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JP6847874B2 - 差動装置 - Google Patents

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JP6847874B2
JP6847874B2 JP2018006731A JP2018006731A JP6847874B2 JP 6847874 B2 JP6847874 B2 JP 6847874B2 JP 2018006731 A JP2018006731 A JP 2018006731A JP 2018006731 A JP2018006731 A JP 2018006731A JP 6847874 B2 JP6847874 B2 JP 6847874B2
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Description

本発明は、差動装置、特に中空のケース本体、及びケース本体の外周に一体に突設したフランジ部を有して第1軸線回りを回転可能なデフケースと、ケース本体内に収容されるデフ機構と、ケース本体に設けられる作業窓と、動力源に連なる駆動ギヤと噛合して駆動ギヤからの動力をデフケースに伝えるリングギヤとを備えていて、リングギヤが駆動ギヤとの噛合により第1軸線に沿う方向のスラスト荷重を受ける歯部を有する構造の差動装置に関する。
斯かる差動装置は、下記特許文献1に開示されるように、既に知られている。
特許第4902727号公報
特許文献1に開示される差動装置のデフケースでは、ケース本体に大形の作業窓を二個形成し、その両作業窓に挟まれたケース本体の幅狭部外周に突設したフランジ部にリングギヤを結合している。そのため、結合部の簡素化やデフケースの軽量化が図られる反面、作業窓を周方向で挟む結合部の相互間隔(即ちリングギヤの作業窓対応部分に対するデフケースの支持スパン)が長くなり過ぎる。ところが非結合部は結合部に比較して剛性が低いため、伝動中に駆動ギヤからリングギヤに伝わるスラスト荷重(即ちリングギヤが受ける倒れ方向の荷重)に対する剛性が不足するおそれがあり、またリングギヤの倒れに対するデフケースの剛性バランスをとりにくくなる等の問題がある。
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、従来装置の問題を簡単な構造で解決可能とし、併せて、上記したスラスト荷重に因りケース本体の作業窓周辺部に応力集中が生じるのを効果的に防止可能とした差動装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、中空のケース本体、及び前記ケース本体の外周に一体に突設したフランジ部を有して第1軸線回りに回転可能なデフケースと、前記ケース本体内に収容されるデフ機構と、前記ケース本体に設けられる作業窓と、動力源に連なる駆動ギヤと噛合して該駆動ギヤからの動力を前記デフケースに伝えるべく、前記フランジ部に結合されるリングギヤとを備え、前記デフ機構は、前記第1軸線と直交する第2軸線上に配置されて前記デフケース又は前記リングギヤに支持されるピニオン軸と、該ピニオン軸に回転自在に支持されるピニオンギヤと、該ピニオンギヤに噛合し且つ前記ケース本体に前記第1軸線回りに回転自在に支持される一対のサイドギヤとを有し、前記リングギヤは、前記駆動ギヤとの噛合により前記第1軸線に沿う方向のスラスト荷重を受ける歯部を有し、前記作業窓は、前記第1軸線と直交する投影面で見て、前記第2軸線の一側方又は両側方に配置される差動装置において、前記投影面で見て、前記フランジ部及び前記リングギヤ間の結合部のうち最も前記作業窓寄りの特定結合部分が、前記第1,第2軸線と直交する第3軸線に沿う方向で前記作業窓の内端部よりも外方側に位置し且つ前記作業窓が、前記特定結合部分と前記第1軸線とを結ぶ仮想直線よりも前記第3軸線に沿う方向で外方側に位置することを第1の特徴とする。
また本発明は、第1の特徴に加えて、前記作業窓が、前記第3軸線に沿う方向で前記ケース本体の外周端又はその近傍部まで延びており、前記フランジ部は、前記作業窓の、前記第3軸線に沿う方向で外端部に対応する位置において、前記デフケースの周方向に途切れていることを第2の特徴とする。
また本発明は、第1又は第2の特徴に加えて、前記投影面で見て前記作業窓は、前記第3軸線に沿う方向で外端部寄りの外方窓部分が、該外方窓部分より内方側の内方窓部分よりも、前記第2軸線に沿う方向で幅狭に形成されることを第3の特徴とする。
さらに本発明は、第1〜第3の何れかの特徴に加えて、前記投影面で見て、前記特定結合部分が、前記デフケースの、前記第2軸線と前記第3軸線で挟まれた領域の二等分線上、又は該二等分線よりも前記第3軸線寄りに配置されることを特徴とする第4の特徴としている。
本発明及び本明細書において、「作業窓」とは、デフ機構の各構成ギヤ(即ちサイドギヤ及びピニオンギヤ)のケース本体内への組込みを可能とする目的、又はケース本体の内面への機械加工を可能とする目的を達成するためにケース本体に形成される作業用の窓をいう。
本発明の第1の特徴によれば、デフケースのケース本体に作業窓を設けた差動装置において、第1軸線と直交する投影面で見て、デフケースのフランジ部及びリングギヤ間の結合部のうち最も作業窓寄りの特定結合部分が、第1,第2軸線と直交する第3軸線に沿う方向で作業窓の内端部よりも外方側に位置するので、作業窓の内端位置に対し特定結合部分を極力外方寄りに配して、作業窓を周方向に挟む特定結合部分の相互間隔(即ちリングギヤの作業窓対応部分に対するデフケースの支持スパン)を比較的短くできる。これにより、伝動中に駆動ギヤからリングギヤに伝わるスラスト荷重(即ちリングギヤが受ける倒れ方向の荷重)に対する剛性を確保でき、リングギヤの倒れに対するデフケースの剛性バランスをとり易くなる。
しかも、上記投影面で見て作業窓が、特定結合部分と第1軸線とを結ぶ仮想直線よりも第3軸線に沿う方向で外方側に位置するので、伝動中、上記したスラスト荷重が特定結合部分及びフランジ部を介してケース本体の大径部に伝達され更に小径部側に伝達される際に、その荷重伝達経路が作業窓を迂回しない経路態様となり、これにより、ケース本体の作業窓周辺部に応力集中が生じるのを効果的に回避可能となるため、デフケースの剛性強度を高める上で有利になる。
また第2の特徴によれば、作業窓は、第3軸線に沿う方向でケース本体の外周端又はその近傍部まで延びており、フランジ部は、作業窓の、第3軸線に沿う方向で外端部に対応する位置において、デフケースの周方向に途切れているので、デフケースの軽量化を図る上で有利となる。またこのような軽量化によっても、上記した特定結合部分の作業窓に対する独特の配置構成によりデフケースの剛性強度の低下を最小限に抑えることができる。
また第3の特徴によれば、上記投影面で見て作業窓は、第3軸線に沿う方向で外端部寄りの外方窓部分が、外方窓部分より内方側の内方窓部分よりも、第2軸線に沿う方向で幅狭に形成されるので、作業窓の開口面積を広く確保(従って作業窓を通しての作業性を確保)しながら、ケース本体のフランジ部に対する支持領域をケース周方向に拡げることができる。これにより、ケース本体のフランジ部に対する支持剛性を高めることができるから、スラスト荷重が作用した時のリングギヤの倒れを効果的に抑制可能となる。
また第4の特徴によれば、上記投影面で見て、特定結合部分が、デフケースの、第2軸線と第3軸線で挟まれた領域の二等分線上、又は該二等分線よりも第3軸線寄りに配置されるので、作業窓を周方向で挟む特定結合部分の相互間隔、即ち上記した支持スパンを十分短くでき、これにより、スラスト荷重が作用した時のリングギヤの倒れをより効果的に抑制可能となる。
本発明の一実施形態に係る差動装置及びその周辺機器を示す縦断面図(図2の1−1線断面図) ミッションケース、車軸、軸受及びデフ機構のギヤの図示を省略して示す上記差動装置の左側面図 上記差動装置のデフケースを単体で示す左側面図(図2対応図) 図3の4−4線断面図 図3の5矢視図 デフケースを単体で示す斜視図(図3の6矢視より見た斜視図) 参考例に係るデフケースを単体で示す左側面図(図3対応図)
本発明の実施形態を添付図面に基づいて以下に説明する。
図1において、車両(例えば自動車)のミッションケース9内には、図示しない動力源(例えば車載のエンジン)からの動力を左右の車軸11,12に分配して伝達する差動装置10が収容される。差動装置10は、デフケース8と、デフケース8に内蔵されるデフ機構20とを備える。
デフケース8は、概略球体状に形成されて内部にデフ機構20を収納した中空のケース本体8cと、ケース本体8cの右側部及び左側部に一体に連設されて第1軸線X1上に並ぶ第1,第2軸受ボス8b1,8b2と、ケース本体8cの外周部に径方向外向きに一体に形成されて、第1軸線X1を中心とした円周方向に延びるフランジ部8fとを備える。そして、第1及び第2軸受ボス8b1,8b2は、それらボス8b1,8b2の外周側において軸受13,14を介してミッションケース9に第1軸線X1回りに回転自在に支持される。
また第1及び第2軸受ボス8b1,8b2の内周面には、左右の車軸(ドライブ軸)11,12がそれぞれ回転自在に嵌合されると共に、潤滑油引込み用の螺旋溝15,16(図4参照)が設けられる。螺旋溝15,16は、各軸受ボス8b1,8b2と各車軸11,12との相対回転に伴いミッションケース9内の潤滑油をデフケース8内に送り込むねじポンプ作用を発揮可能である。
フランジ部8fには、リングギヤRが後述する複数のボルトB1〜B8で締結される。リングギヤRは、ヘリカルギヤ(斜歯)状の歯部Ragを外周に有するリムRaと、このリムRaの内周面から一体に突出するリング板状のスポークRbとを備えており、歯部Ragは、エンジンに連なる変速装置の出力部となる駆動ギヤ31と噛合する。
またスポークRbは、その一面がフランジ部8fの一側面8fs(第1軸受ボス8b1側の側面)に当接すると共に、内周面がフランジ部8fの円弧状支持面8fbに嵌合した状態で、フランジ部8fに複数のボルト(即ち結合部)B1〜B8で締結される。
それらボルトB1〜B8は、フランジ部8fの周方向に間隔をおいて並列配置され、スポークRbを貫通してフランジ部8fに螺挿される。尚、図1において、歯部Ragは、表示を簡略化するために、歯筋に沿う断面表示とした。
而して、リングギヤRは、ヘリカルギヤ状の歯部Ragを有することで、同じくヘリカルギヤ状の歯部を有する駆動ギヤ31との噛合により第1軸線X1に沿う方向のスラスト荷重(噛合反力のスラスト方向成分)を受け、このスラスト荷重は、リングギヤRからフランジ部8fを経てケース本体8cに受け止められる。
デフ機構20は、ケース本体8cの中心Oで第1軸線X1と直交する第2軸線X2上に配置されるピニオン軸21と、このピニオン軸21に回転自在に支持される一対のピニオンギヤ22,22と、各ピニオンギヤ22と噛合する左右のサイドギヤ23,23とを備える。左右のサイドギヤ23,23は、デフ機構20の出力ギヤとして機能するものであり、それらサイドギヤ23,23の内周面には、左右の車軸11,12の内端部がそれぞれスプライン嵌合される。
ピニオンギヤ22及びサイドギヤ23の各々の背面はケース本体8cの内面で回転自在に支承される。尚、ケース本体8cの上記内面は、本実施形態では球面状のものを例示したが、これをテーパ面、或いは第1軸線X1又は第2軸線X2と直交する平坦面としてもよい。 ピニオン軸21は、ケース本体8cの外周端部及びフランジ部8fに跨がるように形成されて第2軸線X2上に延びる一対の支持孔18に挿通、保持される。そして、ピニオン軸21は、リングギヤRのフランジ部8fへの結合状態では、リングギヤRのスポークRb内周面に設けた係合凹部Rbiにピニオン軸21の両端が係合することで、支持孔18からの離脱が阻止される。また、このようにリングギヤRの係合凹部Rbiにピニオン軸21を係合させたことで、ピニオン軸21とリングギヤR間が回転方向に連結されるため、リングギヤRからの伝達トルクがピニオン軸21に直接伝達され、それだけデフケース8の荷重負担が軽減される。尚、ピニオン軸21と支持孔18との嵌合部には、多少の遊隙を設定してもよい。
而して、駆動ギヤ31からリングギヤRに伝達された回転駆動力は、デフ機構20を介して左右の車軸11,12に対し差動回転を許容されつつ分配伝達されるが、このデフ機構20の動力分配機能は従来周知であるので、これ以上の説明を省略する。
図2〜図6に示すように、デフケース8は、フランジ部8fより第1軸受ボス8b1側のケース本体8cの側壁に、一対の作業窓Hを有する。この一対の作業窓Hは、第1軸線X1と直交する投影面(図2〜図4参照)で見て、第2軸線X2の両側方に配置され、換言すれば、第1,第2軸線X1,X2と直交する第3軸線X3上で第1軸受ボス8b1を挟んで並列するようにケース本体8cの上記側壁に形成される。
各々の作業窓Hは、図2〜図6にも明示されるように第3軸線X3に沿う方向でケース本体8cの外周端又はその近傍部まで(本実施形態では外周端まで)延びている。一方、フランジ部8fは、作業窓Hの、第3軸線X3に沿う方向で外端部Hoeに対応する位置において、デフケース8の周方向に途切れている。そして、その途切れたフランジ部8fの周方向端面8feは、本実施形態では第3軸線X3と略直交する平面に形成される。
尚、作業窓Hは、上記投影面で見て、第2軸線X2の一側方にのみ配置してもよい。
ところで本実施形態では、上記投影面で見て、フランジ部8f及びリングギヤR間を結合する複数のボルト(即ち結合部)B1〜B8のうち最も作業窓H寄りの特定ボルト(即ち特定結合部分)B1,B4,B5,B8が、第3軸線X3に沿う方向で作業窓Hの内端部Hieよりも外方側に位置するように配置される。しかも、作業窓Hは、上記投影面で見て、特定ボルト(即ち特定結合部分)B1,B4,B5,B8と第1軸線X1とを結ぶ仮想直線L1,L2よりも、第3軸線X3に沿う方向で外方側に位置するように配置される。
また、作業窓Hは、上記投影面で見て、作業窓Hの外端部Hoe寄りの外方窓部分Hoと、その外方窓部分Hoより第3軸線X3に沿う方向で内方側に存する内方窓部分Hiとを有しているが、特に本実施形態では外方窓部分Hoが内方窓部分Hiよりも、第2軸線X2に沿う方向で幅狭に形成される(図3参照)。そして、デフ機構20のデフケース8への組付けに際して、ピニオンギヤ22やサイドギヤ23は、特に幅広の内方窓部分Hiを通してデフケース8内に無理なく装入可能である。
更に本実施形態では、上記投影面で見て、特定ボルト(即ち特定結合部分)B1,B4,B5,B8が、デフケース8の、第2軸線X2と第3軸線X3で挟まれた領域の二等分線L1,L2上に配置される。尚、本発明の別の実施形態として、図示はしないが、上記投影面で見て、特定ボルト(即ち特定結合部分)B1,B4,B5,B8を上記二等分線L1,L2よりも第3軸線X3寄りに配置したものも実施可能である。
次に前記実施形態の作用を説明する。
デフケース8は、その全体が金属材料(例えばアルミ、アルミ合金、鋳鉄等)で一体成形(例えば鋳造成形)され、その一体成形後に適宜、デフケース8の各部に対し機械加工が施される。
そして、差動装置10の組立に際しては、先ずデフケース8のケース本体8c内にデフ機構20のピニオンギヤ22及びサイドギヤ23を、作業窓Hを通して装入し、その後、ピニオン軸21を支持孔18に挿入する。次いで、リングギヤRのスポークRbの一面及び内周面をデフケース8のフランジ部8fの一側面8fs及び支持面8fbに当接させ、ボルトB1〜B8でリングギヤR及びフランジ部8f間を締結する。この締結状態でピニオン軸21は、それの両端がスポークRb内周面に係合することで支持孔18からの抜け止めがなされる。
そして、このデフ機構20を収納したデフケース8の第1,第2軸受ボス8b1,8b2を軸受13,14を介してミッションケース9に回転自在に支持し、更に左右の車軸11,12の内端部を第1,第2軸受ボス8b1,8b2に挿入し且つ左右のサイドギヤ23,23の内周にスプライン嵌合することで、差動装置10の自動車への組付けが終了する。
ところで駆動ギヤ31とリングギヤR間でのトルク伝達中、歯部Ragがヘリカル状であるリングギヤRには、第1軸線X1に沿う方向のスラスト荷重が作用し、その荷重の向きは、自動車の前進・後退の切替わりに応じて切替わる。そして、図1,5で左向きのスラスト荷重がリングギヤRに作用したときは、デフケース8のフランジ部8fにも同じ向きのスラスト荷重がリングギヤRから伝わり、そのスラスト荷重は、主としてリングギヤ結合用の複数のボルト(結合部)B1〜B8及びフランジ部8fを介してケース本体8cの大径部に伝達され、更に小径部(第1軸受ボス8b1)側に伝達されて最終的にはミッションケース9に受け止められる。
また本実施形態の差動装置10では、デフケース8の回転軸線即ち第1軸線X1と直交する投影面で見て、デフケース8のフランジ部8f及びリングギヤR間を結合する複数のボルト(即ち結合部)B1〜B8のうち最も作業窓H寄りの特定ボルト(即ち特定結合部分)B1,B4,B5,B8が、第1,第2軸線X1,X2と直交する第3軸線X3に沿う方向で作業窓Hの内端部Hieよりも外方側に位置している。これにより、作業窓Hの内端部Hieに対し特定ボルトB1,B4,B5,B8を極力外方寄りに配置できるため、作業窓Hを周方向に挟む特定ボルトB1,B8(B4,B5)の相互間隔(即ちリングギヤRの作業窓H対応部分に対するデフケース8の支持スパン)を比較的短くすることができる。その結果、伝動中に駆動ギヤ31からリングギヤRに伝わるスラスト荷重(即ちリングギヤRが受ける倒れ方向の荷重)に対する剛性を確保でき、リングギヤRの倒れに対するデフケース8の剛性バランスがとり易くなる。
しかも本実施形態の作業窓Hは、上記投影面で見て、特定ボルトB1,B8(B4,B5)と第1軸線X1とを結ぶ仮想直線L1,L2よりも第3軸線X3に沿う方向で外方側に配置される。これにより、伝動中、駆動ギヤ31からリングギヤRに伝えられるスラスト荷重が特定ボルトB1,B8(B4,B5)及びフランジ部8fを介してケース本体8cの大径部に伝達され更に小径部(即ち第1軸受ボス8b1)側に伝達される際に、その荷重伝達経路が作業窓Hを迂回するような経路態様とはならず、ケース本体8cの作業窓H周辺部での応力集中を効果的に回避可能となる。したがって、デフケース8の剛性強度を高める上で有利になり、デフケース8を低強度材料(例えばアルミ等)で構成する場合でも十分な剛性強度を確保可能となる。
これに対し、図7に示す参考例では、作業窓H′の、ケース周方向での窓幅を本実施形態と同様に狭くし、更に作業窓H′を挟む特定ボルトB1′,B8′(B4′,B5′)を作業窓H′に対し十分近づけることで、特定ボルトB1′,B8′(B4′,B5′)の相互間隔、即ち上記した支持スパンを短くしている。
ところが図7の参考例では、特定ボルトB1′,B8′(B4′,B5′)と第1軸線X1′とを結ぶ仮想直線L1′,L2′が、図7に明示される如く作業窓H′を横切る配置となるため、次のような不都合がある。即ち、伝動中、リングギヤに伝えられるスラスト荷重は、特定ボルトB1′,B8′(B4′,B5′)及びデフケース8′のフランジ部8f′を経てケース本体8c′の大径部に伝達され更に小径部(即ち第1軸受ボス8b1′)に伝達されるが、その際の荷重伝達経路が作業窓H′を迂回するようにカーブした経路態様となるため、ケース本体8c′の作業窓周辺部に応力集中が生じ易くなる。この点で、本発明の、参考例に対する優位性は明らかである。
また、本実施形態の作業窓Hは、第3軸線X3に沿う方向でケース本体8cの外周端又はその近傍部まで延びており、フランジ部8fは、作業窓Hの、第3軸線X3に沿う方向で外端部Hoeに対応する位置において、デフケース8の周方向に途切れているので、デフケースの軽量化を図る上で有利となる。またこのような軽量化によっても、上記した特定ボルトB1,B8(B4,B5)の作業窓Hに対する独特の配置構成によりデフケース8の剛性強度の低下が効果的に抑えられる。
更に作業窓Hは、上記投影面で見て、作業窓Hの外端部Hoe寄りの外方窓部分Hoが、その外方窓部分Hoより内方側に連なる内方窓部分Hiよりも、第2軸線X2に沿う方向で幅狭に形成されるため、作業窓H全体の開口面積を十分に確保(従って作業窓Hを通しての組付作業や機械加工の作業性を確保)しながらも、ケース本体8cのフランジ部8fに対する支持領域を、ケース周方向に効果的に(即ち外方窓部分Hoを幅狭とした分だけ)拡げることができる。これにより、ケース本体8cのフランジ部8fに対する支持剛性を高めることができるから、スラスト荷重が作用した時のリングギヤRの倒れを効果的に抑制可能となる。
更に本実施形態では、上記投影面で見て、特定ボルトB1,B8(B4,B5)が、デフケース8の、第2軸線X2と第3軸線X3で挟まれた領域の二等分線L1,L2上に配置され、或いは、図示しない別実施形態のように特定ボルトB1,B8(B4,B5)が二等分線L1,L2よりも第3軸線X3寄りに配置される。これにより、作業窓Hを周方向に挟む特定ボルトB1,B8(B4,B5)の相互間隔、即ち上記した支持スパンを一層短くできるため、スラスト荷重が作用した時のリングギヤRの倒れをより効果的に抑制可能となる。 以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、差動装置10を車両用差動装置に実施したものを示したが、本発明では、差動装置10を車両以外の種々の機械装置に実施してもよい。
また、前記実施形態では、デフケース8のフランジ部8fとリングギヤRとの結合を複数のボルトB1〜B8で結合するものを例示したが、本発明では、フランジ部8fとリングギヤRとの結合を溶接(例えばレーザ溶接、電子ビーム溶接等)するようにしてもよい。この場合、フランジ部8fとリングギヤRとの溶接部分が本発明の結合部となり、また溶接部分のうち、第1軸線X1と直交する投影面で見て最も作業窓H寄りの特定溶接部分が、本発明の特定結合部分となる。
また前記実施形態では、デフケース8のフランジ部8fが、作業窓Hの、第3軸線X3に沿う方向で外端部Hoeに対応する位置においてデフケース8の周方向に途切れているものを示したが、本発明では、フランジ部8fを途切れ部分(即ち周方向の不連続部分)のない円環状に形成してもよい。
また前記実施形態では、リングギヤRの歯部Ragをヘリカルギヤ状としたものを示したが、本発明のリングギヤは、少なくとも駆動ギヤ31との噛合により第1軸線X1に沿う方向のスラスト荷重を受ける歯形状であればよく、例えばベベルギヤ、ハイポイドギヤ等でもよい。
また前記実施形態では、ピニオン軸21をリングギヤRに直接、支持させるようにしたものを示したが、本発明では、ピニオン軸21をデフケース8に支持させるようにしてもよい。
B1〜B8・・ボルト(結合部)
B1,B4,B5,B8・・特定ボルト(特定結合部分)
10・・・・・差動装置
H・・・・・・作業窓
Hi・・・・・内方側窓部分
Hie・・・・内端部
Ho・・・・・外方側窓部分
Hoe・・・・外端部
L1,L2・・仮想直線,二等分線
R・・・・・・リングギヤ
Rag・・・・歯部
X1,X2,X3・・第1軸線,第2軸線,第3軸線
8・・・・・・デフケース
8c・・・・・ケース本体
8f・・・・・フランジ部
20・・・・・デフ機構
21・・・・・ピニオン軸
22・・・・・ピニオンギヤ
23・・・・・サイドギヤ
31・・・・・駆動ギヤ

Claims (4)

  1. 中空のケース本体(8c)、及び前記ケース本体(8c)の外周に一体に突設したフランジ部(8f)を有して第1軸線(X1)回りに回転可能なデフケース(8)と、
    前記ケース本体(8c)内に収容されるデフ機構(20)と、
    前記ケース本体(8c)に設けられる作業窓(H)と、
    動力源に連なる駆動ギヤ(31)と噛合して該駆動ギヤ(31)からの動力を前記デフケース(8)に伝えるべく、前記フランジ部(8f)に結合されるリングギヤ(R)とを備え、
    前記デフ機構(20)は、前記第1軸線(X1)と直交する第2軸線(X2)上に配置されて前記デフケース(8)又は前記リングギヤ(R)に支持されるピニオン軸(21)と、該ピニオン軸(21)に回転自在に支持されるピニオンギヤ(22)と、該ピニオンギヤ(22)に噛合し且つ前記ケース本体(8c)に前記第1軸線(X1)回りに回転自在に支持される一対のサイドギヤ(23)とを有し、
    前記リングギヤ(R)は、前記駆動ギヤ(31)との噛合により前記第1軸線(X1)に沿う方向のスラスト荷重を受ける歯部(Rag)を有し、
    前記作業窓(H)は、前記第1軸線(X1)と直交する投影面で見て、前記第2軸線(X2)の一側方又は両側方に配置される差動装置において、
    前記投影面で見て、前記フランジ部(8f)及び前記リングギヤ(R)間の結合部(B1〜B8)のうち最も前記作業窓(H)寄りの特定結合部分(B1,B4,B5,B8)が、前記第1,第2軸線(X1,X2)と直交する第3軸線(X3)に沿う方向で前記作業窓(H)の内端部(Hie)よりも外方側に位置し且つ前記作業窓(H)が、前記特定結合部分(B1,B4,B5,B8)と前記第1軸線(X1)とを結ぶ仮想直線(L1,L2)よりも前記第3軸線(X3)に沿う方向で外方側に位置することを特徴とする差動装置。
  2. 前記作業窓(H)は、前記第3軸線(X3)に沿う方向で前記ケース本体(8c)の外周端又はその近傍部まで延びており、
    前記フランジ部(8f)は、前記作業窓(H)の、前記第3軸線(X3)に沿う方向で外端部(Hoe)に対応する位置において、前記デフケース(8)の周方向に途切れていることを特徴とする、請求項1に記載の差動装置。
  3. 前記投影面で見て、前記作業窓(H)は、前記第3軸線(X3)に沿う方向で外端部(Hoe)寄りの外方窓部分(Ho)が、該外方窓部分(Ho)より内方側の内方窓部分(Hi)よりも、前記第2軸線(X2)に沿う方向で幅狭に形成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の差動装置。
  4. 前記投影面で見て、前記特定結合部分(B1,B4,B5,B8)が、前記デフケース(8)の、前記第2軸線(X2)と前記第3軸線(X3)で挟まれた領域の二等分線(L1,L2)上、又は該二等分線(L1,L2)よりも前記第3軸線(X3)寄りに配置されることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の差動装置。
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