ところで、特許文献1に記載の二重偏心弁では、弁体がハウジングの弁座に着座した全閉状態において、シール面がシート面に密着して両者の間に隙間が生じないように回転軸を弁体に組み付ける必要がある。しかし、弁体、弁座及び回転軸の間の組み付けバラツキによっては、全閉状態でのシール面とシート面との間に隙間が生じるおそれがあり、この隙間から流体が漏れるおそれがある。
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、弁座と弁体との間の組み付けバラツキによる位置ずれを解消し、全閉状態での弁座と弁体との間のシール性を確保することを可能とした二重偏心弁及びその製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、弁孔と弁孔に形成された環状のシート面を含む弁座と、円板状をなし、シート面に対応する環状のシール面が外周に形成された弁体と、流体が流れる流路を含むハウジングと、弁座と弁体が流路に配置されることと、弁体を回動させるためにハウジングに回転可能に設けられた回転軸と、回転軸の軸線が弁体のシール面から離れて配置されると共に、弁体の軸線から離れて配置されることと、回転軸は、その軸線上に弁体が支持される弁体支持部を含むことと、弁体は、弁座と対向する側とは反対側に弁体の軸線の方向へ突出し、弁体支持部に取り付けられる突部を含むこととを備え、弁体を回転軸の軸線を中心に回動させることにより、シール面がシート面に接触する全閉位置とシート面から最も離れる全開位置との間で移動可能に構成される二重偏心弁において、流路は、弁体が全閉位置に配置された状態において、弁体のシール面を内包すると共にシール面が向く部分を含み、その部分が一定の内径で伸びると共に開口を有し、その開口から弁座が挿入可能に形成されると共に、弁座を弁体へ向けて押圧可能に形成され、弁座は、弁体と対向する側とは反対側にて、弁座の外周が流路の内壁に接合されたことを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、回転軸がハウジングに支持され、弁体が突部にて弁体支持部に組み付けられた状態で、流路の、弁体が配置される側とは反対側の開口から流路へ弁座を挿入することにより、弁体を弁座に着座させることが可能である。また、この着座状態において、弁体を弁座へ向けて押圧すると共に弁座を弁体へ向けて押圧することにより、弁体のシール面を弁座のシート面に密着させることが可能である。更に、この密着状態において、開口を通じて弁座の外周を流路の内壁に接合することが可能である。このような組み付けが許容される。
上記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、弁孔と弁孔に形成された環状のシート面を含む弁座と、円板状をなし、シート面に対応する環状のシール面が外周に形成された弁体と、流体が流れる流路を含むハウジングと、弁座と弁体が流路に配置されることと、弁体を回動させるためにハウジングに回転可能に設けられた回転軸と、回転軸の軸線が弁体のシール面から離れて配置されると共に、弁体の軸線から離れて配置されることと、回転軸は、その軸線上に弁体が支持される弁体支持部を含むことと、弁体は、弁座と対向する側とは反対側に弁体の軸線の方向へ突出し、弁体支持部に取り付けられる突部を含むこととを備え、弁体を回転軸の軸線を中心に回動させることにより、シール面がシート面に接触する全閉位置とシート面から最も離れる全開位置との間で移動可能に構成される二重偏心弁の製造方法において、回転軸をハウジングに支持すると共に、弁体を突部にて弁体支持部に組み付けて流路に配置する工程と、弁体が配置される側とは反対側の開口から弁座を流路に挿入すると共に、弁体支持部に組み付けられた弁体を弁座に着座させる工程と、弁座を弁体へ向けて押圧しながら弁座の外周と流路の内壁とを接合する工程とを備えたことを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、最初の工程で、回転軸をハウジングに支持すると共に、弁体を突部にて弁体支持部に組み付けて流路に配置する。これにより、ハウジングにて、回転軸に支持された弁体が流路に配置される。次の工程で、弁座を流路に挿入すると共に、弁体支持部に組み付けられた弁体を弁座に着座させる。これにより、弁座と弁体が全閉状態で位置決めされる。次の工程では、弁座を弁体へ向けて押圧しながら弁座の外周と流路の内壁とを接合する。このとき、弁体へ向けた弁座の押圧により、弁体のシール面と弁座のシート面とが密着する。また、弁座の流路への接合により、シール面とシート面の密着状態が保持される。
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、弁座を弁体へ向けて押圧しながら弁座の外周と流路の内壁とを接合する工程において、更に弁体を弁座へ向けて押圧することを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、請求項2に記載の発明の作用に加え、弁体を弁座へ向けて押圧すると共に弁座を弁体へ向けて押圧するので、弁体のシール面と弁座のシート面とが好適に密着する。
上記目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の発明において、弁座を弁体へ向けて押圧しながら弁座の外周と流路の内壁とを接合する工程において、更に回転軸を弁座へ向けて押圧することを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、請求項2又は3に記載の発明の作用に加え、更に回転軸を弁座へ向けて押圧するので、回転軸の取り付けガタが押さえられた状態で弁座と弁体とが密着する。
上記目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、請求項2乃至4のいずれかに記載の発明において、弁座を弁体へ向けて押圧しながら弁座の外周と流路の内壁とを接合する工程と同時に、弁座を弁体へ向けて押圧しながら突部と弁体支持部を接合する工程を更に備えたことを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、請求項2乃至4のいずれかに記載の発明の作用に加え、この工程では、弁座を弁体へ向けて押圧しながら突部と弁体支持部を接合する。このとき、弁座を弁体へ向けて押圧するので、突部と弁体支持部が接触して位置決めされる。また、突部の弁体支持部への接合により、突部と弁体支持部との位置決め状態が保持される。
上記目的を達成するために、請求項6に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、弁体を弁座へ向けて押圧すると共に弁座を弁体へ向けて押圧しながら突部と弁体支持部を接合する工程において、弁体支持部は、回転軸の先端に形成されたピンであり、突部には、ピンを挿入するピン孔が形成されており、ピンをピン孔に挿入した状態で、弁座を弁体へ向けて押圧する力よりも大きな力で弁体を弁座へ向けて押圧しながら、ピン孔の内周面とピンの外周面とをピンの軸線方向に沿って接合することを趣旨とする。
上記発明の構成によれば、請求項3に記載の発明の作用に加え、ピンをピン孔に挿入した状態で、弁座を弁体へ向けて押圧する力よりも大きな力で弁体を弁座へ向けて押圧しながら、ピン孔の内周面とピンの外周面とをピンの軸線方向に沿って接合する。従って、ピン孔の内周面がピンの外周面に押し付けられた状態でピンとピン孔が接合される。
請求項1に記載の発明によれば、弁座と弁体との間の組み付けバラツキによる位置ずれを、組み付け時の調整によって解消することができ、全閉状態での弁座と弁体との間のシール性を確保することができる。
請求項2に記載の発明によれば、弁座と弁体との間の組み付けバラツキによる位置ずれを解消することができ、全閉状態での弁座と弁体との間のシール性を確保することができる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明の効果に加え、全閉状態での弁座と弁体との間のシール性を向上させることができる。
請求項4に記載の発明によれば、請求項2又は3に記載の発明の効果に加え、回転軸の取り付けガタに起因する弁座と弁体との相対的な位置ずれを防止することができる。
請求項5に記載の発明によれば、請求項2乃至4に記載の発明の効果に加え、弁座と弁体との間の組み付けバラツキによる位置ずれを解消した状態で、弁体と回転軸とを組み付けることができる。
請求項6に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明の効果に加え、弁体の突部と回転軸のピンとを強固に接合することができる。
<第1実施形態>
以下、この発明の二重偏心弁を排気還流弁(EGR弁)に具体化した第1実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
図1に、この実施形態におけるEGR弁10を斜視図により示す。自動車に搭載されたガソリンエンジンシステムにおいて、エンジンから排気通路へ排出される排気の一部を排気還流ガス(EGRガス)として吸気通路へ流して各気筒へ還流させる排気還流通路(EGR通路)が設けられる。EGR弁10は、このEGR通路においてEGRガスの流量を調節するために設けられる。この実施形態で、EGR弁10は、開度可変な電動弁により構成される。このEGR弁10として、大流量、高応答及び高分解能の特性を有することが望ましい。そこで、この実施形態では、EGR弁10の構造として、例えば、特許第5759646号公報に記載される「二重偏心弁」の構成を基本構成として採用している。この二重偏心弁は、大流量制御に対応して構成される。
すなわち、図1に示すように、EGR弁10は、二重偏心弁より構成される弁部31と、モータ42(図4参照)を内蔵したモータ部32と、減速機構43(図4参照)を内蔵した減速機構部33とを備える。弁部31は、EGRガスが流れる流路36を有する管部37を含み、流路36の中には弁座38、弁体39及び回転軸40の先端部が配置される。回転軸40には、モータ42(図4参照)の回転力が減速機構43(図4参照)を介して伝達されるようになっている。
図2に、弁体39が弁座38に着座する全閉位置に配置された全閉状態における弁部31を一部破断して斜視図により示す。図3に、弁体39が弁座38から最も離れた全開状態における弁部31を一部破断して斜視図により示す。図2、図3に示すように、流路36は、大径流路36Aと小径流路36Bを含み、弁座38はその小径流路36Bに挿入され、溶接により固定される。大径流路36Aは、一定の内径で上方へ伸びて開口し、小径流路36Bは、一定の内径で下方へ伸びて開口する。弁座38は、円環状をなし、中央に弁孔38aを有する。弁孔38aの縁部には、環状のシート面38bが形成される。弁体39は、円板状をなし、その外周には、シート面38bに対応する環状のシール面39aが形成される。弁体39は回転軸40の先端に固定されて回転軸40と一体的に回動するようになっている。図2、図3においては、弁座38より上の大径流路36AがEGRガスの流れの上流側を示し、弁座38より下の小径流路36BがEGRガスの流れの下流側を示す。この実施形態において、大径流路36Aは、EGR通路を介してエンジンの排気通路に通じる「排気側」であり、小径流路36Bは、EGR通路を介してエンジンの吸気通路に通じる「吸気側」である。
図4に、全閉状態のEGR弁10を平断面図により示す。図4に示すように、このEGR弁10は、主要な構成要素として、弁座38、弁体39及び回転軸40の他に、ボディ41、モータ42、減速機構43及び戻し機構44を備える。ボディ41は、流路36と管部37を含むアルミ製の弁ハウジング45と、同ハウジング45の開口端を閉鎖する合成樹脂製のエンドフレーム46とを含む。回転軸40及び弁体39は、弁ハウジング45に設けられる。すなわち、回転軸40は、その先端に弁体39が支持される円柱状のピン40aを含む。ピン40aは、本発明の弁体支持部の一例に相当する。回転軸40は、ピン40aがある先端を自由端とし、先端部が弁体39と共に大径流路36Aに配置される。この実施形態では、大径流路36Aにおいて、弁体39と回転軸40の先端部が配置されると共に、弁体39が弁座38に着座可能に設けられる。また、回転軸40は、ピン40aの反対側を基端部40bとし、その基端部40bにて弁ハウジング45に片持ち支持される。また、回転軸40の基端部40bは、互いに離れて配置された2つの軸受、すなわち第1軸受47と第2軸受48を介して弁ハウジング45に回転可能に支持される。第2軸受48に隣接して回転軸40と弁ハウジング45との間には、ゴムシール61が設けられる。第1軸受47及び第2軸受48は、それぞれボールベアリングにより構成される。弁体39は、その軸線L2(図5参照)上にて上方(大径流路36A側)へ突出する突部39bを含み、この突部39bに円筒状のピン孔39cが形成される。弁体39は、このピン孔39cにピン40aを挿入し溶接することにより回転軸40に固定される。
図4において、エンドフレーム46は、弁ハウジング45に対し複数のクリップ(図示略)により固定される。エンドフレーム46の内側には、回転軸40の基端に対応して配置され、弁体39の開度(弁開度)を検出するための開度センサ49が設けられる。また、回転軸40の基端部40bには、メインギヤ51が固定される。メインギヤ51と弁ハウジング45との間には、弁体39を閉弁方向へ付勢するためのリターンスプリング50が設けられる。メインギヤ51の裏側には、凹部51aが形成され、その凹部51aに磁石56が収容される。この磁石56は、その上から押さえ板57により押さえ付けられて固定される。従って、メインギヤ51が、弁体39及び回転軸40と一体的に回転することにより、磁石56の磁界が変化し、その磁界の変化を開度センサ49が弁開度として検出するようになっている。
図4に示すように、モータ42は、弁ハウジング45に形成された収容凹部45aに収容される。モータ42は、収容凹部45aにて、留め板58と板ばね59を介して弁ハウジング45に固定される。モータ42は、弁体39を開閉するために減速機構43を介して回転軸40に駆動連結される。すなわち、モータ42の出力軸(図示略)上に固定されたモータギヤ53が、中間ギヤ52を介し、メインギヤ51に駆動連結される。中間ギヤ52は、大径ギヤ52aと小径ギヤ52bを含む二段ギヤにより構成される。中間ギヤ52は、ピンシャフト54を介して弁ハウジング45に回転可能に支持される。大径ギヤ52aには、モータギヤ53が連結され、小径ギヤ52bには、メインギヤ51が連結される。この実施形態では、各ギヤ51〜53により減速機構43が構成される。メインギヤ51と中間ギヤ52は、軽量化のために樹脂材料により形成される。弁ハウジング45とエンドフレーム46との接合部分には、ゴム製のガスケット60が設けられる。このガスケット60により、モータ部32と減速機構部33の内部が大気に対して密閉される。
従って、図2に示すように、全閉状態から、モータ42が作動し、モータギヤ53が回転することにより、その回転が中間ギヤ52により減速されてメインギヤ51に伝達される。これにより、回転軸40及び弁体39が、リターンスプリング50の付勢力に抗して回動され、流路36が開かれる。すなわち、弁体39が開弁される。弁体39を閉弁させる場合は、モータ42がモータギヤ53を逆転させることになる。また、弁体39をある開度に保持するためには、モータ42に回転力を発生させ、その回転力を保持力としてモータギヤ53、中間ギヤ52及びメインギヤ51介して回転軸40に伝達する。この保持力がリターンスプリング50の付勢力に均衡することにより、弁体39がある開度に保持される。
図5に、全閉状態における流路36、弁座38、弁体39及び回転軸40の関係を断面図により示す。図5に示すように、小径流路36Bは、弁体39が配置される側とは反対側に開口36bを有し、その開口36bから弁座38が挿入可能に形成される。弁座38は、弁体39と対向する側とは反対側にて、弁座38の外周が小径流路36Bの内壁に接合される。図5において黒丸P1を付した部分が弁座38と小径流路36Bとの接合個所を示す。図5において、回転軸40の軸線L1は、弁体39のシール面39aから上方へ第1の距離Xだけ離れて配置されると共に、弁体39の軸線L2から弁体39の半径方向へ第2の距離Yだけ離れて配置される。ここで、回転軸40のピン40aは回転軸40の軸線L1上に配置される。従って、この実施形態では、ピン40aが回転軸40と同一の軸線L1上に配置され、弁体39の回動中心である軸線L1が、弁体39のシール面39aから第1の距離Xだけ離れて配置(1次偏心)されると共に、弁体39の軸線L2から第2の距離Yだけ離れて配置(2次偏心)される。弁体39は、回転軸40の軸線L1から弁体39の軸線L2が伸びる方向と平行に伸びる仮想面V1を境とする第1の側部39A(図5において網掛け(紗)を付して示す部分)と第2の側部39B(図5において網掛け(紗)を付さない部分)を含む。そして、弁体39が全閉状態から、回転軸40の軸線L1を中心にして、開弁方向(図5の時計方向)F1へ回動するとき、第1の側部39Aは小径流路36Bへ向けて回動し、第2の側部39Bは大径流路36Aへ向けて回動するようになっている。開弁状態から弁体39を全閉状態へ閉弁するときは、開弁方向F1とは逆向きの閉弁方向(図5の反時計方向)へ回動するようになっている。なお、この実施形態において、弁体39のシール面39aと弁座38のシート面38bの構成及び両者39a,38bの関係は、特許第5759646号公報に記載される内容と同じである。
次に、このEGR弁10における二重偏心弁の部分の製造方法を以下に説明する。図6に、その製造方法の手順をフローチャートにより示す。図7〜図9は、その手順に係る各工程を断面図により示す。図6のフローチャートは、流路36を含む弁ハウジング45、弁座38、弁体39及び回転軸40の組み付け手順を示すものである。
最初に、図6の(1)に示す「弁体を回転軸に組み付ける工程」では、図7に示すように、回転軸40を弁ハウジング45に支持すると共に、弁体39をその突部39bにてピン40aに組み付けて流路36に配置する。このとき、回転軸40のピン40aを、突部39bのピン孔39cに挿入する。
次に、図6の(2)に示す「弁体を弁座に着座させる工程」では、図8に示すように、弁体39が配置される側とは反対側の開口36bから弁座38を小径流路36Bに挿入すると共に、ピン40aに組み付けられた弁体39を弁座38に着座させる。
次に、図6の(3)に示す「弁体と弁座を押圧しながら弁座と流路の内壁を接合する工程」では、図9に示すように、弁体39を弁座38へ向けて治具71により押圧すると共に、弁座38を弁体39へ向けて別の治具72により押圧しながら、弁座38の外周と小径流路36Bの内壁とを接合する。このとき、弁座38を弁体39へ向けて別の治具72により押圧する力FAよりも弁体39を弁座38へ向けて治具71により押圧する力FBの方が大きくなるように設定する。また、接合方法の一例として、レーザ溶接装置73を使用したレーザ溶接を採用することができる。図9の黒丸P1に、その接合個所(溶接個所)を示す。このような一連の工程により、図5に示すような組み付け状態を得ることができる。
以上説明したこの実施形態における二重偏心弁(EGR弁10)の製造方法によれば、最初の工程で、回転軸40を弁ハウジング45に支持すると共に、弁体39をその突部39bにて回転軸40のピン40aに組み付けて大径流路36Aに配置する。これにより、弁ハウジング45にて、回転軸40に支持された弁体39が大径流路36Aに配置される。次の工程で、弁座38を小径流路36Bに挿入すると共に、ピン40aに組み付けられた弁体39を弁座38に着座させる。これにより、弁座38と弁体が全閉状態で位置決めされる。次の工程では、弁体39を弁座38へ向けて押圧すると共に弁座38を弁体39へ向けて押圧しながら弁座38の外周と小径流路36Bの内壁とを接合する。このとき、弁体39を弁座38へ向けて押圧すると共に弁座38を弁体39へ向けて押圧するので、弁体39のシール面39aと弁座38のシート面38bとの相対的な位置ずれが解消され、シール面39aとシート面38bが好適に密着する。また、弁座38の小径流路36Bへの接合により、シール面39aとシート面38bの密着状態が保持される。このため、弁座38と弁体39との間にて組み付けバラツキによる位置ずれがあったとしても、その位置ずれを解消することができ、全閉状態での弁座38と弁体39との間のシール性を確保することができると共に、そのシール性を向上させることができる。この結果、全閉状態での弁座38と弁体39との間におけるEGRガス漏れを防止することができる。
また、この実施形態の製造方法によれば、弁座38を弁体39へ向けて押圧する力FAよりも弁体39を弁座38へ向けて押圧する力FBの方が大きいので、弁体39が回転軸40に位置決めされた状態で弁座38が弁体39に対して位置決めされる。このため、弁体39に対する弁座38の位置決め後に、弁体39と回転軸40との間の組み付けバラツキによる弁体39の位置ずれを防止することができる。
加えて、この実施形態の二重偏心弁(EGR弁10)の構成によれば、小径流路36Bは、弁体39が配置される側とは反対側に開口36bを有し、その開口36bから弁座38が挿入可能に形成される。また、弁座38は、弁体39と対向する側とは反対側にて、弁座38の外周が小径流路36Bの内壁に接合される。従って、回転軸40が弁ハウジング45に支持され、弁体39がその突部39bにて回転軸40のピン40aに組み付けられた状態で、小径流路36Bの開口36bから小径流路36Bへ弁座38を挿入することにより、弁体39を弁座38に着座させることが可能である。また、この着座状態において、弁体39を弁座38へ向けて押圧すると共に弁座38を弁体39へ向けて押圧することにより、弁体39のシール面39aを弁座38のシート面38bに密着させることが可能である。更に、この密着状態において、開口36bを通じて弁座38の外周を小径流路36Bの内壁に接合することが可能である。このような組み付け(製造方法)が許容される。このため、弁座38と弁体39との間にて組み付けバラツキによる位置ずれがあったとしても、組み付け時の調整によって、その位置ずれを解消することができ、全閉状態での弁座38と弁体39との間のシール性を確保することができる。
<第2実施形態>
次に、この発明の二重偏心弁を排気還流弁(EGR弁)に具体化した第2実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
この実施形態では、このEGR弁10における二重偏心弁の部分の製造方法の点で第1実施形態と構成が異なる。以下に異なる点を中心に説明する。図10に、その製造方法の手順をフローチャートにより示す。図11に、その製造方法の手順に係る一工程を断面図により示す。
この実施形態では、流路36を含む弁ハウジング45、弁座38、弁体39及び回転軸40の組み付け手順において、図10の(3)に示す工程の内容が、第1実施形態における図6の(3)に示す工程の内容と異なる。また、図10の(3)の工程の後に(4)の工程が加わる点で第1実施形態と構成が異なる。
すなわち、図10の(3)に示す「弁体及び回転軸と弁座を押圧しながら弁座と流路の内壁を接合する工程」では、図11に示すように、弁体39を弁座38へ向けて治具71により押圧すると共に、弁座38を弁体39へ向けて別の治具72により押圧しながら、弁座38の外周と小径流路36Bの内壁とを接合する。このとき、大径流路36Aの中に配置された回転軸40の先端部分を更に別の治具74により押圧する。また、別の治具72により押圧する力FAよりも治具71及び別の治具74により押圧する力FBの方が大きくなるように設定する。また、接合方法の一例として、レーザ溶接装置73を使用したレーザ溶接を採用することができる。図11の黒丸P1に、その接合個所(溶接個所)を示す。
また、図10の(4)に示す「弁体と弁座を押圧しながら弁体の突部とピンを接合する工程」では、図11に示すように、弁体39を弁座38へ向けて治具71により押圧すると共に、弁座38を弁体39へ向けて別の治具72により押圧しながら、弁体39の突部39bと回転軸40のピン40aを接合する。この接合方法の一例として、レーザ溶接装置を使用したレーザ溶接を採用することができる。図11の黒丸P2にその接合個所(溶接個所)を示す。
ここで、図10の(4)に示す工程における接合条件は以下の通りである。すなわち、ピン40aをピン孔39cに挿入した状態で、図10の(3)に示す工程と同様に、弁座38を弁体39へ向けて押圧する力FAよりも大きな力FBで弁体39を弁座38へ向けて押圧しながら、ピン孔39cの内周面とピン40aの外周面とをピン40aの軸線L1の方向に沿って接合する。
以上説明したこの実施形態の製造方法によれば、図10の(3)で示す工程では、弁体39を弁座38へ向けて押圧すると共に回転軸40を弁座38へ向けて押圧するので、回転軸40の取り付けガタが押さえられた状態で弁座38と弁体39とが密着する。このため、回転軸40に取り付けガタがあったとしても、その取り付けガタに起因する弁座38と弁体39との相対的な位置ずれを防止することができる。
また、この実施形態の製造方法によれば、図10の(4)で示す工程では、弁体39を弁座38へ向けて押圧すると共に弁座38を弁体39へ向けて押圧しながら突部39bとピン40aを接合する。このとき、弁体39を弁座38へ向けて押圧すると共に弁座38を弁体39へ向けて押圧するので、弁体39の突部39bと回転軸40のピン40aとの相対的な位置ずれが解消され、突部39bとピン40aとが接触して位置決めされる。また、突部39bのピン40aへの接合により、突部39bとピン40aとの位置決め状態が保持される。このため、弁座38と弁体39との間の組み付けバラツキによる位置ずれを解消した状態で、弁体39と回転軸40とを組み付けることができる。また、弁体39と回転軸40との間に組み付けバラツキによる位置ずれがあったとしても、その位置ずれを解消することができ、全閉状態での弁座38と弁体39との間のシール性を確保することができる。
更に、図10の(4)で示す工程では、ピン40aをピン孔39cに挿入した状態で、弁座38を弁体39へ向けて押圧する力FAよりも大きな力FBで弁体39を弁座38へ向けて押圧しながら、ピン孔39cの内周面とピン40aの外周面とをピン40aの軸線L1の方向に沿って接合する。従って、ピン孔39cの内周面がピン40aの外周面に押し付けられた状態でピン40aとピン孔39cがピン40aの軸線L1の方向に沿って接合される。この結果、弁体39の突部39bと回転軸40のピン40aとを強固に接合することができる。この実施形態では、この他に、第1実施形態と同じ作用効果を得ることができる。
なお、この発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することもできる。
(1)前記各実施形態では、図6の(3)及び図10の(3)に示す工程で、弁体39を弁座38へ向けて押圧すると共に弁座38を弁体39へ向けて押圧するように構成した。これに対し、弁体39を弁座38へ向けて押圧することなく、弁座38を弁体39へ向けて押圧するように構成することもできる。この場合は、弁体39へ向けた弁座38の押圧により、弁体39のシール面39aと弁座38のシート面38bとが密着する。このため、全閉状態での弁座38と弁体39との間のシール性を確保することができる。
(2)前記第2実施形態では、図10の(4)で示す工程において、ピン40aをピン孔39cに挿入した状態で、弁体39を弁座38へ向けて押圧すると共に弁座38を弁体39へ向けて押圧しながら突部39bとピン40aを接合した。これに対し、図12に示すように、ピン40aを突部39bに形成された凹部39dに嵌め入れた状態で、弁体39を弁座38へ向けて押圧することなく、弁座38を弁体39へ向けて押圧しながら突部39bとピン40aを接合するように構成することもできる。この場合、弁座38を弁体39へ向けて押圧するので、突部39bとピン40aが接触して位置決めされる。また、突部39bのピン40aへの接合により、突部39bとピン40aとの位置決め状態が保持される。このため、弁座38と弁体39との間の組み付けバラツキによる位置ずれを解消した状態で、弁体39と回転軸40とを組み付けることができる。
(3)前記第2実施形態では、図10の(3)に示す「弁体及び回転軸と弁座を押圧しながら弁座と流路の内壁を接合する工程」の後に、図10の(4)に示す「弁体と弁座を押圧しながら弁体の突部とピンを接合する工程」を設けたが、これら二つの工程を同時に設けることもできる。
(4)前記各実施形態では、部材の接合方法としてレーザ溶接を採用したが、電気溶接やその他の接合技術を採用することができる。
(5)前記各実施形態における流路36、弁座38、弁体39及び回転軸40等の形状は一例であり、適宜変更することができる。