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JP6627782B2 - インクセットおよび画像形成方法 - Google Patents

インクセットおよび画像形成方法 Download PDF

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Description

本発明は、インクセットおよび画像形成方法に関する。
インクジェット記録方式は、簡易かつ安価に画像を形成できることから、各種印刷分野で用いられている。インクジェットインクの一つとして、活性光線を照射されることで硬化する光重合性化合物を含有するインク(以下、単に「活性光線硬化型インク」ともいう。)が知られている。活性光線硬化型インクは、吸水性が低い記録媒体においても、高い密着性を有する画像を形成できることから、近年注目されつつある。
活性光線硬化型インクは、色材として顔料を含有することができる。このとき、異なる色を呈する複数の顔料が記録媒体に着弾するようにインクを吐出することで、形成される画像の色域を拡大することができる。たとえば、特許文献1には、レッド顔料とオレンジ顔料とを含有するインクによって、パントン社が提供している各種色見本帳に掲載されているPantone Red 032(「Pantone」は同社の登録商標)に近い色を呈することができると記載されている。一方でC.I.Pigment Violet(以下、単に「Pigment Violet」ともいう。) 19とC.I.Pigment Red(以下、単に「Pigment Red」ともいう。) 202との固溶体を含むマゼンタ顔料を含有するインク(以下、単に「マゼンタインク」ともいう。)によっても、従来のレッドインクよりも形成された画像の色域を拡大できることが知られている。Pigment Violet 19およびPigment Red 202は、いずれもキナクリドン骨格を有する顔料である。
また、インクジェット記録方式では、イエローインク、マゼンタインク、シアンインクおよびブラックインクから、形成すべき色に応じて好適なインクの組みあわせを選択し、選択されたインクを重ね打ちすることで、フルカラーの画像を形成することができる。このとき、形成される画像の色域をさらに広げるため、オレンジインクをさらに組みあわせて画像を形成することがある。
特許文献2には、他色と組みあわせて用いることにより、形成される画像の色域をオレンジの範囲により広げることができる、ゲル化剤を含有するオレンジインクが開示されている。特許文献2では、所望の反射率(光沢)を有する画像が得られるようにインクを調製することで、パントン社の色見本帳に掲載されているオレンジに近い色調を有する画像が形成されると記載されている。特許文献2には、オレンジ顔料としてC.I.Pigment Orange(以下、単に「Pigment Orange」ともいう。)36を含有するオレンジインクが記載されている。
活性光線硬化型インクが顔料を含有する場合、光重合性化合物と顔料との親和性を高めることで、インクの保存安定性を高めることができる。この観点から、顔料をアルミナで表面処理することで、光重合性化合物と顔料との親和性を高める技術が知られている。アルミナは、たとえば特許文献3や特許文献4に記載の方法によって、顔料粒子表面に付与することができる。
また、活性光線硬化型インクが顔料を含有する場合、インクが分散剤をさらに含有することで、顔料の分散性が高まり、インクの保存安定性が高まることが知られている。たとえば、特許文献5では、活性光線硬化型インクが、重量比で顔料よりも多い量の分散剤、および分散シナジストを含有することで、分散安定性が高いと記載されている。このとき、顔料粒子に表面処理を施してスルホン酸等の酸性の吸着官能基を付与することで、分散剤と顔料との親和性を高めて、インクの保存安定性を高めることができる。
活性光線硬化型インクがゲル化剤を含有すると、記録媒体に着弾して冷却したときに、ゲル化剤の結晶化によってインクがゲル化するため、インクのピニング性が高くなり、隣り合うドットの合一が生じにくい。また、ゲル化剤を含有するインクは、低い温度でも粘度が高くなるため、形成した画像の室温での擦過性を高めることもできる。たとえば、特許文献6では、顔料および光重合性化合物を含有するインクジェットインクにオイルゲル化剤を加えることで、記録媒体状に着弾したインク液滴の固化を短時間に完遂させてドットの同一を防いでいる。特許文献7では、顔料または染料を含む放射線硬化性インクに低い温度でゲル化するゲル化剤を加えることで、堅牢性が良好な画像を形成している。
米国特許第8686062号明細書 特開2014−118570号公報 特公昭59−34737号公報 特開2002−121411号公報 米国特許第8197584号明細書 特許第4556414号公報 特開2006−193745号公報
特許文献1に記載のような、異なる複数の顔料が含有されているインクジェットインクを用いて画像を形成すると、顔料同士の比重の違いにより保存中に顔料が分離してしまい、かえって鮮明な画像が得られないことがある。この、顔料の分離による画像の不鮮明化を防ぐためには、異なる色を呈する複数の活性光線硬化型インクを記録媒体の同じ位置に着弾させ、活性光線によって着弾後短時間で硬化させることが好ましい。これらの複数の活性光線硬化型インクは、インクセットとすることができる。このとき、前記固溶体を含有する活性光線硬化型インクをインクセットが含むことで、形成される画像の色域がさらに拡大される。
ここで、ゲル化剤および顔料を含む活性光線硬化型インクは、顔料の表面処理状態によってゲル化剤の結晶化の程度が変化することがある。たとえば、ゲル化剤とスルホン酸のみによって表面処理された顔料とを含有する活性光線硬化型インクでは、顔料表面とゲル化剤との相互作用によって、ゲル化剤の結晶化が阻害され、インクのピニング性が悪化しやすい。インクのピニング性が低くなると、インクが濡れ広がりやすくなるため、本来の意図以上に画像表面の光沢性が高まり、他の顔料を有するインクとの光沢差が生じてしまう恐れがある。また、結晶化しなかったゲル化剤は、硬化した後に時間をかけてインクの表面に析出し、ブルーミングの原因になることがある。本発明者らの知見によれば、特にスルホン酸で表面処理された固溶体を含むマゼンタ顔料を用いた場合に、これらの光沢差の問題が生じやすい。
これに対し、ゲル化剤の量を減らすことでアルミナとゲル化剤との会合を防ぐことはできるが、一方でゲル化剤が少ないためピニング性も高まらず、着弾時の液滴径が広がることによるドットの合一が発生してしまう。
また、Pigment Orange 36その他のオレンジ顔料を含有するオレンジインクによって形成された画像は、インクの組成によって、パントン社の色見本帳に記載のオレンジに近い色調にならなかったり、または他色のインクによって形成された画像とは光沢感が異なったりすることがある。そのため、Pantone色見本帳に記載のオレンジに近い色調を有し、かつ、他色のインクによって形成された画像により近い光沢を有する画像を形成できるようなインクに対する要望は依然として存在する。
上記の課題に鑑み、本発明は、パントン社の色見本帳に記載のPantone Red 032やPantone Orange 021のような、YMCK4色のインクだけでは、形成が困難であるような色領域を持つ画像の形成、及びL*a*b*色空間における赤〜オレンジ領域の色域を拡大することができるマゼンタインクおよびオレンジインクを含むインクセットの提供を目的とする。本発明における他の目的は、当該マゼンタインクおよびオレンジインクが他色のインクによって形成された画像と近い光沢を有する画像を形成できるようなマゼンタインクおよびオレンジインクを含むインクセットの提供、本発明における他の目的は、十分なピニング性及び保存安定性を有するマゼンタインクおよびオレンジインクを含むインクセットの提供およびそのようなインクセットを用いた画像形成方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下のインクセットに関する。
[1]顔料、ゲル化剤、光重合性化合物および光重合開始剤を含有し、活性光線の照射によって硬化する複数種のインクを含むインクセットであって、前記複数種のインクはマゼンタインクおよびオレンジインクを含み、前記マゼンタインクが含有する前記顔料は、アルミナおよびスルホン酸で表面処理した、C.I.Pigment Violet 19とC.I.Pigment Red 202との固溶体を含むマゼンタ顔料を含み、前記マゼンタ顔料中の前記アルミナの量は1500質量ppm以上7500質量ppm以下であり、それぞれのインクにおける前記ゲル化剤の含有量は、1質量%以上5質量%以下であることを特徴とする、インクセット。
[2]前記マゼンタ顔料における前記C.I.Pigment Violet 19と前記C.I.Pigment Red 202との質量比率は60/40以上70/30以下であることを特徴とする、[1]に記載のインクセット。
[3]前記マゼンタ顔料に対する前記アルミナの量は、5000質量ppm以上7500質量ppm以下であることを特徴とする、[1]または[2]に記載のインクセット。
[4]顔料、ゲル化剤、光重合性化合物および光重合開始剤を含有し、活性光線の照射によって硬化する複数種のインクを含むインクセットであって、前記複数種のインクはマゼンタインクおよびオレンジインクを含み、前記オレンジインクは、インクが含有する顔料の質量に対して2.0質量%以上15.0質量%以下の、不溶性アゾ顔料のスルホン化誘導体をさらに含有し、前記オレンジインクが含有する前記顔料は、環状構造を有し、かつ、環状構造内に塩基性部位を有するオレンジ顔料を含み、前記オレンジインクが含有する前記光重合性化合物は、前記光重合性化合物の全質量に対して30質量%以上の、エチレンオキサイド基またはプロピレンオキサイド基を合わせて6個以上有する光重合性化合物を含み、それぞれのインクにおける前記ゲル化剤の含有量は、1.5質量%以上3.0質量%以下であることを特徴とする、インクセット。
[5]前記エチレンオキサイド基またはプロピレンオキサイド基を合わせて6個以上有する光重合性化合物は、3個以上の前記エチレンオキサイド基またはプロピレンオキサイド基を有するセグメントを分子内に2個以上有することを特徴とする、[4]に記載のインクセット。
[6]さらに、イエローインク、シアンインクおよびブラックインクを含むことを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかに記載のインクセット。
[7]顔料、ゲル化剤、光重合性化合物および光重合開始剤を含有し、活性光線の照射によって硬化する複数種のインクを含むインクセットであって、前記複数種のインクはマゼンタインクおよびオレンジインクを含み、前記マゼンタインクが含有する前記顔料は、アルミナおよびスルホン酸で表面処理した、C.I.Pigment Violet 19とC.I.Pigment Red 202との固溶体を含むマゼンタ顔料を含み、前記マゼンタ顔料中の前記アルミナの量は1500質量ppm以上7500質量ppm以下であり、前記オレンジインクは、インクが含有する顔料の質量に対して2.0質量%以上15.0質量%以下の、不溶性アゾ顔料のスルホン化誘導体をさらに含有し、前記オレンジインクが含有する前記顔料は、環状構造を有し、かつ、環状構造内に塩基性部位を有するオレンジ顔料を含み、前記オレンジインクが含有する前記光重合性化合物は、前記光重合性化合物の全質量に対して30質量%以上の、エチレンオキサイド基またはプロピレンオキサイド基を合わせて6個以上有する光重合性化合物を含み、それぞれのインクにおける前記ゲル化剤の含有量は、1.0質量%以上5.0質量%以下であることを特徴とする、インクセット。
[8]前記オレンジインクは、C.I.Pigment Orange 36、C.I.Pigment Orange 64およびC.I.Pigment Orange 71からなる群から選択される少なくとも1種の顔料を含有することを特徴とする、[1]〜[7]のいずれかに記載のインクセット。
また、本発明は、以下の画像形成方法に関する。
[9][1]〜[8]のいずれかに記載のインクセットに含まれるマゼンタインクおよびオレンジインクをインクジェットヘッドのノズルから射出して記録媒体に着弾させる工程、および前記着弾した前記マゼンタインクおよびオレンジインクに活性光線を照射して前記マゼンタインクおよびオレンジインクを硬化させる工程、を含む、画像形成方法。
本発明によれば、アルミナおよびスルホン酸で表面処理をした、Pigment Violet 19/Pigment Red 202の固溶体を含む顔料、およびゲル化剤を含有するマゼンタインクであって、良好な保存安定性およびピニング性を有するマゼンタインクを含むインクセット、およびそのようなインクセットを用いた画像形成方法が提供される。
1.インクセット
本発明に係るインクセットは、顔料、光重合性化合物、ゲル化剤および光重合開始剤を含有し、活性光線の照射によって硬化する複数種のインクを含むインクセットであって、前記複数種のインクはマゼンタインクおよびオレンジインクを含む、インクセットである。
インクセットとは、インクジェット記録装置に設置して画像を形成することができるように構成された、2以上のインクの組み合わせを意味する。インクセットの例には、複数のインクを複数のインクカートリッジにそれぞれ独立に収容したもの、または複数のインク収容部を一体的に構成して、それぞれのインク収容部に異なるインクを収容したインクカートリッジが含まれる。
1−1.マゼンタインク
マゼンタインクは、顔料、光重合性化合物、ゲル化剤および光重合開始剤を含有し、活性光線の照射によって硬化するインクである。マゼンタインクは、インクセット中に一種のみが含まれていてもよく、組成が異なる二種類以上のマゼンタインクがインクセット中に含まれていてもよい。
1−1−1.顔料
マゼンタインクに含まれる前記顔料は、記録媒体上に着弾し硬化したインクがマゼンタ色を呈することができる顔料であればよい。光重合性化合物や分散剤と顔料との親和性を高めて、インクの保存安定性を高める観点からは、前記顔料は、Pigment Violet 19とPigment Red 202との固溶体を含むマゼンタ顔料をアルミナおよびスルホン酸で表面処理してなるものを含むことが好ましい(以下、当該マゼンタ顔料を「マゼンタ顔料−A」といい、マゼンタ顔料−Aを含有するマゼンタインクを「マゼンタインク−A」ともいい、それ以外のマゼンタインクを「マゼンタインク−B」ともいう。単に「マゼンタインク」というときは、両者を包含するマゼンタインクを概念的に意味する。)。マゼンタ顔料−A中の前記アルミナの量は1500質量ppm以上7500質量ppm以下であることが好ましい。マゼンタインクが含有するマゼンタ顔料はマゼンタ顔料−Aであることが好ましいが、下述するようにオレンジインク等の他のインクによって色域の拡大が図られている場合は、マゼンタインク中に含まれる顔料がマゼンタ顔料−Aである必要はない。また、マゼンタインク中に含まれる顔料は一種のみが含まれていてもよく、二種類以上が含まれていてもよい。
前記マゼンタ顔料−Aは、本発明のインクセットに含まれるマゼンタインクを記録媒体に着弾させ硬化させてなる画像の色域を、通常のマゼンタ顔料よりも広げることができる。そのため、たとえば上記マゼンタ顔料のみで画像を形成することにより、色見本であるJapan color 2011に記載のマゼンタ色により近い色を出すことが可能となるほか、マゼンタインク−Aとオレンジインクとを含むインクセットで画像を形成することにより、Pantone Red 032により近い色を出すことも可能となる。
前記顔料の含有量は、得られる画像におけるマゼンタの発色を十分なものにして、かつインクの粘度をインクジェットヘッドから吐出できる程度にできる範囲であればよく、たとえば、マゼンタインクに対して0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、上記観点からは0.4質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
前記固溶体を含むマゼンタ顔料の市販の例には、CINQUASIA Magenta L4540、CINQUASIA Magenta D4500JおよびCINQUASIA Red K4330、BASF社製(「CINQUASIA」は同社の登録商標)、228−2120、Sun Chemical社製、Inkjet Magenta E7B、Clariant社製が含まれる。
形成される画像の色域をより広げ、特に、オレンジインクとの組みあわせによりPantone Red 032により近い色域の画像を形成する観点からは、前記顔料におけるPigment Violet 19とPigment Red 202との質量比率は、(Pigment Violet 19の質量)/(Pigment Red 202の質量)が60/40以上70/30以下であることが好ましい。
前記質量比率を満たす前記固溶体を含むマゼンタ顔料の例には、CINQUASIA Magenta D4500J、BASF社製(Pigment Violet 19/Pigment Red 202比率:60/40)および228−2120、Sun Chemical社製(Pigment Violet 19/Pigment Red 202比率:70/30)が含まれる。
マゼンタ顔料の表面処理は、公知の方法で行うことができる。アルミナによる表面処理は、たとえば、特許文献2もしくは特許文献3に記載の方法、または、顔料が分散された分散液にアルミナを懸濁し、懸濁液のpHを調整する方法で行うことができる。アルミナの付与量は、それぞれの方法において添加するアルミナの量を変化させることによって所望の量に調整することができる。また、スルホン酸による表面処理は、たとえば、スラリー状の顔料分散体にスルホン化剤を添加し、高温下で両者を反応させる方法によって行うことができる。スルホン酸の付与量は、添加するスルホン化剤の量を調節することによって所望の量に調整することができる。
マゼンタ顔料−A中のアルミナの量は、顔料1gに対して1500ppm以上7500ppm以下である。アルミナの付与量を1500ppm以上とすることによって、光重合性化合物および分散剤への顔料の親和性が高くなり、顔料を安定して保存することができるようになる。また、アルミナの付与量を7500ppm以下とすることによって、アルミナとゲル化剤との会合によるゲル化剤の結晶化不足を防ぎ、過剰なレベリングによる光沢の発生を抑えることができる。光重合性化合物と顔料との親和性をより高めて、マゼンタインクの保存安定性をより高める観点からは、アルミナの付与量を顔料1gに対して5000ppm以上7500ppm以下とすることが好ましい。
マゼンタ顔料−A中のスルホン酸の量は、インクの保存安定性が十分となる範囲であればよく、たとえば、顔料1gに対して1000ppm以上1500ppm以下とすることができる。
顔料中のアルミナおよびスルホン酸の量は、たとえば誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP−AES)等で測定して得た顔料中のAl元素量およびS元素量からそれぞれ算出することができる。顔料がインク中に分散されているときは、インク中のAl元素量およびS元素量から算出した値を顔料中のアルミナおよびスルホン酸の量としてもよい。
1−1−2.ゲル化剤
ゲル化剤は、記録媒体に着弾したインクの液滴をゲル状態にして仮固定(ピニング)することができる。インクがゲル状態でピニングされると、インクの濡れ広がりが抑えられて隣り合うドットが同一しにくくなるため、より高精細な画像を形成することができる。また、インクがゲル状態になると、インク液滴中への環境中の酸素の入り込みが抑えられて酸素による硬化阻害が生じにくくなるため、高精細な画像をより高速で形成することができる。ゲル化剤は、本発明のインクセットを構成するインク中に、一種のみが含まれていてもよく、二種類以上が含まれていてもよい。
ゲル化剤の含有量は、インクの全質量に対して1質量%以上5質量%以下である。ゲル化剤の含有量を1質量%以上とすることで、前記アルミナで表面処理されたマゼンタ顔料を含有するインクのピニング性を十分に高め、より高精細な画像を形成することができる。また、ゲル化剤の含有量を1.5質量%以上とすることで、インク保存中のインクの液状化による顔料の沈降等が生じにくくなり、インクの保存安定性をより高めることができる。ゲル化剤の含有量を5質量%以下とすることで、形成した画像の表面にゲル化剤が析出しにくくなり、画像の光沢を他のインクによる画像の光沢により近づけることができ、かつ、インクジェットヘッドからのインク射出性をより高めることができる。上記観点からは、マゼンタインク中のゲル化剤の含有量は、1.5質量%以上3質量%以下であることがより好ましい。
以下の観点から、ゲル化剤は、インクのゲル化温度以下の温度で、インク中で結晶化することが好ましい。ゲル化温度とは、加熱によりゾル化または液体化したインクを冷却していったときに、ゲル化剤がゾルからゲルに相転移し、インクの粘度が急変する温度をいう。具体的には、ゾル化または液体化したインクを、粘弾性測定装置(たとえば、MCR300、Physica社製)で粘度を測定しながら冷却していき、粘度が急激に上昇した温度を、そのインクのゲル化温度とすることができる。
ゲル化剤がインク中で結晶化すると、板状に結晶化したゲル化剤によって形成された三次元空間に光重合性化合物が内包される構造が形成されることがある(このような構造を、以下「カードハウス構造」という。)。カードハウス構造が形成されると、液体の光重合性化合物が前記空間内に保持されるため、インク液滴がより濡れ広がりにくくなり、インクのピニング性がより高まる。インクのピニング性が高まると、記録媒体に着弾したインク液滴同士が合一しにくくなり、より高精細な画像を形成することができる。
カードハウス構造を形成するには、インク中で溶解している光重合性化合物とゲル化剤とが相溶していることが好ましい。これに対して、インク中で溶解している光重合性化合物とゲル化剤とが相分離していると、カードハウス構造を形成しにくい場合がある。
結晶化によるカードハウス構造の形成に好適なゲル化剤の例には、
ジリグノセリルケトン、ジベヘニルケトン、ジステアリルケトン、ジエイコシルケトン、ジパルミチルケトン、ジラウリルケトン、ジミリスチルケトン、ミリスチルパルミチルケトンおよびパルミチルステアリルケトンを含むケトンワックス;
ベヘニン酸ベヘニル、イコサン酸イコシル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸パルミチル、パルミチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、セロチン酸ミリシル、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸オレイル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、エチレングリコール脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレン脂肪酸エステルを含むエステルワックス;
パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスおよびペトロラクタムを含む石油系ワックス;
キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油、ホホバ固体ロウおよびホホバエステルを含む植物系ワックス;
ミツロウ、ラノリンおよび鯨ロウを含む動物系ワックス;
モンタンワックスおよび水素化ワックスを含む鉱物系ワックス;
硬化ヒマシ油;
硬化ヒマシ油誘導体、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体、12−ヒドロキシステアリン酸誘導体およびポリエチレンワックス誘導体を含む変性ワックス;
ステアリルアルコールおよびベヘニルアルコールを含む高級アルコール;
12−ヒドロキシステアリン酸を含むヒドロキシステアリン酸;
ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミドおよび12−ヒドロキシステアリン酸アミドを含む脂肪酸アミド;
N−ステアリルステアリン酸アミドおよびN−オレイルパルミチン酸アミドを含むN−置換脂肪酸アミド;
N,N’−エチレンビスステアリルアミド、N,N’−エチレンビス−12−ヒドロキシステアリルアミドおよびN,N’−キシリレンビスステアリルアミドを含む特殊脂肪酸アミド;
ドデシルアミン、テトラデシルアミンおよびオクタデシルアミンを含む高級アミン;
ショ糖ステアリン酸およびショ糖パルミチン酸を含むショ糖脂肪酸のエステル;
ポリエチレンワックスおよびα−オレフィン無水マレイン酸共重合体ワックスを含む合成ワックス;
ダイマー酸、ならびに
ダイマージオールが含まれる。
脂肪酸アミドの市販の例には、ニッカアマイドシリーズ、日本化成社製(「ニッカアマイド」は同社の登録商標)、ITOWAXシリーズ、伊藤製油社製、およびFATTYAMIDシリーズ、花王社製が含まれる。
脂肪酸エステル化合物の市販の例には、EMALLEXシリーズ、日本エマルジョン社製 リケマールシリーズおよびポエムシリーズ、理研ビタミン社製(「リケマール」および「ポエム」はいずれも同社の登録商標)が含まれる。
ショ糖脂肪酸のエステルの市販の例には、リョートーシュガーエステルシリーズ、三菱化学フーズ社製(「リョートー」は同社の登録商標)が含まれる。
合成ワックスの市販の例には、UNILINシリーズ、Baker−Petrolite社製(「UNILIN」は同社の登録商標)が含まれる。
ダイマージオールの市販の例には、PRIPORシリーズ、CRODA社製(「PRIPOR」は同社の登録商標)が含まれる。
これらのゲル化剤のうち、よりピニング性を高める観点からは、ケトンワックス、エステルワックス、高級脂肪酸、高級アルコールおよび脂肪酸アミドが好ましく、上記観点からは、下記一般式(G1)で表されるケトンワックスおよび下記一般式(G2)で表されるエステルワックスがさらに好ましい。下記一般式(G1)で表されるケトンワックスおよび下記一般式(G2)で表されるエステルワックスは、マゼンタインク中に、一種のみが含まれていてもよく、二種類以上が含まれていてもよい。また、下記一般式(G1)で表されるケトンワックスおよび下記一般式(G2)で表されるエステルワックスは、マゼンタインク中に、いずれか一方のみが含まれていてもよいし、双方が含まれていてもよい。
一般式(G1):R1−CO−R2
一般式(G1)において、R1およびR2は、いずれも炭素数が1以上24以下である直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基である。ただし、R1およびR2のうち、いずれか一方は、炭素数が12以上の直鎖アルキル構造を含み、好ましくは両方が、炭素数が12以上の直鎖アルキル構造を含む。結晶構造をとりやすくしてインクのピニング性を高める観点からは、R1およびR2はいずれも炭素数が1以上24以下である直鎖状の炭化水素基であり、さらに好ましくはいずれも炭素数が8以上22以下である直鎖状の炭化水素基である。
一般式(G2):R3−COO−R4
一般式(G2)において、R3およびR4は、いずれも炭素数が1以上24以下である直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基である。ただし、R3およびR4のうち、いずれか一方は、炭素数が12以上の直鎖アルキル構造を含み、好ましくは両方が、炭素数が12以上の直鎖アルキル構造を含む。結晶構造をとりやすくしてインクのピニング性を高める観点からは、R3およびR4はいずれも炭素数が1以上24以下である直鎖状の炭化水素基であり、さらに好ましくはいずれも炭素数が8以上22以下である直鎖状の炭化水素基である。
炭素数が12以上である直鎖アルキル構造を含む上記一般式(G1)で表されるケトンワックスまたは上記一般式(G2)で表されるエステルワックスは、ゲル化剤の結晶性を高め、かつ、上記カードハウス構造において十分な空間が生じさせる。そのため、光重合性化合物が上記空間内に十分に内包されやすくなり、インクのピニング性がより高くなる。また、直鎖状または分岐鎖状の炭化水素基の炭素数が24以下であると、ゲル化剤の融点が過度に高まらないため、インクを出射するときにインクを過度に加熱する必要がない。
上記一般式(G1)で表されるケトンワックスの例には、ジリグノセリルケトン(炭素数:23−24)、ジベヘニルケトン(炭素数:21−22)、ジステアリルケトン(炭素数:17−18)、ジエイコシルケトン(炭素数:19−20)、ジパルミチルケトン(炭素数:15−16)、ジミリスチルケトン(炭素数:13−14)、ジラウリルケトン(炭素数:11−12)、ラウリルミリスチルケトン(炭素数:11−14)、ラウリルパルミチルケトン(11−16)、ミリスチルパルミチルケトン(13−16)、ミリスチルステアリルケトン(13−18)、ミリスチルベヘニルケトン(13−22)、パルミチルステアリルケトン(15−18)、バルミチルベヘニルケトン(15−22)およびステアリルベヘニルケトン(17−22)が含まれる。なお、上記括弧内の炭素数は、カルボニル基で分断される2つの炭化水素基それぞれの炭素数を表す。
一般式(G1)で表されるケトンワックスの市販の例には、18−Pentatriacontanon、Alfa Aeser社製、Hentriacontan−16−on、Alfa Aeser社製およびカオーワックスT1、花王社製が含まれる。
一般式(G2)で表される脂肪酸またはエステルワックスの例には、ベヘニン酸ベヘニル(炭素数:21−22)、イコサン酸イコシル(炭素数:19−20)、ステアリン酸ステアリル(炭素数:17−18)、ステアリン酸パルミチル(炭素数:17−16)、ステアリン酸ラウリル(炭素数:17−12)、パルミチン酸セチル(炭素数:15−16)、パルミチン酸ステアリル(炭素数:15−18)、ミリスチン酸ミリスチル(炭素数:13−14)、ミリスチン酸セチル(炭素数:13−16)、ミリスチン酸オクチルドデシル(炭素数:13−20)、オレイン酸ステアリル(炭素数:17−18)、エルカ酸ステアリル(炭素数:21−18)、リノール酸ステアリル(炭素数:17−18)、オレイン酸ベヘニル(炭素数:18−22)およびリノール酸アラキジル(炭素数:17−20)が含まれる。なお、上記括弧内の炭素数は、エステル基で分断される2つの炭化水素基それぞれの炭素数を表す。
一般式(G2)で表されるエステルワックスの市販の例には、ユニスターM−2222SLおよびスパームアセチ、日油社製(「ユニスター」は同社の登録商標)、エキセパールSSおよびエキセパールMY−M、花王社製(「エキセパール」は同社の登録商標)、EMALEX CC−18およびEMALEX CC−10、日本エマルジョン社製(「EMALEX」は同社の登録商標)ならびにアムレプスPC、高級アルコール工業社製(「アムレプス」は同社の登録商標)が含まれる。これらの市販品は、二種類以上の混合物であることが多いため、必要に応じて分離・精製してインクに含有させてもよい。
1−1−3.光重合性化合物
光重合性化合物は、活性光線を照射されることにより架橋または重合し、インクを硬化させる。活性光線の例には、紫外線、電子線、α線、γ線およびX線が含まれる。安全性の観点、およびかつより低いエネルギー量でも前記重合および架橋を発生させることができるという観点から、活性光線は、紫外線または電子線であることが好ましい。光重合性化合物は、マゼンタインク中に、一種のみが含まれていてもよく、二種類以上が含まれていてもよい。
光重合性化合物の含有量は、本発明の効果が得られる範囲であればよく、たとえば、マゼンタインクの全質量に対して1質量%以上97質量%以下とすることができる。上記観点からは、光重合性化合物の含有量は、マゼンタインクの全質量に対して30質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
光重合性化合物には、ラジカル重合性化合物およびカチオン重合性化合物が含まれる。重合および架橋を発生させやすく、かつ、形成する画像に応じて多様な化合物から選択することができるという観点からは、光重合性化合物はラジカル重合性化合物であることが好ましい。
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物である。ラジカル重合性化合物は、モノマー、重合性オリゴマー、プレポリマーあるいはこれらの混合物のいずれであってもよい。ラジカル重合性化合物は、マゼンタインク中に、一種のみが含まれていてもよく、二種類以上が含まれていてもよい。
ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物の例には、不飽和カルボン酸とその塩、不飽和カルボン酸エステル化合物、不飽和カルボン酸ウレタン化合物、不飽和カルボン酸アミド化合物およびその無水物、アクリロニトリル、スチレン、不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタン等が挙げられる。不飽和カルボン酸の例には、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸などが含まれる。
なかでも、ラジカル重合性化合物は、不飽和カルボン酸エステル化合物であることが好ましく、(メタ)アクリレートであることがより好ましい。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタアクリレートを意味し、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基またはメタアクリロイル基を意味し、「(メタ)アクリル」は、アクリルまたはメタクリルを意味する。
モノマーである(メタ)アクリレートの例には、単官能の(メタ)アクリレート、2官能の(メタ)アクリレートおよび3官能以上の(メタ)アクリレートが含まれる。
単官能の(メタ)アクリレートの例には、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸およびt−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートが含まれる。
2官能の(メタ)アクリレートの例には、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートおよびトリプロピレングリコールジアクリレートが含まれる。
3官能以上の(メタ)アクリレートの例には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレートが含まれる。
重合性オリゴマーまたはプレポリマーである(メタ)アクリレートの例には、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、芳香族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーおよび直鎖(メタ)アクリルオリゴマー等が含まれる。
光重合性化合物は、エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレートは、感光性がより高い。また、エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレートは、インクが低温下でゲル化する際にカードハウス構造により内包されやすく、かつ、高温下でも他のインク成分とより相溶しやすい。さらには、エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレートは、硬化収縮が少ないため画像形成時の印刷物のカールがより生じにくい。
エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレートの市販の例には、CD561、SR454、SR499およびSR494、Sartomer社製、ならびにNKエステルA−400、NKエステルA−600、NKエステル9G、NKエステル14G、NKエステルDOD−N、NKエステルA−DCPおよびNKエステルDCP、新中村化学工業社製が含まれる。
カチオン重合性化合物の例には、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物およびオキセタン化合物が含まれる。カチオン重合性化合物は、マゼンタインク中に、一種のみが含まれていてもよく、二種類以上が含まれていてもよい。
エポキシ化合物の例には、芳香族エポキシド、脂環式エポキシドおよび脂肪族エポキシドが含まれる。硬化性をより高める観点からは、芳香族エポキシドおよび脂環式エポキシドが好ましい。
芳香族エポキシドの例には、多価フェノールまたはそのアルキレンオキサイド付加体と、エピクロルヒドリンとを反応させて得られるジまたはポリグリシジルエーテルが含まれる。上記多価フェノールまたはそのアルキレンオキサイド付加体の例には、ビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加体等が含まれる。上記アルキレンオキサイド付加体におけるアルキレンオキサイドの例には、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドが含まれる。
脂環式エポキシドの例には、シクロアルカン含有化合物を過酸化水素や過酸等の酸化剤でエポキシ化して得られるシクロアルカンオキサイド含有化合物が含まれる。上記シクロアルカンの例には、シクロヘキセンおよびシクロペンテンが含まれる。
脂肪族エポキシドの例には、脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加体と、エピクロルヒドリンとを反応させて得られるジまたはポリグリシジルエーテルが含まれる。上記脂肪族多価アルコールまたはそのアルキレンオキサイド付加体の例には、エチレングリコール、プロピレングリコールおよび1,6−ヘキサンジオールを含むアルキレングリコールならびにそのアルキレンオキサイド付加体が含まれる。上記アルキレンオキサイド付加体におけるアルキレンオキサイドの例には、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドが含まれる。
ビニルエーテル化合物の例には、単官能のビニルエーテル化合物および2官能以上のビニルエーテル化合物が含まれる。これらのうち、インクの硬化性をより高め、または記録媒体と画像との密着性をより高める観点からは、2官能以上のビニルエーテル化合物が好ましい。
単官能のビニルエーテル化合物の例には、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−o−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルおよびオクタデシルビニルエーテルが含まれる。
2官能以上のビニルエーテル化合物の例には、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルおよびトリメチロールプロパントリビニルエーテルが含まれる。これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性や密着性などを考慮すると、ジまたはトリビニルエーテル化合物が好ましい。
オキセタン化合物の例には、特開2001−220526号公報、特開2001−310937号公報および特開2005−255821号公報に記載のオキセタン化合物が含まれる。
1−1−4.光重合開始剤
光重合開始剤は、前記光重合性化合物がラジカル重合性の官能基を有する化合物であるときは、光ラジカル開始剤であり、前記光重合性化合物がカチオン重合性の官能基を有する化合物であるときは、光酸発生剤である。光重合開始剤は、マゼンタインク中に、一種のみが含まれていてもよく、二種類以上が含まれていてもよい。光重合開始剤は、光ラジカル開始剤と光酸発生剤の両方の組み合わせであってもよい。
光ラジカル開始剤には、開裂型ラジカル開始剤および水素引き抜き型ラジカル開始剤が含まれる。
開裂型ラジカル開始剤の例には、アセトフェノン系の開始剤、ベンゾイン系の開始剤、アシルホスフィンオキシド系の開始剤、ベンジルおよびメチルフェニルグリオキシエステルが含まれる。
アセトフェノン系の開始剤の例には、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノンが含まれる。
ベンゾイン系の開始剤の例には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。
アシルホスフィンオキシド系の開始剤の例には、2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシドが含まれる。
水素引き抜き型ラジカル開始剤の例には、ベンゾフェノン系の開始剤、チオキサントン系の開始剤、アミノベンゾフェノン系の開始剤、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノンおよびカンファーキノンが含まれる。
ベンゾフェノン系の開始剤の例には、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンおよび3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンが含まれる。
チオキサントン系の開始剤の例には、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントンおよび2,4−ジクロロチオキサントンが含まれる。
アミノベンゾフェノン系の開始剤の例には、ミヒラーケトンおよび4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノンが含まれる。
光酸発生剤の例には、有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページに記載の化合物が含まれる。
光重合開始剤の含有量は、インクが十分に硬化できる範囲であればよく、たとえば、マゼンタインクの全質量に対して0.01質量%以上10質量%以下とすることができる。
1−1−5.その他の成分
マゼンタインクは、本発明の効果が得られる範囲において、分散剤、光重合開始剤助剤および重合禁止剤を含むその他の成分をさらに含んでいてもよい。これらの成分は、マゼンタインク中に、一種のみが含まれていてもよく、二種類以上が含まれていてもよい。
分散剤は、顔料および後述の光重合性化合物の双方と親和性を有する化合物であり、顔料に吸着しつつ光重合性化合物内に分散することで、顔料の分散性を高めることができる。
分散剤の含有量および種類は、顔料の分散性をより高めることができる範囲であればよい。分散剤は、マゼンタインク中に、一種のみが含まれていてもよく、二種類以上が含まれていてもよい。
分散剤の含有量は、たとえば、顔料の全質量に対して20質量%以上70質量%以下とすることができる。分散剤の含有量を、顔料の全質量に対して20質量%以上とすることで、分散剤が顔料表面を被覆することにより、インク保存中の顔料同士の凝集をより生じにくくすることができる。分散剤の含有量を、顔料の全質量に対して70質量%以下とすることで、分散剤とゲル化剤との会合がより生じにくくなり、記録媒体に着弾したインクをより十分にゲル化させてピニングさせることができる。上記観点から、分散剤の含有量は、顔料の全質量に対して30質量%以上60質量%以下であることが好ましく、35質量%以上50質量%以下であることがさらに好ましい。
分散剤の例には、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキル燐酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、およびステアリルアミンアセテートが含まれる。
伸張した側鎖による立体障害によって顔料間の凝集を抑制し、顔料の分散性を向上させる観点からは、分散剤は、櫛型ブロック構造を有するブロックコポリマーであることが好ましい。なお、櫛型ブロック構造を有するブロックコポリマーとは、直鎖状の主鎖を構成するモノマー由来のそれぞれの構成単位に対して、側鎖として別の種類のポリマーがグラフト重合したコポリマーをいう。
櫛型ブロック構造を有するブロックコポリマーの市販品の例には、BYK−2164、BYK−168、BYK N−22024、BYK JET−9150およびBYK JET−9151、ビックケミー社製(「BYK」は同社の登録商標)、EFKA 7701、EFKA 4310、EFKA 4320およびEFKA 4401、BASF社製、SOLSPERSE 24000GRおよびSOLSPERSE 39000、リュブリゾール社製(「SOLSPERSE」は同社の登録商標)ならびにアジスパーPB821およびアジスパーPB824、味の素ファインテクノ社製(「アジスパー」は味の素社の登録商標)が含まれる。
光重合開始剤助剤の例には、芳香族第3級アミン化合物を含む第3級アミン化合物が含まれる。芳香族第3級アミン化合物の例には、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジメチルアミノ−p−安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ−p−安息香酸イソアミルエチルエステル、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、トリエチルアミンおよびN,N−ジメチルヘキシルアミンが含まれる。
重合禁止剤の例には、(アルキル)フェノール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、p−メトキシフェノール、t−ブチルカテコール、t−ブチルハイドロキノン、ピロガロール、1,1−ピクリルヒドラジル、フェノチアジン、p−ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、2,5−ジ−t−ブチル−p−ベンゾキノン、ジチオベンゾイルジスルフィド、ピクリン酸、クペロン、アルミニウムN−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、トリ−p−ニトロフェニルメチル、N−(3−オキシアニリノ−1,3−ジメチルブチリデン)アニリンオキシド、ジブチルクレゾール、シクロヘキサノンオキシムクレゾール、グアヤコール、o−イソプロピルフェノール、ブチラルドキシム、メチルエチルケトキシムおよびシクロヘキサノンオキシムが含まれる。
1−1−6.物性
インクジェットヘッドからの射出性をより高める観点からは、マゼンタインクの80℃における粘度は3mPa・s以上20mPa・s以下であることが好ましい。また、着弾して常温に降温した際にインクを十分にゲル化させる観点からは、マゼンタインクの25℃における粘度は1000mPa・s以上であることが好ましい。
マゼンタインクのゲル化温度は、40℃以上70℃以下であることが好ましい。インクのゲル化温度が40℃以上であると、記録媒体に着弾後、インクが速やかにゲル化するため、ピニング性がより高くなる。インクのゲル化温度が70℃以下であると、インク温度が通常80℃程度であるインクジェットヘッドからのマゼンタインクの射出時にインクがゲル化しにくいため、より安定してインクを射出することができる。
マゼンタインクおよび後述するオレンジインクの80℃における粘度、25℃における粘度およびゲル化温度は、レオメータにより、インクの動的粘弾性の温度変化を測定することにより求めることができる。本発明においては、これらの粘度およびゲル化温度は、以下の方法によって得られた値である。マゼンタインクを100℃に加熱し、ストレス制御型レオメータPhysica MCR301(コーンプレートの直径:75mm、コーン角:1.0°)、AntonPaar社製によって粘度を測定しながら、剪断速度11.7(1/s)、降温速度0.1℃/sの条件で20℃までインクを冷却して、粘度の温度変化曲線を得る。80℃における粘度および25℃における粘度は、粘度の温度変化曲線において80℃、25℃における粘度をそれぞれ読み取ることにより求める。ゲル化温度は、粘度の温度変化曲線において、粘度が200mPa・sとなる温度として求める。
インクジェットヘッドからの射出性をより高める観点からは、マゼンタインクが含有する顔料粒子の平均粒子径は0.08μm以上0.5μm以下であり、最大粒子径は0.3μm以上10μm以下であることが好ましい。本発明における顔料粒子の平均粒子径とは、データサイザーナノZSP、Malvern社製を使用して動的光散乱法によって求めた値を意味する。なお、色材を含むインクは濃度が高く、この測定機器では光が透過しないので、インクを200倍で希釈してから測定する。測定温度は常温(25℃)とする。
1−2.オレンジインク
オレンジインクは、顔料、光重合性化合物、ゲル化剤および光重合開始剤を含有し、活性光線の照射によって硬化するインクである。オレンジインクは、インクセット中に一種のみが含まれていてもよく、組成が異なる二種類以上のオレンジインクがインクセット中に含まれていてもよい。
1−2−1.顔料
オレンジインクが含有する顔料は、記録媒体上に着弾し硬化したインクがオレンジ色を呈することができる顔料であればよい。このような顔料の例には、Pigment Orange 16、Pigment Orange 34、Pigment Orange 36、Pigment Orange 38、Pigment Orange 43、Pigment Orange 64およびPigment Orange 71が含まれる。
なお、他の材料との組み合わせによって、オレンジ顔料とゲル化剤との相互作用を減らし、顔料表面にゲル化剤を集積させにくくすることが可能である観点から、オレンジインクが含有する顔料は、非芳香族性の環状構造内に塩基性部位を有する顔料(以下、単に「塩基性オレンジ顔料」ともいう。)であり、かつ、不溶性アゾ顔料のスルホン化誘導体(以下、単に「アゾ誘導体」ともいう。)を含有するオレンジ顔料を用いることが好ましい。以下、当該オレンジ顔料を「オレンジ顔料−C」、及びオレンジ顔料−Cを含有するインクを「オレンジインク−C」ともいい、それ以外のオレンジインクを「オレンジインク−D」ともいう。単に「オレンジインク」というときは、両者を包含するオレンジインクを概念的に意味する。一般的にゲル化剤、特に結晶性のゲル化剤は、温度変化に伴ってゲル化剤中の高極性の部位と低極性の部位が電子的相互作用することによって、インク中で結晶化して粘度を増大させ、インクをピニングさせることが知られている。しかし、本発明者らは、インクの組成によって、インクのピニング性能が低下したり、不安定化することがあることを見出しており、その原因は顔料などのインク中の他の成分とゲル化剤が電子的相互作用することによって、ゲル化剤の結晶化によるピニングに使われるゲル化剤の量が減少または不安定化するためではないかと推定している。そこで、オレンジ顔料−Cのような、塩基性部位を有する顔料と高い極性を有する重合性化合物を組み合わせることによって、顔料と重合性化合物が優先的に電子的相互作用し、ゲル化剤は他の化合物と相互作用していない「フリー」な状態になるものと推定している。これによって、インクのゾルゲル相転移の温度が安定化し、かつゲル化剤の含有量を必要最低限とすることができる。ゲル化剤の含有量を低減させることにより、オレンジインク−Cは、形成した画像の光沢の過剰な高まりを抑制することができる。さらに、オレンジインク−Cと高い極性を有する重合性化合物の組合せによって、顔料の分散安定性が良好となるため、顔料の保存安定性が良好であり、画像形成時においても顔料同士過度な集積が抑制でき、所望の色域の画像が形成しやすいものと考えられる。以上の理由から、本発明におけるインクセットのオレンジインクは、オレンジ顔料−Cを含有するオレンジインク−Cであることが好ましいが、上述した用にマゼンタインク等の他のインクによって色域の拡大が図られている場合は、オレンジインク中に含まれる顔料がオレンジ顔料−Cである必要はないが、良好な色域を有する画像形成の観点からは、本発明のインクセットは少なくともマゼンタ顔料−Aを含有するマゼンタインク−Aとオレンジ顔料−Cを含有するオレンジインク−Cを含むインクセットであることが、より好ましい。また、オレンジインク中に含まれる顔料は一種のみが含まれていてもよく、二種類以上が含まれていてもよい。
塩基性オレンジ顔料が有する環状構造の少なくとも1つは、塩基性部位を有する非芳香族性の環状構造である。このような環状構造の例には、環状構造が炭素と水素のみからなる脂環式構造、環状構造が炭素とそれ以外の原子とを含むヘテロ環構造、および複数の前記環状構造が1つの原子を共有するスピロ環構造から選ばれる部分構造の一部に塩基性部位が含まれる構造、又は前記構造一部が塩基性部位に置換された構造が含まれる。環状構造は、芳香族性を有しないのであれば、二重結合を含んでいてもよい。
塩基性部位は、正の荷電を有し得る部位を意味する。塩基性部分の例には、第2級アミノ基、第3級アミノ基および第4級アンモニウム基を含むアミノ基、ならびにピロリジンまたはピペリジンの骨格を有する含窒素複素環基が含まれる。光重合性化合物を含むインク中の成分との反応によるインクの劣化を防ぐ観点からは、塩基性部位は第2級アミノ基および第3級アミノ基であることが好ましい。
後述するアゾ誘導体と塩基性オレンジ顔料とをよく会合させ、過剰な光沢の発生をより抑制する観点からは、塩基性オレンジ顔料は分子内に塩基性部位を2つ以上有することが好ましく、3つ以上有することがさらに好ましい。
塩基性オレンジ顔料の含有量は、得られる画像におけるオレンジの発色を十分なものにして、かつインクの粘度をインクジェットヘッドから吐出できる程度にできる範囲であればよい。上記観点からは、たとえば、前記顔料の含有量は、オレンジインク−Cに対して0.1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、0.4質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
塩基性オレンジ顔料の例には、以下の(式1)で表される構造を有するPigment Orange 36、(式2)で表される構造を有するPigment Orange 64および(式3)で表される構造を有するPigment Orange 71が含まれる。Pigment Orange 36およびPigment Orange 71は分子内に塩基性部位を2つ有し、Pigment Orange 64は分子内に塩基性部位を4つ有する。
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1−2−2.アゾ誘導体
アゾ誘導体は、不溶性アゾ顔料のスルホン化誘導体である。アゾ誘導体は、スルホン酸に由来する極性の高い部分を有するため、同じく極性の高い部分を有する塩基性オレンジ顔料とよく会合できる。そのため、アゾ誘導体と塩基性オレンジ顔料とをインクが含有すると、ゲル化剤が塩基性オレンジ顔料の表面に集積することによる、インク中のゲル化剤分子の相対的な減少を、抑制することができる。そのため、アゾ誘導体と塩基性オレンジ顔料とを含有するインクによれば、光沢が高くなりすぎることがなく、かつ、Pantone色見本帳に記載のオレンジに近い色調を有する画像を形成することができるものと考えられる。
なお、溶製のアゾレーキの誘導体は、水溶席の官能基を多く有するため光重合性化合物との親和性が高く、顔料との間よりも光重合性化合物との間でより多くの会合体を形成しやすい。また、キナクリドン顔料の誘導体は、顔料表面が厚いπ電子で覆われているため、不活性であり、塩基性オレンジ顔料の塩基性基との間で会合形成が生じにくい。これらに対し、アゾ顔料のスルホン化誘導体は、塩基性オレンジ顔料とよく会合体を形成するため、塩基性オレンジ顔料表面へのゲル化剤の集積をより効果的に防ぐことができると考えられる。
アゾ誘導体の含有量は、インクが含有する顔料の質量に対して2質量%以上15質量%以下である。顔料の質量に対するアゾ誘導体の含有量が2質量%以上であると、塩基性オレンジ顔料とアゾ誘導体とをよく会合させることができるため、光沢が高くなりすぎることがないと考えられる。顔料の質量に対するアゾ誘導体の含有量が15質量%以下であると、アゾ誘導体が画像表面に析出することによる光沢の変化を抑制することができる。上記観点からは、アゾ誘導体の含有量は、インクが含有する顔料の質量に対して5質量%以上13質量%以下であることが好ましく、インクが含有する顔料の質量に対して7質量%以上12質量%以下であることがより好ましい。
アゾ誘導体の例には、solsperse 22000、Lubrizol社製(「solsperse」は同社の登録商標)およびBYK synagist 2105、ビックケミー社製(「BYK」は同社の登録商標)が含まれる。
1−2−3.光重合性化合物
オレンジインクが含有する光重合性化合物は、上記マゼンタインクと同様の化合物とすることができる。
オレンジインク−Cは、後述する高極性光重合性化合物を含むことが好ましい。オレンジインク−Cは、高極性光重合性化合物に比べて低い極性を示す光重合性化合物(以下、単に「低極性光重合性化合物」ともいう。)をさらに含んでもよい。
オレンジインク−Cにおける、高極性光重合性化合物および低極性光重合性化合物を合計した光重合性化合物の含有量は、活性光線を照射されたインクが十分に硬化する範囲であればよく、たとえば、オレンジインク−Cの全質量に対して1質量%以上97質量%以下とすることができる。上記観点からは、光重合性化合物の含有量は、オレンジインク−Cの全質量に対して30質量%以上95質量%以下であることが好ましい。
1−2−3−1.光重合性化合物
高極性光重合性化合物は、エチレンオキサイド基(以下、単に「EO基」ともいう。)またはプロピレンオキサイド基(以下、単に「PO基」ともいう。)を6個以上有する光重合性化合物である。高極性光重合性化合物は、オレンジインク中に、一種のみが含まれていてもよく、二種類以上が含まれていてもよい。
6つ以上のEO基およびPO基は、連結した1つのセグメントとして存在してもよいし、2以上のセグメントに分かれて存在してもよい。ただし、アゾ誘導体の分散性をより高めて顔料表面へのゲル化剤の集積をより低減する観点からは、EO基およびPO基が2以上のセグメントに分かれて存在するときは、3個以上のEO基またはPO基を有するセグメントが分子内に2個以上あることが好ましい。
高極性光重合性化合物は、極性を有するEO基またはPO基を6個以上有し、同じく極性を有する塩基性オレンジ顔料との親和性が高いため、オレンジ顔料−Cのような塩基性オレンジ顔料を持つ顔料の分散性を高めることができると考えられる。また、同様に、高極性光重合性化合物は、極性を有する部分を含むアゾ誘導体との親和性が高いため、アゾ誘導体を有する顔料の分散性を高めることができると考えられる。そのため、高極性光重合性化合物は、アゾ誘導体を塩基性オレンジ顔料の表面近傍に存在させやすくさせ、結果としてインク中における顔料とゲル化剤との電子的相互作用を低下させることができると考えられる。顔料とゲル化剤との相互作用が減少することによって、ゲル化剤本来の機能であるゾルゲル相転移がインク中の他の化合物の影響を受けることなく進めることができるため、良好なピニング性や少ないゲル化剤であっても相転移が機能することによって光沢性が向上できるものと考えられる。
また、本発明者らの知見によれば、高極性光重合性化合物は、インクジェットヘッドからオレンジインクを出射する温度である60℃以上でも、顔料を分散させる能力が高いため、吐出中の顔料の析出によるノズル欠を生じにくくすることができると考えられる。
上記効果を十分に奏する観点から、高極性光重合性化合物の含有量は、光重合性化合物の全質量に対して30質量%以上である。非極性部分を有するゲル化剤が画像形成中に析出しにくくして画像表面の光沢をより発生しにくくする観点からは、高極性光重合性化合物の含有量は、光重合性化合物の全質量に対して30質量%以上80質量%以下とすることが好ましく、50質量%以上70質量%以下とすることがより好ましい。
高極性光重合性化合物の市販品の例には、表1に記載の商品が含まれる。表1において、「EO基またはPO基の数」は、その銘柄で表される商品の1分子中に含まれるEO基またはPO基の数を表す。なお、表1中、「ニューフロンティア」は第一工業製薬株式会社の登録商標であり、「ファンクリル」は日立化成株式会社の登録商標である。
Figure 0006627782
1−2−3−2.光重合性化合物
低極性光重合性化合物は、EO基とPO基とを合わせた数が6個未満である光重合性化合物である。
(メタ)アクリレートである低極性光重合性化合物の例には、単官能の(メタ)アクリレート、2官能の(メタ)アクリレートおよび3官能以上の(メタ)アクリレートが含まれる。
単官能の(メタ)アクリレートの例には、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル−ジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸およびt−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレートが含まれる。
2官能の(メタ)アクリレートの例には、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートおよびトリプロピレングリコールジアクリレートが含まれる。
3官能以上の(メタ)アクリレートの例には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレートが含まれる。
画像形成時の光重合性化合物とゲル化剤との相分離をより生じにくくし、画像表面に光沢がより発生しにくくする観点からは、低極性光重合性化合物はEO基、PO基その他の極性がある構造を有していることが好ましい。
極性がある構造を有する低極性光重合性化合物の例には、表2に記載の商品が含まれる。表2において、「EO基またはPO基の数」は、その銘柄で表される商品の1分子中に含まれるEO基またはPO基の数を表す。なお、表1中、「アロニックス」は東亞合成株式会社の登録商標であり、「ミラマー」は美源スペシャリティケミカル株式会社の登録商標である。
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1−2−4.その他の成分
オレンジインクが含有する分散剤、ゲル化剤および光重合開始剤は、上記マゼンタインクと同様の化合物とすることができる。インク同士の親和性をより高め、より高精細な画像を形成する観点からは、オレンジインクは、光重合性化合物、分散剤、ゲル化剤および光重合開始剤として、マゼンタインクと同じ化合物を含有することが好ましい。なお、オレンジインクが含有するゲル化剤の量は、インクの全質量に対して1.0質量%以上10.0質量%以下とすることができる。ゲル化剤の含有量を1.0質量%以上とすることで、インクのピニング性を十分に高め、より高精細な画像を形成することができ、かつ、インクの濡れ広がりを少なくして、画像の光沢を他のインクによる画像の光沢により近づけることができる。また、インクのピニング性を高めることで、特に吸水性の基材に画像を形成したときに、インクが基材の内部に入り込むことによる発色不足を生じにくくすることができ、所望の色域の画像を形成しやすくなる。ゲル化剤の含有量を10.0質量%以下とすることで、形成した画像の表面にゲル化剤が析出しにくくなり、画像の光沢を他のインクによる画像の光沢により近づけることができ、かつ、インクジェットヘッドからのインク射出性をより高めることができる。上記観点からは、オレンジインク中のゲル化剤の含有量は、1.0質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、2.5質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましく、2.5質量%以上4.0質量%以下であることがさらに好ましい。
インクジェットヘッドからの射出性をより高め、かつ着弾後のマゼンタインクとの混和性を高める観点からは、オレンジインクの80℃における粘度は8.0mPa・s以上9.5mPa・s以下であることが好ましい。上記観点からは、オレンジインクの80℃における粘度は8.5mPa・s以上9.0mPa・s以下であることがより好ましい。
インクジェットヘッドからの射出性をより高める観点からは、オレンジインクが含有する顔料粒子の平均粒子径は0.13μm以上0.22μm以下であることが好ましい。上記観点からは、オレンジインクが含有する顔料粒子の平均粒子径は0.14μm以上0.16μm以下であることが好ましい。
オレンジインクのその他の物性については、上述したマゼンタインクと同じ範囲であることが、マゼンタインクと同様の理由により、好ましい。
1−3.マゼンタインクとオレンジインクとの組み合わせ
本発明におけるインクセットは、少なくともマゼンタインク−Aかオレンジインク−Cを含有している。即ち、良好な色域、特にPantone Red 032のような赤色領域の色域拡大をマゼンタインク−A、又はオレンジインク−Cによって達成されていればよく、本発明のインクセットがマゼンタインク−Aを含む場合、オレンジインクはオレンジインク−C、オレンジインク−Dのいずれでもよく、本発明のインクセットがオレンジインク−Cを含む場合、マゼンタインクはマゼンタインク−A、マゼンタインク−Bのいずれでも良い。また、良好なピニング性、や良好な光沢性を有する画像形成の観点からは、本発明のインクセットはマゼンタインク−Aとオレンジインク−Cを含むインクセットであることがより好ましい。
1−4.その他のインク
インクセットは、上記マゼンタインクまたはオレンジインク以外の、顔料、光重合性化合物、分散剤、ゲル化剤および光重合開始剤を含有し、活性光線の照射によって硬化するインク(以下、単に「他のインク」ともいう。)をさらに含んでいてもよい。たとえば、インクセットがイエローインク、シアンインクおよびブラックインクをさらに含むことで、フルカラーの画像を形成することが可能となる。
上記イエローインクが含有する顔料は、記録媒体上に着弾し硬化したインクがイエロー色を呈することができる顔料であればよい。このような顔料の例には、C.I.Pigment Yellow(以下、単に「Pigment Yellow」ともいう。) 1、Pigment Yellow 3、Pigment Yellow 12、Pigment Yellow 13、Pigment Yellow 14、Pigment Yellow 17、Pigment Yellow 34、Pigment Yellow 35、Pigment Yellow 37、Pigment Yellow 55、Pigment Yellow 74、Pigment Yellow 81、Pigment Yellow 83、Pigment Yellow 93、Pigment Yellow 94、Pigment Yellow 95、Pigment Yellow 97、Pigment Yellow 108、Pigment Yellow 109、Pigment Yellow 110、Pigment Yellow 137、Pigment Yellow 138、Pigment Yellow 139、Pigment Yellow 153、Pigment Yellow 154、Pigment Yellow 155、Pigment Yellow 157、Pigment Yellow 166、Pigment Yellow 167、Pigment Yellow 168、Pigment Yellow 180、Pigment Yellow 185およびPigment Yellow 193が含まれる。これらの顔料は、イエローインク中に一種のみが含まれていてもよく、二種類以上が含まれていてもよい。
上記シアンインクが含有する顔料は、記録媒体上に着弾し硬化したインクがシアン色を呈することができる顔料であればよい。このような顔料の例には、C.I.Pigment Blue(以下、単に「Pigment Blue」ともいう。) 1、Pigment Blue 15、Pigment Blue 15:1、Pigment Blue 15:2、Pigment Blue 15:3、Pigment Blue 15:4、Pigment Blue 15:6、Pigment Blue 16、Pigment Blue 17−1、Pigment Blue 22、Pigment Blue 27、Pigment Blue 28、Pigment Blue 29、Pigment Blue 36およびPigment Blue 60が含まれる。これらの顔料は、シアンインク中に一種のみが含まれていてもよく、二種類以上が含まれていてもよい。
上記ブラックインクが含有する顔料は、記録媒体上に着弾し硬化したインクがブラック色を呈することができる顔料であればよい。このような顔料の例には、C.I.Pigment Black(以下、単に「Pigment Black」ともいう。) 7(カーボンブラック)、Pigment Black 28およびPigment Black 26が含まれる。これらの顔料は、ブラックインク中に一種のみが含まれていてもよく、二種類以上が含まれていてもよい。
他のインクが含有する光重合性化合物、分散剤、ゲル化剤および光重合開始剤は、上記マゼンタインクと同様の化合物とすることができる。インク同士の親和性をより高め、より高精細な画像を形成する観点からは、他のインクは、光重合性化合物、分散剤、ゲル化剤および光重合開始剤として、マゼンタインクと同じ化合物を含有することが好ましい。より高精細な画像を形成し、画像の光沢を他のインクによる画像の光沢により近づけ、かつ、インクジェットヘッドからのインク射出性をより高める観点から、他のインク中のゲル化剤の含有量は、インクの全質量に対して1.5質量%以上3.0質量%以下である。上記観点からは、他のインク中のゲル化剤の含有量は、2.0質量%以上2.5質量%以下であることが好ましい。
1−5.インクの調製
上記マゼンタインク、オレンジインクおよび他のインクは、前述の顔料、分散剤、ゲル化剤、光重合性化合物および光重合開始剤と、任意の各成分とを、加熱下において混合することにより得ることができる。得られた混合液を所定のフィルターで濾過することが好ましい。このとき、顔料および分散剤が溶媒中に分散された顔料分散体をあらかじめ調製しておき、これに残りの成分を添加して加熱しながら混合してもよい。
顔料および分散剤の分散は、たとえば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、およびペイントシェーカーにより行うことができる。
2.画像形成方法
本発明の画像形成方法は、前述したインクセットに含まれる前記マゼンタインクおよびオレンジインクを用いる以外は、マゼンタインクおよびオレンジインクをインクジェットヘッドから吐出して記録媒体に着弾させ、硬化させる公知の画像形成方法と同様に行い得る。
たとえば、本発明の画像形成方法は、上記インクセットに含まれるマゼンタインクおよびオレンジインクをインクジェットヘッドのノズルから射出して記録媒体に着弾させる第1の工程、および前記着弾した前記マゼンタインクおよびオレンジインクに活性光線を照射して前記マゼンタインクおよびオレンジインクを硬化させる第2の工程、を含む。
2−1.第1の工程
第1の工程では、マゼンタインクおよびオレンジインクの液滴をインクジェットヘッドから吐出して、記録媒体の、形成すべき画像に応じた位置に着弾させる。たとえば、オレンジとマゼンタの中間色を形成する位置には、オレンジインクおよびマゼンタインクの両方を着弾させる。オレンジインクとマゼンタインクは、いずれが先に吐出されてもよい。
インクジェットヘッドからの吐出方式は、オンデマンド方式およびコンティニュアス方式のいずれでもよい。オンデマンド方式のインクジェットヘッドは、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型およびシェアードウォール型等の電気−機械変換方式、ならびにサーマルインクジェット型およびバブルジェット(バブルジェットはキヤノン社の登録商標)型等の電気−熱変換方式等のいずれでもよい。
インクの液滴は、加熱した状態でインクジェットヘッドから吐出することで、吐出安定性を高めることができる。吐出される際のインクの温度は、35℃以上100℃以下であるが好ましく、吐出安定性をより高めるためには、35℃以上80℃以下であることがより好ましい。特には、インクの粘度が7mPa・s以上15mPa・s以下、より好ましくは8mPa・s以上13mPa・s以下となるようなインク温度において出射を行うことが好ましい。
ゾルゲル相転移型のインクは、吐出用記録ヘッドからのインクの射出性を高めるために、吐出用記録ヘッドに充填されたときのインクの温度が、当該インクの(ゲル化温度+10)℃〜(ゲル化温度+30)℃に設定されることが好ましい。吐出用記録ヘッド内のインクの温度が、(ゲル化温度+10)℃未満であると、吐出用記録ヘッド内もしくはノズル表面でインクがゲル化して、インクの射出性が低下しやすい。一方、吐出用記録ヘッド内のインクの温度が(ゲル化温度+30)℃を超えると、インクが高温になりすぎるため、インク成分が劣化することがある。
インクを所定の温度に加熱する方法は特に制限されない。たとえば、ヘッドキャリッジを構成するインクタンク、供給パイプおよびヘッド直前の前室インクタンク等のインク供給系、フィルター付き配管ならびにピエゾヘッド等の少なくともいずれかを、パネルヒーター、リボンヒーターおよび保温水等のうちいずれかによって所定の温度に加熱することができる。
吐出される際のインクの液滴量は、記録速度および画質の面から、2pL以上20pL以下であることが好ましい。
2−2.第2の工程
第2の工程では、第2の工程で着弾させたマゼンタインクおよびオレンジインクに活性エネルギー線を照射して、これらのインクが硬化してなる画像を形成する。活性エネルギー線は、インク着弾後0.001秒以上1.0秒以下の間に照射されることが好ましく、高精細な画像を形成するためには、0.001秒以上0.5秒以下の間に照射されることがより好ましい。
インクに照射する活性エネルギー線は、たとえば、電子線、紫外線、α線、γ線、およびエックス線等から選択することができるが、これらのうち紫外線を照射することが好ましい。紫外線は、たとえば、395nm、水冷LED、Phoseon Technology社製 によって照射することができる。LEDを光源とすることで、光源の輻射熱によってインクが溶けることによる、インクの硬化不良の発生を抑制することができる。
LED光源は、370nm以上410nm以下の波長を有する紫外線の画像表面におけるピーク照度が0.5W/cm以上10W/cm以下となるように設置され、1W/cm以上5W/cm以下となるように設置することがより好ましい。輻射熱がインクに照射されることを抑制する観点からは、画像に照射される光量は350mJ/cm未満であることが好ましい。
また、活性エネルギー線の照射を2段階に分け、まずインクが着弾した後0.001秒以上2.0秒以下の間に前述の方法で活性エネルギー線を照射してインクを仮硬化させ、全印字終了後にさらに活性エネルギー線を照射してインクを本硬化させてもよい。活性エネルギー線の照射を2段階に分けることで、インク硬化の際に起こる記録材料の収縮がより生じにくくなる。
本発明の画像形成方法では、記録媒体上に着弾したインクに活性エネルギー線を照射して硬化した後の総インク膜厚を、2μm以上20μm以下であるようにすると、記録媒体のカールおよび皺の発生ならびに記録媒体の質感変化等をより効率的に防ぐことができる。なお、「総インク膜厚」とは、記録媒体上に塗布または印字されたすべてのインクの膜厚の合計値、またはインクの着弾量が多い吐見込まれる複数の地点で測定した前記膜厚の平均値を意味する。
[記録媒体]
本発明の画像形成方法に用いる記録媒体は、前記インクセットで画像が形成されればよく、たとえば、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレートおよびポリブタジエンテレフタレート等のプラスチックで構成される非吸収性の記録媒体(プラスチック基材)、金属類およびガラス等の非吸収性の無機記録媒体、ならびに吸収性の紙類(たとえば、印刷用コート紙および印刷用コート紙B)とすることができる。
以下において、実施例を参照して本発明をより詳細に説明するが、これらの記載によって本発明の範囲は限定して解釈されない。
[実施例1]
1−1.マゼンタインク
1−1−1.マゼンタ顔料の表面処理
Pigment Violet 19とPigment Red 202の固溶体である以下の未処理のマゼンタ顔料(以下、「処理前のマゼンタ顔料」ともいう。)をアルミナおよびスルホン酸で表面処理した。
[処理前のマゼンタ顔料]
CINQUASIA Magenta L4540、BASF社製 (Pigment Violet 19/Pigment Red 202比率: 50/50)
CINQUASIA Magenta D4500J、BASF社製 (Pigment Violet 19/Pigment Red 202比率: 60/40)
228−2120、Sun chemical社製 (Pigment Violet 19/Pigment Red 202比率: 70/30)
Cinquasia Red K4330、BASF社製 (Pigment Violet 19/Pigment Red 202比率: 80/20)
1.0kgの処理前のマゼンタ顔料(L4540、BASF社製)を水に投入して撹拌・分散した水溶液に、水酸化ナトリウムNaOH水溶液を加えてpHを10に調整した。この水溶液に、顔料100部に対して水酸化アルミニウム(Al(OH))換算で0.5部になる量のアルミン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)の水溶液を添加して撹拌混合した後、さらに撹拌しながら酢酸水溶液を加えてpHを6に調整した。PHが6になった後すぐに水溶液をろ過し、得られた固体分を水洗および乾燥してアルミナ処理されたマゼンタ顔料の粉末を得た。ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分析分光装置(装置名)、SIIナノテクノロジー社製)で測定された、この顔料の粉末に含まれるAl元素量から、5000ppmのアルミナがマゼンタ顔料粉末に付与されていることが算出された。
上記調製したアルミナ処理されたマゼンタ顔料を溶剤である2−ピロリドンの中に分散させた。分散液を真空脱気できる容器に移し、アスピレーターで50Torr(6.67Pa)以下に減圧しながら100〜120℃に加温し、系内に含まれる水分をできるだけ留却したのち、液温を55℃に制御した。この分散液に、マゼンタ顔料100部に対して0.15部になる量の、スルホン化剤である三酸化硫黄(無水硫酸、日本曹達社製)を添加し、2〜3時間撹拌した。これをろ過して得られた、表面処理されたマゼンタ顔料を、過剰の2−ピロリドンで数回洗浄した後、水中に注ぎ、その後ろ過して、インク用マゼンタ顔料1を得た。ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分析分光装置(装置名)、SIIナノテクノロジー社製)で測定された、インク用マゼンタ顔料1の粉末に含まれるS元素量から、1500ppmのスルホン酸がインク用マゼンタ顔料1に付与されていることが算出された。
前記処理前のマゼンタ顔料を表3に応じて変更し、かつ、マゼンタ顔料粉末に付与されるアルミナ量が表3に記載の量となるようにアルミン酸ナトリウムの量を変更した以外は、同様にして、異なる量のアルミナが付与され、かつスルホン酸も付与されたインク用マゼンタ顔料2〜10および13を調製した。一方、インク用マゼンタ顔料11はアルミナによる表面処理は行ったものの、スルホン酸による表面処理は行っていない。
インク用マゼンタ顔料12にはアルミナおよびスルホン酸による表面処理を行わなかった。インク用マゼンタ顔料12の粉末をICP−AESで測定すると、顔料がもとから有しているAl元素(通常1〜15ppm程度)およびS元素(通常20〜30ppm程度)のみが定量された。
インク用マゼンタ顔料1〜12に用いた処理前のマゼンタ顔料およびインク用マゼンタ顔料1〜13の物性を表3に示す。
Figure 0006627782
1−1−2.マゼンタ顔料分散体の調製
インク用マゼンタ顔料1、光重合性化合物、分散剤および重合禁止剤を200mlのポリビンに入れて、その中にさらに直径0.5mmφのジルコニアビーズを120g入れて蓋を締めてから、振動ミル(レッドデビル4500L、西村製作所製)で4時間分散した。分散した後にビーズを分離して分散体を取出して、マゼンタ顔料分散体1aを得た。
インク用マゼンタ顔料1: 9.0g
光重合性化合物:トリプロピレングリコールジアクリレート 32.7g
分散剤:BYK Jet−9151、ビックケミー社製 3.2g
重合禁止剤:Irgastab UV−10、BASF社製(「Irgastab」は同社の登録商標) 0.1g
インク用マゼンタ顔料1をインク用マゼンタ顔料2〜13に変更した以外は同様の手順により、マゼンタ顔料分散体2a〜13aを調製した。
1−1−3.マゼンタインクの調製
60℃に加熱したマゼンタ顔料分散体1に以下の光重合性化合物、界面活性剤、光重合開始剤およびゲル化剤を加えた後、WACフィルター(0.3μm精度)、ポール社製でろ過して、マゼンタインク1aを調製した。
マゼンタ顔料分散体1a:20.0g
光重合性化合物:ポリエチレングリコール600ジアクリレート 6.2g
光重合性化合物:3PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 6.2g
界面活性剤:TSF−4452、信越化学工業社製 0.3g
光重合開始剤:Irgacure 819、BASF社製(「Irgacure」は同社の登録商標) 0.3g
光重合開始剤:DAROCUR TPO、BASF社製(「DAROCUR」は同社の登録商標) 0.3g
ゲル化剤:カオーワックスT−1、花王社製 適量
マゼンタ顔料分散体1aをマゼンタ顔料分散体2a〜13aに変更した以外はマゼンタインク1と同様にして、マゼンタインク2a〜13aを調製した。
なお、マゼンタインク1a〜13aについて、インク中のゲル化剤の含有量がインク全体の質量の0.5質量%〜6.0質量%となる量となるインクを必要に応じ調製した。
1−2.オレンジインク
インク用マゼンタ顔料1を下記のオレンジ顔料1〜6に変更したほかはマゼンタインク1aと同様にして、オレンジインク1a〜6aをそれぞれ調製した。
[オレンジ顔料]
オレンジ顔料1: Pigment Orange 36
オレンジ顔料2: Pigment Orange 71
オレンジ顔料3: Pigment Orange 64
オレンジ顔料4: Pigment Orange 16
オレンジ顔料5: Pigment Orange 34
オレンジ顔料6: Pigment Orange 38
1−2−1.オレンジ顔料分散体の調製
オレンジ顔料1、光重合性化合物、分散剤および重合禁止剤を200mlのポリビンに入れて、その中にさらに直径0.5mmφのジルコニアビーズを120g入れて蓋を締めてから、振動ミル(レッドデビル4500L、西村製作所製)で5時間分散した。分散した後にビーズを分離して分散体を取出して、オレンジ顔料分散体1を得た。
オレンジ顔料1: 8.5g
顔料誘導体:Solsperse 22000(スルホン化されたPigment Yellow 12) 0.5g
光重合性化合物:トリプロピレングリコールジアクリレート 32.7g
分散剤:BYK Jet−9151、ビックケミー社製 3.2g
重合禁止剤:Irgastab UV−10、BASF社製(「Irgastab」は同社の登録商標) 0.1g
オレンジ顔料1をオレンジ顔料2〜6に変更した以外は同様の手順により、オレンジ顔料分散体2a〜6aを調製した。
1−2−2.オレンジインクの調製
60℃に加熱したオレンジ顔料分散体1aに以下の光重合性化合物、界面活性剤、光重合開始剤およびゲル化剤を加えた後、WACフィルター(0.3μm精度)、ポール社製でろ過して、オレンジインク1aを調製した。
オレンジ顔料分散体1a:5.0g
光重合性化合物:ポリエチレングリコール600ジアクリレート 10.5g
光重合性化合物:3PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート 4.5g
界面活性剤:TSF−4452、信越化学工業社製 0.3g
光重合開始剤:Irgacure 819、BASF社製(「Irgacure」は同社の登録商標) 0.3g
光重合開始剤:DAROCUR TPO、BASF社製(「DAROCUR」は同社の登録商標) 0.3g
ゲル化剤:カオーワックスT−1、花王社製 適量
オレンジ顔料分散体1aをオレンジ顔料分散体2〜6に変更した以外はオレンジインク1aと同様にして、オレンジインク2a〜6aを調製した。
オレンジインク1a〜6aについて、インク中のゲル化剤の含有量がインク全体の質量の0.5質量%〜6.0質量%となる量となるインクを必要に応じ調製した。
1−3.イエローインク、シアンインクおよびブラックインクの調製
オレンジ顔料1をPY185(イエロー顔料)、Pigment Blue15:4(シアン顔料)およびPigment Black7(ブラック顔料)に変更したほかはオレンジインク1と同様にして、イエローインク、シアンインクおよびブラックインクをそれぞれ調製した。
イエローインク、シアンインクおよびブラックインクのそれぞれについて、インク中のゲル化剤の含有量がインク全体の質量の0.5質量%〜6.0質量%となる量となるインクを調製した。
1−4.インクセット
マゼンタインクとオレンジインクとが表4〜5に記載の組み合わせとなり、かつ、インクセットに含まれるすべてのインクが表4〜5に記載の量のゲル化剤をいずれも含有するように、マゼンタインク、オレンジインク、イエローインク、シアンインクおよびブラックインクを組み合わせて、インクセット1−1〜1−36とした。
表4〜表5に、それぞれのインクセットに含まれるマゼンタインク、オレンジインクの組み合わせ、およびインクセットに含まれるインクが含有するゲル化剤の量を示す。
Figure 0006627782
Figure 0006627782
1−5.評価方法および評価結果
それぞれのインクセットの保存安定性およびピニング性、ならびにそれぞれのインクセットによる画像と他の画像との間の光沢差および色域差を、以下の基準で評価した。
1−5−1.保存安定性
インクセット1−1〜1−36に含まれるマゼンタインク及びオレンジインクが含有する顔料粒子について、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)で200倍に希釈したそれぞれのインクにおける平均粒子径をデータサイザーナノZSP、Malvern社製を使用して動的光散乱法によって測定した。それぞれの活性光線硬化型インクを耐熱管に採取して、50℃で6週間高温槽に保存した。保存後のそれぞれのインクにおける顔料粒子の平均粒子径を同様に測定し、保存前の平均粒子径(P)と保存後の平均粒子径(P)との差(P−P)を計算した。
A マゼンタインク及びオレンジインク両方の平均粒子径の差が7nm未満である
B マゼンタインク及びオレンジインクいずれかの平均粒子径の差が7nm以上15nm未満である
C マゼンタインク及びオレンジインクいずれかの平均粒子径の差が15nm以上である
D マゼンタインク及びオレンジインク両方の平均粒子径の差が15nm以上である
1−5−2.ピニング性
インクセット1−1〜1−36をインクジェットヘッドHA512型(コニカミノルタ社製)に導入し、印字幅100mm×100mm、解像度720×720dpiの条件で、自然画(財団法人・日本規格協会発行の高精細カラーデジタル標準画像データ「フルーツバスケット」)を印字基材に50℃で着弾させ、YMCKOの5色インクを用いて印字した。印字基材はOKトップコート(印刷用紙)を使用した。UV照射光源としてLEDランプを使用し、250mJのエネルギーで紫外線を印字したインクに照射してインクを硬化させた。
それぞれの活性光線硬化型インクによる上記画像を顕微鏡(×200)で観察し、ランダムに選択した100か所の液滴径の平均値を求めた。
A 平均値が45μm未満であり、液滴径のバラツキが10μm以下である
B 平均値が45μm未満である
C 平均値が45μm以上50μm以下である
D 平均値が50μmより大きい
E 平均値が50μmより大きく、液滴径のバラツキが10μm以下である
1−5−3.光沢差
それぞれのインクセットにより、マゼンタインク及びオレンジインクを50℃に加温した印字基材に、印字率100%で形成したベタ画像の60℃反射光沢値をデジタルハンディ光沢計(グロスチェッカーIG−331、堀場製作所製)で測定した。画像の美観を高める観点から好ましい値として定めた反射光沢値(40)とそれぞれの活性光線硬化型インクセットに含まれるマゼンタ及びオレンジのベタ画像の反射光沢値との差を調べた。
A マゼンタ及びオレンジ両方のマゼンタインクの反射光沢値と上記反射光沢値(40)との差の絶対値が3.0未満である
B マゼンタ及びオレンジいずれかのマゼンタインクの反射光沢値と上記反射光沢値(40)との差の絶対値が3.0以上5.0未満である
C マゼンタ及びオレンジいずれかのマゼンタインクの反射光沢値と上記反射光沢値(40)との差の絶対値が5.0以上である
D マゼンタ及びオレンジいずれかのマゼンタインクの反射光沢値と上記反射光沢値(40)との差の絶対値が5.0以上である
1−5−4.色域差
Pantone Red 032およびPantone Orange 021それぞれのインクセットによる1−5−2に記載の画像をポータブル積分球分光測色器Ci6x、X−lite社製で測定して、a*、b*の値を得た。それぞれのa*値の差の2乗と、それぞれのb*値の差の2乗とを加算した値の平方根を算出して、それぞれのインクセットによる画像と標準試料との間の色域差とした。
A Pantone Red 032及びPantone Orange 021両方の色域差が1.0未満である
B Pantone Red 032及びPantone Orange 021いずれかの色域差が1.0以上2.0以下である
C Pantone Red 032及びPantone Orange 021いずれかの色域差が2.0より大きい
D Pantone Red 032及びPantone Orange 021両方の色域差が2.0より大きい
1−5−5.結果
結果を表6〜表8に示す。
Figure 0006627782
Figure 0006627782
Figure 0006627782
インク用マゼンタ顔料中のアルミナの量が、マゼンタ顔料に対する質量比率で1500ppm以上7500ppm以下であり、かつスルホン酸により表面処理されたマゼンタインクを含むインクセットは、保存安定性が高く、光沢差及び色域差の小さい画像を形成できた。また、インクセットに含まれるそれぞれのインクにおけるゲル化剤の含有量がインクの質量に対して1質量%以上5質量%以下であると、インクのピニング性を良好なものにできた。
マゼンタ顔料が含むPigment Violet 19とPigment Red202とのの比率が60/40以上70/30以下の範囲内であると、Pantone Red 032との色域差がより小さくなった。さらにマゼンタインク−Aとオレンジインク−Cを含むインクセットを用いた場合、Pantone Red 032及びPantone Orange 021の色に近い画像を形成することができ、L*a*b*色空間における赤〜オレンジ領域のインクセットとして表現可能な色域を拡大することができた。
[実施例2]
2−1.インクの調製
表9に示すオレンジ顔料のうち1種、表10に示す顔料誘導体のうち1種、以下に示す光重合性化合物のうち2種、ゲル化剤、およびその他の材料を用いて、インクを調製した。
2−1−1.顔料
Figure 0006627782
2−1−2.顔料誘導体
Figure 0006627782
2−1−3.光重合性化合物
[高極性光重合性化合物]
PEG400DA: ポリエチレングリコール400ジアクリレート(A−400、新中村化学工業株式会社製、エチレンオキサイド基の数:9個)
FA−137M: EO変性トリメチロールプロパントリメタアクリレート(FA−137M、日立化成株式会社製、エチレンオキサイド基の数:21個)
[低極性光重合性化合物]
BPP−4: PO変性ビスフェノールAジアクリレート(ニューフロンティア BPP−4、第一工業製薬株式会社製、プロピレンオキサイド基の数:約4個)
TPGDA: トリプロピレングリコールジアクリレート(アロニックス M220、東亞合成株式会社)
2−1−4.ゲル化剤
T1: カオーワックスT−1、花王社製
2−1−5.その他の材料
[重合禁止剤]
UV10: Irgastab UV−10、BASF社製(「Irgastab」は同社の登録商標)
ITX: ITX、BASF社製
819: Irgacure 819、BASF社製(「Irgacure」は同社の登録商標)
TPO: DAROCUR TPO、BASF社製(DAROCURはBASF社の登録商標)
[分散剤]
BYK Jet−9151、ビックケミー社製
2−1−6.オレンジインクの調製
以下の成分を合計で100質量部になるよう調合し、直径0.5mmφのジルコニアビーズ120gとともに250mlのポットに入れて、蓋を締め、振動ミル(レッドデビル4500L、西村製作所製)で5時間分散した。分散した後にビーズを分離して分散体を取出して、オレンジ顔料分散体1bを得た。
オレンジ顔料: Pigment Orange 36 18.0質量部
重合禁止剤: UV10 0.1質量部
分散剤: 9151 6.0質量部
顔料誘導体: 1S−1 0.18質量部
光重合性化合物: BPP−4 残部
その後、分散体を60℃に加熱しながら、以下の割合となるように以下のゲル化剤および光重合開始剤を加えて、高極性光重合性化合物と低極性光重合性化合物との重量比が30:70であるオレンジインクを調製した。このオレンジインクを、インクセット2−1のオレンジインクとした。
顔料分散体: オレンジ顔料分散体 12.0質量部
光重合性化合物: FA−137M 24.3質量部
光重合性化合物: BPP−4 56.7質量部
界面活性剤: TSF−4452 0.3質量部
ゲル化剤: T−1 3.0質量部
光重合開始剤: ITX 1.0質量部
光重合開始剤: 819 2.0質量部
光重合開始剤: TPO 2.0質量部
オレンジ顔料、光重合性化合物の種類および比率、ならびにゲル化剤または顔料誘導体の種類及び量を、表11〜表13に記載の組みあわせまたは数値になるように変更した以外はオレンジインク1bと同様にして、オレンジインクを調製した。これらのオレンジインクを、インクセット2−2〜2−42のオレンジインクとした。
2−1−7.マゼンタインクの調製
以下の成分を合計で100gになるよう調合し、直径0.5mmφのジルコニアビーズ120gとともに250mlのポットに入れて、蓋を締め、振動ミル(レッドデビル4500L、西村製作所製)で5時間分散した。分散した後にビーズを分離して分散体を取出して、マゼンタ顔料分散体を得た。
マゼンタ顔料: マゼンタ顔料13 18.0質量部
重合禁止剤: UV10 0.1質量部
分散剤: 9151 6.0質量部
顔料誘導体: 1S−1 0.18質量部
光重合性化合物: BPP−4 残部
その後、分散体を60℃に加熱しながら、以下の割合となるように以下のゲル化剤および光重合開始剤を加えて、高極性光重合性化合物と低極性光重合性化合物との重量比が30:70であるマゼンタインク1bを調製した。このマゼンタインクを、インクセット2−1のマゼンタインクとした。
顔料分散体: マゼンタ顔料分散体 12.0質量部
光重合性化合物: FA−137M 24.3質量部
光重合性化合物: BPP−4 56.7質量部
界面活性剤: TSF−4452 0.3質量部
ゲル化剤: T−1 3.0質量部
光重合開始剤: ITX 1.0質量部
光重合開始剤: 819 2.0質量部
光重合開始剤: TPO 2.0質量部
以下、同様にマゼンタ顔料の種類および顔料誘導体以外は、同様にして、光重合性化合物の種類および比率、及びゲル化剤の含有量は同一の番号のオレンジインクと同一条件で、マゼンタインクを調製した。これらのマゼンタインクを、インクセット2−2〜2−42のマゼンタインクとした。
2−1−8.イエローインク、シアンインクおよびブラックインクの調製
オレンジインク1中の顔料をPigment YELLOW 185(イエロー顔料)、Pigment Blue 15:4(シアン顔料)およびPigment Black 7(ブラック顔料)に変更し、顔料誘導体を含有させていないこと以外はオレンジインクと同様にして、光重合性化合物の種類および比率、及びゲル化剤の含有量は同一の番号のオレンジインクと同一条件で、イエローインク1b、シアンインク1bおよびブラックインク1bをそれぞれ調製した。イエローインク1b、シアンインク1bおよびブラックインク1bと、表11〜表13に記載の顔料を有するオレンジインクおよびマゼンタインクと組みあわせて、インクセット2−1〜2−42とした。
表11〜表13に、それぞれのインクにおける、オレンジ顔料の種類、光重合性化合物の種類および含有量、高極性光重合性化合物の比率、ゲル化剤の含有量、ならびに顔料誘導体の種類および含有量を示す。表11〜表13において、「高極性光重合性化合物」および「低極性光重合性化合物」の欄に記載の数値は、光重合性化合物全体の質量に対する、それぞれの光重合性化合物の量(質量%)であり、「高極性光重合性化合物の比率」の欄に記載の数値は、光重合性化合物全体の質量に対する、高極性光重合性化合物の量(質量%)である。また、表11〜表13において、「ゲル化剤含有量」の欄に記載の数値は、それぞれのインクの全質量に対する、ゲル化剤の量(質量%)であり、顔料誘導体の「含有量」の欄に記載の数値は、それぞれのインクが含有する顔料の質量に対する、顔料誘導体の量(質量%)である。
Figure 0006627782
Figure 0006627782
Figure 0006627782
2−2.評価方法および評価結果
それぞれのインクセットの保存安定性およびピニング性、ならびにそれぞれのインクセットによる画像と他の画像との間の光沢差および色域差を、実施例1と同様の基準で評価した。
2−3.結果
結果を表14〜表16に示す。
Figure 0006627782
Figure 0006627782
Figure 0006627782
塩基性オレンジ顔料と、アゾ誘導体とを含有し、かつ、高極性光重合性化合物のモノマー組成物に対する質量比率が30質量%以上であるインクを用いて形成した画像は、Pantone色域から色調のずれ、および他色インクの光沢値からのずれが小さく、かつ、ドット径も所望の範囲であった。
一方で、環状構造内に塩基性部位を有さないオレンジ顔料を含有するインクを用いて形成した画像は、Pantone色域から色調のずれ、および他色インクの光沢値からのずれが大きかった。これは、オレンジ顔料とアゾ誘導体とが十分に会合できず、オレンジ顔料へのゲル化剤の集積を十分に防止できなかったためであると考えられる。
また、高極性光重合性化合物の含有量が30質量%未満であるインクを用いて形成した画像は、Pantone色域からの色調のずれが大きかった。これは、塩基性オレンジ顔料とアゾ誘導体とが十分に会合できず、塩基性オレンジ顔料へのゲル化剤の集積をアゾ誘導体によって十分に防止できなかったためであると考えられる。
ゲル化剤の含有量が1.0質量%以上であるインクを用いて形成した画像は、他色インクの光沢値からのずれが小さく、かつ、ドット径が所望の範囲だった。これは、ゲル化剤によってインクが十分にピニングしたためであると考えられる。また、本発明に係るマゼンタインク−Aとオレンジインク−Cを両方備えたインクセットは、良好な保存安定性を持ち、ピニング性に優れ、光沢差が小さくかつL*a*b*色空間における赤〜オレンジ領域の色域に良好な色再現性を有するインクセットを提供することができた。
本発明のインクセットは、色調がより多彩であり、かつ、光沢感が従来の画像と同等である画像を形成するために使用することができる。
本出願は、2015年2月5日出願の日本国出願番号2015−021455号および2015年3月12日出願の日本国出願番号2015−049543号に基づく優先権を主張する出願であり、これらの出願の特許請求の範囲および明細書に記載された内容は本出願に援用される。

Claims (9)

  1. 顔料、ゲル化剤、光重合性化合物および光重合開始剤を含有し、活性光線の照射によって硬化する複数種のインクを含むインクセットであって、
    前記複数種のインクはマゼンタインクおよびオレンジインクを含み、
    前記マゼンタインクが含有する前記顔料は、アルミナおよびスルホン酸で表面処理した、C.I.Pigment Violet 19とC.I.Pigment Red 202との固溶体を含むマゼンタ顔料を含み、
    前記マゼンタ顔料中の前記アルミナの量は1500質量ppm以上7500質量ppm以下であり、
    それぞれのインクにおける前記ゲル化剤の含有量は、1質量%以上5質量%以下であることを特徴とする、インクセット。
  2. 前記マゼンタ顔料における前記C.I.Pigment Violet 19と前記C.I.Pigment Red 202との質量比率は60/40以上70/30以下であることを特徴とする、請求項1に記載のインクセット。
  3. 前記マゼンタ顔料に対する前記アルミナの量は、5000質量ppm以上7500質量ppm以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載のインクセット。
  4. 顔料、ゲル化剤、光重合性化合物および光重合開始剤を含有し、活性光線の照射によって硬化する複数種のインクを含むインクセットであって、
    前記複数種のインクはマゼンタインクおよびオレンジインクを含み、
    前記オレンジインクは、インクが含有する顔料の質量に対して2.0質量%以上15.0質量%以下の、不溶性アゾ顔料のスルホン化誘導体をさらに含有し、
    前記オレンジインクが含有する前記顔料は、環状構造を有し、かつ、環状構造内に塩基性部位を有するオレンジ顔料を含み、
    前記オレンジインクが含有する前記光重合性化合物は、前記光重合性化合物の全質量に対して30質量%以上の、エチレンオキサイド基またはプロピレンオキサイド基を合わせて6個以上有する光重合性化合物を含み、
    それぞれのインクにおける前記ゲル化剤の含有量は、1.5質量%以上3.0質量%以下であることを特徴とする、インクセット。
  5. 前記エチレンオキサイド基またはプロピレンオキサイド基を合わせて6個以上有する光重合性化合物は、3個以上の前記エチレンオキサイド基またはプロピレンオキサイド基を有するセグメントを分子内に2個以上有することを特徴とする、請求項4に記載のインクセット。
  6. さらに、イエローインク、シアンインクおよびブラックインクを含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のインクセット。
  7. 顔料、ゲル化剤、光重合性化合物および光重合開始剤を含有し、活性光線の照射によって硬化する複数種のインクを含むインクセットであって、
    前記複数種のインクはマゼンタインクおよびオレンジインクを含み、
    前記マゼンタインクが含有する前記顔料は、アルミナおよびスルホン酸で表面処理した、C.I.Pigment Violet 19とC.I.Pigment Red 202との固溶体を含むマゼンタ顔料を含み、
    前記マゼンタ顔料中の前記アルミナの量は1500質量ppm以上7500質量ppm以下であり、
    前記オレンジインクは、インクが含有する顔料の質量に対して2.0質量%以上15.0質量%以下の、不溶性アゾ顔料のスルホン化誘導体をさらに含有し、
    前記オレンジインクが含有する前記顔料は、環状構造を有し、かつ、環状構造内に塩基性部位を有するオレンジ顔料を含み、
    前記オレンジインクが含有する前記光重合性化合物は、前記光重合性化合物の全質量に対して30質量%以上の、エチレンオキサイド基またはプロピレンオキサイド基を合わせて6個以上有する光重合性化合物を含み、
    それぞれのインクにおける前記ゲル化剤の含有量は、1.0質量%以上5.0質量%以下であることを特徴とする、インクセット。
  8. 前記オレンジインクは、C.I.Pigment Orange 36、C.I.Pigment Orange 64およびC.I.Pigment Orange 71からなる群から選択される少なくとも1種の顔料を含有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクセット。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクセットに含まれるマゼンタインクおよびオレンジインクをインクジェットヘッドのノズルから射出して記録媒体に着弾させる工程、および前記着弾した前記マゼンタインクおよびオレンジインクに活性光線を照射して前記マゼンタインクおよびオレンジインクを硬化させる工程、を含む、画像形成方法。
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