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JP6998221B2 - セメント用添加剤、およびセメント組成物 - Google Patents

セメント用添加剤、およびセメント組成物 Download PDF

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JP6998221B2 JP2018005847A JP2018005847A JP6998221B2 JP 6998221 B2 JP6998221 B2 JP 6998221B2 JP 2018005847 A JP2018005847 A JP 2018005847A JP 2018005847 A JP2018005847 A JP 2018005847A JP 6998221 B2 JP6998221 B2 JP 6998221B2
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Description

本発明は、セメント用添加剤、およびセメント組成物に関する。
セメントペースト、モルタル、コンクリート等のセメント組成物には、セメント組成物の混練直後の流動性、混練後の経時における流動保持性、セメント組成物の硬化後の強度発現性などの特性の改善を目的として各種添加剤が含まれている。近年、より高強度、且つ高耐久性を有するコンクリート等の開発が進められており、単位水量の低減や水-セメント比の低減が課題となっている。また減水に伴ってセメント組成物の塑性粘度や降伏値などの粘性が上昇し、施工作業性が低下するという問題が生じる。そのためセメント組成物の粘性を低減させる添加剤として、従来からポリカルボン酸系共重合体を含むセメント用添加剤などが提案されている(特許文献1)。
特開2017-88470号公報
近年、特にセメント組成物には混練直後の粘性低減に加えて混練後、時間が経過しても所望の流動性および粘性を保持していることが求められているが、従来のセメント用添加剤は十分な効果を得るために添加量を増やす必要があり、コストが大幅に上昇するなどの問題が生じていた。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、セメント組成物の混練直後の粘性低減だけでなく、混練後の経時における流動性および粘性にも優れたセメント用添加剤を提供することにある。
上記課題を解決し得た本発明は、ポリカルボン酸系共重合体を含むセメント用添加剤であって、該ポリカルボン酸系共重合体は、下記構造単位(I)、下記構造単位(II)、およびカルボン酸ヒドロキシアルキルエステル系単量体由来の構造単位(III)を含み、前記構造単位(I)、前記構造単位(II)、及び前記構造単位(III)の合計100質量%に対して、前記構造単位(I)が40~87質量%であり、前記構造単位(II)が5~30質量%であり、前記構造単位(III)が8~30質量%であることに要旨を有する。
Figure 0006998221000001
(式(I)中、
2は、水素原子又は炭素数1~18のアルキル基を表し、
3、R4、及びR5は、同一又は異なって、水素原子、又は、メチル基を表し、
6は炭素数0~5のアルキレン基を表し、
1Oは、同一又は異なって、炭素数2~18のオキシアルキレン基を表し、
mは、R1Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数であって、5~300を表す。)
Figure 0006998221000002
(式(II)中、
7、R8、及びR9は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、または-(CH)zCOOM2を表し(但し、R7~R9のいずれか1つが-(CH)zCOOM2である)、
zは0~2の整数であり、
1、M2は、同一又は異なって、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基、又は有機アミン基を表す。
本発明のセメント用添加剤は、(1)前記式(II)中、R8、及びR9のどちらか一方は、COOM2であること、(2)前記式(I)中、R6のアルキレン基の炭素数が1または2であること、(3)前記式(I)中、mが5~100であること、(4)前記構造単位(III)の由来となるカルボン酸ヒドロキシアルキルエステル系単量体が、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルであることはいずれも好ましい実施態様である。
また本発明にはセメント、水、及び上記本発明のセメント用添加剤を含むセメント組成物が含まれる。さらにセメント分散剤を含むことも好ましく、前記分散剤がスルホン酸系分散剤、ポリカルボン酸系分散剤、及びリン酸系分散剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることも好ましい実施態様である。
本発明のセメント用添加剤は、セメント組成物の粘性低減とセメント組成物の流動性に優れた特性を有する。特に本発明のセメント用添加剤は、セメント組成物の混練直後、及び混練後の経時における粘性増大を抑制すると共に、セメント組成物の混練後の経時における流動性にも優れた特性を有する。以下、混練直後の粘性を「初期粘性」、経時における粘性を「経時粘性」、両者を合わせて単に「粘性」あるいは両者の効果を合わせて「粘性増大抑制」ということがある。また混練直後の流動性を「初期流動性」、経時における流動性を「経時流動性」、両者を合わせて単に「流動性」ということがある。本発明によれば、上記セメント用添加剤を含むセメント組成物を提供できる。
図1は、ロート流下時間を測定するための土木学会基準JSCE-F541に準じたJ14ロートの概略断面図である。 図2は、実施例1及び比較例1のモルタル混練直後のロート流下時間とモルタルフロー値の関係を示すグラフである。 図3は、実施例1及び比較例1のモルタルを混練してから30分経過後のロート流下時間とモルタルフロー値の関係を示すグラフである。 図4は、実施例1及び比較例1のモルタルを混練してから60分経過後のロート流下時間とモルタルフロー値の関係を示すグラフである。
本明細書中で「(メタ)アクリル」とは、「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味する。また「酸(塩)」とは、「酸および/またはその塩」を意味する。また「質量」、「重量」はそれぞれ「重量」、「質量」と読み替えてもよい。
(ポリカルボン酸系共重合体)
本発明のセメント用添加剤は、特定のポリカルボン酸系共重合体を含むものである。該特定のポリカルボン酸系共重合体を含有することで、セメント組成物の粘性増大抑制に優れた効果を奏すると共に、経時流動性にも優れた特性を有する。
本発明のセメント用添加剤には、下記構成を満足する本発明のポリカルボン酸系共重合体が含まれていれば上記効果を奏する。また本発明のセメント用添加剤に1種または2種以上の本発明のポリカルボン酸系共重合体が含まれていてもよい。
本発明のポリカルボン酸系共重合体は、構造単位(I)と、構造単位(II)と、カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル系単量体由来の構造単位(III)と、を含む。「単量体由来の構造単位」とは、単量体が重合して形成される構造単位であり、具体的には、単量体の重合性炭素-炭素二重結合が単結合になった構造である。
(構造単位(I))
本発明のポリカルボン酸系共重合体中には、下記式で表される構造単位(I)が1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
Figure 0006998221000003
式(I)中、R3、R4、及びR5は、同一又は異なって、水素原子、又は、メチル基を表す。
6は炭素数0~5のアルキレン基を表し、好ましい炭素数は0~3、より好ましくは1、または2である。炭素数1~5のアルキレン基としては、直鎖状、又は分岐鎖状のアルキレン基のいずれでもよい。R6は例えばメチレン、エタンジイル、プロパンジイル、メチルプロパンジイル、エチルプロパンジイル、ブタンジイル、メチルブタンジイル、ペンタンジイルが例示され、より好ましくはメチレン、エタンジイル、プロパンジイル、ブタンジイル、ペンタンジイルであり、更に好ましくはメチレン、エタン-1,2-ジイル、プロパン-1,3-ジイル、ブタン-1,4-ジイル、ペンタン-1,4-ジイルである。
式(I)中、R1Oは、同一又は異なって、炭素数2~18のオキシアルキレン基を表す。オキシアルキレン基の炭素数は、好ましくは2~8であり、より好ましくは2~4である。
1Oとしては、例えばオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基が例示され、好ましくはオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、より好ましくはオキシエチレン基、オキシプロピレン基である。2以上の異なるR1O構造が存在する場合、R1Oの付加形態は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態でもよい。なお、親水性と疎水性とのバランスを確保するため、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基を必須成分として含むことが好ましい。具体的には全オキシアルキレン基100モル%に対して、オキシエチレン基が好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは100モル%である。
式(I)中、R2は、水素原子又は炭素数1~18のアルキル基を表す。アルキル基の炭素数は好ましくは1~10、より好ましくは1~8である。アルキル基は、置換されたアルキル基であってもよいし、無置換のアルキル基であってもよい。炭素数1~18のアルキル基としては、直鎖、分岐、または環状のアルキル基のいずれでもよい。炭素数1~18のアルキル基としては、好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基であり、より好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基である。
式(I)中、mは、R1Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数であって、5~300である。mは好ましくは5~100、より好ましくは6~90、さらに好ましくは8~85、特に好ましくは10~80である。mが上記範囲内であればセメント組成物の粘性増大抑制に有効であり、また流動性、特に経時流動性に優れた効果を発揮できる。なお、式(I)中、mで表されるオキシアルキレン基の「平均付加モル数」とは、共重合体1モル中の式(I)で示す構造単位1ユニットにおいて付加しているオキシアルキレン基のモル数の平均値を意味する。
(構造単位(II))
本発明のポリカルボン酸系共重合体には、下記式で表される構造単位(II)が1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。構造単位(II)は上記構造単位(I)、及び下記構造単位(III)と組み合わせることでセメント組成物の粘性増大抑制に効果を発揮し、更に流動性の向上に寄与する。
Figure 0006998221000004
式(II)中、R7、R8、及びR9は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、または-(CH)zCOOM2であり(但し、R7~R9のいずれか1つが-(CH)zCOOM2である)、好ましくはR8、及びR9のどちらか一方は、COOM2である。
式(II)中、zは0~2の整数である。zは好ましくは0または1であり、より好ましくは0である。
式(II)中、M1、M2は、同一又は異なって、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基、又は有機アミン基を表す。また-COOM1は他の-(CH)zCOOM2と無水物を形成していてもよい。
上記一価金属、上記二価金属は、任意の適切な金属原子を採用し得る。一価金属として好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属;二価の金属として好ましくはカルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属が挙げられる。
上記アンモニウム基は、「-NH 」で表される官能基である。また上記有機アミン基としては、プロトン化された有機アミンであれば任意の適切な有機アミン基を採用し得る。有機アミン基としては、例えば、エタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基;モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン基;等のアルキルアミン;エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等のポリアミンなどが挙げられる。
(構造単位(III))
構造単位(III)はカルボン酸ヒドロキシアルキルエステル系単量体由来の構造単位である。本発明のポリカルボン酸系共重合体には、構造単位(III)が1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。構造単位(III)は上記構造単位(I)、及び上記構造単位(II)と所定の割合で組み合わせることで本発明の上記効果発現に寄与する。
構造単位(III)は、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル由来の構造単位であることが好ましく、より好ましくはアルキル部分の炭素数が好ましくは1~8、より好ましくは2~4である(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル由来の構造単位である。具体的には(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル由来の構造単位、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルエステル由来の構造単位、または(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルエステル由来の構造単位が好ましい。
本発明のポリカルボン酸系共重合体に含まれる構造単位(I)と構造単位(II)と構造単位(III)の各含有比率は、構造単位(I)、構造単位(II)、及び構造単位(III)の合計100質量%に対して、構造単位(I)が40~87質量%、構造単位(II)が5~30質量%、構造単位(III)が8~30質量%である。好ましくは構造単位(I)が45~86質量%、構造単位(II)が5~25質量%、構造単位(III)が9~30質量%である。より好ましくは構造単位(I)が50~85質量%、構造単位(II)が5~20質量%、構造単位(III)が10~30質量%である。構造単位(I)、構造単位(II)、及び構造単位(III)の各含有比率が上記範囲内にあれば、セメント組成物の粘性増大抑制に有効であると共に、流動性にも優れた効果を奏する。なお、構造単位(I)~(III)の各含有割合は実施例に記載のモノマーの反応率を高速液体クロマトグラフィーで求め、それに基づいて算出する。
ポリカルボン酸系共重合体に含まれる上記構造単位(I)~(III)の合計含有比率は、ポリカルボン酸系共重合体100質量%に対して好ましくは50~100質量%、より好ましくは70~100質量%、更に好ましくは80~100質量%、特に好ましくは90~100質量%、最も好ましくは95~100質量%である。本発明の上記構造単位(I)~(III)の合計含有比率が上記範囲内であれば、セメント組成物の粘性増大抑制、及び流動性を効果的に高めることができる。なお、構造単位(I)~(III)の合計が100質量%に満たない場合の残余は後記する構造単位(IV)、および/または各種公知の添加剤を含有させることができる。
(構造単位(IV))
本発明のポリカルボン酸系共重合体中には、上記構造単位(I)~(III)以外に、その他の単量体(d)由来の構造単位(IV)が含まれていてもよい。構造単位(IV)は1種、または2種以上含まれていてもよい。
その他の単量体(d)とは、上記構造単位(I)~(III)の由来となる単量体以外の単量体である。その他の単量体(d)由来の構造単位(IV)としては、好ましくは以下の単量体に由来する構造単位である。
(メタ)アクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸系単量体またはこれらの塩;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の各種(アルコキシ)(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2-メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸(塩)類;(メタ)アクリル(アルキル)アミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;メチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1~30のアミンとのアミド類;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族類;1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン等のジエン類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;などが挙げられる。
また本発明のポリカルボン酸系共重合体に含まれる構造単位(IV)の含有比率は、構造単位(I)~(III)の合計100質量%に対し、好ましくは0~100質量%、より好ましくは0~5質量%である。所定量の構造単位(IV)であれば本発明のポリカルボン酸系共重合体は上記効果を奏することができる。なお、構造単位(IV)の含有比率も上記構造単位(I)~(III)と同様にして特定できる。
本発明のポリカルボン酸系共重合体の重量平均分子量(Mw)は、実施例に記載のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリエチレングリコール換算による重量平均分子量(Mw)として、5,000~100,000である。重量平均分子量(Mw)は好ましくは6,000~80,000、より好ましくは7,000~50,000、さらに好ましくは8,000~30,000、特に好ましくは9,000~25,000である。ポリカルボン酸系共重合体の重量平均分子量(Mw)が上記範囲内にあれば、セメント組成物の粘性増大抑制に有効であると共に、流動性に優れた効果を奏する。
(ポリカルボン酸系共重合体の製造方法)
本発明ポリカルボン酸系共重合体の製造方法は特に限定されないが、好ましくは、不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)とジカルボン酸系単量体(b)とカルボン酸ヒドロキシアルキルエステル系単量体(c)とを含む単量体成分の重合を重合開始剤の存在下で行って製造し得る。必要に応じてその他の単量体(d)を含んでいてもよい。
構造単位(I)は下記式(1)に示す不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)に由来して形成される。
Figure 0006998221000005
上記式(1)中、R3、R4、及びR5は、同一又は異なって、水素原子、又は、メチル基を表す。R6は炭素数0~5のアルキレン基を表す。R1Oは、同一又は異なって、炭素数2~18のオキシアルキレン基を表す。R2は、水素原子又は炭素数1~18のアルキル基を表す。mは、R1Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数であって、5~300である。なお、R1Oで表される好ましいオキシアルキレン基の炭素数、及びその好適な例;R2で表される好ましいアルキル基の炭素数、及びその好適な例;R6で表される好ましいアルキレン基の炭素数;mの好適な範囲と同じであるため、説明を省略する。
不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)は構造単位(I)を満足する任意の不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体を採用し得る。式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)としては、具体的には、ヒドロキシエチルビニルエーテル、アリルアルコール、メタリルアルコール、3-ブテン-1-オール、3-メチル-3-ブテン-1-オール、3-メチル-2-ブテン-1-オール、2-メチル-2-ブテン-1-オール、3-ブテン-2-オール、3-メチル-3-ブテン-2-オール、2-メチル-3-ブテン-1-オール、2-メチル-3-ブテン-2-オール等の炭素数2~10の不飽和アルコールに炭素数2~18のアルキレンオキシドが付加した不飽和アルコールアルキレンオキシド付加物等が挙げられる。好ましくは、アリルアルコール、メタリルアルコール、3-メチル-3-ブテン-1-オールのいずれかにエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドを5~300モル付加した化合物であり、より好ましくは、メタリルアルコールまたは3-メチル-3-ブテン-1-オールから選ばれる少なくとも1種にエチレンオキシドを5~300モル付加した化合物である。
不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)の合成は特に限定されず、各種公知の方法で合成すればよい。例えば、アリルアルコール、メタリルアルコール、3-メチル-3-ブテン-1-オール(イソプレノール)、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを付加することによって合成し得る。
構造単位(II)は下記式(2)で表されるジカルボン酸系単量体(b)に由来して形成される。
Figure 0006998221000006
式(2)中、R7、R8、及びR9は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、または-(CH)zCOOM2を表す(但し、R7~R9のいずれか1つが-(CH)zCOOM2である)。好ましくはR8、及びR9のどちらか一方は、COOM2である。zは0~2の整数を表す。M1、M2は、同一または異なって、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基、有機アンモニウム基、又は有機アミン基を表す。なお、zの好適な範囲、M1、M2の好適な例は構造単位(II)と同じであるため、説明を省略する。
式(2)で表されるジカルボン酸系単量体(b)としては、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸系単量体またはこれらの塩;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸系単量体の無水物またはこれらの塩;などが挙げられる。ここでいう塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩、有機アミン塩などが挙げられる。アルカリ金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。アルカリ土類金属塩としては、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる。有機アンモニウム塩としては、例えば、メチルアンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩などが挙げられる。有機アミン塩としては、例えば、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩などが挙げられる。これらの中でもマレイン酸やフマル酸が好ましく、これらに由来する構造単位(II)を使用することでセメント組成物の粘性増大抑制、及び流動性向上により一層優れた効果を発揮する。
構造単位(III)はカルボン酸ヒドロキシアルキルエステル系単量体(c)に由来して形成される。任意のカルボン酸ヒドロキシアルキルエステル系単量体を採用し得るが、好ましくは(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルであり、より好ましくはアルキル部分の炭素数が好ましくは1~8、より好ましくは2~4である(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルである。具体的には(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルエステル、または(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチルエステルが好ましい。
本発明のセメント用添加剤に含まれるポリカルボン酸系共重合体の製造に用い得る不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)、ジカルボン酸系単量体(b)、及びカルボン酸ヒドロキシアルキルエステル系単量体(c)の各使用量は、ポリカルボン酸系共重合体を構成する全構造単位中の各構造単位の割合が上記範囲内となるように適宜調整すればよい。
必要に応じてその他の単量体(d)を使用してもよく、その他の単量体(d)に由来して構造単位(IV)が形成される。他の単量体(d)の具体例は上記した単量体が該当する。
単量体成分の重合は、任意の適切な方法で行い得る。例えば、溶液重合、塊状重合が挙げられる。溶液重合の方式としては、例えば、回分式、連続式が挙げられる。溶液重合で使用し得る溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n-ヘキサン等の芳香族または脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物;等が挙げられる。
単量体成分の重合を行う場合は、重合開始剤として、水溶性の重合開始剤、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2,2′-アゾビス-2-メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物、2,2′-アゾビス-2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物、2-カルバモイルアゾイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物等の水溶性アゾ系開始剤;等を使用し得る。これらの重合開始剤は、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸塩、メタ二亜硫酸塩、次亜燐酸ナトリウム、モール塩等のFe(II)塩、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素、L-アスコルビン酸(塩)、エリソルビン酸(塩)等の促進剤を併用することもできる。重合開始剤の中では、過硫酸塩や過酸化水素が好ましい。促進剤の中では、モール塩等のFe(II)塩やL-アスコルビン酸(塩)が好ましい。これらの重合開始剤や促進剤は、それぞれ、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
低級アルコール、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル化合物、またはケトン化合物を溶媒とする溶液重合を行う場合、または、塊状重合を行う場合には、重合開始剤として、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ナトリウムパーオキシド等のパーオキシド;t-ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;などを用い得る。このような重合開始剤を用いる場合、アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。さらに、水-低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上記の種々の重合開始剤または重合開始剤と促進剤の組み合わせの中から適宜選択して用いることができる。
単量体成分の重合の際の反応温度としては、用いられる重合方法、溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤により適宜定められる。このような反応温度としては、好ましくは0℃以上、より好ましくは30℃以上、さらに好ましくは50℃以上、また、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。
単量体成分の反応容器への投入方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。
単量体成分の重合の際には、好ましくは、連鎖移動剤を用い得る。連鎖移動剤を用いると、得られる共重合体の分子量調整が容易となる。連鎖移動剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
連鎖移動剤としては、任意の適切な連鎖移動剤を採用し得る。このような連鎖移動剤としては、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、2-メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤;イソプロパノール等の第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸、およびその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、およびその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)の低級酸化物およびその塩;などが挙げられる。
製造されたセメント用添加剤は、そのままでも本発明のセメント用添加剤として用いることもできるが、取り扱い性の観点から、セメント用添加剤の製造後の反応溶液のpHを5以上に調整しておくことが好ましい。しかしながら、重合率向上のため、pH5未満で重合を行い、重合後にpHを5以上に調整することが好ましい。pHの調整は、例えば、一価金属または二価金属の水酸化物や炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アミン;などのアルカリ性物質を用いて行うことができる。
製造されたセメント用添加剤は、製造によって得られた溶液に対して、必要に応じて、濃度調整を行うこともできる。
製造されたセメント用添加剤は、溶液の形態でそのまま使用してもよいし、あるいは、粉体化して使用してもよい。
(セメント組成物)
本発明のセメント組成物は、セメントペースト、モルタル、コンクリート等であり、本発明のセメント用添加剤を含む。
本発明のセメント組成物は、セメント、水、及び本発明のセメント用添加剤を含む。好ましくはセメント、水、骨材、及び本発明のセメント用添加剤を含む。
セメントとしては、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、低熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)が好適であり、更に、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカフューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏を添加してもよい。本発明のセメント組成物に含まれるセメントは、1種、または2種以上であってもよい。
骨材としては砂、砂利、砕石、再生骨材、水砕スラグ等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材も例示される。骨材は用途に応じて適宜選択すればよく、例えばモルタルには砂などの細骨材と、セメント、水、及び本発明のセメント用添加剤が含まれる。また例えばコンクリートには砂利などの粗骨材、細骨材、セメント、水、及び本発明のセメント用添加剤が含まれる。
セメント組成物中の本発明のセメント用添加剤は目的に応じて、任意の適切な含有割合を採用し得る。例えばセメント100質量部に対して本発明のポリカルボン酸共重合体は、固形分で、好ましくは0.001質量部~10質量部、より好ましくは0.005質量部~5質量部、さらに好ましくは0.01質量部~3質量部、特に好ましくは0.01質量部~2質量部、最も好ましくは0.01質量部~1質量部である。セメント組成物中の本発明のポリカルボン酸共重合体の含有量がセメントに対して上記範囲内にあれば、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上と、本発明特有の効果(粘性増大抑制、流動性)とを両立して発現できる。
本発明のセメント添加剤を含む本発明のセメント組成物1mあたりの単位水量、セメント使用量及び水/セメント比は適宜設定可能である。好ましくは単位水量100~185kg/m、使用セメント量250~800kg/m、水/セメント比(質量比)=0.1~0.7、より好ましくは、単位水量120~175kg/m、使用セメント量270~800kg/m、水/セメント比(質量比)=0.15~0.65である。本発明のセメント組成物は、貧配合~富配合まで幅広く使用可能であり、単位セメント量の多い高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。
本発明のセメント組成物には、本発明のセメント添加剤以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を含んでいてもよい。
他の成分としては、例えばセメント分散剤、AE剤、消泡剤、凝結遅延剤、硬化促進剤、硬化遅延剤、防水剤、防錆剤、ひび割れ低減剤、膨張材等のセメント用添加剤が挙げられ、これらは1種又は2種以上添加されていてもよい。本発明ではセメント分散剤を添加することが好ましい。
セメント分散剤は、セメント分散剤の添加後直ぐに、又は経時後にセメント粒子の表面に吸着し、その反発作用によってセメント粒子を分散させ、セメント組成物の流動性を高める機能を有すればよく、特に限定されない。このようなセメント分散剤としては、好ましくは分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤、ポリカルボン酸系分散剤、及びリン酸系分散剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種である。セメント分散剤を本発明のセメント用組成物と併用することでセメント組成物の粘性増大抑制に有効であると共に、流動性に優れた効果を発揮できる。
スルホン酸系分散剤としては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の、ポリアルキルアリールスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;アミノアリールスルホン酸-フェノール-ホルムアルデヒド縮合物等の、芳香族アミノスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;リグニンスルホン酸塩、変性リグニンスルホン酸塩等のリグニンスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;ポリスチレンスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;などが挙げられる。
ポリカルボン酸系分散剤(但し、本発明のセメント用添加剤に含まれるポリカルボン酸系共重合体を除く、以下同じ)としては、各種公知のポリカルボン酸系共重合体を使用でき、好ましくはモノカルボン酸系単量体の単独又は共重合体であるポリカルボン酸系分散剤が好ましく、ポリアルキレングリコール鎖を有するポリカルボン酸系共重合体がより好ましい。例えば、不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位を含む分散剤;不飽和モノカルボン酸系単量体由来の構成単位を含む分散剤;不飽和モノカルボン酸エステル系単量体由来の構成単位を含む分散剤;(ポリ)アルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体由来の構成単位を含む分散剤;不飽和ジカルボン酸系単量体由来の構成単位を含む分散剤;疎水性不飽和モノカルボン酸エステル系単量体由来の構成単位を含む分散剤などが挙げられる。
リン酸系分散剤としては、分子中にリン酸基を有する分散剤:ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体とリン酸エステル系単量体との共重合体、芳香族ポリアルキレングリコールエーテル系単量体と芳香族リン酸エステル系単量体とのホルマリン縮合物などが挙げられる。
分散剤を用いる場合、本発明のポリカルボン酸系共重合体とセメント分散剤の割合は使用するセメント分散剤の種類、配合条件、試験条件等の違いによって設定し得るが、セメント組成物の粘性増大抑制効果や初期流動性及び経時流動保持性の向上効果を考慮すると、本発明のポリカルボン酸系共重合体とセメント分散剤の割合(本発明のポリカルボン酸系共重合体/分散剤)は、好ましくは1/99~99/1、より好ましくは10/90~90/10、更に好ましくは20/80~80/20、特に好ましくは30/70~70/30、最も好ましくは40/60~60/40である。
本発明のセメント組成物は、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等に有効であり得る。本発明のセメント組成物は、中流動コンクリート(スランプ値が22~25cmのコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50~70cmのコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効であり得る。
本発明のセメント組成物は、構成成分を任意の適切な方法で配合して調整すればよい。例えば、構成成分をミキサー中で混練する方法などが挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、特に明記しない限り、部とある場合は質量部、%とある場合は質量%を意味する。
(重量平均分子量(Mw)の測定条件)
重量平均分子量(Mw)は下記条件でGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて行った。
装置:Alliance(2695)(Waters社製)
解析ソフト:Empower2プロフェッショナル+GPCオプション(Waters社製)
使用カラム:TSKguardcolumnsSWXL(内径:6.0mm×40mm)+TSKgel G4000SWXL(内径:7.8mm×300mm)+G3000SWXL(内径:7.8mm×300mm)+G2000SWXL(内径:7.8mm×300mm)(いずれも東ソー社製)
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters社製、Waters 2414)
溶離液:イオン交換水10999gとアセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶解し、さらに酢酸でpH6.0に調整した溶液。
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
測定時間:45分
試料液注入量:100μL(試料濃度0.5質量%の溶離液溶液)
GPC標準サンプル:東ソー(株)製のポリエチレングリコール、Mp=255000、200000、107000、72750、44900、31400、21300、11840、6450、4020、1470
検量線:上記ポリエチレングリコールのMp値を用いて3次式で作成した。
(高速液体クロマトグラフィー(LC))
反応原料として用いた各単量体の残存量確認は、以下の条件で測定した。
装置:Waters Alliance 2695(Waters社製)
解析ソフト:Empowerプロフェッショナル(Waters社製)
カラム:Atlantis dC18 5μm(内径4.6mm×長さ250mm)×2本(Waters社製)
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶媒:100mM酢酸ナトリウム水溶液とアセトニトリルを6:4の比率で混合した溶液
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
測定時間:30分
試料液注入量:100μL(試料濃度は1質量%)
[共重合体(A-1)の合成]
温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水:109.3部を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、58℃に昇温した。次に、3-メチル-3-ブテン-1-オールにエチレンオキシドを平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル(IPN-50):159.6部をイオン交換水:104.8部で溶解させた水溶液と、マレイン酸:12.3部及びアクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA):23.4部をイオン交換水:45部で希釈した水溶液を反応容器内に5時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水:19.8部に過硫酸アンモニウム:1.7部を溶解させた水溶液と、イオン交換水:21.8部にL-アスコルビン酸:0.5部及び3-メルカプトプロピオン酸:1.7部を溶解させた水溶液を5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて58℃に温度を維持し重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH6に中和し、重量平均分子量(Mw)12,500の本発明の共重合体(A-1)の水溶液を得た。各原料単量体の反応率について、液体クロマトグラフィー(LC)によりそれぞれ残存量を測定して求めたところ、IPN-50の反応率は91.1%であり、マレイン酸の反応率は62.5%であり、HEAの反応率は99.0%であった。得られた共重合体(A-1)は、表1に示す構造単位(I)、構造単位(II)、及び構造単位(III)を有する混合物である。また各原料単量体の反応率から求められた共重合体(A-1)の各構成単位の割合を表1に記載した。
[共重合体(B-1)の合成]
温度計、撹拌機、滴下装置、窒素導入管および還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水:100部を仕込み、撹拌下に反応容器内を窒素置換し、58℃に昇温した。次に、3-メチル-3-ブテン-1-オールにエチレンオキシドを平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル(IPN-50):162.8部をイオン交換水:107.1部で溶解させた水溶液と、アクリル酸:13.3部およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA):23.9部をイオン交換水:45部で希釈した水溶液を反応容器内に5時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水:24.2部に過硫酸アンモニウム:2.1部を溶解させた水溶液と、イオン交換水:18.8部にL-アスコルビン酸:0.6部および3-メルカプトプロピオン酸:2.1部を溶解させた水溶液を5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて58℃に温度を維持し重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH6に中和し、重量平均分子量(Mw)11,900の比較共重合体(B-1)の水溶液を得た。各原料単量体の反応率について、液体クロマトグラフィー(LC)によりそれぞれ残存量を測定して求めたところ、IPN-50の反応率は83.0%であり、アクリル酸の反応率は93.6%であり、HEAの反応率は95.3%であった。得られた共重合体(B-1)は、表1に示す構造単位(I)、構造単位(II)、及び構造単位(V)を有する混合物である。また各原料単量体の反応率から求められた共重合体(B-1)の各構成単位の割合を表1に記載した。
[共重合体(C)の合成](セメント分散剤)
温度計、撹拌機、滴下ロート、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水277部、3-メチル-3-ブテン-1-オールにエチレンオキシドを平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル(IPN-50)400部を仕込み、65℃に昇温した後、そこへ過酸化水素0.67部とイオン交換水12.73部とを含む過酸化水素水溶液を添加した。次に、アクリル酸58.4部を反応容器内に3時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水16.49部にL-アスコルビン酸0.87部及び3-メルカプトプロピオン酸1.57部を溶解させた水溶液を3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて65℃に温度を維持し重合反応を終了した。重合反応終了時の重合成分濃度(全単量体成分の全原料に対する質量%濃度)は60%であった。その後、重合反応温度以下の温度で水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液をpH7に中和し、重量平均分子量30,400の共重合体(C)の水溶液を得た。各原料単量体の反応率について、液体クロマトグラフィー(LC)によりそれぞれ残存量を測定して求めたところ、IPN-50の反応率は94.1%であり、アクリル酸の反応率は98.2%であった。
Figure 0006998221000007
[実施例1]
共重合体(A-1)と共重合体(C)とを6:4の比率で混合して試料となる共重合体(1)を得た。
[比較例1]
共重合体(B-1)と共重合体(C)とを6:4の比率で混合して試料となる共重合体(2)を得た。
<モルタル試験>
モルタル試験は、温度が20℃±1℃、相対湿度が60%±15%の環境下で行った。モルタルは下記に示す材料を用いてC/S/W=900/1260/270(g)となるように配合した。
C:セメント(普通ポルトランドセメント、太平洋セメント社製)
S:細骨材(大井川産陸砂)
W:試料(共重合体)と消泡剤のイオン交換水溶液
なお、Wについては所定量の試料およびセメント質量に対して0.005質量%の消泡剤(マイクロエア404、BASFポゾリス社製)を含み、イオン交換水中充分に均一溶解させた。また各試料の添加量は、セメント質量に対する各試料の固形分の質量%で示した。
(モルタルの調製)
モルタルの調製は次のように行った。ハイパワーミキサー(丸東製作所製、型番:CB-34)を用い、混練容器へ上記C(セメント)および上記S(細骨材)を投入し、低速で10秒間混練した。さらに低速で混練しながら、W(試料と消泡剤のイオン交換水溶液)を15秒間かけて投入した。混練を始めてから40秒後にミキサーを停止し、20秒間かけて容器の壁に付着したモルタルの掻き落としを行った。その後、さらに高速で180秒間混練を行い、モルタルを調製した。
(モルタルフロー値の測定方法)
上記のようにして得られたモルタルを、水平に設置したフロー測定板(鋼製平板、60cm×60cm)上に置かれたスランプコーン(JIS-A―1171に準拠、上端内径50mm、下端内径100mm、高さ150mm)に半量詰めて15回突き棒で突き、さらにモルタルをスランプコーンのすりきりいっぱいまで詰めて15回突き棒で突いた後、スランプコーンの表面をならした。その後、最初にミキサーを始動させてから11分後にスランプコーンを垂直に引き上げ、広がったモルタルの直径(最も長い部分の直径(長径)および該長径に対して90度をなす部分の直径)を2箇所測定し、その平均値をモルタルフロー値とした(初期フロー値)。なお、モルタルフロー値は、数値が大きいほど分散性能が優れていることを示す。同様にして、ミキサー始動開始より30分経過後、および60分経過後のモルタルフロー値を測定した。
(ロート流下時間の測定方法)
得られたモルタルのロート流下時間は、土木学会規準JSCE-F541に準じて、図1に示すようなJ14ロートを用いて測定した。同様にして、ミキサー始動開始より30分および60分経過後のモルタルのロート流下時間を測定した。なお、共重合体(1)、共重合体(2)は添加量を表2のNo.(i)~(iii)に示す様に変更してフロー値と流下時間を測定した。
(減水性能、保持性能、及び粘性の評価)
上記モルタルフロー値と上記ロート流下時間より、各試料の特性を評価した。
(減水性能)
混練直後のフロー値(初期フロー値)が250mmとなるために必要な試料(共重合体)の添加量(wt%)に基づいてセメント(C)に占める割合([wt%/C])を算出した。同様の試験を3回おこなって、近似式より算出した値を表2に示した。なお、必要な添加量が少ないほど減水性能が高いことを示す。
(保持性能)
上記混練直後のフロー値(初期フロー値)が250mmのモルタルを使用し、該モルタルの混練後60分経過後のフロー値(60分後フロー値)を測定して、フロー保持率(60分後フロー値/初期フロー値)を算出し、表2に示した。
(粘性)
混練直後のフロー値(初期フロー値)が220mmとなるように調整したモルタルを使用し、該初期フロー値のロート流下時間(初期流下時間)、及び混練後60分経過後のフロー値(60分後フロー値)が220mmとなったロート流下時間(60分後流下時間)を測定した。同様の試験を3回おこなって、近似式より算出した値を表2に示した。なお、流下時間が短いほど、粘性が低いと評価した。
Figure 0006998221000008
表1、2、図2~4より、本発明の要件を満足する共重合体(A-1)を使用した実施例1は、セメント組成物の初期粘性、経時粘性、及び経時流動性のいずれにも優れていた。
一方、構造単位(II)の代わりに不飽和モノカルボン酸系単量体であるアクリル酸由来の構造単位(V)を含む共重合体(B-1)を使用した比較例1は、粘性増大抑制効果が低かった。また実施例1は比較例1よりも少ない添加量で、優れた初期流動性、経時流動性、粘性増大抑制を発揮できた。
これらの結果から、本発明の要件を満足するように構成したポリカルボン酸系共重合体を含むセメント用添加剤は、セメント組成物の混練直後、及び混練後の経時における粘性増大を抑制すると共に、流動性にも優れた特性を有することがわかる。
(実施例2、比較例2、比較例3)
[共重合体(A-2)の合成]
不飽和ポリアルキレングリコールエーテル(IPN-50)、マレイン酸、およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)の比率を変更した以外は上記共重合体(A-1)と同様に行い、重量平均分子量(Mw)11,900の共重合体(A-2)の水溶液を得た。各原料単量体の反応率について、液体クロマトグラフィー(LC)によりそれぞれ残存量を測定して求め、共重合体(A-2)の各構成単位の割合を表3に記載した。
[共重合体(B-2)の合成]
不飽和ポリアルキレングリコールエーテル(IPN-50)の比率を変更すると共に、マレイン酸をアクリル酸にしてその比率を変更し、またアクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)を添加しなかった以外は、上記共重合体(A-1)と同様に行い、重量平均分子量(Mw)33,000の共重合体(B-2)の水溶液を得た。各原料単量体の反応率について、液体クロマトグラフィー(LC)によりそれぞれ残存量を測定して求め、共重合体(B-2)の各構成単位の割合を表3に記載した。
[共重合体(B-3)の合成]
不飽和ポリアルキレングリコールエーテル(IPN-50)、アクリル酸、及びアクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)の比率を変更した以外は共重合体(B-1)と同様に行い、重量平均分子量(Mw)28,800の共重合体(B-3)の水溶液を得た。各原料単量体の反応率について、液体クロマトグラフィー(LC)によりそれぞれ残存量を測定して求め、共重合体(B-3)の各構成単位の割合を表3に記載した。
Figure 0006998221000009
[実施例2]
共重合体(A-2)と共重合体(C)とを6:4の比率で混合して試料となる共重合体(2)を得た。
[比較例2]
共重合体(B-2)と共重合体(C)とを6:4の比率で混合して試料となる共重合体(4)を得た。
[比較例3]
共重合体(B-3)と共重合体(C)とを6:4の比率で混合して試料となる共重合体(5)を得た。
共重合体(3)~(5)についても同様にしてモルタル試験を行い、減水性能、保持性能、粘性を評価した。結果を表4に示す。
Figure 0006998221000010
表3、4より、本発明の要件を満足するポリカルボン酸系共重合体を使用した実施例2は、セメント組成物の初期粘性、経時粘性、及び経時流動性のいずれにも優れていた。また実施例1よりも構造単位(II)、及び構造単位(III)の割合が高い実施例2は粘性増大抑制効果がより一層優れていた。
一方、構造単位(II)、及び構造単位(III)を含んでいない比較例2は、初期粘性、及び経時粘性のいずれも悪かった。
また構造単位(II)を含んでいない比較例3も比較例2と同様に初期粘性、及び経時粘性のいずれも悪かった。

Claims (9)

  1. ポリカルボン酸系共重合体を含むセメント用添加剤であって、
    該ポリカルボン酸系共重合体は、
    下記構造単位(I)、
    下記構造単位(II)、および
    カルボン酸ヒドロキシアルキルエステル系単量体由来の構造単位(III)を含み、
    前記構造単位(I)、前記構造単位(II)、及び前記構造単位(III)の合計100質量%に対して、前記構造単位(I)が40~87質量%であり、前記構造単位(II)が5~30質量%であり、前記構造単位(III)が10~30質量%である、セメント用添加剤。
    Figure 0006998221000011
    (式(I)中、
    2は、水素原子又は炭素数1~18のアルキル基を表し、
    3、R4、及びR5は、同一又は異なって、水素原子、又は、メチル基を表し、
    6は炭素数0~5のアルキレン基を表し、
    1Oは、同一又は異なって、炭素数2~18のオキシアルキレン基を表し、
    mは、R1Oで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数であって、5~300を表す。)
    Figure 0006998221000012
    (式(II)中、
    7、R8、及びR9は、同一又は異なって、水素原子、炭素数1~8のアルキル基、または-(CH)zCOOM2を表し(但し、R7~R9のいずれか1つが-(CH)zCOOM2である)、
    zは0~2の整数であり、
    1、M2は、同一又は異なって、水素原子、一価金属、二価金属、アンモニウム基、又は有機アミン基を表す
  2. 前記式(II)中、R8、及びR9のどちらか一方は、COOM2である請求項1に記載のセメント用添加剤。
  3. 前記式(I)中、R6のアルキレン基の炭素数が1または2である請求項1または2に記載のセメント用添加剤。
  4. 前記式(I)中、mが5~100である請求項1~3のいずれかに記載のセメント用添加剤。
  5. 前記構造体(III)の由来となるカルボン酸ヒドロキシアルキルエステル系単量体が、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルである請求項1~4のいずれかに記載のセメント用添加剤。
  6. セメント、水、及び請求項1~5のいずれかに記載のセメント用添加剤を含む、セメント組成物。
  7. さらにセメント分散剤を含む、請求項6に記載のセメント組成物。
  8. 前記分散剤がスルホン酸系分散剤、ポリカルボン酸系分散剤、及びリン酸系分散剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項7に記載のセメント組成物。
  9. 前記ポリカルボン酸系分散剤は、不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位を含む分散剤であって、
    前記不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体由来の構成単位を含む分散剤は、アクリル酸由来の構造単位を含むものである請求項8に記載のセメント組成物。
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