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JP6897970B2 - 大腸腫瘍の有無を検査する方法 - Google Patents

大腸腫瘍の有無を検査する方法 Download PDF

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Description

本発明は、検査対象者の患部(大腸癌や前癌病変が疑われる組織)以外の生体由来試料を用いた大腸腫瘍の有無を検査する方法や、かかる方法を実施するためのキットに関する。
厚生労働省が毎年行っている「人口動態統計」によれば、悪性新生物(癌)は、日本人の死因の1位を占めており、2位が心疾患、3位が肺炎である。平成25年度統計結果では、癌による死亡者数は年間36万人を超え、ほぼ3人に1人が癌で死亡していることになる。
厚生労働省は、癌による死亡者数は、2020年には約45万人以上にまで増加する可能性があるとしている。そして、癌による死亡率(人口10万人に対して)を臓器別に見ると、大腸癌(結腸癌と直腸癌の合計)は、胃癌に次いでワースト2位で、男女別にみると、男性では胃癌に次いでワースト2位、女性では胃癌を上回り、ワースト1位であり、死因における大腸癌の持つ意味も重大である。
大腸癌は、その罹患率も死亡率も増加傾向にあり、これらの割合を年齢別にみると、男女ともに50歳代から増加し始め、年齢が高くなるにつれて右肩上がりに増加する傾向がある。大腸癌の増加には、高齢化の進展と食生活の欧米化が関与しているのではないかと考えられている。「がん・統計白書」によれば、2015年から2019年までに大腸癌になる人の割合(有病率)は、男性が25万4900人、女性が18万4800人となり、大腸癌によって死亡する人は、男性が2万5800人、女性が2万1900人になると予測されている。
盲腸、結腸、直腸に発生する大腸腫瘍は、良性腫瘍である大腸腺腫や、悪性度が高く転移性を有する場合もある大腸癌を含む概念であるが、なかでも大腸癌は、我が国において現状2番目に罹患者数の多い癌疾患であって、多くは消化管内面の粘膜上皮細胞の突然変異によって生じることが知られている。粘膜上皮細胞の癌化の主因は細胞増殖を制御するゲノムDNA上の変異であると考えられており、その他環境因子(リスク因子)、遺伝などが癌化に影響する因子として知られている。
大腸腫瘍の進行は、大腸正常組織に大腸腺腫が増殖することや、前癌状態にある大腸腺腫が新たに癌化することや、癌部より転移した癌細胞が非癌部大腸組織中で増殖して新たに大腸癌組織が形成されることを含む。
大腸癌は、進行しても自覚症状がないことが多いが、早期であればほぼ完全に治癒するため、自覚症状のない早期に発見することが重要となる。
まれに、家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis:FAP)といわれる常染色体優性遺伝の遺伝疾患がある。この疾患の原因遺伝子はAPC遺伝子であり、この疾患の場合、大腸に徐々に多数の腫瘍を含むポリープが発生し、最終的には大腸癌となる。ポリープが発生し始めるのは10歳前後であり、以降は時間の経過とともに数と大きさが増大する。このポリープから大腸癌が発生する。15歳前後から癌の発生が見られ、40歳では50%、60歳ではほぼ100%の患者に大腸癌を発生することが判明している。治療法としては、基本的に20歳以前に大腸粘膜を全摘することであるが、特有な症状がないため気づかないことが多く、気づいた時には既に致命的な状態になってしまうことになる。
家族にFAPの患者がいる場合は早期から定期的に検査をして極力早期診断・治療ができるように試みることが必要である。一方、孤発例の場合は、家族に症例がないため定期検査をすることもなく、10歳ころからポリープが発生しても気づかずに、致命的な事態を迎えてしまうことになりかねないため、早期発見の重要性が非常に大きい。そのためには一般的な健康診断でも発見できるように、より簡便で感度の高い検査法の開発が強く望まれている。
このように、多くの癌と同様、大腸癌も早期の発見がその治療にとっては何より重要であり、これまでに多くの検査手法が開発されてきた。主な検査手法としては便潜血検査、血液検査、直腸指診、大腸内視鏡を用いた診断などがあるが、よく用いられる便潜血検査は早期の癌の検出感度に問題があり、血液検査(血中に含まれる腫瘍マーカー検査)も進行癌でしか陽性にならないという問題があり、また、直腸指診は指の届く範囲内しか診断できないという問題、大腸内視鏡による診断も視認しにくい早期の癌では検出感度が落ちるという問題、等々、それぞれの検査手法においては、特に早期の癌に対する検出感度に関して根本的な課題があった。
この癌の初期段階においては、まず細胞のゲノムDNAに変異が生じ、その後複数の遺伝子変化を含む多様な事象が蓄積して、段階的に悪性化し癌化するという癌化の多段階説に着目して、DNAや発現産物であるRNAの変異、この中でもDNAのメチル化を癌化の指標にするという癌の検出方法も開発されてきた。
特許文献1においては癌化と関係のあるヒトDNA配列が開示されており、また、特許文献2においてはAPC、K−ras及びp53遺伝子の変異を指標とする大腸癌の検出方法が、特許文献3においてはAPC及び/又はDCC遺伝子のメチル化を指標とする消化器癌の検出方法等が開示されているが、いずれの手法においても検出感度や特異性、コストの面などで問題があり、臨床的には実用化に至っていないのが現状であった。
本発明で着目している遺伝子の一つであるTWIST1遺伝子は、ショウジョウバエDrosophila melanogasterの形態形成に関与する転写調節因子TWISTのヒトホモログとして単離された遺伝子であり、H−TWISTやTWIST homolog of Drosophilaの名でも呼ばれる遺伝子である。その実体はBasic helix-loop-helix(bHLH)タイプの転写調節因子であり、一般に発生時における細胞の系譜や分化に関与すると考えられている。TWIST1遺伝子そのもの(コード領域)に生じる変異がSeathre-Chotzen syndromeの原因になることが知られ、近年では上咽頭癌細胞のタキソール耐性獲得に関与していることが示唆されている。
他方、乳癌患者等における研究において、メチル化感受性PCR又はメチル化特異的PCR(MSP)やQ−PCR法等を用いて、Twist等の各種癌関連遺伝子で高いメチル化が示されたこと(非特許文献1及び2)などが報告されており、また、DNAメチル化阻害剤、脱メチル化剤、及びDNAメチルトランスフェラーゼ活性のアンタゴニストから選ばれるメチル化調節剤を、定型又は悪性細胞を含む異常な乳管上皮細胞を有する患者の乳管に投与する方法が報告されている(特許文献4)。
しかし、例えば少なくとも一つのCGジヌクレオチドを含むプライマーが使用され、そのうちの一つが3’末端に位置するプライマーが必要とされるメチル化感受性PCR(MSP)法では、メチル化された配列を検出することには優れるが、定量的な検出には向かなかった。
本件発明者らは、消化器系癌、特に胃癌や大腸癌の組織検体から抽出したDNAを試料として、重亜硫酸塩(亜硫酸水素ナトリウム)処理したのちに、メチル化定量解析技術の1つであるCOBRA(Combined Bisulfite Restriction Analysis)アッセイを行い、癌組織でTWIST1遺伝子プロモーター領域にメチル化が高頻度に起きていることを、他に先駆けて見出した(大腸癌組織検査法:特許文献5)。
この方法では、重亜硫酸塩処理したDNAにおいては、非メチル化CpGはシトシンからウラシルへと変換されるが、メチル化されたシトシンではこの変換が起こらないという現象を利用している。このため、DNA試料を重亜硫酸塩処理したあと、PCRで増幅後に特定の制限酵素で処理することで、メチル化DNAを鋳型にしたPCR産物は切断されるが、非メチル化DNAを鋳型にしたPCR産物はシトシンがウラシルに変換されることにより切断されないという差を検出する事が可能となり、メチル化DNAと非メチル化DNAの定量を行うことができる。つまり工程としては、(1)被検体組織サンプルからDNAを抽出する、(2)抽出したDNA試料を重亜硫酸塩処理する、(3)PCRで増幅させる、(4)制限酵素処理をする、(5)電気泳動する。(6)電気泳動画像を定量評価する、との構成からなる。
しかしながら、この方法は、上記TWIST1遺伝子のメチル化検査のために組織サンプルを必要とする検査法であって、当該サンプルを得るために、組織採取という侵襲的な外科的な処置を行わなければならない。その様な処置は対象者の苦痛を伴い、さらに時間もコストもかかり、特にメチル化の程度が低濃度の場合は定量性に欠けるなどの要因から、上記大腸癌組織検査法は研究室レベルの優れた検査方法ではあっても、実用的な検査方法とはいえず、ましてや簡便なスクリーニングとしての検査方法という観点からは、ほど遠いものであった。
TWIST1遺伝子以外にも大腸癌スクリーニングに関連する遺伝子の研究が進んでおり、例えばBMP3遺伝子、NDRG4遺伝子、及びKRAS遺伝子は、それぞれの遺伝子のメチル化が便潜血検査による大腸癌のスクリーニングの指標として用いられており(非特許文献3)、また、SEPT9遺伝子は、血漿中におけるその遺伝子のメチル化が結腸癌のスクリーニングの指標となることが報告されている(特許文献6)。
しかしながら、非特許文献3に記載の方法における上記遺伝子を用いた大腸癌のスクリーニングにおいては、便潜血検査と便DNA検査を組み合わせることが必要であった。また、便DNA検査に排出便すべての便検体が必要であるという問題があると共に、実際の臨床検査として運用するには衛生面、検体運搬面での負担が必要となるということや、BMP3遺伝子、NDRG4遺伝子、及びKRAS遺伝子という複数の遺伝子のメチル化を測定するために高価になるという問題があった。また、特許文献6に記載の方法における上記遺伝子を用いた大腸癌のスクリーニングにおいては、血漿検体を用いているが、血漿検体は血清検体に比べて、上澄み成分の採取時、血球成分を採取しないように慎重に作業を行う必要があるので手間がかかり、さらに検体量を3.5mLも必要とするという問題があった。
ところで、簡便な大腸癌検査といえば、前述したように、健康診断で行う大腸癌一次スクリーニングである便潜血検査(FOBT= Fecal Occult Blood Test)がよく普及している。これは食事制限がなく、苦痛を伴わず簡単にできる検査で、簡便性にとても優れてはいるが、検査感度が13−24%と低いという報告もある。また、便潜血検査で陽性となった陽性者33万人のうち32万人はその後の検査で大腸癌ではなかったという報告もあり、この場合、便潜血検査陽性者の大部分は大腸癌ではないにも拘わらず、次のステップである精密検査へと進まなければならないという事態に追込まれてしまうのである。
また、便潜血検査陽性者が次に行う精密検査としては、大腸内視鏡検査、注腸X線検査、あるいは血液検査が通常である。このうち、大腸内視鏡検査は、病変部を直接観察できることが大きな特徴で、病変部の位置や大きさが判断でき、さらに、内視鏡下で組織を採り、病理診断や小さな腺腫であれば同時に治療まで可能であるが、苦痛を伴い、検査としては高額である。また、注腸X線検査は、大腸に肛門からバリウム(造影剤)と空気を注入してX線撮影を行う検査であり、検査後のバリウム排泄がうまくいかない場合は、大腸内視鏡検査以上に、苦痛を伴う検査である。
このように、一次スクリーニングとして行われている便潜血検査は、苦痛も少なく簡便であるが、検査自体の感度や特異度に問題があり、この検査で陽性となった場合、大腸癌の可能性は低いにもかかわらず、次のステップで行われる精密検査が、侵襲的で高価であり、精神的にも肉体的にもコスト的にも負担が大きいという問題があった。また、当該便潜血検査は、大腸癌の可能性を診断する方法であって、この方法による一次スクリーニングでは、前癌状態の大腸腺腫や、ごく初期の大腸癌は検出できずに見逃してしまう確率が大きいという問題があった。
特表2004−527245号公報 特開2007−274926号公報 特開2006−166732号公報 特開2009−96808号公報 国際公開第2010/113529号パンフレット 特表2014−520520号公報
Evron E.et al.2001. Detection of breast cancer cells in ductal lavage fluid by methylation-specific PCR.The Lancet 357:1335-1336. Fackler M.J.et al.2003. DNA methylation of RASSF1A,HIN-1,RAR-b,CYCLIN D2 and TWIST in in situ and invasive lobular breast carcinoma.Int.J.Cancer 107:970-975. Thomas F. Imperiale et al.2014. Multitarget Stool DNA Testing for Colorectal-Cancer Screening. N Engl J Med 370:1287-1297 April 3
本発明の課題は、上記の現状に鑑み、非侵襲的でコストも安く、簡便な方法で、高感度かつ高特異度を有するDNAメチル化を指標とした、大腸腫瘍、具体的には大腸癌又は大腸腺腫の有無の一次スクリーニング検査方法及びこれを実施するためのキットを提供することにある。
従来メチル化の程度の測定は、上記したように、DNAを重亜硫酸塩処理後にメチル化レベル測定を行っていた。DNAの重亜硫酸塩処理により非メチル化シトシンはウラシルに変換され、メチル化シトシンはシトシンのまま不変である。このようにメチル化の有無により塩基配列が変化するという性質を利用して各種メチル化アッセイを実施するのが現在の主流であり、以下の様な工程を含む処理を行って、メチル化定量分析を行っていた。
DNAの亜硫酸水素ナトリウム処理を行う従来例(特許文献5)では、メチル化定量方法として、COBRA(Combined Bisulfite Restriction Analysis)アッセイを用いた。工程としては、(1)外科的切除組織からのDNA抽出、(2)DNAの重亜硫酸塩処理(DNA中のCpG配列における非メチル化シトシンをウラシルに変換)、(3)DNAの精製、(4)重亜硫酸塩処理DNAのメチル化特異的PCR、(5)PCR産物の制限酵素BstUI処理、(6)電気泳動、(7)メチル化定量分析、である。
従来のDNAの重亜硫酸塩処理は、より詳細には以下の態様であって、煩雑な手技であった。
メチル化DNAを修飾し、重亜硫酸塩PCR法での解析に供するため、亜硫酸水素ナトリウム処理を行った。上記で精製したDNA2μgに蒸留水を加えて全量を50μLとし、5.5μLの2M NaOHを加えて後、37度で10分間インキュベートした。30μLの10mMヒドロキノン(Sigma社)と520μLの3M 亜硫酸水素ナトリウム(pH5.0,Fisher Scientific)を加え、遮光下で50度、16時間インキュベートした。亜硫酸水素ナトリウム処理したDNA試料を、DNA Cleanup Kit(Promega社)を用いて精製した。精製方法は用法に従った。精製したDNAに3M NaOHを5.5μL添加後、5分間インキュベートし、20mg/mLグリコーゲンを1μL、10M 酢酸アンモニウムを33μL、100%エタノールを260μL添加してエタノール沈澱を行い、エタノール沈澱後に真空乾燥でDNAをペレットにし、これに100μLの蒸留水を加え、30分間ボルテックスを行い溶解させた後、4度にて一晩おき溶解させて、重亜硫酸塩処理DNA試料とした。
なお、上述したように、非メチル化CpGは重亜硫酸水素ナトリウム処理によりシトシンからウラシルへと変換されるが、メチル化されたシトシンではこの変換が起こらない。このため、制限酵素BstUI処理によって、メチル化「CGCG」を鋳型にしたPCR産物は切断されるが、非メチル化「CGCG」を鋳型にしたPCR産物は切断されないという差を検出する方法である。
本発明者らは、便検体から抽出したDNA(以下「便DNA」ともいう。)のメチル化解析を、上記重亜硫酸塩処理後のDNAで行っていたが、この方法には、簡便な検査を目的とする場合、以下のような大きな問題があることが判明した。
つまり、DNAを重亜硫酸塩処理した場合、この処理により、もともと少量であった糞便からの抽出DNA量が一層減少(およそ90%減少)し、さらにDNAが1本鎖の状態になるため構造的に不安定になり、特に、DNA濃度が低い場合は加水分解しやすいことからメチル化解析には適切ではなく、解析のためには多量のDNAが必要であるという問題である。たとえば、定量PCRを行う場合には少なくとも10コピーなければ検出されないが、重亜硫酸塩処理で90%ほどDNAが減少することを考慮すると、被検試料に少なくとも100コピーが必要になるため、被検試料が大量に必要となる。
このように、便から回収されるヒトDNAは、微量(低濃度)なため、重亜硫酸塩処理により更なる収量の減少やDNAの分解を来すため、その後のメチル化解析が非常に困難であるという問題があった。便DNAでの簡便な検査を実用化するためには、重亜硫酸塩処理を行わずにメチル化の程度が検出可能なメチル化遺伝子解析技術(メチル化遺伝子測定系)の確立が必要であることが判明した。
そこで本発明者らは、鋭意研究を進めた結果、便又は血清の検体を用い、メチル化TWIST1測定(TWIST1遺伝子の開始コドンより上流領域のメチル化の程度(頻度等)の測定)、メチル化BMP3測定(BMP3遺伝子の開始コドンより上流領域のメチル化の程度(頻度等)の測定)、メチル化NDRG4測定(NDRG4遺伝子の転写開始点より上流領域のメチル化の程度(頻度等)の測定)、メチル化SEPT9測定(SEPT9遺伝子コードする領域の一部のメチル化の程度(頻度等)の測定)を、重亜硫酸塩処理を行わず、所定のメチル化感受性制限酵素処理工程を経て行うことで、被検対象における大腸腫瘍の有無を予測できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下に示すとおりのものである。
(1)被検対象における大腸腫瘍の有無を予測する方法であって、以下の工程(a)〜(d)を順次備え、重亜硫酸塩処理を行わないことを特徴とする方法。
(a)被検対象から採取した生体試料中のDNAを抽出する工程;
(b)工程(a)により得られたDNAを、メチル化感受性制限酵素で処理する工程;
(c)工程(b)によりメチル化感受性制限酵素で処理したDNAにおけるTWIST1遺伝子、BMP3遺伝子、NDRG4遺伝子、又はSEPT9遺伝子をコードする領域、前記各遺伝子のいずれかの遺伝子の開始コドンより−1〜−1100領域、又は前記各遺伝子のいずれかの遺伝子の転写開始点より−300〜−500領域の一部を増幅し、該増幅したDNA内の1又は2以上CpG配列のメチル化の程度を測定する工程;
(d)工程(c)で測定したメチル化の程度が所定値以上の場合に、被検対象において大腸腫瘍が有ると予測し、該メチル化の程度が所定値未満の場合に、被検対象において大腸腫瘍が無いと予測する工程;
(2)メチル化感受性制限酵素が、HhaI、HpaII、BstUI、Hpy99I、SacII、SmaI、BssHII、NaeI、RsrII、NotIから選択される少なくとも1種であることを特徴とする上記(1)記載の方法。
(3)工程(b)が、
(b−1)HhaI、HpaII、BstUI、Hpy99I、SacII、SmaI、BssHII、NaeI、RsrII、NotIから選択される少なくとも1種のメチル化感受性制限酵素で処理する工程;
(b−2)工程(b−1)の後、さらにHhaI、HpaII、BstUI、Hpy99I、SacII、SmaI、BssHII、NaeI、RsrII、NotIから選択される少なくとも1種で、かつ工程(b−1)で用いたメチル化感受性制限酵素と異なるメチル化感受性制限酵素で処理する工程;
の2段階の工程であることを特徴とする上記(2)記載の方法。
(4)工程(b−1)が、HhaI、HpaII及びエキソヌクレアーゼI(ExoI)で処理する工程であり、工程(b−2)が、BstUIで処理する工程であることを特徴とする上記(3)記載の方法。
(5)工程(c)においてDNAの増幅をデジタルPCRによって行うことを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか記載の方法。
(6)工程(c)におけるTWIST1遺伝子、BMP3遺伝子、NDRG4遺伝子又はSEPT9遺伝子をコードする領域、前記各遺伝子のいずれかの遺伝子の開始コドンより−1〜−1100領域、又は前記各遺伝子のいずれかの遺伝子の転写開始点より−300〜−500領域の一部が、次の(c1)−(c4)のいずれかであることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか記載の方法。
(c1)配列番号10に示すchr7:19,157,854-19,157,945;
(c2)配列番号20に示すchr4:81,952,106-81,952,183;
(c3)配列番号21に示すchr16:58,497,096-58,497,237;
(c4)配列番号22に示すchr17:75,369,566-75,369,627;
(7)工程(c)におけるTWIST1遺伝子、BMP3遺伝子、NDRG4遺伝子又はSEPT9遺伝子をコードする領域、前記各遺伝子のいずれかの遺伝子の開始コドンより−1〜−1100領域、又は前記各遺伝子のいずれかの遺伝子の転写開始点より−300〜−500領域の一部の増幅を、次の(c5)−(c8)のいずれかのプライマー対及びプローブのセットを用いて行うことを特徴とする上記(6)記載の方法。
(c5)配列番号4及び5で示されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対及び配列番号6で示されるオリゴヌクレオチドからなるプローブのセット;
(c6)配列番号11及び12で示されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対及び配列番号13で示されるオリゴヌクレオチドからなるプローブのセット;
(c7)配列番号14及び15で示されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対及び配列番号16で示されるオリゴヌクレオチドからなるプローブのセット;
(c8)配列番号17及び18で示されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対及び配列番号19で示されるオリゴヌクレオチドからなるプローブのセット;
(8)被検対象から採取した生体試料が被検対象から採取した便であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれか記載の方法。
(9)工程(c)で測定したメチル化の程度と、便潜血検査結果と組み合わせて、被検対象における大腸腫瘍の有無を予測することを特徴とする、上記(1)〜(8)いずれか記載の方法。
(10)被検対象から採取した生体試料中のDNAにおけるTWIST1遺伝子、BMP3遺伝子、NDRG4遺伝子又はSEPT9遺伝子をコードする領域、前記各遺伝子のいずれかの遺伝子の開始コドンより−1〜−1100領域、又は前記各遺伝子のいずれかの遺伝子の転写開始点より−300〜−500領域の一部の1又は2以上CpG配列のメチル化の程度を測定するキットであって、以下の(e)〜(h)を備えることを特徴とする大腸腫瘍検査用キット。
(e)被験体中のゲノムDNAを抽出するための試薬;
(f)前記ゲノムDNAを処理するためのメチル化感受性制限酵素;
(g)前記ゲノムDNA中のTWIST1遺伝子、BMP3遺伝子、NDRG4遺伝子又はSEPT9遺伝子をコードする領域、前記各遺伝子のいずれかの遺伝子の開始コドンより−1〜−1100領域、又は前記各遺伝子のいずれかの遺伝子の転写開始点より−300〜−500領域の一部を増幅するためのプライマー及びプローブセット;
(h)メチル化の程度を分析するための試薬;
(11)工程(g)のTWIST1遺伝子、BMP3遺伝子、NDRG4遺伝子又はSEPT9遺伝子をコードする領域、前記各遺伝子のいずれかの遺伝子の開始コドンより−1〜−1100領域、又は前記各遺伝子のいずれかの遺伝子の転写開始点より−300〜−500領域の一部が、次の(c1)〜(c4)のいずれかであることを特徴とする上記(10)記載のキット。
(c1)配列番号10に示すchr7:19,157,854-19,157,945;
(c2)配列番号20に示すchr4:81,952,106-81,952,183;
(c3)配列番号21に示すchr16:58,497,096-58,497,237;
(c4)配列番号22に示すchr17:75,369,566-75,369,627;
(12)工程(g)のプライマー・プローブセットが、次の(c5)〜(c8)のいずれかであることを特徴とする上記(10)又は(11)記載のキット。
(c5)配列番号4及び5で示されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対及び配列番号6示されるオリゴヌクレオチドからなるプローブのセット;
(c6)配列番号11及び12で示されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対及び配列番号13で示されるオリゴヌクレオチドからなるプローブのセット;
(c7)配列番号14及び15で示されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対及び配列番号16で示されるオリゴヌクレオチドからなるプローブのセット;
(c8)配列番号17及び18で示されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対及び配列番号19で示されるオリゴヌクレオチドからなるプローブのセット;
(13)被検対象から採取した生体試料が被検対象から採取した便であることを特徴とする上記(10)〜(12)のいずれか記載のキット。
(14)さらに、便潜血検査用容器及び試薬を含むことを特徴とする上記(13)記載のキット。
本発明を用いれば、便や血清等の生体試料から得られた微量のDNAでも、重亜硫酸塩処理を行わず、簡便でかつ、高い信頼性を持って、大腸腫瘍の有無を検査できる。本件解析技術を用いれば、便潜血検査と同じ便検体を用いて、あるいは、凍結保存しておいた便検体を用いて、大腸腫瘍の有無をスクリーニング検査できる。
さらに、測定したメチル化の程度と便潜血検査結果とを組み合わせて大腸腫瘍の有無を予測する「組合せ検査法」であれば、改めて便検体を採取することなく、便潜血検査用の便検体を共通利用(再利用)して、大腸腫瘍の有無に関してより感度や特異度の高い検査結果を出すことができ、簡便で、高い信頼性があり、コストも安価な大腸癌一次スクリーニング方法とすることができる。
以上の様に、本発明を利用することにより、便潜血検査単独スクリーニングに比べて、高感度かつ高い特異度で、大腸腫瘍の有無を予測することができ、あるいは、早期発見がその後の予後に大きく影響する大腸癌や進行腺腫、粘膜内癌の有無を予測することが可能となる。
更に、この方法を実施するためのキットを用いることにより、簡便に大腸腫瘍の有無を予測する検査が可能となる。
<条件1>種々のメチル化レベルのDNAを用いて、一段階酵素処理、つまり、HhaI、HpaII、ExoI、BstUIで同時処理した場合の電気泳動の結果を示す。 <条件2>種々のメチル化レベルのDNAを用いて、複合型酵素処理、つまり、HhaI、HpaII、ExoI処理後にBstUIで処理した場合の電気泳動の結果を示す。 デジタルPCRでの定量結果を示す。図3Aは、種々のメチル化レベルのDNAを用いて、デジタルPCRにより測定したメチル化TWIST1及びコントロール遺伝子(hTERT)のコピー数、図3Bはコピー数比(メチル化TWIST1コピー数/hTERTコピー数)を示す。 定量的信頼性を示すデジタルPCR生データ。1つのドットが1つのドロップレットの蛍光量を示す。図4Aはメチル化TWIST1遺伝子に関する。図4Bは、コントロール遺伝子(hTERT)に関する。 本発明の実施態様をチャートで示す。 コントロール群、Non-advanced adenoma(非進行腺腫)患者群、Advanced adenoma/Tis(進行腺腫又は粘膜内癌)患者群、CRC(大腸癌)患者群からの便検体DNAにおけるメチル化TWIST1コピー数の比較を群別に比較した結果を表に示す。 図6の結果を、グラフで表す。 カットオフ値1以上でのメチル化TWIST1陽性率を示す。図8Aは、カットオフ値1以上とした時のコントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群の各便検体DNAにおけるメチル化TWIST1陽性率をグラフで示す。図8Bはカットオフ値1以上とした時のコントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群の各便検体DNAにおけるメチル化TWIST1陽性検体数及び陰性検体数を表で示す。図8Cは、カットオフ値1以上とした時のコントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群の各便検体DNAにおけるメチル化TWIST1感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率を示す表である。 カットオフ値2以上でのメチル化TWIST1陽性率を示す。図9Aは、カットオフ値2以上とした時のコントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群の各便検体DNAにおけるメチル化TWIST1陽性率をグラフで示す。図9Bは、カットオフ値2以上とした時のコントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群の各便検体DNAにおけるメチル化TWIST1陽性検体数及び陰性検体数を表で示す。図9Cは、カットオフ値2以上とした時のコントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群の各便検体DNAにおけるメチル化TWIST1感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率を示す表である。 カットオフ値5以上でのメチル化TWIST1陽性率を示す。図10Aは、カットオフ値5以上とした時のコントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群の各便検体DNAにおけるメチル化TWIST1陽性率をグラフで示す。図10Bは、カットオフ値5以上とした時のコントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群の各便検体DNAにおけるメチル化TWIST1陽性検体数及び陰性検体数を表で示す。図10Cは、カットオフ値5以上とした時のコントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群の各便検体DNAにおけるメチル化TWIST1感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率を示す表である。 便潜血検査データを示す。図11Aは、コントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群の便検体における各々の潜血陽性(+)率をグラフで示す。図11Bは、コントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群の各便検体における潜血陽性(+)検体数及び潜血陰性(−)検体数を表で示す。図11Cは、コントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群の各便検体における潜血検査の感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率を示す表である。 便潜血検査(FOBT)と便DNAメチル化TWIST1検査との組合せ検査における、FOBT(+) and/or メチル化TWIST1コピー数1以上で陽性とした場合のデータを示す。図12Aは、コントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群の各便検体における、FOBT(+) and/or メチル化TWIST1コピー数1以上で陽性とした場合の、組合せ検査での陽性(Yes)率をグラフで示す。図12Bは、コントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群の各便検体における、FOBT(+) and/or メチル化TWIST1コピー数1以上で陽性とした場合の、組合せ検査での陽性(Yes)検体数及び陰性(No)検体数を表で示す。図12Cは、コントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群の各便検体における、FOBT(+) and/or メチル化TWIST1コピー数1以上で陽性とした場合の、組合せ検査の感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率を示す。 便潜血検査(FOBT)と便DNAメチル化TWIST1検査との組合せ検査における、FOBT(+) and/or メチル化TWIST1コピー数2以上で陽性とした場合のデータ。図13Aは、コントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群の各便検体における、FOBT(+) and/or メチル化TWIST1コピー数2以上で陽性とした場合の、組合せ検査での陽性(Yes)率をグラフで示す。図13Bは、コントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群の各便検体における、FOBT(+) and/or メチル化TWIST1コピー数2以上で陽性とした場合の、組合せ検査での陽性(Yes)検体数及び陰性(No)検体数を表で示す。図13Cは、コントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群の各便検体における、FOBT(+) and/or メチル化TWIST1コピー数2以上で陽性とした場合の、組合せ検査の感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率を示す。 便潜血検査(FOBT)と便DNAメチル化TWIST1検査との組合せ検査における、FOBT(+) and/or メチル化TWIST1コピー数5以上で陽性とした場合のデータ。図14Aは、コントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群の各便検体における、FOBT(+) and/or メチル化TWIST1コピー数5以上で陽性とした場合の、組合せ検査での陽性(Yes)率をグラフで示す。図14Bは、コントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群の各便検体における、FOBT(+) and/or メチル化TWIST1コピー数5以上で陽性とした場合の、組合せ検査での陽性(Yes)検体数及び陰性(No)検体数を表で示す。図14Cは、コントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群の便検体における、FOBT(+) and/or メチル化TWIST1コピー数5以上で陽性とした場合の、組合せ検査の感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率を示す。 コントロール群、Non-advanced adenoma(非進行腺種)患者群、Advanced adenoma/Tis(進行腺腫又は粘膜内癌)患者群、CRC(大腸癌)患者群からの便検体DNAにおけるメチル化TWIST1コピー数及びコピー数比を群別に比較した結果をグラフで表す。図15Aは縦軸をコピー数、図15Bは縦軸をコピー数比(メチル化TWIST1コピー数/hTERTコピー数)で表したものである。また、グラフ中、数字はMann−Whitney検定によるP値を示す(後述の図20、22、24、26、28も同様)。 図15のデータに基づき、コントロールに対する、非進行腺腫患者群、進行性腺腫/粘膜内癌患者群、及び、進行性腺腫/粘膜内癌患者群それぞれとのROC曲線を作成した結果を示す。図16Aはコントロールに対する非進行腺腫患者群、図16Bはコントロールに対する進行性腺腫/粘膜内癌患者群、図16Cはコントロールに対する大腸癌群である(後述の図21、23、25、27、29も同様)。 デジタルPCRでの定量結果を示す。図17Aは、種々のメチル化レベルのDNAを用いて、デジタルPCRにより測定したメチル化BMP3及びコントロール遺伝子(hTERT)のコピー数、図17Bはコピー数比(メチル化BMP3コピー数/hTERTコピー数)を示す。 デジタルPCRでの定量結果を示す。図18Aは、種々のメチル化レベルのDNAを用いて、デジタルPCRにより測定したメチル化NDRG4及びコントロール遺伝子(hTERT)のコピー数、図18Bはコピー数比(メチル化NDRG4コピー数/hTERTコピー数)を示す。 デジタルPCRでの定量結果を示す。図19Aは、種々のメチル化レベルのDNAを用いて、デジタルPCRにより測定したメチル化SEPT9及びコントロール遺伝子(hTERT)のコピー数、図19Bはコピー数比(メチル化SEPT9コピー数/hTERTコピー数)を示す。 コントロール群、非進行腺種患者群、大腸進行腺腫又は粘膜内癌患者群、大腸癌患者群からの便検体DNAにおけるメチル化BMP3コピー数又はコピー数比を群別に比較した結果をグラフで表す。図20Aは縦軸をコピー数、図20Bは縦軸をコピー数比(メチル化BMP3コピー数/hTERTコピー数)で表したものである。 図20のデータに基づき、コントロールに対する、非進行腺腫患者群、進行腺腫/粘膜内癌患者群、及び、ステージ1〜4大腸癌(CRC)患者群それぞれとのROC曲線を作成した結果を示す。 コントロール群、非進行腺種患者群、進行腺腫又は粘膜内癌患者群、大腸癌患者群からの便検体DNAにおけるメチル化NDRG4コピー数又はコピー数比を群別に比較した結果をグラフで表す。図22Aは縦軸をコピー数、図22Bは縦軸をコピー数比(メチル化NDRG4コピー数/hTERTコピー数)で表したものである。 図22のデータに基づき、コントロールに対する、非進行腺腫患者群、進行腺腫/粘膜内癌患者群、及び、ステージ1〜4大腸癌患者群それぞれとのROC曲線を作成した結果を示す。 コントロール群、大腸非進行腺種患者群、大腸進行腺腫又は粘膜内癌患者群、大腸癌患者群からの便検体DNAにおけるメチル化SEPT9コピー数又はコピー数比を群別に比較した結果をグラフで表す。図24Aは縦軸をコピー数、図24Bは縦軸をコピー数比(メチル化SEPT9コピー数/hTERTコピー数)で表したものである。 図24のデータに基づき、コントロールに対する、非進行腺腫患者群、進行腺腫/粘膜内癌患者群、及び、ステージ1〜4大腸癌患者群それぞれとのROC曲線を作成した結果を示す。 コントロール群、大腸非進行腺種患者群、大腸進行腺腫又は粘膜内癌患者群、大腸癌患者群からの血清セルフリーDNAにおけるメチル化TWIST1コピー数又はコピー数比を群別に比較した結果をグラフで表す。図26Aは縦軸をコピー数、図26Bは縦軸をコピー数比(メチル化TWIST1コピー数/hTERTコピー数)で表したものである。 図26のデータに基づき、コントロールに対する、非進行腺腫患者群、進行腺腫/粘膜内癌患者群、及び、ステージ1〜4大腸癌患者群それぞれとのROC曲線を作成した結果を示す。 コントロール群、大腸非進行腺種患者群、大腸進行腺腫又は粘膜内癌患者群、大腸癌患者群からの血清セルフリーDNAにおけるメチル化NDRG4コピー数比(メチル化NDRG4コピー数/hTERTコピー数を群別に比較した結果をグラフで表す。 図28のデータに基づき、コントロールに対する、非進行腺腫患者群、進行腺腫/粘膜内癌患者群、及び、ステージ1〜4大腸癌患者群それぞれとのROC曲線を作成した結果を示す。
本発明の大腸腫瘍の有無を予測する方法としては、
(a)被検対象から採取した生体試料中のDNAを抽出する工程;
(b)工程(a)により得られたDNAを、メチル化感受性制限酵素で処理する工程;
(c)工程(b)によりメチル化感受性制限酵素で処理したDNAにおけるTWIST1遺伝子、BMP3遺伝子、NDRG4遺伝子、又はSEPT9遺伝子をコードする領域、前記各遺伝子のいずれかの遺伝子の開始コドンより−1〜−1100領域、又は前記各遺伝子のいずれかの遺伝子の転写開始点より−300〜−500領域の一部を増幅し、該増幅したDNA内の1又は2以上CpG配列のメチル化の程度を測定する工程;
(d)工程(c)で測定したメチル化の程度が所定値以上の場合に、被検対象において大腸腫瘍が有ると予測し、該メチル化の程度が所定値未満の場合に、被検対象において大腸腫瘍が無いと予測する工程;
の(a)〜(d)を順次備え、重亜硫酸塩処理を行わないことを特徴とする方法であれば特に制限されず、被検対象としては、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、サル、ウシ、ブタ、ウマ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌ等の哺乳動物を挙げることができ、好ましくはヒトを挙げることができる。
本発明において、大腸腫瘍は、大腸又はその直近の消化管の正常細胞の形質転換により生じる大腸癌又は大腸腺腫を含む概念であり、例えば盲腸癌、結腸癌、直腸癌、盲腸腺腫、結腸腺腫、直腸腺腫が適した例であり、肛門癌、肛門腺腫も含まれるものである。ここで、大腸腺腫は、転移能のない良性腫瘍(非進行腺腫)や、細胞形態異常や構造異型を有する前癌状態の大腸腫瘍(進行腺腫)を意味し、大腸癌は、無限の増殖性や転移性を有する悪性腫瘍を意味する。また、大腸腫瘍の進行は、大腸正常組織に大腸腺腫が増殖することや、前癌状態にある大腸腺腫が新たに癌化することや、癌部より転移した癌細胞が非癌部大腸組織中で増殖して新たに大腸癌組織が形成されることを意味する。
本発明が大腸腫瘍の有無を予測する方法に関することから、本発明における生体試料は、大腸腫瘍組織以外であって、検出の簡便性を重要視する場合には便、血液、血清、血漿、唾液、尿等を挙げることができ、便又は血清を好適に挙げることができ、便をより好適に挙げることができる。なお、生体試料には、便、血液、血清、血漿、唾液、尿等中に含まれる細胞も含まれる。なお、本発明の方法を用いれば、わずかなDNAのメチル化を検出できるため、例えば便であれば0.05〜0.5g、好ましくは0.1〜0.3gあれば足り、血液であれば100μL〜1mL、好ましくは300μL〜500μLあれば足りる。
生体試料中のDNAを抽出する方法としては、フェノール抽出法、フェノール・クロロホルム抽出法、アルカリ溶解法等や、市販のDNA抽出試薬を用いる方法を挙げることができる。
本発明におけるメチル化感受性制限酵素としては、識配列中のCpGのメチル化/非メチル化を区別可能な制限酵素であれば特に制限されず、現在100以上の酵素が知られており、例えば、認識配列が4塩基のHhaI(GCG/C)、HpaII (C/CGG)、BstUI (CG/CG)、認識配列が5塩基のHpy99I (CGWCG/)、認識配列が6塩基のSacII(CCGC/GG)、SmaI(CCC/GGG)、BssHII(G/CGCGC)、NaeI(GCC/GGC)、認識配列が7塩基のRsrII (CG/GWCCG)、認識配列が8塩基のNotI(GC/GGCCGC)を挙げることができる。なお、制限酵素の製造メーカーによって、BstUIはBsh1236Iという名称でも販売されている。
上記メチル化感受性制限酵素は、単独で用いてもよく、2種類、3種類、4種類、又は5種類以上組み合わせて用いることもでき、3種類以上組み合わせることが、好ましく、HhaI、HpaII及びBstUIの3種を組み合わせることを挙げることができる。
また、上記メチル化感受性制限酵素で処理する際には、鋳型DNA中に一本鎖DNAが存在すると、その一本鎖DNAは制限酵素による切断を免れるため、その後のPCR反応で増幅してしまい、偽陽性を引き起こす。これを避けるために、一本鎖DNAを除去するためにエキソヌクレアーゼI(ExoI)を加えることが好ましい。
メチル化感受性制限酵素で処理する工程としては、抽出した生体試料中のDNAを上記メチル化感受性制限酵素で処理すればよいが、より生体試料中のDNAを切断できる観点から、(b−1)HhaI、HpaII、BstUI、Hpy99I、SacII、SmaI、BssHII、NaeI、RsrII、NotIから選択される少なくとも1種のメチル化感受性制限酵素で処理する工程;(b−2)工程(b−1)の後、さらにHhaI、HpaII、BstUI、Hpy99I、SacII、SmaI、BssHII、NaeI、RsrII、NotIから選択される少なくとも1種で、かつ工程(b−1)で用いたメチル化感受性制限酵素と異なるメチル化感受性制限酵素で処理する工程;の2段階の工程(以下、「複合型酵素処理」ともいう)であることが好ましく、工程(b−1)が、HhaI、HpaII及びエキソヌクレアーゼI(ExoI)で処理する工程であり、工程(b−2)が、BstUIで処理する工程であることがより好ましい。なお、後述の実施例1の条件1にあるような、HhaI、HpaII、ExoI、BstUI同時処理の場合は、「一段階酵素処理」としてこれと区別した。
本発明において、TWIST1遺伝子、BMP3遺伝子、NDRG4遺伝子、又はSEPT9遺伝子をコードする領域、前記各遺伝子のいずれかの遺伝子の開始コドンより−1〜−1100領域、又は前記各遺伝子のいずれかの遺伝子の転写開始点より−300〜−500領域の一部とは、(1)TWIST1遺伝子をコードする領域、前記TWIST1遺伝子の開始コドンより−1〜−1100領域、又は前記TWIST1遺伝子の転写開始点より−300〜−500領域の一部、(2)BMP3遺伝子をコードする領域、前記BMP3遺伝子の開始コドンより−1〜−1100領域、又は前記BMP3遺伝子の転写開始点より−300〜−500領域の一部、(3)NDRG4遺伝子をコードする領域、前記NDRG4遺伝子の開始コドンより−1〜−1100領域、又は前記NDRG4遺伝子の転写開始点より−300〜−500領域の一部、(4)SEPT9遺伝子をコードする領域、前記SEPT9遺伝子の開始コドンより−1〜−1100領域、又は前記SEPT9遺伝子の転写開始点より−300〜−500領域の一部、の(1)〜(4)のいずれかを意味する。
本発明において、TWIST1遺伝子をコードする領域、前記TWIST1遺伝子の開始コドンより−1〜−1100領域、又は前記TWIST1遺伝子の転写開始点より−300〜−500領域の一部としては、好ましくはTWIST1遺伝子の開始コドンより−1〜−1100領域の一部、より好ましくはTWIST1遺伝子の開始コドンより約1000bp上流領域、さらに好ましくはTWIST1遺伝子の開始コドンより−1〜−1100領域の一部であって、かつ配列番号10に示すTWIST1遺伝子の開始コドンより−910〜−1001領域の配列(GRCh37/hg19データベースでの位置情報chr7:19,157,854-19,157,945)中の15、17、30、61、63、66、68、又は90番目のシトシン(c)を含む配列、さらに好ましくはTWIST1遺伝子の開始コドンより−1〜−1100領域の一部であって、かつ配列番号10に示す配列中の15、17、30、61、63、66、68、及び90番目のシトシンを含む配列、最も好ましくは配列番号10に示す配列を挙げることができる。
本発明において、BMP3遺伝子をコードする領域、前記BMP3遺伝子の開始コドンより−1〜−1100領域、又は前記BMP3遺伝子の転写開始点より−300〜−500領域の一部としては、好ましくは前記BMP3遺伝子の開始コドンより−1〜−1100領域の一部、より好ましくは前記BMP3遺伝子の開始コドンより−1〜−1100領域の一部であって、かつ配列番号20に示すBMP3遺伝子の開始コドンより−333〜−256領域の配列(GRCh37/hg19データベースでの位置情報chr4:81,952,106-81,952,183)中の30、44、又は46番目のシトシンを含む配列、さらに好ましくは、前記BMP3遺伝子の開始コドンより−1〜−1100領域の一部であって、かつ配列番号20に示す配列中の30、44、及び46番目のシトシンを含む配列、最も好ましくは配列番号20に示す配列を挙げることができる。
本発明において、NDRG4遺伝子をコードする領域、前記NDRG4遺伝子の開始コドンより−1〜−1100領域、又は前記NDRG4遺伝子の転写開始点より−300〜−500領域の一部としては、好ましくは前記NDRG4遺伝子の転写開始点より−300〜−500領域の一部、より好ましくは前記NDRG4遺伝子の転写開始点より−300〜−500領域の一部であって、かつ配列番号21に示すNDRG4遺伝子transcript variant 1の転写開始点より−312〜−453領域(開始コドンより−24587〜−24446領域)の配列(GRCh37/hg19データベースでの位置情報chr16:58,497,096-58,497,237)中の52、54、66、68、74、又は76番目のシトシンを含む配列、さらに好ましくはNDRG4遺伝子の転写開始点より−300〜−500領域の一部であって、かつ配列番号21に示すNDRG4遺伝子transcript variant 1の転写開始点より−312〜−453領域の配列中の52、54、66、68、74、及び76番目のシトシンを含む配列、最も好ましくは配列番号21に示す配列を挙げることができる。
本発明において、SEPT9遺伝子をコードする領域、前記SEPT9遺伝子の開始コドンより−1〜−1100領域、又は前記SEPT9遺伝子の転写開始点より−300〜−500領域の一部としては、好ましくはSEPT9遺伝子をコードする領域の一部、より好ましくはSEPT9遺伝子をコードする領域の一部であって、かつ配列番号22に示すSEPT9遺伝子transcript variant 2開始コドンより−14〜+48領域の配列(GRCh37/hg19データベースでの位置情報chr17:75,369,566-75,369,627)中の26、28、35、又は37番目のシトシンを含む配列、さらに好ましくは、SEPT9遺伝子をコードする領域の一部であって、かつ配列番号22に示すSEPT9遺伝子transcript variant 2開始コドンより−14〜+48領域の配列中の26、28、35、及び37番目のシトシンを含む配列、最も好ましくは配列番号21に示す配列を挙げることができる。
本発明において、開始コドンとは、mRNAがタンパク質に翻訳されるとき、タンパク質合成の開始点となるコドンを意味し、かかる開始コドンのアデニン(A)の位置を「+1」とし、かかるアデニンの一塩基上流の位置を「−1」とする。また、転写開始点とは、転写の際のmRNAの転写の開始点を意味し、かかる転写開始点の位置を「+1」とし、かかる転写開始点の一塩基上流の位置を「−1」とする。
DNAの増幅方法としては、デジタルPCR法、定量PCR法、PCR法、LAMP法、qAMP法を挙げることができ、デジタルPCR法を好適に挙げることができる。増幅する配列の長さとしては、20〜300塩基、好ましくは30〜200塩基、より好ましくは50〜150塩基を挙げることができる。
本発明の工程(c)において、増幅した領域内の1又は2以上CpG配列のメチル化の程度を測定する方法としては、デジタルPCR法、定量PCR法、qAMP法、LAMP法、CGH法を挙げることができるが、なかでもデジタルPCR法を好適に挙げることができる。また、DNAの増幅とメチル化の程度の測定を上記方法により同時に行ってもよい。すなわち、例えば定量PCR、LAMP法、qAMP法によってDNAの増幅とメチル化の程度の測定を同時に行ってもよい。
メチル化の程度を測定する際には、増幅した領域内の1又は2以上CpG配列のメチル化の程度を測定すればよいが、増幅した領域内のすべてのCpG配列のメチル化の程度を測定することが好ましい。
「デジタルPCR」は、サンプルDNA量を絶対定量する方法である。この方法では、サンプルDNAを約2万個の小水滴(ドロップレット)に分画し、サーマルサイクラーを用いてPCRを行う。ターゲットDNAが入っている小水滴は光り、入っていない小水滴は変化しない。光っている小水滴と光っていない小水滴の数をカウントすることでサンプル中の測定対象遺伝子の濃度を絶対的な数値として出すことができるという原理である。データは、小水滴(ドロップレット)のターゲットDNAのアリ/ナシで判断することから、それがデジタル信号の1/0と同じなので「デジタルPCR」という。「コピー数カウント」は、ドロップレットリーダーによって、上記2万個の小水滴(ドロップレット)を一つずつ蛍光量測定し、蛍光を発するドロップレットの数をカウントすることで、遺伝子のコピー数の絶対値計測する工程を意味する。
メチル化の程度は、所定の生体試料から抽出したDNA当たりのメチル化DNAコピー数で求める方法や、所定のPCR反応液当たりのメチル化DNAコピー数で求める方法や、内部コントロールに対するメチル化DNAの比率で求める方法等を挙げることができる。内部コントロールに対するメチル化DNAの比率は、特に生体試料が便の場合において、ヒトの細胞がほとんど含まれていない場合に偽陰性となることを防ぐ点や、DNA抽出用便検体の正味重量の軽重に関わらずにヒト遺伝子メチル化レベルを正確に測定できる点や、便の量が変化しても得られる比は理論上同じとなることから、便重量が一定でなくてもよいという点で有用である。なお、内部コントロールとしては、PCR増幅領域内にメチル化感受性制限酵素による切断部位を有さないヒトのDNAであればよく、ヒトTERTやRNasePを挙げることができる。
被検対象における大腸腫瘍の有無は、上述で測定したメチル化の程度が所定値以上の場合に、被検対象において大腸腫瘍が有ると予測し、該メチル化の程度が所定値未満の場合に、被検対象において大腸腫瘍が無いと予測することができる。
たとえば、メチル化の程度を所定の生体試料から抽出したDNA当たりのメチル化DNAコピー数で求めた場合の例として、被検対象から得られた便4mgから得られたDNA当たりのメチル化DNAコピー数が1以上、2以上、3以上、4以上、又は5以上の場合に、被検対象において大腸腫瘍が有ると予測し、該メチル化DNAコピー数が1未満、2未満、3未満、4未満、又は5未満の場合に、被検対象において大腸腫瘍が無いと予測する方法を挙げることができる。
また、メチル化の程度を所定のPCR反応液当たりのメチル化DNAコピー数で求めた場合の例として、PCR反応液20μL当たりのメチル化DNAコピー数が1以上、2以上、3以上、4以上、又は5以上の場合に、被検対象において大腸腫瘍が有ると予測し、該メチル化DNAコピー数が1未満、2未満、3未満、4未満、又は5未満の場合に、被検対象において大腸腫瘍が無いと予測する方法を挙げることができる。
さらに、メチル化の程度を内部コントロールに対するメチル化DNAの比率で求めた場合の例として、被検対象から得られた便4mgから抽出したDNA当たりのメチル化DNAコピー数/被検対象から得られた便4mgから抽出したDNA当たりのTERT遺伝子のコピー数比が、メチル化TWIST1/TERT比の場合が0.11以上、メチル化BMP3/TERT比の場合が0.013以上、メチル化NDRG4/TERT比の場合が0.037以上、又はメチル化SEPT9/TERT比の場合が0.071以上であれば、被検対象において大腸腫瘍が有ると予測し、該メチル化DNAコピー数比がメチル化TWIST1/TERT比の場合が0.11未満、メチル化BMP3/TERT比の場合が0.013未満、メチル化NDRG4/TERT比の場合が0.037未満、又はメチル化SEPT9/TERT比の場合が0.071未満であれば、被検対象において大腸腫瘍が無いと予測する方法を挙げることができる。
また本発明の大腸腫瘍の有無を予測する検査方法は、1)便検体からゲノムDNAを抽出する工程(a’)、2)工程aで得られた便DNAをメチル化感受性制限酵素処理(又は複合型酵素処理)する工程(b’)、3)TWIST1遺伝子の開始コドンより−910〜−1001領域に含まれるCpG部位を、複数のプライマーでデジタルPCR法を用いて増幅し、増幅産物におけるメチル化DNAのコピー数をカウント(メチル化パターンを分析)する工程(c’)、4)メチル化DNAのPCR反応液20μL当たりのコピー数をカウントして、所定値以上であれば、大腸癌や大腸腫瘍が有るとの予測結果を出す工程(d’)の各工程を含む方法でもよい。
本発明の大腸腫瘍検査用キットとしては、被検対象から採取した生体試料中のDNAにおけるTWIST1遺伝子、BMP3遺伝子、NDRG4遺伝子又はSEPT9遺伝子をコードする領域、前記各遺伝子のいずれかの遺伝子の開始コドンより−1〜−1100領域、又は前記各遺伝子のいずれかの遺伝子の転写開始点より−300〜−500領域の一部のメチル化の程度を測定するためのキットであって、
(e)被験体中のゲノムDNAを抽出するための試薬;
(f)前記ゲノムDNAを処理するためのメチル化感受性制限酵素;
(g)前記ゲノムDNA中のTWIST1遺伝子、BMP3遺伝子、NDRG4遺伝子又はSEPT9遺伝子をコードする領域、前記各遺伝子のいずれかの遺伝子の開始コドンより−1〜−1100領域、又は前記各遺伝子のいずれかの遺伝子の転写開始点より−300〜−500領域の一部を増幅するためのプライマー及びプローブセット;
(h)メチル化の程度を分析するための試薬;
を備えるものであれば特に制限さない。具体的なキットの構成としては、例えば(1)DNAの抽出工程に係る試薬や備品であって、特に、便や血清等の生体試料からのDNAを抽出するための試薬や備品等、(2)メチル化感受性制限酵素、その酵素反応のための緩衝液、(3)DNA増幅を行うための試薬や備品、すなわちターゲットとするCGCG配列、CCGG配列、GCGC配列、CCGCGG配列、CCCGGG配列、GCGCGC配列、GCCGGC配列、CGGWCCG配列、及び/又はGCGGCCGC等の配列を含む領域を増幅可能なプライマー・プローブセットと、増幅のための酵素や緩衝液等、(4)DNAのメチル化を測定するための試薬類等、を含むキットを挙げることができる。それぞれの工程に必要な試薬類等については、常法として論文等で開示されている手法の他、市販のキット、例えば、便からのDNA抽出にはQIAamp Stool DNA Isolation Kit(Qiagen社製)を用いてDNAの抽出を行ってもよいし、QIAamp Fast DNA Stool Mini Kit(Qiagen社製)等も使用可能である。
本発明において、DNAの増幅に用いるプライマーとしては、TWIST1遺伝子、BMP3遺伝子、NDRG4遺伝子、又はSEPT9遺伝子をコードする領域、前記各遺伝子のいずれかの遺伝子の開始コドンより−1〜−1100領域、又は前記各遺伝子のいずれかの遺伝子の転写開始点より−300〜−500領域の一部の配列情報に基づいて適宜設計し、適当なオリゴヌクレオチド合成装置を用いて適宜作製することができ、上記領域に存在する1又は2以上のCpG配列を増幅できるように設計されていれば、その位置、長さ等に特に制限されないが、長さとしては10〜50mer、好ましくは15〜30merを挙げることができる。
本発明において、プローブとしては、増幅したDNAの一部又は全てにハイブリダイズ可能な核酸プローブであればよく、適当なオリゴヌクレオチド合成装置を用いて適宜作製することができ、その長さは特に制限されないが、7〜30mer、好ましくは10〜20merを挙げることができる。また、上記プローブは蛍光標識されていることが好ましい。
例えば、後述の実施例にある様に、配列番号10に示されるヌクレオチド配列中に位置するCGCG配列、CCGG配列、及びGCGC配列の全てのメチル化を標的とするための配列番号4及び5で示されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対及び配列番号6で示されるオリゴヌクレオチドからなるプローブの組み合わせ(メチル化TWIST1測定用プライマー・プローブセット:)や、配列番号20に示されるヌクレオチド配列中に位置するCGCG配列及びCCGG配列の全てのメチル化を標的とするための配列番号11及び12で示されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対及び配列番号13で示されるオリゴヌクレオチドからなるプローブの組み合わせ(メチル化BMP3測定用プライマー・プローブセット)や、配列番号21に示されるヌクレオチド配列中に位置するCGCG配列及びGCGC配列の全てのメチル化を標的とするための配列番号14及び15で示されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対及び配列番号16で示されるオリゴヌクレオチドからなるプローブの組み合わせ(メチル化NDRG4測定用プライマー・プローブセット)や、配列番号22に示されるヌクレオチド配列中に位置するCGCG配列及びGCGC配列の全てのメチル化を標的とするための配列番号17及び18で示されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対及び配列番号19で示されるオリゴヌクレオチドからなるプローブの組み合わせ(メチル化SEPT9測定用プライマー・プローブセット)を好適に示すことができる。
以下に本件の実施例を示すが、本発明は実施例にのみ限定されるものではない。
(酵素処理条件の検討)
まず、DNAの酵素処理に関連し、酵素処理条件の違いによるメチル化解析に与える影響について以下のような2つの条件で検討を行った。
条件1:DNAの酵素処理:HhaI、HpaII、ExoI、BstUI同時処理(「一段階酵素処理」という。)
条件2:DNAの酵素処理:HhaI、HpaII、ExoI処理後にBstUI処理(「複合型酵素処理」という。)
なお、ここで、HhaI、HpaII、及びBstUIは、上述した様にメチル化感受性制限酵素、ExoIは、3' → 5'一本鎖エキソヌクレアーゼ(Exonuclease I)で、不要な一本鎖DNAを分解する酵素である。
サンプルDNA試料の作製
(TWIST1メチル化コントロールDNA試料の作製)
TWIST1メチル化アレルのコントロールとして、TWIST1が高レベルにメチル化していることが既知のHCT116由来DNA(メチル化コントロールDNA)を用いた。大腸癌細胞株HCT116を1.5mLチューブに移し、核酸抽出剤SepaGene(三光純薬社)を用いた核酸抽出を行った。抽出法は用法に従った。抽出により得られた核酸のペレットを風乾させ、TEバッファーを100μL加えて溶解したものを、TWIST1メチル化コントロールDNA試料とした。
(TWIST1非メチル化コントロールDNA試料の作製)
TWIST1非メチル化アレルのコントロールとして、TWIST1メチル化がほとんどないことが既知の末梢血リンパ球由来DNA(非メチル化コントロールDNA)を用いた。抗凝固剤EDTA−2Naの入った採血管を用い、採取した末梢血に0.2%NaClを加えて転倒混和後、2500rpm、5分間遠心した。管底に沈澱させた白血球を吸わないようアスピレーターで上清を除去し、この操作をペレット(白血球)が白くなるまでくり返した。白くなったペレットを1.5mLチューブに移し、核酸抽出剤SepaGene(三光純薬社)を用いた核酸抽出を行った。抽出法は用法に従った。抽出により得られた核酸のペレットを風乾させ、TEバッファーを100μL加えて溶解したものを、TWIST1非メチル化コントロールDNA試料とした。
上記メチル化コントロールDNAと非メチル化コントロールDNAを種々の割合で混合して、末梢血リンパ球由来DNAに対するHCT116由来DNAの混合割合(メチル化コントロールDNA配合率)が、0%、0.001%、0.01%、0.1%、1%、10%、50%、100%のDNAサンプルを用意した。
表1は、各サンプルでのメチル化コントロールDNA配合率と、大腸癌細胞株HCT116由来DNA(メチル化TWIST1コントロール)と末梢血リンパ球由来DNA(非メチル化TWIST1コントロール)の混合比率との関係を示す。
Figure 0006897970
次に、以下の2条件で、メチル化感受性制限酵素を含む酵素処理を行った。ExoIは、エキソヌクレアーゼである。
<条件1>DNAの一段階酵素処理:HhaI、HpaII、ExoI、BstUI同時処理
1.1.5 mLチューブにDNAを10 μL入れる。
2.GeneAmp PCR buffer II (N808-0241に添付, Life technologies社)を1 μL加える。
3.25 mM MgCl2 溶液(N808-0241に添付, Life technologies社)を1 μL 加える。
4.HhaI (ER1851, Thermo社)を1 μL (10U)加える。
5.HpaII (ER0512, Thermo社)を1 μL (10U)加える。
6.ExoI (EN0581, Thermo社)を1 μL (20U)加える。
7.BstUI (R0518L, New England BioLabs社)を1 μL (10U)加える。
8.ピペッティングで混ぜる。
9.37度16時間加温する。
10.60度16時間加温する。
11.98度10分加温する。
<条件2>DNAの複合型酵素処理:HhaI、HpaII、ExoI処理後にBstUI処理
1.1.5 mLチューブにDNAを10 μL入れる。
2.GeneAmp PCR buffer II (N808-0241に添付, Life technologies社)を1 μL加える。
3.25 mM MgCl2 溶液(N808-0241に添付, Life technologies社)を1 μL 加える。
4.HhaI (ER1851, Thermo社)を1 μL (10U)加える。
5.HpaII (ER0512, Thermo社)を1 μL (10U)加える。
6.ExoI (EN0581, Thermo社)を1 μL (20U)加える。
7.ピペッティングで混ぜる。
8.37度16時間加温する。
9.1 μL (10U) BstUI (R0518L, New England BioLabs社)を加える。
10.60度16時間加温する。
11.98度10分加温する。
(PCR反応による増幅)
PCR反応に用いるプライマー(プライマーセット)は以下のとおりである。
・TWIST1 フォアードプライマー 1(配列番号1)
5’- GTCCTGGGCGTTTCTGAAG - 3’
・TWIST1リバースプライマー 1(配列番号2)
5’- CAGAAGGGCGAGAGAGC - 3’
このプライマー対による増幅領域は、TWIST1遺伝子の開始コドンから約1000bp上流(TWIST1遺伝子開始コドンより−944〜−1021領域内であり、GRCh37/hg19データベース上ではchr7:19,157,888-19,157,965)の以下の配列領域である(PCR産物のサイズ:78bp)。
(配列番号3) 5’- GTCCTGGGCG TTTCTGAAGA CGTGGCCGCG CCGCGGGGGC
TGAGGATTTG CGTCCCGGCC TGCTCTCTCG CCCTTCTG -3’
Figure 0006897970
Figure 0006897970
表3中、下線部は下記のメチル化感受性制限酵素の認識部位を示す。制限酵素の切断領域は、HhaIは、GCGC、HpaIIは、CCGG、BstUIは、CGCGである。
1.以下のPCR反応液を作製する。
酵素処理済みDNA 2 μL
・10x GeneAmp PCR buffer II 1 μL
・25 mM MgCl2 0.8 μL
・10 mM dNTPs 1.0 μL
・10 μM TWIST1 フォワードプライマー1 0.5 μL
・10 μM TWIST1 リバースプライマー1 0.5 μL
・AmpliTaqGold 0.05 μL
・水 4.15 μL
2.以下の条件でPCR反応を行う。
・95度 10分
・40サイクル:95度30秒、60度30秒、72度30秒
・72度 4分
(電気泳動によるPCR産物の確認)
テンプレートDNAはメチル化感受性制限酵素で処理されているため、各制限酵素の認識配列がメチル化されていれば制限酵素で切断されずに78bpのPCR増幅産物のバンドが観察されるが、認識部位がメチル化されていなければ制限酵素で切断されてバンドが観察されないとの原理を利用して、メチル化DNAの有無とその割合がバンドの有無とその濃さで判断することができる。
得られたPCR産物を、エチジウムブロマイドを含有する3%アガロースゲル電気泳動で確認した。上記電気泳動結果から、<条件1>のDNAの酵素処理、つまり種々のメチル化レベルのDNAを用いて、HhaI、HpaII、ExoI、BstUIで同時処理した場合は、メチル化レベル0%のサンプルにもかかわらず、テンプレートDNAの切断が不完全なため、PCRによる増幅が認められた(図1)。また、メチル化のレベルとバンドの濃さとの相関が十分ではなかった。一方、<条件2>のDNAの酵素処理、つまり種々のメチル化レベルのDNAを用いて、HhaI、HpaII、ExoI処理後にBstUIで処理した場合は、メチル化レベル0%のサンプルではテンプレートDNAがほぼ切断されており、PCRによる増幅が認められなかった(図2)。また、メチル化レベルとバンドの濃さとの相関が全体的にみられた。したがって、複合型酵素処理を行えばDNAの切断が適切に行われ、メチル化レベルをより正確に定量できることが明らかとなった。
以上のことから、重亜硫酸塩処理しないDNAを用いる以下の実施例では、DNAを酵素処理する際には、条件2の方法、つまりHhaI、HpaII、ExoI処理後にBstUIで処理する、複合型酵素処理方法を用いることとした。
(デジタルPCR用プライマーとTWIST1メチル化レベル定量性の検討)
TWIST1が高レベルにメチル化していることが既知のDNA(大腸癌細胞株HCT116由来DNA:メチル化コントロールDNA)と、TWIST1メチル化がほとんどないことが既知のDNA(末梢血リンパ球由来DNA:非メチル化コントロールDNA)を種々の割合で混合した(表4)。このDNAを複数のメチル化感受性制限酵素処理及びエキソヌクレアーゼ処理(複合型酵素処理)後、設計したプライマー及びプローブを用いてデジタルPCRによるメチル化レベル定量性を検討した。
Figure 0006897970
(1)サンプルDNA試料の作製
実施例1と同様に、TWIST1が高レベルにメチル化していることが既知のHCT116由来DNAと、TWIST1メチル化がほとんどないことが既知の末梢血リンパ球由来DNAを種々の割合で混合して、HCT116の混合割合が末梢血リンパ球由来DNAに対して、0%、1%、20%、50%、80%、100%のDNAサンプルを用意した(表4)。
(2)DNAの複合型酵素処理:HhaI、HpaII、ExoI処理後にBstUI処理
実施例1の<条件2>と同じ条件で、制限酵素を含む酵素処理を行った。なお、ExoIはエキソヌクレアーゼである。
<プロトコール>
1.1.5 mLチューブにDNAを10 μL入れる。
2.GeneAmp PCR buffer II (N808-0241に添付, Life technologies社)を1 μL加える。
3.25 mM MgCl2 溶液(N808-0241に添付, Life technologies社)を1 μL 加える。
4.HhaI (ER1851, Thermo社)を1 μL (10U)加える。
5.HpaII (ER0512, Thermo社)を1 μL (10U)加える。
6.ExoI (EN0581, Thermo社)を1 μL (20U)加える。
7.ピペッティングで混ぜる。
8.37度16時間加温する。
9.1 μL (10U) BstUI (R0518L, New England BioLabs社) を加える。
10.60度16時間加温する。
11.98度10分加温する。
なお、メチル化感受性制限酵素のHhaI、HpaII、BstUIによる切断部位は、それぞれ順に、「GCGC」、「CCGG」、「CGCG」である。
(3)デジタルPCR処理
「デジタルPCR」は、上述した様に、サンプルDNA量を絶対定量する方法である。ここでは、デジタルPCRシステム(QX100 Droplet Digital PCRシステム:BioRad社を用いた。
<プライマー・プローブセット>
用いたプライマー・プローブは、以下のとおりである(表2)。
(TWIST1)
TWIST1 フォアードプライマー
(配列番号4) 5’- TCCAAAGGCCAAACCGC-3’
TWIST1 リバースプライマー
(配列番号5) 5’-CCGGGACGCAAATCCTC-3’
TWIST1 TaqManプローブ
(配列番号6) 5’-FAM-CTGAAGACGTGGCCGCGCC-TAMRA-3’
(内部コントロール)
hTERT フォアードプライマー
(配列番号7) 5’-GGGTCCTCGCCTGTGTACAG-3’
hTERT リバースプライマー
(配列番号8) 5’-CCTGGGAGCTCTGGGAATTT-3’
hTERT TaqManプローブ
(配列番号9) 5’-VIC-CACACCTTTGGTCACTC-MGB-3’
配列番号10(表3)は、TWIST1のPCR増幅対象領域の配列(TWIST1遺伝子開始コドンより−910〜−1001領域:GRCh37/hg19データベースでの位置情報chr7:19,157,854-19,157,945)を示す。表3中、下線は制限酵素HhaI, HpaII, BstUIにより切断される可能性のある部位を示す。ただしこれらの制限酵素はメチル化感受性制限酵素であるため、シトシン(C)がメチル化されていると、その箇所は切断されない。
(配列番号10) 5’- TCCAAAGGCC AAACCGCGGC GGCCCAGCCC GGAGGTCCTG
GGCGTTTCTG AAGACGTGGC CGCGCCGCGG GGGCTGAGGA TTTGCGTCCC GG -3’
<デジタルPCRプロトコール>
1.以下のPCR反応液を作製する。
・酵素処理済みDNA 2 μL
・ddPCR Supermix for probes (#186-3010, BioRad) 10 μL
・10 μM TWIST1 フォワードプライマー 0.5 μL
・10 μM TWIST1 リバースプライマー 0.5 μL
・5 μM TWIST1 TaqManプローブ 1.0 μL
・10 μM hTERT フォワードプライマー 0.5 μL
・10 μM hTERT リバースプライマー 0.5 μL
・5 μM hTERT TaqManプローブ 1.0 μL
・水 6.0 μL
なお、NTC (no template control)については酵素処理済みDNAの代わりに水2 μLを使用する。
2.ドロップレット作製
・PCR反応液をAutoDGシステム (BioRad社)にセットし、ドロップレットを作製する。
3.PCR反応(サーマルサイクラー)
・95度10分
・40サイクル(94度30秒、56度1分、ランプ速度2度/秒)
・98度10分
(4)コピー数カウント
QX100 Droplet Digital PCRシステムのDroplet Reader(BioRad社)にPCR反応済み検体をセットし、各液滴内のTaqManプローブ由来の蛍光色素を検出することで、hTERT及びメチル化TWIST1のコピー数をカウントする。hTERTは内部コントロールであり、腫瘍・非腫瘍に関わらず、ヒトDNAを検出するために用いる。hTERTのPCR増幅領域には制限酵素HhaI, HpaII, BstUIの切断部位が存在しないため、テンプレートDNAにこれらの制限酵素処理を行っても当該領域のDNAは切断されない。ヒト由来DNAが存在する場合は、メチル化感受性制限酵素処理の影響を受けることなく、PCRによりhTERTが増幅される。
(結果)
<デジタルPCRでの定量性>図3A,B、図4A,B
図3Aはメチル化コントロールDNAの割合(横軸)とメチル化TWIST1遺伝子及びhTERT遺伝子のコピー数(濃度:縦軸)の関係を示した図である。メチル化コントロールDNAの割合とメチル化TWIST1レベルに正の直線的な相関があることが分かった。一方で、hTERT遺伝子はメチル化感受性制限酵素で切断されないため、HCT116の混合比率に関わらず、一定のコピー数を示した。
図3Bは、種々のメチル化レベルのDNAを用いた場合の、「メチル化TWIST1コピー数/hTERTコピー数」(コピー数比)を示す。ここで、TWIST1メチル化がほとんどないサンプルとして使用した末梢血リンパ球由来DNAは、実際は、TWIST1メチル化レベルが0.14%であったことから、サンプルHCT 0%、1%、20%、50%、80%、100%の実際のTWIST1メチル化レベルは、順に0.14%、0.82%、13.4%、35.8%、62.2%、81.1%であった。以上の結果から、本法は、TWIST1メチル化レベルを精度よく評価できることが確認された。
図4A及び図4Bは、デジタルPCR生データで、一つのドットが1つのドロップレットの蛍光量を示す。データの信頼性を裏付けるものである。
上記結果から、本実施形態のデジタルPCRを用いれば、0.14%以上のメチル化レベルであれば定量的に測定可能であることが分かった。しかもDNAの化学処理(重亜硫酸塩処理)をしなくても、信頼性のあるTWIST1遺伝子のメチル化の定量性を提示できることが示された。なお、デジタルPCR法では、変異DNAの検出下限は0.001%(10万分の1)といわれているので、本法よりも更に精度を上げられる可能性がある。
(便検体DNAを用いた、メチル化TWIST1測定系の確立)
以上の結果を踏まえて、簡便な検査としてのメチル化TWIST1測定系として以下の方法を確立した。
本件の簡便なメチル化TWIST1測定系のための工程の一例としては、(1)生体試料からのDNA(生体試料DNA)抽出、(2)DNAの複合型酵素処理、(3)デジタルPCR処理、及び、(4)コピー数カウント、というシンプルなステップからなる(図5)。本実施例では、生物試料のうち糞便検体からDNAを抽出した。より非侵襲的で安価で簡便な検査を目指すためである。なお、糞便には3〜5×1011/gもの数の細菌が含まれており、便中DNAの99.99%は細菌由来とされる。すなわち、糞便中に含まれるヒトDNAは0.01%程度に過ぎない。
(1)便検体からのDNA(便DNA)抽出
検体は、精密検査で、正常、Non-advanced adenoma(非進行腺腫)、Advanced adenoma(進行腺腫)/Tis(粘膜内癌)、又は、CRC(大腸癌)と判断された人の、凍結保存糞便検体を基本的に利用した。
健常者便51検体(Control)、Non-advanced adenoma患者便9検体、Advanced adenoma/Tis患者便17検体、CRC患者便133検体、総計210人の便検体から、下記の要領で、DNAの抽出を行った。なお、大腸腺腫のうち、Advanced adenomaは、径1cm以上の腺腫、又はvillous components(絨毛状構成要素)(tubulovillous(管絨毛)又は villous(絨毛))を合併する腺腫、又はhigh-grade or severe dysplasia(高度又は重度の異形成)を合併する腺腫で、大腸の前癌病変であり、Non-advanced adenoma(非進行腺腫)は、良性腫瘍のうち上記Advanced adenoma(進行腺腫)でないものを意味する。また、Tisとは、癌が粘膜内にとどまり、粘膜下層に及んでいない、ごく初期(ステージ0)の大腸癌で、別名Carcinoma in situ (粘膜内癌)ともいうが、ここでは、Tisを「粘膜内癌」という。
前癌状態であるAdvanced adenoma(進行腺腫)や、ごく初期の癌であるTis(粘膜内癌)は、早期発見は難しいが、発見できれば、完全に治療できる可能性が大きいことから、本実施態様では、Advanced adenoma(進行腺腫)又はTis(粘膜内癌)と診断された患者を1つの解析群としてまとめて、「Advanced adenoma(進行腺腫)/Tis(粘膜内癌)」と記載した。さらに、CRC (colorectal cancer)は、ステージ1〜4の大腸癌を意味する。なお、コントロール群とは、内視鏡検査で、大腸組織や大腸粘膜に大腸腫瘍のないものの群を意味する。
サンプル及び量:上記合計210人のヒト糞便検体 各0.2g
使用するキット:QIAamp Fast DNA Stool Mini Kit(Qiagen社)。
方法:製品添付のプロトコール(Human DNA analysis)に従ってDNAを抽出
1.糞便検体0.2gを2mLチューブに入れる。
2.1mLのInhibitEXバッファー(キットに添付)を便検体に加える。ボルテックス撹拌を1分間あるいは便検体が完全に懸濁するまで行う。
3.懸濁液を5分間70度で加温する。15秒間ボルテックス撹拌を行う。
4.20,000gで1分間遠心を行う。
5.25 μlのProteinase K(キットに添付)を新しい1.5mLチューブに入れる。
6.ステップ4後の上清600 μLをステップ5の1.5 mLチューブに入れる。
7.600 μLのALバッファ(キットに添付)を加え、15秒間ボルテックス撹拌を行う。
8.70度で10分間加温する
9.600 μLのエタノール(96-100%)を溶解液に加え、ボルテックス撹拌により混合する。
10.ステップ9の溶解液600 μLをQIAamp スピンカラム(キットに添付)に入れる。ふたを閉めて1分間20,000gで遠心を行う。 QIAamp スピンカラムを新しい2mLコレクションチューブに設置し、濾過液は捨てる。すべての溶解液をカラム処理するまでステップ10を繰り返す。
11.QIAampスピンカラムを注意深く開け、500 μLのAW1バッファ(キットに添付)を加える。1分間20,000gで遠心を行う。QIAampスピンカラムを新しい2mLコレクションチューブに設置し、濾過物を含むコレクションチューブは捨てる。
12.QIAampスピンカラムを注意深く開け、500 μLのAW2バッファ(キットに添付)を加える。3分間20,000gで遠心を行う。濾過物を含むコレクションチューブは捨てる。
13.QIAampスピンカラムを新しい2mLコレクションチューブに設置し、濾過物を含む古いコレクションチューブを捨てる。3分間20,000gで遠心を行う。
14.QIAampスピンカラムを新しい1.5mLチューブに移し、100μLのATEバッファ(キットに添付)を直接QIAampメンブレン上にピペットで滴下する。1分間室温に置いた後、1分間20,000gで遠心し、DNAを溶出する。
(2)DNAの複合型酵素処理:HhaI、HpaII、ExoI処理後にBstUI処理
<プロトコール>
実施例2の<条件2>と同様である。なお、ExoIはエキソヌクレアーゼである。
1.1.5 mLチューブにDNAを10 μL入れる。
2.GeneAmp PCR buffer II (N808-0241に添付, Life technologies社)を1 μL加える。
3.25 mM MgCl2 溶液(N808-0241に添付, Life technologies社)を1 μL 加える。
4.HhaI (ER1851, Thermo社)を1 μL (10U)加える。
5.HpaII (ER0512, Thermo社)を1 μL (10U)加える。
6.ExoI (EN0581, Thermo社)を1 μL (20U)加える。
7.ピペッティングで混ぜる。
8.37度16時間加温する。
9.1 μL (10U) BstUI (R0518L, New England BioLabs社) を加える。
10.60度16時間加温する。
11.98度10分加温する。
(3)デジタルPCR処理
「デジタルPCR」は、上述したように、サンプルDNA量を絶対定量する方法である。ここでは、デジタルPCRシステム(QX100 Droplet Digital PCRシステム:BioRad社)を用いた。
<プライマー等>
用いたプライマー等は、実施例2と同様である(表2)。
TWIST1 フォアードプライマー (配列番号4)
TWIST1 リバースプライマー (配列番号5)
TWIST1 TaqManプローブ (配列番号6)
(内部コントロール)
hTERT フォアードプライマー (配列番号7)
hTERT リバースプライマー (配列番号8)
hTERT TaqManプローブ (配列番号9)
配列番号10(表3)は、TWIST1のPCR増幅対象領域の配列を示す。
表3中、下線は制限酵素HhaI, HpaII, BstUIにより切断される可能性のある部位を示す。ただしこれらの制限酵素はメチル化感受性酵素であるため、シトシン(C)がメチル化されていると、その箇所は切断されない。
(配列番号10) 5’- TCCAAAGGCC AAACCGCGGC GGCCCAGCCC GGAGGTCCTG
GGCGTTTCTG AAGACGTGGC CGCGCCGCGG GGGCTGAGGA TTTGCGTCCC GG -3’
<デジタルPCRプロトコール>
実施例2と同様である。
1.以下のPCR反応液を作製する。
酵素処理済みDNA 2 μL
・ddPCR Supermix for probes (#186-3010, BioRad) 10 μL
・10 μM TWIST1 フォワードプライマー 0.5 μL
・10 μM TWIST1 リバースプライマー 0.5 μL
・5 μM TWIST1 TaqManプローブ 1.0 μL
・10 μM hTERT フォワードプライマー 0.5 μL
・10 μM hTERT リバースプライマー 0.5 μL
・5 μM hTERT TaqManプローブ 1.0 μL
・水 6.0 μL
2.ドロップレット作製
・PCR反応液をAutoDGシステム (BioRad社)にセットし、ドロップレットを作製する。
3.PCR反応(サーマルサイクラー)
・95度10分
・40サイクル(94度30秒、56度1分、ランプ速度2度/秒)
・98度10分
(4)コピー数カウント
QX100 Droplet Digital PCRシステムのDroplet Reader(BioRad社)にPCR反応済み検体をセットし、各液滴内のTaqManプローブ由来の蛍光色素を検出することで、hTERT及びメチル化TWIST1のコピー数をカウントする。
hTERTは内部コントロールであり、便DNA中のヒトDNAを検出するために用いる。
(結果)
<各群におけるメチル化TWIST1のPCR反応液20μL当たりのコピー数>
図6及び図7は、コントロール群、非進行腺腫(Non-advanced adenoma)患者群、進行腺種/粘膜内癌(Advanced adenoma/Tis)患者群、及び、ステージ1〜4大腸癌(CRC)患者群の各便検体DNA(便DNA)におけるメチル化TWIST1のPCR反応液20μL当たりのコピー数を、群別に比較した結果の表及びグラフである。なお、PCR反応液20μLには、便4mgから抽出したDNAが含まれていたため、メチル化TWIST1のPCR反応液20μL当たりのコピー数は、メチル化TWIST1の便4mgから抽出したDNA当たりのコピー数に相当する。
図6の表にあるように、コントロール群の便DNAでは、メチル化TWIST1コピー数は、最小値0.0−最大値2.800、中央値0.0、平均値0.2314(sd:0.6733)であり、Non-advanced adenoma患者群の便DNAでは、メチル化TWIST1コピー数は、最小値0.0−最大値11.60、平均値4.289(sd:3.610)、Advanced adenoma/Tis患者群の便DNAでは、メチル化TWIST1コピー数は、最小値0.0−最大値240.0、平均値32.38(sd:64.70)、そして、CRC(大腸癌)患者群の便DNAでは、メチル化TWIST1コピー数は、最小値0.0−最大値4700、平均値65.08(sd:473.1)で、正常から非進行腺腫、進行腺腫/粘膜内癌、及び、ステージ1〜4大腸癌と進行するにつれて、平均値が格段に上昇していた。
さらに、本実施態様の検査方法に含まれる、メチル化解析技術は、従来技術の工程であるDNAの重亜硫酸塩による化学処理が不要であるため、非常に簡便に検査を実施できた。また、便中のごくわずかの量(20μL当たり1〜5コピー)のメチル化TWIST1でも検出できるため、検出感度が非常に高いといえる。さらに、一つの遺伝子のメチル化だけで検査が可能であることから、低コスト化にも成功したといえる。
なお、近年、DNAメチル化は転写開始点上流の領域だけでなく遺伝子の領域(Gene body)にも存在し、かかる領域のメチル化に異常な転写開始を防止する機能があると考えられている。したがって、上記実施例では配列番号10に示す配列(TWIST1遺伝子開始コドンより−910〜−1001領域)に含まれるCpG配列のメチル化の程度を測定しているが、かかる領域に限らず、TWIST1遺伝子をコードする領域、前記各遺伝子の開始コドンより−1〜−1100領域、又は前記各遺伝子のいずれかの遺伝子の転写開始点より−300〜−500領域の一部に含まれるCpG配列のメチル化の程度を測定すれば、被検対象における大腸腫瘍の有無を予測することが可能となると考えられる。
<メチル化TWIST1コピー数においてカットオフ値1以上での各群でのメチル化陽性率>図8
カットオフ値1以上とした時のコントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群での各便検体DNAにおけるメチル化TWIST1陽性者割合:陽性率(縦軸)をグラフ(図8A)で、及びその元データを表(図8B)で示す。図8Cは、カットオフ値1以上とした時のコントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群での各便検体DNAにおけるメチル化TWIST1検出の感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率を示す。
ここで、本明細書で用いる用語について、説明する。「感度」及び「特異度」は、臨床検査の信頼度を評価する指標である。特定の病気に罹患している集団に対して検査を行ったとき、陽性(異常値)を示す割合(真の陽性率)が感度である。逆に、特定の病気に罹患していない集団に対して検査を行ったとき、陰性(正常値)を示す割合(真の陰性率)が特異度である。つまり、実際に病気に罹っている人のうち陽性と出る割合を感度、病気に罹っていない人のうち陰性と出る割合を特異度という。検査の感度を上げようとすれば特異度は下がり(偽陽性が増える)、特異度を上げようとすれば感度が下がる(偽陰性が増える)という関係にある。
一般的には、感度と特異度が高い検査キットの信頼性が高いとされる。
感度が高い検査では陽性になりやすく、そのような検査で陰性になれば相当高い確率で病気がないと診断できることを意味し、除外診断に使える。また、特異度が高い検査では陰性になりやすく、そのような検査で陽性になれば相当高い確率で病気であると診断できることを意味し、確定診断に使える。また、検査で陽性と出た人のうち実際に病気に罹っている人の割合を「陽性的中率」(Positive Predictive Value, PPV)、陰性と出た人のうち実際に罹っていない人の割合を「陰性的中率」(Negative Predictive Value, NPV)という。
図8の結果によると、カットオフ値1以上とした場合でも、特異度は90%で高くNon-advanced adenoma患者群の検査感度は89%、Advanced adenoma/Tis患者群の場合は、検査感度は59%、大腸癌CRC患者群の検査感度は59%であった。陽性の場合、カットオフ値1以上でもNon-advanced adenoma 以上の大腸病変があると高い確率で診断可能である。この場合、コントロール群の陽性率は10%にすぎず、後述する、便潜血検査よりも偽陽性のリスクは小さい。つまり、大腸に病変のない人が精密検査を受けなければならない事態を避けることができる。
このように、本実施態様では、カットオフ値1以上とした場合は、コントロール群に対して、Non-advanced adenoma患者群、それ以上進行したAdvanced adenoma/Tis患者群や大腸癌CRC患者群を検出する感度、特異度に優れていることが分かった。特に、初期の良性の腺腫の段階のものでも精度よく検出できる可能性があることが判明した。
<メチル化TWIST1コピー数においてカットオフ値2以上での各群でのメチル化陽性率>図9
カットオフ値2以上とした時のコントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群での各便検体DNAにおけるメチル化TWIST1陽性者割合:陽性率(縦軸)をグラフ(図9A)で、及び陽性者数及び陰性者数を表(図9B)で示す。図9Cは、カットオフ値2以上とした時のコントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群での各便検体DNAにおけるメチル化TWIST1検出の感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率を示す。
以上の結果によると、カットオフ値2以上とした場合、特異度は96%で一層高く、カットオフ値1以上とした場合より、特異度が上昇した。検査感度は、Non-advanced adenoma患者群の場合は67%、Advanced adenoma/Tis患者群の場合は47%、大腸癌CRC患者群の場合は47%、また、陽性的中率は、順番に、75%、80%、97%という高値であった。
陽性の場合、カットオフ値2以上ではNon-advanced adenoma 以上の大腸病変があると高い確率で診断可能である。この場合、コントロール群の陽性率は3.9%にすぎず、後述する、便潜血検査よりも偽陽性のリスクは非常に小さい。つまり、大腸に病変のない人が精密検査を受けなければならない事態を極力避けることができる。
このように、本実施態様では、カットオフ値2以上とした場合は、コントロール群に対して、Non-advanced adenoma患者群、それ以上進行したAdvanced adenoma/Tis患者群や大腸癌CRC患者群を検出する特異度に優れ、感度は比較的高いことが分かった。特に、初期の良性の腺腫の段階のものでも精度よく検出できる可能性があることが判明した。
<メチル化TWIST1コピー数においてカットオフ値5以上での各群でのメチル化陽性率>図10
カットオフ値5以上とした時のコントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群での各便検体DNAにおけるメチル化TWIST1陽性者割合:陽性率(縦軸)をグラフ(図10A)で、及び陽性者数及び陰性者数を表(図10B)で示す。図10Cは、カットオフ値5以上とした時のコントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群での各便検体DNAにおけるメチル化TWIST1検出の感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率を示している。
以上の結果によると、カットオフ値5以上とした場合、特異度は100%と最高値である。他方、検査感度は、Non-advanced adenoma患者群の場合は約22%、Advanced adenoma/Tis患者群の場合は約47%、大腸癌CRC患者群の場合は約33%であった。陽性的中率は、カットオフ値1以上又は2以上とした場合より更に上昇してどの群でも100%であった。
このように、本実施態様では、カットオフ値5以上とした場合は、コントロール群に対して、Non-advanced adenoma患者群、それ以上進行したAdvanced adenoma/Tis患者群や大腸癌CRC患者群を検出する特異度が100%、陽性的中率100%であるという、優れた値を示すことが分かった。特に、コントロールでは、便検体DNAで、メチル化TWIST1のコピー数が5以上の症例はないことから、コントロール群は陽性とはならず、陽性者は、初期の良性の腺腫以上の段階であることが非常に精度よく検出できることが判明した。
[試験例1]
一般的な大腸癌一次スクリーニングである、便潜血検査方法を用いた場合の検査結果を示す。プロトコールは、下記製品のものに従った。
(便潜血検査:FOBT)
(1)便検体の準備
健常者便10検体(Control)、Non-advanced adenoma(非進行腺腫)患者便9検体、Advanced adenoma(進行腺腫)/Tis(粘膜内癌)患者便17検体、CRC(大腸癌)患者便83検体、総計119人の便検体を用いた。群分けは、内視鏡検査及び又は病理学的検査により行った。コントロール群10人は、内視鏡検査で大腸病変がなかった人の群である。
(2)測定(操作)法
便潜血キット(OC−ヘモディアオートS‘栄研’:栄研化学社)及び、診断機器(OCセンサーio:栄研化学社)を用いた。本キット及び機器は、ラテックス凝集反応の免疫比濁法を測定原理としており、ヒト以外の動物ヘモグロビンとはほとんど反応しない。
1)ラテックス乳液及び希釈液を装置の所定の位置にセットする。
2)パラメーターを装置に入力する。
3)標準とその希釈液(別売のHbキャリブレータ・L‘栄研’のHbキャリブレータ希釈液‘栄研’)をサンプルカップに分注し、装置の検体ラックにセットする。
4)装置をスタートさせる。
5)標準の希釈液で自動的に希釈された標準液35μLが反応セルに入る。
6)ラテックス乳液100μL及び希釈液200μLが同時に反応セルに入る。
7)波長660nmで180秒間の吸光度変化量を測定する。
8)各標準液の反応より検量線が作成される。
9)被検検体を分注したサンプルカップあるいは採便容器をそのまま装置の検体ラックにセットする。
10)装置をスタートさせる。
11)被検検体35μLが反応セルに入り、6),7)の操作にて吸光度変化量を測定する。
12)検量線から被検物質の濃度が求められる。
13)測定終了後、結果がプリントアウトされる。
(3)測定結果の判定法
あらかじめ作成した検量線と各検体の反応が相対的に比較され、ヘモグロビン濃度(ng/mL)が求められる。
(4)性能
1)感度:ヘモグロビン濃度0ng/mLと20ng/mLの標準液を測定するとき、両者の吸光度変化量の差は0.002以上である。
2)正確性
・濃度既知の管理検体を測定するとき、得られた値は表示値の±15%以内である。
・陽性管理検体を試験するとき、陽性を示し、陰性管理検体を試験するとき、陰性を示す。
3)同時再現性
・同一検体を10回同時に測定するとき、得られた値の変動係数(C.V.)は10%以下である。
・陽性管理検体及び陰性管理検体を5回繰り返し試験するとき、それぞれ同一の結果を示す。
(5)測定範囲
50〜1,000 ng/mL(糞便での換算値:10μg/g〜200μg/g)。
(結果)図11
コントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群の便検体における各々の潜血陽性(+)率又は潜血陽性(+)検体数に関して、グラフ(図11A)又は表(図11B)に示した。図11Cは、コントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群の便検体における各々の潜血検査の感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率を示す表である。
<便潜血検査陽性率>
図11A、図11Bにもあるように、本実施態様では、検査感度は、Non-advanced adenoma患者群では0%(0/9)、Advanced adenoma/Tis患者群では41%(7/17)、CRC(大腸癌)患者群では95%(79/83)であった。この便潜血検査は、コントロール群での偽陽性が20%とやや多めではあるが、特異度は80%であり、大腸癌CRC患者群の検査感度は95%と、感度、特異度共に高値であり、ある程度大腸癌CRC患者を検出するための検査として用いることが可能であることが確認された。ただし、この方法では、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群の検査感度は、0%、及び41%と低く、Non-advanced adenoma、Advanced adenoma/Tisに罹患していても見逃してしまう確率がとても大きい。
(便潜血検査(FOBT)と便DNAメチル化TWIST1検査との組合せ)
大腸癌スクリーニング検査で一度便検体を採取すれば、便潜血検査を実施するだけでなく、便検体からDNAを抽出して、本件のメチル化TWIST1解析技術を適用することができる。便潜血検査(FOBT)と便DNAメチル化TWIST1検査との組合せとは、前述した「組合せ検査」を意味し、たとえば、増幅したDNAのPCR反応液20μL当たりのメチル化TWIST1のコピー数と、便潜血検査における便潜血反応結果を組み合わせて、大腸腫瘍の有無を予測検査する方法である。
便潜血検査(試験例1)と同じ、健常者便10検体(Control)、Non-advanced adenoma(非進行腺腫)患者便9検体、Advanced adenoma(進行腺腫)/Tis(粘膜内癌)患者便17検体、CRC(大腸癌)患者便83検体、総計119人の便検体を用いた。方法に関しては、メチル化TWIST1測定系については、実施例3と同様、便潜血検査については、試験例1と同様の方法で行った。
<便潜血反応結果(+)と便DNAメチル化TWIST1コピー数1以上との組合せ>図12
図12は、便潜血検査(FOBT)と便DNAメチル化TWIST1検査との組合せ検査における、FOBT(+) and/or メチル化TWIST1コピー数1以上で陽性とした場合のデータであって、コントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群の各便検体における、上記組合せ検査での陽性(Yes)率・陰性(No)率のグラフ(図12A)、組合せ検査での陽性(Yes)・陰性(No)検体数(図12B)、及び、組合せ検査の感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率(図12C)である。
なお、1)便潜血検査において便潜血反応結果が(+)かつ便DNAメチル化TWIST1検査での便DNAメチル化TWIST1コピー数1以上の場合、2)便潜血検査において便潜血反応結果が(−)かつ便DNAメチル化TWIST1検査での便DNAメチル化TWIST1コピー数1以上の場合、及び3)便潜血検査において便潜血反応結果が(+)かつ便DNAメチル化TWIST1検査での便DNAメチル化TWIST1コピー数1未満の場合の3つを陽性とした。すなわち、便DNAメチル化TWIST1検査での便DNAメチル化TWIST1コピー数と便潜血検査における便潜血反応結果を組み合わせて陽性か否かを判断した。
以上の結果によると、便潜血検査と便DNAメチル化TWIST1検査とを組合せて、便DNAメチル化TWIST1コピー数1以上とした場合、特異度は40%と低めであるが、検査感度は、Non-advanced adenoma患者群の場合は89%、Advanced adenoma/Tis患者群の場合は88%、大腸癌CRC患者群の場合は100%と、非常に高い値であった。ここで陽性となった場合、非常に高い確率でNon-advanced adenoma患者、Advanced adenoma/Tis患者、CRC(大腸癌)患者を検出可能であることが明らかとなった。なお、メチル化TWIST1単独検査の場合であれば、カットオフ値1以上でもNon-advanced adenoma以上の大腸病変があると高い確率で診断可能である。
<便潜血反応結果(+)と便DNAメチル化TWIST1コピー数2以上との組合せ>図13
図13は、便潜血検査(FOBT)と便DNAメチル化TWIST1検査との組合せ検査における、FOBT(+) and/or メチル化TWIST1コピー数2以上で陽性とした場合のデータであって、コントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群の各便検体における、組合せ検査での陽性(Yes)率・陰性(No)率のグラフ(図13A)、組合せ検査での陽性(Yes)・陰性(No)検体数(図13B)、及び、組合せ検査の感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率(図13C)である。
なお、1)便潜血検査において便潜血反応結果が(+)かつ便DNAメチル化TWIST1検査での便DNAメチル化TWIST1コピー数2以上の場合、2)便潜血検査において便潜血反応結果が(−)かつ便DNAメチル化TWIST1検査での便DNAメチル化TWIST1コピー数2以上の場合、及び3)便潜血検査において便潜血反応結果が(+)かつ便DNAメチル化TWIST1検査での便DNAメチル化TWIST1コピー数2未満の場合の3つを陽性とした。すなわち、便DNAメチル化TWIST1検査での便DNAメチル化TWIST1コピー数と便潜血検査における便潜血反応結果を組み合わせて陽性か否かを判断した。
以上の結果によると、便潜血検査と便DNAメチル化TWIST検査とを組合せて、便DNAメチル化TWIST1コピー数2以上とした場合、特異度は70%とより高くなり、検査感度は、Non-advanced adenoma患者群の場合は67%、Advanced adenoma/Tis患者群の場合は82%、大腸癌CRC患者群の場合は100%と、非常に高い値であった。ここで陽性となった場合、非常に高い確率でNon-advanced adenoma患者、Advanced adenoma/Tis患者、CRC(大腸癌)患者を検出可能である。
<便潜血反応結果(+)と便DNAメチル化TWIST1コピー数5以上との組合せ>図14
図14は、便潜血検査(FOBT)と便DNAメチル化TWIST1検査との組合せ検査における、FOBT(+) and/or メチル化TWIST1コピー数5以上で陽性とした場合のデータであって、コントロール群、Non-advanced adenoma患者群、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群の各便検体における、組合せ検査での陽性(Yes)率・陰性(No)率のグラフ(図14A)、組合せ検査での陽性(Yes)・陰性(No)の検体数(図14B)、及び、組合せ検査の感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率(図14C)である。
なお、1)便潜血検査において便潜血反応結果が(+)かつ便DNAメチル化TWIST1検査での便DNAメチル化TWIST1コピー数5以上の場合、2)便潜血検査において便潜血反応結果が(−)かつ便DNAメチル化TWIST1検査での便DNAメチル化TWIST1コピー数5以上の場合、及び3)便潜血検査において便潜血反応結果が(+)かつ便DNAメチル化TWIST1検査での便DNAメチル化TWIST1コピー数5未満の場合の3つを陽性とした。すなわち、便DNAメチル化TWIST1検査での便DNAメチル化TWIST1コピー数と便潜血検査における便潜血反応結果を組み合わせて陽性か否かを判断した。
以上の結果によると、便潜血検査と便DNAメチル化TWIST1検査とを組合せて大腸腺腫の有無を検査する組合せ検査法では、便DNAメチル化TWIST1コピー数5以上とした場合、特異度は80%と更に高くなり、検査感度は、Non-advanced adenoma患者群の場合は22%と低いが、Advanced adenoma/Tis患者群の場合は82%、大腸癌CRC患者群の場合は99%と、非常に高い値であった。陽性的中率は、Advanced adenoma/Tis患者群、CRC(大腸癌)患者群で、それぞれ88%、98%で非常に高値であった。なお、コントロールでの偽陽性率については、便潜血検査の場合(偽陽性20%、図11A)と同様のレベル(20%)の優れた結果といえる。
まとめると、全体として、従来の便潜血検査に比べて、本組合せ検査法は、コントロール(健常人)での偽陽性率は20%と同等であり、更に、CRC(大腸癌)患者群での感度、特異度、陽性的中率及び陰性的中率は、便潜血検査では、95%、80%、98%、67%、本組合せ検査法では、99%、80%、98%、89%と、本組合せ検査法の方が総合的により高値であり、さらにAdvanced adenoma/Tis患者での感度、特異度、陽性的中率及び陰性的中率は、便潜血検査での、41%、80%、78%、44%に対し、本組合せ検査法では、82%、80%、88%、73%と、一層高い値を示した。
つまり、この組合せ検査方法は、一次スクリーニング検査法としては、大変優れている検査法であり、当該検査方法で陽性となった場合、CRC(大腸癌)患者だけでなく、大腸癌発生のリスクが高く早期に対処すれば治癒可能なAdvanced adenoma/Tis患者を、精度よく、非常に高い確率で検出可能であることが判明した。
CRC(大腸癌)患者群の発見だけでなく、Advanced adenoma/Tis患者群が、悪性化する前に外科的処置等の治療を行う機会が得られることから、その救命効果は非常に大きいことがわかる。さらに、前述したように、本実施態様の検査方法に含まれるメチル化解析技術は、従来のメチル化解析技術の工程であるDNAの重亜硫酸塩処理による化学処理が不要であるため、煩雑な操作がなく、非常に簡便に検査を実施できる。また、ごく少量(約0.2g)の便検体があればよく、便中のごくわずかの量(1〜5コピー)のメチル化TWIST1でも検出できる方法であるため、特異度だけでなく、検出感度も非常に高いといえる。
(便検体DNAを用いた、メチル化TWIST1測定)
コントロール、非進行腺種(Non-advanced adenoma)患者、進行腺種/粘膜内癌(Advanced adenoma/Tis)患者、大腸癌(CRC)の新規症例について実施例3と同様の要領でDNAの抽出、DNAの複合型酵素処理、デジタルPCR処理、及びコピー数カウントを行った。
(結果)
<各群におけるメチル化TWIST1のPCR反応液20μL当たりのコピー数>
図15A及び図15Bは、コントロール群、非進行腺腫(Non-advanced adenoma)患者群、進行腺腫/粘膜内癌(Advanced adenoma/Tis)患者群、及び、ステージ1〜4大腸癌(CRC)患者群の各便検体DNA(便DNA)におけるメチル化TWIST1のPCR反応液20μL当たりのコピー数又はコピー数比を群別に比較した結果のグラフである。nは検体数を示す。また、図16は、コントロールに対する、非進行腺腫(Non-advanced adenoma)患者群、進行腺腫/粘膜内癌(Advanced adenoma/Tis)患者群、及び、ステージ1〜4大腸癌(CRC)患者群それぞれとのROC曲線の結果を示す。本発明により、コントロールから非進行腺腫、進行腺腫/粘膜内癌、及び、ステージ1〜4大腸癌と進行するにつれて、コピー数が上昇しており、しかもコントロールと大腸癌だけでなく、コントロールと進行腺腫/粘膜内癌でも有意な差があり、大腸癌だけでなく進行腺腫/粘膜内癌の有無も検出できることが確認された。
(デジタルPCR用プライマーとBMP3、NDRG4、及びSEPT9メチル化レベル定量性の検討)
BMP3、NDRG4、及びSEPT9が高レベルにメチル化していることが既知のDNA(大腸癌細胞株HCT116由来DNA)と、BMP3、NDRG4、及びSEPT9メチル化がほとんどないことが既知のDNA(末梢血リンパ球由来DNA)を表4と同様に種々の割合で混合した。このDNAを、実施例2と同様の方法で複数のメチル化感受性制限酵素処理及びエキソヌクレアーゼ処理(複合型酵素処理)後、設計したプライマー及びプローブを用いてデジタルPCRによるメチル化レベル定量性を検討した。
<プライマー・プローブセット>
用いたプライマー・プローブは、以下のとおりである。
(BMP3)
BMP3 フォアードプライマー
(配列番号11) 5’- GGAAGGTACAGACAGATCTTGAAAACA-3’
BMP3リバースプライマー
(配列番号12) 5’- TCCACTCCAACGCTGAGAAA-3’
BMP3 TaqManプローブ
(配列番号13) 5’-FAM- CCGGGCCACACAC-TAMRA-3’
(NDRG4)
NDRG4 フォアードプライマー
(配列番号14) 5’- CCGACCCTAAGGGCTTTTCT -3’
NDRG4 リバースプライマー
(配列番号15) 5’- CGCTGCCGTAGTCTTTGTTTAGA-3’
NDRG4 TaqManプローブ
(配列番号16) 5’-FAM- TCTCTGCAGGTCTAAGG-TAMRA-3’
(SEPT9)
SEPT9 フォアードプライマー
(配列番号17) 5’- GCCCACCAGCCATCATGT-3’
SEPT9 リバースプライマー
(配列番号18) 5’- GTCCGAAATGATCCCATCCA-3’
SEPT9 TaqManプローブ
(配列番号19) 5’-FAM- CCGCGGTCAACGC-TAMRA-3’
(内部コントロール)
hTERT フォアードプライマー
(配列番号7) 5’-GGGTCCTCGCCTGTGTACAG-3’
hTERT リバースプライマー
(配列番号8) 5’-CCTGGGAGCTCTGGGAATTT-3’
hTERT TaqManプローブ
(配列番号9) 5’-VIC-CACACCTTTGGTCACTC-MGB-3’
表5に、BMP3、NDRG4、SEPT9それぞれのフォアードプライマー、リバースプライマー、TaqManプローブ、及びPCR増幅対象領域の配列(BMP3遺伝子開始コドンより−333〜−256領域:GRCh37/hg19データベースでの位置情報chr4:81,952,106-81,952,183:配列番号20、NDRG4遺伝子転写開始点より−300〜−500領域(開始コドンより−24587〜−24446領域):GRCh37/hg19データベースでの位置情報chr16:58,497,096-58,497,237:配列番号21、SEPT9遺伝子開始コドンより−14〜+48領域:GRCh37/hg19データベースでの位置情報chr17:75,369,566-75,369,627:配列番号22)を示す。表5中、下線は制限酵素HhaI, HpaII, BstUIにより切断される可能性のある部位を示す。ただしこれらの制限酵素はメチル化感受性制限酵素であるため、シトシン(C)がメチル化されていると、その箇所は切断されない。
Figure 0006897970
(結果)
<デジタルPCRでの定量性>図17A,B、図18A,B、図19A,B
図17A、図18A、図19Aはそれぞれ種々のメチル化レベルのDNAを用いた場合の、メチル化BMP3、メチル化NDRG4、メチル化SEPT9のコピー数とTERTコピー数を示す図である。また、図17B、図18B、図19Bはそれぞれ種々のメチル化レベルのDNAを用いた場合の、メチル化BMP3、メチル化NDRG4、メチル化SEPT9のコピー数及びTERTコピー数の比を示す図である。メチル化コントロールDNAの割合とメチル化BMP3、メチル化NDRG4、メチル化SEPT9のコピー数に正の直線的な相関があることが分かった。一方で、hTERT遺伝子はメチル化感受性制限酵素で切断されないため、HCT116の混合比率に関わらず、一定のコピー数を示した。したがって、上記複合型酵素処理により、TWIST1だけでなくBMP3、NDRG4、及びSEPT9遺伝子をコードする領域、前記各遺伝子のいずれかの遺伝子の開始コドンより−1〜−1100領域、又は前記各遺伝子のいずれかの遺伝子の転写開始点より−300〜−500領域の一部内のCpG配列のメチル化の程度も定量的に測定できることが明らかとなった。
(便検体DNAを用いた、メチル化BMP3、メチル化NDRG4、又はメチル化SEPT9測定)
メチル化BMP3、メチル化NDRG4、又はメチル化SEPT9を実施例3と同様の実験で行った。DNAの抽出、DNAの複合型酵素処理、デジタルPCR処理、及びコピー数カウントは実施例3と同様の要領で行った。
(結果)
<各群におけるメチル化BMP3、メチル化NDRG4、又はメチル化SEPT9のPCR反応液20μL当たりのコピー数>
図20A及び図20Bは、コントロール群、非進行腺腫患者群、進行腺腫/粘膜内癌患者群、及び、ステージ1〜4大腸癌患者群の各便検体DNA(便DNA)におけるメチル化BMP3のPCR反応液20μL当たりのコピー数又はコピー数比を群別に比較した結果のグラフである。図22A及び図22Bは、コントロール群、非進行腺腫患者群、進行腺腫/粘膜内癌患者群、及び、ステージ1〜4大腸癌患者群の各便検体DNA(便DNA)におけるメチル化NDRG4のPCR反応液20μL当たりのコピー数又はコピー数比を群別に比較した結果のグラフである。図24A及び図24Bは、コントロール群、非進行腺腫患者群、進行腺腫/粘膜内癌患者群、及び、ステージ1〜4大腸癌患者群の各便検体DNA(便DNA)におけるメチル化SEPT9のPCR反応液20μL当たりのコピー数又はコピー数比を群別に比較した結果のグラフである。nは検体数を示す。また、図21、図23、図25は、メチル化BMP3、メチル化NDRG4、又はメチル化SEPT9コピー数の、コントロールに対する、非進行腺腫(Non-advanced adenoma)患者群、進行腺腫/粘膜内癌(Advanced adenoma/Tis)患者群、及び、ステージ1〜4大腸癌(CRC)患者群それぞれとのROC曲線の結果を示す。本発明により、コントロールから非進行腺腫、進行腺腫/粘膜内癌、及び、ステージ1〜4大腸癌と進行するにつれて、コピー数が上昇しており、しかもコントロールと大腸癌だけでなく、コントロールと進行性腺腫/粘膜内癌でも有意な差があり、大腸癌だけでなく進行腺腫/粘膜内癌の有無も検出できることが確認された。さらに、メチル化BMP3/TERT比を用いれば、非進行腺腫も検出できることが確認された。
(血清セルフリーDNAを用いた、メチル化TWIST1、NDRG4測定)
血清セルフリーDNAを用いてDNAの抽出、DNAの複合型酵素処理、デジタルPCR処理、及びコピー数カウントを行った。DNA抽出後のDNAの複合型酵素処理、デジタルPCR処理、及びコピー数カウントは実施例3と同様の要領で行った。
血清からのDNA(血清セルフリーDNA)抽出
400μLの血清から、自動核酸抽出機MagNA Pure Compact(ロシュ・ダイアグノスティックス社)及び専用DNA抽出キットMagNA pure Compact Nucleic Acid Isolation kit I(ロシュ・ダイアグノスティックス社)を用い、自動核酸抽出機MagNA Pure Compact内にセットされているプロトコールTotal_NA_Plasma_100_400によりDNAを抽出し、最終的に50μLのDNA溶液を得た。
(結果)
<各群におけるメチル化TWIST1、メチル化NDRG4のPCR反応液20μL当たりのコピー数>
図26A及び図26Bは、コントロール群、非進行腺腫患者群、進行腺腫/粘膜内癌患者群、及び、ステージ1〜4大腸癌患者群の各血清セルフリーDNAにおけるメチル化TWIST1のPCR反応液20μL当たりのコピー数又はコピー数比、図28は、コントロール群、非進行腺腫患者群、進行腺腫/粘膜内癌患者群、及び、ステージ1〜4大腸癌患者群の各血清セルフリーDNAにおけるメチル化NDRG4のPCR反応液20μL当たりのコピー数比を群別に比較した結果のグラフである。nは検体数を示す。また、図27、図29はそれぞれ、コントロールに対する、非進行腺腫患者群、進行腺腫/粘膜内癌患者群、及び、ステージ1〜4大腸癌患者群それぞれとのROC曲線の結果を示す。本発明により、便だけでなく血清から抽出したDNAによっても、大腸癌の有無が検出できることが確認された。
以上のことから、本実施態様による検査方法は、CRC(大腸癌)患者群の検出に関しては、便潜血検査に比べて、検査感度が高くすぐれていることが分かった。また、Advanced adenoma/Tis患者群の検出に関して、従来の便潜血検査にはない、高い感度、特異度を示す検査方法であることが示された。さらに、全体的に、コストも安く、DNA検査手技もシンプルで容易であり、便検体量も少量で済むという、スクリーニング方法としては大変有益なものである。
よって、本実施態様の検査方法は、コストパフォーマンスに優れ、手技もシンプルで特異度も感度も高い、大腸腫瘍、特に、大腸癌及びAdvanced adenoma(進行性腺腫)/Tis(粘膜内癌)のための1次スクリーニング方法として大変有用で効果のあるものであることが判明した。
以上、本発明の内容の特定の部分を詳述したが、当業界における通常の知識を持った者にとって、このような具体的な記述は単なる好適な実施態様に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されることはないという点は明らかである。よって、本発明の実質的な範囲は特許請求の範囲とこれらの等価物により定義されると言える。
本発明の大腸腫瘍の有無の検査方法を利用することにより、大腸癌や大腸腺腫をはじめとする大腸腫瘍をコストも安く感度よくかつ高い特異度で検出するキットや装置等を開発することが可能となる。これは早期発見が最重要である腫瘍、特に癌や進行性腺腫の検出において、きわめて有用なツールを提供するものである。

Claims (5)

  1. 被検対象における大腸腫瘍の有無を予測する方法であって、以下の工程(a)〜(d)を順次備え、重亜硫酸塩処理を行わないことを特徴とする方法。
    (a)被検対象から採取した便、血清又は血漿中のDNAを抽出する工程;
    (b−1) 工程(a)により得られたDNAを、HhaI、HpaII、及びエキソヌクレアーゼI(ExoI)で処理する工程;
    (b−2) 工程(b−1)の後、さらにBstUIを加えて処理する工程;
    (c)工程(b)によりメチル化感受性制限酵素で処理したDNAにおけるTWIST1遺伝子、BMP3遺伝子、NDRG4遺伝子、又はSEPT9遺伝子をコードする領域、前記各遺伝子のいずれかの遺伝子の開始コドンより−1〜−1100領域、又は前記各遺伝子のいずれかの遺伝子の転写開始点より−300〜−500領域の一部であって、次の(c1)−(c4)のいずれかを増幅し、該増幅したDNA内の1又は2以上のCpGの配列のメチル化の程度を測定する工程;
    (c1)配列番号10に示すchr7:19,157,854−19,157,945;
    (c2)配列番号20に示すchr4:81,952,106−81,952,183;
    (c3)配列番号21に示すchr16:58,497,096−58,497,237;
    (c4)配列番号22に示すchr17:75,369,566−75,369,627;
    (d)工程(c)で測定したメチル化の程度が所定値以上の場合に、被検対象において大腸腫瘍が有ると予測し、該メチル化の程度が所定値未満の場合に、被検対象において大腸腫瘍が無いと予測する工程;
  2. 工程(c)においてDNAの増幅をデジタルPCRによって行うことを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 工程(c)における(c1)−(c4)のいずれかの増幅を、次の(c5)−(c8)のいずれかのプライマー対及びプローブのセットを用いて行うことを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
    (c5)配列番号4及び5で示されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対及び配列番号6で示されるオリゴヌクレオチドからなるプローブのセット;
    (c6)配列番号11及び12で示されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対及び配列番号13で示されるオリゴヌクレオチドからなるプローブのセット;
    (c7)配列番号14及び15で示されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対及び配列番号16で示されるオリゴヌクレオチドからなるプローブのセット;
    (c8)配列番号17及び18で示されるオリゴヌクレオチドからなるプライマー対及び配列番号19で示されるオリゴヌクレオチドからなるプローブのセット;
  4. 被検対象から採取した便、血清又は血漿が被検対象から採取した便であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の方法。
  5. 工程(c)で測定したメチル化の程度と、便潜血検査結果と組み合わせて、被検対象における大腸腫瘍の有無を予測することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか記載の方法。
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