本発明の内装用表面材(以下、単に「表面材」と表記することがある)を構成する不織布は、表面粗さ(SMD)が2.5以下、摩擦係数の変動(MMD)が0.011以下、かつ平均動摩擦係数(MIU)が0.30以上である主面を有する。本発明者は、このような物性を同時に満たすことによって、触感に優れていることを見出した。また、表面材を構成する不織布の通気度は40cm3/cm2・s以下である。本発明者は、通気度が40cm3/cm2・s以下であることによって、共鳴振動により低周波領域の吸音率が向上し、吸音性に優れることも見出した。なお、本発明における「主面」は表面材である不織布の面の中で、最も面積の広い面積を有する面を意味し、主面の中で、少なくとも1つの主面が前記物性を満たす。以下、前記物性を満たす主面を「平滑柔軟主面」と表記することがある。
この表面粗さは文字通り、主面における凹凸、つまり平滑性を示す指標であり、本発明者らの検討により、表面粗さ(SMD)が2.5以下であれば、優れた触感であることに寄与できることを見出した。表面粗さ(SMD)の値が小さい方が、平滑で、より優れた触感となる傾向があるため、表面粗さ(SMD)は2.3以下であるのが好ましく、2.1以下であるのがより好ましく、2.0以下であるのが更に好ましい。なお、表面粗さ(SMD)の下限は特に限定するものではないが、理想的には、全く凹凸のない表面粗さを示す0である。この表面粗さ(SMD)は表面試験機(KES−FB4)を用いて測定される値であり、表面材の試料(20cm角)を試験機に400gの荷重をかけてセットし、粗さ接触子(0.5mmワイヤー、接触面幅:5mm)に10.0gの加重をかけて試料に接触させ、試料を1mm/sec.の速度で移動させて測定した平均偏差を意味する。
また、摩擦係数の変動(MMD)は、表面試験機(KES−FB4)を用いる測定を、摩擦子を表面材の主表面と当接させ、表面材を移動させることにより、摩擦子が表面材を撫でるような状態で測定するため、表面材の主面の均一性を意味し、本発明者の検討により、摩擦係数の変動(MMD)が0.011以下であれば、優れた触感であることに寄与できることを見出した。この摩擦係数の変動(MMD)の値が小さければ小さい程、平滑柔軟主面が均一で、より優れた触感となる傾向があるため、摩擦係数の変動(MMD)は0.010以下であるのが好ましい。なお、摩擦係数の変動(MMD)の下限は特に限定するものではないが、理想的には、摩擦係数が全く同じで、平滑柔軟主面が均一であることを示す0である。この摩擦係数の変動(MMD)は、表面試験機(KES−FB4)を用いて測定される値であり、表面材の試料(20cm角)を試験機に400gの荷重をかけてセットし、摩擦子(10mm×10mm)に50gの加重をかけて試料に接触させ、試料を1mm/sec.の速度で移動させて測定した平均偏差を意味する。
更に、平均動摩擦係数(MIU)は表面材の柔軟性を意味し、本発明者の検討により、平均動摩擦係数(MIU)が0.30以上であれば、優れた触感であることに寄与できることを見出した。つまり、この平均動摩擦係数(MIU)の測定は摩擦子に加重を掛けて表面材と接触させ、表面材が柔らかいと、摩擦子が表面材に沈み込んだ状態となり、その状態で表面材を移動させることから、平均動摩擦係数が大きくなるが、具体的に、平均動摩擦係数(MIU)が0.30以上であると、優れた触感であることに寄与できることを見出した。この平均動摩擦係数の値が大きい程、柔軟で、より優れた触感となる傾向があるため、平均動摩擦係数(MIU)は0.31以上であるのが好ましく、0.32以上であるのがより好ましい。一方で、平均動摩擦係数(MIU)の値が大き過ぎると、摩擦抵抗が強過ぎて、指が引っかかるような感触となり、逆に触感を損なう場合があるため、1.00以下であるのが好ましい。この平均動摩擦係数(MIU)は、表面試験機(KES−FB4)を用いて測定される値であり、摩擦係数の変動(MMD)を測定する条件と同じ条件で測定した平均値を意味する。
更に、本発明者は表面材を構成する不織布の通気度が40cm3/cm2・s以下であると、微細な空隙を有する不織布であることができ、共鳴振動により低周波領域の吸音性に優れていることを見出した。この通気度が小さければ小さい程、微細な空隙を有する不織布であることができ、吸音性に優れている傾向があるため、通気度は35cm3/cm2・s以下であるのが好ましく、30cm3/cm2・s以下であるのがより好ましく、25cm3/cm2・s以下であるのが更に好ましい。なお、通気度の下限は0cm3/cm2・sを超える値である。通気度が0cm3/cm2・sであると、全く通気がなく、遮音になるためで、吸音効果が期待される周波数領域の範囲が広いように、5cm3/cm2・s以上であるのが好ましい。なお、この「通気度」はJIS L1913:2010「一般不織布試験方法」に規定される6.8.1(フラジール形法)によって測定される値をいう。
このような表面粗さ、摩擦係数の変動、及び平均動摩擦係数を有する平滑柔軟主面を有するとともに、通気度の低い表面材は不織布からなるが、2つの不織布層を含んでいるのが好ましい。つまり、前述のような表面粗さと摩擦係数の変動とを満たすのに貢献度の大きい、表面材の前記平滑柔軟主面を構成する第1不織布層と、前述のような平均動摩擦係数を満たすのに貢献度の大きい、前記第1不織布層とは別の第2不織布層とを含んでいるのが好ましい。
より具体的には、第1不織布層は表面粗さ(SMD)が2.5以下、摩擦係数の変動(MMD)が0.010以下の平滑で均一、かつ平均動摩擦係数(MIU)が0.15以上の、ある程度の柔らかさを有する主面(以下、「平滑主面」と表記することがある)を有する不織布から構成されているのが好ましい。より好ましくは、表面粗さ(SMD)が2.2以下、摩擦係数の変動(MMD)が0.009以下、かつ平均動摩擦係数(MIU)が0.16以上の不織布からなり、更に好ましくは、表面粗さ(SMD)が2.0以下、摩擦係数の変動(MMD)が0.009以下、かつ平均動摩擦係数(MIU)が0.18以上の不織布からなる。
一方で、第2不織布層は表面粗さ(SMD)が3.5以下、摩擦係数の変動(MMD)が0.014以下のある程度、平滑で均一、かつ平均動摩擦係数(MIU)が0.25以上の柔らかい主面(以下、「柔軟主面」と表記することがある)を有する不織布から構成されているのが好ましい。より好ましくは、表面粗さ(SMD)が3.2以下、摩擦係数の変動(MMD)が0.012以下、かつ平均動摩擦係数(MIU)が0.28以上の不織布からなり、更に好ましくは、表面粗さ(SMD)が3.0以下、摩擦係数の変動(MMD)が0.010以下、かつ平均動摩擦係数(MIU)が0.30以上の不織布からなる。このように、第2不織布層もある程度、平滑で均一な柔軟主面を有することによって、第1不織布層が本来有する平滑で均一な平滑主面への影響を最小限に抑えるようにするのが好ましい。そのため、第2不織布層の前記柔軟主面は、第1不織布層の前記物性を有する平滑主面に対向する主面と対向する状態で積層一体化しているのが好ましい。
本発明の表面材を構成する不織布は上述のように第1不織布層と第2不織布層とを含んでいるのが好ましいが、第1不織布層と第2不織布層以外の不織布層を含んでいても良い。このような第3の不織布層を含んでいる場合、第1不織布層と第2不織布層によって達成される触感を損なうことがないように、第3の不織布層は表面粗さ(SMD)が3.5以下、摩擦係数の変動(MMD)が0.014以下、かつ平均動摩擦係数(MIU)が0.15以上であるのが好ましい。なお、このような第3の不織布層を有する場合であっても、第1不織布層と第2不織布層とは隣接して積層一体化した状態にあり、第1不織布層の平滑主面が表面材の平滑柔軟主面を構成しているのが好ましい。
本発明の「不織布層」とは、その層自体で取り扱うことのできる形態安定性を有する不織布の層を意味する。つまり、その層自体が絡合、バインダ接着、及び/又は繊維融着によって、繊維同士が結合した不織布の状態にあることを意味する。そのため、未だ繊維同士が結合していない繊維ウエブの状態で積層した後、繊維同士を結合して不織布を製造した場合、不織布層は1層であり、2層以上の不織布層を有するものではない。このように繊維ウエブの状態で積層した場合、積層した繊維ウエブの表面が粗くなる傾向があり、この点を改善するために、積層した繊維ウエブを加熱加圧することによって、表面を平滑にすると、厚さが薄くなり、柔らかさが損なわれてしまい、本発明の表面材のような表面粗さ、摩擦係数の変動、及び平均動摩擦係数を同時に満たすことは困難である。
本発明の不織布(例えば、第1不織布層、第2不織布層)を構成する繊維の繊度は特に限定するものではないが、ある程度細く、しかも分散性に優れていることによって、平滑かつ均一な平滑柔軟主面を形成しやすいように、また、通気度が40cm3/cm2・s以下でありやすいように、0.5〜6.6dtexであるのが好ましく、0.5〜4.4dtexであるのがより好ましく、0.7〜3.3dtexであるのが更に好ましい。
特に、第1不織布層を構成する繊維は、平滑で均一で、ある程度の柔らかさを有する平滑主面を有することができるとともに、表面材の通気度が40cm3/cm2・s以下でありやすいように、0.5〜2.0dtexの繊維を主体としているのが好ましく、0.8〜1.9dtexの繊維を主体としているのがより好ましく、1.0〜1.8dtexの繊維を主体としているのが更に好ましい。なお、「主体としている」とは、第1不織布層を構成する繊維の50mass%以上を占めることを意味する。また、本発明における「繊度」は、JIS L 1015(2010)、8.5.1(正量繊度)に規定されているA法により得られる値を意味する。
また、本発明の不織布(例えば、第1不織布層、第2不織布層)を構成する繊維の繊維長は特に限定するものではないが、分散性に優れていることによって、平滑かつ均一な平滑柔軟主面を有することができるように、20〜110mmであるのが好ましく、30〜80mmであるのがより好ましい。なお、「繊維長」は、JIS L1015(2010)、8.4.1c)直接法(C法)に則って測定した値をいう。
本発明の不織布(例えば、第1不織布層、第2不織布層)を構成する繊維は特に限定するものではないが、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ビニロン繊維、ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリウレタン繊維などの合成繊維;レーヨン繊維などの再生繊維;アセテート繊維などの半合成繊維;綿、麻などの植物繊維;羊毛などの動物繊維;などを挙げることができる。これらの中でも、耐熱性、耐候性、防汚性等に優れるポリエステル繊維、及び/又は難燃性に優れるレーヨン繊維を含んでいるのが好ましい。
また、本発明の不織布(例えば、第1不織布層、第2不織布層)を構成する繊維は白色であっても、白色以外の色に着色されていても良いが、表面材の平滑柔軟主面を構成する不織布(例えば、第1不織布層)は意匠性に優れているように、白色以外の色に着色しているのが好ましい。なお、着色した繊維は顔料を練り込み又は接着するなどして含有させることによって、又は染料で染色することによって調製できる。
本発明の不織布(例えば、第1不織布層、第2不織布層)を構成する繊維はどのように配向していても良いが、平滑で均一な平滑柔軟主面を有する不織布であるように、繊維同士が交差するように配向した状態にあるのが好ましい。このように繊維同士が交差するように配向した状態の不織布は、例えば、一方向性繊維ウエブをクロスレイヤー等によりクロスレイドウエブを形成し、繊維同士を結合して製造することができる。
本発明の不織布(例えば、第1不織布層、第2不織布層)は、柔軟性に優れているように、繊維同士が絡合した状態にあるのが好ましい。このような繊維同士が絡合した状態にある不織布は、例えば、繊維ウエブに対して、ニードルパンチ処理又は水流絡合処理を施すことによって製造することができる。特に、ニードルパンチ処理によれば、柔軟性により優れているため好適である。
また、本発明の不織布(例えば、第1不織布層、第2不織布層)は、表面の平滑性を維持できるように、繊維の毛羽立ちを抑え、耐磨耗性に優れているように、平滑柔軟主面がバインダで接着した状態にあるのが好ましい。このようにバインダで接着した状態にある場合、バインダ量が多過ぎると、柔軟性が損なわれる傾向があるため、バインダ量は1〜20g/m2であるのが好ましく、1〜10g/m2であるのがより好ましく、1〜5g/m2であるのが更に好ましい。また、バインダ量が前記範囲内であったとしても、バインダ樹脂自体が硬いと、不織布の柔軟性が損なわれる傾向があるため、バインダ樹脂のガラス転移温度は0℃以下であるのが好ましく、−10℃以下であるのがより好ましく、−20℃以下であるのが更に好ましく、−30℃以下であるのが更に好ましい。一方で、バインダ樹脂のガラス転移温度が低過ぎると、粘着性に起因して、触感が悪くなる傾向があり、また、表面材を成形する場合には、成形性が悪くなる傾向があるため、−50℃以上であるのが好ましい。なお、バインダは、例えば、エチレンー塩化ビニル系、エチレンー酢酸ビニル系、エチレンー酢酸ビニルー塩化ビニル系、塩化ビニリデン系、塩化ビニル系、ポリエステル系、アクリル酸エステル系などの樹脂から構成することができる。前述の「ガラス転移温度」はJIS K7121(2012)に則って描いたDSC曲線から読み取った中間点ガラス転移温度(Tmg)を意味する。
本発明の表面材を構成する不織布の目付は、前述の表面粗さ、摩擦係数の変動、及び平均動摩擦係数を満たす限り、特に限定するものではないが、透けや破れが発生しにくいように、150g/m2以上であるのが好ましく、軽量で、成形する場合には、成形性に優れているように、500g/m2以下であるのが好ましい。
なお、表面材が第1不織布層と第2不織布層とを含んでいる場合には、第1不織布層の目付は、平滑主面が平滑で均一である程度の柔らかさを有し、しかも表面材の通気度が低くなるように、50〜200g/m2であるのが好ましく、100〜200g/m2であるのがより好ましく、150〜200g/m2であるのが更に好ましい。一方で、第2不織布層の目付は、不織布(表面材)に柔軟性を付与できるように、100〜300g/m2であるのが好ましく、130〜250g/m2であるのがより好ましく、150〜200g/m2であるのが更に好ましい。
本発明の表面材を構成する不織布の厚さは特に限定するものではないが、柔軟性に優れ、触感が優れているように、2.0mm以上であるのが好ましく、2.1mm以上であるのがより好ましく、2.3mm以上であるのが更に好ましく、2.5mm以上であるのが更に好ましい。一方、不織布の厚さの上限は特に限定するものではないが、軽量であるように、5.5mm以下であるのが好ましく、4.5mm以下であるのがより好ましく、4.0mm以下であるのが更に好ましく、3.0mm以下であるのが更に好ましい。なお、表面材が第1不織布層と第2不織布層とを含んでいる場合には、第1不織布層の厚さはある程度の柔軟性に優れているように、0.5〜2.0mmであるのが好ましく、0.8〜1.8mmであるのがより好ましく、1.0〜1.5mmであるのが更に好ましい。一方で、第2不織布層の厚さは不織布(表面材)に柔軟性を付与できるように、1.5mm以上であるのが好ましく、1.6mm以上であるのがより好ましい。なお、第2不織布層の厚さは特に限定するものではないが、軽量であるように、3.5mm以下であるのが好ましい。この「厚さ」は2.0kPa荷重時の値をいい、表面材が第1不織布層と第2不織布層とを有する場合には、2.0kPa荷重時の表面材の厚さ方向断面における実体顕微鏡写真を撮影し、無作為に選んだ5点における厚さの算術平均値を意味する。
本発明の表面材を構成する不織布が第1不織布層と第2不織布層とを有するように、不織布層を2層以上有する場合、隣接する不織布層同士はどのような状態で結合していても良いが、第1不織布層と第2不織布層とを有する場合、第1不織布層の平滑かつ均一な平滑主面の表面状態を損なうことがないように、また、第1不織布層と第2不織布層の柔軟性を損なうことがないように、接着剤によって結合しているのが好ましい。このように接着剤で結合している場合、表面材の柔軟性を損なうことなく、しっかりと結合した状態にあることができるように、接着剤量は1〜30g/m2であるのが好ましく、5〜25g/m2であるのがより好ましく、10〜20g/m2であるのが更に好ましい。
この接着剤としては、例えば、エチレンー塩化ビニル系、エチレンー酢酸ビニル系、エチレンー酢酸ビニルー塩化ビニル系などのエチレン系共重合体;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリアミド系共重合体、塩化ビニリデン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂などの樹脂から構成することができる。接着剤はホットメルト型接着剤、エマルジョン型、又はサスペンジョン型であることができるが、ホットメルト型接着剤の場合、ホットメルト型接着剤の接着作用を発揮させる場合に、第1不織布及び第2不織布の表面状態が変化しないように、ホットメルト型接着剤の融点は、第1不織布構成繊維及び第2不織布構成繊維を構成する樹脂の中で最も融点の低い樹脂の融点よりも低いのが好ましく、前記樹脂の融点よりも30℃以上低いのがより好ましい。
このような本発明の、表面粗さ(SMD)が2.5以下、摩擦係数の変動(MMD)が0.011以下、かつ平均動摩擦係数(MIU)が0.30以上である平滑柔軟主面を有し、通気度が40cm3/cm2・s以下の不織布からなる表面材は、例えば、表面試験機(KES−FB4)で測定した、表面粗さ(SMD)が2.5以下(好ましくは2.2以下、より好ましくは2.0以下)、摩擦係数の変動(MMD)が0.010以下(好ましくは0.009以下)、かつ平均動摩擦係数(MIU)が0.15以上(好ましくは0.16以上、より好ましくは0.18以上)である平滑主面を有する第1不織布と、表面試験機(KES−FB4)で測定した、表面粗さ(SMD)が3.5以下(好ましくは3.2以下、より好ましくは3.0以下)、摩擦係数の変動(MMD)が0.014以下(好ましくは0.012以下、より好ましくは0.010以下)、かつ平均動摩擦係数(MIU)が0.25以上(好ましくは0.28以上、より好ましくは0.30以上)である柔軟主面を有する第2不織布とを作製した後、第1不織布と第2不織布とを積層一体化することによって製造することができる。
具体的には、まず、平滑主面が平滑かつ均一で、ある程度柔軟性に優れている第1不織布を製造する。このような第1不織布を製造しやすいように、前述の通り、繊度が0.5〜2.0dtex(好ましくは0.8〜1.9dtex、より好ましくは1.0〜1.8dtex)で、繊維長が20〜110mm(好ましくは30〜80mm)の繊維を準備するのが好ましい。また、前述の通り、繊維はポリエステル繊維及び/又はレーヨン繊維であるのが好ましい。更に、繊維は着色した繊維であるのが好ましい。
次いで、準備した繊維を用いて、繊維ウエブを形成する。この繊維ウエブは通気度の低い表面材を製造できるように、繊度が0.5〜2.0dtex(好ましくは0.8〜1.9dtex、より好ましくは1.0〜1.8dtex)の繊維を主体としているのが好ましい。なお、繊維ウエブの形成方法は特に限定するものではないが、比較的嵩高で、柔軟な繊維ウエブを形成できる、カード法などの乾式法により繊維ウエブを形成するのが好ましい。なお、平滑で均一な平滑主面を有する第1不織布を形成しやすいように、第1不織布の平滑主面の元となる繊維ウエブの主面において、繊維同士が交差した状態にあるように繊維を配向させるのが好ましい。例えば、一方向性繊維ウエブをクロスレイヤー等によりクロスレイドウエブを形成することによって、繊維同士が交差した状態とするのが好ましい。
次いで、繊維同士を結合して第1不織布を製造する。この結合方法は特に限定するものではないが、第1不織布がある程度、柔軟性に優れているように、ニードルパンチ処理又は水流絡合により結合するのが好ましく、柔軟性に優れる第1不織布をより製造しやすい、ニードルパンチ処理により結合するのが好ましい。
また、平滑表面の平滑性を維持できるように、繊維の毛羽立ちを抑え、耐磨耗性に優れているように、平滑主面となる繊維ウエブの主面をバインダで接着するのが好ましい。このようなバインダは、前述の通り、例えば、エチレンー塩化ビニル系、エチレンー酢酸ビニル系、エチレンー酢酸ビニルー塩化ビニル系、塩化ビニリデン系、塩化ビニル系、ポリエステル系、アクリル酸エステル系などの樹脂からなるエマルジョン又はサスペンジョンを用いることができる。このようなバインダを用いる接着は、繊維ウエブ(好ましくはニードルパンチウエブ又は水流絡合ウエブ)の片面又は両面に、バインダを含浸、泡立て含浸、コーティング、又はスプレーし、乾燥して実施できる。なお、バインダ量は前述の通り、1〜20g/m2(好ましくは1〜10g/m2、より好ましくは1〜5g/m2)であるのが好ましい。また、バインダ樹脂のガラス転移温度は0〜−50℃(好ましくは−10〜−50℃、より好ましくは−20〜−50℃、更に好ましくは−30℃〜−50℃)であるのが好ましい。
このようにして繊維同士を結合した不織布は平滑性、均一性が不十分で、表面粗さ(SMD)が2.5以下、摩擦係数の変動(MMD)が0.010以下である平滑主面を有していない傾向があり、また、通気度が高い傾向があるため、加熱加圧することによって、不織布表面を緻密化し、平滑化して、第1不織布を製造するのが好ましい。この加熱加圧条件は、表面粗さ(SMD)が2.5以下、摩擦係数の変動(MMD)が0.010以下、かつ平均動摩擦係数(MIU)が0.15以上である平滑主面を有する第1不織布となる条件であれば良く、第1不織布構成繊維、バインダの種類等によって異なるため、適宜、実験により調整する。なお、加熱と加圧は同時に行っても良いし、加熱後に加圧しても良い。例えば、加熱ロールを用いれば加熱と加圧を同時に実施することができ、オーブン等により加熱した後に、加熱温度よりも低い温度の一対のロールによって加圧すれば、加熱と加圧を別に実施することができる。
前記加熱加圧によって、ある程度、第1不織布の厚さを調節することができるが、厚さを調節するために、加熱加圧処理後に厚さ調整をして、第1不織布の厚さを0.5〜2.0mm(より好ましくは0.8〜1.8mm、更に好ましくは1.0〜1.5mm)とするのが好ましい。この厚さ調整は、例えば、一対のロール間を通過させることによって実施できる。
一方で、柔軟性に優れ、ある程度平滑かつ均一な柔軟主面を有する第2不織布を製造する。このような第2不織布を製造しやすいように、前述の通り、繊度が0.5〜6.6dtex(好ましくは0.5〜4.4dtex、より好ましくは0.7〜3.3dtex)で、繊維長が20〜110mm(好ましくは30〜80mm)の繊維を準備するのが好ましい。また、前述の通り、繊維はポリエステル繊維及び/又はレーヨン繊維であるのが好ましい。更に、繊維は着色していても、着色していなくても良いが、表面材を成形する場合、第1不織布層構成繊維と同色に着色していると、成形時における透けを防止し、外観を損ないにくいため、第1不織布層構成繊維と同系統の色相に着色した繊維を準備するのが好ましい。
次いで、準備した繊維を用いて、繊維ウエブを形成する。繊維ウエブの形成方法は特に限定するものではないが、比較的嵩高で、柔軟な繊維ウエブを形成できる、カード法などの乾式法により繊維ウエブを形成するのが好ましい。なお、ある程度、平滑で均一な柔軟主面を有する第2不織布を形成しやすいように、第2不織布の柔軟主面の元となる繊維ウエブの主面において、繊維同士が交差した状態にあるように繊維を配向させるのが好ましい。例えば、一方向性繊維ウエブをクロスレイヤー等によりクロスレイドウエブを形成することによって、繊維同士が交差した状態とするのが好ましい。
次いで、繊維同士を結合して第2不織布を製造する。この結合方法は特に限定するものではないが、第2不織布が柔軟性に優れているように、ニードルパンチ処理又は水流絡合により結合するのが好ましく、より柔軟性に優れる第2不織布を製造しやすい、ニードルパンチ処理により結合するのが好ましい。
また、柔軟表面の平滑性を保持できるように、バインダで接着するのが好ましい。このようなバインダ接着は、第1不織布と同様のバインダを用いて、同様の方法により実施できる。なお、バインダ量は前述の通り、1〜20g/m2(好ましくは1〜10g/m2、より好ましくは1〜5g/m2)であるのが好ましい。また、バインダ樹脂のガラス転移温度は0〜−50℃(好ましくは−10〜−50℃、より好ましくは−20〜−50℃、更に好ましくは−30℃〜−50℃)であるのが好ましい。
このようにして繊維同士を結合した不織布は平滑性、均一性が不十分で、表面粗さ(SMD)が3.5以下、摩擦係数の変動(MMD)が0.014以下である柔軟主面を有していない傾向、また、通気度が高い傾向があるため、加熱加圧することによって、不織布表面を緻密化し、平滑化して、第2不織布を製造するのが好ましい。この加熱加圧条件は、表面粗さ(SMD)が3.5以下、摩擦係数の変動(MMD)が0.014以下、かつ平均動摩擦係数(MIU)が0.25以上である柔軟主面を有する第2不織布となる条件であれば良く、第2不織布構成繊維、バインダの種類等によって異なるため、適宜、実験により調整する。なお、加熱と加圧は、第1不織布を製造する場合と同様に、同時に行っても良いし、加熱後に加圧しても良い。
前記加熱加圧によって、ある程度、第2不織布の厚さを調節することができるが、厚さを調節するために、加熱加圧処理後に厚さ調整をして、第2不織布の厚さを1.5mm以上(好ましくは1.6〜3.5mm)とするのが好ましい。このような厚さであることによって、平均動摩擦係数が0.30以上の柔軟性に優れた表面材を製造しやすい。この厚さ調整は、例えば、一対のロール間を通過させることによって実施できる。
次いで、上述のように形成した第1不織布と第2不織布とを積層一体化するために、第1不織布と第2不織布とを接着できる接着剤を準備する。この接着剤は第1不織布と第2不織布とを接着できるものであれば良く、特に限定するものではないが、例えば、エチレンー塩化ビニル系、エチレンー酢酸ビニル系、エチレンー酢酸ビニルー塩化ビニル系などのエチレン系共重合体;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリアミド系共重合体、塩化ビニリデン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂などの樹脂から構成することができる。なお、接着剤の態様は特に限定するものではないが、揮発性有機物質の発生を抑制しやすく、第1不織布及び第2不織布の平滑性と柔軟性を維持した状態で積層一体化しやすい、熱によって融着できるホットメルト型の接着剤であるのが好ましい。
このように好適なホットメルト型接着剤の場合、ホットメルト型接着剤の接着作用を発揮させる際に、第1不織布層及び第2不織布層の表面状態が変化しないように、ホットメルト型接着剤の融点は、第1不織布構成繊維及び第2不織布構成繊維を構成する樹脂の中で最も融点の低い樹脂の融点よりも低いのが好ましく、前記樹脂の融点よりも30℃以上低いのがより好ましい。
また、第1不織布(表面材)の平滑かつ均一な平滑主面の表面状態を損なうことがないように、また、表面材の柔軟性を損なうことなく、第1不織布と第2不織布とをしっかりと結合できるように、接着剤量が1〜30g/m2(好ましくは5〜25g/m2、より好ましくは10〜20g/m2)となる接着剤を用意するのが好ましい。例えば、ホットメルト型の接着剤の場合には、前記量の繊維ウエブ、繊維、又は粉体を用意し、エマルジョン型又はサスペンジョン型の接着剤の場合には、乾燥後の固形分量が前記量となるように用意する。
次いで、第1不織布と第2不織布とを積層一体化するために、第2不織布の表面粗さ(SMD)が3.5以下、摩擦係数の変動(MMD)が0.014以下、かつ平均動摩擦係数(MIU)が0.25以上である柔軟主面、又は第1不織布の表面粗さ(SMD)が2.5以下、摩擦係数の変動(MMD)が0.010以下、かつ平均動摩擦係数(MIU)が0.15以上である平滑主面に対向する主面に対して、接着剤を付与する。例えば、接着剤が繊維ウエブであれば積層し、繊維又は粉体であれば散布し、エマルジョン型又はサスペンジョン型であれば塗布又は散布する。
次いで、前記接着剤の上に、前者の場合であれば、第2不織布の柔軟主面に、第1不織布の平滑主面に対向する主面が対向するように積層し、後者の場合であれば、第1不織布の平滑主面に対向する主面に、第2不織布の柔軟主面が対向するように積層する。
そして、接着剤の接着作用を発揮させ、第1不織布と第2不織布とを一体化して、本発明の表面材を製造することができる。例えば、ホットメルト型の接着剤の場合には、接着剤が溶融する融点以上の温度で加熱し、エマルジョン型又はサスペンジョン型の接着剤の場合には、溶媒が揮発する温度で加熱して、接着剤の接着作用を発揮させて、第1不織布と第2不織布とを一体化する。
なお、接着剤の接着作用を十分に発揮できるように、加熱加圧することは好適な態様であるが、加熱温度が高すぎる、加圧力が強過ぎる、及び/又は加熱加圧時間が長いと、第1不織布及び第2不織布が有する平滑性、均一性、及び/又は柔軟性を損なう傾向があるため、必要最低限の条件で加熱加圧し、表面材の表面粗さ(SMD)が2.5以下、摩擦係数の変動(MMD)が0.011以下、かつ平均動摩擦係数(MIU)が0.30以上である平滑柔軟主面を有するようにする。なお、この加熱加圧条件は接着剤によって異なるため、実験によって適宜調整する。
このような本発明の内装用表面材は触感が優れているばかりでなく、吸音性にも優れているため、天井、ドアサイド、ピラーガーニッシュ、リヤパッケージなど自動車用;パーティションなどのインテリア用;壁装材などの建材用に、好適に使用することができる。
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜2、比較例1〜4)
(第1不織布の製造)
繊度が1.1dtex、1.7dtex、又は2.2dtexで、グレーに着色したポリエステル短繊維(繊維長:51mm、融点:260℃)を100%用いて、カード機により開繊して一方向性繊維ウエブを形成した後、クロスレイヤーにより、繊維同士が交差した状態のクロスレイウエブを形成し、更にニードルパンチ処理を行って絡合し、表1に示す目付のニードルパンチウエブを形成した。
次いで、このニードルパンチウエブの片面に対して、表1に示すようなエマルジョンバインダ溶液を泡立て含浸し、温度150℃のキャンドライヤーで乾燥した後、表1に示すような条件で、熱カレンダーロール間を通過させることにより加熱加圧を実施して、主面を平滑化するか、平滑化することなく、表1に示すような物性を有する第1不織布をそれぞれ製造した。
(第2不織布の製造)
繊度2.2dtex又は3.3dtexで、グレーに着色したポリエステル短繊維(繊維長:51mm、融点:260℃)を100%用いて、カード機により開繊して一方向性繊維ウエブを形成した後、クロスレイヤーにより、繊維同士が交差した状態のクロスレイウエブを形成し、更にニードルパンチ処理を行って絡合し、表2に示すような目付のニードルパンチウエブを形成した。
次いで、このニードルパンチウエブの片面に対して、表2に示すようなエマルジョンバインダ溶液を泡立て含浸し、温度150℃のキャンドライヤーで乾燥した後、表2に示すような条件で、熱カレンダーロール間を通過させることにより加熱加圧を実施して、主面を平滑化するか、平滑化することなく、表2に示すような物性を有する第2不織布をそれぞれ製造した。
(接着剤不織布の準備)
接着剤不織布として、ポリエチレン繊維(融点:110℃)からなる、目付17g/m2のホットメルト型接着剤不織布を準備した。
(表面材の製造)
前記第2不織布の表2に示すような物性を有する柔軟主面上に、前記接着剤不織布を積層し、更に、接着剤不織布上に、第1不織布の表1に示すような物性を有する平滑主面に対向する主面が接着剤不織布と当接するように第1不織布を積層し、その状態で、温度130℃、加圧力9.8Nの加熱加圧を10秒間実施し、第1不織布と第2不織布とを接着一体化して、表3に示すような物性を有する表面材をそれぞれ製造した。
(表面材の触感評価)
モニターに直接、表面材の第1不織布側平滑柔軟主面を触ってもらうことにより、触感(平滑さ、均一さ、柔らかさ)について、5段階で評価してもらった。なお、優れている場合、「5」と評価し、劣っている場合、「1」と評価し、その中間に関して、「2〜4」で評価してもらった。この結果は表3に示す通りであった。
(表面材の吸音性評価)
ガラス繊維マットと硬質発泡ポリウレタン樹脂シートを複合した基材マット(目付:500g/m2)に、実施例1〜2又は比較例1〜4の表面材を、表面材の第2不織布層がガラス繊維マットと当接するように積層し、温度200℃に設定した平板熱プレスによって貼り合せ、厚さ5.0mmの試験マットをそれぞれ調製した。
そして、これらの試験マットについて、ブリュエル・ケアー社製の垂直入射法吸音率測定器を用い、JIS−A1405に準拠した測定方法で、吸音率を測定した。なお、車室内において、明瞭な会話ができるように、周波数800〜1600Hz付近の吸音率が重視されるため、代表的な周波数である1000Hzでの吸音率を測定した。これらの結果は表3に示す通りであった。
(考察)
実施例1〜2と比較例1との比較から、通気度が40cm3/cm2・s以下であると、吸音率が高く、吸音性能に優れていることが分かった。また、実施例1と実施例2との比較から、通気度が30cm3/cm2・s以下であると、より吸音率が高く、吸音性能に優れていることが分かった。
また、実施例1〜2と比較例2との比較から、平均動摩擦係数(MIU)が0.30以上である平滑柔軟主面を有することによって、柔軟性に優れていることがわかった。また、バインダのガラス転移温度及び量が、表面材の柔軟性に影響を与えることもわかった。
更に、実施例1〜2と比較例3との比較から、表面粗さ(SMD)が2.5以下、かつ摩擦係数の変動(MMD)が0.011以下である平滑柔軟主面を有することによって、平滑性及び均一性に優れていることがわかった。また、第2不織布層の平滑性及び均一性が優れていても、表面材の平滑柔軟主面を構成している、第1不織布層の平滑性及び均一性が不十分であると、平滑性及び均一性に優れた表面材とはならず、第1不織布層の平滑性及び均一性が表面材の平滑性及び均一性に影響を与えることもわかった。