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JP6635506B2 - フルオレン骨格を有するジアミン、ポリアミック酸、及びポリイミド - Google Patents

フルオレン骨格を有するジアミン、ポリアミック酸、及びポリイミド Download PDF

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JP6635506B2
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Description

本発明は、ポリイミド樹脂等の原料として有用なフルオレン骨格を有する新規なジアミン及び前記ジアミンを用いたポリアミック酸、ポリイミドに関する。
ポリイミドは優れた機械特性、電気特性、耐熱性、耐薬品性を有し、電気・電子材料、特に半導体用電子材料の分野で、フレキシブルプリント配線用基板、層間絶縁膜、保護膜等として広く利用されている。このようにさまざまな用途に使用されるポリイミドの中でも、下記式(4)
Figure 0006635506
で表されるフルオレン骨格を有する9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(以下BAPFと称することもある)から製造されるポリイミドは、耐熱特性に優れると同時に、比誘電率が低いといった特徴からデバイスの電気絶縁有機材料として利用されたり、高選択分離性及び高ガス透過性といった特徴を有すると同時に耐熱性や機械的強度にも優れるといった特性を有することから分離膜材料としての利用等が為されている(例えば特許文献1、2)。
しかしながら、BAPFから得られるポリイミドフィルムは脆く、ロール・ツー・ロールでのフィルム製造においてフィルムに割れが生じるなど加工性、生産性に難があり、工業的製造が困難である場合があることが判明した。
特開2005−298625号公報 特開平05−031341号公報
本発明の目的は、フルオレン骨格を有し、かつ、従来公知のBAPFから得られるポリイミドフィルムの欠点である脆弱性が改良されたポリイミド及び該ポリイミドを製造するためのジアミン化合物を提供することにある。
発明者らが鋭意研究を重ねた結果、フルオレン骨格とスピロ構造とを併せ持つジアミンから得られる特定のポリイミドが、フルオレン骨格を有しているにもかかわらず脆弱性が改善されることを見出した。具体的には以下の発明を含む。
[1]
下記式(1)で示されるフルオレン骨格を有するジアミン化合物。
Figure 0006635506
(式中、Zはエーテル結合(−O−)又はエステル結合(−OCO−)を表す。R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数4〜12のシクロアルキル基、又は炭素数6〜12の芳香族基を表し、m及びnは0または1〜3の整数を表す。なお、R及び/又はRが複数存在する場合、それぞれは同一でも異なっていても良い。R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数4〜12のシクロアルキル基、又は炭素数6〜12の芳香族基を表し、p及びqは0または1〜4の整数を表す。なお、R及び/又はRが複数存在する場合、それぞれは同一でも異なっていても良い。)
[2]
下記式(2)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸。
Figure 0006635506
(式中、Z、R、R、R、R、m、n、p及びqの意味は上述の通りである。また、Aは酸二無水物残基を示す。)
[3]
下記式(3)で表される繰り返し単位を有するポリイミド。
Figure 0006635506
(式中、Z、R、R、R、R、m、n、p、q及びAの意味は上述の通りである。)
本発明のフルオレン骨格を有するジアミン化合物から得られるポリイミドは、フルオレン骨格を有しているにもかかわらず脆弱性が改善されることから、ポリイミドフィルムの際、ロール・ツー・ロール製法が可能となり、大幅な生産性の向上と加工コストの軽減が可能となる。更には、高屈折率・高透明性といった特徴を兼ね備えていることから、特に光学材料、電子材料として好適に用いることが可能である。
実施例1で製造した、上記式(1)で表わされるフルオレン骨格を有するジアミン化合物(A−1)のH−NMRスペクトルである。 実施例2で製造した、上記式(1)で表わされるフルオレン骨格を有するジアミン化合物(A−2)のH−NMRスペクトルである。 実施例3で製造した、上記式(1)で表わされるフルオレン骨格を有するジアミン化合物(A−3)のH−NMRスペクトルである。
<フルオレン骨格を有するジアミン化合物>
以下、本発明をその実施の形態とともに記載する。本願発明におけるフルオレン骨格を有するジアミン化合物は以下式(1)で表される。
Figure 0006635506
(式中、Zはエーテル結合(−O−)又はエステル結合(−OCO−)を表す。R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数4〜12のシクロアルキル基、又は炭素数6〜12の芳香族基を表し、m及びnは0または1〜3の整数を表す。なお、R及び/又はRが複数存在する場合、それぞれは同一でも異なっていても良い。R及びRはそれぞれ独立して炭素数1〜12のアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数4〜12のシクロアルキル基、又は炭素数6〜12の芳香族基を表し、p及びqは0または1〜4の整数を表す。なお、R及び/又はRが複数存在する場合、それぞれは同一でも異なっていても良い。)
上記式(1)中、置換基R〜Rにおける炭素数1〜12のアルキル基として例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖状又は分岐状アルキル基を挙げることができ、好ましくは炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状アルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状アルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜3の直鎖状又は分岐状アルキル基である。炭素数4〜12のシクロアルキル基として例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アルキル(例えば、炭素数1〜4のアルキル)置換シクロペンチル基、アルキル(例えば、炭素数1〜4のアルキル)置換シクロヘキシル基等の炭素数4〜16(好ましくは炭素数5〜8)で表されるシクロアルキル基又はアルキル置換シクロアルキル基を挙げることができ、好ましくはシクロペンチル基又はシクロヘキシル基である。炭素数6〜12の芳香族基として例えば、フェニル基、アルキル(例えば、炭素数1〜4のアルキル)置換フェニル基、ナフチル基を挙げることができ、好ましくはフェニル基又はアルキル置換フェニル基(例えば、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基等)であり、より好ましくはフェニル基である。ハロゲン原子としてはフッ素、塩素、臭素等が例示され、好ましくは塩素または臭素である。
上記式(1)中、R及びRの置換基数を表すm及びnは0または1〜3の整数であり、好ましくは0または1、更に好ましくは0である。R及びRの置換基数を表すp及びqは0または1〜4の整数であり、好ましくは0または1、更に好ましくは0である。
上記式(1)中、結合を表すZはエーテル結合(−O−)又はエステル結合(−OCO−)を表し、上記式(1)で表されるジアミン化合物の融点が高く、該ジアミン化合物から得られるポリイミドがより高屈折率になることから、Zはエステル結合であることが好ましい。
以上詳述した上記式(1)で表されるフルオレン骨格を有するジアミン化合物の中でも、原料の入手性・得られるジアミン化合物の高融点化(高耐熱化)・該ジアミン化合物から得られるポリイミドの高屈折率化の観点から、結合を表すZがエステル結合であるものの中でも、m=n=p=q=0(即ちすべての置換基が水素原子であるもの)及び、R〜Rのうち少なくとも一つが炭素数1〜6のアルキル基であるものが好ましい。
以下に上記式(1)で表されるフルオレン骨格を有するジアミン化合物の具体例(以下式A−1〜A−3)を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
Figure 0006635506
Figure 0006635506
Figure 0006635506
以上に詳述した上記式(1)で表わされるフルオレン骨格を有するジアミン化合物は、フルオレン骨格を有することに加えてキサンテン骨格を持つことで、高耐熱性、高屈折率といった特性を示す。例えば、その屈折率は、上記式(1)で表わされるフルオレン骨格を有するジアミン化合物の置換基やその種類、不純物の有無、含有率によって変動し得るが、例えば、後述する測定法によって測定した、上記式(1)で表わされるフルオレン骨格を有するジアミン化合物自身の屈折率が1.62以上となる。さらには1.64以上、なおさらには1.66又はそれ以上の屈折率を示す。そのため、上記式(1)で表わされるフルオレン骨格を有するジアミン化合物をモノマーとして樹脂化合物を製造した際、得られる樹脂化合物の屈折率が高くなる。例えば、上記式(1)で表わされるフルオレン骨格を有するジアミン化合物から製造されるポリイミドの屈折率は、1.65以上、更には1.66以上、特には1.67又はそれ以上の屈折率を示す。
また、上記式(1)で表わされるフルオレン骨格を有するジアミン化合物の融点も、置換基やその種類、不純物の有無、含有率によって変動し得るが、Zがエーテル結合である場合には230℃以上、Zがエステル結合である場合には320℃以上又はそれ以上の融点を示す。
<フルオレン骨格を有するジアミン化合物の製造方法>
本発明の上記式(1)で表されるフルオレン骨格を有するジアミン化合物は公知の方法により合成することができる。例えば、下記式(5):
Figure 0006635506
(式中、Rは水素原子またはアセトキシ基を示す。R、R、m、nの意味は上述の通りである。)
で表されるフルオレン骨格とスピロ構造とを併せ持つジオール類(以下スピロフルオレン類と称することもある。)と下記式(6):
Figure 0006635506
(式中、Xはハロゲン原子を示し、Rは炭素数1〜12のアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数4〜12のシクロアルキル基、又は炭素数6〜12の芳香族基を表し、rは0または1〜4の整数を表す。Rが複数存在する場合、それぞれは同一でも異なっていても良い。)
で表されるハロゲン化ニトロベンゼン類を反応させて、下記式(7):
Figure 0006635506

(式中、R、R、R、R、m、n、p、qの意味は上述の通りである。)
で表されるビス(ニトロフェニルエーテル)体とし、次いでニトロ基を還元することで、本発明の下記式(8)
Figure 0006635506
(式中、R、R、R、R、m、n、p、qの意味は上述の通りである。)
で表されるフルオレン骨格を有するジアミン化合物(上記式(1)においてZがエーテル結合であるもの)を製造することができる。
また、例えば、上記式(5)で表されるスピロフルオレン類と下記式(9):
Figure 0006635506
(式中、Xはヒドロキシル基またはハロゲン原子を示し、Rは炭素数1〜12のアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、炭素数4〜12のシクロアルキル基、又は炭素数6〜12の芳香族基を表し、sは0または1〜4の整数を表す。Rが複数存在する場合、それぞれは同一でも異なっていても良い。)
で表されるニトロ化安息香酸類又はその誘導体を反応させて、下記式(10):
Figure 0006635506
(式中、R、R、R、R、m、n、p、qの意味は上述の通りである。)
で表されるビス(ニトロフェニルエステル)体とし、次いでニトロ基を還元することで、本発明の下記式(11)
Figure 0006635506
(11)
(式中、R、R、R、R、m、n、p、qの意味は上述の通りである。)
で表されるフルオレン骨格を有するジアミン化合物(上記式(1)においてZがエステル結合であるもの)を製造することができる。
原料として使用する上記式(5)で表されるスピロフルオレン類は、市販品を用いてもよく、また、慣用の方法、例えば特開2006−36648号公報や特開2014−237605号公報に記載される方法にて製造することができる。上記式(5)で表されるスピロフルオレン類の純度は、所望の上記式(1)で表されるフルオレン骨格を有するジアミン化合物の純度が向上させやすいことから、通常、95重量%以上、好ましくは99重量%以上のものを用いる。
<上記式(7)で表されるビス(ニトロフェニルエーテル)体の製造方法>
上記式(7)で表されるビス(ニトロフェニルエーテル)体の製造方法として例えば、塩基性化合物存在下、上記式(5)で表されるスピロフルオレン類と上記式(6)で表されるハロゲン化ニトロベンゼン類とを反応することにより得られる。(以下、エーテル化反応と称することもある。)
エーテル化反応に用いられる上記式(6)で表されるハロゲン化ニトロベンゼン類の使用量は通常、上記式(5)で表されるスピロフルオレン類1モルに対して、2モル〜10モル使用し、好ましくは2モル〜4モル使用する。ハロゲン化ニトロベンゼンの使用量を2モル以上とすることにより反応速度を向上することが可能であり、10モル以下とすることにより、より選択的に反応を進行させることが可能となる。
エーテル化反応に用いられる塩基性化合物として例えば、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の、アルカリ金属の水酸化物、炭酸水素塩、炭酸塩やアルコキシド化合物を挙げることができる。これら塩基性化合物は、単独で、又は混合物として、上記式(5)で表されるスピロフルオレン類1モルに対して、通常は1モル〜10モル、好ましくは1.5モル〜5モル、さらに好ましくは1.5モル〜3モル使用する。使用量を1モル以上とすることにより反応速度を向上させることが可能となり、10モル以下とすることにより不純物の生成を抑制することが可能となる。
エーテル化反応を行う際、更に第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、クラウンエーテル等の環状ポリエーテル、クリプテート等の含窒素環状ポリエーテル、含窒素鎖状ポリエーテル、ポリエチレングリコール、そのアルキルエーテル等の化合物や、銅粉、銅塩のような銅化合物を添加しても良い。これらの化合物を使用する場合、その種類によって異なるが、通常上記式(5)で表されるスピロフルオレン類1重量倍に対し0.01〜200重量%、好ましくは、0.01〜10重量%使用する。
エーテル化反応を行う際、必要に応じ有機溶媒を使用することができる。使用可能な有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン溶媒、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、スルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒を挙げることができる。好ましくはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の非プロトン性極性溶媒である。これら有機溶媒は、単独で、又は混合物として使用することができる。これら有機溶媒を使用する際の使用量は、上記式(5)で表されるスピロフルオレン類1重量倍に対し、通常、1〜20重量倍、好ましくは1〜7重量倍である。
エーテル化反応を行う際、通常、50℃〜250℃、好ましくは50℃〜200℃、さらに好ましくは50℃〜180℃で反応を行う。反応温度を250℃以下とすることにより副生成物の生成が抑制可能となり、反応温度を50℃以上とすることにより反応速度が向上する。
エーテル化反応終了後、通常、反応系に水及び水と分離可能な有機溶媒を加え、水洗を行い、ビス(ニトロフェニルエーテル)体を有機溶媒層に抽出する。この水洗操作により副生した塩類を除去する。ビス(ニトロフェニルエーテル)体を抽出するための有機溶媒として例えば酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル等のエーテル溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が使用される。好ましくは芳香族炭化水素類である。その使用量は上記式(5)で表されるスピロフルオレン類1重量倍に対し通常1〜50重量倍、好ましくは1〜30重量倍使用する。水洗工程で使用する水の使用量は上記式(5)で表されるスピロフルオレン類1重量倍に対し通常1〜10重量倍、好ましくは、2〜6重量倍使用する。通常、水洗工程は10〜90℃で実施する。水洗工程後、例えば溶媒の一部または全部を留去した後、必要に応じ貧溶媒を添加し晶析により上記式(7)で表されるビス(ニトロフェニルエーテル)体を得ることができる。
上述の通り得たビス(ニトロフェニルエーテル)体はこのまま次工程で使用してもよいが、慣用の精製方法(抽出、晶析など)を利用して再精製したものを用いてもよい。
<上記式(10)で表されるビス(ニトロフェニルエステル)体の製造方法>
上記式(10)で表されるビス(ニトロフェニルエステル)体の製造方法として例えば、上記式(5)で表されるスピロフルオレン類と上記式(9)で表されるニトロ安息香酸類とを高温で直接脱水反応させる方法、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド等の脱水試薬を用いて脱水縮合させる方法、上記式(5)で表されるスピロフルオレン類のジアセテート化体と上記式(9)で表されるニトロ安息香酸類とを高温で反応させ脱酢酸してエステル化する方法(エステル交換法)、上記式(9)で表されるニトロ安息香酸類のカルボキシル基を酸ハライドに変換し、これを脱酸剤の存在下で反応させる方法(酸ハライド法)、トシルクロリド/N,N−ジメチルホルムアミド/ピリジン混合物を用いて上記式(9)で表されるニトロ安息香酸類のカルボキシル基を活性化してエステル化する方法など公知の方法を適用することができる。これらの方法の中でもエステル交換法や酸ハライド法、特に酸ハライド法が経済性、反応性の点で好ましい。以下、酸ハライド法について詳述する。
酸ハライド法は、脱酸剤存在下、上記式(5)で表されるスピロフルオレン類と上記式(9)で表されるニトロ安息香酸ハライド類(上記式(9)においてXがハロゲン原子であるもの)とを反応させることにより実施される。
酸ハライド法を実施する際、上記式(9)で表されるニトロ安息香酸ハライド類の使用量として例えば、上記式(5)で表されるスピロフルオレン類1モルに対して、2モル〜10モル使用し、好ましくは2モル〜5モル使用する。ニトロ安息香酸ハライド類の使用量を2モル以上とすることにより反応速度が向上し、10モル以下とすることにより選択的に反応を進行させることが可能となる。
酸ハライド法で用いられる脱酸剤として例えば、ピリジン等の塩基性を示す含窒素環状化合物類、トリエチルアミン、N,N−ジメチルアニリン等の有機3級アミン類、プロピレンオキサイド等のエポキシ類、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基が挙げられる。製造コストおよび分離のしやすさの観点からピリジンが好適に用いられる。脱酸剤の使用量としては、上記式(5)で表されるスピロフルオレン類1モルに対して、通常2モル〜10モル、好ましくは2モル〜5モル、さらに好ましくは、2モル〜4モルである。脱酸剤の使用量を2モル以上とすることにより反応速度が向上し、10モル以下とすることにより不純物の生成を抑制することが可能となる。
酸ハライド法を実施する際、必要に応じ有機溶媒を使用することができる。使用可能な有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン溶媒、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素が例示される。好ましくはエーテル溶媒である。有機溶媒を使用する場合、通常、上記式(5)で表されるスピロフルオレン類1重量倍に対し、2〜50重量倍、好ましくは5〜20重量倍使用する。
酸ハライド法は通常、上記式(9)で表されるニトロ安息香酸ハライド類と有機溶媒とを混合させた溶液に、該溶液を撹拌しながら、上記式(5)で表されるスピロフルオレン類及び脱酸剤を溶媒に混合した溶液を、通常−20℃〜20℃、好ましくは−10〜10℃で間欠あるいは連続的に添加し、添加後、−10℃〜50℃、好ましくは0℃〜40℃、さらに好ましくは10℃〜30℃で更に反応を行うことにより実施される。左記の手順、温度範囲で反応を行うことにより、反応速度を向上させつつ副生成物の抑制が可能となる。
酸ハライド法の実施後、例えば得られた反応マスを冷却することにより上記式(10)で表されるビス(ニトロフェニルエステル)体の結晶を析出させ、該結晶をろ別することにより上記式(10)で表されるビス(ニトロフェニルエステル)体を得ることができる。このようにして得られたビス(ニトロフェニルエステル)体はこのまま次工程で使用してもよいが、慣用の精製方法(抽出、晶析など)を利用して再精製したものを用いてもよい。
<上記式(7)で表されるビス(ニトロフェニルエーテル)体または上記式(10)で表されるビス(ニトロフェニルエステル)体の還元方法>
上記式(7)で表されるビス(ニトロフェニルエーテル)体または上記式(10)で表されるビス(ニトロフェニルエステル)体の末端の2つのニトロ基を還元して、本願発明の上記式(1)で表されるフルオレン骨格を有するジアミン化合物を得る方法を説明する。(以下、還元工程と称することもある。)還元工程の実施方法として例えば、上記式(7)で表されるビス(ニトロフェニルエーテル)体または上記式(10)で表されるビス(ニトロフェニルエステル)体がメタノール、エタノール等のプロトン性溶媒に可溶である場合、塩化錫等の還元剤を用いて容易に還元することができる。また、上記式(7)で表されるビス(ニトロフェニルエーテル)体または上記式(10)で表されるビス(ニトロフェニルエステル)体を溶媒に溶解させ、水素雰囲気化、パラジウムや白金等の遷移金属原子を活性炭に担持させた触媒を用い、接触還元法により還元することも可能である。工業的な実施に際しては、上記式(7)で表されるビス(ニトロフェニルエーテル)体または上記式(10)で表されるビス(ニトロフェニルエステル)体を溶解するための溶媒の種類や反応温度の適用範囲の幅の広さや後処理の容易さの点から、接触還元法が好適に用いられる。
接触還元法を実施する際に用いられる触媒としては、パラジウムや白金等の遷移金属原子を活性炭に担持させた触媒が用いられ、この中でもパラジウムを活性炭に担持させた触媒(パラジウム/カーボン)又は白金を活性炭に担持させた触媒(白金/カーボン)が反応速度を向上させやすい点から好適に用いられる。これら触媒の使用量は、触媒中の遷移金属原子の重量として、上記式(7)で表されるビス(ニトロフェニルエーテル)体又は上記式(10)で表されるビス(ニトロフェニルエステル)体1重量倍に対し、通常0.001〜0.01重量%用いられる。
接触還元法を実施する際に用いる溶媒としては、上記式(7)で表されるビス(ニトロフェニルエーテル)体または上記式(10)で表されるビス(ニトロフェニルエステル)体、あるいは生成物である上記式(1)で表されるフルオレン骨格を有するジアミン化合物と反応せず、接触還元時に反応を受けないものであれば良く、例えばメタノール、エタノール等のアルコール溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジグライム、トリグライム等のエーテル系溶媒、酢酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶媒、アセトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、ピコリン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。またこれら溶媒は単独でも、2種類以上混合して用いてもよい。反応試薬の溶解性、反応後の溶媒留去や乾燥除去のしやすさの観点から、本反応においてはN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が好適に用いられる。これら溶媒の使用量として例えば、上記式(7)で表されるビス(ニトロフェニルエーテル)体または上記式(10)で表されるビス(ニトロフェニルエステル)体1重量倍に対し通常2〜10重量倍使用する。
接触還元法を実施する際の温度は通常20〜160℃であり、反応速度の向上及び不純物生成抑制の観点から20〜100℃とすることが好ましい。
接触還元法を実施する際の水素の圧力は通常、101.3kPa〜1013kPaである。101.3kPa以上とすることにより十分な還元速度が得られ、1013kPa以下とすることにより反応速度のコントロールが可能となり、不必要な副反応やゲル化を抑制することが可能となる。
上述した接触還元法を実施後、該反応に使用した触媒を濾過により除去し、例えば溶媒の一部または全部を留去した後、必要に応じ貧溶媒を添加し晶析することにより、上記式(1)で表されるフルオレン骨格を有するジアミン化合物を分離することができる。
こうして得られた上記式(1)で表されるフルオレン骨格を有するジアミン化合物は、このまま次工程で使用してもよいが、慣用の精製方法(抽出、晶析など)を利用して再精製したものを用いてもよい。こうして得られるフルオレン骨格を有するジアミン化合物の純度は通常95重量%以上である。上記式(1)で表されるフルオレン骨格を有するジアミン化合物から上記式(2)で表されるポリアミック酸又は上記式(3)で表されるポリイミドの重合度を向上させやすいことから、好ましくは99重量%以上である。
<上記式(2)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸及びその製造方法>
続いて、上記式(2)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸(以下、本発明のポリアミック酸と称することもある)について詳述する。本発明のポリアミック酸は、下記式(2)で表される繰り返し単位を有している。
Figure 0006635506
(式中、Z、R、R、R、R、m、n、p及びqの意味は上述の通りである。また、Aは酸二無水物残基を示す。)
なお、上記式(2)における酸二無水物残基(A)とは、上記式(1)で表されるフルオレン骨格を有するジアミン化合物及び必要に応じ他のジアミンと、後述する酸二無水物とを反応させる際に用いる酸二無水物の、二つの酸無水物基(−CO−O−CO−)以外の構造を表す。
本発明のポリアミック酸の分子量は、重量平均分子量で1万〜50万であることが好ましく、1万〜30万であることがより好ましく、2万〜20万であることがさらに好ましい
。ポリアミック酸の分子量が1万以上であれば、成型可能であり、また良好な力学特性を維持しやすい。またポリアミック酸の分子量が20万以下であれば、合成する場合に分子量をコントロールしやすく、また適度な粘度の溶液が得られやすく取扱いが容易である場合が多い。なお、ポリアミック酸の分子量は、ポリアミック酸溶液の粘度を目安にすることができる。
本発明のポリアミック酸の製造方法として例えば、上記式(1)で表されるフルオレン骨格を有するジアミン化合物を後述する重合溶媒に溶解後、通常10〜30℃で後述する酸二無水物粉末を添加した後、10〜100℃、好ましくは10〜30℃で撹拌することでポリアミック酸を、重合溶媒の溶液(以下、ポリアミック酸溶液と称することもある)として得ることができる。
本発明で使用可能な酸二無水物として例えば、無水ピロメリット酸、オキシジフタル酸二無水物、ビフェニル-3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、m−タ−フェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、p−タ−フェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−カルボキシメチル−2,3,5−シクロペンタントリカルボン酸−2,6:3,5−二酸無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、4−フェニルエチニルフタル酸無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、ビス(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−カルボン酸)1,4−フェニレン等が例示され、これらは2種類以上併用することもできる。これら酸二無水物の中でも重合反応性・製膜性の観点からベンゾフェノン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物が好適に使用される。これら酸二無水物は上記式(1)で表されるフルオレン骨格を有するジアミン化合物、及び他のジアミンを併用する場合は他のジアミンも含めた全ジアミン1モルに対し通常0.9〜1.1モル、重合度を高める観点から好ましくは0.95〜1.05モル使用する。
また、必要に応じ一般的な芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン等を共重合成分として併用することができる。併用可能なジアミンとして例えば、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノトルエン、4,4−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,7−ジアミノ−ジメチルジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド、4,4−ジアミノベンゾフェノン,3,3’−ジアミノベンゾフェノン,4,4’−ビス(4−アミノフェノル)スルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ブタン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)―2,2−ジメチルプロパン、1,2−ビス[2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ]エタン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、1−(4−アミノフェニル)−2,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−1H−インデン−5−アミン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,6−ジヒドロキシ−1,3−フェニレンジアミン、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサフルオロプロパン、3,3’,4,4’−テトラアミノビフェニル、1,6−ジアミノヘキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(4−シクロヘキシルアミン)、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタンビス(メチルアミン)、トリシクロ[3.3.1.13.7]デカン−1,3−ジアミン、4−アミノ安息香酸−4−アミノフェニルエステル、2−(4−アミノフェニル)−5−アミノベンゾオキサゾール、9,9−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、2,2’−ビス(3−スルホプロポキシ)―4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル―3,3’−ジスルホン酸等が挙げられる。またこれらを2種類以上併用することもできる。他のジアミンを併用する場合の全ジアミン中の他のジアミンの使用量は、好ましくは10重量%以上であり、より好ましくは30重量%以上であり、一方、好ましくは90重量%以下であり、より好ましくは70重量%以下である。他のジアミンを10重量%以上使用することにより、他のジアミンを併用することによる物性向上効果を十分に得ることができる。例えば、ポリイミドの着色を抑制する観点から脂環式ジアミンを併用した場合、得られるポリイミドの透明性向上が期待できる。一方、他のジアミンの使用量を90重量%以下とすることにより、本発明の上記式(1)で表されるフルオレン骨格を有するジアミン化合物の効果が十分発揮される。
ポリアミック酸を製造する際に用いられる重合溶媒として例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N −ジメチルアセトアミド、N−メチル−ピロリドン等のアミド溶媒、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル等の鎖状エステル系溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン等の環状エステル溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート溶媒、トリエチレングリコール、エチルセロソルプ、ブチルセロソルプ、プロピレングリコールメチルアセテート、2−メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルプアセテート、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジエチレングリコール等のグリコール系溶媒、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール等のフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、アセトフェノン等のケトン系溶媒、ブタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、キシレン、トルエン、クロルベンゼン等の芳香族系溶媒、ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホン系溶媒が使用可能である。好ましくはN ,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−ピロリドン等のアミド溶媒が例示される。これら溶媒は1種、あるいは必要に応じ2種以上混合して使用しても良い。
重合溶媒の使用量としては反応系中のモノマー成分(酸二無水物+ジアミン)の合計濃度が通常5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%となるような量とする。前述のモノマー濃度範囲で重合を行うことにより、均一で高重合度のポリアミック酸溶液を得ることができる。なお、上記モノマー濃度範囲よりも低濃度で重合を行うと、ポリアミック酸の重合度が十分高くならず、最終的に得られるポリイミド膜が脆弱になる場合があり、上記モノマー濃度範囲よりも高濃度で重合を行うとモノマーが十分溶解しない場合や反応溶液が不均一になりゲル化する場合がある。上記の方法で得られた上記式(2)で表されるポリアミック酸溶液は通常、そのまま後述する方法で実施されるポリイミド化工程へと使用する。
<上記式(3)で表される繰り返し単位を有するポリイミド及びその製造方法>
続いて、上記式(3)で表される繰り返し単位を有するポリイミド(以下、本発明のポリイミドと称することもある)について詳述する。本発明のポリイミドは、下記式(3)で表される構造を有する。
Figure 0006635506
(式中、Z、R、R、R、R、m、n、p、q及びAの意味は上述の通りである。)
上記式(3)で表されるポリイミドは、上記の方法で得られた上記式(2)で表されるポリアミック酸溶液を脱水閉環反応(イミド化反応)することで製造することができる。イミド化反応の方法として例えば、熱イミド化法や化学イミド化法が例示される。まず、熱イミド化法について詳述する。
熱イミド化法として例えば、ポリアミック酸の重合溶液をガラス板上に流延し、真空中、あるいは窒素等の不活性ガス中、又は空気中で加熱を行う。例えば、オーブン中、通常50〜190℃、好ましくは100〜180℃で乾燥することにより、ポリアミック酸のフィルムを得ることができる。
続いて、得られたポリアミック酸フィルムをガラス板上で通常200〜400℃、好ましくは230〜350℃で加熱することで、イミド化反応が起こり、ポリイミドフィルムを得ることができる。加熱温度は、イミド化反応を十分に行うという観点から200℃以上、生成したポリイミドフィルムの熱安定性の観点から400℃以下が好ましい。
イミド化反応は真空中あるいは不活性ガス中で行うことが望ましいが、イミド化反応温度が高すぎなければ空気中で行っても差し支えない。
続いて化学イミド化法について詳述する。まず、上記の方法で得られた上記式(2)で表されるポリアミック酸溶液に重合時と同一の溶媒を加えて撹拌し易い適度な溶液粘度とし、撹拌しながら、有機酸の無水物と、塩基性触媒として3級アミンからなる脱水閉環剤(化学イミド化剤)を滴下し、温度0〜100℃、好ましくは10〜50℃で1〜72時間撹拌することで化学的にイミド化を完結させることができる。その際に使用可能な有機酸無水物としては無水酢酸、無水プロピオン酸等が挙げられる。これら有機酸無水物の中で、取り扱いや分離のし易さから無水酢酸が好ましい。また塩基性触媒としては、ピリジン、トリエチルアミン、キノリン等が使用できる。これら塩基性触媒の中でも、取り扱いや分離のし易さからピリジンが好ましい。化学イミド化剤中の有機酸無水物量は、ポリアミド酸の理論脱水量の1〜10倍モルの範囲であり、より好ましくは2〜5倍モルである。また塩基性触媒の量は、有機酸無水物量に対して0.1〜2倍モルの範囲であり、より好ましくは0.2〜1倍モルの範囲である。
上記化学イミド化法で得られた反応溶液中には、塩基や未反応の化学イミド化剤、有機酸、副生成物等(以下、不純物という)が混入しているため、これらを除去してポリイミドを単離・精製してもよい。精製は公知の方法が利用できる。例えば、最も簡便な方法としては、イミド化した反応溶液を撹拌しながら大量の貧溶媒中に滴下してポリイミドを析出させた後、ポリイミド粉末を回収して不純物が除去されるまで繰返し洗浄し、減圧乾燥して、ポリイミド粉末を得る方法が適用できる。この時、使用できる溶媒としては、ポリイミドを析出させ、不純物を効率よく除去でき、乾燥し易い溶媒であれば良く、例えば、水や、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類が好適であり、これらを混合して用いてもよい。貧溶媒中に滴下して析出させる時のポリイミド溶液の濃度は、高すぎると析出するポリイミドが粒塊となり、その粗大な粒子中に不純物が残留する場合や、得られたポリイミド粉末を溶媒に再溶解する際に長時間要する場合がある。一方、ポリイミド溶液の濃度を薄くし過ぎると、多量の貧溶媒が必要となり、廃溶剤処理による環境負荷増大や製造コスト高になる場合がある。したがって、貧溶媒中に滴下する時のポリイミド溶液の濃度は、20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。この時使用する貧溶媒の量はポリイミド溶液と同量(重量基準)以上が好ましく、1.5〜10重量倍が好適である。得られたポリイミド粉末を回収し、残留溶媒を真空乾燥や熱風乾燥などで除去する。乾燥温度と時間は、ポリイミドが変質しない温度であれば制限はなく、温度30〜150℃で3〜24時間乾燥させることが好ましい。
このようにして得られた上記式(3)で表されるポリイミド粉末をポリイミドフィルムとする場合、一旦上記式(3)で表されるポリイミド粉末を溶媒に溶解させポリイミド溶液とする必要がある。使用可能な溶媒としては、使用用途や加工条件に合わせて適宜溶媒を選ぶことができ、具体的に例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル等のエステル溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート溶媒、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコール系溶媒、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール等のフェノール系溶媒、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジブチルエーテル等のエーテル系溶媒、その他汎用溶媒として、アセトフェノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、プロピレングリコールメチルアセテート、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、2−メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、ブタノール、エタノール、キシレン、トルエン、クロルベンゼン、ターペン、ミネラルスピリット、石油ナフサ系溶媒なども使用でき、これらを2種類以上混合して用いてもよい。ポリイミド粉末の溶解方法は、空気中、または不活性ガス中で室温〜溶媒の沸点以下の温度範囲で1〜48時間かけて溶解させ、ポリイミド溶液にすることができる。
こうして得られたポリイミド溶液をガラス板上に流延し、真空中、あるいは窒素等の不活性ガス中、または空気中で加熱することによりポリイミドフィルムを得ることができる。例えば、オーブン中、通常200〜400℃、好ましくは250〜350℃で乾燥することにより、ポリイミドフィルムを得ることができる。ポリイミドフィルム作成は真空中あるいは不活性ガス中で行うことが望ましいが、温度が高すぎなければ空気中で行っても、差し支えない。
化学イミド化反応は、基板上に形成されたポリアミック酸フィルムをピリジンやトリエチルアミン等の3級アミン存在下、無水酢酸等の脱水環化試薬を含有する溶液に浸漬することによって行うことも可能である。これにより、部分的またはほぼ完全にイミド化したポリイミドフィルムを作製することもでき、これを更に上記のように熱処理することでポリイミドフィルムが得られる。
上述した方法によって得られた上記式(3)で表されるポリイミドの分子量は、重量平均分子量で1万〜50万であることが好ましく、1万〜30万であることがより好ましく、2万〜20万であることがさらに好ましい。ポリイミドの分子量が1万以上であれば、成型可能であり、また良好な力学特性を維持しやすい。またポリイミドの分子量が20万以下であれば、合成する場合に分子量をコントロールしやすく、また適度な粘度の溶液が得られやすく取扱いが容易である場合が多い。なお、ポリイミドの分子量はポリイミド溶液の粘度を目安にすることができる。
上述した方法によって得られた上記式(3)で表されるポリイミドは屈折率が高く、通常1.65以上、更には1.66以上、特には1.67又はそれ以上の屈折率を示す。また、全光線透過率も80%以上と高い値を示すことから、特に光学材料、電子材料として好適に用いることが可能である。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、各実施例・比較例で示した値は下記分析方法により分析した値である。
[1]HPLC純度
次の測定条件でHPLC測定を行ったときの面積百分率値を実施例に記載している各化合物の純度とした。
液体クロマトグラフィー測定条件:
装置:島津製作所(株)製LC−2010C
カラム:ODS(5μm、4.6mmφ×150mm)
移動相:水/メタノール、流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃、検出波長:UV254nm
[2]ポリアミック酸の重量平均分子量
次の測定条件で、重量平均分子量を測定した。
装置:東ソー(株)製 HLC−8200
カラム:TSK-GEL Super AWM―H (6.0 mmI.D.×15cm)
移動相:N,N−ジメチルホルムアミド、流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃
分子量標準物質:ポリスチレン
[3]NMR測定
H−NMRは、内部標準としてテトラメチルシランを用い、溶媒として重クロロホルムあるいは重ジメチルスルホオキシド(DMSO)を用いて、JEOL−ESC400分光計によって記録した。
[4]LC−MS測定
LC−MSは次の測定条件で分離、質量分析し、目的物を同定した。
・装置:(株)Waters製「Xevo G2 Q−Tof」
・カラム:(株)Waters製「ACQUITY CSH C18」
(1.7μm、2.1mmφ×100mm)
・カラム温度:40℃
・検出波長:UV 210−500nm
・移動相:A液=5mM酢酸アンモニウム水、B液=メタノール
・移動相流量:0.3ml/分
移動相グラジエント:B液濃度:50%(0分)→100%(10分後)→100%(15分後)
検出法:Q−Tof
イオン化法:ESI(+)法
Ion Source:電圧(+)2.0kV、温度150℃
電圧(−)1.0kV、温度150℃
Sampling Cone :電圧 30V、ガスフロー50L/h
Desolvation Cas:温度500℃、ガスフロー1000L/h
[5]全光線透過率測定
ヘイズメータ(スガ試験機(株)製「HGM−2DP」)を用いてポリイミドフィルムの全光線透過率を測定した。
[6]屈折率の測定
アッベ屈折計((株)アタゴ製「多波長アッベ屈折計 DR−2M」)を用いて、20℃における屈折率(波長:589nm)及び23℃におけるアッベ数(波長:486、589、656nm)を測定した。
なお、上記式(1)で表されるフルオレン骨格を有するジアミン化合物自身の屈折率及びアッベ数は下記の方法により測定した。
上記式(1)で表されるフルオレン骨格を有するジアミン化合物をジメチルホルムアミドに溶解して10重量%、20重量%及び30重量%溶液を調製し、各溶液について屈折率及びアッベ数を測定した。次に、得られた3点の測定値から近似曲線を導き、これを100重量%に外挿したときの値を上記式(1)で表されるフルオレン骨格を有するジアミン化合物の屈折率及びアッベ数とした。
また、ポリイミドフィルムについては、これをフィルム状に成形したものから短冊状に切り出した試験片を用い、上記条件にて測定を行った。
[7]融点の測定
示差走査熱量計(エスアイアイナノテクノロジー(株)製「EXSTAR DSC 7020」)を用いて、昇温速度10℃/分で測定した。
[8]ガラス転移温度の測定
示差走査熱量計(エスアイアイナノテクノロジー(株)製「EXSTAR DSC 7020」)を用いて、昇温速度10℃/分、または20℃/分で測定した。
[9]引張強度の測定
次の条件で引張強度を測定した。
装置: 島津製作所(株)製 オートグラフ AGS−X
島津製作所(株)製 ロードセル SES−1000
測定条件:幅 5mm つかみ具間距離 100mm
引張速度 10mm/min
1.上記式(1)で表されるフルオレン骨格を有するジアミン化合物の製造
<実施例1>
上記式(1)で表されるフルオレン骨格を有するジアミン化合物の内、下記式(A−1)で表されるジアミン化合物の合成
Figure 0006635506
攪拌機、温度計及び還流冷却管を備えた四つ口フラスコにスピロ[フルオレン9,9’−(2’,7’―ジヒドロキシキサンテン)]15.00g(0.041mol)、4−クロロニトロベンゼン19.50g(0.124mol)、炭酸カリウム12.00g(0.0087mol)、N,N−ジメチルアセトアミド75.00gを仕込み、攪拌下、160℃で4時間反応させた。反応終了後、反応液をトルエンで希釈し、水45.00gを加え、7回水洗を行った。洗浄後、トルエンを濃縮し、ヘキサンで希釈し、室温まで冷却し、結晶を析出させた。析出した結晶を濾過、乾燥することにより、ビス(ニトロフェニルエーテル)体の黄色結晶25.00g(純度99.0%、有姿収率100.2%)を得た。
続いて、水素導入管を有するオートクレーブに上記ビス(ニトロフェニルエーテル)体25.00g(0.041mmol)および水を50重量%含むパラジウム/カーボン粉末(パラジウム含量:乾燥重量換算で5重量%)2.50gを入れ、更にN,N−ジメチルホルムアミド125.00gを加えて80℃まで昇温しビス(ニトロフェニルエーテル)体を溶解させた。次に反応容器を水素で置換した後、水素圧力を506.7kPaに保ちながら80℃で2時間攪拌した。反応後、パラジウム/カーボン粉末を熱濾過して濾別・除去し、濾液を室温まで冷却後、該濾液を大量の水中に滴下することで結晶を析出させ、析出した結晶をろ別・水洗を行った後、該結晶を80℃で3時間真空乾燥して灰色の粗生成物21.07g(純度99.0%、有姿収率93.5%)を得た。得られた粗生成物13.00gをエタノールを用いて再結晶し得られた結晶を、80℃で3時間真空乾燥して灰色粉末12.34g(純度99.0%、有姿収率88.7%)を得た。以下分析結果から、得られた灰色粉末が上記式(A−1)で表される化合物であることを確認した。
H−NMR(CDCl
δ3.56ppm(4H、s)、6.28(2H、d)、6.38(2H、ddd)、6.65(6H、m)、6.86(4H、d)、7.16(2H、d)、7.21(2H、t)、7.34(2H、t)、7.75(2H、d)
マススペクトル値 (M+H) 547.20
融点(DSC) 233℃
屈折率 1.66
<実施例2>
上記式(1)で表されるフルオレン骨格を有するジアミン化合物の内、下記式(A−2)で表されるジアミン化合物の合成
Figure 0006635506
攪拌機、温度計及び還流冷却管を備えた四つ口フラスコにスピロ[フルオレン9,9’−(2’,7’―ジヒドロキシキサンテン)]10.00g(0.027mol)、2−クロロニトロベンゼン13.00g(0.083mol)、炭酸カリウム8.00g(0.0.058mol)、N,N−ジメチルアセトアミド50.00gを仕込み、攪拌下、160℃で2時間反応させた。反応終了後、反応マスを水で希釈し晶析を行った。得られた粗結晶を、トルエン及びヘキサンの混合溶媒に溶解させた後、室温まで冷却し結晶を析出させた。析出した結晶を濾過、乾燥することにより、ビス(ニトロフェニルエーテル)体の黄色結晶14.40g(純度97.3%、有姿収率86.6%)を得た。
続いて、攪拌機、温度計及び還流冷却管を備えた四つ口フラスコに、上記ビス(ニトロフェニルエーテル)体10.70g(0.018mmol)および水を50重量%含むパラジウム/カーボン粉末(パラジウム含量:乾燥重量換算で10重量%)0.43gを入れ、エタノール139.21g及びヒドラジン一水和物18.19g(0.363mmol)を更に加え、80℃で2時間攪拌した。反応後、パラジウム/カーボン粉末を熱濾過して濾別・除去した後、濾液を室温まで冷却し、該濾液を大量の水中に滴下することで結晶を析出させ、析出した結晶をろ別・水洗を行った後、該結晶を80℃で3時間真空乾燥することで灰色粉末6.98g(純度96.2%、有姿収率72.4%)を得た。以下分析結果から、得られた灰色粉末が上記式(A−2)で表される化合物であることを確認した。
H−NMR(CDCl
δ3.73ppm(4H、s)、6.31(2H、d)、6.43(2H、ddd)、6.71(4H、m)、6.80(2H、d)、6.88(2H、d)、6.98(2H、t)、7.16(2H、d)、7.24(2H、t)、7.37(2H、t)、7.75(2H、d)
マススペクトル値 (M+H) 547.20
融点(DSC) 溶融ピークなし
屈折率 1.66
<実施例3>
上記式(1)で表されるフルオレン骨格を有するジアミン化合物の内、下記式(A−3)で表されるジアミン化合物の合成
Figure 0006635506
攪拌機、温度計及び還流冷却管を備えた四つ口フラスコに4−ニトロ安息香酸クロリド17.54g(0.095mmol)、1,2−ジメトキシエタン32.80gを仕込み、攪拌しながら0℃まで冷却した。その後、攪拌しながらスピロ[フルオレン9,9’−(2’,7’―ジヒドロキシキサンテン)]16.40g(0.045mol)、1,2−ジメトキシエタン90.20g、ピリジン10.68g(0.135mol)を混合溶解したものを0℃〜5℃で1時間かけて滴下した。その後20℃まで昇温し、反応温度を20℃〜25℃に保ちながら12時間攪拌した。反応終了後、析出していた結晶をろ別した。得られた結晶を、アセトニトリルで溶解した後、室温まで冷却し、結晶を析出させた。析出した結晶を濾過、乾燥することにより、ビス(ニトロフェニルエステル)体の黄色結晶24.52g(純度96.7%、有姿収率82.2%)を得た。
続いて、水素導入管を有するオートクレーブに上記ビス(ニトロフェニルエステル)体24.52g(0.037mmol)および水を50重量%含むパラジウム/カーボン粉末(パラジウム含量:乾燥重量換算で5重量%)2.45gを入れ、N,N−ジメチルホルムアミド122.60gを更に加えて80℃に加熱し、ビス(ニトロフェニルエステル)体を溶解させた。次に反応容器を水素で置換した後、水素圧力を506.7kPaに保ちながら、80℃で3時間攪拌した。反応後、パラジウム/カーボン粉末を熱濾過して濾別・除去し、濾液を室温まで冷却した後、該濾液を大量の水中に滴下することで結晶を析出させ、析出した結晶をろ別・水洗し結晶を得た。得られた結晶を乾燥することなくメタノールに溶解させ、再結晶して得られた結晶を、80℃で3時間真空乾燥して灰色の生成物20.65g(純度95.0%、有姿収率92.5%)を得た。以下分析結果から、得られた灰色粉末が上記式(A−3)で表される化合物であることを確認した。
H−NMR(重DMSO)
δ6.15ppm(4H、s)、6.28(2H、d)、6.59(4H、ddd)、6.71(2H、d)、7.17(4H、m)、7.26(2H、t)、7.41(2H、t)、7.74(4H、m)、7.98(2H、d)
マススペクトル値 (M+H) 603.19
融点(DSC) 322℃
屈折率 1.68
2.上記式(2)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸及び上記式(3)で表される繰り返し単位を有するポリイミドの製造
(1)本発明の上記式(1)で表されるジアミン化合物と酸二無水物から得られるポリアミック酸及びポリイミドの製造例
<実施例4>
(上記式(A−1)で表されるジアミン化合物と3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(以下BTDAと称することもある)から得られるポリイミドの製造)
実施例1で得られたジアミン化合物(A−1)2.00g(3.66mmol)を脱水N,N−ジメチルアセトアミド7.9g中に溶解した。次いで、BTDA1.18g(3.66mmol)をゆっくり加えて、室温で16時間反応させ、上記式(2)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸を合成した。ポリアミック酸の重量平均分子量(Mw)は、113,275であった。次いで、N,N−ジメチルアセトアミド4.8gを加えることでポリアミック酸溶液を希釈した後、1時間撹拌した。得られたポリアミック酸溶液をガラス板上に塗布した後、150℃で1時間、250℃で1時間加熱して上記式(3)で表される繰り返し単位を有するポリイミドの薄膜を得た。薄膜の膜厚は約23μmであった。
<実施例5>
(上記式(A−2)で表されるジアミン化合物とBTDAから得られるポリイミドの製造)
実施例1で得られたジアミン化合物(A−2)2.00g(3.66mmol)を脱水N,N−ジメチルアセトアミド7.9g中に溶解した。次いでBTDA1.18g(3.66mmol)をゆっくり加えて、室温で16時間反応させ、上記式(2)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸を合成した。ポリアミック酸の重量平均分子量(Mw)は、21,628であった。次いで、N,N−ジメチルアセトアミド4.8gを加えることでポリアミック酸溶液を希釈した後、1時間撹拌した。得られたポリアミック酸溶液をガラス板上に塗布した後、150℃で1時間、250℃で1時間加熱して上記式(3)で表される繰り返し単位を有するポリイミドの薄膜を得た。薄膜の膜厚は約28μmであった。
<実施例6>
(上記式(A−3)で表されるジアミン化合物とBTDAから得られるポリイミドの製造)
実施例1で得られたジアミン化合物(A−3)2.00g(3.32mmol)を脱水N ,N−ジメチルアセトアミド7.9g中に溶解した。次いで、BTDA1.07g(3.32mmol)をゆっくり加えて、室温で16時間反応させ、上記式(2)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸を合成した。ポリアミック酸の重量平均分子量(Mw)は、23,144であった。次いで、N,N−ジメチルアセトアミド4.8gを加えることでポリアミック酸溶液を希釈した後、1時間撹拌した。得られたポリアミック酸溶液をガラス板上に塗布した後、150℃で1時間、250℃で1時間加熱して上記式(3)で表される繰り返し単位を有するポリイミドの薄膜を得た。薄膜の膜厚は約27μmであった。
<比較例1>
(9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(BAPF)とBTDAから得られるポリイミドの製造)
BAPF2.00g(5.74mmol)を脱水N,N−ジメチルアセトアミド9.5g中に溶解した。次いで、BTDA1.84g(5.74mmol)をゆっくり加えて、室温で16時間反応させポリアミック酸を合成した。ポリアミック酸の重量平均分子量(Mw)は79,954であった。次いで、N,N−ジメチルアセトアミド5.9gを加えることでポリアミック酸溶液を希釈した後、1時間撹拌した。得られたポリアミック酸溶液をガラス板上に塗布した後、150℃で1時間、250℃で1時間加熱したが、製膜できずポリイミドフィルムは得られなかった。
<実施例7>
(上記式(A−1)で表されるジアミン化合物と3,3’,4,4’―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下BPDAと称することもある)から得られるポリイミドの製造)
実施例1で得られたジアミン化合物(A−1)1.00g(1.83mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド3.8g中に溶解した。次いで、BPDA0.54g(1.83mmol)をゆっくり加えて、室温で16時間反応させ上記式(2)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸を合成した。ポリアミック酸の重量平均分子量(Mw)は、256,987であった。次いで、N,N−ジメチルアセトアミド2.4gを加えることでポリアミック酸溶液を希釈した後、1時間撹拌した。得られたポリアミック酸溶液をガラス板上に塗布した後、150℃で1時間、250℃で1時間加熱して上記式(3)で表される繰り返し単位を有するポリイミドの薄膜を得た。薄膜の膜厚は約25μmであった。
<比較例2>
(9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(BAPF)とBPDAから得られるポリイミドの製造)
BAPF2.00g(5.74mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド9.1g中に溶解した。次いで、BPDA1.69g(5.74mmol)をゆっくり加えて、室温で16時間反応させポリアミック酸を合成した。ポリアミック酸の重量平均分子量(Mw)は、128,151であった。次いで、N ,N−ジメチルアセトアミド5.7gを加えることでポリアミック酸溶液を希釈した後、1時間撹拌した。得られたポリアミック酸溶液をガラス板上に塗布した後、150℃で1時間、250℃で1時間加熱したが、製膜できずポリイミドフィルムは得られなかった。
以上の通り、フルオレン骨格を有するジアミンとして良く知られる9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(BAPF)と酸二無水物から得られるポリイミドは脆く、製膜することができなかった一方、本発明の上記式(1)で表されるジアミン化合物と酸二無水物から得られるポリイミドは製膜が可能であった。
(2)本発明の上記式(1)で表されるジアミン化合物及び他のジアミン化合物と酸二無水物から得られるポリアミック酸及びポリイミドの製造例
<実施例8>
(上記式(A−1)で表されるジアミン化合物及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(以下4,4’−DPEと称することもある)、並びにBTDAから得られるポリイミドの製造)
ジアミン化合物(A−1)4.00g(7.32mmol)、4,4’−DPE1.47g(7.32mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド25.2g中に溶解した。次いでBTDA4.72g(14.64mmol)をゆっくり加えて、室温で16時間反応させ上記式(2)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸を合成した。ポリアミック酸の重量平均分子量(Mw)は、24,329であった。次いで、N,N−ジメチルアセトアミド15.6gを加えることでポリアミック酸溶液を希釈した後、1時間撹拌した。得られたポリアミック酸溶液をガラス板上に塗布した後、150℃で1時間、250℃で1時間加熱して上記式(3)で表される繰り返し単位を有するポリイミドの薄膜を得た。薄膜の膜厚は約24μmであった。以下表1に、得られたポリイミド薄膜の引張強度、ガラス転移温度(Tg)、屈折率、全光線透過度の測定結果を示す。
<実施例9>
(上記式(A−3)で表されるジアミン化合物及び4,4’−DPE、並びにBTDAから得られるポリイミドの製造)
ジアミン化合物(A−3)4.00g(6.64mmol)、4,4’−DPE1.33g(6.64mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド23.8g中に溶解した。次いでBTDA4.28g(13.28mmol)をゆっくり加えて、室温で16時間反応させ上記式(2)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸を合成した。ポリアミック酸の重量平均分子量(Mw)は、20,614であった。次いで、N,N−ジメチルアセトアミド14.6gを加えることでポリアミック酸溶液を希釈した後、1時間撹拌した。得られたポリアミック酸溶液をガラス板上に塗布した後、150℃で1時間、250℃で1時間加熱して上記式(3)で表される繰り返し単位を有するポリイミドの薄膜を得た。薄膜の膜厚は約22μmであった。以下表1に、得られたポリイミド薄膜の引張強度、ガラス転移温度(Tg)、屈折率、全光線透過度の測定結果を示す。
<比較例3>
(9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(BAPF)及び4,4’−DPE、並びにBTDAから得られるポリイミドの製造)
BAPF4.00g(11.48mmol)、4,4’−DPE2.30g(11.48mmol)をN ,N−ジメチルアセトアミド33.9g中に溶解した。次いでBTDA7.40g(22.96mmol)をゆっくり加えて、室温で16時間反応させポリアミック酸を合成した。ポリアミック酸の重量平均分子量(Mw)は、33,611であった。次いで、N,N−ジメチルアセトアミド20.9gを加えることでポリアミック酸溶液を希釈した後、1時間撹拌した。得られたポリアミック酸溶液をガラス板上に塗布した後、150℃で1時間、250℃で1時間加熱してポリイミドの薄膜を得た。薄膜の膜厚は約20μmであった。以下表1に、得られたポリイミド薄膜の引張強度、ガラス転移温度(Tg)、屈折率、全光線透過度の測定結果を示す。
<実施例10>
(上記式(A−3)で表されるジアミン化合物及び4,4’−DPE、並びに4,4’−オキシジフタル酸二無水物(以下ODPAと称することもある)から得られるポリイミドの製造)
ジアミン化合物(A−3)4.00g(6.64mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド23.4g中に溶解後、ODPA4.12g(13.28mmol)をゆっくり加えて、15℃で1時間反応させた。次いで、4,4’−DPE1.33g(6.64mmol)をゆっくり加え、15℃で1時間反応後、室温で16時間反応させ上記式(2)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸を合成した。ポリアミック酸の重量平均分子量(Mw)は、42,674であった。次いで、N,N−ジメチルアセトアミド14.4gを加えることでポリアミック酸溶液を希釈した後、1時間撹拌した。得られたポリアミック酸溶液をガラス板上に塗布した後、150℃で1時間、250℃で1時間加熱して上記式(3)で表される繰り返し単位を有するポリイミドの薄膜を得た。薄膜の膜厚は約26μmであった。以下表1に、得られたポリイミド薄膜の引張強度、ガラス転移温度(Tg)、屈折率、全光線透過度の測定結果を示す。
<実施例11>
(上記式(A−3)で表されるジアミン化合物及び1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(以下APBと称することもある)、並びにODPAから得られるポリイミドの製造)
ジアミン化合物(A−3)4.00g(6.64mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド24.9g中に溶解後、ODPA4.12g(13.28mmol)をゆっくり加えて、15℃で1時間反応させた。次いで、APB1.94g(6.64mmol)をゆっくり加え、15℃で1時間反応後、室温で16時間反応させ上記式(2)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸を合成した。ポリアミック酸の重量平均分子量(Mw)は、29,943であった。次いで、N,N−ジメチルアセトアミド15.3gを加えることでポリアミック酸溶液を希釈した後、1時間撹拌した。得られたポリアミック酸溶液をガラス板上に塗布した後、150℃で1時間、250℃で1時間加熱して上記式(3)で表される繰り返し単位を有するポリイミドの薄膜を得た。薄膜の膜厚は約23μmであった。以下表1に、得られたポリイミド薄膜の引張強度、ガラス転移温度(Tg)、屈折率、全光線透過度の測定結果を示す。
<実施例12>
(上記式(A−3)で表されるジアミン化合物及び4,4’−メチレンビス(4−シクロヘキシルアミン)(以下4,4’−DCHMと称することもある)、並びにODPAから得られるポリイミドの製造)
ジアミン化合物(A−3)4.00g(6.64mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド24.9g中に溶解後、ODPA4.12g(13.28mmol)をゆっくり加えて、15℃で1時間反応させた。次いで、4,4’−DCHM13.97g(6.64mmol)をゆっくり加え、15℃で1時間反応後、室温で16時間反応させ上記式(2)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸を合成した。ポリアミック酸の重量平均分子量(Mw)は、34,824であった。次いで、N,N−ジメチルアセトアミド15.3gを加えることでポリアミック酸溶液を希釈した後、1時間撹拌した。得られたポリアミック酸溶液をガラス板上に塗布した後、150℃で1時間、250℃で1時間加熱して上記式(3)で表される繰り返し単位を有するポリイミドの薄膜を得た。薄膜の膜厚は約20μmであった。以下表1に、得られたポリイミド薄膜の引張強度、ガラス転移温度(Tg)、屈折率、全光線透過度の測定結果を示す。
<比較例4>
(9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(BAPF)及び4,4’−DCHM、並びにODPAから得られるポリイミドの製造)
BAPF4.00g(11.48mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド35.8g中に溶解後、ODPA7.12g(22.96mmol)をゆっくり加えて、15℃で1時間反応させた。次いで、4,4’−DCHM24.15g(11.48mmol)をゆっくり加え、15℃で1時間反応後、室温で累計16時間反応させ上記式(2)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸を合成した。ポリアミック酸の重量平均分子量(Mw)は、32,343であった。次いで、N,N−ジメチルアセトアミド22.1gを加えることでポリアミック酸溶液を希釈した後、1時間撹拌した。得られたポリアミック酸溶液をガラス板上に塗布した後、150℃で1時間、250℃で1時間加熱してポリイミドの薄膜を得た。薄膜の膜厚は約20μmであった。以下表1に、得られたポリイミド薄膜の引張強度、ガラス転移温度(Tg)、屈折率、全光線透過度の測定結果を示す。
Figure 0006635506
以上の通り、本発明の上記式(1)で表されるジアミン化合物を第1のジアミン成分として用いたポリイミドは、公知の9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(BAPF)を第1のアミン成分として用いたポリイミドに比べ引張強度が大幅に向上することから、BAPFを第1のアミン成分として用いたポリイミドに比べ柔軟となることが明らかである。
併せて、本発明の上記式(1)で表されるジアミン化合物を第1のジアミン成分として用いると、得られるポリイミドの屈折率・透過率が十分に高く、特に光学材料として好適に用いることができる。特に、上記式(1)で表されるジアミン化合物の中でも、エステル結合を有する式(A−3)で表されるジアミン化合物を第1のアミン成分として用いた場合、得られるポリイミドの屈折率が、高屈折率なポリイミドとして知られるBAPFを第1のアミン成分として用いたポリイミドと同等となることが判明した。

Claims (2)

  1. 下記式(2)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸。
    Figure 0006635506
    (式中、Zはエステル結合(−OCO−)を表す。R 及びR はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基を表し、m及びnは0または1〜3の整数を表す。なお、R 及び/又はR が複数存在する場合、それぞれは同一でも異なっていても良い。R 及びR はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基を表し、p及びqは0または1〜4の整数を表す。なお、R 及び/又はR が複数存在する場合、それぞれは同一でも異なっていても良い。また、Aはベンゾフェノン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物残基、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物残基及びオキシジフタル酸二無水物残基からなる群から選ばれる少なくとも一種を示す。)
  2. 下記式(3)で表される繰り返し単位を有するポリイミド。
    Figure 0006635506
    (式中、Zはエステル結合(−OCO−)を表す。R 及びR はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基を表し、m及びnは0または1〜3の整数を表す。なお、R 及び/又はR が複数存在する場合、それぞれは同一でも異なっていても良い。R 及びR はそれぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基を表し、p及びqは0または1〜4の整数を表す。なお、R 及び/又はR が複数存在する場合、それぞれは同一でも異なっていても良い。また、Aはベンゾフェノン−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物残基、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物残基及びオキシジフタル酸二無水物残基からなる群から選ばれる少なくとも一種を示す。
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