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JP6944628B2 - 二重三相巻線永久磁石同期形電動機の駆動システム - Google Patents

二重三相巻線永久磁石同期形電動機の駆動システム Download PDF

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JP6944628B2 JP2017117257A JP2017117257A JP6944628B2 JP 6944628 B2 JP6944628 B2 JP 6944628B2 JP 2017117257 A JP2017117257 A JP 2017117257A JP 2017117257 A JP2017117257 A JP 2017117257A JP 6944628 B2 JP6944628 B2 JP 6944628B2
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Description

本発明は、永久磁石を有する回転子と2個の三相巻線(第1三相巻線と第2三相巻線、または、自三相巻線と他三相巻線)を有する固定子とからなる二重三相巻線永久磁石同期形電動機と、2個の三相巻線に三相電流を同時に供給できる電力変換装置とを少なくとも備える二重三相巻線永久磁石同期形電動機の駆動システムに関する。本発明では、2個の三相巻線を自三相巻線と他三相巻線と呼称することもあれば、自他の区別を取り除き、単純に、第1三和巻線と第2三相巻線と呼称することもある。第1三相巻線を自三相巻線とする場合には、第2三相巻線は他三相巻線となる。同様に、第2三相巻線を自三相巻線とする場合には、第1三相巻線は他三相巻線となる。以降では、説明の明瞭性を確保すべく、特に断らない限り、第1三相巻線を自三相巻線として、第2三相巻線を他三相巻線として、発明の説明を行なう。これにより、発明の一般性を失うことはない。
また、以降の説明では、簡単のため、「巻線」を「三相巻線」と同義で使用する。上記の二重三和巻線永久磁石同期形電動機を、簡単のため、二重同期電動機と略称する。さらには、同様の理由で、同駆動システムを二重同期電動機駆動システムと略称する。発明の二重同期電動機駆動システムの用途は、バッテリ電気自動車、燃料電池電気自動車、ハイブリッド電気自動車等の主駆動、広範囲にわたり効率駆動を求められる家電製品等の用途、あるいは対故障性、機能安全性を要求される用途である。
本発明では、二重同期電動機において三相巻線が施された部分を「固定子」と呼称する。本発明における「固定子」は、「電機子」と同義である。固定子に施される三相巻線には、Y形とΔ形が存在する。当業者には周知のように、三相端子から評価した場合、Y形巻線による特性とΔ形巻線による特性は互いに等価変換される。説明の簡明性を確保すべく、本明細書における技術説明は、Y形結線を想定して行なう。等価変換の存在より明白なように、これにより、本発明の一般性を失うことなない。
本発明では、2次元平面を極座標的に捉え、角度、空間的位置、空間的位相の3用語を同義で使用する。これらの単位は「ラジアン(rad)」または「度(degree)」である。本発明における角度、空間的位置、空間的位相の正方向は、左周り(反時計周り)、右周り(時計周り)のいずれに定義してもよい。ただし、本明細書では、説明の簡明性を維持すべく、角度、空間的位置、空間的位相の正方向は左周り(反時計周り)と定義し、本発明を説明する。これにより、本発明の一般性を失うことはない。
本発明では、二重同期電動機に交流電力を供給する装置を、電力変換装置と呼称する。電力変換装置の主要機器である電力変換器としては、インバータ、マトリックスコンバータなどが実用化されている。単一・六相用、2個・三相用、6個・単相用の電力変換器等が、本発明の電力変換装置を構成しうる。
本発明では、原則として、第1巻線、第2巻線に関連したパラメータ、物理量等を各々脚符1、2を付してこれを明示する。また、原則として、d軸、q軸の直交2軸からなるdq同期座標系(図5を用いて後に詳細説明)において、各軸と関連したパラメータ、物理量等には、脚符d、qを付して各軸との関係を明示する。さらには、原則として、応答信号の指令値に対応した信号には、応答信号と同じ記号に頭符*を付して、対応信号の指令値であることを明示する。
自巻線の自己インダクタンスをL1とし、他巻線の自己インダクタンスをL2とし、両巻線間の相互インダクタンスをMとするとき、漏れ係数σを次の(1)式に従い定義し、
Figure 0006944628
漏れインダクタンスを次の(2)式に従い定義する。
Figure 0006944628
本発明における「漏れインダクタンスの相当値」は、真の漏れインダクタスσL1、σL2概略値を意味する。この場合の概略値は、真値の数倍値をも含む(後掲の(22)式参照)。
本発明における「相互インダクタンスの相当値」は、相互インダクタンスMの真値の幅広い概略値の総称を意味する。本概略値は、次式で表現された値を含む(後掲の(25)式参照)。
Figure 0006944628
なお、(3)式中辺は自己インダクタンスと漏れインダクタンスの差を示している。また、同式右辺の近似は、漏れ係数σが微小な場合には問題なく成立する。当然のことながら、相互インダクタス相当値は非ゼロである。
本発明では、「電流相当値」を固定子電流の真値、指令値、推定値、近似値などの総称として使用する。
同様に、本発明では、回転子の「速度相当値」を回転子速度の真値、指令値、推定値、近似値、さらには回転子と同一の平均速度で回転する2軸直交回転座標系の速度の真値、近似値などの総称として使用する。当業者は周知の通り、回転子速度には電気速度と機械速度が存在するが、両速度の間には1対1の厳密な関係が存在し、電気速度から機械速度、機械速度から電気速度への一意の変換が可能である。本発明では、当業者間の周知性を考慮し、説明の明瞭性が失われない限り、回転子速度は電気速度を意味するものとして、これを使用する。本発明では、「速度乗算相当処理」を、速度相当値の乗算を伴う処理の総称として利用する。
本発明では、「微分相当処理」を、純粋微分処理、近似微分処理、線形な微分処理にリミッタ処理等の非線形処理を追加した処理など、微分的処理を中心とした処理の総称として使用する。
本発明の二重同期電動機駆動システムが駆動対象とする二重同期電動機に関する先行発明としては、例えば、特許文献1〜2、非特許文献1〜5がある。既報の二重同期電動機は、固定子の二重三相巻線の配置の観点から、三相単純同期電動機(非特許文献1)、六相同期電動機(特許文献2、非特許文献2〜3)、三相逆同期電動機(非特許文献4〜5)の3種に概略ながら大別される。
非特許文献1を参考に、従前の二重同期電動機(三相単純同期電動機)の概要を、極対数NpをNp=1とした場合を例に、図1に示した。1は二重同期電動機(回転子、固定子を含む)を、11は二重同期電動機の回転子を、121は二重同期電動機の固定子の第1巻線を、122は二重同期電動機の固定子の第2巻線を、各々示している。同図では、固定子の第1巻線と第2巻線との区別の明瞭化を図るべく、第1巻線は実線で、第2巻線は破線で表示している。また、第2巻線が、巻線配置上第1巻線と重なるため、描画上の重複を回避すべく、第2巻線を意図的に右にシフトして描画している。
本配置による二重同期電動機(三相単純同期電動機)は、以下の特徴を有する。(a)第1巻線、第2巻線とも、u相巻線、v相巻線、w相巻線は、1極対数を基準とした空間において、順次2π/3[rad]の空間的位相進みの位置に配置されている。(b)原理的には、第1巻線と第2巻線は、空間上で位相差なく配置されている。(c)原理的には、極対数は任意の整数を取りうる。すなわち、奇数または偶数の極対数が採用可能である。(d)第1巻線と第2巻線に同時通電する場合も、いずれか一方の巻線のみに通電する場合も、相数は三相のまま不変である。(e)原理的には、第1巻線と第2巻線との同時通電の場合には、第1巻線と第2巻線の電流は位相差のない同期が必要である。
二重同期電動機の固定子巻線配置の第2例(六相同期電動機の例)として、特許文献2、非特許文献2〜3を参考に、極対数NpをNp=1とした場合を例に、図2に、回転子とともに概略的に示した(巻線抵抗の描画は省略)。引き線番号1、11、121、122の意味は、図1と同一である。ただし、第2巻線の配置を第1巻線に対して、1極対数を基準とした空間において、空間的にθ12=π/6[rad]シフトしている点が図1の例と異なっている。
本配置による二重同期電動機(六相同期電動機)は、三相単純同期電動機(図1)に比較し、以下の特徴を有する。(a)例1の(a)項と同様。(b)原理的には、第1巻線と第2巻線は、1極対数を基準とした空間において、π/6[rad]の空間的位相差をもつように配置されている。(c)例1の(c)項と同様。(d)第1巻線と第2巻線に同時通電する場合は、六相電動機として動作し、いずれか一方の巻線のみに通電する場合には三相電動機として動作する。(e)原理的には、第1巻線と第2巻線との同時通電の場合には、第1巻線と第2巻線との電流は、空間位相差に対応した位相差をもつ同期が必要である。
二重同期電動機の固定子巻線配置の第3例(三相逆同期電動機の例)として、非特許文献4〜5を参考に、極対数NpをNp=2とした場合の例を図3に、回転子とともに概略的に示した(巻線抵抗の描画は省略)。引き線番号1、11、121、122の意味は、図1と同一である。
本巻線配置による二重同期電動機(三相逆同期電動機)は、例1、例2に比較し、以下の特徴を有する。(a)第1巻線、第2巻線とも、u相巻線、v相巻線、w相巻線は、2極対数を基準とした空間において、順次2π/3[rad]の空間的位相遅れの位置に配置されている。(b)原理的には、第1巻線と第2巻線は、2極対数を基準とした空間において、±π[rad]の位相差をもつように配置されている。(c)極対数は偶数のみ取りうる。すなわち、奇数の極対数は採用できない。(d)例1の(d)項と同様。(e)例1の(e)項と同様。
図1〜図3に例示した二重同期電動機においては、第1巻線と第2巻線は必ずしも同一特性をもつように構成される必要はない。両巻線は、特許文献1〜2及び非特許文献1〜4に示されているように同一特性をもつように構成することも、また、非特許文献5に示されているように互いに異なる特性をもつように構成することも可能である。
図1〜図3に例示した二重同期電動機においては、第1巻線の中性点と第2巻線の中性点は、不接続となっている。本発明が対象とする二重同期電動機においては、一般には、第1巻線の中性点と第2巻線の中性点は、不接続、接続のいずれも可能である。
続いて、二重同期電動機駆動システムすなわち二重同期電動機を対象した駆動システムに関する従前技術を紹介する。本願発明は、二重同期電動機駆動システムの主要構成装置の1つである電流制御装置に関するものである。この点を踏まえ、二重同期電動機駆動システムのための電流制御装置に関する従前技術を紹介する。図9は、非特許文献1で提案された二重同期電動機駆動システムのための巻線間非干渉器を用いた電流制御装置を引用したものである(特許文献1にも同一発明者による実質同一の巻線間非干渉器が示されている)。なお、非特許文献1は、二重同期電動機として図1の三相単純同期電動機を対象とし、このときの二重同期電動機は非突極としている。
図9では、電流制御装置は、左端に配置された第1、第2「電流制御系」と、中心に配置された「非干渉化部」から構成されている。図9における「電流制御系」は、正しい学術用語(専門用語)では、「フィードバック電流制御器」を意味する。図9における非干渉部の構成は、次の数式で記述される。
Figure 0006944628
(4)式では、第1巻線用のフィードバック電流制御器の出力信号(図9では「電圧指令−1」と記載)をv11*で表現し、第2巻線用のフィードバック電流制御器の出力信号(図9では「電圧指令−2」と記載)をv22*で表現している。フィードバック電流制御器からのこれら2出力信号(2電圧指令値)v11*、v22*が、(4)式で数式表現された非干渉化部の入力信号となっている。(4)式における係数(M/L)は、非突極二重同期電動機のインダクタンスより定まる定数である。非干渉化部の出力信号であるv12*、v21*は、(4)式に従い生成されている。
出力信号v12*は第1三相巻線の側への非干渉化信号として、出力信号v21*は第2三相巻線の側への非干渉化信号として、各巻線用のフィードバック電流制御器の出力信号(電圧指令値)に各々加算され、最終的な電圧指令値v1*、v2*が生成されている。この最終電圧指令値の生成は、次式で記述される。
Figure 0006944628
ここに、v1*、v2*は各々第1巻線用の最終電圧指令値、第2巻線用の最終電圧指令値を意味する。なお、簡略図である図9においては、インバータ等の電力変換装置は省略され記載されていない。
(4)、(5)式より明白なように、従前の巻線間非干渉器は、各巻線用のフィードバック電流制御器の出力信号(電圧指令値)を一定の線形関係で相互に加重して、各巻線用の最終電圧指令値を合成するものである。すなわち、従前の巻線間非干渉器の入力信号は電圧指令値であり、従前の巻線間非干渉器は「電圧形」とも呼ぶべきものである。また、この電圧形巻線間非干渉器を伴う電流制御装置は、非突極な二重同期電動機を対象に、厳密な数学的解析を行なうことなく構築されている。第1巻線と第2巻線の相互誘導(本発明では、相互誘導と磁気的結合を同義で使用)が強い場合には、特許文献1のような電流制御装置による場合には、電流制御系の不安定化現象、あるいはこれに準じた振動現象が容易に発生し(例えば、非特許文献2参照)、所期の電流制御性能を全く発揮できない。
佐竹彰・水野滋基:「多重巻線電動機の制御装置」、特開第2001−341135号(2001−11−6) 伴在慶一郎・大林和良:「自動車用電動駆動装置」、特開第2000−41392号(1998−7−23)
佐竹彰・加藤覚・今中晶:「多重巻線永久磁石モータのモデル化と非干渉制御方式」、電気学会産業応用部門大会講演論文集、I、pp.199−202(2005) 今井隆文・大澤文明・山田靖・稲熊幸雄:「EV・HEV電気駆動系の規格化の可能性について(多相モータの電流リプル抑制)」、電気学会全国大会講演論文集、4、pp.361−362(2016) 森辰也・古川晃:「二重三相PMSM駆動1シャント電流検出ダブルインバータにおけるトルクリップルを低減するパルスパターン」、電気学会産業応用部門大会講演論文集、III、pp.159−164(2016) 新中新二:「180度空間位相差の逆二重三相巻線をもつ三相永久磁石同期モータ(二重巻線配置、動的数学モデル、ベクトルシミュレータ)」、平成28年電気学会産業応用部門大会講演論文集、III、pp.285−290(2016) 新中新二:「180度空間位相差の逆二重三相巻線をもつ三相永久磁石同期モータ(二重巻線配置、動的数学モデル、ベクトルシミュレータ)」、電気学会論文誌D、Vol.137,No.2,pp.75−86(2017)
本発明は上記背景の下になされたものである。二重同期電動機が第1巻線と第2巻線の間に強い相互誘導を有する場合にも適用可能であり、ひいては、第1巻線と第2巻線の高い安定性を備えた高品質の電流制御を可能とする二重同期電動機駆動システムのための新たな電流制御装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、永久磁石を有する回転子と2個の三相巻線(自三相巻線と他三相巻線)を有する固定子とからなる永久磁石同期形電動機と、2個の三相巻線に電流を同時に供給できる電力変換装置と、電力変換装置を介して、2個の三相巻線に流れる電流を制御する電流制御装置とを備える永久磁石同期形電動機駆動システムであって、2個の三相巻線の相互誘導に起因した漏れインダクタンスの相当値を少なくとも利用して定めた制御器係数を備え、2個の三相巻線の相互誘導によって発生した高速モード電流の制御のための電圧指令値を生成する各三相巻線用の高速モード電流制御器と、2個の三相巻線の相互誘導に起因した相互インダクタンスの相当値と自三相巻線の電流相等値とを少なくとも用いて、2個の三相巻線の相互誘導によって発生した低速モード電流の相殺のための自三相巻線用電圧指令値を生成する各三相巻線用の低速モード電流キャンセラとの、異なる2個の機器(高速モード電流制御器と低速モード電流キャンセラ)の少なくとも1つを用いて、該電流制御装置を構成したことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1記載の永久磁石同期形電動機駆動システムであって、該回転子永久磁石のN極の位相をd軸の位相とし、d軸に対してπ/2[rad]の位相進みにq軸をもつ2軸直交座標系をdq同期座標系とし、dq同期座標系に準じた座標系をγδ準同期座標系とするとき、dq同期座標系上あるいはγδ準同期座標系上の各三相巻線の電流指令値と各三相巻線の電流応答値との差である各三相巻線の電流偏差をフィードバック制御的に処理し、dq同期座標系上あるいはγδ準同期座標系上の各三相巻線の電圧指令値を生成するように、該各三相巻線用高速モード電流制御器を構成したことを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1記載の永久磁石同期形電動機駆動システムであって、該回転子永久磁石のN極の位相をd軸の位相とし、d軸に対してπ/2[rad]の位相進みにq軸をもつ2軸直交座標系をdq同期座標系とし、dq同期座標系に準じた座標系をγδ準同期座標系とするとき、さらに、dq同期座標系上あるいはγδ準同期座標系上の該自三相巻線の電流相当値をi1とし、該他三相巻線の電流相当値をi2とし、2個(自と他)の三相巻線の相互誘導に起因した相互インダクタンスの相当値をM1d、M1q、M2d、M2qとするとき、次式に従い自三相巻線用の中間信号φ1Mを生成し、
Figure 0006944628
生成の自三相巻線用の中間信号に対して、微分相当処理、速度乗算相当処理の少なくともいずれかの処理を施して、自三相巻線用電圧指令値を生成するように、該各三相巻線用低速モード電流キャンセラを構成したことを特徴とする。
本発明の効果を説明する。本発明は、「自巻線(第1巻線)と他巻線(第2巻線)の相互誘導により、高速モードと低速モードの電流が出現する」との事実認識に基づき、高速モード電流に対しては高速モード電流制御器によりこれを制御し、低速モード電流電流に対しては低速モード電流キャンセラによりこれを相殺・抑圧し、自巻線と他巻線の2個の巻線に流れる電流を安定的に制御しようとするものである。本発明実施の鍵の1つとなった相互誘導による高速モードと低速モードの発生の事実を明らかにする。
図4(a)を考える。同図は、2個の単相用LR回路が磁気的に結合(相互誘導)している様子を概略的に示している。このとき、1次側、2次側のインダクタンス、抵抗を各々L,L,R,Rとし、相互インダクタンスをMとしている。同回路の特性を支配する特性方程式は、次式で与えられる。
Figure 0006944628
上式における漏れ係数σの定義は(1)式の通りである。
1次側と2次側の相互誘導が存在しないσ=1の場合には、回路モードを決定づける特性根s1、s2は、次の2実根となる。
Figure 0006944628
一方、1次側と2次側との間に強い相互誘導が存在し、下の(9a)式が成立する場合には、2個の特性根s1、s2は、概ね(9b)式の2実根となる。
Figure 0006944628
R1/L1>=R2/L2とするとき、(8)、(9)式は、相互誘導の向上σ→0に応じて、2個の特性根は高速モード対応の根(以下、高速根)s1と低速モード対応の根(以下、低速根)s2に変化することを意味する。すなわち、
Figure 0006944628
相互誘導の向上σ→0に応じた低速根s2の変化は緩慢・微小であるが、高速根s1の変化は、逆比1/σの発散的増大を示す。
(10)式右端の高速根s1、低速根s2は、次の(11)式のように書き改めることができる。
Figure 0006944628
(11)式の中辺は1次側端子から見た表現であり、右辺は2次側端子から見た表現である。(11)式の第1式の分母における(σL1)、(σL2)は、(2)式の通り展開され、これらは、各々1次側端子、2次側端子からみた漏れインダクタンスを意味している。
強い相互誘導を有する回路を制御対象としたフィードバック電流制御系の構成において、(8)式の2個の低速根のみを想定し、(9b)式・第1式の高速根s1の存在を無視する場合には、電流制御系は不安定化(高周波電流リプルの発生、電流の発散等)することになる。
本発明の効果の説明の平易化を図るべく、本格説明に入る前に、座標系を説明する。図5を考える。図5には、αβ固定座標系、dq同期座標系、γδ一般座標系を示している。αβ固定座標系は固定子に対応した座標系であり、一般に、α軸は、固定子第1巻線のu相巻線の中心に取られる(固定子第2巻線のu相巻線の中心にとっても本質的相違はない)。dq同期座標系は回転座標系の1つであり、特に、d軸が回転子のN極と同期した座標系となっている。すなわち、dq同期座標系においては、d軸の位相は回転子磁束の位相と同一である。dq同期座標系の速度は、回転子速度ωnと瞬時瞬時において同一である。γδ一般座標系は、任意の座標系速度ωγをもつ一般性に富む座標系である。γδ一般座標系は、特別の場合として、αβ固定座標系、dq同期座標系を包含している。また、dq同期座標系に対し小さな位相差を持ちうるγδ準同期座標系も、特別の場合として包含している。また、座標系の位相に関しては、α軸からみたd軸の位相をθαとし、α軸からみたγ軸の位相をθαγとし、γ軸からみたd軸の位相をθγとしている。
図1〜図3に示した3種の二重同期電動機は、明らかに異なった巻線配置を有するが、dq同期座標系上では、これらの数学モデル(回路方程式)は、共通して次式で記述される(非特許文献5参照)。
Figure 0006944628
数学モデルにおける脚符1、2およびd、qの意味はすでに説明した通りである。記号sは微分演算子d/dtを意味している。第1巻線を例に、数学モデルに使用した物理量を説明する。dq同期座標系上で定義された2×1ベクトルv1、i1は、それぞれ固定子の電圧、電流を意味している。Iは2×2単位行列である。R1は固定子巻線の抵抗であり、Φ1は固定子巻線からみた回転子磁束強度(起電力定数)である。L1d、L1qは、d軸(自己)インダクタンス、q軸(自己)インダクタンスである。また、Md、Mqは、各々d軸相互インダクタンス、q軸相互インダクタンスである。
なお、本発明では、d軸(自己)インダクタンスL1d、q軸(自己)インダクタンスL1qを用いて、同相(自己)インダクタンスL1i、鏡相(自己)インダクタンスL1mを下の(13)式のように定義し、利用する。
Figure 0006944628
(13)式が明瞭に示しているように、同相インダクタンスL1iは、対応のd軸、q軸インダクタンスの平均値を意味している。
本発明が対象とする二重同期電動機においては、2個の三相巻線に起因した電動機パラメータ(巻線抵抗R1、インダクタンスL1d、L1qなど)は、同一の場合もあれば、異なる場合もある。本発明は、巻線に起因した電動機パラメータの同異には依存しない。
(12)式の関係は、ωnで回転するdq同期座標系上の仮想ベクトル回路として、図4(b)のように描画される。同図における電圧、電流等のすべての物理量は、dq同期座標系上で定義された2×1ベクトルである。また、同図における2×2インダクタンス行列は、以下のように定義されている。
Figure 0006944628
特にゼロ速度ωn=0では、d軸、q軸間における軸間干渉は消滅し、仮想ベクトル回路は、「図4(a)の単相用LR回路(相互誘導回路)を、軸ごとのパラメータに置換した上で、軸ごとに独立・並列に配した二相回路」に帰着する。ゼロ速度での同一性より理解されるように、二重同期電動機は、d軸、q軸の漏れ係数σd、σqの逆数におおむね比例した高速モードを有する。併せて、低速モードを有する。なお、各軸の漏れ係数σd、σqは、(1)式と同様の次式に従い定義されている。
Figure 0006944628
図4の単相用LR回路(相互誘導回路)と二重同期電動機の仮想ベクトル回路のゼロ速度の等価性より理解されるように、第1巻線と第2巻線が強い相互誘導を有する二重同期電動機に対するフィードバック電流制御系の構成において、低速根に起因した低速モード電流のみを想定する場合には、フィードバック電流制御系は、容易に不安定化(高周波電流リプルの発生、電流の発散等)することになる。
請求項1の発明は、第1巻線と第2巻線が強い相互誘導を有する二重同期電動機が、高速モードと低速モードの2種類の異なったモードで動作する電流(高速モード電流、低速モード電流)を有することを深く認識した上で、これらを別々に制御しようとするものである。特に、請求項1の発明によれば、2個の三相巻線の相互誘導に起因した漏れインダクタンスの相当値を少なくとも利用して定めた制御器係数を備え、2個の三相巻線の相互誘導によって発生した高速モード電流の制御のための電圧指令値を生成する各三相巻線用の高速モード電流制御器を利用して、高速モード電流を制御することになる。既に解析的に明らかにしたように、高速モード電流は漏れインダクタンスによって支配されるため、請求項1の発明によれば、効果的に高速モード電流を制御できると言う効果を得ることができる。ひいては、高速モード電流に起因した不安定化を防止できるようになる。すなわわち、フィードバック電流制御系の安定性を確保できると言う効果を得ることができる。
高速モード電流の制御の成功は、低速モード電流の制御の成功を意味しない。高速モード電流を適切に制御する場合にも、低速モード電流が巻線電流に低周波脈動をもたらす。図4(b)の仮想ベクトル回路より理解されるように、低速モード電流は、自三相巻線を第1巻線とする場合、相互インダクタンス行列M((14)式参照)と自三相巻線の電流(すなわち、第1巻線電流)i1とを、これらの積の形で含有することが分かる。同様に、低速モード電流は、自三相巻線を第2巻線とする場合、相互インダクタンス行列M((14)式参照)と自三相巻線の電流(すなわち、第2巻線電流)i2とを、これらの積の形で含有することが分かる。請求項1の発明によれば、2個の三相巻線の相互誘導に起因した相互インダクタンスの相当値と自三相巻線の電流相等値とを少なくとも用いて、2個の三相巻線の相互誘導によって発生した低速モード電流の相殺のための電圧指令値を生成する各三相巻線用の低速モード電流キャンセラを構成することになる。すなわち、請求項1の発明によれば、低速モード電流キャンセラによって生成した電圧指令値を介し、低速モード電流を相殺できる。ひいては、低速モード電流に起因した巻線電流の低周波脈動を抑圧できると言う効果が得られる。特に、安定性の確保に貢献する高速モード電流制御器と併用する場合には、低周波脈動を抑圧した高品質の電流制御効果をもたらすという効果を得ることができる。請求項1の発明は、二重同期電動機に対して、突極性の関する如何なる制約も設けておらず、ひいては、当然のことながら、強い突極性を有する二重同期電動機に適用可能である。
なお、上記に説明した高速モード電流制御器、低速モード電流キャンセラの効果は、高速モード電流に直接関連した漏れインダクタンスと、低速モード電流に直接関連した相互インダクタスとに着目し、(12)式の回路方程式を次式のように再展開することによっても確認できる。
Figure 0006944628
Figure 0006944628
Figure 0006944628
例えば、(16)式が示す第1巻線の電圧v1に関しては、(16a)式の左辺が電圧v1そのものを示しており、同式の右辺がモード対応の電圧を示している。特に、v1は高速モード電流
Figure 0006944628
の詳細は、各々(16b)式、(16c)式に示されている。(16b)式、(16c)式より再確認されるように、高速モード電流はd軸、q軸の漏れインダクタンス(σd・L1d)、(σq・L1q)によって、低速モード電流はd軸、q軸の相互インダクタンス相当値((1−σd)L1d,Md)、((1−σq)L1q,Mq)によって支配れている。(17)式が示す第2巻線の電圧v2に関しても同様である。
つづいて、請求項2の発明の効果を説明する。請求項1の発明による高速モード電流制御器は、dq同期座標系、γδ準同期座標系、αβ固定座標系のいずれの座標系の上でも構築可能である。しかしながら、構築の難易度は同一ではない。dq同期座標系上またはγδ準同期座標系上での構築がもっとも平易であり、効果が期待される。請求項2の発明によれば、dq同期座標系上あるいはγδ準同期座標系上の各三相巻線の電流指令値と各三相巻線の電流応答値との差である各三相巻線の電流偏差をフィードバック制御的に処理し、dq同期座標系上あるいはγδ準同期座標系上の各三相巻線の電圧指令値を生成するように、各三相巻線用高速モード電流制御器を構成できる。ひいては、請求項2の発明によれば、高速モード電流制御器を簡単に構築できると言う効果が得られる。この結果、請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果を高めることができると言う効果も得られる。
つづいて、請求項3の発明の効果を説明する。第1巻線を自巻線とし、第2巻線を他巻線とする場合には、自巻線用低速モード電流キャンセラの理想的な構成の1つは、特に、dq同期座標系上の構成の1つは、(16c)式より、次式で記述される。
Figure 0006944628
(18)式における頭符*の意味は、すでに説明した通りである。請求項3の発明に基づき構成された低速モード電流キャンセラによれば、第1巻線を自巻線とし、第2巻線を他巻線とする場合には、(18b)式を包含する(6)式に従って自三相巻線用の中間信号φ1Mを生成し、生成の自三相巻線用の中間信号に対して、微分相当処理、速度乗算相当処理の少なく
Figure 0006944628
発明は(18)式の構成を包含しており、請求項3の発明によれば、低速モード電流キャンセラは理想的な構造の1つを採用できるようになると言う効果が得られる。ひいては、低速モード電流キャンセラは好ましい性能を発揮できるようになると言う効果が得られる。
なお、第2巻線を自巻線とし、第1巻線を他巻線とする場合には、自巻線用低速モード電流キャンセラの理想的な構成の1つは、特に、dq同期座標系上の構成は、(17c)式より、次式で記述される。
Figure 0006944628
「二重三相巻線永久磁石同期形電動機の巻線配置例(三相単純同期電動機)を示す図」 「二重三相巻線永久磁石同期形電動機の巻線配置例(六相同期電動機)を示す図」 「二重三相巻線永久磁石同期形電動機の巻線配置例(三相逆同期電動機)を示す図」 「単相相互誘導回路と二重三相巻線永久磁石同期形電動機仮想ベクトル回路の各1例を示す図」 「3種の2軸直交座標系の関係を示す図」 「本発明によるdq同期座標系上の高速モード電流制御器と低速モード電流キャンセラを用いた二重同期電動機駆動システムの構成の1例を示す図」 「本発明によるdq同期座標系上の低速モード電流キャンセラの構成の1例を示す図」 「本発明によるαβ固定座標系上の低速モード電流キャンセラを用いた二重同期電動機駆動システムの構成の1例を示す図」 「従前の電圧形巻線間非干渉器を用いた電流制御装置の構成を示す図」
以下、図面を用いて、本発明の好適な実施態様を具体的に説明する。
二重同期電動機に対して請求項1〜3の全発明を用いた二重同期電動機駆動システムの実施形態例を図6に示した。駆動システムは大きくは、二重同期電動機(回転子、固定子を含む)1、電力変換装置2(破線ブロック表示)、電流制御装置3(破線ブロック表示)から構成されている。電力変換装置の内部構成、電流制御装置の内部構成は、第1巻線用と第2巻線用は基本的に同一である。この点を踏まえ、基本的に第1巻線用を中心にこれらを説明し、第1巻線用と第2巻線用で相違がある場合に限り、個別に説明する。
電力変換装置は、第1、第2巻線用の電力変換器21、電流検出器22から構成されている。電流制御装置3は、大きくは、第1、第2巻線の固定子電流、固定子電圧指令値の変換を担う信号変換部32(破線ブロック表示)と、高速モード電流の制御を担う高速モード電流制御器33(破線ブロック表示)と、低速モード電流の相殺・抑圧を担う低速モード電流キャンセラ34から構成されている。補助的には、信号変換部32で使用する回転子位相を検出するための位相検出器311、低速モード電流キャンセラで使用する回転子速度を検出するための速度検出器312が含まれる。位相検出器311、速度検出器312は、両巻線の電流制御等で共有されている。信号変換部32では、第1、第2巻線の電流制御が独立的に遂行できるように、各巻線に対して、3相2相変換器321a、2相3相変換器321b、ベクトル回転器322a、322bが構成されている。
なお、第2巻線用の3相2相変換器(2×3行列)、2相3相変換器(3×2行列)に関しては、二重同期電動機の巻線配置の違いに応じて、若干の変更が必要である。すなわち、図6におけるSR(・)に関しては、三相単純同期電動機(図1参照)、三相逆同期電動機(図3参照)の場合には下の(20a)式を用い、六相同期電動機(図2参照)の場合には下の(20b)式を用いることになる。
Figure 0006944628
同図では、簡明のため、複数のスカラ信号を1つのベクトル信号として捉え、複数のスカラ信号線を1本の太い信号線で表現している。なお、電圧、電流のベクトル信号の脚符r、s、tは、各々、dq同期座標系上の信号、αβ固定座標系上の信号、uvw座標系上の信号(三相信号)であることを示している。
電流制御装置3を構成する信号変換部32は、従前のものと基本的に同一である。本機器は当業者には周知であるので、これ以上の説明は省略する。本発明の核心は、電流制御装置3を構成する高速モード電流制御器33と低速モード電流キャンセラ34にある。以降は、図6の高速モード電流制御器33と低速モード電流キャンセラ34とに関し説明する。
高速モード電流制御器33は、第1巻線用高速モード電流制御器331と第2巻線用高速モード電流制御器332から構成され、各巻線の高速モード電流制御用電圧指令値v1*、v2*を生成している。図6における高速モード電流制御器33は、請求項1および請求項2の発明に従い構成されている。本構成は、本発明提示の(16b)式、(17b)式に立脚している。同式は、固定子抵抗と漏れインダクタンスとにより支配された高速モード電流の動特性を示している。各巻線の高速モード電流制御器331、332は、基本的には、任意の構造を採用することができる。単純なPI構造を採用する場合には、各巻線の高速モード電流制御器331、332は、各々次の(21a)、(21b)式のように記述される。
Figure 0006944628
所期の目的「高速モード電流の制御」を達成するには、(21)式における制御器係数(PIゲイン)は、請求項1の発明に従い、三相巻線の相互誘導に起因した漏れインダクタンスの相当値を利用して定めることになる。漏れインダクタンスの相当値を利用した制御器係数の設計法の1例を以下に示す。(21a)式の第1巻線d軸の制御器係数(PIゲイン)d1d1とd1d0は、例えば、電流制御系の期待帯域幅をωicとし、設計パラメータをw1とするとき、以下のように設計される。
Figure 0006944628
制御器係数を具体的に定める(22a)、(22b)式には、「漏れインダクタンスの相当値」として、(σd・L1d)、(σd・L1i)を用いている点に、注意されたい。d軸に関する(σd)の選定範囲は、(22c)式が明示している。(22c)式のd軸の(σd)の基準値は、d軸の漏れ係数(σd)自体である。また、同式右辺の上限は、採用の制御器設計法と密接に関連しており、一応の目安である。(σd)は「漏れ係数相当値」とも言うべきものである。以上の説明より明らかなように、(22)式の制御器係数の設定に用いた漏れインダクタンス相当値(σd・L1d)、(σd・L1i)は、(2)式を用いて説明した「漏れインダクタンスの相当値」の定義にも従っている。なお、第1巻線の同相インダクタンスLi1の定義は、(13)式の通りである。第2巻線の同相インダクタンスLi2も同様に定義される。
(22)式による制御器係数設計法の例は、(21a)式の第1式、すなわち第1巻線d軸のための高速モード電流制御器の制御器係数を対象としたものである。第1巻線q軸のための高速モード電流制御器の制御器係数の設計法は、(22)式において軸対応脚符を「d→q」と変更するのみで得られる。同様に、第2巻線d軸のための高速モード電流制御器の制御器係数の設計法は、(22)式において巻線対応脚符を「1→2」と変更するのみで得られる。第2巻線q軸のための高速モード電流制御器の制御器係数の設計法は、(22)式において巻線対応脚符を「1→2」、軸対応脚符「d→q」と変更するのみでえられる。
各巻線の高速モード電流制御器331、332の構造としては、PI構造以外の構造を採用してもよいことを指摘しておく。また、「漏れインダクタンスの相当値」を利用した制御器係数の設計法は、(22)式以外にも、種々存在することを指摘しておく。図6の実施形態例では、高速モード電流制御器33は、請求項2の発明に従い、dq同期座標系上で構成した。これに代わって、γδ準同期座標系上、あるいはαβ固定座標系上でも、高速モード電流制御器は構成可能であることを指摘しておく。本発明は、これらの構成を排除するものではない。
Figure 0006944628
請求項3の発明に従い構成されている。本構成は、本発明提示の(16c)式、(17c)式に立
Figure 0006944628
した。実際的には、相互インダクタンス相当値、巻線電流相当値を用いて、この生成を以下のように変更することが望まれる。
Figure 0006944628
Figure 0006944628
図6における低速モード電流キャンセラ34の詳細構成を図7に示した。図7における第1巻線用低速モード電流キャンセラ341は(23)式に基づき、第2巻線用低速モード電流キャンセラ342は(24)式に基づき構成されている。ただし、(23)、(24)式に用いた電流相当値i1、i2としては、電流真値を利用するものとなっている。電流相当値i1、i2の定義は、すでに説明した通りである。
各巻線の低速モード電流キャンセラ341、342に利用した相互インダクタンス相当値M1d、M1q、M2d、M2qの範囲は、概ね次の通りである。
Figure 0006944628
(25)式では、相互インダクタンス相当値の上限を、対応の自己インダクタンスとしている。「相互誘導(磁気的結合)が強い場合には、漏れ係数が微小、漏れインダクタンスが微小となり、ひいては相互インダクタンスが自己インダクタンスに概ね等しくなる」と言う事実に基づいている。(23)式の第1巻線用低速モード電流キャンセラ341と、(24)式の第2巻線用低速モード電流キャンセラ342とにおいて、同一の相互インダクタンス相当値M1d、M1q、M2d、M2qを使用する必要はなく、各巻線用低速モード電流キャンセラごとに異なった値を利用してよい。M1dを例にとり、より具体的に言えば、第1巻線用低速モード電流キャンセラ341・(23)式と第2巻線用低速モード電流キャンセラ341・(24)式とで、M1dに関し異なる値を利用してよい。図7は、各巻線用低速モード電流キャンセラ341、342において、用いるべき相互インダクタンス相当値として、各巻線用低速モード電流キャンセラごとに異なった値を利用することを想定した構成としている。すなわち、図7においては、2個の中間信号φ1Mとφ2Mは必ずしも等しくないことを想定したものとなっている。2個の中間信号φ1Mとφ2Mとが等しくなるように相互インダクタンス相当値を選定する場合には、各巻線の低速モード電流相殺用の電圧
Figure 0006944628
できる。
(23)、(24)式におけるFad(s)は、純粋微分を排除すべく導入した近似微分器であり、簡単には、次でよい。
Figure 0006944628
近似微分器の帯域幅でもある設計パラメータωadは、高速モード電流制御器によって構成された電流制御系の帯域幅ωicと同等あるいはそれ以上に選定することになる。当然のことながら、(26)式以外の他の近似微分処理を採用してもよい。
図7を用いた実施形態例では、第1巻線、第2巻線の電流の相当値として同真値(電流検出値)を、速度相当値として同真値(速度検出値)を利用する例となっている。両信号は、ともに相当値で置換してよいことを改めて指摘しておく。電流相当値、速度相当値の定義は、すでに与えたとおりである。
図7の実施形態例では、微分相当処理、速度乗算相当処理の2処理を共に遂行する例となっている。高速回転時には速度乗算相当処理がより重要となり、ひいては微分相当処理を省略できることを指摘しておく。反対に、低速回転時には速度乗算相当処理の重要性は相対的に低下し、ひいては速度乗算相当処理を省略できることを指摘しておく。
図7の実施形態例では、低速モード電流キャンセラ34をdq同期座標系上で構成した例となっている。図7と実質的に同一の低速モード電流キャンセラがγδ準同期座標系上でも構成可能であることを指摘しておく。
また、低速モード電流キャンセラ34は、αβ固定座標系上でも構成可能であることを指摘しておく。図8は、この様子を示したものである。αβ固定座標系上で低速モード電流キャンセラを構成する場合には、一般的には、図7の構成を多少変更する必要がある。ただし、d軸とq軸の相互インダクタンス相当値を等しく選定する場合には、追加変更は不要であり、図7のものに対して単に速度乗算相当処理を撤去したものを利用することができる。
本発明は、バッテリ電気自動車、燃料電池電気自動車、ハイブリッド電気自動車の主駆動電動機、家電用高速電動機などに代表される広範囲にわたり効率駆動を要求される用途での二重同期電動機、対故障性、機能安全性を要求される用途での二重同期電動機の駆動システムに好適である。
1 二重同期電動機
11 二重同期電動機の回転子
121 二重同期電動機の固定子の第1巻線
122 二重同期電動機の固定子の第2巻線
2 電力変換装置
21 電力変換器
22 電流検出器
3 電流制御装置
311 位相検出器
312 速度検出器
32 信号変換部
321a 三相二相変換器
321b 二相三相変換器
322a ベクトル回転器
322b ベクトル回転器
33 高速モード電流制御器
331 第1巻線用高速モード電流制御器
332 第2巻線用高速モード電流制御器
34 低速モード電流キャンセラ
341 第1巻線用低速モード電流キャンセラ
342 第2巻線用低速モード電流キャンセラ

Claims (3)

  1. 永久磁石を有する回転子と2個の三相巻線(自三相巻線と他三相巻線)を有する固定子とからなる永久磁石同期形電動機と、
    2個の三相巻線に電流を同時に供給できる電力変換装置と、
    電力変換装置を介して、2個の三相巻線に流れる電流を制御する電流制御装置と
    を備える永久磁石同期形電動機駆動システムであって、
    2個の三相巻線の相互誘導に起因した漏れインダクタンスの相当値を少なくとも利用して定めた制御器係数を備え、2個の三相巻線の相互誘導によって発生した高速モード電流の制御のための電圧指令値を生成する各三相巻線用の高速モード電流制御器と、
    2個の三相巻線の相互誘導に起因した相互インダクタンスの相当値と自三相巻線の電流相等値とを少なくとも用いて、2個の三相巻線の相互誘導によって発生した低速モード電流の相殺のための自三相巻線用電圧指令値を生成する各三相巻線用の低速モード電流キャンセラとの、
    異なる2個の機器(高速モード電流制御器と低速モード電流キャンセラ)の少なくとも1つを用いて、該電流制御装置を構成したことを特徴とする永久磁石同期形電動機駆動システム。
  2. 該回転子永久磁石のN極の位相をd軸の位相とし、d軸に対してπ/2[rad]の位相進みにq軸をもつ2軸直交座標系をdq同期座標系とし、dq同期座標系に準じた座標系をγδ準同期座標系とするとき、
    dq同期座標系上あるいはγδ準同期座標系上の各三相巻線の電流指令値と各三相巻線の電流応答値との差である各三相巻線の電流偏差をフィードバック制御的に処理し、dq同期座標系上あるいはγδ準同期座標系上の各三相巻線の電圧指令値を生成するように、該各三相巻線用高速モード電流制御器を構成したことを特徴とする請求項1記載の永久磁石同期形電動機駆動システム。
  3. 該回転子永久磁石のN極の位相をd軸の位相とし、d軸に対してπ/2[rad]の位相進みにq軸をもつ2軸直交座標系をdq同期座標系とし、dq同期座標系に準じた座標系をγδ準同期座標系とするとき、
    さらに、dq同期座標系上あるいはγδ準同期座標系上の該自三相巻線の電流相当値をi1とし、該他三相巻線の電流相当値をi2とし、2個(自と他)の三相巻線の相互誘導に起因した相互インダクタンスの相当値をM1d、M1q、M2d、M2qとするとき、
    次式に従い自三相巻線用の中間信号φ1Mを生成し、
    Figure 0006944628
    生成の自三相巻線用の中間信号に対して、微分相当処理、速度乗算相当処理の少なくともいずれかの処理を施して、自三相巻線用電圧指令値を生成するように、
    該各三相巻線用低速モード電流キャンセラを構成したことを特徴とする請求項1記載の永久磁石同期形電動機駆動システム。
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