本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態及び変形例は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
《本発明の実施形態1》
本実施形態1のシングルスクリュー圧縮機(1)(以下、単にスクリュー圧縮機と言う。)は、冷凍装置の冷媒回路に設けられて冷媒を圧縮する。つまり、本実施形態のスクリュー圧縮機(1)は、流体である冷媒を吸入して圧縮する。
−スクリュー圧縮機の全体構成−
図1に示すように、スクリュー圧縮機(1)では、圧縮機構(35)とそれを駆動する電動機(30)とが1つのケーシング(10)に収容されている。このスクリュー圧縮機(1)は、半密閉型に構成されている。
ケーシング(10)は、ケーシング本体(11)と、円筒壁(20)とを備えている。
ケーシング本体(11)は、両端が閉塞された横長の円筒状に形成されている。ケーシング本体(11)の内部空間は、ケーシング本体(11)の一端側に位置する低圧空間(15)と、ケーシング本体(11)の他端側に位置する高圧空間(16)とに仕切られている。ケーシング本体(11)には、低圧空間(15)に連通する吸入口(12)と、高圧空間(16)に連通する吐出口(13)とが設けられている。冷凍装置の蒸発器から流れてきた低圧冷媒は、吸入口(12)を通って低圧空間(15)へ流入する。また、圧縮機構(35)から高圧空間(16)へ吐出された圧縮後の高圧冷媒は、吐出口(13)を通って冷凍装置の凝縮器へ供給される。
ケーシング本体(11)の内部では、低圧空間(15)に電動機(30)が配置され、低圧空間(15)と高圧空間(16)の間に圧縮機構(35)が配置されている。電動機(30)は、ケーシング本体(11)の吸入口(12)と圧縮機構(35)の間に配置されている。電動機(30)の固定子(31)は、ケーシング本体(11)に固定されている。一方、電動機(30)の回転子(32)は、圧縮機構(35)の駆動軸(36)に連結されている。電動機(30)に通電すると回転子(32)が回転し、後述する圧縮機構(35)のスクリューロータ(40)が電動機(30)によって駆動される。
ケーシング本体(11)の内部では、高圧空間(16)に油分離器(33)が配置されている。油分離器(33)は、圧縮機構(35)から吐出された高圧冷媒から冷凍機油を分離する。高圧空間(16)における油分離器(33)の下方には、潤滑油である冷凍機油を貯留するための油貯留室(18)が形成されている。油分離器(33)において冷媒から分離された冷凍機油は、下方へ流れ落ちて油貯留室(18)に蓄えられる。
図1,2に示すように、円筒壁(20)は、概ね円筒状の厚みのある部材によって形成されている。この円筒壁(20)は、ケーシング本体(11)の長手方向の中央部に配置され、ケーシング本体(11)と一体に形成されている。円筒壁(20)の内周面は、円筒面となっている。
円筒壁(20)には、1つのスクリューロータ(40)が挿入された状態で設けられる。スクリューロータ(40)には、駆動軸(36)が同軸に連結されている。スクリューロータ(40)には、2つのゲートロータ組立体(60)が噛み合わされている。スクリューロータ(40)と、ゲートロータ組立体(60)とは、圧縮機構(35)を構成している。
ケーシング(10)には、隔壁部である軸受固定板(23)が設けられている。軸受固定板(23)は、概ね円板状に形成され、円筒壁(20)の高圧空間(16)側の開口端を覆うように配置されている。軸受固定板(23)には、軸受ホルダ(24)が取り付けられている。この軸受ホルダ(24)は、円筒壁(20)の端部(高圧空間(16)側の端部)に嵌め込まれている。軸受ホルダ(24)には、駆動軸(36)を支持するための玉軸受(25)が嵌め込まれている。
図3に示すように、スクリューロータ(40)は、概ね円柱状に形成された金属製の部材である。スクリューロータ(40)は、円筒壁(20)に回転可能に嵌合しており、その外周面が円筒壁(20)の内周面と摺接する。
スクリューロータ(40)の外周部には、複数の螺旋溝(41)が形成されている。各螺旋溝(41)は、スクリューロータ(40)の外周面に開口する凹溝であって、スクリューロータ(40)の一端から他端へ向かって螺旋状に延びている。スクリューロータ(40)の各螺旋溝(41)は、低圧空間(15)側の端部が始端となり、高圧空間(16)側の端部が終端となっている。
詳細については後述するが、ゲートロータ組立体(60)は、ゲートロータ(50)と、支持部材(55)とを備えている。ゲートロータ(50)は、概ね長方形状の複数(本実施形態では、11枚)のゲート(51)が放射状に設けられた板状の部材である。ゲートロータ(50)の材質は、硬質の樹脂である。ゲートロータ(50)は、金属製の支持部材(55)に取り付けられている。
ケーシング(10)では、図2における円筒壁(20)の左右に、ゲートロータ室(17)が1つずつ形成されている。ゲートロータ組立体(60)は、各ゲートロータ室(17)に1つずつ収容されている。なお、各ゲートロータ室(17)は、低圧空間(15)に連通している。
具体的に、各ゲートロータ室(17)には、軸受ホルダ(26)が設けられている。軸受ホルダ(26)は、概ね筒状に形成された金属製の部材であり、ケーシング本体(11)の周壁部(11a)と蓋部(28)の突出部(28b)とに、ゲートロータ(50)の軸方向に変位可能に保持されている。ゲートロータ組立体(60)は、後述する軸部(58)が玉軸受(27)を介して軸受ホルダ(26)に回転自在に支持されている。
ゲートロータ組立体(60)は、円筒壁(20)の外側において、ゲートロータ(50)の一部のゲート(51)が円筒壁(20)に形成された開口(29)から円筒壁(20)の内部のスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)へ進入するように設けられている(図4参照)。ゲートロータ組立体(60)は、ゲートロータ(50)がスクリューロータ(40)と噛み合うことにより、該スクリューロータ(40)と共に回転する。ケーシング(10)の円筒壁(20)では、ゲートロータ組立体(60)が貫通する部分の壁面が、ゲートロータ(50)の前面(50a)と対面するシール面(21)を構成している(図4,5参照)。このシール面(21)は、スクリューロータ(40)の外周に沿ってスクリューロータ(40)の軸方向へ延びる平坦面であって、ゲートロータ(50)の前面(50a)と隙間を空けて対向する。
圧縮機構(35)では、円筒壁(20)の内周面と、スクリューロータ(40)の螺旋溝(41)と、ゲートロータ(50)のゲート(51)とによって囲まれた空間が圧縮室(37)になる。そして、スクリューロータ(40)が回転すると、ゲートロータ(50)のゲート(51)が螺旋溝(41)の始端から終端へ向かって相対的に移動し、圧縮室(37)の容積が変化して圧縮室(37)内の冷媒が圧縮される。
図2に示すように、スクリュー圧縮機(1)には、容量調節用のスライドバルブ(90)が、各ゲートロータに対応して1つずつ設けられている。つまり、スクリュー圧縮機(1)には、ゲートロータと同数(本実施形態では、二つ)のスライドバルブ(90)が設けられている。
スライドバルブ(90)は、円筒壁(20)に取り付けられている。円筒壁(20)には、その軸方向へ延びる開口部(22)が形成されている。スライドバルブ(90)は、そのバルブ本体(91)が円筒壁(20)の開口部(22)に嵌り込むように配置されている。バルブ本体(91)の前面がスクリューロータ(40)の周側面と対面する。スライドバルブ(90)は、円筒壁(20)の軸心方向にスライド可能となっている。また、円筒壁(20)の開口部(22)は、スライドバルブ(90)のバルブ本体(91)よりも軸受ホルダ(24)側の部分が、圧縮室(37)から圧縮後の冷媒を導出するための吐出ポートとなっている。
図示しないが、各スライドバルブ(90)には、スライドバルブ駆動機構(95)のロッドが連結されている。スライドバルブ駆動機構(95)は、各スライドバルブ(90)を駆動して円筒壁(20)の軸心方向へ移動させるための機構である。各スライドバルブ(90)は、スライドバルブ駆動機構(95)によって駆動され、スライドバルブ(90)の軸方向へ往復動する。
−ゲートロータ組立体−
〈ゲートロータ組立体の構成〉
上述したように、ゲートロータ組立体(60)は、ゲートロータ(50)と、支持部材(55)とを備えている。ここでは、ゲートロータ組立体(60)の詳細な構成について説明する。
図3及び図4に示すように、ゲートロータ(50)は、概ね円板状に形成された樹脂製の部材である。ゲートロータ(50)には、その中心軸と同軸の円形の貫通孔である中央孔(53)が形成されている。ゲートロータ(50)は、中央孔(53)が形成された円形の基部(52)と、概ね長方形状の複数(本実施形態では、11枚)のゲート(51)とを備えている。ゲートロータ(50)において、複数のゲート(51)は、基部(52)の外周から外側へ放射状に延びるように形成され、基部(52)の周方向に等角度間隔で配置されている。
図2及び図3に示すように、支持部材(55)は、円板部(56)とゲート支持部(57)と軸部(58)と、中央凸部(59)とを備えている。円板部(56)は、やや肉厚の円板状に形成されている。ゲート支持部(57)は、ゲートロータ(50)のゲート(51)と同数(本実施形態では11本)だけ設けられており、円板部(56)の外周部から外側へ向かって放射状に延びている。複数のゲート支持部(57)は、円板部(56)の周方向に等角度間隔で配置されている。軸部(58)は、丸棒状に形成されて円板部(56)に立設されている。軸部(58)の中心軸は、円板部(56)の中心軸と一致している。中央凸部(59)は、円板部(56)における軸部(58)とは逆側の面に設けられている。この中央凸部(59)は、短い円柱状に形成され、円板部(56)と同軸に配置されている。中央凸部(59)の外径は、ゲートロータ(50)の中央孔(53)の内径と実質的に等しい。
ゲートロータ(50)は、支持部材(55)に取り付けられている。また、ゲートロータ(50)は、中央孔(53)に中央凸部(59)が嵌まり込むことによって、支持部材(55)の径方向への移動が実質的に不能となっている。ゲートロータ(50)の各ゲート(51)の背面(51b)側には、支持部材(55)のゲート支持部(57)が1つずつ配置される。各ゲート支持部(57)は、対応するゲートロータ(50)のゲート(51)を背面(51b)側から支持する。ゲートロータ(50)は、固定ピン(54)を介して支持部材(55)に固定されている。
なお、ゲートロータ(50)の前面(50a)及び背面(50b)は、ゲートロータ(50)の中心軸と実質的に直交する平坦面である。
〈ゲートロータ組立体の配置〉
図2に示すように、ケーシング(10)内において、2つのゲートロータ組立体(60)は、スクリューロータ(40)の回転軸に対して互いに軸対称となる姿勢で設置されている。また、各ゲートロータ組立体(60)の回転軸(即ち、支持部材(55)の中心軸)と、スクリューロータ(40)の回転軸とのなす角度が、実質的に直角となっている。
具体的に、図2におけるスクリューロータ(40)の左側に配置されたゲートロータ組立体(60)は、支持部材(55)の軸部(58)が上方へ延びる姿勢で設置されている。一方、同図におけるスクリューロータ(40)の右側に配置されたゲートロータ組立体(60)は、支持部材(55)の軸部(58)が下方へ延びる姿勢で設置されている。そして、各ゲートロータ組立体(60)は、ゲートロータ(50)の前面(50a)が、ケーシング(10)のシール面(21)と隙間を空けて対向するように配置されている。
−隙間調整機構−
図5及び図6に示すように、シングルスクリュー圧縮機(1)には、各ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dを、所定の距離Dに調整する隙間調整機構(70)が設けられている。図2に示すように、隙間調整機構(70)は、2つのゲートロータ組立体(60)に対し、1つずつ設けられている。図5及び図6に示すように、2つの隙間調整機構(70)は、シリンダ機構(71)と、該シリンダ機構(71)に流体圧を作用させる流体回路(80)とをそれぞれ有している。なお、所定の距離Dは、各ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との間に冷凍機油が油膜を形成し、該油膜によって各ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との間のシールが保たれる距離として設定されるものである。
〈シリンダ機構〉
図5に示すように、シリンダ機構(71)は、内部にシリンダ室を形成するシリンダ(72)と、シリンダ室を第1シリンダ室(73)と第2シリンダ室(74)とに区画するピストン(75)とを有している。
シリンダ(72)は、軸受ホルダ(26)とケーシング本体(11)とによって構成されている。軸受ホルダ(26)のゲートロータ(50)側を前側、ゲートロータ(50)とは逆側を後側とすると、軸受ホルダ(26)の後側部分(26a)の外周面と、ケーシング本体(11)の軸受ホルダ(26)の後側部分(26a)を取り囲む部分とによって上記シリンダ室が形成されている。
具体的には、ケーシング本体(11)には、軸受ホルダ(26)を挿入する挿入口(19)が形成されている。また、ケーシング本体(11)の挿入口(19)を形成する周壁部(11a)には、凹溝(19a)が形成されている。凹溝(19a)は、周壁部(11a)の全周に亘って形成されている。周壁部(11a)の軸受ホルダ(26)の後端部に当接する部分は、該軸受ホルダ(26)の後端部を、ゲートロータ(50)の軸方向に僅かに(0.1mm程度)変位可能に保持している。
ケーシング本体(11)の挿入口(19)は、軸受ホルダ(26)の挿入後、蓋部(28)によって閉塞される。蓋部(28)は、蓋本体(28a)と突出部(28b)とを有している。蓋本体(28a)は円板状に形成されている。一方、突出部(28b)は、略円筒状に形成されて蓋本体(28a)の内面から突出するように該蓋本体(28a)と一体に形成されている。突出部(28b)は、周壁部(11a)の凹溝(19a)に嵌まる厚みに形成されている。また、突出部(28b)は、軸受ホルダ(26)の後端部を、ゲートロータ(50)の軸方向に僅かに(0.1mm程度)変位可能に保持している。
以上のような構成により、ケーシング本体(11)の周壁部(11a)と、軸受ホルダ(26)の該周壁部(11a)に対向する後側部分(26a)と、ケーシング本体(11)の蓋部(28)の突出部(28b)とによって凹溝(19a)が閉塞されて円筒形状の閉空間が形成され、この閉空間が上記シリンダ室となる。つまり、ケーシング本体(11)の周壁部(11a)と、軸受ホルダ(26)の該周壁部(11a)に対向する後側部分(26a)と、ケーシング本体(11)の蓋部(28)の突出部(28b)とが上記シリンダ(72)となる。
ピストン(75)は、軸受ホルダ(26)の後側部分(26a)の外周面から外側に突出する扁平な環状部材であり、軸受ホルダ(26)と一体に形成されている。ピストン(75)は、軸受ホルダ(26)の後側部分(26a)を取り巻くように形成された上記シリンダ室内に位置している。このピストン(75)によって、上記シリンダ室は、ゲートロータ(50)の軸方向に二分され、ピストン(75)の前側に第1シリンダ室(73)が区画され、ピストン(75)の後側に第2シリンダ室(74)が区画される。また、ピストン(75)は、上記シリンダ室内において第1シリンダ室(73)と第2シリンダ室(74)の配列方向に変位可能に設けられている。
ピストン(75)の第1シリンダ室(73)に面して該第1シリンダ室(73)内の流体の圧力が作用する圧力面の面積をS1、ピストン(75)の第2シリンダ室(74)に面して該第2シリンダ室(74)内の流体の圧力が作用する圧力面の面積をS2とすると、本実施形態では、ピストン(75)は、2つの圧力面の面積が等しくなるように、即ち、S1=S2となるように構成されている。
詳細な動作については後述するが、ピストン(75)は、シリンダ室内において、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dに応じて、第1シリンダ室(73)と第2シリンダ室(74)の配列方向に変位する。このピストン(75)の変位に伴い、該ピストン(75)と一体に形成された軸受ホルダ(26)が、第1シリンダ室(73)と第2シリンダ室(74)の配列方向、即ち、ゲートロータ(50)の軸方向に変位する。また、軸受ホルダ(26)の変位に伴い、該軸受ホルダ(26)に回転自在に支持されたゲートロータ組立体(60)もゲートロータ(50)の軸方向に変位することとなる。
また、第1シリンダ室(73)には、ばね(76)が設けられている。ばね(76)は、ゲートロータ組立体(60)の設置時に、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離d=0にならないように、即ち、ゲートロータ(50)の前面(50a)が円筒壁(20)のシール面(21)に当接しないように設けられている。
〈流体回路〉
図5及び図6に示すように、流体回路(80)は、第1通路(第1の通路)(81)と、第2通路(第2の通路)(82)と、高圧流体通路(83)とを備えている。
第1通路(81)は、一端が円筒壁(20)のシール面(21)において開口し、他端は第1シリンダ室(73)に開口している。つまり、第1通路(81)は、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)の隙間と第1シリンダ室(73)とを接続するように設けられている。第1通路(81)は、ガス冷媒又は冷凍機油が流通可能な通路に構成され、本実施形態では、冷凍機油が流れる。
第2通路(82)は、一端が第2シリンダ室(74)に開口し、他端は高圧流体通路(83)に接続されている。つまり、第2通路(82)は、第2シリンダ室(74)を高圧流体通路(83)に接続するように構成されている。第2通路(82)は、ガス冷媒又は冷凍機油が流通可能な通路に構成され、本実施形態では、冷凍機油が流れる。
高圧流体通路(83)は、ガス冷媒又は冷凍機油が流通可能な通路に構成され、本実施形態では、高圧流体通路(83)は、油貯留室(18)に接続され、油貯留室(18)に貯留された高圧圧力状態の冷凍機油が流れる。高圧流体通路(83)には、圧力調整弁(85)が設けられている。圧力調整弁(85)は、1次側から2次側へ流体を減圧して一定の圧力に調整するリリーフ減圧弁によって構成されている。本実施形態では、圧力調整弁(85)は、油貯留室(18)から供給される高圧圧力状態の冷凍機油を減圧して一定の高圧圧力状態(圧力P2)に調整するように構成されている。高圧流体通路(83)の圧力調整弁(85)の下流側には、第1通路(81)と第2通路(82)とが接続されている。第1通路(81)は、オリフィス(絞り)(86)を介して高圧流体通路(83)に接続されている。
このような構成により、流体回路(80)では、油貯留室(18)に貯留された高圧圧力状態の冷凍機油が高圧流体通路(83)に流入する。高圧流体通路(83)に流入した冷凍機油は、圧力調整弁(85)で一定の圧力P2に調整され、第1通路(81)と第2通路(82)とに流入する。
ここで、上述したように、第1通路(81)は、一端が円筒壁(20)のシール面(21)において開口し、他端は第1シリンダ室(73)に開口している。そのため、高圧流体通路(83)から第1通路(81)に流入した冷凍機油は、第1シリンダ室(73)に供給される一方、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)の隙間に漏れ出す。該隙間に漏れ出す冷凍機油の分量は、隙間の大きさ(ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離d)に応じて変動する。具体的には、隙間が大きくなると、漏れ出す冷凍機油の分量が多くなり、隙間が小さくなると、漏れ出す冷凍機油の分量が少なくなる。そして、第1通路(81)から漏れ出す冷凍機油の分量が増えると、第1通路(81)内の圧力(第1シリンダ室(73)に作用する第1の圧力)P1が低下する。一方、第1通路(81)から漏れ出す冷凍機油の分量が減ると、第1通路(81)内の圧力(第1シリンダ室(73)に作用する第1の圧力)P1が上昇する。
なお、上述したように、第1通路(81)は、オリフィス(86)を介して高圧流体通路(83)の圧力調整弁(85)の下流側に接続されているため、第1通路(81)内の圧力P1が圧力調整弁(85)の設定圧力P2を超えることはない。つまり、第1シリンダ室(73)には、圧力調整弁(85)の設定圧力P2以下の圧力P1が作用する。
一方、第2通路(82)は、減圧機構を備えることなく、第2シリンダ室(74)を高圧流体通路(83)の圧力調整弁(85)の下流側に接続している。そのため、第2シリンダ室(74)には、第2通路(82)を介して圧力調整弁(85)によって設定圧力P2に減圧された冷凍機油が供給される。つまり、第2シリンダ室(74)に作用する第2の圧力P2は、圧力調整弁(85)の設定圧力P2となる。なお、圧力調整弁(85)の設定圧力P2は、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dが、適切な距離Dである場合に隙間調整機構(70)が動作しない圧力に設定されている。
このような流体回路(80)により、シリンダ機構(71)の第1シリンダ室(73)には、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dの増減に応じて変動する圧力P1(第1の圧力)が作用し、第2シリンダ室(74)には、一定の圧力P2(第2の圧力)が作用する。そして、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dが大きくなると、第1通路(81)から漏れ出す冷凍機油の分量が増え、第1シリンダ室(73)に作用する圧力P1が低下することにより、シリンダ機構(71)のピストン(75)に作用する力が釣り合わなくなり、ピストン(75)がシリンダ室内において第1シリンダ室(73)側に変位する。これに伴い、ゲートロータ組立体(60)がゲートロータ(50)の軸方向の前側(圧縮室(37)側)に変位する。これにより、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dが小さくなる。
一方、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dが小さくなると、第1通路(81)から漏れ出す冷凍機油の分量が減り、第1シリンダ室(73)に作用する圧力P1が上昇することにより、シリンダ機構(71)のピストン(75)に作用する力が釣り合わなくなり、ピストン(75)がシリンダ室内において第2シリンダ室(74)側に変位する。これに伴い、ゲートロータ組立体(60)がゲートロータ(50)の軸方向の後側に変位する。これにより、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dが大きくなる。
以上のようにして、隙間調整機構(70)は、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dに応じてゲートロータ組立体(60)を軸方向に変位させることにより、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dが所定の適切な距離Dとなるように調整する。
−スクリュー圧縮機の運転動作−
スクリュー圧縮機(1)の運転動作について説明する。
電動機(30)に通電すると、スクリューロータ(40)が電動機(30)によって駆動されて回転する。また、ゲートロータ組立体(60)は、スクリューロータ(40)によって駆動されて回転する。
圧縮機構(35)では、ゲートロータ組立体(60)がスクリューロータ(40)と噛み合っている。そして、スクリューロータ(40)とゲートロータ組立体(60)とが回転すると、ゲートロータ(50)のゲート(51)がスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)の始端から終端へ向かって相対的に移動し、圧縮室(37)の容積が変化する。その結果、圧縮機構(35)では、圧縮室(37)へ低圧冷媒を吸入する吸入行程と、圧縮室(37)内の冷媒を圧縮する圧縮行程と、圧縮した冷媒を圧縮室(37)から吐出する吐出工程とが行われる。
ケーシング(10)内の低圧空間(15)へは、蒸発器から流出した低圧ガス冷媒が、吸入口(12)を通って吸い込まれる。低圧空間(15)の冷媒は、圧縮機構(35)へ吸入されて圧縮される。圧縮機構(35)において圧縮された冷媒は、高圧空間(16)へ流入する。その後、冷媒は、油分離器(33)を通過後に、吐出口(13)を通ってケーシング(10)の外部へ吐出される。吐出口(13)から吐出された高圧ガス冷媒は、凝縮器へ向かって流れてゆく。
−隙間調整機構の動作−
図5及び図6に示すように、スクリュー圧縮機(1)の運転を開始すると、隙間調整機構(70)は、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dの増減に応じてゲートロータ(50)を軸方向に変位させて、上記距離dを適切な距離Dに調整する。隙間調整機構(70)では、距離dが増減すると、第1シリンダ室(73)に作用する圧力P1(第1の圧力)が変動し、これによってピストン(75)に作用する力が変動する。その結果、ピストン(75)が第1シリンダ室(73)と第2シリンダ室(74)の配列方向に変位し、これに伴ってゲートロータ組立体(60)がゲートロータ(50)の軸方向に変位する。このようなピストン(75)に作用する力が変動することにより、上記距離dが適切な距離Dに調整される。以下、ピストンに作用する力と隙間調整動作とについて詳述する。
〈ピストンに作用する力〉
スクリュー圧縮機(1)の運転を開始すると、油貯留室(18)に貯留された高圧圧力状態の冷凍機油が、流体回路(80)の高圧流体通路(83)に流入する。高圧流体通路(83)に流入した冷凍機油は、圧力調整弁(85)で一定の圧力P2に調整され、第1通路(81)及び第2通路(82)に流入する。
第1通路(81)の一端は、円筒壁(20)のシール面(21)において開口している。そのため、第1通路(81)に流入した冷凍機油は、第1シリンダ室(73)に供給される一方、一端からは常に円筒壁(20)のシール面(21)に漏れ出す。また、第1通路(81)は、オリフィス(86)を介して高圧流体通路(83)の圧力調整弁(85)の下流側に接続されている。このような構成により、第1シリンダ室(73)に作用する第1通路(81)内の圧力P1は、圧力調整弁(85)の設定圧力P2を超えない。一方、第2通路(82)に流入した冷凍機油は、そのまま第2シリンダ室(74)に供給され、圧力調整弁(85)の設定圧力P2が第2シリンダ室(74)に作用する。
ところで、第1通路(81)から円筒壁(20)のシール面(21)に漏れ出す冷凍機油の分量は、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dによって変動する。具体的には、距離dが大きくなると、第1通路(81)から漏れ出す冷凍機油の分量が多くなり、距離dが小さくなると、第1通路(81)から漏れ出す冷凍機油の分量が少なくなる。このように第1通路(81)から漏れ出す冷凍機油の分量が変動することにより、圧力P1が変動する。具体的には、第1通路(81)から漏れ出す冷凍機油の分量が多くなると、圧力P1が低下し、第1通路(81)から漏れ出す冷凍機油の分量が少なくなると、圧力P1は上昇することとなる。
このように、第1シリンダ室(73)内の圧力P1は、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dによって変動する。一方、第2シリンダ室(74)内の圧力P2は、一定である。このような第1シリンダ室(73)内の圧力P1と第2シリンダ室(74)内の圧力P2とにより、ピストン(75)には逆向きの力が作用する。
具体的には、図6に示すように、ピストン(75)には、第1シリンダ室(73)内の圧力P1により、ゲートロータ(50)の軸方向において後向き(前面(50a)から背面(50b)方向)の力F1=P1×S1)が作用する。一方、ピストン(75)には、第2シリンダ室(74)内の圧力P2により、ゲートロータ(50)の軸方向において前向き(背面(50b)から前面(50a)方向)の力F2=P2×S2が作用する。
また、ピストン(75)には、ゲートロータ組立体(60)及び軸受ホルダ(26)を介して圧縮室(37)の圧力(即ち、圧縮室(37)に存在する冷媒の圧力)による力Fcも作用する。
具体的には、スクリュー圧縮機(1)の運転中、圧縮機構(35)では、ゲートロータ(50)の一部のゲート(51)(本実施形態では3つ)が、円筒壁(20)に形成された開口(29)から円筒壁(20)の内部のスクリューロータ(40)の螺旋溝(41)へ進入し、圧縮行程中又は吐出行程中の圧縮室(37)に臨む。この圧縮室(37)に臨むゲート(51)には、前面に圧縮室(37)内の冷媒の圧力が作用し、背面に低圧空間(15)の冷媒の圧力が作用する。この圧縮室(37)内の冷媒の圧力により、ゲートロータ(50)には、軸方向において後向き(前面(50a)から背面(50b)方向)の力Fcが作用する。
ところで、図3に示すように、ゲートロータ(50)は、固定ピン(54)を介して支持部材(55)に固定されている。また、支持部材(55)は、軸受ホルダ(26)に対し、玉軸受(27)を介して回転自在に支持される一方、ゲートロータ(50)の軸方向には移動不能に固定されている。そのため、圧縮室(37)の内圧によってゲートロータ(50)を軸方向の後向きに押す力Fcは、支持部材(55)に伝わり、さらに、玉軸受(27)を介して支持部材(55)から軸受ホルダ(26)に伝わる。
ピストン(75)は、軸受ホルダ(26)と一体に形成されているため、軸受ホルダ(26)に伝わったゲートロータ(50)の軸方向において後向きの力Fcは、ピストン(75)にも作用する。つまり、ピストン(75)には、圧縮室(37)内の冷媒の圧力により、ゲートロータ(50)の軸方向において後向き(前面(50a)から背面(50b)方向)の力Fcが作用する。
なお、圧縮室(37)内の冷媒の圧力は、吸入行程、圧縮行程、吐出行程でそれぞれ異なるが、本実施形態では、図4に示すように、各ゲートロータ(50)において、常時3つのゲート(51)が3つの圧縮室(37)に臨んでおり、3つの圧縮室(37)の状態は、吸入行程、圧縮行程、吐出行程でそれぞれ異なる。そのため、スクリュー圧縮機(1)の運転状態(冷凍サイクルの高圧圧力及び低圧圧力)が変化しない限り、ピストン(75)に作用する圧縮室(37)の内圧による力Fcは、大きく変動しない。
上述のように、ピストン(75)には、第1シリンダ室(73)の内圧による後向きの力F1と、第2シリンダ室(74)の内圧による前向きの力F2と、圧縮室(37)内の冷媒の圧力による後向きの力Fcとが作用する(図6を参照)。また、ピストン(75)には、上記F1、F2、Fcの他、ばね(76)の弾性力による力Fbとゲートロータ組立体(60)及び軸受ホルダ(26)の自重Fgとが作用する。ばね(76)による力Fbは、2つの隙間調整機構(70)においていずれも後向きの力Fbとなる一方、自重Fgは、2つの隙間調整機構(70)の一方(図2の左側)では前向きの力Fgとなり、他方(図2の右側)では後向きの力Fgとなる。なお、本実施形態では、Fb及びFgは、F1、F2、Fcに比べて極めて小さく、ピストン(75)の動作(隙間調整動作)に影響を与えないため、以下の隙間調整動作の説明では、無視する。
〈隙間調整動作〉
以下のように、各隙間調整機構(70)は、各ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dに応じて、ゲートロータ(50)を軸方向に変位させることによって、上記距離dを所定の距離Dに調整する。
[距離dが適切な距離Dである場合]
ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dが、適切な距離Dである場合、隙間調整機構(70)は動作しない。つまり、d=Dであるとき、ピストン(75)に作用する力が釣り合い、ピストン(75)は変位しない。これにより、軸受ホルダ(26)及びゲートロータ組立体(60)が動かないため、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dが、適切な距離Dに保たれる。
《距離dが適切な距離Dよりも小さい場合》
スクリュー圧縮機(1)の運転中には、ゲートロータ(50)の温度が上昇し、ゲートロータ(50)が熱膨張することによってゲートロータ(50)の厚みが増す。このゲートロータ(50)の厚みが増すと、ゲートロータ(50)の前面(50a)が円筒壁(20)のシール面(21)に近づき、距離dが適切な距離Dよりも小さくなる。そして、距離dが適切な距離Dよりも小さくなると、流体回路(80)の第1通路(81)から円筒壁(20)のシール面(21)へ冷凍機油が漏れ出し難くなり、漏れ出す冷凍機油の分量が減る。ここで、第1通路(81)には、高圧流体通路(83)から冷凍機油が常に流入するため、第1通路(81)から漏れ出す冷凍機油の分量が減ると、第1通路(81)及び第1シリンダ室(73)に作用する圧力P1が上昇することとなる。
このようにして、第1シリンダ室(73)に作用する圧力P1が上昇することにより、ピストン(75)に作用する力F1、F2、Fcのうち、後向きの力F1が増大する。このように、ピストン(75)に作用する力が釣り合った状態から、後向きの力F1が増大することにより、ピストン(75)に作用する後向きの力が前向きの力を上回ることとなる。そのため、ピストン(75)が前後方向(ゲートロータ(50)の軸方向)の後向き(第2シリンダ室(74)側)に変位し、ピストン(75)が一体に形成された軸受ホルダ(26)と該軸受ホルダ(26)に支持されたゲートロータ組立体(60)が後向きに変位する。つまり、ゲートロータ(50)が後退する(軸方向において後向きに変位する)。その結果、ゲートロータ(50)の前面(50a)が、円筒壁(20)のシール面(21)から離れていく(距離dが大きくなる)。
やがて、距離dが適切な距離Dになると、隙間調整機構(70)は動作しなくなる。つまり、d=Dになると、ピストン(75)に作用する力が釣り合ってピストン(75)が変位しなくなる。
[距離dが適切な距離Dよりも大きい場合]
スクリュー圧縮機(1)では、ゲートロータ(50)の温度が著しく上昇する異常運転時に、ゲートロータ(50)が通常運転時の想定範囲を超えて熱膨張した後、異常状態が解消されると、異常な熱膨張が解消されてゲートロータ(50)の厚みが通常運転時の厚みに戻る。つまり、ゲートロータ(50)の厚みが減ることとなる。このようにゲートロータ(50)の厚みが減ると、ゲートロータ(50)の前面(50a)が円筒壁(20)のシール面(21)から遠ざかり、距離dが適切な距離Dよりも大きくなる。そして、距離dが適切な距離Dよりも大きくなると、流体回路(80)の第1通路(81)から円筒壁(20)のシール面(21)へ冷凍機油が漏れ出し易くなり、漏れ出す冷凍機油の分量が増える。これにより、第1通路(81)及び第1シリンダ室(73)に作用する圧力P1が低下することとなる。
このようにして、第1シリンダ室(73)に作用する圧力P1が低下することにより、ピストン(75)に作用する力F1、F2、Fcのうち、後向きの力F1が減少する。このように、ピストン(75)に作用する力が釣り合った状態から、後向きの力F1が減少することにより、ピストン(75)に作用する前向きの力が後向きの力を上回ることとなる。そのため、ピストン(75)が前後方向(ゲートロータ(50)の軸方向)の前向き(第1シリンダ室(73)側)に変位し、ピストン(75)が一体に形成された軸受ホルダ(26)と該軸受ホルダ(26)に支持されたゲートロータ組立体(60)が前向きに変位する。つまり、ゲートロータ(50)が前進する(軸方向において前向きに変位する)。その結果、ゲートロータ(50)の前面(50a)が、円筒壁(20)のシール面(21)に近づいていく(距離dが小さくなる)。
やがて、距離dが適切な距離Dになると、隙間調整機構(70)は動作しなくなる。つまり、d=Dになると、ピストン(75)に作用する力が釣り合ってピストン(75)が変位しなくなる。
[圧縮室の内圧変動によるゲートロータの変位]
スクリュー圧縮機(1)では、運転状態によって吐出圧力(高圧圧力)が変動する。これに伴い、圧縮室(37)内の冷媒の圧力によってピストン(75)に作用する後向きの力Fcも変動する。距離dが適切な距離Dであって第1シリンダ室(73)内の圧力P1によってピストン(75)に作用する後向きの力F1が変化しない場合であっても、圧縮室(37)の内圧によってピストン(75)に作用する後向きの力Fcが変動すると、ゲートロータ(50)は変位することとなる。
具体的には、距離dが適切な距離Dであって、ピストン(75)に作用する力が釣り合っている状態から、後向きの力Fcが増大すると、ピストン(75)が後向き(第2シリンダ室(74)側)に変位し、これに伴ってゲートロータ(50)が後退する(軸方向において後向きに変位する)。その結果、ゲートロータ(50)の前面(50a)が、円筒壁(20)のシール面(21)から離れていき、距離dが適切な距離Dよりも大きくなる。
一方、距離dが適切な距離Dであって、ピストン(75)に作用する力が釣り合っている状態から、後向きの力Fcが減少すると、ピストン(75)が前向き(第1シリンダ室(73)側)に変位し、これに伴ってゲートロータ(50)が前進する(軸方向において前向きに変位する)。その結果、ゲートロータ(50)の前面(50a)が、円筒壁(20)のシール面(21)に近づいていき、距離dが適切な距離Dよりも小さくなる。
このようにスクリュー圧縮機(1)の運転状態の変化に伴って距離dが変動した場合も、隙間調整機構(70)が上述のように動作することによって、距離dが適切な距離Dに調整されることとなる。
−実施形態の効果1−
本実施形態1によれば、ゲートロータ(50)を軸方向に変位させることにより、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との接触を回避する隙間調整機構(70)を設けることとした。これにより、ゲートロータ(50)の熱膨張によってゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離が近づいても、隙間調整機構(70)がゲートロータ(50)及び円筒壁(20)のシール面(21)の少なくとも一方をゲートロータ(50)の軸方向に変位させることにより、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との接触を回避することができる。
具体的には、本実施形態1によれば、ゲートロータ(50)を軸方向に変位可能に構成し、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dに応じてゲートロータ(50)の軸方向の位置を変えることにより、該距離dを所定の適切な距離Dに調整する隙間調整機構(70)を設けることとした。これにより、ゲートロータ(50)の熱膨張によってゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dが適切な距離Dでなくなっても、隙間調整機構(70)がゲートロータ(50)を軸方向に変位させることにより、該距離dを適切な距離Dに調整することができる。つまり、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)の隙間を適切な大きさに保つことができる。そのため、運転中に、隙間が大きくなって圧縮室(37)から大量の流体が漏れ出すことによる効率低下を防止することができ、また、隙間が無くなることに起因するスクリューロックの発生も防止することができる。
また、本実施形態1によれば、隙間調整機構(70)に、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dの増減に応じて変動する第1の圧力が作用する第1シリンダ室(73)と、一定の第2の圧力が作用する第2シリンダ室(74)と、第1及び第2シリンダ室(73,74)の間において変位可能に設けられたピストン(75)とを設けることとした。また、ピストン(75)の変位に伴ってゲートロータ(50)が軸方向に変位するように構成した。これにより、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dが増減すると、第1シリンダ室(73)に作用する第1の圧力が増減してピストン(75)に作用する力が釣り合わなくなることにより、ピストン(75)が変位し、これに伴ってゲートロータ(50)が駆動されることとなる。従って、本実施形態1によれば、容易な構成によって、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dを所定の距離Dに自動調整することができる。
また、本実施形態1によれば、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)の隙間と第1シリンダ室(73)とを接続する第1通路(81)と、高圧圧力状態の流体が流れる高圧流体通路(83)と、高圧流体通路(83)を流れる流体の圧力を一定の高圧圧力状態に調整する圧力調整弁(85)とを設け、第1通路(81)を絞り(86)を介して高圧流体通路(83)の圧力調整弁(85)の下流側に接続することとした。このような構成によれば、圧力調整弁(85)によって調整された高圧流体通路(83)の一定の高圧圧力状態の流体が絞り(86)を経て第1通路(81)に供給される。一方、第1通路(81)は、上記隙間と第1シリンダ室(73)とを接続するものであるため、第1通路(81)に流入した流体は、第1シリンダ室(73)に供給される一方、常に上記隙間に漏れ出す。そして、第1通路(81)から上記隙間へ漏れ出す流体の分量は、隙間の増減に伴って変動し、これに伴って第1シリンダ室(73)に作用する第1の圧力も変動することとなる。従って、本実施形態1によれば、容易な構成によって、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dの増減に応じて変動する第1の圧力が作用する第1シリンダ室(73)を構成することができる。つまり、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dを所定の距離Dに調整する隙間調整機構(70)を容易に構成することができる。
また、本実施形態1によれば、第2シリンダ室(74)を高圧流体通路(83)の圧力調整弁(85)の下流側に接続する第2通路(82)を設け、高圧流体通路を流れる流体の圧力が第2の圧力に調整されるように圧力調整弁(85)を設定するようにした。このような構成によれば、容易な構成によって、一定の第2の圧力が作用する第2シリンダ室(74)を構成することができる。つまり、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dを所定の距離Dに調整する隙間調整機構(70)を容易に構成することができる。
また、本実施形態1によれば、ゲートロータ(50)の支持部材(55)を回転自在に支持する軸受ホルダ(26)を、ゲートロータ(50)の軸方向に変位可能に構成し、第1及び第2シリンダ室(73,74)を軸受ホルダ(26)の外周側においてゲートロータ(50)の軸方向に配列されるように設けると共に、ピストン(75)を軸受ホルダ(26)と一体に形成することとした。このような構成により、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dが変動した場合には、ピストン(75)と共に、該ピストン(75)と一体に形成された軸受ホルダ(26)、該軸受ホルダ(26)に回転自在に支持された支持部材(55)、及び該支持部材(55)に背面側から支持されたゲートロータ(50)が、一体となって該ゲートロータ(50)の軸方向に変位して、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dを所定の距離Dに調整する。このように支持部材(55)を介してゲートロータ(50)と一体化された軸受ホルダ(26)にピストン(75)を一体化させ、シリンダ(72)の変位に伴ってゲートロータ(50)が支持部材(55)及び軸受ホルダ(26)ごと変位するように構成することにより、容易にゲートロータ(50)を軸方向に変位させて隙間の調整を行うことができる。
《発明の実施形態2》
実施形態2は、実施形態1のスクリュー圧縮機(1)において隙間調整機構(70)の流体回路(80)の構成を一部変更したものである。
具体的には、図7に示すように、実施形態2では、流体回路(80)に2つの圧力調整弁(85,87)を設けることとした。2つの圧力調整弁(85,87)の1つの圧力調整弁(85)は、実施形態1と同様に、油貯留室(18)からの高圧圧力状態の冷凍機油を減圧して一定の高圧圧力状態(圧力P2)に調整するものであり、実施形態2では、第2通路(82)に設けられている。一方、2つの圧力調整弁(85,87)の他の1つ圧力調整弁(第2圧力調整弁)(87)は、油貯留室(18)からの高圧圧力状態の冷凍機油を減圧して圧力P2とは別の圧力P3に調整するものであり、高圧流体通路(83)の第2通路(82)の接続部よりも下流側且つオリフィス(86)の上流側に設けられている。
このような構成により、実施形態2では、油貯留室(18)から高圧流体通路(83)に供給された高圧圧力状態の冷凍機油は、第1通路(81)と第2通路(82)とに向かって分流した後、別個の圧力調整弁(85,87)でそれぞれ個別に減圧されて所定の圧力P2,P3に調整されることとなる。
このような実施形態2によっても、実施形態1と同様の効果を奏することができる。また、本実施形態2によれば、第2シリンダ室(74)を高圧流体通路(83)の圧力調整弁(87)の上流側に接続する第2通路(82)と、該第2通路(82)を流れる流体の圧力を第2の圧力に保持する圧力調整弁(85)とを設けることとした。このような構成によれば、容易な構成によって、一定の第2の圧力が作用する第2シリンダ室(74)を構成することができる。つまり、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dを所定の距離Dに調整する隙間調整機構(70)を容易に構成することができる。
また、実施形態2によれば、ゲートロータ組立体(60)及び軸受ホルダ(26)の自重Fgが、ピストン(75)の動作(隙間調整動作)に影響を与える程大きい大型のスクリュー圧縮機(1)の場合に、例えば、圧力調整弁(87)の設定圧力P3を圧力調整弁(85)の設定圧力P2よりも高い圧力に設定することで、第1シリンダ室(73)内の流体の圧力によってピストン(75)に作用する後向きのF1を大きくして、ゲートロータ組立体(60)及び軸受ホルダ(26)の自重Fgを打ち消すことができる。
《発明の実施形態3》
実施形態3は、実施形態1のスクリュー圧縮機(1)において隙間調整機構(70)のシリンダ機構(71)の構成を一部変更したものである。
図8に示すように、実施形態3では、シリンダ(72)が、第2シリンダ室(74)の断面積が第1シリンダ室(73)の断面積よりも小さくなるように構成されている。具体的には、円筒状の軸受ホルダ(26)の第2シリンダ室(74)に面する後端部の外径D2が、第1シリンダ室(73)に面する外径D1よりも大きくなるように形成されている。これに伴い、実施形態3では、ピストン(75)の第2シリンダ室(74)側の圧力面の面積をS2が、第1シリンダ室(73)側の圧力面の面積をS1よりも小さい。
このような実施形態3によっても、実施形態1と同様の効果を奏することができる。また、実施形態3によれば、ゲートロータ組立体(60)及び軸受ホルダ(26)の自重Fgが、ピストン(75)の動作(隙間調整動作)に影響を与える程大きい大型のスクリュー圧縮機(1)の場合であっても、第2シリンダ室(74)内の流体の圧力によってピストン(75)に作用する前向きのF2が実施形態1の構成よりも小さくなるため、ゲートロータ組立体(60)及び軸受ホルダ(26)の自重Fgを打ち消すことができる。
《発明の実施形態4》
実施形態4は、実施形態1のスクリュー圧縮機(1)において隙間調整機構(70)の構成を一部変更したものである。
図9に示すように、実施形態4では、隙間調整機構(70)のシリンダ機構(71)の構成は実施形態1と同様であるが、実施形態1において第1シリンダ室(73)に設けられたばね(76)の代わりに、第1シリンダ室(73)に、シリンダ(72)よりも高い熱膨張係数を有する材料で形成された熱膨張部材(77)が設けられている。本実施形態4では、シリンダ(72)を構成する軸受ホルダ(26)とケーシング本体(11)は、鋳鉄(例えば、FC250)によって形成され、熱膨張部材(77)は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)によって形成されている。なお、PTFEの熱膨張係数は、10×10−5/℃であり、FC250の熱膨張係数(12×10−6/℃)の約8倍である。本実施形態では、熱膨張部材(77)は、横断面が第1シリンダ室(73)の横断面と略同形状に形成されている。
また、実施形態4では、流体回路(80)が、一端が第2シリンダ室(74)に開口する第2通路(82)のみによって構成されている。第2通路(82)の他端は、高圧圧力状態のガス冷媒又は冷凍機油が流れる通路、又は高圧圧力状態のガス冷媒又は冷凍機油が貯留された空間に接続されている。本実施形態4では、第2通路(82)の他端は、油貯留室(18)に接続されている。このような構成により、実施形態4では、油貯留室(18)に貯留された高圧圧力状態の冷凍機油が第2通路(82)を介して第2シリンダ室(74)に供給される。
このような構成により、各隙間調整機構(70)は、各ゲートロータ室(17)内の温度に応じて、ゲートロータ(50)を軸方向に変位させることによって、各ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dを所定の距離Dに調整する。以下、調整動作について詳述する。
スクリュー圧縮機(1)の運転中には、ゲートロータ(50)の温度が上昇し、ゲートロータ(50)が熱膨張することによってゲートロータ(50)の厚みが増す。許容運転範囲を超えた高差圧運転や低ロード運転等の異常運転時には、スクリュー圧縮機(1)の内部を循環する冷媒量が増加してゲートロータ室(17)内の温度が著しく上昇するため、ゲートロータ(50)の熱膨張も著しくなり、ゲートロータ(50)の厚みが著しく増大する。このゲートロータ(50)の厚みの増大により、ゲートロータ(50)の前面(50a)が円筒壁(20)のシール面(21)に近づこうとする。つまり、距離dが適切な距離Dよりも小さくなろうとする。
このとき、ゲートロータ室(17)内の温度の著しい上昇により、シリンダ機構(71)の第1シリンダ室(73)に設けられた熱膨張部材(77)の温度が上昇し、該熱膨張部材(77)が熱膨張して厚みが増す。このように熱膨張部材(77)の厚みが増すことにより、ピストン(75)が熱膨張部材(77)によって押されて前後方向(ゲートロータ(50)の軸方向)の後向き(第2シリンダ室(74)側)に変位する。また、このようなピストン(75)の変位に伴い、ピストン(75)が一体に形成された軸受ホルダ(26)と該軸受ホルダ(26)に支持されたゲートロータ組立体(60)が後向きに変位する。つまり、ゲートロータ(50)が後退する(軸方向において後向きに変位する)。
つまり、異常運転時にゲートロータ室(17)内の温度が著しく上昇すると、ゲートロータ(50)が通常運転時の想定範囲を超えて熱膨張することにより、ゲートロータ(50)の前面(50a)が円筒壁(20)のシール面(21)に近づこうとするが、同時に、熱膨張部材(77)が熱膨張してピストン(75)を第2シリンダ室(74)側に押すことにより、ゲートロータ(50)が後退するため、各ゲートロータ(50)の前面(50a)が円筒壁(20)のシール面(21)に接触することがなく、両者の間に隙間が確保される。よって、ゲートロータ室(17)内の温度が、ゲートロータ(50)が円筒壁(20)のシール面(21)に接触するまで熱膨張するような温度になると、上記距離Dに等しい長さ分だけ厚みが増すような熱膨張係数を有するように熱膨張部材(77)を構成することにより、各ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dを所定の距離Dに調整することができる。
上述のような隙間調整動作の後、異常状態が解除されて通常の運転状態に戻ると、ゲートロータ室(17)内の温度が低下し、ゲートロータ(50)の異常な熱膨張も解消されて厚みが通常運転時の厚みに戻る。つまり、ゲートロータ(50)の厚みが減ることとなる。このゲートロータ(50)の厚みの減少により、ゲートロータ(50)の前面(50a)が円筒壁(20)のシール面(21)から遠ざかろうとする。つまり、距離dが適切な距離Dよりも大きくなろうとする。
このとき、ゲートロータ室(17)内の温度が低下することにより、シリンダ機構(71)の第1シリンダ室(73)に設けられた熱膨張部材(77)の温度も低下し、該熱膨張部材(77)の熱膨張が解消されて該熱膨張部材(77)の厚みが減少する。ピストン(75)には、第2シリンダ室(74)内の冷凍機油の圧力P2により、該ピストン(75)を熱膨張部材(77)に押し付ける前向きの力F2が常に作用する。そのため、熱膨張部材(77)の厚みの減少に伴い、ピストン(75)は、上記力F2により、熱膨張部材(77)に接触しながら前向きに変位する。また、このようなピストン(75)の変位に伴い、ピストン(75)が一体に形成された軸受ホルダ(26)と該軸受ホルダ(26)に支持されたゲートロータ組立体(60)が前向きに変位する。つまり、ゲートロータ(50)が前進する(軸方向において前向きに変位する)。
つまり、異常状態が解除されてゲートロータ室(17)内の温度が低下すると、ゲートロータ(50)の熱膨張が解消することにより、ゲートロータ(50)の前面(50a)が円筒壁(20)のシール面(21)に遠ざかろうとするが、同時に、熱膨張部材(77)の熱膨張も解消されてピストン(75)が前向きに変位して、ゲートロータ(50)が前進することにより、各ゲートロータ(50)の前面(50a)が円筒壁(20)のシール面(21)とが離れすぎることがなく、両者の間の距離dが所定の距離Dに調整される。
以上により、実施形態4によっても、実施形態1と同様の効果を奏することができる。また、本実施形態4によれば、隙間調整機構(70)の流体回路(80)を容易に構成することができる。
《発明の実施形態5》
実施形態5は、実施形態1のスクリュー圧縮機(1)において隙間調整機構(70)の構成を変更したものである。
図10に示すように、実施形態5では、隙間調整機構(70)は、シリンダ機構(71)と流体回路(80)の代わりに、冷却通路(101)と、電磁弁(102)と、冷却液供給源(103)と、2つの温度センサ(104a,104b)と、制御部(105)とを有している。なお、実施形態5では、実施形態1においてゲートロータ(50)の軸方向に変位可能に設けられていた軸受ホルダ(26)は、ケーシング本体(11)に固定され、ゲートロータ(50)の軸方向に変位不能に構成されている。
冷却通路(101)は、一端が冷却液供給源(103)に接続され、他端が軸受ホルダ(26)内の空間(玉軸受(27)間)に開口し、冷却液供給源(103)の冷却液を軸受ホルダ(26)内の空間に供給するように構成されている。なお、本実施形態では、冷却液供給源(103)は、スクリュー圧縮機(1)が接続された冷媒回路であり、冷却通路(101)は、該冷媒回路の高圧液配管に接続されて高圧液冷媒を冷却液として軸受ホルダ(26)内の空間に導く。
電磁弁(102)は、冷却通路(101)に設けられ、該冷却通路(101)を開閉することにより、冷却液供給源(103)と軸受ホルダ(26)内の空間とを連通する連通状態と、冷却液供給源(103)と軸受ホルダ(26)内の空間との連通を遮断する非連通状態とを切り換える。
冷却液供給源(103)は、軸受ホルダ(26)及び該軸受ホルダ(26)に回転自在に支持されてゲートロータ(50)を支持する支持部材(55)を冷却するための冷却液を軸受ホルダ(26)内の空間に供給するものである。上述したように、本実施形態では、冷却液供給源(103)は、スクリュー圧縮機(1)が接続された冷媒回路によって構成され、高圧液配管を流れる高圧液冷媒を、冷却通路(101)を介して軸受ホルダ(26)内の空間に供給する。なお、冷却液供給源(103)は、スクリュー圧縮機(1)が接続された冷媒回路に限られず、他の冷媒回路や低温の冷凍機油を軸受ホルダ(26)内の空間に供給するものであってもよい。
温度センサ(104a)は、ゲートロータ室(17)内に設けられ、該ゲートロータ室(17)内の温度を検出する。本実施形態では、温度センサ(104a)は、ゲートロータ(50)付近に設けられている。一方、温度センサ(104b)は、軸受ホルダ(26)に取り付けられて、該軸受ホルダ(26)の温度を検出する。
制御部(105)は、2つの温度センサ(104a,104b)の検出値が入力されるように2つの温度センサ(104a,104b)と接続されると共に、電磁弁(102)に接続されて、該電磁弁(102)を開閉制御するように構成されている。また、制御部(105)は、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との接触が回避されるように、2つの温度センサ(104a,104b)の検出値に基づいて電磁弁(102)の状態を切り換えてゲートロータ(50)を軸方向に変位させるように構成されている。
例えば、制御部(105)は、温度センサ(104a)によって検出されたゲートロータ室(17)内の温度が所定の高温度を上回ると、電磁弁(102)を閉状態から開状態に切り換え、その後、温度センサ(104b)によって検出された軸受ホルダ(26)の温度が所定の低温度になるように、電磁弁(102)を開閉制御するように構成されている。
なお、上記所定の高温度は、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dが所定の適切な距離Dよりも短く、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)とが接触するおそれのある所定の近距離になるゲートロータ室(17)内の温度である。また、上記所定の低温度は、ゲートロータ室(17)内の温度が上記所定の高温度の場合に、軸受ホルダ(26)及び支持部材(55)の収縮によってゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との間に所定の適切な距離Dが確保される軸受ホルダ(26)の温度である。所定の高温度と所定の低温度とは、予め試験や算出することによって求められ、制御部(105)に記憶させておく。
このような構成により、各隙間調整機構(70)は、各ゲートロータ室(17)内の温度が所定の高温度になると、ゲートロータ(50)を軸方向に変位(後退)させることによって各ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との間の隙間を調整し、各ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との接触を回避する。以下、調整動作について詳述する。
スクリュー圧縮機(1)の運転中には、ゲートロータ(50)の温度が上昇し、ゲートロータ(50)が熱膨張することによってゲートロータ(50)の厚みが増す。許容運転範囲を超えた高差圧運転や低ロード運転等の異常運転時には、スクリュー圧縮機(1)の内部を循環する冷媒量が増加してゲートロータ室(17)内の温度が著しく上昇するため、ゲートロータ(50)の熱膨張も著しくなり、ゲートロータ(50)の厚みが著しく増大する。このゲートロータ(50)の厚みの増大により、ゲートロータ(50)の前面(50a)が円筒壁(20)のシール面(21)に近づこうとする。つまり、距離dが適切な距離Dよりも小さくなろうとする。
そして、温度センサ(104a)によって検出されたゲートロータ室(17)内の温度が、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dがゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)とが接触するおそれのある所定の近距離になる所定の高温度まで上昇すると、制御部(105)が電磁弁(102)を閉状態から開状態に切り換える。電磁弁(102)が開状態に切り換えられると、冷却液供給源(103)と軸受ホルダ(26)内の空間とが連通する連通状態となり、冷却液供給源(103)から軸受ホルダ(26)内の空間に冷却液が供給される。なお、本実施形態では、冷媒回路の高圧液冷媒が冷却液として供給される。軸受ホルダ(26)内の空間は、低圧空間(15)に連通するゲートロータ室(17)内にあるため、低圧空間(15)内の圧力と等しい。そのため、軸受ホルダ(26)内の空間に供給された高圧液冷媒が蒸発することにより、軸受ホルダ(26)及び支持部材(55)が冷却される。なお、軸受ホルダ(26)及び支持部材(55)は、鋳鉄(例えば、FC250)によって構成されている。そのため、異常運転時に温度上昇した軸受ホルダ(26)及び支持部材(55)は、高圧液冷媒によって冷却されて収縮する。
また、制御部(105)は、温度センサ(104b)によって検出された軸受ホルダ(26)の温度が所定の低温度になるように電磁弁(102)を開閉制御する。具体的には、軸受ホルダ(26)の温度が所定の低温度を下回ると電磁弁(102)を開状態から閉状態に切り換え、再び軸受ホルダ(26)の温度が所定の低温度を上回ると電磁弁(102)を閉状態から開状態に切り換える。このように軸受ホルダ(26)の温度を所定の温度に制御することにより、軸受ホルダ(26)及び支持部材(55)が所定量だけ収縮し、軸受ホルダ(26)に回転自在に支持される支持部材(55)に支持されるゲートロータ(50)が所定量だけ後退することとなる。
このようにして、異常運転時に、ゲートロータ(50)が通常運転時の想定範囲を超えて熱膨張することにより、ゲートロータ(50)の前面(50a)が円筒壁(20)のシール面(21)に近づこうとしても、軸受ホルダ(26)内の空間に冷却液を供給して軸受ホルダ(26)及び支持部材(55)を冷却して収縮させることにより、ゲートロータ(50)が後退することとなるため、各ゲートロータ(50)の前面(50a)が円筒壁(20)のシール面(21)に接触することがなく、両者の間に隙間が確保される。
そして、異常状態が解除されて温度センサ(104a)によって検出されたゲートロータ室(17)内の温度が所定の高温度を下回ると、ゲートロータ(50)の異常な熱膨張も解消されて厚みが通常運転時の厚みに戻る。そのため、ゲートロータ(50)の前面(50a)が円筒壁(20)のシール面(21)から遠ざかろうとする。
そこで、制御部(105)は、ゲートロータ室(17)内の温度が所定の高温度を下回ると、温度センサ(104b)の検出値(軸受ホルダ(26)の温度)に基づく電磁弁(102)の開閉制御を停止する。つまり、軸受ホルダ(26)の温度が所定の低温度を上回っても電磁弁(102)を開状態に切り換えず、閉状態のままにする。その結果、軸受ホルダ(26)及び支持部材(55)の温度が上昇し、収縮が解消される(ゲートロータ(50)の軸方向に伸長する)。よって、各ゲートロータ(50)の前面(50a)が円筒壁(20)のシール面(21)とが離れすぎることがなく、両者の間の距離dが所定の距離Dに調整される。
以上により、実施形態5によっても、実施形態1と同様の効果を奏することができる。また、実施形態5によれば、ゲートロータ(50)の熱膨張によって該ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離が近づいても、隙間調整機構(70)の制御部(105)が、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離に相関する物理量であるゲートロータ室(17)の温度を検出する温度センサ(104a)と軸受ホルダ(26)の温度を検出する温度センサ(104b)の検出値に基づいてゲートロータ(50)を軸方向に変位させることにより、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との接触を自動的に回避することができる。
《発明の実施形態6》
実施形態6は、実施形態1のスクリュー圧縮機(1)において隙間調整機構(70)の構成を変更したものである。
図11に示すように、実施形態6では、隙間調整機構(70)は、シリンダ機構(71)と流体回路(80)の代わりに、変位部材(100)と、駆動機構(111)と、温度センサ(112)と、制御部(113)とを有している。なお、実施形態6では、実施形態1においてゲートロータ(50)の軸方向に変位可能に設けられていた軸受ホルダ(26)は、ケーシング本体(11)に固定され、ゲートロータ(50)の軸方向に変位不能に構成されている。
変位部材(100)は、円筒壁(20)のシール面(21)を含むゲートロータ(50)に対向する一部分を別部材に構成したものである。変位部材(100)は、シール面(21)と逆側の面が、シール面(21)に平行な面に対して傾斜する傾斜面に構成され、該傾斜面は、スクリューロータ(40)から離れる程、ゲートロータ(50)から離れるように形成されている。また、変位部材(100)は、内周面が円筒壁(20)の内周面の一部を構成し、外周面が円筒壁(20)の外周面の一部を構成するように形成されている。
このような構成により、変位部材(100)は、シール面(21)と逆側の傾斜面に対向する円筒壁本体(円筒壁(20)の変位部材(100)以外の部分)の傾斜面に沿って傾斜方向(図11の矢印の方向)に変位可能に構成されている。また、変位部材(100)を上記円筒壁本体の傾斜面の傾斜方向(図11の矢印の方向)に変位させることにより、シール面(21)のゲートロータ(50)の軸方向における位置が変位する。具体的には、変位部材(100)を円筒壁本体の傾斜面に沿ってスクリューロータ(40)から離れる方向に変位させると、シール面(21)がゲートロータ(50)の軸方向の前方に変位する。即ち、シール面(21)がゲートロータ(50)から離れる方向に変位する。一方、変位部材(100)を上記円筒壁本体の傾斜面に沿ってスクリューロータ(40)に近づく方向に変位させると、シール面(21)がゲートロータ(50)の軸方向の後方に変位する。即ち、シール面(21)がゲートロータ(50)から近づく方向に変位する。
駆動機構(111)は、変位部材(100)に接続され、該変位部材(100)を上記円筒壁本体の傾斜面の傾斜方向(図11の矢印の方向)に押し引きして変位させるものである。駆動機構(111)は、例えば、ステッピングモータとボールネジ等を用いて構成することができる。なお、駆動機構(111)は、変位部材(100)を上記円筒壁本体の傾斜面の傾斜方向に変位させることができるものであればいかなる機構であってもよい。
温度センサ(112)は、ゲートロータ室(17)内に設けられ、該ゲートロータ室(17)内の温度を検出する。本実施形態では、温度センサ(112)は、ゲートロータ(50)付近に設けられている。
制御部(113)は、温度センサ(112)の検出値が入力されるように温度センサ(112)と接続されると共に、駆動機構(111)に接続されて、該駆動機構(111)の動作を制御するように構成されている。また、制御部(113)は、温度センサ(112)の検出値に基づいて、変位部材(100)が、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dが所定の適切な距離Dになる位置に変位するように、駆動機構(111)の動作を制御するように構成されている。
具体的には、制御部(113)は、ゲートロータ室(17)内の種々の温度毎の上記距離dが所定の距離Dとなる変位部材(100)の位置情報を記憶しており、温度センサ(112)によって検出されたゲートロータ室(17)内の温度と上記位置情報とから、上記距離dが所定の距離Dとなる変位部材(100)の位置を算出し、変位部材(100)がその位置に変位するように駆動機構(111)の動作を制御する。なお、ゲートロータ室(17)内の種々の温度毎の上記距離dが所定の距離Dとなる変位部材(100)の位置情報は、予め試験や算出してゲートロータ室(17)内の温度とゲートロータ(50)の熱膨張量との相関関係を求めておくことにより得られる。
このような構成により、各隙間調整機構(70)は、各ゲートロータ室(17)内の温度に応じて、変位部材(100)を変位させる(シール面(21)を変位させる)ことによって、各ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dを所定の距離Dに調整する。以下、調整動作について詳述する。
スクリュー圧縮機(1)の運転中には、ゲートロータ(50)の温度が上昇し、ゲートロータ(50)が熱膨張することによってゲートロータ(50)の厚みが増す。許容運転範囲を超えた高差圧運転や低ロード運転等の異常運転時には、スクリュー圧縮機(1)の内部を循環する冷媒量が増加してゲートロータ室(17)内の温度が著しく上昇するため、ゲートロータ(50)の熱膨張も著しくなり、ゲートロータ(50)の厚みが著しく増大する。このゲートロータ(50)の厚みの増大により、ゲートロータ(50)の前面(50a)が円筒壁(20)のシール面(21)に近づこうとする。つまり、距離dが適切な距離Dよりも小さくなろうとする。
しかしながら、制御部(113)が、温度センサ(112)によって検出されたゲートロータ室(17)内の温度に応じた位置に変位部材(100)を変位させることにより、シール面(21)がゲートロータ(50)から離れる方向に変位する。よって、各ゲートロータ(50)の前面(50a)が円筒壁(20)のシール面(21)に接触することがなく、両者の間の距離dが適切な距離Dに調整される。
上述のような隙間調整動作の後、異常状態が解除されて通常の運転状態に戻ると、ゲートロータ室(17)内の温度が低下し、ゲートロータ(50)の異常な熱膨張も解消されて厚みが通常運転時の厚みに戻る。つまり、ゲートロータ(50)の厚みが減ることとなる。このゲートロータ(50)の厚みの減少により、ゲートロータ(50)の前面(50a)が円筒壁(20)のシール面(21)から遠ざかろうとする。つまり、距離dが適切な距離Dよりも大きくなろうとする。
しかしながら、制御部(113)が、温度センサ(112)によって検出されたゲートロータ室(17)内の温度に応じた位置に変位部材(100)を変位させることにより、シール面(21)がゲートロータ(50)に近づく方向に変位することにより、各ゲートロータ(50)の前面(50a)が円筒壁(20)のシール面(21)とが離れすぎることがなく、両者の間の距離dが所定の距離Dに調整される。
以上により、実施形態6によっても、実施形態1と同様の効果を奏することができる。また、また、実施形態6によれば、ゲートロータ(50)の熱膨張によって該ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離が近づいても、隙間調整機構(70)の制御部(113)が、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離に相関する物理量であるゲートロータ室(17)の温度を検出する温度センサ(112)の検出値に基づいて円筒壁(20)のシール面(21)をゲートロータ(50)の軸方向に変位させることにより、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との接触を自動的に回避することができる。
《発明の実施形態7》
実施形態7は、実施形態1のスクリュー圧縮機(1)において隙間調整機構(70)の構成を変更したものである。
図12及び図13に示すように、実施形態7では、隙間調整機構(70)は、シリンダ機構(71)と流体回路(80)の代わりに、背圧機構と、背圧調整部とを有している。なお、実施形態7では、実施形態1においてゲートロータ(50)の軸方向に変位可能に設けられていた軸受ホルダ(26)は、ケーシング本体(11)に固定され、ゲートロータ(50)の軸方向に変位不能に構成されている。
背圧機構は、油溜まり(120)と、軸内連通路(121)と、背圧空間(122)とを有し、ゲートロータ(50)の背面に軸方向の前向きの圧力(背圧)を作用させる。
油溜まり(120)は、軸受ホルダ(26)内の玉軸受(27)の後方に形成され、該玉軸受(27)に供給するための冷凍機油が供給されて溜まっている。油溜まり(120)は、高圧空間(16)に形成された油貯留室(18)に図示しない通路を介して連通している。油溜まり(120)には、図示しない上記連通路を介して油貯留室(18)から高圧圧力状態の冷凍機油が供給されて溜まることにより、玉軸受(27)の摺動部に至り、該摺動部を潤滑する。
軸内連通路(121)は、縦連通路(121a)と2本の横連通路(121b)とを有している。縦連通路(121a)は、軸部(58)の前端から後端へ中心部を貫通するように軸方向に真っ直ぐ延びている。2本の横連通路(121b)は、該縦連通路(121a)の前端(ゲートロータ(50)側)からそれぞれ軸部(58)の径方向の外側へ延び、軸部(58)の外周面において開口している。
背圧空間(122)は、ゲートロータ(50)の背面と支持部材(55)の円板部(56)及びゲート支持部(57)の前面との間において、ゲートロータ(50)に固定された弾性部材(123,124)によって区画される空間である。弾性部材(123,124)は、ゲートロータ(50)よりも弾性率の高い耐熱性を有する弾性材料によって構成されている。図13に示すように、弾性部材(123)は、ゲートロータ(50)の背面において11本のゲート(51)の外縁を縁取る形状に形成されている。一方、弾性部材(124)は、ゲートロータ(50)の背面において支持部材(55)の軸部(58)と中央凸部(59)とが連続する部分の外周面を、2本の横連通路(121b)の開口部分を除いて取り囲むように形成されている。なお、弾性部材(123,124)は、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との間の隙間をシールする高圧圧力状態の冷凍機油によってゲートロータ(50)の前面(50a)に作用する軸方向の後向きの押圧力によって収縮するような弾性材料で構成せれている。
このような構成により、背圧空間(122)には、軸内連通路(121)を介して油溜まり(120)の高圧圧力状態の冷凍機油が供給される。そのため、ゲートロータ(50)の背面側には、背圧空間(122)の高圧圧力状態の冷凍機油によって軸方向の前向きに押圧される(背圧が作用する)。
背圧調整部は、排出通路(125)と、電磁弁(126)と、温度センサ(128)と、制御部(129)とを有し、ゲートロータ室(17)内の温度に応じて背圧機構によってゲートロータ(50)の背面に作用する背圧を調整する。
排出通路(125)は、一端が背圧機構の油溜まり(120)に開口し、他端がゲートロータ室(17)内に開口する通路である。
電磁弁(126)は、排出通路(125)に設けられ、該排出通路(125)を開閉することにより、油溜まり(120)とゲートロータ室(17)とを連通する連通状態と、油溜まり(120)とゲートロータ室(17)との連通を遮断する非連通状態とを切り換える。
温度センサ(128)は、ゲートロータ室(17)内に設けられ、該ゲートロータ室(17)内の温度を検出する。本実施形態では、温度センサ(128)は、ゲートロータ(50)付近に設けられている。
制御部(129)は、温度センサ(128)の検出値が入力されるように温度センサ(128)と接続されると共に、電磁弁(126)に接続されて、該電磁弁(126)を開閉制御するように構成されている。また、制御部(129)は、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との接触が回避されるように、温度センサ(128)の検出値に基づいて電磁弁(126)の状態を切り換えることにより、ゲートロータ(50)を軸方向に変位させるように構成されている。
例えば、制御部(129)は、温度センサ(128)によって検出されたゲートロータ室(17)内の温度が所定の高温度を上回ると、電磁弁(126)を閉状態から開状態に切り換え、逆に、温度センサ(128)によって検出されたゲートロータ室(17)内の温度が所定の高温度を下回ると、電磁弁(126)を開状態から閉状態に切り換えるように構成されている。
なお、上記所定の高温度は、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dが所定の適切な距離Dよりも短く、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)とが接触するおそれのある所定の近距離になるゲートロータ室(17)内の温度である。
このような構成により、各隙間調整機構(70)は、各ゲートロータ室(17)内の温度が所定の高温度になると、ゲートロータ(50)を軸方向に変位(後退)させることによって各ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との間の隙間を調整し、各ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との接触を回避する。以下、調整動作について詳述する。
スクリュー圧縮機(1)の運転中には、ゲートロータ(50)の温度が上昇し、ゲートロータ(50)が熱膨張することによってゲートロータ(50)の厚みが増す。許容運転範囲を超えた高差圧運転や低ロード運転等の異常運転時には、スクリュー圧縮機(1)の内部を循環する冷媒量が増加してゲートロータ室(17)内の温度が著しく上昇するため、ゲートロータ(50)の熱膨張も著しくなり、ゲートロータ(50)の厚みが著しく増大する。このゲートロータ(50)の厚みの増大により、ゲートロータ(50)の前面(50a)が円筒壁(20)のシール面(21)に近づこうとする。つまり、距離dが適切な距離Dよりも小さくなろうとする。
そして、温度センサ(128)によって検出されたゲートロータ室(17)内の温度が、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dがゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)とが接触するおそれのある所定の近距離になる所定の高温度まで上昇すると、制御部(129)が電磁弁(126)を閉状態から開状態に切り換える。電磁弁(126)が開状態に切り換えられると、油溜まり(120)とゲートロータ室(17)とが連通する連通状態となり、油溜まり(120)の高圧圧力状態の冷凍機油がゲートロータ室(17)に排出される。そのため、ゲートロータ(50)の背面に高圧圧力状態の冷凍機油による背圧が作用しなくなる。
ところで、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との間の隙間は、スクリューロータ(40)の摺動部に供給された高圧圧力状態の冷凍機油の一部が流入して油膜を形成することによってシールされている。そして、この隙間をシールする冷凍機油により、ゲートロータ(50)の前面(50a)には、軸方向の後向きに押圧する力が作用する。そのため、電磁弁(126)が開状態に切り換えられてゲートロータ(50)の背面に高圧圧力状態の冷凍機油による背圧が作用しなくなると、ゲートロータ(50)には、該ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との間の隙間をシールする高圧圧力状態の冷凍機油による軸方向の後向きの押圧力と、弾性部材(123,124)による軸方向の前向きの押圧力とが作用することとなる。上述のように、弾性部材(123,124)は、高圧圧力状態の冷凍機油によってゲートロータ(50)の前面(50a)に作用する軸方向の後向きの押圧力によって収縮するような弾性材料で構成されている。そのため、弾性部材(123,124)は、高圧圧力状態の冷凍機油によってゲートロータ(50)の前面(50a)に作用する軸方向の後向きの押圧力によって収縮し、これにより、ゲートロータ(50)が軸方向の後向きに後退することとなる。
このようにして、異常運転時に、ゲートロータ(50)が通常運転時の想定範囲を超えて熱膨張することにより、ゲートロータ(50)の前面(50a)が円筒壁(20)のシール面(21)に近づこうとしても、背圧空間(122)の高圧圧力状態の冷凍機油を排出してゲートロータ(50)の前面(50a)に作用する押圧力がゲートロータ(50)の背面に作用する押圧力に打ち勝つようにすることにより、ゲートロータ(50)が後退するため、各ゲートロータ(50)の前面(50a)が円筒壁(20)のシール面(21)に接触することがなく、両者の間に隙間が確保される。
そして、異常状態が解除されて温度センサ(128)によって検出されたゲートロータ室(17)内の温度が所定の高温度を下回ると、ゲートロータ(50)の異常な熱膨張も解消されて厚みが通常運転時の厚みに戻る。そのため、ゲートロータ(50)の前面(50a)が円筒壁(20)のシール面(21)から遠ざかろうとする。
そこで、制御部(129)は、ゲートロータ室(17)内の温度が所定の高温度を下回ると、電磁弁(126)を開状態から閉状態に切り換え、背圧空間(122)が再び高圧圧力状態の冷凍機油で満たされるようにする。つまり、背圧空間(122)の高圧圧力状態の冷凍機油によってゲートロータ(50)の背面に背圧が作用するようにする。その結果、弾性部材(123,124)の収縮が解消される(ゲートロータ(50)の軸方向に伸長する)。そのため、各ゲートロータ(50)の前面(50a)が円筒壁(20)のシール面(21)とが離れすぎることがなく、両者の間の距離dが所定の距離Dに調整される。
以上により、実施形態7によっても、実施形態1と同様の効果を奏することができる。また、実施形態7によれば、ゲートロータ(50)の熱膨張によって該ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離が近づいても、隙間調整機構(70)の制御部(129)が、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離に相関する物理量であるゲートロータ室(17)の温度を検出する温度センサ(128)の検出値に基づいてゲートロータ(50)を軸方向に変位させることにより、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との接触を自動的に回避することができる。
また、実施形態7において、弾性部材(123,124)を設けて背圧空間(122)のみを形成し、その他の構成要素を省略してもよい。
上記構成によれば、スクリュー圧縮機(1)の異常運転時にゲートロータ(50)の熱膨張によってゲートロータ(50)の前面(50a)が円筒壁(20)のシール面(21)に近づくと、隙間をシールする冷凍機油(油膜)の圧力が上昇し、冷凍機油によってゲートロータ(50)の前面(50a)に作用する後向きの押圧力が増大する。その結果、この押圧力によって弾性部材(123,124)が収縮し、ゲートロータ(50)が軸方向の後向きに後退することで、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との接触が回避されることとなる。
一方、ゲートロータ(50)の熱膨張が解消されてゲートロータ(50)の前面(50a)が円筒壁(20)のシール面(21)から遠ざかると、隙間をシールする冷凍機油(油膜)の圧力が低下し、冷凍機油によってゲートロータ(50)の前面(50a)に作用する後向きの押圧力が低下する。その結果、弾性部材(123,124)の収縮が解消され、ゲートロータ(50)が軸方向の前向きに前進する。
以上により、実施形態7において、弾性部材(123,124)を設けて背圧空間(122)のみを形成する構成であっても、ゲートロータ(50)の熱膨張によってゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離が近づいても、隙間調整機構(70)がゲートロータ(50)を軸方向に変位させることにより、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との接触を回避することができる。
《その他の実施形態》
上記各実施形態では、スクリュー圧縮機(1)内の高圧圧力状態の冷凍機油を、隙間調整機構(70)の流体回路(80)に供給し、冷凍機油の圧力でゲートロータ(50)を駆動していたが、冷凍機油の代わりに高圧圧力状態のガス冷媒を流体回路(80)に供給し、ガス冷媒の圧力でゲートロータ(50)を駆動するように構成してもよい。
また、上記各実施形態において、スクリュー圧縮機(1)内の高圧圧力状態の冷凍機油やガス冷媒の圧力でゲートロータ(50)を駆動するのではなく、モータによってゲートロータ(50)を駆動するように隙間調整機構(70)を構成してもよい。
また、上記実施形態1〜3において、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との距離dを、流体回路(80)の第1通路(81)の圧力の増減によって検出するのではなく、ギャップセンサ等の非接触センサを設け、該センサからの電気信号によって検出するように隙間調整機構(70)を構成してもよい。
さらに、実施形態5〜7において、隙間調整機構(70)が、温度センサ(104a,112,128)の代わりにギャップセンサ等の非接触センサを用いて、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との接触が回避されるようにゲートロータ(50)及び円筒壁(20)のシール面(21)の少なくとも一方をゲートロータ(50)の軸方向に変位させるように構成されていてもよい。
また、隙間調整機構(70)は、ゲートロータ(50)の前面(50a)と円筒壁(20)のシール面(21)との接触が回避されるようにゲートロータ(50)及び円筒壁(20)のシール面(21)の両方をゲートロータ(50)の軸方向に変位させるように構成されていてもよい。