本願発明を具体化した実施形態を普通型コンバイン(以下、単にコンバインという)に適用した図面(図1〜図6)に基づき説明する。まず、コンバインの概略構造について説明する。なお、以下の説明では、走行機体1の前進方向に向かって左側を単に左側と称し、同じく前進方向に向かって右側を単に右側と称する。
図1及び図2に示すように、実施形態のコンバインは、走行部としてのゴムクローラ製の左右一対の履帯2にて支持された走行機体1を備える。走行機体1の前部には、稲、麦、大豆又はトウモロコシといった穀物の未刈り穀桿を刈取りながら取込む刈取部3が単動式の昇降用油圧シリンダ4にて昇降調節可能に装着されている。
走行機体1の左側には、刈取部3から供給された刈取穀稈を脱穀処理するための脱穀部9を搭載する。脱穀部9の下部には、揺動選別及び風選別を行うための穀粒選別機構10を配置する。走行機体1の前部右側には、オペレータが搭乗する操縦部としての運転台5を搭載する。運転台5(運転座席42の下方)には、動力源としてのエンジン7を配置する。運転台5の後方(走行機体1の右側)には、脱穀部9から穀粒を取出すグレンタンク6と、トラック荷台(またはコンテナなど)に向けてグレンタンク6内の穀粒を排出する穀粒排出コンベヤ8を配置する。穀粒排出コンベヤ8を機外側方に傾倒させて、グレンタンク6内の穀粒を穀粒排出コンベヤ8にて搬出するように構成している。
刈取部3は、脱穀部9前部の扱口9aに連通したフィーダハウス11と、フィーダハウス11の前端に連設された横長バケット状の穀物ヘッダー12とを備える。穀物ヘッダー12内に掻込みオーガ13(プラットホームオーガ)を回転可能に軸支する。掻込みオーガ13の前部上方にタインバー付きの掻込みリール14を配置する。穀物ヘッダー12の前部にバリカン状の刈刃15を配置する。穀物ヘッダー12前部の左右両側に左右の分草体16を突設する。また、フィーダハウス11に供給コンベヤ17を内設する。供給コンベヤ17の送り終端側(扱口9a)に刈取り穀稈投入用ビータ18(フロントロータ)を設ける。なお、フィーダハウス11の下面部と走行機体1の前端部とが昇降用油圧シリンダ4を介して連結され、後述する刈取入力軸89(フィーダハウスコンベヤ軸)を昇降支点として、刈取部3が刈取昇降用油圧シリンダ4にて昇降動する。
上記の構成により、左右の分草体16間の未刈り穀稈の穂先側が掻込みリール14にて掻込まれ、未刈り穀稈の稈元側が刈刃15にて刈取られ、掻込みオーガ13の回転駆動によって、穀物ヘッダー12の左右幅の中央部寄りのフィーダハウス11入口付近に刈取穀稈が集められる。穀物ヘッダー12の刈取穀稈の全量は、供給コンベヤ17によって搬送され、ビータ18によって脱穀部9の扱口9aに投入される。なお、穀物ヘッダー12を水平制御支点軸回りに回動させる水平制御用油圧シリンダ(図示省略)を備え、穀物ヘッダー12の左右方向の傾斜を前記水平制御用油圧シリンダにて調節して、穀物ヘッダー12、刈刃15及び掻込みリール14を圃場面に対して水平に支持することも可能である。
また、図4に示すように、脱穀部9の扱室内に扱胴21を回転可能に設ける。走行機体1の前後方向に延長させた扱胴軸20(図3及び図4参照)に扱胴21を軸支する。扱胴21の下方側には、穀粒を漏下させる受網24を張設する。なお、扱胴21前部の外周面には、螺旋状のスクリュー羽根状の取込み羽根25が半径方向外向きに突設されている。
上記の構成により、ビータ18によって扱口9aから投入された刈取穀稈は、扱胴21の回転によって走行機体1の後方に向けて搬送されながら、扱胴21と受網24との間などにて混練されて脱穀される。受網24の網目よりも小さい穀粒等の脱穀物は受網24から漏下する。受網24から漏下しない藁屑等は、扱胴21の搬送作用によって、脱穀部9後部の排塵口23から圃場に排出される。
なお、扱胴21の上方側には、扱室内の脱穀物の搬送速度を調節する複数の送塵弁(図示省略)を回動可能に枢着する。前記送塵弁の角度調整によって、扱室内の脱穀物の搬送速度(滞留時間)を、刈取穀稈の品種や性状に応じて調節できる。一方、脱穀部9の下方に配置された穀粒選別機構10として、グレンパン、チャフシーブ、グレンシーブ及びストローラック等を有する比重選別用の揺動選別盤26を備える。
また、穀粒選別機構10として、揺動選別盤26に選別風を供給する唐箕ファン29等を備える。扱胴21にて脱穀されて受網24から漏下した脱穀物は、揺動選別盤26の比重選別作用との唐箕ファン29の風選別作用とにより、穀粒(精粒等の一番物)、穀粒と藁の混合物(枝梗付き穀粒等の二番物)、及び藁屑等に選別されて取出されるように構成する。
揺動選別盤26の下側方には、穀粒選別機構10として、一番コンベヤ機構30及び二番コンベヤ機構31を備える。揺動選別盤26及び唐箕ファン29の選別によって、揺動選別盤26から落下した穀粒(一番物)は、一番コンベヤ機構30及び揚穀コンベヤ32によってグレンタンク6に収集される。穀粒と藁の混合物(二番物)は、二番コンベヤ機構31及び二番還元コンベヤ33等を介して揺動選別盤26の選別始端側に戻され、揺動選別盤26によって再選別される。藁屑等は、走行機体1後部の排塵口23から圃場に排出されるように構成する。
更に、図1〜図3に示す如く、運転台5には、操縦コラム41と、オペレータが座乗する運転座席42とを配置している。操縦コラム41には、エンジン7の回転数を調節するアクセルレバー(図示省略)と、オペレータの回転操作にて走行機体1の進路を変更する操縦ハンドル43と、走行機体1の移動速度を切換える主変速レバー44及び副変速レバー(図示省略)と、刈取部3を駆動または停止操作する刈取クラッチレバー(図示省略)と、脱穀部9を駆動または停止操作する脱穀クラッチレバー(図示省略)が配置されている。また、グレンタンク6の前部上面側にサンバイザー支柱48を介して日除け用の屋根体49を取付け、日除け用の屋根体49にて運転台5の上方側を覆うように構成している。
図1、図2に示す如く、走行機体1の下面側に左右のトラックフレーム50を配置している。トラックフレーム50には、走行部としての履帯2にエンジン7の動力を伝える駆動スプロケット51と、履帯2のテンションを維持するテンションローラ52と、履帯2の接地側を接地状態に保持する複数のトラックローラ53と、履帯2の非接地側を保持する中間ローラ54とを設けている。駆動スプロケット51によって履帯2の前側を支持させ、テンションローラ52によって履帯2の後側を支持させ、トラックローラ53によって履帯2の接地側を支持させ、中間ローラ54によって履帯2の非接地側を支持させるように構成する。
次に、図4〜図6等を参照しながら、脱穀部9の詳細構造について説明する。図4に示すように、脱穀部9は、穀稈脱穀用の扱胴21と、扱胴21の下方に落下する脱粒物を揺動選別する揺動選別盤26と、風選別用の唐箕ファン29並びに補助送風ファン170とを備えている。扱胴21の前部側はフィーダハウス11に連通する扱口9aに臨ませている。実施形態では、脱穀部9の骨組を構成する左右一対の前支柱34の前部上面側に、刈取り支持枠体36を設けている。刈取り支持枠体36の内部に形成した投入室171に、刈取り穀稈投入用のビータ18(フロントロータ)を回転可能に配置している。投入室171の前面側はフィーダハウス11の後端側に連通し、投入室171の後面側は脱穀部9前部側に形成した扱口9aに連通している。従って、フィーダハウス11は、ビータ18を収容した投入室171を介して脱穀部9の扱口9aに連通している。刈取部3のフィーダハウス11と脱穀部9の扱口9aとの間に位置する投入室171の底面部179が刈取物導入板を構成している。
扱胴21の後部側は、脱穀部9の後部側に形成した排塵口23に臨ませている。扱胴21の下方には、穀粒を漏下させる受網24を張設している。実施形態では、扱胴21の後部側は、受網24の後端よりも更に後方に突出している。扱胴21の後部下側(受網24のない開口部分)が排塵口23になっている。なお、扱胴21の回転軸芯線は走行機体1の進行方向(前後方向)に沿って延びている。刈取装置3からフィーダハウス11及びビータ18を介して脱穀装置の扱口9aに全量投入された刈取り穀稈が、扱胴21にて脱穀される。
受網24の下方に位置する揺動選別盤26は、揺動リンク172を介して前方斜め下向きと後方斜め上向きとに往復揺動可能に構成されている。揺動選別盤26には、受網24の前部下方に位置するグレンパン173、穀粒漏下量を調節するチャフシーブ174、チャフシーブ174と一番コンベヤ機構30との間に配置したグレンシーブ176、及びチャフシーブ174の後端側に連設したストローラック177を有している。
グレンパン173の下方に配置した唐箕ファン29は、グレンシーブ176やチャフシーブ174を下から上向きに抜けて脱穀部9後部側の排塵口23に向かう選別風を吹き出すように構成している。補助送風ファン170は、唐箕ファン29による風選別を補助するものである。実施形態の補助送風ファン170は、左右横長の形状で且つ前方吸引後方排気型に構成していて、脱穀部9前部側にある扱口9aの下方で且つ唐箕ファン29の前方に配置している。補助送風ファン170の回転軸である補助ファン軸184は、脱穀部9の左右一側から左右他側にわたって延びていて脱穀部9の左右側板に回転可能に軸支している。脱穀部9の前面側には左右横長の吸引口178を形成している。吸引口178から補助送風ファン170に外気を取り込むように構成している。このように構成すると、側方吸引後方排気型である従来の補助送風ファンよりも小型の補助送風ファン170を採用できる。補助送風ファン170を小型化することによって、補助送風ファン170配置スペースをコンパクト化でき、ひいては脱穀部9のコンパクト化を図れる。
補助送風ファン170からの補助選別風は、扱口9a下方に形成した左右横長の吸引口178から、唐箕ファン29を囲うケーシング182とグレンパン173との間の流通路180を通って、チャフシーブ174やグレンシーブ176に向かうように構成している。補助選別風がチャフシーブ174からグレンシーブ176へ落下する脱穀物中の藁屑を後方へ吹き飛ばすことによって、風選別機構全体としての選別性能を向上させている。
図4及び図5に示すように、実施形態の吸引口178は、扱口9aの下方で且つ左右一対の前支柱34の間において開口させている。吸引口178前方には、ビータ18を収容する投入室171の底面部179(刈取物導入板)を位置させている。すなわち、正面から見て、投入室171の底面部179(刈取物導入板)が脱穀部9前面側の吸引口178に被さるような位置関係になっている。このように構成すると、補助送風ファン170の吸引口178を投入室171の底面部179(刈取物導入板)でカバーする(覆う)状態に保持できるため、例えば刈取り作業時に、コンバイン周辺を飛散する粉塵等が吸引口178に取り込まれるおそれを抑制できる。
図4に示すように、揺動選別盤26(グレンパン173)前面側と唐箕ファン29のケーシング182とには、前向きに延びる上下の延設板181を設けている。上下の延設板181によって補助送風ファン170の上下を取り囲んでいる。上下の延設板181の前端側はいずれも、扱口9a下方の吸引口178に臨ませている。上延設板181の後端側は、グレンパン173の前端側に固定している。下延設板181の後端側は、唐箕ファン29のケーシング182の前部側に固定している。補助送風ファンを上下から囲う上下の延設板181の存在によって、ケーシング182とグレンパン173との間の流通路180は扱口9a下方の吸引口178に臨むまで延長している。上下の延設板181で囲われた空間(流通路180の延長空間)に吸引口178が連通している。このように構成すると、吸引口178から補助送風ファン170を経由する流通路180を扱口9a下方に簡単な構成で形成でき、補助送風ファン170の外気取り込み性能を向上できる。
扱胴21にて脱穀され受網24から零れ落ちた脱粒物は、往復揺動する揺動選別盤26のグレンパン173上に落下して比重選別されながら、後方のチャフシーブ174に送られる。チャフシーブ174上の脱粒物は、当該チャフシーブ174自体にて比重選別されると共に、唐箕ファン29及び補助送風ファン170から後方に流れる選別風を受け、穀粒と藁屑とに分離される。
チャフシーブ174及びグレンシーブ176から落下した穀粒(一番物)は、その中の粉塵を唐箕ファン29の選別風にて除去しながら一番コンベヤ機構30に集められる。一番コンベヤ機構30から取出された穀粒は、揚穀コンベヤ32を介してグレンタンク6に搬入・収集される。チャフシーブ174及びグレンシーブ176を通過できなかった二番物や、チャフシーブ174後部から落下した二番物は、一番コンベヤ機構30後方の二番コンベヤ機構31に集められる。二番コンベヤ機構31に集められた二番物は、二番還元コンベヤ33を介して揺動選別盤26の上面側に戻して再選別される。チャフシーブ174上の比較的重い藁屑は、ストローラック177上を経て排塵口23から機外へ排出される。
次に、図3及び図4等を参照してコンバインの駆動構造を説明する。直進ポンプ及び直進モータを有する走行変速用の直進油圧式無段変速機64をミッションケース63に設ける。走行機体1前部の右側上面にエンジン7を搭載し、エンジン7左側の走行機体1前部にミッションケース63を配置している。エンジン7から左側方に突出させた出力軸65と、ミッションケース63から左側方に突出させたミッション入力軸66を、エンジン出力ベルト67及びエンジン出力プーリ68及びミッション入力プーリ69を介して連結している。加えて、昇降用油圧シリンダ4等を駆動する作業部チャージポンプ59及び冷却ファン149をエンジン7に配置し、作業部チャージポンプ59及び冷却ファン149をエンジン7にて駆動する。
また、旋回ポンプ及び旋回モータを有する操舵用の旋回油圧式無段変速機70をミッションケース63に設け、ミッション入力軸66を介して直進油圧式無段変速機64と旋回油圧式無段変速機70とにエンジン7の出力を伝達させる一方、操縦ハンドル43と主変速レバー44及び副変速レバーにて、直進油圧式無段変速機64と旋回油圧式無段変速機70を出力制御し、直進油圧式無段変速機64と旋回油圧式無段変速機70を介して左右の履帯2を駆動し、圃場内などを走行移動するように構成している。実施形態では、ミッションケース63の右側面上部に直進及び旋回油圧式無段変速機64,70を配置している。
更に、扱胴軸20の前端側を軸支する扱胴駆動ケース71を備える(図4及び図5参照)。脱穀部9の前面側に扱胴駆動ケース71を配置する。刈取部3と扱胴21を駆動するための扱胴入力軸72を扱胴駆動ケース71に軸支する。また、脱穀部9の左右に貫通させる一定回転軸としての主カウンタ軸76(第1カウンタ軸)を備える。主カウンタ軸76の右側端部に作業部入力プーリ83を設けている。エンジン7の出力軸65上のエンジン出力プーリ68に、テンションローラを兼用した脱穀クラッチ84と作業部駆動ベルト85を介して、主カウンタ軸76の右側端部を連結している。
扱胴21の前方に、走行機体1左右向きに延設された扱胴入力軸72と、走行機体1左右向きに配置されたビータ18と、走行機体1左右向きに延設された刈取入力軸89を設けている。扱胴入力軸72に主カウンタ軸76の駆動力を伝達する扱胴入力機構90として、扱胴駆動プーリ86,87と扱胴駆動ベルト88を備え、エンジン7からの駆動力が伝達される主カウンタ軸76のエンジン7側一端部に扱胴入力機構90(扱胴駆動プーリ86,87と扱胴駆動ベルト88)を配置し、エンジン7の一定回転出力にて扱胴21を一定回転駆動するように構成している。
主カウンタ軸76の駆動力をビータ軸82及び刈取入力軸89に伝達するビータ駆動機構及び刈取駆動機構が、主カウンタ軸76の他端部側に設けられている。また、ビータ軸82と主カウンタ軸76との間に副カウンタ軸104(第2カウンタ軸)が配置されており、主カウンタ軸76及び副カウンタ軸104に設けた動力中継プーリ105,106に、動力中継ベルト113が巻回されて、刈取駆動機構へ動力を伝達する動力中継機構を構成している。
副カウンタ軸104及びビータ軸82それぞれに設けた刈取り駆動プーリ107,108に刈取り駆動ベルト114が巻回されて、ビータ駆動機構183(ロータ駆動機構)を構成している。そして、刈取り駆動ベルト114が、テンションローラを兼用した刈取クラッチ109(ロータテンション装置)により張設されることで、主カウンタ軸76に伝達されたエンジン7からの回転動力が動力中継機構及びビータ駆動機構183を介してビータ軸82に入力される。また、ビータ18が軸支されたビータ軸82から、刈取駆動チェン115及びスプロケット116,117を介して刈取入力軸89にエンジン7からの刈取駆動力を伝達させるように、刈取駆動機構が構成されている。これにより、刈取部3が、ビータ18と共にエンジン7の一定回転出力にて一定回転駆動する。
唐箕ファン29の回転軸である唐箕軸100は中空の管形状を有していて、唐箕軸100の中空部分に主カウンタ軸76が内挿されている。すなわち、主カウンタ軸76と唐箕軸100とで二重軸構造を有しており、主カウンタ軸76と唐箕軸100とは互いに相対回転可能に軸支されている。主カウンタ軸76及び唐箕軸100は、脱穀部9の前部側において左右横向きに延びている。副カウンタ軸104は、主カウンタ軸76(唐箕軸100)の前方において主カウンタ軸76及び唐箕軸100と平行状に延びている。そして、補助ファン軸184は、副カウンタ軸104と主カウンタ軸76(唐箕軸100)との前後方向の間で且つこれらの軸76,100,104よりも上方に、これらの軸76,100,104と平行な姿勢で位置している。
副カウンタ軸104及び唐箕軸100それぞれに設けた唐箕駆動プーリ101,102と、補助ファン軸184の左突端側に設けた補助ファンプーリ185とに、唐箕駆動ベルト103が巻回されて、唐箕駆動機構186を構成している。従って、主カウンタ軸76に伝達されたエンジン7からの回転動力が動力中継機構を介してビータ軸82に入力される一方、唐箕駆動機構186を介して唐箕ファン29及び補助送風ファン170に入力されて、唐箕ファン29と補助送風ファン170とがエンジン7の一定回転出力にて一定回転駆動する。このように構成すると、唐箕駆動機構186を利用して補助送風ファン170を駆動できることになり、補助送風ファン170専用の動力伝達系統を設ける必要がない。補助送風ファン170が存在しない仕様であれば、副カウンタ軸104及び唐箕軸100の唐箕駆動プーリ101,102に唐箕駆動ベルト103が巻回させて、唐箕駆動機構186を構成すれば足りることになる。従って、補助送風ファン170有り無しの仕様に拘らず、主カウンタ軸76から副カウンタ軸104を経て唐箕軸100に至る動力伝達系統(唐箕駆動機構186)を共通化することが可能になり、コスト抑制に寄与する。
また、側面視において主カウンタ軸76(唐箕軸100)と副カウンタ軸104との前後方向の間に補助ファン軸184を配置するから、主カウンタ軸76ひいては唐箕軸100で支持する唐箕ファン29、補助ファン軸184で支持する補助送風ファン170、及び副カウンタ軸104を、脱穀部9の前部側にコンパクトにまとめて、脱穀部9全体での小型化を図ることが可能になっている。
実施形態では、脱穀部9の骨組を構成する左前支柱34に、テンション装置としての刈取クラッチ109と副カウンタ軸104と唐箕駆動ベルト103に対する唐箕テンション装置189とを支持させている。この場合、図6に示すように、左前支柱31の前面上部側に、クラッチ軸受体187を介して刈取クラッチ109の支軸部を取り付けている。刈取クラッチ109の支軸部は、片持ち梁の状態でクラッチ軸受体187に支持される。また、左前支柱34の前面下部側には、副カウンタ軸受体188を介して副カウンタ軸104を取り付けている。副カウンタ軸104は、片持ち梁の状態で副カウンタ軸受体188に支持される。左前支柱34の後面下部側には、唐箕テンション装置189の支軸部を取り付けている。副カウンタ軸104と唐箕テンション装置189の支軸部とを左前支柱34の前後面に振り分けて配置している。このように構成すると、脱穀部9の強度メンバーである前支柱34で刈取クラッチ109と副カウンタ軸104と唐箕テンション装置189を支持することになり、比較的大きな負荷のかかる刈取クラッチ109、副カウンタ軸104及び唐箕テンション装置189を高剛性に保持できる。刈取クラッチ109、副カウンタ軸104及び唐箕テンション装置189を高い支持強度で配置できる。
更に、脱穀部9における左右一対の前支柱34の前部上面側に、刈取り支持枠体36を設置している。刈取り支持枠体36の前面右側に刈取り軸受体(図示省略)を取付け、刈取り支持枠体36の前面左側に正逆転切換ケース121を取付けている。そして、刈取り軸受体と正逆転切換ケース121を介して、刈取り支持枠体36の前面側に、左右横長の刈取入力軸89を回動可能に軸支している。刈取り支持枠体36の内部にビータ軸受体38を介して左右向きのビータ軸82(ビータ18)を回動可能に軸支している。また、刈取り支持枠体36の上面側に扱胴駆動ケース71を取付け、扱胴駆動ケース71に扱胴入力軸72を軸支している。
一方、フィーダハウス11内の供給コンベヤ17を駆動する左右向きの刈取入力軸89を備える。エンジン7から主カウンタ軸76におけるエンジン7側一端部に伝達された刈取駆動力を、エンジン7とは反対側となる主カウンタ軸76の他端部から、刈取正逆転切換ケース121の正逆転伝達軸122に伝達させる。刈取正逆転切換ケース121の正転用ベベルギヤ124又は逆転用ベベルギヤ125を介して刈取入力軸89を駆動する。
また、脱穀部9前側に左右向きの扱胴入力軸72が設けられ、エンジン7から主カウンタ軸76におけるエンジン7側一端部に伝達された駆動力が、扱胴入力軸72におけるエンジン7側一端部に伝達される。また、脱穀部9前側に設けた扱胴入力軸72が、走行機体1左右向きに配置される一方、走行機体1前後向きに配置する扱胴軸20に扱胴21が軸支されている。そして、扱胴入力軸72におけるエンジン7とは反対側の左右他端部にベベルギヤ機構75を介して扱胴軸20前端側が連結されている。主カウンタ軸76におけるエンジン7とは反対側の左右他端部から、脱穀後の穀粒を選別する穀粒選別機構10や刈取部3にエンジン7の駆動力を伝達させるよう構成している。
すなわち、主カウンタ軸76のうちエンジン7に近い右側端部に、扱胴駆動プーリ86,87及び扱胴駆動ベルト88を介して、扱胴入力軸72の右側端部を連結する。左右方向に延設した扱胴入力軸72の左側端部に、ベベルギヤ機構75を介して扱胴軸20の前端側を連結する。主カウンタ軸76の右側端部から扱胴入力軸72を介して扱胴軸20の前端側にエンジン7の動力を伝達させ、扱胴21を一方向に回転駆動させるように構成している。一方、主カウンタ軸76の左側端部から、脱穀部9下方に配置した穀粒選別機構10や刈取部3に、エンジン7の駆動力を伝達させるよう構成している。
更に、一番コンベヤ機構30における一番コンベヤ軸77の左側端部と、二番コンベヤ機構31における二番コンベヤ軸78の左側端部とに、コンベヤ駆動ベルト111を介して主カウンタ軸76の左側端部を連結している。揺動選別盤26後部を軸支したクランク状の揺動駆動軸79の左側端部に揺動選別ベルト112を介して二番コンベヤ軸78の左側端部を連結している。すなわち、オペレータの脱穀クラッチレバー操作によって、脱穀クラッチ84が入り切り制御される。脱穀クラッチ84の入り操作によって、穀粒選別機構10の各部と扱胴21が駆動されるように構成している。
なお、一番コンベヤ軸77を介して揚穀コンベヤ32が駆動されて、一番コンベヤ機構30の一番選別穀粒がグレンタンク6に収集される。また、二番コンベヤ軸78を介して二番還元コンベヤ33が駆動されて、二番コンベヤ機構31の藁屑が混在した二番選別穀粒(二番物)が揺動選別盤26の上面側に戻される。排塵口23に藁屑飛散用のスプレッダ(図示省略)を設ける場合、スプレッダ駆動プーリ144とスプレッダ駆動ベルト145とを介して、排塵口23内にあるスプレッダに主カウンタ軸76の左側端部を連結する。
図3及び図4に示すように、供給コンベヤ17の送り終端側を軸支するコンベヤ入力軸としての刈取入力軸89を備える。穀物ヘッダー12の右側部背面側にヘッダー駆動軸91を回転自在に軸支する。ビータ軸82の左側端部に、刈取駆動チェン115及びスプロケット116,117を介して正逆転伝達軸122の左側端部を連結し、刈取入力軸89が正逆転切換ケース121を介して正逆転伝達軸122と連結している。また、ヘッダー駆動チェン118及びスプロケット119,120を介して、左右方向に延設したヘッダー駆動軸91の左側端部に、刈取入力軸89の右側端部を連結する。掻込みオーガ13を軸支する掻込み軸93を備える。掻込み軸93の右側部分に、掻込み駆動チェン92を介してヘッダー駆動軸91の中間部を連結している。
また、掻込みリール14を軸支するリール軸94を備える。リール軸94の右側端部に、中間軸95及びリール駆動チェン96,97を介して掻込み軸93の右側端部を連結している。ヘッダー駆動軸91の右側端部には、刈刃駆動クランク機構98を介して刈刃15が連結されている。刈取クラッチ109の入り切り操作によって、供給コンベヤ17、掻込みオーガ13、掻込みリール14及び刈刃15が駆動制御されて、圃場の未刈り穀稈の穂先側を連続的に刈取るように構成している。
なお、正逆転伝達軸122に一体形成する正転用ベベルギヤ124と、刈取入力軸89に回転自在に軸支する逆転用ベベルギヤ125と、正転用ベベルギヤ124に逆転用ベベルギヤ125を連結させる中間ベベルギヤ126とを、正逆転切換ケース121に内設する。正転用ベベルギヤ124と逆転用ベベルギヤ125に中間ベベルギヤ126を常に歯合させる。一方、刈取入力軸89にスライダ127をスライド自在にスプライン係合軸支する。爪クラッチ形状の正転クラッチ128を介して正転用ベベルギヤ124にスライダ127を係脱可能に係合可能に構成すると共に、爪クラッチ形状の逆転クラッチ129を介して逆転用ベベルギヤ125にスライダ127を係脱可能に係合可能に構成している。
また、スライダ127を摺動操作する正逆転切換軸123を備え、正逆転切換軸123に正逆転切換アーム130を設け、正逆転切換レバー(正逆転操作具)操作にて正逆転切換アーム130を揺動させて正逆転切換軸123を回動させ、正転用ベベルギヤ124又は逆転用ベベルギヤ125にスライダ127を接離させ、正転クラッチ128又は逆転クラッチ129を介して、正転用ベベルギヤ124若しくは逆転用ベベルギヤ125にスライダ127を択一的に係止し、正逆転伝達軸122に刈取入力軸89を正転連結又は逆転連結させるように構成している。
テンションプーリ状のオーガクラッチ156及びオーガ駆動ベルト157を介して、エンジン7の出力軸65にオーガ駆動軸158の右側端部を連結する。オーガ駆動軸158の左側端部にベベルギヤ機構159を介してグレンタンク6底部の横送りオーガ160前端側を連結する。横送りオーガ160の後端側にベベルギヤ機構161を介して穀粒排出コンベヤ8の縦送りオーガ162を連結し、縦送りオーガ162の上端側にベベルギヤ機構163を介して穀粒排出コンベヤ8の穀粒排出オーガ164を連結する。なお、詳細な図示は省略するが、運転座席42後方であってグレンタンク6前面に、オーガクラッチ156を入り切り操作する穀粒排出レバーを取付け、運転座席42側からオペレータが穀粒排出レバーを操作可能に構成している。
本願発明における各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。