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JP6958362B2 - レジストパターン形成方法 - Google Patents

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Description

本発明は、レジストパターン形成方法に関し、特には、ポジ型レジストとして好適に使用し得る重合体を含むポジ型レジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法に関するものである。
従来、半導体製造等の分野において、電子線などの電離放射線や紫外線などの短波長の光(以下、電離放射線と短波長の光とを合わせて「電離放射線等」と称することがある。)の照射により主鎖が切断されて現像液に対する溶解性が増大する重合体が、主鎖切断型のポジ型レジストとして使用されている。
そして、例えば特許文献1には、高感度な主鎖切断型のポジ型レジストとして、α−メチルスチレン単位とα−クロロアクリル酸メチル単位とを含有するα−メチルスチレン・α−クロロアクリル酸メチル共重合体よりなるポジ型レジストが開示されている。
なお、α−メチルスチレン・α−クロロアクリル酸メチル共重合体よりなるポジ型レジストを用いて形成したレジスト膜を使用したレジストパターンの形成は、電離放射線等を照射した露光部と、電離放射線等を照射していない未露光部との現像液に対する溶解速度の差を利用して行われる。そして、現像液としては、例えば、酢酸アミルや酢酸ヘキシルなどのアルキル基を有するカルボン酸エステル溶剤が広く用いられている(例えば、特許文献2参照)。
特公平8−3636号公報 国際公開第2013/145695号
ここで、レジストを用いたレジストパターンの形成プロセスでは、電離放射線等の照射、現像液を用いた現像処理およびリンス液を用いたリンス処理を経てレジストパターンを形成した際に、レジストパターンの倒れが発生することがある。そのため、レジストを用いたレジストパターンの形成では、レジストパターンの倒れを抑制することが求められている。
しかしながら、特許文献1に記載のα−メチルスチレン・α−クロロアクリル酸メチル共重合体よりなるポジ型レジストでは、レジストパターンの倒れを十分に抑制することができなかった。
また、露光部と未露光部との間の現像液に対する溶解速度の差を利用してレジストパターンを形成する場合、レジスト膜中において電離放射線等に露光した露光部分の現像液への溶解性を高くし、未露光部の現像液への溶解を抑制することが必要である。この際、レジストパターンの形成効率を向上させるためには、電離放射線等の照射量を過剰に高めることなく、適度な照射量にて露光した露光部分の現像液への溶解性が高いことが好ましい。しかし、主鎖切断型のポジ型レジストを用いたレジストパターンの形成においては、レジストを形成する重合体の主鎖を切断するために必要十分である電離放射線量等の照射量や、レジスト中の露光部および未露光部の現像液に対する溶解性は、ポジ型レジストとして用いる重合体の性状と、現像液の種類との影響を受けて変化する。
そのため、主鎖切断型のポジ型レジストとして使用した際にレジストパターンの倒れの発生を抑制することができる重合体を含むレジスト組成物を用いて、レジストパターンを効率的に形成可能な方途の開発が求められていた。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者は、フッ素原子を1つ以上含有する所定の重合体を含むポジレジスト組成物を用いて主鎖切断型のポジ型レジストを形成した場合に、レジストパターンの倒れを抑制しうることを新たに見出した。しかし、本発明者が更に検討を進めたところ、かかる所定の重合体を含むポジ型レジスト組成物を用いて形成したレジストは、上述したような従来使用されてきたアルキル基を有するカルボン酸エステル溶剤に対する溶解性が非常に高く、かかる溶剤を用いた場合には、レジストパターンを良好に形成することができなかった。その一方で、溶解性の低い現像液を用いた場合には、主鎖切断型のポジ型レジストに対して照射する電離放射線等の照射量を高める必要があり、感度が過剰に低下してレジストパターン形成効率が低下する虞があった。そこで、本発明者は、フッ素原子を1つ以上含有する所定の重合体を含むポジ型レジスト組成物を用いて形成したレジストを現像するにあたり、表面張力が所定範囲である現像液を使用すると、レジストパターンの倒れの発生を十分に抑制しつつ、レジストパターンを効率的に形成可能であることを新たに見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のレジストパターン形成方法は、下記一般式(I):
Figure 0006958362
(式(I)中、Rは、塩素原子、フッ素原子またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、Rは、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、RおよびRは、水素原子、フッ素原子、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。)で表される単量体単位(A)と、下記一般式(II):
Figure 0006958362
(式(II)中、R、R、RおよびRは、水素原子、フッ素原子、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、互いに同一でも異なっていてもよく、Rは、水素原子、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、pおよびqは、0以上5以下の整数であり、p+q=5である。)で表される単量体単位(B)とを有し、前記単量体単位(A)および前記単量体単位(B)の少なくとも一方がフッ素原子を一つ以上有する重合体と、溶剤とを含む、ポジ型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程と、前記レジスト膜を露光する工程と、前記露光されたレジスト膜を現像する工程と、を含み、前記現像を、表面張力が17mN/m超24mN/m以下の現像液を用いて行うことを特徴とする。少なくとも一方がフッ素原子を一つ以上有する所定の単量体単位(A)および単量体単位(B)を含有する重合体を含んでなるポジ型レジスト組成物を用いて形成したレジスト膜を、表面張力が17mN/m超24mN/m以下の現像液を用いて現像すれば、レジストパターンの倒れの発生を十分に抑制可能であると共に、レジストパターンを効率的に形成することができる。
なお、本発明において、式(II)中のpが2以上の場合には、複数あるRは互いに同一でも異なっていてもよく、また、式(II)中のqが2以上の場合には、複数あるRは互いに同一でも異なっていてもよい。また、本発明において、現像液の表面張力は、例えば、25℃において、輪環法を用いて測定することができる。
ここで、本発明のレジストパターン形成方法では、前記現像液がアルコールよりなることが好ましい。アルコールを用いて上記所定の重合体よりなるレジスト膜を現像すれば、レジストパターンの倒れの発生を一層十分に抑制可能であると共に、レジストパターンを一層効率的に形成することができる。
さらに、本発明のレジストパターンの形成方法では、前記現像液が、イソプロピルアルコールであることが好ましい。イソプロピルアルコールを現像液として用いれば、レジストパターンの倒れの発生をより一層抑制可能であると共に、レジストパターンを一層効率的に形成することができる。
さらに、本発明のレジストパターンの形成方法では、前記Rが塩素原子であることが好ましい。単量体単位(A)のRが塩素原子であれば、電離放射線等を照射した際の主鎖の切断性が一層高まる。よって、かかる重合体を含むポジ型レジスト組成物を用いたレジストパターンの形成方法によれば、レジストパターンの明瞭性を向上させると共に、感度を一層向上させることができる。そして、レジストパターンを良好に形成することができる。また、単量体単位(A)のRが塩素原子の重合体は調製し易いため、レジストパターンの形成方法の汎用性を高めることができる。
さらにまた、本発明のレジストパターンの形成方法では、前記Rがフッ素原子で置換されたアルキル基であり、前記RおよびRが水素原子または非置換のアルキル基であることが好ましい。単量体単位(A)のRがフッ素原子で置換されたアルキル基であり、RおよびRが水素原子または非置換のアルキル基であれば、電離放射線等を照射した際の主鎖の切断性が一層高まる。よって、かかる重合体を含むポジ型レジスト組成物を用いたレジストパターンの形成方法によれば、レジストパターンを一層効率的に形成することができる。
さらにまた、本発明のレジストパターンの形成方法では、前記R〜Rが水素原子または非置換のアルキル基であり、前記単量体単位(A)がフッ素原子を一つ以上有することが好ましい。単量体単位(B)のR〜Rが水素原子または非置換のアルキル基であり、単量体単位(A)がフッ素原子を一つ以上有している重合体は、調製し易く、また、電離放射線等を照射した際の主鎖の切断性に優れている。よって、かかる重合体を含むポジ型レジスト組成物を用いたレジストパターンの形成方法によれば、レジストパターンを一層効率的に形成することができる。
本発明のレジストパターンの形成方法によれば、レジストパターンを効率的に形成することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明のレジストパターン形成方法にて用いるレジスト組成物に含有される重合体は、電子線などの電離放射線や紫外線などの短波長の光の照射により主鎖が切断されて低分子量化する、主鎖切断型のポジ型レジストとして良好に使用することができる重合体である。そして、本発明のレジストパターン形成方法は、本発明の重合体を含んでなるポジ型レジスト膜を、所定の現像液により現像する工程を含む方法であり、例えば、ビルドアップ基板などのプリント基板の製造プロセスにおいてレジストパターンを形成する際に用いることができる。
(レジストパターン形成方法)
本発明のレジストパターン形成方法は、以下に詳述するポジ型レジスト組成物を用いる。具体的には、本発明のレジストパターン形成方法は、所定のポジ型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程(レジスト膜形成工程)と、レジスト膜を露光する工程(露光工程)と、露光されたレジスト膜を現像する工程(現像工程)と、を含む。さらに、本発明のレジストパターン形成方法は、現像工程を、表面張力が17mN/m超24mN/m以下の現像液を用いて行うことを特徴とする。本発明のレジストパターン形成方法は、フッ素原子を含有する所定の重合体を含んでなるレジスト膜を、表面張力が17mN/m超24mN/m以下の現像液を用いて現像するので、レジストパターンの倒れの発生を十分に抑制しつつ、レジストパターンを効率的に形成可能である。
<レジスト膜形成工程>
レジスト膜形成工程では、レジストパターンを利用して加工される基板などの被加工物の上に、ポジ型レジスト組成物を塗布し、塗布したポジ型レジスト組成物を乾燥させてレジスト膜を形成する。ここで、基板としては、特に限定されることなく、プリント基板の製造等に用いられる、絶縁層と、絶縁層上に設けられた銅箔とを有する基板などを用いることができる。また、ポジ型レジスト組成物の塗布方法および乾燥方法としては、特に限定されることなく、レジスト膜の形成に一般的に用いられている方法を用いることができる。そして、本発明のパターン形成方法では、以下のポジ型レジスト組成物を使用する。
[ポジ型レジスト組成物]
ポジ型レジスト組成物は、以下に詳述するフッ素原子を含有する所定の重合体と、溶剤とを含み、任意に、レジスト組成物に配合され得る既知の添加剤を更に含有する。
[[重合体]]
本発明のレジストパターン形成方法にて使用するポジ型レジスト組成物に含有される重合体は、下記の一般式(I):
Figure 0006958362
(式(I)中、Rは、塩素原子、フッ素原子またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、Rは、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、RおよびRは、水素原子、フッ素原子、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、RおよびRは互いに同一でも異なっていてもよい。)で表される単量体単位(A)と、
下記の一般式(II):
Figure 0006958362
(式(II)中、R、R、RおよびRは、水素原子、フッ素原子、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、R、R、RおよびRは互いに同一でも異なっていてもよく、Rは、水素原子、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、pおよびqは、0以上5以下の整数であり、p+q=5である。)で表される単量体単位(B)とを有する。また、本発明の重合体は、単量体単位(A)および単量体単位(B)の少なくとも一方がフッ素原子を一つ以上有する。即ち、本発明のレジストパターン形成方法に使用するレジスト組成物に含まれる重合体は、単量体単位(A)がフッ素原子を一つ以上有し、単量体単位(B)がフッ素原子を有していなくてもよいし、単量体単位(B)がフッ素原子を一つ以上有し、単量体単位(A)がフッ素原子を有していなくてもよいし、単量体単位(A)および単量体単位(B)のそれぞれがフッ素原子を一つ以上有していてもよい。
なお、重合体は、単量体単位(A)および単量体単位(B)以外の任意の単量体単位を含んでいてもよいが、重合体を構成する全単量体単位中で単量体単位(A)および単量体単位(B)が占める割合は、合計で90mol%以上であることが好ましく、100mol%(即ち、重合体は単量体単位(A)および単量体単位(B)のみを含む)ことが好ましい。
そして、重合体は、所定の単量体単位(A)および単量体単位(B)を含んでいるので、電離放射線等(例えば、電子線、KrFレーザー、ArFレーザー、EUVレーザーなど)が照射されると、主鎖が切断されて低分子量化する。また、本発明の重合体は、単量体単位(A)および単量体単位(B)の少なくとも一方がフッ素原子を一つ以上有しているので、レジストとして使用した際にレジストパターンの倒れの発生を十分に抑制することができる。
なお、単量体単位(A)および単量体単位(B)の少なくとも一方にフッ素原子を含有させることでレジストパターンの倒れの発生を抑制することができる理由は、明らかではないが、重合体の撥液性が向上するため、レジストパターンの形成過程において現像液やリンス液を除去する際にパターン間で引っ張り合いが起こるのを抑制することができるからであると推察される。
<単量体単位(A)>
ここで、単量体単位(A)は、下記の一般式(III):
Figure 0006958362
(式(III)中、R〜Rは、式(I)と同様である。)で表される単量体(a)に由来する構造単位である。
そして、重合体を構成する全単量体単位中の単量体単位(A)の割合は、特に限定されることなく、例えば30mol%以上70mol%以下とすることができる。
ここで、式(I)および式(III)中のR〜Rを構成し得る、フッ素原子で置換されたアルキル基としては、特に限定されることなく、アルキル基中の水素原子の一部または全部をフッ素原子で置換した構造を有する基が挙げられる。
また、式(I)および式(III)中のR〜Rを構成し得る非置換のアルキル基としては、特に限定されることなく、非置換の炭素数1以上10以下のアルキル基が挙げられる。中でも、R〜Rを構成し得る非置換のアルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましい。
そして、電離放射線等を照射した際の重合体の主鎖の切断性を向上させる観点からは、式(I)および式(III)中のRは、塩素原子、フッ素原子またはフッ素原子で置換された炭素数1以上5以下のアルキル基であることが好ましく、塩素原子、フッ素原子またはパーフルオロメチル基であることがより好ましく、塩素原子またはフッ素原子であることが更に好ましく、塩素原子であることが特に好ましい。特に、Rが塩素原子である重合体は、主鎖切断型のポジ型レジストとして使用した場合に、Rがフッ素原子である重合体よりも主鎖の切断性に富み、レジストパターンの明瞭性を向上させると共に、感度を一層向上させることができる。なお、式(III)中のRが塩素原子である単量体(a)は、重合性に優れており、式(I)中のRが塩素原子である単量体単位(A)を有する重合体は、調製が容易であるという点においても優れている。
また、電離放射線等を照射した際の重合体の主鎖の切断性を向上させる観点からは、式(I)および式(III)中のRは、フッ素原子で置換されたアルキル基であることが好ましく、フッ素原子で置換された炭素数1以上10以下のアルキル基であることがより好ましく、2,2,2−トリフルオロエチル基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル基、2−(パーフルオロブチル)エチル基、2−(パーフルオロヘキシル)エチル基、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピル基、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル基、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル基、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル基、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチル基または1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル基であることが更に好ましく、2,2,2−トリフルオロエチル基であることが特に好ましい。
更に、電離放射線等を照射した際の重合体の主鎖の切断性を向上させる観点からは、式(I)および式(III)中のRおよびRは、それぞれ、水素原子または非置換のアルキル基であることが好ましく、水素原子または非置換の炭素数1以上5以下のアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
そして、上述した式(I)で表される単量体単位(A)を形成し得る、上述した式(I)で表される単量体(a)としては、特に限定されることなく、例えば、α−クロロアクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、α−クロロアクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル、α−クロロアクリル酸2−(パーフルオロブチル)エチル、α−クロロアクリル酸2−(パーフルオロヘキシル)エチル、α−クロロアクリル酸1H,1H,3H−テトラフルオロプロピル、α−クロロアクリル酸1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル、α−クロロアクリル酸1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル、α−クロロアクリル酸1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル、α−クロロアクリル酸1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチル、α−クロロアクリル酸1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチルなどのα−クロロアクリル酸フルオロアルキルエステル;α−フルオロアクリル酸メチル、α−フルオロアクリル酸エチルなどのα−フルオロアクリル酸アルキルエステル;α−トリフルオロメチルアクリル酸メチル、α−トリフルオロメチルアクリル酸エチルなどのα−フルオロアルキルアクリル酸アルキルエステル;α−フルオロアクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、α−フルオロアクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル、α−フルオロアクリル酸2−(パーフルオロブチル)エチル、α−フルオロアクリル酸2−(パーフルオロヘキシル)エチル、α−フルオロアクリル酸1H,1H,3H−テトラフルオロプロピル、α−フルオロアクリル酸1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル、α−フルオロアクリル酸1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル、α−フルオロアクリル酸1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル、α−フルオロアクリル酸1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチル、α−フルオロアクリル酸1,2,2,2−テトラフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチルなどのα−フルオロアクリル酸フルオロアルキルエステル;が挙げられる。
なお、電離放射線等を照射した際の重合体の主鎖の切断性を更に向上させる観点からは、単量体単位(A)は、α−クロロアクリル酸フルオロアルキルエステルに由来する構造単位であることが好ましい。即ち、式(I)および式(III)中のR〜Rは、Rが塩素原子であり、Rがフッ素原子で置換されたアルキル基であり、RおよびRが水素原子であることが特に好ましい。
<単量体単位(B)>
また、単量体単位(B)は、下記の一般式(IV):
Figure 0006958362
(式(IV)中、R〜R、並びに、pおよびqは、式(II)と同様である。)で表される単量体(b)に由来する構造単位である。
そして、重合体を構成する全単量体単位中の単量体単位(B)の割合は、特に限定されることなく、例えば30mol%以上70mol%以下とすることができる。
ここで、式(II)および式(IV)中のR〜Rを構成し得る、フッ素原子で置換されたアルキル基としては、特に限定されることなく、アルキル基中の水素原子の一部または全部をフッ素原子で置換した構造を有する基が挙げられる。
また、式(II)および式(IV)中のR〜Rを構成し得る非置換のアルキル基としては、特に限定されることなく、非置換の炭素数1以上5以下のアルキル基が挙げられる。中でも、R〜Rを構成し得る非置換のアルキル基としては、メチル基又はエチル基が好ましい。
そして、重合体の調製の容易性および電離放射線等を照射した際の主鎖の切断性を向上させる観点からは、式(II)および式(IV)中のRは、水素原子または非置換のアルキル基であることが好ましく、非置換の炭素数1以上5以下のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
また、重合体の調製の容易性および電離放射線等を照射した際の主鎖の切断性を向上させる観点からは、式(II)および式(IV)中に複数存在するRおよび/またはRは、全て、水素原子または非置換のアルキル基であることが好ましく、水素原子または非置換の炭素数1以上5以下のアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
なお、重合体の調製の容易性および電離放射線等を照射した際の主鎖の切断性を向上させる観点からは、式(II)および式(IV)中のpが5であり、qが0であり、5つあるRの全てが水素原子または非置換のアルキル基であることが好ましく、5つあるRの全てが水素原子または非置換の炭素数1以上5以下のアルキル基であることがより好ましく、5つあるRの全てが水素原子であることが更に好ましい。
一方、重合体をレジストパターンの形成に使用した際にレジストパターンの倒れの発生を更に抑制する観点からは、式(II)および式(IV)中に複数存在するRおよび/またはRは、フッ素原子またはフッ素原子で置換されたアルキル基を含むことが好ましく、フッ素原子またはフッ素原子で置換された炭素数1以上5以下のアルキル基を含むことがより好ましい。
更に、重合体の調製の容易性および電離放射線等を照射した際の主鎖の切断性を向上させる観点からは、式(II)および式(IV)中のRおよびRは、それぞれ、水素原子または非置換のアルキル基であることが好ましく、水素原子または非置換の炭素数1以上5以下のアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
そして、上述した式(II)で表される単量体単位(B)を形成し得る、上述した式(IV)で表される単量体(b)としては、特に限定されることなく、例えば、以下の(b−1)〜(b−11)等のα−メチルスチレンおよびその誘導体が挙げられる。
Figure 0006958362
なお、重合体の調製の容易性および電離放射線等を照射した際の主鎖の切断性を向上させる観点からは、単量体単位(B)は、フッ素原子を含有しない(即ち、単量体単位(A)のみがフッ素原子を含有する)ことが好ましく、α−メチルスチレンに由来する構造単位であることがより好ましい。即ち、式(II)および式(IV)中のR〜R、並びに、pおよびqは、p=5、q=0であり、Rがメチル基であり、5つあるRが全て水素原子であり、RおよびRが水素原子であることが特に好ましい。
−重量平均分子量−
ここで、重合体の重量平均分子量(Mw)は、22000以上であることが好ましく、25000以上であることがより好ましく、55000以上であることがより好ましく、110000以下であることが好ましく、100000以下であることがより好ましく、90000以下であることが更に好ましい。重合体の重量平均分子量(Mw)が22000以上であれば、かかる重合体を含有するレジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法において、電離放射線等を照射しなかった領域(以下、非照射領域ともいう)におけるレジスト膜の残膜率を高めることにより、γ値を高め、得られるレジストパターンの明瞭性を高めることができる。また、重合体の重量平均分子量が22000以上であれば、かかる重合体を用いて形成したポジ型レジストの弾性を向上させることができるので、レジストパターンの倒れの発生を一層抑制することが可能である。さらに、重合体の重量平均分子量(Mw)が110000以下であれば、重合体の製造が容易である。また、重合体の重量平均分子量(Mw)が110000以下であれば、かかる重合体を含有するレジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法において、感度を一層向上させることができる。
なお、本発明において「重量平均分子量(Mw)」は、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定することができる。
−数平均分子量−
また、重合体の数平均分子量(Mn)は、15000以上であることが好ましく、20000以上であることがより好ましく、35000以上であることがさらに好ましい。重合体の数平均分子量(Mn)が上記範囲内であれば、かかる重合体を含有するレジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法において、γ値を高めることができる。
本発明において、「数平均分子量(Mn)」は、上述した「重量平均分子量(Mw)」と同様に、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定することができる。
−分子量分布−
重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、1.60未満であることが好ましく、1.45未満であることがより好ましく、1.40未満であることがさらに好ましく、1.20以上であることが好ましく、1.26以上であることがより好ましく、1.30以上であることがさらに好ましい。重合体の分子量分布(Mw/Mn)が1.60未満であれば、かかる重合体を含有するレジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法において、γ値を高めることができ、得られるレジストパターンの明瞭性を高めることができる。また、重合体の分子量分布(Mw/Mn)が1.20以上であれば、重合体の製造容易性を高めることができる。さらに、重合体の重量平均分子量が22000以上である場合に、分子量分布が(Mw/Mn)が1.20以上であれば、かかる重合体を用いて形成したポジ型レジストの弾性を一層向上させることができるので、レジストパターンの倒れの発生を一層抑制することが可能である。
なお、本発明において、「分子量分布(Mw/Mn)」とは、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比を指す。
−分子量が6000未満の成分の割合−
重合体は、分子量が6000未満の成分の割合が6%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、1%以下であることが更に好ましく、0.2%以下であることが特に好ましく、0%であることが最も好ましい。分子量が6000未満の成分の割合が6%以下であれば、かかる重合体を含有するレジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法において、電離放射線等の照射量が少ない場合に過度に減膜することを抑制して、γ値を高めることができ、得られるレジストパターンの明瞭性を高めることができる。
−分子量が10000未満の成分の割合−
重合体は、分子量が10000未満の成分の割合が15%以下であることが好ましく、2.7%以下であることがより好ましく、2%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが特に好ましい。分子量が10000未満の成分の割合が15%以下であれば、かかる重合体を含有するレジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法において、γ値を高めることができ、得られるレジストパターンの明瞭性を高めることができる。
−分子量が20000超の成分の割合−
重合体は、分子量が20000超の成分の割合が、60%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。分子量が20000超の成分の割合が、60%以上であれば、かかる重合体を含有するレジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法において、非照射領域における残膜率を高めることで、γ値を高め、得られるレジストパターンの明瞭性を高めることができる。
−分子量が100000超の成分の割合−
重合体は、分子量が100000超の成分の割合が、40%以下であることが好ましい。分子量が100000超の成分の割合が40%以下であれば、重合体の製造が容易である。さらに、かかる重合体を含有するレジスト組成物を用いたレジストパターン形成方法において、感度を一層高めることができる。
[[重合体の調製方法]]
そして、上述した単量体単位(A)および単量体単位(B)を有する重合体は、例えば、単量体(a)と単量体(b)とを含む単量体組成物を重合させた後、任意に得られた重合物を精製することにより調製することができる。
なお、重合体の組成、分子量分布、重量平均分子量および数平均分子量は、重合条件および精製条件を変更することにより調整することができる。具体的には、例えば、重合体の組成は、重合に使用する単量体組成物中の各単量体の含有割合を変更することにより調整することができる。また、重量平均分子量および数平均分子量は、重合温度を高くすれば、小さくすることができる。更に、重量平均分子量および数平均分子量は、重合時間を短くすれば、小さくすることができる。
−単量体組成物の重合−
ここで、重合体の調製に用いる単量体組成物としては、単量体(a)および単量体(b)を含む単量体成分と、任意で使用可能な溶媒と、重合開始剤と、任意に添加される添加剤との混合物を用いることができる。そして、単量体組成物の重合は、既知の方法を用いて行うことができる。中でも、溶媒を使用する場合には、溶媒としてシクロペンタノンなどを用いることが好ましい。また、重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリルなどのラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。なお、重合体の重量平均分子量及び数平均分子量は、重合開始剤の配合量を変更することによっても調整することができる。具体的には、重量平均分子量および数平均分子量は、重合開始剤の配合量を少なくすれば、大きくすることができ、反対に、重合開始剤の配合量を多くすれば、小さくすることができる。また、重合体の重量平均分子量及び数平均分子量を大きくするにあたり、単量体組成物中における溶媒の配合量を少なくする、或いは、単量体組成物溶媒を配合しないこともあり得る。
また、単量体組成物を重合して得られた重合物は、そのまま重合体として使用してもよいが、特に限定されることなく、重合物を含む溶液にテトラヒドロフラン等の良溶媒を添加した後、良溶媒を添加した溶液をメタノール等の貧溶媒中に滴下して重合物を凝固させることにより回収し、以下のようにして精製することもできる。
−重合物の精製−
得られた重合物を精製する場合に用いる精製方法としては、特に限定されることなく、再沈殿法やカラムクロマトグラフィー法などの既知の精製方法が挙げられる。中でも、精製方法としては、再沈殿法を用いることが好ましい。
なお、重合物の精製は、複数回繰り返して実施してもよい。
そして、再沈殿法による重合物の精製は、例えば、得られた重合物をテトラヒドロフラン等の良溶媒に溶解した後、得られた溶液を、テトラヒドロフラン等の良溶媒とメタノール等の貧溶媒との混合溶媒に滴下し、重合物の一部を析出させることにより行うことが好ましい。このように、良溶媒と貧溶媒との混合溶媒中に重合物の溶液を滴下して重合物の精製を行えば、良溶媒および貧溶媒の種類や混合比率を変更することにより、得られる重合体の分子量分布、重量平均分子量および数平均分子量を容易に調整することができる。具体的には、例えば、混合溶媒中の良溶媒の割合を高めるほど、混合溶媒中で析出する重合体の分子量を大きくすることができる。
なお、再沈殿法により重合物を精製する場合、本発明の重合体としては、良溶媒と貧溶媒との混合溶媒中で析出した重合物を用いてもよいし、混合溶媒中で析出しなかった重合物(即ち、混合溶媒中に溶解している重合物)を用いてもよい。ここで、混合溶媒中で析出しなかった重合物は、濃縮乾固などの既知の手法を用いて混合溶媒中から回収することができる。
[[溶剤]]
なお、溶剤としては、上述した重合体を溶解可能な溶剤であれば既知の溶剤を用いることができる。中でも、適度な粘度のポジ型レジスト組成物を得てポジ型レジスト組成物の塗工性を向上させる観点からは、溶剤としてはアニソールを用いることが好ましい。
<露光工程>
露光工程では、膜形成工程で形成したレジスト膜に対し、電離放射線や光を照射して、所望のパターンを描画する。
なお、電離放射線や光の照射には、電子線描画装置やレーザー描画装置などの既知の描画装置を用いることができる。
<現像工程>
現像工程では、露光工程で露光されたレジスト膜と、現像液とを接触させてレジスト膜を現像し、被加工物上にレジストパターンを形成する。
ここで、レジスト膜と現像液とを接触させる方法は、特に限定されることなく、現像液中へのレジスト膜の浸漬やレジスト膜への現像液の塗布等の既知の手法を用いることができる。
[[現像液]]
本発明のレジストパターン形成方法で使用する現像液は、表面張力が17mN/m超24mN/m以下であることを必要とする。現像液の表面張力は、好ましくは18mN/m超であり、好ましくは23mN/m以下である。ここで、本発明者の検討によれば、現像液の表面張力の値の大きいほどレジスト膜の溶解性が高い傾向があることが明らかとなった。一方、本発明者の更なる検討によれば現像液の表面張力の値が小さければ、現像対象とするレジストパターンが微細な場合であっても、微細な間隙に現像液が進入し易い傾向があることが明らかとなった。したがって、現像液の表面張力が上記範囲内であれば、現像液について、レジスト膜の溶解性とレジストパターン間隙への進入し易さとのバランスをとることができる。更に、現像液は、沸点が63℃超であることが好ましく、75℃超であることがより好ましい。現像液の沸点が63℃超であれば、レジストパターン形成時における現像液の取り扱いが容易である。
表面張力が17mN/m超24mN/m以下の現像液としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール)、及びこれらの混合物等のアルコールが挙げられる。なかでも、レジストパターンを効率的に形成する観点から、現像液として2-プロパノール(イソプロピルアルコール)を用いることが好ましい。なお、現像液として使用可能なアルコールの選定にあたり、露光工程を実施する前のレジスト膜を溶解しないアルコールを選択することが好ましい。さらに、現像液としての表面張力が17mN/m超24mN/m以下となる限りにおいて、上述したようなそれ自体の表面張力が17mN/m超24mN/m以下である溶剤以外の溶剤を一種または複数種混合して用いても良い。混合可能な溶剤としては、例えば、CFCFHCFHCFCF、CFCFCHCl、CClFCFCHClF、CFCFCFCFOCH、C18等のフッ素系溶剤;酢酸アミル、酢酸ヘキシルなどのアルキル基を有する酢酸エステル;などが挙げられる。現像液全体としての表面張力が17mN/m超24mN/m以下となる限りにおいて、上述した重合体を用いて形成されたレジスト膜の溶解性が種々異なるこれらの溶剤を混合することで、レジストパターンの微細な間隙に対する侵入容易性と、レジスト膜の溶解性とを一層良好に両立させることができる。なお、アルコールを含む複数の溶剤の混合物を現像液とする場合に、現像液全体に対するアルコールの占める比率は、50体積%超であることが好ましく、75体積%超であることがより好ましく、90体積%以上であることがさらに好ましく、95体積%以上であることが特に好ましい。
なお、リンス液としては、特に限定されることなく、使用する現像液の種類に応じた既知のリンス液を用いることができる。
また、現像液の温度は特に限定されないが、例えば21℃以上25℃以下とすることができる。
そして、かかる現像液を用いた場合のリンス液としては、現像液よりもレジスト膜の溶解性の低い溶剤、例えば、上述したようなフッ素系溶剤を用いることができる。なお、リンス液として、現像液と混ざり易いリンス液を選択し、現像液との置換が容易となるようにすることが好ましい。
[[現像条件]]
現像条件は、所望の品質のレジストパターンを得るように適宜設定することができる。例えば、現像条件は、照射量が0.85Ethでの残膜率が0.860以上、好ましくは0.870以上(以下、条件(i)とも称する)となるように決定することができる。現像条件の決定方法の一例を以下に説明する。
まず、上述した所定の重合体を含むポジ型レジスト組成物を用いたレジストパターンの形成にあたり、現像時間、現像液濃度、及び現像温度などの条件を仮で設定し、この仮の現像条件における感度曲線を、本明細書の実施例に記載の方法を用いて作成する。次いで、この感度曲線におけるEthの値と、照射量が0.85Ethでの残膜率の値とを、同じく本明細書の実施例に記載の方法を用いて導出する。そして、上記条件(i)を満たすのであれば、当該仮の現像条件を本発明のレジストパターン形成方法に採用しうる現像条件とすることができる。この仮の現像条件が、上記条件(i)を満たさない場合は、再度仮の現像条件を設定し感度曲線を作成して、照射量が0.85Ethでの残膜率の値を導出する。この操作を繰り返すことで、特定の重合体を含むポジ型レジスト組成物を用いた場合において、レジストパターンを効率的に形成しうる現像条件を決定することができる。
そして、現像条件の決定に当たり、Ethが120μC/cm以上となる現像条件を採用することが好ましく、200μC/cm以下となる現像条件を採用することが好ましい。
上述したとおり、現像条件の決定に当たり、照射量が0.85Ethでの残膜率が0.860以上となる現像条件を採用することが好ましく、0.870以上となる現像条件を採用することがより好ましく、0.880以上となる現像条件を採用することが更に好ましい。照射量が0.85Ethでの残膜率が0.860以上であれば、レジストパターンの明瞭性を高めることができるからである。
なお、現像時間は、上述した現像条件の決定方法により適宜決定することができる。具体的な現像時間は、例えば、1分以上30分以下、1分以上20分以下、1分以上10分以下、1分以上5分以下、2分以上30分以下、2分以上20分以下、2分以上10分以下、2分以上5分以下、3分以上30分以下、3分以上20分以下、3分以上10分以下、3分以上5分以下、及び3分以上4分以下とすることができる。そして、例えば重量平均分子量が50000以上の重合体を用いた場合、レジストパターンの明瞭性を高める観点から、現像時間は5分以下であることが好ましい。更に、例えば重量平均分子量が50000以上90000以下の重合体を用いた場合、レジストパターンの明瞭性を高める観点から、現像時間は2分以上5分以下であることが好ましい。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
そして、実施例および比較例において、重合体の重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布、重合体中の各分子量の成分の割合、並びに、重合体よりなるポジ型レジストの耐パターン倒れ性、Eth、γ値、及び残膜率は、下記の方法で測定および評価した。
<重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布>
得られた重合体についてゲル浸透クロマトグラフィーを用いて重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。具体的には、ゲル浸透クロマトグラフ(東ソー製、HLC−8220)を使用し、展開溶媒としてテトラヒドロフランを用いて、重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を標準ポリスチレン換算値として求めた。そして、分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
<重合体中の各分子量の成分の割合>
ゲル浸透クロマトグラフ(東ソー製、HLC−8220)を使用し、展開溶媒としてテトラヒドロフランを用いて、重合体のクロマトグラフを得た。そして、得られたクロマトグラムから、ピークの総面積(A)、分子量が所定範囲である成分のピークの面積の合計(X)をそれぞれ求めた。具体的には、下記複数の閾値によりそれぞれ定められる所定範囲の分子量の成分について、割合を算出した。
分子量が6000未満の成分の割合(%)=(X6/A)×100
分子量が10000未満の成分の割合(%)=(X10/A)×100
分子量が20000超の成分の割合(%)=(X20/A)×100
分子量が100000超の成分の割合(%)=(X100/A)×100
(実施例1)
<重合体の調製>
単量体(a)としてのα−クロロアクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル3.0gおよび単量体(b)としてのα−メチルスチレン4.40gと、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル0.006975gと、溶媒としてのシクロペンタノン1.85gを含む単量体組成物をガラス容器に入れ、ガラス容器を密閉および窒素置換して、窒素雰囲気下、78℃の恒温槽内で6時間撹拌した。その後、室温に戻し、ガラス容器内を大気解放した後、得られた溶液にテトラヒドロフラン(THF)10gを加えた。そして、THFを加えた溶液を、メタノール300g中に滴下し、重合物を析出させた。その後、析出した重合物を含む溶液をキリヤマ漏斗によりろ過し、白色の凝固物(重合物)を得た。得られた重合物の重量平均分子量(Mw)は50883であり、数平均分子量(Mn)は31303であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.63であった。また、得られた重合物は、α−クロロアクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル単位を50mol%、α−メチルスチレン単位を50mol%含んでいた。
[重合物の精製]
次いで、得られた重合物を100gのTHFに溶解させ、得られた溶液をTHF150gとメタノール(MeOH)850gとの混合溶媒に滴下し、白色の凝固物(α−メチルスチレン単位およびα−クロロアクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル単位を含有する重合体)を析出させた。その後、析出した重合体を含む溶液をキリヤマ漏斗によりろ過し、白色の重合体を得た。そして、得られた重合体について、重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布、重合体中の各分子量の成分の割合を測定した。結果を表1に示す。
<ポジ型レジスト組成物の調製>
得られた重合体を溶剤としてのアニソールに溶解させ、重合体の濃度が11質量%であるレジスト溶液(ポジ型レジスト組成物)を調製した。そして、重合体よりなるポジ型レジスト膜の耐パターン倒れ性、γ値、Eth、及び残膜率を以下に従って評価した。結果を表1に示す。
<レジスト膜の耐パターン倒れ性>
スピンコーター(ミカサ製、MS−A150)を使用し、ポジ型レジスト組成物を、直径4インチのシリコンウェハ上に塗布した。次いで、塗布したポジ型レジスト組成物を温度180℃のホットプレートで3分間加熱して、シリコンウェハ上に厚さ40nmのレジスト膜を形成した。そして、電子線描画装置(エリオニクス社製、ELS−S50)を用いてレジスト膜を最適露光量(Eop)で露光して、パターンを描画した。その後、レジスト用現像液として表面張力が20.8mN/mであるイソプロピルアルコールを用いて温度23℃で1分間の現像処理を行った後、フッ素系溶剤(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製、バートレルXF(登録商標)、CFCFHCFHCFCF)を用いて10秒間リンスしてレジストパターンを形成した。そして、形成したレジストパターンのパターン倒れの有無を観察した。なお、最適露光量(Eop)は、それぞれEthの約2倍の値を目安として、適宜設定した。また、レジストパターンのライン(未露光領域)とスペース(露光領域)は、それぞれ20nmとした。
そして、以下の基準に従って耐パターン倒れ性を評価した。
A:パターン倒れ無し
B:パターン倒れ有り
<レジスト膜のγ値>
スピンコーター(ミカサ製、MS−A150)を使用し、ポジ型レジスト組成物を直径4インチのシリコンウェハ上に厚さ500nmになるように塗布した。そして、塗布したポジ型レジスト組成物を温度180℃のホットプレートで3分間加熱して、シリコンウェハ上にレジスト膜を形成した。そして、電子線描画装置(エリオニクス社製、ELS−S50)を用いて、電子線の照射量が互いに異なるパターン(寸法500μm×500μm)をレジスト膜上に複数描画し、レジスト用現像液として、表面張力が20.8mN/mであるイソプロピルアルコールを用いて、温度23℃で1分間の現像処理を行った後、表面張力が14.1mN/mであるフッ素系溶剤(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製、バートレルXF(登録商標)、CFCFHCFHCFCF)を用いて10秒間リンスした。なお、電子線の照射量は、4μC/cm2から200μC/cm2の範囲内で4μC/cm2ずつ異ならせた。次に、描画した部分のレジスト膜の厚みを光学式膜厚計(大日本スクリーン製、ラムダエース)で測定し、電子線の総照射量の常用対数と、現像後のレジスト膜の残膜率(=(現像後のレジスト膜の膜厚/シリコンウェハ上に形成したレジスト膜の膜厚)との関係を示す感度曲線を作成した。そして、得られた感度曲線(横軸:電子線の総照射量の常用対数、縦軸:レジスト膜の残膜率(0≦残膜率≦1.00))について、下記の式を用いてγ値を求めた。なお、下記の式中、Eは、残膜率0.20〜0.80の範囲において感度曲線を二次関数にフィッティングし、得られた二次関数(残膜率と総照射量の常用対数との関数)に対して残膜率0を代入した際に得られる総照射量の対数である。また、Eは、得られた二次関数上の残膜率0の点と残膜率0.50の点とを結ぶ直線(感度曲線の傾きの近似線)を作成し、得られた直線(残膜率と総照射量の常用対数との関数)に対して残膜率1.00を代入した際に得られる総照射量の対数である。そして、下記式は、残膜率0と1.00との間での上記直線の傾きを表している。
Figure 0006958362
γ値の値が大きいほど、感度曲線の傾きが大きく、明瞭性の高いパターンを良好に形成し得ることを示す。
<Eth>
「レジスト膜のγ値」の評価方法と同様にしてシリコンウェハ上にレジスト膜を形成した。得られたレジスト膜の初期厚みTを光学式膜厚計(大日本スクリーン製、ラムダエース)で測定した。また、γ値の算出の際に得られた直線(感度曲線の傾きの近似線)の残膜率が0となる際の、電子線の総照射量Eth(μC/cm)を求めた。Ethの値が小さいほど、レジスト膜の感度が高く、レジストパターン形成効率が高いことを意味する。
<残膜率の決定>
感度曲線作成時に使用した、4μC/cmから200μC/cmの範囲内で4μC/cmずつ異ならせた電子線の照射量(すなわち、4、8、12、16・・・196、200μC/cm)を、それぞれ上述のように決定したEthで除した。
得られた値(電子線の照射量/Eth)が0.85となる電子線の照射量が存在すれば、その電子線の照射量における残膜率を、残膜率(0.85Eth)とした。
得られた値(電子線の照射量/Eth)が0.85となる電子線の照射量が存在しない場合、これらの値のうち、0.85に最も近接する2つの値を特定し、この2点における電子線の照射量を、それぞれP(μC/cm)、P+4(μC/cm)とした。そして、下記式により、残膜率(0.85Eth)を決定した。結果を表1に示す。
残膜率(0.85Eth)=S−{(S−T)/(V−U)}×(0.85−U)
この式中、
Sは電子線の照射量Pにおける残膜率を示し、
Tは電子線の照射量P+4における残膜率を示し、
UはP/Ethを示し、そして、
Vは(P+4)/Ethを示す。
ここで算出したような0.85Ethにおける残膜率が高いほど、残膜率を概ね0とすることができる電子線の総照射量よりも低い照射量では、レジスト膜が現像液に対して溶解しにくいということである。換言すれば、照射量の比較的少ない領域である、レジスト膜上におけるパターン形成領域の周辺領域では、レジスト膜の現像液に対する溶解性が低いということである。したがって、上述のようにして算出した残膜率が高いということは、レジスト膜上で溶解されてパターンを形成すべき領域と、溶解せずに残るべき領域との境界が明瞭であり、パターンの明瞭性が高いということを意味する。
(実施例2)
重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリルの配合量を0.005231gに変更し、溶媒を添加しなかった以外は実施例1と同様にして重合物を得た。得られた重合物の重量平均分子量(Mw)は49744であり、数平均分子量(Mn)は30184であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.65であった。また、得られた重合物は、α−クロロアクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル単位を50mol%、α−メチルスチレン単位を50mol%含んでいた。
そして重合物の精製にあたり、得られた溶液をTHF200gとメタノール(MeOH)800gとの混合溶媒に滴下した以外は実施例1と同様にして、重合体を得た。そして、得られた重合体について、実施例1と同様にして重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布、重合体中の各分子量の成分の割合を測定した。結果を表1に示す。さらに、実施例1と同様にしてポジ型レジスト組成物を調製し、測定及び評価を行った、結果を表1に示す。
(実施例3)
重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリルの配合量を0.069751gに変更し、溶媒であるシクロペンタノンの配合量を1.87gに変更した以外は実施例1と同様にして、重合物を得た。得られた重合物の重量平均分子量(Mw)は21807であり、数平均分子量(Mn)は14715であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.48であった。また、得られた重合物は、α−クロロアクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル単位を50mol%、α−メチルスチレン単位を50mol%含んでいた。
そして重合物の精製にあたり、得られた溶液をTHF100gとメタノール(MeOH)900gとの混合溶媒に滴下した以外は実施例1と同様にして、重合体を得た。そして、得られた重合体について、実施例1と同様にして重量平均分子量、数平均分子量および分子量分布、重合体中の各分子量の成分の割合を測定した。結果を表1に示す。さらに、実施例1と同様にしてポジ型レジスト組成物を調製し、測定及び評価を行った、結果を表1に示す。
(実施例4)
実施例1と同様にして重合物を調製した。得られた重合物の精製を行わず、当該重合物を溶剤としてのアニソールに溶解させ、重合体の濃度が11質量%であるレジスト溶液(ポジ型レジスト組成物)を調製した。そして、実施例1と同様にして、測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例5)
実施例3と同様にして重合物を調製した。得られた重合物の精製を行わず、当該重合物を溶剤としてのアニソールに溶解させ、重合物の濃度が11質量%であるレジスト溶液(ポジ型レジスト組成物)を調製した。そして、実施例3と同様にして、測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1で調製したポジ型レジスト組成物を用いて、レジスト膜を形成するにあたり、使用する現像液を酢酸ヘキシル(日本ゼオン社製、ZED−N60、製造上不可避的に混入した不純物を含む)に変更した以外は実施例1と同様にして、ポジ型レジスト膜の耐パターン倒れ性、Eth、γ値、及び残膜率を評価した。結果を表1に示す。なお、本例では、形成したレジスト膜が現像液に過剰に溶解し、パターンを形成することができなかった。さらに、表1には示さないが、表面張力が24mN/m超である酢酸アミル、酢酸ヘプチル、酢酸オクチル、酢酸ノニル、または酢酸デシルを現像液として用いた場合も、比較例1と同様に、形成したレジスト膜が現像液に過剰に溶解し、パターンを形成することができなかった。したがって、これらの場合にも、比較例1と同様の評価結果となった。
(実施例6〜12)
実施例1で調製したポジ型レジスト組成物を用いて、レジスト膜を形成するにあたり、現像処理の時間(現像時間)を、それぞれ2分、3分、4分、5分、10分、20分、30分に変更した以外は、実施例1と同様にして、測定及び評価を行った。結果を表2に示す。
(実施例13〜19)
実施例2で調製したポジ型レジスト組成物を用いて、レジスト膜を形成するにあたり、現像処理の時間(現像時間)を、それぞれ2分、3分、4分、5分、10分、20分、30分に変更した以外は、実施例2と同様にして、測定及び評価を行った。結果を表3に示す。
(実施例20〜26)
実施例3で調製したポジ型レジスト組成物を用いて、レジスト膜を形成するにあたり、現像処理の時間(現像時間)を、それぞれ2分、3分、4分、5分、10分、20分、30分に変更した以外は、実施例3と同様にして、測定及び評価を行った。結果を表4に示す。
表1〜4中、IPAはイソプロピルアルコールを指す。
Figure 0006958362
Figure 0006958362
Figure 0006958362
Figure 0006958362
上述の表1〜4より、フッ素原子を含有する所定の重合体を含むポジ型レジスト組成物により形成したレジスト膜を、表面張力が17mN/m超24mN/m以下の現像液を用いて現像した場合、耐パターン倒れ性に優れることがわかる。さらに、かかる実施例によるレジストパターン形成方法によれば、比較例のような従来のカルボン酸エステル溶剤を用いた方法と比較してEthの値が過剰に大きくなることを回避することができ、感度の過剰な低下を抑制し、レジストパターンを効率的に形成しうることがわかる。
本発明のレジストパターンの形成方法によれば、レジストパターンを効率的に形成することができる。

Claims (6)

  1. 下記一般式(I):
    Figure 0006958362
    (式(I)中、R1は、塩素原子、フッ素原子またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、R2は、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、R3およびR4は、水素原子、フッ素原子、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。)で表される単量体単位(A)と、下記一般式(II):
    Figure 0006958362
    (式(II)中、R5、R6、R8およびR9は、水素原子、フッ素原子、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、互いに同一でも異なっていてもよく、R7は、水素原子、非置換のアルキル基またはフッ素原子で置換されたアルキル基であり、pおよびqは、0以上5以下の整数であり、p+q=5である。)で表される単量体単位(B)とを有し、前記単量体単位(A)および前記単量体単位(B)の少なくとも一方がフッ素原子を一つ以上有する、重合体と、溶剤とを含む、ポジ型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程と、
    前記レジスト膜を露光する工程と、
    前記露光されたレジスト膜を現像する工程と、を含み、
    前記現像を、表面張力が17mN/m超24mN/m以下の現像液を用いて行い、
    前記重合体の重量平均分子量(Mw)が22000以上110000以下であり、
    前記重合体の分子量分布(Mw/Mn)が1.60未満である、レジストパターン形成方法。
  2. 前記現像液がアルコールよりなる、請求項1に記載のレジストパターン形成方法。
  3. 前記現像液が、イソプロピルアルコールである、請求項2に記載のレジストパターン形成方法。
  4. 前記R1が塩素原子である、請求項1〜3の何れかに記載のレジストパターン形成方法。
  5. 前記R2がフッ素原子で置換されたアルキル基であり、
    前記R3およびR4が水素原子または非置換のアルキル基である、請求項4に記載のレジストパターン形成方法。
  6. 前記R5〜R9が水素原子または非置換のアルキル基であり、
    前記単量体単位(A)がフッ素原子を一つ以上有する、請求項1〜5の何れかに記載のレジストパターン形成方法。
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