Nothing Special   »   [go: up one dir, main page]

JP6741614B2 - 希土類付活アルカリ土類ケイ酸塩化合物残光性蛍光体 - Google Patents

希土類付活アルカリ土類ケイ酸塩化合物残光性蛍光体 Download PDF

Info

Publication number
JP6741614B2
JP6741614B2 JP2017051119A JP2017051119A JP6741614B2 JP 6741614 B2 JP6741614 B2 JP 6741614B2 JP 2017051119 A JP2017051119 A JP 2017051119A JP 2017051119 A JP2017051119 A JP 2017051119A JP 6741614 B2 JP6741614 B2 JP 6741614B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
afterglow
phosphor
mol
rare earth
alkaline earth
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017051119A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018154686A (ja
Inventor
ちさき 三浦
ちさき 三浦
悦郎 宇田川
悦郎 宇田川
恒之 冨田
恒之 冨田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Mineral Co Ltd
Original Assignee
JFE Mineral Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Mineral Co Ltd filed Critical JFE Mineral Co Ltd
Priority to JP2017051119A priority Critical patent/JP6741614B2/ja
Publication of JP2018154686A publication Critical patent/JP2018154686A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6741614B2 publication Critical patent/JP6741614B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Luminescent Compositions (AREA)

Description

本発明は、昼間の太陽光および室内照明などによる紫外線励起により青緑〜橙色発光を示し、励起光遮断後も発光し続ける希土類付活アルカリ土類ケイ酸塩化合物残光性蛍光体に関する。
光源による励起を遮断した後も発光が可能な残光性蛍光体(蓄光材料)は、暗所における表示物として用いたり、電源消失時に効果を発揮する誘導標識や照明としての利用が期待されている。
従来の残光性蛍光体材料として、硫化亜鉛系蓄光材料や、青〜緑色発光を示すアルミン酸塩を母結晶とする蓄光材料が知られている。
暖色系残光を示す残光性蛍光体としては、比較的残光時間が長いものとして、次の1、2が知られている。
1.YS:Tix,Mgy,Gda (特許文献1)
2.CaS:Eu,Tmで表される化合物を主体とし、Caに対して、Euを10mol%含有し、Tmを10mol%含有すると共に、−3≦X≦−1、−3≦Y≦0の範囲であり、かつ0≦Y−X≦2であるもの(特許文献2)。
しかしながら、これら1、2の暖色系残光性蛍光体は、いずれも発光強度が弱く、硫化物系物質のため紫外線、熱に対する安定性や、耐候性などの長期安定性に大きな問題がある。
また、上記1、2とは別に、紫外線や熱に対して安定な金属酸化物の残光性蛍光体も知られている。
3.(Zn1−xMg)O・n(Ga1−yCr(組成式中のx、y及びnはそれぞれ下記の条件を満たす数値である。0≦x≦1.0、1×10−5≦y≦1×10−1、0.95≦n≦1.05)(特許文献3)
4.遷移元素及び希土類元素によって付活されたGe−O結合を含み、且つ、赤色に対する残光特性を有するゲルマン酸塩を主体とした化合物の焼成体からなる赤色蓄光蛍光体(特許文献4)
5.Ca1−XSrTiO:Pr赤色蓄光材料(非特許文献1参照)。
しかしながら、実用的な応用は困難であった。
特許文献5には Ca2−x−y−zSiOCe3+N(MはMg、Sr、Ba、Zn、Na、Al、Ga、Ge、P、As及びFeからなるグループから選択された少なくとも1つを含み、NはEu2+、Mn2+、Tb3+、Yb2+及びTm3+からなるグループから選択された少なくとも1つを含む)シリケート蛍光体(請求項1)が記載されている。また、シリケート蛍光体の原料混合物にMgF、MgCl、BaF、BaCl、SrF、SrCl、CaF、CaCl、NHF、NHCl及びLiFからなるグループから選択された少なくとも1つを融剤としてさらに含む(請求項7)ことが記載されている。
しかし、残光、蓄光性蛍光体、燐光等の記載やその測定結果を示すデータはないので蓄光性蛍光体ではない、または蓄光性について検討されていないことが理解できる。
WO2007/145167号公報 特開平9−59615号公報 特開平10−259375号公報 特開2001−26777号公報 特開2012−251147号公報
P.T. Diallo et al. Phys. Status SolidsiA 1997,160.255.
本発明の課題は、上記蓄光体(残光性蛍光体)の欠点を解消し、黄色〜赤色の残光を有し、初期の輝度および残光輝度に優れる希土類付活アルカリ土類ケイ酸塩化合物残光性蛍光体(以下、本発明の蛍光体または残光性蛍光体ということがある)を提供しようとする。
本発明では、既存の硫化物系による暖色系残光蛍光体の改良ではなく、希土類付活アルカリ土類ケイ酸塩化合物残光性蛍光体において残光時間、残光輝度を改善すべく、鋭意検討した結果、焼結の際の粒成長の促進が必要であることを見出し、その手段として焼結において液相を形成する融剤(以下、フラックスということがある)の利用が有効であることを見出した。
以下に、本明細書の用語を説明する。
発光: 無機物質によって吸収されたエネルギーが光として放出されることの総称。本明細書では、蛍光、残光のどちらをも指す。
励起光: 特定の発光を得る為に与えるエネルギー(光)のこと。
蛍光: 特定のエネルギー(光)を与えたときに生じる発光のこと。残光性蛍光体の場合、このようなエネルギー(光)を与えたときに生じる発光の状態では、発光と残光とを区別できない。
残光: 励起停止後も持続的に続く発光のこと。
すなわち本発明は、以下を提供する。
(1)Clを含有し、酸化分解−電量滴定法で測定されるClの含有量が50ppm以上、10000ppm以下である希土類付活アルカリ土類ケイ酸塩化合物残光性蛍光体(以下、本発明の蛍光体ということがある)。
(2)前記Clは、還元焼成時に添加されるアルカリ金属、アルカリ土類金属の塩化物または水酸化物の残留物である(1)に記載の希土類付活アルカリ土類ケイ酸塩化合物残光性蛍光体。
(3)還元焼成時に添加されるMgCl、CaCl、SrCl、BaCl、KCl、NaCl、LiCl、NHCl、Mg(OH)、Ca(OH)、Sr(OH)、Ba(OH)、KOH、NaOH、およびLiOHから成る群から選択される、少なくとも1つの融剤である(2)に記載の希土類付活アルカリ土類ケイ酸塩化合物残光性蛍光体。
(4)前記希土類付活アルカリ土類ケイ酸塩化合物残光性蛍光体が、Clを含有し、
式(1) (Sr2-x, M2-ySiO : N
ここで、xは、Si=1mol に対して、Mの含有量で、0.1mol≦x≦1.0mol、yは、Nの含有量で、0.001mol≦y≦0.100mol であり、Mは、Mg,CaおよびBaのうち少なくとも1つ、Nは、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu,Tb、ErおよびYbのうち少なくとも1つを含む、つまり金属Si:1モルに対して、Mの含有量は0.1mol以上1.0mol以下、Nの含有量は0.001mol以上0.100mol以下、で示される残光性蛍光体である(1)ないし(3)のいずれか1に記載の希土類付活アルカリ土類ケイ酸塩化合物残光性蛍光体。
(5)さらに、酸素気流中燃焼‐赤外線吸収法で測定される0.3 質量%以下の炭素を含有する(1)ないし(4)のいずれか1項に記載の希土類付活アルカリ土類ケイ酸塩化合物残光性蛍光体。
所定量の塩素を有する本発明の蛍光体は、残光特性が改善される。本発明の蛍光体は、フラックスを用いて還元焼成した場合、フラックスを用いないで還元焼成した時に得られるものと比べて、適切量含有させることが容易である。
TMA(熱機械分析)を用いて測定された実施例1(フラックスとしてCaClをCl量換算で1.0wt%添加したサンプル)と比較例1(フラックス無添加サンプル)における酸化雰囲気での焼結温度と被焼結体の収縮挙動を示すグラフである。 実施例1と比較例1で得られた残光性蛍光体の表面のSEM(走査型電子顕微鏡)写真(3000倍)である。 実施例1(Y軸の上側の線)と比較例1(Y軸の下側の線)で得られた残光性蛍光体の発光波長575nmに対する励起スペクトルを測定した結果を示すグラフである。PL intensityは、蛍光発光強度である。 実施例1(Y軸の上側の線)と比較例1(Y軸の下側の線)で得られた残光性蛍光体の励起波長365nmに対する発光スペクトルを測定した結果を示すグラフである。 実施例1(Y軸の上側の線)と比較例1(Y軸の下側の線)で得られた残光性蛍光体の残光の単一波長(575nm)を時間追跡したグラフである。 本発明の蛍光体の発光波長と色との関係の一例を示す図である(図5は色を示すカラー図であり別に上申書でカラー図を提出する)。
本発明の希土類付活アルカリ土類ケイ酸塩化合物残光性蛍光体は、暗所における表示物として用いられる残光性蛍光体表示物において、昼間の太陽光および室内照明などによる紫外線励起により青緑〜橙色発光を示し、励起光遮断後も発光し続ける残光(黄色〜赤色)性蛍光体で、フラックス添加による焼結効果により、残光特性を改善した残光性蛍光体である。S(硫黄)成分を含まないので耐候性に優れると予想される。発光色に関しては、照射する波長、母結晶相、希土類種によって発光の波長は若干移動するので特定範囲であると記載することはできないが、例えば本発明の蛍光体の発光波長と色との関係の一例を図5に示す(カラー図は上申書で提出)。
特許文献1には、段落[0003]に「一般に、蛍光体は、残光時間が極めて短く、紫外線、電子線または可視光線等の照射による外部刺激を停止すると発光が速やかに減衰するが、例外的にこれら紫外線等の照射による外部刺激を与えてから、この外部刺激を停止した後であっても、例えば数10分から数時間程度の長時間に渡って残光を肉眼で確認できるものがある。そして、蛍光体のうち、長時間に渡って残光を肉眼で確認できるものは、通常の蛍光体と区別して蓄光性蛍光体や燐光体等と呼ばれている。」ことが記載される。したがって蓄光性、燐光体、残光等の記載がない一般的な蛍光体の記載は、残光を示さないか、または残光を示すことが知られていない蛍光体であると理解される。なお一般的にケイ酸塩化合物は蛍光体である場合も残光を示さない。
(本発明の希土類付活アルカリ土類ケイ酸塩化合物残光性蛍光体)
本発明の希土類付活アルカリ土類ケイ酸塩化合物残光性蛍光体は、希土類N,例えばEu(ユウロピウム),Dy(ジスプロシウム),Tb(テルビウム),Sm(サマリウム)、Ce(セリウム),Pr(プラセオジム),Nd(ネオジム),Er(エルビウム),およびYb(イッテルビウム)等を含み、Sr(ストロンチウム)の一部がアルカリ土類で置換されたケイ酸塩化合物で、アルカリ土類は、例えばMg(マグネシウム),Ca(カルシウム),Ba(バリウム)等を含むケイ酸塩化合物で残光を示す蛍光体であり、Cl(塩素)を含みその含有量が10000ppm以下であれば、特に限定されない。
好ましくは、希土類付活アルカリ土類ケイ酸塩化合物残光性蛍光体が、Clを50ppm以上、10000ppm以下含有し、好ましくは式(1) (Sr2-x, M2-ySiO : N の化合物である。
本発明においては、蛍光体の基本組成x、yおよびNにおける希土類の比率は限定されないが好ましくは以下である。
ここで、M=Mg,Ca,Baのうち少なくとも1つ、N=Ce,Pr,Nd,Sm、Eu,Tb,Dy,Er,およびYbなどのうち少なくとも1つを含み、金属Si:1モルに対して、Mの含有量は0.1mol以上1.0mol以下、Nの含有量は0.001mol以上0.100mol以下である。したがってxは、Si=1mol に対して、Mの含有量で、0.1mol≦x≦1.0mol、yは、Nの含有量で、0.001mol≦y≦0.100molである。
残光を示すとは、紫外線、電子線または可視光線等の照射による外部刺激を与えてから、外部刺激を停止した後も、数分以上、肉眼で確認できる発光を示すものをいう。本発明の蛍光体では、初期(励起光源遮蔽後1分)の残光強度で約3倍、10分後の残光強度は比較例で検出限界以下であるのに対して、十分な残光強度が認められた。
本発明の希土類付活アルカリ土類ケイ酸塩化合物残光性蛍光体の組成の測定は、蛍光X線法、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)等何れの分析方法を用いてもよく、限定されない。Cl含有量の測定は酸化分解−電量滴定法で測定できる。C、O等の有機成分は、ガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)で分析し、その他の成分は化学滴定分析で分析してもよい。有機元素分析では、C,O,H、N等を燃焼酸化炉で燃焼分解し、定量的にH2O,CO2,N2に変換し,これらの各成分を熱伝導度検出器により定量する方法がある。C含有量は、酸素気流中燃焼−赤外線吸収法で測定できる。元素分析において、いずれの場合も、分析方法は限定されない。
本発明の残光性蛍光体は、下記製造方法で説明する融剤である各種アルカリ金属、アルカリ土類の塩化物等を混合することで液相形成、粒成長、緻密化といった焼結の進行に対し、使用原料の炭酸塩の分解、融剤成分の分解、消失が並行して進む。多くのセラミックス材料においては、融剤として用いたCl残渣は、洗浄などによって徹底的に除去されるのが一般的であるが、本発明では、これらの高温での焼結挙動において、最終的な緻密化の過程で意図的にCl量を残留させ、この量をパラメーターとすることで、課題の一つである残光時間、残光輝度を改善することが可能となった。本発明の残光性蛍光体はClの残留量が多すぎると特性は劣化する。最終製品である本発明の残光性蛍光体中に10000ppm以下のClを含有する場合は、残光時間、残光輝度が改善される。Clの残留量は、好ましくは20ppm〜10000ppm、より好ましくは20ppm〜5000ppm、さらに好ましくは30ppm〜2000ppm、特に好ましくはく50ppm〜400ppmである。
最終製品である本発明の蛍光体中の残留炭素量は残光時間、残光輝度が改善されるので0.3質量%以下が好ましく、20ppm〜2500ppmがより好ましい。
図2に、実施例1と比較例1で得られた残光性蛍光体の表面のSEM(走査型電子顕微鏡写真)写真(3000倍)を示す。フラックスなしの比較例1では、丸みをおびた微細な一次粒子が集合した状態が観察され、粒子どうしの結合は指先でもほぐせる程度であった。一方、フラックス添加品で所定量のClを含有する本発明の蛍光体(実施例1)は液相が維持されるので粒同士が融解して、巨大な球状粒子となっていることが分かる。
1.本発明の希土類付活アルカリ土類ケイ酸塩化合物残光性蛍光体の製造方法
(原料の混合と酸化焼成)
本発明の希土類付活アルカリ土類ケイ酸塩化合物残光性蛍光体(以下、本発明の残光性蛍光体ということがある)の製造は、原料の金属元素を含む溶媒に溶解する化合物、例えば金属有機化合物、硝酸塩を用い前駆体の金属有機化合物原料については、金属有機酸塩、βジケトナート、金属アルコキシドなどを用いることができる。具体的には、金属酢酸塩、金属2エチルヘキサン酸塩、金属アセチルアセトナート、金属ナフテン酸塩などがあげられるが、溶媒に溶解する金属有機化合物であれば、特に制限なく用いることができる。溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、ベンゼン、アセチルアセトナート、エチレングリコール、水などが好ましい。
また、溶媒等に解けない金属を含む化合物、たとえば、金属オレイン酸塩、金属ステアリン酸塩、酸化物、炭酸塩などの固体材料も用いることができる。固体材料の混合は、ボールミルにより均一に混合するとともに粒子化した溶媒を含んでもよい原料を用いる。湿式混合の場合は、混合後、溶媒を除去するために乾燥を行うのが好ましい。有機金属化合物や硝酸塩を原料に用いた場合は、500℃未満の温度において溶媒、有機成分の除去を行う工程、500℃以上1500℃未満の焼成工程、1500℃以上の焼成工程を任意に組み合わせてまたは単独の工程で焼成してもよい。
(脱炭工程)
本発明の残光性蛍光体は、合成時の原料が炭酸塩、水酸化物など、酸化物の形態をとらない場合があり、特に炭酸塩を原料として用いた場合の脱炭が重要となる。本発明では、フラックスを添加する前に、各種炭酸塩原料を混合したものを酸化雰囲気で仮焼する工程を含む。本工程においては、蛍光体原料の焼結の抑制と脱炭の促進を最適化したもので、仮焼温度は1050℃以下であり、好ましくは450℃以上1050℃以下である。1050℃より高い温度では、脱炭は促進するが、原料混合粉の結晶化が進み、還元焼成時に添加する希土類元素の置換固溶を阻害することが分かっている。残留炭素量は0.3質量%以下が望ましい。0.3質量%より多い場合は次工程の還元焼成における焼結阻害、残光特性の劣化が認められる。
希土類の添加は最初から原料中に添加してもよいし、仮焼粉を解砕する際に、希土類を添加してもよい。
(融剤の添加)
塩化物の融剤として使用できるのはMgCl、CaCl、SrCl、BaCl、KCl、NaCl、LiCl、NHCl、などのアルカリ金属、アルカリ土類であるが、好ましくは、CaCl、NaClである。融剤としては、これらの塩化物の他にMg(OH)、Ca(OH)、Sr(OH)、Ba(OH)、KOH、NaOHおよびLiOHなどの水酸化物も効果があり、これらから選ばれる少なくとも1種類以上を、還元焼成前の仮称粉の粉砕時に添加するか、還元焼成時に添加する。融剤として水酸化物と塩化物とを併用してもかまわない。
仮焼粉を解砕する際に、フラックスをCl量として、最終製品である本発明の蛍光体中に0.05質量%以上、5.0質量%未満の範囲で添加するのが好ましい。0.05質量%未満では液相生成量が少なく、粒成長がわずかとなる。5.0質量%以上であると、粒成長は大きいものの、残留するCl量が多くなり、残光特性を劣化させる。
(還元焼成)
希土類、フラックスを添加した仮焼粉である酸化焼成原料は、還元焼成の際は粉状のまま、あるいはプレス成形によってペレット状として用いてもよい。
還元焼成は、3体積%H−97体積%Nからなる水素雰囲気で1300〜1500℃で2〜6時間焼成し、本発明の残光性蛍光体を得る。示唆熱分析(TG)による熱減量特性、および熱機械分析(TMA、ここで還元雰囲気下での焼結挙動の特性は、大気雰囲気下で測定した。)による収縮挙動などを用いて焼結挙動を鋭意調査した結果、フラックスの種類と添加量の最適化、および仮焼時の残留炭素量の最少化により、Tf0=Ts1<Td1=Tf1<Tf2=Td2<Ts2となる粒成長に対して好ましい条件が明らかとなった。
ここで、Tf0:フラックスが液相を形成する温度、
Ts1:酸化焼成原料の凝集開始温度、
Td1:残留炭素の脱炭開始温度、
Tf1:液相の分解開始温度、
Tf2:液相の分解終了温度、
Td2:脱炭終了温度、
Ts2:焼結が進行し収縮が始まる温度、であり、
具体的には、Tf0は300℃〜600℃、Tf1は400℃〜800℃、Tf2は600℃〜900℃であり、Ts2は700℃以上である。
図1に、TMA(熱機械分析)を用いて測定された実施例1と比較例1における3体積%H−97体積%Nからなる水素雰囲気での焼結温度と被焼結体の収縮挙動の違いを示す。図1から、実施例1と比較例1は両者とも約300℃で凝集・再配列による収縮が見られるが、液相の生成過程にある実施例1では、凝集による収縮に引き続き、液相を保持している間は収縮が停止する。実施例1では液相が低温側で生じて液相が保持されるやや平坦な収縮が停止するやや平坦な期間が見られるが、比較例1では液相が見られず凝集の進行後脱炭による減量時にわずかに膨張を起こし、その後1050℃の測定終了まで収縮率は一定となり、焼結が進行していないことがわかる。実施例1は脱炭と液相成分の分解がほぼ同時に起こり、膨張挙動は比較例1に比べて大きくなる。実施例1は脱炭と液相成分の消失後の約800℃から急激に収縮が起こり、最終的な収縮率は比較例1と同等となった。
上記の還元焼結工程での挙動の違いは、実施例1と比較例1で得られた残光性蛍光体の表面SEM(走査型電子顕微鏡写真)写真(3000倍)を示す図2でも示されている。すなわち実施例1で得られた本発明の残光性蛍光体のSEM(走査型電子顕微鏡写真)写真は、液相の存在により滑らかな粒成長が起こり得られる残光性蛍光体の均質性が高いことが示されているが、比較例1では還元焼結時に液相が見られないことから、焼結前の粒子がわずかにネッキングしている様子が示される。
還元焼成によって得られた焼結粉、あるいは焼結ペレットは、粒子径75μm以下の範囲で粉砕し、必要に応じて分級を行い、評価用サンプルとした。分級は、残光輝度、および残光時間に好適な影響を及ぼすことが明らかとなったが、本発明の残光性蛍光体の利用においては、特に最終粒径については限定されない。
発明者は、本発明のメカニズムは限定されないが、以下であると考えている。本発明の残光性蛍光体は希土類の最適化で残光を示し、融剤の添加と焼成条件に起因したClの意図的な残存による粒径制御により、その残光時間が長くなっていると考えている。本発明の製造条件は本発明の残光性蛍光体を限定するものではないが、実験室的には本発明の残光性蛍光体を製造する好ましい方法である。
1)最終製品である本発明の残光性蛍光体中に10000ppm以下のClを含有する
場合は、残光時間、残光輝度が改善される。
2)上記1)の条件で最終製品中にClを残すための好ましい製造条件は、二段階の雰囲気焼成であり、大気中での酸化焼成と水素含有雰囲気での還元焼成を行う。融剤の添加は酸化焼成の前、または、酸化焼成後、還元焼成の前に行うのが好ましい。
3)脱炭工程は炭素をある程度除去するとともにその後の還元工程で上記1)の条件で最終製品中にClを残すために重要である。すなわち、脱炭工程は母結晶の結晶相が決まらない温度で、つまり結晶化しない条件で、できるだけ低温で炭素を除去するのが好ましい。好ましい酸化焼成(脱炭工程)の条件は1050℃×4時間で、温度を低くする場合は時間を長くする。ただし、温度は1100℃を超えない条件とする。
<実施例1>
(1)原料の混合および仮焼
主要原料であるSr、Ca、Siを、SrCO:CaCO:SiO= 1.583:0.383:1.0の組成比(mol)、また、希土類としてEu、Dyを金属Si=1molに対してそれぞれ0.0025、0.015の組成比(mol)で添加し、湿式混合、乾燥後、大気中1050℃×4時間で焼成し、仮焼粉を得た。
(2)フラックスの添加
仮焼粉を乳鉢で解砕する際に、フラックスとしてCaClを全重量に対してCl換算量で1.0質量%添加し、混合した。実施例1、比較例1〜3のフラックスの添加量を表1に示す。
(3)還元焼成
混合粉をアルミナボートに入れて、水素雰囲気で1400℃×4時間焼成して残光性蛍光体を得た。得られた残光性蛍光体は、粒径75μm以下に粉砕し、光学特性評価用サンプルとした。残留Cl量および残留炭素量を比較例1の結果と共に表1に示す。
得られた残光性蛍光体の表面のSEM(走査型電子顕微鏡)写真を比較例の写真と共に図2に示す。
(4)発光波長575nmのとき、290nm〜400nmにピークを持つ励起スペクトルを示した(図3A)。
(5)励起波長365nmのとき、500nm〜600nmにピークを持つ発光スペクトルを示した(図3B)。
(6)紫外線365nmを5分間照射し、照射停止後から残光の単一波長(575nm)を時間経過と共に追跡した結果を図4に示す。7分以上残光を示した。
(7)還元焼成後のサンプルの組成は蛍光X線法(XRF)によって測定したところ、Sr、Ca、Si、Eu、およびDyは仕込み組成と良い一致をみた。酸化分解−電量滴定法(株)三菱化学アナリテック・TOX−2100H型を用いて測定されるClの値は約400ppmであった。
また、酸素気流中燃焼−赤外線吸収法による炭素量は0.01質量%であった。
(8)得られた残光性蛍光体は、X線回折法(XRD)よりSrSiO(斜方晶;Pnma(62))または、Ca0.5Sr1.5SiO(斜方晶:Pmnb(62))を主相とする2相以上の結晶相から構成される化合物が得られた。
<比較例1〜3>
実施例に対し、フラックスCaClを添加しなかった以外は実施例1と同様の工程で比較例1の残光性蛍光体を得た。残留Cl量および残留炭素量を表1に示す。得られた残光性蛍光体の表面のSEM写真を図2に示す。比較例1は、実施例1と同様に発光波長575nmで励起すると、290nm〜400nmにピークを持つ励起スペクトルを示し(図3A)。紫外線365nmで励起すると、500nm〜600nmにピークを持つ発光スペクトルを示した(図3B)。紫外線365nmを5分間照射し、照射停止後から残光の単一波長を時間経過と共に追跡した結果を図4に示す。表1に示すように残光は10分後には0%で検出限界以下であった。残光強度は、各経過時間における実施例1の残光強度を100%とした相対値で示す。
CaClの添加量が、残光性蛍光体が含有するCl量が50ppmより少ない比較例2と、400ppmを超える比較例3の場合の光学特性を表1に示す。
<実施例2〜6>
CaCl以外の塩化物をフラックスに用い、実施例1と同様の工程で実施例2〜6の残光性蛍光体を得た。光学特性(1分後、10分後)を、表2に示す。
本発明の希土類付活アルカリ土類ケイ酸塩化合物残光性蛍光体は、暗所における表示物として用いられる残光性蛍光体表示物、電源消失時に効果を発揮する誘導標識や照明として利用され、昼間の太陽光および室内照明などによる紫外線励起により青緑〜橙色発光を示し、励起後も発光し続ける残光(黄色〜赤色)性蛍光体である。残光特性が高いので暗所における表示物として産業上有効に利用できる。また成分に硫黄(S)成分を含まないので耐候性に優れると予想され、産業上の有用性が高い。

Claims (2)

  1. Clを含有し、酸化分解−電量滴定法で測定されるClの含有量が50ppm以上、10000ppm以下であり
    式(1) (Sr 2-x , M 2-y SiO : N
    ここで、xは、Si=1molに対して、Mの含有量で、0.1mol≦x≦1.0mol、yは、Nの含有量で、0.001mol≦y≦0.100molであり、Mは、MgおよびCaのうち少なくとも1つ、Nは、Euと、Pr,Nd,Sm,Tb,Dy,Er,およびYbからなる群から選択される少なくとも1つを含む、
    で示されることを特徴とする希土類付活アルカリ土類ケイ酸塩化合物残光性蛍光体。
  2. さらに、酸素気流中燃焼−赤外線吸収法で測定される0.3 質量%以下の炭素を含有する請求項1に記載の希土類付活アルカリ土類ケイ酸塩化合物残光性蛍光体
JP2017051119A 2017-03-16 2017-03-16 希土類付活アルカリ土類ケイ酸塩化合物残光性蛍光体 Active JP6741614B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017051119A JP6741614B2 (ja) 2017-03-16 2017-03-16 希土類付活アルカリ土類ケイ酸塩化合物残光性蛍光体

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017051119A JP6741614B2 (ja) 2017-03-16 2017-03-16 希土類付活アルカリ土類ケイ酸塩化合物残光性蛍光体

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018154686A JP2018154686A (ja) 2018-10-04
JP6741614B2 true JP6741614B2 (ja) 2020-08-19

Family

ID=63717663

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017051119A Active JP6741614B2 (ja) 2017-03-16 2017-03-16 希土類付活アルカリ土類ケイ酸塩化合物残光性蛍光体

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6741614B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN117801820B (zh) * 2023-12-28 2024-07-05 广州珠江光电新材料有限公司 一种红色长余辉材料及其制备方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018154686A (ja) 2018-10-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
WO2015099145A1 (ja) 蛍光体、及び蛍光体の製造方法
CN102378800B (zh) 铝氧化物荧光体及其制造方法
Sivakumar et al. Low-temperature synthesis of Zn2SiO4: Mn green photoluminescence phosphor
Park et al. Luminescent properties of CaAl4O7 powders doped with Mn4+ ions
JP5578739B2 (ja) アルカリ土類金属シリケート蛍光体及びその製造方法
Teng et al. The development of new phosphors of Tb3+/Eu3+ co-doped Gd3Al5O12 with tunable emission
Yang et al. Ultraviolet long afterglow emission in Bi3+ doped CdSiO3 phosphors
JP6465417B2 (ja) 蓄光性蛍光体及びその製造方法
Khattab et al. Preparation of strontium aluminate: Eu2+ and Dy3+ persistent luminescent materials based on recycling alum sludge
JP4628957B2 (ja) 蓄光性蛍光体及びその製造方法
JP2010520334A (ja) 赤色発光性ホウ酸塩蛍光体の製造方法
JP6741614B2 (ja) 希土類付活アルカリ土類ケイ酸塩化合物残光性蛍光体
JP3826210B2 (ja) 希土類複合酸化物蛍光体
JP3559210B2 (ja) 耐熱・耐水性・高輝度・長残光性黄緑発光色蓄光体及びその製造法
JP2000001672A (ja) 蓄光性蛍光体微粒粉末及びその製造方法
RU2506301C2 (ru) Люминесцирующий материал для твердотельных источников белого света
JP2011052136A (ja) 長残光蛍光体
CN106147767B (zh) 一种长余辉发光材料及其制备方法
JP6350123B2 (ja) 硫化物蛍光体の製造方法
JP2014523952A (ja) 蛍光体前駆体組成物
JP3600048B2 (ja) アルミン酸塩系蛍光体の製造方法
CN114058371A (zh) 一种黄光长余辉发光材料及其制备方法和应用
KR101565910B1 (ko) 장잔광 특성이 우수한 스트론튬 알루미네이트계 형광체의 제조방법
US8017039B2 (en) Fluorescent body for use in a near-ultraviolet excitation light-emitting element
JP3209724B2 (ja) 微粒子状の蓄光性蛍光粉の製造方法及び微粒子状の蓄光性蛍光粉

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190704

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20190704

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200313

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200317

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200508

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200721

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200727

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6741614

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250