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JP6839052B2 - X線管およびx線撮影装置 - Google Patents

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Description

本発明は、X線を発生するX線管およびそのX線管を適用したX線撮影装置に関する。
透過型X線撮影装置やX線CT(Computed Tomography)装置などのX線撮影装置では、X線を発生するのにX線管が用いられる。X線管は、陰極と陽極とを備えた一種の真空管であり、陰極から放出される電子を高電圧で加速して金属の陽極に衝突させることによりX線を発生する。
図9は、X線管101の原理構成およびX線管101の従来の一般的な駆動回路の例を示した図である。図9に示すように、X線管101の中には、陰極102と陽極103とが設けられ、陰極102と陽極103との間には、直流発生装置104により、例えば、140kV程度の直流高電圧が印加される。一方、陰極102の先端はフィラメントとなっており、その両端には、加熱変圧器105が接続されている。したがって、フィラメントは、加熱変圧器105から供給される交流により加熱され、フィラメントから電子が放出される。フィラメントから放出された電子は、陰極102と陽極103の間に生じる直流電界によって加速され、陽極103に衝突する。そして、その衝突により、X線が発生する。
ここで、交流電源106から加熱変圧器105の1次巻線107の端子には、数10V〜数100V程度の交流電圧が供給され、加熱変圧器105の2次巻線108の端子からは、数10V〜数100V程度の交流電圧が出力される。したがって、フィラメントを含む陰極102には、数10V〜数100V程度の振幅を有する交流が重畳された−140kV程度の直流電圧が印加されることとなる。
なお、図9に示したX線管101の駆動回路は、陽極103が設置されていることから、陽極接地型と呼ばれる。この他にも、陰極102に負の電圧を陽極103に正の電圧をそれぞれ印加する中性点接地型と呼ばれる駆動回路も存在するが、陽極接地型と類似するものであるので、その説明を省略する。
図10は、従来の一般的なX線管101の構造の例を示した図である。図10に示すように、X線管101は、真空にされたガラス容器205と、このガラス容器205の中に設けられた陰極102および陽極103と、ガラス容器205を保持し収納する保護筐体206と、を含んで構成される。
ガラス容器205内において、陰極102と陽極103とは、互いに対向する位置に配置される。そして、陰極102には、図示しないフィラメント(図11参照:フィラメントには302a,302bの符号が付されている)が組み込まれており、フィラメントが熱せられることにより電子が放出される。フィラメントから放出された電子は、陰極102に印加される−140kV程度の高電圧により加速されて陽極103に衝突する。X線は、その衝突により発生する。
なお、陽極103は、ロータ203とステータ204とからなるモータにより回転するようにされている。したがって、加速された電子が陽極103上の同じ位置に衝突することがなくなるので、陽極103の過熱が防止される。
陰極102および陽極103が収納されたガラス容器205は、保護筐体206の中に収納されおり、保護筐体206には、外部に配置される直流発生装置104、加熱変圧器105(図9参照)などに接続されるブッシング207,208が設けられている。そして、ガラス容器205内の陰極102および陽極103は、それぞれブッシング207,208に電気的に接続されている。すなわち、これらのブッシング207,208を介して、陽極103は接地されるとともに、陰極102には−140kV程度の高電圧が印加される。なお、ガラス容器205と保護筐体206との間の空間には、絶縁と冷却のために絶縁油が充填されている。
図11は、従来の一般的なX線管101で用いられる陰極102の構造の例を拡大して示した図であり、(a)は、陽極103側から見たときの正面図、(b)は、A−A’の断面図、(c)は、B−B’の断面図である。図11に示すように、陰極102は、フィラメント302、収束体301などにより構成される。
なお、図11の例では、2本の大きさの異なるフィラメント302a,302bが収束体301に組み込まれており、それぞれから放出される電子ビームの太さを変えることができる。収束体301は、フィラメント302から放出され、加速される電子をまとまった電子ビームに収束させる役割を果たす。なお、図示を省略しているが、通常、収束体301とフィラメント302の一端とは電気的に接続されている。
フィラメント302(302a,302b)は、通常、タングステンを主成分とする金属で構成され、通電によるジュール熱で熱せられると、電子(熱電子)を放出する。ここで、フィラメント302は、リード303に電気的に接続され、また、リード303は、ブッシング207(図10参照)を介して、直流発生装置104(図9参照)および加熱変圧器105の2次巻線108に接続されている。
収束体301は、通常、鉄やニッケルを主成分とする金属で構成される。収束体301とフィラメント302の一端とは同じ電位、すなわち数10V〜数100V程度の交流が重畳された−140kV程度の電位となる。そのため、フィラメント302の発熱により発生した電子は、収束体301およびフィラメント302を含む陰極102から反発する静電気力を受け、陰極102から離れていく。そして、フィラメント302から放出された電子は、陰極102と陽極103との間に印加された−140kV程度の電圧によって加速され、電子ビームとなって陽極103に衝突する。
以上のように、収束体301およびフィラメント302を含んだ陰極102の電位は、直流−140kV程度に数10V〜数100V程度の交流が重畳された電位となる。そのため、ガラス容器205(図10参照)内側の真空内におけるガスや塵埃を原因として、陰極102とガラス容器205との間で異常放電が発生することがある。異常放電が発生すると、正常な電子ビームの発生ができなくなるとともに、ガラス容器205を破壊することもある。したがって、X線管101の信頼性を向上させる上で、陰極102からの異常放電を抑制することは解決すべき重要な課題となっている。
特許文献1の請求項1には、「陽極が接地電位とされ、陰極に負電圧が印加されて、前記陰極より放出された電子が前記陽極に当たることによりX線を発生する陽極接地型X線管であって、前記陰極を支持する絶縁体は、基材に、当該基材よりも体積抵抗率が小さいコーティング材を被覆したことを特徴とする陽極接地型X線管」の例が示されている。さらに、請求項2では、「前記陽極接地型X線管において、前記コーティング材の体積抵抗率が10〜1014Ω・cmである」という限定が付されている。
このような陽極接地型X線管では、陰極を支持する絶縁体表面での沿面放電の発生を防止することができるので、X線管の信頼性を高めることができるとされている。
また、特許文献2の請求項5には、「電子ビームを発生させる電子源と、その電子源からの電子ビームの引き出しを制御するウェネルト電極と、そのウェネルト電極からの電子ビームを加速させる陽極と、その陽極からの電子ビームの衝突によりX線を発生させるターゲットと、前記電子源、前記ウェネルト電極、前記陽極および前記ターゲットを収容する容器とを備え、DLC(diamond like carbon)が前記ウェネルト電極の表面に成膜されたことを特徴とするX線管」が示されている。
このようなX線管では、ウェネルト電極がDLCによって保護されるので、陰極と陽極間の絶縁特性が改善されることとなる。その結果、コンディショニング時の放電を低減することができ、陰極と陽極との間の耐電圧を向上させることができるとされている。
さらに、特許文献2の背景技術の項では、陰極と陽極との間の耐電圧を向上させるために「電極に絶縁膜を成膜するのではなく、電極自身を半導電性(体積抵抗率ρ=10〜1010Ωcm)を有したセラミックで形成するという試みもなされている」などと言及されている。
特開2012−099435号公報 特開2012−164427号公報
しかしながら、特許文献1に開示されたX線管において基材よりも体積抵抗率が小さいコーティング材で被覆されるのは、陰極ではなく、陰極を支持する絶縁体である。したがって、陰極を支持する絶縁体表面での沿面放電は、低減可能ではあっても、陰極からの異常放電を低減できるとは限らない。
また、特許文献2に開示されたX線管では、ウェネルト電極(陰極)の表面にDLCが成膜されていることにより、コンディショニング時の放電を低減できるものの、これは、陰極からの異常放電の低減を保証するものではない。また、電極自身を半導電性(体積抵抗率ρ=10〜1010Ωcm)のセラミックで形成するとしても、後記する発明者らの試験結果によれば、その体積抵抗率は、陰極からの異常放電を低減する上で必ずしも適切であるとはいえない。
本発明の目的は、陰極からの異常放電を低減し、動作の信頼性を向上させることが可能なX線管およびそのX線管を用いたX線撮影装置を提供することにある。
前記発明の目的を達成するために、本発明に係るX線管は、陰極と陽極とを備え、前記陰極から放出される電子を、前記陰極と前記陽極の間に印加される高電圧で加速して前記陽極に衝突させ、その衝突によってX線を発生させるX線管であって、前記陰極は、前記電子を放出するフィラメントと、前記フィラメントから放出される前記電子を前記陽極に向かう電子ビームとして収束させる収束体と、を備えてなり、前記収束体の外側表面部の体積抵抗率が1010〜1012Ωcmであることを特徴とする。
本発明によれば、陰極からの異常放電を低減し、動作の信頼性を向上させることが可能なX線管およびそのX線管を用いたX線撮影装置が提供される。
本発明の第1の実施形態に係るX線管で用いられる陰極の構造の例を拡大して示した図であり、(a)は、陽極側から見たときの正面図、(b)は、A−A’の断面図、(c)は、B−B’の断面図、(d)は、C−C’の断面図である。 図1に示した陰極の構造を有するX線管の耐電圧試験の結果の例を示したグラフである。 収束体表面における最大誤差表面電圧の計測結果の例を示したグラフである。 本発明の第2の実施形態に係るX線管で用いられる陰極の構造の例を拡大して示した図であり、(a)は、陽極側から見たときの正面図、(b)は、A−A’の断面図、(c)は、B−B’の断面図、(d)は、C−C’の断面図である。 本発明の第3の実施形態に係るX線管で用いられる陰極の構造の例を拡大して示した図であり、(a)は、陽極側から見たときの正面図、(b)は、A−A’の断面図、(c)は、B−B’の断面図、(d)は、C−C’の断面図である。 本発明の第4の実施形態に係るX線管で用いられる陰極の構造の例を拡大して示した図であり、(a)は、陽極側から見たときの正面図、(b)は、A−A’の断面図、(c)は、B−B’の断面図、(d)は、C−C’の断面図である。 本発明の第5の実施形態に係るX線管で用いられる陰極の構造の例を拡大して示した図であり、(a)は、陽極側から見たときの正面図、(b)は、A−A’の断面図、(c)は、B−B’の断面図、(d)は、C−C’の断面図である。 本発明の第1〜第5の実施形態に係るX線管を用いた透過型X線撮影装置の構成の例を模式的に示した図である。 X線管の原理構成およびX線管の従来の一般的な駆動回路の例を示した図である。 従来の一般的なX線管の構造の例を示した図である。 従来の一般的なX線管で用いられる陰極の構造の例を拡大して示した図であり、(a)は、陽極側から見たときの正面図、(b)は、A−A’の断面図、(c)は、B−B’の断面図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の各図面において、共通する構成要素には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態に係るX線管101で用いられる陰極102aの構造の例を拡大して示した図であり、(a)は、陽極側から見たときの正面図、(b)は、A−A’の断面図、(c)は、B−B’の断面図、(d)は、C−C’の断面図である。なお、この陰極102aの構造を除けば、第1の実施形態に係るX線管の実質的な構造は、図10に示した従来の一般的なX線管101の構造と同じである。以下、図1では、陽極接地型のX線管を例に陰極102aの構造を説明するが、中性点接地型のX線管でもその陰極の構造は同様である。
図1に示すように、第1の実施形態に係る陰極102aは、電子を放出するフィラメント402と、陽極103に向かう電子を収束させるセラミックス製の収束体401aと、フィラメント402に電流を供給するリード403と、を含んで構成される。なお、本実施形態では、説明の煩雑さを避けるためにフィラメント402は1本で構成されるものとするが、従来の場合(図11参照)と同様に2本で構成されても構わない。
本実施形態では、収束体401aは、体積抵抗率が1010〜1012Ωcmのセラミックスで形成されているものとする。この場合のセラミックは、例えば、次の[1]〜[3]のような組成を有するものが好ましいが、これに限定されず、他の組成のものであってもよい。
[1]主原料のAl(アルミナ)に、Ti(チタン)の単体、酸化物または炭化物を20%以下混入したセラミックス。
[2]主原料のZrO(ジルコニア)に、30%以下のTe(鉄)の単体または酸化物と5%以下のY(イットリウム)の酸化物を混入したセラミックス。
[3]主原料のSiC(炭化ケイ素)に、1%以下のB(ホウ素)、Al(アルミナ)またはY(イットリア)を混入したセラミックス。
収束体401aは、全体を一体とした構造でも、複数部分に分割した構造でもよい。分割した構造である場合、分割した各部分を電気的に接続するために、接続箇所に対し、メタライズ、メッキ、導電性塗料の塗布などの処理を施しても構わない。
フィラメント402は、収束体401aの正面側に形成された溝部409の中に配設される。この溝部409の形状は、X線管101の使用用途に応じて、フィラメント402から放出される電子が陽極103に向かう電子ビームとして効果的に収束するように決定される。したがって、図1に示した溝部409の形状は一例であり、図示する形状に限定されない。
フィラメント402は、W(タングステン)を主成分とすることが好ましい。また、フィラメント402の形状として、図1では、らせん形状のものが図示されているが、他の形状であっても構わない。
フィラメント402の両端には、リード403が接続されており、リード403は、収束体401aに形成された孔部408を通って、収束体401aの裏面側に到る。なお、図1では図示されていないが、リード403は、X線管101(図10参照)のブッシング207に接続される。
また、図1には示されていないが、フィラメント402の一端と収束体401aの一端とは、電気的に接続されていてもよいし、フィラメント402の一端と収束体401aの一端との間に印加する電圧を外部から制御可能な構成であってもよい。
本実施形態では、前記したように、収束体401aを形成するセラミックスの適切な体積抵抗率の範囲を1010〜1012Ωcmとしているが、この範囲は、図2および図3に示す試験結果に基づき決定したものである。
図2は、図1に示した陰極102aの構造を有するX線管101の耐電圧試験の結果の例を示したグラフである。ここで、グラフの横軸は、収束体401aを形成するセラミックスの体積抵抗率であり、縦軸は、セラミックスの体積抵抗率が1015Ωcmの場合の耐電圧を1として規格化したときの規格化耐電圧である。
図2によれば、体積抵抗率が1010〜1012Ωcmの領域では、規格化耐電圧が1.8程度以上と、他の領域よりも大きくなっており、耐電圧の向上が認められる。これは、体積抵抗率が1010〜1013Ωcmの領域であれば、例えば、1015Ωcmのセラミックスに比べて異常放電が相当に抑制されていることを意味する。
図3は、収束体401a表面における最大誤差表面電圧の計測結果の例を示したグラフである。最大誤差表面電圧とは、収束体401aに印加された電圧と収束体401aの表面で計測された電圧との差の最大値をいう。なお、図3において、グラフの横軸は、収束体401aを形成するセラミックスの体積抵抗率であり、縦軸は、セラミックスの体積抵抗率が1015Ωcmの場合の最大誤差表面電圧を1としたときの規格化最大誤差表面電圧である。
図3によれば、収束体401aの体積抵抗率が1012Ωcm以下である場合には、収束体401aの規格化最大誤差表面電圧は、10−2すなわち測定感度以下となっている。一方、収束体401aの体積抵抗率が1015Ωcmである場合には、収束体401aの規格化最大誤差表面電圧は1と大きくなっている。これは、収束体401aの体積抵抗率が、例えば1013Ωcmを超えて大きくなると、収束体401aは誘電体としての性質が大きくなり、陽極103の電位の影響を受けて、局所的にせよ収束体401aの表面電圧に誤差が発生するからだと考えられる。そして、収束体401aの表面電圧に誤差が発生すると、場合によっては、フィラメント402から放出される電子を適切に加速し、適切に収束させることができなくなる可能性がある。
以上、図2および図3の結果に基づけば、収束体401aの体積抵抗率は、1010〜1012Ωcmの範囲が適切であるといえる。
すなわち、本実施形態では、適切な範囲の体積抵抗率を有するセラミックス製の収束体401aを採用することにより、異常放電が発生しにくいX線管101を実現することができる。ちなみに、本実施形態では、仕事関数の小さい金属製の収束体に比べると、真空中に電子が電界放出されにくくなるため、異常放電のきっかけの一つである電子放出が抑制される。また、セラミックスは金属に比べて体積抵抗率が高いため、収束体401a内を流れる電流が抑制されるため、異常放電が発生しにくくなるともいえる。さらには、体積抵抗率が大きい誘電体に比べると、陽極103によって収束体401a表面に誘起される電子を低減することができるので、その誘起電子をきっかけとする異常放電を抑制することができる。
<第2の実施形態>
図4は、本発明の第2の実施形態に係るX線管101で用いられる陰極102bの構造の例を拡大して示した図であり、(a)は、陽極側から見たときの正面図、(b)は、A−A’の断面図、(c)は、B−B’の断面図、(d)は、C−C’の断面図である。
図4に示すように、第2の実施形態における陰極102bの構造は、第1の実施形態における陰極102a(図1参照)の構造とほとんど同じであるが、セラミックス製の収束体401bが内部中空の略半球の殻状となっている点でのみ相違している。すなわち、本実施形態では、収束体401bは、第1の実施形態での収束体401aのうち陽極103と反対側から見た場合の内部が中空で略半球の殻状のセラミックスによって構成される。そして、この略半球の殻状の収束体401bでも、陽極103に対向する部分には、第1の実施形態の場合と同様に、フィラメント402が配設される溝部409が設けられ、リード403を通すための孔部408が設けられている。
また、この略半球の殻状の収束体401bは、第1の実施形態と同様の材料のセラミックスで形成され、同様の体積抵抗率1010〜1012Ωcmを有する。したがって、第2の実施形態でも、第1の実施形態と同様に、異常放電が発生しにくいX線管101を実現することができる。さらに、第2の実施形態では、収束体401bが略半球の殻状(内部が中空)であることから、収束体401bを軽量化することができ、X線管101のコストダウンを図ることができる。
なお、第2の実施形態でも、フィラメント402の一端と収束体401bの一端とは、電気的に接続されていてもよいし、フィラメント402の一端と収束体401aの一端との間に印加する電圧を外部から制御可能な構成であってもよい。
<第3の実施形態>
図5は、本発明の第3の実施形態に係るX線管101で用いられる陰極102cの構造の例を拡大して示した図であり、(a)は、陽極側から見たときの正面図、(b)は、A−A’の断面図、(c)は、B−B’の断面図、(d)は、C−C’の断面図である。
図5に示すように、第3の実施形態における陰極102cの構造は、第1の実施形態における陰極102a(図1参照)の構造とほとんど同じであるが、収束体401cがセラミックス収束体401pおよび金属収束体401qの2重構造となっている点で相違している。すなわち、本実施形態では、収束体401cは、金属収束体401qのうち、溝部409および陽極103と反対側の面を除く部分がセラミックス収束体401pで覆われたような構造をしている。
ここで、セラミックス収束体401pは、第1の実施形態での収束体401aと同様の材料のセラミックスで形成され、同様の体積抵抗率1010〜1012Ωcmを有する。また、金属収束体401qは、電気的な良導体であり、Fe(鉄)、Ni(ニッケル)などを主成分とする金属または合金であるのが好ましい。
そして、セラミックス収束体401pと金属収束体401qとは、機械的に接触してもよいし、接触しなくてもよい。また、両者が電気的に接続され、両者が同電位であってもよいし、両者が互いに絶縁され、両者には外部から制御可能な別々の電圧が印加されるものであってもよい。さらに、セラミックス収束体401pおよび金属収束体401qのそれぞれは、フィラメント402の一端と電気的に接続されていてもよいし、それぞれに、外部から制御可能な別々の電圧が印加されるものであってもよい。
また、それぞれ別に製造したセラミックス収束体401pおよび金属収束体401qを組み合わせる形で収束体401cを製造してもよいし、金属収束体401qの表面にセラミックの薄膜を形成することにより、収束体401cを製造してもよい。
以上のような構成の収束体401cを備えたX線管101は、第1の実施形態の場合と同様に、異常放電が発生しにくいX線管101を実現することができる。また、フィラメント402が配設される溝部409が金属収束体401q部分に形成されるため、その金属収束体401qを介してフィラメント402から発生する熱を外部に容易に逃がすことができるようになる。その結果、熱伝導率の低いセラミックス収束体401pが過熱して破損するなどの事故を抑制することができる。
<第4の実施形態>
図6は、本発明の第4の実施形態に係るX線管101で用いられる陰極102dの構造の例を拡大して示した図であり、(a)は、陽極側から見たときの正面図、(b)は、A−A’の断面図、(c)は、B−B’の断面図、(d)は、C−C’の断面図である。
図6に示すように、第4の実施形態における陰極102dの構造は、第2の実施形態における陰極102b(図4参照)とほとんど同様の構造を有しているが、略半球の殻状の収束体401bに偏向電極404a,404bが組み込まれている点で相違している。
偏向電極404a,404bは、フィラメント402の近傍に設けられる。そして、偏向電極404a,404bには、リード405a,405bを介して外部から制御可能な電圧が印加される。この電圧は、電子ビームを偏向させるための電界を発生させるためのものであり、フィラメント402が設けられている空間およびフィラメント402と陽極103との間の空間に、例えば、10V/m以上の電界を発生させるものであるとする。
なお、図6では、偏向電極404a,404bは、1組しか描かれていないが、X線管101の使用目的に応じて、収束体401bには複数組の偏向電極404a,404bが組み込まれていてもよい。また、偏向電極404a,404bの形状は、X線管101の使用目的に応じて適宜決定される。
以上、本実施形態では、収束体401bに偏向電極404a,404bを組み込んだことにより、フィラメント402で発生した電子による陽極103に向かう電子ビームの軌跡を適宜制御できるようになる。これにより、電子ビームが陽極103に衝突する位置を制御することが可能となり、さらには、陽極103で発生するX線の方向などを適宜制御することが可能になる。これは、X線管101に新たな機能が追加されることを意味するので、本実施形態では、第2の実施形態と同様の効果に加え、X線管101の適用先が拡大されるなどの効果を期待することができる。
<第5の実施形態>
図7は、本発明の第5の実施形態に係るX線管101で用いられる陰極102eの構造の例を拡大して示した図であり、(a)は、陽極側から見たときの正面図、(b)は、A−A’の断面図、(c)は、B−B’の断面図、(d)は、C−C’の断面図である。
図7に示すように、第5の実施形態における陰極102eの構造は、第2の実施形態における陰極102b(図4参照)とほとんど同様の構造を有しているが、略半球の殻状の収束体401bにコイル406aおよび鉄心406bが組み込まれている点で相違している。
コイル406aおよび鉄心406bは、フィラメント402の近傍に設けられる。そして、コイル406aには、図示しないリードを介して、外部から制御可能な電流を供給することが可能なようにされている。コイル406aに電流を流すことにより、フィラメント402が設けられている空間およびフィラメント402と陽極103との間の空間に、電子ビームを偏向させるための磁界を発生させることができる。なお、このとき、コイル406aに流す電流は、例えば、10−4T(テスラ)以上の磁界を発生させるものとする。
なお、図7では、コイル406aおよび鉄心406bの組が1組しか描かれていないが、X線管101の使用目的に応じて、収束体401bには、複数組のコイル406aおよび鉄心406bが設けられていてもよい。また、鉄心406bの形状は、X線管101の使用目的に応じて適宜決定される。
以上、本実施形態では、コイル406aおよび鉄心406bを組み込んだことにより、フィラメント402で発生した電子による陽極103に向かう電子ビームの軌跡を適宜制御できるようになる。これにより、電子ビームが陽極103に衝突する位置を制御することが可能となり、さらには、陽極103で発生するX線の方向などを適宜制御することが可能になる。これは、X線管101に新たな機能が追加されることを意味する。したがって、本実施形態では、第2の実施形態と同様の効果に加え、X線管101の適用先が拡大されるなどの効果も期待することができる。
なお、第4の実施形態および第5の実施形態では、偏向電極404a,404bまたはコイル406aおよび鉄心406bが第2の実施形態での収束体401bに組み込まれるものとしているが、これらが組み込まれる対象はこれに限定されない。偏向電極404a,404bまたはコイル406aおよび鉄心406bが組み込まれるのは、第1の実施形態での収束体401aや、第3の実施形態での収束体401cであってもよい。
<第6の実施形態>
図8は、本発明の第1〜第5の実施形態に係るX線管101を用いた透過型X線撮影装置1の構成の例を模式的に示した図である。透過型X線撮影装置1は、テーブル3上に載置された被写体7に上方に配置されたX線管101からX線6を照射し、被写体7を透過したX線6をテーブル3の下側に配置されたX線検出器2で検知することによって、被写体7のX線透過像を撮影する装置である。
ここで、X線管101は、X線管保持体5に保持され、被写体7の体軸方向および体軸に直交する方向に沿って自在に移動可能なように構成されている。また、X線管保持体5は、支柱4によりテーブル3または床に支持されるとともに、支柱4を伸縮させることにより、X線管101と被写体7との距離を調節可能に構成されている。さらに、X線管保持体5は、支柱4を被写体7の体軸を中心に傾斜または回転可能にも構成されている。
被写体7の撮影時に、X線管101を移動させたり、傾斜(回転)させたりする制御は、撮影制御装置10によって行われる。また、撮影制御装置10は、X線管101でのX線発生タイミングを制御するとともに、X線検出器2で取得されたX線の強度データに基づいて、被写体7のX線透過像を生成する。
当然ではあるが、本発明の第1〜第5の実施形態に係るX線管101は、医療用などで多用されているX線CT(Computed Tomography)装置にも適用することができる。X線CT装置は、透過型X線撮影装置1に被写体7の複数角度からのX線透過像取得機能を拡充した上で、被写体7の複数角度からのX線透過像を用いて、被写体7の断層撮影像を撮影する機能を追加したものである。
よって、本実施形態では、陰極からの異常放電が低減し、動作の信頼性が向上したX線管を用いた透過型X線撮影装置1やX線CT装置が実現される。
なお、本発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものでなく、さらに様々な変形例が含まれる。前記の実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために、詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成の一部で置き換えることが可能であり、さらに、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成の一部または全部を加えることも可能である。
1 透過型X線撮影装置(X線撮影装置)
2 X線検出器
3 テーブル
4 支柱
5 X線管保持体
6 X線
7 被写体
10 撮影制御装置
101 X線管
102,102a,102b,102c,102d,102e 陰極
103 陽極
104 直流発生装置
105 加熱変圧器
106 交流電源
107 1次巻線
108 2次巻線
203 ロータ
204 ステータ
205 ガラス容器
206 保護筐体
207,208 ブッシング
301 収束体
302,302a,302b フィラメント
303 リード
401a,401b,401c 収束体
401p セラミックス収束体
401q 金属収束体
402 フィラメント
403 リード
404a,404b 偏向電極
405a,405b リード
406a コイル
406b 鉄心
408 孔部
409 溝部

Claims (9)

  1. 陰極と陽極とを備え、前記陰極から放出される電子を、前記陰極と前記陽極の間に印加される高電圧で加速して前記陽極に衝突させ、その衝突によってX線を発生させるX線管であって、
    前記陰極は、前記電子を放出するフィラメントと、前記フィラメントから放出される前記電子を前記陽極に向かう電子ビームとして収束させる収束体と、を備えてなり、
    前記収束体の外側表面部の体積抵抗率が1010〜1012Ωcmであること
    を特徴とするX線管。
  2. 前記収束体は、体積抵抗率が1010〜1012Ωcmのセラミックスで形成されていること、
    を特徴とする請求項1に記載のX線管。
  3. 前記収束体は、内部が中空の殻状であること
    を特徴とする請求項2に記載のX線管。
  4. 前記収束体は、前記フィラメントが配設される溝部を有する金属収束体と、前記金属収束体の前記溝部を除いた部分の外側を覆うセラミックス収束体と、によって構成され、
    前記セラミックス収束体は、体積抵抗率1010〜1012Ωcmのセラミックスで形成されていること
    を特徴とする請求項1に記載のX線管。
  5. 前記陰極の前記フィラメントの近傍には、前記電子ビームを偏向させる電界を発生する偏向電極が設けられていること
    を特徴とする請求項1に記載のX線管。
  6. 前記陰極の前記フィラメントの近傍には、前記電子ビームを偏向させる磁界を発生するコイルおよび鉄心が設けられていること
    を特徴とする請求項1に記載のX線管。
  7. 前記フィラメントの一端と前記収束体の外側表面部の一端とは電気的に接続されていること
    を特徴とする請求項1に記載のX線管。
  8. 前記フィラメントの一端と前記収束体の外側表面部の一端との間には外部から制御可能な電圧が印加されること
    を特徴とする請求項1に記載のX線管。
  9. 請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のX線管を備えたこと
    を特徴とするX線撮影装置。
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