側の表面に露出し、ばり道5の一部を構成する。摩耗等の損傷が激しい、凹状の型彫り面のz方向端部およびばり道を含む縁3の部分に補強部材4が配置されているため、摩耗等の対策および交換等に係る金型コスト低減に非常に効果的である。
補強部材4の上面の、ばり道を構成する部分から先には、型彫り面2から遠ざかるにしたがい下側に傾斜する傾斜部6、及びかかる傾斜部6の先に続く、ばり道を構成する面よりも下方に位置する面7で構成される、ばりだまり8が形成されている。図1(b)に示す実施形態では、上述のばりだまり8が形成される位置で、補強部材4が金型の本体部分1に上方からボルト9によって着脱可能に固定されている。なお、図1(a)では、図1(b)に示す補強部材のz方向上側の面の段差やボルトの図示は省略してある。ボルト固定の位置がばりだまりにあることによって、ボルト、ボルト穴等の固定構造が型鍛造中の鍛造用素材の肉流れを阻害することを回避できる。摩耗等によって補強部材4の交換が必要になった場合でも、交換対象が金型の本体部分に比べて極めて小さく、しかもボルト締めのような単純な作業で交換が済むため、交換作業は大幅に簡略化される。ボルト固定としては、所定の位置にネジ山を切った金型の本体部分にボルト固定してもよいし、ボルトとナットの対でボルト締めしてもよい。また、補強部材4の固定方法はこれを特に限定するものではない。例えば、押さえ治具で補強部材を拘束し、該押さえ治具をボルト等で固定することもできる。
型彫り面2のうち、補強部材4の一部が露出している部分以外は金型の本体部分1で構成され、補強部材4で構成された面と本体部分1で構成された面とは、組立て上必要とされるクリアランスや精度ばらつきを超えるような隙間や段差は生じないようにして滑らかに接続されている。
図1に示す実施形態では、補強部材4は、縁に向かって立ち上がる型彫り面2の上側の一部を構成している。かかる構成では、型彫り面2の縁3に近い、ごく一部の部分を交換すればよいので、該構成はコスト低減の観点から好ましい。型彫り面2における補強部材4の下端の位置は、図1に示す構成に限らない。例えば、型彫り面2の、縁3に向かって立ち上がる部分の下端またはそれよりも型彫り面3の中心側に位置してもよい。かかる構成は、摩耗等の損傷がより広い範囲で想定される場合に好適である。
金型の本体部分よりも熱間強度が高い補強部材を用いることで、金型寿命を延ばすことが期待できる。従って、補強部材の材質は、金型の本体部分よりも熱間強度が高ければこれを特に限定するものではない。ここでいう熱間強度は、熱間鍛造の際に金型表面が到達する温度における強度であり、例えば温度500℃における引張強度をその指標とすることができる。金型の本体部分には、例えばJISで規定されるSKD61、SKT4等の熱間金型用の合金工具鋼を用いることができる。これに対して補強部材には、例えば、Alloy718等のNi基超耐熱合金、高速度工具鋼等、熱間金型用の合金工具鋼へ長耐熱合金の肉盛溶接を行った物を用いることができる。このうちAlloy718等のNi基超耐熱合金が特に好ましい。また、金型の長寿命化の観点からは、補強部材の温度500℃における引張強度は1000MPa以上であることがより好ましい。
図1に示す実施形態では、着脱可能に構成する補強部材の全体が金型の本体部分よりも熱間強度が高い材料で構成されているが、型彫り面、ばり道等の、鍛造用素材が接触する金型の表面に、肉盛溶接等により相対的に熱間強度の高い材料を配置することもできる。すなわち、補強部材の一部が金型の本体部分よりも熱間強度が高い材料で構成されていてもよい。
図1に示す実施形態では、補強部材4は、型彫り面2の縁3に沿って隣接配置された複数の補強部材片4a〜4hを有する。図2に示す金型200のように、図1で補強部材片4a〜4hが占める領域を一つの補強部材片10で構成することもできるが、隣接配置された複数の補強部材片で補強部材を構成すること、すなわち補強部材を複数の補強部材片に分割された状態で配置することで、型鍛造の際の応力を分散し、補強部材にかかる最大応力を低減することができる。
また、型彫り面の輪郭が長方形状である図1に示す実施形態では、型彫り面の縁に沿って隣接配置された複数の補強部材片の一部が長方形状の輪郭の四つ角に配置されている。型彫り面の角は応力が集中しやすい位置であるため、かかる位置に補強部材片を配置することは金型の長寿命化によりいっそう有効である。なお、図1に示す実施形態では、長方形状の輪郭の角に合計四つの補強部材片が配置されているが、輪郭の形状に応じて、少なくとも一つの補強部材片が必要な角の位置に配置されていればよい。
さらに、型彫り面の輪郭が長方形状である図1に示す実施形態では、補強部材4は長方形状の長辺側に配置されている。輪郭が長方形状の型彫り面を有する金型で型鍛造を行う場合、短辺方向(y方向)の鍛造用素材変形量が大きくなる傾向にあるため、長辺側の縁の部分の金型摩耗量等が多くなる。従って、少なくとも長辺側に補強部材4を配置することが金型の長寿命化に有利である。図1に示す実施形態のように、角部も含んだ長辺全体に補強部材4を配置することで補強部材による効果がさらに高められる。さらに、短辺側も含めた型彫り面の縁の全周に渡って補強部材を配置して補強部材による効果をよりいっそう高めることもできる。
以上、型彫り面の輪郭が長方形状の場合の、型彫り面の縁における補強部材の配置形態について説明されているが、補強部材(補強部材片)の配置、大きさおよび数については、これに限らず、長方形状の場合も含め型彫り面の輪郭の形状、応力分布等に応じて決定することができる。なお、金型の本体部分についても複数の金型で構成されていても良い。
<第2の実施形態>
図3を参照しつつ、本発明に係る熱間鍛造用金型の他の実施形態を説明する。図3に示す実施形態は、型彫り面の形態等については図1に示す実施形態と同様である。図3は図1(a)のA−Aの位置と同様の位置における金型の断面図である。図3に示す実施形態は、金型の本体部分と補強部材との接触形態が図1に示す実施形態と異なる。補強部材11は、その下部に、型彫り面12の彫り込み方向(z方向)に垂直な方向(型彫り面の縁に垂直な方向であって、図3ではy方向である。)に突出した、断面が矩形の凸部を有し、金型の本体部分13には、かかる凸部と嵌め合わせ可能な凹部が設けられている。かかる凸部および凹部によって、補強部材、金型の本体部分、それぞれに凹凸が形成されている。補強部材11の凹凸が金型の本体部分13の凹凸に嵌合することにより、補強部材11が型彫り面の彫り込み方向(z方向)で拘束される。従って、鍛造の際に補強部材に上方に向かう強い摩擦力が働いても、補強部材の固定状態を安定に維持することができる。ばりだまり部分の位置でのボルト固定に加えて、より型彫り面に近い位置で補強部材を型彫り面の彫り込み方向で拘束するため、図1に示す実施形態に比べてよりいっそう強固に補強部材を固定することができる。
補強部材、金型の本体部分、それぞれに設ける凹凸の形態は、図3に示す形態に限られるものではない。例えば、補強部材に凹部、金型の本体部分に凸部を設けてもよい。また、凹凸の数や形状もこれを特に限定するものではない。例えば、嵌合する凹凸の組の数は図3のように一組でもよいし二組以上でもよい。凹凸の断面形状も図3に示す矩形の他、三角形等でもよい。但し、補強部材をより確実に固定するためには、彫り込み方向(z方向)に垂直な平面で補強部材を拘束することが好ましく、かかる観点から凹凸の断面形状は矩形が好ましい。
図3に示す実施形態の補強部材では、凹凸は型彫り面側の反対側に設けられ、型彫り面の内側から外側に向かって補強部材が挿入されている。一方補強部材の型彫り面側に凹凸を設けることも可能である。例えば、図4に示す変形例のように、彫り込み方向(z方向)に長い補強部材14を用いて、補強部材の型彫り面15を構成する部分よりも下方で金型の本体部分16と嵌め合わせればよい。この場合、例えば、補強部材を型彫り面の外側から内側に向かう方向に挿入し、さらに押さえ治具17で補強部材を固定することが可能である。補強部材の型彫り面を構成する部分の下端(末端)が型彫り面の底面側に至る場合には、図3のように型彫り面の内側から外側に向かって補強部材を挿入することは困難であるため、上述の変形例の構成が有効である。
また、図3に示す実施形態のような、凹凸の嵌合で補強部材を拘束する構成を用いる場合、型彫り面の角の部分も含めて補強部材を一体で構成すると、凹凸の嵌め合わせが困難になる。かかる場合、型彫り面の縁に沿って隣接配置された複数の補強部材片を有する上述の構成を採用し、角の部分を分離することによって、上記凹凸の嵌め合わせが可能になる。従って、型彫り面の縁に沿って隣接配置された複数の補強部材片を有する実施形態は、凹凸の嵌合で補強部材を拘束する構成を用いる場合に特に有効である。
次に、上述の熱間鍛造用金型を用いた鍛造製品の製造方法について説明する。加熱された鍛造用素材を上述の熱間鍛造用金型を用いて熱間鍛造し、鍛造製品を得る。ここでいう鍛造製品は、鍛造が完了した製品、すなわちさらに鍛造は行わない製品の他、さらに鍛造を行う中間製品も含む。鍛造用素材の材質はこれを特に限定するものではないが、航空機エンジン、蒸気タービン等の用途であれば、Ni基超耐熱合金またはTi−6Al−4V等のTi合金を鍛造用素材として用いることができる。なお、ここでいうNi基超耐熱合金とは、含有する元素のうち、質量%でNiを最も多く含む、析出強化型の合金をいい、例えばUdimet520相当合金(UdimetはSpecial Metals社の登録商標)、Udimet720相当合金、Waspaloy相当合金(WaspaloyはUnited Technologies社の登録商標)、Alloy718相当合金などである。鍛造用素材の準備の方法はこれを特に限定するものではなく、従来から知られている工程を経て鍛造用素材を準備すればよい。例えば、溶解法を用いて作製したインゴットに熱間鍛造および機械加工を施すことで鍛造用素材を準備することができる。鍛造素材は材質に応じた熱間鍛造温度に加熱されて、熱間鍛造に供される。熱間鍛造温度は、例えばNi基超耐熱合金であれば850〜1150℃、Ti合金であれば800〜1100℃が実用的な範囲である。加熱された鍛造用素材は型彫り面を備えた下型に載置され、下型と上型で圧下される。この際、鍛造用素材の一部は凹状の型彫り面からはみ出し、ばりを形成する。なお、ここでいう「熱間鍛造」には、恒温鍛造やホットダイも含まれる。
鍛造製品の製造方法において、上述の実施形態に係る熱間鍛造用金型を用いることで、金型の維持・交換コストを抑え、量産性を高めることができる。着脱可能な補強部材を用いた構成は、型彫り面、引いてはそれに必要となる加圧力が大きくなればなるほどその効果が大きくなるため、例えば熱間鍛造の最大荷重が100MN以上の場合に好適であり、300MN以上の場合に特に好適である。熱間鍛造を繰り返して許容範囲を超える摩耗や損傷が生じた場合、補強部材を交換することで、さらに熱間鍛造を行うことができる。
型彫り面の縁に沿って隣接配置された複数の補強部材片で補強部材が構成される場合の効果を確認するため、輪郭が図1と同様の型彫り面を備えた金型に対して以下の解析を行った。
型彫り面の輪郭の概寸は長手方向が1500mm、短手方向が500mmである。長辺部分は分割配置された8個の補強部材片(a〜h)で構成した。金型の本体部分は500℃における引張強度が1000MPaである熱間金型用の合金工具鋼、補強部材片は500℃における引張強度が1230MPaであるNi基超耐熱合金とし、各補強部材片の金型の本体部分への固定構造は図3に示す実施形態と同様にした。鍛造用素材としてNi合金を用い、鍛造用素材の加熱温度を950℃、鍛造開始時の金型温度を400℃として鍛造した場合の、各補強部材片のばり道を構成する部分での応力(最大主応力)を評価した(評価A)。比較のために、補強部材片を用いない、すなわち型彫り面の輪郭の長辺部分も本体部分と一体である金型に対して、評価Aと同様の条件で応力(最大主応力)を評価した(評価B)。評価結果を表1に示す。評価Bの応力は、評価Aの補強部材片の位置に対応する位置での応力である。
Figure 0006924376
表中の応力がマイナス数値であることは圧縮応力であることを示し、プラス数値であることは引張応力であることを示す。応力のかかり方が他の部分と異なる、角部(a、h)での効果は明確ではないが、該角部を除く部分(b〜g)では、いずれの位置においても、型彫り面の縁の部分を複数の補強部材片に分割することで圧縮応力が低下することがわかった。すなわち、型彫り面の縁に着脱可能な補強部材を配置する場合に、複数の補強部材片で補強部材を構成することで、金型のよりいっそうの長寿命化が期待できることが明らかとなった。
1 金型の本体部分
2 型彫り面
3 縁
4 補強部材
5 ばり道
6 傾斜部
7 面
8 ばりだまり
9 ボルト
10 補強部材片
11 補強部材
12 型彫り面
13 本体部分
14 補強部材片
15 補強部材
16 型彫り面
17 本体部分
100 金型
200 金型

Claims (5)

  1. 凹状の型彫り面を有する熱間鍛造用金型であって、
    前記熱間鍛造用金型は、本体部分と、前記本体部分より熱間強度が高く、かつ着脱可能な補強部材と、を備え、
    前記型彫り面の縁部分の少なくとも一部が前記補強部材で構成されており、前記補強部材は、前記型彫り面の縁に沿って隣接配置された複数の補強部材片を有する熱間鍛造用金型。
  2. 前記型彫り面の輪郭が長方形状であり、
    前記輪郭の角の少なくとも一つに前記補強部材が配置された請求項1に記載の熱間鍛造用金型。
  3. 前記型彫り面の輪郭が長方形状であり、
    前記補強部材が、少なくとも前記長方形状の長辺側に配置された請求項1または2に記載の熱間鍛造用金型。
  4. 前記補強部材は、前記型彫り面の彫り込み方向に垂直な方向の凹凸を有し、
    前記金型の本体部分は、前記凹凸に嵌合する凹凸を有し、
    前記補強部材の凹凸が前記金型の本体部分の凹凸に嵌合することにより、前記補強部材が前記型彫り面の彫り込み方向で拘束される請求項1〜のいずれか一項に記載の熱間鍛造用金型。
  5. 加熱された鍛造用素材を請求項1〜のいずれか一項に記載の熱間鍛造用金型を用いて熱間鍛造し、鍛造製品を得る鍛造製品の製造方法。
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