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JP6712387B2 - コミュニケーション支援装置、コミュニケーション支援方法およびコミュニケーション支援プログラム - Google Patents

コミュニケーション支援装置、コミュニケーション支援方法およびコミュニケーション支援プログラム Download PDF

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Description

本発明は、コミュニケーション支援装置、コミュニケーション支援方法およびコミュニケーション支援プログラムに関する。
交渉を含むコミュニケーションは日常生活のあらゆる場面において行われる行為であり、コミュニケーションを通して交渉を有利に進めることは非常に重要である。
従来の工学的な交渉の研究として、交渉システム学のようなシミュレーションモデルを使用するものや、2交渉者間が基本的に水平的に位置づけられている場合ではゲーム理論などを用いて交渉戦略を考えるものが多く見られる。これらは互いの提示する条件ができる限り満たされることを重要視している。
一方で社会学的な交渉の研究では、近年、交渉の過程における心理的要素が重要視されている。交渉には4つの過程があり、(1)交渉前、(2)交渉の過程、(3)結果、(4)実行、の順に思考が働くといわれている。その中で心理的印象が大きく関わるのは(1)の段階であり、相手への感情、相手との関係性がここで整理された後に、実際に交渉内容を把握し、(2)の交渉の過程へと入っていく(非特許文献1)。
また、人は矛盾した情報を与えられたときに、「言語情報」や「聴覚情報」よりも「視覚情報(態度(見た目、表情、動作など))」を優先して受け止めることが指摘されている(非特許文献2)。
さらに、女性の言語的な印象を調査した研究によると、敬語表現や間接的な表現を使って言葉をやわらかくすることが、女性の話し方として求められることがわかっている(非特許文献3)。また、会話文末表現の一部は男性形式や女性形式と識別することができ、文末表現に話者の意図や態度を表現する機能があるため、話者の内的特性が反映されるという(非特許文献4)。
Barry, B., & R. L. Oliver (1996). Affect in Dyadic Negotiation: A Model and Propositions. Organizational Behavior and Human Decision Process, 67(2), 127-144. Mehrabian, A. (1971). Silent messages. Wadsworth Publishing company, Inc. Belmont, California. 今井田 亜弓 (2006). 若い世代の言語行動における"feminity"について. 『ことばの科学』, 19, 141-156. Makino,S.,&Tsutsui,M ,1986 A dictionary of basic Japanese grammar.Tokyo:The Japan Times.
上述したように、従来、交渉についての社会学的な研究では「見た目・話し方」といった心理的印象が重要視されていたが、工学的な研究においてそれらは取り扱われておらず、工学的な観点から話者に対する心理的印象を定量的に把握できるようにすることが求められる。
本発明は上記の従来の問題点に鑑み提案されたものであり、その目的とするところは、交渉を含むコミュニケーションの相手方が話者に対して抱く心理的印象を定量的に考慮したコミュニケーションの支援を可能とすることにある。
上記の課題を解決するため、本発明にあっては、コミュニケーション支援装置は、コミュニケーションを行う者の属性情報を入力する属性入力部と、前記コミュニケーションに用いる文章を入力する文章入力部と、表現形式と印象評価尺度を対応付けする評価データベースであり、属性情報の組み合わせ毎に保持される複数の評価データベースのうち、前記属性情報に基づいて特定される評価データベースを参照して、前記文章から表現を抽出し、抽出される表現の表現形式に対応する前記印象評価尺度を取得し、前記印象評価尺度を合計してコミュニケーションに対する評価値を前記表現形式毎に取得する評価値取得部と、前記評価値を前記表現形式毎にレベル表示を行う表示部とを備え、前記属性情報は、コミュニケーションを行う者の外見を含む
本発明にあっては、交渉を含むコミュニケーションの相手方が話者に対して抱く心理的印象を定量的に考慮したコミュニケーションの支援が可能となる。
本発明の一実施形態にかかる交渉支援装置の機能構成例を示す図である。 ネットワークを利用した実施形態の機能構成例を示す図である。 評価DBのデータ構造例を示す図である。 被験者実験の問題ページの例を示す図である。 被験者実験の回答欄の例を示す図である。 評価DBの生成の処理例を示す図である。 表現DBのデータ構造例を示す図である。 交渉支援装置および端末装置のハードウェア構成例を示す図である。 実施形態の処理例を示すフローチャート(その1)である。 表示画面の例を示す図(その1)である。 表示画面の例を示す図(その2)である。 表示画面の例を示す図(その3)である。 実施形態の処理例を示すフローチャート(その2)である。
以下、本発明の好適な実施形態につき説明する。なお、コミュニケーション支援の一態様として交渉支援について説明するが、以下の説明における「交渉」を「コミュニケーション」に読み換えることで、一般のコミュニケーション支援に適用できることは言うまでもない。
<構成>
図1は本発明の一実施形態にかかる交渉支援装置1の機能構成例を示す図である。図1において、交渉支援装置1は、属性入力部101と外見画像入力部102と外見評価部103と文章入力部104と評価出力部105と修正案出力部106とを備えている。また、交渉支援装置1は、交渉表現評価値取得部107と表現抽出部108と修正案生成部109と評価DB(データベース)111と表現DB(データベース)112とを備えている。
属性入力部101は、GUI(Graphical User Interface)等により、ユーザ(相手方との交渉を行う者)から属性情報を入力する機能を有している。ネットワーク上などに既に保存されている属性情報を自動的に取得できるようにしてもよい。属性情報には、例えば、交渉相手の性別、交渉を行う者の外見の程度、交渉状況、のいずれかまたは組み合わせを含む。なお、交渉を行う者と相手方とを異性の場合に限る場合は、交渉相手の性別により交渉を行う者の性別も特定することになるが、異性・同性の両方の組み合わせに適用する場合には、本人(交渉を行う者)の性別を属性情報として入力させることになる。
交渉を行う者の外見の程度は、例えば、「良い」、「普通」、「悪い」の3区分とする。なお、外見画像入力部102および外見評価部103を備える場合は、交渉を行う者の外見の程度を属性情報として入力させる必要はない。交渉状況は、例えば、「恋人候補」、「同僚」、「上司」(交渉を行う者から見た相手方)、「夫婦」の4区分とする。
外見画像入力部102は、ユーザが自分の外見(顔を主体)を撮影した写真画像等の外見画像を入力する機能を有している。外見評価部103は、外見画像入力部102により入力された外見画像から、例えば、「良い」、「普通」、「悪い」のいずれかを判定する機能を有している。ユーザに自分の外見の区分を入力させるのには抵抗がある場合があるため、かかる機能を付加することができる。なお、外見の判定は、顔を構成するパーツ(目、眉毛、鼻、口等)の配置や髪型等から、美形とされる黄金比等を用いた所定のルールに基づいて行うことができる。
文章入力部104は、ユーザが交渉に用いる文章(例えば、メールの文章)を入力する機能を有している。評価出力部105は、入力された属性情報に基づいて、交渉の文章における所定の表現形式(敬語、婉曲表現、共感表現)の一般的な重要度を示す評価値を、数値および棒グラフ等で表示する機能を有している。また、評価値としては、属性情報に基づいて得られる表現形式毎の交渉における評価値と、実際に文章に含まれる表現形式とから、入力された文章に不足する表現形式の不足の程度を表す値としてもよい。修正案出力部106は、ユーザが入力した文章に対する修正案を出力(表示)する機能を有している。
交渉表現評価値取得部107は、属性入力部101により入力した属性情報に基づき、評価DB111を参照して、表現形式(敬語、婉曲表現、共感表現)毎の交渉に対する評価値を取得する機能を有している。また、評価値として入力された文章に不足する表現形式の不足の程度を表す値を用いる場合、交渉表現評価値取得部107は、属性情報に基づいて得られる表現形式毎の交渉における評価値と、実際に文章に含まれる表現形式とから、入力された文章に不足する表現形式の不足の程度を表す値を算出する機能を有している。評価DB111の詳細については後述する。
表現抽出部108は、文章入力部104により入力された文章から、表現DB112を用い、所定の表現形式(敬語、婉曲表現、共感表現)の文字列や修正対象の文字列を抽出する機能を有している。修正案生成部109は、交渉表現評価値取得部107の取得・算出した評価値に基づき、表現DB112を用いて、交渉に適している表現形式に修正した修正案を生成する機能を有している。表現DB112の詳細については後述する。
図2はネットワークを利用した実施形態の機能構成例を示す図である。図2における交渉支援装置1では、図1における交渉支援装置1の属性入力部101、外見画像入力部102、文章入力部104、評価出力部105および修正案出力部106に代えて、同情報を送受信する送受信部110が設けられている。交渉支援装置1におけるその他の構成は図1と同様である。
また、ネットワーク3を介して交渉支援装置1に接続される端末装置2は、属性入力部201と外見画像入力部202と文章入力部204と評価出力部205と修正案出力部206と送受信部207とを備えている。これらは、例えば汎用のブラウザにより実現されるものであり、属性入力部201、外見画像入力部202、文章入力部204、評価出力部205および修正案出力部206は、図1に示した交渉支援装置1の属性入力部101、外見画像入力部102、文章入力部104、評価出力部105および修正案出力部106に対応する。送受信部207は、各種の情報を交渉支援装置1との間で送受信する機能を有している。
<評価DB>
図3は評価DB111のデータ構造例を示す図であり、ユーザの属性情報の組み合わせ毎に印象評価尺度と表現形式の重みの値(評価値)等を対応付けたテーブルを保持している。重みの値等は、予め実施される被験者実験の問題内容および回答結果を重回帰分析(数量化理論I類)することで得られたものである。ユーザの属性情報の組み合わせは、例えば、被験者実験における被験者の性別(男/女)、(問題に登場する人物の性別(男/女) )、問題に登場する人物の外見(良い/普通/悪い)、交渉状況(恋人候補/同僚/上司/夫婦)等の組み合わせである。なお、被験者や問題に登場する人物の年齢層やその他の交渉に影響する事項を属性情報として加えてもよい。なお、被験者は、交渉における相手方に対応し、問題に登場する人物は、評価されるユーザに対応する。
印象評価尺度には、例えば、「好感度」「外向性」「知性」「勤勉性」「情緒安定性」「調和性」「説得度」を用いている。「外向性」「知性」「勤勉性」「情緒安定性」「調和性」は、McCraeら(1990)による、the five factor model(FFM)という、人の性格を表す指標であり、交渉する人物に対してどの要素を感じたかを問うため印象評価尺度に加えた。また、対人認知における評価尺度としては、相手の感情的・社会的魅力(陽気さ、付き合いやすさ、好感度など)と知的・道徳的魅力(頭の良さ・誠実さなど)の大きく2つに分けられる。後者に関しては「知性」という項目で評価ができるため、前者の中では一般的にもよく見られる「好感度」を用いた。「説得度」は、問題に含まれる交渉の文章についての説得力の感じ方を示すものである。
表現形式には、例えば、「敬語」「婉曲表現」「共感表現」を用いている。「敬語」は、丁寧な言葉遣いによる表現である。「婉曲表現」は、直接的ではなく、遠回しな表現である。婉曲表現の例としては、「〜という考え方もあるかと思います」「いかがでしょうか?」「〜していただくほうがお役に立てる気がしています」等がある。「共感表現」は、愛嬌や親和の表現である。共感表現の例としては、「〜したいお気持ちは分かります」「ご期待に添える働きをしたい〜」「お急ぎでなければ〜」「お忙しいところ、大変恐縮ですが〜」「催促するようで申し訳ないのですが〜」等がある。
図4は被験者実験の問題ページの例を示す図であり、問題のタイトルI1と、交渉者の外見画像I2と、交渉内容(交渉の文章)I3とを含んでいる。外見画像I2として、例えば、男性・女性のそれぞれについて外見の「良い」「普通」「悪い」の3種類を用意し、交渉状況に応じた複数のタイトルI1について、「敬語」「婉曲表現」「共感表現」の存否を組み合わせた複数の交渉内容I3を用意する。それを複数の被験者にPC(Personal Computer)の画面上で見せた上で、回答を得る。
図5は被験者実験の回答欄の例を示す図であり、PCの画面上から入力ができるようにしている。図5において、7個の印象評価尺度について、左側の「〜低い」から右側の「〜高い」までの7段階について、被験者が感じた印象に「○」等を入力することによって回答できるようになっている。
図6は評価DB111の生成の処理例を示す図である。被験者実験の行われた問題と回答の複数の組における、「好感度」「外向性」「知性」「勤勉性」「情緒安定性」「調和性」「説得度」の回答の平均評価値を目的変数とし、交渉内容に含まれる「敬語」「婉曲表現」「共感表現」の有無(含まれる場合は「1」、含まれない場合は「0」)を説明変数(独立変数)とする。
そして、被験者の性別(男/女)、(問題に登場する人物の性別(男/女) )、問題に登場する人物の外見(良い/普通/悪い)、交渉状況(恋人候補/同僚/上司/夫婦)等の組み合わせ毎に、重回帰分析(数量化理論I類)による解析を行い(ステップS0)、評価DB111の内容(図3)を生成する。
なお、代表的な組み合わせからは次のような傾向が判明した。
全回答に対する重回帰分析の結果、好感度、外向性、知性、情緒安定性、調和性、説得度においては共感表現を含む話し方が最も重要であることがわかった。一方、勤勉性においては婉曲表現が最も重要であることがわかった。この結果から、話者の属性を特定しない交渉の際には、共感表現を含む表現(相手へ共感・配慮する言葉や、自分の喜びといった感情を示すもの)を多く含めることが重要であるということと、勤勉性、真面目さを相手にアピールしたい際には共感表現よりも婉曲表現(直接的ではなく、遠まわしな表現)を多く用いるとよいということがわかる。
男性被験者に対する重回帰分析の結果、好感度、外向性、知性、説得度においては共感表現が最も重要であることがわかった。一方、勤勉性においては敬語が、情緒安定性と調和性に関しては婉曲表現が最も重要であることがわかった。
女性被験者に対する重回帰分析の結果、好感度、外向性、知性、情緒安定性、調和性においては共感表現が重要であることがわかった。一方、勤勉性においては敬語が、説得度においては婉曲表現が重要であることがわかった。
これら男女各被験者の回答結果から、男女ともに勤勉性については敬語表現が重要であることがわかる。これは性別に限らず、丁寧な言葉遣いが 真面目=勤勉性 という印象を与えるためであると考察できる。男女で結果が異なった情緒安定性、調和性、説得度に関して、交渉者が女性の場合はこれら3つの評価項目も含め、全ての項目において婉曲表現、共感表現がともに高い比重であった。これは、女性らしい話し方である婉曲表現・共感表現の表現がこれらの評価項目の印象を高めていると考えられる。一方、交渉者が男性の場合、情緒安定性・調和性については共感表現が最も重要であるという結果が得られた。これは、被交渉者である被験者は女性であり、男性からの交渉において遠まわしな表現である婉曲表現よりも、直接的な表現を好み、また、自分に共感してくれる話し方を好むためではないかと考えられる。説得度についても、交渉者が男性の場合は敬語、婉曲表現、共感表現の3要素がバランス良く含まれていることが重要であり、交渉者が女性の場合では、男女ともによく使う敬語表現はあまり重視されず、婉曲表現と共感表現という、特に女性らしい表現が重視される傾向が見られた。
部下から上司への交渉パターンに対する重回帰分析の結果、すべての評価項目において、婉曲表現が最も重要であることがわかった。この結果から、直接的な表現で「〜してください!」とお願いするのではなく、遠まわしにお願いする婉曲表現が全ての項目において重要であるのは、部下から立場が上である上司への交渉であるからだと考察できる。また、下の立場からの交渉であるため敬語を使うことは当然であり、敬語に関して比重はあまり高くならなかったと考えられる。
同僚間の交渉パターンに対する重回帰分析の結果、好感度、外向性、調和性、説得度において、共感表現が最も重要であることがわかった。一方、知性、勤勉性、情緒安定性においては敬語が重要であるという結果が得られた。この結果から、仕事において重要な項目であると考えられる知性、勤勉性、情緒安定性において敬語は重要であると考察できる。また、立場で上下の差がないため、遠まわしな表現である婉曲表現よりも、直接的な表現のほうが好まれると考えられる。一方、好感度、外向性、調和性、説得度において最も重要であるとされる共感表現については、部下から上司への交渉と違い、立場も近いために「嬉しい」といった感情表現が好まれたり、また親しき仲にも礼儀ありという意味で相手の都合を配慮する表現が重要になった結果であると考察できる。
恋人候補への交渉パターンに対する重回帰分析の結果、すべての評価項目において、共感表現が最も重要であることがわかった。この結果から、恋人候補になる相手とはかなり距離が近いことも多いため、敬語表現を使うことでむしろ距離を感じてしまい、負の値になったと考察できる。また、同じく婉曲表現についても、デートの誘いなどであれば、遠まわしに誘われるよりも、ストレートに誘われるほうが、印象がよくなったと考えられる。そして、全項目について比重が大きい共感表現については、交渉相手は恋人候補であるため、「一緒にいられると嬉しい!」と言ったポジティブな感情表現が響きやすく、好感度や説得度、誘いの成功率を上げることができたと考察することができる。
夫婦間の交渉パターンに対する重回帰分析の結果、好感度、外向性、知性、調和性において、共感表現が最も重要であることがわかった。一方、勤勉性、情緒安定性、説得度に関しては、敬語は重要であることがわかった。また、夫婦間については、年齢が上がるにつれ、勤勉性、情緒安定性、説得度については感情表現である共感表現よりも、落ち着いた敬語のほうが好まれると思われる。また、夫婦間も親しいため、何かをお願いする際など、遠まわしな婉曲表現はあまり重要ではないと考えられる。
外見「良い」に対する重回帰分析の結果、外向性、知性において婉曲表現が最も重要であることがわかった。一方、勤勉性においては敬語、好感度、情緒安定性、調和性、説得度の4項目においては共感表現が重要であるという結果が得られた。
外見「普通」に対する重回帰分析の結果、好感度、外向性、知性、情緒安定性、調和性、説得度においては共感表現が重要であることがわかった。一方、勤勉性においてのみ、敬語が重要であることがわかった。
外見「悪い」に対する重回帰分析の結果、勤勉性においては敬語が重要であることがわかったが、説得度について、敬語が重要であるという結果が得られた。これは、好ましくない外見の場合、説得には愛嬌や遠回しな遠慮を見せるよりもとにかく丁寧な話し方が重要であると考察できる。一方、外見「良い」や外見「普通」であれば初めからある程度印象が良いため、敬語で丁寧さを心掛けずとも、共感表現などで愛嬌ある話し方をする方が効果的なのではないかと考えられる。また、認知者は特に好ましくない顔に接した場合、より適正に人物像を評価しようと動機づけられており、言語情報などの顔以外の情報を吟味する傾向にあるという考え方が実際に反映されている被験者と、外見の好ましさが直接交渉結果に反映された試験者に2分化したためではないかと推測される。
さらに、外見と交渉文の関係性について以下のことがわかった。外見「良い」については、女性画像における外向性、情緒安定性、男性画像における外向性、調和性は、いずれの項目についても交渉文が付与することにより印象が有意に悪くなることがわかった。これは、外見「良い」は外見「普通」や外見「悪い」に比べて第一印象がよいものの、交渉の場面ではかえって印象を悪くしてしまう可能性があることを示している。
一方で外見「普通」については、交渉文の有無にかかわらず、男女ともにすべての評価項目に有意差は見られなかった。したがって、外見「普通」は交渉の場面において、印象に対する話し方の影響が比較的小さいことがわかった。外見「悪い」については、女性画像に関するすべての評価項目において、交渉文が付与されることにより、被交渉者の印象評価が有意によくなっていることがわかった。同様に、男性画像については好感度、外向性、情緒安定性、調和性に関して、交渉文が付与されることにより、被交渉者の印象評価が有意によくなっていることがわかった。つまり、外見のみの印象が比較的好ましくない場合においても、交渉文の話し方を工夫することにより、被交渉者からの評価を改善することが可能であるとわかった。この点は、外見「良い」や外見「普通」には見られない特徴であった。
女性は、好感度を向上させることにおいて勤勉性以外の項目について有意な係数が示されており、特に外向性が重要であることがわかった。説得度を向上させることにおいては、全ての項目について有意な係数が示されており、特に外向性と調和性が重要であることがわかった。
男性に関しては、好感度を向上させることにおいて、外向性、知性、調和性の項目において有意な係数が示されており、特に外向性が重要であるということがわかった。説得度を向上させることにおいては、情緒安定性以外の項目について有意な係数が示されており、特に調和性が重要であるということがわかった。
このように、交渉者の性別や外見といった属性に応じて、被交渉者に与える印象を向上させるために重要な要素が異なることが示された。
<表現DB>
図7は表現DB112のデータ構造例を示す図であり、敬語、婉曲表現、共感表現のそれぞれについて、具体的な表現の文字列と、その表現に変換が可能な元の表現の文字列とが保持されている。なお、同種の表現であっても、レベルの異なるものがある場合(例えば、敬語において、一般的な敬語と、より丁寧さの強い敬語等)は、レベルを識別できるようにして保持し、文章の修正時に要求されるレベルに応じて選択するようにしてもよい。
<ハードウェア構成>
図8は交渉支援装置1および端末装置2のハードウェア構成例を示す図である。図8において、交渉支援装置1等は、バス17を介して相互に接続されたCPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13を備えている。また、交渉支援装置1等は、HDD(Hard Disk Drive)/SSD(Solid State Drive)14、接続I/F(Interface)15、通信I/F16を備えている。CPU11は、RAM13をワークエリアとしてROM12またはHDD/SSD14等に格納されたプログラムを実行することで、交渉支援装置1等の動作を統括的に制御する。接続I/F15は、交渉支援装置1等に接続される機器とのインタフェースである。通信I/F16は、ネットワークを介して他の情報処理装置と通信を行うためのインタフェースである。
図1および図2で説明した交渉支援装置1等の機能は、CPU11において所定のプログラムが実行されることで実現される。プログラムは、記録媒体を経由して取得されるものでもよいし、ネットワークを経由して取得されるものでもよいし、ROM組込でもよい。処理に際して参照・更新されるデータは、RAM13またはHDD/SSD14に保持される。
<動作>
図9は上記の実施形態の処理例を示すフローチャートである。なお、以下では図1の構成に基づいて説明するが、図2の構成においても実質的に同じである。
図9において、交渉支援装置1の属性入力部101は属性情報を入力し(ステップS11)、文章入力部104は交渉の文章を入力する(ステップS12)。
次いで、表現抽出部108は、文章入力部104により入力された文章から表現DB112を参照して所定の表現を抽出する(ステップS13)。抽出する表現は、文章の修正のみを行う場合は修正の元となる文字列であり、文章に敬語、婉曲表現、共感表現のいずれかが含まれているか否かを評価に含める場合はそれらの表現の文字列も対象とする。なお、評価値として入力された文章に不足する表現形式の不足の程度を表す値を用いない場合は、表現抽出部108による表現の抽出(ステップS13)は次の評価値の取得(ステップS14)の後に移動してもよい。
次いで、交渉表現評価値取得部107は、属性入力部101により入力された属性情報に基づいて評価DB111を参照して表現形式(敬語、婉曲表現、共感表現)毎の交渉に対する評価値を取得する(ステップS14)。例えば、図3における属性情報の組み合わせに対応するテーブルにおいて、敬語、婉曲表現、共感表現のそれぞれについて、好感度、外向性、知性、勤勉性、情緒安定性、調和性および説得度の数値を合計することで、それぞれの評価値を取得する。
また、評価値として入力された文章に不足する表現形式の不足の程度を表す値を用いる場合、交渉表現評価値取得部107は、属性情報に基づいて得られる表現形式毎の交渉における評価値と、実際に文章に含まれる表現形式とから、入力された文章中に不足する表現形式の不足の程度を表す値を算出する。例えば、各表現形式について、文章中から表現抽出部108によって抽出された、文章中に既に存在する各表現形式の表現の数と、各表現形式へ変換が可能な表現の数との和に対する、各表現形式へ変換が可能な表現の数の比率を求める。そして、上述した文章中の表現を考慮しないで取得した各表現形式の評価値に上記の比率を乗算することで、入力された文章中に不足する表現形式の不足の程度を表す値を算出する。なお、文章中の表現を考慮しないで取得した各表現形式の評価値と、文章中に不足する表現形式の不足の程度を表す値の両者とも、出力(表示)の対象としてもよい。
次いで、図9において、修正案生成部109は、交渉表現評価値取得部107の取得・算出した評価値に基づき、表現DB112を用いて、交渉に適している表現形式に修正した修正案を生成する(ステップS15)。例えば、交渉表現評価値取得部107の取得・算出した評価値において、婉曲表現が最も高い場合、文章に含まれる表現のうち婉曲表現に変換可能なものを婉曲表現に置き換える。なお、評価値が最も高い表現形式だけでなく、評価値が2番手以降の表現形式についても、評価値の大きさ等を条件として修正を行なってもよい。
次いで、修正案出力部106は、ユーザが入力した文章に対する、修正案生成部109により生成された修正案を、元の文章と比較可能に出力(表示)する(ステップS16)。
図10は表示画面の例を示す図であり、領域I11から交渉相手「女性」、あなたの外見「普通」、交渉状況「上司」を選択して実行ボタンを押すことで、領域I12に「敬語」「婉曲」「共感」のそれぞれについての評価値が棒グラフおよび数値で表示され、その中で最大値を示す表現から、「適している表現は婉曲」である旨が表示されている。また、領域I3の元の文章の欄に交渉に用いる文章が入力されている場合、評価で適しているとされる「婉曲」に修正された修正案がよりよい文章の欄に表示されている。ここでは、「結婚してください」が「結婚してくれますか」に修正されている。
図11は表示画面の他の例を示す図であり、領域I11から交渉相手「女性」、あなたの外見「普通」、交渉状況「同僚」を選択して実行ボタンを押すことで、領域I12に「敬語」「婉曲」「共感」のそれぞれについての評価値が棒グラフおよび数値で表示され、その中で最大値を示す表現から、「適している表現は共感」である旨が表示されている。また、領域I3の元の文章の欄に交渉に用いる文章が入力されている場合、評価で適しているとされる「共感」に修正された修正案がよりよい文章の欄に表示されている。ここでは、「この仕事を引き受けてください」が「この仕事を引き受けてくれると嬉しいです」に、「そのお礼といっては何ですが、二人でご飯にいきましょう」が「そのお礼といっては何ですが、二人でご飯にご迷惑でなければ、いきましょう」に修正されている。
図12は表示画面の他の例を示す図であり、領域I11から交渉相手「男性」、あなたの外見「悪い」、交渉状況「同僚」を選択して実行ボタンを押すことで、領域I12に「敬語」「婉曲」「共感」のそれぞれについての評価値が棒グラフおよび数値で表示され、その中で最大値を示す表現から、「適している表現は敬語」である旨が表示されている。また、領域I3の元の文章の欄に交渉に用いる文章が入力されている場合、評価で適しているとされる「敬語」に修正された修正案がよりよい文章の欄に表示されている。ここでは、「この仕事をやってくれると嬉しいです」が「この仕事をやってください」に修正されている。
なお、表現形式毎の評価値(適した表現形式の提示を含む)と文章の修正案とを表示する例について説明したが、さらに、入力された属性情報と入力された文章に含まれる表現に基づく印象評価尺度毎の評価値を算出して表示(数値表示、レベル表示等)してもよい。印象評価尺度毎の評価値の算出は、入力した文章から敬語、婉曲表現、共感表現の表現を抽出し、予め設定された属性情報と、抽出された表現の有無または出現頻度に基づき、評価DB111を参照することで行うことができる。例えば、説明変数である各表現形式に対応する表現の有無に応じて「1」「0」または出現頻度に応じた0〜1の範囲の値を設定し、印象評価尺度毎に係数値と説明変数を乗算し、定数項等も考慮することで、目的変数である各印象評価尺度の評価値を算出する。
また、評価値に基づいて、通常の表現を所定の表現形式(敬語・婉曲表現・共感表現)に修正したり、所定の表現形式を所定の表現形式内の他の表現形式に修正する場合について説明したが、所定の表現形式を用いることが交渉上で不利に働くことが評価値で示されている場合は、所定の表現形式を通常の表現にする修正を行ってもよい。
<受信メール等への適用>
図13は実施形態の他の処理例を示すフローチャートであり、受信したメールの本文の文章等から、印象評価尺度毎の評価値を取得することで、メールの送信者の状態を推測可能としたものである。
装置構成としては、図1または図2に示したものと同様とすることができる。この場合、属性入力部101、201は、その都度の入力は不要となり、デフォルト(既定値)の属性情報を設定すれば足りる。この場合、メールの送信者の性別や交渉状況が特定できない場合は、それらを特定しないものとすることができる。この場合、評価DB111として、それらの属性情報を特定しない解析結果を用いる。また、文章入力部104、204は受信したメールの本文を自動的に入力する。なお、修正案生成部109は用いない。
図13において、交渉支援装置1の属性入力部101が受信メール等の文章を入力すると(ステップS21)、表現抽出部108は、入力した文章から敬語、婉曲表現、共感表現の表現を抽出する(ステップS22)。
次いで、交渉表現評価値取得部107は、予め設定された属性情報と、抽出された敬語、婉曲表現、共感表現の表現の有無または出現頻度に基づき、評価DB111を参照して、印象評価尺度毎の評価値を取得する(ステップS23)。例えば、説明変数である各表現形式に対応する表現の有無に応じて「1」「0」または出現頻度に応じた0〜1の範囲の値を設定し、印象評価尺度毎に係数値と説明変数を乗算し、定数項等も考慮することで、目的変数である各印象評価尺度の評価値を算出する。
次いで、評価出力部105は、算出された各印象評価尺度の評価値を出力(表示)する(ステップS24)。この際、評価値が所定の条件を満たす場合には、アラートを出力するようにしてもよい。例えば、「好感度」が所定の閾値よりも低い場合は、メールの送信者が怒っている可能性があるため、素早く適切な応答を行うべきであるとしてアラートを出力する。また、「情緒安定性」が所定の閾値よりも低い場合についても、メールの送信者が何らかの精神的に異常な状態となっている可能性があるため、素早く適切な応答を行うべきであるとしてアラートを出力する。
<総括>
以上説明したように、本実施形態によれば、交渉の相手方が話者に対して抱く心理的印象を定量的に考慮した交渉の支援が可能となる。すなわち、こちらから発する文章または相手方が受け取る文章についての心理的印象を自動判定し、適切な支援を行うことができる。
近年、FacebookやTwitter等のSNS(Social Networking Service)によってコミュニケーションを行う機会が増している。このようなネットワーク上のコミュニケーションでは、公開している自分の属性(顔写真を含む)とテキストで交わされる言語表現が相手方の判断材料となり、属性は容易に変えられないとして、言語表現を最適化することは重要である。その点、本実施形態で示した技術を利用することで、容易に言語表現を最適化することができ、交渉を有利に進めることができる。
昨今、女性の社会進出が政策的に推進されているが、働く女性が、自分の印象を悪くすることを恐れずに、意見や考えを述べ、積極的に組織に貢献したり、女性のロールモデルが少ない男性中心の職場において女性にとって効果的な交渉(依頼、断り、提案など)を行うことが求められている。そのための表現方法の適切化において本実施形態による貢献が期待される。
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更を加えることができることは明らかである。すなわち、具体例の詳細および添付の図面により本発明が限定されるものと解釈してはならない。
1 交渉支援装置
101 属性入力部
102 外見画像入力部
103 外見評価部
104 文章入力部
105 評価出力部
106 修正案出力部
107 交渉表現評価値取得部
108 表現抽出部
109 修正案生成部
110 送受信部
111 評価DB
112 表現DB
2 端末装置
201 属性入力部
202 外見画像入力部
204 文章入力部
205 評価出力部
206 修正案出力部
207 送受信部
3 ネットワーク

Claims (10)

  1. コミュニケーションを行う者の属性情報を入力する属性入力部と、
    前記コミュニケーションに用いる文章を入力する文章入力部と、
    表現形式と印象評価尺度を対応付けする評価データベースであり、属性情報の組み合わせ毎に保持される複数の評価データベースのうち、前記属性情報に基づいて特定される評価データベースを参照して、前記文章から表現を抽出し、抽出される表現の表現形式に対応する前記印象評価尺度を取得し、前記印象評価尺度を合計してコミュニケーションに対する評価値を前記表現形式毎に取得する評価値取得部と、
    前記評価値を前記表現形式毎にレベル表示を行う表示部と
    を備え
    前記属性情報は、コミュニケーションを行う者の外見を含む
    コミュニケーション支援装置。
  2. 記文章に含まれる表現の表現形式を、前記表現形式毎に取得される評価値のうち、最も評価値が高い表現形式に置き換えして修正した修正案を生成する修正案生成部と
    を備えたことを特徴とする請求項1に記載のコミュニケーション支援装置。
  3. 前記評価値取得部は、前記属性情報に基づいて得られる表現形式毎のコミュニケーションに対する評価値と、前記文章に含まれる表現の表現形式に基づいて計算される前記文章に含まれる各表現形式の表現の数、及び、各表現形式へ変換が可能な表現の数の比率とを乗算して計算される前記文章に不足する表現形式の不足の程度を表す値を、前記表示部および前記修正案生成部が用いる前記評価値として出力する
    ことを特徴とする請求項2に記載のコミュニケーション支援装置。
  4. 記表示部は、前記印象評価尺度毎の評価値を併せて表示する
    ことを特徴とする請求項2または3に記載のコミュニケーション支援装置。
  5. 前記属性情報は、コミュニケーション相手の性別、コミュニケーション相手の年齢、コミュニケーションを行う者の年齢、コミュニケーション状況、のいずれかまたは組み合わせを含む
    ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコミュニケーション支援装置。
  6. 前記表現形式は、敬語、婉曲表現、共感表現、のいずれかまたは組み合わせを含む
    ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のコミュニケーション支援装置。
  7. 前記印象評価尺度は、好感度、外向性、知性、勤勉性、情緒安定性、調和性、説得度、のいずれかまたは組み合わせを含む
    ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のコミュニケーション支援装置。
  8. 前記コミュニケーションが交渉である
    ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のコミュニケーション支援装置。
  9. コミュニケーションを行う者の属性情報を入力し、
    前記コミュニケーションに用いる文章を入力し、
    表現形式と印象評価尺度を対応付けする評価データベースであり、属性情報の組み合わせ毎に保持される複数の評価データベースのうち、前記属性情報に基づいて特定される評価データベースを参照して、前記文章から表現を抽出し、抽出される表現の表現形式に対応する前記印象評価尺度を取得し、前記印象評価尺度を合計してコミュニケーションに対する評価値を前記表現形式毎に取得し、
    前記評価値を前記表現形式毎にレベル表示を行う処理をコンピュータに実行させ、
    前記属性情報は、コミュニケーションを行う者の外見を含む
    コミュニケーション支援方法。
  10. コミュニケーションを行う者の属性情報を入力し、
    前記コミュニケーションに用いる文章を入力し、
    表現形式と印象評価尺度を対応付けする評価データベースであり、属性情報の組み合わせ毎に保持される複数の評価データベースのうち、前記属性情報に基づいて特定される評価データベースを参照して、前記文章から表現を抽出し、抽出される表現の表現形式に対応する前記印象評価尺度を取得し、前記印象評価尺度を合計してコミュニケーションに対する評価値を前記表現形式毎に取得し、
    前記評価値を前記表現形式毎にレベル表示を行う処理をコンピュータに実行させ、
    前記属性情報は、コミュニケーションを行う者の外見を含む
    コミュニケーション支援プログラム。
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