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JP6686420B2 - 配線基板、電子装置、および配線基板の製造方法 - Google Patents

配線基板、電子装置、および配線基板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は配線基板、電子装置、および配線基板の製造方法に関する。
近年、人間の身体等に装着可能なウェアラブルデバイス等の開発が盛んになされており、これに関連して、伸縮性を有する配線基板の機能向上が求められている。
伸縮性を有する配線基板に関し、特許文献1には、エラストマーと、該エラストマー中に充填されている導電材と、を有する導電層と、該導電層を被覆するように配置されているエラストマー製の保護層と、を備えてなる導電膜が開示されている。特許文献1の記載によれば、係る導電膜は、伸長されても電気抵抗が増加しにくく、また、破断するおそれも少ないことが示されている。
特開2010−153821号公報
しかし、装置全体をさらに小型化する要求が高まってきていることもあり、配線基板の耐久性について、さらなる向上の要求がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、耐久性に優れた配線基板を提供するものである。
本発明によれば、
第1のエラストマーを含む基板と、
第2のエラストマーおよび導電性フィラーを含む導電性樹脂組成物により構成されており、前記基板の少なくとも一方の面に設けられた導電部と、
第3のエラストマーを含み、前記導電部の前記基板側とは反対側の面の少なくとも一部を被覆する被覆層とを備え、
前記第1のエラストマーがシリカ粒子(B)を含み、
前記導電性フィラーが銀粉を含み、前記第2のエラストマーがシリコーンゴムを含み、
前記導電性樹脂組成物中の前記導電性フィラーの含有量が、前記導電性樹脂組成物の固形分全体中、70質量%以上90質量%以下であり、
前記第1のエラストマーおよび前記第3のエラストマーは、シリコーンゴムを含む、配線基板が提供される。
本発明によれば、
上記の配線基板および電子部品を含む電子装置
が提供される。
本発明によれば、
第1のエラストマーを含む基板を準備する工程と、
前記基板の少なくとも一方の面に、第2のエラストマーおよび導電性フィラーを含む導電性樹脂組成物により構成された導電部を設ける工程と、
前記第1のエラストマーがシリカ粒子(B)を含み、
前記導電性フィラーが銀粉を含み、前記第2のエラストマーがシリコーンゴムを含み、
前記導電性樹脂組成物中の前記導電性フィラーの含有量が、前記導電性樹脂組成物の固形分全体中、70質量%以上90質量%以下であり、
第3のエラストマーを含み、前記導電部の前記基板側とは反対側の面の少なくとも一部を被覆する被覆層を形成する工程とを含み、
前記第1のエラストマーおよび前記第3のエラストマーは、シリコーンゴムを含む、配線基板の製造方法が提供される。
本発明によれば、耐久性に優れた配線基板を提供できる。
実施形態に係る配線基板の構成を示す図である。 実施形態に係る電子装置の構成を示す図である。 実施形態に係る電子装置の構成の変形例を示す図である。 実施形態に係る配線基板の構成の変形例を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
また、以下においては説明を簡単にするため、電子装置100および配線基板50の各構成要素の位置関係(上下関係等)が各図に示す関係であるものとして説明を行う場合がある。ただし、この説明における位置関係は、電子装置100および配線基板50の使用時や製造時の位置関係とは無関係である。
なお、「〜」は特に断りがなければ、「以上」から「以下」を表す。
図1は、本実施形態に係る配線基板50の構成を示す図である。
本実施形態に係る配線基板50は、第1のエラストマーを含む基板20と、第2のエラストマーおよび導電性フィラーを含む導電部10と、第3のエラストマーを含む被覆層30とを備える。導電部10は、基板20の少なくとも一方の面に設けられている。被覆層30は、導電部10の基板20側とは反対側の面の少なくとも一部を被覆する。第1のエラストマーおよび第3のエラストマーは、シリコーンゴムを含む。以下に詳しく説明する。
導電部10、基板20、および被覆層30がいずれもエラストマーを含むため、配線基板50は全体として伸縮性を有する。また、第1のエラストマーおよび第3のエラストマーがシリコーンゴムを含むことにより、配線基板50は伸縮性、耐熱性、化学的安定性、絶縁性に優れ、さらには生体適合性を有する。このような配線基板50は、フレキシブルデバイスに用いることができ、中でも特にウェアラブルデバイスに好適に用いることができる。なお、配線基板50は、全体として伸縮状態、非伸縮状態を取ることができればよく、その一部に非伸縮性の部材が含まれていても良い。
図2は、本実施形態に係る電子装置100の構成を示す図である。電子装置100は、配線基板50および電子部品60を含む。この電子部品60は、用途に応じ、公知の部品の中から適宜選択すればよい。具体的には、半導体素子、及び半導体素子以外の抵抗やコンデンサ等を挙げることができる。半導体素子としては、たとえば、トランジスタや、ダイオード、LED、コンデンサ等を挙げることができる。電子装置100は、たとえば配線基板50の上に電子部品60を配置したものである。電子部品60の電極は、配線基板50の導電部10の少なくとも一部と電気的に接続されて、回路を構成している。本図では、電子部品60が導電部10の上に配置されている例を示している。なお、電子部品60は、配線基板50のうち、被覆層30が設けられていない基板20上に配置されていても良いし、被覆層30の上に配置されていても良い。
図3は、本実施形態に係る電子装置100の構成の変形例を示す図である。本図の様に、電子部品60が基板20上に配置され、導電部10が電子部品60を覆うように設けられていても良い。また、被覆層30が、導電部10および電子部品60を覆うように設けられていても良い。
導電部10は、電子装置100において配線基板50上に配置される電子部品同士を電気的に接続する配線、または他の装置等との接続を可能とする電極パッド等を構成する導電パターンである。導電部10は第2のエラストマーを含むため伸縮性を有し、基板20や被覆層30の伸縮に追従して伸縮可能である。また、導電部10は導電性フィラーを含むため、伸縮状態および非伸縮状態のいずれにおいても、導電性を有する。なお、非伸縮状態とは、配線基板に対し、引っ張り力、圧縮力、および曲げ応力等のいずれの力も加えない状態を言う。
導電部10のうち、特に配線である部分について、配線幅は特に限定されず、適宜設定することができる。配線幅は、たとえば0.1mm以上であり、0.3mm以上であることがより好ましい。そうすることにより、高い導電性が得られる。また、配線幅は、たとえば2mm以下であり、1mm以下であることが好ましく、0.8mm以下であることがさらに好ましい。そうすることにより、配線基板50ひいては電子装置100の小型化が図れる。
また、導電部10の厚さは特に限定されず、適宜設定することができる。導電部10の厚さは、たとえば10μm以上であり、20μm以上であることがより好ましい。そうすることにより、高い導電性が得られる。また、導電部10の厚さは、たとえば1mm以下であり、500μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることがさらに好ましい。そうすることにより、配線基板50ひいては電子装置100の小型化が図れる。
本実施形態に係る配線基板50においては、材料や製法を工夫することにより耐久性に優れるので、配線の細線化、電子装置の小型化が可能である。
原理上、導電部については、導電性フィラーの含有量を高めることにより導電性を高めることができる。一方、導電性フィラーの含有率を高めることにより、導電部の伸縮性が損なわれる。ここで、被覆層を設けない場合には、導電部が基板の伸長に追従できず、導電部、中でも特に伸縮性基板と接しない面にひび割れ等が生じて、導電部の電気抵抗が高くなるなど、耐久性が損なわれやすい。
それに対し、図1に戻り、本実施形態に係る配線基板50では、導電部10は、第1面101が基板20に接し、第1面101と反対側の第2面102の少なくとも一部が被覆層30に接している。このように、第2面102が被覆層30で被覆されているため、導電部10の第2面102側が機械的に被覆層30に補助され、伸長によく追従させることができる。また、たとえ伸長により導電部10が損傷し、物理的欠陥が形成されたとしても、被覆層30の縮もうとする力がその欠陥を閉じる方向にはたらき、非伸縮状態での電気抵抗の増大を抑制できる。
被覆層30は、導電部10を保護する観点から、導電部10の第2面102の全体を覆っていることが好ましい。また、同様の観点から、導電部10の全ての外面の内、基板20と接する面および電子部品60との接続部を除く全ての領域を被覆層30が覆っていることがより好ましい。また、被覆層30は、基板20のうち導電部10が形成されていない領域の一部または全体を覆っていても良い。
本実施形態に係る配線基板50では、基板20および被覆層30が、伸縮性に優れるシリコーンゴムを含むため、被覆層30を設けていても、配線基板50の十分な伸縮性を確保できる。
被覆層30の厚さは、伸縮性と導電部の耐久性向上のバランスの観点から、0.05mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であることがより好ましい。また、同様の観点から、2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましく、0.8mm以下であることがさらに好ましい。
基板20の厚さは、伸縮性と耐久性のバランスの観点から、0.5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。また、同様の観点から、3000μm以下であることが好ましく、1000μm以下であることがより好ましい。
図4は、本実施形態に係る配線基板50の構成の変形例を示す図である。配線基板50は、導電部10、基板20、および被覆層30の他に、さらに他の層を、配線基板50の一部または全面に有していても良い。他の層は、例えば補助層40である。補助層40はたとえば配線基板50の耐久性を向上させる機能を有する。補助層40は、被覆層30と同じ組成物からなっていてもよいし、他の組成物からなっていてもよい。補助層40は、第4のエラストマーを含み、伸縮性を有することが好ましい。
補助層40が、被覆層30と同じ組成物からなる場合、被覆層30と補助層40との厚さの合計は、伸縮性と導電部の耐久性向上のバランスの観点から、0.05mm以上であることが好ましく、0.3μm以上であることがより好ましい。また、当該合計は、同様の観点から、2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましく、0.8mm以下であることがさらに好ましい。
本実施形態に係る基板20、導電部10、および被覆層30は、それぞれ第1、第2、および第3のエラストマーを含む樹脂組成物により構成される。以下では、各樹脂組成物について、説明する。
本実施形態に係る基板20および被覆層30は、それぞれ第1および第3のエラストマーとしてシリコーンゴムを含むシリコーンゴム系硬化性組成物により構成される。
本実施形態に係る導電部10は、第2のエラストマーを含む導電性樹脂組成物により構成される。この第2のエラストマーとしては、たとえばシリコーンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、スチレンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴム等を用いることができる。これらの中でも、化学的に安定性、機械的強度に優れる観点から、また、伸縮性向上の観点および基板20や被覆層30との密着性向上の観点等から、第2のエラストマーはシリコーンゴムを含むことが好ましい。その場合、導電性フィラーを多く含有させても良好な伸縮性等を確保できるため、導電性に優れる導電部10を形成することができる。導電性樹脂組成物は、基板20または被覆層30を構成するシリコーンゴム系硬化性組成物に、導電性フィラーを添加して得てもよい。
以下に、シリコーンゴム系硬化性組成物について説明する。
(エラストマー(A))
シリコーンゴム系硬化性組成物は、エラストマー(A)として、シリコーンゴムを含む。
シリコーンゴムとしては、たとえば、分子内にシロキサン構造を有するものが用いられる。
本実施形態においては、このようなシリコーンゴムの中でも、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1)を、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2)で架橋してなるシリコーンゴムが好ましく用いられる。
<ビニル基直鎖状含有オルガノポリシロキサン(A−1)>
ビニル基直鎖状含有オルガノポリシロキサン(A−1)は、直鎖構造を有し、かつ、ビニル基を含有しており、かかるビニル基が硬化時の架橋点となる。
このビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1)のビニル基の含有量は、特に限定されないが、0.01〜15モル%であるのが好ましく、0.05〜12モル%であるのがより好ましい。これにより、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1)中におけるビニル基の量が最適化され、各成分とのネットワークの形成を確実に行うことができる。
なお、本明細書中において、ビニル基の含有量とは、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1)を構成する全ユニットを100モル%としたときのビニル基含有シロキサンユニットのモル%である。ただし、ビニル基含有シロキサンユニット1つに対して、ビニル基が1つであるものとして算出を行う。
また、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1)の重合度は、特に限定されないが、好ましくは3000〜10000、より好ましくは4000〜8000の範囲内である。
さらに、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1)の比重は、特に限定されないが、0.9〜1.1程度の範囲であるのが好ましい。
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1)として、上記のような範囲内の重合度および比重を有するものを用いることにより、得られるシリコーンゴム系硬化性組成物の耐熱性、難燃性、化学的安定性等の向上を図ることができる。
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1)としては、特に、下記式(1)で表される構造を有するものであることが好ましい。
Figure 0006686420
式(1)中、Rは炭素数1〜10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられ、中でも、ビニル基が好ましい。炭素数1〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基等が挙げられる。
また、Rは炭素数1〜10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基が挙げられる。炭素数1〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
また、Rは炭素数1〜8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
さらに、式(1)中のRおよびRの置換基としては、例えば、メチル基、ビニル基等が挙げられ、Rの置換基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。
なお、式(1)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。さらに、R、およびRについても同様である。
さらに、m、nは、式(1)で表されるビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1)を構成する繰り返し単位の数であり、mは1〜1000の整数、nは3000〜10000の整数である。mは、好ましくは40〜700であり、nは、好ましくは3600〜8000である。
また、式(1)で表されるビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1)のより具体的構造としては、例えば下記式(1−1)で表されるものが挙げられる。
Figure 0006686420
式(1−1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、メチル基またはビニル基であり、少なくともこれらのうち一つがビニル基である。
さらに、以上のようなビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1)としては、ビニル基含有量が0.05〜0.2モル%である第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1(a))と、ビニル基含有量が0.5〜12モル%である第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1(b))とを含有するものであるのが好ましい。エラストマー(A)として、一般的なビニル基含有量を有する第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1(a))と、ビニル基含有量が高い第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1(b))とを組み合わせることで、ビニル基を偏在化させることができ、シリコーンゴムの架橋ネットワーク中に、より効果的に架橋密度の疎密を形成することができる。その結果、より効果的にシリコーンゴムの引裂き強度を高めることができる。また、これにより、シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物としての耐久性を飛躍的に向上させることができる。
具体的には、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1)として、例えば、上記式(1−1)において、Rがビニル基である単位および/またはRがビニル基である単位を、0.05〜0.2モル%含む第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1(a))と、Rがビニル基である単位および/またはRがビニル基である単位を、0.5〜12モル%含む第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1(b))とを用いるのが好ましい。
また、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1(a))は、ビニル基含有量が0.1〜0.15モル%であるのが好ましい。また、第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1(b))は、ビニル基含有量が、0.8〜8.0モル%であるのが好ましい。
さらに、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1(a))と第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1(b))とを組み合わせて配合する場合、(A−1(a))と(A−1(b))の比率は特に限定されないが、通常、質量比で(A−1(a)):(A−1(b))が1:0.05〜1:0.6であるのが好ましく、1:0.08〜1:0.5であるのがより好ましい。
なお、第1および第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1(a))および(A−1(b))は、それぞれ1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2)>
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2)は、直鎖構造を有する直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(a))と分岐構造を有する分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(b))とに分類され、本実施形態では、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(a))だけでもよいし、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(b))だけでもよいし、これらの直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(a))と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(b))の双方を含んでもよい。
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(a))は、直鎖構造を有し、かつ、Siに水素が直接結合した構造(≡Si−H)を有し、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1)のビニル基の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される成分が有する反応性基に作用し、これらの成分を架橋する重合体である。
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(a))の分子量は特に限定されないが、重量平均分子量が20000以下であるのが好ましく、1000以上、10000以下であることがより好ましい。
なお、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(a))の重量平均分子量は、GPC(ゲル透過クロマトグラフィー)により測定することができる。
また、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(a))は、ビニル基を有しないものであることが好ましい。これにより、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(a))の分子内において架橋反応が進行するのを的確に防止することができる。
以上のような直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(a))としては、例えば、下記式(2)で表される構造を有するものが好ましく用いられる。
Figure 0006686420
式(2)中、Rは炭素数1〜10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、またはヒドリド基である。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられる。炭素数1〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
また、Rは炭素数1〜10の置換または非置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基、これらを組み合わせた炭化水素基、またはヒドリド基である。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜10のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基等が挙げられる。炭素数1〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
なお、式(2)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。Rについても同様である。ただし、複数のRおよびRのうち、少なくとも2つ以上がヒドリド基である。
また、Rは炭素数1〜8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
なお、式(2)中のR,R,Rの置換基としては、例えば、メチル基、ビニル基等が挙げられ、分子内の架橋反応を防止する観点から、メチル基が好ましい。
さらに、m、nは、式(2)で表される直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(a))を構成する繰り返し単位の数であり、mは2〜500の整数、nは2〜400の整数であり、20≦m+n≦500である。好ましくは、mは2〜300の整数、nは2〜200の整数であり、40≦m+n≦300である。
なお、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(a))は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(b))は、分岐構造を有するため、架橋密度が高い領域を形成し、シリコーンゴムの系中の架橋密度の疎密構造形成に大きく寄与する成分である。また、上記直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(a))同様、Siに水素が直接結合した構造(≡Si−H)を有し、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1)のビニル基の他、シリコーンゴム系硬化性組成物に配合される各成分の反応性基に作用し、これらの成分を架橋する重合体である。
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(b))の比重は、0.9〜0.95の範囲である。
さらに、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(b))は、通常、ビニル基を有しないものであるのが好ましい。これにより、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(b))の分子内において架橋反応が進行するのを的確に防止することができる。
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(b))としては、下記平均組成式(c)で示されるものが好ましい。
平均組成式(c)
(H(R3−aSiO1/2(SiO4/2
(式(c)において、Rは一価の有機基、aは1〜3の範囲の整数、mはH(R3−aSiO1/2単位の数、nはSiO4/2単位の数である)。
式(c)において、Rは一価の有機基であり、好ましくは、炭素数1〜10の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基である。炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。
式(c)において、aは、ヒドリド基(Siに直接結合する水素原子)の数であり、1〜3の範囲の整数であり、好ましくは1である。
また、式(c)において、mはH(R3−aSiO1/2単位の数、nはSiO4/2単位の数である。
分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(b))は分岐状構造を有する。直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(a))と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(b))は、その構造が直鎖状か分岐状かという点で異なり、Siの数を1とした時のSiに結合するアルキル基Rの数(R/Si)が、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(a))では1.8〜2.1、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(b))では0.8〜1.7の範囲となる。
なお、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(b))は、分岐構造を有しているため、例えば、窒素雰囲気下、1000℃まで昇温速度10℃/分で加熱した際の残渣量が5%以上となる。これに対して、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(a))は、直鎖状であるため、上記条件で加熱した後の残渣量はほぼゼロとなる。
また、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(b))の具体例としては、下記式(3)で表される構造を有するものが挙げられる。
Figure 0006686420
式(3)中、Rは炭素数1〜8の置換または非置換のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基、もしくは水素原子である。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。炭素数1〜8のアリール基としては、例えば、フェニル基が挙げられる。Rの置換基としては、例えば、メチル基等が挙げられる。
なお、式(3)中、複数のRは互いに独立したものであり、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。
また、式(3)中、「−O−Si≡」は、Siが三次元に広がる分岐構造を有することを表している。
なお、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(b))は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(a))と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(b))において、Siに直接結合する水素原子(ヒドリド基)の量は、それぞれ、特に限定されない。ただし、本実施形態において、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1)中のビニル基1モルに対し、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(a))と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(b))の合計のヒドリド基量が、0.5〜5モルとなる量が好ましく、1〜3.5モルとなる量がより好ましい。これにより、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(a))および分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(b))と、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1)との間で、架橋ネットワークを確実に形成させることができる。
また、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(a))と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(b))とでは、通常、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(a))が主剤として含有され、分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(b))は、上述したように、シリコーンゴムにさらに架橋密度が高い領域を形成させる場合に添加される。したがって、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(a))と分岐状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(b))とを組み合わせて配合する場合、(A−2(a))と(A−2(b))の比率は、重量比で(A−2(a)):(A−2(b))が好ましくは1:0.1〜1:1に、より好ましくは1:0.2〜1:0.5に設定される。
本実施形態において、シリコーンゴム系硬化性組成物中におけるエラストマー(A)の含有量は、シリコーンゴム系硬化性組成物の固形分全体に対して、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。また、シリコーンゴム系硬化性組成物中におけるエラストマー(A)の含有量は、シリコーンゴム系硬化性組成物の固形分全体に対して、80質量%以下であることが好ましく、75質量%以下であることがより好ましく、70質量%以下であることがさらに好ましい。
エラストマー(A)の含有量を上記下限値以上とすることにより、シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物が適度な柔軟性を持つことができる。また、エラストマー(A)の含有量を上記上限値以下とすることにより、硬化物の機械的強度の向上を図ることができる。
なお、本明細書中において、「固形分」とは、水や有機溶媒等の揮発性成分を除去した成分全体を指し、たとえば常温で液体を呈していたとしても、揮発の起こらない成分については、固形分であるものとして合算する。
以下、各成分についても同様である。
(シリカ粒子(B))
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、必要に応じ、シリカ粒子(B)を含んでいてもよい。このシリカ粒子(B)を含ませることにより、シリコーンゴム系硬化性組成物から形成される硬化物の硬さや機械的強度の向上を図ることができる。
このシリカ粒子(B)は、比表面積が10〜400m/gであることが好ましく、20〜400m/gであることがより好ましい。また、そのメディアン径D50が1〜100nmであることが好ましく、5〜20nmであることがより好ましい。
シリカ粒子(B)として、かかる比表面積およびメディアン径の範囲内であるものを用いることにより、上述したシリカ粒子(B)としての機能を顕著に発揮させることができる。
なお、シリカ粒子(B)の粒径は、たとえば、シリコーンゴム系硬化性組成物あるいはこの硬化物について透過型電子顕微鏡等で観察の上、画像解析を行い、任意に選んだシリカ粒子200個の平均値として定義することができる。
シリカ粒子(B)としては、特に限定されないが、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ等を用いることができる。
なお、シリカ粒子(B)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態において、シリコーンゴム系硬化性組成物中におけるシリカ粒子(B)の含有量は、シリコーンゴム系硬化性組成物の固形分全体に対して、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。また、シリコーンゴム系硬化性組成物中におけるシリカ粒子(B)の含有量は、シリコーンゴム系硬化性組成物の固形分全体に対して、40質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。
シリカ粒子(B)の含有量を上記下限値以上、上限値以下とすることにより、シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物が適度な機械的強度を持つことができる。
(シランカップリング剤(C))
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、シランカップリング剤(C)を含んでいてもよい。このシランカップリング剤(C)は、加水分解性基を有するものであり、この加水分解基が水により加水分解されて水酸基になり、この水酸基がシリカ粒子(B)表面の水酸基と脱水縮合反応することで、シリカ粒子(B)の表面改質を行うことができる。
その他、シリカ粒子(B)が存在しない場合であっても、導電部10、基板20および被覆層30の互いの密着性を向上させるという効果を発揮することができる。
また、このシランカップリング剤(C)は、疎水性基を有するものを用いることができる。これにより、シリカ粒子(B)の表面にこの疎水性基が付与されるため、シリコーンゴム系硬化性組成物中において、シリカ粒子(B)の凝集力が低下し、その結果、該組成物中のシリカ粒子の分散性が向上する。これにより、シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化物の機械的強度がいっそう向上する。
さらに、シランカップリング剤(C)は、ビニル基を有しているのが好ましい。これにより、シリカ粒子(B)を用いる場合にあっては、その表面にビニル基が導入される。
これにより、たとえば、エラストマー(A)として、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2)が含まれる場合、以下のような効果が奏される。
すなわち、シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化の際、すなわち、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1)が有するビニル基と、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2)が有するヒドリド基とがヒドロシリル化反応して、これらによるネットワーク(架橋構造)が形成される際に、シリカ粒子(B)が有するビニル基も、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2)が有するヒドリド基とのヒドロシリル化反応に関与するため、ネットワーク中にシリカ粒子(B)も取り込まれるようになる。これにより、形成される硬化物の高硬度化および高モジュラス化を図ることができる。
このようなシランカップリング剤(D)としては、例えば、下記式(4)で表わされるものが挙げられる。
−Si−(OR)4−n・・・(4)
上記式(4)中、nは1〜3の整数を表わす。Yは、疎水性基、親水性基またはビニル基を有するもののうちのいずれかの官能基を表わし、nが1の時は疎水性基であり、nが2または3の時はその少なくとも1つが疎水性基である。ORは、加水分解性基を表わす。
疎水性基は、炭素数1〜6のアルキル基、アリール基、またはこれらを組み合わせた炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基等が挙げられ、中でも、特に、メチル基が好ましい。
また、親水性基は、例えば、水酸基、スルホン酸基、カルボキシル基またはカルボニル基等が挙げられ、中でも、特に、水酸基が好ましい。なお、親水性基は、官能基として含まれていてもよいが、シランカップリング剤(C)に疎水性を付与するという観点からは含まれていないのが好ましい。
さらに、加水分解性基は、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、クロロ基またはシラザン基等が挙げられる。なお、加水分解性基としてシラザン基を有するものは、その構造上の特性から、上記式(4)中の(Yn−Si−)の構造を2つ有するものとなる。
上記式(4)で表されるシランカップリング剤(C)の具体例は、例えば、官能基として疎水性基を有するものとして、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシランのようなアルコキシシラン;メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシランのようなクロロシラン;ヘキサメチルジシラザンが挙げられ、官能基としてビニル基を有するものとして、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランのようなアルコキシシラン; ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシランのようなクロロシラン;ジビニルテトラメチルジシラザンが挙げられるが、中でも、上記記載を考慮すると、特に、疎水性基を有するものとしてはヘキサメチルジシラザン、ビニル基を有するものとしてはジビニルテトラメチルジシラザンであるのが好ましい。
本実施形態において、シリコーンゴム系硬化性組成物中におけるシランカップリング剤(C)の含有量は、シリコーンゴム系硬化性組成物の固形分全体に対して、2.0質量%以上であることが好ましく、4.0質量%以上であることがより好ましく、6.0質量%以上であることがさらに好ましい。また、シリコーンゴム系硬化性組成物中におけるシランカップリング剤(C)の含有量は、シリコーンゴム系硬化性組成物の固形分全体に対して、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、8質量%以下であることがさらに好ましい。
シランカップリング剤(C)の含有量を上記下限値以上、上限値以下とすることにより、導電部10、基板20、被覆層30が互いに適度な密着性を持ち、また、シリカ粒子(B)を用いる場合においては、硬化物全体としての機械的強度の向上に資することができる。
(白金または白金化合物(D))
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、白金または白金化合物(D)を含むことができる。
白金または白金化合物(D)は、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物硬化の際の触媒として作用する成分である。
白金または白金化合物(D)としては、公知のものを使用することができ、例えば、白金黒、白金をシリカやカーボンブラック等に担持させたもの、塩化白金酸または塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とオレフィンの錯塩、塩化白金酸とビニルシロキサンとの錯塩等が挙げられる。
なお、白金または白金化合物(D)は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態において、シリコーンゴム系硬化性組成物中における白金または白金化合物(D)の含有量は、シリコーンゴム系硬化性組成物の固形分全体に対して、0.0005質量%以上であることが好ましく、0.001質量%以上であることがより好ましく、0.003質量%以上であることがさらに好ましい。また、シリコーンゴム系硬化性組成物中における白金または白金化合物(D)の含有量は、シリコーンゴム系硬化性組成物の固形分全体に対して、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましい。
白金または白金化合物(D)の含有量を上記下限値以上とすることにより、シリコーンゴム系硬化性組成物が適切な速度で硬化することが可能となる。また、白金または白金化合物(D)の含有量を上記上限値以下とすることにより、シリコーンゴム系硬化性組成物を作製する際のコストの削減に資することができる。
(水(E))
また、本実施形態の導電性組成物には、水(E)が含まれていてもよい。
これにより、先述のシランカップリング剤(C)が加水分解を起こし、所望の効能を発現しやすくなる。
なお、この水(E)の添加量は任意である。
(その他の成分)
さらに、本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、上記(A)〜(E)成分の他、樹脂組成物に配合される公知の成分を含有していてもよい。例えば、珪藻土、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、ガラスウール、マイカ等が挙げられる。その他、分散剤、顔料、染料、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、熱伝導性向上剤等を適宜配合することができる。
また、シリコーンゴム系硬化性組成物の硬化性を制御する観点から、適宜反応阻害剤を加えることもできる。
(シリコーンゴム系硬化性組成物の製造方法)
続いて、本実施形態に係るシリコーンゴム系硬化性組成物の製造方法について説明する。
本実施形態のシリコーンゴム系硬化性組成物は、たとえば、以下に示すような工程を経ることにより製造することができる。
[1]まず、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1)と、シリカ粒子(B)と、シランカップリング剤(C)とを所定量秤量し、その後、任意の混練装置により、混練することで、これら各成分を含有する混練物を得る。
なお、この混練物は、予めビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1)とシランカップリング剤(C)とを混練し、その後、シリカ粒子(B)を混練(混合)して得るのが好ましい。これにより、シリカ粒子(B)の分散性がより向上する。
また、この混練物を得る際には、水(E)を必要に応じて、各成分に添加するようにしてもよい。
ここで、各成分の混練は、第1温度で加熱する第1ステップと、第2温度で加熱する第2ステップとを経るようにするのが好ましい。これにより、第1ステップにおいて、シリカ粒子(B)の表面をシランカップリング剤(C)で表面処理することができるとともに、第2ステップにおいて、シリカ粒子(B)とシランカップリング剤(C)との反応で生成した副生成物を混練物中から確実に除去することができる。
第1温度は、40〜120℃程度であるのが好ましく、60〜90℃程度であるのがより好ましい。第2温度は、130〜210℃程度であるのが好ましく、160〜180℃程度であるのがより好ましい。
また、第1ステップにおける雰囲気は、窒素雰囲気下のような不活性雰囲気下であるのが好ましく、第2ステップにおける雰囲気は、減圧雰囲気下であるのが好ましい。
さらに、第1ステップの時間は、0.3〜1.5時間程度であるのが好ましく、0.5〜1.2時間程度であるのがより好ましい。第2ステップの時間は、0.7〜3.0時間程度であるのが好ましく、1.0〜2.0時間程度であるのがより好ましい。
第1ステップおよび第2ステップを、上記のような条件とすることで、前記効果をより顕著に得ることができる。
[2]次に、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2)と、白金または白金化合物(D)とを所定量秤量し、その後、任意の混練装置を用いて、前記工程[1]で調製した混練物に、これら成分を混練することで、シリコーンゴム系硬化性組成物を得る。
なお、この各成分の混練の際には、予め前記工程[1]で調製した混練物とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2)とを、前記工程[1]で調製した混練物と白金または白金化合物(D)とを混練し、その後、それぞれの混練物を混練するのが好ましい。これにより、各成分を確実に分散させることができる。
この工程[2]において、混練する際の温度は、ロール設定温度として、10〜70℃程度であるのが好ましく、25〜30℃程度であるのがより好ましい。
さらに、混練する時間は、5分〜1時間程度であるのが好ましく、10〜40分程度であるのがより好ましい。
なお、各工程[1]、[2]において使用される混練装置としては、特に限定されないが、例えば、ニーダー、2本ロール、バンバリーミキサー(連続ニーダー)、加圧ニーダー等を用いることができる。
また、本工程[2]において、混練物中に1−エチニル−1−シクロヘキサノールのような反応抑制剤を添加するようにしてもよい。これにより、混練物の温度が比較的高い温度に設定されたとしても、各成分の反応の進行をより的確に防止または抑制することができる。
次いで、導電性樹脂組成物について、第2のエラストマーがシリコーンゴムを含む場合を例に説明する。
(エラストマー(A))
導電性樹脂組成物は、エラストマー(A)として、シリコーンゴムを含む。導電性樹脂組成物中に含まれるエラストマー(A)としては、シリコーンゴム系硬化性組成物中に含まれるエラストマー(A)として例示したものを用いることが可能である。また、好ましい条件についても、以下に説明する点を除いてシリコーンゴム系硬化性組成物中に含まれるエラストマー(A)と同じである。
本実施形態において、導電性樹脂組成物中におけるエラストマー(A)の含有量は、導電性樹脂組成物の固形分全体に対して、5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。また、導電性樹脂組成物中におけるエラストマー(A)の含有量は、導電性樹脂組成物の固形分全体に対して、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
エラストマー(A)の含有量を上記下限値以上とすることにより、導電性樹脂組成物の硬化物が適度な柔軟性を持つことができる。また、エラストマー(A)の含有量を上記上限値以下とすることにより、硬化物の機械的強度の向上を図ることができる。
(シリカ粒子(B))
本実施形態の導電性樹脂組成物は、必要に応じ、シリカ粒子(B)を含んでいてもよい。このシリカ粒子(B)を含ませることにより、導電性樹脂組成物から形成される硬化物の硬さや機械的強度の向上を図ることができる。導電性樹脂組成物中に含まれるシリカ粒子(B)としては、シリコーンゴム系硬化性組成物中に含まれるシリカ粒子(B)として例示したものを用いることが可能である。また、好ましい条件についても、以下に説明する点を除いてシリコーンゴム系硬化性組成物中に含まれるシリカ粒子(B)と同じである。
本実施形態において、導電性樹脂組成物中におけるシリカ粒子(B)の含有量は、導電性樹脂組成物の固形分全体に対して、2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、4質量%以上であることがさらに好ましい。また、導電性樹脂組成物中におけるシリカ粒子(B)の含有量は、導電性樹脂組成物の固形分全体に対して、15質量%以下であることが好ましく、12質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
シリカ粒子(B)の含有量を上記下限値以上、上限値以下とすることにより、導電性樹脂組成物の硬化物が適度な機械的強度を持つことができる。また、シリカ粒子(B)の含有量を上記上限値以下とすることにより、硬化物が適度な導電特性を持つことができる。
(シランカップリング剤(C))
本実施形態の導電性樹脂組成物は、シランカップリング剤(C)を含んでいてもよい。このシランカップリング剤(C)は、加水分解性基を有するものであり、この加水分解基が水により加水分解されて水酸基になり、この水酸基がシリカ粒子(B)表面の水酸基と脱水縮合反応することで、シリカ粒子(B)の表面改質を行うことができる。
その他、シリカ粒子(B)が存在しない場合であっても、導電部10と基板20および被覆層30との密着性を向上させるという効果を発揮することができる。
導電性樹脂組成物中に含まれるシランカップリング剤(C)としては、シリコーンゴム系硬化性組成物中に含まれるシランカップリング剤(C)として例示したものを用いることが可能である。また、好ましい条件についても、以下に説明する点を除いてシリコーンゴム系硬化性組成物中に含まれるシランカップリング剤(C)と同じである。
本実施形態において、導電性樹脂組成物中におけるシランカップリング剤(C)の含有量は、導電性樹脂組成物の固形分全体に対して、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。また、導電性樹脂組成物中におけるシランカップリング剤(C)の含有量は、導電性樹脂組成物の固形分全体に対して、5質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましい。
シランカップリング剤(C)の含有量を上記下限値以上、上限値以下とすることにより、導電部10が被覆層30および基板20と適度な密着性を持ち、また、シリカ粒子(B)を用いる場合においては、硬化物全体としての機械的強度の向上に資することができる。また、シランカップリング剤(C)の含有量を上記上限値以下とすることにより、硬化物である導電部10が適度な導電特性を持つことができる。
(白金または白金化合物(D))
本実施形態の導電性樹脂組成物は、白金または白金化合物(D)を含むことができる。
白金または白金化合物(D)は、本実施形態の導電性樹脂組成物硬化の際の触媒として作用する成分である。導電性樹脂組成物中に含まれる白金または白金化合物(D)としては、シリコーンゴム系硬化性組成物中に含まれる白金または白金化合物(D)として例示したものを用いることが可能である。また、好ましい条件についても、以下に説明する点を除いてシリコーンゴム系硬化性組成物中に含まれる白金または白金化合物(D)と同じである。
本実施形態において、導電性樹脂組成物中における白金または白金化合物(D)の含有量は、導電性樹脂組成物の固形分全体に対して、0.0005質量%以上であることが好ましく、0.001質量%以上であることがより好ましく、0.003質量%以上であることがさらに好ましい。また、導電性樹脂組成物中における白金または白金化合物(D)の含有量は、導電性樹脂組成物の固形分全体に対して、1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましい。
白金または白金化合物(D)の含有量を上記下限値以上とすることにより、導電性樹脂組成物が適切な速度で硬化することが可能となる。また、白金または白金化合物(D)の含有量を上記上限値以下とすることにより、導電性樹脂組成物を作製する際のコストの削減に資することができる。
(水(E))
また、本実施形態の導電性組成物には、水(E)が含まれていてもよい。
これにより、先述のシランカップリング剤(C)が加水分解を起こし、所望の効能を発現しやすくなる。
なお、この水(E)の添加量は任意である。
(導電性フィラー)
本実施形態の導電性樹脂組成物は、導電性フィラーを含む。
この導電性フィラーは特に限定はされないが、例えば、銅、銀、金、ニッケル、錫、鉛、亜鉛、ビスマス、アンチモン、或いはこれらを合金化した金属粉、導電有機化合物、導電性カーボン材料のうちの少なくとも一種類、あるいは、これらのうちの二種以上を含むことができる。
これらのうち、導電性フィラーとしては、導電性の高さや入手容易性の高さから、銀または銅を含むこと、すなわち、銀粉または銅粉を含むことが好ましい。
なお、これらの導電性フィラーは他種金属でコートしたものも使用できる。
本実施形態において、導電性フィラーの形状には制限がないが、樹枝状、球状、リン片状等の従来から用いられているものが使用できる。
本実施形態において、導電性樹脂組成物中における導電性フィラーの含有量は、導電性樹脂組成物の固形分全体に対して、60質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。また、導電性樹脂組成物中における導電性フィラーの含有量は、導電性樹脂組成物の固形分全体に対して、90質量%以下であることが好ましく、88質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることがさらに好ましい。
導電性フィラーの含有量を上記下限値以上とすることにより、導電性樹脂組成物の硬化物が適度な導電特性を持つことができる。また、導電性フィラーの含有量を上記上限値以下とすることにより、硬化物が適度な柔軟性を持つことができる。
(その他の成分)
さらに、本実施形態の導電性樹脂組成物は、上記(A)〜(E)成分の他、樹脂組成物に配合される公知の成分を含有していてもよい。例えば、珪藻土、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、ガラスウール、マイカ等が挙げられる。その他、分散剤、顔料、染料、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、熱伝導性向上剤等を適宜配合することができる。
また、導電性樹脂組成物の硬化性を制御する観点から、適宜反応阻害剤を加えることもできる。
(導電性樹脂組成物の製造方法)
続いて、本実施形態に係る導電性樹脂組成物の製造方法について説明する。
本実施形態の導電性樹脂組成物は、たとえば、以下に示すような工程を経ることにより製造することができる。
まず、シリコーンゴム系硬化性組成物を製造する方法の工程[1]および[2]と同様にして、シリコーンゴム系硬化性組成物を得る。導電性樹脂組成物を製造する方法の、各工程における好ましい条件は、シリコーンゴム系硬化性組成物を製造する方法で説明した条件と同じである。
得られたシリコーンゴム系硬化性組成物を溶媒に溶かし、導電性フィラーを加えることで、導電性樹脂組成物を得ることができる。
ここで用いられる溶媒は、上記の配合物を均一に溶解ないし分散させることのできる溶媒の中から適宜選択すればよい。
具体的な溶媒の例としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、オクタン、テトラデカンなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、トリフルオロメチルベンゼン、ベンゾトリフルオリドなどの芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、シクロペンチルエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタンなどのハロアルカン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのカルボン酸アミド類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド類などを例示することができる。
溶媒は、これらのうち一種類を単独で用いても良く、二種類以上の溶媒を任意の比率で混合して用いても良い。
なお、本実施形態では、シリコーンゴム系硬化性樹脂組成物を用いて導電性樹脂組成物を製造する方法について説明したが、これに限定されず、用いるエラストマーの種類に応じて、公知の方法を適宜用いることができる。
たとえば、第2のエラストマーとしてウレタンゴムを用いる場合には、ウレタンエラストマー粒子の水分散液に対し、導電性フィラーを加えることで、導電性樹脂組成物を製造できる。
配線基板50において、基板20を構成するシリコーンゴム系硬化性組成物と、被覆層30を構成するシリコーンゴム系硬化性組成物とは、同一の組成であっても良いし、互いに異なる組成であってもよい。また、基板20を構成するシリコーンゴム系硬化性組成物に含まれるエラストマーである第1のエラストマーと、被覆層30を構成するシリコーンゴム系硬化性組成物に含まれるエラストマーである第3のエラストマーとは、互いに同一であっても良いし、異なっても良い。
第1のエラストマー、第2のエラストマー、および第3のエラストマーのうち、少なくとも1つはビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1)の架橋体(a)を含むことが好ましく、第1のエラストマー、第2のエラストマー、および第3のエラストマーがいずれもビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1)の架橋体(a)を含むことがより好ましい。
また、当該架橋体(a)は、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2)との架橋体であることがより好ましい。
また、第1のエラストマー、第2のエラストマー、および第3のエラストマーのうち、少なくとも1つはシリカ粒子(B)を含むことが好ましく、第1のエラストマー、第2のエラストマー、および第3のエラストマーがいずれもシリカ粒子(B)を含むことがより好ましい。
上記配合を調整することにより、本実施形態に係る配線基板50の100%モジュラスを設定することができる。配線基板50の25℃での100%モジュラスは、たとえば5.0MPa以下であり、より好ましくは3.0MPa以下である。また、配線基板50の25℃での100%モジュラスは例えば0.1MPa以上である。そのことにより、柔軟性と伸縮性の向上が図れる。配線基板50の100%モジュラスは、たとえば引張試験機(島津製作所社製、オートグラフ)を用い、試験片つかみ具の移動速度を500mm/minとして測定することができる。
また、上記配合を調整することにより、本実施形態に係る基板20の引き裂き強さを設定することができる。基板20の引き裂き強さは、たとえば20N/mm以上であり、より好ましくは30N/m以上である。また、基板20の引き裂き強さはたとえば70N/m以下である。そのことにより、耐久性、信頼性の向上が図れる。基板20の引き裂き強さは、厚みを1mmとした切込みありクレセント形試験片について、JIS K6252(2007)の方法で測定することができる。測定条件は、たとえば試験片つかみ具の移動速度を500mm/minとすることができる。
また、上記配合を調整することにより、本実施形態に係る非伸縮状態での導電部10の体積抵抗率を設定することができる。当該体積抵抗率は、たとえば1.0×10−2Ω・cm以下であり、より好ましくは3.0×10−3Ω・cm以下であり、さらに好ましくは1.0×10−3Ω・cm以下である。また、当該体積抵抗率は、たとえば1.0×10−6Ω・cm以上である。配線基板50の機能の信頼性および配線基板50を用いて作製される電子装置100の省エネルギー化が図れる。当該体積抵抗率は、たとえば直流電圧・電流源/モニタを用いて導電部の抵抗値を測定し、測定された抵抗値に対して配線パターンの長さ方向に垂直な断面積を乗じ、さらに長さの値で除することで求めることができる。
本実施形態に係る配線基板50の製造方法について以下に説明する。
当該製造方法は、第1のエラストマーを含む基板20を準備する工程、第2のエラストマーおよび導電性フィラーを含む導電部10を設ける工程、および、第3のエラストマーを含む被覆層30を形成する工程を含む。導電部10を設ける工程では、基板20の少なくとも一方の面に導電部10を設ける。被覆層30を形成する工程では、導電部10の基板20側とは反対側の面の少なくとも一部を被覆するよう被覆層30を設ける。第1のエラストマーおよび第3のエラストマーは、シリコーンゴムを含む。以下に詳しく説明する。
まず、基板20を準備する工程では、上記したシリコーンゴム系硬化性組成物を型枠内で熱プレスし、シート化する。この熱プレスにおいては、加熱温度をたとえば100℃以上250℃以下、圧力を5MPa以上20MPa以下、熱プレス時間を1分以上20分以下とすることができる。
次いで、導電部10を設ける工程では、基板20に対し、スクリーン印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷等の公知の方法により、上記した導電性樹脂組成物をインクとして導電部10となるパターンを印刷する。それをオーブンで加熱し、導電部10を形成する。このとき、加熱温度はたとえば100℃以上300℃以下とすることができる。また、加熱時間はたとえば10分以上30時間以下とすることができる。
次いで、行う被覆層30を形成する工程は、基板20、導電部10、および被覆層形成用樹脂組成物が、この順に積層された積層体を加熱加圧する工程を含む。本実施形態では、具体的には、基板20の導電部10を設けた面上に、液状の被覆層形成用樹脂組成物を塗布する。そうすることにより、基板20、導電部10、および液状の被覆層形成用樹脂組成物が、この順に積層された積層体が得られる。
液状の被覆層形成用樹脂組成物は、未硬化状態であり、たとえば上記したシリコーンゴム系硬化性組成物を溶剤に溶解した溶液である。または、液状の被覆層形成用樹脂組成物は、以下の様に得られる樹脂組成物であってもよい。まず、上記したシリコーンゴム系硬化性組成物を得る工程[2]において、工程[1]で調製した混練物とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2)とを混練して混練物Aを得る。一方、工程[1]で調製した混練物と白金または白金化合物(D)とを混練して混練物Bを得る。そして、混練物Aと混練物Bを溶媒に添加して混ぜながら溶解させて液状の樹脂組成物が得られる。
ここで、具体的な溶媒の例としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、オクタン、テトラデカンなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、トリフルオロメチルベンゼン、ベンゾトリフルオリドなどの芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、シクロペンチルエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタンなどのハロアルカン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのカルボン酸アミド類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド類が挙げられる。溶媒は、これらのうち一種類を単独で用いても良く、二種類以上の溶媒を任意の比率で混合して用いても良い。また、当該溶液におけるシリコーンゴム系硬化性組成物の濃度は、たとえば20wt%以上40wt%以下とすることができる。
次いで、この積層体を、加熱加圧して被覆層形成用樹脂組成物を硬化させることにより、配線基板50が得られる。この加熱加圧において被覆層形成用樹脂組成物から溶媒を揮発させながら、樹脂を硬化することで被覆層30が形成される。加熱加圧においては、加熱温度をたとえば100℃以上250℃以下、圧力を0.1MPa以上20MPa以下、加熱加圧時間を1分以上20分以下とすることができる。ここで、基板や配線の損傷を防ぐ観点から、加圧の圧力は0.1MPa以上5.0MPa以下とすることがより好ましい。なお、被覆層30を形成する工程では、マスクパターンを設ける等の方法で、所望の領域にのみ被覆層30を設けることができる。
(変形例1)
本実施形態に係る配線基板50の製造方法の変形例1について、以下に説明する。本変形例に係る配線基板50の製造方法は、被覆層30を形成する工程の加熱加圧する工程において、基板20、導電部10、およびシート状の被覆層形成用樹脂組成物が、この順に積層された積層体を加熱加圧する点以外は、本実施形態に係る配線基板50の製造方法と同じである。
本変形例では、シート状の被覆層形成用樹脂組成物として、たとえば未硬化の上記シリコーンゴム系硬化性組成物からなるシートを別途準備しておき、基板20の導電部10を設けた面上に、液状の被覆層形成用樹脂組成物を塗布する代わりに当該シートを配置して、積層体を得る。当該積層体を、実施形態に係る配線基板50の製造方法と同様に加熱加圧してシート状の被覆層形成用樹脂組成物を硬化させることにより被覆層30が形成され、配線基板50が得られる。
ここで、シート状の被覆層形成用樹脂組成物は、たとえば上記したシリコーンゴム系硬化性組成物を型枠内でプレスし、シート化することにより得られる。このプレスにおいては、温度をたとえば10℃以上40℃以下、圧力を0.3MPa以上20MPa以下、熱プレス時間を1分以上20分以下とすることができる。得られるシート状の被覆層形成用樹脂組成物はたとえば粘土状の固体であり、未硬化状態である。
本変形例によれば被覆層30は、積層前にシート状に形成されることにより、液状の樹脂組成物を塗布する場合よりも厚い被覆層30を容易に形成することができる。このことにより、配線基板50の耐久性を向上させることができる。
(変形例2)
本実施形態に係る配線基板50の製造方法の変形例2について、以下に説明する。本変形例に係る配線基板50の製造方法は、被覆層30を形成する工程の加熱加圧する工程において、基板20と、導電部10と、液状の被覆層形成用樹脂組成物と、第4のエラストマーを含む補助層40とが、この順に積層された積層体を加熱加圧する点以外は、本実施形態に係る配線基板50の製造方法と同じである。
具体的には、補助層40としてのシートを別途準備しておき、基板20の導電部10を設けた面上に、実施形態で説明した液状の被覆層形成用樹脂組成物を塗布した後、補助層40としてのシートをその上に配置して、積層体を得る。ここで、補助層40は、未硬化状態であっても良いし、硬化されたものであっても良い。補助層40は第4のエラストマーを含む樹脂組成物により構成される。この第4のエラストマーとしては、たとえばシリコーンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、スチレンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム等を用いることができる。これらの中でも、化学的に安定性、機械的強度に優れる観点から、また、伸縮性向上の観点および基板20や被覆層30との密着性向上の観点等から、シリコーンゴムを含むことが好ましい。補助層40はたとえば上記したシリコーンゴム系硬化性組成物から形成できる。
次いで、当該積層体を実施形態に係る配線基板50の製造方法と同様に加熱加圧して、配線基板50が得られる。積層体における補助層40が未硬化である場合、被覆層形成用樹脂組成物を硬化させる際に、補助層40も合わせて硬化させることができる。
ここで、補助層40としてのシートはたとえば上記したシリコーンゴム系硬化性組成物を型枠内で熱プレスし、シート化することにより得られる。この熱プレスにおいては、加熱温度をたとえば100℃以上250℃以下、圧力を0.3MPa以上20MPa以下、熱プレス時間を1分以上20分以下とすることができる。
本変形例によれば、補助層40を有する配線基板50が作製できるため、配線基板50の耐久性の向上が図れる。
(変形例3)
本実施形態に係る配線基板50の製造方法の変形例3について、以下に説明する。本変形例に係る配線基板50の製造方法は、被覆層30を形成する工程の加熱加圧する工程において、基板20と、導電部10と、シート状の被覆層形成用樹脂組成物と、第4のエラストマーを含む補助層40とが、この順に積層された積層体を加熱加圧する点以外は、変形例1と同じである。
具体的には、補助層40としてのシートを別途準備しておき、変形例1で説明したのと同様のシート状の被覆層形成用樹脂組成物を基板20および導電部10上に配置した後、補助層40としてのシートをその上にさらに配置して、積層体を得る。ここで、補助層40は、未硬化状態であっても良いし、硬化されたものであっても良い。補助層40としてのシートは、変形例2と同様に準備できる。
次いで、当該積層体を実施形態に係る配線基板50の製造方法と同様に加熱加圧して、配線基板50が得られる。
本変形例によれば、変形例1および変形例2と同様の効果が得られる。
なお、本実施形態および各変形例では、被覆層30を形成する工程において基板20、導電部10および被覆層形成用樹脂組成物を含む積層体を加熱加圧する例について説明したが、これに限定されない。例えば、積層体を得た後、加圧せずに加熱して硬化させても良い。その場合、配線基板50の最上面は必ずしも平坦ではなく、導電部10や基板20の形状に起因する曲面からなる凹凸が生じ得る。
本実施形態によれば、材料の配合を調整し、製法上の工夫を行うことにより、より伸縮性、耐久性に優れる配線基板を得ることができる。
電子装置100は、導電部を設ける工程の後、被覆層を形成する工程の前に基板20上に電子部品60を配置し、電子部品60の電極と導電部10とを電気的に接続することにより得ることができる。なお、これに限らず、一部に導電部10が露出した配線基板50を作製した後に配線基板50上に電子部品60を配置し、電子部品60の電極と導電部10とを電気的に接続しても良い。
次に、本実施形態の作用および効果について説明する。
本実施形態によれば、基板と被覆層がいずれもシリコーンゴムを含むことにより、耐久性に優れた配線基板を得られる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 第1のエラストマーを含む基板と、
第2のエラストマーおよび導電性フィラーを含み、前記基板の少なくとも一方の面に設けられた導電部と、
第3のエラストマーを含み、前記導電部の前記基板側とは反対側の面の少なくとも一部を被覆する被覆層とを備え、
前記第1のエラストマーおよび前記第3のエラストマーは、シリコーンゴムを含む、配線基板。
2. 1.に記載の配線基板において、
前記第2のエラストマーはシリコーンゴムを含む、配線基板。
3. 1.または2.に記載の配線基板において、
前記第1のエラストマー、前記第2のエラストマー、および前記第3のエラストマーのうち、少なくとも1つはビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1)の架橋体(a)を含む、配線基板。
4. 3.に記載の配線基板において、
前記架橋体(a)は、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2)との架橋体である、配線基板。
5. 1.から4.のいずれか一つに記載の配線基板において、
前記第1のエラストマー、前記第2のエラストマー、および前記第3のエラストマーのうち、少なくとも1つはシリカ粒子(B)を含む、配線基板。
6. 1.から5.のいずれか一つに記載の配線基板において、
厚みを1mmとした切込みありクレセント形試験片について、JIS K6252(2007)の方法で測定した、前記基板の引裂き強さが20N/mm以上である、配線基板。
7. 1.から6.のいずれか一つに記載の配線基板において、
伸縮性を有する、配線基板。
8. 1.から7.のいずれか一つに記載の配線基板において、
25℃での100%モジュラスが5.0MPa以下である、配線基板。
9. 1.から8.のいずれか一つに記載の配線基板および電子部品を含む電子装置。
10. 第1のエラストマーを含む基板を準備する工程と、
前記基板の少なくとも一方の面に、第2のエラストマーおよび導電性フィラーを含む導電部を設ける工程と、
第3のエラストマーを含み、前記導電部の前記基板側とは反対側の面の少なくとも一部を被覆する被覆層を形成する工程とを含み、
前記第1のエラストマーおよび前記第3のエラストマーは、シリコーンゴムを含む、配線基板の製造方法。
11. 10.に記載の配線基板の製造方法において、
前記被覆層を形成する工程は、前記基板、前記導電部、および被覆層形成用樹脂組成物がこの順に積層された積層体を加熱加圧する工程を含む、配線基板の製造方法。
12. 11.に記載の配線基板の製造方法において、
前記加熱加圧する工程では、前記基板、前記導電部、および液状の前記被覆層形成用樹脂組成物が、この順に積層された積層体を加熱加圧する、配線基板の製造方法。
13. 11.に記載の配線基板の製造方法において、
前記加熱加圧する工程では、前記基板、前記導電部、およびシート状の前記被覆層形成用樹脂組成物が、この順に積層された積層体を加熱加圧する、配線基板の製造方法。
14. 12.または13のいずれか一つに記載の配線基板の製造方法において、
前記加熱加圧する工程では、前記基板と、前記導電部と、前記被覆層形成用樹脂組成物と、第4のエラストマーを含む補助層とが、この順に積層された積層体を加熱加圧する、配線基板の製造方法。
以下、本実施形態を、実施例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
シリコーンゴム系組成物の調整に用いる成分の配合量(重量部)を表1に示す。また、表1中の成分は、以下に示す通りである。表1中、「エラストマー(A)の含有量合計」は、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1(a))、第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1(b))および直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(a))の合計(重量部)である。
第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1(a)):下記式にしたがって合成された、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンを使用した。
すなわち、Arガス置換した、冷却管および攪拌翼を有する300mLセパラブルフラスコに、オクタメチルシクロテトラシロキサン74.7g(252mmol)、2,4,6,8−テトラメチル2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン0.086g(0.25mmol)およびカリウムシリコネート0.1gを入れ、昇温し、120℃で30分間攪拌した。なお、この際、粘度の上昇が確認できた。
その後、155℃まで昇温し、3時間攪拌を続けた。そして、3時間後、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン0.1g(0.6mmol)を添加し、さらに、155℃で4時間攪拌した。
さらに、4時間後、トルエン250mLで希釈した後、水で3回洗浄した。洗浄後の有機層をメタノール1.5Lで数回洗浄することで、再沈精製し、オリゴマーとポリマーを分離した。得られたポリマーを60℃で一晩減圧乾燥し、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1(a))を得た(ビニル基含有量0.13モル%、Mn=277,734、Mw=573,906、IV値(dl/g)=0.89)。
Figure 0006686420
第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1(b)):2,4,6,8−テトラメチル2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサンを、0.86g(2.5mmol)用いたこと以外、上記(A−1(a))と同様にして合成したビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサンを使用した。(ビニル基含有量:0.92モル%)。
直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(a)):以下の式(5)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、商品名「88466」、式(5)において、m=14、n=11)
Figure 0006686420
シリカ粒子(B):日本アエロジル社製、商品名「AEROSIL300」、比表面積:300m/g、メディアン径D50:7nm
シランカップリング剤(C):ヘキサメチルジシラザン(Gelest社製)
白金化合物(D):PLATINUM DIVINYLTETRAMETHYLDISILOXANE COMPLEX(in xylene) (Gelest社製、商品名「SIP6831.2」)
水(E):純水
反応阻害剤:1−エチニル−1−シクロヘキサノール(東京化成社製)
(実施例1)
[シリコーンゴム系組成物1の作製]
第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1(a))を52.9重量部、第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1(b))を13.3重量部、シリカ粒子(B)を26.5重量部、シランカップリング剤(C)を6.9重量部、および、水(E)を3.5重量部、秤量し、その後、混練装置((株)モリヤマ製、油圧式加圧型ニーダー)により、混練することで、これら各成分を含有する混練物を得た。
なお、ここでの混練は、第1ステップにおいて窒素雰囲気下、60〜90℃の条件下で1時間混練し、次いで第2ステップにおいて減圧雰囲気下、160℃で1時間混練した。
続いて、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(a))を0.3重量部、白金化合物(D)を0.03重量部、反応阻害剤を0.06重量部、秤量し、上記で得た混練物にこれら成分をさらに添加し、混練装置(関西ロール社製、ロール機)を用いて混練した。結果、シリコーンゴム系硬化性組成物としてシリコーンゴム系組成物1を得た。
[導電性樹脂組成物1の作製]
上記で得たシリコーンゴム系組成物1を、2.33倍量のテトラデカンに浸漬し、続いて自転・公転ミキサーで撹拌し、溶液状とした。この溶液に対し、導電性フィラー1として銀粉(DOWAエレクトロニクス社製、商品名「3−8F」)を加えることで、導電性樹脂組成物1(表2中、組成物「No.1」で示す。)を得た。このとき、導電性樹脂組成物1の固形分100質量部に対し、シリコーンゴム系組成物1の含有量を15質量部、導電性フィラー1の含有量を85質量部とした。
[配線基板の作製]
実施形態に係る製造方法(以下、製法「No.1」と呼ぶ。)で配線基板を製造した。具体的には、シリコーンゴム系組成物1を型枠内で熱プレスし、20mm×50mm、厚さ0.5mmの寸法にシート化して基板を得た。この熱プレスにおいては、加熱温度を170℃、圧力を10MPa、熱プレス時間を5分とした。
次いで、基板に対し、スクリーン印刷により、導電性樹脂組成物1をインクとして導電部となるパターンを印刷した。それをオーブンで加熱し、導電部を形成した。このとき、加熱温度は170℃、加熱時間は1時間とした。導電部は幅0.5mm、長さ30mm、厚さ50μmの配線とし、両端にそれぞれ3mm×3mmの寸法の電極パッドを設けた。
次いで、基板の導電部を設けた面上の全領域に、シリコーンゴム系組成物1をテトラデカンに30wt%の濃度で溶解した溶液を被覆層形成用樹脂組成物として、塗布した。そうすることにより、基板、導電部、および液状の被覆層形成用樹脂組成物の積層体を得た。そして、当該積層体を加熱加圧して、被覆層形成用樹脂組成物を硬化させることにより、配線基板を得た。この加熱加圧においては、加熱温度を170℃、圧力を0.5MPa、加熱加圧時間を5分とした。なお、加熱加圧前の積層体には、電極パッドに接続する導線を挟み込み、外部に引き出しておいた。
[配線基板の評価]
得られた配線基板について、以下の各評価を行った。
<体積抵抗率>
(株)エーディーシー製直流電圧・電流源/モニタ(6241A)を用いて電極パッド間の抵抗値Rを測定し、測定された抵抗値Rに対して配線パターンの長さ方向に垂直な断面積を乗じ、さらに長さの値で除することで体積抵抗率を求めた。結果を表2中に、体積抵抗率として示す。なお、この体積抵抗率は後述の耐久性試験を行う前の測定結果である。
<耐久性>
得られた配線基板について、配線基板の長さ方向に20%伸長し、この伸長を解放する操作を100回行った。この100回伸長操作を行った後の配線基板について、抵抗値Rの測定および導電部の観察を行った。なお、抵抗値Rの測定においては(株)エーディーシー製直流電圧・電流源/モニタ(6241A)を用いて電極パッド間を測定した。
上記体積抵抗率の評価で測定した初期の抵抗値をRとし、100回伸長操作を行った後の抵抗値(非伸縮状態)をRとした。その上で、以下の様に耐久性を評価した。結果を表1に示す。
×:20%伸長させた状態で導電部に目視で分かるほどの断線が生じている場合
△:上記「×」に該当せず、かつ、R/Rが100以上の場合
○:上記「×」に該当せず、かつ、R/Rが30以上100未満の場合
◎:上記「×」に該当せず、かつ、R/Rが30未満の場合
<引裂き強さ>
配線基板の基板から厚みを1mmとした切込みありクレセント形試験片を作製し、引き裂き強さをJIS K6252(2007)の方法で測定した。測定条件としては、試験片つかみ具の移動速度を500mm/minとした。
<100%モジュラス>
配線基板の25℃での100%モジュラスを、引張試験機(島津製作所社製、オートグラフ)を用いて測定した。試験片つかみ具の移動速度は500mm/minとした。
(実施例2)
変形例1の製造方法(以下、製法「No.2」と呼ぶ。)を用いた以外は、実施例1と同様にして配線基板を得た。具体的には、以下に説明する通りである。
シリコーンゴム系組成物1を型枠内でプレスし、シート化することにより、未硬化状態のシリコーンゴム系組成物1からなるシートを準備した。このプレスにおいて加熱は行わず、常温のプレス板を用いた。また、圧力を20MPa、プレス時間を5分とした。
次いで、実施例1と同様にして導電部を設けた基板の面上の、全領域に、当該シートを配置して積層体を得た。そして、実施例1と同様に当該積層体を加熱加圧して当該シートを硬化させることにより、配線基板を得た。
本実施例で得られた配線基板について、実施例1と同様に評価した。
(実施例3)
変形例2の製造方法(以下、製法「No.3」と呼ぶ。)を用いた以外は、実施例1と同様にして配線基板を得た。具体的には、以下に説明する通りである。
加熱温度170℃、圧力20MPaの条件で、シリコーンゴム系組成物1を型枠内で5分間熱プレスし、完全硬化したシートを得た。
次いで、実施例1と同様にして導電部を設けた基板の面上の、全領域に、被覆層となるシリコーンゴム系組成物1の溶液を塗布した後、補助層としての当該シートをその上に配置して、積層体を得た。当該積層体を実施例1と同様に加熱加圧して、配線基板を得た。
本実施例で得られた配線基板について、実施例1と同様に評価した。
(実施例4)
変形例3の製造方法(以下、製法「No.4」と呼ぶ。)を用いた以外は、実施例1と同様にして配線基板を得た。
具体的には、実施例2と同様に未硬化状態のシリコーンゴム系組成物1からなるシートを準備し、実施例2と同様に基板および導電部上に配置した。次いで、実施例3と同様にして準備した完全硬化したシートをその上にさらに配置して、積層体を得た。当該積層体を実施例1と同様に加熱加圧して、配線基板を得た。
本実施例で得られた配線基板について、実施例1と同様に評価した。
(実施例5)
シリコーンゴム系組成物1の代わりに以下のシリコーンゴム系組成物2を用いて基板および被覆層を形成した点、および導電性樹脂組成物1の代わりに以下の導電性樹脂組成物2を用いて導電部を形成した点以外は実施例2と同様にして配線基板を得た。具体的には以下の通りである。
[シリコーンゴム系組成物2の作製]
各成分の配合量を表1の様に変更した以外はシリコーンゴム系組成物1と同様にしてシリコーンゴム系組成物2を得た。
すなわち、第1のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1(a))を48.2重量部、第2のビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1(b))を12.0重量部、シリカ粒子(B)を33.1重量部、シランカップリング剤(C)を6.3重量部、および、水(E)を3.2重量部、秤量し、その後、混練装置((株)モリヤマ製、油圧式加圧型ニーダー)により、混練することで、これら各成分を含有する混練物を得た。
なお、ここでの混練は、第1ステップにおいて窒素雰囲気下、60〜90℃の条件下で1時間混練し、次いで第2ステップにおいて減圧雰囲気下、160℃で1時間混練した。
続いて、直鎖状オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2(a))を0.3重量部、白金化合物(D)を0.03重量部、反応阻害剤を0.06重量部、秤量し、上記で得た混練物にこれら成分をさらに添加し、混練装置(関西ロール社製、ロール機)を用いて混練した。結果、シリコーンゴム系硬化性組成物としてシリコーンゴム系組成物2を得た。
[導電性樹脂組成物2の作製]
上記で得たシリコーンゴム系組成物2を、2.33倍量のテトラデカンに浸漬し、続いて自転・公転ミキサーで撹拌し、溶液状とした。この溶液に対し、導電性フィラー2として銀粉(DOWAエレクトロニクス社製、商品名「FA−D5」)を加えることで、導電性樹脂組成物2(表2中、組成物「No.2」で示す。)を得た。このとき、導電性樹脂組成物2の固形分100質量部に対し、シリコーンゴム系組成物2の含有量を20質量部、導電性フィラー2の含有量を80質量部とした。
本実施例で得られた配線基板について、実施例1と同様に評価した。
(実施例6)
導電性樹脂組成物1の代わりに以下の導電性樹脂組成物3を用いて導電部を形成した点以外は実施例2と同様にして配線基板を得た。具体的には以下の通りである。
[導電性樹脂組成物3の作製]
上記で得たシリコーンゴム系組成物1を、2.33倍量のテトラデカンに浸漬し、続いて自転・公転ミキサーで撹拌し、溶液状とした。この溶液に対し、上記した導電性フィラー2を加えることで、導電性樹脂組成物3(表2中、組成物「No.3」で示す。)を得た。このとき、導電性樹脂組成物3の固形分100質量部に対し、シリコーンゴム系組成物1の含有量を40質量部、導電性フィラー2の含有量を60質量部とした。
本実施例で得られた配線基板について、実施例1と同様に評価した。
(実施例7)
導電性樹脂組成物1の代わりに以下の導電性樹脂組成物4を用いて導電部を形成した点以外は実施例3と同様にして配線基板を得た。具体的には以下の通りである。
[導電性樹脂組成物4の作製]
ウレタンゴム1(住化バイエルウレタン社製、ディスパコールU42:熱可塑性ウレタンエラストマー粒子の水分散液)に対し、上記した導電性フィラー1を加えることで、導電性樹脂組成物4(表2中、組成物「No.4」で示す。)を得た。このとき、導電性樹脂組成物4の固形分100質量部に対し、ウレタンゴム1の固形分の含有量を15質量部、導電性フィラー1の含有量を85質量部とした。
本実施例で得られた配線基板について、実施例1と同様に評価した。
(比較例1)
被覆層を形成しなかった点以外は実施例1と同様にして配線基板を得た。すなわち、基板の上に導電部のみを設けたものを配線基板とした。
本比較例で得られた配線基板について、実施例1と同様に評価した。
(比較例2)
シリコーンゴム系組成物1の代わりに上記のウレタンゴム1を用いて被覆層および補助層を形成した点以外は実施例3と同様にして配線基板を得た。具体的には以下の通りである。
ウレタンゴム1を型に流し込み、25℃で12時間静置し乾燥させてウレタンゴムシートを得た。
次いで、実施例1と同様にして導電部を設けた基板の面上の、全領域に、被覆層となるウレタンゴム1(熱可塑性ウレタンエラストマー粒子の水分散液)を塗布した。その後、補助層として上記のウレタンゴムシートをその上に配置し、積層体を得た。当該積層体を実施例1と同様に加熱加圧して、配線基板を得た。
本比較例で得られた配線基板について、実施例1と同様に評価した。
(比較例3)
シリコーンゴム系組成物1の代わりにウレタンゴム1を用いて基板を形成した点、および導電性樹脂組成物1の代わりに上記の導電性樹脂組成物4を用いて導電部を形成した点以外は比較例2と同様にして配線基板を得た。
具体的には、ウレタンゴム1を型に流し込み、25℃で12時間静置し乾燥させて得られたウレタンゴムの基板を用いた。
本比較例で得られた配線基板について、実施例1と同様に評価した。
各実施例および比較例の構成、製法、配線基板における被覆層の厚さ、および評価結果等を表2にまとめて示す。なお、製法No.3およびNo.4の実施例については、被覆層と補助層の厚さの和を、「被覆層の厚さ」の欄に記載している。
Figure 0006686420
Figure 0006686420
表2に示した耐久性の結果より、比較例1〜3では、100回伸長操作によって配線が断線し、伸長時には配線基板が適切に機能しなくなることが分かった。一方、実施例1〜7の配線基板は100回伸長操作後においても導電性が確保され、耐久性に優れることが確認された。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
10 導電部
100 電子装置
101 第1面
102 第2面
20 基板
30 被覆層
40 補助層
50 配線基板
60 電子部品

Claims (13)

  1. 第1のエラストマーを含む基板と、
    第2のエラストマーおよび導電性フィラーを含む導電性樹脂組成物により構成されており、前記基板の少なくとも一方の面に設けられた導電部と、
    第3のエラストマーを含み、前記導電部の前記基板側とは反対側の面の少なくとも一部を被覆する被覆層とを備え、
    前記第1のエラストマーがシリカ粒子(B)を含み、
    前記導電性フィラーが銀粉を含み、前記第2のエラストマーがシリコーンゴムを含み、
    前記導電性樹脂組成物中の前記導電性フィラーの含有量が、前記導電性樹脂組成物の固形分全体中、70質量%以上90質量%以下であり、
    前記第1のエラストマーおよび前記第3のエラストマーは、シリコーンゴムを含む、配線基板。
  2. 請求項1に記載の配線基板において、
    前記第1のエラストマー、前記第2のエラストマー、および前記第3のエラストマーのうち、少なくとも1つはビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1)の架橋体(a)を含む、配線基板。
  3. 請求項に記載の配線基板において、
    前記架橋体(a)は、ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A−1)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(A−2)との架橋体である、配線基板。
  4. 請求項1からのいずれか一項に記載の配線基板において、
    記第2のエラストマー、および前記第3のエラストマーのうち、少なくとも1つはシリカ粒子(B)を含む、配線基板。
  5. 請求項1からのいずれか一項に記載の配線基板において、
    厚みを1mmとした切込みありクレセント形試験片について、JIS K6252(2007)の方法で測定した、前記基板の引裂き強さが20N/mm以上である、配線基板。
  6. 請求項1からのいずれか一項に記載の配線基板において、
    伸縮性を有する、配線基板。
  7. 請求項1からのいずれか一項に記載の配線基板において、
    25℃での100%モジュラスが5.0MPa以下である、配線基板。
  8. 請求項1からのいずれか一項に記載の配線基板および電子部品を含む電子装置。
  9. 第1のエラストマーを含む基板を準備する工程と、
    前記基板の少なくとも一方の面に、第2のエラストマーおよび導電性フィラーを含む導電性樹脂組成物により構成された導電部を設ける工程と、
    前記第1のエラストマーがシリカ粒子(B)を含み、
    前記導電性フィラーが銀粉を含み、前記第2のエラストマーがシリコーンゴムを含み、
    前記導電性樹脂組成物中の前記導電性フィラーの含有量が、前記導電性樹脂組成物の固形分全体中、70質量%以上90質量%以下であり、
    第3のエラストマーを含み、前記導電部の前記基板側とは反対側の面の少なくとも一部を被覆する被覆層を形成する工程とを含み、
    前記第1のエラストマーおよび前記第3のエラストマーは、シリコーンゴムを含む、配線基板の製造方法。
  10. 請求項に記載の配線基板の製造方法において、
    前記被覆層を形成する工程は、前記基板、前記導電部、および被覆層形成用樹脂組成物がこの順に積層された積層体を加熱加圧する工程を含む、配線基板の製造方法。
  11. 請求項10に記載の配線基板の製造方法において、
    前記加熱加圧する工程では、前記基板、前記導電部、および液状の前記被覆層形成用樹脂組成物が、この順に積層された積層体を加熱加圧する、配線基板の製造方法。
  12. 請求項10に記載の配線基板の製造方法において、
    前記加熱加圧する工程では、前記基板、前記導電部、およびシート状の前記被覆層形成用樹脂組成物が、この順に積層された積層体を加熱加圧する、配線基板の製造方法。
  13. 請求項11または12のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法において、
    前記加熱加圧する工程では、前記基板と、前記導電部と、前記被覆層形成用樹脂組成物と、第4のエラストマーを含む補助層とが、この順に積層された積層体を加熱加圧する、配線基板の製造方法。
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