以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明においては、本発明に係る空冷式燃料電池の排気装置が、工場内で荷物を運搬する運搬車両等の小型車両に搭載される場合について説明する。しかしながら、本実施の形態に係る空冷式燃料電池の排気装置が搭載される対象については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。限られたスペース内で燃料電池から排出される水素ガスを希釈して大気中に排気する必要がある任意の車両や機器に搭載することができる。
図1は、本実施の形態に係る空冷式燃料電池の排気装置が適用される燃料電池システムを模式的に示す側面図である。以下の説明においては、特に指定する場合を除き、燃料電池システムの前方及び後方をそれぞれ「FR」及び「RE」で示し、上方及び下方をそれぞれ「UP」及び「DOWN」で示し、左方及び右方をそれぞれ「L」及び「R」で示すものとする。
図1に示すように、本実施の形態に係る燃料電池システム1は、空冷式の燃料電池スタック10を備えている。この燃料電池スタック10は、プロトン導電性の高分子電解質膜(PEM膜)を挟んで一方側にカソード電極を設け、他方側にアノード電極を設けて構成される燃料電池セル(単位燃料電池)を複数枚(数十〜数百枚)積層して構成されている。
燃料電池スタック10の前方には、吸気ダクト20及び第1シャッターユニット30が配置されている。一方、燃料電池スタック10の後方には、冷却用ファンユニット(以下、「ファンユニット」という)40、第2シャッターユニット50及び排気ダクト60が配置されている。燃料電池システム1は、これらの構成要素が前後方向に連結された状態で車両等に搭載されている。例えば、燃料電池システム1は、吸気ダクト20が車両の進行方向前方側に配置される一方、排気ダクト60が進行方向後方側に配置される。
吸気ダクト20の前部には、吸気用の開口部21が設けられている。また、吸気ダクト20の後部には、第1シャッターユニット30との連結用の開口部22が設けられている。開口部22は、僅かに上方側に向けて開口している。吸気ダクト20は、燃料電池システム1が搭載される車両の走行に応じて外部の空気を燃料電池システム1内に導入可能に構成されている。
第1シャッターユニット30は、吸気ダクト20の後方側に連結されている。第1シャッターユニット30は、後述する制御ユニット80の制御の下、開閉可能に構成されるシャッターを備える。第1シャッターユニット30は、これらのシャッターの開閉を通じて、燃料電池スタック10に供給される空気量を調整可能に構成されている。
ファンユニット40は、燃料電池システム1の上下方向及び左右方向に配列された複数の冷却用ファン群41、42を備える(図4参照)。ファンユニット40は、後述する制御ユニット80の制御の下、これらの冷却用ファン群41、42を回転させ、燃料電池システム1の前方側から後方側に流れる風(冷却風)を発生させる。この冷却風は、詳細について後述するように、i)燃料電池スタック10を構成する燃料電池セルの冷却、ii)燃料電池スタック10から排出される水素ガス(以下、「パージ水素ガス」という)の希釈、iii)希釈されたパージ水素ガスの排出などに利用される。
第2シャッターユニット50は、ファンユニット40の後方側に連結されている。第2シャッターユニット50は、後述する制御ユニット80の制御の下、開閉可能に構成されるシャッター51を備える(図4参照)。第2シャッターユニット50は、これらのシャッター51の開閉を通じて、排気ダクト60に供給される冷却風の風量を調整可能に構成されている。なお、ファンユニット40及び第2シャッターユニット50の詳細な構成については後述する。
排気ダクト60は、第2シャッターユニット50の後方側に連結されている。排気ダクト60の前部には、第2シャッターユニット50との連結用の開口部61が設けられている。また、排気ダクト60の後部には、排気用の開口部62が設けられている。開口部62は、燃料電池システム1の後方側に向けて開口している。排気ダクト60内の空間は、燃料電池システム1の前後方向に延在する隔壁63により、上下に配置された希釈室64と、排気室65とに分割されている。排気ダクト60は、ファンユニット40からの冷却風に応じ、パージ水素ガスを希釈して大気中に排気可能に構成されている。なお、排気ダクト60の詳細な構成については後述する。
排気ダクト60の下面には、パージ水素ガスの希釈用ファン70が設けられている。希釈用ファン70は、排気ダクト60の下面に形成された開口部66(図4、図5参照)を介して、下方側から上方側に流れる風(希釈風)を発生させる。この希釈風は、排気ダクト60(希釈室64)内に導入されたパージ水素ガスの希釈、排気に利用される。
燃料電池スタック10、ファンユニット40及び第2シャッターユニット50の上方には、制御ユニット80が配置されている。制御ユニット80は、第1シャッターユニット30、ファンユニット40、第2シャッターユニット50及び希釈用ファン70を含む構成要素の制御を行う。制御ユニット80によって燃料電池システム1の構成要素が制御されることにより、燃料電池スタック10に供給される空気量や、ファンユニット40による燃料電池スタック10に対する冷却風の強度、排気ダクト60に供給される冷却風の風量などが調整される。
また、制御ユニット80は、希釈用ファン70の回転数を監視する監視装置としての役割を果たす。例えば、制御ユニット80は、希釈用ファン70における、パージ水素ガスに対する希釈が不十分となる回転数を監視することができる。なお、制御ユニット80における監視装置としての機能の詳細については後述する。
燃料電池スタック10には、図示しない水素配管が接続されている。この水素配管は、水素タンクに連結され、燃料電池スタック10に水素ガスを供給可能に構成されている。燃料電池スタック10には、制御ユニット80の制御の下、吸気ダクト20を介して空気が供給されると共に、水素配管を介して水素ガスが供給される。燃料電池スタック10は、カソード電極に供給される空気中の酸素と、アノード電極に供給される水素ガスとの電気化学反応によって発電する。燃料電池スタック10において、アノード電極から排出される未反応の水素ガスは、循環させて発電に再利用される。
また、燃料電池スタック10には、パージ配管11の一端が接続されている。パージ配管11の他端は、第2シャッターユニット50の下面に接続されている。パージ配管11には、パージ弁12が設けられている。燃料電池システム1においては、燃料電池スタック10内で循環される水素ガスに所定量以上の不純物が蓄積しないように、パージ弁12の開閉が制御される。パージ弁12の開放により、不純物が蓄積された水素ガスがパージ配管11に排出される。パージ配管11に排出された水素ガスは、排出孔52を介して第2シャッターユニット50に排出され、排気ダクト60内に送り込まれる。
ところで、水素ガスは、燃焼性を有し、容量水素濃度が4%を超えると燃え易くなる。このため、パージ配管11を介して排出された水素ガス(パージ水素ガス)を大気中に放出する場合には、容積空間を持つ希釈用部品によって可燃下限濃度である4%以下に希釈して放出する必要がある。希釈性能を向上させるには大きな容積空間で希釈することが考えられる。一方で、小型車両等においては、部品を搭載するスペースが車格に応じて狭いため、希釈用部品を狭いスペースの中に配置する必要がある。小型車両においては、大きな容積空間を必要とせずに希釈性能を満足するような小型化した希釈用部品が望まれる。
本発明者は、このような実情に着目し、燃料電子システム1の構成要素である排気ダクト60内の空間を希釈用の空間として活用することが、燃料電池システム1のコンパクト化及びパージ水素ガスの適切な希釈に寄与することを見出し、本発明に想到した。
すなわち、本発明の骨子は、燃料電池を冷却する冷却風を発生させるファンユニット40の後方側に配置され、パージ水素ガスを大気中に排気する排気ダクト60を、パージ水素ガスが導入される希釈室64と、この希釈室64に連通して設けられ、大気と連通する開口部62を有する排気室65とに分割することである。
本発明によれば、排気ダクト60が希釈室64と排気室65とに分割され、これらの希釈室64と排気室65とが連通されている。一方、排気ダクト60の前方にはファンユニット40が配置されている。このため、燃料電池スタック10から排出されたパージ水素ガスを、希釈室64及び排気室65の2つの空間でファンユニット40からの冷却風と混合できるので、単一の空間で混合する場合と比べて効果的に希釈することができる。また、パージ水素ガスの混合が排気ダクト60内で行われるので、排気ダクト60以外の大きな容積空間を持つ希釈用部品を必要とすることはない。この結果、限られたスペースを有効活用しながら、パージ水素ガスを適切に希釈することができる。
ここで、本実施の形態に係る排気ダクト60の構成について、図2及び図3を参照して説明する。図2は、本実施の形態に係る燃料電池システム1が有する排気ダクト60の斜視図である。図3は、本実施の形態に係る燃料電池システムが有する排気ダクト60の説明図である。図2においては、排気ダクト60を開口部61側から示している。図3Aは、図1に示す矢印A方向から見た矢示図を表し、図3Bは、図1に示すB−B部分の矢示断面図を表し、図3Cは、図1に示すC−C部分の矢示断面図を表している。
図2及び図3に示すように、排気ダクト60内の空間は、隔壁63により上下に分割されている。隔壁63は、排気ダクト60内の空間を区画する仕切り壁として機能する。これにより、隔壁63の下方側には希釈室64が設けられ、隔壁63の上方側には排気室65が設けられる。すなわち、排気ダクト60内においては、排気室65が隔壁63を挟んで希釈室64の上方側の位置に配置されている。なお、隔壁63の一部は、ファンユニット40からの冷却風を効果的に希釈室64及び排気室65に案内するため、排気ダクト60の前端面よりも前方側に突出している。この隔壁63の突出した部分は、第2シャッターユニット50内に配置される(図1参照)。
隔壁63は、排気ダクト60の右側面部60b、左側面部60c及び背面部60dの内面に連続して設けられている。隔壁63の後端であって、両側端部には、一対の連通孔631a、631bが形成されている(図3B参照)。これらの連通孔631a、631bは、隔壁63の一部が切り欠かれて形成され、概して矩形状を有している。これらの連通孔631a、631bを介して排気室65と希釈室64とが連通している。
これらの連通孔631a、631bの間には、対峙部632が設けられている。対峙部632は、希釈用ファン70からの希釈風の送り出し方向に配置されている。言い換えると、対峙部632は、希釈風の送り出し方向の経路上に配置されている。対峙部632は、希釈用ファン70からの希釈風の送り出し方向(上下方向)と直交する方向(前後方向)に延在している。このような対峙部632は、開口部66を介して希釈室64内に送り込まれた希釈風に対峙して、その上方側への移動を規制する役割を果たす。
希釈室64は、排気ダクト60の底面部60a、右側面部60b、左側面部60c及び背面部60dの内面と、隔壁63の下面63aとにより規定される空間で構成される(図3A参照)。希釈室64には、燃料電池スタック10からパージ配管11を介して排出されたパージ水素ガスが導入される。第2シャッターユニット50に排出されたパージ水素ガスは、ファンユニット40からの冷却風によって希釈室64に送り込まれる。
希釈室64には、左右一対のガイド壁671a、671bが設けられている。これらのガイド壁671a、671bは、排気ダクト60の底面部60aの内面と隔壁63の下面63aとに連続して設けられている。右方側のガイド壁671aは、外側(右方側)の端部が排気ダクト60の右側面部60bに連続して設けられ、内側の端部が開放されている。左方側のガイド壁671bは、外側(左方側)の一端が排気ダクト60の左側面部60cに連続して設けられ、内側の他端が開放されている。これらのガイド壁671a、671bは、内側の端部が外側の端部よりも後方側に配置されている(図3C参照)。すなわち、ガイド壁671a、671bは、後方側に向けて内側が傾斜している。これらのガイド壁671a、671bの内側の端部間には、間隙672が形成されている。
排気ダクト60の底面部60aには、円形状を有する開口部66が形成されている。この開口部66は、ガイド壁671a、671b間の間隙672に対応する位置に配置されている。開口部66の下方には、上述した希釈用ファン70が配置される。希釈用ファン70で発生した希釈風は、開口部66を介して希釈室64(排気ダクト60)内に送り込まれる。この希釈風は、希釈室64内を下方側から上方側に流れる。すなわち、希釈用ファン70は、ファンユニット40による冷却風の送り出し方向(前後方向)と直交する方向(上下方向)に希釈風を送り出している。
排気室65は、排気ダクト60の天面部60e、右側面部60b、左側面部60c及び背面部60dの内面と、隔壁63の上面63bとにより規定される空間で構成される(図3A参照)。排気室65を規定する排気ダクト60の背面部60dの上部には、大気と連通する開口部62が形成されている。隔壁63の連通孔631a、631bを介して希釈室64から排気室65に送り込まれたパージ水素ガス(混合ガス)は、この開口部62から排気ダクト60の外部の大気中に放出される。
次に、本実施の形態に係るファンユニット40及び第2シャッターユニット50の構成について、図4を参照して説明する。図4は、本実施の形態に係る燃料電池システム1が有するファンユニット40及び第2シャッターユニット50の説明図である。図4においては、図1に示す矢印D方向から見た矢示図を表している。
図4に示すように、ファンユニット40は、上下に配列された複数の冷却用ファン群41、42を有している。冷却用ファン群41は、ファンユニット40の上段に配置された4つの冷却用ファン41a〜41dを有している。一方、冷却用ファン群42は、ファンユニット40の下段に配置された4つの冷却用ファン42a〜42dを有している。これらの冷却用ファン41a〜41d、42a〜42dが回転させることにより、吸気ダクト20等を介して空気(外気)を冷却風として取り込んで燃料電池スタック10(燃料電池セル)を冷却する一方、取り込んだ空気を排気ダクト60に送り込むことができる。第2シャッターユニット50を挟んで排気ダクト60に連結された状態において、冷却用ファン群41、42は、それぞれ排気室65、希釈室64に対応する位置に配置される。このため、冷却用ファン群41、42は、それぞれ排気室65、希釈室64に冷却風を送り込むことができる。
第2シャッターユニット50は、冷却用ファン41a〜41d、42a〜42dに対向する位置に配置されるシャッター51を有している。なお、図4においては、説明の便宜上、第2シャッターユニット50における左方側のシャッター51のみを示し、右方側のシャッター51を省略している。シャッター51は、上述した制御ユニット80からの開閉信号に応じて開閉可能に構成される。シャッター51の開閉及びその開閉量を制御することにより、排気ダクト60へ送り出される冷却風の風量を調整することができる。
このような構成を有し、燃料電池システム1では、制御ユニット80の制御の下、燃料電池スタック10に吸気ダクト20から空気を取り込む一方、水素配管から水素ガスを供給する。そして、空気中の酸素と水素ガスとの電気化学反応により燃料電池スタック10にて発電を行う。燃料電池スタック10に空気を取り込む際には、ファンユニット40の冷却用ファン41a〜41d、42a〜42dが回転する。これらの冷却用ファン41a〜41d、42a〜42dの回転に伴い、吸気ダクト20を介して空気が吸引されると共に、燃料電池スタック10の冷却後の冷却風が排気ダクト60に送り込まれる。冷却風は、排気ダクト60における希釈室64及び排気室65を通って開口部62から排気される。
燃料電池スタック10からのパージ水素ガスは、パージ配管11を介して第2シャッターユニット50に排出される。詳細について後述するように、第2シャッターユニット50に排出されたパージ水素ガスは、冷却風により排気ダクト60内に送り込まれる。排気ダクト60に送り込まれたパージ水素ガスは、希釈室64及び排気室65に形成された排気経路を通る過程で段階的に希釈され、排気室65の開口部62から排気される。
以下、排気ダクト60内におけるパージ水素ガスの排気経路について、図5〜図7を参照して説明する。図5は、本実施の形態に係る燃料電池システム1が有する排気ダクト60を模式的に示す斜視図である。図6及び図7は、本実施の形態に係る燃料電池システム1が有する排気ダクト60におけるパージ水素ガスの排気経路の説明図である。図6においては、図1に示すE−E部分の矢示断面図を表している。図7においては、図3Aに示すF−F部分の矢示断面図を表している。
なお、図5〜図7においては、説明の便宜上、第2シャッターユニット50に形成されるパージ水素ガスの排出孔52a、52bを示している。また、図5〜図7においては、ファンユニット40による冷却風の流れを矢印A(A1、A2)で示し、パージ水素ガスの流れを矢印Bで示している。さらに、図5〜図7においては、希釈用ファン70による希釈風の流れを矢印Cで示し、冷却風及び希釈風と混合したパージ水素ガスの流れを矢印Dで示している。なお、以下の説明においては、説明の便宜上、冷却風及び希釈風と混合したパージ水素ガスを「混合ガス」と呼ぶものとする。
図5〜図7に示すように、パージ水素ガスの排出孔52a、52bは、第2シャッターユニット50の両側端部の近傍であって、排気ダクト60との連結部分の近傍に形成されている。このため、排出孔52a、52bから排出されたパージ水素ガスは、排気ダクト60(希釈室64)の左右の側端部周辺から進入し易くなっている。
例えば、燃料電池スタック10からパージ水素ガスが排出されると、制御ユニット80は、ファンユニット40及び希釈用ファン70に駆動信号を出力すると共に、第2シャッターユニット50にシャッター開放信号を出力する。これにより、第2シャッターユニット50のシャッターが開放されると共に、ファンユニット40及び希釈用ファン70からそれぞれ冷却風及び希釈風が発生する。この場合、排気室65には冷却用ファン群41から発生する冷却風が送り込まれ(図5に示す矢印A1)、希釈室64には冷却用ファン群42から発生する冷却風が送り込まれる(図5に示す矢印A2)。排出孔52a、52bから排出されたパージ水素ガスは、冷却用ファン群42から発生する冷却風により希釈室64内に送り込まれる。
希釈室64内に導入されたパージ水素ガスは、後方側に進む冷却風により押し流され、ガイド壁671a、671bによって案内される。これにより、パージ水素ガスは、ガイド壁671a、671bに沿って希釈室64の中央側に集められる。そして、パージ水素ガスは、ガイド壁671a、671b間の間隙672まで進む。
底面部60aに形成された開口部66からは、希釈用ファン70から発生した希釈風が送り込まれている。このため、間隙672に進んだパージ水素ガスは、この希釈風により希釈室64の上方側に押し流される。希釈用ファン70は、後方側に流れる冷却風と直交方向である上方側に希釈風を送り込んでいる。このため、希釈風が冷却風に対向する風(逆風)となるのを回避でき、排気ダクト60(希釈室64)内の圧力損失が増大する事態を抑制している。なお、ガイド壁671a、671bに沿って流れる間に、パージ水素ガスは、冷却風に撹拌されて混合される。冷却風との混合によってパージ水素ガスが希釈される。
希釈風の送り出し方向の先には、隔壁63の対峙部632が配置されている。このため、希釈風に押し流されたパージ水素ガスは、対峙部632の下面に突き当たる。このように隔壁63の対峙部632に突き当たることで、パージ水素ガスが希釈風や周囲の空気と撹拌されて希釈される。これにより、パージ水素ガスは、冷却風及び希釈風と混合された混合ガスとなる。希釈室64における冷却風及び希釈風との混合によってパージ水素ガスが更に希釈される。
対峙部632に突き当たって希釈された混合ガスは、更に希釈風により押し流され、対峙部632の側方に配置された連通孔631a、631bに流れ込む。これにより、混合ガスは、連通孔631a、631bを介して排気室65に送り込まれる。排気室65には、冷却用ファン群41から発生する冷却風が送り込まれている。排気室65に流れ込んだ混合ガスは、冷却用ファン群41から発生する冷却風により排気室65の後方側に押し流される。冷却用ファン群41からの冷却風で押し流される間に、混合ガスは、冷却風に撹拌されて更に混合される。冷却風との混合により、混合ガスが更に希釈される。このように希釈された混合ガスは、排気室65に形成された開口部62から大気中に排気される。
このように本実施の形態に係る空冷式燃料電池の排気装置によれば、パージ水素ガスを大気中に排気する排気ダクト60が希釈室64と排気室65とに分割され、これらの希釈室64と排気室65とが連通されている。一方、排気ダクト60の前方にはファンユニット40が配置されている。このため、燃料電池スタック10から排出されたパージ水素ガスを、希釈室64及び排気室65の2つの空間でファンユニット40からの冷却風と混合できるので、単一の空間で混合する場合と比べて効果的に希釈することができる。また、パージ水素ガスの混合は、排気ダクト60内で行われるので、排気ダクト60以外の大きな容積空間を持つ希釈用部品を必要とすることはない。この結果、限られたスペースを有効活用しながら、パージ水素ガスを適切に希釈することができる。
排気ダクト60内において、排気室65は、希釈室64の上方側に配置されている。比重の小さい水素を含むパージ水素ガスは、排気ダクト60内で上方側に移動する傾向にある。本実施の形態によれば、大気中と連通する開口部62を有する排気室65が希釈室64の上方側に配置されるので、排気ダクト60内でパージ水素ガスをスムーズに流動させることができる。この結果、排気ダクト60内におけるパージ水素ガスの滞留を抑制でき、効率よく大気中に放出することができる。
ファンユニット40には、希釈室64の前方側に配置された冷却用ファン群41(冷却用ファン41a〜41d)と、排気室65の前方側に配置された冷却用ファン群42(冷却用ファン42a〜42d)とが設けられている。これにより、希釈室64及び排気室65に個別に冷却風を送り込むことができることから、希釈室64及び排気室65のそれぞれの空間で効果的にパージ水素ガスを希釈することができる。
排気ダクト60には、希釈室64に導入されたパージ水素ガスを希釈する希釈風を発生させる希釈用ファン70が設けられている。このため、希釈用ファン70から発生した希釈風によって、希釈室64内のパージ水素ガスを強制的に撹拌することができる。ファンユニット40から発生する冷却風は、燃料電池スタック10における出力と吸気温度等の要因によって増減する場合がある。本実施の形態によれば、希釈風を発生させる希釈用ファン70を設けたことから、ファンユニット40から発生する冷却風の風量に依存することなく、パージ水素ガスを効果的に希釈することができる。
希釈室64には、希釈室64内に送り込まれた冷却風及び希釈室64に導入されたパージ水素ガスを希釈風の経路上に案内するガイド壁671a、671bが設けられている。このため、ガイド壁671a、671bにより冷却風及びパージ水素ガスが希釈風の経路上に案内される。これにより、パージ水素ガス及び冷却風が希釈室64の室内全体に分散されている場合と比べて、希釈用ファン70からの希釈風によってパージ水素ガスを効果的に撹拌することができる。
この場合において、ファンユニット40は、前方側から後方側に流れる冷却風を発生させる。一方、希釈用ファン70は、下方側から上方側に流れる希釈風を発生させる。すなわち、希釈用ファン70は、ファンユニット40からの冷却風の送り出し方向と直交する方向に希釈風を送り出している。このため、希釈用ファン70による希釈風を冷却風と対向させることなく送り出すことができる。このため、排気ダクト60(希釈室64)内における圧力損失の増大を抑制することができ、パージ水素ガスを効率的に希釈しながら排気室65に送り込むことができる。
排気ダクト60を区画する隔壁63には、希釈用ファン70による希釈風の経路上に対峙部632が設けられている。この対峙部632は、希釈風の送り出し方向と直交して延在している。また、この対峙部632の側方には、希釈室64と排気室65とを連通する連通孔631a、631bが形成されている。このように対峙部632が希釈風の経路上に配置されることから、希釈風によって希釈室64内のパージ水素ガスを対峙部632に突き当てることができる。これにより、希釈室64内のパージ水素ガスの撹拌を促すことができる。そして、このように撹拌して希釈された混合ガスを連通孔631a、631bを介して迂回させながら排気室65に送り込むことができる。このため、希釈室64内のパージ水素ガス(混合ガス)を迂回させることができる。これにより、希釈室64内に導入されたパージ水素ガスの流路を長くでき、希釈効果を向上することができる。
ところで、排気ダクト60に設けた希釈用ファン70は、故障や電力不足等の要因により所望の希釈風を送り込むことができない事態が発生し得る。希釈用ファン70が停止し、或いは、希釈風の風量が所定値以上に弱まると、可燃下限濃度まで希釈されることなくパージ水素ガスが大気中に排気される事態も想定される。
このような希釈用ファン70の不具合を防止するため、制御ユニット80は、希釈用ファン70の回転数を監視している。より具体的には、制御ユニット80は、希釈用ファン70における、パージ水素ガスに対する希釈が不十分となる回転数(不希釈回転数)を監視する。希釈用ファン70が不希釈回転数になったことを検出すると、制御ユニット80は、燃料電池スタック10からのパージ水素ガスの排出の制限や、燃料電池システム1の稼働停止等の対策を取る。これにより、可燃下限濃度を超えるパージ水素ガスが大気中に放出される事態を防止することができる。
ここで、制御ユニット80による希釈用ファン70の不具合を検出した際の動作について説明する。図8は、本実施の形態に係る本実施の形態に係る燃料電池システム1が有する制御ユニット80による希釈用ファン70の不具合を検出した際の動作を説明するためのフロー図である。
燃料電池スタック10からパージ水素ガスが排出された場合、制御ユニット80は、希釈用ファン70の回転数の監視動作を開始する。この監視動作では、制御ユニット80は、図8に示すように、希釈用ファン70の回転数が所定の回転数(ここでは、上述した不希釈回転数)まで低下したかを判定する(ステップST801)。ここで、希釈用ファン70の回転数が不希釈回転数まで低下していることを検出すると(ステップST801:YES)、制御ユニット80は、パージ水素ガスの排出(パージ)を禁止する(ステップST802)。一方、希釈用ファン70の回転数が不希釈回転数より多い場合には(ステップST801:NO)、ステップST801の判定処理を繰り返す。
ステップST802にてパージ水素ガスの排出を禁止した後、制御ユニット80は、不希釈回転数の状態が一定期間継続しているかを判定する(ステップST803)。ここで、不希釈回転数の状態の継続を判定するのは、一時的な希釈用ファン70の回転数の低下による燃料電池システム1の稼働停止を防止するためである。不希釈回転数の状態が一定期間継続している場合(ステップST803:YES)、制御ユニット80は、燃料電池システム1の稼働を停止する(ステップST804)。一方、不希釈回転数の状態が一定期間継続していない場合(ステップST803:NO)、制御ユニット80は、パージ水素ガスの排出(パージ)を許可する(ステップST805)。そして、処理をステップST801に戻し、希釈用ファン70の回転数の判定処理を繰り返す。
このように本実施の形態に係る空冷式燃料電池の排気装置によれば、制御ユニット80により希釈用ファン70の回転数を監視している。このため、希釈用ファン70の回転数がパージ水素ガスの希釈が不十分となる不希釈回転数になる事態を検出することができる。不希釈回転数を検出した場合には、燃料電池スタック10からのパージ水素ガスの排出の制限や、燃料電池システム1の稼働停止等の対策を取ることができる。この結果、可燃下限濃度を超えるパージ水素ガスが大気中に放出される事態を防止することができる。
なお、上記実施の形態において、添付図面に図示される各構成の大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明は、その目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
例えば、上記実施の形態においては、排気ダクト60を隔壁63により上下方向に希釈室64と排気室65とに分割している。しかしながら、排気ダクト60の構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、排気ダクト60は、左右方向に希釈室64及び排気室65に分割してもよい。このように変更する場合であっても、希釈室64及び排気室65の2つの空間でパージ水素ガスを冷却用ファンからの冷却風と混合できるので、単一の空間で混合する場合と比べて効果的に希釈することができる。
また、上記実施の形態においては、ファンユニット40に、排気室65に対応する冷却用ファン群41と、希釈室64に対応する冷却量ファン群42とを備えている。しかしながら、ファンユニット40の構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、希釈室64及び排気室65に共通の冷却用ファンを備えてもよい。また、冷却用ファンの数は、必ずしも複数必要でなく、単一の冷却用ファンを備えるようにしてもよい。
さらに、上記実施の形態においては、希釈室64に導入されたパージ水素ガスの希釈を促すために希釈用ファン70を備えている。しかしながら、パージ水素ガスを希釈するための構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、希釈用ファン70を備えることなく、パージ水素ガスを拡散するための構造を希釈室64に設けるようにしてもよい。パージ水素ガスの拡散するための構造としては、例えば、希釈室64に複雑な流路を設けることが考えられる。この場合には、希釈用ファン70を省略することができるので、部品点数の削減を通じて燃料電池システム1の製造コストの低減などのメリットを享受できる。
さらに、上記実施の形態においては、希釈用ファン70がファンユニット40からの冷却風の送り出し方向(前後方向)と直交する方向(上下方向)に希釈風を発生させる場合について説明している。しかしながら、希釈用ファン70による希釈風の送り出し方向については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。冷却風と対向しないことを条件として、希釈用ファン70は、任意の方向に希釈風を送り出すことができる。
さらに、上記実施の形態においては、隔壁63の対峙部632が、希釈風の送り出し方向(上下方向)と直交する方向(前後方向)に延在する場合について説明している。しかしながら、対峙部632の延在方向については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。希釈風によりパージ水素ガスが撹拌されることを条件として、対峙部632は、任意の角度に延在して設けることができる。
さらに、上記実施の形態においては、パージ水素ガスが排出される排出孔52a、52bが第2シャッターユニット50に設けられる場合について説明している。しかしながら、排出孔52a、52bが形成される構成要素については、第2シャッターユニット50に限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、排出孔52a、52bは、排気ダクト60の一部に形成されていてもよい。この場合には、排気ダクト60内に直接的にパージ水素ガスを排出することができる。
さらに、上記実施の形態においては、排気ダクト60を希釈室64と排気室65とに分割して、パージ水素ガスの希釈効果を向上している。パージ水素ガスの希釈効果を向上することを前提として、任意の変更が可能である。例えば、排気ダクト60の外部に第2の希釈室を設けるようにしてもよい。この場合には、複数の希釈室でパージ水素ガスを希釈することができ、その希釈効果を向上することができる。