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JP6677255B2 - ハロゲン化アクリル酸エステル誘導体の製造方法 - Google Patents

ハロゲン化アクリル酸エステル誘導体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ハロゲン化アクリル酸エステル誘導体の新規な製造方法に関する。
ハロゲン化アクリル酸エステル誘導体を代表するα−フルオロアクリル酸エステルは、医薬、ポリマー、光学材料、塗料、半導体レジスト材料等の合成中間体として、或いは機能性高分子の単量体として有用である。
α−フルオロアクリル酸エステルの製造方法としては、塩化チオニルを用いて3−ヒドロキシ−2−フルオロプロピオン酸エステルを3−クロロ−2−フルオロプロピオン酸エステルに変換し、これから塩化水素を脱離して2−フルオロアクリル酸エステルとする方法(特許文献1)が知られている。
特許文献2には、カリウムt−ブトキシドと大過剰のクロロフルオロカーボンを用いてエチレン誘導体をシクロプロパン誘導体に導き、これを分解してα−フルオロアクリル酸エチルエステルを製造する方法が開示されている。
特許文献2で使用するエチレン誘導体の合成方法としては、1,1−ジエトキシ−2−ブロモエタンにカリウムt−ブトキシドを作用させ、臭化水素酸を脱離させて、1,1−ジエトキシエテンを得る方法が知られている(非特許文献1)。
特許第5628305号 欧州特許公報第0127920号
Organic Synthesis,Coll.Vol.3,p.506 (1955); Vol.23,p.45 (1943)
特許文献1の方法は、塩化チオニルを用いる必要がある点、腐蝕性の高い塩化水素が発生する点で、工業経済的に不利である。また、原料の3−ヒドロキシ−2−フルオロプロピオン酸エステルの調製に取り扱いの難しいF(フッ素ガス)を使用する点でも、工業経済的に不利である。
特許文献2の方法も、高価なカリウムt−ブトキシドと大過剰のクロロフルオロカーボンを用いるため、工業経済的に不利である。また、その原料となるエチレン誘導体(1,1−ジエトキシエテン等)の製造方法も限られている。たとえば、非特許文献1の方法は、高価なカリウムt−ブトキシドを用いる必要がある点、腐蝕性の高い臭化水素が発生する点で、工業経済的なエチレン誘導体の製造とはなり得ない。
本発明者らは、高転化率、高選択率、及び高収率を達成し、工業経済的に優れたハロゲン化アクリル酸エステル誘導体の新規な製造方法、および、それに有用な中間体を見出した。
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
[1]
下式(1)で表される化合物であり、かつ、沸点が500℃以下である化合物を、気相において、固体触媒の存在下に脱ROH反応させることを特徴とする、下式(2)で表されるエテン誘導体の製造方法。
(式中、
及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子を必須とする1価の基を表すか、またはR及びRは共同して、それらが結合する炭素原子とともに環を形成してもよく、
は、脱ROH反応によって基ROが脱離し得る1価の基を表し、
及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子を必須とする1価の基を表す。)
(式中、R、R、R及びRは前記の通りである。)
[2]
及びRが、共に水素原子であり、かつ
、R及びRがそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、置換基を有しているアルキル基、置換基を有しているシクロアルキル基、または置換基を有しているアリール基である、[1]に記載の製造方法。
[3]
反応の温度が、100〜500℃である、[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]
反応が、気化させた式(1)で表される化合物をキャリアガスとともに固体触媒層に流通させることにより行われる、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の製造方法。
[5]
キャリアガスの使用量が、式(1)で表される化合物の1モルに対して、0超〜20モルである、[4]に記載の製造方法。
[6]
固体触媒が、金属触媒及び金属酸化物触媒から選ばれる少なくとも1種の固体触媒である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の製造方法。
[7]
固体触媒が、金属酸化物触媒である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の製造方法。
[8]
固体触媒が、ジルコニア、アルミナ、ゼオライト及び酸化亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む触媒である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の製造方法。
[9]
固体触媒が、酸化亜鉛を含む触媒である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の製造方法。
[10]
固体触媒が、天然鉱物、モレキュラーシーブ、カーボンブラック、金属塩化物、金属フッ化物、金属硫酸塩、金属硫化物、および金属リン酸塩から選ばれる少なくとも1種の固体触媒である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の製造方法。
[11]
[1]〜[10]のいずれか一項に記載の製造方法によって式(2)で表されるエテン誘導体を得て、該エテン誘導体を、塩基性化合物及び相間移動触媒の存在下に下式(3)で表される化合物と反応させることを特徴とする、下式(4)で表されるシクロプロパン誘導体の製造方法。
(式中、X、Y、及びZはそれぞれ独立に、ハロゲン原子を表す。)
(式中、R、R、R及びRは[1]の通りであり、X及びYは前記の通りである。)
[12]
塩基性化合物が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属水素化物及びアルキルリチウムからなる群から選択される少なくとも1種である、[11]に記載の製造方法。
[13]
相間移動触媒が、4級アンモニウム塩である、[11]又は[12]に記載の製造方法。
[14]
Xがフッ素原子であり、かつYが塩素原子又はフッ素原子である、[11]〜[13]のいずれか一項に記載の製造方法。
[15]
式(2)で表されるエテン誘導体が、1,1−ジメトキシエテンである、[11]〜[14]のいずれか一項に記載の製造方法。
[16]
式(3)で表される化合物の使用量が、式(2)で表されるエテン誘導体の1モルに対して1〜5モルである、[11]〜[15]のいずれか一項に記載の製造方法。
[17]
塩基性化合物の使用量が、式(3)で表される化合物の1モルに対して1〜10モルである、[11]〜[16]のいずれか一項に記載の製造方法。
[18]
相間移動触媒の使用量が、式(2)で表されるエテン誘導体の質量に対して0.001〜5質量%である、[11]〜[17]のいずれか一項に記載の製造方法。
[19]
[11]〜[18]のいずれか一項に記載の製造方法によって式(4)で表されるシクロプロパン誘導体を得て、該シクロプロパン誘導体を、液相又は気相において加熱することにより、脱RY反応させることを特徴とする、下式(5)で表されるハロゲン化アクリル酸エステル誘導体の製造方法。
(式中、R、R、R及びRは[1]の通りであり、X及びYは[11]の通りである。)
[20]
脱RY反応の温度が、80〜400℃である、[19]に記載の製造方法。
[21]
[11]〜[18]のいずれか一項に記載の製造方法によって式(4)で表されるシクロプロパン誘導体と下式(8)で表されるプロペン誘導体を得て、次に、該シクロプロパン誘導体と該プロペン誘導体とを分離し、次に分離した該プロペン誘導体を、酸性条件下で分解させることを特徴とする、下式(5)で表されるハロゲン化アクリル酸エステル誘導体の製造方法。
(式中、R、R、R、R及びRは[1]の通りであり、Xは[11]の通りである。)
(式中、R、R、R及びXは前記の通りである。)
[22]
式(5)で表されるハロゲン化アクリル酸エステル誘導体を製造する際に、重合禁止剤の存在下で製造を行う、[19]〜[21]のいずれか一項に記載の製造方法。
[23]
重合禁止剤の添加量が、式(5)で表されるハロゲン化アクリル酸エステル誘導体に対して10ppm以上である、[22]に記載の製造方法。
[24]
下式(6)で表される化合物。
(式中、Meはメチル基を表し、Yは塩素原子またはフッ素原子を表す。)
[25]
下式(7)で表される化合物。
(式中、Meはメチル基を表す。)
本発明によれば、安価かつ入手の容易な原料から、新規かつ有用な中間体を経て、高転化率、高選択率、高収率で、ハロゲン化アクリル酸エステル誘導体を製造できる。
本明細書における用語を下記の通り定義する。
「アルキル基」とは、直鎖状又は分岐鎖状の1価飽和炭化水素基を意味する。アルキル基の炭素数は1〜20個が好ましく、1〜15個がより好ましく、1〜12個がさらに好ましく、1〜6個が特に好ましい。アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−エチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、ネオヘキシル基等が挙げられる。
「アルキル基」は、部分的に環構造を有する1価飽和炭化水素基であってもよい。たとえば、シクロアルキルアルキル基等が挙げられる。
「シクロアルキル基」とは、環状の1価飽和炭化水素基を意味する。シクロアルキル基の炭素数は3〜20個が好ましく、3〜15個がより好ましく、3〜12個がさらに好ましく、3〜6個が特に好ましい。シクロアルキル基中の環構造の数は1つであっても、2つ以上であってもよい。2つ以上の場合は、縮合多環構造、橋かけ環構造又はスピロ環構造を有する。シクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
「アルケニル基」とは、前記アルキル基(ただしメチル基は除く。)の任意の炭素−炭素単結合が、炭素−炭素二重結合と置き換わった基を意味する。アルケニル基の炭素数は2〜20個が好ましく、2〜15個がより好ましく、2〜12個がさらに好ましく、2〜6個が特に好ましい。アルケニル基としては、例えばエテニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−メチル−1−エテニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−エチルエテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、1−ペンテニル基、1−ヘキセニル基等が挙げられる。
「シクロアルケニル基」とは、前記シクロアルキル基の任意の炭素−炭素単結合が、炭素−炭素二重結合と置き換わった基を意味する。シクロアルケニル基中の環構造の数は、1つであっても、2つ以上であってもよい。2つ以上の場合は、縮合多環構造、橋かけ環構造又はスピロ環構造を有する。シクロアルケニル基の炭素数は3〜20個が好ましく、3〜15個がより好ましく、3〜12個がさらに好ましく、3〜6個が特に好ましい。シクロアルケニル基としては、例えば、1−シクロペンテニル基、2−シクロペンテニル基、3−シクロペンテニル基、1−メチル−2−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基、2−シクロヘキセニル基、3−シクロヘキセニル基等が挙げられる。
「アルキニル基」とは、前記アルキル基(ただしメチル基は除く。)の任意の炭素−炭素単結合、又は前記アルケニル基の任意の炭素−炭素単結合もしくは炭素−炭素二重結合が、炭素−炭素三重結合と置き換わった基を意味する。アルキニル基の炭素数は2〜20個が好ましく、2〜15個がより好ましく、2〜12個がさらに好ましく、2〜6個が特に好ましい。アルキニル基としては、例えばエチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基、1−ペンチニル基、1−ヘキシニル基等が挙げられる。
「アルコキシ基」とは、エーテル性酸素原子(−O−)に前記アルキル基が結合した基を意味する。アルコキシ基の構造は直鎖状又は分岐鎖状が好ましい。アルコキシ基の炭素数は1〜20個が好ましく、1〜15個がより好ましく、1〜12個がさらに好ましく、1〜6個が特に好ましい。アルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
「アリール基」とは、単環又は2環式以上の芳香族炭化水素基を意味する。アリール基の炭素数は6〜22個が好ましく、6〜18個がより好ましく、6〜14個がさらに好ましく、6〜10個が特に好ましい。アリール基としては、例えばフェニル基、o−、p−又はm−トリル基、ナフチル基、フェナントレニル基、アントラセニル基、フルオレニル基等が挙げられる。
「ヘテロアリール基」とは、1個以上のヘテロ原子を有する芳香族基を意味する。ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が好ましい。ヘテロアリール基の炭素数は3〜21個が好ましく、3〜17個がより好ましく、3〜13個がさらに好ましく、3〜9個が特に好ましい。ヘテロアリール基としては、例えばピリジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、インドリル基、キノリル基等が挙げられる。
「アリールオキシ基」とは、エーテル性酸素原子(−O−)に前記アリール基が結合した基を意味する。アリールオキシ基の炭素数は7〜23個が好ましく、7〜19個が特に好ましく、7〜15個がより好ましく、7〜11個がさらに好ましい。アリールオキシ基としては、例えばフェノキシ基等が挙げられる。
「アルキルチオ基」とは、−S−に前記アルキル基が結合した基を意味する。アルキルチオ基の炭素数は1〜20個が好ましく、炭素数1〜15個がより好ましく、炭素数1〜12個がさらに好ましく、炭素数1〜6個が特に好ましい。アルキルチオ基としては、例えばメタンチオ基、エタンチオ基、n−プロパンチオ基、イソプロパンチオ基、n−ブタンチオ基、イソブタンチオ基、s−ブタンチオ基、t−ブタンチオ基、n−ペンタンチオ基、n−ヘキサンチオ基等が挙げられる。
「モノアルキルアミノ基」とは、アミノ基(−NH)の水素原子の1つが前記アルキル基と置き換わった基を意味する。「ジアルキルアミノ基」とは、アミノ基の水素原子の2つが前記アルキル基と置き換わった基を意味する。モノアルキルアミノ基の炭素数は1〜20個が好ましく、1〜15個がより好ましく、1〜12個がさらに好ましく、1〜8個が特に好ましい。ジアルキルアミノ基の炭素数は2〜20個が好ましく、2〜15個がより好ましく、2〜12個がさらに好ましく、2〜8個が特に好ましい。モノアルキルアミノ基としては、例えばメチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、t−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基等が挙げられる。ジアルキルアミノ基としては、例えばN,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基等が挙げられる。
「モノアリールアミノ基」とは、アミノ基の水素原子の1つが前記アリール基と置き換わった基を意味する。「ジアリールアミノ基」とは、アミノ基の水素原子の2つが前記アリール基と置き換わった基を意味する。モノアリールアミノ基の炭素数は6〜22個が好ましく、6〜18個がより好ましく、6〜14個がさらに好ましく、炭素数6〜10個が特に好ましい。ジアリールアミノ基の炭素数は12〜24個が好ましく、12〜20個がより好ましく、12〜16個がさらに好ましい。モノアリールアミノ基としては、例えばフェニルアミノ基等が挙げられる。ジアリールアミノ基としては、例えばジフェニルアミノ基等が挙げられる。
「ヘテロシクリル基」とは、1個以上のヘテロ原子を有する飽和又は不飽和の1価複素環基を意味する。ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が好ましい。ヘテロシクリル基の炭素数は3〜21個が好ましく、3〜17個がより好ましく、3〜13個がさらに好ましく、3〜9個が特に好ましい。ヘテロシクリル基としては、例えばアゼパニル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、テトラヒドロフリル基等が挙げられる。
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味し、フッ素原子又は塩素原子が好ましい。
前記「アルキル基」、「シクロアルキル基」、「アルケニル基」、「シクロアルケニル基」、「アルキニル基」、「アルコキシ基」、「アリール基」、「ヘテロアリール基」、「アリールオキシ基」、「アルキルチオ基」、「モノアルキルアミノ基」、「ジアルキルアミノ基」、「モノアリールアミノ基」、「ジアリールアミノ基」および「ヘテロシクリル基」は、置換基で置換されていてもよい。該置換基で置換された基を、置換基を有している基という。置換基としては例えば、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリール基、アルキルチオ基、ニトロ基、アミノ基、カルボキシル基、シクロアルキル基、水酸基、ハロゲン原子、シアノ基、フェニル基、及びヘテロシクリル基が挙げられる。
次に本発明の製造方法について更に詳細に説明する。本発明の製造プロセスの概念は、下式で示される。
(式中、R、R、R、R、R、X、Y及びZは前記の通りである。)
[工程(i)]
工程(i)は、式(1)で表される化合物であって、沸点が500℃以下である化合物(以下、該化合物を「オルトカルボン酸エステル(1)」とも記す。)を、気相において、固体触媒の存在下に脱ROH反応させ、式(2)で表されるエテン誘導体(以下、単に「エテン誘導体(2)」とも記す。)を製造する工程である。
オルトカルボン酸エステル(1)において、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子を必須とする1価の基である。
及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基、ジアリールアミノ基、ヘテロシクリル基、置換基を有しているアルキル基、置換基を有しているシクロアルキル基、置換基を有しているアルケニル基、置換基を有しているシクロアルケニル基、置換基を有しているアルキニル基、置換基を有しているアルコキシ基、置換基を有しているアリール基、置換基を有しているヘテロアリール基、置換基を有しているアリールオキシ基、置換基を有しているアルキルチオ基、置換基を有しているモノアルキルアミノ基、置換基を有しているジアルキルアミノ基、置換基を有しているモノアリールアミノ基、置換基を有しているジアリールアミノ基、または置換基を有しているヘテロシクリル基が好ましい。
また、R及びRは共同して、それらが結合する炭素原子とともに環を形成してもよい。R及びRが共同して、それらが結合する炭素原子とともに形成する環としては、シクロヘキサン等のシクロアルカン、またはアルキル基が置換したシクロヘキサン等の、置換基を有するシクロアルカン等が挙げられる。
及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、置換基を有しているアルキル基、置換基を有しているシクロアルキル基、置換基を有しているアルコキシ基、置換基を有しているアリール基、または置換基を有しているアリールオキシ基がより好ましい。
及びRは、共に水素原子が特に好ましい。
は、脱ROH反応によって基ROが脱離し得る1価の基である。Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロシクリル基、置換基を有しているアルキル基、置換基を有しているシクロアルキル基、置換基を有しているアルケニル基、置換基を有しているシクロアルケニル基、置換基を有しているアルキニル基、置換基を有しているアリール基、置換基を有しているヘテロアリール基、または置換基を有しているヘテロシクリル基が好ましい。
は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、置換基を有しているアルキル基、置換基を有しているシクロアルキル基、または置換基を有しているアリール基がより好ましい。
は、アルキル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子を必須とする1価の基であり、具体的には、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、ヘテロシクリル基、置換基を有しているアルキル基、置換基を有しているシクロアルキル基、置換基を有しているアルケニル基、置換基を有しているシクロアルケニル基、置換基を有しているアルキニル基、置換基を有しているアリール基、置換基を有しているヘテロアリール基、または置換基を有しているヘテロシクリル基が好ましい。
及びRは、それぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、置換基を有しているアルキル基、置換基を有しているシクロアルキル基、または置換基を有しているアリール基がより好ましい。
及びRはそれぞれ独立に、アルキル基がさらに好ましく、メチル基が特に好ましい。
好適なオルトカルボン酸エステル(1)としては、
及びRが、共に水素原子であり、かつ
、R及びRがそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、置換基を有しているアルキル基、置換基を有しているシクロアルキル基、または置換基を有しているアリール基である、化合物である。
より好適なオルトカルボン酸エステル(1)としては、
及びRが、共に水素原子であり、かつ
、R及びRがそれぞれ独立に、アルキル基である、化合物である。
さらに好適なオルトカルボン酸エステル(1)としては、
及びRが、共に水素原子であり、かつ
、R及びRが、共にメチル基である、化合物である。
前記オルトカルボン酸エステル(1)における置換基は、オルトカルボン酸エステル(1)の沸点が500℃以下となるように選定しなければならない。
オルトカルボン酸エステル(1)は、有機化学の常法に従い、公知の方法又はその類似方法によって合成できる。その典型であるオルト酢酸トリメチルは市販されており極めて容易に入手できる。
工程(i)の反応は気相において行うため、オルトカルボン酸エステル(1)の沸点は、反応温度と反応圧力において、オルトカルボン酸エステル(1)が気化する温度であることが好ましい。以下における沸点は、1気圧(絶対圧)における沸点をいう。
オルトカルボン酸エステル(1)の沸点は、500℃以下であり、450℃以下が好ましく、400℃以下がより好ましい。また、取り扱いが容易である観点から、オルトカルボン酸エステル(1)の沸点は、0℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。
工程(i)の反応に使用する固体触媒は、オルトカルボン酸エステル(1)の脱ROH反応を促進する触媒から選択され、脱ROH反応を促進する固体酸量を有する固体触媒から選択されるのが好ましい。
固体触媒としては、金属触媒、金属酸化物触媒、天然鉱物、モレキュラーシーブ、カーボンブラック等が挙げられる。天然鉱物は、酸性白土、カオリナイト、ベントナイト、モンモリロナイト、タルク、ケイ酸ジルコニウム、またはゼオライトが好ましい。カーボンブラックは、無定形炭素、木炭、活性炭、グラファイトまたはフラーレン類が好ましい。固体触媒は、金属触媒及び金属酸化物触媒から選ばれる少なくとも1種が好ましく、金属酸化物触媒がより好ましい。
金属触媒としては、周期律表のIVB族及びVIII族の金属からなる触媒が好ましく、モリブデン、タングステン、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、白金、パラジウム、イリジウム、オスミウム、ロジウム、レニウム、またはルテニウムが好ましい。
金属酸化物触媒とは金属酸化物を含む触媒をいい、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニア、酸化タングステン、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化銅、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化スズ、酸化カルシウム、酸化ホウ素(ボリア)、ゼオライト、またはそれらの混合物が好ましい。金属酸化物触媒は、任意のモル比でシリカ−アルミナ、シリカ−マグネシア、シリカ−ボリア、アルミナ−ボリア、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、酸化亜鉛−ジルコニア、モレキュラーシーブ等の複合金属酸化物として使用してもよい。
金属酸化物触媒としては、活性の点から、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、アルミナ、ゼオライト及び酸化亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む触媒がより好ましく、酸化亜鉛を含む触媒が特に好ましい。この場合、金属酸化物触媒中のジルコニア、アルミナ、ゼオライト及び酸化亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属酸化物の含有量は、金属酸化物触媒に対して50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
金属酸化物のうち、ゼオライトとしては、A型ゼオライト、L型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、ZSM−5型に代表されるMFIゼオライト、MWW型ゼオライト、β型ゼオライト、モルデナイト、フェリエライト、またはエリオナイトが好ましい。
前記以外の工程(i)の反応に使用する固体触媒としては、塩化アルミニウム等の金属塩化物、フッ化アルミニウム、フッ化カルシウム等の金属フッ化物、硫酸鉄等の金属硫酸塩、硫化亜鉛等の金属硫化物、リン酸亜鉛等の金属リン酸塩、メタロシリケート触媒等の固体触媒、不活性担体上にリン化合物、ホウ素化合物などを担持させた固体触媒が挙げられる。
工程(i)の反応に使用する固体触媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
固体触媒の固体酸量は、0超〜5.0mmol/gが好ましく、0超〜3.0mmol/gがより好ましく、0超〜1.0mmol/gがさらに好ましい。固体触媒の固体酸量が下限値以上であれば、オルトカルボン酸エステル(1)の転化率が向上する。固体触媒の固体酸量が上限値以下であれば、副生成物の生成を抑制しやすい。
固体触媒の比表面積は、0.1〜1000m/gが好ましく、0.5〜500m/gがより好ましく、1〜350m/gがさらに好ましい。固体触媒の比表面積が下限値以上であれば、オルトカルボン酸エステル(1)の転化率が向上する。固体触媒の比表面積が上限値以下であれば、副生成物の生成を抑制しやすい。
工程(i)の反応は気相において行う。気相での反応は、慣用の気相流通法により行うことができる。気相流通法とは、反応器に固体触媒を充填し、気化させたオルトカルボン酸エステル(1)を固体触媒層に流通させて反応させる方法である。具体的には、固定床流通方式、固定床循環方式、流動床流通方式等の反応方式が挙げられ、本発明ではこれらいずれの反応形式も適用できる。
例えば、気相流通法では、気化させたオルトカルボン酸エステル(1)を固体触媒層に流通させるが、オルトカルボン酸エステル(1)は単体で流通させてもよく、キャリアガスとともに流通させてもよい。キャリアガスとしては特に制限されないが、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス等の不活性ガス、又はこれらの混合ガスが好ましい。キャリアガスとともに流通させる場合のキャリアガスの使用量は、オルトカルボン酸エステル(1)の1モルに対して、0超〜20モルが好ましく、0超〜10モルがより好ましい。一般に、キャリアガスが多いとオルトカルボン酸エステル(1)の転化率が低下する、キャリアガス少ないと副生成物が生成する、固体触媒表面に炭化物等の不純物が付着して触媒活性が低下する、等の可能性がある。最適な使用量は反応温度、接触時間にも依存する。
反応圧力は特に限定されず、加圧、常圧又は減圧でもよい。操作が容易であることから、反応圧力は、常圧から微加圧が好ましい。
所望によりスタティックミキサーやラシヒリング等の充填材を入れることができる。
反応器の加熱方法は特に制限されないが、熱媒オイル、溶融塩、電気ヒーター、砂を用いて加熱する方法が好ましい。工程(i)の反応温度は100〜500℃が好ましく、120〜450℃がより好ましく、150〜400℃がさらに好ましい。一般に温度が低いとオルトカルボン酸エステル(1)の転化率が低下する、温度が高いと副生成物が生成する、固体触媒表面に炭化物等の不純物が付着して触媒活性が低下する、等の可能性がある。最適な反応温度は接触時間にも依存する。
また、工程(i)の反応時間は、オルトカルボン酸エステル(1)と固体触媒が接触する時間(以下、「接触時間」という。)に相当する。接触時間は0.1〜60秒が好ましく、1〜30秒がより好ましい。一般に接触時間が短いとオルトカルボン酸エステル(1)の転化率が低下する、長いと副生成物が生成する、固体触媒表面に炭化物等の不純物が付着して触媒活性が低下する、等の可能性がある。最適な接触時間は反応温度に依存する。例えば、100℃で接触時間が極端に短いと実質的に反応が進行しない場合もあり、500℃において接触時間が極端に長いと、副生成物が生成したり、タールやオイルが生成することにより反応器が閉塞する場合もある。
工程(i)は、固体触媒を使用することにより、従来では難しかったエテン誘導体(2)の製造を、取り扱い、生産性等において極めて有利な気相反応で行う工程である。
工程(i)の反応は、気相反応であるため、例えば管状の反応器にオルトカルボン酸エステル(1)を流通させる反応形式とすることにより連続的にエテン誘導体(2)を製造でき、バッチ式である従来の製造方法よりも生産性において極めて優れている。また、気相において反応を行うため生成物の分離が極めて容易である。さらに工程(i)は、腐蝕性の高い塩化水素等が生成せず、安全性が高く反応装置の制約が少なく工業的に極めて有利である。
本発明の工程(i)に係る反応では、従来法では工業的、経済的に製造が難しかったRおよびRがメチルであるエテン誘導体(2)(1,1−ジメトキシエテン)が容易かつ高収率で得られる。
工程(i)で得られたエテン誘導体(2)は、各種化学品の合成中間体として有用である。本発明においては、得られたエテン誘導体(2)を用いて、以下の工程(ii)を行い、目的とするハロゲン化アクリル酸エステルを得ることが好ましい。
[工程(ii)]
工程(ii)は、工程(i)で得られたエテン誘導体(2)を、塩基性化合物及び相間移動触媒の存在下に式(3)で表されるハロゲン化メタン(以下、単に「ハロゲン化メタン(3)」とも記す。)と反応させ、式(4)で表されるシクロプロパン誘導体(以下、単に「シクロプロパン誘導体(4)」とも記す。)を製造する工程である。
工程(ii)の反応に使用するエテン誘導体(2)は、工程(i)で得られたものを未精製のまま工程(ii)の反応に使用してもよく、精製した後に反応に使用してもよい。精製の方法としては、例えば溶媒を用いた抽出、蒸留、結晶化等の公知の方法が挙げられる。精製においては、工程(i)の生成物中に未反応のまま含まれていたオルトカルボン酸エステル(1)を分離して工程(i)で再利用することも可能であり、更に生産性を向上できる。
工程(ii)の反応においては、使用されるハロゲン化メタン(3)は、塩基性化合物の作用によりカルベンを生成し、エテン誘導体(2)の二重結合に挿入されると考えられる。
ハロゲン化メタン(3)としては、例えば、クロロホルム、ジクロロフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、またはトリフルオロメタンが好ましい。
Xがフッ素原子であり、Yが塩素原子又はフッ素原子であるハロゲン化メタン(3)がより好ましく、ジクロロフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、トリフルオロメタンがより好ましい。
Xがフッ素原子であり、Yが塩素原子であるハロゲン化メタン(3)がさらに好ましく、具体的には、ジクロロフルオロメタン、クロロジフルオロメタンがさらに好ましい。
ハロゲン化メタン(3)はガス化させて反応させてもよく、液体で反応させてもよい。また、反応液を同時に抜き出して連続的に行ってもよく、同時に抜き出さずにバッチ式で行ってもよい。生産性の観点から、連続的に行うのが有利である。
ハロゲン化メタン(3)の使用量は、エテン誘導体(2)の1モルに対して1モル以上が好ましく、1〜5モルがより好ましく、1〜2モルがさらに好ましい。
工程(ii)の反応に使用する塩基性化合物は、ハロゲン化メタン(3)からカルベンを生成させる反応を促進する化合物である。
塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ土類又はアルカリ金属の水酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、t−ブトキシカリウム等のアルカリ金属アルコキシド;水素化ナトリウム等のアルカリ金属水素化物;ブチルリチウム等のアルキルリチウム;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム等のアルカリ金属リン酸水素塩又はアルカリ金属リン酸塩が好ましい。
より好ましい塩基性化合物は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属水素化物又はアルキルリチウムである。さらに好ましい塩基性化合物は、アルカリ金属水酸化物である。最も好ましい塩基性化合物は水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムである。塩基性化合物は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これら塩基性化合物は水溶液として使用してもよく、有機溶媒に混合させて使用してもよい。塩基性化合物の溶媒中の濃度は、5〜60重量%が好ましく、10〜60重量%がより好ましい。塩基性化合物の溶液中の濃度が低いとエテン誘導体(2)の転化率が低下する、高いとエテン誘導体(2)の転化率が上がる。
工程(ii)の反応に使用する塩基性化合物の使用量は、ハロゲン化メタン(3)からエテン化合物との反応に十分なカルベンを生成させることができる量であり、ハロゲン化メタン(3)の1モルに対して1〜10モルが好ましく、1〜8モルがより好ましく、1〜6モルがさらに好ましい。
工程(ii)の反応は、塩基性化合物とともに相間移動触媒を存在させて行われる。相間移動触媒としては、一般式(R(式中、Rは独立して水素原子又はC1−25炭化水素基であり、MはN又はPであり、AはOH、F、Br、Cl、I、HSO、CN、CHSO又はPhCHCOである。ただし、Phはフェニル基を示す)で表される化合物やクラウンエーテルが好ましい。具体的には、テトラブチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、ベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム塩等の4級アンモニウム塩が挙げられる。C1−25炭化水素基としては、炭素数1〜25の直鎖アルキル基が好ましく、炭素数1〜20の直鎖のアルキル基がより好ましい。好ましい相間移動触媒としては、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩が好ましい。これら相間移動触媒は水溶液として使用してもよく、有機溶媒に混合させて使用してもよい。
相間移動触媒の使用量は、エテン誘導体(2)の質量に対して0.001〜5質量%が好ましく、0.01〜3質量%がより好ましく、0.05〜2質量%がさらに好ましい。
一般に、相間移動触媒を使用することにより反応を促進できる。また、汎用の相間移動触媒(4級アンモニウム塩等)の使用がコスト面で有利である。
相間移動触媒は、水相と有機相の相間の触媒として使用してもよく、塩素化フッ素化炭化水素溶媒と炭化水素溶媒等のように、相分離する2つの有機相間の触媒として使用してもよい。一般に、相間移動触媒の使用により相分離する2種の溶媒を使用する反応を促進できる。
工程(ii)の反応は、液相中で行い、溶媒の存在下に実施することが好ましい。
溶媒は、水、脂肪族炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、又はハロゲン化芳香族炭化水素が好ましい。溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、石油エーテル類、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素が挙げられる。溶媒は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
溶媒に水を用いる場合、有機溶媒と組み合わせて相乗的な効果が得られる。例えば、原料であるエテン誘導体(2)やハロゲン化メタン(3)、および生成物であるシクロプロパン誘導体(4)は有機相に存在するため、水との接触効率が下がることで、水による副反応を抑制できる。また、水溶性の塩基性化合物を使用する場合、水相で均一な状態となるため、局所的な副反応を抑制できる。
溶媒の使用量は、エテン誘導体(2)の100容積%に対して10〜1000容積%が好ましく、50〜800容積%がより好ましい。
工程(ii)において、エテン誘導体(2)、ハロゲン化メタン(3)、塩基性化合物、相間移動触媒を反応容器に導入する順序に特に限定はなく、同時に反応器に導入し、混合してもよい。また、塩基性化合物、相間移動触媒を反応器中で混合しておいてからエテン誘導体(2)、ハロゲン化メタン(3)を、逐次又は同時に投入してもよい。また、ハロゲン化メタン(3)を最後に投入してもよい。
一般に反応を行う際、予め溶媒や触媒等を混合し、その後原料等を逐次又は同時に投入する。反応の発熱量が大きい場合は、原料の全て又は一部を逐次投入するのが好ましい。
工程(ii)の反応温度は、−20℃〜+50℃が好ましく、−10℃〜+40℃がより好ましく、0℃〜+30℃がさらに好ましい。反応圧力は特に限定されず、加圧、常圧又は減圧のいずれでも反応を行うことができる。
工程(ii)の反応は連続的に行うことができ、バッチ式である従来の製造方法よりも生産性において極めて優れている。さらに、腐蝕性の高い塩化水素等が生成せず、安全性が高く反応装置の制約が少なく工業的に極めて有利である。
工程(i)で得られたエテン誘導体(2)を未精製のまま工程(ii)に使用した場合、シクロプロパン誘導体(4)とともに、工程(i)で生じたROHに起因して下式(8)で表される化合物(以下、該化合物を「プロペン誘導体(8)」とも記す。)が生成する。
(式中、R、R、R、R、R及びXは前記の通りである。)
プロペン誘導体(8)は、溶媒の存在下に、酸性条件下で分解することにより後述する工程(iii)の生成物であるハロゲン化アクリル酸エステル誘導体(5)へと変換できる。よって、プロペン誘導体(8)を回収し、ハロゲン化アクリル酸エステルを製造することにより、収率と生産性を向上できる。
プロペン誘導体(8)の分解反応は、酸性条件下で行うことが好ましく、pH0〜7で行うことが好ましく、pH0〜5で行うことがより好ましい。酸性条件下とするには、反応系中に塩酸、硫酸等の酸を存在させることが好ましい。分解反応に使用する溶媒は、メタノール、エタノールなどのアルコール類が好ましい。また、溶媒の使用量は、プロペン誘導体(8)の100容積%に対して、10〜1000容積%が好ましく、20〜800容積%がより好ましい。反応温度は、−20〜+100℃が好ましく、−10〜+80℃がより好ましい。
好ましいプロペン誘導体(8)としては、例えば下式(7)で表される化合物が挙げられる。
(式中、Meはメチル基を表す。)
工程(ii)で得られたシクロプロパン誘導体(4)は、医薬、ポリマー等の中間体として有用である。特に、式(4)においてXがフッ素原子であり、Yが塩素原子又はフッ素原子であるシクロプロパン誘導体(4)は有用である。
さらに、下式(6)で表される化合物は、新規な化合物である。
(式中、Meはメチル基を表し、Yは塩素原子またはフッ素原子を表す。)
式(6)で表される化合物の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
(式中、Meはメチル基を表す。)
例えば、従来報告されている、R及びRが共に水素原子であり、R及びRが共にエチル基であり、Xがフッ素原子であり、かつYが塩素原子であるシクロプロパン誘導体(4)は沸点が高いため、分解を抑えるために低温で蒸留精製を行うことが非常に困難であった。たとえば、通常の減圧蒸留装置を用いて減圧蒸留した場合、減圧蒸留可能な最低温度である50℃で蒸留精製した場合には、該シクロプロパン誘導体(4)は20%以上分解する。それと比較して、本発明の式(6)で表される化合物は、沸点が低いため、同一の減圧蒸留装置を用いて20℃以下にて蒸留精製が可能であり、その分解を1%未満に抑制できるため、工業経済的に非常に有用である。
[工程(iii)]
工程(iii)は、工程(ii)で得られたシクロプロパン誘導体(4)を、液相又は気相において加熱することにより、脱RY反応させ、式(5)で表されるハロゲン化アクリル酸エステル誘導体(以下、単に「ハロゲン化アクリル酸エステル誘導体(5)」とも記す。)を製造する工程である。
工程(iii)で使用するシクロプロパン誘導体(4)は、工程(ii)で得られたものを未精製のまま工程(iii)の反応に使用してもよく、精製した後に使用してもよい。シクロプロパン誘導体(4)の精製方法としては、例えば溶媒を用いた抽出、蒸留、又は結晶化等の公知の方法を使用できる。
精製の際に、工程(ii)で得られたシクロプロパン誘導体(4)中に未反応のまま含まれているエテン誘導体(2)やハロゲン化メタン(3)を分離して工程(ii)に戻すことも可能である。
工程(iii)は、工程(ii)で得たシクロプロパン誘導体(4)を反応器中で加熱する。工程(iii)の反応は脱離反応であり、式RYで表される化合物が脱離する。工程(iii)の反応は、気相で行ってもよく、液相で行ってもよい。工程(iii)の反応温度は、80℃〜400℃が好ましく、100℃〜350℃がより好ましく、120℃〜300℃がさらに好ましい。反応圧力は特に限定されず、加圧、常圧又は減圧のいずれでも行うことができる。一般に温度が低いとシクロプロパン誘導体(4)の転化率が低下する、高いと副生成物が生成する、重合が促進される、等の可能性がある。最適な反応温度は接触時間に依存する。
液相または気相で行う場合、予め加熱した反応器に原料を導入してもよく、加熱する前に導入してもよく、予め加熱して実施するのが好ましい。また、ハロゲン化アクリル酸エステル誘導体(5)を含む反応液や反応ガスを同時に抜き出して連続的に行ってもよく、同時に抜き出さずにバッチ式で行ってもよい。生産性の観点から、連続的に行うのが有利である。
工程(iii)において、連続的に反応を行う場合、反応器内における滞留時間はシクロプロパン誘導体(4)が十分に転化される時間であればよく、1秒以上が好ましく、10秒以上がより好ましく、30秒以上がさらに好ましい。また、重合等の副反応を抑制する観点から、5時間以内が好ましく、2時間以内がより好ましく、1時間以内がさらに好ましい。一般に接触時間が短いとシクロプロパン誘導体(4)の転化率が低下する、長いと副生成物が生成する、重合が促進される、等の可能性がある。
工程(iii)を液相において行う場合には溶媒の存在下又は不存在下に実施でき、溶媒の存在下に実施することが好ましい。工程(iii)において溶媒を使用する場合、溶媒は加熱に対して安定であり、工程(iii)の反応において不活性な溶媒が好ましい。溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素溶媒;シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン等の炭化水素溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール溶媒;クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素溶媒が好ましい。
溶媒の使用量は、シクロプロパン誘導体(4)の100容積%に対して0〜1000容積%が好ましく、0〜800容積%がより好ましい。
工程(iii)で得られたハロゲン化アクリル酸エステル誘導体(5)は、例えば溶媒を用いた抽出、蒸留、又は結晶化等の公知の方法により精製できる。
また、工程(iii)で得られたハロゲン化アクリル酸エステル誘導体(5)は、構造によっては工程(iii)の途中や単離精製後に容易に重合してポリマーを生成する場合もある。その場合には重合禁止剤の添加によって工程(iii)の途中や単離精製後において重合を防ぐことが好ましい。
重合禁止剤としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンN−オキシル、p−ベンゾキノン、ヒドロキノン、メトキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、4−tert−ブチルカテコール、tert−ブチルヒドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、ロイコキニザリン、クロラニル、フェノチアジン、Q−1300、Q−1301、テトラエチルチラウムジスルフィド、硫黄等が好ましく、ヒドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、フェノチアジンがより好ましい。重合禁止剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
重合禁止剤の使用量は、工程(iii)で得られたハロゲン化アクリル酸エステル誘導体(5)に対して10ppm以上が好ましく、20〜50000ppmが特に好ましい。重合禁止剤の使用量が少ないと重合禁止効果が低く、多いと廃棄物の量が増える、コスト面で劣る等の可能性がある。
重合禁止剤の添加方法は、特に制限されず、ハロゲン化アクリル酸エステル誘導体(5)が存在する系に重合禁止剤を存在させることが好ましい。具体的には、反応系中、蒸留精製時の釜の中、及び蒸留精製後のハロゲン化アクリル酸エステル誘導体(5)に重合禁止剤を存在させることが好ましい。また、蒸留精製の際に、重合禁止剤とエアレーションを組み合わせることにより、ハロゲン化アクリル酸エステル誘導体(5)の気相状態での自己重合も効果的に抑制できる。蒸留中のエアレーションにおける酸素導入量は特に制限はないが、蒸留のシステム全体を含めて爆発が誘発されない量であればよい。
工程(iii)の反応は連続的に実施でき、バッチ式である従来の製造方法よりも生産性に極めて優れている。また、気相において反応を行う場合、生成物の分離が極めて容易である。さらに、腐蝕性の高い塩化水素等の生成もなく、安全性が高く反応装置の制約が少なく工業的に極めて有利である。
ハロゲン化アクリル酸エステル誘導体(5)は、医薬品、ポリマー、光学材料、塗料、半導体レジスト材料等の原料として有用である。特にα−フルオロアクリル酸エステル誘導体は、医薬用途や、ポリマーや光学材料の基礎原料として極めて有用である。
つまり、本発明の製造方法によって得られた式(5)で表されるハロゲン化アクリル酸エステル誘導体を重合させることにより、該ハロゲン化アクリル酸エステル誘導体に基づく重合単位を含む重合体の製造方法が、工業経済的に実現する。
そのようなハロゲン化アクリル酸エステル誘導体(5)としては、例えば、下式(9)で表される化合物が挙げられる。
(式中、Meはメチル基を表す。)
前記の工程(i)〜(iii)は単独で行うこともできるが、連続で行うことが工業的には有利である。例えば、工程(i)を気相中で行った後、生成物を冷却し、未精製のまま工程(ii)を液相中で行い、工程(ii)の生成物を未精製のまま加熱して工程(iii)を行う連続プロセスとして実施できる。このような連続フローに、前記したように未反応の原料を分離して前工程に戻す経路を更に加えることにより、一層生産的なプロセスを構築できる。
本発明の各工程(i)〜(iii)は、下記の反応基質において行うことが好ましい。各工程において得られる中間体や最終製品の化合物は、医薬、ポリマー等の中間体として有用な化合物である。
(式中、Meはメチル基を表す。)
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
[実施例1〜3、比較例1]
<触媒の調製> 直径4.8mm、長さ9.8mmの円柱状酸化亜鉛(比表面積39m/g、固体酸量0.1mmol/g(NH換算)、日揮触媒化成社製“N748”)触媒を内径15mm、長さ300mmのSUS316製反応管に充填し、電気ヒーターを取り付けた。触媒層の温度が250℃になるように加熱して窒素を3時間流通し触媒を乾燥させた。
<工程(i)> 触媒層の温度が表1に記載の温度になるように電気ヒーターで加熱し、表1に示す条件で原料のオルト酢酸トリメチルを流通させることで反応を実施した。反応器出口の粗液を0℃のコールドトラップで捕集しガスクロマトグラフで分析することで反応生成物の組成解析を行った。また、比較例として固体触媒を使用せずに実施例1と同様の操作で反応を行った。結果を表1に示す。
また、充填カラムを用いた常圧蒸留で分留することにより1,1−ジメトキシエテンが無色の液体として得られる。
1,1−ジメトキシエテンのH−NMRを下に示す。
H−NMR(400MHz,CDCl),δppm;2.91(s,2H),3.41(s,6H)。
[実施例4〜6]
触媒を変える以外は全て実施例2と同様の操作で反応を行った。結果を表2に示す。
※触媒1:球状α−アルミナ(比表面積3m/g、固体酸量0.9mmol/g(NH換算)、ニッカトー社製“HDボール”)
※触媒2:円柱状γ−アルミナ(比表面積280m/g、固体酸量0.2mmol/g(NH換算)、N.E.ケムキャット社製“selexsorb COS”)
※触媒3:5%酸化亜鉛−酸化ジルコニウム(比表面積60m/g、固体酸量0.06mmol/g(NH換算)、N.E.ケムキャット社製)
[実施例7〜15]
触媒を変える以外は全て実施例2と同様の操作で反応を行った。結果を表3に示す。
[実施例16(工程(ii))]
300mlのフラスコに、1,1−ジメトキシエテン20g、テトラブチルアンモニウムブロミド0.1g、48%水酸化カリウム水溶液80g、ヘキサン40gを混合し、5℃に冷却し、撹拌したところへ、ジクロロフルオロメタン32gを反応温度が10℃を超えないように連続フィードした。ジクロロフルオロメタンのフィード終了後、ガスクロマトグラフで1,1−ジメトキシエテンの消失を確認してから蒸留水40gを添加し、有機層を二層分離した。得られた有機層粗液中に含まれる1−クロロ−1−フルオロ−2,2−ジメトキシシクロプロパンの含量はH−NMR(内部標準法による定量)より29gであった。収率は83.6%であった。
1−クロロ−1−フルオロ−2,2−ジメトキシシクロプロパンのH−NMR及び19F−NMRを下に示す。
H−NMR(400MHz,CDCl),δppm;1.51(dd,1H),1.74(dd,1H),3.47(s,3H),3.49(s,3H)。
19F−NMR(400MHz,CDCl),δppm;−147.35(dd,1F)。
また、2−フルオロ−3,3,3−トリメトキシ−1−プロペンの含量はH−NMR(内部標準法による定量)より1.7gであった。収率は5.0%であった。
2−フルオロ−3,3,3−トリメトキシ−1−プロペンのH−NMR及び19F−NMRを下に示す。
H−NMR(400MHz,CDCl),δppm;3.22(s,9H),5.22(dd,1H),6.92(dd,1H)。
19F−NMR(400MHz,CDCl),δppm;−126.09(dd,1F)。
なお、実施例16で製造した1−クロロ−1−フルオロ−2,2−ジメトキシシクロプロパンを含む有機層粗液を、充填カラムを用いた減圧蒸留装置により蒸留した場合、バス温20℃、圧力13hPaにて蒸留可能であった。得られた1−クロロ−1−フルオロ−2,2−ジメトキシシクロプロパンは無色の液体であり、蒸留における1−クロロ−1−フルオロ−2,2−ジメトキシシクロプロパンの分解率は1%未満であった。
一方、同一の減圧蒸留装置を用いて、実施例16における1,1−ジメトキシエテンを1,1−ジエトキシエテンに変更する以外は同様にして得た、1−クロロ−1−フルオロ−2,2−ジエトキシシクロプロパンを含む有機層粗液を蒸留した場合、バス温50℃、圧力10hPaの条件にて蒸留可能であった。しかし、蒸留における1−クロロ−1−フルオロ−2,2−ジエトキシシクロプロパンの分解率が24%であった。
[実施例17〜22]
テトラブチルアンモニウムブロミド、48%水酸化カリウム水溶液、ジクロロフルオロメタンの使用量を変える以外は、実施例16と同様の操作で反応を行った。結果を表4に示す。表中、TBABはテトラブチルアンモニウムブロミドを、KOH溶液は48%水酸化カリウム水溶液を、CHClFはジクロロフルオロメタンを示す。
[実施例23]
ジクロロフルオロメタン32gをクロロジフルオロメタン27gに変える以外は、実施例16と同様の操作で反応を行った。得られた有機層粗液中に含まれる1,1−ジフルオロ−2,2−ジメトキシシクロプロパンの含量はH−NMR(内部標準法による定量)より26gであった。収率は81.5%であった。
1,1−ジフルオロ−2,2−ジメトキシシクロプロパンのH−NMR及び19F−NMRを下に示す。
H−NMR(400MHz,CDCl),δppm;1.55(m,2H),3.30(s,6H)。
19F−NMR(400MHz,CDCl),δppm;−145.25(m,2F)。
[実施例24(工程(iii))]
反応蒸留用の受器(0℃に冷却、重合禁止剤として2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)0.5gを初期添加)を接続した100mlの三口フラスコに2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)0.5g、1,2,4−トリクロロベンゼン100mlを入れ、360torrの真空度とした。145℃に加熱したところへ実施例16で製造した有機層粗液45gの滴下を開始し、内温が145℃に維持されるような速度で滴下を継続した。生成したα−フルオロアクリル酸メチルは蒸留受器に溜まった。蒸留受器に溜まった粗液中に含まれるα−フルオロアクリル酸メチルの含量はH−NMR(内部標準法による定量)より10gであった。収率は94.6%であった。
[実施例25]
実施例16で製造した有機層粗液を実施例23で製造した有機層粗液に変える以外は、実施例24と同様の操作で反応を行った。蒸留受器に溜まった粗液中に含まれるα−フルオロアクリル酸メチルの収率はH−NMR(内部標準法による定量)より91.7%であった。
本発明に係るハロゲン化アクリル酸エステル誘導体の製造方法は、入手が容易なオルトカルボン酸誘導体を原料として、高転化率、高選択率、高収率で最終製品であるハロゲン化アクリル酸エステル誘導体に導く方法であり、工業的に極めて有用である。また、本発明に係るハロゲン化アクリル酸エステル誘導体の製造方法により製造される中間体や最終製品の化合物は、医薬、ポリマー等の中間体として有用な化合物である。
本出願は、日本で2015年8月27日に出願された特願2015−168339号および2016年3月8日に出願された特願2016−044724号を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含される。

Claims (19)

  1. 下式(1)で表される化合物であり、かつ、沸点が500℃以下である化合物を、気相において、金属酸化物触媒、天然鉱物、モレキュラーシーブ、カーボンブラック、金属塩化物、金属フッ化物、金属硫酸塩、金属硫化物、および金属リン酸塩から選ばれる少なくとも1種の固体触媒の存在下に脱ROH反応させることを特徴とする、下式(2)で表されるエテン誘導体の製造方法。

    (式中、
    及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子を必須とする1価の基を表すか、またはR及びRは共同して、それらが結合する炭素原子とともに環を形成してもよく、
    は、脱ROH反応によって基ROが脱離し得る1価の基を表し、
    及びRはそれぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子を必須とする1価の基を表す。)

    (式中、R、R、R及びRは前記の通りである。)
  2. 及びRが、共に水素原子であり、かつ
    、R及びRがそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、置換基を有しているアルキル基、置換基を有しているシクロアルキル基、または置換基を有しているアリール基である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 反応の温度が、100〜500℃である、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 反応が、気化させた式(1)で表される化合物をキャリアガスとともに固体触媒層に流通させることにより行われる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
  5. 固体触媒が、ジルコニア、アルミナ、ゼオライト及び酸化亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む触媒である、請求項1〜のいずれか一項に記載の製造方法。
  6. 固体触媒が、酸化亜鉛を含む触媒である、請求項1〜のいずれか一項に記載の製造方法。
  7. 請求項1〜のいずれか一項に記載の製造方法によって式(2)で表されるエテン誘導体を得て、該エテン誘導体を、塩基性化合物及び相間移動触媒の存在下に下式(3)で表される化合物と反応させることを特徴とする、下式(4)で表されるシクロプロパン誘導体の製造方法。

    (式中、X、Y、及びZはそれぞれ独立に、ハロゲン原子を表す。)

    (式中、R、R、R及びRは請求項1の通りであり、X及びYは前記の通りである。)
  8. 塩基性化合物が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属水素化物及びアルキルリチウムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項に記載の製造方法。
  9. 相間移動触媒が、4級アンモニウム塩である、請求項又はに記載の製造方法。
  10. Xがフッ素原子であり、かつYが塩素原子又はフッ素原子である、請求項のいずれか一項に記載の製造方法。
  11. 式(2)で表されるエテン誘導体が、1,1−ジメトキシエテンである、請求項10のいずれか一項に記載の製造方法。
  12. 式(3)で表される化合物の使用量が、式(2)で表されるエテン誘導体の1モルに対して1〜5モルである、請求項11のいずれか一項に記載の製造方法。
  13. 塩基性化合物の使用量が、式(3)で表される化合物の1モルに対して1〜10モルである、請求項12のいずれか一項に記載の製造方法。
  14. 相間移動触媒の使用量が、式(2)で表されるエテン誘導体の質量に対して0.001〜5質量%である、請求項13のいずれか一項に記載の製造方法。
  15. 請求項14のいずれか一項に記載の製造方法によって式(4)で表されるシクロプロパン誘導体を得て、該シクロプロパン誘導体を、液相又は気相において加熱することにより、脱RY反応させることを特徴とする、下式(5)で表されるハロゲン化アクリル酸エステル誘導体の製造方法。

    (式中、R、R、R及びRは請求項1の通りであり、X及びYは請求項の通りである。)
  16. 脱RY反応の温度が、80〜400℃である、請求項15に記載の製造方法。
  17. 請求項14のいずれか一項に記載の製造方法によって式(4)で表されるシクロプロパン誘導体と下式(8)で表されるプロペン誘導体を得て、次に、該シクロプロパン誘導体と該プロペン誘導体とを分離し、次に分離した該プロペン誘導体を、酸性条件下で分解させることを特徴とする、下式(5)で表されるハロゲン化アクリル酸エステル誘導体の製造方法。

    (式中、R、R、R、R及びRは請求項1の通りであり、Xは請求項の通りである。)

    (式中、R、R、R及びXは前記の通りである。)
  18. 式(5)で表されるハロゲン化アクリル酸エステル誘導体を製造する際に、重合禁止剤の存在下で製造を行う、請求項1517のいずれか一項に記載の製造方法。
  19. 重合禁止剤の添加量が、式(5)で表されるハロゲン化アクリル酸エステル誘導体に対して10ppm以上である、請求項18に記載の製造方法。
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