[0006] 本発明の第1の態様によれば、リソグラフィ装置内におけるリソグラフィ効果に対する瞳関数ばらつきの影響を定量化する方法が提供される。この方法は、リソグラフィ装置の瞳面の離散的な二次元感度マップを決定することを備え、リソグラフィ効果は、その感度マップと瞳面の放射ビームの離散的な二次元瞳関数ばらつきマップとの内積によって求められる。
[0007] リソグラフィ装置の瞳面のマップとは、その瞳面における二次元関数、分布、又はマッピングを意味しようとするものであることが理解されるであろう。また、2つのそのようなマップの内積は、瞳面にわたって積分又は合計された2つのマップの積によって求められることが理解されるであろう。離散的な二次元マップは、画素の二次元アレイを備えることが理解されるであろう。瞳面の2つの離散的な二次元マップの場合、内積は、2つのマップの積の全画素の和によって求められる。
[0008] 当業者には、この文脈において、リソグラフィ装置の瞳面とは、概してリソグラフィ装置の投影システムの射出瞳を指すことが理解されるであろう。これは、投影システムの画像側(すなわちウェーハ側)の(投影システム内に位置する)物理的な絞り又は開口の画像である。この瞳面は、画像が形成されるリソグラフィ装置の像面のフーリエ変換平面である。また、当業者には、照明瞳面における放射の強度(又は等価的には電界強度)分布(瞳形状ともいう)が、ウェーハレベル(すなわち像面IP)の光円錐の角度分布を特徴付けることが理解されるであろう。瞳面はリソグラフィ装置の対物面のフーリエ変換平面でもあり、瞳面の放射の電界強度の分布は、対物面に配設されたオブジェクト(例えばマスク)のフーリエ変換に関係する。具体的には、投影システム瞳面の放射の電界強度の分布(すなわちウェーハレベルでの放射の角度分布)は、(a)照明瞳面の放射の電界強度の分布(すなわち、オブジェクトレベルでの放射の角度分布)と(b)オブジェクト(例えばレチクル)のフーリエ変換とのたたみ込みによって求められる。
[0009] 瞳関数ばらつきは、瞳面内の相対位相変動及び/又は瞳面内の相対強度変動を備え得る。瞳面内の相対位相変動は、収差と称され得る。そのような実施形態の場合、瞳関数ばらつきマップは、波面収差マップ又は相対位相マップと称され得る。瞳面内の相対強度変動は、アポダイゼーションと称され得る。そのような実施形態の場合、瞳関数ばらつきマップは、アポダイゼーションマップ又は相対強度マップと称され得る。
[0010] 対物面の各点からの放射を像面内の点に合焦させる完全な光学系の場合、放射の波面は完全に球状であろう。現実の光学系によって導入される収差は、この球状波面の歪みを生じる。このような収差は、様々なリソグラフィ効果(例えばオフセット及び焦点エラー)又はウェーハ上に形成される画像の誤差をもたらす。同様に、現実の光学系によって導入される相対強度変動は、例えばクリティカルディメンジョンの変化など、様々なリソグラフィ効果をもたらし得る。
[0011] 球状波面から現実の光学系の焦点面の点に接近する光の波面の歪みを瞳面の波面収差マップとして表すことは公知である。この波面収差マップは、基底関数の完全なセットの線形結合として表現され得る。特に便利なセットがゼルニケ多項式であり、これは、単位円上に定義される直交多項式のセットを形成する。すると、波面収差マップは、ゼルニケ係数と称され得る、このような展開の係数のセットによって特徴付けることができる。
[0012] ウェーハレベル(すなわち像面)の波面収差マップは、像面上の回折格子と、投影システムの瞳面に共役な平面の干渉パターンを検出するように配置されたディテクタとを備える干渉計を用いて測定され得る。
[0013] いくつかのリソグラフィ効果は、波面収差マップを特徴付けるゼルニケ係数に線形的に対応する。そのようなリソグラフィ効果は、例えば、オーバーレイエラー、デフォーカス、及び何らかの結像非対称(例えば左右非対称及び上下非対称)を含む。したがって、従来技術においては、これらのリソグラフィ効果は、波面収差マップ展開の各ゼルニケ係数と感度係数との積の(ゼルニケ次数の)和として表現され得る。つまり、リソグラフィ効果は、各々が感度係数によって重み付けされたゼルニケ係数の和として表される。したがって、そのような従来技術の構成においては、感度係数のセットは、各ゼルニケ係数がどのようにリソグラフィ効果に寄与するのかを特徴付ける。
[0014] このような従来技術の構成においては、そのような感度係数のセットを用いてリソグラフィ量に対する収差の影響が決定される。しかしながら、実用では、このアプローチには、有限数のゼルニケ次数しか考慮されないために、ある種の切り捨て誤差の問題がある。原則的に、そのような切り捨て誤差は、特に例えば多重極照明モードのようにイルミネータの瞳面において高度に局所化された照明モードを用いる処理にとっては重要な意味を持ち得る。これは、そのような照明モードの感度又は影響を十分に記述するためには、多数の高次ゼルニケ多項式が必要であろうためである。
[0015] 同様に、投影システムの瞳面全体にわたる透過のばらつきは相対強度マップとして表すことができ、これもウェーハレベル(すなわち像面)のセンサを用いて測定することができる。投影システムのそのような相対強度特性(アポダイゼーション特性とも称される)を決定するための方法及び装置は、米国特許第9261402号明細書に記載されている。同文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
[0016] 第1の実施形態による方法は、リソグラフィ効果に対する収差又はアポダイゼーションの影響を、(a)波面収差又はアポダイゼーションが特定のリソグラフィ効果にどのように寄与するのかを特徴付ける処理依存情報を含む感度マップ及び(b)投影システムによって導入される収差又はアポダイゼーションに関係する情報を含む瞳関数ばらつきマップ(例えば波面収差マップ又は相対強度マップ)という2つの部分に因数分解する新規な方法を提供するので、特に有利である。具体的には、この方法は、この因数分解を、2つの部分(感度マップ及び瞳関数ばらつきマップ)がいずれも瞳面のマップとなるように可能にする。波面収差マップ又は相対強度マップは、完全な球状波面からの離脱又は均一な透過を照明角度(すなわち瞳面における位置)の関数として記述する。感度マップは、そのような波面収差又はアポダイゼーションがリソグラフィ効果にどのように寄与するのかを記述する。
[0017] 感度マップは、全次数(ゼルニケ)解析計算として決定され得る。そのような構成によれば、感度マップには切り捨て誤差の問題はない。
[0018] 瞳面の感度マップの決定は複数の画素の決定を備え得る。複数の画素のうちある1つの画素の決定は、瞳関数ばらつきマップの非公称値を有するその画素と公称値を有する他のすべての画素とから生じる画像を決定することと、決定された画像からリソグラフィ効果を決定することと、決定されたリソグラフィ効果と非公称値とに基づいて画素を決定することと、を備える。各画素の公称値は瞳関数ばらつきがないとき(例えば収差又はアポダイゼーションがないとき)に予期されるであろう値であり得ることが理解されるであろう。また、瞳関数ばらつきマップは(収差の)相対位相マップ又は(アポダイゼーションの)相対強度マップであり得ることも理解されるであろう。相対位相マップの場合、各画素の公称値はゼロあろう。相対強度マップの場合も、公称値はゼロであろう(が、絶対強度又は減衰マップの場合は、公称値は1であってもよい)。瞳関数ばらつきマップの非公称値を有するその画素と公称値を有する他のすべての画素とから生じる画像を決定することは、収差(又はアポダイゼーション)を有するその画素と、収差(又はアポダイゼーション)を有さない他のすべての画素とから生じる画像を決定することであると考えられてもよい。
[0019] 決定された画像は、基板の表面上(例えばフォトレジスト)に形成されるであろう画像である。決定された画像は、空中像とも称され得る。もっとも、「空中像」と言う場合、空中又は任意の他の媒体(具体的には、例えば方法が液浸リソグラフィを用いるリソグラフィ装置に適用されている場合には、水)のいずれかに形成される画像を含み得ることが理解されるであろう。
[0020] 感度マップは、リソグラフィ装置の波面収差マップ(又は相対強度マップ)と同じ解像度で計算され得る。リソグラフィ装置の波面収差マップ及び相対強度マップは、例えば、10,000程度の画素を有する。
[0021] したがって、原則的には、所与の処理及び所与のリソグラフィ効果に関する感度マップの全計算は計算集約的であろう。このことは、方法の有用性を限定し得る。しかしながら、以下で更に説明するように、方法のいくつかの実施形態は、これらの計算を有意に加速しひいては方法の有用性を高める工程を用いる。
[0022] 複数の画素の決定の前に、方法は、瞳関数ばらつきのない画像は部分画像の和によって求められるところ、公称値を有する瞳関数ばらつきマップの画素から生じる複数の部分画像を決定することと、複数の部分画像を、複数の画素の決定の際に用いることができるように記憶することと、を備える。
[0023] 概して、画像は、部分画像の和によって求められる。この和は、コヒーレント和、インコヒーレント和又はその両者の組み合わせであり得る。例えば、部分画像のサブセットがコヒーレントに合計され、その後、これらのコヒーレント和の各々がインコヒーレントに合計されてもよい。
[0024] 各部分画像は、特定の値の照明角度、偏光及び回折次数に関係していてもよい。
[0025] 複数の画素のうちある1つの画素の決定は、画像を決定することを備え、各画像は部分画像の和によって求められる。多数の画素が存在し得、各画素の決定は画像の決定を備え、画像は多数の部分画像の和から決定される。したがって、複数の部分画像を、複数の画素の決定の際に用いることができるように記憶することによって、感度マップの計算時間が有意に短縮され得る。
[0026] 方法は更に、瞳関数ばらつきのない全体画像を決定することと、これを複数の画素の決定の前に記憶することと、を備えていてもよい。
[0027] 複数の画素のうち1つの決定は、その画素が寄与する第1組の部分画像の各々について、非公称値を有するその画素と公称値を有する他のすべての画素とから生じる非公称部分画像を決定することと、非公称値を有するその画素と公称値を有する他のすべての画素とから生じる画像を、すべての非公称部分画像とその画素が寄与しない第2組の部分画像のすべてとの和であるものとして決定することと、を備えていてもよい。
[0028] 特に多数の画素を有する高解像度では、部分画像のすべてのうち所与の画素が寄与する部分は小さいであろう。つまり、第1組の部分画像は第2組の部分画像よりも小さい。したがって、感度マップのある1つの画素を決定するための所与の画像の計算の大部分は、感度マップの他のいくつかの画素を決定するための要素と共通の要素を含んでいる。
[0029] 非公称値を有する1つの画素と公称値を有する他のすべての画素とから生じる画像の決定は、記憶された全体画像から、第1組の公称部分画像の各々を減算することと、非公称値を有するその画素と公称値を有する他のすべての画素とから生じる非公称部分画像の各々を加算することと、を備え得る。
[0030] 感度マップは、瞳面のうちリソグラフィ装置によって形成される画像に寄与する一部分についてのみ決定される。
[0031] 有利なことには、これにより、感度マップのうち画像に寄与しない画素を不必要に計算することが回避される。その結果、感度マップを決定するための計算時間の更なる短縮がもたらされる。瞳面のうちリソグラフィ装置によって形成される画像に寄与する部分は、照明モード及び結像されるマスク上のパターンに基づいて決定されてもよい。
[0032] 瞳面の第1の部分の感度マップが決定され、その瞳面の第1の部分の感度マップから瞳面の第2の部分の感度マップが決定されてもよい。
[0033] 本発明の第2の態様によれば、リソグラフィ装置におけるリソグラフィ量に対する収差の影響を定量化する方法が提供され、この方法は、リソグラフィ装置の瞳面の離散的な二次元感度マップを決定することを備え、リソグラフィ効果は、その感度マップと瞳面の放射ビームの離散的な二次元波面収差マップとの内積によって求められる。
[0034] リソグラフィ装置の瞳面のマップとは、その瞳面における二次元関数、分布、又はマッピングを意味しようとするものであることが理解されるであろう。また、2つのこのようなマップの内積は、瞳面にわたって積分又は合計された2つのマップの積によって求められることが理解されるであろう。離散的な二次元マップは画素の二次元アレイを備えることが理解されるであろう。瞳面の2つの離散的な二次元マップの場合、内積は、2つのマップの積の全画素の和によって求められる。
[0035] 当業者には、この文脈において、リソグラフィ装置の瞳面とは、概してリソグラフィ装置の投影システムの射出瞳を指すことが理解されるであろう。これは、投影システムの画像側(すなわちウェーハ側)の(投影システム内に位置する)物理的な絞り又は開口の画像である。この瞳面は、画像が形成されるリソグラフィ装置の像面のフーリエ変換平面である。また、当業者には、照明瞳面における放射の強度(又は等価的には電界強度)分布(瞳形状ともいう)が、ウェーハレベル(すなわち像面IP)の光円錐の角度分布を特徴付けることが理解されるであろう。瞳面はリソグラフィ装置の対物面のフーリエ変換平面でもあり、瞳面の放射の電界強度の分布は、対物面に配設されたオブジェクト(例えばマスク)のフーリエ変換に関係する。具体的には、投影システム瞳面の放射の電界強度の分布(すなわちウェーハレベルでの放射の角度分布)は、(a)照明瞳面の放射の電界強度の分布(すなわち、オブジェクトレベルでの放射の角度分布)と(b)オブジェクト(例えばレチクル)のフーリエ変換とのたたみ込みによって求められる。
[0036] 対物面の各点からの放射を像面内の点に合焦させる完全な光学系の場合、放射の波面は完全に球状であろう。現実の光学系によって導入される収差は、この球状波面の歪みを生じる。このような収差は、様々なリソグラフィ効果(例えばオフセット及び焦点エラー)又はウェーハ上に形成される画像の誤差をもたらす。
[0037] 球状波面から現実の光学系の焦点面の点に接近する光の波面の歪みを瞳面の波面収差マップとして表すことは公知である。この波面収差マップは、基底関数の完全なセットの線形結合として表現され得る。特に便利なセットがゼルニケ多項式であり、これは、単位円上に定義される直交多項式のセットを形成する。すると、波面収差マップは、ゼルニケ係数と称され得る、このような展開の係数のセットによって特徴付けることができる。
[0038] ウェーハレベル(すなわち像面)の波面収差マップは、像面上の回折格子と、投影システムの瞳面に共役な平面の干渉パターンを検出するように配置されたディテクタとを備える干渉計を用いて測定され得る。
[0039] いくつかのリソグラフィ効果は、波面収差マップを特徴付けるゼルニケ係数に線形的に対応する。そのようなリソグラフィ効果は、例えば、オーバーレイエラー、デフォーカス、及び何らかの結像非対称(例えば左右非対称及び上下非対称)を含む。したがって、従来技術においては、これらのリソグラフィ効果は、波面収差マップ展開の各ゼルニケ係数と感度係数との積の(ゼルニケ次数の)和として表現され得る。つまり、リソグラフィ効果は、各々が感度係数によって重み付けされたゼルニケ係数の和として表される。したがって、そのような従来技術の構成においては、感度係数のセットは、各ゼルニケ係数がどのようにリソグラフィ効果に寄与するのかを特徴付ける。
[0040] このような従来技術の構成においては、そのような感度係数のセットを用いてリソグラフィ量に対する収差の影響が決定される。しかしながら、実用では、このアプローチには、有限数のゼルニケ次数しか考慮されないために、ある種の切り捨て誤差の問題がある。原則的に、そのような切り捨て誤差は、特に例えば多重極照明モードのようにイルミネータの瞳面において高度に局所化された照明モードを用いる処理にとっては重要な意味を持ち得る。これは、そのような照明モードの感度又は影響を十分に記述するためには、多数の高次ゼルニケ多項式が必要であろうためである。
[0041] 第1の実施形態による方法は、リソグラフィ量に対する収差の影響を、(a)波面収差が特定のリソグラフィ効果にどのように寄与するのかを特徴付ける処理依存情報を含む感度マップ及び(b)投影システムによって導入される収差に関係する情報を含む波面収差マップという2つの部分に因数分解する新規な方法を提供するので、特に有利である。具体的には、この方法は、この因数分解を、2つの部分(感度マップ及び波面)がいずれも瞳面のマップとなるように可能にする。波面収差マップは、完全な球状波面からの離脱を照明角度(すなわち瞳面における位置)の関数として記述する。感度マップは、そのような波面収差がリソグラフィ効果にどのように寄与するのかを記述する。
[0042] 感度マップは、全次数(ゼルニケ)解析計算として決定され得る。そのような構成によれば、感度マップには切り捨て誤差の問題はない。
[0043] 瞳面の感度マップの決定は複数の画素の決定を備え得る。複数の画素のうちある1つの画素の決定は、収差を有するその画素と、収差を有さない他のすべての画素とから生じる画像を決定することと、決定された画像からリソグラフィ効果を決定することと、決定されたリソグラフィ効果と収差とに基づいて画素を決定することと、を備える。
[0044] 決定された画像は、基板の表面上(例えばフォトレジスト)に形成されるであろう画像である。決定された画像は、空中像とも称され得る。もっとも、「空中像」と言う場合、空中又は任意の他の媒体(具体的には、例えば方法が液浸リソグラフィを用いるリソグラフィ装置に適用されている場合には、水)のいずれかに形成される画像を含み得ることが理解されるであろう。
[0045] 感度マップは、リソグラフィ装置の波面収差マップと同じ解像度で計算され得る。リソグラフィ装置の波面収差マップは、例えば、10,000程度の画素を有し得る。
[0046] したがって、原則的には、所与の処理及び所与のリソグラフィ効果に関する感度マップの全計算は計算集約的であろう。このことは、方法の有用性を限定し得る。しかしながら、以下で更に説明するように、方法のいくつかの実施形態は、これらの計算を有意に加速しひいては方法の有用性を高める工程を用いる。
[0047] 複数の画素の決定の前に、方法は、収差のない画像は部分画像の和によって求められるところ、収差を有さない画素から生じる複数の部分画像を決定することと、複数の部分画像を、複数の画素の決定の際に用いることができるように記憶することと、を備える。
[0048] 概して、画像は、部分画像の和によって求められる。この和は、コヒーレント和、インコヒーレント和又はその両者の組み合わせであり得る。例えば、部分画像のサブセットがコヒーレントに合計され、その後、これらのコヒーレント和の各々がインコヒーレントに合計されてもよい。
[0049] 各部分画像は、特定の値の照明角度、偏光及び回折次数に関係していてもよい。
[0050] 複数の画素のうちある1つの画素の決定は、画像を決定することを備え、各画像は部分画像の和によって求められる。多数の画素が存在し得、各画素の決定は画像の決定を備え、画像は多数の部分画像の和から決定される。したがって、複数の部分画像を、複数の画素の決定の際に用いることができるように記憶することによって、感度マップの計算時間が有意に短縮され得る。
[0051] 方法は更に、収差のない全体画像を決定することと、これを複数の画素の決定の前に記憶することと、を備えていてもよい。
[0052] 複数の画素のうち1つの決定は、その画素が寄与する第1組の部分画像の各々について、収差を有するその画素と収差を有さない他のすべての画素とから生じる収差を含んだ部分画像を決定することと、収差を有するその画素と収差を有さない他のすべての画素とから生じる画像を、収差を含んだすべての部分画像と、その画素が寄与しない第2組の部分画像のすべてとの和であるものとして決定することと、を備えていてもよい。
[0053] 特に多数の画素を有する高解像度では、部分画像のすべてのうち所与の画素が寄与する部分は小さいであろう。つまり、第1組の部分画像は第2組の部分画像よりも小さい。したがって、感度マップのある1つの画素を決定するための所与の画像の計算の大部分は、感度マップの他のいくつかの画素を決定するための要素と共通の要素を含んでいる。
[0054] 収差を有する1つの画素と収差を有さない他のすべての画素とから生じる画像の決定は、記憶された全体画像から、第1組の収差を含まない部分画像の各々を減算することと、収差を有するその画素と収差を有さない他のすべての画素とから生じる収差を含んだ部分画像の各々を加算することと、を備えていてもよい。
[0055] 感度マップは、瞳面のうちリソグラフィ装置によって形成される画像に寄与する一部分についてのみ決定される。
[0056] 有利なことには、これにより、感度マップのうち画像に寄与しない画素を不必要に計算することが回避される。その結果、感度マップを決定するための計算時間の更なる短縮がもたらされる。瞳面のうちリソグラフィ装置によって形成される画像に寄与する部分は、照明モード及び結像されるマスク上のパターンに基づいて決定されてもよい。
[0057] 瞳面の第1の部分の感度マップが決定され、その瞳面の第1の部分の感度マップから瞳面の第2の部分の感度マップが決定されてもよい。
[0058] 本発明の第3の態様によれば、本発明の第1又は第2の態様の方法を用いて決定される感度マップに応じてリソグラフィ処理の1つ以上のパラメータを選択する方法が提供される。
[0059] 感度マップは、例えば照明モード及びレチクルパターンを含むリソグラフィ処理のパラメータのすべてに依存する。感度マップに応じてリソグラフィ処理の1つ以上のパラメータを選択することにより、その1つ以上のパラメータを、リソグラフィ処理が1つ以上のタイプの収差にはより敏感になり他の1つ以上のタイプの収差にはより鈍感になるように、調整又最適化することが可能である。
[0060] この方法は、所望の又は目標の感度マップが達成されるようにリソグラフィ処理の1つ以上のパラメータを選択することを備えていてもよい。
[0061] リソグラフィ処理の1つ以上のパラメータは、照明モードを備えていてもよい。例えば、イルミネータ瞳面の放射の強度が半径座標のみに依存するように回転対称照明モードが選択されてもよい。
[0062] 追加的又は代替的には、リソグラフィ処理の1つ以上のパラメータは、レチクルパターンを備えていてもよい。
[0063] この方法は反復的な方法であってもよい。例えば、この方法は、リソグラフィ処理の1つ以上のパラメータの値の初期セット(例えば初期照明モード)を選択して、その値の初期セットについて感度マップを決定することを備えていてもよい。感度マップが所望の又は目標の感度マップである(あるいはその許容値の範囲内である)場合には、リソグラフィ処理の1つ以上のパラメータの現在の値のセットが選択される。そうでなければ、リソグラフィ処理の1つ以上のパラメータの値のセットは変更され、新たな値のセットについて感度マップが決定されて、所望の又は目標の感度マップと比較される。この処理は、感度マップが所望の又は目標の感度マップになる(あるいはその許容値の範囲内になる)まで繰り返されてもよく、その後、現在の値のセット(これは例えば現在の照明モードに対応し得る)が選択される。
[0064] 方法は非線形最小二乗手順を用いてもよく、これは、開始条件からのメリット関数の最小化を伴い、メリット関数は調整可能なパラメータのセットを有する。適当なアルゴリズムの一例は、レーベンバーグ・マーカートアルゴリズムであるが、他の実施形態は異なるアルゴリズムを使用し得ることが理解されるであろう。
[0065] 波面収差マップへの最も低次のゼルニケ寄与(ゼルニケ係数Z2,Z3及びZ4)は、像面の位置に関係するため、測定するのが最も困難である。その結果、これらの収差は、典型的には波面センサによってではなく、レジスト露光技術によって測定される。波面収差マップへのこうした最低次のゼルニケ寄与(Z2,Z3及びZ4)を測定するために、基板W(レジスト被覆ウェーハ)の複数のターゲット領域C上にマスクが結像される。
[0066] リソグラフィ処理の1つ以上のパラメータ(例えば照明モード及び/又はレチクルパターン)は、選択されたリソグラフィ効果について、感度マップが実質的には測定される1つ以上のゼルニケ寄与のみに敏感であるように選択されてもよい。
[0067] リソグラフィ効果は、公称像面に対するベストフォーカス面のずれ(x及びy方向の横位置とz方向の軸方向位置との両方)であってもよい。測定されるゼルニケ寄与は、波面収差マップへの最も低次のゼルニケ寄与(Z2,Z3及びZ4)であってもよい。
[0068] 本発明の第4の態様によれば、1つ以上の収差を決定する方法が提供され、この方法は、レジスト被覆基板の少なくとも1つのターゲット領域にパターニングデバイスの画像を形成することと、基板を処理することと、その少なくとも1つのターゲット領域に形成された画像を検査して、そこから1つ以上の収差を決定することと、を備えており、パターニングデバイスの画像は、本発明の第2第3による方法を用いて選択されたリソグラフィ処理の1つ以上のパラメータを用いて形成される。
[0069] 収差は、波面収差マップへの最も低次のゼルニケ寄与、すなわちゼルニケ係数Z2,Z3及びZ4であってもよい。
[0070] パターニングデバイスは1つ以上の回折格子を備えていてもよい。基板を処理することは、露光によって硬化された領域又は硬化されていない領域のいずれかを(例えばレジストを現像することによって)選択的に除去することを伴い得る。
[0071] ゼルニケ係数Z2及びZ3を決定するためには、1つ以上のターゲット領域が結像されてもよく、公称像面に対するベストフォーカス面の横(すなわちx及びy方向の)位置が決定され得る。ここから、ゼルニケ寄与Z2及びZ3を決定することができる。例えば、各画像が(例えば走査電子顕微鏡又はオーバーレイメトロロジを用いて)検査されてもよく、各画像の品質が(例えばマスクの画像との比較によって)評価されてもよい。
[0072] ゼルニケ係数Z4を決定するためには、複数のターゲット領域が、基板が異なるz位置の範囲に配設された状態で結像されてもよい。公称像面に対するベストフォーカス面の軸方向(すなわちz方向の)位置が決定されてもよく、ここから、ゼルニケ寄与Z4を決定することができる。ベストフォーカス面は、格子構造の画像のコントラストを最大化する平面として決定され得る。
[0073] 本発明の第5の態様によれば、基板上にパターニングデバイスの画像を形成するリソグラフィ方法が提供され、本発明の第4の態様の方法を用いて決定される1つ以上の収差は少なくとも部分的に補正される。
[0074] 本発明の第6の態様によれば、本発明の第1、第2又は第3の態様の方法を実行するように構成されたリソグラフィ装置が提供される。
[0075] 上記又は下記で述べる本発明の様々な態様及び特徴は、当業者には容易に明らかになるように、本発明の様々な他の態様及び特徴と組み合わせられてもよい。
[0077] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。例えば、これは、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用ガイダンス及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。こうした代替的な用途に照らして、本明細書で「ウェーハ」又は「ダイ」という用語を使用している場合、それぞれ「基板」又は「ターゲット領域」という、より一般的な用語と同義と見なしてよいことが当業者には認識される。本明細書に述べている基板は、露光前又は露光後に、例えばトラック(通常はレジストの層を基板に塗布し、露光したレジストを現像するツール)、メトロロジツール及び/又はインスペクションツールで処理することができる。適宜、本明細書の開示は、以上及びその他の基板プロセスツールに適用することができる。更に基板は、例えば多層ICを生成するために、複数回処理することができ、したがって本明細書で使用する基板という用語は、既に複数の処理済み層を含む基板も指すことができる。
[0078] 本明細書で使用する「放射」及び「ビーム」という用語は、イオンビーム又は電子ビームなどの粒子ビームのみならず、紫外線(UV)放射(例えば、365nm、248nm、193nm、157nmもしくは126nm)及び極端紫外線(EUV)放射(例えば、5nm〜20nmの範囲の波長を有する)を含むあらゆるタイプの電磁放射を網羅する。
[0079] 本明細書で使用する「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット領域にパターンを生成する等のため、放射ビームの断面にパターンを付与するために使用し得るデバイスを指すものとして広義に解釈されるものとする。ここで、放射ビームに付与されるパターンは、基板のターゲット領域における所望のパターンに正確には対応しない場合があることに留意するべきである。一般的に、放射ビームに付与されるパターンは、集積回路等のターゲット領域に生成されるデバイスの特定の機能層に相当する。
[0080] パターニングデバイスは透過性又は反射性でよい。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレイ、及びプログラマブルLCDパネルがある。マスクはリソグラフィにおいて周知のものであり、これには、バイナリマスク、レベンソン型(alternating)位相シフトマスク、ハーフトーン型(attenuated)位相シフトマスクのようなマスクタイプ、更には様々なハイブリッドマスクタイプも含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例は、小型ミラーのマトリクス構成を使用し、ミラーの各々は、入射する放射ビームを異なる方向に反射するように個別に傾けることができる。このようにして、反射ビームがパターニングされる。
[0081] 支持構造は、パターニングデバイスを保持する。特に、支持構造は、パターニングデバイスの方向、リソグラフィ装置の設計等の条件、例えばパターニングデバイスが真空環境で保持されているか否かに応じた方法で、パターニングデバイスを保持する。サポートは、パターニングデバイスを保持するために、機械式、真空式、静電式等のクランプ技術を使用することができる。支持構造は、例えばフレーム又はテーブルでよく、必要に応じて固定式又は可動式でよい。支持構造は、パターニングデバイスが例えば投影システムなどに対して確実に所望の位置に来るようにできる。本明細書において「レチクル」又は「マスク」という用語を使用した場合、その用語は、より一般的な用語である「パターニングデバイス」と同義と見なすことができる。
[0082] 本明細書において使用する「投影システム」という用語は、適宜、例えば露光放射の使用、あるいは浸漬液の使用又は真空の使用などの他の要因に対する、屈折光学システム、反射光学システム、及び反射屈折システムを含む、様々なタイプの投影システムを網羅するものとして広義に解釈されるべきである。本明細書において「投影レンズ」という用語を使用した場合、これは更に一般的な「投影システム」という用語と同義と見なすことができる。
[0083] また、照明システムは、放射ビームを誘導し、整形し、又は制御する屈折、反射、及び反射屈折光学コンポーネントを含む様々なタイプの光学コンポーネントを含んでよく、そのようなコンポーネントも以下においては集合的に又は単独で「レンズ」とも呼ばれることがある。
[0084] リソグラフィ装置は、2つ(デュアルステージ)又はそれ以上の基板テーブル(及び/又は2つ以上の支持構造)を有するタイプでよい。このような「マルチステージ」機械においては、追加のテーブルを並行して使用するか、1つ以上の他のテーブルを露光に使用している間に1つ以上のテーブルで予備工程を実行することができる。
[0085] リソグラフィ装置は、投影システムの最終要素と基板との間の空間を充填するように、基板が比較的高い屈折率を有する液体、例えば水などに液浸されるタイプであってもよい。液浸技術は、投影システムの開口数を増加させるために当技術分野で周知である。
[0086] 図1は、本発明の特定の実施形態によるリソグラフィ装置を概略的に示している。この装置は、
放射ビームPB(例えばUV放射又はEUV放射)を調節するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、
パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持し、アイテムPLに対してパターニングデバイスを正確に位置決めするために第1の位置決めデバイスPMに接続された支持構造(例えばマスクテーブル)MTと、
基板(例えばレジストコートウェーハ)Wを保持し、アイテムPLに対して基板を正確に位置決めするために第2の位置決めデバイスPWに接続された、基板テーブル(例えばウェーハテーブル)WTと、
パターニングデバイスMAによって放射ビームPBに付与されたパターンを基板Wのターゲット領域C(例えば1つ以上のダイを含む)上に結像するように構成された、投影システム(例えば屈折投影レンズ)PLとを備える。
[0087] 本明細書で示すように、本装置は透過タイプである(例えば透過マスクを使用する)。あるいは、装置は反射タイプでもよい(例えば上記で言及したタイプのプログラマブルミラーアレイ又は反射レチクルを使用する)。
[0088] イルミネータILは放射源SOから放射ビームを受ける。放射源SOとリソグラフィ装置とは、例えば放射源がエキシマレーザである場合に、別々の構成要素であってもよい。このような場合、放射源はリソグラフィ装置の一部を形成すると見なされず、放射ビームは、例えば適切な誘導ミラー及び/又はビームエクスパンダなどを備えるビームデリバリシステムBDの助けにより、放射源SOからイルミネータILへと渡される。他の事例では、例えば放射源が水銀ランプの場合は、放射源SOがリソグラフィ装置の一体部分であってもよい。放射源SO及びイルミネータILは、必要に応じてビームデリバリシステムBDと共に放射システムと呼ぶことができる。
[0089] イルミネータILは、ビームの強度分布を変更してもよい。イルミネータは、その断面に所望の均一性と強度分布を有する、調整された放射ビームPBを提供する。
[0090] 放射ビームPBは、支持構造MT上に保持されたパターニングデバイス(例えばマスク)MAに入射する。パターニングデバイスMAを横断した後、ビームPBはレンズPLを通過し、レンズPLはビームを基板Wのターゲット領域Cに合焦させる。第2の位置決めデバイスPW及び位置センサIF(例えば干渉計デバイス)の助けにより、基板テーブルWTを、例えば様々なターゲット領域CをビームPBの経路に位置決めするように正確に移動できる。同様に、第1の位置決めデバイスPMと別の位置センサ(図1には明示されていない)を用いて、マスクライブラリからの機械的な取り出し後又はスキャン中などにビームPBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めできる。一般に、オブジェクトテーブルMT及びWTの移動は、位置決めデバイスPM及びPWの部分を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)及びショートストロークモジュール(微動位置決め)の助けにより実現できる。パターニングデバイスMA及び基板Wは、パターニングデバイスアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせすることができる。
[0091] 投影システムPLは、縮小係数を放射ビームPBに適用して、パターニングデバイスMA上の対応するフィーチャよりも小さいフィーチャを有する画像を形成することができる。例えば、4の縮小係数が適用される。
[0092] 図示の装置は、以下の好ましいモードで使用することができる。
1.ステップモードでは、支持構造MT及び基板テーブルWTは、基本的に静止状態に維持される一方、ビームPBに付与されたパターン全体が1回でターゲット部分Cに投影される(すなわち単一静的露光)。次に、別のターゲット部分Cを露光できるように、基板テーブルWTがX方向及び/又はY方向に移動される。ステップモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一静的露光で像が形成されるターゲット部分Cのサイズが制限される。
2.スキャンモードでは、支持構造MT及び基板テーブルWTは同期的にスキャンされる一方、ビームPBに付与されるパターンがターゲット部分Cに投影される(すなわち単一動的露光)。支持構造MTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影システムPSの拡大(縮小)及び像反転特性によって求めることができる。スキャンモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一動的露光におけるターゲット部分の(非スキャン方向における)幅が制限され、スキャン動作の長さによってターゲット部分の(スキャン方向における)高さが決まる。
3.別のモードでは、支持構造MTはプログラマブルパターニングデバイスを保持して基本的に静止状態に維持され、基板テーブルWTを移動又はスキャンさせながら、ビームPBに与えられたパターンをターゲット部分Cに投影する。このモードでは、一般にパルス状放射源を使用して、基板テーブルWTを移動させる毎に、又はスキャン中に連続する放射パルスの間で、プログラマブルパターニングデバイスを必要に応じて更新する。この動作モードは、以上で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイなどのプログラマブルパターニングデバイスを使用するマスクレスリソグラフィに容易に利用できる。
[0093] 上述した使用モードの組み合わせ及び/又は変形、又は全く異なる使用モードも利用できる。
[0094] 上記で説明したように、投影システムPLは、パターニングデバイスMAによって放射ビームに付与されたパターンを基板Wのターゲット領域C(例えば1つ以上のダイを含む)上に結像するように構成されている。したがって、投影システムPLは、基板W上にパターニングデバイスMAの画像を形成する。放射は、例えばリソグラフィ装置など、光パワーを有する光学素子(すなわち合焦光学素子及び/又は分岐光学素子)を備える光学系を通じて伝搬するにつれ、次に図2を参照して説明されるように、形状及び強度分布の様々な変化を経る。同図は概略的なものであることが理解されるであろう。
[0095] パターニングデバイスMAは投影システムPLの対物面OPに配設されているものと考えられてもよく、基板Wは投影システムPLの像面IPに配設されているものと考えられてもよい。このようなリソグラフィ装置の文脈において、(パターニングデバイスMAが配設されている)投影システムPLの対物面OP、(基板Wが配設されている)投影システムPLの像面IP、及びこれらと共役な任意の平面は、リソグラフィ装置のフィールド平面と称され得る。ある光学系(例えばリソグラフィ装置)において、第1の平面P内の各点が第2の平面P’内の点に結像される場合、2つの平面は共役であることが理解されるであろう。図2には、対物面OPの2つのフィールド点FP1及びFP2が、これらの点の各々を通過する3本の放射と共に示されている。また、像面IPの共役フィールド点FP1’及びFP2’も示されている(像面IPのフィールド点FP1’は対物面OPのFP1と共役であり、像面IPのフィールド点FP2’は対物面OPのFP2と共役である)。図2に示される例は、オブジェクトの反転画像を形成するとともに4の縮小係数を放射ビームPBに適用してパターニングデバイスMA上の対応するフィーチャよりも小さいフィーチャを有する画像を形成する投影システムPLを図示している。
[0096] リソグラフィ装置は、オブジェクトの対物面OPの画像を像面IPに形成するために、光パワーを有する光学素子(すなわち合焦光学素子及び/又は分岐光学素子)を備えることが理解されるであろう。このような光学系内では、フィールド平面の各対の間に、先行するフィールド平面と後続のフィールド平面とのフーリエ変換平面である瞳面を定義することが可能である。そのような各瞳面内の電界の分布は、先行するフィールド平面に配設されたオブジェクトのフーリエ変換に関係している。そのような瞳面の品質はシステムの光学設計に応じて決まること、及びそのような瞳面は湾曲状でさえあり得ることが理解されるであろう。図2には、2つのそのような瞳面である、イルミネータ瞳面PPIL及び投影システム瞳面PPPLが示されている。イルミネータ瞳面PPIL及び投影システム瞳面PPPL(及び任意の他の瞳面)は、互いに共役な面である。
[0097] 投影システム瞳面PPPLは、リソグラフィ装置の投影システムPLの射出瞳と呼ぶことができる。これは、投影システムPLの画像側(すなわちウェーハ側)の(投影システムPL内に位置する)物理的な絞り又は開口の画像である。同様に、イルミネータ瞳面PPILは、イルミネータILの射出瞳と呼ぶことができる。
[0098] なお、フィールド平面の各点は後続の全瞳面にマッピングされ、その逆も同様である。具体的には、(対物面OP又は像面IPのいずれかの)各フィールド点は、ある角度範囲の放射を受ける。各角度は瞳面の異なる点に対応する。したがって、見てわかるように、フィールド平面の複数本の平行な放射が後続の(又は先行する)瞳面の単一点にマッピングされる。図2では、フィールド平面OP,IPに垂直なフィールド点FP1,FP2,FP1’,FP2’を照明する放射の線(これらの線は一点鎖線で示されている)が各瞳面PPIL,PPPLの中心の点P2,P2’にそれぞれマッピングされている。共役なフィールド点FP1,FP2,FP1’,FP2’の各対については、2本の他の平行な放射が(点線及び破線として)示されており、これらは各瞳面PPIL,PPPLの異なる二対の共役点P1,P1’及びP3,P3’にそれぞれマッピングされている。
[0099] なお、投影システム瞳面PPPLの点P1’,P2’及びP3’の各々は、イルミネータ瞳面PPILの点P1,P2及びP3とそれぞれ共役であるが、対物面のマスクからの回折は、概して、イルミネータ瞳面PPILの所与の点からの放射を投影システム瞳面PPPLの複数の点にマッピングさせる。イルミネータ瞳面PPILの所与の点のゼロ次回折ビームは、投影システム瞳面PPPLの共役点上に結像されるであろう。より高次の回折ビームは、投影システム瞳面PPPLの異なる部分上に結像されるか、又は投影システムPLの開口数から外れ、したがって像面IPに形成される画像に寄与しないであろう。
[00100] イルミネータ瞳面PPILにおける放射の強度(又は等価的には電界強度)分布は、照明モード又は瞳フィルと称されてもよく、マスクレベルで(すなわち対物面OP)の光円錐の角度分布を特徴付ける。同様に、投影システム瞳面PPPLにおける放射の強度(又は等価的には電界強度)分布は、ウェーハレベルで(すなわち像面IP)の光円錐の角度分布を特徴付ける。
[00101] 上記で説明したように、イルミネータILは、イルミネータ瞳面PPILのビームの強度分布を変化させ得る。イルミネータは、強度分布がイルミネータ瞳面PPILの環状領域内で非ゼロになるように放射ビームの半径範囲を限定するべく配置されてもよい。追加的又は代替的には、イルミネータILはまた、強度分布がイルミネータ瞳面PPILの複数の等間隔のセクタ内で非ゼロになるようにイルミネータ瞳面PPILにおけるビームの分布を限定するべく動作可能であってもよい。イルミネータILの瞳面における放射ビームの強度分布は、照明モードと称され得る。
[00102] イルミネータILは、ビームの強度分布を調整する調整手段AMを備えていてもよい。概して、イルミネータ瞳面PPILにおける強度分布の少なくとも外側及び/又は内側半径範囲(一般にそれぞれ、σ-outer及びσ-innerと呼ばれる)は、調整することができる。慣例では、イルミネータ瞳面PPIL又は投影システム瞳面PPPLのある点の半径座標σは、典型的には投影システムPLの開口数NAによって(半径σ=1の円が、投影システムPLによって物理的にキャプチャされ像面IP上に結像され得る瞳面の領域に対応するように)正規化される。イルミネータILは、ビームの角度分布を変更するように動作可能であってもよい。例えば、イルミネータILは、イルミネータ瞳面PPILにおけるセクタの数及び角度範囲を変化させるように動作可能であってもよい。ここで、強度分布は非ゼロである。イルミネータILのイルミネータ瞳面PPILのビームの強度分布を調整することによって、異なる照明モードが達成され得る。
[00103] いくつかの実施形態においては、イルミネータILのイルミネータ瞳面PPILにおける強度分布の半径範囲及び角度範囲を限定することによって、強度分布は、例えば二重極、四重極又は六重極分布(それぞれ図3Aから図3Cを参照)などの多重極分布を有し得る。
[00104] 例えば、照明モードは、図3Aに示されるような二重極分布2、図3Bに示されるような四重極分布4、あるいは図3Cに示されるような六重極分布6であってもよい。図3Aから図3Cには円11も示されており、この円は、投影システムPLによって物理的にキャプチャされ像面IP上に結像されることが可能な限界を表している(これは開口数NA、又は投影システムPLによってキャプチャ可能な最大角度の正弦を表す)。投影システムPLの開口数NAによって正規化された座標では、円11は半径σ=1を有する。
[00105] 二重極分布2は、強度が非ゼロである、径方向で対向する2つの極領域8を備えている。各極領域8は、概して環のセクタの形をしており、これは環と円の径方向で対向する2つのセクタとの交線によって定義される。環は、半径がσin及びσout(それぞれσ-inner及びσ-outerと通称される)の2つの同心円によって定義される。この例においては、各極8は、イルミネータ瞳面PPILの中心10に対しておよそ30°の角度にわたっている。各極8は、各極の平均半径方向位置がおよそ0.9になるように、0.83のσ-inner及び0.97のσ-outerを有する。2つの対向する極領域8を二等分する線は、概ねx方向である。この照明モードによれば、放射はy方向に直線偏光され得る。
[00106] 四重極分布4は、図3Aに示されるものと同様の第1の二重極分布と、その第1の二重極分布に対してπ/2ラジアン回転されているが他は同一である第2の二重極分布とを備えている。したがって、四重極分布4は、強度が非ゼロである4つの極領域8を備えている。各極領域の放射は、その極領域を二等分する線に概ね垂直な方向に直線偏光され得る。この偏光モードは、XY偏光と称されてもよく、基板W上に形成される画像のコントラストにおいて良好な結果を達成することができる。
[00107] 六重極分布6は、円の周りに概ね均等に分布した6つの極8を備える。極8の各々は、二重極分布2及び四重極分布4のものと同様である。各極の放射は、その極を二等分する線に概ね垂直な方向に直線偏光され得る。この偏光モードはTE偏光と称され得る。TE偏光の六重極照明は、例えば、孔のアレイ又はブロックのアレイの画像を形成するときに用いることができる。図3Cに示される、6つの極が円の周りに概ね均等に分布している六重極分布6は、六重極照明モードの一実施形態に過ぎないことが理解されるであろう。円の周りに極が不均等に分布している多重極照明モードも一般的であり、特定のパターンを印刷するにはより好都合であろう。多重極照明モードは概して、強度が非ゼロである1対以上の径方向で対向する極領域を備えている。
[00108] 所望の照明モードは、その照明モードを提供する光学素子をイルミネータILに挿入することによって得ることができる。
[00109] イルミネータILは、ビームの偏光を変化させるように動作可能であってもよいし、調整手段AMを用いて偏光を調整するように動作可能であってもよい。イルミネータILのイルミネータ瞳面PPIL全体にわたる放射ビームの偏光状態は、偏光モードと称され得る。異なる偏光モードの使用は、基板W上に形成される画像において、より大きなコントラストを達成することを可能にし得る。放射ビームは無偏光であってもよい。代替的には、イルミネータILは、放射ビームを直線偏光するように配置され得る。放射ビームの偏光方向は、イルミネータILのイルミネータ瞳面PPILの全体にわたって変化し得る。放射の偏光方向は、イルミネータILのイルミネータ瞳面PPILの異なる領域では異なっていてもよい。放射の偏光状態は、照明モードに応じて選択され得る。多重極照明モードの場合、放射ビームの各極の偏光は、イルミネータILの瞳面におけるその極の位置ベクトルに概ね垂直であってもよい。例えば、二重極照明モードの場合には、放射は、二重極の2つの対向するセクタを二等分する線に実質的に垂直な方向に直線偏光され得る。放射ビームは、2つの異なる直交方向のうち一方に偏光されてもよく、これはX偏光状態及びY偏光状態と称され得る。四重極照明モードの場合には、各極のセクタの放射は、そのセクタを二等分する線に実質的に垂直な方向に直線偏光され得る。この偏光モードはXY偏光と称され得る。同様に、六重極照明モードの場合には、各極のセクタの放射は、そのセクタを二等分する線に実質的に垂直な方向に直線偏光され得る。この偏光モードはTE偏光と称され得る。
[00110] また、イルミネータILは一般に、インテグレータIN及びコンデンサCOなど、種々の他のコンポーネントを備えている。
[00111] 調整された放射ビームPBの形状及び強度分布は、イルミネータILの光学素子によって定義される。スキャンモードでは、調整された放射ビームPBは、パターニングデバイスMA上及び基板W上に放射の帯を形成するように、(フィールド平面における)断面が概ね矩形であってもよい。その放射の帯は、露光スリット(又はスリット)とも称され得る。スリットは、より長い寸法(長さと称してもよい)とより短い寸法(幅と称してもよい)とを有し得る。スリットの幅はスキャン方向に対応していてもよく、スリットの長さは非スキャン方向に対応していてもよい。スキャンモードでは、スリットの長さが、単一動的露光の際に露光可能なターゲット領域Cの非スキャン方向の範囲を限定する。対照的に、単一動的露光の際に露光可能なターゲット領域Cのスキャン方向の範囲は、スキャン動作の長さによって決定される。
[00112] イルミネータILは複数の可動フィンガを備えていてもよい。各可動フィンガは、少なくとも放射ビームの経路内に配設されていない引込位置と放射ビームを部分的に遮蔽する挿入位置との間で、独立して移動可能であってもよい。フィンガを移動させることによって、スリットの形状及び/又は強度分布は調整可能である。フィンガはフィールド平面になくてもよく、フィールドは、フィンガが放射ビームPBを鋭く切断しないように、フィンガの周辺部にあってもよい。引込位置と挿入位置との間でのフィンガの移動は、スリットの長さに対して垂直な方向であってもよい。フィンガは対で配置されてもよく、各対はスリットの各側に1つのフィンガを備える。フィンガの対は、スリットの長さに沿って配置されてもよい。フィンガの対は、スリットの長さに沿って放射ビームPBの異なるレベルの減衰を適用するために用いられてもよい。
[00113] イルミネータILは2つのブレード(図示しない)を備えていてもよい。2つのブレードの各々はスリットの長さに概ね平行であってもよく、2つのブレードはスリットの対向側に配設されている。各ブレードは、放射ビームの経路内に配設されていない引込位置と放射ビームを部分的に遮蔽する挿入位置との間で、独立して移動可能であってもよい。また、ブレードは、パターニングデバイスMAの平面に、又は共役フィールド平面に(適切な合焦光学素子がその共役フィールド平面とパターニングデバイスMAとの間に配設された状態で)、配設される。ブレードを放射ビームの経路内へと移動させることによって、放射ビームPBのプロファイルが切り捨てられ、ひいては放射ビームPBのフィールドのスキャン方向の範囲が限定される。したがって、イルミネータのマスキングブレイドは、リソグラフィ装置のフィールド絞りの役割を果たす。
[00114] 対物面OPの各点からの放射を像面IP内の点に合焦させる完全な光学系の場合、IPに接近する放射の波面は完全に球状であろう。現実の光学系(例えば投影システムPL)によって導入される何らかの収差は、この球状波面の歪みを生じるであろう。そのような収差は、様々なリソグラフィ効果、例えばオフセット誤差及び変位誤差又はウェーハW上に形成される画像の変形をもたらす。
[00115] 瞳面PPPLにおける放射ビームの二次元波面収差マップは、従来の手法で決定されてもよい。一例として、瞳面PPPLにおける放射の相対位相は、例えば投影システムPLの対物面OP(すなわちマスクMAの平面)の点状光源から投影システムPLを通して放射を投影すること及びシアリング干渉計を用いて波面(同位相の点の軌跡)を測定することによって決定され得る。シアリング干渉計は共通光路干渉計であり、したがって有利なことには、波面を測定するために二次的な基準ビームを必要としない。シアリング干渉計は、投影システムの像面IP(すなわち基板テーブルWT)には回折格子、例えば二次元格子を備えるとともに、投影システムPLの瞳面PPPLと共役な平面には干渉パターンを検出するように配置されたディテクタを備えていてもよい。この干渉パターンは、シアリング方向の瞳面PPPLの座標に対する放射の位相の導関数に関係している。ディテクタは、例えば電荷結合素子(CCD)のような検知素子のアレイを備えていてもよい。一実施形態においては、回折格子は、直交する2方向で順次スキャンされる。この2方向は、投影システムPLの座標系の軸(x及びy)に一致していてもよいし、又はこれらの軸に対して例えば45°などの角度にあってもよい。スキャンは、整数の格子周期、例えば1格子周期にわたって実施され得る。スキャンは、一方の方向の位相変動を平均化し、他方の方向の位相変動が再構築されることを可能にする。これにより、波面を両方向の関数として決定することが可能になる。技術水準のリソグラフィ装置LAの投影システムPLは可視フリンジを生成し得ないので、波面の決定の精度は、例えば回折格子を移動させるなどの位相ステッピング技術を用いて高めることができる。ステッピングは、回折格子の平面において、測定のスキャン方向に垂直な方向で実施され得る。ステッピング範囲は1格子周期であってもよく、少なくとも3つの(均等に分布した)位相ステップが用いられてもよい。したがって、例えば、3回のスキャン測定がy方向で実施されてもよく、各スキャン測定はx方向の異なる位置について実施される。こうした回折格子のステッピングは位相変動を効果的に強度変動に変換し、位相情報が決定されることを可能にする。
[0116] 球状波面から現実の光学系(例えば投影システムPL)の像面の点に接近する光の波面の歪みを瞳面の波面収差マップとして表すことは公知である。この波面収差マップは、基底関数の完全なセットの線形結合として表現され得る。特に便利なセットがゼルニケ多項式であり、これは、単位円上に定義される直交多項式のセットを形成する。
[00117] したがって、波面収差W(x,y)マップは次のように表現され得る。
ただし、x及びyは瞳面内の座標であり、zn(x,y)はn次ゼルニケ多項式であり、Znは係数である。以下では、ゼルニケ多項式及び係数は、一般的にNoll指標と称される指標で標識されることが理解されるであろう。したがって、zn(x,y)はnというNoll指標を有するゼルニケ多項式であり、ZnはnというNoll指標を有する係数である。すると、波面収差マップは、このような展開の係数Znのセットによって特徴付けることができ、これはゼルニケ係数と称され得る。有限数のゼルニケ次数のみが考慮されることが理解されるであろう。
[00118] いくつかのリソグラフィ効果は、波面収差マップを特徴付けるゼルニケ係数に線形的に対応する。そのようなリソグラフィ効果は、例えば、オーバーレイエラー、デフォーカス、及び何らかの結像非対称(例えば左右非対称及び上下非対称)を含む。したがって、従来技術においては、これらのリソグラフィ効果は、波面収差マップ展開の各ゼルニケ係数と感度係数との積の(ゼルニケ次数の)和として表現され得る。
ただし、Lはリソグラフィ効果(例えばオーバーレイ)であり、Snはn次感度係数である。つまり、リソグラフィ効果Lは、各々が感度係数Snによって重み付けされたゼルニケ係数Znの和として表される。よって、このような従来技術の構成において、感度係数のセットは、各ゼルニケ係数がどのようにリソグラフィ効果Lに寄与するのかを特徴付ける。
[00119] したがって、このような従来技術の構成においては、感度係数Snのセットを用いてリソグラフィ量Lに対する収差の影響が決定される。感度Snは、特定のリソグラフィ処理について、市販のリソグラフィシミュレータを用いて計算されてもよい。しかしながら、この従来技術のアプローチには、有限数のゼルニケ次数しか考慮されないために、ある種の切り捨て誤差の問題がある。原則的に、そのような切り捨て誤差は、例えば多重極照明モード(図3Aから図3Cを参照)のようにイルミネータの瞳面PPILにおいて高度に局所化された照明モードを用いる処理にとって、特に重要な意味を持ち得る。これは、そのような照明モードの感度を十分に記述するためには、多数の高次ゼルニケ多項式が必要であり得るためである。また、より多くのゼルニケ多項式を離散的な格子(すなわち瞳面内の画素の二次元アレイ)上で評価することは、数的に不安定になるため、困難である。
[00120] 本発明の実施形態は、リソグラフィ装置におけるリソグラフィ量に対する収差の影響の定量化に関する。具体的には、これは、リソグラフィ装置の瞳面PPPLの離散的な二次元感度マップの決定を伴うものであり、リソグラフィ効果は、その感度マップと瞳面PPPLの放射ビームの離散的な二次元波面収差マップとの内積によって求められる。特に、感度マップは、全次数(ゼルニケ)解析計算として決定されるので、切り捨て誤差の問題はない。リソグラフィ装置の瞳面のマップとは、その瞳面における二次元関数、分布、又はマッピングを意味しようとするものであることが理解されるであろう。また、2つのそのようなマップの内積は、瞳面にわたって積分又は合計された2つのマップの積によって求められることが理解されるであろう。離散的な二次元マップは画素の二次元アレイを備えることが理解されるであろう。瞳面の2つの離散的な二次元マップの場合、内積は、2つのマップの積の全画素の和によって求められる。
[00121] つまり、離散的な二次元感度マップS(x,y)は、リソグラフィ装置の瞳面PPPLにおいて、リソグラフィ効果がその感度マップと離散的な二次元波面収差マップW(x,y)との内積によって求められるように、決定される。
ただし、この和は、瞳面PPPLの全画素にわたるものである。
[00122] 本発明の実施形態による方法は、リソグラフィ量に対する収差の影響を、(a)波面収差が特定のリソグラフィ効果にどのように寄与するのかを特徴付ける処理依存情報を含む感度マップS(x,y)及び(b)投影システムによって導入された収差に関する情報を含む波面収差マップW(x,y)という2つの部分に因数分解する新規な方法を提供するので、特に有利である。具体的には、この方法は、この因数分解を、2つの部分(感度マップS(x,y)及び波面W(x,y))がいずれも瞳面PPPLにマッピングされるように可能にする。波面収差マップW(x,y)は、完全な球状波面からの離脱を照明角度(すなわち瞳面における位置)の関数として記述する。感度マップS(x,y)は、そのような波面収差がリソグラフィ効果にどのように寄与するのかを記述する。また、本発明の実施形態に従った方法による、リソグラフィ量に対する収差の影響の因数分解は、この影響を、処理依存的でありしたがって各処理について1回しか計算する必要がない部分(感度マップS(x,y))と、リソグラフィ装置に依存的な部分(波面収差マップW(x,y))とにも分ける。
[00123] 更に、感度マップS(x,y)は全次数(ゼルニケ)解析計算として決定されるので、従来技術にあった切り捨て誤差の問題はない。
[00124] 本発明は、二次元感度マップS(x,y)がゼルニケ多項式の線形結合として次のように展開され得るので、形式的には従来技術の方法と等価である。
ただし、係数は従来技術の感度係数Snである。なお、簡潔にするため、ゼルニケ多項式は、任意のゼルニケ多項式と自身との内積が1になるように正規化されると推定する。
[00125] 形式的には従来技術の方法と等価であるが、本発明の実施形態は、収差に対するリソグラフィ効果の感度の代替的な記述を提供する。また、本発明の実施形態は、有限数のゼルニケ次数しか用いられないことに起因して切り捨て誤差による影響を受けない、収差に対するリソグラフィ効果の感度の記述を提供する。
[00126] 所与の処理及び所与のリソグラフィ効果に関する感度マップは、次に説明するように決定可能である。概して、瞳面の感度マップの決定は、感度マップS(x,y)の複数の画素の決定を備える。
[00127] 感度マップS(x,y)は、リソグラフィ装置の波面収差マップW(x,y)と同じ解像度で計算され得る。リソグラフィ装置の波面収差マップW(x,y)は、例えば、10,000程度の画素を有し得る。したがって、原則的には、所与の処理及び所与のリソグラフィ効果に関する感度マップS(x,y)の全計算は計算集約的であろう。このことは、この方法の有用性を限定し得る。しかしながら、以下で更に説明するように、方法のいくつかの実施形態は、これらの計算を有意に加速しひいては方法の有用性を高める工程を用いる。
[00128] いくつかの実施形態においては、像面IPの画像を決定するために、イルミネータ瞳面PPILの同じ点に由来する光はコヒーレントに合計されなければならず、その一方でイルミネータ瞳面PPILの異なる点に由来する光はインコヒーレントに合計されなければならない。つまり、画像は、イルミネータ瞳面PPILのすべての点からの寄与のインコヒーレント和であり(強度加算)、ここで、イルミネータ瞳面PPILの各点からの寄与は、対物面OPから像面へのコヒーレント伝搬(すなわち電界を合計すること)である。イルミネータ瞳面PPILの各点のコヒーレント伝搬には、フーリエ変換、すなわち、対物面OPのマスクから瞳面PPPLへのフーリエ変換、投影システムPLの開口数NAによる切り捨て、及び瞳面PPPLから像面IPのウェーハへの逆フーリエ変換を利用する。
[00129] 以下において、決定された画像又は部分画像と言う場合、基板Wの表面上(例えばフォトレジスト)に形成されるであろう画像を指すことが理解されるであろう。決定された画像は、空中像とも称され得る。もっとも、「空中像」と言う場合、空中又は任意の他の媒体(具体的には、例えば方法が液浸リソグラフィを用いるリソグラフィ装置に適用されている場合には、水)のいずれかに形成される画像を含み得ることが理解されるであろう。
[00130] 感度マップのある1つの画素の決定は、収差を有する(すなわち非公称値)その画素と収差を有さない(すなわち公称値)他のすべての画素とから生じる画像を決定することを備える。つまり、画像は(上述のように)像面IPにおいて、瞳面PPPLの1つの画素のみが収差による影響を受けており瞳面PPPLの他のすべての画素は完全に結像されると仮定して決定される。この画像からリソグラフィ効果が決定される。例えば、画像は、そのような瞳面PPPLの1つの画素のみに影響を及ぼす収差があるとオーバーレイエラーはどうなるかを決定するために用いられ得る。その場合、感度マップS(x,y)の画素は、決定されたリソグラフィ効果及び収差(又は画素の非公称値)から、方程式(3)で求められる感度マップの定義を用いて決定される。なお、1つの画素しか収差を含まないので、波面収差マップW(x,y)は、その1つの画素について、非ゼロにしかならないであろう。したがって、方程式(3)の右辺は、(決定されるべき)感度マップ画素と導入された収差との積になる。よって、感度マップ画素は、決定されたリソグラフィ効果と導入された収差との比によって求めることができる。
[00131] 上記で説明したように、像面IPのある点における画像の強度は、その点に到達する放射の和によって求められ、この和は、コヒーレント和、インコヒーレント和又はその両者の組み合わせであり得る。したがって、画像は、複数の部分画像の和であるものと考えられてもよい。各部分画像は、特定の値の照明角度、偏光及び回折次数に関係していてもよい。部分画像のサブセット(すなわち、放射がイルミネータ瞳面PPILの共有の点に由来するもの)がコヒーレントに合計され、その後、これらのコヒーレント和の各々がインコヒーレントに合計されてもよい。画像は次の方程式によって求められるであろう。
ただし、Iiはi番目の部分画像であり、一般にこの和はコヒーレント和とインコヒーレント和との組み合わせであることが理解されるであろう。
[00132] 感度マップS(x,y)は、リソグラフィ装置の波面収差マップW(x,y)と同じ解像度で計算することができ、したがって10,000程度の画素を有し得る。よって、既に言及したように、所与の処理及び所与のリソグラフィ効果に関する感度マップS(x,y)の全計算は計算集約的であろう。すなわち、これらの画素の各々について画像が決定される。原則的には、各画像について、イルミネータ瞳面PPILの各画素から部分画像が決定される。実用では、対物面のマスクからの回折に起因して、イルミネータ瞳面PPILの各画素から複数の部分画像(マスクの各回折次数につき1つ)が決定される(とともにこれらはコヒーレントに合計される)。したがって、感度マップS(x,y)の各画素の計算は、有意な数の部分画像の計算を伴う。
[00133] しかしながら、発明者は、感度マップS(x,y)のある1つの画素を決定するために決定されることを要する部分画像の有意な部分が、導入された収差による影響を受けないことに気が付いた。感度マップS(x,y)のある1つの画素を決定するために決定されることを要する画像(すなわち、収差を有するその画素と収差を有さない他のすべての画素とから生じる画像)は、次のように表現することができる。
方程式(6)において、第1の和は導入された収差による影響を受ける第1組の部分画像の和であり、I’iは影響を受けた部分画像(非公称部分画像と称されてもよい)であって、収差を考慮している。第2の和は導入された収差による影響を受けない第2組の部分画像の和であり、Iiは部分画像(公称部分画像と称されてもよい)である。第1組の部分画像は第2組の部分画像よりも有意に小さいであろう。第2組の部分画像の各々は、いかなる収差によっても影響を及ぼされない画像(すなわち完全な画像)に寄与する部分画像である。いくつかの実施形態においては、方法は、複数の画素の決定の前に、収差を有する画素から生じたものではない複数の部分画像(すなわち公称部分画像)を決定することを備える。収差のない画像は、これらの部分画像の和によって求められる。いくつかの実施形態においては、収差のない全体画像は、感度マップS(x,y)の複数の画素の決定の前に、決定され記憶されてもよい。
[00134] 収差のない画像に寄与する部分画像は、複数の画素の決定の際に用いることが可能であるように記憶される。複数の部分画像を、複数の画素の決定の際に用いることができるように記憶することによって、感度マップS(x,y)の計算時間が有意に短縮され得る。以降の感度マップS(x,y)の画素の決定にあたっては、導入された収差によって影響される部分画像(すなわち第1組の部分画像又は非公称部分画像)のみを再計算すればよい。
[00135] したがって、感度マップS(x,y)の画素のうち1つの決定は、(その画素が寄与する)第1組の部分画像の各々について、収差を有するその画素と収差を有さない他のすべての画素とから生じる収差を含んだ(非公称)部分画像を決定することを備え得る。つまり、収差を含んだ部分画像は、光のうち(瞳面PPPLの)収差を含んだ画素を通過する部分からのみ決定される。
[00136] その後、収差を有するその画素と収差を有さない他のすべての画素とから生じる画像(感度マップS(x,y)のその画素を決定するために用いられる)は、これらの収差を含んだ部分画像のすべてと(その画素が寄与しない)第2組の部分画像のすべてとの和であるものとして決定され得る。
[00137] 特に多数の画素を有する高解像度では、部分画像のすべてのうち所与の画素が寄与する部分は小さいであろう。つまり、第1組の部分画像は、第2組の部分画像よりも有意に小さい。したがって、感度マップS(x,y)のある1つの画素を決定するための所与の画像の計算の大部分は、感度マップS(x,y)の他のいくつかの画素を決定するための画像の計算と共通の要素を含む。
[00138] 収差を有するある1つの画素と収差のない他のすべての画素とから生じる画像は、記憶された全体画像I(収差なし)から、第1組の部分画像の各々について収差を含まない部分画像Iiを減算すること及び第1組の部分画像の各々について収差を含んだ部分画像I’iを加算することによって、決定され得る。
[00139] いくつかの実施形態においては、感度マップは、瞳面PPPLのうち、リソグラフィ装置によって形成される画像に寄与する一部分についてのみ決定される。有利なことには、これにより、感度マップのうち画像に寄与しない画素を不必要に計算することが回避される。その結果、感度マップを決定するための計算時間の更なる短縮がもたらされる。瞳面のうちリソグラフィ装置によって形成される画像に寄与する部分は、照明モード及び結像されるマスク上のパターンに基づいて決定されてもよい。
[00140] 対称照明モード(すなわち、イルミネータ瞳面PPILにおいて、電界強度がI(x,y)=I(−x,−y)の条件を満たす照明モード)の場合、投影システムの(瞳面の)波面収差への奇数及び偶数の寄与(odd and even contributions)が、概してその投影システムの(像面の)異なるリソグラフィ効果に寄与することが知られている。このため、(方程式(1)の形の)波面収差マップのゼルニケ展開についての記載は有用であり得る(なぜなら、各ゼルニケ多項式zn(x,y)は奇数又は偶数の点別対称性(odd or even pointwise symmetry)を有するからである)。例えば、対称照明モードの場合、波面収差への奇数寄与のみがオーバーレイエラーに寄与し、その一方で波面収差への偶数寄与のみが概してデフォーカスに寄与する。
[00141] 感度マップS(x,y)の定義は、リソグラフィ効果Lは感度マップS(x,y)と波面収差マップW(x,y)との内積によって求められ、この内積は瞳面にわたって積分又は合計された2つのマップの積の形をとる(方程式(3))、というものであることを思い出されたい。対称範囲にわたる奇関数の定積分が消える一方で、対称範囲にわたる偶関数の定積分は概して非ゼロである。したがって、感度マップS(x,y)と波面収差マップW(x,y)との積の偶成分のみがリソグラフィ効果に寄与し得る。波面収差マップW(x,y)への奇数寄与のみがオーバーレイエラーに寄与するので、オーバーレイの感度マップS(x,y)も奇数でなくてはならない(2つの奇関数の積は偶関数である)。同様に、波面収差マップW(x,y)への偶数寄与のみがデフォーカスに寄与するので、デフォーカスの感度マップS(x,y)も偶数でなくてはならない(2つの偶関数の積は偶関数である)。
[00142] したがって、奇数寄与のみ又は偶数寄与のみが波面収差に寄与することがわかっているリソグラフィ効果の場合、感度マップS(x,y)は、瞳面PPPLの半分について決定されるだけでよい。もう半分は、感度マップS(x,y)の既知の対称性、特にS(x,y)=±S(−x,−y)(感度マップが偶数であるか奇数であるかによる)から決定することができる。つまり、瞳面PPPLの第1の部分の感度マップS(x,y)が決定され、瞳面PPPLの第2の部分の感度マップS(x,y)は瞳面PPPLの第1の部分の感度マップS(x,y)から決定される。
[00143] 更に、マスク上のパターンは更なる対称性をもたらすことができ、これは感度マップS(x,y)が瞳面PPPLの更に小さな第1の部分において決定されるだけでよいことを意味し得る。例えば、1方向のラインから成るパターンの場合、点別対称照明モード(point-wise symmetric illumination mode)によれば、感度マップS(x,y)は、瞳面PPPLの四分の一について決定されるだけでよい。例えば、y方向のライン(縦ラインと称してもよい)から成るパターンは、異なる回折次数がx方向で分離される回折パターンを発生させるであろう。そのような構成によれば、感度マップS(x,y)はxの奇関数及びyの偶関数になるであろう。つまり、感度マップS(x,y)は、S(x,y)=−S(−x,y)及びS(x,y)=S(x,−y)を満足するであろう。瞳面PPPLのどちらの半分の感度マップS(x,y)が決定されたのかに応じ、これらの対称関係の1つを用いて、もう半分を決定することができる。同様に、x方向のライン(横ラインと称してもよい)から成るパターンは、異なる回折次数がy方向で分離される回折パターンを発生させるであろう。そのような構成によれば、感度マップS(x,y)はxの偶関数及びyの奇関数になるであろう。つまり、感度マップS(x,y)は、S(x,y)=S(−x,y)及びS(x,y)=−S(x,−y)を満足するであろう。
[00144] 次に、図4Aから図8を参照して、特定のリソグラフィ効果及びリソグラフィ処理の感度マップの例について述べる。
[00145] リソグラフィ処理は、フラッシュメモリデバイスを形成するためにシリコンウェーハWに付与され得る典型的なパターンのためのものである。マスクM上のパターン40が図4Aに示されており、y方向に延びる複数のラインを備えている。パターン40がマスクMに重ねられた状態で、ウェーハWが受ける放射ドーズ量40(収差がないとき)が、x方向の位置の関数として図4Bに示されている。
[00146] 図4Aは、マスクM上の繰り返しパターンの単位セルを示す。パターンは、7本のラインL1〜L7(すなわち、マスクMの光透過部であり、交差した斜線で図示されている)と、その間の7つのスペース(すなわち、マスクMの遮光部)とを備えている。スペースは、少なくとも部分的に光を吸収する材料から形成され得る。例えば、スペースは、スペースによって透過される放射の強度がラインL1〜L7によって透過される放射の強度のおよそ6%を有するような材料から形成されてもよい。図4Aに示される単位セルは、640nmのピッチpを有する。ラインのうち6つL1〜L3,L5〜L7及びスペースのうち6つは40nmという同じ厚さtを有しており、これは、80nmのピッチp1を有するより高い解像度のパターンを形成する。しかしながら、ラインのうち1つL4(図4Aの中央のライン)及びスペースのうち1つ(図4Aの左側のスペースによって形成されるスペース及び図4Aの右側のスペースによって形成されるスペース)はこの厚さの2倍、すなわち80nmの厚さを有している。
[00147] 図4Aに示されるパターン40は、リソグラフィ装置の対物面OPに配設されたマスクM上に提供され、放射感応性材料(レジスト)層を有しリソグラフィ装置の像面IPにある基板(例えばシリコンウェーハ)上に結像されることが理解されるであろう。レジストのうち、閾値を超える放射ドーズ量を受ける領域は変形する(これらの領域は放射によって硬化されている)。ウェーハの後続の処理の際に、放射によって硬化された領域又は硬化されていない領域のいずれかが(例えばエッチングによって)選択的に除去されてもよい。したがって、(この、基板Wの後続の処理の後に)基板W上に形成されるライン及びスペースの厚さは、ウェーハWが受けるエネルギドーズ量42及び(レジストの特性になるであろう)閾値に応じて決まることが理解されるであろう。
[00148] ラインのうち6つL1〜L3,L5〜L7及びスペースのうち6つは同じ厚さt(40nm)を有しているが、収差がない場合であっても、ウェーハW上に形成されるラインの厚さは、概して変化するであろう。しかしながら、ウェーハWが受ける放射ドーズ量42(収差がないとき)は、中央のラインL4の中心について対称であることに留意されたい。したがって、収差がないときには、(基板W上に形成される)ラインL3及びL5の厚さは、同一であるべきである(同様に、ラインL2及びL6の厚さは同一であるべきであり、ラインL1及びL7の厚さは同一であるべきである)。更に、(基板W上に形成される)ラインL3とL4との間のスペースの厚さは(基板W上に形成される)ラインL4とL5との間のスペースの厚さと同一であるべきである(同様に、ラインL2とL3との間のスペースの厚さはラインL5とL6との間のスペースの厚さと同一であるべきであり、ラインL1とL2との間のスペースの厚さはラインL6とL7との間のスペースの厚さと同一であるべきである)。
[00149] しかし、投影システムPLの収差が、ウェーハW上の画像のラインの厚さにおいて予期されるこれらの対称性に影響を及ぼし得る。例えば、画像のより厚い中央のラインの両側の2つのスペース(すなわちラインL4の画像の両側のスペース)に非対称性を生じ得る。したがって、画像におけるこのリソグラフィ効果は画像の歪みであり、左右非対称性(又は上下非対称性)として知られる。
[00150] 主に一方向のラインから構成されている、図4Aに示されるパターン40の場合、図3Aに示される二重極分布2の形の二重極照明の使用によって、良好な結像及び大きなプロセスウィンドウを得ることができる。具体的には、極8は、投影システム瞳面PPPLにおいて、照明システムの2つの極8の各々に由来する1次回折ビームのうち一方が、高解像度パターン(すなわち80nmのピッチp1)によって生じた他方の極からのゼロ次ビームと概ね一致するように配置され得る。つまり、照明モードのパラメータは、2つの極の角度分離2σ(σは各極の半径方向位置である)がλ/(p1・NA)に略等しくなるように選択される。ただし、λは波長、NAは開口数である。この例においては、イルミネータ瞳面PPILの各極の正規化された半径方向位置がおよそ0.9となるように、λ=193nm、p1=80nm及びNA=1.35である。これは図3Aに示される二重極分布2によって満足され、以下では図3Aに示される二重極分布が用いられることを仮定するものとする。
[00151] 次に、投影システム瞳面PPPLの放射の強度分布について、この例示的処理(図4Aに示されるパターン40を図3Aに示される二重極照明モード2によって結像する)の場合を、図5Aから図5Cを参照して述べる。
[00152] (193nmの波長及び1.35の開口数で)640nmのピッチの周期構造から成る図4Aに示されるパターン40を結像することを考える。マスク上のラインL1〜L7は、イルミネータ瞳面PPILの各極8からの放射が投影システム瞳面PPPLの複数の領域にマッピングされるように、放射の回折を引き起こすであろう。図5Aは極8のうち第1の極(図3Aの左側の極)からの放射を受ける投影システム瞳面PPPLの領域を示し、図5Bは極8のうち第2の極(図3Aの右側の極)からの放射を受ける投影システム瞳面PPPLの領域を示す。2つの極8の各々は、その極8のゼロ次回折ビームに対応する投影システム瞳面PPPLの共役領域12を照明する。また、第1の極8は複数の領域13〜20を照明し、これらはそれぞれ+1次から+8次の回折次数に対応する。第2の極8は複数の領域21〜28を照明し、これらはそれぞれ−1次から−8次の回折次数に対応する。なお、ここで、±1次から±8次の回折次数は図4Aに示される(640nmのピッチを有する)パターン40全体に、したがってλ/pという回折次数間の角度分離に関係している。
[00153] 投影システム瞳面PPPLにおいては、領域12,13〜20及び21〜28のみが放射を受けることが理解されるであろう。よって、投影システム瞳面PPPLの中央帯領域30(図5Aを参照)のみが放射を受ける。したがって、この処理(図4Aに示されるパターン40を図3Aに示される二重極照明モード2によって結像する)の場合、感度マップS(x,y)はこの中央帯領域30についてのみ計算されればよい。
[00154] 投影システム瞳面PPPLの領域12,13〜20及び21〜28にわたる放射の強度分布は周期構造の単位セルの形状に依存することが理解されるであろう。図4Aに示されるパターン40について各回折次数が受ける放射の相対電界強度が図6に示されている。したがって、投影システム瞳面PPPLにおける放射ビームの電界強度は、(図6の)適切な相対電界強度によって重み付けされた領域12,13〜20及び21〜28の各々によって与えられる。なお、パターン40のx方向の対称性により(パターン40はこのパターン40を反転させたものと同一である)、(ゼロ次を除く)すべての偶数の回折次数はない。また、中央のラインL4の厚さ、図4Aの左側のスペースによって形成されるスペース、及び図4Aの右側のスペースによって形成されるスペースは、他のライン及びスペースと同じ厚さ(すなわち40nmの厚さ)になろうとするため、パターン全体が7つの同一のライン及びスペースになろうとする。これが起こるにつれ、各回折次数が受ける放射の相対電界強度は、±n・7次の回折次数を除き、ゼロになろうとするであろう。ただし、n=0,±1,±2…である。これらは、同じ厚さの単一のスペース及びラインを備える、より高解像度のパターン(すなわち、ピッチp1が80nmの、より高解像度のパターン)の±n次の回折次数に関係する。
[00155] 図7は、図4Aに示されるパターン40を図3Aに示される二重極照明モード2によって結像する処理の左右非対称の感度マップS(x,y)を示す。図7から明確にわかるように、感度マップは、中央帯30内では非ゼロ値しか有さない。また、感度マップは、二重極照明モード2の形状及びパターン40によって生じる回折パターンによって明らかに影響される。
[00156] 従来技術の技法との比較のために、図7に示される感度マップに関して、等価ゼルニケ感度Snが計算された。n次の感度Sn係数は、感度マップS(x,y)とn次のゼルニケ多項式zn(x,y)との内積を取ること(そして必要であれば、n次のゼルニケ多項式のノルムの二乗で割ること、方程式(4)を参照)によって決定され得る。最初の100個のゼルニケSn係数が決定され、図8に示されている。これらの100個のゼルニケSn係数は、ゼルニケ多項式zn(x,y)と組み合わせて、図9Aに示される従来技術の技法と等価な感度マップを決定するために用いることができる。図7に示される感度マップS(x,y)と、(最初の100個のゼルニケSn係数に基づく)等価な従来技術の感度マップとの差が図9Bに示されている。
[00157] 図9A及び図9Bからわかるように、100個のゼルニケ次数を考慮しても、切り捨て誤差は完全な感度マップS(x,y)からのいくつかの有意な逸脱をもたらす。切り捨て誤差は、(図9Aに示される)等価な従来技術の感度マップが投影システム瞳面PPPLのゼロとなるべきいくつかの領域において非ゼロになることももたらすが、これには何の価値もない。
[00158] レンズ収差によって引き起こされるリソグラフィ効果は、直接測定することが可能である。例えば、ウェーハは、放射に露光され、処理され、その後(例えば走査電子顕微鏡又は類似のものを用いて測定されることによって)解析されてもよい。しかしながら、これらの効果のオンライン決定を実施する何らかの機構を有するのが有用である。従来技術の感度Sn係数及び本発明の感度マップS(x,y)をこの目的のために使用することができる。波面収差マップは、例えば(ウェーハレベルの)フィールド内の複数の点で決定することができる。ここから、何らかのリソグラフィ効果(デフォーカス、オーバーレイなど)の期待値を(従来技術の感度Sn係数又は本発明の感度マップS(x,y)を用いて)決定することが可能である。投影システムPLは、複数のレンズ要素を備えていてもよく、そのレンズ要素を収差(フィールド全体の瞳面PPPLにわたる位相変動)を補正するように調整する調整手段を更に備えていてもよい。これを達成するために、調整手段は、1つ以上の異なる手法で投影システムPL内のレンズ要素を操作するように動作可能であってもよい。投影システムは座標系を有していてもよく、その光軸はz方向に延びる。調整手段は、以下のものの任意の組み合わせを行うように動作し得る。1つ以上のレンズ要素を変位させること、1つ以上のレンズ要素を傾斜させること、及び/又は1つ以上のレンズ要素を変形させること。レンズ要素の変位は任意の方向(x、y、z又はこれらの組み合わせ)であり得る。レンズ要素の傾斜は、典型的には軸を中心としてx又はy方向で回転させることによって光軸に垂直な平面を外れるが、非回転対称非球面レンズ要素の場合にはz軸を中心とした回転が用いられてもよい。レンズ要素の変形は、低周波形状(例えば非点収差)及び高周波形状(例えば自由形非球面(free form aspheres))の両方を含んでいてもよい。レンズ要素の変形は、例えば、アクチュエータを用いてレンズ要素の側面に力を加えることによって、及び/又は加熱要素を用いてレンズ要素の選択された領域を加熱することによって、行われ得る。
[00159] 波面収差マップの測定は投影システムPLによって引き起こされるリソグラフィ効果の間接的な測定を提供することが理解されるであろう。これはその後、リソグラフィ効果を低減させるように投影システムPLを調整するためのフィードバックシステムの一部として用いることができる。各リソグラフィ効果はこの処理において異なる重みを割り当てられてもよい。なぜなら、例えば、所与の処理にとって、あるリソグラフィ効果を最小化することは、潜在的に別のリソグラフィ効果を増大することを犠牲にしても、より重要であり得るからである。所与のリソグラフィ効果及び所与の処理の感度マップが不正確であれば、上述のフィードバック処理の精度が限定されることが理解されるであろう。したがって、全次数計算である(したがって切り捨て誤差の問題を有さない)感度マップS(x,y)を提供することにより、基板W上に形成される画像の品質を向上させることができる。
[00160] 本発明のいくつかの実施形態によれば、上述の感度マップS(x,y)は、次に説明するように、リソグラフィ処理の照明モードを決定するために用いられ得る。例えば、照明モードは、上述の方法を用いて決定された感度マップS(x,y)に応じて選択され得る。感度マップS(x,y)は、照明モードを含むリソグラフィ処理のパラメータのすべてに依存する。感度マップに応じてリソグラフィ処理の照明モードを選択することにより、照明モードを、リソグラフィ処理が1つ以上のタイプの収差にはより敏感になり他の1つ以上のタイプの収差にはより鈍感になるように、調整又は最適化することが可能である。
[00161] 方法は、所望の又は目標の感度マップが達成されるようにリソグラフィ処理の照明モードを選択することを備えていてもよい。この方法は反復的な方法であってもよい。例えば、この方法は、初期照明モードを選択すること、及びその初期照明モードの(リソグラフィ効果及び特定のマスクパターンの)感度マップS(x,y)を決定することを備えていてもよい。感度マップが所望の又は目標の感度マップであるか、あるいはその許容値の範囲内である場合には、現在の照明モードが選択される。そうでなければ、照明モードは変更され、新たな照明モードの感度マップS(x,y)が決定されて、所望の又は目標の感度マップと比較される。この処理は、感度マップS(x,y)が所望の又は目標の感度マップになるか、あるいはその許容値の範囲内になるまで繰り返されてもよく、その後、現在の照明モードが選択される。
[00162] なお、照明モードを選択するこの反復的な処理は、感度マップS(x,y)の決定を加速する上述の特徴によって可能となる。
[00163] この反復的な方法は、例えば、非線形最小二乗手順を用いてもよい。例えば、この反復的な方法は、開始条件からのメリット関数の最小化を伴っていてもよく、メリット関数は調整可能なパラメータのセットを有する。適当なアルゴリズムの一例は、レーベンバーグ・マーカートアルゴリズムであるが、他の実施形態は異なるアルゴリズムを使用し得ることが理解されるであろう。
[00164] 上記で説明したように、投影システムPLによって引き起こされる収差は、像面IPに接近するにつれ、理想的な球状波面からの波面の歪みを生じる。波面収差マップW(x,y)は、これらの収差を記述するとともに、干渉計を用いてウェーハレベルで直接測定されることができる。一例として、基板テーブルWT上にロードされた各ウェーハの場合、波面収差マップW(x,y)は、例えば像面IPの視野の複数の異なる点で測定され得る。上記で説明したように、波面収差マップW(x,y)は、ゼルニケ係数Ziの有限集合によって特徴づけられ得る(上記の方程式(1)を参照)。
[00165] 波面収差マップへの最も低次のゼルニケ寄与(ゼルニケ係数Z2,Z3及びZ4)は、像面IPの位置に関係するため、測定するのが最も困難である。その結果、これらの収差は、典型的には波面センサによってではなく、レジスト露光技術によって測定される。
[00166] 例えば、ゼルニケ係数Z2及びZ3は、瞳面PPPLの波面のx方向及びy方向の傾きをそれぞれ記述し、これらはx方向及びy方向の像面IPの位置に関係する。例えば、瞳面PPPLにおける波面のx方向の傾きは、像面IPに形成される画像のx方向のずれをもたらす。同様に、瞳面PPPLにおける波面のy方向の傾きは、像面IPに形成される画像のy方向のずれをもたらす。つまり、ゼルニケ係数Z2及びZ3によって記述される収差のリソグラフィ効果は、x方向及びy方向のそれぞれにおける画像の位置のずれである。ゼルニケ係数Z4は、瞳面PPPLにおける波面の曲率を記述するとともに、像面のz位置に関係する。つまり、(ゼルニケ係数Z4によって記述される)この収差のリソグラフィ効果は、(例えば公称像面に対する)像面のz方向のずれである。
[00167] 波面収差マップへのこうした最低次のゼルニケ寄与(Z2,Z3及びZ4)を測定するために、基板W(レジスト被覆ウェーハ)の複数のターゲット領域C上にマスクが結像される。ターゲット領域Cは、基板が異なるz位置及び配向の範囲に配設された状態で結像される。基板Wの位置及び配向は、基板テーブルWTを移動させることによって制御される。次に、基板Wはリソグラフィ装置から取り除かれ、例えば、露光によって硬化された領域又は硬化されていない領域のいずれかを(例えばレジストを現像することによって)選択的に除去することにより処理される。その後、各画像が(例えば走査電子顕微鏡又はオーバーレイメトロロジを用いて)検査されてもよく、各画像の品質が(例えばマスクの画像との比較によって)評価されてもよい。各画像の品質は、各画像から1つ以上のリソグラフィ効果を決定することによって評価され得る。例えば、リソグラフィ効果は、公称位置に対する格子マークで形成された画像のx又はy方向のずれの位置(それぞれゼルニケ係数Z2及びZ3の場合)、あるいは公称位置に対するベストフォーカス面のz方向の位置のずれ(ゼルニケ係数Z4の場合)であってもよい。
[00168] 公称像面に対するベストフォーカス面の位置(x及びy方向の横位置とz方向の軸方向位置との両方)が決定されてもよく、ここから、波面収差マップへの最低次のゼルニケ寄与の値(Z2,Z3及びZ4)が決定されてもよい。
[00169] 高次収差の影響を限定するために、露光は、典型的には、主に決定される低次係数に敏感な照明モードを用いて実施される。例えば、ゼルニケ係数Z2,Z3を決定するためには、露光は大きな通常照明モードを用いて実施されるのが典型的であるが、ゼルニケ係数Z4を決定するためには、露光は輪帯照明モードを用いて実施されるのが典型的である。しかしながら、ゼルニケ係数Z2,Z3及びZ4を決定するためのこのレジスト露光技術にも、高次収差の問題がある。
[00170] 上述したように、ゼルニケ係数Z2,Z3を決定する場合、高次収差の影響を限定するために、露光は大きな通常照明モードを用いて実施されるのが典型的である。例えば、強度分布は、イルミネータ瞳面PPILの全体にわたって均一であろう。しかしながら、このインコヒーレントな照明にもかかわらず、測定されるリソグラフィ効果(例えばアライメントマーカの質量中心の位置)は依然として、高次収差に敏感である。これは、瞳の異なる部分は、画像形成とは異なる振幅及び画像形成とは異なるコントラストを有するという事実に起因する。
[00171] 第1の例として、ゼルニケ係数Z2及びZ3の決定を考える。この例の場合、マスクパターンは、1131.5nmの厚さのラインと、その間に介在する1131.5nmの厚さのスペースとを備える格子構造、すなわちピッチが2263nmの格子である。ゼルニケ係数Z2の決定にはy方向に延びるライン(縦ライン)を有する格子構造が用いられ、その一方でゼルニケ係数Z3の決定にはx方向に延びるライン(横ライン)を有する格子構造が用いられる。単一のマーカが縦ライン及び横ラインの両方を備えるマスク上に提供されてもよく、これによってゼルニケ係数Z2及びZ3が同一露光時に決定されることが可能になるであろう。
[00172] Z2収差はy軸を中心とした波面の傾きであり、x方向の画像のずれをもたらす。同様に、Z3収差はx軸を中心とした波面の傾きであり、y方向の画像のずれをもたらす。したがって、対象のリソグラフィ効果は、画像のx位置及びy位置のそれぞれに関係する。具体的には、対象のリソグラフィ効果は、画像の公称位置(すなわち、収差がなければ画像が形成されるであろう位置)からの画像のx方向及びy方向のそれぞれにおけるずれである。照明モードは、これらのx方向及びy方向のずれが、それぞれ実質的にZ2収差及びZ3収差のみに敏感になるように決定するのが望ましい。
[00173] イルミネータ瞳面PPILにおける放射の強度が半径座標σのみに依存するように、回転対称照明モードを選択するのが望ましいであろう。そのような構成によれば、Z2収差及びZ3収差のいずれの決定にも同じ照明モードを使用することができる。代替的には、Z2収差及びZ3収差測定の各々のためにより最適化された照明モードが見つけられてもよい。
[00174] 大きな通常照明モードは、イルミネータ瞳面PPILの全体にわたって均一な強度分布を有する。したがって、図10に示されるように、半径座標σの関数としての放射の相対強度の分布50は一定である。図10に示される照明モードによる、この処理に関しての、x方向のずれについての瞳面PPPLの感度マップ52が図11に示されている。図11の感度マップ52からわかるように、この照明モードによると、このリソグラフィ効果(x方向のずれ)は、2次ゼルニケ寄与(Z2)のみに敏感なのではない。図14Aは、図11に示される感度マップ52に関して計算された、最初の100個の等価ゼルニケ感度Snを示す。図14Aからわかるように、この通常照明モードによれば、高次のゼルニケ寄与から感度マップにいくつかの有意な寄与が存在する。
[00175] このリソグラフィ効果が(実質的に)2次ゼルニケ寄与(Z2)にのみ敏感である、修正された照明モードを選択するのが望ましいであろう。方程式(2)を参照すると、感度Siが1つを除きすべてゼロである場合(すべてのi≠jについてSj≠0及びSi=0)、そのリソグラフィ効果のゼルニケ係数ZjはLとSjとの比によって求められる。感度マップS(x,y)をこのようにして適合させることにより、このZj成分の測定はより正確になる(切り捨て誤差の影響なし)。
[00176] 適当な照明モードを選択するために、非線形最小二乗手順(例えばレーベンバーグ・マーカートアルゴリズム)が用いられた。リソグラフィ効果としてx方向のずれがある場合、純粋な傾きが波面ターゲットとして用いられる。感度マップと傾けられた波面(すなわち、純粋な2次ゼルニケ多項式z2(x,y))との間の差は、二次関数的に合計され(quadratically summed)最小化される。第1の実施形態においては回転対称照明モードが選択された。ここで、イルミネータ瞳面PPILにおける放射の強度分布Iは、次の形のラジアル多項式展開として記述される。
ただし、I0,I2,I4,I6及びI8はアルゴリズムのパラメータである。なお、この多項式展開においては、照明モードが点別に対称(point wise symmetric)になることを保証するように、偶次数のみが選択されている。開始条件としては、I0=1及びIx=0(x≠0)が用いられた。
[00177] このアルゴリズムによって決定される、半径座標σの関数としての放射の相対強度の分布58が、図12に示されている。図12に示される照明モードによる、この処理に関しての、x方向のずれについての瞳面PPPLの感度マップ60が図13に示されている。図13からわかるように、感度マップ60は、図10に示される通常照明モードの感度マップ52よりも純粋な傾きのようである(すなわち、高次のゼルニケ寄与に鈍感である)。図14Bは、図13に示される感度マップ60に関して計算された、最初の100個の等価ゼルニケ感度Snを示す。図14Aと図14Bとの比較からわかるように、この修正された回転対称照明モードによれば、高次のゼルニケ寄与から感度マップへの寄与が優位に低減される。そして、これは、低次収差Z2が決定され得る精度を高める。
[00178] 任意選択的には、このアルゴリズムは、照明モードに対して、例えば正の値のみを要求すること及びすべての角度にわたる積分を固定し続けることなどの追加的な制約を課すことによって、精緻化できる。
[00179] この方法の別の一実施形態は、非回転対称照明モードが決定されることを可能にし得る。そのような実施形態においては、イルミネータIL内の各照光点、すなわちイルミネータ瞳面PPILの各画素は、最適化されるべき自由パラメータである。イルミネータ瞳面PPILの各画素の値は0と1との間で制約され、最適な照明モードが、やはり非線形最小二乗手順(例えばレーベンバーグ・マーカートアルゴリズム)を用いて、見出される。この実施形態は、はるかに大きな最適化スペースを与え、したがって計算にはより時間がかかる。開始条件としては、(図12に示される)回転対称照明モードが用いられる。この処理に最適な非回転対称照明モード61(すなわち、イルミネータ瞳面の電界強度のマップ)が図15Aに示されており、瞳面PPPLのx位置変数の対応する感度マップ62が図15Bに示されている。図15Bからわかるように、感度マップ62は、図12に示される照明モードの感度マップ60よりも純粋な傾きのようである(すなわち、高次のゼルニケ寄与に鈍感である)。図14Cは、図15Bに示される感度マップ62に関して計算された、最初の100個の等価ゼルニケ感度Snを示す。図14Aと、図14Bと、図14Cとの比較からわかるように、この修正された非回転対称照明モードによれば、高次のゼルニケ寄与から感度マップへの寄与が更に低減される。そして、これは、低次収差Z2が決定され得る精度を更に高める。この非回転対称照明モードの潜在的な制限は、ゼルニケ係数Z2及びZ3の2つの最適な照明モードが異なるという点であることが理解されるであろう。よって、ゼルニケ係数Z2及びZ3を決定するためには異なる照明モードが用いられなければならず、したがってこの実施形態によれば、これらのゼルニケ係数は別々に決定されなければならない。
[00180] 第2の例として、ゼルニケ係数Z4の決定を考える。Z4収差は波面の偶数次歪みであり、これはベストフォーカス面のz方向のずれをもたらす。コントラストは焦点と共に変化するので、ベストフォーカスは、(複数のラインの)画像の最大コントラストとして定義される。ベストフォーカス面を決定するためには、画像スルーフォーカスが決定され、画像の最大コントラストをもたらす面がベストフォーカス面である。リソグラフィ効果は、公称の最良焦点面(すなわち収差がないときのベストフォーカス面)からのベストフォーカス面のz方向のずれである。
[00181] この例の場合、マスクパターンは、100nmの厚さのラインと、その間に介在する100nmの厚さのスペースとを備える格子構造、すなわちピッチが200nmの格子である。この例では、ラインはy方向に延びている(縦ライン)。従来は、輪帯照明モード及びTE偏光が選択される。例えば、図16に示されるように、照明モードは、σ-innerが0.79でσ-outerが0.94の輪帯照明であってもよい。TE偏光モードとは、放射が、瞳面PPILの半径方向に概ね垂直な方向で直線偏光されるようなモードである。
[00182] (193nmの波長及び1.35の開口数で)200nmのピッチを有するパターンを結像することを考える。パターンは、イルミネータ瞳面PPILの各点からの放射が投影システム瞳面PPPLの複数の領域にマッピングされるように、放射の回折を引き起こすであろう。図17は、図16に示される輪帯照明モード64の環状領域から放射を受ける投影システム瞳面PPPLの領域を示す。投影システム瞳面PPPLの第1の領域66は、その環状領域のゼロ次回折ビームに対応する。また、±1次回折次数に対応する領域68,70及び±2次回折次数に対応する領域72,74も示されている。
[00183] 投影システム瞳面PPPLでは、これらの領域66,68,70,72,74のみが放射を受けるであろうことが理解されよう。投影システムPLによって物理的にキャプチャされ像面IP上に結像されることが可能な限界を表す円11(これは開口数NA又は投影システムPLによってキャプチャされ得る最大角度の正弦を表す)とこれらの領域66,68,70,72,74との重なった部分のみが放射を受けることも理解されよう。したがって、この処理(図16に示される輪帯照明モード64によって200nmのピッチのパターンを結像する)の場合、感度マップS(x,y)はこれらの領域についてのみ計算されればよい。
[00184] この例では、結像されるパターンは、縦ラインを備えているので、回折次数がx方向で分離される回折パターンを有している。よって、像面に形成される画像は、投影システム瞳面PPPLのx方向で互いに対してずれた複数(この例では最大で5つ)の回折次数をコヒーレントに合計することによって形成される。したがって、これらの縦ラインのコントラストは、x方向のみの波面の曲率に敏感である。ゼルニケ係数Z4の半径依存性は2r2−1である。ただし、投影システム瞳面PPPLのある点の半径座標rは、投影システムPLの開口数NAによって正規化される。瞳面上のx及びy座標に関しては、ゼルニケ係数Z4の半径依存性は2(x2+y2)−1である。同様に、ゼルニケ係数Z5の半径依存性は(x2−y2)である。したがって、x方向の波面の曲率は、これらのゼルニケ多項式の線形結合に比例し、0.25・Z4+0.5・Z5となり、これはx2(すなわちx方向のみの曲率)に比例する。照明モードは、これらの縦ラインの画像におけるコントラストの喪失によって決定されるデフォーカスが、実質的にゼルニケ係数Z4及びZ5のみに敏感になるように決定するのが望ましい。
[00185] 図16に示される照明モードによる、この処理に関しての、ベストフォーカス面のz方向のずれについての瞳面PPPLの感度マップ76が図18に示されている。具体的には、この感度マップ76は、縦ラインの画像の最大コントラストをもたらす平面によって定義されるベストフォーカス面のz方向のずれについてのものである。図19Aは、図18に示される感度マップ76に関して計算された、最初の100個の等価ゼルニケ感度Snを示す。図19Aからわかるように、この通常照明モードによれば、高次のゼルニケ寄与から感度マップにいくつかの有意な寄与が存在する。
[00186] このリソグラフィ効果が主に4次及び5次ゼルニケ寄与(Z4及びZ5)にのみ敏感である、修正された照明モードを選択するのが望ましいであろう。なぜなら、これらは、x方向の曲率に関係するゼルニケ寄与であり、縦ラインのコントラストに影響を及ぼし得るからである。感度マップS(x,y)をこのようにして適合させることにより、このZ4成分の測定はより正確になる(切り捨て誤差の影響なし)。
[00187] 一実施形態においては、回転対称照明モードが選択された。ここで、イルミネータ瞳面PPILにおける放射の強度分布Iは、方程式(8)の形のラジアル多項式展開として記述される。上述したZ2収差及びZ3収差の測定の例と同様に、適当な照明モードを選択するために、非線形最小二乗手順(例えばレーベンバーグ・マーカートアルゴリズム)が、トップハット分布を開始条件(すなわちI0=1及びIx=0(x≠0))として用いられた。
[00188] 多重回折次数間の干渉の結果である、像面における画像形成のコヒーレント部分について考える。対物面のマスクからの回折に起因して、イルミネータ瞳面PP
ILの各点は、投影システム瞳面PP
PLの複数の点上に結像される(マスクの各回折次数につき1つ)。例えば、図17に図示されるように、イルミネータ瞳面PP
ILの各点は、5つの異なる点、すなわち領域66,68,70,72,74の各々に1つの点上に結像される(が、これらの5つの異なる点のすべてが投影システムPLによってキャプチャされ像面IP上に結像されるのではない)。イルミネータ瞳面PP
ILの同じ点に由来する寄与のすべてをコヒーレントに合計して画像が形成される。したがって、パターンは縦(すなわちy方向に延びる)ラインを備えているので、投影システム瞳面PP
PLの各画素は、x方向にずれた他の画素と干渉するであろう。例えば、座標(x,y)の画素は、点(x’,y)と干渉するであろう。ただし、x’=x+kλ/pであり、λは放射の波長、pはパターンのピッチ、kは整数(すなわちk=0,±1,±2,…)である。焦点の波面記述は、
によって求められる。ただし、Δrは異なる回折次数間の座標差である。つまり、波面の所与の曲率について、ベストフォーカス面のz方向のずれは、
に比例する(とともに曲率に比例する)。
[00189] 上記で説明したように、縦ラインを備えるパターンのコントラストを最大化する平面の位置は、y方向の波面の曲率とは無関係である。したがって、y方向の波面の形状には何ら制約はない。以下では、波面はy方向で平坦である(すなわちこの方向に曲率はない)ものと仮定する。波面感度マップは、以下の関数に近似された。
ただし、c0(y)は行依存オフセットパラメータ(row dependent offset parameter)であり、dfは巨視的曲率(global curvature)である。方程式(9)で求められる感度マップと目標感度マップとの間の差は、二次関数的に合計され最小化される。
[00190] 最適化された照明モード78が図20Aに示されており、このアルゴリズムによって決定される、半径座標σの関数としての放射の相対強度の分布80が図20Bに示されている。図20A及び図20Bに示される照明モード78による、この処理に関しての、ベストフォーカス面のz方向のずれについての瞳面PPPLの感度マップ82が図21に示されている。図19Bは、図21に示される感度マップ82に関して計算された、最初の100個の等価ゼルニケ感度Snを示す。図19Aと図19Bとの比較からわかるように、この修正された回転対称照明モードによれば、高次のゼルニケ寄与から感度マップへの寄与が有意に低減される。そして、これは、低次収差Z4が決定され得る精度を高める。
[00191] 上述したように、本発明の実施形態による感度マップS(x,y)は、収差の影響を測定及び制御するための有用なツールを提供する。感度マップS(x,y)は、照明モードを含むリソグラフィ処理のパラメータのすべてに依存する。上記で図9から21を参照して説明したように、感度マップに応じてリソグラフィ処理の照明モードを選択することによって、リソグラフィ処理が1つ以上のタイプの収差にはより敏感になり1つ以上の他のタイプの収差にはより鈍感になるように、照明モードを調整又は最適化することが可能である。感度マップS(x,y)はリソグラフィ処理のパラメータのすべてに依存すること、及び、本発明の代替的な実施形態においては、感度マップS(x,y)はリソグラフィ処理の他のパラメータを決定するために用いられ得ることが理解されるであろう。例えば、マスクパターンは、上述の方法を用いて決定された感度マップS(x,y)に応じて選択され得る。
[00192] 次に、本発明の実施形態による感度マップS(x,y)のいくつかの態様について、図22Aから27を参照して述べる。具体的には、例示的なパターンについて用いられる照明モードの瞳フィルファクタ又は瞳フィルレシオに対する感度マップS(x,y)の依存性について次に述べる。
[00193] マスクM上の例示的なパターン90が図22Aに示されており、y方向に延びる複数のライン(縦ラインと称してもよい)を備えている。パターン90がマスクMに重ねられた状態で、ウェーハWが受ける放射ドーズ量92(収差がないとき)が、x方向の位置の関数として図22Bに示されている。
[00194] 図22Aは、マスクM上の繰り返しパターンの単位セルを示す。パターンは1本おきのライン94(すなわち、マスクMの光透過部であり、交差した斜線で図示されている)と、その間のスペース96(すなわち、マスクMの遮光部)とを備えている。スペース96は、少なくとも部分的に光を吸収する材料から形成され得る。例えば、スペース96は、スペース96によって透過される放射の強度がライン94によって透過される放射の強度のおよそ6%を有するような材料から形成されてもよい。各ライン94及び各スペース96は40nmの厚さを有し、したがって図22Aに示される単位セルは80nmのピッチを有する。
[00195] 図22Aに示されるパターン90は、リソグラフィ装置の対物面OPに配設されたマスクM上に提供され、放射感応性材料(レジスト)層を有しリソグラフィ装置の像面IPにある基板(例えばシリコンウェーハ)上に結像されることが理解されるであろう。レジストのうち、閾値を超える放射ドーズ量を受ける領域は変形する(これらの領域は放射によって硬化されている)。ウェーハの後続の処理の際に、放射によって硬化された領域又は硬化されていない領域のいずれかが(例えばエッチングによって)選択的に除去されてもよい。したがって、(この、基板Wの後続の処理の後に)基板W上に形成されるライン及びスペースの厚さは、ウェーハWが受けるエネルギドーズ量92及び(レジストの特性になるであろう)閾値に応じて決まることが理解されるであろう。
[00196] 上記で説明したように、投影システムPLによって引き起こされる収差は、像面IPに接近するにつれ、理想的な球状波面からの波面の歪みを生じる。また、波面収差マップへの最も低次のゼルニケ寄与(ゼルニケ係数Z2,Z3及びZ4)は、像面IPの位置に関係する。例えば、ゼルニケ係数Z2及びZ3は、瞳面PPPLの波面のx方向及びy方向の傾きをそれぞれ記述し、これらは画像のx方向及びy方向の位置に関係する。ゼルニケ係数Z4は、瞳面PPPLの波面の曲率を記述するとともに、像面IPのz位置に関係する。
[00197] 本例については、2つの観察メトリクス、又はリソグラフィ効果を検討する。第1のリソグラフィ効果は、画像のx位置(例えば、公称位置に対する画像のx方向のずれ)であり、これは、上記で説明したように、ゼルニケ係数Z2によって記述される収差に依存する。第2のリソグラフィ効果は、像面のz位置(例えば、公称像面に対するベストフォーカス面のz方向のずれ)であり、これは、上記で説明したように、ゼルニケ係数Z4によって引き起こされる収差に依存する。
[00198] 主に一方向のラインから構成されている、図22Aに示されるパターン90の場合、二重極照明の使用によって、良好な結像及び大きなプロセスウィンドウを得ることができる。
[00199] 具体的には、極は、投影システム瞳面PPPLにおいて、照明システムの2つの極の各々に由来する1次回折ビームのうち一方が、(80nmのピッチを有する)パターンによって生じた他方の極からのゼロ次ビームと概ね一致するように配置され得る。つまり、照明モードのパラメータは、2つの極の角度分離2σ(σは各極の半径方向位置である)がλ/(p・NA)に略等しくなるように選択される。ただし、λは波長、pはパターン90のピッチ、NAは開口数である。この例においては、イルミネータ瞳面PPILの各極の正規化された半径方向位置がおよそ0.9となるように、λ=193nm、p=80nm及びNA=1.35である。
[00200] 次に、これらのリソグラフィ効果(像面のx位置及びz位置)の感度マップS(x,y)について、このパターン90を想定し、図23Aから図23Eに示される5つの異なる照明モードに関して説明する。5つの照明モードの各々は、図3Aに示される上述した二重極分布2と形が類似した二重極分布100,102,104,106,108を備えている。図23Aから図23Eには円11も示されており、この円は、投影システムPLによって物理的にキャプチャされ像面IP上に結像されることが可能な限界を表している(これは開口数NA、又は投影システムPLによってキャプチャ可能な最大角度の正弦を表す)。投影システムPLの開口数NAによって正規化された座標では、円11は半径σ=1を有する。
[00201] 二重極分布100,102,104,106,108は、各々、強度が非ゼロである、径方向で対向する2つの極領域8を備えている。各極領域8は、概して環のセクタの形をしており、これは環と円の径方向で対向する2つのセクタとの交線によって定義される。環は、半径がσin及びσout(それぞれσ-inner及びσ-outerと通称される)の2つの同心円によって定義される。各二重極分布100,102,104,106,108が異なる瞳フィルファクタ又は瞳フィルレシオを有するように、二重極分布100,102,104,106,108の極領域8は異なっている。ここで、瞳フィルファクタ又は瞳フィルレシオとは、イルミネータ瞳面PPILの放射を受ける面積とイルミネータ瞳面PPILの総面積との比(すなわち、極領域8の総面積と円11のうち投影システムPLの開口数NAを表す面積との比)である。これは、半径σin及びσoutの2つの同心円によって定義される環のサイズと極領域8の角度範囲との両方を変化させることによって達成された。
[00202] 図23Aに示される二重極分布100においては、各極領域8はイルミネータ瞳面PPILの中心10に対しておよそ50°の角度にわたっており、各極の平均半径方向位置がおよそ0.9になるように、各極領域8は0.79のσ-inner及び1.0のσ-outerを有する。
[00203] 図23Bに示される二重極分布102においては、各極領域8はイルミネータ瞳面PPILの中心10に対しておよそ40°の角度にわたっており、各極の平均半径方向位置がおよそ0.9になるように、各極領域8は0.81のσ-inner及び0.99のσ-outerを有する。
[00204] 図23Cに示される二重極分布104においては、各極領域8はイルミネータ瞳面PPILの中心10に対しておよそ30°の角度にわたっており、各極の平均半径方向位置がおよそ0.9になるように、各極領域8は0.83のσ-inner及び0.97のσ-outerを有する。
[00205] 図23Dに示される二重極分布106においては、各極の平均半径方向位置がおよそ0.9になるように、各極領域8はイルミネータ瞳面PPILの中心10に対しておよそ20°の角度にわたっており、各極領域8は0.85のσ-inner及び0.95のσ-outerを有する。
[00206] 図23Aに示される二重極分布100においては、各極領域8はイルミネータ瞳面PPILの中心10に対しておよそ10°の角度にわたっており、各極の平均半径方向位置がおよそ0.9になるように、各極領域8は0.87のσ-inner及び0.93のσ-outerを有する。
[00207] 二重極分布100,102,104,106,108の各々に関して、2つの対向する極領域8を二等分する線は、概ねx方向である。これらの照明モードによれば、放射はy方向に直線偏光され得る。
[00208] (193nmの波長及び1.35の開口数で)80nmのピッチの周期構造から成る図22Aに示されるパターン90を結像することを考える。マスク上のパターン90は、次に図24Aから図24Eを参照して説明される通り、イルミネータ瞳面PPILの各極8からの放射が投影システム瞳面PPPLの複数の領域にマッピングされるように、放射の回折を引き起こすであろう。具体的には、2つの極8の各々は、その極8のゼロ次回折ビームに対応する投影システム瞳面PPPLの共役領域を照明する(図24Aから図24Eに実線で示す)。また、各極領域8からの±1次回折ビームのうち一方の少なくとも一部は、投影システム瞳面PPPLの、他方の極8のゼロ次回折ビームと重なる領域(図24Aから図24Eに点線で示す)を照明するであろう。
[00209] 図25Aから図25Eは、図23Aから図23Eにそれぞれ示される二重極分布100,102,104,106,108を有する照明モードを用いたパターン90の公称位置に対するx方向の画像のずれの感度マップ110,112,114,116,118を示す。
[00210] 図25A−図25Eからは、図5Aから図5Cを参照して上記で述べたように、投影システム瞳面PPPLの局所的な部分のみが放射を受けることがわかる。図25A−図25Eからわかるように、193nmの波長及び1.35の開口数で(80nmのピッチを有する)図22Aに示されるパターン90を結像するときには、投影システム瞳面PPPLのうち2つの局所的な部分のみが放射を受ける。図24Aから図24Eを参照して上記で説明したように、投影システム瞳面PPPLのこれらの局所的な部分の各々は、一方の極領域8のゼロ次回折ビームと、他方の極領域8からの±1次回折ビームの一方とによって定義される。したがって、この処理(図22Aに示されるパターン90を図23Aから図23Eに示される二重極照明モード100,102,104,106,108によって結像する)の場合、感度マップS(x,y)はこれらの局所的な部分についてのみ計算されればよい。これらの2つの局所的な部分は、感度マップS(x,y)の非ゼロ値の画素を含むものと考えられてもよく、その一方で感度マップS(x,y)の他のすべての画素はゼロである。
[00211] 発明者は、概して、投影システム瞳面PPPLのうち(例えばパターン90の)画像形成に寄与する部分のみが波面感度マップにおいて非ゼロ値を有するであろうことに気が付いた。当業者には理解されるように、画像が形成されるためには、パターン(例えばパターン90)によって形成される少なくとも2つの回折次数が(少なくとも部分的に)投影システムPLの開口数内になければならない。具体的には、画像形成に寄与する投影システム瞳面PPPLの複数の(すなわち少なくとも2つの)領域にマッピングされるのは、イルミネータ瞳面PPILのそれらの部分からの放射である。これは、次に述べるように、図25A−図25Eからわかる。
[00212] 図25A−図25Eからは、非ゼロ値を有する感度マップS(x,y)の画素を含む投影システム瞳面PPPLの局所的な部分が、それぞれ概して、投影システム瞳面PPPLの、一方の極領域8のゼロ次回折ビームを受ける部分と、他方の極領域8からの±1次回折ビームのうち一方を受ける部分とによって定義されることがわかる。
[00213] 具体的には、図25A及び図25Bからは、極領域8の各々からの1次回折ビームのうち一方の一部のみが投影システムPPの開口数の範囲内に該当する照明モードの場合、非ゼロ値を有する感度マップS(x,y)の画素を含む投影システム瞳面PPPLの局所的な部分は、概して、(a)投影システムPLの開口数の範囲内に該当する1次回折ビームの部分と、(b)それらの極領域8の0次回折ビームの対応する部分とによって求められることがわかる。図25Aの極端な場合では、非ゼロ値を有する感度マップS(x,y)の画素を含む投影システム瞳面PPPLの局所的な部分は、投影システム瞳面PPPLの、一方の極領域8のゼロ次回折ビームと、他方の極領域8からの±1次回折ビームのうち一方との両方を受ける部分(すなわち、一方の極領域8のゼロ次回折ビームと、他方の極領域8からの±1次回折ビームのうち一方との重なり)である。
[00214] 図25C−図25Eからは、極領域8の各々からの1次回折ビームのうち一方の実質的にすべてが投影システムPPの開口数の範囲内に該当する照明モードの場合、非ゼロ値を有する感度マップS(x,y)の画素を含む投影システム瞳面PPPLの局所的な部分は、概して、前記した1次回折ビームと対応する0次回折ビームとの全体によって求められることがわかる。
[00215] また、図25A−図25Eからは、非ゼロ画素の全体のスケールが照明モードの瞳フィルレシオに反比例することがわかる。例えば、図23Aに示される二重極分布100は最大の瞳フィルレシオを有しており、図23Aから図23Eに示される二重極分布100,102,104,106,108が有する瞳フィルレシオは次第に小さくなっている。図26は、感度マップ110,112,114,116,118の非ゼロ画素の平均値の、(図23Aから図23Eに示される)対応する照明モード100,102,104,106,108の瞳フィルレシオの逆数に対するプロット120を示す。図26からは、感度マップ110,112,114,116,118の非ゼロ画素の平均値は、(図23Aから図23Eに示される)対応する照明モード100,102,104,106,108の瞳フィルレシオの逆数に線形的に比例することがわかる。更に、図26からは、比例定数(すなわちプロット120の傾斜)は、投影システムPLの開口数(すなわち1.35)によって求められることがわかる。これは、以下のように理解されてもよい。
[00216] リソグラフィ効果L(例えば公称位置に対するx方向の画像のずれ)は感度マップS(x,y)と波面収差マップW(x,y)との内積によって求められることを思い出されたい(方程式(3)を参照)。画像がx方向にオフセットdx=1nm変位すると仮定する。NAは投影システムPLの開口数であるところ、これは、−1/NAの波面のx方向の傾きと等価である。放射が投影システムの光軸に対して角度αであるところ、波面の一部の相対位相誤差(例えば公称位相に対して相対的)を考えることによって、相対位相誤差は、オフセットdxと−sin(α)との積によって求められることが示され得る。また、sin(α)=(NA/x)/nである。ただし、xは投影システム瞳面PPPLの対応する部分のx位置であり、nはイメージング媒体の屈折率である。したがって、波面マップは以下によって求められる。
[00217] この波面マップと波面感度マップS(x,y)との内積は、dxすなわち1nmの変位と等しくなる(方程式(3)を参照)。波面感度マップS(x,y)の非ゼロ画素のみがこの内積に寄与するので、波面感度マップS(x,y)の非ゼロ画素の平均値は、対応する照明モードの瞳フィルレシオの逆数に対応する。照明モードの瞳フィルレシオが1に等しい場合を考えると、比例定数は投影システムPLの開口数NAによって求められることがわかる。
[00218] なお、この例示的な処理(二重極モード100〜108のうち1つによってパターン90を結像する)は、投影システムPLの解像度限界に近いので、関連する処理である。パターン90のピッチが(放射の波面に対して)縮小されると、やがては1つの回折次数(2つの極8からの0次ビーム)のみが投影システムPLによってキャプチャされるようになるであろう。その場合、画像は形成されない(0次ビームは一定のオフセット値のみを含み、パターン90のライン94,96についての情報は何ら含まない)。対照的に、パターン90のピッチ90が(放射の波面に対して)増大されると、他のより高次の回折次数が投影システムPLによってキャプチャされ得る。そのようなより大きいピッチのパターンの場合、波面感度マップS(x,y)の非ゼロ画素の平均値と瞳フィルレシオの逆数との対応は、もはや線形的ではなくなるであろう。しかしながら、そのようなより大きいピッチのパターンの場合でさえ、現象は依然として観察される。すなわち、瞳フィルレシオがより低い照明モードを用いることによってより高い感度が提供される。
[00219] 本明細書において用いられているリソグラフィ効果という用語とリソグラフィ量という用語とは同義であることが理解されるであろう。また、リソグラフィ効果という用語とリソグラフィ量という用語とは、概して、リソグラフィ装置によって形成される画像内の効果又は量を指すことが理解されるであろう。
[00220] 図27Aから図27Eは、図23Aから図23Eにそれぞれ示される二重極分布100,102,104,106,108を有する照明モードを用いたパターン90の公称像面に対するベストフォーカス面のz方向のずれの感度マップ122,124,126,128,130を示す。
[00221] 図27A−図27Eからは、やはり投影システム瞳面PPPLの2つの局所的な部分のみが放射を受けることがわかる。非ゼロ値を有する感度マップS(x,y)の画素を含むこれらの2つの局所的な部分は、図25Aから図25Eに示されるものと同一である。また、図27A−図27Eからは、非ゼロ画素の全体のスケールは、やはり照明モードの瞳フィルレシオに反比例することがわかる。図28は、感度マップ122,124,126,128,130の非ゼロ画素の最大値の、(図23Aから図23Eに示される)対応する照明モード100,102,104,106,108の瞳フィルレシオの逆数に対するプロット132を示す。放射が投影システムの光軸に対して角度αであるところ、波面の一部の相対位相誤差(例えば公称位相に対して相対的)を考えることによって、相対位相誤差は、デフォーカスdz(公称像面に対するベストフォーカス面のz方向のずれ)とcos(α)との積に比例することが示され得る。また、sin(α)=(NA・r)/nである。ただし、rは投影システム瞳面PPPLの対応する部分の半径方向位置であり(r2=x2+y2)、nはイメージング媒体の屈折率である。したがって、デフォーカスに関しては、波面マップは、以下によって求められる。
図28からは、このリソグラフィ効果(焦点)に関しては、感度マップS(x,y)の非ゼロ画素の平均値と(図23Aから図23Eに示される)対応する照明モード100,102,104,106,108の瞳フィルレシオの逆数との対応は、より複雑である(すなわち、もはや線形的ではない)ことがわかる。
[00222] 上述した実施形態において、感度マップS(x,y)は、リソグラフィ効果Lが感度マップS(x,y)と波面収差マップW(x,y)との内積によって求められるように定義される(方程式(3)を参照)。上述した方法のすべては、リソグラフィ効果Lが感度マップS(x,y)と相対強度マップA(x,y)との内積によって求められるように定義された感度マップS(x,y)にも適用され得ることが理解されるであろう。相対強度マップA(x,y)は、アポダイゼーションマップA(x,y)とも称され得る。原則的に、当業者には理解されるように、上述の方法及び技術は、任意の瞳関数ばらつき(強度又は位相のいずれか)に適用され得る。
[00223] 図29は、図23Cに示される二重極照明モードを用いて結像された図22Aに示されるパターン90の、印刷されたクリティカルディメンジョンのアポダイゼーション感度マップ134を示す。つまり、印刷されたクリティカルディメンジョンは、感度マップ134と相対強度マップA(x,y)との内積によって求められる。
[00224] 以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実践できることは理解されよう。説明は、本発明を限定することを意図していない。