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JP6947867B2 - バルク波共振子および帯域通過フィルタ - Google Patents

バルク波共振子および帯域通過フィルタ Download PDF

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Description

本発明は、バルク波共振子および帯域通過フィルタに関する。
例えば、特許文献1には、上下の電極間に圧電層が挟まれた構造のバルク波共振子(FBAR)が開示されている。かかるバルク波共振子では、下電極と支持基板との間にキャビティ(空間)が形成されることがある。
特許第5190841号公報
無線通信の周波数が高周波数になるに連れ、通過帯域が高周波である帯域通過フィルタの実現が望まれている。このような帯域通過フィルタを実現するために、共振周波数が比較的高いバルク波共振子の実現が望まれている。バルク波共振子において共振周波数を高くするには、圧電層の厚さを薄くする必要がある。
しかし、上下の電極間に圧電層が挟まれた構造のバルク波共振子(FBAR)では、キャビティによって圧電層の少なくとも一部が支持基板から独立した薄い構造となるため、十分な機械的安定性が得られず、その結果、共振周波数を高くすることが難しかった。
そこで、本発明は、高周波のバルク波共振子および帯域通過フィルタを提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、
バルク波を用いたバルク波共振子であって、
支持基板と、
音響インピーダンスが異なる複数種類の誘電体が前記支持基板上に積層された音響多層膜と、
前記音響多層膜上に積層された圧電層と、
前記圧電層における前記音響多層膜とは反対側の面上に間隔を空けて対向配置され、前記バルク波を前記圧電層に発生させる電圧が印加される第1電極および第2電極と、
を備え、
前記圧電層の前記面に対して平行な方向のうち、前記第1電極と前記第2電極とが対向する方向を、第1方向としたとき、
前記第1電極および前記第2電極は、前記第1方向において互いに重なる部分を有さず、
前記第1電極および前記第2電極に対する電圧の印加により、前記圧電層の内部に前記第1方向の平行電界励振による厚みすべり振動を発生させ、前記厚みすべり振動による前記第1方向の前記バルク波をメインモードとして用い、
前記圧電層における前記音響多層膜側の面には電極が配置されていない、
バルク波共振子が提供される。
前記圧電層と前記支持基板との間に空間が形成されることなく、前記圧電層が前記音響多層膜を介して前記支持基板に支持されるSMR型のバルク波共振子であるようにしてもよい。
前記第1電極上に配置される第1負荷と、
前記第2電極上に配置される第2負荷と、
をさらに備えるようにしてもよい。
前記第1負荷における前記第2電極とは反対側の端面が、前記第1電極における前記第2電極とは反対側の端面に合うように、前記第1負荷が配置され、
前記第2負荷における前記第1電極とは反対側の端面が、前記第2電極における前記第1電極とは反対側の端面に合うように、前記第2負荷が配置されるようにしてもよい。
前記圧電層における前記第1電極および前記第2電極が配置される面上に、前記第1電極と前記第2電極とが対向する第1方向に対して交差する第2方向に対向配置される第1抑制電極および第2抑制電極をさらに備え、
前記第1抑制電極および前記第2抑制電極は、前記第1電極と前記第2電極との隙間を挟みこむように前記第2方向に対向配置されるようにしてもよい。
前記圧電層は、タンタル酸リチウムの単結晶、または、焦電処理、Feドープ処理およびMgドープ処理のうち少なくともいずれかの処理がなされたタンタル酸リチウムの単結晶からなり、
前記単結晶のY軸に直交する面をX軸を中心軸として80°〜160°の範囲内で1回回転し、1回回転後の面をZ軸を中心軸として−35°〜35°の範囲内で2回回転した面に沿って切り出された回転Yカット板を前記圧電層に適用したとしてもよい。
前記圧電層は、ニオブ酸リチウムの単結晶、または、焦電処理、Feドープ処理およびMgドープ処理のうち少なくともいずれかの処理がなされたニオブ酸リチウムの単結晶からなり、
前記単結晶のY軸に直交する面をX軸を中心軸として60°〜170°の範囲内で1回回転し、1回回転後の面をZ軸を中心軸として−35°〜35°の範囲内で2回回転した面に沿って切り出された回転Yカット板を前記圧電層に適用したとしてもよい。
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、
上記バルク波共振子を複数備える、帯域通過フィルタが提供される。
複数の前記バルク波共振子がラダー型に接続されるようにしてもよい。
複数の前記バルク波共振子がラティス型に接続されるようにしてもよい。
本発明によれば、高周波とすることが可能となる。
本発明の第1実施形態に係るバルク波共振子の構成を示す概略断面図である。 第1実施形態に係るバルク波共振子の概略平面図である。 第1実施形態に係るバルク波共振子の平行電界励振厚みすべり振動を説明する概略図である。 第1実施形態に係るバルク波共振子の共振周波数と圧電層の厚さとの関係を例示するグラフである。 回転Yカット板のカット角の定義を説明する図である。 圧電層にタンタル酸リチウムを適用する場合における回転Yカット板のカット角の設定範囲を説明する図である。 LTにおける回転Yカット板の角度θと平行電界励振厚みすべり振動X方向伝搬の電気機械結合係数の関係を示す図である。 LTにおける回転Yカット板の角度θと温度特性(TCF)の関係を示す図である。 LTにおける回転Yカット板の角度θが96°のときの角度φと電気機械結合係数の関係の一例を示す図である。 LTにおける回転Yカット板の角度θが96°のときの角度φと温度特性(TCF)の関係を示す図である。 圧電層にニオブ酸リチウムを適用する場合における回転Yカット板のカット角の設定範囲を説明する図である。 LNにおける回転Yカット板の角度θと電気機械結合係数の関係を示す図である。 LNにおける回転Yカット板の角度θと温度特性(TCF)の関係を示す図である。 LNにおける回転Yカット板の角度θが75°のときの角度φと電気機械結合係数の関係の一例を示す図である。 LNにおける回転Yカット板の角度θが75°のときの角度φと温度特性(TCF)の関係を示す図である。 本発明の第3実施形態に係るバルク波共振子の構成を示す概略断面図である。 第3実施形態に係るバルク波共振子の概略平面図である。 第1負荷および第2負荷を設けていない比較例(第1実施形態)のバルク波共振子におけるインピーダンスの周波数特性の一例を示す図である。 第1負荷および第2負荷を設けた第3実施形態のバルク波共振子におけるインピーダンスの周波数特性の一例を示す図である。 本発明の第4実施形態に係るバルク波共振子の構成を示す概略断面図である。 第4実施形態に係るバルク波共振子の概略平面図である。 第1抑制電極および第2抑制電極を設けていない比較例(第1実施形態)のバルク波共振子におけるインピーダンスの周波数特性の一例を示す図である。 第1抑制電極および第2抑制電極を設けた第4実施形態のバルク波共振子におけるインピーダンスの周波数特性の一例を示す図である。 第1実施形態のバルク波共振子を複数備える帯域通過フィルタの一例を示す回路図である。 第1バルク波共振子および第2バルク波共振子におけるインピーダンスの周波数特性の一例を示す図である。 帯域通過フィルタの信号の周波数特性の一例を示す図である。 図26の破線で囲まれた部分の部分拡大図である。 第1実施形態のバルク波共振子を複数備える帯域通過フィルタの他の一例を示す回路図である。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るバルク波共振子10の構成を示す概略断面図である。図2は、同実施形態に係るバルク波共振子10の概略平面図である。バルク波共振子10は、支持基板12、音響多層膜14、圧電層16、第1電極18および第2電極20を含む。バルク波共振子10は、支持基板12上に音響多層膜14が積層され、音響多層膜14上に圧電層16が積層され、圧電層16上に第1電極18および第2電極20が設置されて構成されている。
支持基板12は、平板状に形成される。支持基板12は、音響多層膜14、圧電層16、第1電極18および第2電極20を支持する。支持基板12は、例えば、シリコン(ケイ素)の単結晶で形成される。なお、支持基板を形成する材料は、シリコンの単結晶に限らず、圧電層16等を適切に支持できるものであればよい。
音響多層膜14は、支持基板12上に積層される。音響多層膜14は、音響インピーダンスが異なる複数種類の誘電体が交互に積層されたものである。
音響多層膜14は、第1誘電体層22および第2誘電体層24を含む。音響多層膜14は、支持基板12から圧電層16に向かって、第1誘電体層22、第2誘電体層24の順に、交互に積層される。図1の例では、第1誘電体層22および第2誘電体層24は、例えば、4層ずつ交互に積層されている。なお、第1誘電体層22および第2誘電体層24の積層数は、4層ずつに限らず、少なくとも1層ずつあればよい。また、音響多層膜14は、2種類の誘電体(第1誘電体層22および第2誘電体層24)が積層される態様に限らず、3種類以上の誘電体が積層されてもよい。
音響多層膜14の最下層の第1誘電体層22の底面は、支持基板12の上面に接触している。音響多層膜14の最上層の第2誘電体層24の上面は、圧電層16に接触している。第2誘電体層24の音響インピーダンスは、第1誘電体層22の音響インピーダンスおよび圧電層16の音響インピーダンスと異なる。
圧電層16は、音響多層膜14における最上層の第2誘電体層24上に積層される。圧電層16は、薄膜状に形成された圧電体からなる。
圧電層16は、例えば、タンタル酸リチウム(LiTaO)の単結晶またはニオブ酸リチウム(LiNbO)の単結晶などで形成される。なお、圧電層16は、焦電処理、Feドープ処理およびMgドープ処理のうち少なくともいずれかの処理がなされたタンタル酸リチウムの単結晶、または、上述の処理のうち少なくともいずれかの処理がなされたニオブ酸リチウムの単結晶であってもよい。また、圧電層16は、タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムに限らず、例えば、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、水晶、C軸が傾いた圧電体など、その他の圧電体で形成されてもよい。
圧電層16は、上面16aおよび下面16bを有する。上面16aおよび下面16bは、大凡、平面となっている。圧電層16の2つの表面(上面16aおよび下面16b)のうち下面16bは、音響多層膜14(具体的には、第2誘電体層24)と接触している。つまり、圧電層16の下面16bは、音響多層膜14側の面であり、圧電層16の上面16aは、音響多層膜14とは反対側の面である。
第1電極18および第2電極20は、圧電層16の上面16aに配置される。換言すると、第1電極18および第2電極20は、圧電層16における音響多層膜14とは反対側の面(上面16a)上に配置される。第1電極18および第2電極20は、それぞれ圧電層16に接触している。第1電極18および第2電極20は、互いに間隔を空けて対向配置される。第1電極18および第2電極20は、例えば、長方形の平板状に形成され、第1電極18の1辺と第2電極20の1辺とが対向する。
以後、バルク波共振子10において、第1電極18および第2電極20の対向方向をX方向と呼ぶ場合がある。また、圧電層16の厚さ方向をY方向と呼ぶ場合がある。また、X方向およびY方向にそれぞれ垂直に交差する方向をZ方向と呼ぶ場合がある。
第1電極18および第2電極20は、例えば、圧電層16に接触する下層と、下層上に積層される上層とから形成されてもよい。第1電極18および第2電極20の上層は、例えば、導電率が比較的高い金(Au)で形成される。第1電極18および第2電極20の下層は、例えば、チタン(Ti)で形成され、上層を圧電層16に適切に固定するバッファとして機能する。なお、第1電極18および第2電極20の材料は、金およびチタンに限らず、導電性を有する任意の材料を使用可能である。
バルク波共振子10では、圧電層16における音響多層膜14とは反対側の面(上面16a)のみに第1電極18および第2電極20が配置されており、圧電層16における音響多層膜14側の面(下面16b)には電極が配置されていない。
第1電極18と第2電極20との間には、電圧が印加される。第1電極18と第2電極20との間に電圧が印加されると、圧電層16に電圧がかかり、圧電層16に平行電界厚みすべり振動が発生する。
図3は、第1実施形態に係るバルク波共振子10の平行電界励振厚みすべり振動を説明する概略図である。図3では、圧電層16付近の断面を示している。バルク波共振子10では、上述のように、第1電極18と第2電極20とが共通の面に配置されている。第1電極18と第2電極20との間に電圧を印加すると、圧電層16にかかる電界の方向は、概ねX方向と一致する。つまり、圧電層16には、電界の励振方向が圧電層16の上面(主面)に対して平行な平行電界励振が発生する。このX方向の平行電界励振により、圧電層16には、X方向に振動する厚みすべり振動(平行電界励振厚みすべり振動)が発生する。
厚みすべり振動が発生すると、圧電層16内にバルク波(BAW:Bulk Acoustic Wave)が発生する。バルク波共振子10は、圧電層16に発生するバルク波を用いた共振子である。
図4は、第1実施形態に係るバルク波共振子10の共振周波数と圧電層16の厚さとの関係を例示するグラフである。バルク波共振子10の共振周波数は、第1電極18と第2電極20との間のインピーダンスが急峻に低下するときの第1電極18と第2電極20との間の電圧の周波数に相当する。図4で示すように、バルク波共振子10では、圧電層16の厚さを薄くするに従って共振周波数を高くすることができる。
図1に戻り、音響多層膜14の第1誘電体層22および第2誘電体層24の具体例を示す。第1誘電体層22は、音響インピーダンスが第2誘電体層24に対して相対的に高くなっている。換言すると、第2誘電体層24は、音響インピーダンスが第1誘電体層22に対して相対的に低くなっている。また、第2誘電体層24は、音響インピーダンスが圧電層16に対して相対的に低くなっている。つまり、第1誘電体層22と第2誘電体層24とでは、音響インピーダンスの差が所定値以上となっている。また、第2誘電体層24と圧電層16とでは、音響インピーダンスの差が所定値以上となっている。
音響多層膜14は、第1誘電体層22および第2誘電体層24によって、音響インピーダンスの高低が1層毎に交互に変化する音響ブラッグ反射器を構成している。このため、圧電層16のバルク波は、音響多層膜14の各層の界面、および、圧電層16と音響多層膜14との界面において圧電層16側に反射される。
例えば、第1誘電体層22は、窒化アルミニウム(AlN)またはアルミナ(Al)で形成されてもよい。第2誘電体層24は、シリカ(SiO)で形成されてもよい。なお、第1誘電体層22および第2誘電体層24は、例示した物質に限らず、音響インピーダンスが適切な任意の物質で形成されてもよい。
第1誘電体層22の厚さ(層厚)は、第1誘電体層22中(つまり、第1誘電体層22を形成する物質中)でのバルク波(音波)の長さ(波長λ)の4分の1としてもよい。同様に、第2誘電体層24の厚さ(層厚)は、第2誘電体層24中(つまり、第2誘電体層24を形成する物質中)でのバルク波(音波)の長さ(波長λ)の4分の1としてもよい。波長λは、バルク波共振子10の共振周波数f0に関連している。このため、第1誘電体層22の厚さおよび第2誘電体層24の厚さは、バルク波共振子10の所望の共振周波数f0に基づいて適宜設定されてもよい。
以上のように、第1実施形態のバルク波共振子10は、支持基板12上に音響多層膜14が積層され、音響多層膜14上に圧電層16が積層されている。つまり、第1実施形態のバルク波共振子10は、圧電層16と支持基板12との間にキャビティ(空間)が形成されることなく、圧電層16全体が音響多層膜14を介して支持基板12に支持されるSMR(Solidly Mounted Resonator)型のバルク波共振子である。このため、第1実施形態のバルク波共振子10では、圧電層16を音響多層膜14および支持基板12によって堅牢に支持することができる。その結果、第1実施形態のバルク波共振子10では、上下の電極間に圧電層16が挟まれる比較例のバルク波共振子(FBAR)に比べ、圧電層16の厚さを薄くしても圧電層16の破損を防止できる。
そして、第1実施形態のバルク波共振子10では、圧電層16の破損を防止しつつ圧電層16を薄くすることができるため、共振周波数を高周波とすることが可能となる。
また、第1実施形態のバルク波共振子10は、音響多層膜14上に圧電層16が積層されている。このため、第1実施形態のバルク波共振子10では、圧電層16を支持基板12から音響的に分離することができ、エネルギー損失を抑制することができる。
また、第1実施形態のバルク波共振子10は、圧電層16における音響多層膜14とは反対側の面(上面16a)上に2個の電極(第1電極18および第2電極20)が配置されている。つまり、第1実施形態のバルク波共振子10は、圧電層16における音響多層膜14側の面(下面16b)には電極が配置されていない。このため、第1実施形態のバルク波共振子10では、比較例のバルク波共振子に比べ、圧電層16と支持基板12との間に電極(所謂、下電極)を設ける工程を省略できるため、バルク波共振子10の製作を簡略化することが可能となる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るバルク波共振子について説明する。第2実施形態では、第1実施形態のバルク波共振子10の圧電層16に適用される圧電体の結晶の回転Yカット板のカット角の範囲を詳細に設定する。
図5は、回転Yカット板のカット角の定義を説明する図である。図5におけるX、YおよびZは、結晶のX軸、Y軸およびZ軸に対応する。X軸およびZ軸で形成される面は、Y面A10と定義される。図5では、Y面A10に沿った仮想の平板を、一点鎖線A12で示している。
回転Yカット板のカット角は、Y面A10の姿勢を回転させる角度を示す。回転Yカット板の角度θは、X軸周りの角度を示す。角度θは、X軸の正方向に右ネジが進むとした場合の右ネジの回転方向を正方向とする。また、回転Yカット板の角度φは、Z軸周りの角度を示す。角度φは、Z軸の正方向に右ネジが進むとした場合の右ネジの回転方向を正方向とする。
図5では、一点鎖線A12の平板をX軸周りに任意のθ度だけ回転させた後の平板を、二点鎖線A22で例示している。つまり、二点鎖線A22で示される面A20は、Y面A10をX軸周りに任意のθ度だけ回転させた後の面に相当する。なお、Y面A10を一方向(θ方向)に回転させることを1回回転と呼ぶ。
また、図5では、二点鎖線A22の平板をZ軸周りに任意のφ度(例えば、φ=45°)だけ回転させた後の平板を、実線A32で例示している。つまり、実線A32で示される面A30は、二点鎖線A22で示される面をZ軸周りに任意のφ度だけ回転させた後の面に相当する。換言すると、面A30は、Y面A10をX軸周りにθ度回転し、かつ、Z軸周りにφ度回転した後の面に相当する。なお、Y面A10を二方向(θ方向およびφ方向)に回転させることを2回回転と呼ぶ。
例えば、回転Yカット板における角度θおよび角度φを設定することで、Y面A10に対応する面が面A30となったとする。この場合、結晶は、面A30に平行な面でカットされることを示す。つまり、面A30に平行な面でカットされた結晶が圧電層16に適用されることとなるため、面A30に平行な面が圧電層16の表面に対応する。
図6は、圧電層16にタンタル酸リチウムを適用する場合における回転Yカット板のカット角の設定範囲を説明する図である。以下、タンタル酸リチウムをLTと略す。
圧電層16にLTを適用する場合、LTの単結晶の回転Yカット板におけるX軸周りの角度θは、80°以上、160°以下の範囲内に設定される。また、LTの単結晶の回転Yカット板におけるZ軸周りの角度φは、−35°以上、35°以下の範囲内に設定される。つまり、LTにおける回転Yカット板のカット角は、図6のクロスハッチングB10で示す範囲内のいずれかの値に設定される。
図7は、LTにおける回転Yカット板の角度θと平行電界励振厚みすべり振動X方向伝搬の電気機械結合係数の関係を示す図である。図7では、角度φはゼロであるとする。電気機械結合係数は、圧電層16に与えられる電気的エネルギーが機械的エネルギーに変換される効率を示す。
図7に示すように、角度θを80°以上、160°以下(80°〜160°)の範囲とすることで、電気機械結合係数を約0.38以上とすることができる。
図8は、LTにおける回転Yカット板の角度θと温度特性(TCF)の関係を示す図である。図8では、角度φはゼロであるとする。温度特性(TCF)は、温度が1℃変化するときの共振周波数の変化率をppm/℃で示すものであり、温度変化に対する周波数特性の変化率に相当する。温度特性(TCF)については、絶対値が小さいほど特性がよいことを示す。
図8に示すように、回転Yカット板の角度θを80°以上、160°以下(80°〜160°)の範囲内とすることで、温度特性を、約−20ppm/℃以上、約20ppm/℃以下の範囲内とすることができる。
すなわち、圧電層16にLTを適用する場合、回転Yカット板の角度θを80°以上、160°以下の範囲内とすることで、高い電気機械結合係数と、低い温度特性とを両立させることができる。
図9は、LTにおける回転Yカット板の角度θが96°のときの角度φと電気機械結合係数の関係の一例を示す図である。図10は、LTにおける回転Yカット板の角度θが96°のときの角度φと温度特性(TCF)の関係を示す図である。
図9に示すように、LTでは、回転Yカット板の角度θを96°としつつ、角度φを0°から変化させると、電気機械結合係数が低下する傾向にある。しかし、図10に示すように、回転Yカット板の角度θを96°としつつ、角度φを0°から変化させると、温度特性がゼロに近づく。
つまり、LTでは、回転Yカット板の角度φを−35°以上、35°以下(−35°〜35°)の範囲内とすると、電気機械結合係数の減少を抑制しつつ(例えば、約0.1以上としつつ)、温度特性を向上させることができる(例えば、約ゼロとすることができる)。
これにより、例えば、電気機械結合係数を重視する場合には、角度φをゼロ寄りに設定し、温度特性を重視する場合には、角度φを−35°または35°寄りに設定してもよい。また、例えば、電気機械結合係数および温度特性を均等に両立させる場合には、角度φを、−35°と0°との中央付近、または、35°と0°との中央付近に設定してもよい。
なお、図9、図10では、角度θを96°としたときの例を挙げて説明していた。しかし、角度θが96°の場合に限らず、80°以上、160°以下の各々の場合も同様に、角度φを−35°以上、35°以下の範囲に設定してもよい。
また、焦電処理、Feドープ処理およびMgドープ処理のうち少なくともいずれかの処理がなされたタンタル酸リチウムの単結晶を圧電層16に適用する場合についても、角度θを80°以上、160°以下、角度φを−35°以上、35°以下の範囲内に設定してもよい。
このように、LTでは、単結晶のY軸に直交する面をX軸を中心軸として80°〜160°の範囲内で1回回転し、1回回転後の面をZ軸を中心軸として−35°〜35°の範囲内で2回回転した面に沿って切り出された回転Yカット板を圧電層16に適用してもよい。これにより、バルク波共振子10の電気機械結合係数を向上させ、所要の電気機械結合係数を維持することができる。また、上記条件のLTを圧電層16に適用することで、バルク波共振子10の温度特性を向上させることもできる。
また、後述するが、電気機械結合係数が高くなるほど、バルク波共振子の共振点と反共振点との間の周波数差が大きくなる傾向にある。共振点と反共振点との間の周波数差が大きくなると、バルク波共振子を用いた帯域通過フィルタにおいて、帯域幅を広くすることができる。すなわち、図6で示した条件の回転Yカット板を圧電層16に適用すると電気機械結合係数を向上させることができるため、このバルク波共振子を用いることで、帯域幅が広い帯域通過フィルタを実現することができる。
図11は、圧電層16にニオブ酸リチウムを適用する場合における回転Yカット板のカット角の設定範囲を説明する図である。以下、ニオブ酸リチウムをLNと略す。
圧電層16にLNを適用する場合、LNの単結晶の回転Yカット板におけるX軸周りの角度θは、60°以上、170°以下の範囲内に設定される。また、LNの単結晶の回転Yカット板におけるZ軸周りの角度φは、−35°以上、35°以下の範囲内に設定される。つまり、LNにおける回転Yカット板のカット角は、図11のクロスハッチングC10で示す範囲内のいずれかの値に設定される。
図12は、LNにおける回転Yカット板の角度θと電気機械結合係数の関係を示す図である。図12では、角度φはゼロであるとする。
図12に示すように、角度θを60°以上、170°以下(60°〜170°)の範囲とすることで、電気機械結合係数を約0.35以上とすることができる。
図13は、LNにおける回転Yカット板の角度θと温度特性(TCF)の関係を示す図である。図13では、角度φはゼロであるとする。
図13に示すように、LNでは、温度特性よりも電気機械結合係数を考慮して、60°以上、170°以下(60°〜170°)の範囲を設定している。
図14は、LNにおける回転Yカット板の角度θが75°のときの角度φと電気機械結合係数の関係の一例を示す図である。図15は、LNにおける回転Yカット板の角度θが60°のときの角度φと温度特性(TCF)の関係を示す図である。
図14に示すように、LNでは、回転Yカット板の角度θを75°としつつ、角度φを変化させると、電気機械結合係数を向上させることができる。また、図15に示すように、LNでは、回転Yカット板の角度θを75°としつつ、角度φを変化させると、温度特性の絶対値が、少しではあるが減少する。
つまり、LNでは、回転Yカット板の角度φを−35°以上、35°以下(−35°〜35°)の範囲内とすると、電気機械結合係数を最大で約0.7まで増加させることが可能となる。また、回転Yカット板の角度φを−35°以上、35°以下の範囲内とすると、温度特性の絶対値を100ppm/℃以下に減少させることができる。
なお、図14、図15では、角度θを75°としたときの例を挙げて説明していた。しかし、角度θが75°の場合に限らず、60°以上、170°以下の各々の場合も同様に、角度φを−35°以上、35°以下の範囲に設定してもよい。
なお、焦電処理、Feドープ処理およびMgドープ処理のうち少なくともいずれかの処理がなされたニオブ酸リチウムの単結晶を圧電層16に適用する場合についても、角度θを60°以上、170°以下、角度φを−35°以上、35°以下の範囲内に設定してもよい。
このように、LNでは、単結晶のY軸に直交する面をX軸を中心軸として60°〜170°の範囲内で1回回転し、1回回転後の面をZ軸を中心軸として−35°〜35°の範囲内で2回回転した面に沿って切り出された回転Yカット板を圧電層16に適用してもよい。これにより、バルク波共振子10の電気機械結合係数を向上させ、所要の電気機械結合係数を維持することができる。また、上記条件のLNを圧電層16に適用することで、バルク波共振子10の温度特性を向上させることもできる。
図11で示した条件の回転Yカット板を圧電層16に適用すると電気機械結合係数を向上させることができるため、このバルク波共振子を用いることで、帯域幅が広い帯域通過フィルタを実現することができる。また、LNについての第2実施形態のバルク波共振子では、LTについての第2実施形態のバルク波共振子よりも電気機械結合係数をより大きくすることができ、バルク波共振子を用いた帯域通過フィルタの帯域幅をより広帯域化することが可能となる。
(第3実施形態)
図16は、本発明の第3実施形態に係るバルク波共振子110の構成を示す概略断面図である。図17は、第3実施形態に係るバルク波共振子110の概略平面図である。第3実施形態のバルク波共振子110は、第1負荷130および第2負荷132を有する点において第1実施形態のバルク波共振子10と異なり、他の構成については、第1実施形態のバルク波共振子10と共通している。以下では、第1実施形態と共通する構成については説明を省略し、異なる構成について詳述する。なお、圧電層16については、第2実施形態の構成が適用されてもよい。
図16および図17に示すように、第1負荷130は、第1電極18上に配置される。第1負荷130は、例えば、第1電極18よりも小さな長方形の平板状に形成される。第1負荷130は、第1負荷130における第2電極20とは反対側の端面130aが、第1電極18における第2電極20とは反対側の端面18aに合うように配置される。第1負荷130は、例えば、第1電極18における幅方向(Z方向)の一方側から幅方向の他方側に亘って延びている。なお、第1負荷130は、端面130aが端面18aに合うように配置される態様に限らず、少なくとも第1電極18上に配置されていればよい。
第2負荷132は、第2電極20上に配置される。第2負荷132は、例えば、第2電極20よりも小さな長方形の平板状に形成される。第2負荷132は、第2負荷132における第1電極18とは反対側の端面132aが、第2電極20における第1電極18とは反対側の端面20aに合うように配置される。第2負荷132は、例えば、第2電極20における幅方向(Z方向)の一方側から幅方向の他方側に亘って延びている。なお、第2負荷132は、端面132aが端面20aに合うように配置される態様に限らず、少なくとも第2電極20上に配置されていればよい。
第1負荷130および第2負荷132は、例えば、アルミニウム(Al)で形成される。なお、第1負荷130および第2負荷132は、アルミニウムで形成される態様に限らず、他の金属で形成されてもよい。
ここで、第1負荷130および第2負荷132を設けていない第1実施形態のバルク波共振子10(図1、図2参照。)を比較例として挙げる。厚みすべり振動を用いたバルク波共振子10では、バルク波の基本波(共振の1次モード)についての分散曲線(分散関係)が低域遮断特性を示す。なお、分散曲線は、波数と角周波数との関係を示す曲線である。しかし、厚みすべり振動を用いたバルク波共振子10では、平行電界励振を行うため、X方向(第1電極18と第2電極20の対向方向)についてのバルク波の基本波のエネルギー閉じ込め条件が成立しない。
このため、厚み滑り振動を用いたバルク波共振子10では、圧電層16における第1電極18と第2電極20との間で発生したバルク波(基本波)がX方向に伝搬する。第1電極18の端面18a側に向かって伝搬するバルク波の一部は、圧電層16における第1電極18の端面18aの位置で第2電極20側に反射される。また、第2電極20の端面20a側に向かって伝搬するバルク波の一部は、圧電層16における第2電極20の端面20aの位置で第1電極18側に反射される。これにより、X方向のバルク波は、圧電層16における端面18aと端面20aとの間の領域で定在波を形成する。このような定在波が形成されると、基本波の周波数付近において、意図しないスプリアスが生じる場合がある。
図18は、第1負荷130および第2負荷132を設けていない比較例(第1実施形態)のバルク波共振子10におけるインピーダンスの周波数特性の一例を示す図である。インピーダンスの周波数特性において、インピーダンスが急峻に低下する部分を共振点と呼ぶ場合がある。共振点の周波数は、共振周波数に相当する。また、インピーダンスの周波数特性において、インピーダンスが急峻に上昇する部分を反共振点と呼ぶ場合がある。
図18に示すように、共振点付近から反共振点付近までの間において、共振特性の乱れが生じている。この共振特性の乱れは、スプリアスが生じていることを示している。
これに対し、図19は、第1負荷130および第2負荷132を設けた第3実施形態のバルク波共振子110におけるインピーダンスの周波数特性の一例を示す図である。図19では、図18に比べ、共振点付近から反共振点付近までの間における共振特性の乱れが抑制されている。つまり、第3実施形態のバルク波共振子110では、第1負荷130および第2負荷132を設けることで、基本波の周波数付近において、意図しないスプリアスを抑制することができる。
第1負荷130および第2負荷132を設けることでスプリアスを抑制できる理由は、以下のように推測される。第1負荷130は、圧電層16における第1電極18の端面18aの位置で反射されるバルク波のエネルギーを吸収する吸収材として機能すると推測される。これにより、圧電層16における第1電極18の端面18aの位置でのバルク波の反射が抑制される。また、第2負荷132は、圧電層16における第2電極20の端面20aの位置で反射されるバルク波のエネルギーを吸収する吸収材として機能すると推測される。これにより、圧電層16における第2電極20の端面20aの位置でのバルク波の反射が抑制される。これらより、圧電層16における端面18aと端面20aとの間の領域で定在波が形成されることを抑制できると推測される。その結果、定在波に起因するスプリアスを抑制することができる。
なお、第3実施形態のバルク波共振子110では、第1負荷130および第2負荷132の他は第1実施形態と共通であるため、第1実施形態と同様に、共振周波数を高周波とすることが可能となる。
(第4実施形態)
図20は、本発明の第4実施形態に係るバルク波共振子210の構成を示す概略断面図である。図21は、第4実施形態に係るバルク波共振子210の概略平面図である。第4実施形態のバルク波共振子210は、第1抑制電極240および第2抑制電極242を有する点において第1実施形態のバルク波共振子10と異なり、他の構成については、第1実施形態のバルク波共振子10と共通している。以下では、第1実施形態と共通する構成については説明を省略し、異なる構成について詳述する。なお、圧電層16については、第2実施形態の構成が適用されてもよい。
図20および図21に示すように、第1抑制電極240および第2抑制電極242は、圧電層16における第1電極18および第2電極20が配置される面(上面16a)上に配置される。換言すると、第1抑制電極240および第2抑制電極242は、圧電層16における音響多層膜14とは反対側の面(上面16a)に配置される。つまり、第4実施形態のバルク波共振子210は、第1実施形態と同様に、圧電層16における音響多層膜14側の面(下面16b)には電極が配置されていない。
第1抑制電極240および第2抑制電極242は、圧電層16に接触している。また、第1抑制電極240および第2抑制電極242は、例えば、不図示のリード線を通じて接地(グランド)される。
第1抑制電極240および第2抑制電極242は、第1電極18と第2電極20とが対向する第1方向に対して交差する第2方向に対向配置される。具体的には、第1抑制電極240および第2抑制電極242は、X方向に垂直なZ方向に対向配置される。
なお、ここでは、X方向が第1方向に対応し、Z方向が第2方向に対応する例を挙げて説明するが、第2方向は、第1方向に垂直に交差する方向に限らない。例えば、第2方向は、第1方向に対して傾斜する方向で第1方向に交差してもよい。
図21では、第1電極18と第2電極20との隙間を、破線で囲まれた領域244で示している。第1抑制電極240および第2抑制電極242は、第1電極18と第2電極20との隙間(領域244)を挟み込むように対向配置される。第1抑制電極240および第2抑制電極242は、第1電極18および第2電極20から間隔を空けて配置される。換言すると、第1抑制電極240および第2抑制電極242は、第1電極18と第2電極20との隙間(領域244)と重なることがないように配置される。
第1抑制電極240および第2抑制電極242は、例えば、長方形の平板状に形成される。第1抑制電極240および第2抑制電極242のX方向の長さは、第1電極18と第2電極20との対向間隔(すなわち、領域244のX方向の長さ)より長い。
第1抑制電極240におけるX方向の第1電極18側の端面240aは、第1電極18における第2電極20との対向面18bよりも第1電極18側に位置する。第1抑制電極240におけるX方向の第2電極20側の端面240bは、第2電極20における第1電極18との対向面20bよりも第2電極20側に位置する。第2抑制電極242におけるX方向の第1電極18側の端面242aは、第1電極18における対向面18bよりも第1電極18側に位置する。第2抑制電極242におけるX方向の第2電極20側の端面242bは、第2電極20における対向面20bよりも第2電極20側に位置する。
ここで、第1抑制電極240および第2抑制電極242を設けていない第1実施形態のバルク波共振子10を比較例として挙げる。第1電極18と第2電極20との間に高周波の交流電圧を印加すると、第1電極18と第2電極20との間からZ方向に電磁波が漏洩する。このような電磁波がノイズとなり、意図しないスプリアスが生じる場合がある。
図22は、第1抑制電極240および第2抑制電極242を設けていない比較例(第1実施形態)のバルク波共振子10におけるインピーダンスの周波数特性の一例を示す図である。図22では、共振の3次高調波の周波数付近の特性を例示している。図22に示すように、反共振点付近において共振特性の乱れが生じている。この共振特性の乱れはスプリアスが生じていることを示している。
これに対し、図23は、第1抑制電極240および第2抑制電極242を設けた第4実施形態のバルク波共振子210におけるインピーダンスの周波数特性の一例を示す図である。図23では、共振の3次高調波の周波数付近の特性を例示している。図23では、図22に比べ、反共振点付近における共振特性の乱れが抑制されている。つまり、第4実施形態のバルク波共振子210では、第1抑制電極240および第2抑制電極242を設けることで、意図しないスプリアスを抑制することができる。
第1抑制電極240および第2抑制電極242を設けることでスプリアスを抑制できる理由は、以下のように推測される。第1電極18と第2電極20との間から漏洩する電磁波の一部は、第1抑制電極240に向かう方向に伝搬する。第1抑制電極240は、接地されているため、第1抑制電極240に到達した電磁波のエネルギーを吸収する。また、第1電極18と第2電極20との間から漏洩する電磁波の一部は、第2抑制電極242に向かう方向にも伝搬する。第2抑制電極242は、接地されているため、第2抑制電極242に到達した電磁波のエネルギーを吸収する。このようにして、Z方向の電磁波のエネルギーが減少されることで、Z方向のノイズを抑制できると推測される。その結果、スプリアスを抑制することができる。
また、図23の例では、図22の例と比べ、共振点の周波数と反共振点の周波数との周波数差が大きくなっている。
共振点の周波数と反共振点の周波数との周波数差は、電気機械結合係数に比例する傾向がある。このため、図23の例では、図22の例と比べ、電気機械結合係数が大きいことが示される。つまり、第4実施形態のバルク波共振子210では、スプリアスの抑制に加え、電気機械結合係数を向上させることが可能となる。
以上のように、第4実施形態のバルク波共振子210では、第1電極18と第2電極20との隙間を挟み込むように、第1抑制電極240および第2抑制電極242が対向配置される。このため、第4実施形態のバルク波共振子210では、第1電極18および第2電極20との間から漏洩する電磁波に起因するスプリアスの抑制、および、電気機械係数の向上が可能となる。
なお、第4実施形態のバルク波共振子210では、第1抑制電極240および第2抑制電極242の他は第1実施形態と共通であるため、第1実施形態と同様に、共振周波数を高周波とすることが可能となる。
また、第4実施形態では、第1抑制電極240および第2抑制電極242を設けることで、3次高調波におけるスプリアスを抑制できることを例示していた。しかし、基本波におけるスプリアスや5次高調波以上の高次高調波におけるスプリアスを抑制するために、第1抑制電極240および第2抑制電極242を設けてもよい。
また、第4実施形態では、第1負荷130および第2負荷132を設けることなく、第1抑制電極240および第2抑制電極242を設ける例を挙げていた。しかし、第3実施形態と第4実施形態とを組み合わせて、第1負荷130および第2負荷132を設けつつ、第1抑制電極240および第2抑制電極242を設けてもよい。
(第5実施形態)
次に、上記実施形態に係る複数のバルク波共振子で構成される帯域通過フィルタについて説明する。図24は、第1実施形態のバルク波共振子10を複数備える帯域通過フィルタ500の一例を示す回路図である。図24では、複数のバルク波共振子10が、所謂、ラダー型(はしご型)に接続された帯域通過フィルタ500を示している。
図24に示すように、帯域通過フィルタ500は、第1バルク波共振子10a、第2バルク波共振子10b、第1入力端子550a、第2入力端子550b、第1出力端子552aおよび第2出力端子552bを含む。帯域通過フィルタ500は、例えば、第1バルク波共振子10aを3個含み、第2バルク波共振子10bを2個含む。
第1バルク波共振子10aおよび第2バルク波共振子10bの基本的な構成は、第1実施形態のバルク波共振子10と同様の構成となっている。このため、第1バルク波共振子10aおよび第2バルク波共振子10bを総称して、バルク波共振子10と呼ぶ場合がある。
第1バルク波共振子10aは、共振周波数として所定の第1共振周波数を有する。一方、第2バルク波共振子10bは、共振周波数として所定の第2共振周波数を有する。第2共振周波数は、第1共振周波数とは異なる。例えば、第2バルク波共振子10bの圧電層16の厚さを第1バルク波共振子10aの圧電層16の厚さと異ならせることで、第2共振周波数を第1共振周波数からシフトさせてもよい。
第1バルク波共振子10aは、第1入力端子550aと第1出力端子552aとの間に直列接続される。つまり、第1バルク波共振子10aは、帯域通過フィルタ500における直列要素(直列共振器)として機能する。また、第2入力端子550bおよび第2出力端子552bは、接地される。以下、第1入力端子550aおよび第2入力端子550bを総称して、入力端子550と呼ぶ場合がある。また、第1出力端子552aおよび第2出力端子552bを総称して、出力端子552と呼ぶ場合がある。
第2バルク波共振子10bは、第1入力端子550aと第1出力端子552aとの間の線路および第2入力端子550bと第2出力端子552bとの間の線路に対して(入力端子550および出力端子552に)並列に接続される。つまり、第2バルク波共振子10bは、帯域通過フィルタ500における並列要素(並列共振器)として機能する。具体的には、第2バルク波共振子10bの一端(第1電極18および第2電極20のうち一方の電極)は、第1バルク波共振子10a同士の接続ノードに接続される。換言すると、第2バルク波共振子10bの一端は、入力端子550のうち第1入力端子550a側、あるいは、出力端子552のうち第1出力端子552a側に接続される。第2バルク波共振子10bの他端(第1電極18および第2電極20のうち他方の電極)は、第2入力端子550bおよび第2出力端子552bに接続される。つまり、第2バルク波共振子10bの他端は、接地される。
図24における破線で示すように、1つの第1バルク波共振子10aおよび1つの第2バルク波共振子10bは、1つのセクション554を構成する。帯域通過フィルタ500は、少なくとも1のセクション554を有していればよい。つまり、第1バルク波共振子10aの数は、3個に限らず、1個、2個または4個以上であってもよい。第2バルク波共振子10bの数は、2個に限らず、1個または3個以上であってもよい。
帯域通過フィルタ500では、入力端子550間に入力電圧が印加される。帯域通過フィルタ500は、第1バルク波共振子10aおよび第2バルク波共振子10bで決定される所定の周波数帯域の交流電圧を通過させ、その他の周波数帯域の交流電圧の通過を阻止する。そして、帯域通過フィルタ500では、通過された所定の周波数帯域の交流電圧が、出力端子552間から出力される。
なお、帯域通過フィルタ500において、第2入力端子550bおよび第2出力端子552bは、省略されてもよい。この場合、第2バルク波共振子10bの他端は、第2入力端子550bおよび第2出力端子552bを有する場合と同様に、接地される。また、この場合、交流電圧が第1入力端子550aに入力され、所定の周波数帯域の交流電圧が第1出力端子552aから出力される。
図25は、第1バルク波共振子10aおよび第2バルク波共振子10bにおけるインピーダンスの周波数特性の一例を示す図である。図25では、第1バルク波共振子10aの特性を実線560で示し、第2バルク波共振子10bの特性を一点鎖線570で示している。
帯域通過フィルタ500における第1バルク波共振子10aは、直列要素として機能するため、共振点562の周波数の電圧を通過させ、反共振点564の周波数の電圧を阻止する。一方、帯域通過フィルタ500における第2バルク波共振子10bは、並列要素として機能するため、共振点572の周波数の電圧を阻止し、反共振点574の周波数の電圧を通過させる。
また、バルク波共振子10において、反共振点は、共振点より相対的に高周波数側に現れる。そこで、帯域通過フィルタ500では、直列要素の第1バルク波共振子10aの共振周波数(共振点562の周波数)を並列要素の第2バルク波共振子10bの共振周波数(共振点572の周波数)より相対的に高くしている。これにより、第1バルク波共振子10aの反共振点564と第2バルク波共振子10bの共振点572との間の周波数領域に、第1バルク波共振子10aの共振点562と第2バルク波共振子10bの反共振点574とを位置させることができる。つまり、電圧を通過させる周波数領域が、電圧の通過を阻止する第1バルク波共振子10aの反共振点564と第2バルク波共振子10bの共振点572とによって区分される。
図26は、帯域通過フィルタ500の信号の周波数特性の一例を示す図である。図27は、図26の破線で囲まれた部分の部分拡大図である。図26および図27では、信号をデシベル(dB)で表記し、入力信号に対する出力信号の減衰(以下、伝送量という。)を示している。
図26に示すように、第1バルク波共振子10aの反共振点564の周波数である約5.3GHz、および、第2バルク波共振子10bの共振点572の周波数である約4.3GHzでは、信号が大幅に減衰している。つまり、第1バルク波共振子10aの反共振点564および第2バルク波共振子10bの共振点572の周波数において、信号の通過が阻止されることが示されている。
また、第1バルク波共振子10aの共振点562の周波数である約4.9GHz、および、第2バルク波共振子10bの反共振点574の周波数である約4.7GHzでは、信号の減衰が比較的少ない。つまり、第1バルク波共振子10aの共振点562および第2バルク波共振子10bの反共振点574の周波数付近において、信号が適切に通過されることが示されている。
図27に示すように、例えば、信号が−3dB以上となる周波数領域を、帯域通過フィルタ500の帯域幅とする。つまり、帯域通過フィルタ500は、帯域幅内の周波数の信号を適切に通過させ、帯域幅外の周波数の信号の通過を阻止する。図27の例の帯域通過フィルタ500では、約4.5GHzから約5.1GHzまでの約580MHzの帯域幅の信号を通過させることができる。なお、帯域幅は、図27で示す値(約580MHz)に限らず、第1バルク波共振子10aおよび第2バルク波共振子10bの共振周波数に基づいて、適宜設計することが可能である。
以上のように、第5実施形態の帯域通過フィルタ500は、共振周波数を高くすることができる第1実施形態のバルク波共振子10を用いて構成される。このため、帯域通過フィルタ500では、通過帯域を高周波帯域に設定可能となる。
また、帯域通過フィルタ500では、第1バルク波共振子10aの共振点562の周波数および第2バルク波共振子10bの反共振点574の周波数を適宜に設定することで、帯域幅を狭くすることもできるし、広くすることもできる。
なお、第5実施形態では、第1実施形態のバルク波共振子10を用いて帯域通過フィルタ500を構成する例を挙げていた。しかし、第5実施形態の帯域通過フィルタ500は、第1〜第4実施形態のバルク波共振子10、110、210、または、第1〜第4実施形態を適宜組み合わせたバルク波共振子のいずれを用いて構成されてもよい。また、第5実施形態の帯域通過フィルタ500は、第1〜第4実施形態のバルク波共振子10、110、210、または、第1〜第4実施形態を適宜組み合わせたバルク波共振子が混在して構成されてもよい。
(第6実施形態)
図28は、第1実施形態のバルク波共振子10を複数備える帯域通過フィルタ600の他の一例を示す回路図である。図28では、複数のバルク波共振子10が、所謂、ラティス型に接続された帯域通過フィルタ600を示している。
図28に示すように、帯域通過フィルタ600は、第1バルク波共振子10c、10d、第2バルク波共振子10e、10f、第1入力端子550a、第2入力端子550b、第1出力端子552aおよび第2出力端子552bを含む。
第1バルク波共振子10c、10d、第2バルク波共振子10e、10fの基本構成は、第1実施形態のバルク波共振子10と同様の構成となっている。このため、第1バルク波共振子10c、10d、第2バルク波共振子10e、10fを総称して、バルク波共振子10と呼ぶ場合がある。
第1バルク波共振子10c、10dは、第5実施形態の第1バルク波共振子10aと同様に、所定の第1共振周波数を有する。第2バルク波共振子10e、10fは、第5実施形態の第2バルク波共振子10bと同様に、第1共振周波数とは異なる所定の第2共振周波数を有する。
第1バルク波共振子10cは、第1入力端子550aと第1出力端子552aとの間に接続される。第1バルク波共振子10dは、第2入力端子550bと第2出力端子552bとの間に接続される。つまり、第1バルク波共振子10c、10dは、帯域通過フィルタ600における直列要素(直列共振器)として機能する。
第2バルク波共振子10eは、第1入力端子550aと第2出力端子552bとの間に接続される。第2バルク波共振子10fは、第2入力端子550bと第1出力端子552aとの間に接続される。つまり、第2バルク波共振子10e、10fは、帯域通過フィルタ600における並列要素(並列共振器)として機能する。
帯域通過フィルタ600では、帯域通過フィルタ500と同様に、第1バルク波共振子10c、10dの反共振点および第2バルク波共振子10e、10fの共振点の周波数付近において、信号を阻止することができる。また、帯域通過フィルタ600では、帯域通過フィルタ500と同様に、第1バルク波共振子10c、10dの共振点および第2バルク波共振子10e、10fの反共振点の周波数付近において、信号を適切に通過させることができる。
以上のように、第6実施形態の帯域通過フィルタ600は、帯域通過フィルタ500と同様に、通過帯域を高周波帯域に設定可能となる。
また、帯域通過フィルタ600では、第1バルク波共振子10c、10dの共振点の周波数および第2バルク波共振子10e、10fの反共振点の周波数を適宜に設定することで、帯域幅を狭くすることもできるし、広くすることもできる。
なお、第6実施形態では、第1実施形態のバルク波共振子10を用いて帯域通過フィルタ600を構成する例を挙げていた。しかし、第6実施形態の帯域通過フィルタ600は、第1〜第4実施形態のバルク波共振子10、110、210、または、第1〜第4実施形態を適宜組み合わせたバルク波共振子のいずれを用いて構成されてもよい。また、第6実施形態の帯域通過フィルタ600は、第1〜第4実施形態のバルク波共振子10、110、210、または、第1〜第4実施形態を適宜組み合わせたバルク波共振子が混在して構成されてもよい。
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、各実施形態および各変形例のバルク波共振子10、110、210を用いた帯域通過フィルタの回路構成は、ラダー型(図24参照。)またはラティス型(図28参照。)の例に限らない。つまり、各実施形態および各変形例のバルク波共振子10、110、210を他の回路に適用して帯域通過フィルタを構成してもよい。例えば、圧電板に複数の電極を近接して配列して隣り合う電極(共振子)を音響的に結合させた共振器結合型フィルタ(所謂、モノリシックフィルタ)を構成してもよい。
10、110、210 バルク波共振子
12 支持基板
14 音響多層膜
16 圧電層
16a 上面
16b 下面
18 第1電極
18a、20a、130a、132a 端面
20 第2電極
130 第1負荷
132 第2負荷
240 第1抑制電極
242 第2抑制電極
500、600 帯域通過フィルタ

Claims (10)

  1. バルク波を用いたバルク波共振子であって、
    支持基板と、
    音響インピーダンスが異なる複数種類の誘電体が前記支持基板上に積層された音響多層膜と、
    前記音響多層膜上に積層された圧電層と、
    前記圧電層における前記音響多層膜とは反対側の面上に間隔を空けて対向配置され、前記バルク波を前記圧電層に発生させる電圧が印加される第1電極および第2電極と、
    を備え、
    前記圧電層の前記面に対して平行な方向のうち、前記第1電極と前記第2電極とが対向する方向を、第1方向としたとき、
    前記第1電極および前記第2電極は、前記第1方向において互いに重なる部分を有さず、
    前記第1電極および前記第2電極に対する電圧の印加により、前記圧電層の内部に前記第1方向の平行電界励振による厚みすべり振動を発生させ、前記厚みすべり振動による前記第1方向の前記バルク波をメインモードとして用い、
    前記圧電層における前記音響多層膜側の面には電極が配置されていない、
    バルク波共振子。
  2. 前記圧電層と前記支持基板との間に空間が形成されることなく、前記圧電層が前記音響多層膜を介して前記支持基板に支持されるSMR型のバルク波共振子である、請求項1に記載のバルク波共振子。
  3. 前記第1電極上に配置される第1負荷と、
    前記第2電極上に配置される第2負荷と、
    をさらに備える、
    請求項に記載のバルク波共振子。
  4. 前記第1負荷における前記第2電極とは反対側の端面が、前記第1電極における前記第2電極とは反対側の端面に合うように、前記第1負荷が配置され、
    前記第2負荷における前記第1電極とは反対側の端面が、前記第2電極における前記第1電極とは反対側の端面に合うように、前記第2負荷が配置される、請求項3に記載のバルク波共振子。
  5. 前記圧電層における前記第1電極および前記第2電極が配置される面上に、前記第1電極と前記第2電極とが対向する第1方向に対して交差する第2方向に対向配置される第1抑制電極および第2抑制電極をさらに備え、
    前記第1抑制電極および前記第2抑制電極は、前記第1電極と前記第2電極との隙間を挟みこむように前記第2方向に対向配置される、請求項1からのいずれか1項に記載のバルク波共振子。
  6. 前記圧電層は、タンタル酸リチウムの単結晶、または、焦電処理、Feドープ処理およびMgドープ処理のうち少なくともいずれかの処理がなされたタンタル酸リチウムの単結晶からなり、
    前記単結晶のY軸に直交する面をX軸を中心軸として80°〜160°の範囲内で1回回転し、1回回転後の面をZ軸を中心軸として−35°〜35°の範囲内で2回回転した面に沿って切り出された回転Yカット板を前記圧電層に適用した、請求項1からのいずれか1項に記載のバルク波共振子。
  7. 前記圧電層は、ニオブ酸リチウムの単結晶、または、焦電処理、Feドープ処理およびMgドープ処理のうち少なくともいずれかの処理がなされたニオブ酸リチウムの単結晶からなり、
    前記単結晶のY軸に直交する面をX軸を中心軸として60°〜170°の範囲内で1回回転し、1回回転後の面をZ軸を中心軸として−35°〜35°の範囲内で2回回転した面に沿って切り出された回転Yカット板を前記圧電層に適用した、請求項1からのいずれか1項に記載のバルク波共振子。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載のバルク波共振子を複数備える、帯域通過フィルタ。
  9. 複数の前記バルク波共振子がラダー型に接続された、請求項に記載の帯域通過フィルタ。
  10. 複数の前記バルク波共振子がラティス型に接続された、請求項に記載の帯域通過フィルタ。
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