JP6729126B2 - 酸化ニッケルの製造方法、流動焙焼炉 - Google Patents
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Description
酸化ニッケルの製造方法において、流動焙焼による焙焼の対象となる原料は水酸化ニッケルである。原料の水酸化ニッケルとしては、Ni(OH)2を主成分としているものであればよく、特に限定されない。
(1)流動焙焼炉の構成
図1は、流動焙焼炉を備えた流動焙焼装置の構成の一例を模式的に示す図である。本実施の形態に係る酸化ニッケルの製造方法においては、例えば図1に示すような流動焙焼装置1を用いて水酸化ニッケルを焙焼して酸化ニッケルを製造する。なお、流動焙焼装置1としては、炉の下方からガスを流して流動焙焼を行うことができ、焙焼して得られた材料(酸化ニッケル)を上方に向かって気流搬送して回収することができる設備を備えるものであれば、図1に例示するものに限定されない。
炉本体11は、例えば円筒形状を有し、流動焙焼を行う焙焼室を構成するものである。この炉本体11の内部において、原料である水酸化ニッケルと流動媒体との混合物がガスにより浮遊流動化して流動層を形成する。より具体的に、炉本体11は、炉本体上部11Aと、炉本体下部11Bとに分けられる。
乾燥室30は、例えば円筒形状を有し、原料投入管15を介して炉本体上部11Aに接続されるように設けられる。乾燥室30には、その周囲を包囲するようにヒーター32が設けられ、乾燥室30の内部が所定の乾燥温度となるように加熱される。なお、ヒーター32としては、乾燥室30の内部雰囲気の温度を所望の乾燥温度に制御することができるものを用いることができる。
ガス導入管12は、被焙焼物である水酸化ニッケルと流動媒体とを、炉本体11(炉本体下部11B)の付近(ヒーター16により加熱されている空間)で浮遊させるためのガスを導入するための配管である。また、焙焼して得られた焙焼物である酸化ニッケルを回収する際にも、このガス導入管12からガスを導入し、そのガスによって酸化ニッケルを気流搬送して回収する。なお、図1中の矢印は、ガスの流れを示している。
回収サイクロン13は、炉本体11の上方に位置し、炉本体11内で流動焙焼して得られた焙焼物である酸化ニッケルを回収する。回収サイクロン13としては、回収時におけるガス供給により、酸化ニッケルを効率的に回収できるものであれば特に限定されない。
原料である水酸化ニッケルの焙焼においては、予め、原料の水酸化ニッケルに対して所定の温度で乾燥処理を施した後に、乾燥後の水酸化ニッケルを炉本体11に供給し、流動焙焼処理を行うことによって焙焼する。
乾燥処理では、原料の水酸化ニッケルを乾燥室30で加熱し、その水酸化ニッケルに含まれる水に由来する成分を気化させて乾燥室30に設けられた開口33から排出する。具体的には、原料に含まれる水分や、水酸基(OH)が分解して原料に生成されるH2Oを取り除く。
流動焙焼処理においては、例えば、固定層21をアルミナにより構成し、また流動媒体として球状のアルミナを用いて、所定の流速、流量のガスをガス導入管12を介して炉本体11の下方から供給しながら、炉本体11の内部に原料である水酸化ニッケルを投入して、その水酸化ニッケルと流動媒体とを浮遊流動化させることによって行う。このように、水酸化ニッケルを浮遊流動化させて所定の温度で焙焼することで、被焙焼物である水酸化ニッケルを酸化ニッケルにする。なお、固定層21を構成する化合物や流動媒体等は、あくまでも一例であり、これに限定されるものではない。
流動焙焼によって水酸化ニッケルを焙焼したのち、得られた焙焼物である酸化ニッケルを流動焙焼炉から回収する。上述したように、酸化ニッケルの回収は、例えば、図1に示すように、流動焙焼炉の炉本体11の後段に連続して設けられた回収サイクロン13によって回収することができる。
焙焼対象の原料(被焙焼物)として、水酸化ニッケル(Ni(OH)2)を準備した。水酸化ニッケルは、平均粒径が23.0±1.0μmのものである。また、その水酸化ニッケルについて分析したところ、硫黄分が1.9±0.1%の割合で含まれ、水分が2.1±0.1%の割合で含まれるものであることが確認された。なお、その他の不可避的に含まれる成分は、含有量が少なく実質的に無視できる程度であった。
(実施例1〜14:乾燥処理を経た水酸化ニッケルの焙焼)
流動焙焼炉を用いて原料の水酸化ニッケルを焙焼し、焙焼物である酸化ニッケル(NiO)を回収する処理を行った。具体的に、流動焙焼炉としては、新島ネオライト工業株式会社製の装置を用い、焙焼炉の炉心の内径は直径125mmで、有効な均熱帯は高さ方向で約30cmであり、その範囲で流動焙焼を行った。この焙焼炉には、流動層の上に配管が繋がる位置に乾燥室を設けた。
比較例1では、実施例1と同様に流動焙焼炉を用いた処理を行ったが、原料の水酸化ニッケルを乾燥させずに焙焼炉に投入し、ヒーターにより表1に示す焙焼温度まで昇温して30分間焙焼させた。
実施例、比較例のそれぞれの処理において、焙焼により得られた試料の回収率、回収物中における酸化ニッケルの含有量の割合、及び、回収物中における水分と硫黄の含有量について評価した。表1に、評価結果を示す。なお、評価方法は以下の通りである。
焙焼により得られた試料の回収率は、下記の(1)式により算出した。
回収率(%)=回収した試料重量÷(投入したNi(OH)2が全てNiOになったときの重量−硫黄の含有量)×100 ・・・(1)式
回収物中における酸化ニッケルの含有量の割合は、回収物中に含まれる酸化ニッケル(NiO)と水酸化ニッケル(Ni(OH)2)の含有量をそれぞれ算出し、それぞれの含有量の合計値に対するNiO含有量の割合(重量%)として算出した。
回収物中における水分の含有量は、赤外線加熱乾燥質量測定式の水分計(島津製作所製、型式:MOC―120H)を用いて測定した。
回収物中における硫黄の含有量は、硫黄分析装置(三菱化学株式会社製,型式:TOX−100)を用いて測定した。
11 炉本体
11A 炉本体上部
11B 炉本体下部
12 ガス導入管
13 回収サイクロン
15 原料投入管
16 ヒーター
17 ガス排気管
21 固定層
22 流動媒体層
30 乾燥室
31 バルブ
32 ヒーター
33 開口
Claims (7)
- 水酸化ニッケルを焙焼して酸化ニッケルを製造する酸化ニッケルの製造方法であって、
前記水酸化ニッケルと反応しない流動媒体によって構成される流動媒体層を有する流動焙焼炉を用い、
前記水酸化ニッケルを乾燥させた後、前記水酸化ニッケルを前記流動焙焼炉に供給して、前記流動焙焼炉の内部で前記水酸化ニッケルと前記流動媒体とを混合して浮遊流動化させる流量のガスを供給しながら、680℃を超え1000℃以下の範囲の焙焼温度で焙焼する
酸化ニッケルの製造方法。 - 水酸化ニッケルの乾燥温度が80℃以上680℃以下である
請求項1に記載の酸化ニッケルの製造方法。 - 水酸化ニッケルの乾燥温度が120℃以上680℃以下であり、前記流動焙焼炉での焙焼温度が680℃を超え950℃以下である
請求項1又は2に記載の酸化ニッケルの製造方法。 - 硫黄含有量が80ppm以下の酸化ニッケルを製造する
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の酸化ニッケルの製造方法。 - 水酸化ニッケルの乾燥は、時間によって規定される1段または2段の温度帯を経て、前記温度帯ごとに5分以上60分以下の焙焼時間で行う、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の酸化ニッケルの製造方法。 - 水酸化ニッケルの焙焼は、5分以上60分以下の焙焼時間で行う、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の酸化ニッケルの製造方法。 - 水酸化ニッケルを流動焙焼して酸化ニッケルを製造するための流動焙焼炉であって、
流動焙焼が行われる炉本体と、
前記炉本体に接続される乾燥室と、を備え、
前記炉本体の内部に、水酸化ニッケルと反応しない流動媒体によって流動媒体層が構成され、
前記水酸化ニッケルは、前記乾燥室にて乾燥処理が施された後、乾燥後の水酸化ニッケルが該乾燥室から前記炉本体の内部に供給されて、前記炉本体の内部で、前記水酸化ニッケルと前記流動媒体とが混合して浮遊流動化した状態で、680℃を超え1000℃以下の範囲の焙焼温度で流動焙焼処理が施されるように構成される
流動焙焼炉。
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