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JP6776028B2 - 床シート - Google Patents

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JP6776028B2
JP6776028B2 JP2016134192A JP2016134192A JP6776028B2 JP 6776028 B2 JP6776028 B2 JP 6776028B2 JP 2016134192 A JP2016134192 A JP 2016134192A JP 2016134192 A JP2016134192 A JP 2016134192A JP 6776028 B2 JP6776028 B2 JP 6776028B2
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Description

本発明は、床面に敷設される床シートに関する。
従来、床材として、シート状の床シートが知られている。床シートは、新規又は既存の構造物の床面に敷設される。
通常、床シートは、粘着剤や接着剤を用いて床面に貼り付けられるが、床シートの貼り替えを行い難いという問題点がある。
特許文献1には、裏面に自己吸着性を有する滑り止め層が設けられた塩化ビニル製床材が開示されている。
かかる塩化ビニル製床材は、自己吸着性を有する滑り止め層が設けられているので、粘着剤や接着剤を用いて床面に接着する床材に比して、容易に敷設することができ、また、撤去後に粘着剤などが残存することもない。
ところで、自己吸着性の滑り止め層が設けられている床材を床面から引き剥がす際には、床材の端部を引き起こし、ここを起点として床材を持ち上げて捲っていき、床材全体を床面から取り外す。
前記床材は、床面に接着されていないので、床材と床面との界面における両者の離反性には優れているが、さらに、床面から取り外し易い床材の開発が求められている。特に、比較的大面積のシート状の床材にあっては、床面から取り外し難い。
また、床面に敷設した後の床シートは、その端部から自然に捲れないように納まりの良いものが好ましい。
特開2003−136555号公報
本発明の目的は、容易に床面から取り外すことができる床シートを提供することである。
本発明の床シートは、平面視略長方形状のシート本体と、前記シート本体の裏面に設けられ且つ床面に吸着する吸着部と、を有し、前記シート本体が、最裏面に基材層を有し、前記吸着部が、前記基材層の裏面から突設され且つ前記シート本体の長手方向に延びる平面視帯状の複数の凸部から形成されており、前記長手方向に沿って湾曲させたときの表面側への曲げ剛性が裏面側への曲げ剛性よりも大きい。
本発明の好ましい床シートは、前記基材層が、不織布又は織布から形成され、前記吸着部が、発泡樹脂から形成されている。
本発明の好ましい床シートは、前記シート本体が、軟質合成樹脂を含む樹脂層と、前記樹脂層の表面側に設けられた、硬化性樹脂を含む傷付き防止層と、を有する。
本発明の床シートは、容易に床面から取り外すことができるので、貼り替え作業を容易に行える。
本発明の床シートの平面図。 同床シートの一部を省略した拡大背面図。 図1のIII−III線で切断した概略拡大断面図。 床シートが離型シートに添付された離型シート付き床シートの概略拡大断面図。 シート本体を表裏面側へ湾曲させた状態を示す参考側面図。 23℃におけるシート本体の状態を示す参考側面図。 第1例の層構成からなるシート本体を有する床シートの拡大断面図(図1のIII−III線と同様な箇所で切断)。 第2例の層構成からなるシート本体を有する床シートの拡大断面図(図1のIII−III線と同様な箇所で切断)。 第3例の層構成からなるシート本体を有する床シートの拡大断面図(図1のIII−III線と同様な箇所で切断)。 第4例の層構成からなるシート本体を有する床シートの拡大断面図(図1のIII−III線と同様な箇所で切断)。 第5例の層構成からなるシート本体を有する床シートの拡大断面図(図1のIII−III線と同様な箇所で切断)。 ガラス不織布の平面図。 図12のXIII−XIII線で切断した拡大断面図。 ガラス織布の平面図。 図14のXV−XV線で切断した拡大断面図。 図7の床シートの一部分をさらに拡大した詳細拡大断面図。 図10の床シートの一部分をさらに拡大した詳細拡大断面図。 床シートを床面から取り外す際の状態を説明した参考図。 変形例に係る離型シート付き床シートを裏面側から見た背面図。 図19のXX−XX線で切断した概略拡大断面図。 さらなる変形例に係る離型シート付き床シートの概略拡大断面図。 床シートの曲げ剛性の測定方法を示す参考側面図。
以下、本発明について、適宜図面を参照しつつ説明する。
本明細書において、ある層又は部材の「表面」は、床シートを敷設する床面から遠い側の面を指し、「裏面」は、その反対側(床シートを敷設する床面に近い側)の面を指す。
本明細書において、「〜」で表される数値範囲は、「〜」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
また、各図における、厚み及び大きさなどの寸法は、実際のものとは異なっていることに留意されたい。
[床シートの概要]
図1は、床シートの平面図であり、図2は、同床シートの拡大背面図である。平面図は、床シートの表面側から見たものであり、背面図は、その裏面側から見たものである。ただし、図2において、床シートの左側を省略している。図3は、床シートを厚み方向に切断した概略拡大断面図である。なお、図3において、シート本体の層構成は不図示である(図4も同様)。
図1に示すように、床シートAは、例えば、平面視略長方形状の枚葉状に形成されている。もっとも、枚葉状の床シートAは、平面視略正方形状、平面視略六角形状などに形成されていてもよい(図示せず)。前記平面視略長方形状又は略正方形状の床シートの具体的な寸法としては、例えば、第1方向の長さL1×第2方向の長さL2=100mm〜2000mm×100mm〜2000mm、好ましくは、第1方向の長さL1×第2方向の長さL2=1000mm以下×1000mm以下などが例示される。
図示例のような平面視略長方形状の床シートAは、例えば、第1方向の長さL1×第2方向の長さL2=600mm〜1500mm×100mm〜300mmであり、好ましくは、第1方向の長さL1×第2方向の長さL2=700mm〜1200mm×100mm〜200mmである。前記第2方向は第1方向に対して直交する方向である。平面視略長方形状の床シートAは、例えば、第1方向の長さL1:第2方向の長さL2=2:1〜10:1であり、好ましくは、4:1〜8:1である。
なお、本発明において、床シートAは、平面視長尺帯状に形成されていてもよい(図示せず)。本明細書において、長尺帯状は、第1方向の長さL1が第2方向の長さL2に比して十分に長い長方形状であり、例えば、第1方向の長さL1が第2方向の長さL2の5倍以上、好ましくは10倍以上である。
長尺帯状の床シートAの具体的な寸法としては、第2方向の長さL2が、例えば、500mm〜4000mmであり、第1方向の長さL1が、20m以上である。
長尺帯状の床シートAは、通常、施工現場において、所望の形状に裁断して使用される。
本発明の床シートAは、柔軟性を有する。床シートAの柔軟性の程度としては、例えば、床シートAの裏面側を巻き芯に向けて、直径10cmの巻き芯の周囲にロール状に巻き付け可能である。
図示例のような枚葉状の床シートAは、その複数を重ね合わせた状態で、又は、個々にロール状に巻いた状態で保管・運搬される。また、長尺帯状の床シートAは、通常、ロール状に巻いた状態で保管・運搬される。もっとも、床シートAをロール状に形成する際には、所望の巻き芯(この巻き芯は、直径10cmのものに限定されない)に巻き付けてもよく、或いは、巻き芯を用いずに床シートAのみをロール状に巻いてもよい。
床シートAの全体の厚みは、特に限定されず、例えば、1mm〜5mmであり、好ましくは、1.5mm〜3mmである。床シートAの厚みが小さすぎると軟らかく、厚みが大きすぎると硬くなる傾向にあるが、前記範囲であれば、引き剥がしに適した硬さの床シートAとなる。
本発明の床シートAは、図2及び図3に示すように、シート本体1と、吸着部2と、を有し、表面側への曲げ剛性が裏面側への曲げ剛性よりも大きい。よって、裏面側よりも表面側に曲げにくい。
吸着部2は、シート本体1の裏面に設けられている。吸着部2は、床シートAを床面に対して吸着固定し、滑り止め効果をもたらすために設けられている。つまり、吸着部2は、床シートAが床面の面方向及び鉛直方向にずれないように、床シートAを固定する。なお、床面は、床シートAを敷設する場所である。吸着部2は、シート本体1の裏面に設けられており、従って、吸着部2の裏面は、床シートAの最裏面を構成している。
吸着部2が床面に剥離可能な状態で密着することにより、床シートAが床面に対してずれず、また、床シートAを床面から取り外すことができる。
尚、吸着部2は、本発明の目的から言って、繰り返し使用が可能なものとすることが望ましい。吸着部2を繰り返し使用が可能なものとすることによって、床シートAを取り外しが容易かつ便利なものとなる。
なお、図4に示すように、前記吸着部2の保護又は吸着部2に異物が付着しないようにし、また保管・搬送時に互いに吸着することを防止して保管しやすくするため、必要に応じて、離型シートBが床シートAの裏面に添付されていてもよい。離型シートBについては、後述する。
[シート本体]
シート本体1は、床シートAを構成する主要な部材であり、床シートAと同様な柔軟性を有する。
前記シート本体1は、表面側への曲げ剛性が裏面側への曲げ剛性よりも大きい。
かかるシート本体1は、図5(a)に示すように、そのシート本体1の第1方向の第1側の端部1a及びその周辺を平坦面上(平坦面は不図示)に置き、第1方向の第2側の端部1bを表面側に所定の力で引き上げた際に湾曲し、同様に、第1方向の第2側の端部1b及びその周辺を平坦面上に置き、第1方向の第1側の端部1aを表面側に所定の力で引き上げた際に湾曲する。
また、シート本体1は、図5(b)に示すように、そのシート本体1の第1方向の第1側の端部1a及びその周辺を平坦面上(平坦面は不図示)に置き、第1方向の第2側の端部1bを裏面側に所定の力で引き下げた際に湾曲し、同様に、第1方向の第2側の端部1b及びその周辺を平坦面上に置き、第1方向の第1側の端部1aを裏面側に所定の力で引き下げた際に湾曲する。なお、第1方向の第1側と第2側は、第1方向において対向する側である。
表面側への曲げ剛性が裏面側への曲げ剛性よりも大きい前記シート本体1は、図5に示すように、第1方向の第2側の端部1bを表面側に所定の力で引き上げた際の表面側への湾曲度合いが、第2側の端部1bを裏面側に前記と同じ力で引き下げた際の裏面側への湾曲度合いよりも小さい。第1方向の第1側の端部1aを表面側に所定の力で引き上げた際の表面側への湾曲度合いについても、第1側の端部1aを裏面側に前記と同じ力で引き下げた際の裏面側への湾曲度合いよりも小さい。
なお、特に図示しないが、シート本体1の第2方向の第1側の端部及び第2側の端部においても同様に、第2方向の第1側及び第2側の端部を表面側に所定の力で引き上げた際の表面側への各湾曲度合いが、第1側及び第2側の端部を裏面側に前記と同じ力で引き下げた際の裏面側への各湾曲度合いよりも小さい。
つまり、図5(a)及び(b)の対比から明らかなように、前記シート本体1は、同じ力で表裏面側へ曲げ応力を加えた際に、表面側へ湾曲させ難く、裏面側へ湾曲させ易い。
前記表面側への曲げ剛性及び前記裏面側への曲げ剛性は、例えば、シート本体1の表面側への垂下量及び裏面側への垂下量で評価できる。
つまり、シート本体1の左側を固定し、右側を自由端として自重に従って垂下させること、シート本体1は湾曲し、右側の端部が下がるが、その垂下量が大きいほど曲がり易くて曲げ剛性が小さく、垂下量が小さいほど曲がり難くて曲げ剛性が大きいと評価できる。垂下量は、床シートの一方側の端部を台座上に固定し、その反対側の端部を20cm分だけ台座の端から突出させ、その反対側の端部の垂れ下がり長さを計測することによって得られる。垂下量の詳しい測定方法は、後述する実施例の通りであり、それを参照されたい。
シート本体1の表面側への垂下量及び裏面側への垂下量は、表面側への垂下量が裏面側への垂下量よりも小さいことを条件として特に限定されない。
表面側への垂下量は、例えば、50mm〜160mmであり、好ましくは、55mm〜150mmであり、より好ましくは、60mm〜140mmであり、さらに好ましくは、65mm〜130mmであり、最も好ましくは、65mm〜100mmである。
裏面側への垂下量は、例えば、60mm〜180mmであり、好ましくは、70mm〜170mmであり、より好ましくは、80mm〜160mmであり、さらに好ましくは、90mm〜150mmであり、最も好ましくは、100mm〜130mmである。
垂下量の差(裏面側への垂下量−表面側への垂下量)は、例えば、5mm〜70mmであり、好ましくは、10mm〜60mmであり、より好ましくは、15mm〜55mmであり、さらに好ましくは、20mm〜55mmであり、最も好ましくは、30mm〜50mmである。
表面側への垂下量及び裏面側への垂下量が前記範囲のシート本体1を用いることにより、床面に対する剥離性に優れ、さらに、不陸追従性に優れた床シートAを構成できる。
なお、本実施形態では、吸着部2は柔軟性を有する発泡樹脂などから形成され、かかる吸着部2は床シートAの曲げ剛性に実質的に寄与しない。つまり、吸着部の有無は床シートAの曲げ剛性に実質的に影響を与えないので、床シートAの曲げ剛性とシート本体1の曲げ剛性は同視できる。それ故、上記シート本体1の表面側への垂下量及び裏面側への垂下量は、床シートAの表面側への垂下量及び裏面側への垂下量とも言える。
また、前記シート本体1は、23℃において両端部を裏面側とし且つ中央部を表面側とした湾曲状である(以下、下向きの湾曲状という場合がある)。好ましくは、前記シート本体1は、23℃において両端部を裏面側とし且つ中央部を表面側とした湾曲状であり、0℃において平坦状である。
シート本体1は、温度23℃、湿度60%RHの下で、図6に示すように第1方向の第1側の端部1a及び第2側の端部1bを裏面側に且つその間である中央部1cを表面側とした湾曲状となっている。なお、特に図示しないが、シート本体1は、23℃下で、シート本体1の第2方向においても同様に、第2方向の第1側の端部及び第2側の端部を裏面側に且つその間である中央部を表面側とした湾曲状となっている。標準的な温度である23℃で下向きに湾曲するシート本体1を有する床シートAは、目地隠蔽性に優れ、端部の浮きを防止でき、納まり良く綺麗な仕上がりで床面に敷設できる。
[シート本体の層構成]
シート本体1の層構成は、表面側への曲げ剛性が裏面側への曲げ剛性よりも大きいことを条件として、特に限定されない。
例えば、シート本体1の最表面を構成する層は、樹脂材料から形成される。シート本体1の最表面は、平滑状でもよく、所望の凹凸状であってもよい。凹凸状の最表面は、例えば、少なくとも最表面を構成する層にエンボス加工を施すことによって形成できる。
図7乃至図11に示すように、シート本体1は、裏面側から表面側へ順に、裏層3、中間基材層4、及び表層5を有する。
裏層3は、中間基材層4を基準にして、それよりも裏面側に配置される層であり、表層5は、中間基材層4を基準にして、それよりも表面側に配置される層である。
裏層3としては、裏側樹脂層32、裏側基材層31などが挙げられ、これらは1つ又は2つ以上選択して積層される。好ましくは、裏層3は、裏面側から表面側へ順に、裏側基材層31と裏側樹脂層32が積層されたものからなる。
表層5としては、傷付き防止層53、保護層52、化粧層51、表側樹脂層54などが挙げられ、これらは1つ又は2つ以上選択して積層される。好ましくは、表層5は、裏面側から表面側へ順に、化粧層51と傷付き防止層53又は保護層52が積層されたものからなる。
前記裏側樹脂層32及び表側樹脂層54は、それぞれ独立して、主成分樹脂として軟質合成樹脂を含むことが好ましい。特に、シート本体1は、軟質合成樹脂を主成分樹脂として含む裏側樹脂層32及び表側樹脂層54の少なくとも一方の樹脂層を主体として構成される。前記樹脂層を主体とするとは、シート本体1の全重量中で、樹脂層の重量割合が大きいことを意味する。
なお、本明細書において、軟質合成樹脂及び硬質合成樹脂は、JIS K6900(1994)のプラスチック−用語に記載の軟質プラスチック及び硬質プラスチックを意味する。
図7乃至図11は、様々な層構成のシート本体1を有する床シートAの拡大断面図である。なお、これらの床シートAの平面図は、図1と同様なので省略している。
図7における第1例のシート本体1は、裏面側から表面側へ順に、裏側基材層31と、裏側樹脂層32と、中間基材層4と、化粧層51と、保護層52と、傷付き防止層53と、を有する。これら各層は、接合されて一体化されている。図7に示す例において、必要に応じて、保護層52又は傷付き防止層53のいずれかを省略してもよい。図7に示す例において、必要に応じて、裏側基材層31を省略してもよい。
図8における第2例のシート本体1は、裏面側から表面側へ順に、裏側基材層31と、第1の裏側樹脂層321と、第2の裏側樹脂層322と、中間基材層4と、化粧層51と、保護層52と、傷付き防止層53と、を有する。これら各層は、接合されて一体化されている。図8に示す例において、必要に応じて、保護層52又は傷付き防止層53のいずれかを省略してもよい。図8に示す例において、必要に応じて、裏側基材層31を省略してもよい。
図9における第3例のシート本体1は、裏面側から表面側へ順に、第1の裏側樹脂層321と、裏側基材層31と、第2の裏側樹脂層322と、中間基材層4と、化粧層51と、保護層52と、傷付き防止層53と、を有する。これら各層は、接合されて一体化されている。図9に示す例において、必要に応じて、保護層52又は傷付き防止層53のいずれかを省略してもよい。
図10における第4例のシート本体1は、裏面側から表面側へ順に、裏側基材層31と、裏側樹脂層32と、中間基材層4と、表側樹脂層54と、化粧層51と、保護層52と、傷付き防止層53と、を有する。これら各層は、接合されて一体化されている。図10に示す例において、必要に応じて、保護層52又は傷付き防止層53のいずれかを省略してもよい。図10に示す例において、必要に応じて、裏側基材層31を省略してもよい。
図11における第5例のシート本体1は、裏面側から表面側へ順に、裏側基材層31と、裏側樹脂層32と、中間基材層4と、意匠性を有する表側樹脂層54と、保護層52と、傷付き防止層53と、を有する。これら各層は、接合されて一体化されている。図11に示す例において、必要に応じて、保護層52又は傷付き防止層53のいずれかを省略してもよい。図11に示す例において、必要に応じて、裏側基材層31を省略してもよい。
<裏側基材層>
裏側基材層31は、主としてシート本体1の最裏面を構成する層である。ただし、図9に示すように、裏側基材層31がシート本体1の最裏面を構成しない場合もある。シート本体1の最裏面に裏側基材層31を設けることにより、床シートAの端部が上向きに反ることなどを防止できる。また、裏側基材層31の裏面がシート本体1の最裏面を構成することにより、吸着部2の形成材料が裏側基材層31に含浸し、シート本体1に強固に接着した吸着部2を形成できる。
前記裏側基材層31としては、特に限定されないが、例えば、フェルト、不織布、織布、紙などが挙げられる。フェルトを構成する繊維の材質としては、特に限定されず、羊などの動物の毛;ポリエステル、ポリオレフィンなどの合成樹脂繊維;などが挙げられる。不織布や織布を構成する繊維の材質は、特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリオレフィンなどの合成樹脂繊維;ガラス、カーボンなどの無機繊維;天然繊維などが挙げられる。不陸吸収性、クッション性、吸音性及び加工性などに優れる点で、裏側基材層31としてフェルトを用いることが好ましい。
前記裏側基材層31の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.1mm〜1mmであり、好ましくは0.2mm〜0.6mmである。また、裏側基材層31の目付量は、特に限定されず、例えば、30g/m〜200g/mである。裏側基材層31の厚み又は目付量が小さすぎると、上反りを十分に抑制できないおそれがあり、一方、大きすぎると、裏側基材層31に吸着部2の形成材料が十分に含浸しないおそれがある。
<裏側樹脂層及び表側樹脂層>
裏側樹脂層32及び表側樹脂層54は、シート本体1の強度及び重量を構成する主たる層である。
裏側樹脂層32及び表側樹脂層54は、それぞれ独立して、発泡されている発泡体でもよく、或いは、発泡されていない非発泡体でもよい。床シートAにクッション性を付与する観点から、裏側樹脂層32及び表側樹脂層54の少なくとも何れか一方は、発泡体であることが好ましい。特に、表側樹脂層54の剛性度が裏側樹脂層32よりも剛性度が大きくなることから、裏側樹脂層32が発泡体で且つ表側樹脂層54が非発泡体であることが好ましい。表裏側で前記剛性度差を有する樹脂層を有するシート本体1は、下向きの湾曲状となり易い。
なお、図8及び図9に示すように、裏側樹脂層32が複数の樹脂層(図示例では、第1及び第2の裏側樹脂層321,322)から構成される場合、その全てが非発泡体で構成されていてもよいが、好ましくはその複数のうちの少なくとも1つの樹脂層が発泡体で構成される。例えば、図8及び図9に示す例では、(1)第1の裏側樹脂層321が非発泡体で構成され且つ第2の裏側樹脂層322が発泡体で構成される、(2)第1の裏側樹脂層321が発泡体で構成され且つ第2の裏側樹脂層322が非発泡体で構成される、(3)第1及び第2の裏側樹脂層321,322のいずれも発泡体で構成される。特に、第2の裏側樹脂層322(表側の樹脂層)の剛性度が第1の裏側樹脂層321(裏側の樹脂層)よりも剛性度が大きくなることから、第1の裏側樹脂層321を発泡体で構成し且つ第2の裏側樹脂層322を非発泡体で構成することが好ましい。かかる樹脂層を有するシート本体1は、下向きの湾曲状となり易い。なお、表側樹脂層54も、複数の樹脂層から構成されていてもよい。
前記裏側樹脂層32及び表側樹脂層54が発泡体である場合、その発泡倍率は特に限定されないが、例えば、1.1倍〜4倍であり、好ましくは、1.1倍〜2倍である。発泡倍率が余りに低いと、床シートAに実質的にクッション性を付与できず、一方、発泡倍率が余りに高いと、床シートAが厚み方向に変形し過ぎるようになる。
裏側樹脂層32及び表側樹脂層54の樹脂成分としては、特に限定されず、それぞれ独立して、従来公知のものを用いることができ、一般的には、熱可塑性樹脂が用いられ、さらに、軟質の熱可塑性樹脂が用いられる。
前記熱可塑性樹脂としては、塩化ビニルや塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などの塩化ビニル系樹脂;ポリオレフィン系樹脂;ウレタン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル系樹脂;エチレン−メタクリレート樹脂などのアクリル系樹脂;ポリアミド系樹脂;エステル系樹脂;オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどの各種エラストマー;ゴムなどが挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を併用できる。安価で且つ優れた可撓性及び耐久性を有し、さらに、後述する接合樹脂と接合し易く、加工性及び耐久性に優れる点から、裏側樹脂層32及び表側樹脂層54は、塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂とする樹脂層であることが好ましい。
また、裏側樹脂層32と表側樹脂層54の樹脂成分は、同種でもよいし、同じでもよいし、又は、異なっていてもよい。樹脂成分が同種とは、その樹脂成分の主たる繰り返し単位を構成するモノマーが同一であることを意味し、共重合モノマーを有する場合にはその共重合モノマーが異なる場合、及び/又は、重合度が異なる場合を含む。樹脂成分が同じとは、繰り返し単位(及び共重合モノマーを有する場合には、その共重合モノマーを含む)が同一であることを意味し、重合度が異なる場合を含む。
なお、本明細書において、主成分樹脂は、その層を構成する樹脂成分(ただし、添加剤を除く)の中で最も多い成分(重量比)をいう。主成分樹脂の量は、その層を構成する樹脂成分全体を100重量%とした場合、50重量%を超え、好ましくは、70重量%以上であり、より好ましくは80重量%以上である。主成分樹脂の量の上限は、100重量%である。主成分樹脂の量が100重量%未満である場合において、その層に含まれる主成分樹脂以外の樹脂は、特に限定されず、公知の樹脂成分を用いることができる。
前記塩化ビニル系樹脂としては、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法などで製造されたものを用いることができる。加工し易く且つ取り扱い易いことから、乳化重合法、又は、懸濁重合法で得られる塩化ビニル系樹脂が好ましい。これらの塩化ビニル系樹脂は、1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
好ましくは、裏側樹脂層32は、主成分樹脂としてサスペンション塩化ビニル系樹脂を含む。裏側樹脂層32をサスペンション塩化ビニル系樹脂で形成することにより、床シートAの強度を確保しつつ比較的厚みの小さい床シートAを構成できる。また、表側樹脂層54も、同様に、サスペンション塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂として含むものが好ましい。
ペースト塩化ビニル系樹脂は、例えば、乳化重合法で得られるペースト状の塩化ビニル系樹脂であり、可塑剤により、適宜粘度を調整できる。ペースト塩化ビニル系樹脂は、多数の微粒子集合体からなる粒子径が0.1〜10μm(好ましくは1〜3μm)の微細粉末であり、好ましくは、前記微細粉末の表面に界面活性剤がコーティングされている。ペースト塩化ビニル系樹脂の平均重合度は1000〜2000程度が好ましい。
サスペンション塩化ビニル系樹脂は、例えば、懸濁重合法で得られる塩化ビニル系樹脂である。サスペンション塩化ビニル系樹脂は、粒子径が好ましくは20μm〜100μmの微細粉末である。サスペンション塩化ビニル系樹脂の平均重合度は、700〜1500程度が好ましく、700〜1100程度がより好ましく、700〜1000程度がさらに好ましい。
ただし、前記粒子径は、体積基準の粒度分布におけるメディアン径(D50)である。
前記各塩化ビニル系樹脂は、K値60〜95程度のものが好ましく、K値65〜80程度のものがより好ましい。
前記裏側樹脂層32及び表側樹脂層54は、通常、上記樹脂成分以外に各種添加剤が含まれる。添加剤としては、従来公知のものを使用でき、例えば、充填剤、可塑剤、難燃剤、安定剤、吸湿剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、発泡剤、防黴剤などが挙げられる。
裏側樹脂層32の厚みは、特に限定されず、適宜設定でき、例えば、0.5mm〜5mmであり、好ましくは0.7mm〜2mmである。なお、前記裏側樹脂層32の厚みは、裏側樹脂層32が複数の樹脂層から構成される場合には、その複数の樹脂層の合計厚みに相当する。
表側樹脂層54の厚みは、特に限定されないが、裏側樹脂層32の厚みよりも小さいことが好ましい。表側樹脂層54の厚みは、例えば、0.1mm〜2mmであり、好ましくは0.2mm〜1mmである。なお、前記表側樹脂層54が複数の樹脂層から構成される場合には、前記表側樹脂層54の厚みは、その複数の樹脂層の合計厚みに相当する。
なお、図11のように、意匠性を有する表側樹脂層54を用いる場合には、その表側樹脂層54の厚みを比較的小さく設定してもよい。例えば、意匠性を有する表側樹脂層54の厚みは、0.05mm〜0.5mmである。意匠性を有する表側樹脂層54は、そのものが意匠となり得るものである。前記意匠性を有する表側樹脂層54は、(1)表側樹脂層そのものの色彩で意匠が表出される場合、(2)表側樹脂層に着色剤が混合され、その着色剤の色彩及びその混ざり方によって意匠が表出される場合、(3)表側樹脂層に樹脂チップが混合され、その樹脂チップの色彩、形状、分散の仕方などによって意匠が表出される場合、(4)表側樹脂層に色彩の異なる着色剤と樹脂チップとが混合され、それらの色彩や混ざり方などによって意匠が表出される場合、などが挙げられる。
<中間基材層>
中間基材層4は、シート本体1の厚み方向中間部に介在する層である。
中間基材層4を設けることにより、寸法安定性に優れた床シートAを構成できる。
前記中間基材層4としては、特に限定されないが、例えば、不織布、織布などが挙げられる。不織布や織布を構成する繊維の材質は、特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリオレフィンなどの合成樹脂繊維;ガラス、カーボンなどの無機繊維;天然繊維などが挙げられる。特に、温度による寸法変化が小さいことから、中間基材層4としては、ガラス繊維を含むガラスシートを用いることが好ましい。
前記ガラスシートとしては、複数のガラス繊維を含むガラス不織布又はガラス織布が挙げられる。
ガラスシートの一例であるガラス不織布41は、図12及び図13に示すように、複数のガラス繊維4aが無秩序に上下方向(厚み方向)に重なり又は絡み合い且つそれらが接着剤などのバインダーにてバインドされて又はそれら自身がバインドし合って層を成しているもの、或いは、特に図示しないが、複数のガラス繊維がある程度の規則性を以て上下方向に重なり又は絡み合い且つそれらが接着剤などのバインダーにてバインドされて又はそれら自身がバインドし合って層を成しているものである。
前記バインダーとしては、ガラス繊維4aに対する接合性の高いものが好ましく、ガラス繊維4a及び後述する接合樹脂に対する接合性の高いものがより好ましい。このようなバインダーとしては、公知の樹脂を主成分とする接着剤を使用することができ、例えば、1液型接着剤、2液型接着剤、熱硬化型接着剤、ホットメルト型接着剤、紫外線硬化型接着剤などの電子線硬化型接着剤などが挙げられる。具体的には、ウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂及びエポキシ系樹脂から選ばれる1種又は2種以上の混合物が例示される。
前記ガラス不織布41は、例えば、分散剤や増粘剤などを配合した水中に、ガラス繊維4aを略均一に分散させ、抄造することにより、ガラス繊維4aをシート状に成形し、そのガラス繊維4aのシートに、バインダーを塗布又は含浸させることにより、得ることができる。前記塗布は、ロールコーター、ナイフコーター、カーテンコーター、フローコーター、スプレーコーター、ダイコーターなどの各種コーター;スプレー;刷毛塗り;ローラーなどを用いて行うことができ、前記含浸は、液槽への浸漬などによって行うことができる。バインダーは一定の厚みに塗布又は含浸されるが、過剰なバインダーは、必要に応じてバキュームナイフなどによって吸引除去される。ガラス不織布41の単位面積当たりのバインダーの量が所望の範囲になったところで、バインダーを硬化させ、乾燥することにより、ガラス不織布41を得ることができる。バインダーの量は、前記塗布又は含浸、必要に応じた吸引などによって調整できる。
ガラスシートの一例であるガラス織布42は、図14及び図15に示すように、複数のガラス繊維4aが縦横に規則性を以て織り込まれて層を成しているもの、或いは、複数のガラス繊維4aが縦横に規則性を以て上下方向に重なり且つそれらが接着剤などのバインダーにてバインドされて層を成しているものである。
ガラス不織布41及びガラス織布42を構成する各ガラス繊維4aの太さは、特に限定されず、それぞれ独立して、例えば、直径5μm〜30μmであり、好ましくは、直径8μm〜20μmである。
ガラス不織布41のガラス繊維4aの長さは、特に限定されず、例えば、10mm〜30mmである。ガラス不織布41のガラス繊維4aは、短繊維のみから構成されていてもよく、長繊維のみから構成されていてもよく、或いは、短繊維と長繊維の混合から構成されていてもよい。短繊維のみから構成されたガラス不織布41は、寸法安定性に優れているが、短繊維と長繊維の混合物から構成されたガラス不織布41は、寸法安定性に加えて引張り強度にも優れている。前記短繊維の長さは、特に限定されないが、例えば、10mm〜35mmであり、長繊維の長さは、その短繊維の長さよりも大きい。なお、ガラス織布42のガラス繊維4aは、通常、前記長繊維よりも更に長い繊維からなる。
前記ガラスシートとしては、市販品を用いることもできる。
ガラス繊維4aがある程度の規則性を以てバインドされたガラス不織布41及びガラス織布42は、その規則性のあるガラス繊維4aに従い、所定方向に配向性が生じる。配向性を有するガラスシートを用いると、後述する接合樹脂を比較的均一に付着させることもでき、且つ接合樹脂の塗布時にガラス繊維4aの脱落も少なくなる。
なお、図13及び図15においては、2本又は3本のガラス繊維4aが厚み方向に重なった状態で表しているが、これらの図は、あくまで参考図であり、実際のガラス不織布41及びガラス織布42は、より多くのガラス繊維4aが厚み方向に重畳的に重なっている場合があることに留意されたい。
前記ガラス不織布41及びガラス織布42などのガラスシートは、ガラス繊維4aの間に無数の開口を有する。この各開口は、概念的には、隣接するガラス繊維4aの間の隙間がガラスシートの厚み方向に連続して繋がったものである。前記各開口は、ガラスシートの厚み方向と略平行にガラス繊維4aの隙間が連続し、略直線的にガラスシートの表裏面に連通した態様、或いは、ガラス繊維4aの隙間がガラスシートの厚み方向に対して傾斜、湾曲、屈曲又は蛇行などしつつ連続して配置されながらガラスシートの表裏面に連通した態様などが含まれる。前者の態様の開口は、通常、ガラスシートの表面側から拡大して見た場合に、ガラスシートの裏面側に存在する事物を視認できるような態様であり、後者の態様の開口は、通常、それを視認できないような態様である。
ガラスシートの厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.1mm〜0.5mmであり、より好ましくは0.15mm〜0.4mmであり、さらに好ましくは0.20mm〜0.35mmである。また、ガラスシートの目付量は、特に限定されないが、好ましくは10g/m〜100g/mであり、より好ましくは20g/m〜50g/mである。ガラスシートの厚み又は目付量が小さすぎると、床シートAの引張り強度及び寸法安定性を十分に向上できず、一方、大きすぎると、接合樹脂がガラスシートの開口内にまで十分に行き渡らないおそれがある。特に、ガラス不織布41については、前記厚み及び目付量の範囲のものが好適である。
なお、ガラスシートの密度は、特に限定されないが、例えば、0.1g/cm〜0.5g/cmである。
前記ガラスシートは、無数の開口を有するので、ガラスシートの面内には、ガラスシートの表面側から裏面側に通じる通気路が確保されている。前記ガラスシートの開口率が大きいと、ガラスシートの通気性が高くなり、反対に前記開口率が小さいと、ガラスシートの通気性が低くなる。本明細書では、このような点を考慮して、ガラスシートの通気性を測定することによって、前記開口率を評価するものとする。なお、前記開口率は、ガラスシートの表面の単位面積当たりに占める開口総面積をいう。
前記ガラスシートの通気度は、好ましくは100cc/cm・sec〜550cc/cm・secであり、より好ましくは200cc/cm・sec〜450cc/cm・secである。裏側樹脂層32と化粧層51又は裏側樹脂層32と表側樹脂層54の接合性の向上させるためには、後述する樹脂付きガラスシートの開口率が大きいことが好ましく、そのような開口率の大きい樹脂付きガラスシートを得るためには、通気度の大きいガラスシート、すなわち、開口率が比較的大きいガラスシートを用いることが好ましい。一方で、ガラスシートによる強度及び寸法変化抑制効果を床シートAに付与するためには、ガラスシートの開口率にもある程度の上限がある。このような観点から、ガラスシートは、その通気度が550cc/cm・sec以下であることが好ましい。
ただし、本明細書において、ガラスシートの通気度は、JIS L 1096の通気性試験方法に準じて、株式会社東洋精器製作所製のフラジール型通気性試験機を用いて、測定対象のガラスシートを3枚重ねた状態で測定される値である。尚、3枚重ねた状態で測定する理由は、好適な開口率のガラスシートの場合、通気性が高すぎるため、それを1枚又は2枚を重ねた状態では、前記測定方法にて通気度を測定することが困難である場合があるからである。
ガラスシート(中間基材層4)を基準にして、その裏面及び表面に隣接する層を強固に接合するため、ガラスシートに接合樹脂が付着されていることが好ましい。なお、接合樹脂が付着されたガラスシートを「樹脂付きガラスシート」という場合がある。
図16及び図17は、接合樹脂が付着されたガラスシートを用いた床シートを示す詳細拡大断面図である。図16の詳細拡大断面図は、図7の第1例の層構成のシート本体1を、図17の詳細拡大断面図は、図10の第4例の層構成のシート本体1を示している。また、図16及び図17は、ガラスシートとしてガラス不織布41を用いた場合を示しているが、ガラス織布42を用いた場合も同様である。
図16に示す層構成では、接合樹脂6を介して、ガラス繊維4aと裏側樹脂層32、及び、ガラス繊維4aと化粧層51が接合される。また、裏側樹脂層32は、樹脂付きガラスシートの開口に入り込み且つ開口を通過してガラス不織布41の表面側に臨み出て、化粧層51と直接的に接合される。図16などに示すような、化粧層51とガラス不織布41(中間基材層4)の間に表側樹脂層54を有さない層構成のシート本体1にあっては、化粧層51は、接合樹脂6にも接合されるが、主として裏側樹脂層32に接合される。
図17に示す層構成では、接合樹脂6を介して、ガラス繊維4aと裏側樹脂層32及び表側樹脂層54が接合される。また、表側樹脂層54と化粧層51が直接的に接合される。さらに、裏側樹脂層32と表側樹脂層54は、樹脂付きガラスシートの開口に入り込み、直接的に接合される。なお、図17においては、裏側樹脂層32と表側樹脂層54がガラス不織布41の厚み方向中心部において接合され且つその接合界面が直線状に描かれているが、実際には、裏側樹脂層32又は表側樹脂層54がガラス不織布41の表面側又は裏面側に臨み出て接合している箇所もあり、さらに、両層32,54の接合界面は、直線状でない場合もあることに留意されたい。また、図16及び図17においては、接合樹脂6、裏側樹脂層32、表側樹脂層54、及び化粧層51を分かり易く図示するために、これらの各接合界面に実線を明示しているが、接合樹脂6などは、いずれも樹脂材料からなるので、これらの界面が明瞭に現れるわけではないことに留意されたい。
接合樹脂6のガラスシート(ガラス不織布41又はガラス織布42)に対する付着態様は、表面側及び裏面側から見て下記の4つの態様に大別できる。
(a)接合樹脂6は、樹脂付きガラスシートの表面側から見て、ガラスシートを構成する複数のガラス繊維4aの全てに付着している。
(b)接合樹脂6は、樹脂付きガラスシートの表面側から見て、ガラスシートを構成する複数のガラス繊維4aの少なくとも一部に付着し且つ複数のガラス繊維4aのうちの少なくとも1本のガラス繊維4aに付着していない部分を有する。
(c)接合樹脂6は、樹脂付きガラスシートの裏面側から見て、ガラスシートを構成する複数のガラス繊維4aの全てに付着している。
(d)接合樹脂6は、樹脂付きガラスシートの裏面側から見て、ガラスシートを構成する複数のガラス繊維4aの少なくとも一部に付着し且つ複数のガラス繊維4aのうちの少なくとも1本に付着していない部分を有する。
なお、本明細書において、「表面側(又は裏面側)から見て」とは、その層の表面(又は裏面)に対して垂直な方向から見ることをいう。
接合樹脂6の付着態様は、上記(a)乃至(d)から選ばれる1つの態様、(a)及び(c)の態様、(a)及び(d)の態様、(b)及び(c)の態様、又は、(b)及び(d)の態様のいずれかである。
前記(a)においては、樹脂付きガラスシートの表面側から見て、ガラス繊維4aが接合樹脂6に覆われ、前記(c)においても同様に、樹脂付きガラスシートの裏面側から見て、ガラス繊維4aが接合樹脂6に覆われている。
前記(b)においては、樹脂付きガラスシートの表面側から見て、ガラス繊維4aが露出している部分を有し、前記(d)においても同様に、樹脂付きガラスシートの裏面側から見て、ガラス繊維4aが露出している部分を有する。
前記(b)において、樹脂付きガラスシートの表面側から見て、ガラス繊維4aの露出率は、例えば、0を超え70%以下であり、好ましくは0を超え50%以下であり、より好ましくは0を超え30%以下である。
前記(d)において、樹脂付きガラスシートの裏面側から見て、ガラス繊維4aの露出率は、例えば、0を超え70%以下であり、好ましくは0を超え50%以下であり、より好ましくは0を超え30%以下である。
前記ガラス繊維4aの露出率は、樹脂付きガラスシートの単位面積当たりに露出したガラス繊維の総面積である。前記露出率は、例えば、樹脂付きガラスシートの表面(又は裏面)から1cm×1cmの範囲を任意に抽出し、その範囲における表面側(又は裏面側)から見てガラス繊維が露出した面積を計測し、式:露出率(%)=ガラス繊維が露出した面積の総和/1cm)×100、で求めることができる。
前記接合樹脂6は、ガラス繊維4aの表面全体に付着されてもよく、或いは、多くのガラス繊維4aの表面全体に付着され且つ残るガラス繊維4aの表面の一部分に付着されていてもよい。なお、ガラス繊維4aの表面とは、ガラスシートを構成するガラス繊維そのものの表面、及び、前記ガラス繊維にバインダーが接合している場合にはそのバインダーの表面を含む意味である。
図示例では、接合樹脂6は、複数のガラス繊維4aのうち多くのガラス繊維4aの表面全体に付着され且つ残るガラス繊維4aの表面の一部分に付着されている。
また、接合樹脂6は、ガラス繊維4aの表面に均一に付着されていてもよく、或いは、不均一に付着されていてもよい。接合樹脂6の前記付着状態は、ガラスシートに対する接合樹脂6の付着方法によって異なる。例えば、ロールコーターやナイフコーターなどのコーターを用いて接合樹脂6をガラスシートに塗工した場合、接合樹脂6は、図示例のように、ガラス繊維4aの表面に不均一に付着される。換言すると、接合樹脂6は、ガラス繊維4aの表面において、厚み差を有して付着されている。不均一の場合、(1)図示のように、ガラス繊維4aの表側における接合樹脂6の厚みがガラス繊維4aの裏側における接合樹脂6の厚みよりも大きい、(2)ガラス繊維4aの裏側における接合樹脂6の厚みがガラス繊維4aの表側における接合樹脂6の厚みよりも大きい、(3)ガラス繊維4aの側方における接合樹脂6の厚みがガラス繊維4aの表側及び裏側における接合樹脂6の厚みよりも大きい、などの態様が挙げられる。
樹脂付きガラスシートにおいて、接合樹脂6の目付量は、特に限定されないが、例えば、5g/m〜105g/mであり、好ましくは10g/m〜80g/m、より好ましくは15g/m〜60g/mである。
接合樹脂6の目付量は、ガラス繊維4aと裏側樹脂層32(又は表側樹脂層54)及びガラス繊維4aと化粧層51の接合性を向上させる観点から、大きい方が好ましいが、一般的には、接合樹脂6の目付量に比例して樹脂付きガラスシートの通気度、すなわち、開口率は小さくなる。
また、樹脂付きガラスシートの目付量(ガラスシートと接合樹脂6の各目付量の和)は、特に限定されないが、例えば、15g/m〜205g/mであり、好ましくは20g/m〜180g/m、より好ましくは35g/m〜160g/mである。
なお、樹脂付きガラスシートの厚みは、特に限定されないが、概ね0.2mm〜0.6mmである。ただし、樹脂付きガラスシートの表裏面は平坦でない場合が多いので、前記樹脂付きガラスシートの具体的な厚みは、数カ所の平均的な値である。
前記樹脂付きガラスシートは、接合樹脂6がガラスシートの全ての開口を塞いでおらず、無数の開口を有する。換言すると、樹脂付きガラスシートは、ガラスシートそのものが有する開口に起因した開口を有する。その樹脂付きガラスシートの開口の開口率は、ガラスシートの開口率よりも小さい。なお、前記樹脂付きガラスシートの開口率は、樹脂付きガラスシートの表面の単位面積当たりに占める開口総面積をいう。
樹脂付きガラスシートの開口は、ガラスシートの開口と同様な意味である。樹脂付きガラスシートの開口の説明は、上記ガラスシートの開口の説明のうち「ガラス繊維」を「樹脂付きガラス繊維」に、「ガラスシート」を「樹脂付きガラスシート」に読み替えるものとする。
樹脂付きガラスシートの通気度は、ガラスシートの通気度より小さい。具体的数値では、樹脂付きガラスシートの通気度は、好ましくは80cc/cm・sec〜500cc/cm・secであり、より好ましくは100cc/cm・sec〜400cc/cm・secである。
裏側樹脂層32とガラス繊維4aなどの接合性の向上させるためには、樹脂付きガラスシートの開口率が大きいことが好ましいが、上述のように、強度や反り防止効果などを考慮すると、余りに大きな開口率を有するガラスシートを用いることは適切ではない。それ故、上記のような通気度の範囲を有するガラスシートを用いた場合には、樹脂付きガラスシートの通気度は、80cc/cm・sec〜500cc/cm・secの範囲となるように設定することが好ましい。
このような通気度を有する樹脂付きガラスシートは、その開口内に裏側樹脂層32(及び表側樹脂層54)を構成する樹脂材料が入り込み易くなる。
ただし、前記樹脂付きガラスシートの通気度は、JIS L 1096通気性試験方法に準じて、株式会社東洋精器製作所製のフラジール型通気性試験機を用いて、測定対象の樹脂付きガラスシートを3枚重ねた状態で測定される値である。
前記樹脂付きガラスシートの接合樹脂6は、裏側樹脂層32などをガラス繊維4aに接合させるためのバインダー樹脂として機能する。
接合樹脂6としては、ガラス繊維4a、裏側樹脂層32及び表側樹脂層54の何れにも接合するものであれば特に限定されず、従来公知の樹脂を用いることができる。接合樹脂6としては、裏側樹脂層32で例示したような熱可塑性樹脂が挙げられる。
塩化ビニル系樹脂を主成分樹脂とする裏側樹脂層32などに対する接合性に優れていることから、接合樹脂6は、主成分樹脂として塩化ビニル系樹脂を含むことが好ましく、主成分樹脂としてペースト塩化ビニル系樹脂を含むことが好ましい。
サスペンション塩化ビニル系樹脂は比較的硬いので、その樹脂はガラスシートに強固に付着し難いが、ペースト塩化ビニル系樹脂は、可塑剤の量が多く、比較的軟らかいので、ガラスシートへの塗工も容易で且つガラス繊維4aに強固に付着する。また、ペースト塩化ビニル系樹脂は、サスペンション塩化ビニル系樹脂に対する相溶性に優れているので、それを含む接合樹脂6は、サスペンション塩化ビニル系樹脂を含む裏側樹脂層32及び表側樹脂層54にも強固に接合するようになる。
接合樹脂6に含まれるペースト塩化ビニル系樹脂は、多数の微粒子集合体からなる粒子径が0.1〜10μm(好ましくは1〜3μm)の微細粉末であり、好ましくは、前記微細粉末の表面に界面活性剤がコーティングされている。前記ペースト塩化ビニル系樹脂の平均重合度は1000〜2000程度が好ましく、K値は、60〜95程度が好ましく、K値65〜80程度がより好ましい。
なお、接合樹脂6には、通常、各種添加剤が含まれる。添加剤としては、上記に例示したようなものが挙げられる。
<化粧層>
化粧層51は、床シートAに意匠を付与する層である。化粧層51は、必要に応じて設けられる。
前記化粧層51は、転写層、意匠印刷層、意匠印刷シート、意匠性が付与された熱可塑性樹脂層などが挙げられる。もっとも、化粧層51は、これら例示の層に限られず、意匠を表出できる層であればその他任意のものを用いることができる。
前記転写層は、印刷インキを剥離紙などの基材上に印刷して固化させた後に、固化した印刷インキを剥離して形成した転写フィルムから構成される。前記転写層からなる化粧層51は、保護層52の裏面などに転写することによって形成される。意匠印刷層は、保護層52の裏面などに印刷インキを直接印刷して固化させた層から構成される。意匠印刷シートからなる化粧層51は、中間基材層4、表側樹脂層54の表面又は保護層52の裏面に、予め意匠印刷を施したシートを接合することによって形成される。意匠印刷シートの材質としては、塩化ビニル製樹脂シートなどの熱可塑性樹脂シートなどが挙げられる
意匠性が付与された熱可塑性樹脂層は、そのものが意匠となり得る層である。前記熱可塑性樹脂層は、(1)樹脂そのものの色彩で意匠性が付与されている場合、(2)着色剤が混合され、その着色剤の色彩及びその混ざり方によって意匠性が付与されている場合、(3)樹脂チップが混合され、その樹脂チップの色彩、形状、分散の仕方などによって意匠性が付与されている場合、(4)色彩の異なる着色剤と樹脂チップとが混合され、それらの色彩や混ざり方などによって意匠性が付与されている場合、などが挙げられる。熱可塑性樹脂層からなる化粧層51は、中間基材層4の表面又は表側樹脂層54の表面などに、その熱可塑性樹脂層を積層接合することによって形成される。
前記意匠性が付与された熱可塑性樹脂層の樹脂成分としては、上述の<裏側樹脂層及び表側樹脂層>の欄で例示したようなものが挙げられ、特に、樹脂層32,54と保護層52が塩化ビニル系樹脂の場合は、塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂が好ましい。
前記化粧層51の厚みは特に限定されないが、例えば、0.5μm〜1mmであり、好ましくは0.01mm〜0.8mmである。特に、転写層や意匠印刷層からなる化粧層51の厚みは、0.5μm〜0.5mmである。
<保護層>
保護層52は、化粧層51が設けられている場合にはそれを保護し、また、床シートAに吸着した汚れを容易に除去できるようにするために設けられた層である。すなわち、保護層52は、床シートAに汚れ除去性を付与する。保護層52は、必要に応じて設けられる。保護層52は、透明又は不透明でもよいが、保護層52の下側に設けられた化粧層51などの意匠を視認できるようにするため、透明であることが好ましい。
保護層52は、樹脂材料で形成される。特に、保護層52は、非発泡体で且つ比較的密度が高いものが好ましい。保護層52の樹脂材料としては、上述の<裏側樹脂層及び表側樹脂層>の欄で例示したようなものが挙げられ、化粧層51又は表側樹脂層54と強固に接合することから、塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂が好ましい。
保護層52の厚みは、特に限定されず、例えば、0.03mm〜1mmである。
<傷付き防止層>
傷付き防止層53は、床シートAの表面に耐摩耗性、耐傷付き性及び防汚性を付与するために設けられる層である。傷付き防止層53は、必要に応じて設けられる。傷付き防止層53は、透明又は不透明でもよいが、傷付き防止層53の裏面側に設けられた化粧層51などの意匠を視認できるようにするため、透明であることが好ましく、特に、非発泡体で且つ比較的密度が高い透明なものが好ましい。
傷付き防止層53を形成する樹脂材料は、特に限定されないが、比較的硬い樹脂層から形成されていることが好ましい。このような傷付き防止層53は、主成分樹脂として硬質合成樹脂を含むものが挙げられる。前記硬質合成樹脂としては、特に限定されないが、加工性の良さから硬化性樹脂を用いることが好ましく、さらに、傷付き防止層53の積層される層(保護層52など)に熱損傷を与え難いことから、電離放射線硬化性樹脂を用いることがより好ましく、汎用的であることから、紫外線硬化性樹脂を用いることがさらに好ましい。前記硬化性樹脂としては、紫外線硬化性樹脂などの電離放射線硬化性樹脂以外に、熱硬化性樹脂、非電離放射線により硬化する樹脂などが挙げられる。
具体的には、傷付き防止層53は、硬化性モノマー及びオリゴマーの少なくともいずれか一方が重合した硬化性樹脂を含み、必要に応じて、その他の成分を含んで形成されている。
電離放射線硬化性樹脂を構成する、電離放射線により硬化する硬化性モノマー又はオリゴマーとしては、通常、紫外線又は電子線で硬化する硬化性モノマー又はオリゴマーが挙げられる。以下、電離放射線により硬化する硬化性モノマー又はオリゴマーを、電離放射線硬化性モノマー又はオリゴマーという。
前記電離放射線硬化性モノマー又はオリゴマーとしては、分子中に(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリロイルオキシ基などの重合性不飽和結合基又はエポキシ基などを有するモノマー又はオリゴマーが挙げられる。
前記電離放射線硬化性モノマーの具体例としては、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマー、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、分子中に2個以上のチオール基を有するポリオール化合物などが挙げられる。前記電離放射線硬化性オリゴマーの具体例としては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどのアクリレート、不飽和ポリエステル、エポキシなどが挙げられる。これらの硬化性モノマー又はオリゴマーは、1種単独で又は2種以上を併用できる。
これらの中では、電離放射線硬化性モノマー又はオリゴマーとして、分子中に(メタ)アクリレート基を有するモノマー又はオリゴマーを用いることが好ましく、さらに、ウレタン(メタ)アクリレートを用いることがより好ましい。また、防汚性を向上させるために、シリコーン変性されたモノマー又はオリゴマーを用いてもよい。
前記硬化性モノマー又はオリゴマーの分子量は、特に限定されないが、例えば、200〜10000などが挙げられる。
電離放射線硬化性モノマー又はオリゴマーには、通常、光重合開始剤が添加される。前記光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、キサントン、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、その他のチオキサント系化合物などが挙げられる。
また、傷付き防止層53には、樹脂成分以外の成分が含まれていてもよく、その成分としては、例えば、溶剤、レベリング剤、微粒子、充填剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、酸化防止剤、チクソトロピー化剤、防黴剤、防汚性付与剤などが挙げられる。前記防汚性付与剤としては、例えば、シリコーン樹脂やフッ素樹脂などが挙げられる。
傷付き防止層53の厚みは、特に限定されないが、例えば、1μm〜100μmであり、好ましくは5μm〜70μmであり、より好ましくは10μm〜50μmである。
[吸着部]
シート本体1の裏面には、各図に示すように、吸着部2が設けられている。
吸着部2は、シート本体1の裏面にベタ状に設けられていてもよい(図示せず)。図示例では、吸着部2は、シート本体1の裏面の全体に設けられておらず、シート本体1の裏面に部分的に設けられている。つまり、床シートAの裏面は、シート本体1の裏面が部分的に露出している。
なお、吸着部2の形成範囲を判りやすく図示するため、図2において、便宜上、吸着部2に網掛けを付加している。
図示例では、吸着部2は、シート本体1の裏面から突設された複数の凸部からなり、例えば、シート本体1の裏面から鉛直に突出された、平面視帯状の複数の凸部からなる。帯状の各吸着部2は、いずれもシート本体1の第1方向に延びており、複数の吸着部2が、シート本体1の第2方向に略平行に並設されている。平面視略長方形状に形成されている床シートAにおいては、前記第1方向は、図示例のように長手方向でもよく、或いは、短手方向でもよく、或いは、長手方向に対して傾斜する方向でもよい。
なお、特に図示しないが、帯状の吸着部2は、平面視波状や蛇行状に形成されていてもよい。このように波状や蛇行状に形成することにより、シート本体1の第2方向両側縁にも吸着部2が所々で存在するようになり、端部が浮くことを防止できる。また、吸着部2は、平面視で、略円状、略楕円状、略三角形状や略矩形状などの点状に形成されてもよい。また、シート本体1の裏面の全体に吸着部2がベタ状に形成されていてもよい。なお、前記点状の吸着部2は、例えば、スクリーン印刷にて形成することができる。
凸部からなる吸着部2の断面形状は、特に限定されず、図3及び図16に示すような、略半楕円形状のほか、略半円弧状、略矩形状、略三角形状などが挙げられる。床シートAを敷設した際に、均等に変形して床面に良好に密着することから、凸部の断面形状は、略半楕円形状又は略半円弧状が好ましい。複数の凸部の断面形状は、全て同じ形状でもよいし、そのうちの一部の凸部の断面形状が異なっていてもよい。
前記凸部(吸着部2)の高さ2Hは、特に限定されないが、余りに小さいと、床シートAのズレ防止効果を得られないおそれがあるので、例えば、0.05mm〜1mmであり、好ましくは、0.1mm〜0.5mmである。なお、凸部(吸着部2)の高さ2Hは、図16に示すように、凸部の基部から凸部の頂点までの鉛直長さである。
前記凸部(吸着部2)の幅2Wは、特に限定されないが、床シートAの位置ずれや滑りを効果的に防止でき、敷設した床シートAを床面から取り外し易くする観点から、凸部(吸着部2)の幅2Wは、1mm〜20mmが好ましく、1.5mm〜5mmがより好ましい。なお、前記凸部の平面視形状が帯状で且つその幅が一様でない場合には、前記凸部の幅2Wは、最も大きい箇所における幅に該当する。また、前記凸部の平面視形状が点状などのその他の形状である場合においても同様に、最も大きい箇所における幅である。
隣接する凸部(吸着部2)の間隔2Yは、特に限定されないが、床シートAの位置ずれや滑りを効果的に防止でき、敷設した床シートAを床面から取り外し易くする観点から、隣接する凸部(吸着部2)の間隔2Yは、1mm〜5mmが好ましく、1mm〜3mmがより好ましい。各凸部の間隔2Yは、それぞれ異なっていてもよいし、同一でもよい。均等に床面に対して密着することから、各凸部の間隔は、同じであることが好ましい。
また、凸部(吸着部2)の幅2Wと凸部(吸着部2)の間隔2Yは、同じでもよく、或いは、いずれか一方が大きくてもよい。図示例では、凸部の幅2Wが、凸部の間隔2Yよりも大きい。
吸着部2は、床シートAの滑りを防止できる程度の十分な密着力で床面に吸着しうるものであれば、その形成材料は、特に限定されない。吸着部2の形成材料としては、床面に対して吸着又は粘着によって吸着するようなものが挙げられる。吸着による吸着部2は、敷設した床シートAに荷重が加わっているときには床面に対して強く密着するので、床シートAのズレを防止でき、他方、前記荷重が加わっていないときには床面に対して弱く密着するので、床シートAを比較的容易に取り外すことができる。吸着による吸着部2を用いれば、それが添付された離型シートBは、同様な作用により、床シートAの保管時には吸着部2に強く密着して剥がれにくくなっており、他方、使用時には比較的容易に引き剥がすことができる。
例えば、前記吸着によって吸着する吸着部2の形成材料としては、柔軟性を有する発泡樹脂、軟質ゴムなどが挙げられる。前記粘着によって吸着する吸着部2の形成材料としては、ピールアップ性粘着剤などが挙げられる。特に、吸着部2の形成材料としては、柔軟性を有する発泡樹脂が好ましい。
柔軟性を有する発泡樹脂は、その裏面に複数の微細孔を有する多孔質構造である。前記発泡樹脂は、連続気泡構造又は独立気泡構造の何れでもよいが、吸盤機能を十分に有し、高い吸着力を発揮することから、連続気泡構造が好ましい。前記発泡樹脂の材質は特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エチレン−酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、エポキシ樹脂、アクリル酸エステル、ポリエステル等の熱可塑性樹脂などが挙げられる。密着性に優れることから、吸着部2の形成材料として、アクリル樹脂を発泡させた発泡アクリル樹脂を用いることが好ましい。発泡樹脂の発泡倍率は、特に限定されないが、床面に対して十分に密着し且つ材料破壊を生じ難くする観点から、1.1倍〜6倍が好ましく、1.6倍〜2倍がより好ましく、さらに、1.6倍以上2倍未満が特に好ましい。
[離型シート]
離型シートBは、前記吸着部2の裏面に対面させて添付される。なお、離型シートBは、床シートAから容易に剥離可能な程度の付着力で添付されている。
離型シートBは、少なくとも床シートAの裏面全体を覆う形状及び大きさであることが好ましく、例えば、離型シートBは、床シートAの平面視形状と同形同大に形成されている。なお、離型シートBが床シートAの側縁からはみ出ていてもよく、この場合には、床シートAよりも大面積の離型シートBが用いられる。
前記離型シートBは、好ましくは撥水性を有するシートからなる。
例えば、離型シートBは、単一のシートから形成されてもよく、或いは、複層構成のシートから形成されていてもよい。例えば、複層構成の離型シートBは、シートと、そのシートの表面全体に積層された離型層と、を有する。前記離型層は、シートの表面の全体にベタ状に形成されている。本明細書において、ある層がベタ状であるとは、その層を構成する材料が面方向に延在して1つの連続した層を成していることをいう。前記離型層は、代表的には、シリコーン樹脂などを含む剥離剤をシートの表面に塗布するなどの方法によって形成できる。
前記シートは、特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂シート;異種又は同種の樹脂層が複数積層された積層樹脂シート;合成紙;普通紙、上質紙などの紙;これらの中から選択される2種以上のシートが積層された積層シートなどが挙げられる。前記シートの厚みは、特に限定されず、例えば、0.02mm〜1mmであり、好ましくは、0.02mm〜0.3mmであり、より好ましくは、0.02mm〜0.05mmである。また、離型層の厚みは、特に限定されず、例えば、0.1μm〜3μm程度である。
[床シートの使用]
本発明の床シートAは、既存の床面、新設の床面に敷設して使用される。
既存の床面としては、例えば、床下地面上に敷設された床材の表面、前記床材を除去した後に現れる床下地面などが挙げられる。前記床材としては、木質フローリング床材、タイル床材、樹脂床材などが含まれる。新設の床面としては、未だ床材が敷設されていない床下地面が挙げられる。前記床下地面としては、コンクリート下地、木質下地、鋼板下地などが含まれる。吸着部2による吸着力を十分に得ることができることから、床面は、その表面が平滑であることが好ましい。
吸着部2が設けられている本発明の床シートAは、粘着剤や接着剤を用いないで、直接床面に載せるだけで敷設できる。
本発明の床シートAは、表面側への曲げ剛性が裏面側への曲げ剛性よりも大きいシート本体1を有する。
かかる床シートAは、床面に対して鉛直方向に浮きにくく、床面に良好に敷設できる。特に、シート本体1は、23℃で下向きの湾曲状であるため、床シートAを敷設後、その端部が床面から浮き上がり難くなる。
さらに、本発明の床シートAは、床面から取り外す際の作業が容易である。
具体的には、敷設した床シートAを床面から取り外す際には、床シートAの端部を引き起こし、これを起点として床シートAを持ち上げる。
従来の床シートは、図18に示すように、端部を持ち上げた際に表面側へ大きく曲がるので、床シートがヘアピン状となり、床シートの裏面と床面との境界である剥離点が進行し難く、端部の引き出し距離が長くなる。このため、床シートの取り外し作業に時間が掛かる。
一方、本発明の床シートAは、上述のように、表面側への曲げ剛性が大きいので、図18に示すように、端部を持ち上げた際に表面側へ曲がり難く、撓んだ状態で床シートAが弓状となる。このため、一方の端部を持ち上げた際に、床シートAの裏面と床面との境界である剥離点が他方の端部に向けて一気に進行するので、床シートAを床面から取り外し易い。
このように本発明の床シートAは、容易に床面から取り外すことができ、貼り替え作業の手間を軽減できる。
なお、図1に示すような、第1方向の長さが第2方向に比して十分に大きい略長方形状の床シートは、一般に取り外し作業が面倒である。この点、本発明の床シートAによれば、第1方向両端部のうち何れか一方の端部を持ち上げると、剥離点が第1方向に大きく進行するので、このような略長方形状であっても、容易に床面から取り外すことができる。
特に、床シートAが、前述のような平面視略長方形状の枚葉状、例えば、第1方向の長さL1:第2方向の長さL2が、2:1〜10:1であり、好ましくは、4:1〜8:1に形成されている場合、第1方向(長手方向)における一方の端部を持ち上げると、床シートAが撓んで適度に突っ張るので、床面から容易に取り外すことができる。特に有効なサイズは、第1方向の長さL1×第2方向の長さL2が700mm〜1200mm×100mm〜200mmの範囲で、好ましくは、900mm×150mm近辺である。
[床シートの製造方法]
次に、本発明の床シートAの製造方法について説明する。
本発明のような表面側への曲げ剛性が裏面側への曲げ剛性よりも大きい床シートは、表面側の層を裏面側の層よりも硬い材料で形成し、裏面側の層を表面側の層よりも軟らかい材料で形成することにより、得ることができる。表面側の層を裏面側の層よりも硬い材料で形成する場合としては、例えば、表面側の層である保護層を塩化ビニル系樹脂で形成する際にその塩化ビニル系樹脂の可塑剤の量を減らす、或いは、表面側の層である傷付き防止層を形成する際に前記保護層の塩化ビニル系樹脂よりも硬い電離放射線硬化性樹脂などを使用する、などが挙げられる。裏面側の層を表面側の層よりも軟らかい材料で形成する場合としては、裏面側の層を塩化ビニル系樹脂で形成する際にその塩化ビニル系樹脂の可塑剤の量を増やす、或いは、裏面側の層を発泡させる、などが挙げられる。
ただし、本発明の床シートAは、次の製造方法によって製造されたものに限定されず、他の製造方法で製造することもできる。
例えば、図16に示す床シートAを例に採って説明する。
この製造方法は、樹脂付きガラスシートを準備する工程、前記樹脂付きガラスシートの表面に化粧層を積層し、前記樹脂付きガラスシートの裏面に裏側樹脂層を積層し、加熱加圧して、化粧層、樹脂付きガラスシート及び裏側樹脂層を一体化する工程、を有し、必要に応じて、他の工程を有していてもよい。
化粧層、樹脂付きガラスシート及び裏側樹脂層の積層及び一体化は、同時に行ってもよく、順次行ってもよい。前記積層及び一体化は、例えば、下記(1)乃至(3)のような手順が挙げられる。
(1)化粧層、樹脂付きガラスシート及び裏側樹脂層の積層を含む積層体を、加熱加圧して一体化する。
(2)化粧層及び樹脂付きガラスシートの積層を含む第1積層体を加熱加圧して一体化し、さらに、その第1積層体と裏側樹脂層の積層を含む第2積層体を加熱加圧して一体化する。
(3)裏側樹脂層及び樹脂付きガラスシートの積層を含む第1積層体を加熱加圧して一体化し、さらに、その第1積層体と化粧層の積層を含む第2積層体を加熱加圧して一体化する。
なお、具体的な実施形態では、化粧層、樹脂付きガラスシート及び裏側樹脂層以外に保護層や基材層などが積層されるが、これら保護層などの積層は、前記(1)乃至(3)のような化粧層、樹脂付きガラスシート及び裏側樹脂層の積層及び一体化を行う際に同時に行ってもよく、又は、前記(1)乃至(3)のような化粧層、樹脂付きガラスシート及び裏側樹脂層の積層及び一体化を行う前に、若しくは、その後に適宜行ってもよい。
<各層の準備工程>
ガラスシートに接合樹脂を付着させることにより、樹脂付きガラスシートを準備する。
ガラスシートは、上記のようなガラス不織布又はガラス織布(好ましくはガラス不織布)が用いられる。
ガラスシートに対する接合樹脂の付着方法は、特に限定されず、ロールコーターやナイフコーターなどの各種コーターを用いてガラスシートに接合樹脂を塗工する塗工法、接合樹脂を満たした樹脂槽にガラスシートを通す浸漬法、前記塗工法及び浸漬法の併用などが挙げられる。
例えば、接合樹脂は、ロールコーターを用いて塗工される。ロールコーターを用いた塗工は、例えば、長尺帯状のガラスシートの搬送途中に配置されたアプリケーターロールとドクターロールの間に、前記ガラスシートを挿入することにより、アプリケーターロールに供給された接合樹脂がガラスシートの表面に塗工される。ガラスシートの表面に塗工された接合樹脂は、ガラス繊維の表面を伝わり及びガラスシートの開口を通って移行し、ガラスシートの裏面側にも付着する。
接合樹脂の粘度、アプリケーターロールへの接合樹脂の供給量、アプリケーターロールとドクターロールの間隔などを適宜調整することにより、ガラスシートに対する接合樹脂の付着量を所望の範囲にすることができる。
接合樹脂は、特に限定されないが、塩化ビニル系樹脂、特に、ペースト塩化ビニル系樹脂を主成分とする樹脂材料が好ましい。ペースト塩化ビニル系樹脂を主成分とする接合樹脂の粘度は、例えば、100mPa・s〜10,000mPa・sであり、好ましくは400mPa・s〜2,000mPa・sである。このような粘度のペースト塩化ビニル系樹脂を用いることにより、ガラスシートに良好に付着させることができる。なお、本明細書において、粘度は、20℃での粘度であって、BM型粘度計を用いて、60rpmにて測定した値である。
前記ペースト塩化ビニル系樹脂は、可塑剤を含む。具体的には、前記ペースト塩化ビニル系樹脂は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、可塑剤を50質量部〜150質量部含むものが好ましく、さらに、前記可塑剤に加えて、可塑剤以外の添加剤を1質量部〜10質量部含むものがより好ましい。
また、別途、保護層、化粧層、裏側樹脂層及び裏側基材層を準備する。
これらの層の形成方法は、特に限定されず、それらを形成する材料に応じて適宜選択でき、例えば、カレンダー法、溶融押出法、溶液流延法などが挙げられる。
<積層工程>
樹脂付きガラスシートの表面に、化粧層を積層し且つ前記樹脂付きガラスシートの裏面に、裏側樹脂層を積層し、さらに、化粧層の表面に保護層を積層し且つ裏側樹脂層の裏面に裏側基材層を積層しつつ一対のロール間に通して加熱加圧することにより、各層を一体化する。
加熱加圧による各層の接合方法は、例えば、ラミネート加工法、カレンダー成形法、連続プレス法などが挙げられる。例えば、ラミネート加工法の場合、加熱温度は、160℃〜200℃であり、ロール間の圧力は、20kgf/cm〜100kgf/cmである。
必要に応じて、前記積層体の表面又は裏面にエンボス加工を施してもよい。
<傷付き防止層の形成工程>
前記積層体の表面に、ロールコーターなどを用いて、例えば、電離放射線硬化性モノマー又はオリゴマー(傷付き防止層の形成材料)を塗工し、電離放射線を当てることにより、最表面に傷付き防止層が形成されたシート本体が得られる。
<吸着部の形成工程>
得られたシート本体の裏面に吸着部を形成する。
例えば、樹脂成分としてアクリル酸エステル共重合体エマルジョンを用い、このエマルジョンに、架橋剤、充填剤、発泡剤、増粘剤、撥水剤などの助剤を適量配合することにより、吸着部の形成材料を調製する。これを、発泡機にて空気を吹き込みながら撹拌して泡立たせることにより、発泡する。得られた発泡形成材料は、気泡を含み、粘性及び粘着性を有し、乾燥後にも微小気泡を有する。
このようにして得られた発泡形成材料を、ロータリー式スクリーンコーティング機などを用いて、シート本体の裏面に塗工する。凸部からなる複数の吸着部を形成するため、発泡形成材料を凹凸状に塗工する。例えば、コーティング機の途中に、複数の切欠き部が形成されたドクターブレードをシート本体の裏面に当てておき、発泡形成材料が塗工されたシート本体を所定速度で搬送することにより、ドクターブレードを通過した、発泡形成材料の塗工層は、凹凸状となる。その後、発泡形成材料を、乾燥機に通し、120℃〜200℃で数分程度乾燥させた後、冷却することにより、本発明の床シートが得られる。
得られた長尺帯状の床シートは、必要に応じてロールに巻き取られ、保管・運搬に供される。また、本発明の床シートを枚葉状とする場合には、前記長尺帯状の床シートを、打ち抜き、カットなどを行うことによって、適切な大きさに切断して、重ねて保管・運搬に供される。
[変形例]
上記実施形態の離型シート付き床シートにおいて、離型シートBは1枚のシートからなるが、例えば、図19及び図20に示すように、1つの床シートAに添付される離型シートBが、2つ以上に分割されていてもよい。なお、図20において、シート本体1の層構成は不図示である(図21も同様)。
図示例では、1枚のシートからなる離型シートBの面内に、第2方向中途部において第1方向に延びる切断線9を形成することにより、離型シートBが、第1シートB1及び第2シートB2に分割されている。この場合、離型シートBは、第2方向において2つに分割されている。
なお、特に図示しないが、離型シートBに複数の切断線を形成することにより、離型シートBが第2方向において3つ以上に分割されていてもよい。さらに、切断線を第2方向に形成することにより、離型シートBが第1方向において2つ以上に分割されていてもよい。また、切断線は、上記のように第1方向(又は第2方向)と平行に形成する場合に限られず、第1方向(又は第2方向)に対して傾斜するように形成してもよく、さらに、切断線は、平面視直線状に限られず、平面視波状やジグザグ状などの非直線状に形成してもよい。
本変形例の離型シートBが切断線9にて分割されていることにより、離型シート付き床シートを湾曲させると、第1シートB1の角部B1a及び第2シートB2の角部B2aを容易に摘むことができ、第1シートB1及び第2シートB2を容易に引き剥がすことができるようになる。
さらに、図21に示すように、切断線9及びその両側近傍部に対応する箇所において部分的に吸着部2を有さない領域8を形成し、前記領域8において離型シートBがシート本体1の裏面に対面するようにしてもよい。かかる離型シート付き床シートは、切断線9の近傍部における第1シートB1及び第2シートB2が吸着部2に付着しないので、第1シートB1及び第2シートB2をより容易に引き剥がし易くなるので好ましい。
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を更に詳述する。但し、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
・吸着アクリルフォーム付きポリエステル不織布(サンケミカル製)
この吸着アクリルフォーム付きポリエステル不織布は、幅:193cm、長さ:900cm、目付量:100g/mのポリエステル不織布と、その不織布の一方面に設けられた、アクリル樹脂の発泡体(発泡倍率:1.95倍)からなる吸着部と、からなる。吸着部は、図2に示すように長手方向(250cmの方向)に延びる平面視帯状で、図3に示すように、断面視略半楕円形状である。1つの吸着部(凸部)の幅は、3.0mmで、隣接する吸着部の間隔(凸部間の間隔)は、1.0mmであった。また、吸着部の目付量は、150g/mであった。
・第1のガラスシート
ガラス不織布(オリベスト株式会社製の商品名「グラベスト」)。幅:193cm、長さ:3000m。ガラス繊維の太さ:直径約18μm、ガラス繊維の長さ:約25mm、目付量:30.42g/m。このガラス不織布の通気度は、370cc/cm2・secであった。
・第2のガラスシート
ガラス不織布(オリベスト株式会社製の商品名「グラベスト」)。幅:193cm、長さ:3000m。目付量:50g/m
・第1のペースト塩化ビニル系樹脂
株式会社カネカ製の商品名「カネビニール」。重合度:1150、K値:69。
・第2のペースト塩化ビニル系樹脂
株式会社カネカ製の商品名「カネビニール」。K値:94。
・第3のペースト塩化ビニル系樹脂
株式会社カネカ製の商品名「カネビニール」。K値:68。
・サスペンション塩化ビニル系樹脂
株式会社カネカ製の商品名「カネビニール」。重合度:1050、K値:67。
・印刷シート(凸版フィルム製)
この印刷シートは、幅:192cm、長さ:500m、厚み:約12μmの塩化ビニル製フィルムと、前記フィルムに公知の印刷法にて公知のインキを用いて形成された厚み約1μmの意匠印刷層と、からなる。
[実施例1]
上記第1のペースト塩化ビニル系樹脂に、可塑剤(フタル酸ジオクチル)を混合することにより、ペースト塩化ビニル系樹脂の粘度を1000mPa・sに調整した。なお、前記粘度は、20℃で、リオン株式会社製のBM型粘度計(商品名「ビスコテスタ」)を用いて60rpmで測定した(粘度の測定は、実施例2及び3も同様)。
上記第1のガラスシートの表面に、汎用的なロールコーターを用いて、樹脂の目付量が20g/mとなるように、上記粘度のペースト塩化ビニル系樹脂を塗工することにより、樹脂付きガラスシートを作製した。
この樹脂付きガラスシートを表面側から観察したところ、厚み方向に開口を有しており、その通気度は、320cc/cm・secであった。また、樹脂付きガラスシートの厚みを測定したところ、約0.28mmであった。
なお、ガラスシート(ガラス不織布)及び樹脂付きガラスシートの各通気度の測定は、上記記載の通りで行った。
別途、上記サスペンション塩化ビニル系樹脂を、汎用的なカレンダー成形機を用いてカレンダー成形することにより、幅:193cm、長さ:3000m、厚み:0.2mmの樹脂層を作製し、これを保護層とした。
同様に、上記サスペンション塩化ビニル系樹脂を押出し加工することにより、幅:193cm、長さ:3000m、厚み:1.0mmの樹脂層を作製し、これを裏側樹脂層とした。
表面側から裏面側へ順に、保護層、印刷シート、樹脂付きガラスシート、裏側樹脂層及び吸着アクリルフォーム付きポリエステル不織布を重ね合わせ、その積層体をプレヒーターで150℃に加熱した状態で、その積層体を各50℃の上下のラミネートロール間に通すことにより、厚み約2mmの床シートを作製した。なお、樹脂付きガラスシートは、樹脂塗工面を印刷シート側に向けて積層し、吸着アクリルフォーム付きポリエステル不織布は、吸着部の形成された面と反対側の面を、裏側樹脂層側に向けて積層した。長さが短い材料は、その複数枚を長さ方向に継ぎ足しながら積層した(他の実施例も同様)。また、積層体の搬送速度は、約7m/分とし、積層体に加わる圧力は、35kgf/cmとした。このようにして、図16に示すような層構成の床シート(ただし、傷付き防止層は形成せず)を得た。
[実施例2]
上記第2のペースト塩化ビニル系樹脂に、充填剤(炭酸カルシウム)、可塑剤(フタル酸ジオクチル)、安定剤(Ba−Zn系安定剤)を混合することにより、粘度12000mPa・sのペースト塩化ビニル系樹脂(X1)を調整した。
上記第3のペースト塩化ビニル系樹脂に、充填剤(炭酸カルシウム)、可塑剤(フタル酸ジオクチル)、安定剤(Ba−Zn系安定剤)を混合することにより、粘度8000mPa・sのペースト塩化ビニル系樹脂(X2)を調整した。
上記第2のペースト塩化ビニル系樹脂に、充填剤(炭酸カルシウム)、可塑剤(フタル酸ジオクチル)、安定剤(Ba−Zn系安定剤)を混合することにより、粘度3000mPa・sのペースト塩化ビニル系樹脂(X3)を調整した。
ペースト塩化ビニル系樹脂(X1)を、ポリエステル不織布(旭化成(株)製の商品名「スパンボンド」。スパンボンドタイプ、目付量:50g/m)の上に層状に塗布し、その塗布した樹脂層の上に、第2のガラスシートを載せて密着させ、200℃でゲル化して積層体を作製した。この積層体は、裏面側から表面側へ順に、ポリエステル不織布/裏側樹脂層/第2のガラスシートであり、その厚みは1.2mmであった。
ペースト塩化ビニル系樹脂(X2)を、前記積層体の第2のガラスシートの上に厚み0.5mmで層状に塗布し、140℃〜150℃でプリゲル化した。さらに、そのプリゲル化した0.5mmの表側樹脂層の上に、印刷シート(この印刷シートは、厚み約0.13mmの塩化ビニル製フィルムと、前記フィルムに公知の印刷法にて公知のインキを用いて形成された厚み約130μmの意匠印刷層と、からなる)を積層し、その印刷シート上に表面に、ペースト塩化ビニル系樹脂(X3)を厚み0.15mmで層状に塗布し、200℃でゲル化することによって、床シートを得た。
実施例2の床シートの層構成は、裏面側から表面側へ順に、厚み1.2mmの積層体/厚み0.5mmの表側樹脂層/厚み約0.13mmの化粧層/厚み0.15mmの保護層である。
[実施例3]
上記サスペンション塩化ビニル系樹脂を押出し成形することにより、幅:193cm、長さ:3000m、厚み:1.0mmの樹脂層を作製した。
表面側から裏面側に順に、印刷シート(この印刷シートは、汎用的なカレンダー成形機を用いてカレンダー成形した、幅:192cm、長さ:500m、厚み:0.35mmの塩化ビニル系樹脂シートからなる)、前記厚み1mmの樹脂層、ポリエステル不織布((株)ヒロハシ製。寒冷紗)を重ね合わせ、その積層体を各50℃の上下のラミネートロール間に通すことにより、厚み約2mmの床シートを作製した。積層体の搬送速度は、約7m/分とし、積層体に加わる圧力は、35kgf/cmとした。
実施例3の床シートの層構成は、裏面側から表面側へ順に、ポリエステル不織布/樹脂層/化粧層である。
[比較例1]
株式会社ナガイ製の商品名「ワン楽フロア」を比較例1の床シートとした。
[比較例2]
東リ株式会社製の商品名「ホスピュリームNW」を比較例2の床シートとした。
[曲げ試験]
各実施例及び比較例の床シートについて、下記測定方法に従って計測した垂下量によって、表面側への曲げ剛性及び裏面側への曲げ剛性を評価した。
各床シートを幅:5cm、長さ:30cmに裁断してサンプル片を得た後、それを23℃、湿度50%RHの恒温室内に入れ、24時間放置した。
別途、図22(a)に示すように、測定用の台座と物差しを準備した。台座は、高さ20cmで、サンプル片よりも十分に大きな面積を有する直方体からなり、左右一対で構成される。右台座は、左台座に対して接離可能である。
<表面側への曲げ剛性(表面側への垂下量)の測定>
23℃下で、サンプル片の表面側を台座の表面側に向け、長さ10cm分のサンプル片の左側を左台座に且つ長さ20cm分のサンプル片の右側を右台座に跨がって載置した(同図(b)参照)。
同図(c)に示すように、サンプル片の左側の表面に固定用の重りを載せ、右台座を左台座から離反させて取り外した後、30秒後、サンプル片の右側の垂下量を物差しで計測した。垂下量は、台座の表面とサンプル片の右下角部との間の直線長さとした。この場合、サンプル片は表面側に曲がるので、前記垂下量が表面側への曲げ剛性となる。
<裏面側への曲げ剛性(裏面側への垂下量)の測定>
台座に載置するサンプル片の表面を裏面に変えたこと以外は、<表面側への曲げ剛性の測定>と同様にして、垂下量を計測した。この場合、サンプル片は裏面側に曲がるので、前記垂下量が裏面側への曲げ剛性となる。
なお、垂下量が小さいほど、曲げ剛性が大きく(硬く)、垂下量が大きいほど、曲げ剛性が小さい(軟らかい)。
また、実施例2及び3の床シートは、裏面に吸着部が設けられていないが、実施例1に使用したような吸着部は、極めて柔軟な発泡体からなり、非常に軟らかく且つ実質的に床シートの曲げ剛性に影響を与えないので、実施例2及び3の床シートも吸着部が設けられている床シートと同等に曲げ剛性を評価できる。
測定結果を表1に示す。
Figure 0006776028
[床シートの諸特性]
実施例1の床シートを、2枚準備し、コンクリート製床面の上に、吸着部を床面側にして、2枚の床シートの端部を突き合わせて敷設した。
敷設後の実施例1の床シートを目視により、不陸追従性及び目地隠蔽性を評価した。
不陸追従性の評価は、床面の不陸(凹凸)に床シートが追従しているかどうかを主たる基準とし、さらに、床シートの表面から不陸が見えるかどうかを従たる基準とした。目地隠蔽性の評価は、2枚の床シートの突き合わせ端部において、その端面(厚み面)が見えるかどうかを基準とした。
次に、床面に敷設した床シートを、その端部から捲り上げ、剥離性(剥がしやすさ)を評価した。
他の実施例及び比較例の床シートについても、同様にして床面上に敷設し、不陸追従性、目地隠蔽性及び剥離性を評価した。
それらの結果を表1に示す。
[評価]
表面側への曲げ剛性が裏面側への曲げ剛性よりも大きい、つまり、表面側に曲げ難い実施例1乃至3は、剥離性に優れていたが、表面側に曲げ易い比較例2では、床面から剥離し難いことが判る。特に、実施例1のように、表面側へ適度に曲がり且つ垂下量の差が40mmを超えている場合には、剥離性が極めて良好である。
また、実施例1乃至3は、比較例1及び2に比して、不陸追従性及び目地隠蔽性に優れている。特に、実施例1及び3のように、裏面側への垂下量が、115mmを超えている場合には、目地隠蔽性も良好である。
A 床シート
B 離型シート
1 シート本体
1a,1b シート本体の端部
2 吸着部
3 裏層
4 中間基材層
5 表層

Claims (3)

  1. 平面視略長方形状のシート本体と、前記シート本体の裏面に設けられ且つ床面に吸着する吸着部と、を有し、
    前記シート本体が、最裏面に基材層を有し、前記吸着部が、前記基材層の裏面から突設され且つ前記シート本体の長手方向に延びる平面視帯状の複数の凸部から形成されており、
    前記長手方向に沿って湾曲させたときの表面側への曲げ剛性が裏面側への曲げ剛性よりも大きい、床シート。
  2. 前記基材層が、不織布又は織布から形成され、前記吸着部が、発泡樹脂から形成されている、請求項1に記載の床シート。
  3. 前記シート本体が、軟質合成樹脂を含む樹脂層と、前記樹脂層の表面側に設けられた、硬化性樹脂を含む傷付き防止層と、を有する、請求項1または2に記載の床シート。
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