以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状等は説明のための例示であって、部品実装装置の仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図1、及び後述する一部では、水平面内で互いに直交する2軸方向として、基板搬送方向のX方向(図1における左右方向)、基板搬送方向に直交するY方向(図1における上下方向)が示される。図2、及び後述する一部では、水平面と直交する高さ方向としてZ方向(図2における上下方向)が示される。Z方向は、部品実装装置が水平面上に設置された場合の上下方向である。
まず図1〜3を参照して、部品実装装置1について説明する。図1において、基台1aの中央部には、X方向に延びる第1の基板搬送機構2Aおよび第2の基板搬送機構2BがY方向に並列した状態で設けられている。第1の基板搬送機構2Aおよび第2の基板搬送機構2Bは、それぞれ上流から搬入された第1の基板3Aおよび第2の基板3Bを実装作業位置に移送して位置決めして保持する。以下便宜上、区別する必要がある場合を除き、第1の基板搬送機構2Aと第2の基板搬送機構2Bを単に「基板搬送機構2A,2B」と称する。また、基板3Aと基板3Bを単に「基板3A,3B」と称する。
基板搬送機構2A,2Bの側方には、第1の部品供給部4Aおよび第2の部品供給部4Bがそれぞれ配置されている。以下便宜上、区別する必要がある場合を除き、第1の部品供給部4Aと第2の部品供給部4Bを単に「部品供給部4A,4B」と称する。部品供給部4A,4Bには、複数のテープフィーダ5がX方向に並列に装着されている。テープフィーダ5は、部品を収納したキャリアテープを部品供給部4A,4Bの外側から基板搬送機構2A,2Bに向かう方向(テープ送り方向)にピッチ送りすることにより、以下に説明する実装ヘッドによる部品取り出し位置に部品を供給する。
図1において、基台1a上面におけるX方向の両端部には、リニア駆動機構を備えたY軸ビーム6がそれぞれ配設されている。2基のY軸ビーム6の間には、同様にリニア駆動機構を備えた第1のX軸ビーム7Aおよび第2のX軸ビーム7BがそれぞれY方向に移動自在に結合されている。第1のX軸ビーム7Aには、第1の実装ヘッド8AがX方向に移動自在に装着されている。第2のX軸ビーム7Bには、第2の実装ヘッド8BがX方向に移動自在に装着されている。第1の実装ヘッド8Aおよび第2の実装ヘッド8Bは、それぞれ下端に部品Dを吸着保持する吸着ノズル8bが装着される複数の吸着ユニット8aを備えている(図2も参照)。
Y軸ビーム6および第1のX軸ビーム7Aは、第1の実装ヘッド8AをX方向およびY方向に移動させる第1のヘッド移動機構9Aを構成する。Y軸ビーム6および第2のX軸ビーム7Bは、第2の実装ヘッド8BをX方向およびY方向に移動させる第2のヘッド移動機構9Bを構成する。以下便宜上、区別する必要がある場合を除き、第1のX軸ビーム7Aと第2のX軸ビーム7Bを単に「X軸ビーム7A,7B」、第1の実装ヘッド8Aと第2の実装ヘッド8Bを単に「実装ヘッド8A,8B」、第1のヘッド移動機構9Aと第2のヘッド移動機構9Bを単に「ヘッド移動機構9A,9B」と称する。
実装ヘッド8A,8Bは、ヘッド移動機構9A,9Bによって、部品供給部4A,4Bに装着されるテープフィーダ5の部品取り出し位置から部品Dを吸着ノズル8bによって取り出して、基板搬送機構2A,2Bに位置決めされた基板3A,3Bの実装点に移送搭載する。
図1において、第1の部品供給部4Aと第1の基板搬送機構2Aとの間には、第1の部品認識カメラ10Aが配設されている。第2の部品供給部4Bと第2の基板搬送機構2Bとの間には、第2の部品認識カメラ10Bが配設されている。以下便宜上、区別する必要がある場合を除き、第1の部品認識カメラ10Aと第2の部品認識カメラ10Bを単に「部品認識カメラ10A,10B」と称する。部品認識カメラ10A,10Bは、部品供給部4A,4Bから部品Dを取り出した実装ヘッド8A,8Bが上方を移動する際に、実装ヘッド8A,8Bの吸着ノズル8bに保持された部品Dを撮像する。撮像結果は、制御部20の認識処理部22(図4参照)において認識処理される。
図1において、第1の実装ヘッド8Aが取り付けられたプレート7aには、第1のX軸ビーム7Aの下面側に位置して、第1の実装ヘッド8Aと一体的に移動する第1の基板認識カメラ11Aが装着されている。第2の実装ヘッド8Bが取り付けられたプレート7aには、第2のX軸ビーム7Bの下面側に位置して、第2の実装ヘッド8Bと一体的に移動する第2の基板認識カメラ11Bが装着されている。以下便宜上、区別する必要がある場合を除き、第1の基板認識カメラ11Aと第2の基板認識カメラ11Bを単に「基板認識カメラ11A,11B」と称する。
基板認識カメラ11A,11Bは、実装ヘッド8A,8Bと一体的に移動することにより、基板搬送機構2A,2Bに位置決めされた基板3A,3Bの上方に移動して基板3A,3Bに設けられた基板マーク(図示省略)を撮像する。また、基板認識カメラ11A,11Bは、実装ヘッド8A,8Bと一体的に移動することにより、テープフィーダ5の部品取り出し位置の上方に移動して後述するキャリアテープのポケットを撮像する。撮像結果は、制御部20の認識処理部22(図4参照)において認識処理される。
図2おいて、部品供給部4A,4Bは、フィーダベース12aに予め複数のテープフィーダ5が装着された基台1aに対して着脱可能な台車12で構成されている。台車12には、部品Dを保持したキャリアテープ13を巻回状態で収納する供給リール14が保持されている。供給リール14から引き出されたキャリアテープ13は、テープフィーダ5に装着される。テープフィーダ5は、キャリアテープ13をピッチ送りして、ポケットに収納される部品Dを吸着ノズル8bによる部品取り出し位置5aに供給する。
ここで、部品認識カメラ10A,10Bによる吸着ノズル8bが保持する部品Dの撮像について説明する。吸着ノズル8bは、部品取り出し位置5aに供給された部品Dを吸着し、部品認識カメラ10A,10Bの上方に移動する(矢印a)。そして、吸着ノズル8bが実装ヘッド8A,8Bが部品認識カメラ10A,10Bの上方を移動する際に(矢印aから矢印b)、吸着ノズル8bが保持する部品Dが撮像される。その後、実装ヘッド8A,8Bは、基板搬送機構2A,2Bに位置決めされた基板3A,3Bの上方に移動して、基板3A,3B上の実装点に部品Dを実装する(矢印b)。このように、部品認識カメラ10A,10Bは、部品Dを吸着した吸着ノズル8bを下方から撮像する吸着部品撮像手段となる。
図3(a)において、テープフィーダ5の上部には、キャリアテープ13を上方からガイドする押さえ部材15が配設されている。押さえ部材15には、部品取り出し位置5aに位置して開口部15aが設けられている。図3(b)は、部品取り出し位置5a付近のキャリアテープ13を上方から見た状態を示しており、押え部材15は図示省略している。キャリアテープ13のベーステープ13aには、部品Dを収納する凹形状のポケット13bと、キャリアテープ13をピッチ送りするスプロケット(図示省略)が係合する送り穴13cが等間隔に形成されている。部品Dを収納したポケット13bの上面には、カバーテープ13dが貼着されている。
図3(a)において、カバーテープ13dは開口部15aの縁部15b(剥離部)で剥離されて折り返されている。これによって、部品取り出し位置5aを含む下流側(図3(a)の右側)のポケット13bの上方が開放されている。ここで、基板認識カメラ11A,11Bによる部品取り出し位置5aにピッチ送りされたポケット13b(以下、「対象ポケット13b*」と称する。)の撮像について説明する。基板認識カメラ11A,11Bは、ヘッド移動機構9A,9Bによって部品取り出し位置5aの上方に移動して(矢印c)、開口部15aを通して部品取り出し位置5aの対象ポケット13b*を撮像する。このように、基板認識カメラ11A,11Bは、部品取り出し位置5aにピッチ送りされたポケット13b(対象ポケット13b*)を撮像するポケット撮像手段となる。
上記のように、部品実装装置1は、部品Dを収納するポケット13bが形成されたキャリアテープ13をテープフィーダ5によってピッチ送りし、部品取り出し位置5aにピッチ送りされたポケット13b(対象ポケット13b*)が収納する部品Dを吸着ノズル8bによって吸着保持して基板3A,3Bに実装する。
次に図4を参照して、部品実装装置1の制御系の構成について説明する。制御部20は部品実装装置1の全体制御装置であり、記憶部21に記憶された処理プログラムを実行して、基板搬送機構2A,2B、部品供給部4A,4B、実装ヘッド8A,8B、ヘッド移動機構9A,9B、表示部23の各部を制御する。表示部23は、各種情報を表示する液晶ディスプレーなどである。
記憶部21には、実装データ21a、ポケット画像データ21b、部品画像データ21c、補正用データ21d、吸着位置ずれ量データ21e、演算結果データ21f、設定フラグデータ21gなどの部品実装作業及び吸着目標位置の補正に使用される各種データが記憶されている。実装データ21aは、実装される部品Dの部品種や基板3A,3Bにおける実装点などのデータであり、生産対象の基板種ごとに記憶される。
制御部20は、内部処理機能として認識処理部22、実装制御部20a、ティーチング制御部20b、吸着目標位置算出部20c、吸着位置ずれ量算出部20d、吸着位置ずれ量演算部20e、振動判断部20f、ティーチング機能設定部20gを備えている。実装制御部20aは、補正用データ21d、吸着位置ずれ量データ21e、演算結果データ21fに基づいて吸着目標位置を補正し、基板搬送機構2A,2B、部品供給部4A,4B、実装ヘッド8A,8B、ヘッド移動機構9A,9Bの各部を制御することにより、部品実装作業を制御する。
図4において、認識処理部22は、部品認識カメラ10A,10B、基板認識カメラ11A,11Bによる撮像結果を認識処理する。基板認識カメラ11A,11Bは、テープフィーダ5の上方に移動して、対象ポケット13b*を撮像する。撮像結果は、認識処理部22によって認識処理されて、ポケット画像データ21bとして記憶部21に記憶される。
ここで、図5(a)を参照して、ポケット画像データ21bとして記憶されるポケット撮像画像の一例を説明する。図5(a)において、基板認識カメラ11A,11Bの撮像視野11aには、撮像された対象ポケット13b*と部品Dが表示されている。また、撮像視野11aには、X方向の中心線11xとY方向の中心線11yが重ねて表示されている。図5(a)に示す例では、対象ポケット13b*のポケット中心Cpと部品Dの部品中心Cdは、撮像視野11aの中心(X方向の中心線11xとY方向の中心線11yの交点)にそれぞれ一致している。
図4において、部品認識カメラ10A,10Bは、部品Dを吸着した吸着ノズル8bを下方から撮像する。撮像結果は、認識処理部22によって認識処理されて、部品画像データ21cとして記憶部21に記憶される。
ここで、図6(a)を参照して、部品画像データ21cとして記憶される部品撮像画像の一例を説明する。図6(a)において、部品認識カメラ10A,10Bの撮像視野10aには、撮像された吸着ノズル8bに吸着された部品Dが表示されている。また撮像視野10aには、X方向の中心線10xとY方向の中心線10yが重ねて表示されている。部品撮像画像は、吸着ノズル8bのノズル中心Cnが撮像視野10aの中心(図6(a)におけるX方向の中心線10xとY方向の中心線10yの交点)を通過する際に撮像される。
以下の実施例では、吸着ノズル8bが部品Dを吸着する際の目標位置である吸着目標位置Pは、対象ポケット13b*が収納する部品Dの部品中心Cdとする。すなわち、対象ポケット13b*のポケット中心Cpが吸着目標位置Pとなる。図6(a)では、ノズル中心Cnは部品中心Cdに一致している。すなわち、対象ポケット13b*のポケット中心Cp(収納される部品Dの部品中心Cd)が吸着目標位置Pと一致して吸着位置ずれがない状態を示している。なお、吸着目標位置Pは部品Dの部品中心Cdに限定されることなく、部品Dの形状に応じて適宜設定されて実装データ21aに記憶されている。
図4において、ティーチング制御部20bは、ヘッド移動機構9A,9B、認識処理部22、基板認識カメラ11A,11Bを制御して、ティーチング作業を制御する。ティーチング作業は、部品実装装置1の起動時、テープフィーダ5の交換時、キャリアテープ13の補給時など所定のイベント後に実行される。ティーチング作業は、このようなイベント後に発生しやすいテープフィーダ5におけるキャリアテープ13のピッチ送りのずれなどに起因する吸着目標位置Pのずれを補正する目的で実行される。
図4において、吸着目標位置算出部20cは、ティーチング作業において、記憶されるポケット画像データ21bに基づいて、吸着目標位置Pを算出する。すなわち、吸着目標位置算出部20cは、基板認識カメラ11A,11B(ポケット撮像手段)により撮像されたポケット画像データ21b(ポケット撮像画像)から、部品取り出し位置5aにピッチ送りされたポケット13b(対象ポケット13b*)が収納する部品Dを吸着ノズル8bが吸着する目標となる吸着目標位置Pの算出を行う。
ところで、ティーチング作業では、ティーチング対象のテープフィーダ5毎に対象ポケット13b*が撮像される。すなわち、一方の実装ヘッド8A,8Bと一体的に設けられた基板認識カメラ11A,11Bが一方の部品供給部4A,4Bに装着されたテープフィーダ5の対象ポケット13b*を撮像する。その際、他方の実装ヘッド8A,8Bが部品実装作業を実行している場合がある。
実装ヘッド8A,8Bが部品実装作業において移動すると、部品実装装置1には振動が生ずる。この振動は、ヘッド移動機構9A,9Bを介して他方の実装ヘッド8A,8B、他方の部品供給部4A,4Bにも伝搬するが、実装ヘッド8A,8Bと部品供給部4A,4Bにそれぞれ発生する振動の振幅と位相は通常異なっている。そのため、テープフィーダ5の対象ポケット13b*の位置と、対象ポケット13b*を撮像している基板認識カメラ11A,11Bの位置が水平(X方向、Y方向)に相対的に変動する相対振動が発生する。発生する相対振動は、部品実装作業中の実装ヘッド8A,8Bの移動速度などの動作状態、撮像対象のテープフィーダ5の部品供給部4A,4Bにおける位置によって変動する。
吸着目標位置算出部20cは、相対振動の振幅Vx,Vyが小さい場合、吸着目標位置Pの算出を撮像された1枚の画像から算出する通常ティーチング(第1のティーチング)により実行する。また、吸着目標位置算出部20cは、相対振動の振幅Vx,Vyが大きい場合、吸着目標位置Pの算出を撮像された複数の画像からの平均などの所定の統計処理に基づいて算出する耐振ティーチング(第2のティーチング)により実行する。すなわち耐振ティーチングでは、吸着目標位置算出部20cは、基板認識カメラ11A,11Bによって所定の撮像間隔で複数のポケット撮像画像を撮像してポケット画像データ21bとして記憶させ、この複数のポケット撮像画像から吸着目標位置Pを算出する。
ここで、図5(b)を参照して、通常ティーチングについて説明する。基板認識カメラ11A,11Bの撮像視野11aには、撮像された対象ポケット13b*が実線で表示されている。対象ポケット13b*のポケット中心Cpは、撮像視野11aの中心からずれた位置にある。
吸着目標位置算出部20cは、撮像された対象ポケット13b*のポケット撮像画像よりポケット中心Cpを抽出する。さらに吸着目標位置算出部20cは、抽出したポケット中心Cpの撮像視野11aの中心からのずれ量を、X方向の補正値ΔXp、Y方向の補正値ΔYpとして算出して補正用データ21dとして記憶部21に記憶させる。通常ティーチングでは、抽出されたポケット中心Cpが吸着目標位置Pとなる。通常ティーチングに要する時間は、複数の画像から吸着目標位置Pを算出する耐振ティーチングより短い。
次に、図5(c)を参照して、耐振ティーチングについて説明する。耐振ティーチングでは、対象ポケット13b*の撮像を複数回繰り返し、得られた複数の画像を基に吸着目標位置Pが算出される。図5(c)の例では、対象ポケット13b*を5回撮像している。基板認識カメラ11A,11Bの撮像視野11aには、実線で示される最後(5回目)に撮像された対象ポケット13b*に、点線で示されるその他の4回の撮像画像が重ねて示されている。
吸着目標位置算出部20cは、5回撮像された対象ポケット13b*よりそれぞれポケット中心Cp(1)〜Cp(5)を抽出する。次いで吸着目標位置算出部20cは、吸着目標位置Pとして5つのポケット中心Cp(1)〜Cp(5)の重心を算出する。さらに吸着目標位置算出部20cは、算出した吸着目標位置Pの撮像視野11aの中心からのずれ量を、X方向の補正値ΔXp、Y方向の補正値ΔYpとして算出して補正用データ21dとして記憶部21に記憶させる。
耐振ティーチングでは、対象ポケット13b*を複数回撮像して吸着目標位置Pを算出することにより、相対振動の影響を減少させることができる。なお、耐振ティーチングにおける撮像回数は5回に限定されることなく、発生する相対振動の状態に応じて適宜増減させてよい。また、複数のポケット中心Cp(1)〜Cp(5)からの吸着目標位置Pの算出は、単純な重心の計算に限定されることなく、重みづけした算出であっても、中央値の選択であってもよい。すなわち、所定の統計処理に基づいて算出される。
さらに、対象ポケット13b*の複数の画像の撮像間隔は、等間隔である必要はなく、撮像間隔を変動させてもよい。また、画像の撮像間隔(周期)が相対振動の周期と一致すると、誤った補正値ΔXp,ΔYpを取得する可能性があるため、画像の撮像間隔が相対振動の周期とは異なることが望ましい。すなわち、耐振ティーチング(第2のティーチング)において基板認識カメラ11A,11B(ポケット撮像手段)によって撮像される複数の画像の撮像間隔は、相対振動の周期とは異なるように設定されることが望ましい。
図4において、吸着位置ずれ量算出部20dは、記憶される部品画像データ21cに基づいて、部品Dを吸着した吸着ノズル8bのノズル中心Cnが吸着目標位置Pとなる部品Dの部品中心Cdからずれた位置ずれ量である吸着位置ずれ量ΔXn,ΔYnを算出する。すなわち、吸着位置ずれ量算出部20dは、部品認識カメラ10A,10B(吸着部品撮像手段)によって撮像された画像から、吸着ノズル8bが部品Dを吸着した位置(ノズル中心Cn)が吸着目標位置Pからずれた位置ずれ量である吸着位置ずれ量ΔXn,ΔYnを算出する。
ここで、図6(b)を参照して吸着位置ずれ量ΔXn,ΔYnについて説明する。部品認識カメラ10A,10Bの撮像視野10aの中心には、部品Dを吸着する吸着ノズル8bのノズル中心Cnが位置している。部品Dの部品中心Cdは、ノズル中心Cn(撮像視野10aの中心)からずれている。吸着位置ずれ量算出部20dは、撮像された部品Dの部品撮像画像より部品中心Cdを抽出する。さらに吸着位置ずれ量算出部20dは、抽出した部品中心Cdの位置が撮像視野10aの中心(ノズル中心Cn)からずれた位置ずれ量を、吸着位置ずれ量ΔXn,ΔYnとして算出して吸着位置ずれ量データ21eとして記憶部21に記憶させる。
図4において、吸着位置ずれ量演算部20eは、記憶される吸着位置ずれ量データ21eを演算して相対振動の振幅Vx,Vy、平均位置ずれ量Mx,Myを算出する。ここで図7を参照して、相対振動の振幅Vx、Vyについて説明する。図7のグラフは、同一のテープフィーダ5におけるY方向の吸着位置ずれ量ΔYnを、部品吸着毎に時系列で表している。グラフの横軸は、左側(数字が小さい方)から右側(数字が大きい方)に向かい新しい部品吸着になっている。区間S(1,5)は、1回目から5回目の合計5回の部品吸着を表している。
吸着位置ずれ量演算部20eは、対象となる区間Sの吸着位置ずれ量ΔYnの最大値と最小値の差(レンジ)を相対振動の振幅Vyとして算出する。図7の例では、部品吸着が5回の区間S((1,5)、S(6,10)、S(11,15))毎に、Y方向の相対振動の振幅Vy(Vy(1,5)、Vy(6,10)、Vy(11,15))を算出している。区間S(1,5)の相対振動の振幅Vy(1,5)は比較的小さく、区間S(6,10)と区間S(11,15)の相対振動の振幅Vy(6,10)と相対振動の振幅Vy(11,15)は比較的大きい。すなわち、区間S(6,10)と区間S(11,15)で発生している相対振動は比較的大きい。
また吸着位置ずれ量演算部20eは、区間Sの吸着位置ずれ量ΔYnの平均を平均位置ずれ量Myとして算出する。吸着位置ずれ量ΔYn、または、平均位置ずれ量Myは、次の部品吸着における吸着目標位置Pの補正に使用される。この例では、6回目と11回目の部品吸着の前に、それぞれ区間S(1,5)の平均位置ずれ量My(1,5)と区間S(6,10)の平均位置ずれ量My(6,10)を用いて吸着目標位置Pが補正されている。区間S(6,10)、区間S(11,15)など発生している相対振動が大きい場合、吸着目標位置Pの補正に直前の吸着位置ずれ量ΔYnを用いると過大に補正をしてしまう可能性があるが、平均位置ずれ量Myを用いるとこで相対振動の影響を低減することができる。
なお、区間Sは、部品吸着が5回毎に限定されることなく、例えば3回毎や10回毎であってもよい。また、相対振動の振幅Vyは、複数の吸着位置ずれ量ΔYnから算出されるレンジに限定されることなく、複数の吸着位置ずれ量ΔYnを統計処理して算出される標準偏差などを用いてもよい。さらに、区間Sは部品吸着毎に区間S(1,5)、区間S(2,6)、区間S(3,7)のようにずらして重複させるように設定してもよい。
図7では、Y方向を例に吸着位置ずれ量ΔYn、相対振動の振幅Vy、平均位置ずれ量My示しているが、X方向の吸着位置ずれ量ΔXn、相対振動の振幅Vx、平均位置ずれ量Mxも同様である。すなわち、吸着位置ずれ量演算部20eは、算出された複数の吸着位置ずれ量ΔXn,ΔYnを基に、相対振動の振幅Vx,Vyを算出する振幅算出部となる。また、吸着位置ずれ量演算部20eは、算出された複数の吸着位置ずれ量ΔXn,ΔYnを基に、平均位置ずれ量Mx,Myを算出する平均吸着位置ずれ量算出部となる。算出された相対振動の振幅Vx,Vy、平均位置ずれ量Mx,Myは、演算結果データ21fとして記憶部21に記憶される。
図4において、振動判断部20fは、記憶される演算結果データ21fより、相対振動が所定より大きいか否かを判断する。図8に示すグラフは、部品吸着5回の区間S毎に算出されたY方向の相対振動の振幅Vyを時系列に表している。振動判断部20fは、相対振動の振幅Vyが所定の振動閾値Vtyを超えると、相対振動が所定より大きいと判断する。図8では、Y方向を例に相対振動の振幅Vy、振動閾値Vtyを示しているが、X方向の相対振動の振幅Vx、振動閾値Vtxも同様である。
なお、相対振動の振幅Vyの算出の際に、吸着位置ずれ量ΔYnが突発的に変動した外れ値が混入すると、大きな相対振動の振幅Vyが算出されてしまい、相対振動の大小の判断を誤る可能性もある。その対策として、振動判断部20fは、算出される相対振動の振幅Vyが連続して(例えば3回連続して)所定の振動閾値Vtyを超えると、相対振動が所定より大きいと判断するようにしてもよい。すなわち、振動判断部20fは、算出した(検出した)相対振動の振幅Vyが所定の頻度で所定の振幅(振動閾値Vty)を超えると、検出した相対振動が所定より大きいと判断するようにしてもよい。
上記のように、部品認識カメラ10A,10B、認識処理部22、吸着位置ずれ量算出部20d、吸着位置ずれ量演算部20e、振動判断部20fは、部品取り出し位置5aにピッチ送りされたポケット13bの位置(ポケット中心Cp)と、そのポケット13bが収納する部品Dを吸着する吸着ノズル8bの位置(ノズル中心Cn)が水平に相対的に変動する相対振動を検出する振動検出手段となっている。なお、振動検出手段は、相対振動を検出できるものであればこれに限定されることはない。例えば、加速度センサを実装ヘッド8A,8B、部品供給部4A,4B、テープフィーダ5などに設置して、相対振動を検出するようにしてもよい。
図4において、ティーチング機能設定部20gは、検出される相対振動の大きさに応じて、吸着目標位置算出部20cが通常ティーチングを実行するか、耐振ティーチングを実行するかを設定する。具体的には、ティーチング機能設定部20gは、振動判断部20fによって相対振動が所定より大きいと判断されると、記憶部21に記憶される設定フラグデータ21gを耐振ティーチングに設定する。また、ティーチング機能設定部20gは、振動判断部20fによって相対振動が所定より大きくないと判断されると、設定フラグデータ21gを通常ティーチングに設定する。吸着目標位置算出部20cは、設定フラグデータ21gを参照して通常ティーチングまたは耐振ティーチングを実行する。
すなわち、ティーチング機能設定部20gは、吸着目標位置算出部20cによる吸着目標位置Pの算出を、撮像された1枚の画像から算出する通常ティーチング(第1のティーチング)で実行するか、撮像された複数の画像から所定の統計処理に基づいて算出する耐振ティーチング(第2のティーチング)で実行するかを、切り替えて設定する。より具体的には、振動検出手段が検出する相対振動が所定以下の場合、ティーチング機能設定部20gは吸着目標位置Pの算出を通常ティーチング(第1のティーチング)で実行するように設定する。また、振動検出手段が検出する相対振動が所定より大きい場合、ティーチング機能設定部20gは吸着目標位置Pの算出を耐振ティーチング(第2のティーチング)で実行するように設定する。
次に、図9のフローに則して、部品実装装置1において基板3A,3Bに部品Dを実装する部品実装方法について説明する。ここでは、過去にティーチングが実行されて補正用データ21dが記憶されているとする。また、過去に部品実装作業が実行されて吸着位置ずれ量データ21e、演算結果データ21fが記憶されているとする。
部品実装作業では、複数のテープフィーダ5から供給される部品Dが順に基板3A,3Bに実装される。その際、吸着位置ずれ量データ21eが順に算出されてテープフィーダ5毎に記憶される。また、ティーチングは、部品実装作業の間の所定のタイミングでテープフィーダ5毎に実行される。すなわち、部品Dの供給や部品実装作業、ティーチングは、複数のテープフィーダ5で並行して、もしくは、順番に実行される複雑な作業である。以下は単純化して、一つのテープフィーダ5に限定したフローで説明する。
図9において、実装制御部20aは、補正用データ21d、吸着位置ずれ量データ21e、演算結果データ21fに基づいて、対象ポケット13b*における吸着目標位置Pを補正して(ST1)、部品Dを吸着ノズル8bに吸着させる(ST2:部品吸着工程)。吸着目標位置Pの補正には、例えば、補正用データ21dに含まれる補正値ΔXp,ΔYpから、吸着位置ずれ量データ21eに含まれる吸着位置ずれ量ΔXn、ΔYnの半分を減算した補正値が使用される。また、吸着位置ずれ量ΔXn、ΔYnの代わりに演算結果データ21fに含まれる平均位置ずれ量Mx,Myを用いてもよい。これにより、吸着位置ずれ量ΔXn、ΔYnの外れ値による吸着目標位置Pの異常設定を防止することができる。
次いで実装制御部20aは、部品Dを吸着した吸着ノズル8bを部品認識カメラ10A,10Bの上方に移動させて、部品Dを吸着した吸着ノズル8bを下方から撮像する(ST3:吸着部品撮像工程)。撮像結果は、認識処理部22によって認識処理されて部品画像データ21cとして記憶される。次いで吸着位置ずれ量算出部20dは、吸着部品撮像工程(ST3)において撮像された画像から、吸着位置ずれ量ΔXn,ΔYnを算出して(ST4:吸着位置ずれ量算工程)、吸着位置ずれ量データ21eとして記憶させる。
図9において、次いで吸着位置ずれ量演算部20e(振幅算出部)は、吸着位置ずれ量算出工程(ST4)において算出された複数の吸着位置ずれ量ΔXn,ΔYnを基に、相対振動の振幅Vx,Xy、平均位置ずれ量Mx,Myを算出する(ST5:振幅算出工程)。なお、部品吸着工程(ST2)、吸着部品撮像工程(ST3)、吸着位置ずれ算出工程(ST4)、振幅算出工程(ST5)は、相対振動を検出する(相対振動の振幅Vx,Vyを算出する)振動検出工程となる。
次いで振動判断部20fは、振幅算出工程(ST5)において算出された相対振動の振幅Vx,Vyに基づいて、相対振動が所定より大きいか否かを判断する(ST6:振動判断工程)。例えば、振動判断部20fは、振動検出工程において検出した(算出した)相対振動の振幅Vx,Vyが所定の頻度で所定の振幅(振動閾値Vtx,Vty)を超えると、検出した相対振動が所定より大きいと判断する。
図9において、振動判断工程(ST6)において検出した相対振動が所定より大きいと判断されると(Yes)、ティーチング機能設定部20gは、設定フラグデータ21gを耐振ティーチングに設定する(ST7)。振動判断工程(ST6)において検出した相対振動が所定より大きくないと判断されると(No)、ティーチング機能設定部20gは、設定フラグデータ21gを通常ティーチングに設定する(ST8)。
(ST7)または(ST8)において設定フラグデータ21gが設定されると、次いでティーチング制御部20bは、ティーチングを実行するタイミングか否かを判断する(ST9)。ティーチングのタイミングではないと判断されると(ST9においてNo)、ST1に戻って次の部品Dの実装が行われる。ティーチングのタイミングだと判断されると(ST9においてYes)、ティーチング制御部20bは、設定フラグデータ21gが耐振ティーチングに設定されているか否かを判断する(ST10)。
図9において、耐振ティーチングに設定されていると判断されると(ST10においてYes)、ティーチング制御部20bは、耐振ティーチングを実行する(ST11:第2のティーチング工程)。すなわち、振動検出工程において検出された相対振動が所定より大きい場合、ティーチング制御部20bは第2のティーチング工程(ST11)を実行する。第2のティーチング工程(ST11)では、ティーチング制御部20bは、部品取り出し位置5aにピッチ送りされたポケット13b(対象ポケット13b*)を撮像するポケット撮像工程を繰り返し、撮像された複数の画像に対して所定の統計処理を実行して吸着目標位置Pの算出を行う。
耐振ティーチングに設定されていないと判断されると(ST10においてNo)、すなわち通常ティーチングに設定されている場合、ティーチング制御部20bは、通常ティーチングを実行する(ST12:第1のティーチング工程)。すなわち、振動検出工程において検出された相対振動が所定以下の場合、第1のティーチング工程(ST12)を実行する。第1のティーチング工程(ST12)では、ティーチング制御部20bは、ポケット撮像工程において撮像された1枚の画像から、部品取り出し位置5aにピッチ送りされたポケット13b(対象ポケット13b*)が収納する部品Dを吸着ノズル8bが吸着する目標となる吸着目標位置Pの算出を行う。
図9において、第1のティーチング工程(ST12)または第2のティーチング工程(ST11)において吸着目標位置Pが算出されると、次いで吸着目標位置算出部20cは、算出した吸着目標位置PからX方向の補正値ΔXp、Y方向の補正値ΔYpを算出して(ST13:補正値算出工程)、補正用データ21dとして記憶部21に記憶させる。全ての対象となるテープフィーダ5においてティーチングと補正値ΔXp,ΔYpの算出が完了すると、ST1に戻って次の部品Dの実装が行われる。
上記説明したように、本実施の形態の部品実装装置1は、部品Dを収納するポケット13bが形成されたキャリアテープ13をテープフィーダ5によってピッチ送りし、対象ポケット13b*が収納する部品Dを吸着ノズル8bによって吸着保持して基板3A,3Bに実装している。そして部品実装装置1は、振動検出手段(部品認識カメラ10A,10B、認識処理部22、吸着位置ずれ量算出部20d、吸着位置ずれ量演算部20e、振動判断部20f)が検出する相対振動が所定以下の場合、吸着目標位置Pの算出を通常ティーチング(第1のティーチング)で実行し、振動検出手段が検出する相対振動が所定より大きい場合、吸着目標位置Pの算出を耐振ティーチング(第2のティーチング)で実行している。
これによって、部品実装装置1において発生している相対振動に応じて、吸着ノズル8bが対象ポケット13b*の部品Dを吸着する吸着目標位置Pの補正を適切に行うことができる。すなわち、相対振動が小さい場合は通常ティーチングを実行することによりティーチングに要する時間を短縮し、相対振動が大きい場合は耐振ティーチングを実行することにより相対振動の影響を減少させることができる。