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JP6625824B2 - 保護剤及びその使用方法、低温蒸散性組成物並びに金属粒子の処理剤 - Google Patents

保護剤及びその使用方法、低温蒸散性組成物並びに金属粒子の処理剤 Download PDF

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Description

本発明は、焼成金属膜を得るために用いられる金属粒子などの保護剤及びその使用方法、前記保護剤を分解して得られる低温蒸散性組成物並びに金属粒子の処理剤に関する。
従来から、電子基板などにおいて、微細な金属配線を得るために、金属微粒子を含む分散液を用いて、印刷によって配線を形成する方法が研究されている。この金属微粒子を製造し、その分散液を得るためには、金属微粒子の酸化と凝集を防ぐ必要がある。そのため、金属微粒子を被覆する保護剤が必要である。金属微粒子の中でも、銅微粒子は、導電性が高く、安価であるとともに、マイグレーション(金属の滲み出しによる短絡)が起こり難いため、近年、注目されているが、酸化され易く、高抵抗化し易いという欠点を有している。そのため、銅微粒子の酸化や凝集を防ぐために、各種の保護剤で被覆した銅微粒子が提案されている。
特許第4978844号公報(特許文献1)には、水溶性高分子及びヒドロキシカルボン酸により被覆された粒径100nm以下の銅微粒子と、ヒドロキシカルボン酸、多価アルコール及び/又は極性溶媒とからなる銅微粒子分散液が提案されている。この文献には、前記分散液を成膜した後、250〜300℃で焼成することが記載されている。
特許第5063003号公報(特許文献2)には、有機酸銅塩と炭素数8〜16のモノアミンとを含む溶液に還元剤を添加し、銅金属核を形成し成長させる銅ナノ粒子の製造方法が開示されている。この文献には、得られた銅ナノ粒子を含む導電性組成物を基板に塗布して50℃以上500℃未満で熱処理して被覆層を形成することが記載されている。
特許第5227828号公報(特許文献3)には、クエン酸を含む溶媒に銅源を溶解させて銅イオンを生成させた後、還元剤を添加して銅ナノ粒子を製造する方法が開示されている。この文献には、前記方法で得られた耐酸化性銅ナノ粒子を用いて、400℃の加熱条件で銅試験片を接合している。
しかし、これらの文献の銅微粒子では、銅に対する保護能を向上させるために、分子量を大きくしたり、極性の高い化合物を保護剤として用いている。そのため、これらの銅微粒子で配線を形成する場合、保護剤を消失除去するために高温で熱分解させる必要がある。焼成が高温になると、基材がガラスやセラミックなどの硬質な無機材料に限定され、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの耐熱性が低く、柔軟な樹脂で形成された基材上で配線を形成するのが困難となる。
なお、特許第5403740号公報(特許文献4)には、非環状アセタール構造単位を有する樹脂、粉体及び溶剤を含有する焼成ペースト組成物が開示されている。この文献には、前記粉体として、各種の無機粒子及び有機粒子が例示され、実施例では、平均粒径2μmのガラス微粒子、銀粉、粒径40〜70nmのカーボンナノチューブ、架橋有機粒子、平均粒径1μmのアルミナ微粒子、マグネシアが使用されている。さらに、実施例では、ペースト組成物を1500℃まで昇温して焼結している。
しかし、この文献では、アセタール構造を有する樹脂は、バインダー樹脂として組成物に配合されている。
特許第4978844号公報(請求項1、段落[0039]、実施例) 特許第5063003号公報(請求項1、段落[0023]) 特許第5227828号公報(請求項1、実施例) 特許第5403740号公報(請求項1、段落[0002][0003][0044][0045]、実施例)
従って、本発明の目的は、酸分解性ポリマーの分解生成物を低温で蒸散できる保護剤及びその使用方法、前記保護剤を分解して得られる低温蒸散性組成物並びに金属粒子の処理剤を提供する。
本発明の他の目的は、金属粒子を低温で焼結できる保護剤及びその使用方法、前記保護剤を分解して得られる低温蒸散性組成物並びに金属粒子の処理剤を提供する。
本発明のさらに他の目的は、ナノサイズの金属粒子に対しても、酸化や凝集を抑制できて安定性を向上できるとともに、200℃以下の低温で焼結できる保護剤及びその使用方法、前記保護剤を分解して得られる低温蒸散性組成物並びに金属粒子の処理剤を提供する。
本発明の別の目的は、有機溶媒に対する分散性を向上できる保護剤及びその使用方法、前記保護剤を分解して得られる低温蒸散性組成物並びに金属粒子の処理剤を提供する。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討の結果、アセタール結合を有する特定の酸分解性ポリマーを保護剤として用い、前記酸分解性ポリマーをpK4以下の酸性化合物で分解することにより、酸分解性ポリマーの分解生成物を低温で蒸散できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の組成物は、下記式(1)で表される繰り返し単位を有する酸分解性ポリマー(1)並びに下記式(2a)及び(2b)で表される二種の繰り返し単位を有する酸分解性ポリマー(2)から選択された少なくとも1種の酸分解性ポリマーをpK4以下の酸性化合物で分解して得られる低温蒸散性組成物であって、沸点200℃以下の環状エーテルを含む。
Figure 0006625824
[式中、Aは、置換基を有していてもよい炭化水素基、又は−A−(O−A)−基(式中、A及びAは、それぞれ同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、nは1以上の整数である)を示す]
Figure 0006625824
[式中、Aは、置換基を有していてもよい炭化水素基、又は−A−(O−A)−基(式中、A及びAは、それぞれ同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、mは1以上の整数である)を示し、
は、置換基を有していてもよい炭化水素基、又は−A−(O−A)−基(式中、A及びAは、それぞれ同一又は異なって、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、kは、1以上の整数である)を示し、
及びAは異なる基である]。
前記環状エーテルは下記式(3)で表される環状エーテルであってもよい。
Figure 0006625824
[式中、Aは、式(1)、(2a)及び(2b)におけるA、A又はAである]。
前記式(3)において、AがC2−10アルキレン基であってもよい。前記環状エーテルは、式:HO−A−OH[式中、Aは、式(1)、(2a)及び(2b)におけるA、A又はAである]で表されるジオールとアセトアルデヒドとの反応物であってもよい。前記酸分解性ポリマーは、金属粒子を保護するためのポリマーであってもよい。前記金属粒子は銅ナノ粒子であってもよい。
本発明には、酸分解性ポリマーを含む保護剤の使用方法も含まれ、この使用方法は、前記酸分解性ポリマーをpK4以下の酸性化合物で分解する分解工程を含む。前記酸分解性ポリマーは、前記式(1)で表される繰り返し単位を有する酸分解性ポリマー(1)並びに前記式(2a)及び(2b)で表される二種の繰り返し単位を有する酸分解性ポリマー(2)から選択された少なくとも1種の酸分解性ポリマーである保護剤の使用方法も含まれる。
前記保護剤はpK4以下の酸性化合物を発生可能な酸発生剤を含んでいてもよい。前記分解工程において、保護剤にpK4以下の酸性化合物を添加してもよい。前記保護剤は金属粒子(特に、平均粒径3000nm以下の銅粒子)の少なくとも一部の表面を被覆するための保護剤であってもよい。本発明の使用方法は、保護剤の分解生成物及び金属粒子を加熱して焼成する焼成工程をさらに含んでいてもよい。本発明の使用方法は、分解工程の前工程として、前記保護剤で金属粒子の少なくとも一部の表面を被覆する被覆工程をさらに含んでいてもよい。
本発明には、前記酸分解性ポリマーとpK4以下の酸性化合物を発生可能な酸発生剤とを含む保護剤も含まれる。前記酸性化合物は、pK−5以下であり、かつフッ素原子を含む酸であってもよい。前記酸発生剤の割合はが、酸分解性ポリマー100重量部に対して0.01〜100重量部程度である。本発明の保護剤は、金属粒子の保護剤であってもよい。
本発明には、金属粒子を処理するための処理剤であって、前記酸分解性ポリマーとpK4以下の酸性化合物とを組み合わせた処理剤も含まれる。前記酸性化合物はpK0以下の無機酸であってもよい。前記酸性化合物の割合は、酸分解性ポリマー100重量部に対して10〜1000重量部程度である。
本発明では、アセタール結合を有する特定の酸分解性ポリマーを保護剤として用い、前記酸分解性ポリマーがpK4以下の酸性化合物で分解されるため、生成する分解生成物の沸点が低く、酸分解性ポリマーの分解生成物を低温で蒸散できる。そのため、金属粒子の保護剤として利用すると、金属粒子を低温で焼結できる。特に、ナノサイズの金属粒子に対しても、酸化や凝集を抑制できて安定性を向上できるとともに、200℃以下の低温で焼結できる。さらに、前記酸分解性ポリマーは有機溶媒に対する分散性(又は溶解性)に優れているため、保護剤で被覆した金属粒子は、各種の有機溶媒に分散できる。
図1は、実施例1で得られた酸分解性ポリマーのH−NMRスペクトルのチャートである。 図2は、実施例1で得られた酸分解性ポリマーのTG−DTAの測定結果である。 図3は、実施例1で得られた酸分解性ポリマーの塩酸による分解生成物をガスクロマトグラフィーで測定した結果(チャート)である。 図4は、実施例1で得られた酸分解性ポリマーの塩酸による分解生成物のGC−MS分析法で測定した結果(トータルチャート及び2−メチル−1,3−ジオキセパンのピークのマススペクトルのチャート)である。 図5は、実施例1で得られた酸分解性ポリマーの塩酸による分解生成物のH−NMRスペクトルのチャートである。 図6は、実施例1で得られた酸分解性ポリマーの酸発生剤による分解生成物をガスクロマトグラフィーで測定した結果(チャート)である。 図7は、実施例2で得られた酸分解性ポリマーの酸発生剤による分解生成物をガスクロマトグラフィーで測定した結果(チャート)である。 図8は、比較例1で得られた酸分解性ポリマーの分解生成物をガスクロマトグラフィーで測定した結果(チャート)である。
[分解工程]
本発明の保護剤の使用方法は、保護剤の酸分解性ポリマーをpK4以下の酸性化合物で分解する分解工程を含む。
(酸性化合物)
酸分解性ポリマーは、酸により分解されるが、弱酸などの酸で分解すると、蒸気圧が比較的低いアルデヒド化合物(例えば、沸点20℃のアセトアルデヒドや沸点124℃のパラアルデヒドなど)などの低沸点成分に加えて、蒸気圧の高いジオール(例えば、沸点190℃の1,4−ブタンジオールなど)などの高沸点成分が生成するため、酸分解生成物(分解物)をさらに分解蒸散させて除去するために、高温での加熱温度が必要である。これに対して、本発明では、所定の酸性化合物で分解することにより、アルデヒドとジオールの生成に加えて、アルデヒドとジオールとが反応することで環状エーテル骨格を有する化合物(例えば、2−メチル−1,3−ジオキセパンなどの7員環化合物など)を生成できるため、分解物を除去するための加熱温度を低下できる。酸性化合物は、酸解離定数pK(25℃)が4以下であればよく、無機酸と有機酸とに分類される。
無機酸としては、例えば、硫酸(−10)、硝酸(−1.4)、亜硝酸(3.15)、塩酸(−7)、硝酸(−1.4)、ヨウ化水素(−10)、臭化水素(−9)、フッ化水素(3.17)、クロム酸(−0.7);ホスフィン酸(1.2)、ホスホン酸(1.5)、リン酸(2.2)、二リン酸(0.8)、トリポリリン酸(2.0)などのリン酸類;ヘキサフルオロリン酸、H[(CFCFPF]、H[(CFCFCFPF]などのハロゲン化リン酸(特にフルオロリン酸);過塩素酸(−8.6)、過臭素酸などの過ハロゲン酸;過マンガン酸(−2.4);チオシアン酸(−1.32);塩化スルホン酸(−6.5)、フルオロスルホン酸(−10)などのハロゲン化スルホン酸(特にフルオロスルホン酸);テトラフルオロホウ酸(−0.4)、H[(CB]などのハロゲン化ホウ酸(特にフルオロホウ酸);ヘキサフルオロアンチモン酸(−25)などのハロゲン化アンチモン酸(特にフルオロアンチモン酸);H[(CGa]などのハロゲン化ガリウム酸(特にフルオロガリウム酸);H[(CFSOC];H[(CFSON](−10.4)などが挙げられる。
有機酸としては、例えば、ギ酸(3.55)などの脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸(1.2)、マレイン酸(1.8)、フマル酸(2.9)などの脂肪族ジカルボン酸;フタル酸(2.8)などの芳香族ジカルボン酸;グリコール酸(3.18)、クエン酸(2.9)などのヒドロキシカルボン酸;メタンスルホン酸(−2)などのアルカンスルホン酸;トリフルオロメタンスルホン酸(−12)、ペンタフルオロエタンスルホン酸(−3.9)、ノナフルオロブタンスルホン酸(−3.6)などのハロアルカンスルホン酸(特にフルオロアルカンスルホン酸);ベンゼンスルホン酸(−6.5)、トルエンスルホン酸(−2.8)などのアレーンスルホン酸;メチオニン(2.2)、オルニチン(1.7)、ロイシン(2.4)、リシン(2)、アスパラギン(2.1)、アスパラギン酸(1.9)、アミノ安息香酸(2)などのアミノ酸;プロトン化エタノール(−2)などが挙げられる。
なお、前記酸性化合物の括弧内の数値はおおよそのpKを示す。さらに、本発明では、酸性化合物が複数の解離段を有する場合、pKは第1段目の解離段の値を意味する。
酸性化合物のpK(25℃)は3以下(例えば−50〜3)であればよいが、低沸点成分の発生を抑制できる効果が大きい点から、例えば0以下(−40〜0)、好ましくは−5以下(例えば−30〜−5)、さらに好ましくは−7以下(例えば−20〜−7)程度である。さらに、2−メチル−1,3−ジオキセパンなどの環状エーテルの生成率を向上できる点から、pK(25℃)は、例えば−50〜−5、好ましくは−40〜−10、さらに好ましくは−30〜−15程度であってもよい。このような低いpKを有する酸性化合物は、酸発生剤による酸性化合物であってもよい。pKが大きすぎると、ジオールなどの高沸点成分が生成し易くなる。このようなpKを有する酸性化合物として、具体的には、塩酸などの無機酸やフッ素原子を含む酸(特に、ヘキサフルオロリン酸などのフッ素原子を含む無機酸)が好ましい。
前記酸性化合物の割合は、種類(特にpK)に応じて選択でき、酸分解性ポリマー100重量部に対して0.01重量部以上(例えば0.01〜1000重量部)程度の範囲から選択でき、例えば0.05〜500重量部、好ましくは0.1〜300重量部、さらに好ましくは1〜200重量部程度である。酸性化合物の割合が少なすぎると、高沸点成分が生成する虞がある。
このような酸性化合物は、分解工程において、保護剤に直接添加してもよく、酸発生剤として、熱や光により分解工程で発生させてもよい。
保護剤に添加する場合、前記酸性化合物の割合は、種類(特にpK)にもよるが、例えば、フッ素原子を含まない酸(例えば、塩酸などの無機酸)の場合、酸分解性ポリマー100重量部に対して、例えば10〜1000重量部、好ましくは20〜500重量部(例えば30〜300重量部)、さらに好ましくは50〜200重量部(特に80〜150重量部)程度である。
前述のように、保護剤が金属粒子の保護剤として利用される場合、前記保護剤(酸分解性ポリマー)と前記酸性化合物との組み合わせは、金属粒子の処理剤として機能する。
分解工程で酸性化合物を添加する場合、保護剤は加熱しなくてもよいが、酸分解性ポリマーの分解を促進させるために、加熱してもよい。加熱温度は、例えば35〜150℃、好ましくは40〜100℃、さらに好ましくは45〜85℃程度である。
一方、酸発生剤の形態で酸性化合物を生成させる場合、前記酸性化合物は、酸発生剤のアニオンとして発生できればよい。
酸発生剤としては、慣用の酸発生剤、例えば、スルホニウム塩(スルホニウムイオンとアニオンとの塩)、ヨードニウム塩(ヨードニウムイオンとアニオンとの塩)、セレニウム塩(セレニウムイオンとアニオンとの塩)、アンモニウム塩(アンモニウムイオンとアニオンとの塩)、ホスホニウム塩(ホスホニウムイオンとアニオンとの塩)、遷移金属錯体イオンとアニオンとの塩、アレン−イオン錯体、アルミニウムキレート、三フッ化ホウ素アミン錯体などが挙げられる。これらの酸発生剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの酸発生剤のうち、酸性度が高い点から、スルホニウム塩が好ましい。
スルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウム塩、トリ−p−トリルスルホニウム塩、トリ−o−トリルスルホニウム塩、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウム塩、1−ナフチルジフェニルスルホニウム塩、2−ナフチルジフェニルスルホニウム塩、トリス(4−フルオロフェニル)スルホニウム塩、トリ−1−ナフチルスルホニウム塩、トリ−2−ナフチルスルホニウム塩、トリス(4−ヒドロキシフェニル)スルホニウム塩、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム塩、4−(p−トリルチオ)フェニルジ−(p−フェニル)スルホニウム塩などのトリアリールスルホニウム塩;ジフェニルフェナシルスルホニウム塩、ジフェニル−4−ニトロフェナシルスルホニウム塩、ジフェニルベンジルスルホニウム塩、ジフェニルメチルスルホニウム塩などのジアリールスルホニウム塩;フェニルメチルベンジルスルホニウム塩、4−ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム塩、4−メトキシフェニルメチルベンジルスルホニウム塩などのモノアリールスルホニウム塩などが挙げられる。
スルホニウムイオン(カチオン)と塩を形成するためのアニオン(対イオン)としては、前記酸性化合物であればよいが、pKが低い点から、フッ素原子を含む酸、例えば、ヘキサフルオロリン酸などのフルオロリン酸、ヘキサフルオロアンチモン酸などのフルオロアンチモン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸やノナフルオロブタンスルホン酸などのフルオロアルカンスルホン酸などが好ましい。
酸発生剤は、熱酸発生剤であってもよく、光酸発生剤であってもよい。これらのうち、熱酸発生剤としては、市販品を利用でき、例えば、三新化学工業(株)製「サンエイドSI−60L」、「サンエイドSI−60S」、「サンエイドSI−80L」、「サンエイドSI−100L」、「サンエイドSI−110L」や、(株)ADEKA製「SP−66」、「SP−77」などを利用できる。光酸発生剤としても、市販品を利用でき、例えば、サンアプロ(株)製「HS−1」、「HS−1A」、「HS−1P」、「HS−1N」、「HS−1TF」、「HS−1NF」、「HS−1MS」、「HS−1CS」、「HS−1PC」、「LW−S1」、「LW−S1」、「LW−S1NF」、「K1−S」、「CPI−101A」、「CPI−100P」、「CPI300PG」などを利用できる。
酸発生剤の割合は、酸分解性ポリマー100重量部に対して0.01〜100重量部程度の範囲から選択でき、フッ素原子を含むpKの低い酸を発生可能な酸発生剤では、例えば0.01〜10重量部、好ましくは0.03〜5重量部、さらに好ましくは0.05〜3重量部(特に0.08〜2重量部)程度である。
酸発生剤は、分解工程において、保護剤に添加し、熱や光により酸性化合物を発生させてもよく、予め前記酸分解性ポリマーと酸発生剤とを含む組成物として、保護剤を調製してもよい。
酸発生剤を用いる場合(例えば、保護剤が酸発生剤を含む場合)、酸発生剤の種類に応じて、分解工程で酸性化合物を発生させる。酸分解性ポリマーが熱酸発生剤である場合、熱酸発生剤の種類に応じて、加熱することにより酸性化合物を発生できる。保護剤が金属粒子の保護剤である場合、後述する焼成工程の初期工程が分解工程であってもよい。加熱温度は、例えば40〜200℃、好ましくは50〜180℃、さらに好ましくは70〜150℃程度である。
保護剤が光酸発生剤を含む場合、可視光線や紫外線などを光照射して酸を発生させてもよい。光照射の光源としては、慣用の光源を利用でき、紫外線の場合、超高圧から低圧水銀ランプやLED、キセノンランプなどが挙げられる。保護剤が金属粒子の保護剤である場合、後述する焼成工程において、光照射も同時に行い、焼成工程の少なくとも一部を分解工程としてもよい。
(酸分解性ポリマー)
酸分解性ポリマーは、前記酸性化合物によって容易に分解する特性を有しており、前記式(1)で表される繰り返し単位を有する酸分解性ポリマー(1)並びに前記式(2a)及び(2b)で表される二種の繰り返し単位を有する酸分解性ポリマー(2)から選択された少なくとも1種の酸分解性ポリマーである。この酸分解性ポリマーは、重合体の主鎖を構成する繰り返し単位としてアセタール結合(アセタール構造)を有するため、前記酸性化合物と反応させることにより容易に分解できる。このようなアセタール構造は、熱、光、還元剤などの酸以外の通常の刺激に対しては安定であるため、保護剤を形成する重合体は、酸性化合物の非存在下において高い安定性を有する。
式(1)、(2a)及び(2b)において、A〜A(A〜A骨格)の炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの2以上が結合した基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基が挙げられる。アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、ブチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、イソヘキシレン基、オクタメチレン基、イソオクチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基などのC1−20アルキレン基などが挙げられる。アルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、アリレン基、メタリレン基、1−プロペニレン基、イソプロペニレン基、ブテニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基などのC2−20アルケニレン基などが挙げられる。アルキニレン基としては、例えば、エチニレン基、プロピニレン基などのC2−20アルキニレン基などが挙げられる。
脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロドデカン−ジイル基などのC3−12シクロアルキレン基(特にC5−8シクロアルキレン基);シクロヘキセニレン基などのC3−12シクロアルケニレン基;ビシクロヘプタニレン基、ビシクロヘプテニレン基などのC4−15架橋環式炭化水素基などが挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基などのC6−14アリーレン基などが挙げられる。
さらに、炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基から選択される二種以上を結合した基であってもよい。脂肪族炭化水素基と脂環式炭化水素基とが結合した基としては、例えば、シクロへキシレンメチレン基、メチレンシクロヘキシレン基、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイル基、ジシクロヘキシルプロパン−4,4’−ジイル基などが挙げられる。脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合した基としては、例えば、トリレン基、キシリレン基、ジフェニルメタン−4,4’−ジイル基、ジフェニルプロパン−4,4’−ジイル基などが挙げられる。
これらの炭化水素基の置換基としては、例えば、アルキル基(メチル基、エチル基、ブチル基などのC1−10アルキル基)、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、オキソ基、ヒドロキシ基、ヒドロパーオキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基などのC1−6アルコキシ基など)、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アシル基、アシルオキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アラルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、エポキシ基、エポキシ含有基、オキタセニル基、オキタセニル含有基、シアノ基、イソシナート基、カルバモイル基、イソチオシナート基などが挙げられる。置換基は、2以上の置換基がC1−6アルキレン基を介して結合した基であってもよい。置換基の数は、炭化水素基の種類に応じて選択でき、例えば4以下(特に0〜3)程度であってもよい。
式(1)、(2a)及び(2b)において、n,m及びkは、それぞれ1以上の整数であり、好ましくは1〜10、さらに好ましくは1〜5(特に1〜3)程度である。
これらの基のうち、A〜Aとしては、炭素数2以上のアルキレン基(例えばC2−10アルキレン基)であってもよく、炭素数3以上のアルキレン基(例えばC3−10アルキレン基)が好ましく、トリ乃至オクタメチレン基(特にトリ乃至ヘキサメチレン基)が特に好ましい。
ポリマー(1)及び(2)は、A骨格を有するジビニルエーテルとA骨格を有するジオールとの反応、A又はA骨格を有するジビニルエーテルとA又はA骨格を有するジオールとの反応、A骨格を有するヒドロキシビニルエーテルの重合などにより得られる。ポリマー(1)及び(2)の構造は、特に限定されず、直鎖型、分岐鎖型、星型などのいずれの構造であってもよい。
ポリマー(1)は、単独重合体であってもよく、他の共重合性単量体で形成された単位(繰り返し単位(1)を形成可能な単量体以外の単量体で形成された単位)との共重合体であってもよい。共重合体は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
ポリマー(2)は、繰り返し単位(2a)と(2b)とを含む共重合体であるが、ポリマー(1)と同様に、さらに他の共重合性単量体で形成された単位(繰り返し単位(2a)又は(2b)を形成可能な単量体以外の単量体で形成された単位)を含む共重合体であってもよい。共重合体は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
ポリマー(1)において、式(1)で表される繰り返し単位の割合は50モル%以上(例えば70〜100モル%)であってもよく、例えば、80モル%以上(例えば80〜100モル%)、好ましくは90モル%以上(例えば90〜100モル%)、さらに好ましくは95モル%以上(特に99モル%以上)であってもよい。ポリマー(2)において、式(2a)及び(2b)で表される二種の繰り返し単位の割合も、式(1)で表される繰り返し単位の割合と同様である。これらの繰り返し単位の割合が少なすぎると、酸により重合体を分解した後の残渣の処理が煩雑となる虞がある。
ポリマー(1)及び(2)のうち、ポリマー鎖が均質な分解性を有する点から、式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマー(1)(特にホモポリマー)が好ましい。ポリマー(1)において、Aは、トリ乃至ヘキサメチレン基であってもよく、好ましくはテトラ乃至ペンタメチレン基、さらに好ましくはテトラメチレン基であってもよい。
ポリマー(1)及び(2)の末端基は、ビニルエーテル基、ヒドロキシル基のいずれかであり、いずれか単独であってもよく、ビニルエーテル基末端とヒドロキシル基末端との組泡であってもよい。このように、ポリマー(1)及び(2)は、末端にヒドロキシル基及び/又はビニルエーテル基(ビニル基)を有するため、ヒドロキシル基により無機材料などで形成された基材に対する密着性を付与したり、ビニル基により他の重合性基と重合させて酸分解性の架橋構造を有する樹脂を得ることもできる。
ポリマー(1)及び(2)の重量平均分子量(Mw)は、それぞれ、GPC法により測定したとき、ポリスチレン換算で、1000以上であってもよく、例えば1000〜100000、好ましくは2000〜50000、さらに好ましくは3000〜30000(特に4000〜10000)程度であってもよい。重量平均分子量が小さすぎると、金属粒子に対する保護能が低下したり、分解前の重合体の耐熱性や機械強度が不十分となる虞がある。一方、大きすぎると、重合体の生産性が低下したり、分散性が不十分となって取り扱いが困難となる虞がある。
ポリマー(1)及び(2)の分子量分布(Mw/Mn)は、それぞれ、例えば1〜5、好ましくは1.1〜3、さらに好ましくは1.2〜2.8(特に1.5〜2.5)程度であってもよい。分子量分布が大きすぎると、分解前の重合体の耐熱性や機械強度が不十分となる虞がある。なお、重合体の分子量分布も、例えば、GPC法により、ポリスチレン換算で算出できる。
ポリマー(1)及び(2)は、前述のように、対応するジビニルエーテルと対応するジオールとを反応させる反応工程を含む製造方法や、対応するヒドロキシビニルエーテルを重合させる反応工程を含む製造方法などにより得られる。
反応工程において、A、A又はA骨格を有するジビニルエーテルとしては、例えば、ブチレンジビニルエーテル、シクロヘキサンジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、2,2−ノルボルナンジメタノールジビニルエーテルなどが挙げられる。A、A又はA骨格を有するジオールとしては、例えば、テトラメチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAなどが挙げられる。A、A又はA骨格を有するヒドロキシビニルエーテルとしては、例えば、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテル、2,2−ノルボルナンジメタノールモノビニルエーテルなどが挙げられる。
これらのうち、対応するジビニルエーテルと対応するジオールとの交互重合体が好ましい。前記ジビニルエーテルと前記ジオールとの割合(モル比)は、前者/後者=10/1〜1/10程度の範囲から選択できるが、重合性の点から、例えば、2/1〜1/2、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2(特に1.1/1〜1/1.1)程度であってもよく、通常、略等モルである。
反応は触媒の存在下で行ってもよい。触媒としては、慣用の触媒を利用できるが、反応促進性が高い点から、酸触媒が好ましい。酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸などの強酸であってもよいが、生成する重合体の安定性も保持できる点から、酢酸、リン酸、アレーンスルホン酸(例えば、トルエンスルホン酸など)と塩基(例えば、ピリジンなどの弱塩基など)との塩などの弱酸が好ましく、重合体の安定性と反応性とのバランスに優れる点から、p−トルエンスルホン酸ピリジニウムなどのトルエンスルホン酸塩が好ましい。
触媒の割合は、重合成分の総モル数(例えば、ジビニルエーテル、ジオール及びヒドロキシビニルエーテルの総モル数)100モルに対して、例えば0.1〜20モル、好ましくは0.3〜15モル、さらに好ましくは0.5〜10モル(特に1〜5モル)程度である。触媒の割合が少なすぎると、反応性が低下し、多すぎると、重合体の物性に悪影響を及ぼす虞がある。
反応は溶媒中で行ってもよく、溶媒としては、前記ジビニルエーテル、ジオール及びヒドロキシビニルエーテルに対して非反応性の溶媒であれば特に限定されず、例えば、炭化水素類(トルエン、キシレンなど)、ハロゲン系溶媒(塩化メチレン、クロロホルムなど)、エーテル類(ジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類など)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、セロソルブアセテート類(エチルセロソルブアセテートなどのC1−4アルキルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールモノC1−4アルキルエーテルアセテートなど)などが挙げられる。これらの溶媒は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの溶媒のうち、セロソルブアセテート類(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールモノC1−4アルキルエーテルアセテートなど)が汎用される。
溶媒の使用量は、重合成分の総量(例えば、ジビニルエーテル及びジオールの総量)100重量部に対して、例えば10〜1000重量部、好ましくは50〜500重量部、さらに好ましくは100〜300重量部(特に150〜200重量部)程度であってもよい。
反応は、慣用の添加剤、例えば、重合促進剤、重合禁止剤などを添加して行ってもよい。さらに、反応系に水分が含まれていてもよく、原料などに由来して不可避に含有する水分存在下で反応を行ってもよい。
反応工程では、過度の加熱や冷却をすることなく、反応を進行させることができ、反応温度は、例えば0〜60℃、好ましくは10〜50℃、さらに好ましくは20〜45℃(特に30〜40℃)程度であってもよい。
反応時間は、例えば30分〜48時間、通常1〜36時間、好ましくは2〜24時間程度であってもよい。なお、反応は、不活性雰囲気(窒素、ヘリウム、アルゴンなどの雰囲気)下で行ってもよい。
反応工程を経て得られた重合体は、さらに分離精製工程に供してもよい。分離精製工程では、慣用の分離精製処理、例えば、濾過、濃縮、再沈殿、抽出、晶析(再結晶など)などの手段より分離精製してもよい。さらに、酸触媒を用いた場合は、慣用の方法でアルカリにより中和してもよい。
(保護剤の特性)
保護剤は、用途に応じて、他の成分、例えば、製造工程で混入する触媒や溶媒、還元剤の他、慣用の添加剤を含んでいてもよい。
還元剤の割合は、保護剤全体に対して、例えば10重量%以下(例えば0.001〜10重量%)、好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下程度である。還元剤の割合が多すぎると、例えば、金属膜を形成するための金属粒子の保護に利用する場合、焼成後の導電性が低下する虞がある。
慣用の添加剤としては、例えば、酸発生剤(スルホニウム塩などの慣用の熱又は光酸発生剤など)、他のポリマー(バインダー)、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤など)、金属腐食防止剤、界面活性剤又は分散剤、水溶性高分子、ワックス、分散安定化剤、増粘剤又は粘度調整剤、保湿剤、チクソトロピー性賦与剤、レベリング剤、消泡剤、充填剤などが含まれていてもよい。
他の成分の割合は、例えば、保護剤全体に対して50重量%以下であってもよく、例えば0.01〜10重量%(特に0.1〜5重量%)程度である。
保護剤は、金属膜を形成するための金属粒子の安定性を向上させるために、金属粒子の表面を被覆する保護剤として利用する場合、金属粒子の少なくとも一部の表面を被覆していればよく、金属粒子の表面に対する被覆率は10%以上であってもよく、例えば30%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは80%以上(特に90%以上)であってもよく、金属粒子の全表面を被覆していてもよい。保護剤による被覆率が低すぎると、金属粒子が酸化又は凝集し易くなり、金属粒子の安定性が低下する虞がある。
(低温蒸散性組成物)
前記保護剤における酸分解性ポリマーは前記酸性化合物で分解され、低温での蒸散性に優れた組成物を形成する。詳しくは、前記酸性化合物が酸性化合物により分解されると、分解により生成したアルデヒド化合物とジオールとが反応して、蒸気圧の低い環状エーテル(環状エーテル骨格を有する化合物)が生成する。環状エーテルの沸点は200℃以下(例えば50〜200℃)であり、好ましくは80〜180℃(例えば100〜160℃)、さらに好ましくは110〜150℃(特に120〜140℃)程度である。
環状エーテルは、前記酸分解性ポリマーの骨格に対応した構造を有しており、例えば、前記式(3)で表される環状エーテルであってもよく、式(3)において、AがC2−10アルキレン基(好ましくはC3−6アルキレン基、さらに好ましくはC3−5アルキレン基)である環状エーテルが好ましい。具体的には、環状エーテルとしては、例えば、2−メチル−1,3−ジオキソラン、2−メチル−1,3−ジオキサン、2−メチル−1,3−ジオキセパンなどが挙げられる。環状エーテルの骨格Aの炭素数が大きすぎると、低温での蒸散性が低下する虞がある。
本発明の低温蒸散性組成物は、前記環状エーテルを形成できずに残存したアルデヒド化合物及び/又はジオールを含んでいてもよい。アルデヒド化合物は、通常、アセトアルデヒド及びその多量体(パラアルデヒド、メタアルデヒド)である。一方、ジオール化合物は、通常、前記式:HO−A−OH[式中、Aは、式(1)、(2a)及び(2b)におけるA、A又はAである]で表されるジオールである。
本発明の低温蒸散性組成物は、低温蒸散性を向上できる点から、前記ジオールの割合が少ない方が好ましく、前記ジオールの割合は、前記環状エーテル100重量部に対して、例えば、100重量部以下であってもよく、好ましくは50重量部以下、さらに好ましくは30重量部以下(特に20重量部以下)であってもよい。
本発明の低温蒸散性組成物において、他の成分(アルデヒド化合物、前記酸性化合物、前記触媒、前記溶媒、前記還元剤、前記慣用の添加剤)の割合は、組成物全体に対して、例えば、50重量%以下(例えば0.01〜50重量%)、好ましくは0.1〜30重量%程度である。
(焼成工程)
本発明の保護剤の使用方法は、保護剤が金属粒子の少なくとも一部の表面を被覆するための保護剤である場合、例えば、分解工程の後工程として、保護剤の分解生成物及び金属粒子を加熱して焼成する焼成工程をさらに含んでいてもよい。なお、前述のように、焼成工程は、分解工程を兼ねていてもよい。
金属粒子を構成する金属としては、例えば、遷移金属(例えば、チタン、ジルコニウムなどの周期表第4A族金属;バナジウム、ニオブなどの周期表第5A族金属;モリブデン、タングステンなどの周期表第6A族金属;マンガンなどの周期表第7A族金属;鉄、ニッケル、コバルト、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、レニウム、イリジウム、白金などの周期表第8族金属;銅、銀、金などの周期表第1B族金属など)、周期表第2B族金属(例えば、亜鉛、カドミウムなど)、周期表第3B族金属(例えば、アルミニウム、ガリウム、インジウムなど)、周期表第4B族金属(例えば、ゲルマニウム、スズ、鉛など)、周期表第5B族金属(例えば、アンチモン、ビスマスなど)などが挙げられる。金属粒子は、これらの合金であってもよく、複数種の金属粒子の組み合わせであってもよい。
これらの金属粒子のうち、導電性に優れる点から、銅、銀、金などの周期表第1B族金属単体で形成された粒子が好ましく、マイグレーションが起こり難く、経済性にも優れる点から、銅粒子が特に好ましい。
金属粒子の形状としては、特に限定されず、球状、楕円体状、多角体形(多角錘状、正方体状、直方体状など)、板状、棒状、不定形状などが挙げられる。これらのうち、分散性などに優れる点から、略球状などの等方形状が好ましい。
金属粒子は、平均粒径(数平均一次粒径)が3000nm以下であってもよい。特に、金属粒子の平均粒径は、ナノメータサイズが好ましく、例えば1〜1000nm、好ましくは10〜500nm(例えば20〜400nm)、さらに好ましくは30〜300nm(特に50〜200nm)程度である。金属粒子の粒径が大きすぎると、焼結させるための焼成温度が高くなり、微細配線の形成なども困難となる虞がある。一方、小さすぎると、調製が困難となる上に、比表面積が増大するため、酸化し易くなるとともに、ペーストやインクなどへの再分散も困難となる。さらに、これらの複合的な要因により導電性を向上させるのも困難となる虞がある。
本発明では、金属粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による画像解析などの方法で測定できる。
焼成工程において、加熱温度は、200℃を超えてもよいが、低温での焼結が可能であり、200℃以下であってもよく、例えば60〜200℃、好ましくは80〜180℃(例えば100〜175℃)、さらに好ましくは120〜170℃(特に125〜160℃)程度である。
焼成時間(加熱時間)は、焼成温度などに応じて、例えば、10分〜10時間、好ましくは15分〜8時間、さらに好ましくは20分〜6時間(特に30分〜5時間)程度である。
焼成工程は、空気などの酸素を含む活性ガス雰囲気下であってもよいが、金属粒子の酸化を抑制できる点から、水素、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で焼成するのが好ましい。不活性ガスは、水素を含む二種以上の不活性ガスの組み合わせであってもよく、例えば、水素と窒素とを、水素/窒素=0.1/99.9〜20/80、好ましくは0.5/99.5〜10/90、さらに好ましくは1/99〜5/95程度の体積割合で混合した混合ガスであってもよい。
(被覆工程)
本発明の保護剤の使用方法は、保護剤が金属粒子の少なくとも一部の表面を被覆するための保護剤である場合、分解工程の前工程として、前記保護剤で金属粒子の少なくとも一部の表面を被覆する被覆工程をさらに含んでいてもよい。
前記被覆工程において、保護剤で金属粒子を被覆する方法は、特に限定されないが、通常、酸分解性ポリマーの存在下で、原料金属化合物を還元する方法が利用される。
原料金属化合物としては、金属酸化物、金属塩、金属ハロゲン化物などが挙げられる。これらの原料金属化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
原料金属化合物は、金属粒子の種類に応じて選択できる。金属ハロゲン化物には、金属塩化物、金属臭化物、金属ヨウ化物などが含まれる。金属塩には、金属無機酸塩(硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、塩酸塩、リン酸塩など)、金属有機酸塩(ギ酸塩、酢酸塩、乳酸塩など)などが含まれる。金属塩は水和物であってもよい。
金属粒子が銅粒子である場合、酸化銅には、酸化銅(I)(酸化第一銅)、酸化銅(II)(酸化第二銅)が含まれる。ハロゲン化銅には、塩化銅(I)(塩化第一銅)、塩化銅(II)(塩化第二銅)、臭化銅(I)(臭化第一銅)、臭化銅(II)(臭化第二銅)などが含まれる。金属塩には、硫酸銅、硝酸銅、ギ酸銅、酢酸銅などが含まれる。これらのうち、酸化銅、硫酸銅、ギ酸銅、酢酸銅及び塩化銅からなる群より選択された少なくとも1種が好ましい。
合成時における酸分解性ポリマーの割合は、原料金属化合物100重量部に対して、例えば3〜30重量部、好ましくは5〜20重量部、さらに好ましくは6〜10重量部程度である。酸分解性ポリマーの割合が小さすぎると、金属粒子の安定性が低下したり、粗大粒子が生成する虞があり、大きすぎると、低温での焼結が困難となる虞がある。
還元剤としては、慣用の還元剤、例えば、水素化ホウ素ナトリウム類、水素化アルミニウムリチウム、次亜リン酸又はその塩、ボラン類、ホルマリン、ヒドラジン、アミン類、アルコール類、フェノール性水酸基を有するカルボン酸などが例示できる。これらの還元剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの還元剤のうち、水素化ホウ素ナトリウム、ヒドラジン、第3級アミン、エチレングリコール、タンニン酸などが汎用され、ヒドラジンが好ましい。ヒドラジンは水和物であってもよい。
還元剤の割合は、原料金属化合物1モルに対して、例えば0.1〜50モル(特に0.2〜40モル)程度の範囲から選択でき、例えば0.2〜30モル、好ましくは0.3〜10モル、さらに好ましくは0.5〜5モル程度である。還元剤の割合が少なすぎると、金属イオンの還元が不十分となる虞があり、多すぎると、粒子径が小さくなり、反応後の精製に時間を要する虞がある。
還元剤を用いた還元反応は、常温であってもよいが、還元反応を促進できる点から、加熱してもよい。加熱する場合、加熱温度は、例えば40〜80℃、好ましくは45〜70℃、さらに好ましくは50〜60℃程度であってもよい。反応時間は、例えば10分〜20時間、通常30分〜10時間、好ましくは1〜5時間程度であってもよい。還元反応は攪拌して反応させてもよい。
還元反応は、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒は、原料金属化合物及び還元剤の種類に応じて選択でき、例えば、水、エタノールやイソプロパノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、ジオキサンやテトラヒドロフランなどの環状エーテル類、ジメチルアセトアミドなどのアミド類などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの溶媒のうち、水、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類が汎用される。溶媒の割合は、原料金属化合物100重量部に対して、例えば10〜5000重量部、好ましくは30〜4000重量部、さらに好ましくは50〜3000重量部程度である。
還元反応では、慣用の方法で、酸(塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、酢酸などの有機酸)、アルカリ(水酸化ナトリウム、アンモニアなどの無機塩基など)を用いてpHを調整してもよい。
被覆工程では、金属粒子の少なくとも一部の表面が保護剤で被覆された複合粒子が得られる。得られた複合粒子は、分散液の形態であってもよく、還元反応終了後の分散液をそのままインクなどに利用してもよいが、前記分散液は、通常、分離精製工程に供される。分離精製工程では、生成した複合粒子を、慣用の方法(例えば、遠心分離、メンブレンフィルタ、限外ろ過などのろ過処理など)で溶媒から分離した後、分離された複合粒子を洗浄及び乾燥することにより精製してもよい。
複合粒子は、平均粒径(数平均一次粒径)が3000nm以下であってもよい。特に、複合粒子の平均粒径は、ナノメータサイズが好ましく、例えば1〜1000nm、好ましくは10〜500nm(例えば20〜400nm)、さらに好ましくは30〜300nm(特に50〜200nm)程度である。複合粒子の粒径が大きすぎると、焼結させるための焼成温度が高くなり、微細配線の形成も困難となる虞がある。一方、小さすぎると、調製が困難となる上に、比表面積が増大するため、酸化し易くなるとともに、ペーストやインクなどへの再分散も困難となる。さらに、これらの複合的な要因により導電性を向上させるのも困難となる虞がある。
得られた複合粒子は、通常、分散媒中に分散させた分散液として分解工程に供される。分散媒は、複合粒子の種類に応じて選択でき、水であってもよいが、高濃度の複合粒子を分散できる点から、有機溶媒が好ましい。複合粒子は、溶媒分散性(溶解性)に優れるため、種々の有機溶媒に分散(又は溶解)可能である。分散液が複合粒子を高濃度で含むことができると、緻密な焼成膜を形成し易いため、分散液は、導電ペーストや導電インクとして利用し易い。
有機溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルカノール類;エチレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコール類;シクロヘキサノール、テルピネオール、ジヒドロテルピネオールなどの脂環族アルコール類など)、エステル系溶媒(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテートなどの酢酸エステル類)、ケトン系溶媒(例えば、アセトンなどの鎖状ケトン類;シクロヘキサノンなどの環状ケトン類)、エーテル系溶媒(例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどの鎖状エーテル類;ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類)、芳香族系溶媒(例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類)、ハロゲン系溶媒(例えば、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロアルカン類)、ニトリル系溶媒(例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリルなど)、ニトロ系溶媒(例えば、ニトロベンゼンなど)などが挙げられる。これらの分散媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの分散媒のうち、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、環状エーテル系溶媒が汎用され、メタノールなどのC1−4アルカノール、テルピネオールなどの脂環族アルコール、テトラヒドロフランなどの環状エーテル、酢酸エチルなどの酢酸C1−3アルキルエステルであってもよい。
分散媒の割合は、複合粒子100重量部に対して、例えば10〜1000重量部、好ましくは30〜500重量部、さらに好ましくは50〜400重量部(特に80〜300重量部)程度である。分散媒の割合が多すぎると、塗布後の乾燥においてクラックなどが生じ易くなり、導電性の高い焼結膜を形成するのが困難となる虞があり、少なすぎると、分散液の塗布性が低下する虞がある。
分散液は、用途に応じて、導電ペーストや導電インクに添加される慣用の添加剤を含んでいてもよい。慣用の添加剤としては、保護剤の項で例示された慣用の添加剤の他、着色剤(染顔料など)、色相改良剤、染料定着剤、光沢付与剤などが挙げられる。慣用の添加剤の割合は、分散液全体に対して50重量%以下であってもよく、例えば0.01〜10重量%(特に0.1〜5重量%)程度である。
分散液は、通常、基材の上に塗布される。基材は、無機材料であってもよく、有機材料であってもよい。無機材料としては、例えば、ガラス類(ソーダガラス、ホウケイ酸ガラス、クラウンガラス、バリウム含有ガラス、ストロンチウム含有ガラス、ホウ素含有ガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラス、結晶化透明ガラス、シリカガラス、石英ガラス、耐熱ガラスなど)、金属酸化物(アルミナ、サファイア、ジルコニア、チタニア、酸化イットリウム、酸化インジウム−酸化錫系複合酸化物(ITO)、フッ素ドープ酸化錫(FTO)など)などが挙げられる。有機材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂[ポリアルキレンアリレート系樹脂(ポリエチレンテレタフタレートなど)、ポリアリレート系樹脂や液晶ポリマーを含む]、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリイミド系樹脂、セルロース誘導体、フッ素樹脂などが挙げられる。特に、低温焼結可能であるため、ポリエチレンテレタフタレート(PET)などの耐熱性の低い樹脂基材であっても焼成できる。基材の平均厚みは、例えば0.001〜10mm、好ましくは0.01〜5mm、さらに好ましくは0.05〜3mm程度である。
塗布方法としては、慣用の方法を利用できるが、塗膜でパターン(配線基板における配線パターンなど)を形成する場合、例えば、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、凹版印刷法(例えば、グラビア印刷法など)、オフセット印刷法、凹版オフセット印刷法(例えば、グラビアオフセット印刷法など)、凸版印刷法、フレキソ印刷法、反転印刷などを利用できる。
塗膜の平均厚みは、例えば0.5〜100μm(例えば1〜20μm)、好ましくは1〜80μm(例えば3〜10μm)、さらに好ましくは5〜50μm(特に10〜40μm)程度であってもよい。塗膜が微細配線をパターン化した塗膜である場合、塗膜(配線パターン)の平均線幅は、例えば0.5〜30μm、好ましくは1〜20μm、さらに好ましくは2〜10μm(特に3〜8μm)程度であってもよい。本発明では、ナノメータサイズの金属粒子を高濃度で含む分散液(ペースト又はインク)を調製できるため、微細な配線パターンも容易に形成できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例で得られたポリマー及びその分解生成物を以下の項目で評価した。
[ポリマーの分子量]
得られたポリマーの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、カラム(東ソー(株)製「TSKgel−superHZM−M」)を3本連結し、テトラヒドロフランを移動相として、40℃、流速0.6mL/分で、RI8020ディテクターを備えた高速ゲルパーミエーションカラムクロマトグラフィー装置(東ソー(株)製「HLC−8220GPC」)を用いて、ポリスチレン換算で求めた。
[ポリマー及びその分解生成物のNMR]
H−NMRは、核磁気共鳴装置(日本電子(株)製「JNM−ECA500」)を用いて、測定溶媒:重水素化クロロホルム、周波数:500MHzの条件で測定した。
[ポリマーのTG−DTA]
TG−DTAは、示差熱熱重量同時測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「TG−DTA6200」)を用いて、以下の条件で測定した。
<測定条件>
雰囲気:N、300mL/min
温度範囲:30℃〜550℃
昇温速度:5℃/min
サンプルパン:Al。
[ポリマーの分解生成物のガスクロマトグラフィー(GC)]
ガスクロマトグラフ((株)島津製作所製「GC−17A」)を用いて、以下のGC分析条件で、ポリマーの分解生成物を測定した。
(GC分析条件)
カラム:DB−1031(60m−0.25mm、I.D.−1.0μm)
キャリアガス:He、1.0mL/min,(線速度21.7cm/sec)const.flow
注入:スプリット50/1
INJ/Det:280/280℃
Oven:100℃(5分)−10℃/分−280℃/10(分)
注入:検量線作成時1.0μL(ALS) サンプル注入時1.0μL(Man)。
[ポリマーの分解生成物のガスクロマトグラフィー質量分析法(GC−MS)]
ガスクロマトグラフィー(6890N/Agilent社製)とマススペクトロメトリー(5973N/Agilent社製)を用いて、以下のGC−MS条件で、ポリマーの分解生成物を測定した。
(GC−MS条件)
カラム:DB−1[127](60m−0.25mm、I.D−1.0μm)
オーブン:100℃(5min)−10℃/min−280℃(10min)
Inj:280℃
AUX:280℃
流量:He、1.1mL/min(コンスタントプレッシャー)164.0kPa
スプリット:50/1
洗浄溶媒:THF
測定モード:scan MS四重極:150℃ MSイオン源:230℃。
実施例1
(酸分解性ポリマーの合成)
1,4−ブタンジオール(東京化成工業(株)製)57.2g及びピリジニウムパラトルエンスルホナート(東京化成工業(株)製)1.59gを、モレキュラーシーブ(和光純薬工業(株)製「4A 1/16」)で脱水したプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート((株)ダイセル製)265gに加え攪拌した後、40℃で1,4−ブタンジオールジビニルエーテル(シグマアルドリッチ社製)100.2gを滴下した。滴下後、40℃で2時間攪拌した。反応終了後、ブチルアミン5gを添加し反応をクエンチした。次いで、酢酸エチルを加えた後、水で洗浄し有機層を減圧濃縮することで重合体(ポリマー)を72%の収率で得た。この重合体の重合平均分子量Mwは9000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であった。得られた重合体のNMRデータを以下に示し、NMRチャートを図1に示す。
(NMRデータ)
H−NMR(CDCl):δ(ppm)1.285−1.295(d)、1.617−1.633(m)、3.387−3.457(m)、3.554−3.629(m)、4.651−4.683(q)、6.441−6.482(dd)。
また、得られた重合体0.4gをテトラヒドロフラン1.1gに溶解した後、5N塩酸0.3gを加えて室温で30分攪拌した。塩酸処理物の重合平均分子量Mwを測定したところ、重合体のピークが消失していた。一方、得られた重合体0.4gをテトラヒドロフラン1.1gに溶解して室温で30分攪拌して重合平均分子量Mwを測定したところ、重合体のピークのピーク変化は確認されなかった。
(酸分解性ポリマーの分解)
得られた酸分解性ポリマー0.030gをテトラヒドロフラン2.00gに加え、溶解させ、次いで0.030gの5N塩酸を加え25℃で30分攪拌した。得られた溶液についてGC、GC−MS、NMR測定を行った結果を、それぞれ図3〜図5に示す。さらに、図3のピークとRTの関係について表1に示す。
Figure 0006625824
また、得られた酸分解性ポリマー0.030gをテトラヒドロフラン2.00gに添加し、溶解させ、次いで0.005gの酸発生剤(三新化学工業(株)製「SI−100L」)を添加し、50℃で30分攪拌した。得られた溶液についてGC測定を行った結果を図6に示す。
さらに、図3及び図6におけるGCの面積比をまとめた結果を表2に示す。
Figure 0006625824
これらの結果から酸分解性ポリマーの分解物であるアセトアルデヒドと1,4−ブタンジオールに加えて、それらが反応したと推定される2−メチル−1,3−ジオキセパンが生成していることが分かった。
実施例2
酸発生剤(SI−100L)を酸発生剤(三新化学工業(株)製「SI−60L」)に代える以外は実施例1と同様にして、酸発生剤による酸分解性ポリマーの分解を行った。得られた溶液についてGC測定を行った結果を図7に示す。さらに、図7におけるGCの面積比をまとめた結果を表3に示す。
Figure 0006625824
実施例1と同様に酸分解性ポリマーの分解物であるアセトアルデヒドと1,4−ブタンジオールに加えて、それらが反応したと推定される2−メチル−1,3−ジオキセパンが生成していることが分かった。
比較例1
5N塩酸を酢酸に代えた以外は実施例1と同様に実験を行い、得られた溶液についてGC測定を行った結果を図8に示す。図8では分解物のピークが見られないため、酢酸では分解が進行していないと推定できる。
本発明の保護剤の使用方法は、保護剤を用いて一時的な保護が必要な用途に広く利用でき、例えば、金属粒子を保護する用途として、金属粒子を含む導電インク又は導電ペーストで各種の導電体を形成する用途に利用できるが、金属粒子がナノメータサイズであり、高濃度のインク又はペーストも調製できるため、高密度化される微細配線の形成に有効に利用できる。そのため、本発明の使用方法は、微細配線パターンが形成された透明配線基板、この配線基板を備えた電子装置に利用するのが好ましい。

Claims (5)

  1. 酸分解性ポリマーを含み、かつ平均粒径3000nm以下の銅粒子の少なくとも一部の表面を被覆するための保護剤の使用方法であって、前記酸分解性ポリマーをpK 4以下の酸性化合物で分解する分解工程並びに前記酸分解性ポリマーの分解生成物及び前記銅粒子を加熱して焼成する焼成工程を含み、かつ前記酸分解性ポリマーが、下記式(1)で表される繰り返し単位を有する酸分解性ポリマー(1)並びに下記式(2a)及び(2b)で表される二種の繰り返し単位を有する酸分解性ポリマー(2)から選択された少なくとも1種であり、かつ重量平均分子量1000〜10000の酸分解性ポリマーである使用方法
    Figure 0006625824
    [式中、Aは、C2−10アルキレン基、又は−A−(O−A)−基(式中、A及びAは、それぞれ同一又は異なって、C2−10アルキレン基を示し、nは1以上の整数である)を示す]
    Figure 0006625824
    [式中、Aは、C2−10アルキレン基、又は−A−(O−A)−基(式中、A及びAは、それぞれ同一又は異なって、C2−10アルキレン基を示し、mは1以上の整数である)を示し、
    は、C2−10アルキレン基、又は−A−(O−A)−基(式中、A及びAは、それぞれ同一又は異なって、C2−10アルキレン基を示し、kは、1以上の整数である)を示し、
    及びAは異なる基である]
  2. 粒子が銅ナノ粒子である請求項記載の使用方法
  3. 保護剤がpK4以下の酸性化合物を発生可能な酸発生剤を含む請求項1又は2記載の使用方法。
  4. 分解工程において、保護剤にpK4以下の酸性化合物を添加する請求項1又は2記載の使用方法。
  5. 分解工程の前工程として、保護剤で平均粒径3000nm以下の銅粒子の少なくとも一部の表面を被覆する被覆工程をさらに含む請求項1〜4のいずれかに記載の使用方法。
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