以下、本発明の実施形態に係る光波長変換シート、バックライト装置および表示装置について、図面を参照しながら説明する。本明細書において、「シート」、「フィルム」等の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「フィルム」は、シートとも呼ばれるような部材も含む意味で用いられ、また「シート」はフィルムとも呼ばれ得るような部材も含む意味で用いられる。図1は本実施形態に係る光波長変換シートの概略構成図であり、図2は実施形態に係る光波長変換シートの作用を示す模式図であり、図3および図4は本実施形態に係る他の光波長変換シートの概略構成図である。
<<<光波長変換シート>>>
図1に示される光波長変換シート10は、入射する光のうち一部の光の波長を他の波長に変換し、入射した光の他の一部および波長変換された光を出射させるシートである。光波長変換シート10は、光波長変換層11と、光波長変換層11の両面側に設けられ、かつ水分および酸素の透過を抑制するバリアフィルム12、13と、バリアフィルム12、13における光波長変換層11側の面とは反対側の面に設けられた光拡散層14、15とを備えている。光波長変換シート10においては、光拡散層14、15の表面が光波長変換シート10の表面を構成している。
光波長変換シート10は、光拡散層14/バリアフィルム12/光波長変換層11/バリアフィルム13/光拡散層15の構造となっているが、光波長変換シートが光波長変換層およびバリアフィルムを有していれば、光波長変換シートの構造は特に限定されない。例えば、光波長変換シートは、光拡散層/バリアフィルム/光波長変換層/バリアフィルム、またはバリアフィルム/光波長変換層/バリアフィルムの構成であってもよい。
光波長変換シート10においては、単位面積当たりの光波長変換シート10に含まれる揮発性有機化合物の残存量が10mg/m2以上500mg/m2以下となっている。本明細書における「揮発性有機化合物」とは、常温で蒸発しやすい性質を有する有機化合物を意味する。例えば、揮発性有機溶媒としては、沸点が75℃以上の有機化合物が挙げられる。沸点が75℃以上の有機化合物の中でも、沸点が170℃以下の有機化合物が好ましい。また、「揮発性有機化合物の残存量」とは、光波長変換シートに2種以上の揮発性有機化合物が残存している場合には、2種以上の揮発性有機化合物の合計の残存量を意味するものとする。
揮発性有機化合物は、主に、光波長変換シートを形成する際に用いられた溶媒、例えば光波長変換層用組成物に含まれていた溶媒である。したがって、光波長変換シートに残存する揮発性有機化合物とは、光波長変換シート中に残っている残留溶媒である。光波長変換シートに含まれる揮発性有機化合物の量が10mg/m2未満であると、量子ドットの経時劣化を抑制できないおそれがあり、また光波長変換シートに含まれる揮発性有機化合物の量が500g/m3を越えると、硬化不足になりやすく、光波長変換層の膜硬度やバリアフィルムとの剥離強度の低下により、光波長変換層とバリアフィルムとの密着性を確保できないおそれがある。光波長変換シート10に含まれる揮発性有機化合物の量の下限は20mg/m2以上であることが好ましく、50mg/m2以上であることがより好ましい。光波長変換シート10に含まれる揮発性有機化合物の量の上限は300g/m2以下であることが好ましく、100g/m3以下であることがより好ましい。
光波長変換シート10に含まれる揮発性有機化合物の残存量は、下記残存量測定法によって測定される。
(残存量測定法)
まず、1cm×2cm相当の光波長変換シートを内容量20mlバイヤル瓶に入れて、密封する。ここで、光波長変換層の両面にバリアフィルムが存在していると、光波長変換層中に残存する揮発性有機化合物が揮発しにくいため、光波長変換シートから一方のバリアフィルムを剥離して、この剥離したバリアフィルムと、光波長変換層が露出した光波長変換シートの残りの部分とに分けた状態で、光波長変換シート(剥離したバリアフィルムおよび光波長変換シートの残りの部分)を前記バイヤル瓶に入れるものとする。そして、光波長変換シートが入り、かつ密閉された前記バイヤル瓶を160℃で15分間加熱した後、前記バイヤル瓶内の気体を一定量抜き取り、ガスクロマトグラフィー(アジレント・テクノロジ−株式会社製6890N GC System)に装填し、この装填された気体に含まれる揮発性有機化合物を定量し、この光波長変換シート1m2当たりに含まれている上記揮発性有機化合物の残存量(mg/m2)を算出する。
揮発性有機化合物の残存量が10mg/m2以上500mg/m2以下の光波長変換シート10は、硬化によって光波長変換層11となる光波長変換層用組成物中の溶剤としての揮発性有機化合物の量および/または光波長変換層用組成物の乾燥温度を調整することによって得ることができる。
揮発性有機化合物は、極性の揮発性有機化合物および非極性の揮発性有機化合物のいずれであってもよいが、空気中の水分や酸素による量子ドットの劣化をより抑制する観点から、非極性の揮発性有機化合物であることが好ましい。また、揮発性有機化合物は極性の揮発性有機化合物および非極性の揮発性有機化合物の混合物であってもよい。本明細書における「極性の揮発性有機化合物」とは、20℃での比誘電率が6以上の揮発性有機化合物を意味し、「非極性の揮発性有機化合物」とは、20℃での比誘電率が6未満の揮発性有機化合物を意味する。
極性の揮発性有機化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール等のアルコ−ル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類等が挙げられる。これらの中でも、量子ドットの分散性を向上させる観点から、エタノールが好ましい。
非極性溶媒としては、例えば、トルエン、シクロヘキサン等が挙げられる。これらの中でも、量子ドットの分散性を向上させる観点から、トルエンが好ましい。
光波長変換シート10の平均厚みは、10μm以上500μm以下となっていることが好ましい。光波長変換シート10の平均厚みがこの範囲であれば、バックライト装置の軽量化および薄膜化に適している。
光波長変換シート10の平均厚みは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査透過型電子顕微鏡(STEM)でランダムに20ヶ所撮影した断面の画像を用いて算出できる。これらの中でも、光波長変換シート10の膜厚がμmオーダーであることを考慮すると、SEMを用いることが好ましい。SEMの場合、加速電圧は30kV、倍率は1000〜7000倍とすることが好ましく、TEM又はSTEMの場合、加速電圧は30kV、倍率は5万〜30万倍とすることが好ましい。
<<光波長変換層>>
光波長変換層11においては、光波長変換シート10に含まれる揮発性有機化合物の残存量を規定した理由と同様の理由から、単位面積当たりの光波長変換層11に含まれる揮発性有機化合物の残存量が10mg/m2以上500mg/m2以下となっていることが好ましい。光波長変換層11に含まれる揮発性有機化合物の量の下限は20mg/m2以上であることがより好ましく、50mg/m2以上であることがさらに好ましい。光波長変換層11に含まれる揮発性有機化合物の量の上限は300g/m2以下であることがより好ましく、100g/m3以下であることがさらに好ましい。
光波長変換層11に含まれる揮発性有機化合物の残存量は、上記残存量測定法によって測定されるが、光波長変換層11に含まれる揮発性有機化合物の残存量を測定する場合には、光波長変換シートをバイヤル瓶に入れるのではなく、光波長変換シートからバリアフィルムおよび光拡散層を剥離して、光波長変換層のみ状態とし、光波長変換層のみをバイヤル瓶に入れる。
光波長変換層11は、バインダ樹脂16と、バインダ樹脂16に分散され、入射した光の波長変換を行うための量子ドット17とを含んでいる。また、光波長変換層11は、光散乱性粒子18をさらに含んでいることが好ましい。
光波長変換層11は膜厚がほぼ均一となっている。光波長変換層11の平均膜厚は、10μm以上150μm以下となっていることが好ましい。光波長変換層11の膜厚がこの範囲であれば、バックライト装置の軽量化および薄膜化に適している。光波長変換層11の膜厚は、光波長変換シートの断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、20箇所ランダムに撮影し、その断面の画像から算出することができる。光波長変換層11の平均膜厚の下限は、30μm以上であることがより好ましい。
<バインダ樹脂>
バインダ樹脂16としては、特に限定されないが、硬化性バインダ樹脂前駆体の硬化物(重合物、架橋物)が挙げられる。硬化性バインダ樹脂前駆体としては、光重合性化合物および/またはエポキシ樹脂等の熱硬性樹脂が挙げられる。光重合性化合物は、光重合性官能基を少なくとも1つ有するものである。本明細書における、「光重合性官能基」とは、光照射により重合反応し得る官能基である。光重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合が挙げられる。なお、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」および「メタクリロイル基」の両方を含む意味である。また、光重合性化合物を重合する際に照射される光としては、可視光線、並びに紫外線、X線、電子線、α線、β線、およびγ線のような電離放射線が挙げられる。
光重合性化合物としては、光重合性モノマー、光重合性オリゴマー、または光重合性プレポリマーが挙げられ、これらを適宜調整して、用いることができる。光重合性化合物としては、光重合性モノマーと、光重合性オリゴマーまたは光重合性プレポリマーとの組み合わせが好ましい。
光重合性モノマーは、重量平均分子量が1000以下のものである。光重合性モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を含むモノマーや、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。
光重合性オリゴマーは、重量平均分子量が1000を超え10000以下のものである。上記光重合性オリゴマーとしては、2官能以上の多官能オリゴマーが好ましく、光重合性官能基が3つ(3官能)以上の多官能オリゴマーが好ましい。上記多官能オリゴマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル−ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
光重合性プレポリマーは、重量平均分子量が10000を超えるものであり、重量平均分子量としては10000を越え80000以下が好ましく、10000を越え40000以下がより好ましい。重量平均分子量が80000を超える場合は、粘度が高いため塗工適性が低下してしまい、得られる光波長変換層の外観が悪化するおそれがある。多官能プレポリマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、ポリエステル−ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、硬化性や耐熱性の観点から、エポキシ樹脂やウレタン樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂(主剤)と、酸無水物、アミン化合物、又はアミノ樹脂(硬化剤)と、光カチオン重合開始剤との組み合わせが挙げられる。主剤としてのエポキシ樹脂としては、一分子中にエポキシ基を有するものであれば特に制限はなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、3官能型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA含核ポリオール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂などを使用できる。
ウレタン樹脂としては、ポリオール化合物(主剤)と、イソシアネート系化合物(硬化剤)の組み合わせが挙げられる。ウレタン樹脂において、主剤として使用されるポリオール化合物については、特に制限されないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール等が挙げられる。これらのポリオール化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ウレタン樹脂において、硬化剤として使用されるイソシアネート系化合物については、特に制限されないが、例えば、例えば、ポリイソシアネート、そのアダクト体、そのイソシアヌレート変性体、そのカルボジイミド変性体、そのアロハネート変性体、そのビュレット変性体等が挙げられる。前記ポリイソシアネートとしては、具体的には、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリフェニルメタンジイソシアネート(ポリメリックMDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン(H12MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(1,5−NDI)、3,3'−ジメチル−4,4'−ジフェニレンジイソシアネート(TODI)、キシレンジイソシアネート(XDI)等の芳香族ジイソシアネート;トラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。前記アダクト体としては、具体的には、前記ポリイソシアネートに、トリメチロールプロパン、グリコール等を付加したものが挙げられる。これらのイソシアネート系化合物は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
<量子ドット>
量子ドット17は、量子閉じ込め効果(quantum confinement effect)を有するナノサイズの半導体粒子である。量子ドット17の粒子径および平均粒子径は、例えば、1nm以上20nm以下となっている。量子ドット17は、励起源から光を吸収してエネルギー励起状態に達すると、量子ドット17のエネルギーバンドギャップに該当するエネルギーを放出する。よって、量子ドット17の粒子径又は物質の組成を調節すると、エネルギーバンドギャップを調節することができ、様々なレベルの波長帯のエネルギーを得ることができる。とりわけ、量子ドット17は、狭い波長帯で強い蛍光を発生することができる。
具体的には、量子ドット17は粒子径が小さくなるに従い、エネルギーバンドギャップが大きくなる。すなわち、結晶サイズが小さくなるにつれて、量子ドットの発光は青色側へ、つまり、高エネルギー側へとシフトする。そのため、量子ドットの粒子径を変化させることにより、紫外領域、可視領域、赤外領域のスペクトルの波長全域にわたって、その発光波長を調節することができる。例えば、量子ドットが後述するCdSe/ZnSから構成されている場合には、量子ドットの粒子径が2.0nm以上4.0nm以下の場合は青色光を発し、量子ドットの粒子径が3.0nm以上6.0nm以下の場合は緑色光を発し、量子ドットの粒子径が4.5nm以上10.0nm以下の場合は赤色光を発する。なお、上記においては、青色光を発する量子ドットの粒子径と緑色光を発する量子ドットの粒子径の範囲は一部において重複しており、また緑色光を発する量子ドットの粒子径と赤色光を発する量子ドットの粒子径の範囲は一部において重複しているが、同じ粒子径を有する量子ドットであっても、量子ドットのシェルの厚みによっても発光色が異なる場合があるので、何ら矛盾するものではない。
本明細書における「青色光」とは、380nm以上480nm未満の波長域を有する光であり、「緑色光」とは、480nm以上590nm未満の波長域を有する光であり、「赤色光」とは、590nm以上750nm以下の波長域を有する光である。
光波長変換層11に含まれる量子ドット17としては、1種類の量子ドットを用いてもよいが、粒子径または材料が異なる少なくとも2種類以上の量子ドットを用いることも可能である。光波長変換層11は、図1に示されるように、量子ドット17として、第1の量子ドット17Aと、第1の量子ドット17Aより粒子径が大きい第2の量子ドット17Bとを含んでいる。
図2に示されるように、光波長変換シート10の入光面10Aから光を入射させた場合には、量子ドット17に入射した光L1は光L1とは異なる波長の光L2に変換されて、入光面10Aとは反対側の面である出光面10Bから出射する。一方、入光面10Aから光を入射させた場合であっても、量子ドット17間を通過する光L1は波長変換されずに、出光面10Bから出射する。
上記したように光波長変換シート10から出射される光としては波長変換されない光も存在するので、光源として青色光を発する光源を用い、第1の量子ドット17Aとして青色光を緑色光に変換する量子ドットを用い、第2の量子ドット17Bとして青色光を赤色光に変換する量子ドットを用いた場合には、光波長変換シート10から、青色光、緑色光、赤色光が混合した光を出射させることができる。
量子ドット17は、所望の狭い波長域で強い蛍光を発生することができる。このため、光波長変換シート10を用いたバックライト装置は、色純度の優れた三原色の光で、表示パネルを照明することができる。この場合、表示パネルは、優れた色再現性を有することになる。
量子ドット17は、主に、約2nm以上10nm以下の半導体化合物からなるコアと、このコアと異なる半導体化合物からなるシェルとを有するコアシェル型構造を有していてもよい。シェルはコアを保護する保護層としての機能を有する。
コアとなる材料としては、例えば、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe及びHgTeのようなII−VI族半導体化合物、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaAs、GaP、GaN、GaSb、InN、InAs、InP、InSb、TiN、TiP、TiAs及びTiSbのようなIII−V族半導体化合物、Si、Ge及びPbのようなIV族半導体、等の半導体化合物又は半導体を含有する半導体結晶が挙げられる。また、InGaPのような3元素以上を含んだ半導体化合物を含む半導体結晶を用いることもできる。これらの中もで、作製の容易性、可視域での発光を得られる粒子径の制御性等の観点から、CdS、CdSe、CdTe、InP、InGaP等の半導体結晶が好適である。
シェルは、励起子がコアに閉じ込められるように、コアを形成する半導体化合物よりもバンドギャップの高い半導体化合物を用いることで、量子ドットの発光効率を高めることができる。このようなバンドギャップの大小関係を有するコアシェル構造(コア/シェル)としては、例えば、CdSe/ZnS、CdSe/ZnSe、CdSe/CdS、CdTe/CdS、InP/ZnS、Gap/ZnS、Si/ZnS、InN/GaN、InP/CdSSe、InP/ZnSeTe、InGaP/ZnSe、InGaP/ZnS、Si/AlP、InP/ZnSTe、InGaP/ZnSTe、InGaP/ZnSSe等が挙げられる。
量子ドット17は、シェルの外側にリガンドと呼ばれる有機ポリマーを有していてもよい。有機ポリマーは、量子ドットとバインダ樹脂との相溶性を高める機能を有しており、バインダ樹脂の種類によって適宜選択される。
量子ドット17の形状は特に限定されず、例えば、球状、棒状、円盤状、その他の形状であってもよい。量子ドット17の粒子径は、量子ドット17が球状でない場合、同体積を有する真球状の値とすることができる。
量子ドット17の粒子径、平均粒子径、形状、分散状態等の情報については、透過型電子顕微鏡または走査透過型電子顕微鏡による光波長変換層の断面観察により測定された20個の量子ドットの直径から求めることができる。また、量子ドットは粒子径によって発光色が変化するので、量子ドットの発光色を確認することから量子ドットの粒子径を判断することも可能である。例えば量子ドットがCdSe/Znから構成されている場合において、量子ドットから緑色の発光が確認できれば、量子ドットの粒子径は3.0nm以上6.0nm以下であると考えることができる。また、量子ドットの結晶構造、結晶子サイズについては、X線結晶回折(XRD)により知ることができる。さらには、紫外−可視(UV−Vis)吸収スペクトルによって、量子ドットの粒子径等に関する情報を得ることもできる。
光波長変換層11中の量子ドット17の含有量は、0.01質量%以上2質量%以下であることが好ましく、0.03質量%以上1質量%以下であることがより好ましい。量子ドットの含有量が0.01質量%未満であると、充分な発光強度が得られないおそれがあり、また、量子ドットの含有量が2質量%を超えると、充分な励起光の透過光強度が得られないおそれがある。なお、硬化物である光波長変換層中の量子ドットの質量%や後述する光散乱性粒子の質量%は、以下の方法によって概略算出することができる。まず、光波長変換シートから光波長変換層の少なくとも一部をサンプリングし、その質量を測定する。次いでサンプリングした部分に含まれるホストマトリクスを溶剤に溶解または燃焼により灰化させて、ホストマトリクスの成分を除去する。ホストマトリクスの成分の除去の際、量子ドットおよび光散乱性粒子は除去されず、また量子ドットと光散乱性粒子の成分は粒子径が大きく異なるので、粒子径の相違から量子ドットの成分と光散乱性粒子の成分を分離する。次いで、分離した量子ドットの成分の質量および光散乱性粒子の成分をそれぞれ測定する。そして、サンプリングした光波長変換層の少なくとも一部の質量と量子ドットの質量に基づいてサンプリングした光波長変換層の少なくとも一部に含まれる量子ドットの質量の割合を算出する。また、サンプリングした光波長変換層の少なくとも一部の質量と光散乱性粒子の質量に基づいてサンプリングした光波長変換層の少なくとも一部に含まれる光散乱性粒子の質量の割合を算出する。
<光散乱性粒子>
光散乱性粒子18は、光波長変換シート10に進入した光を散乱させることによって変化させる作用を有する粒子である。
光波長変換層11中の光散乱性粒子18の含有量は、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、3質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。光散乱性粒子の含有量が1質量%未満であると、光散乱効果が充分に得られないおそれがあり、また、光散乱性粒子の含有量が50質量%を超えると、ミー散乱が起こり難くなるので、光散乱効果を充分に得られないおそれがあり、さらに光散乱性粒子が多すぎるために加工性が低下するおそれがある。
光散乱性粒子18の平均粒子径は、例えば、0.1μm以上10μm以下であることが好ましく、0.3μm以上5μm以下であることがより好ましい。光散乱性粒子の平均粒子径が0.1μm未満であると、光波長変換シートの光波長変換効率が不充分となることがあり、充分な光散乱性を出すためには光散乱性粒子の添加量を多くする必要がある。一方、光散乱性粒子の平均粒子径が10μmを超えると、添加量(質量%)が同じであっても光散乱性粒子の数が少なくなるため、散乱点の数が減り充分な光散乱効果が得られない。
光散乱性粒子18とバインダ樹脂16との屈折率差の絶対値は、充分な光散乱を得る観点から、0.05以上であることが好ましく、0.10以上であることがより好ましい。なお、光散乱性粒子18の屈折率とバインダ樹脂16の屈折率とは、いずれの方が大きくてもよい。ここで、光波長変換層に含有させる前の光散乱性粒子の屈折率の測定方法としては、例えば、ベッケ法、最小偏角法、偏角解析、モード・ライン法、エリプソメトリ法等によって測定することができる。光波長変換層中のバインダ樹脂(硬化物)、光散乱性粒子の屈折率の測定方法としては、例えば、硬化作製した光波長変換層中から光散乱性粒子のかけら、あるいはホストマトリクスのかけらをなんらかの形で取り出したものについてベッケ法を用いることができる。このほか、位相シフトレーザー干渉顕微鏡(エフケー光学研究所製の位相シフトレーザー干渉顕微鏡や溝尻光学工業所製の二光束干渉顕微鏡等)を用いてバインダ樹脂と光散乱性粒子との屈折率差を測定することができる。なお、バインダ樹脂が、上述する(メタ)アクリレートとそれ以外の樹脂とを含有する場合、バインダ樹脂の屈折率とは、量子ドットおよび光散乱性粒子を除いた含有する全ての樹脂成分による硬化物の平均屈折率を意味する。
光散乱性粒子18の形状は特に限定されず、例えば、球状(真球状、略真球状、楕円球状等)、多面体状、棒状(円柱状、角柱状等)、平板状、りん片状、不定形状等が挙げられる。なお、光散乱性粒子18の粒子径は、光散乱性粒子の形状が球状でない場合、同体積を有する真球状の値とすることができる。
光散乱性粒子18は、光散乱性粒子18をバインダ樹脂16中に強固に固定する観点から、バインダ樹脂16と化学結合していることが好ましい。この化学結合は、シランカップリング剤で表面処理された光散乱性粒子を用いることによって実現できる。
シランカップリング剤としては、用いる硬化性バインダ樹脂前駆体の種類にもよるが、ビニル基、エポキシ基、スチリル基、メタクリル基、アクリル基、アミノ基、ウレイド基、メルカプト基、スルフィド基およびイソシアネート基からなる群から選択される1種以上の反応性官能基を有するものを使用することが可能である。硬化性バインダ樹脂前駆体として(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いる場合には、カップリング剤は、メルカプト基、(メタ)アクリロイル基、ビニル基およびスチリル基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有することが好ましい。また、硬化性バインダ樹脂前駆体としてエポキシ基、イソシアネート基、および水酸基からなる群から選択される少なくとも1種の基を有する化合物を用いる場合には、シランカップリング剤はエポキシ基、イソシアネート基、メルカプト基およびアミノ基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有することが好ましい。
光散乱性粒子18をシランカップリング剤で表面処理する方法としては、光散乱性粒子18にシランカップリング剤をスプレーする乾式法や、光散乱性粒子18を溶剤に分散させてからシランカップリング剤を加えて反応させる湿式法等が挙げられる。
光散乱性粒子18は、アクリル樹脂粒子、スチレン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、およびウレタン樹脂粒子等の有機粒子であってもよいが、耐湿熱性試験の前後における輝度変化率を小さくことができ、また光波長変換シート10への入射光を好適に散乱させることが可能となり、この入射光に対する光波長変換効率の向上を好適に図ることできることから、無機粒子が好ましい。
無機粒子は、Al2O3等のアルミニウム含有化合物、ZrO2等のジルコニウム含有化合物、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)や酸化インジウムスズ(ITO)等のスズ含有化合物、MgOやMgF2等のマグネシウム含有化合物、TiO2やBaTiO3等のチタン含有化合物、Sb2O5等のアンチモン含有化合物、SiO2等のケイ素含有化合物、およびZnO等の亜鉛含有化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の粒子が挙げられる。これらの無機粒子は、バインダ樹脂との屈折率差を大きくすることができるので、大きなミー散乱強度を得ることができる観点からも好ましい。光波長変換シート10による入射光に対する光波長変換効率の向上をより好適に図ることができることから、光散乱性粒子18は、2種以上の材料からなるものであってもよい。これらの中でも、アルミニウム含有化合物、ジルコニウム含有化合物、チタン含有化合物、アンチモン含有化合物、ケイ素含有化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物の粒子であることが好ましい。
<<バリアフィルム>>
バリアフィルム12、13は、水分や酸素の透過を抑制して、量子ドット17を水分や酸素から保護するためのフィルムである。バリアフィルム12、13は、量子ドット17を水分や酸素から保護する機能を有する光透過性基材またはバリア層のみであってもよいが、図1に示されるように量子ドット17を水分や酸素から保護する機能を有する光透過性基材19、20と光透過性基材19、20の表面に設けられ、かつ量子ドット17を水分や酸素から保護する機能を有するバリア層21、22との多層構造が好ましい。なお、バリア層21、22は、光透過性基材19、20における光波長変換層11側の面に設けられているが、光透過性基材19、20における光波長変換層11側の面とは反対側の面に設けられていてもよい。
バリアフィルム12、13の酸素透過率(OTR: Oxygen Transmission Rate)は、23℃、90%Rh(相対湿度)の条件において、1.0×10−1cc/m2/day/atm以下であることが好ましく、1.0×10−2cc/m2/day/atm以下であることが更に好ましい。なお、上記酸素透過率は、酸素ガス透過率測定装置(MOCON社製、OX−TRAN 2/21)を用いて測定することができる。
バリアフィルム12、13の水蒸気透過率(WVTR:Water Vaper Transmission Rate)は、40℃、90%Rhの条件においては、1.0×10−1g/m2/day以下であることが好ましく、1.0×10−2g/m2/day以下であることが更に好ましい。なお、上記水蒸気透過率は、水蒸気透過率測定装置(DELTAPERM(Technolox社製))を用いて測定することができる。
バリアフィルムに光散乱性粒子を添加する場合には、光散乱性粒子は光透過性基材に練り込むことによってバリアフィルムに光散乱性粒子を添加することができる。バリアフィルムに光散乱性粒子を添加する場合には、光拡散層は設ける必要がない。なお、この場合、光透過性基材における光波長変換層側とは反対側に傷つき防止のためのオーバーコート層を形成してもよい。
<<光透過性基材>>
光透過性基材19、20としては、光透過性を有すれば特に限定されない。光透過性基材19、20の厚みは、特に限定されないが、10μm以上150μm以下であることが好ましい。光透過性基材の厚みが、10μm未満であると、光波長変換シートのアッセンブリ、取扱い時における皺や折れが発生するおそれがあり、また150μmを超えると、ディスプレイの軽量化および薄膜化に適さないおそれがある。上記光透過性基材19、20の厚みのより好ましい下限は50μm以上、より好ましい上限は125μm以下である。
光透過性基材19、20の平均厚みは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査透過型電子顕微鏡(STEM)で撮影した断面の画像を用いて算出できる。
光透過性基材19、20の構成原料としては、例えば、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、又は、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。基材フィルムの構成材料としては、好ましくは、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、セルローストリアセテートが挙げられる。
光透過性基材19、20は、単一の基材から構成されていてもよいが、複数の基材から構成される積層基材であってもよい。このような積層基材は、用途に応じて、同種の構成原料の層からなる複数の層から構成されていてもよく、異なる種類の構成原料の層からなる複数の層から構成されていてもよい。
<<バリア層>>
バリア層21、22は、量子ドット17を水分や酸素から保護するための層である。また、バリア層21、22は、光波長変換層11との密着性を向上させる機能を有することが好ましい。
バリア層21、22の形成材料としては、バリア性が得られるものであれば特に限定されないが、例えば、無機酸化物、金属、ゾルゲル材料等が挙げられる。具体的には、上記無機酸化物としては、例えば、酸化ケイ素(SiOx)、酸化アルミニウム(AlnOm)、酸化チタン(TiO2)、酸化イットリウム、酸化ホウ素(B2O3)、酸化カルシウム(CaO)、酸化窒化炭化ケイ素(SiOxNyCz)等が挙げられ、上記金属としては、例えば、Ti、Al、Mg、Zr等が挙げられ、上記ゾルゲル材料としては、例えば、シロキサン系ゾルゲル材料等が挙げられる。これらの材料は、単独で用いられてもよく2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
バリア層21、22の厚みは、特に限定されないが、0.01μm以上1μm以下であることが好ましい。0.01μm未満であると、バリア層のバリア性能が不充分となることがあり、1μmを超えると、バリア層のクラック等によりバリア性能の劣化が起こりやすくなることがある。上記バリア層の厚みのより好ましい下限は0.03μmであり、より好ましい上限は0.5μmである。
バリア層の厚みは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)又は走査透過型電子顕微鏡(STEM)でランダムに20ヶ所撮影した断面の画像からバリア層の厚みを測定し、測定したバリア層の厚みの平均値として求めることができる。また、バリア層21、22は、単一の層であってもよく、複数の層が積層されたものであってもよい。バリア層が複数層積層されたものである場合、バリア層を構成する各層は、直接積層形成されていてもよく、貼り合わされていてもよい。
バリア層21、22の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長(PVD)法や化学気相成長(CVD)法等の蒸着法、又は、ロールコート法、スピンコート法等が挙げられる。また、これらの方法を組み合わせてもよい。
バリア層21、22としては、上述したバリア性を有する層であれば特に限定されるものではないが、そのバリア性の高さ等の観点から、蒸着法により形成された蒸着層を用いることが好ましい。
このような蒸着層としては、蒸着法により形成される層であれば、その蒸着法の種類等は特に限定されるものではなく、CVD法によって形成した層であってもよく、またPVD法によって形成した層であってもよい。
上記蒸着層が、例えばプラズマCVD法等のCVD法により形成される場合、緻密でバリア性の高い層を形成することが可能となるが、製造効率やコスト等の面からはPVD法で蒸着層を形成することが好ましい。
PVD法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が挙げられるが、そのなかでも、そのバリア性等の面から真空蒸着法を用いることが好ましい。真空蒸着法としては、例えば、エレクトロンビーム(EB)加熱方式による真空蒸着法、又は、高周波誘電加熱方式による真空蒸着法等が挙げられる。
上記蒸着層の材料としては、金属又は無機酸化物が好ましく、具体的には、Ti、Al、Mg、Zr等の金属、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化窒化ケイ素、酸化窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、酸化イットリウム、B2O3、CaO等の無機酸化物等が挙げられる。そのなかでも、高いバリア性及び透明性を有する点から、酸化ケイ素が好ましい。
上記蒸着層の厚さは、用いられる材料の種類や構成により最適条件が異なり適宜選択されるが、0.01μm以上1μm以下であることが好ましく、より好ましい上限は500nmである。上記蒸着層の厚さが上記の範囲より薄い場合には、均一な層とすることが困難な場合があり、上記バリア性を得ることができないことがある。また、上記蒸着層の厚さが上記の範囲より厚い場合、蒸着層の成膜後に引っ張り等の外的要因により蒸着層に亀裂が生じること等により、バリア性が著しく損なわれる可能性があり、また、形成に時間を要し、生産性も低下することがある。
バリア層21、22の下地層として、アンカー層が形成されていてもよい。これにより、バリア性や耐候性を高めることができる。アンカー層の形成材料としては、例えば、接着性樹脂、無機酸化物、有機酸化物、金属等が挙げられる。
上記アンカー層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法、CVD法、ロールコート法、スピンコート法などが挙げられる。また、これらの方法を組み合わせてもよい。量産性に優れ、アンカー層の密着性を高めることができることから、そのなかでも、成膜時のインラインコートが好ましい。
<<光拡散層>>
光拡散層14、15は、表面に凹凸形状を有しており、この凹凸形状によって光波長変換シート10に入射する光および出射する光を拡散させることができる。光拡散層14、15を設けることにより、光波長変換シート10における光の変換効率を高めることができる。また、光波長変換シートはバックライト装置内では後述する光学板やレンズシートと接触するが、光波長変換シートと光学板やレンズシートとが貼り付いてしまうと、光波長変換シートと光学板との間の界面にウエットアウトと呼ばれる水で濡らしたようなパターンが形成されてしまうので、光波長変換シート10と光学板との貼り付きを防止するために、図1に示されるように光拡散層15の光透過性基材20側の面とは反対側である面(入光面10A)および光拡散層14の光透過性基材19側の面とは反対側である面(出光面10B)は、凹凸面となっていることが好ましい。
光拡散層14、15は、光散乱性粒子とバインダ樹脂とを含んでいる。光拡散層14、15には、揮発性有機化合物が残存していることがあるが、光拡散層14、15に含まれる揮発性有機化合物の残存量は、通常の光波長変換層に含まれる揮発性有機化合物の残存量よりも一桁以上小さいので、ほぼ無視できると考えられる。また、光拡散層14、15においては、揮発性有機化合物が残存していると、バリアフィルムとの密着性および光拡散層の膜硬度の低下を引き起こすおそれがあるので、揮発性有機化合物の残存量は少ない方が好ましい。
<光散乱性粒子>
光拡散層14、15中の光散乱性粒子は、主に、光拡散層14、15の表面に凹凸形状を形成するとともに光散乱性機能を発揮するためのものである。
光散乱性粒子の平均粒子径は、上述した量子ドット17の平均粒子径の10倍以上2万倍以下であることが好ましく、10〜5000倍であることがより好ましい。光散乱性粒子の平均粒子径が量子ドットの平均粒子径の10倍未満であると、光拡散層に充分な光拡散性が得られないことがあり、また光散乱性粒子の平均粒子径が量子ドットの平均粒子径の2万倍を超えると、光拡散層の光拡散性能は優れたものとなるが、光拡散層の光の透過率が大幅にダウンしやすくなる。なお、光散乱性粒子の平均粒子径は、上述した量子ドットの平均粒子径と同様の方法で測定することができる。
具体的には、光拡散層14、15中の光散乱性粒子の平均粒子径は、例えば、1μm以上30μm以下であることが好ましく、1μm以上20μm以下であることがより好ましい。光散乱性粒子の平均粒子径が1μm未満であると、光波長変換シートの光波長変換効率が不充分となることがあり、充分な光拡散性を出すためには光散乱性粒子の添加量を多くする必要がある。一方、光散乱性粒子の平均粒子径が30μmを超えると、光拡散性能は優れたものとなるが、光拡散層の光の透過率が大幅にダウンしやすくなる。
光拡散層14、15中の光散乱性粒子とバインダ樹脂との屈折率差が、0.02以上0.15以下であることが好ましい。0.02未満であると、光学的に光散乱性粒子の持つ屈折率による光拡散性が得られず、光波長変換シートの光波長変換効率の向上が不充分となることがあり、0.15を超えると、光拡散層の透過率が低下してしまうことがある。光散乱性粒子とバインダ樹脂との屈折率差のより好ましい下限は0.03以上、より好ましい上限は0.12以上である。なお、光散乱性粒子の屈折率とバインダ樹脂45の屈折率とは、いずれの方が大きくてもよい。光散乱性粒子およびバインダ樹脂の屈折率は、光散乱性粒子18およびバインダ樹脂16の屈折率と同様の手法によって測定することができる。
光拡散層14、15中の光散乱性粒子の形状は光波長変換層11中の光散乱性粒子18の形状と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。光拡散層14、15中の光散乱性粒子は、光波長変換層11中の光散乱性粒子18と同様に、光散乱性粒子をバインダ樹脂中に強固に固定する観点から、バインダ樹脂と化学結合していることが好ましい。この化学結合は、シランカップリング剤で表面修飾された光散乱性粒子を用いることによって実現できる。シランカップリング剤は、光波長変換層11中の光散乱性粒子の欄で説明したシランカップリング剤と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
光拡散層14、15中の光散乱性粒子は、有機材料からなる粒子または無機材料からなる粒子であってもよい。光散乱性粒子を構成する有機材料としては特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリスチレン、メラミン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、アクリル−スチレン共重合体樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリオレフィン等が挙げられる。なかでも、架橋アクリル樹脂が好適に用いられる。また、上記光散乱性粒子を構成する無機材料としては特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、酸化亜鉛微粒子等の無機酸化物等が挙げられる。なかでも、シリカ及び/又はアルミナが好適に用いられる。
<バインダ樹脂>
バインダ樹脂としては、特に限定されないが、光波長変換層11の欄で説明したバインダ樹脂16と同様のバインダ樹脂を用いることができるので、ここでは説明を省略するものとする。
<<<他の光波長変換シート>>>
図1においては、光拡散層14、バリアフィルム12、光波長変換層11、バリアフィルム13、および光拡散層15がこの順で積層された光波長変換シート10が図示されているが、光波長変換シートは、光波長変換層11とバリアフィルム12、13との間の密着性をより向上させるために図3に示される構造としてもよく、またこの密着性をより一層向上させるために図4に示される構造としてもよい。
図3に示される光波長変換シート30は、光拡散層14、バリアフィルム12、プライマー層31、光波長変換層11、プライマー層32、バリアフィルム13、および光拡散層15がこの順で積層されたものである。図3において、図1と同じ符号が付されている部材は、図1で示した部材と同じものであるので、説明を省略するものとする。
<<プライマー層>>
プライマー層31、32はバリアフィルム12、13と光波長変換層11との間の密着性を高める層であり、バリアフィルム12、13と光波長変換層11との間に配置され、かつバリアフィルム12、13と光波長変換層11に密着している。プライマー層31、32の構成材料としては、公知のものを適宜選択して用いて良く、例えば、熱硬化性又は熱可塑性のポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂が挙げられる。なお、プライマー層31、32にはそれぞれ異なる構成材料を用いてもよい。また、プライマー層31、32の厚さは、特に限定されないが、例えば、100nm以上3μm以下とすることが可能である。
図4に示される光波長変換シート40は、光拡散層14、バリアフィルム12、接着層41、光透過性基材43、光波長変換層11、光透過性基材44、接着層42、バリアフィルム13、および光拡散層15がこの順で積層されたものである。光透過性基材42、43および接着層41、42は、バリアフィルム12、13と光波長変換層11との間の密着性をさらに向上させるためのものである。図4において、図1と同じ符号が付されている部材は、図1で示した部材と同じものであるので、説明を省略するものとする。
<<接着層>>
接着層41、42は、バリアフィルム12、13と光透過性基材43、44との間に配置され、かつバリアフィルム12、13と光透過性基材43、44に密着している。接着層41、42の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、エチレンと酢酸ビニルまたはアクリル酸などとの共重合体、エチレンとスチレンおよび/またはブタジエンなどとの共重合体、オレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂および/またはその変性樹脂、光重合性化合物の重合体、およびエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂等の少なくともいずれかを用いることが可能である。接着層41、42の構成材料としてアクリル樹脂、エポキシ樹脂またはポリエステル樹脂を用いることが、耐熱性や接着性の観点から好ましい。なお、接着層41、42にはそれぞれ異なる構成材料を用いてもよい。また、接着層41、42の厚さは、特に限定されないが、例えば、1μm以上20μm以下とすることが可能である。
<<光透過性基材>>
光透過性基材43、44は、接着層41、42と光波長変換層11との間に配置され、かつ接着層41、42と光波長変換層11に密着している。光透過性基材43、44は、光透過性基材19、20と同様のものであるので、ここでは説明を省略するものとする。
<<<光波長変換シートの製造方法>>>
光波長変換シート10は、例えば、以下のようにして作製することができる。図5および図6は本実施形態に係る光波長変換シートの模式的な製造工程図である。まず、図5(A)に示されるように、光透過性基材19の一方の面に蒸着法等によりバリア層21を形成し、バリアフィルムを形成する。また、同様にして、光透過性基材20の一方の面に蒸着法等によりバリア層22を形成して、バリアフィルム13を形成する。
次いで、バリアフィルム12におけるバリア層21側の面とは反対側の面に、光散乱性粒子および硬化性バインダ樹脂前駆体を含む光拡散層用組成物を塗布し、乾燥させて、光拡散層用組成物の塗膜を形成する。また同様に、バリアフィルム13におけるバリア層22側の面とは反対側の面に、光拡散層用組成物の塗膜を形成する。
次いで、光照射等によって、光拡散層用組成物の塗膜を硬化させる。これにより、図5(B)に示されるように、バリアフィルム12におけるバリア層21側の面とは反対側の面に光拡散層14が形成されて、光拡散層14付きバリアフィルム12が形成される。また、同様にして、光拡散層15付きバリアフィルム13を形成する。
次いで、図5(C)に示されるように、光拡散層15付きバリアフィルム13における光拡散層15側の面とは反対側の面(バリア層22の表面)に、硬化性バインダ樹脂前駆体23、量子ドット17、光散乱性粒子18および溶剤としての揮発性有機化合物を含む光波長変換層用組成物24を塗布し、例えば、40℃〜110℃で乾燥させて、光波長変換層用組成物24の塗膜を形成する。ここで、光波長変換層用組成物24に含まれる揮発性有機化合物の一部が光波長変換層11の形成後に光波長変換層11に残存するので、光波長変換層用組成物24に含まれる揮発性有機化合物としては、光波長変換シート10の欄で説明した揮発性有機化合物と同じものが挙げられる。また、光波長変換層用組成物24を乾燥させる際の温度(乾燥温度)が110℃を超えた状態で乾燥させると、揮発性有機化合物の揮発により塗工面のムラが発生するため、色ムラが発生しやすくなる。
そして、図6(A)に示されるように、光拡散層14付きバリアフィルム12におけるバリア層21の表面が光波長変換層用組成物24の塗膜と接するように、光波長変換層用組成物24の塗膜上に光拡散層14付きバリアフィルム12を配置する。これにより、光波長変換層用組成物24の塗膜が、バリアフィルム12、13間で挟まれる。
次いで、図6(B)に示されるように、光拡散層14付きバリアフィルム12を介して光波長変換層用組成物24の塗膜に光を照射して、または熱を加えて、硬化性バインダ樹脂前駆体23を硬化させて、光波長変換層11を形成するとともに、光波長変換層11、バリアフィルム12、13を一体化させる。これにより、図1に示される光波長変換シート10が得られる。
本実施形態によれば、光波長変換シート10に含まれる揮発性有機化合物の残存量が10mg/m2以上500mg/m2以下となっているので、光波長変換層11とバリアフィルム12、13との密着性を確保しつつ、量子ドット17の経時劣化を抑制することができる。すなわち、上記したように量子ドットは空気中の水分や酸素によって劣化(失活)してしまう。これに対して、本実施形態においては、光波長変換シート10中に上記範囲の揮発性有機化合物が残存しているので、光波長変換シート10中に残存する揮発性有機化合物が空気中の水分や酸素から量子ドット17を保護する機能を果たす。これにより、光波長変換シート10の使用時における量子ドット17の失活を抑制できるので、量子ドット17の経時劣化を抑制できる。また、光波長変換シートに含まれる揮発性有機化合物の残存量が10mg/m2以上500mg/m2以下の範囲であれば、光波長変換層における硬化不良によるバリアフィルムとの密着性の低下を抑制できる。これにより、光波長変換層11とバリアフィルム12、13との密着性を確保しつつ、量子ドット17の経時劣化を抑制できる。
本実施形態によれば、光波長変換シート10に含まれる揮発性有機化合物の残存量が10mg/m2以上500mg/m2以下となっているので、光波長変換シート10における発光時の色ムラを抑制することができる。すなわち、光波長変換層における量子ドットの分散性が劣ると、光波長変換シートの発光時に色ムラが生ずるおそれがある。これに対し、本実施形態においては、光波長変換シート10中に上記範囲の揮発性有機化合物が残存しているので、光波長変換層11における量子ドット17の分散性を向上させることができる。これにより、光波長変換シート10における発光時の色ムラを抑制することができる。
光波長変換層11に含まれる揮発性有機化合物の残存量が10mg/m2以上500mg/m2以下となっている場合にも、上記と同様の理由から、光波長変換層11とバリアフィルム12、13との密着性を確保しつつ、量子ドット17の経時劣化を抑制することができ、また光波長変換シート10における発光時の色ムラも抑制することができる。
光波長変換シート10は、例えば、バックライト装置および表示装置に組み込んで使用することができる。図7は本実施形態に係るバックライト装置を含む表示装置の概略構成図であり、図8は図7に示されるレンズシートの斜視図であり、図9は図8のレンズシートのI−I線に沿った断面図であり、図10は本実施形態に係る他のバックライト装置の概略構成図である。
<<<画像表示装置>>>
図7に示される画像表示装置50は、バックライト装置60と、バックライト装置60の出光側に配置された表示パネル70とを備えている。表示装置50は、画像を表示する表示面50Aを有している。図7に示される画像表示装置50においては、表示パネル70の表面が表示面50Aとなっている。
バックライト装置60は、表示パネル70を背面側から面状に照らすものである。表示パネル70は、バックライト装置60からの光の透過または遮断を画素毎に制御するシャッターとして機能し、表示面50Aに像を表示するように構成されている。
<<表示パネル>>
図7に示される表示パネル70は、液晶表示パネルであり、入光側に配置された偏光板71と、出光側に配置された偏光板72と、偏光板71と偏光板72との間に配置された液晶セル73とを備えている。偏光板71、72は、入射した光を直交する二つの直線偏光成分(S偏光およびP偏光)に分解し、一方の方向(透過軸と平行な方向)に振動する直線偏光成分(例えば、P偏光)を透過させ、前記一方の方向に直交する他方の方向(吸収軸と平行な方向)に振動する直線偏光成分(例えば、S偏光)を吸収する機能を有している。
液晶セル73には、一つの画素を形成する領域毎に、電圧の印加がなされ得るように構成されている。そして、電圧印加の有無によって液晶セル73中の液晶分子の配向方向が変化するようになる。一例として、入光側に配置された偏光板71を透過した特定方向の直線偏光成分は、電圧印加がなされた液晶セル73を通過する際にその偏光方向を90°回転させ、その一方で、電圧印加がなされていない液晶セル73を通過する際にその偏光方向を維持する。この場合、液晶セル73への電圧印加の有無によって、偏光板71を透過した特定方向に振動する直線偏光成分を偏光板72に対して透過させ、または偏光板72で吸収して遮断することができる。このようにして、表示パネル70では、バックライト装置60からの光の透過または遮断を画素毎に制御し得るように構成されている。なお、液晶表示パネルの詳細については、種々の公知文献(例えば、「フラットパネルディスプレイ大辞典(内田龍男、内池平樹監修)」2001年工業調査会発行)に記載されており、ここではこれ以上の詳細な説明を省略する。
<<バックライト装置>>
図7に示されるバックライト装置60は、エッジライト型のバックライト装置として構成され、光源80と、光源80の側方に配置された導光板としての光学板85と、光学板85の出光側に配置された光波長変換シート10と、光波長変換シート10の出光側に配置されたレンズシート90と、レンズシート90の出光側に配置されたレンズシート95と、レンズシート95の出光側に配置された反射型偏光分離シート100と、光学板85の出光側とは反対側に配置された反射シート105とを備えている。バックライト装置60は、光学板85、レンズシート90、95、反射型偏光分離シート100、反射シート105を備えているが、これらのシート等は備えられていなくともよい。本明細書において、「出光側」とは、各部材においてバックライト装置から出射する方向に向かう光が出射される側を意味する。
バックライト置60は、面状に光を発光する発光面を有している。図7に示されるバックライト装置60においては、反射型偏光分離シート100の出光面がバックライト装置60の発光面となっている。
<光源>
光源80は、例えば、線状の冷陰極管等の蛍光灯や、点状の発光ダイオード(LED)や白熱電球等の種々の態様で構成され得る。本実施の形態において、光源80は、光学板85の後述する入光面85C側に、線状に並べて配置された多数の点状発光体、具体的には、多数の発光ダイオード(LED)によって、構成されている。
バックライト装置60においては光波長変換シート10が配置されていることに伴い、光源80は、単一の波長域の光を放出する発光体のみを用いることができる。例えば、光源は、色純度の高い青色光を発する青色発光ダイオードのみを用いることができる。
<光学板>
導光板としての光学板85は、平面視形状が四角形形状に形成されている。光学板85は、表示パネル70側の一方の主面によって構成された出光面85Aと、出光面85Aに対向するもう一方の主面からなる裏面85Bと、出光面85Aおよび裏面85Bの間を延びる側面と、を有している。側面のうちの光源80側の側面が、光源80からの光を受ける入光面85Cとなっている。入光面85Cから光学板85内に入射した光は、入光面85Cと、入光面85Cと対向する反対面とを結ぶ方向(導光方向)に光学板85内を導光され、出光面85Aから出射される。
光波長変換シート10の入光面10Aが光拡散層15の光散乱性粒子により凹凸面となっている場合には、図7に示されるように、光学板85の出光面85Aは、入光面10Aの一部(例えば、凸部)と光学的に密着し、また入光面10Aの他の部分(例えば、凹部)と離間していることが好ましい。この場合、出光面85Aと入光面10Aの他の部分との隙間は空気層26となっている。この空気層26を設けることにより、出光面85Aと入光面10Aが光学的に密着するように光波長変換シート10および光学板85を固定した場合であっても、光波長変換シート10と光学板85が貼り付くことを抑制できるので、光波長変換シート10と光学板85との間の界面にウエットアウトが形成されることを抑制できる。本明細書において、「光学的に密着」とは、光学板の出光面と光変換シートの入光面の一部がその間に空気層を形成することなく密着している状態をいう。また、光学板の出光面に光波長変換シートが貼り付いていない状態とは、光波長変換シートと光学板の固定を解除した場合に、光学板の出光面から該出光面の平面方向に光波長変換シートを動かせることを意味する。
光学板85を構成する材料としては、画像表示装置に組み込まれる光学シート用の材料として広く使用され、優れた機械的特性、光学特性、安定性および加工性等を有するとともに安価に入手可能な材料、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル等の一以上を主成分とする透明樹脂や、エポキシアクリレートやウレタンアクリレート系の反応性樹脂(電離放射線硬化型樹脂等)が好適に使用され得る。なお、必要に応じて、光学板85中に光を拡散させる機能を有する光拡散材を添加することもできる。光拡散材としては、例えば、平均粒子径が0.5μm以上100μm以下のシリカ(二酸化珪素)、アルミナ(酸化アルミニウム)、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂等の透明物質からなる粒子を用いることができる。
<<レンズシート>>
レンズシート90、95は、入射した光の進行方向を変化させて出光側から出射させる機能を有する。本実施形態においては、図9に示されるように、入射した光L3の進行方向を変化させて出光側から出射させて、正面方向の輝度を集中的に向上させる機能(集光機能)とともに、入射した光L4を反射させて、光波長変換シート10側に戻す機能(再帰反射機能)を有している。レンズシート90、95は、光透過性基材91と、光透過性基材91の一方の面に設けられたレンズ層92とを備えている。
光波長変換シート10の出光面10Bが光拡散層14の光散乱性粒子により凹凸面となっている場合には、図7に示されるように、レンズシート90の入光面90Aは、出光面10Bの一部(例えば、凸部)と光学的に密着し、また出光面10Bの他の部分(例えば、凹部)と離間していることが好ましい。この場合、入光面90Aと出光面10Bの他の部分との隙間は空気層27となっている。この空気層27を設けることにより、入光面90Aと出光面10Bが光学的に密着するように光波長変換シート10およびレンズシート90を固定した場合であっても、光波長変換シート10とレンズシート90が貼り付くことを抑制できるので、光波長変換シート10とレンズシート90との間の界面にウエットアウトが形成されることを抑制できる。
<光透過性基材>
光透過性基材91は、光透過性基材19と同様のものであるので、ここでは説明を省略するものとする。
<レンズ層>
レンズ層92は、図8および図9に示されるように、シート状の本体部93、および本体部93の出光側に並べて配置された複数の単位レンズ94を備えている。
本体部93は、単位レンズ94を支持するシート状部材として機能する。図8および図9に示されるように、本体部93の出光側面93A上には、単位レンズ94が隙間をあけることなく並べられている。したがって、レンズシート90、95の出光面90B、95Bは、レンズ面によって形成されている。その一方で、図9に示すように、本実施の形態において、本体部23は、出光側面23Aに対向する入光側面23Bとして、レンズ層92の入光側面をなす平滑な面を有している。
単位レンズ94は、本体部93の出光側面93A上に並べて配列されている。図8に示されるように単位レンズ94は、単位レンズ94の配列方向ADと交差する方向に線状、とりわけ本実施の形態においては直線状に、延びている。また本実施の形態において、一つのレンズシート90、95に含まれる多数の単位レンズ94は、互いに平行に延びている。また、レンズシート90、94の単位レンズ94の長手方向LDは、レンズシート90、95における単位レンズ94の配列方向ADと直交している。
単位レンズは、三角柱状であってもよいし、波状や例えば半球状のような椀状であってもよい。本実施形態では、単位レンズとして、出光側に向けて幅が狭くなる三角柱状のものについて説明する。本体部93のシート面の法線方向NDおよび単位レンズ94の配列方向ADの両方に平行な断面(レンズシートの主切断面とも呼ぶ)の形状は、出光側に突出する三角形形状となっている。とりわけ、正面方向輝度を集中的に向上させるという観点から、主切断面における単位レンズ94の断面形状は二等辺三角形形状であるとともに、等辺の間に位置する頂角が本体部93の出光側面93Aから出光側に突出するように、各単位レンズ94が構成されている。
単位レンズ94は、光の利用効率を向上させる観点から、80°以上100°以下の頂角を有することが好ましく、約90°の頂角を有することがより好ましい。ただし、光波長変換シートの巻き取りの際における単位レンズの先端の破損を考慮すると、単位レンズ94の先端は曲面であってもよい。
レンズシート90、95の寸法は、一例として、以下のように設定され得る。まず、単位レンズ94の具体例として、単位レンズ94の配列ピッチ(図示された例では、単位レンズ94の幅に相当)を10μm以上200μm以下とすることができる。ただし、昨今においては、単位レンズ94の配列の高精細化が急速に進んでおり、単位レンズ94の配列ピッチを10μm以上50μm以下とすることが好ましい。また、レンズシート90、95のシート面への法線方向NDに沿った本体部93からの単位レンズ94の突出高さを5μm以上100μm以下とすることができる。さらに、単位レンズ94の頂角θを60°以上120°以下とすることができる。
図7から理解され得るように、レンズシート90の単位レンズ94の配列方向とレンズシート95の単位レンズ94の配列方向とは交差、さらに限定的には直交している。
<反射型偏光分離シート>
反射型偏光分離シート100は、レンズシート83から出射される光のうち、第1の直線偏光成分(例えば、P偏光)のみを透過し、かつ第1の直線偏光成分と直交する第2の直線偏光成分(例えば、S偏光)を吸収せずに反射する機能を有する。反射型偏光分離シート100で反射された第2の直線偏光成分は再度反射され、偏光が解消された状態(第1の直線偏光成分と第2の直線偏光成分とを両方含んだ状態)で、再度、反射型偏光分離シート84に入射する。よって、反射型偏光分離シート100は再度入射する光のうち第1の直線偏光成分を透過し、第1の直線偏光成分と直交する第2の直線偏光成分は再度反射される。以下、同上の過程を繰り返す事により、当初レンズシート95から出光した光の70〜80%程度が第1の直線偏光成分となった光源光として出光される。したがって、反射型偏光分離シート100の第1の直線偏光成分(透過軸成分)の偏光方向と表示パネル70の偏光板71の透過軸方向とを一致させることにより、バックライト装置60からの出射光は全て表示パネル70で画像形成に利用可能となる。したがって、光源80から投入される光エネルギーが同じであっても、反射型偏光分離シート100を未配置の場合に比べて、より高輝度の画像形成が可能となり、又光源80のエネルギー利用効率も向上する。とりわけ、反射型偏光分離シート100で反射された光は、光波長変換シート10の光波長変換層で波長変換が行われ得る。したがって、反射型偏光分離シート100を配置することによって、光波長変換シート10の波長変換効率がさらに上昇させることができる。したがって、更なる光の利用効率の改善を期待することができる。
反射型偏光分離シート100としては、3M社から入手可能な「DBEF」(登録商標)を用いることができる。また、「DBEF」以外にも、Shinwha Intertek社から入手可能な高輝度偏光シート「WRPS」やワイヤーグリッド偏光子等を、反射型偏光分離シート84として用いることができる。
<反射シート>
反射シート105は、光学板85の裏面85Bから漏れ出した光を反射して、再び光学板85内に入射させる機能を有する。反射シート105は、白色の散乱反射シート、金属等の高い反射率を有する材料からなるシート、高い反射率を有する材料からなる薄膜(例えば金属薄膜)を表面層として含んだシート等から、構成され得る。反射シート105での反射は、正反射(鏡面反射)でもよく、拡散反射でもよい。反射シート105での反射が拡散反射の場合には、当該拡散反射は、等方性拡散反射であってもよいし、異方性拡散反射であってもよい。
<<他のバックライト装置>>
光波長変換シート10を組み込むバックライト装置は、図10に示されるような直下型のバックライト装置であってもよい。図10に示されるバックライト装置110は、光源80と、光源80の光を受け、かつ光拡散板として機能する光学板111と、光学板111の出光側に配置された光波長変換シート10、光波長変換シート10の出光側に配置されたレンズシート90と、レンズシート90の出光側に配置されたレンズシート95と、レンズシート95の出光側に配置された反射型偏光分離シート100とを備えている。本実施形態においては、光源80は、光学板111の側方ではなく、光学板111の直下に配置されている。図10において、図7と同じ符号が付されている部材は、図7で示した部材と同じものであるので、説明を省略するものとする。なお、バックライト装置110においては、反射シート105は備えられていない。
<光学板>
光拡散板としての光学板111は、平面視形状が四角形形状に形成されている。光学板111は、光源80側の一方の主面によって構成された入光面111Aと、光波長変換シート10側の他方の主面によって構成された出光面111Bとを有している。入光面111Aから光学板111内に入射した光は、光学板111内で拡散され、出光面111Bから出射される。
光学板111としては、光源80からの光を拡散させることができれば、特に限定されないが、例えば、透明材料中に光拡散性粒子を分散させた板が挙げられる。透明材料としては、特に限定されないが、例えば透明樹脂、無機ガラス等が挙げられる。前記透明樹脂としては、成形が容易である点で、透明熱可塑性樹脂が好適に用いられる。この透明熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリスチレン樹脂、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体樹脂、スチレン−メタクリル酸共重合体樹脂、スチレン−無水マレイン酸共重合体樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂)、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂)、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)などが挙げられる。これらのうちの1種を用いても良いし、或いはこれらの2種以上を混合して用いても良い。光学板121中の光拡散性粒子としては、拡散板として一般的に用いられる光拡散性粒子が挙げられる。
本実施形態においては、光波長変換シート10をバックライト装置60、110に組み込んだ例について説明しているが、光波長変換シート10に代えて、光波長変換シート30、40をバックライト装置60、110に組み込んでもよい。
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの記載に限定されない。
<光波長変換層用組成物の調製>
まず、下記に示す組成となるように各成分を配合して、光波長変換層用組成物を得た。
(光波長変換層用組成物1)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV−5500」、DIC社製):99質量部
・緑色光発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒子径3.3nm):0.20質量部
・赤色光発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒子径5.2nm):0.20質量部
・光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):1質量部
・トルエン:3.0質量部
(光波長変換層用組成物2)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV−5500」、DIC社製):99質量部
・緑色光発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒子径3.3nm):0.20質量部
・赤色光発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒子径5.2nm):0.20質量部
・光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):1質量部
・エタノール:3.0質量部
(光波長変換層用組成物3)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV−5500」、DIC社製):99質量部
・緑色光発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒子径3.3nm):0.20質量部
・赤色光発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒子径5.2nm):0.20質量部
・光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):1質量部
・トルエン:1.0質量部
(光波長変換層用組成物4)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV−5500」、DIC社製):99質量部
・緑色光発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒子径3.3nm):0.20質量部
・赤色光発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒子径5.2nm):0.20質量部
・光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):1質量部
・トルエン:13.0質量部
(光波長変換層用組成物5)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV−5500」、DIC社製):99質量部
・緑色光発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒子径3.3nm):0.20質量部
・赤色光発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒子径5.2nm):0.20質量部
・光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):1質量部
・トルエン:0.5質量部
(光波長変換層用組成物6)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV−5500」、DIC社製):99質量部
・緑色光発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒子径3.3nm):0.20質量部
・赤色光発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒子径5.2nm):0.20質量部
・光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):1質量部
・トルエン:15.0質量部
(光波長変換層用組成物7)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV−5500」、DIC社製):99質量部
・緑色光発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒子径3.3nm):0.20質量部
・赤色光発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒子径5.2nm):0.20質量部
・光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):1質量部
・エタノール:0.5質量部
(光波長変換層用組成物8)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV−5500」、DIC社製):99質量部
・緑色光発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒子径3.3nm):0.20質量部
・赤色光発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒子径5.2nm):0.20質量部
・光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):1質量部
・エタノール:15.0質量部
(光波長変換層用組成物9)
・エポキシアクリレート(製品名「ユニディックV−5500」、DIC社製):99質量部
・緑色光発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 530」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒子径3.3nm):0.20質量部
・赤色光発光量子ドット(製品名「CdSe/ZnS 610」、SIGMA−ALDRICH社製、コア:CdSe、シェル:ZnS、平均粒子径5.2nm):0.20質量部
・光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184」、BASFジャパン社製):1質量部
<光拡散層用組成物の調製>
下記に示す組成となるように各成分を配合して、光拡散層用組成物を得た。
(光拡散層用組成物)
・ペンタエリスリトールトリアクリレート:99質量部
・光散乱性粒子(架橋ポリスチレン樹脂ビーズ、製品名「SBX−4」、積水化成品工業株式会社製、平均粒子径4μm):158質量部
・光重合開始剤(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Irgacure(登録商標)184、BASFジャパン社製):1質量部
・溶剤(メチルイソブチルケトン:シクロヘキサノン=1:1(質量比)):170質量部
<実施例1>
まず、2枚のシリカ蒸着層付きポリエチレンテレフタレートフィルムを次のような方法で作製した。高周波スパッタリング装置において、電極に周波数13.56MHz、電力5kWの高周波電力を印加することにより、チャンバー内で放電を生じさせて、大きさ7インチおよび厚みが50μmの光透過性基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名「ルミラーT60」、東レ社製)の片面にターゲット物質(シリカ)からなる、厚みが50nmであり、かつ屈折率が1.46であるバリア層としてのシリカ蒸着層を形成し、これにより、ポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面にシリカ蒸着層が形成されたバリアフィルムを2枚形成した。
次いで、両方のバリアフィルムにおけるシリカ蒸着層側の面とは反対側の面に上記光拡散層用組成物を、塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、80℃の乾燥空気を30秒間流通させて乾燥させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させた。その後、紫外線を積算光量が500mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより膜厚が10μmの光拡散層を形成し、光拡散層付きバリアフィルムを形成した。
次いで、一方の光拡散層付きバリアフィルムのシリカ蒸着層側に光波長変換層用組成物1を塗布し、60℃で乾燥させて、塗膜を形成した。そして、塗膜における光拡散層付きバリアフィルム側の面とは反対側の面に、シリカ蒸着層が接するように他方の光拡散層付きバリアフィルムを積層した。この状態で、紫外線を積算光量が500mJ/cm2になるように照射して塗膜を硬化させることにより、両方の光拡散層付きバリアフィルムに密着した70μmの光波長変換層を形成した。これにより、実施例1に係る光波長変換シートを得た。なお、光波長変換層の膜厚は、光波長変換シートの断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、20箇所ランダムに撮影し、その断面の画像から求めた。
<実施例2>
実施例2においては、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<実施例3>
実施例3においては、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<実施例4>
実施例4においては、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<比較例1>
比較例1においては、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物5を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<比較例2>
比較例2においては、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物6を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<比較例3>
比較例3においては、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物7を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<比較例4>
比較例4においては、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物8を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<比較例5>
比較例5においては、光波長変換層用組成物1の代わりに光波長変換層用組成物9を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、光波長変換シートを作製した。
<揮発性有機化合物の残存量測定>
上記実施例および比較例に係る光波長変換シート1m2当たりに含まれている揮発性有機化合物の残存量を以下の方法によって測定した。まず、光波長変換シートを1cm×2cmの大きさに切り取り、切り取った光波長変換シートを内容量20mlバイヤル瓶に入れて、密封した。ここで、光波長変換シートから一方のバリアフィルムを剥離して、剥離したバリアフィルムと、光波長変換層が露出した光波長変換シートの残りの部分とに分けた状態で、光波長変換シート(剥離したバリアフィルムおよび光波長変換シートの残りの部分)をバイヤル瓶に入れた。そして、光波長変換シートが入り、かつ密閉されたバイヤル瓶を160℃で15分間加熱した後、前記バイヤル瓶内の気体を一定量抜き取り、ガスクロマトグラフィー(アジレント・テクノロジ−株式会社製6890N GC System)に装填し、この装填された気体に含まれる揮発性有機化合物を定量し、この光波長変換シート1m2当たりに含まれている揮発性有機化合物の残存量(mg/m2)を算出した。
<剥離強度測定>
上記実施例および比較例に係る光波長変換シートにおいて、以下のようにして剥離強度を測定した。具体的には、まず、耐湿熱性試験が行われていない各光波長変換シートから、25mm幅の試験片を、端部に浮きが生じないようにカッターを用いて切り出した。次いで、得られた試験片を引っ張り試験機(機器名「テンシロン」、エ−・アンド・デ−(A&D)社製)に付属している、チャッキング用冶具に固定し、室温で、試験片の表面を0°として、この表面に対して剥離角180°の方向に引張速度0.3m/分の条件でポリエチレンテレフタレートフィルムを引っ張り、光波長変換層からポリエチレンテレフタレートフィルムを引き剥がし、そのときの光波長変換層からポリエチレンテレフタレートフィルムを引き剥がすのに要する力(剥離強度)を測定した。なお、この剥離強度が2.0(N/25mm)以上であれば、光波長変換層とバリアフィルムとの密着性は確保されていると判断できる。
<耐湿熱性試験における輝度変化>
上記実施例および比較例に係る光波長変換シートにおいて、光波長変換シートを60℃、相対湿度90%の環境下に250時間放置する耐湿熱性試験を行い、耐湿熱性試験前後における輝度変化を調べた。具体的には、まず、Kindle Fire(登録商標)HDX7のバックライト装置を用意し、耐湿熱性試験前の光波長変換シートをこのバックライト装置に組み込んだ。このバックライト装置は、発光ピーク波長が450nmの青色発光ダイオード、光拡散板、第1のプリズムシート、および第2のプリズムシートをこの順に備えているものであり、実施例および比較例に係る光波長変換シートは光拡散板と第1のプリズムシートの間に配置された。第1のプリズムシートおよび第2のプリズムシートは、シート状の本体部と、この本体部上に並べて配置され、かつ各々が配列方向と交差する方向に延びた三角柱状の複数の単位プリズムとを備え、単位プリズムの頂角が90°となっているものであった。第1のプリズムシートは、単位プリズムの配列方向が第2のプリズムシートの単位プリズムの配列方向と直交するように配置された。
そして、光波長変換シートを組み込んだバックライト装置の青色発光ダイオードを点灯させ、青色光を光波長変換シートの一方の表面に照射して、光波長変換シートの他方の表面を介してバックライト装置の発光面(第2のプリズムシートの表面)から出射する光の輝度を、光波長変換シートの厚み方向から、分光放射輝度計(製品名「CS2000」、コニカミノルタ社製)を用いて、測定角1°の条件で、測定した。
次いで、バックライト装置から耐湿熱性試験前の光波長変換シートを外し、この光波長変換シートに、光波長変換シートを60℃、相対湿度90%の環境下に250時間放置する耐湿熱性試験を行った。耐湿熱性試験後において、光波長変換シートを上記バックライト装置の光拡散板と第1のプリズムシートの間に配置し、上記と同様に、青色光を光波長変換シートの一方の表面に照射して、光波長変換シートの他方の表面を介してバックライト装置の発光面(第2のプリズムシートの表面)から出射する光の輝度を測定した。そして、測定したこれらの輝度から、耐湿熱性試験前後の輝度変化率をそれぞれ求めた。輝度変化率は、輝度変化率をAとし、耐湿熱性試験前の光波長変換シートの表面から出射する光の輝度をBとし、耐湿熱性試験後の光波長変換シートの表面から出射する光の輝度をCとしたとき、下記式(2)によって求めた。
A=│C−B│/B×100 …(2)
比較例1、3および5に係る光波長変換シートは、揮発性有機化合物の残存量が少な過ぎまたは揮発性有機化合物がほぼ残存していなかったので、剥離強度が高いものの、耐湿熱性試験前後における輝度変換率が大きかった。また、比較例2および4に係る光波長変換シートは、揮発性有機化合物の残存量が多過ぎたので、硬化不良が生じ、剥離強度が低かった。なお、比較例5において、光波長変換シートの揮発性有機化合物の残存量が0.5mg/m2となっているのは、光拡散層に含まれる揮発性有機化合物の残存量であるが、光拡散層に含まれる揮発性有機化合物の残存量は、通常の光波長変換層に含まれる揮発性有機化合物の残存量よりも一桁以上小さいので、ほぼ無視できる。
これに対し、実施例1〜4に係る光波長変換シートにおいては、揮発性有機化合物が適度に残存していたので、比較例5に比べると剥離強度が低いものの、2.0(N/25mm)以上の剥離強度が達成されていた。また、実施例1〜4に係る光波長変換シートにおいては、耐湿熱性試験前後における輝度変換率が小さかった。これにより、実施例1〜4においては、光波長変換層とバリアフィルムとの密着性を確保しつつ、量子ドットの経時変化を抑制できることが確認された。