JP6604451B1 - リチウムイオン二次電池用正極材料、リチウムイオン二次電池用正極、リチウムイオン二次電池 - Google Patents
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Abstract
Description
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料は、一般式LixFe1−y−zAyMzPO4(但し、AはMn、CoおよびNiからなる群から選択される少なくとも1種、MはMg、Ca、Co、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Geおよび希土類元素からなる群から選択される少なくとも1種、0.85≦x≦1.1、0≦y≦0.85、0≦z≦0.2)で表わされる中心粒子と、前記中心粒子の表面を被覆する炭素質被膜とを含み、表面炭素量が60mg/m2以上かつ150mg/m2以下、結晶子径が60nm以上かつ100nm以下、ラマンスペクトル分析の1580±50cm−1の波数帯域におけるスペクトルのピーク強度(I1580)の1360±50cm−1の波数帯域におけるスペクトルのピーク強度(I1360)に対する比であるR値(I1580/I1360)が0.80以上かつ1.10以下、走査型電子顕微鏡で撮影され、かつ、全面に隙間なく正極材料粒子が撮像された写真の中で、無作為に選択された横6.0μm×縦4.5μmの範囲を1視野としたとき、結晶子径の10倍以上の長径を有する正極活物質一次粒子が20視野当たり8個以下である。
上述の結晶子径の10倍以上の長径を有する正極活物質一次粒子が20視野当たり8個を超えると、充放電末期に異常成長粒子から電流を無理に引き出す頻度が少なくなるため、充放電末期の入出力特性が向上する。
また、結晶子径の10倍以上の長径を有する正極活物質一次粒子が20視野当たり8個以下であり、2個以下であれば、充放電末期に異常成長粒子から電流を無理に引き出す頻度が非常に少なくなるため、充放電末期の入出力特性がより向上する。
さらに、結晶子径の10倍以上の長径を有する正極活物質一次粒子を含まなければ、充放電末期に異常成長粒子から電流を引き出す必要がなく、微細な粒子からのみ電流を引き出すことができるため、充放電末期の入出力特性が著しく向上する。
なお、ここで正極材料粒子とは、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料の粒子のことである。
走査型電子顕微鏡はどのような機種を用いてもよいが、正極活物質一次粒子の輪郭がはっきりと目視できることができる高性能な機種が好ましい。また、試料は白金やカーボン等の蒸着で導電化してもよく、導電化しなくてもよい。しかしながら、正極活物質一次粒子の導電性が低い場合には、チャージアップで正極活物質一次粒子の輪郭がぼやけるのを防ぐために、白金やカーボン等で蒸着することが好ましい。撮影倍率は、映像として出力される撮像範囲が横6.0μm×縦4.5μm以上であればどのような撮影倍率でもよいが、正極活物質一次粒子の長径をできる限り正確に測定するために、撮像範囲が横6.0μm×縦4.5μmにできる限り近い撮影倍率が好ましい。結晶子径の10倍以上の長径を有する正極活物質一次粒子数を判断するための横6.0μm×縦4.5μmの1領域は無作為に選択され、かつ、横6.0μm×縦4.5μmの1領域内は正極活物質一次粒子で敷き詰められ、下地を含まない領域とする。
正極材料粒子(リチウムイオン二次電池用正極材料の粒子)は、一般式LixFe1−y−zAyMzPO4(但し、AはMn、CoおよびNiからなる群から選択される少なくとも1種、MはMg、Ca、Co、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Geおよび希土類元素からなる群から選択される少なくとも1種、0.85≦x≦1.1、0≦y≦0.85、0≦z≦0.2)で表わされる中心粒子と、その中心粒子の表面を被覆する炭素質被膜とを含む。正極材料粒子は、炭素質被膜で被覆された中心粒子(一次粒子)が凝集した二次粒子である。
正極材料粒子の結晶子径が60nm未満では、正極材料粒子の比表面積が増えることで必要になる炭素の質量が増加し、リチウムイオン二次電池の充放電容量が低減する。一方、正極材料粒子の結晶子径が100nmを超えると、正極材料粒子内でのリチウムイオンの移動または電子の移動にかかる時間が長くなる。そのため、リチウムイオン二次電池の内部抵抗が増加して入出力特性が悪化する。
また、正極材料粒子の結晶子径が70nm以上であれば、異常粒子成長が生じ難く、充放電末期の入出力特性が向上するので好ましい。一方、正極材料粒子の結晶子径が90nm以下であれば、正極材料粒子内でのリチウムイオンの移動または電子の移動にかかる時間が短くなり、入出力特性が向上するので好ましい。
表面炭素量が60mg/m2未満では、正極材料粒子間の電子伝導速度が不十分となるため、リチウムイオン二次電池の高速充放電レートにおける放電容量が低くなり、充分な充放電レート性能を実現することができない。一方、表面炭素量が150mg/m2を超えると、電気化学的に不活性な物質の重量比率が大きくなるため、正極材料粒子の単位質量当たりのリチウムイオン二次電池の電池容量が必要以上に低下する。
また、表面炭素量が70mg/m2以上であれば、正極材料粒子間の電子伝導速度が電池として使用する際の電流速度に十分応答できるレベルとなるので、入出力特性が向上する。一方、表面炭素量が120mg/m2以下であれば、正極活物質一次粒子を過剰に炭素で覆ってしまうことによる焼成時の異常粒成長を抑制できるので、入出力特性が向上する。
表面炭素量[g/m2]=炭素量[g/g]/比表面積[m2/g] (1)
比表面積が6.0m2/g以上であると、正極材料粒子の粗大化を抑制して、その粒子内におけるリチウムの拡散速度を速くすることができる。これにより、リチウムイオン二次電池の電池特性を改善することができる。一方、比表面積が30.0m2/g以下であると、正極内の空隙を少なくすることができ、体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料を構成する中心粒子は、一般式LixFe1−y−zAyMzPO4(但し、AはMn、CoおよびNiからなる群から選択される少なくとも1種、MはMg、Ca、Co、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Geおよび希土類元素からなる群から選択される少なくとも1種、0.85≦x≦1.1、0≦y≦0.85、0≦z≦0.2)で表わされる正極活物質からなる。
なお、希土類元素とは、ランタン系列であるLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、YbおよびLuの15元素のことである。
中心粒子(一次粒子)の平均粒子径が30nm以上であれば、正極内の空隙を少なくすることができ、体積当たりのエネルギー密度を高めることができる。一方、中心粒子(一次粒子)の平均粒子径が200nm以下であれば、正極材料粒子の粗大化を抑制して、正極材料粒子内におけるリチウムの拡散速度を速くすることができる。これにより、リチウムイオン二次電池の電池特性を改善することができる。
中心粒子の一次粒子の形状が球状であることで、リチウムイオン二次電池用正極材料と、バインダー樹脂(結着剤)と、溶剤とを混合して、正極材料ペーストを調製する際の溶剤量を低減することができる。また、中心粒子の一次粒子の形状が球状であることで、正極材料ペーストの電極集電体への塗工が容易となる。さらに、中心粒子の一次粒子の形状が球状であれば、中心粒子の一次粒子の表面積が最小となり、正極材料ペーストにおけるバインダー樹脂(結着剤)の配合量を最小限にすることができる。その結果、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料を用いた正極の内部抵抗を小さくすることができる。また、中心粒子の一次粒子の形状が球状であれば、正極材料を最密充填し易くなるため、正極の単位体積当たりのリチウムイオン二次電池用正極材料の充填量が多くなる。その結果、正極密度を高くすることができ、高容量のリチウムイオン二次電池が得られる。
炭素質被膜は、中心粒子の表面を被覆する。
中心粒子の表面を炭素質被膜で被覆することにより、リチウムイオン二次電池用正極材料の電子伝導性を向上させることができる。
炭素質被膜の厚みが0.2nm以上であると、炭素質被膜の厚みが薄すぎるために所望の抵抗値を有する膜を形成することができなくなることを抑制できる。そして、リチウムイオン二次電池用正極材料としての導電性を確保することができる。一方、炭素質被膜の厚みが10nm以下であると、リチウムイオン二次電池用正極材料の単位質量当たりの電池容量が低下することを抑制できる。
また、炭素質被膜の厚みが0.2nm以上かつ10nm以下であると、リチウムイオン二次電池用正極材料を最密充填し易くなるため、正極の単位体積当たりのリチウムイオン二次電池用正極材料の充填量が多くなる。その結果、正極密度を高くすることができ、高容量のリチウムイオン二次電池が得られる。
中心粒子に対する炭素質被膜の被覆率は60%以上かつ95%以下であることが好ましく、80%以上かつ95%以下であることがより好ましい。炭素質被膜の被覆率が60%以上であることで、炭素質被膜の被覆効果が十分に得られる。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料の製造方法(以下、単に「正極材料の製造方法」と言うことがある。)は、一般式LixFe1−y−zAyMzPO4(但し、AはMn、CoおよびNiからなる群から選択される少なくとも1種、MはMg、Ca、Co、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Geおよび希土類元素からなる群から選択される少なくとも1種、0.85≦x≦1.1、0≦y≦0.85、0≦z≦0.2)正極活物質からなる中心粒子を含むリチウムイオン二次電池用正極材料の製造方法であり、リチウム塩、Feを含む金属塩、Aを含む化合物、Mを含む化合物およびリン酸化合物のうち、少なくともリチウム塩、Feを含む金属塩およびリン酸化合物を分散媒中に分散させて分散液を調製し、耐圧容器内で分散液を加熱し、正極活物質の前駆体を得る工程(A)と、正極活物質の前駆体に、炭素質被膜源となる有機化合物を添加して混合物を調製する工程(B)と、混合物を焼成鞘に入れて焼成する工程(C)とを含む。混合物を調製する工程(B)は、正極活物質の前駆体より熱伝導率が高い熱伝導補助物質をさらに添加して混合物を調製する工程である。あるいは、混合物を焼成する工程(C)は、正極活物質の前駆体より熱伝導率が高い熱伝導補助物質を混合物に添加した後、混合物を焼成する工程である。
本実施形態の正極材料の製造方法における工程(A)では、リチウム塩、Feを含む金属塩、Aを含む化合物、Mを含む化合物およびリン酸化合物のうち、少なくともリチウム塩、Feを含む金属塩およびリン酸化合物を分散媒中に分散させて分散液を調製し、耐圧容器内で分散液を加熱し、正極活物質の前駆体を得る。
Li元素に換算したリチウム塩、Fe元素に換算したFeを含む金属塩、A元素に換算したAを含む化合物、M元素に換算したMを含む化合物およびリン元素に換算したリン酸化合物のモル比(Li:Fe:A:M:P)は、好ましくは1以上かつ4以下:0以上かつ1.5以下:0以上かつ1.5以下:0以上かつ0.2以下:1であり、より好ましくは2.5以上かつ3.5以下:0以上かつ1.1以下:0以上かつ1.1以下:0以上かつ0.1以下:1である。
これらの原料を均一に混合する点を考慮すると、それぞれの原料の水溶液を調製し、それらの水溶液を混合することによって分散液を調製することが好ましい。
高純度であり、結晶性が高くかつ非常に微細な中心粒子を得る必要があることから、この分散液における原料のモル濃度は、1.1mol/L以上かつ2.2mol/L以下であることが好ましい。
なお、リン酸リチウム(Li3PO4)は、分散液の調製用のリン酸化合物としても用いることができる。
水性溶媒としては、リチウム塩、Feを含む金属塩、Aを含む金属塩、Mを含む金属塩、リン酸化合物を溶解させることのできる溶媒であればよく、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール:IPA)、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングルコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングルコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングルコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類等を挙げることができる。これらの水性溶媒は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
上記の原料を溶媒に分散させる装置としては、例えば、遊星ボールミル、振動ボールミル、ビーズミル、ペイントシェーカーおよびアトライタ等の媒体粒子を高速で攪拌する媒体攪拌型分散装置が好適に用いられる。
本実施形態の正極材料の製造方法における工程(B)では、上記の正極活物質の前駆体に、炭素質被膜源となる有機化合物を添加して混合物を調製する。
前駆体に対する有機化合物の配合量が0.15質量部以上であると、この有機化合物を熱処理することにより生じる炭素質被膜の中心粒子の表面における被覆率を80%以上にすることができる。これにより、リチウムイオン二次電池の高速充放電レートにおける放電容量を高くすることができ、充分な充放電レート性能を実現できる。一方、前駆体に対する有機化合物の配合量が15質量部以下であると、相対的に活物質の配合比が低下してリチウムイオン二次電池の容量が低くなることを抑制できる。また、前駆体に対する有機化合物の配合量が15質量部以下であると、中心粒子に対する炭素質被膜の過剰な担持により、リチウムイオン二次電池用正極材料の嵩密度が高くなることを抑制できる。なお、リチウムイオン二次電池用正極材料の嵩密度が高くなると、電極密度が低下し、単位体積当たりのリチウムイオン二次電池の電池容量が低下する。
多価アルコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリンおよびグリセリン等が挙げられる。
この噴霧熱分解法では、速やかに乾燥して略球状の造粒体を生成するためには、噴霧の際の液滴の粒子径は、0.01μm以上かつ100μm以下であることが好ましい。
本実施形態の正極材料の製造方法における工程(C)では、混合物を焼成容器に入れて焼成する。
TOP温度は、好ましくは700℃以上かつ850℃以下であり、より好ましくは720℃以上かつ830℃以下ある。
TOP温度が700℃以上であると、炭素の結晶化が進行するため、正極活物質一次粒子表面の炭素の電子伝導性を向上することができる。一方、TOP温度が850℃以下であると、混合物の一部が炭素で還元されて純鉄、酸化鉄、リン化鉄等の低価数鉄系不純物が生成してしまうことを抑制できる。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極(以下、単に「正極」と言うことがある。)は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料を含む。より詳細には、本実施形態の正極は、金属箔からなる電極集電体と、その電極集電体上に形成された正極合剤層と、を備え、正極合剤層が、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料を含有するものである。すなわち、本実施形態の正極は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料を用いて、電極集電体の一主面に正極合剤層が形成されてなるものである。
本実施形態の正極は、主に、リチウムイオン二次電池用正極として用いられる。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極の製造方法は、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料を用いて、電極集電体の一主面に正極合剤層を形成できる方法であれば特に限定されない。本実施形態の正極の製造方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
まず、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料と、バインダー樹脂からなる結着剤と、溶媒とを混合して、正極材料ペーストを調製する。この際、本実施形態における正極材料ペーストには、必要に応じて、カーボンブラック等の導電助剤を添加してもよい。
結着剤、すなわち、バインダー樹脂として、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)樹脂、フッ素ゴム等が好適に用いられる。
結着剤の配合量が1質量部以上であると、正極合剤層と電極集電体との間の結着性を充分に高くすることができる。これにより、正極合剤層の圧延形成時等において正極合剤層の割れや脱落が生じることを抑制することができる。また、リチウムイオン二次電池の充放電過程において、正極合剤層が電極集電体から剥離し、電池容量および充放電レートが低下することを抑制することができる。一方、結着剤の配合量が30質量部以下であると、リチウムイオン二次電池用正極材料の内部抵抗が低下し、高速充放電レートにおける電池容量が低下することを抑制できる。
導電助剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、気相成長炭素繊維(VGCF;Vapor Grown Carbon Fiber)およびカーボンナノチューブ等の繊維状炭素からなる群から選択される少なくとも1種が用いられる。
本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極材料を含む正極材料ペーストに用いられる溶媒は、結着剤の性質に応じて適宜選択される。溶媒を適宜選択することにより、正極材料ペーストを、電極集電体等の被塗布物に対して塗布し易くすることができる。
溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール:IPA)、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノールおよびジアセトンアルコール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートおよびγ−ブチロラクトン等のエステル類;ジエチルエーテル、エチレングルコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングルコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングルコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテルおよびジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセチルアセトンおよびシクロヘキサノン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミドおよびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等のアミド類;並びに、エチレングリコール、ジエチレングリコールおよびプロピレングリコール等のグリコール類等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
正極材料ペーストにおける溶媒の含有率が上記の範囲内であると、正極形成性に優れ、かつ電池特性に優れた正極材料ペーストを得ることができる。
その後、塗膜を加圧圧着し、乾燥して、電極集電体の一主面に正極合剤層を有する正極を作製する。
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、非水電解質と、を備え、正極が、本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極である。具体的には、本実施形態のリチウムイオン二次電池は、正極としての本実施形態のリチウムイオン二次電池用正極と、負極と、セパレータと、非水電解質と、を備えてなる。
本実施形態のリチウムイオン二次電池では、負極、非水電解質およびセパレータは特に限定されない。
負極としては、例えば、金属Li、天然黒鉛、ハードカーボン等の炭素材料、Li合金およびLi4Ti5O12、Si(Li4.4Si)等の負極材料を含むものが挙げられる。
非水電解質としては、例えば、炭酸エチレン(エチレンカーボネート;EC)と、炭酸エチルメチル(エチルメチルカーボネート;EMC)とを、体積比で1:1となるように混合し、得られた混合溶媒に六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を、例えば、濃度1モル/dm3となるように溶解したものが挙げられる。
セパレータとして、例えば、多孔質プロピレンを用いることができる。
また、非水電解質とセパレータの代わりに、固体電解質を用いてもよい。
「リチウムイオン二次電池用正極材料の合成」
2molのリン酸リチウム(Li3PO4)と、2molの硫酸鉄(II)(FeSO4)とに水を加え、全体量が4Lになるように混合し、均一なスラリー状の混合物を調製した。
次いで、この混合物を容量8Lの耐圧密閉容器に収容し、140℃にて1時間、水熱合成し、沈殿物を生成した。
次いで、この沈殿物を水洗し、ケーキ状の正極活物質を得た。
次いで、この正極活物質150g(固形分換算)に、有機化合物としてのポリエチレングリコール12gと、純水と、媒体粒子としての直径1mmのジルコニアボールとを用いて、ビーズミルにて1時間、分散処理を行い、均一なスラリーを調製した。
次いで、このスラリーを160℃の大気雰囲気中に噴霧し、乾燥して、有機物で被覆された正極活物質の前駆体の造粒体を得た。
次いで、得られた正極活物質の前駆体の造粒体を、窒素雰囲気下、昇温速度300℃/時間で550℃まで昇温した後、10時間保持した。その後、昇温速度300℃/時間で800℃まで昇温して、10分間保持したのち、すぐに自然冷却して、炭素質被膜で被覆された実施例1の正極材料1を得た。
溶媒であるN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)に、正極材料1と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)とを、ペースト中の質量比で、正極材料1:AB:PVdF:NMP=36:2:2:60となるように加えて、これらを混合し、混練機(商品名:あわとり練太郎、シンキー社製)を用いて、公転2000rpmの条件にて分散モードで10分混練した後、脱泡モードで5分混練し、正極材料ペースト(正極用)を調製した。
この正極材料ペースト(正極用)を、厚さ30μmのアルミニウム箔(電極集電体)の表面に塗布して塗膜を形成し、その塗膜を真空雰囲気中にて120℃にて12時間乾燥し、アルミニウム箔の表面に正極合剤層を形成した。正極と負極の容量比が1.2(負極/正極)となるように正極合剤層の厚さを調整した。
その後、正極合剤層を、正極密度が1.8g/mLとなるように、所定の圧力にて加圧した後、成形機を用いて正極面積9cm2の正方形状に打ち抜き、実施例1の正極を作製した。
調製した負極材料ペースト(負極用)を、厚さ10μmの銅箔(電極集電体)の表面に塗布して塗膜を形成し、その塗膜を乾燥し、銅箔表面に負極合剤層を形成した。負極合剤層の目付量が4.4mg/cm2となるよう塗布厚を調整した。
その後、負極合剤層を、負極密度が1.42g/mLとなるように、所定の圧力にて加圧した後、成形機を用いて負極面積9.6cm2の正方形状に打ち抜き、実施例1の負極を作製した。
正極活物質の前駆体の造粒体を焼成する際に、最高温度の保持時間を20分としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の正極材料2を得た。
正極材料2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2のリチウムイオン二次電池を作製した。
正極活物質の前駆体の造粒体を焼成する際に、最高温度の保持時間を30分としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の正極材料3を得た。
正極材料3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例3のリチウムイオン二次電池を作製した。
有機化合物のポリエレングリコールの配合量を10g、正極活物質の前駆体の造粒体を焼成する際に、最高温度の保持時間を0分としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例4の正極材料4を得た。
正極材料4を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例4のリチウムイオン二次電池を作製した。
有機化合物のポリエレングリコールの配合量を20g、正極活物質の前駆体の造粒体を焼成する際に、最高温度の保持時間を0分としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例5の正極材料5を得た。
正極材料5を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例5のリチウムイオン二次電池を作製した。
有機化合物のポリエレングリコールの配合量を25gしたこと以外は実施例4と同様にして、実施例6の正極材料6を得た。
正極材料6を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例6のリチウムイオン二次電池を作製した。
水熱合成温度を120℃、正極活物質の前駆体の造粒体を焼成する際に、最高温度の保持時間を0分としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例7の正極材料7を得た。
正極材料7を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例7のリチウムイオン二次電池を作製した。
水熱合成温度を170℃、正極活物質の前駆体の造粒体を焼成する際に、最高温度の保持時間を0分としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例8の正極材料8を得た。
正極材料8を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例8のリチウムイオン二次電池を作製した。
550℃の保持時間を100時間、正極活物質の前駆体の造粒体を焼成する際に、最高温度の保持時間を0分としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例9の正極材料9を得た。
正極材料9を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例9のリチウムイオン二次電池を作製した。
正極活物質の前駆体の造粒体を焼成する際に、最高温度を760℃、最高温度の保持時間を0分としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例10の正極材料10を得た。
正極材料10を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例10のリチウムイオン二次電池を作製した。
正極活物質の前駆体の造粒体を焼成する際に、最高温度を720℃、最高温度の保持時間を0分としたこと以外は実施例1と同様にして、実施例11の正極材料11を得た。
正極材料11を用いたこと以外は実施例1と同様にして、実施例11のリチウムイオン二次電池を作製した。
550℃の保持時間を0時間、正極活物質の前駆体の造粒体を焼成する際に、最高温度の保持時間を120分としたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の正極材料21を得た。
正極材料21を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例1のリチウムイオン二次電池を作製した。
正極活物質の前駆体の造粒体を焼成する際に、最高温度の保持時間を120分としたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2の正極材料22を得た。
正極材料22を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例2のリチウムイオン二次電池を作製した。
正極活物質の前駆体の造粒体を焼成する際に、最高温度の保持時間を60分としたこと以外は実施例1と同様にして、比較例3の正極材料23を得た。
正極材料23を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例3のリチウムイオン二次電池を作製した。
有機化合物のポリエレングリコールの配合量を8g、正極活物質の前駆体の造粒体を焼成する際に、最高温度の保持時間を0分としたこと以外は実施例1と同様にして、比較例4の正極材料24を得た。
正極材料24を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例4のリチウムイオン二次電池を作製した。
有機化合物のポリエレングリコールの配合量を30g、正極活物質の前駆体の造粒体を焼成する際に、最高温度の保持時間を0分としたこと以外は実施例1と同様にして、比較例5の正極材料25を得た。
正極材料25を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例5のリチウムイオン二次電池を作製した。
水熱合成温度を110℃、正極活物質の前駆体の造粒体を焼成する際に、最高温度の保持時間を0分としたこと以外は実施例1と同様にして、比較例6の正極材料26を得た。
正極材料26を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例6のリチウムイオン二次電池を作製した。
水熱合成温度を190℃、正極活物質の前駆体の造粒体を焼成する際に、最高温度の保持時間を0分としたこと以外は実施例1と同様にして、比較例7の正極材料27を得た。
正極材料27を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例7のリチウムイオン二次電池を作製した。
550℃の保持時間を100時間、正極活物質の前駆体の造粒体を焼成する際に、最高温度を810℃、最高温度の保持時間を0分としたこと以外は実施例1と同様にして、比較例8の正極材料28を得た。
正極材料28を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例8のリチウムイオン二次電池を作製した。
正極活物質の前駆体の造粒体を焼成する際に、最高温度を710℃、最高温度の保持時間を0分としたこと以外は実施例1と同様にして、比較例9の正極材料29を得た。
正極材料29を用いたこと以外は実施例1と同様にして、比較例9のリチウムイオン二次電池を作製した。
実施例1〜実施例11および比較例1〜比較例9のリチウムイオン二次電池用正極材料およびリチウムイオン二次電池について、以下の通り、評価を行った。
表面炭素量は、炭素分析計(炭素硫黄分析装置:EMIA−810W(商品名)、堀場製作所社製)を用いて測定される炭素量[g/g]、および比表面積計を用いて、窒素(N2)吸着によるBET法により測定される比表面積[m2/g]から下記式を用いて算出される。
表面炭素量[g/m2]=炭素量[g/g]/比表面積[m2/g]
リチウムイオン二次電池用正極材料の表面炭素量(正極材料粒子における表面炭素量)を表1に示す。
X線回折測定により測定した粉末X線回折図形の(020)面の回折ピークの半値幅、および回折角(2θ)を用いて、シェラーの式により結晶子径を算出した。結果を表1に示す。
無作為に選択されたリチウムイオン二次電池用正極材料の粉末をラマン分光測定用のプレパラートにスパチュラで耳かき一杯分置き、粉の集合の四隅と中心をそれぞれ測定点の視野として下記条件にて測定を行った。プレパラートに置く測定対象を、別の無作為に選択されたリチウムイオン二次電池用正極材料の粉末に置き換えて、同様の測定を計5回繰り返した。得られたラマンスペクトル分析の分析結果から、1580±50cm−1の波数帯域におけるスペクトルのピーク強度(I1580)と、1360±50cm−1の波数帯域におけるスペクトルのピーク強度(I1360)とから、ピーク強度(I1580)のピーク強度(I1360)に対する比であるR値(I1580/I1360)を算出した。結果を表1に示す。
<測定条件>
機器:NRS−3100
露光時間:50秒
積算回数:10回
中心波数:1300cm−1
スリット:0.01mm×6mm
対物レンズ倍率:100倍
減光器:光学濃度(OD)3
走査型電子顕微鏡を用いて、リチウムイオン二次電池用正極材料を20000倍にて、撮影した写真において、正極活物質一次粒子で敷き詰められ、下地を撮像に含まない横6.0μm×縦4.5μmの視野を無作為に20視野選択し、結晶子径の10倍以上の長径を有するリチウムイオン二次電池用正極材料粒子の一次粒子が20視野当たりにいくつあるかを数えた。結果を表1に示す。
実施例1について、リチウムイオン二次電池用正極材料粒子の走査型電子顕微鏡像を図2に示す。また、比較例1について、リチウムイオン二次電池用正極材料粒子の走査型電子顕微鏡像を図3に示す。
リチウムイオン二次電池を、25℃環境下で、電流値2Cにて電池電圧が3.6Vになるまで定電流充電した後、定電圧充電に切り替え、電流値が0.2Cになるまで3.6V定電圧充電して得られた充電曲線において、全充電容量に対して20%の充電容量となる地点の電圧をSOC20%における充電電圧[V]として評価し、定電圧充電容量を全充電容量で除したのち、100を乗じた値を定電圧充電比率として評価した。
SOC20%における充電電圧が3.30V以下である場合は充放電初期入出力特性を「〇」、3.30Vを超え、かつ、3.33V未満である場合は充放電初期入出力特性を「△」、3.33V以上である場合は充放電初期入出力特性を「×」として評価した。なお、SOC20%における充電電圧の小数点3桁以下は四捨五入した。
定電圧充電比率が4%以下である場合は充放電末期入出力特性を「〇」、4%を超え、かつ、5%以下である場合は充放電末期入出力特性を「△」、5%を超える場合は充放電末期入出力特性を「×」として評価した。なお、充放電末期入出力特性の小数点2桁以下は四捨五入した。
結果を表1に示す。また、実施例1および比較例1における充放電試験時の電流値2C充電曲線を図1に示す。図1に示す曲線は、縦軸を電池電圧〔V〕、横軸をSOC[%](充電容量/全充電容量×100)とした曲線である。
また、実施例1〜実施例11と、比較例4および比較例5とを比較すると、表面炭素量が60mg/m2以上かつ150mg/m2以下であると、充放電初期および充放電末期の入出力特性に優れることが確認された。
また、実施例1〜実施例11と、比較例6および比較例7とを比較すると、結晶子径が60nm以上かつ100nm以下であると、充放電初期および充放電末期の入出力特性に優れることが確認された。
また、実施例1〜実施例11と、比較例8および比較例9とを比較すると、R値(I1580/I1360)が0.80以上かつ1.10以下、充放電初期および充放電末期の入出力特性に優れることが確認された。
Claims (9)
- 一般式LixFe1−y−zAyMzPO4(但し、AはMn、CoおよびNiからなる群から選択される少なくとも1種、MはMg、Ca、Co、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Geおよび希土類元素からなる群から選択される少なくとも1種、0.85≦x≦1.1、0≦y≦0.85、0≦z≦0.2)で表わされる中心粒子と、前記中心粒子の表面を被覆する炭素質被膜とを含み、
表面炭素量が60mg/m2以上かつ150mg/m2以下、
結晶子径が60nm以上かつ100nm以下、
ラマンスペクトル分析の1580±50cm−1の波数帯域におけるスペクトルのピーク強度(I1580)の1360±50cm−1の波数帯域におけるスペクトルのピーク強度(I1360)に対する比であるR値(I1580/I1360)が0.80以上かつ1.10以下、
走査型電子顕微鏡で撮影され、かつ、全面に隙間なく正極材料粒子が撮像された写真の中で、無作為に選択された横6.0μm×縦4.5μmの範囲を1視野としたとき、結晶子径の10倍以上の長径を有する正極活物質一次粒子が20視野当たり8個以下であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極材料。 - 前記結晶子径の10倍以上の長径を有する正極活物質一次粒子が20視野当たり2個以下であることを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料。
- 前記結晶子径の10倍以上の長径を有する正極活物質一次粒子を含まないことを特徴とする請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料。
- 前記表面炭素量が70mg/m2以上かつ120mg/m2以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料。
- 前記R値(I1580/I1360)が0.80以上かつ1.00以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料。
- 前記結晶子径が70nm以上かつ90nm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料。
- 前記中心粒子がLiFePO4からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料。
- 電極集電体と、該電極集電体上に形成された正極合剤層と、を備えたリチウムイオン二次電池用正極であって、
前記正極合剤層は、請求項1〜7のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用正極材料を含有することを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極。 - 正極、負極および非水電解質を有するリチウムイオン二次電池であって、
前記正極が、請求項8に記載のリチウムイオン二次電池用正極であることを特徴とするリチウムイオン二次電池。
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