本発明の好適な実施形態1による白色光源による表面粗さ判定装置1について図1〜図12を参照して説明する。
表面粗さ判定装置1は、CIE XYZ等色関数と等価に線形変換された三つの分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))を有する2次元色彩計2が表面5から取得した三つの分光感度を有する3バンド視覚感度画像S1i,S2i,S3iをCIE XYZ表色系における三刺激値X、Y、Zに変換したデータを取得し演算する演算処理部3を備え、この演算処理部3が、色差ΔEを演算する色差演算部と、XYZ表色系の色空間にそれぞれ対応する座標の検査領域を格子Gで区画し、各格子Gに属する検査面と基準面の画素数を積算することにより、XYZ表色系の色空間ヒストグラム分布を作成する色空間ヒストグラム分布作成部と、検査面と基準面の2つの色空間ヒストグラム分布の差を示す表面粗さ指数Mを演算する表面粗さ指数演算部と、粗さ計により実測した表面粗さ計測値Raを記憶する表面粗さ計測データ記憶部と、表面粗さ計測値Raと表面粗さ評価指数Estの相関関係を示す第1検量線関数L1、表面粗さ計測値Raと色差ΔEの相関関係を示す第2検量線関数L2、又は、表面粗さ計測値Raと表面粗さ指数Mとの相関関係を示す第3検量線関数L3のうちの少なくとも1つを設定する関数設定部と、を備えたことを特徴とする。表面粗さ評価指数Estは、表面粗さ計測値Raとの間の誤差Errorが最小となるように、表面粗さ指数Mに係る第1係数a及び色差ΔEに係る第2係数bを特定する。
2次元色彩計2の分光感度はルータ条件を満たすものであって、その分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))は、図2に示す通り、XYZ等色関数から、負の値を持たず、単独ピークを持つ山形であり、それぞれの分光感度曲線のピーク値が等しく、かつ分光感度の曲線の重なりはできるだけ少なくするという条件から等価変換したものである。分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))は具体的には以下の特性を持つ。
記
ピーク波長 半値幅 1/10幅
S1 582nm 523〜629nm 491〜663nm
S2 543nm 506〜589nm 464〜632nm
S3 446nm 423〜478nm 409〜508nm
上記の分光特性S1のピーク波長を580±4nm、分光特性S2のピーク波長を543±3nm、分光特性S3のピーク波長を446±7nmとして取り扱うこともできる。
三つの分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))は次の数式1を用いて求められるものである。分光特性自体についての詳細は特開2005−257827号公報等を参照されたい。
2次元色彩計2の仕様は、例えば、有限会社パパラボの2次元色彩計RC-500であり、有効頻度値約500万画素、有効面積9.93mm×8.7mm、画像サイズ3.45μm×3.45μm、ビデオ出力12Bit、カメラインターフェイスGigE、フレーム数(ピント調整時)3〜7フレーム/sec、シャッタースピード1/15,600sec〜1/15sec、積算時間3秒まで、S/N比60dB以上、レンズマウントFマウント、動作温度0℃〜40℃、動作湿度20%〜80%である。
2次元色彩計2は、図1に示すように、撮影レンズ21と、この撮影レンズ21の後方に配置された三つの光学フィルタ22a、22b、22cと、光学フィルタ22a、22b、22cの後方に配置された撮像素子23(CCD、CMOSなど)と、を備えている。2次元色彩計2の三つの分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))は、光学フィルタ22a、22b、22cの分光透過率と撮像素子23の分光感度との積により与えられる。図1における光学フィルタ22a、22b、22cと撮像素子23との配列的関係は模式的に示したものにすぎない。三つの分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))に従って3バンド視覚感度画像S1i,S2i,S3iを取得する方式について以下に具体例を挙げるが、本実施形態1ではこれらのうちいずれをも採ることができ、また、その他の方式を採ることもできる。24は演算部、25は表示部である。
図3(a)に示すものはダイクロイックミラーを用いる方式である。これはダイクロイックミラー22c´により特定の波長の光を反射し、透過した残りの光について、さらに別のダイクロイックミラー22a´により別の特定の波長の光を反射して分光し、撮像素子23a、23b、23cを三つ並列にして読み出す方式である。ここでは、ダイクロイックミラー22a´が光学フィルタ22a、22bに相当し、ダイクロイックミラー22c´が光学フィルタ22cに相当する。撮影レンズ21から入射する光はダイクロイックミラー22c´により分光感度S3に従う光が反射され、残りの光は透過する。ダイクロイックミラー22c´により反射された光を反射鏡26により反射して撮像素子23cにより視覚感度画像S3iを得る。一方、ダイクロイックミラー22c´を透過した光は、ダイクロイックミラー22a´において、分光感度S1に従う光が反射され、残りの分光感度S2に従う光は透過する。ダイクロイックミラー22a´を透過した光を撮像素子23bにより撮像して視覚感度画像S2iを得る。ダイクロイックミラー22a´により反射された光を反射鏡29により反射して撮像素子23aにより視覚感度画像S1iを得る。ダイクロイックミラーに代えて同様な特性を有するダイクロイックプリズムを用いて三つに分光し、それぞれの光が透過する位置に撮像素子23a、23b、23cを接着することとしてもよい。
図3(b)に示すものはフィルタターレット27を用いる方式である。撮影レンズ21からの入射光と同じ方向を回転軸に持つフィルタターレット27に光学フィルタ22a、22b、22cを設けてこれらを機械的に回転させ、順次透過する光について撮像素子23により3バンド視覚感度画像S1i,S2i,S3iを得る。
図3(c)に示すものは光学フィルタ22a、22b、22cを撮像素子23に微視的に貼着する方式である。撮像素子23上における光学フィルタ22a、22b、22cは、ベイヤー配列型に設けられる。この配列は、格子状に分けた撮像素子23上の領域のうち半分に光学フィルタ22bを設け、残りの半分の領域に光学フィルタ22aと光学フィルタ22cとをそれぞれ均等に配置する。すなわち、配置量は光学フィルタ22a:光学フィルタ22b:光学フィルタ22c=1:2:1となる。光学フィルタ22a、22b、22cの配列をベイヤー配列以外のものとすることは本実施形態1において特に妨げられない。一つ一つの光学フィルタ22a、22b、22cは非常に微細であるため、印刷により撮像素子23に貼着される。ただし、本発明はこの配列に意味があるのではなく、分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))の特性のフィルタを撮像素子に貼着することにある。
2次元色彩計2は分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))により取得した画像情報を演算処理部3に送信し、演算処理部3でXYZ表色系における三刺激値X、Y、Zに変換し、取得した三刺激値X、Y、Zによる画像データに変換処理による演算処理を行い、視覚化処理された画像を表示する表示装置7を備える。
演算処理部3は2次元色彩計2により取得した画像の任意の位置における粗さ度、色差等を演算し視覚化処理する。表面5の真上又は斜めから照明を照射し、xy、XYZ又はLab色度分布データ同士を比較して指数化する。
2次元色彩計2で表面5を、通常、1ヶ所で撮像し、必要に応じて、2次元色彩計2が移動して、他の別の角度で撮像する。ここでは、例えば、正面、左右45度の3箇所(適宜数の箇所でも良い)で撮影することもできる。
照明部6の照明源はキセノンランプ(擬似太陽光)を採用する。照明部6はキセノンランプのほかに、フレネルレンズ・アセンブリを備えている。キセノンランプは表面5の斜め上から均一に照らすものとする。キセノンランプ以外にLEDの人工太陽灯でもよい。
表示装置7は演算処理部3と接続され、演算処理部3で処理された画像信号を受信して、画像を画面に表示するようになっている。演算処理部3又は表示装置7は、適宜、入力手段(図示略)等を備える。入力手段はキーボード、マウス、ディスプレイに設けられるタッチパネル等である。
表面5の表面粗さ判定装置1の動作について具体例を挙げつつ説明する。表面5の表面粗さ判定装置1は、図1に示す通り、2次元色彩計2と、演算処理部3と、表示装置7とを接続することにより動作する。接続方法は有線・無線を問わず選択できる。表面粗さ判定装置1におけるフローチャートを図4に、演算処理部3および表示装置7におけるフローチャートを図5に、それぞれ示す。
2次元色彩計2の電源が入ると、図4に示す通り、初期化をする(初期化S1)。つぎに、表面5を撮像し(撮像処理S2)、その後、撮像された3バンド視覚感度画像S1i,S2i,S3iを撮像素子23により入力し(入力処理S3)、演算処理部3にて三刺激値X、Y、Zに変換する(変換処理S4)。3バンド視覚感度画像S1i,S2i,S3iは表示装置7に送信される(データ送信S5)。画像が動画である場合には、撮像処理S2からデータ送信S5の一連の処理が連続的に行われる(S6)。画像は表示装置7に表示される。
三刺激値X、Y、ZからY´xy表色系への変換式を数式2、3に挙げる。ここでは2次元色彩計2とともに輝度計(図示略)を使用し、Yは輝度計の値(nt)により校正してY´とした。色空間の変換式は慣用されているため、その他の詳しい式については割愛する。
XYZ表色系は、現在CIE標準表色系として各表色系の基礎となっている。光の三原色(R=赤、G=緑、B=青紫)の加法混色の原理に基づいて発展したもので、色度図を使って色をYxyの3つの値で表わす。Yが反射率で明度に対応し、xyが色度になる。
撮像処理S2は、三つの分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))を有する2次元色彩計2によって表面5を撮像する工程である(図1、図4参照)。分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))は上記の数式1に従って与えられる。撮影レンズ21と光学フィルタ22a、22b、22cと撮像素子23により撮像されると同時に入力処理S3が連続的に行われる。
入力された画像データは分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))に従った値であるため、2次元色彩計2と接続する演算処理部3における変換処理S4によって、撮像された画像の画像データを三刺激値X、Y、Zに変換する。この変換は数式1に従って行われる。すなわち、数式1における係数の逆行列を乗じて三刺激値X、Y、Zを得ることができる。なお、2次元色彩計2からは分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))に従った値のまま演算処理部3に送信する。
演算処理部3に電源が入ると、図5に示す通り、初期化をする(初期化S110)。表示装置7は2次元色彩計2と接続された状態において、2次元色彩計2から送信された3バンド視覚感度画像S1i,S2i,S3iを受信する(データ受信S120)。その後、3バンド視覚感度画像S1i,S2i,S3iから三刺激値X、Y、Zに変換し、撮像された基準面と検査面の画像のLab平均値及びxy表面粗さ指数Mを演算し視覚化処理する(S130)、表示装置7に表示するために必要な場合は、色情報をRGB等に変換処理する(S140)。その内容を表示装置7に送信する(表示処理S150)。2次元色彩計2からのデータ受信S120の後、変換処理S130から表示処理S150の一連の処理が連続的に行われる(S160)。
前記の表示処理S150は、視覚化処理された表面粗さ指数Mを表示装置7に表示する工程であり、処理をリターンする。
図6のS140のサブフローチャートを説明する。基準面の第1画像(画像B)を撮像しておき、次に対比すべき検査面の第2画像(画像A)を撮像し、以下のとおり、表面粗さ指数Mを順次計算する。表面粗さを分離した表面粗さ指数Mにより、表面粗さの類似性を判定する。
撮像した画像A,Bについて検査したい領域T(図7(a)参照)に対応する検査領域K(図7(b)参照)を設定する(S141)。大きさや場所を自由に設定することができる。
色度xyを演算する(S142)。
撮像した基準面の画像Bから切り出した検査領域Kの基準面のxy色度ヒストグラム分布を作成する(S143)。
xy色度ヒストグラム分布は、上記各単位格子Gに属する画素の積算数を示す立体ヒストグラムである。
図7(f)は、xy座標の位置での比較対象の色分布を平面的に書いたものであり、図7(c)に示す通り検査領域Kを格子Gで区画し、その区画のxy値を有する画素を積算しz軸とするヒストグラム分布を作成する。xy座標を、特定の幅のグリッド、例えば、xyをそれぞれ1/1000(1000個の線)で切った平面格子とする。検査領域Kの端から端までスキャンしてゆき、格子Gに区画した領域ごとに、これに属する画素数をz方向に積算してゆく。また、検査領域Kでxy座標の特定範囲だけを演算すれば、演算時間が短縮できる。グリッドのマス目を細かくすれば精度は上がるが、演算時間が長くなるので、適宜のマス目とする。
S143と同様に、検査面の画像Aのxy色度ヒストグラム分布を作成する(S144)。xy色度ヒストグラム分布は、xy軸がxy色度、z軸が画素の積算数である。
Labのa軸、b軸、L軸について、それぞれ独立に検査領域Kのすべての画素の総和を取り、その画素数にて、それぞれのL値、a値、b値の総和を割って、Lab色度分布の平均L値、平均a値、平均b値を計算する。またΔEを数式4により演算する(S145)。
下記の数式5により変換したLab空間のLab値を算出する。Lab色空間は補色空間の一種で、明度を意味する次元Lと補色次元のA及びBを持ち、CIEXYZ色空間の座標を非線形に圧縮したものに基づいている。正規化する前のXYZ値からLab値に数式5により変換する。XYZ色空間上での分布に対して、Lab色空間の分布は、明るさ方向も加味した分布が得られる。
数5で、関数fの括弧の中のX,Y,Zの値がそれぞれ白色点の座標Xn,Yn,Znで割ってあるのは,最大値を1に揃えるためである。
基準面及び検査面の平均値の差分を取り色の相違の判断材料とする。
表面粗さ指数Mを演算する(S146)。これにより、単純に粗さの程度を分離して、これを定量化できる。xy色度分布の2次元空間の中で粗さ度を演算し、その粗さ度の違いを、色のことは除いた、粗さ度の違いとして把握できるので、色と表面粗さとを確実に分離して検出できる。
表面粗さ指数Mは、下式により計算する。xy色度ヒストグラム分布は、画素の積算数であり、図7(d)に重なり領域D、図7(e)にミニマム分布を示す。
表面粗さ指数M=重なり領域Dに属する画素の積算数/検査領域Kの全体の画素数×100(%)
基準面と検査面の2次元空間上でのxy色度ヒストグラムを計算し、その配列の同じ位置同士のミニマム値を取ったものが、重なり合い頻度となるため、全体のヒストグラム総和カウントで、この値を割ったもので計算される。
図7(d)(e)は図7(c)をS−S断面で切り取った1つの断面図であり、xy座標で同じライン上で見た場合には重なり合いがある。立体的に描く代わりに、便宜上、平面で描いている。またヒストグラムであるから、微小な階段形状の分布になっている。図7(d)の積算数H1と積算数H2はそれぞれ画像A、画像Bに対応する。二つのヒストグラム分布を比較すると、重なり領域Dが存在する。
図7(e)に示す通り、H1(x1、y1)を検査面のxy色度ヒストグラム分布の積算数、H2(x2、y2)を基準面のxy色度ヒストグラム分布の積算数とすると、重なり合った左側領域ではH1>H2で、中央でH1<H2となり、右側ではH1>H2である。H1,H2のうち、小さい方の積算数(画素頻度)を取ると、左側および右側ではH2、中央ではH1となり、階段状のヒストグラム曲線であるミニマム分布が特定できる。これを利用し、重なり領域Dの全体領域に対する二次元又は三次元での割合が演算できる。
このミニマム分布で小さな方の積算値を特定する。H1とH2のうち、少ない方の積算数を加算演算すれば、重なり領域Dの積算数が演算でき、全体の画素数に対する割合が特定できる。検査領域Kの全体の画素数は決まっており、検査面と基準面では、ともに総画素数は同一値である。この割合の演算は全部の格子Gについて3次元的に積算してもよいし、例えば、図7(c)に示す通り、S−S軸に沿って検査領域Kを切り、yが所定値でxが端から端まで変化する場合での画素の積算数H1,H2の分布を2次元的に積算してもよい。図7(f)はxy色度ヒストグラム分布の一例である。検査領域Kにおいて分布がなく画素数がゼロの場合には演算から除外する。
最後に、表示・保存処理、送信処理を行い(S147)、処理をリターンする。
例えば、検査領域Kに属する画素を縦100画素×横100画素=10,000画素とする。同じ検査領域Kで画像を切り取るので、画像Aと画像Bの全体の画素数はともに10,000画素である。xy色度ヒストグラムから、重なり領域Dの画素数を積算し、重なり領域Dの画素数が5,000個であった場合、表面粗さ指数Mは50%となる。表面粗さ指数Mが100%を下回るほど表面粗さの相違度が大きくなる。xy値の分布が完全に一致していれば100%となる。これにより、一定以上の数値であると判定された場合に、表面粗さについて適合面であると判定することができる。
画像について、第1次的に得られる色情報はXYZ等色関数と等価な関数である三つの分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))に基づくため、RGBにより取得する場合と比べて人の眼の感度に忠実で高精度である。分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))の重なり合いは小さく、S/N比も十分にとれ、分光感度の曲線におけるカーブも自然に変化するため、測色における誤差は最低限に留められる。
画像の表面粗さを色とは分離してヒストグラム分布で把握できるため、表面5の粗さの違いを正確に判定することができる。
例えば、図8(a)〜(c)に示す通り、粗さ度が小さいものから大きなものまで3種類を検査した場合の例を説明する。粗さ度の小さなものを基準面1とし、粗さ度の中程度を検査面2とし、粗さ度の大きなものを検査面3とする。まず、1〜3を前記の処理を行った後のxy色度図上での分布を作成すると、図8(b)のxy色度図に示す通り、ハイライト部分が積算されたデータである。積算数H1,H2を明暗で示してあり、色の明るいほど積算数は大きい。図8(c)は基準面と検査面の3次元で積算数H1,H2を模式的に表した。xy軸は色度、z軸は積算数H1,H2である。基本的には、凹凸が強いほど、低く広がった山形となり、凹凸が弱いほど、尖った山形になる。基準面1と、検査面2又は3について、2つのヒストグラム分布を比較することで、重なりの度合いを示す表面粗さ指数Mを演算する。ミクロン又はナノオーダー以上の凹凸感は、表面粗さ指数Mで判定が可能である。
本実施形態は、点ではなく、面で測色するものであり、平均値だけではなく、統計的に比べることができる。色情報が複雑に織り成した粗さ情報を数値化できる。各画素が測色値である。それをヒストグラムにより統計処理する。
表面粗さ指数Mは、シボなど表面の粗さを数値比較するものであり、2次元色彩計で測色画像を撮影する。実際には頻度情報があるので図9の上部に示す通り、3次元色度図で山ができる。
図9の上において、(1)は一点に集中した尖った山、(2)通常の山、(3)は広がったなだらかな山である。山を横から見ると図9の中、下のようになる。(1)を基準に(2)(3)を重ね合わせると、色のついたところが重なり合った部分である。ここの体積の割合が表面粗さ指数Mである。表面粗さ指数Mは、検査領域Kの範囲内の積算数をそのまま用いるので、基準面1に対して、検査面2、3がそれぞれ58%、27%となり、数値で明確に、かつ、簡単に表面粗さの識別ができる。
表面粗さがナノオーダー又はミクロンオーダーの場合には、以上のように演算した表面粗さ指数M及び色差ΔEを用いて、重回帰分析を用いて、図10に示す通り、表面粗さ評価指数Estを演算する。ナノ、ミクロンオーダーの粗さの場合には、粗さが大きな場合とは、表面5での光散乱が異なっているからである。細かな粗さに対しては、当てる光との相互作用、つまり、干渉が生起してしまい、種々のシフトが起きるので、それも積極的に踏み込んでいく方が正確な評価値になる。可視光の波長域は、380nm〜780nmであるので、この波長に近いナノレベルの表面の凹凸では、色のシフトがより大きく観測される。光の波長と比べて、表面の凹凸がミクロンレベルより大きな場合で、同一材料でも、異種材料でも光のシフトよりも、凹凸に由来する白色光の回折が優勢となるので、色のシフトを考慮しなくてもい。そこで、表面粗さ指数Mと色差ΔEについての色のシフトを積極的に利用して、重回帰分析により、粗さ計との相関をとることとした。
まず、この処理が開始されると、判定対象物についての粗さ計の計測値を取得する(S150)。ここでは接触式粗さ計により、表面粗さ計測値Raを求める。
Raと下記数式6によって表されるEstとの間の重回帰分析により、最小自乗法による誤差Errorの合計が最小になるように、第1係数a、第2係数bを特定する(S151)。
(数6)
Est=a・M+b・ΔE
数式6で、Estは表面粗さ評価指数、aは第1係数、Mは表面粗さ指数、bは第2係数、ΔEは色差である。
上記a,bが特定された数式6にMとΔEの計測値を代入し、表面粗さ評価指数Estを演算する(S152)。
数式6に代えて、数式7による場合もある。色差ΔEのパラメータを用いない、より簡便な方法であり、Raと下記数式7によって表されるEstとの間の重回帰分析により、数式8によって表される最小自乗法による誤差Errorの合計が最小になるように、第1係数a、第2係数bを特定する。
(数7)
Est=a・M+b
数式7で、Estは表面粗さ評価指数、aは第1係数、Mは表面粗さ指数、bは第2係数である。
(数8)
Error=Σ(Est(i)−Ra(i))2
数式8で、Errorは誤差、Estは表面粗さ評価指数、Ra(i)は粗さ計による計測値、iは計測したデータ数である。
上記a,bが特定された数式7にMの計測値を代入し、表面粗さ評価指数Estを演算する(S152)。
以上で計測・演算した、表面粗さ指数M、色差ΔE、表面粗さ評価指数Est、表面粗さ計測値Raから、第1検量線関数L1、第2検量線関数L2、第3検量線関数L3の少なくとも1つを設定する。ここでは全てを設定するが、3つのうちの誤差の少ない関数、又は、それらの組み合わせを用いることができる。判定対象となる表面5の粗さ度を判定したい場合には、その判定対象の表面5を撮像し、演算した表面粗さ指数M、色差ΔEから、前記各関数を設定しておけば、対応する表面粗さ評価指数Est’、表面粗さ計測値Ra’(実測値ではなく推定演算値)を求めることができる。これにより、表面粗さ度の正確な評価を行うことで、基準表面に対する表面粗さ度の適切な比較判定が可能となり、不良品の発生を防止できるのである。詳細は実施例1〜3で説明する。
次の本実施形態2の表面105の表面粗さ判定装置101を図11、図12、図13を参照して説明する。対応する同様な要素については100番台として説明を援用し、主として、相違点を説明する。
基準面、検査面を撮像する2次元色彩計102、2次元色彩計102とスイッチ109を介して接続し信号を受信し、表面粗さ指数Mの演算を行う演算処理装置103と、演算処理装置103と接続し指数表示を行う表示装置107とを備えている。
図11に示す通り、演算処理装置103は、基準面を撮像することにより取得される刺激値XYZ1を計算する演算部103Aと、検査面となる製品の表面105を撮像することにより取得される刺激値XYZ2を計算する演算部103Bと、演算部103Aと演算部103Bを接続し、表面105の表面粗さ指数Mを演算する演算部103Cと、を備える。演算部103CからのOK信号又はNG信号を表示装置107に送信したり、外部に送信する。なお、スイッチ109は、演算部103Aと演算部103Bを選択的に2次元色彩計102と接続する。
図12は2つの画像A,Bから色度ヒストグラム分布の比較による表面粗さ指数Mを演算するフローチャートである。図12に示す通り、プログラムが起動すると、画像Aから検査面の検査領域Kを切り出し特定し、設定する(S201)。次に画像Bから画像Aと同様、基準面の検査領域Kを切り出し特定し、設定する(S202)。画像A,Bより色度値XYZの演算を行う(S203)。検査領域Kにおいて、検査面と基準面のXYZ色空間ヒストグラム分布をそれぞれ演算し、作成する(S204)。XYZ値の平均値を演算する(S205)。XYZ色空間ヒストグラム分布のミニマム分布を特定し、重なり領域DでのXYZ色空間ヒストグラム分布の積算数を演算する(S206)。表面粗さ指数M=(重なり領域Dに属する画素の積算数/検査領域Kの全体の画素数)×100(%)である。重なり領域Dでの積算数はT1、T2のうち、少ない方の積算数を加算演算する。表面粗さ指数Mを演算し(S207)、リターンする。
なお、検査領域Kに対応するXYZ分布の演算の場合、表面粗さ指数Mの演算は、X軸、Y軸、Z軸の3次元空間での分布により行う。検査面と基準面でのXYZ空間座標でのヒストグラムを、それぞれ、T1(X,Y,Z)、T2(X,Y,Z)とする。XYZの色空間であるとヒストグラム分布は地球儀のような形状になっており、2つのヒストグラム分布が立体的に重なり合っている場合と分離している場合がある。3次元空間の検査領域Kを格子Gで区画し、3次元でのT1(X,Y,Z)、T2(X,Y,Z)の色度ヒストグラム分布とミニマム分布を求め、同様な指数の演算を行う。格子Gの積算数H1,H2を平面上に投影し、その面内で同様な積算で格子G上の重なり領域Dの積算数を演算してもよい。XYZ色度の場合には、明るさの情報がないため、XYZ空間では、画像の明るさが変わってもヒストグラム分布は変化しない。
XYZ色空間ヒストグラムに代えてLab色空間ヒストグラムを表面粗さ判定に用いる場合には、図13のフローチャートを用いる。図13の説明は図12の上記説明を援用し、ステップは300番台とする。S305では画像Aの検査領域Kの平均Lab値の計算と画像Bの検査領域Kの平均Lab値の演算となる。Lab色度の場合には、明るさの情報があるため、Lab空間では、画像A,Bの明るさが変わると、ヒストグラム分布が変化する。
次に本実施形態3の表面205の表面粗さ判定装置201につき図14を参照して説明する。対応する同様な要素については200番台として説明を援用し、主として、相違点を説明する。
図14に示す通り、色・粗さ判定対象は表面205の一部の領域であり、2次元色彩計202が表面205の検査領域Kを撮像する。演算処理装置203は、基準となる刺激値XYZ1からLabを計算する演算部203Aと、判定対象となる刺激値XYZ2からLabを計算する演算部203Bと、演算部203Aと演算部203Bと接続しLab平均値を演算する演算部203Cと、基準Labと対象Labから表面粗さ指数Mを演算する表面粗さ指数M演算部203Dとを備え、演算部203C、203Dからの演算値を粗さ処理装置250に送信する。粗さ処理装置250は、適正な表面粗さになっているかどうかを、画面に表示された指数値をチェックして判定し、さらに粗さ処理を行う。なお、スイッチ209は、演算部203Aと演算部203Bを選択的に2次元彩色計202と接続する。主要な処理は概ね実施形態1、2のフローチャートと同様であるので、説明は援用する。
検査領域Kに対応するLab空間における色度ヒストグラム分布の演算の場合、XYZ値からLabへ変換を行う。指数の演算は、L軸、a軸、b軸の3次元空間での分布により行う。Lab色空間分布は立体楕円形状である。検査面と基準面でのLab空間座標でのヒストグラムを、それぞれ、U1(L,a,b)、U2(L,a,b)とする。Labの色空間であるとヒストグラム分布は地球儀のような形状になっており、2つのヒストグラム分布が立体的に重なり合っている場合と分離している場合がある。3次元空間の検査領域Kを格子Gで区画し、3次元でのU1(L,a,b)、U2(L,a,b)の色空間ヒストグラム分布とミニマム分布を求め、同様な指数の演算を行う。格子Gの積算数H1,H2を平面上に投影し、その面内で同様な積算で格子G上の重なり領域Dの積算数を演算する。Lab色空間の場合には、明るさの情報があるため、Lab空間では、画像A,Bの明るさが変わると、L値が変化して、ヒストグラムU1、U2がLab空間内で位置がずれるため、明暗を考慮に入れた判定が可能である。画像A,Bの明るさが違えば分布の位置がずれるからである。例えば、Lab色空間ヒストグラム分布は、暗くなれば下方にずれ、明るくなれば上方にずれる。
その他の応用例を説明する。基準面・検査面の取得された画像A,Bの2枚の画像を重ねあわせ、それぞれの色度ヒストグラム分布を表示装置7に表示し、それぞれの色度ヒストグラム分布をひとつの色度図上で重ね合わせた色度図が表示でき、色の相違を平均Lab値で判定し、一方、表面5の粗さ度を示す表面粗さ指数Mの演算を分離してパーセンテージで表示できる。これにより、検査面の色度分布と基準面の色度分布の空間的広がりのズレで示す凹凸感や粗さ感を数値で確実に確認できる。各領域T毎に検査結果が数値で表示される。格子Gのグリッド幅の調節が可能である。指数の閾値を任意で設定可能である。測定結果と撮影した画像A,Bは保存が可能である。目視検査では避けられなかった個人差の問題や、客先との判断基準のトラブル等を減らして、表面粗さの仕上がり具合の基準化や安定した表面粗さ管理を行うことが可能となる。
実施形態4の白色光源による表面粗さ判定装置及び表面粗さ判定方法を図15〜図19を参照して説明する。基本的には実施形態1から3と共通するので、共通点についての説明は援用する。
表面粗さ指数Mの計算について、実施形態1〜3は、オフセット補正を使わない場合である。これは、校正するデータの材料と、測定対象の材料が同じものである場合、色の変化と、色分布の変化と両方のパラメータで、校正データを作成するため、より精度の高い粗さデータを求めることが出来る。これに対して、実施形態4はオフセット値を使う場合である。測定対象の金属材料が校正するものと同じであるかどうかが不明の時に、オフセット値を補正した色分布一致度のみでの校正曲線を求める手法である。
実施形態1〜3では、金属材料又は複合材料をエッチング等で凹凸をつけるため、材料本来の色は同じとなるので、同じ材料の校正用基板を使用している。実施例4では、校正曲線を作るのに異なる材料の校正用基板を用いる。校正用基板としては、例えば、粗さの標準として販売している校正用基板がある。市販の校正用基板を用いる場合、粗さ値がわかっていれば、その粗さ値をRa値として使用できる。
実施形態4では、表面粗さの測定手順は次の通りである。a.機械式粗さ計で校正用基板のRa値を測定する。b.表面粗さ指数Mを計算する。ここで、測定対象が校正用のものと同一の材料の時には、オフセット補正なしの演算を行い、測定対象の材料が不明の時には、オフセット補正を行って、演算する。
測定対象の金属材料が校正するものと同一材料である場合には、色変化(ΔE、Δb等)も校正用直線(曲線)用のパラメータとして使うが、材料のもとの色が不明な時には、色のオフセットを行い、表面粗さ指数M(一致度)でのみ、第4検量線(校正用曲線)を作るのが追加機能である。
図38に示すデータに対し、Ra=A/(M−B)の校正曲線を設定して、エクセルのソルバーのオプション機能(設定した関数で最小二乗法の計算を行う便利な機能)を使ってA、Bを求めると、A=62.31、B=18.526となり、Ra=62.31/(M−18.526)の校正曲線が得られた。Raは、Ra機械実測値で、JISで規定している表面粗さ値である。機械式の粗さ計で求める。定義はJISにある。A,Bは校正係数である。
次にオフセット補正について図15〜図19を参照して説明する。図16および図18に示す通り、2つのヒストグラム分布T1(X,Y,Z)、T2(X,Y,Z)のいずれか一方の中心座標を他の中心座標に一致するように、中心座標の偏差ΔF分だけ、XYZ色空間ヒストグラム分布全体をオフセット(写像)処理する(S407)。いずれか一方の分布を他の分布にオフセット補正させないと、色成分の差も計算してしまうことになるからである。グラフ上でも計算だけでもできる。オフセット量は適宜設定可能である。例えば、一方の中心から他の中心へのオフセット補正に代えて、一方の中心から他の中心の所定範囲内へのオフセットでも同様の効果がある。要は、粗さが把握できる適宜のオフセット量で接近させればよい。
オフセット補正(S407)の前後に、XYZ色空間ヒストグラム分布の中心座標C1、C2を特定するステップを備える(S406、S408)。ここでは中心座標は図心(重心位置)とする。図12と図16が相違する点は、S406〜S408の3つのステップが挿入された点である。
XYZ色空間ヒストグラムに代えて図19に示すLab色空間ヒストグラムを表面粗さ判定に用いる場合には、図17のフローチャートを用いる。図17の説明は図16の上記説明を援用する。また、xy色度ヒストグラムを用いる場合には図15のようにオフセットを行う。フローチャートは省略する。
以上、本実施形態1〜4を説明したが、以下の効果がある。(1)平均L値、平均a値、平均b値、及び、(2)2つのH1(x,y)、H2(x,y)、T1(X,Y,Z)、T2(X,Y,Z)、U1(L,a,b)、U2(L,a,b)に関する色差ΔE、表面粗さ指数Mについて、それぞれの例を挙げたが、色と表面粗さとの違いを、分離して提示することにより、正確、迅速な評価をおこなうことができ、表面粗さ調整により、仕上がり具合について適格な指針を与えることができる。
また、本実施形態は、表面粗さの凹凸の高さが、ナノレベルからマイクロメータのレベルでの微細な粗さの判定も可能とし、測定時間の短縮化、曲面の粗さ判定、面積の大きな製品の粗さ判定を正確に行うことが可能となる。
さらに、測定対象の材料が不明の時には、オフセット補正を行って、演算するので、正確な表面粗さの計測が可能となる。
本発明の表面粗さ判定装置1により、表面5の粗さを評価するため実施例1〜実施例3の通り、測定し、評価を行った。本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、実施例中における特性値の測定及び評価は下記のように行った。
(1) 判定装置
有限会社パパラボのPPLB-200を用いた。PPLB-200は2次元色彩計RC-500を備える。照明はPanasonic社製D50照明を用いた。
(2)撮影
PPLB-200による撮影は、部屋が暗室状態で行った。2次元色彩計は静止画タイプのものを使用し、白色板のL値を100として測定を行った。
(3)測定範囲
サンプルの測定範囲について、測定範囲は、実施例1、2、3は画像A,Bの全体である。
(4)粗さ計について
実施例1、2、4はテーラーホブソン社製の粗さ計であるFORM TALYSURF(登録商標)−120(AFM接触式)粗さ計、実施例3はキーエンスのVN−8010の非接触式の粗さ計を用いた。
(5)測定項目及び結果について
サンプルの基準面と検査サンプルの検査面の測定を行った。撮影した基準・検査サンプル画像A,Bの表面粗さ指数M、ΔE、平均Labの差を求めた。表面粗さ指数Mはヒストグラム分布の中心座標のオフセット処理をせずに求めた値である。平均Lab値の差=検査サンプルの平均Lab値−基準サンプルの平均Lab値とした。測定結果から、表面粗さ指数の結果とΔEの数値から、基準サンプルに色も表面5の表面粗さも一番類似しているサンプルを特定した。ΔEに関して人間の視感度特性を考慮したΔE00を使用した。
実施例1のサンプル1、2、実施例2のサンプル3、実施例3のサンプル4の表面粗さ指数M、Lab、ΔL、Δa、Δb、ΔEを求めた。表面粗さ指数Mはそれぞれのヒストグラム分布の中心座標のオフセット処理をせずに演算した指数である。LabはLab座標での表面粗さ指数、Mはxy座標での表面粗さ指数、ΔL=平均L値の差=検査サンプルの平均L値−基準サンプルの平均L値とした。ΔE、Δa、Δbも同様である。測定結果から、表面粗さ指数の結果とΔEの数値から、サンプル1に色も表面の粗さも一番類似しているサンプル2又は3を特定した。ΔEに関して人間の視感度特性を考慮したΔE00を使用した。
(6)検量線の設定について
実施例1については、RaとEst、RaとΔE、RaとM、実施例3については、RaとM、RaとEstの間の検量線を、重回帰分析により求めた。実施例1はミクロンオーダーでの粗さを評価するため、実施例3はナノオーダーでの粗さを評価するため、重回帰分析を行った。
RaとEstの間の検量線については、Estに数式6,7を用い、重回帰分析により、最小自乗法による誤差を最小とするようにa,bを設定した。
実施例1はアルミ合金にケミカルエッチングは処理したものについての粗さの評価である。
表1及び図20〜図22にサンプル1の測定・演算結果を示す。図20において横軸は表面粗さ計測値Ra(単位はμ)、縦軸は表面粗さ評価指数Estを示し、点線で示す直線は、第1検量線L1である。図21において横軸は色差ΔE、縦軸は表面粗さ計測値Ra(単位はμ)を示し、点線で示す直線は、第2検量線L2である。図22において横軸は表面粗さ指数M、縦軸は表面粗さ計測値Ra(単位はμ)を示し、点線で示す直線は、第3検量線L3である。
a=0、b=0.105242が得られた。表面粗さ評価指数Estと表面粗さ計測値Raの相関係数は0.887104、色差ΔEと表面粗さ計測値Raの相関係数は0.887104、表面粗さ指数Mと表面粗さ計測値Raの相関係数は−0.8377、総合誤差TotErroは5.9516である。
実施例1のサンプル2はケミカルエッチングを施したアルミニウム合金である。
表2及び図23〜図25にアルミニウム合金のサンプル2の測定と数式6等による演算結果を示す。図23において横軸は表面粗さ計測値Ra(単位はμ)、縦軸は表面粗さ評価指数Estを示し、点線で示す直線は、第1検量線L1である。図24において横軸は色差ΔE、縦軸は表面粗さ計測値Ra(単位はμ)を示し、点線で示す直線は、第2検量線L2である。図25において横軸は表面粗さ指数M、縦軸は表面粗さ計測値Ra(単位はμ)を示し、点線で示す直線は、第3検量線L3である。
a=0.000893、b=0.694288が得られた。表面粗さ評価指数Estと表面粗さ計測値Raの相関係数は0.849651、色差ΔEと表面粗さ計測値Raの相関係数は0.849774、表面粗さ指数Mと表面粗さ計測値Raの相関係数は−0.88685、総合誤差TotErroは11.60513である。なお、図23で1点だけ上方に外れたEst=8.352787があるが、測定誤差として除去すれば、相関係数は概ね0.9になる。
表1、2において、No.11〜No.19、No.21〜No.29まで、エッチング時間を増やしていったとき、アルミニウム合金のケミカルエッチングをしないものとの比較をすると、表面粗さ指数Mが低下してゆき、ΔEとRaとEstが増加する。
アルミニウム合金のケミカルエッチングによる粗さ加減は、最初は表面5が真っ平らなものから、エッチングをかけると表面5が荒れてきて、さらにエッチングをかけると、表面5に穴が掘れたり、凹みができたり、中に空洞ができたりすることで、様々な粗さ形状の態様があるが、正確に評価することができる。
実施例1によれば、第1検量線L1〜第3検量線L3により、ミクロンオーダー又はナノオーダーの粗さを正確に演算でき、適正な凹凸感を把握でき、閾値と比較することで、不良品を低減できる。例えば、ケミカルエッチングを行ったアルミニウム合金に樹脂層を被覆した場合、エッチングの過不足によりアルミニウム合金からの樹脂層の剥離が生じやすい。樹脂のアルミニウム合金へのコーティングの前に、アルミニウム合金の表面5を検査することで、アルミニウム合金と樹脂層の剥離が起きない一番、最適な表面粗さを適切に処理することで、アルミニウム合金から樹脂層が剥離する現象を回避でき、産業上の利用価値が高い。
実施例2の樹脂部品であるサンプル3について、測定場所、一致度、ΔE00、ΔL、Δa、Δb値等を示す。実施例1と同様に、重回帰粗さ分析は行ったが、実施例1と同様な手法により、同様の結果が得られたので、記載は割愛する。測定範囲はそれぞれ、画像A,Bの枠線内である。
図27に示すサンプル3は、2種類の樹脂P1とP2のシボ加工の違いによる表面粗さの定量化について行った。照明色温度5000Kである。
サンプル3の評価結果は図28に示す。LabとΔEでの違いを検出した。表面粗さ指数M(粗さ一致度)は85%である。3次元xy一致度xy3Dは93%である。P1を基準として、P2はLab一致度は26%となり、表面粗さを明確に区別できた。色差ΔEは1.163、ΔLは1.532、Δaは−0.017、Δbは0.108である。P2のL値が高く明るいことが分かる。Δa、Δbで素材の色の違いが分かる。xy3Dは、色のシフトを補正した数値である。
図26は、シボ感の違いによる「見え」の違いは、シボの表面形状の違いによる反射の違いを示している。全反射部分は照明の色が強く反映し、輝度も高くなる。従って、(1)は局所的に全反射した光が多く眼に入りぎらついて見える。一方、(2)のように平面が少ないと全反射方向が分散されて面で見たときにぎらつきは感じられない。また、様々な反射が絡んで色の干渉が起こり、色の広がりを見せる。(3)は細かく全体的に拡散しているため、輝度は落ちる。色も平均化される。
実施例2によれば、表面粗さ指数Mにより、適正な凹凸感を把握でき、閾値と比較することで、不良品を低減できる。例えば、樹脂の表面5をシボ加工した場合等には、色差ΔEはほとんどない場合でも、シボの深いもの、或いは、シボの浅いものにおいて、表面5の微妙なツヤ感の変化を把握できる。シボ加工の不良を回避できる等、種々の態様に利用できるので、産業上の利用価値が高い。
実施例3のサンプル4はアルミ合金の金属表面のナノオーダーの表面粗さを評価する例である。表面粗さ計測値Ra(単位:nm)はキーエンスのVN−8010の非接触式の粗さ計を用いて計測した。
表面粗さ指数Mと表面粗さ計測値Raと表面粗さ評価指数Estの計測・演算結果を表3に示す。表3の演算は数式7による。表面粗さ計測値RaのサンプルNo.41〜47までの表面の凹凸を示す三次元CGを図29〜図35に示す。図29ではサンプルNo.41の全領域で平均の凹凸が88.33nm、図30ではサンプルNo.42の全領域で平均の凹凸が58.83nm、図31ではサンプルNo.43の全領域で平均の凹凸が88.33nm、図32ではサンプルNo.44の全領域で平均の凹凸が57.71nm、図33ではサンプルNo.45の全領域で平均の凹凸が93.9nm、図34ではサンプルNo.46の全領域で平均の凹凸が112.85nm、図35ではサンプルNo.47の全領域で平均の凹凸が100.18nmである。上記数値は、基準表面からの高さの平均値であり、凹凸を平均化した表面の歪みを示す値である。サンプルNo.41〜47のサンプル番号が増加すると、エッチング時間を順次増加するため、表面粗さ指数Mは減少し、表面粗さ計測値Raは増加している。
a=1.141439、b=143.1954が得られた。総合誤差TotErroは940.2347である。
実施例3によれば、図37に示す第1検量線L1、図36に示す第3検量線L3により、適正な凹凸感を把握でき、ナノオーダーの表面粗さを評価でき、不良品を低減できる。
実施例4はアルミ合金の金属表面のナノオーダーの表面粗さを評価する例である。表面粗さ計測値Ra(単位:μm)は機械式粗さ計(テーラーホブソン社製のFORM TALYSURF(登録商標))を用いて、校正基板としての異なる材料の金属製の粗さ標準片を計測した。粗さ標準片と測定対象の金属の本来の色が異なる場合、ベース色のオフセットを補正した値である必要があるからである。図38に測定データを示す。
(1)測定対象の金属材料が同一のときには、オフセットなしの表面粗さ指数Mを求め、表面粗さ指数MからRa値を演算する。校正値は、JISに規定されており、例えば、最小二乗法で校正曲線を求める。
(2)測定対象の金属材料が不明のときには、実施形態4で示すオフセット補正を行った表面粗さ指数Mを求め、第4検量線により、Ra値に変換する。
図38に示すデータの第4検量線(校正曲線)は、数式9のようになった。
(数9)
Ra=62.31/(M−18.526)
Raは表面粗さ計測値Ra(算術平均粗さ)、Mは表面粗さ指数である。
図38に示すグラフの表面粗さ計測値Raは粗さ標準片の8種類の異なる粗さ表面を計測したものである。
表4は6つの測定対象に関して測定し、オフセット演算した表面粗さ指数Mから第4検量線を用いて演算したRa値と、別法による粗さ計(機械式粗さ計であるテーラーホブソン社製のFORM TALYSURF(登録商標)粗さ計)で測定したRa値を示す。図39は、そのグラフと最小二乗法による検量線である。
実施例4によれば、Raの誤差は0.75以下であり、良好な結果を得られた。
なお、本発明の実施形態は、上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、改変等を加えることができるものであり、それらの改変、均等物等も本発明の技術的範囲に含まれ、前記技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることは言うまでもない。例えば、三つの分光感度(S1(λ)、S2(λ)、S3(λ))に従って画像A,Bを取得する方式について、本実施形態において挙げた方式は具体例に過ぎないものであって、これらに限られず、その他の方式によっても本発明の技術的思想は実施される。