JP6781030B2 - L−カルノシン誘導体またはその塩、及びl−カルノシンまたはその塩の製造方法 - Google Patents
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X3、およびX4は、それぞれ、酸であり、
oは0以上1以下の範囲の数であり、pは0以上1以下の範囲の数であり、o+pは0以上2以下の範囲となり、o+pが0を超える場合にL−カルノシン塩となる。)で示されるL−カルノシンまたはその塩は、組織修復促進作用、免疫調整作用、抗炎症作用を有していることから、医薬品や健康食品などの需要が高まっている。また、L−カルノシンは、容易に金属とキレート結合をつくることから、亜鉛と錯形成したポラプレジンクなどの抗潰瘍薬、味覚障害治療薬へ応用されている。
溶媒中で下記式(1)
R1は、炭素数1〜6のアルキル基である。)で示されるN−カルバメート保護−カルボキシ無水物と、
下記式(2)
R2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換基を有していてもよいベンジル基であり、
X1、およびX2は、それぞれ、酸であり、
mは0以上1以下の範囲の数であり、nは0以上1以下の範囲の数であり、m+nは0以上2以下の範囲となり、m+nが0を超える場合にL−ヒスチジン化合物塩となる。)で示されるL−ヒスチジン化合物またはその塩とを、塩基の存在下で反応させた後、反応系内に酸を添加して脱炭酸反応および脱カルバメート反応を行うことにより、
下記式(4)
X3、およびX4は、それぞれ、酸であり、
oは0以上1以下の範囲の数であり、pは0以上1以下の範囲の数であり、o+pは0以上2以下の範囲となり、o+pが0を超える場合にL−カルノシン塩となる。)で示されるL−カルノシンまたはその塩を製造する方法である。
溶媒中で下記式(1)
R1は、炭素数1〜6のアルキル基である。)で示されるN−カルバメート保護−カルボキシ無水物と、
下記式(2)
R2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換基を有していてもよいベンジル基であり、
X1、およびX2は、それぞれ、酸であり、
mは0以上1以下の範囲の数であり、nは0以上1以下の範囲の数であり、m+nは0以上2以下の範囲となり、m+nが0を超える場合にL−ヒスチジン化合物塩となる。)で示されるL−ヒスチジン化合物またはその塩とを、塩基の存在下で反応させた後、反応系内に酸を添加して脱炭酸反応を行うことにより、
下記式(3)
R1は、前記式(1)におけるものと同義であり、
R2は、前記式(2)におけるものと同義であり、
X5は、酸であり、
qは0以上1以下の範囲の数であり、qが0を超える場合にN−カルバメート保護−L−カルノシン誘導体塩となる。)
で示されるN−カルバメート保護−L−カルノシン誘導体またはその塩を製造する方法である。
下記式(4)
X3、およびX4は、それぞれ、酸であり、
oは0以上1以下の範囲の数であり、pは0以上1以下の範囲の数であり、o+pは0以上2以下の範囲となり、o+pが0を超える場合にL−カルノシン塩となる。)
で示されるL−カルノシンまたはその塩を製造する方法である。
本発明においては、下記式(1)
R1は、炭素数1〜6のアルキル基である。)で示されるN−カルバメート保護−カルボキシ無水物(以下、単に、「N−カルバメート保護−カルボキシ無水物」とする場合もある。)を原料とすることを最大の特徴とする。
本発明においては、
下記式(2)
R2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換基を有していてもよいベンジル基であり、
X1、およびX2は、それぞれ、酸であり、
mは0以上1以下の範囲の数であり、nは0以上1以下の範囲の数であり、m+nは0以上2以下の範囲となり、m+nが0を超える場合にL−ヒスチジン化合物塩となる。)で示されるL−ヒスチジン化合物またはその塩をもう一方の原料とする。
前記L−ヒスチジン化合物塩は、反応系内では塩が分離して前記L−ヒスチジン化合物となる。そのため、前記L−ヒスチジン化合物塩を原料とすることもできる。前記L−ヒスチジン化合物塩を原料とし、特定の塩基、例えば、特定の有機塩基を使用した場合には、反応系内を自然に酸性雰囲気とすることもできる。この場合、後処理等が容易となる。このことについては、下記の脱炭酸反応の説明において、詳細に記載する。
本発明おいては、前記N−カルバメート保護−カルボキシ無水物と前記L-ヒスチジン化合物とは、塩基の存在下で反応させる。使用する塩基は、特に制限されるものではなく、無機塩基、有機塩基の何れであってもよい。
(原料化合物の反応)
本発明において、N−カルバメート保護−カルボキシ無水物と、L-ヒスチジン化合物またはその塩との反応条件は、塩基の存在下で反応を実施すれば、特に制限されるものではない。その中でも、以下の条件で実施することが好ましい。
塩基の存在下で反応を実施するには、溶媒を用いることが好ましい。使用できる溶媒としては、塩基の存在下でN−カルバメート保護−カルボキシ無水物と、L−ヒスチジン化合物またはその塩とが、溶解できる溶媒を使用することが好ましい。
本発明において、塩基の存在下、N−カルバメート保護−カルボキシ無水物とL−ヒスチジン化合物と反応させるには、前記塩基、前記N−カルバメート保護−カルボキシ無水物、及び前記L−ヒスチジン化合物またはその塩を反応容器内(反応系内)で混合攪拌して接触させればよい。これら成分を反応系内に導入する方法は、特に制限されるものではなく、以下の方法が採用できる。
N−カルバメート保護−カルボキシ無水物と、L−ヒスチジン化合物またはその塩との反応温度は、特に制限されるものではないが、反応時間、収量、不純物副生の抑制等を考慮すると、−78〜100℃とすることが好ましく、さらには−20〜70℃とすることが好ましい。
また、反応時間は、原料の消費、生成物の量等を確認して適宜決定すればよいが、前記条件を採用するのであれば、0.1〜72時間で十分に反応が進行する。前記L−ヒスチジン化合物塩、及び有機塩基を使用した場合には、反応時間は比較的長くなる。その他、反応雰囲気も、特に制限されるものではなく、空気雰囲気下、又は不活性ガス雰囲気下でじしすることができる。また、大気圧下、減圧下、加圧下で反応させればよい。
前記原料化合物の反応から反応系内を酸性雰囲気として、脱炭酸反応、および脱カルバメート反応(以下、脱カルバメート反応を単に「脱保護反応」とする場合もある)を行う方法について説明する。
この場合、前記反応物に酸を接触させて、前記式(3)で示されるL−カルノシン誘導体またはその塩を製造することができる。
前記反応物から前記L−カルノシン誘導体またはその塩を製造するために使用する酸は、特に制限されるものではなく、公知のものが使用できる。具体的には、塩化水素、硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、またはリン酸等が挙げられる。これら酸は、水溶液の状態で使用することができる。前記L−カルノシン誘導体塩は、この使用した酸によって決まる。
酸の使用量は、特に制限されるものではないが、前記反応物1モルに対して、酸を1〜10〜モル使用することが好ましい。中でも、前記酸と前記反応液との混合液のpHが3以上6以下となる範囲の使用量とすることが好ましい。なお、前記反応系内pHは、使用する酸全量を反応系内に導入した際のpHの範囲である。
前記L−ヒスチジン化合物塩を使用する場合、例えば、塩酸塩のようなL−ヒスチジン化合物塩を原料として用いた場合には、原料化合物の反応において、反応系内に塩酸が存在するようになる。そして、この塩酸とさらに塩を形成するような塩基、例えば、トリエチルアミンのような有機塩基を使用した場合には、トリエチルアミン塩酸塩が形成され、反応系内が自ずと酸性雰囲気となる場合がある。この場合には、酸を反応系内にさらに加えなくとも、脱炭酸反応を進めることができる。ただし、この場合であっても、酸を反応系内にさらに加えることにより、脱炭酸反応を短時間で完了させることができる。
本発明においては、前記式(3)で示されるL−カルノシン誘導体またはその塩と酸とを接触させることにより、該L−カルノシン誘導体またはその塩のR1、およびR2(水素原子を除く)の脱保護反応を行い、L−カルノシンまたはその塩を製造することができる。
使用する酸は特に制限されるものではなく、前記脱炭酸反応で例示した酸が挙げられる。中でも、塩化水素、硫酸、メタンスルホン酸が好ましい。また、これら酸は、水溶液の状態で反応系内に導入することができる。
脱保護反応は、溶媒中で実施することができる。前記L−カルノシン誘導体を取り出した後、脱保護反応を実施する場合には、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール溶媒;1,4−ジオキサン、THF等のエーテル系溶媒、水を使用することができる。これら溶媒は、単独で使用しようすることもできるし、複数種類の混合溶媒として使用することもできる。以上の溶媒の中も、操作性等を考慮すると、アルコール、水、またはアルコールと水との混合溶媒を使用することが好ましい。混合溶媒を使用する場合には、特に制限されるものではないが、アルコールと水との体積比(アルコール/水)は、23℃において、0.01/1〜100/1の範囲とすることが好ましい。
脱保護反応を行うに際し、反応系内へ前記L−カルノシン誘導体またその塩、及び酸を導入する手順は、特に制限されるものではない。例えば、必要に応じて溶媒で希釈した前記L−カルノシン誘導体またはその塩、必要に応じて希釈した前記酸を同時に反応系内に導入し、攪拌混合する方法、又は、何れか一方を必要に応じて溶媒で希釈して先ず反応系内へ入れておき、必要に応じて溶媒で希釈したもう一方を反応系内へ添加して攪拌混合することもできる。中でも、不純物を低減するという点では、必要に応じて前記溶媒で希釈した前記L−カルノシン誘導体またはその塩を先に反応系内に導入し、それに、必要に応じて前記溶媒で希釈した前記酸を添加して、攪拌混合する方法を採用することが好ましい。
以上のような方法により、前記L−カルノシン誘導体またはその塩の脱保護反応を実施し、L−カルノシンまたはその塩を製造することができる。反応終了後は、公知の方法に従いL−カルノシンまたはその塩を取り出すことができる。例えば、抽出、再結晶、カラム精製等の方法により、L-カルノシンまたはその塩を分離精製することができる。この際、塩基、水等の洗浄等することにより、L-カルノシン塩は、L−カルノシンとすることができる。
N−カルバメート保護−カルボキシ無水物として、3−tert−ブチロキシカルボニルー4,5−ジヒドロー1,3−オキサジンー2,6−ジオン(以下、N−Boc−NCAと略す場合もある)を使用した。
N−Boc−NCAの分析結果
IR(KBr):1730cm−1。
1H−NMR(90MHz、CDCl3):1.58−1.56(s、9H)、2.94−2.80(t、2H)、3.98−3.84(t、2H)。
L−ヒスチジン(360mg、2mmol)の酢酸エチル/水(5mL/5mL)溶液に、24wt%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを10.5に調整した。この混合溶液に、N−Boc−NCA(500mg、2mmol)を添加した。反応系内のpHは10.5±0.5を維持するように、前記水酸化ナトリウム水溶液を添加した。さらに、反応系内のpHが10.5±0.5のまま3時間反応を行った。
前記反応で得られた反応液に、濃塩酸を加え、反応系内のpHを4.5とし、pHが4.5±0.5を維持するように、濃塩酸を加えて1時間、脱炭酸反応を行った。
反応終了後、水層を酢酸エチル洗浄、n−ブタノールにて抽出し、得られたn−ブタノール溶液を希塩酸(pH:4.0)洗浄で、乾燥、減圧濃縮することにより、N−Boc−L−カルノシン(210mg、57%)を結晶物として得た。
得られたN−Boc−L−カルノシンの分析値は以下の通りであった。
融点(mp):70℃
IR(KBr):2984、1533cm−1
1H−NMR(90MHz、DMSO)1.43(S、9H)、3.45−2.13(m、6H)、4.50−4.41(m、1H)、6.74−6.59(m、1H)、7.02(m、1H)、8.23−8.13(m、3H)、9.81(m、1H)
以上の結果より、N−Boc−L−カルノシンが生成できたことを確認した。
実施例1で使用したのと同じN−Boc−NCAを原料にした。
L−ヒスチジンメチルエステル・2塩酸塩(560mg、2mmol)のTHF(5ml)溶液に、トリエチルアミン(0.47g、4mmol)を室温で加え、同温で3時間攪拌した。
THFを留去し、生成物を塩化メチレン抽出した。抽出液を水で洗浄後減圧濃縮し、N−tert−ブトキシカルボニル−β―アラニル−L−ヒスチジン メチルエステル(Boc−Car−OMe)(350mg、44%)を結晶物として得た。
得られたBoc−Car−OMeの分析値は以下の通りであった。
IR(KBr):1694、1532cm−1
1H−NMR(90MHz、DMSO):1.36(s、9H)、2.32−2.16(t、2H)、3.34−2.82(m、4H)、3.58(s、3H)、4.86(m、1H)、6.77(m、2H)、7.50−8.25(m、3H)
以上の結果より、Boc−Car−OMeが生成できたことを確認した。
IR(KBr):3026、1649cm−1
1H−NMR(90MHz、D2O):3.33−2.68(m、6H)、7.36(m、1H)、8.65(m、1H)
以上の結果より、L−カルノシン塩酸塩が生成できたことを確認した。
Claims (5)
- 溶媒中で下記式(1)
R1は、炭素数1〜6のアルキル基である。)で示されるN−カルバメート保護−カルボキシ無水物と、
下記式(2)
R2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換基を有していてもよいベンジル基であり、
X1、およびX2は、それぞれ、酸であり、
mは0以上1以下の範囲の数であり、nは0以上1以下の範囲の数であり、m+nは0以上2以下の範囲となり、m+nが0を超える場合にL−ヒスチジン化合物塩となる。)
で示されるL−ヒスチジン化合物またはその塩とを、
塩基の存在下で反応させた後、反応系内に酸を添加して脱炭酸反応および脱カルバメート反応を行うことにより、
下記式(4)
X3、およびX4は、それぞれ、酸であり、
oは0以上1以下の範囲の数であり、pは0以上1以下の範囲の数であり、o+pは0以上2以下の範囲となり、o+pが0を超える場合にL−カルノシン塩となる。)
で示されるL−カルノシンまたはその塩を製造する方法。 - 溶媒中で下記式(1)
R1は、炭素数1〜6のアルキル基である。)で示されるN−カルバメート保護−カルボキシ無水物と、
下記式(2)
R2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換基を有していてもよいベンジル基であり、
X1、およびX2は、それぞれ、酸であり、
mは0以上1以下の範囲の数であり、nは0以上1以下の範囲の数であり、m+nは0以上2以下の範囲となり、m+nが0を超える場合にL−ヒスチジン化合物塩となる。)
で示されるL−ヒスチジン化合物またはその塩とを、
塩基の存在下で反応させた後、反応系内に酸を添加して脱炭酸反応を行うことにより、
下記式(3)
R1は、前記式(1)におけるものと同義であり、
R2は、前記式(2)におけるものと同義であり、
X5は、酸であり、
qは0以上1以下の範囲の数であり、qが0を超える場合にN−カルバメート保護−L−カルノシン誘導体塩となる。)
で示されるN−カルバメート保護−L−カルノシン誘導体またはその塩を製造する方法。 - 前記脱炭酸反応を、pHが3以上7未満の範囲で実施することを特徴とする請求項2に記載の方法。
- 請求項2、又は3に記載の方法により前記式(3)で示されるN−カルバメート保護−L−カルノシン誘導体またはその塩を製造した後、該N−カルバメート保護−L−カルノシン誘導体またはその塩と、酸とを接触させて脱カルバメート反応を行うことにより、
下記式(4)
X3、およびX4は、それぞれ、酸であり、
oは0以上1以下の範囲の数であり、pは0以上1以下の範囲の数であり、o+pは0以上2以下の範囲となり、o+pが0を超える場合にL−カルノシン塩となる。)
で示されるL−カルノシンまたはその塩を製造する方法。 - 前記脱カルバメート反応を、pHが0.5以上3未満の範囲で実施することを特徴とする請求項4に記載の方法。
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