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JP6707810B2 - ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる自動車用冷却モジュール - Google Patents

ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物からなる自動車用冷却モジュール Download PDF

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Description

本発明は寸法安定性、耐冷熱衝撃性、耐不凍液性に優れるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物で射出成形された自動車冷却モジュールを提供する。
ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下、PPS樹脂と略す)は、剛性、耐熱性、耐熱水性、耐薬品性および成形加工性をバランスよく備えているため、電気・電子部品、水廻り部品および自動車部品などに広く用いられている。
かかるPPS樹脂の優れた特性を活かして、PPS樹脂成形体を自動車冷却部品へ適用する試みはこれまでにもなされている。
自動車用冷却部品は、その内壁面に接してグリコール類を含む不凍液が流れ、これがエンジン始動時は低温だが、時間が経つにつれ徐々に高温となり、また、不凍液の流路、流量制御は、サーモスタットを用いてなされており、不凍液が高温となった際に、サーモスタット内部のワックスが徐々に溶解、膨潤し、それにより弁が開き、不凍液の流路が形成される。
近年、このサーモスタットから、電動式のバルブで流量、および流路を制御する方式が提案されている。この方式では、最適な温度環境となるよう、電動でバルブが開閉し、不凍液の流路が形成される。かくして流量、および流路を制御することにより、例えばエンジン始動時、サーモスタットでは徐々に弁が開き、最適温度になる前に流路が形成されるため、エンジンを冷却してしまっていたが、この方式では、電動でバルブを制御し、素早い流路の切替が可能となるため、エンジン環境温度を早期に上昇させることが可能となり、また、エンジン廻りの環境温度を最適に保つことが可能となる。かくして燃費が向上するため、GHG排出量削減の要請に応える重要、かつ有用な冷却モジュールとなり得ることが期待されている。
ところで、耐冷熱衝撃性を発現させる目的で、PPS樹脂にオレフィン系共重合体、および無機充填材を配合した組成物が、例えば特許文献1、2に開示されている。
また、特許文献3、4には、エンジン冷却系部品に最適な材料を提供する目的で、PPS樹脂にオレフィン系共重合体、および無機充填材を配合した組成物が記載されている。
更に、特許文献5には、寸法安定性の向上や、体積収縮による応力集中を緩和し、樹脂部への亀裂発生を抑制する目的で、オレフィン系共重合体を配合し、かつ、PPS樹脂を発泡させた組成物が記載されている。
特開2008−075049号公報 国際公開2011/070968号 特開2006−036824号公報 特開2006−036833号公報 特開2013−092089号公報
しかしながら、特許文献1、2では、エンジン冷却系部品用途への適用については、用途の一例に記載されているものの、オレフィン共重合体の配合量が多く、寸法安定性が不十分であり、また、耐不凍液性も不十分である。また、特許文献3,4では、耐不凍液性に関する記載はあるものの、特許文献3では、無機充填材の配合量が少なく、一方、特許文献4では、オレフィン共重合体の配合量が多く、寸法安定性が不十分である。更に、特許文献5の発泡により寸法安定性や冷熱衝撃性を発現させる手法は、PPS樹脂の特性である高強度、高剛性を達成する上では不利であり、本発明の目的である自動車冷却モジュールを得るには適さない手法である。
本発明は、寸法安定性、耐冷熱衝撃性、耐不凍液性に優れるPPS樹脂組成物で射出成形された自動車冷却モジュールを提供するものである。
近年の自動車は、搭載される部品点数の増加に伴い、省スペース化のニーズが強くなっている。そのため、冷却系部品は小型化され、かつ部品ではなく複数のパーツを組み合わせ、複数の機能を一体化したモジュールへと開発がシフトしている。それに伴い、より複雑な形状となるため、これまで以上に優れた冷熱衝撃性が必要となる。
また、電動式のバルブで流量、および流路を制御する方式では、より正確な流量、および流路制御が可能となるが、複雑形状であるが故に、樹脂の収縮、無機充填材(例えばガラス繊維)の配向、および不凍液の吸液などによる僅かな寸法変化が、モジュールに隙間を生じさせ、流量、および流路の制御の乱れや、エンジンルーム内への液漏れを引き起こす原因となりかねない。
従って、自動車冷却モジュールは、高温での不凍液性に耐えるために耐不凍液性だけでなく、繰り返しの冷熱衝撃に対して割れが発生することなく、更に、正確な流量、流路制御のために寸法安定性も必要となる。
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明に至った。
すなわち本発明は、下記を提供するものである。
(1)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、(B−1)グリシジル基を有するオレフィン系共重合体1.5〜3.5重量部、(B−2)極性官能基を有しないオレフィン系共重合体1.5〜3.5重量部、ならびに(C)ガラス繊維および炭酸カルシウムを合わせて150〜250重量部を配合してなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を射出成形してなるハウジング、バルブ、および少なくとも3つ以上のパイプを組み合わせてなる自動車用冷却モジュール。
(2)ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物に含まれる(C−3)マイカの配合量が、ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して5重量部未満である(1)記載の自動車用冷却モジュール。
(3)ポリフェニレンスルフィド樹脂が、(a)真空下320℃×2時間加熱溶融した際に揮発するガス発生量が0.3重量%以下、(b)550℃で灰化させたときの灰分量が0.3重量%以下、(c)250℃で5分間、20倍重量の1−クロロナフタレンに溶融してポアサイズ1μmのPTFEメンブランフィルターで熱時加圧濾過した際の残渣量が4重量%以下であるポリフェニレンスルフィド樹脂である(1)または(2)記載の自動車用冷却モジュール。
(4)自動車冷却モジュールの、ハウジング内部に流れる不凍液の流量および流路が、前記ハウジングに内包されたバルブの開閉により制御される(1)〜(3)のいずれかに記載の自動車冷却モジュール。
本発明は、特定組成のPPS樹脂組成物が、優れた寸法安定性と高い耐冷熱衝撃性を両立し、かつ、高い耐不凍液性をも有するという未知なる特性を有することを見いだし、そのようなPPS樹脂組成物を射出成形することにより、当該特性を活かした、自動車冷却モジュールに適することを見いだしたものである。本発明のPPS樹脂組成物は、自動車冷却モジュールに有用であり、特に小型、複雑形状の自動車冷却モジュールに有用である。
実施例における寸法安定性の評価に用いた成形品の概略図である。 実施例における耐冷熱衝撃性の評価に用いた成形品の概略図である。
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明において「重量」とは「質量」を意味する。
本発明の自動車冷却モジュールは、耐熱性が必要とされるため、ポリフェニレンスルフィド樹脂(以下PPS樹脂)組成物からなる。
(1)PPS樹脂
本発明で用いられる(A)PPS樹脂は、下記構造式で示される繰り返し単位を有する重合体であり、
Figure 0006707810
耐熱性の観点からは上記構造式で示される繰り返し単位を含む重合体を70モル%以上、更には90モル%以上含む重合体が好ましい。またPPS樹脂はその繰り返し単位の30モル%未満程度が、下記の構造を有する繰り返し単位等で構成されていてもよい。
Figure 0006707810
本発明で用いられる(A)PPS樹脂の溶融粘度は、優れた溶融流動性を有する樹脂組成物を得る観点から、5〜50Pa・s(310℃、剪断速度1,216/s)の範囲が好ましく、10〜45Pa・sの範囲がより好ましく、10〜40Pa・sの範囲が更に好ましい。また溶融粘度の異なる2種以上のPPS樹脂を併用して用いてもよい。なお、本発明における(A)PPS樹脂の溶融粘度は、310℃、剪断速度1,216/sの条件下、東洋精機社製キャピログラフを用いて測定した値である。
以下に、本発明に用いる(A)PPS樹脂の製造方法について説明するが、上記構造と特性を有するPPSが得られれば下記方法に限定されるものではない。但し、ジクロロベンゼンと硫黄源を主たるモノマー(90モル%以上)とし、非プロトン性極性溶媒存在下で重合する方法が、生産安定性の点で最も好ましい。
次に、製造に使用するポリハロゲン芳香族化合物、スルフィド化剤、重合溶媒、分子量調節剤、重合助剤および重合安定剤の内容について説明する。
[ポリハロゲン化芳香族化合物]
本発明で用いられるポリハロゲン化芳香族化合物とは、1分子中にハロゲン原子を2個以上有する化合物をいう。具体例としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,3.5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロ−p−キシレン、1,4−ジブロモベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼンなどのポリハロゲン化芳香族化合物が挙げられ、好ましくは、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,3.5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼンなどのポリクロロベンゼンが好ましく用いられ、更にp−ジクロロベンゼンが特に好ましく用いられる。また、異なる2種以上のポリハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて共重合体とすることも可能であるが、p−ジクロロベンゼンで代表されるp−ジハロゲン化芳香族化合物を主要成分とすることが好ましい。
ポリハロゲン化芳香族化合物の使用量は、加工に適した粘度とオリゴマー低溶出性のPPS樹脂を得る点から、スルフィド化剤1モル当たり0.8から1.023モル、好ましくは0.8から1.020モル、更に本発明に有用な重合度と低オリゴマー性を両立させる意味からは、0.9から1.015モルの範囲が有用である。上記範囲の場合、前述したクロロホルム抽出量が好ましい範囲にあるPPS樹脂を得ることが出来る。
[スルフィド化剤]
本発明で用いられるスルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも水硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属水硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物からアルカリ金属硫化物を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
あるいは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素から反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素からアルカリ金属硫化物を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
本発明において、仕込みスルフィド化剤の量は、脱水操作などにより重合反応開始前にスルフィド化剤の一部損失が生じる場合には、実際の仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。
なお、スルフィド化剤と共に、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を併用することも可能である。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができ、アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどが挙げられ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいが、この使用量はアルカリ金属水硫化物1モルに対し0.90から1.50モル、好ましくは0.90から1.30モル、更に好ましくは0.95から1.20モルの範囲が例示できる。
[重合溶媒]
本発明では重合溶媒として有機極性溶媒を用いる。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、およびこれらの混合物などが挙げられ、これらはいずれも反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでも、特にN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記することもある)が好ましく用いられる。
有機極性溶媒の使用量は、スルフィド化剤1モル当たり2.0モルから10モル、好ましくは2.25から6.0モル、より好ましくは2.5から5.5モルの範囲が選択される。
[分子量調節剤]
本発明においては、生成するPPS樹脂の末端を形成させるか、あるいは重合反応や分子量を調節するなどのために、モノハロゲン化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)を、上記ポリハロゲン化芳香族化合物と併用することができる。モノハロゲン化化合物としては、モノハロゲン化ベンゼン、モノハロゲン化ナフタレン、モノハロゲン化アントラセン、ベンゼン環を2個以上含むモノハロゲン化化合物、モノハロゲン化複素環式化合物、などを挙げることができる。なかでも、経済性の観点からするとモノハロゲン化ベンゼンが好ましい。また、異なる2種以上のモノハロゲン化化合物を組み合わせて用いることも可能である。
[重合助剤]
本発明においては、重合度調節のために重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。ここで重合助剤とは得られるPPS樹脂の粘度を増大させる作用を有する物質を意味する。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸塩、水、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独であっても、また2種以上を同時に用いることもできる。なかでも、有機カルボン酸塩、水、およびアルカリ金属塩化物が好ましく、更にはナトリウム、リチウムのカルボン酸塩および/または水が特に好適に用いられる。
上記アルカリ金属カルボン酸塩とは、一般式R(COOM)n(式中、Rは、炭素数1〜20を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属である。nは1〜3の整数である。)で表される化合物である。アルカリ金属カルボン酸塩は、水和物、無水物または水溶液としても用いることができる。アルカリ金属カルボン酸塩の具体例としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p−トルイル酸カリウム、およびそれらの混合物などを挙げることができる。
アルカリ金属カルボン酸塩は、有機酸と、水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属塩および重炭酸アルカリ金属塩よりなる群から選ばれる一種以上の化合物とを、ほぼ等化学当量ずつ添加して反応させることにより形成させてもよい。上記アルカリ金属カルボン酸塩の中で、リチウム塩は反応系への溶解性が高く助剤効果が大きいが高価であり、カリウム、ルビジウムおよびセシウム塩は反応系への溶解性が不十分であると思われるため、安価で、重合系への適度な溶解性を有する酢酸ナトリウムが最も好ましく用いられる。
これらアルカリ金属カルボン酸塩を重合助剤として用いる場合の使用量は、加工に適した粘度とオリゴマー低溶出性のPPS樹脂を得る点から、仕込みスルフィド化剤1モルに対し、通常0.01モル〜2モルの範囲であり、本発明に有用な重合度と低オリゴマー性を両立させる意味からは、0.010〜0.088モルの範囲が好ましい。上記範囲の場合、前述した溶融粘度が好ましい範囲にあるPPS樹脂を得ることが出来る。
また水を重合助剤として用いる場合の添加量は、仕込みスルフィド化剤1モルに対し、通常0.3モル〜15モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.6〜10モルの範囲が好ましく、1〜5モルの範囲がより好ましい。これら重合助剤は2種以上を併用することももちろん可能であり、例えばアルカリ金属カルボン酸塩と水を併用すると、それぞれより少量で高分子量化が可能となる。
これら重合助剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、重合助剤としてアルカリ金属カルボン酸塩を用いる場合は前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが、添加が容易である点からより好ましい。また水を重合助剤として用いる場合は、ポリハロゲン化芳香族化合物を仕込んだ後、重合反応途中で添加することが効果的である。
[重合安定剤]
本発明においては、重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることもできる。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、望ましくない副反応を抑制する。副反応の一つの目安としては、チオフェノールの生成が挙げられ、重合安定剤の添加によりチオフェノールの生成を抑えることができる。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。上述のアルカリ金属カルボン酸塩も重合安定剤として作用するので、本発明で使用する重合安定剤の一つに入る。また、スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述したが、ここでスルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
これら重合安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合安定剤は、仕込みスルフィド化剤1モルに対して、通常0.02〜0.2モル、好ましくは0.03〜0.1モル、より好ましくは0.04〜0.09モルの割合で使用することが好ましい。この割合が少ないと安定化効果が不十分であり、逆に多すぎても経済的に不利益であったり、ポリマー収率が低下する傾向となる。
重合安定剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが、添加が容易である点からより好ましい。
次に、本発明に用いる(A)PPS樹脂の製造方法について、前工程、重合反応工程、回収工程、および後処理工程と、順を追って具体的に説明する。
[前工程]
本発明に用いる(A)PPS樹脂の製造方法において、スルフィド化剤は通常水和物の形で使用されるが、ポリハロゲン化芳香族化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。
また、上述したように、スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで、あるいは重合槽とは別の槽で調製されるスルフィド化剤も用いることができる。この方法には特に制限はないが、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜150℃、好ましくは常温から100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を加え、常圧または減圧下、少なくとも150℃以上、好ましくは180〜260℃まで昇温し、水分を留去させる方法が挙げられる。この段階で重合助剤を加えてもよい。また、水分の留去を促進するために、トルエンなどを加えて反応を行ってもよい。
重合反応における、重合系内の水分量は、仕込みスルフィド化剤1モル当たり0.3〜10.0モルであることが好ましい。ここで重合系内の水分量とは重合系に仕込まれた水分量から重合系外に除去された水分量を差し引いた量である。また、仕込まれる水は、水、水溶液、結晶水などのいずれの形態であってもよい。
[重合反応工程]
本発明においては、有機極性溶媒中でスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを200℃以上290℃未満の温度範囲内で反応させることによりPPS樹脂を製造する。
重合反応工程を開始するに際しては、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜240℃、好ましくは100〜230℃の温度範囲で、有機極性溶媒とスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物を混合する。この段階で重合助剤を加えてもよい。これらの原料の仕込み順序は、順不同であってもよく、同時であってもさしつかえない。
かかる混合物を通常200℃〜290℃の範囲に昇温する。昇温速度に特に制限はないが、通常0.01〜5℃/分の速度が選択され、0.1〜3℃/分の範囲がより好ましい。一般に、最終的には250〜290℃の温度まで昇温し、その温度で通常0.25〜50時間、好ましくは0.5〜20時間反応させる。最終温度に到達させる前の段階で、例えば200℃〜260℃で一定時間反応させた後、270〜290℃に昇温する方法は、より高い重合度を得る上で有効である。この際、200℃〜260℃での反応時間としては、通常0.25時間から20時間の範囲が選択され、好ましくは0.25〜10時間の範囲が選択される。
なお、より高重合度のポリマーを得るためには、複数段階で重合を行うことが有効である場合がある。複数段階で重合を行う際は、245℃における系内のポリハロゲン化芳香族化合物の転化率が、40モル%以上、好ましくは60モル%に達した時点であることが有効である。
また、ポリハロゲン化芳香族化合物(ここではPHAと略記)の転化率は、以下の式で算出した値である。PHA残存量は、通常、ガスクロマトグラフ法によって求めることができる。
(a)ポリハロゲン化芳香族化合物をアルカリ金属硫化物に対しモル比で過剰に添加した場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)−PHA過剰量(モル)〕
(b)上記(a)以外の場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)〕
[回収工程]
本発明で用いる(A)PPS樹脂の製造方法においては、重合終了後に、重合体、溶媒などを含む重合反応物から固形物を回収する。本発明で用いるPPS樹脂は、公知の如何なる回収方法を採用してもよい。
例えば、重合反応終了後、徐冷して粒子状のポリマーを回収する方法を用いてもよい。この際の徐冷速度には特に制限は無いが、通常0.1℃/分〜3℃/分程度である。徐冷工程の全行程において同一速度で徐冷する必要もなく、ポリマー粒子が結晶化析出するまでは0.1〜1℃/分、その後1℃/分以上の速度で徐冷する方法などを採用してもよい。上記回収方法を用いる場合、前述したクロロホルム抽出量が好ましい範囲にあるPPS樹脂を得ることが出来る。
また上記の回収を急冷条件下に行うことも好ましい方法の一つであり、この回収方法の好ましい一つの方法としてはフラッシュ法が挙げられる。フラッシュ法とは、重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、8kg/cm2 以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ、溶媒回収と同時に重合体を粉末状にして回収する方法であり、ここでいうフラッシュとは、重合反応物をノズルから噴出させることを意味する。フラッシュさせる雰囲気は、具体的には例えば常圧中の窒素または水蒸気が挙げられ、その温度は通常150℃〜250℃の範囲が選択される。
なかでも、より優れた低オリゴマー性を発現させるためには、後述の有機溶媒による洗浄効果を上げるために、重合反応終了後、徐冷して粒子状のポリマーを回収する方法が好ましく用いられる。
[後処理工程]
本発明で用いられる(A)PPS樹脂は、上記重合、回収工程を経て生成した後、酸処理、熱水処理または有機溶媒による洗浄を施されたものであってもよい。
酸処理を行う場合は次のとおりである。本発明でPPS樹脂の酸処理に用いる酸は、PPS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、珪酸、炭酸およびプロピル酸などが挙げられ、なかでも酢酸および塩酸がより好ましく用いられるが、硝酸のようなPPS樹脂を分解、劣化させるものは好ましくない。
酸処理の方法は、酸または酸の水溶液にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。例えば、酢酸を用いる場合、pH4の水溶液を80〜200℃に加熱した中にPPS樹脂粉末を浸漬し、30分間撹拌することにより十分な効果が得られる。処理後のpHは4以上例えばpH4〜8程度となってもよい。酸処理を施されたPPS樹脂は残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。洗浄に用いる水は、酸処理によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水、脱イオン水であることが好ましい。
熱水処理を行う場合は次のとおりである。本発明において使用するPPS樹脂を熱水処理するにあたり、熱水の温度を100℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは150℃以上、特に好ましくは170℃以上とすることが好ましい。100℃未満ではPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果が小さいため好ましくない。
本発明の熱水洗浄によるPPS樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作に特に制限は無く、所定量の水に所定量のPPS樹脂を投入し、圧力容器内で加熱、撹拌する方法、連続的に熱水処理を施す方法などにより行われる。PPS樹脂と水との割合は、水の多い方が好ましいが、通常、水1リットルに対し、PPS樹脂200g以下の浴比が選択される。
また、処理の雰囲気は、末端基の分解は好ましくないので、これを回避するため不活性雰囲気下とすることが望ましい。更に、この熱水処理操作を終えたPPS樹脂は、残留している成分を除去するため温水で数回洗浄するのが好ましい。
有機溶媒で洗浄する場合は次のとおりである。本発明でPPS樹脂の洗浄に用いる有機溶媒は、PPS樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホラスアミド、ピペラジノン類などの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、パークロルエチレン、モノクロルエタン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、パークロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒のうちでも、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどの使用が好ましく、特に優れたオリゴマー除去効果を得る意味では、N−メチル−2−ピロリドンの使用が特に好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPPS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でPPS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなる程洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。圧力容器中で、有機溶媒の沸点以上の温度で加圧下に洗浄することも可能である。また、洗浄時間についても特に制限はない。洗浄条件にもよるが、バッチ式洗浄の場合、通常5分間以上洗浄することにより十分な効果が得られる。また連続式で洗浄することも可能である。かかる有機溶媒による洗浄は、高いオリゴマー除去効果が得られることから、本発明で用いる(A)PPS樹脂の製造に好適なプロセスである。
本発明においては、上記のようにして得られたPPS樹脂を、アルカリ土類金属塩を含む水による洗浄による処理を施してもよい。PPS樹脂を、アルカリ土類金属塩を含む水で洗浄する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。アルカリ土類金属塩の種類としては特に制限は無いが、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウムなどの水溶性有機カルボン酸のアルカリ土類金属塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物が好ましい例として挙げられ、特に酢酸カルシウム、酢酸マグネシウムなどの水溶性有機カルボン酸のアルカリ土類金属塩が好ましい。水の温度は、室温〜200℃であることが好ましく、50〜90℃であることがより好ましい。上記水中におけるアルカリ土類金属塩の使用量は乾燥PPS樹脂1kgに対し0.1g〜50gであることが好ましく、0.5g〜30gであることがより好ましい。洗浄時間としては0.5時間以上が好ましく、1.0時間以上がより好ましい。また好ましい洗浄浴比(乾燥PPS樹脂単位重量当たりのアルカリ土類金属塩を含む温水使用重量)は洗浄時間、温度にもよるが、乾燥PPS1kg当たり、上記アルカリ土類金属を含む温水を5kg以上用いて洗浄することが好ましく、10kg以上用いて洗浄することがより好ましい。上限としては特に制限はなく、高くてもよいが、使用量と得られる効果の点から100kg以下であることが好ましい。かかる温水洗浄は複数回行ってもよい。
本発明において用いる(A)PPS樹脂は、重合終了後に酸素雰囲気下においての加熱および過酸化物などの架橋剤を添加しての加熱による熱酸化架橋処理により高分子量化して用いることも可能である。
熱酸化架橋による高分子量化を目的として乾式熱処理する場合には、その温度は160〜260℃が好ましく、170〜250℃の範囲がより好ましい。また、酸素濃度は5体積%以上、更には8体積%以上とすることが望ましい。酸素濃度の上限には特に制限はないが、50体積%程度が限界である。処理時間は、0.5〜100時間が好ましく、1〜50時間がより好ましく、2〜25時間が更に好ましい。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よく、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
また、熱酸化架橋を抑制し、揮発分除去を目的として乾式熱処理を行うことが可能である。その温度は130〜250℃が好ましく、160〜250℃の範囲がより好ましい。また、この場合の酸素濃度は5体積%未満、更には2体積%未満とすることが望ましい。処理時間は、0.5〜50時間が好ましく、1〜20時間がより好ましく、1〜10時間が更に好ましい。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よく、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
本発明において、脱イオン処理などにより、PPS中の灰分率が0.3重量%以下に低減されたPPS樹脂を用いることは、より優れた靭性および成形加工性を得る意味で好ましい。かかる脱イオン処理の具体的方法としては酸水溶液洗浄処理、熱水洗浄処理および有機溶剤洗浄処理などが例示でき、これらの処理は2種以上の方法を組み合わせて用いてもよい。なお、ここで灰分率の測定は以下の方法が挙げられる。乾燥状態のPPS原末約5gを白金坩堝に量り取り、電気コンロ上で黒色塊状物となるまで焼成する。次にこれを550℃に設定した電気炉中で炭化物が焼成しきるまで焼成を続ける。その後デシケータ中で冷却後、重量を測定し、初期重量との比較から灰分率を計算することができる。
中でも、本発明においては下記(1)〜(3)の特徴を有するPPS樹脂が、高ウエルド強度、高耐冷熱衝撃性の点で、特に好ましく用いられる。
(1)真空下、320℃で2時間加熱溶融した際に揮発するガス発生量が0.3重量%以下であり、好ましくは0.28重量%以下、更に好ましくは0.22重量%以下であることが望ましい。かかる性質を有するPPS樹脂は上記の洗浄や熱酸化処理を適切に適用することにより得られる。ガス発生量が0.3重量%を上回ると、揮発性成分が増加し、ウエルド強度、耐冷熱衝撃性が低下するため好ましくない。熱酸化処理後のガス発生量の下限については特に制限しないが、ガス発生量を低減するまで熱酸化処理する時間が長くなると、経済的に不利であり、また、熱酸化処理する時間の長期化により、ゲル化物が生じ易くなり、成形不良を引き起こす一因となり得る。ガス発生量は少ないことが好ましいが、好ましい下限は0.01重量%である。
なお、上記ガス発生量とは、PPS樹脂を真空下で加熱溶融した際に揮発するガスが、冷却されて液化または固化した付着性成分の量を意味しており、PPS樹脂を真空封入したガラスアンプルを、管状炉で加熱することにより測定されるものである。ガラスアンプルの形状としては、腹部が100mm×25mm、首部が255mm×12mm、肉厚が1mmである。具体的な測定方法としては、PPS樹脂を真空封入したガラスアンプルの胴部のみを320℃の管状炉に挿入して2時間加熱することにより、管状炉によって加熱されていないアンプルの首部で揮発性ガスが冷却されて付着する。この首部を切り出して秤量した後、付着したガスをクロロホルムに溶解して除去する。次いで、この首部を乾燥してから再び秤量する。ガスを除去した前後のアンプル首部の重量差よりガス発生量を求める。
(2)550℃で灰化させたときの灰分率が0.3重量%以下であり、好ましくは0.2重量%以下、更に好ましくは0.1重量%以下である。かかる性質を有するPPS樹脂は上記の酸洗浄処理を適切に適用することにより得られる。灰分率が0.3重量%を上回ることは、PPS樹脂の金属含有量が多いことを意味する。金属含有量が多いと強度低下、冷熱衝撃特性の低下などの原因となり得る。灰分率の好ましい下限は0.01重量%である。
(3)250℃で5分間、20倍重量の1−クロロナフタレンに溶解して、ポアサイズ1μmのPTFEメンブランフィルターで熱時加圧濾過した際の残渣量が4重量%以下、好ましくは、4.0重量%以下、更に好ましくは3.5重量%以下、特に好ましくは3.0重量%以下であることが望ましい。残渣量が4.0重量%を上回ることは、PPS樹脂の熱酸化架橋が過度に進行し、樹脂中のゲル化物の増加を意味する。PPS樹脂の熱酸化架橋を過度に進行させても、揮発分低減効果は少なく、一方で溶融流動性の低下、ゲル化物による成形不良や強度低下等の原因になるため好ましくない。残渣量の下限については特に制限しないが、1.5重量%以上、好ましくは1.7重量%以上である。残渣量が1.5重量%を下回ると、熱酸化架橋の程度が軽微すぎるため、溶融時の揮発成分はそれほど減少せず、揮発分低減効果が小さい可能性がある。かかる性質を有するPPS樹脂は上記の熱酸化架橋処理を適切に適用することにより得られる。残渣量の好ましい下限は、1.5重量%である。
なお、上記残渣量は、PPS樹脂を約80μm厚にプレスフィルム化したものを試料とし、高温濾過装置および空圧キャップと採集ロートを具備したSUS試験管を用いて測定されるものである。具体的には、まずSUS試験管にポアサイズ1μmのメンブランフィルターをセットした後、約80μm厚にプレスフィルム化したPPS樹脂および20倍重量の1−クロロナフタレンを秤量して密閉する。これを250℃の高温濾過装置にセットして5分間加熱振とうする。次いで空圧キャップに空気を含んだ注射器を接続してから注射器のピストンを押し出し、空圧による熱時濾過を行う。残渣量の具体的な定量方法としては、濾過前のメンブランフィルターと濾過後に150℃で1時間真空乾燥したメンブランフィルターの重量差より求める。
例えば、上記のごとき製造法を採用することで、優れた耐熱性、耐不凍液性と高ウエルド強度を備えたPPS樹脂組成物に好適な(A)PPS樹脂を得ることが可能であり、本発明にはかかる(A)PPS樹脂を用いることが好ましい。このようなPPS樹脂(A)を、本発明のPPS樹脂組成物に配合されるPPS樹脂として配合することが好ましいが、PPS樹脂の少なくとも10重量%をこのようなPPS樹脂とすることで、PPS樹脂組成物に優れた耐熱性、高ウエルド強度、高耐冷熱衝撃性を備えることができる。PPS樹脂組成物に配合されるPPS樹脂の少なくとも30重量%をこのようなPPS樹脂とすることが好ましく、50重量%以上が更に好ましい。
本発明のPPS樹脂組成物における(B−1)グリシジル基を有するオレフィン系共重合体の配合量は、(A)PPS樹脂100重量部に対し、1〜4重量部であり、一方、(B−2)極性官能基を有しないオレフィン系共重合体は、(A)PPS樹脂100重量部に対し、1〜4重量部である。これらは、優れた寸法安定性と耐冷熱衝撃性を並立させる意味、および適切な強度を付与する意味において必要である。
(A)PPS樹脂100重量部に対し、(B−1)グリシジル基を有するオレフィン系共 重合体が1重量部未満の場合は、組成物としての適切な耐冷熱衝撃性が得られないため好ましくない。また(B−1)グリシジル基を有するオレフィン系共重合体が4重量部を超える場合は、流動性が悪化し、成形性が損なわれるため、好ましくない。また、同一の成形条件にて成形した際の、成形品の寸法、例えば真円度がばらつき、適切な寸法安定性が得られないため好ましくない。特に(A)PPS樹脂100重量部に対し、(B−1)グリシジル基を有するオレフィン系共重合体を1〜4重量部の範囲が好ましく、1.5〜3.5重量部の範囲が特に好適である。(A)PPS樹脂100重量部に対し、(B−1)グリシジル基を有するオレフィン系共重合体が1.5〜3.5重量部の範囲では、優れた耐熱性と組成物としての適切な機械強度、および寸法安定性を兼ね備えるため特に好ましい。
一方、(A)PPS樹脂100重量部に対し、(B−2)極性官能基を有しないオレフィン系共重合体が1重量部未満の場合は、組成物としての適切な耐冷熱衝撃性が得られないため好ましくない。また(B−2)極性官能基を有しないオレフィン系共重合体が4重量部を超える場合は、同一の成形条件にて成形した際の、成形品の寸法、例えば真円度がばらつき、適切な寸法安定性が得られないため好ましくない。特に(A)PPS樹脂100重量部に対し、(B−1)グリシジル基を有するオレフィン系共重合体を1〜4重量部の範囲が好ましく、1.5〜3.5重量部の範囲が特に好適である。(A)PPS樹脂100重量部に対し、(B−2)極性官能基を有しないオレフィン系共重合体が1.5〜3.5重量部の範囲では、優れた耐熱性と組成物としての適切な機械強度、高耐冷熱衝撃性を兼ね備えるため特に好ましい。
更に、(B−1)グリシジル基を有するオレフィン系共重合体と、(B−2)極性官能基を有しないオレフィン系共重合体を併用して用いることが優れた流動性、耐冷熱衝撃性を得る上で好ましい。これらの比率に特に制限は無いが、(B−1)/(B−2)=5/95重量比〜95/5重量比が好ましく、(B−1)/(B−2)=10/90重量比〜90/10重量比の範囲が、成形時の流動性、および耐冷熱衝撃性のバランスに優れるため、より好ましい。
かかる(B−1)グリシジル基を有するオレフィン系共重合体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、イソブチレンなどのα−オレフィン単独または2種以上を重合して得られる(共)重合体、α−オレフィンとアクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、などのα,β−不飽和酸およびそのアルキルエステルとの共重合体、例えば、エチレン/プロピレン共重合体(“/”は共重合を表す、以下同じ)、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/1−ヘキセン、エチレン/1−オクテン、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸ブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸ブチル共重合体などにエポキシ基を有する単量体成分(官能基含有成分)を導入することにより得られるが、その官能基含有成分の例としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジルなどのエポキシ基を含有する単量体などが挙げられる。これら官能基含有成分を導入する方法は特に制限なく、オレフィン系(共)重合体を(共)重合する際に共重合させたり、オレフィン系(共)重合体にラジカル開始剤を用いてグラフト導入させたりするなどの方法を用いることができる。官能基含有成分の導入量は変性オレフィン系(共)重合体を構成する全単量体に対して0.001〜40モル%、好ましくは0.01〜35モル%の範囲内であるのが適当である。特に有用なオレフィン重合体にエポキシ基を有する単量体成分を導入して得られるグリシジル基を有するオレフィン系共重合体の具体例としては、エチレン/プロピレン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体(”g”はグラフトを表す、以下同じ)、エチレン/1−ブテン−g−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、あるいは、エチレン、プロピレンなどのα−オレフィンとα,β−不飽和酸のグリシジルエステルに加え、更に他の単量体を必須成分とするエポキシ基含有オレフィン系共重合体もまた好適に用いられる。
好ましいものとしては、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体などが挙げられる。とりわけ好ましいものとしては、エチレン/アクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体が挙げられる。
一方、(B−2)極性官能基を有しないオレフィン系共重合体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、イソブチレンなどのα−オレフィン単独または2種以上を重合して得られる(共)重合体、例えば、エチレン/プロピレン共重合体(“/”は共重合を表す、以下同じ)、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/1−ヘキセン共重合体、エチレン/1−オクテン共重合体が挙げられる。
好ましいものとしては、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/1−オクテン共重合体が挙げられる。とりわけ好ましいものとしては、エチレン/1−オクテン共重合体が挙げられる。
本発明のPPS樹脂組成物における(C)無機充填材の配合量は、(A)PPS樹脂100重量部に対し、(C)無機充填材を150〜250重量部である。優れた機械強度と寸法安定性を並立させる意味において必要である。
(A)PPS樹脂100重量部に対し、(C)無機充填材が150重量部未満の場合は、組成物としての適切な寸法安定性が得られないため好ましくない。また(C)無機充填材が250重量部を超える場合は、組成物の溶融流動性が低下し、適切な成形加工性が得られず、また、機械強度も得られないため好ましくない。特に(A)PPS樹脂100重量部に対し、(C)無機充填材を150〜250重量部の範囲が好ましく、160〜240重量部の範囲が特に好適である。(A)PPS樹脂100重量部に対し、(C)無機充填材が160〜240重量部の範囲では、優れた耐熱性と組成物としての適切な機械強度、寸法安定性を兼ね備えるため特に好ましい。
かかる(C)無機充填材としての繊維状充填材としては、具体的には、ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、ガラスフラットファイバー、異形断面ガラスファイバー、ガラスカットファイバー、扁平ガラス繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維、ロックウール、PAN系やピッチ系の炭素繊維、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、チタン酸バリウムウィスカー、ほう酸アルミニウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、アスベスト繊維、石膏繊維、セラミック繊維、ジルコニア繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、などが挙げられ、これらは2種類以上併用することも可能である。また、これら繊維状充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。
また(C)無機充填材としての非繊維状充填材の具体例としては、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケート、ハイドロタルサイトなどの珪酸塩、酸化珪素、ガラス粉、酸化マグネシウム、酸化アルミ(アルミナ)、シリカ(破砕状・球状)、石英、ガラスビーズ、ガラスフレーク、破砕状・不定形状ガラス、ガラスマイクロバルーン、二硫化モリブデン、酸化アルミニウム(破砕状)、透光性アルミナ(繊維状・板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、酸化チタン(破砕状)、酸化亜鉛(繊維状・板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)などの酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛などの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、炭化珪素、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛、窒化アルミニウム、透光性窒化アルミニウム(繊維状・板状・鱗片状・粒状・不定形状・破砕品)、ポリリン酸カルシウム、グラファイト、金属粉、金属フレーク、金属リボン、金属酸化物などが挙げられ、ここで金属粉、金属フレーク、金属リボンの金属種の具体例としては銀、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、ステンレス、鉄、黄銅、クロム、錫などが例示できる。また、カーボン粉末、黒鉛、カーボンフレーク、鱗片状カーボン、フラーレン、グラフェンなどが挙げられ、これらは中空であってもよく、更にはこれら充填材を2種類以上併用することも可能である。
また、これら無機充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用してもよい。中でもガラス繊維、炭素繊維、炭酸カルシウム、カーボンブラック、黒鉛が特に好ましい。
また、本発明のPPS樹脂組成物における(C−3)マイカの配合量は、PPS樹脂100重量部に対して5重量部未満であることが好ましい。マイカの配合量を5重量部未満、最も好ましくはマイカを配合しないことで、優れた機械強度と耐不凍液性を両立させることができるので好ましい。
(A)PPS樹脂100重量部に対し、(C−3)マイカを5重量部以上配合する場合は、適切な耐不凍液性を得られないことがあり、好ましくない。
更に、本発明のPPS樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、機械的強度、靱性などの向上を目的に、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基およびウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するシラン化合物を添加してもよい。かかる化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリクロロシランなどのイソシアネート基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、およびγ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。なかでもエポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基を有するアルコキシシランが優れたウエルド強度を得る上で特に好適である。かかるシラン化合物の好適な添加量は、PPS樹脂100重量部に対し、0.05〜3重量部の範囲が選択される。
本発明のPPS樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、更に他の樹脂をブレンドして用いてもよい。かかるブレンド可能な樹脂には特に制限はないが、その具体例としては、ナイロン6,ナイロン66,ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、芳香族系ナイロンなどのポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシルジメチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエーテルアミドエラストマー、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリサルフォン樹脂、ポリアリルサルフォン樹脂、ポリケトン樹脂、ポリアリレート樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂などが挙げられる。
なお、本発明のPPS樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば前記以外の酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒドロキノン系)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤および滑剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、ビス尿素およびポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、着色用カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、燐酸エステル、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、熱安定剤、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸リチウムなどの滑剤、ビスフェノールA型などのビスフェノールエポキシ樹脂、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などの強度向上材、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤および発泡剤などの通常の添加剤を添加することができる。
本発明のPPS樹脂組成物の調製方法には特に制限はないが、各原料を単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーおよびミキシングロールなど通常公知の溶融混合機に供給して、280〜380℃の温度で混練する方法などを代表例として挙げることができる。原料の混合順序にも特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し、更に残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは2軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法などのいずれの方法を用いてもよい。また、少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加して成形に供することももちろん可能である。
このようにして得られる本発明のPPS樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、トランスファー成形など各種成形に供することが可能であるが、特に射出成形用途に適している。
本発明のPPS樹脂組成物は、「自動車冷却モジュール」に適しているが、ここで言う「自動車冷却モジュール」とは、ハウジング、バルブ、および少なくとも3つ以上のパイプを含むものが好ましく、ハウジングの形状は、四角形状、三角形状、楕円形状などいずれの形状、またはそれぞれの複合形状であってもよく、そのハウジングにリブ、ボス、フランジが設置されていてもよい。また、バルブの形状は、球体形状、円柱形状などいずれの形状、またはそれぞれの複合形状であってもよく、そのバルブに孔が開いていてもよい。また、バルブの数は、1つでもよく、また、2つ以上であってもよい。また、パイプの形状は、真っ直ぐであっても、曲がっていてもよく、また、パイプの断面形状は、円形状、楕円形状、四角形状などいずれの形状でもよい。また、そのパイプにリブ、ボス、フランジが設置されていてもよい。また、少なくとも3つ以上のパイプは、それぞれが同じ形状であっても、異なる形状の組み合わせであってもよい。
ハウジング内部に流れる不凍液は、アルコール類、グリコール類、グリセリンなどを含む不凍液であって、その種類、および濃度は特に限定されない。また、高温であっても、低温であっても、これらが繰り返し流れてもよい。
自動車冷却モジュールとしては、ハウジング内部に流れる不凍液の流量、流路がハウジングに内包されたバルブの開閉により制御されるものが好ましい。
ハウジングに内包されたバルブの開閉は、エンジンの駆動力を利用しても、モーターの駆動力を利用してもよい。
以上のように、本発明のPPS樹脂組成物は、寸法安定性に優れるだけでなく、耐冷熱衝撃性、耐不凍液について均衡して優れていることから、寸法精度と耐久性が必要とされる自動車冷却モジュールの成形に適している。すなわち、本発明のPPS樹脂組成物は、寸法安定性、耐冷熱衝撃性、耐不凍液性に優れるという特性を有しているため、自動車用の冷却モジュールに有用であり、特に、小型、複雑形状の自動車冷却モジュールに有用である。
その他本発明のPPS樹脂組成物の適用可能な用途としては、例えばセンサー、LEDランプ、民生用コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザーディスク(登録商標)・コンパクトディスクなどの音声機器部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品への適用も可能である。その他、オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;水道蛇口コマ、混合水栓、ポンプ部品、パイプジョイント、水量調節弁、逃がし弁、湯温センサー、水量センサー、水道メーターハウジングなどの水廻り部品;バルブオルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、車速センサー、ケーブルライナーなどの自動車・車両関連部品など各種用途が例示できる。
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
[PPS樹脂の特性の測定方法]
(1)ガス発生量
腹部が100mm×25mm、首部が255mm×12mm、肉厚が1mmのガラスアンプルにPPS樹脂3gを計り入れてから真空封入した。このガラスアンプルの胴部のみを、アサヒ理化製作所製のセラミックス電気管状炉ARF−30Kに挿入して320℃で2時間加熱した。アンプルを取り出した後、管状炉によって加熱されておらず揮発ガスの付着したアンプルの首部をヤスリで切り出して秤量した。次いで付着ガスを5gのクロロホルムで溶解して除去した後、60℃のガラス乾燥機で1時間乾燥してから再度秤量した。ガスを除去した前後のアンプル首部の重量差をガス発生量(重量%)とした。
(2)灰分率
予め550℃で空焼きしたルツボにサンプル(PPS樹脂)5gを精秤し、550℃の電気炉に24時間入れて灰化させた。ルツボに残った灰分量を精秤し、灰化前のサンプル量との比率を灰分率(重量%)とした。
(3)残渣量
空圧キャップと採集ロートを具備したセンシュー科学製のSUS試験管に、予め秤量しておいたポアサイズ1μmのPTFEメンブランフィルターをセットし、約80μm厚にプレスフィルム化したPPS樹脂100mgおよび1−クロロナフタレン2gを計り入れてから密閉した。これをセンシュー科学製の高温濾過装置SSC−9300に挿入し、250℃で5分間加熱振とうしてPPS樹脂を1−クロロナフタレンに溶解した。空気を含んだ20mLの注射器を空圧キャップに接続した後、ピストンを押出して溶液をメンブランフィルターで濾過した。メンブランフィルターを取り出し、150℃で1時間真空乾燥してから秤量した。濾過前後のメンブランフィルター重量の差を残渣量(重量%)とした。
(4)メルトフローレート(MFR)
測定温度315.5℃、5000g荷重とし、ASTM−D1238−70に準ずる方法で測定した。
[参考例1]PPSの重合(PPS−1)
撹拌機および底に弁のついたオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.4g(70.0モル)、96%水酸化ナトリウム2925.0g(70.2モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)13860.0g(140.0モル)、酢酸ナトリウム1894.2g(23.1モル)、およびイオン交換水10500.0gを仕込み、常圧で窒素を通じながら240℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14772.1gおよびNMP280.0gを留出したのち、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.08モルであった。また、硫化水素の飛散量は仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.023モルであった。
次に、p−ジクロロベンゼン(p−DCB)10646.7g(72.4モル)、NMP6444.9g(65.1モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、200℃から270℃まで0.6℃/分の速度で昇温し、270℃で70分保持した。オートクレーブ底部の抜き出しバルブを開放し、窒素で加圧しながら内容物を攪拌機付き容器に15分かけてフラッシュし、250℃でしばらく撹拌して大半のNMPを除去した。
得られた固形物およびイオン交換水53リットルを撹拌機付きオートクレーブに入れ、70℃で30分洗浄した後、ポアサイズ10〜16μmのガラスフィルターで吸引濾過した。次いで70℃に加熱した60リットルのイオン交換水をポアサイズ10〜16μmのガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過してPPS樹脂ケーク18000g(その内PPS樹脂7550gが含まれる)を得た。
前記PPS樹脂ケーク18000g、イオン交換水40リットル、および酢酸43gを撹拌機付きオートクレーブに仕込み、オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、30分保持して酸処理を施した。酸処理時のpHは7であった。オートクレーブ冷却後、内容物をポアサイズ10〜16μmのガラスフィルターで濾過した。次いで、70℃に加熱した60リットルのイオン交換水をガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過してケークを得た。得られたケークを窒素気流下120℃で4時間乾燥し、酸処理を施したPPS樹脂の粉末を得た。次いで、このPPS樹脂粉末を容積100リットルの撹拌機付き加熱装置に入れ、200℃、酸素濃度21%で2時間熱酸化処理を施した。なお、熱酸化処理は、空気1.96リットル/分の空気雰囲気下で行いPPS−1を得た。得られたポリマーのガス発生量は0.16重量%、灰分率0.14重量%、残渣量1.9重量%、MFRは554g/10分であった。
[参考例2]PPSの重合(PPS−2)
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.91kg(69.80モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、およびイオン交換水10.5kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14.78kgおよびNMP0.28kgを留出した後、反応容器を200℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
その後200℃まで冷却し、p−ジクロロベンゼン10.48kg(71.27モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で200℃から270℃まで昇温した。270℃で100分反応した後、オートクレーブの底栓弁を開放し、窒素で加圧しながら内容物を攪拌機付き容器に15分かけてフラッシュし、250℃でしばらく撹拌して大半のNMPを除去した。
得られた固形物およびイオン交換水76リットルを撹拌機付きオートクレーブに入れ、70℃で30分洗浄した後、ガラスフィルターで吸引濾過した。次いで70℃に加熱した76リットルのイオン交換水をガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過してケークを得た。
得られたケークおよびイオン交換水90リットルを撹拌機付きオートクレーブに仕込み、pHが7になるよう酢酸を添加した。オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、30分保持した。その後オートクレーブを冷却して内容物を取り出した。
内容物をガラスフィルターで吸引濾過した後、これに70℃のイオン交換水76リットルを注ぎ込み吸引濾過してケークを得た。得られたケークを窒素気流下、120℃で乾燥することにより、乾燥PPSを得た。
これをMFR値が400g/10分となるまで酸素気流下200℃で熱処理し、PPS−2を得た。得られたポリマーのガス発生量は0.39重量%、灰分率0.01重量%、残渣量4.3重量%であった。
[実施例および比較例で用いた配合材]
本実施例および比較例に用いた配合物は以下の通りである。
(A)PPS樹脂
PPS−1:参考例1に記載の方法で重合したPPS樹脂
PPS−2:参考例2に記載の方法で重合したPPS樹脂
(B)オレフィン共重合体
B−1:エチレン・グリシジルメタクリレート・アクリル酸メチル共重合体(住友化学社製ボンドファースト7M)
B−2:エチレン・1−オクテン共重合体(ダウケミカル社製 エンゲージ8842)
(C)無機充填材
C−1:チョップドストランド(日本電気硝子(株)社製 T−760H 3mm長 平均繊維径10.5μm)
C−2:重質炭酸カルシウム(カルファイン社製 KSS−1000 50%平均粒子径4.2μm)
C−3:金マイカ(レプコ製 S−220HG 重量平均粒径55μm 重量平均アスペクト比55)
[PPS樹脂組成物の測定評価方法]
実施例および比較例における測定評価方法は以下の通りである。
(1)引張強度
ISO 527−1、2法に準拠して測定を行った。具体的には次のように測定を行った。PPS樹脂組成物ペレットを、熱風乾燥機を用いて130℃で3時間乾燥した後、シリンダー温度:310℃、金型温度:145℃に設定した住友重機械工業株式会社製射出成形機(SE−50D)に供給し、ISO20753に規定されるタイプA1試験片形状の金型を用いて、中央平行部の断面積を通過する溶融樹脂の平均速度が400±50mm/sとなる条件で射出成形を行い試験片を得た。この試験片を、23℃、相対湿度50%の条件で16時間状態調節を行った後、23℃、相対湿度50%の雰囲気下、つかみ具間距離:114mm、試験速度:5mm/sの条件で引張強度測定を行なった。
(2)曲げ強度
ISO 178法に準拠して測定を行った。具体的には次のように測定を行った。PPS樹脂組成物ペレットを、熱風乾燥機を用いて130℃で3時間乾燥した後、シリンダー温度:310℃、金型温度:145℃に設定した住友重機製射出成形機(SE−50D)に供給し、ISO20753に規定されるタイプA1試験片形状の金型を用いて、中央平行部の断面積を通過する溶融樹脂の平均速度が400±50mm/sとなる条件で射出成形を行い試験片を得た。この試験片の中央平行部を切り出し、タイプB2試験片を得た。この試験片を、23℃、相対湿度50%の条件で16時間状態調節を行った後、23℃、相対湿度50%の雰囲気下、スパン64mm、試験速度:2mm/sの条件で曲げ強度測定を行なった。
(3)流動性
1mm厚みのスパイラルフロー金型を用いて、シリンダー温度320℃、金型温度140℃、射出速度230mm/sec、射出圧力98MPa、射出時間5sec、冷却時間15secの条件で成形し、流動長測定を行なった(使用射出成形機:住友重機製”SE−30D”)。この値が大きいほど流動性に優れる。
(4)ウエルド強度
両端にゲートを有し、試験片中央部付近にウエルドラインを有するASTM4号ダンベル片(1.6mmt)を、射出成形機を用いてシリンダー温度320℃、金型温度135℃の条件で成形した。成形片を100本成形し金型を強制的に汚染させた後、測定用のサンプルを10本取得し、試験速度:10mm/min、つかみ具間距離:64mmの条件で引張強度測定を行なった。
(5−1)寸法安定性−1
住友重機製射出成形機(SE−30D)を使用して、図1に示す円筒部を有する成形品を成形した。成形条件は、シリンダー温度320℃、金型温度130℃、充填時間0.4秒、保圧力40MPa、その他条件は一般的な成形条件で成形した。該成形品のゲートから遠い円筒開口部の端面から10mmの部位の内径真円度を測定し、この値を寸法安定性−1とした。測定は、ミツトヨ製三次元寸法測定機を使用し、JIS B0621に準拠して行なった。80μm以下であれば実用上問題のない製品レベルといえるが、この値が小さいほど寸法安定性に優れ、好ましい。
(5−2)寸法安定性−2
前述の寸法安定性−1の測定を10サンプルについて実施し、その測定値の最大値と最小値の差を寸法安定性−2とした。この値は同一の成形条件にて成形した際の成形バラツキを示しており、10μm以下であれば実用上問題のない製品レベルといえるが、この値が小さいほど寸法安定性に優れ、好ましい。
(6−1)耐不凍液性−1
不凍液は、フォルクスワーゲン純正LLC“G13”を、蒸留水で40体積%水溶液に希釈して用いた。135℃の温度で、168時間、LLC 40体積%水溶液にISO 3167 A形ダンベル試験片(4mm厚み)の成形品を浸漬処理し、その成形品をISO 527−1,2法に準拠して引張強度の測定を行なった。そのときの強度保持率を対不凍液性−1とした。90%以上であれば実用上問題のない製品レベルといえるが、この値が高いほど耐不凍液性に優れ、好ましい。
(6−2)耐不凍液性−2
135℃の温度で、168時間、LLC 40体積%水溶液に図1に示す円筒部を有する成形品を浸漬処理し、その成形品の内径真円度測定を、(5−1)と同様にして行なった。寸法安定性−1との差が5μm以下であれば実用上問題のない製品レベルといえるが、この値が小さいほど耐不凍液性に優れ、好ましい。
(7)耐冷熱衝撃性
シリンダー温度320℃、金型温度140℃の条件で金属ブロックをインサート成形した、図2に示す金属インサート成形品を用いた。これを130℃×1時間で処理後、−40℃×1時間で処理することを1回として、冷熱衝撃処理し、5回毎に目視によりクラックの発生有無を確認した。クラック発生が認められた冷熱衝撃処理数を耐冷熱衝撃性とした。30回以上クラックが発生しなければ実用上問題のない製品レベルといえるが、クラック発生までの処理回数が多いほど耐冷熱衝撃性に優れ、好ましい。
[PPS樹脂組成物の製造]
シリンダー温度を320℃、スクリュー回転数を400rpmに設定した、26mm直径の中間添加口を有する2軸押出機(東芝機械(株)製TEM−26)を用いて、参考例1〜2で得たPPS樹脂(A)100重量部および(C)添加剤を表1、表2に示す重量比で原料供給口から添加して溶融状態とし、(B)無機充填材を表1、表2に示す重量比で中間添加口から供給し、吐出量30kg/時間で溶融混練してペレットを得た。このペレットを用いて下記の各特性を評価した。その結果を表1、および表2に示す。
Figure 0006707810
Figure 0006707810
かくして得られるPPS樹脂組成物を射出成形して得られる成形品は、寸法安定性、耐冷熱衝撃性、耐不凍液性に優れるため、自動車冷却モジュールに有用に用いられる。
1.スプル
2.ランナー
3.ゲート
4.真円度評価用成形品
5.真円度測定部位
6.インサート金属
7.ゲート
8.金属インサート成形品

Claims (4)

  1. (A)ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対し、(B−1)グリシジル基を有するオレフィン系共重合体1.5〜3.5重量部、(B−2)極性官能基を有しないオレフィン系共重合体1.5〜3.5重量部、ならびに(C)ガラス繊維および炭酸カルシウムを合わせて150〜250重量部を配合してなるポリフェニレンスルフィド樹脂組成物を射出成形してなるハウジング、バルブ、および少なくとも3つ以上のパイプを組み合わせてなる自動車用冷却モジュール。
  2. ポリフェニレンスルフィド樹脂組成物に含まれる(C−3)マイカの配合量が、ポリフェニレンスルフィド樹脂100重量部に対して5重量部未満である請求項1記載の自動車用冷却モジュール。
  3. ポリフェニレンスルフィド樹脂が、(a)真空下320℃×2時間加熱溶融した際に揮発するガス発生量が0.3重量%以下、(b)550℃で灰化させたときの灰分量が0.3重量%以下、(c)250℃で5分間、20倍重量の1−クロロナフタレンに溶融してポアサイズ1μmのPTFEメンブランフィルターで熱時加圧濾過した際の残渣量が4重量%以下であるポリフェニレンスルフィド樹脂である請求項1または2記載の自動車用冷却モジュール。
  4. 自動車冷却モジュールの、ハウジング内部に流れる不凍液の流量および流路が、前記ハウジングに内包されたバルブの開閉により制御される請求項1〜3のいずれかに記載の自動車冷却モジュール。
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