JP6641705B2 - プロピレン及び直鎖ブテンの製造方法 - Google Patents
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Description
そこで、大量に生産されるエチレンを有効利用し、エチレンを原料として、プロピレンや直鎖ブテンを製造する方法が望まれている。
特許文献1には、ゼオライトの外表面酸量が、全酸量に対して5%以下となるように修飾されたゼオライトを触媒として、エチレン及び/又はエタノールと接触させることにより、プロピレンが高い収率で得られることが記載されている。
一方、直鎖ブテンの製造方法としては、例えばZiegler−Natta系触媒を用いたエチレンの二量化により1‐ブテンを製造する方法が知られている(非特許文献1)。
特許文献1に記載の方法は、プロピレンと共にブテン類を副生する。しかし、プロピレンの生産量は十分なものの、ブテン類の生成量が非常に少なく、直鎖ブテンの生産面では実用に耐えるものではない。
また特許文献2に記載の方法は、プロピレンとブテン類を生成するが、そのプロピレン収率が約30%程度、ブテン類の収率が約15%程度であり、これらの合算収率は50%に満たない。さらに生成するブテン類中の直鎖ブテンの割合についても不明である。その
ため、プロピレン、直鎖ブテンいずれの生産面でも実用に耐えるものではない。
また、非特許文献1に記載のエチレンの二量化反応については、1‐ブテンが収率良く得られるものの、プロピレンは全く得られないため、プロピレンの生産面では望ましくない。さらに用いるZiegler−Natta系の触媒が水分に非常に弱いため、エタノールの脱水反応により得られるエチレンを原料として用いる場合、エチレンを一旦精製する必要があるといった問題がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、エチレン及び/又はエタノールから、プロピレンと直鎖ブテンを高い収率で同時に生産することができる製造方法を提供することを課題とする。
AEIであるものを用いることにより、プロピレンと直鎖ブテンを同時に効率よく製造できることを見出し、本発明に至った。
[1]エチレン及びエタノールから選ばれる少なくとも1種の原料を触媒と接触させて
プロピレン及び直鎖ブテンを製造する方法であって、前記触媒の活性成分が、アルミニウ
ム、ガリウム及び鉄から選ばれる少なくとも1種の元素を含むメタロケイ酸塩であり、か
つその構造がInternational Zeolite Association(IZA)で規定されるコードでA
EIであることを特徴とするプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法、
[2]前記触媒の活性成分が、更にホウ素を含むメタロケイ酸塩であることを特徴とす
る上記[1]に記載のプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法。
[3]前記メタロケイ酸塩が、構成原子としてアルミニウムを含有するアルミノケイ酸
塩であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のプロピレン及び直鎖ブテンの製
造方法、
[4] 前記メタロケイ酸塩が、シリル化処理をされたものであることを特徴とする上
記[1]〜[3]のいずれかに記載のプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法、
[5]前記メタロケイ酸塩が、水蒸気処理及び熱処理から選ばれる少なくとも1つの処
理をされたものであることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載のプロピレ
ン及び直鎖ブテンの製造方法、
[6]前記メタロケイ酸塩が、酸処理されたものであることを特徴とする上記[1]〜
[5]のいずれかに記載のプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法、
[7]前記原料を前記触媒に接触させてプロピレン及び直鎖ブテンを含む混合物を得る
工程を有し、該工程におけるエチレン転化率が50%以上であることを特徴とする上記[
1]〜[6]のいずれかに記載のプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法、
[8]前記プロピレン及び直鎖ブテンを含む混合物を得る工程における、プロピレンに
対する直鎖ブテンの質量比(直鎖ブテン/プロピレン)が0.1以上であることを特徴と
する上記[7]に記載のプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法、に存する。
(1) AEI型構造を有するメタロケイ酸塩
本発明において用いられるメタロケイ酸塩は、通常、結晶性を有する。また前記メタロケイ酸塩は、ケイ素と酸素以外の原子Mをその構造中に少なくとも1種類含むメタロケイ酸塩である。
メタロケイ酸塩は、通常、ゼオライトと呼ばれる開かれた規則的なミクロ細孔(以下、単に「細孔」ということがある)を形成している多孔質結晶性化合物であり、四面体構造をもつTO4単位(Tは、ゼオライトを構成する酸素以外の原子をいい、以下、T原子と
いう)が酸素原子を共有して三次元的に連結した構造を有している。
AEI型構造を有するメタロケイ酸塩は、3種類の3.8×3.8Åの8員環細孔から構成される3次元細孔を有する。8員環細孔が交差することで、その構造内に広い空洞(ケージ)が存在する。また、AEI型構造のユニットセル(単位胞)は空間座標の定まっている原子で表した場合、その組成はT48O96であり、単斜晶系である。
なおフレームワーク密度(単位:T/nm3)とは、ゼオライトの単位体積(1nm3)当たりに存在する骨格を形成する酸素以外の原子(T原子)の個数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まるものである。なお、フレームワーク密度とゼオライトの構造との関係は、IZAの構造委員会(Structure Commission)により編纂されたゼオライトに関するデータ集(Atlas of Zeolite Framework Types,Sixth Revised Edition 2007, ELSEVIER)に示されている。
このうち前記メタロケイ酸塩中にアルミニウム、ガリウム、または鉄を含むものは、これらの原子がメタロケイ酸塩のT原子としてその骨格内に取り込まれ、比較的強い酸点となり、触媒反応の活性点として働くため、触媒活性に優れる。
また、前記メタロケイ酸塩中にホウ素を含むものは、ホウ素原子がメタロケイ酸塩のT
原子としてその骨格内に取り込まれることで比較的弱い酸点となる。そのためホウ素は、好ましくはアルミニウムやガリウムなどの強い酸性質を発現する他の構成元素と共存させることで、メタロケイ酸塩の酸性質や酸量を適宜調整することができる。具体的には、構成元素としてアルミニウムとホウ素を含むボロアルミノケイ酸塩や、ガリウムとホウ素を含むガロボロケイ酸塩等が挙げられる。
本発明のメタロケイ酸塩として好ましくは、アルミノケイ酸塩、ボロアルミノケイ酸塩、ガロケイ酸塩、ガロボロケイ酸塩であり、より好ましくはアルミノケイ酸塩、ボロアルミノケイ酸塩であり、さらに好ましくはアルミノケイ酸塩である。
以上、好ましくは8以上、より好ましくは10以上であり、通常1000以下、好ましくは500以下、より好ましくは200以下であり、特に好ましくは50以下である。なお前記の比率は、メタロケイ酸塩中のSi原子が全てSiO2として含まれ、メタロケイ酸
塩中に含まれる前記MがすべてM2O3として含まれると仮定して求める値である。SiO2/M2O3モル比が上記範囲にあることで十分な酸量が得られ、高いエチレン転化率が得
られる。またコーク付着による触媒の失活、ケイ素以外のT原子の骨格からの脱離、酸点当たりの酸強度の低下といった現象を防ぐことができる。
また、構成元素中のホウ素の比率は、特に限定されないが、SiO2/B2O3モル比は
、通常5以上、好ましくは8以上、より好ましくは10以上であり、通常1000以下、好ましくは500以下、より好ましくは100以下である。
本発明のメタロケイ酸塩は、一般的に水熱合成法により調製することが可能である。例えば水にアルミニウム源、ガリウム源、ホウ素源、及び鉄源から選ばれる少なくとも1種類と、ケイ素源やアルカリ水溶液等を加えて均一なゲルを生成させ、これに必要に応じて構造規定剤を加えて攪拌し、原料ゲルを調製する。得られた前記原料ゲルを、密閉容器中で加熱し、自圧下反応させることにより、結晶化させる。このときの反応温度は特に限定されないが、通常100〜200℃に保持して結晶化させる。結晶化の際に、必要に応じて種結晶を添加してもよく、製造性の面では種結晶を添加する方が、反応時間を短縮できる点や結晶粒子を微粒子化できる点で好ましい。次いで結晶化した前記原料ゲルを濾過および洗浄した後、固形分を乾燥し、引き続き焼成することによって、粉末のメタロケイ酸塩として得ることができる。前記の乾燥温度は限定されないが、通常100〜200℃である。また前記の焼成温度は限定されないが、通常400〜700℃である。
また、水熱合成後に、イオン交換、脱アルミニウム処理、含浸等の処理を加え、メタロケイ酸塩の組成を変えたものも使用できる。
ナンから誘導されるカチオン、2−アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタンから誘導されるカチオン、N,N−ジアルキル−2,5−ジヒドロピロールから誘導されるカチオン等が挙げられる。
上記のうち好ましくは、N,N‐ジメチル‐3,5‐ジメチルピペリジウムカチオン、N,N‐ジエチル‐2,6‐ジメチルピペリジウムカチオン、N,N‐ジメチル‐9‐アゾニアビシクロ[3.3.1]ノナンカチオン等である。
ン酸塩が含まれる。中でも、水酸化物イオンは特に好適に用いられる。
前記メタロケイ酸塩の外表面酸量を、上記範囲に調整する方法としては、特に限定はされないが、通常、前記メタロケイ酸塩の外表面のシリル化、水蒸気処理、熱処理等の方法が挙げられる。また、メタロケイ酸塩を成形する際にバインダーと前記メタロケイ酸塩の外表面酸点を結合させる、といった方法が挙げられる。
な物質やバインダーを用いて、造粒・成形して、或いはこれらを混合して反応に用いても良い。上記処理を施した前記メタロケイ酸塩は、触媒の活性成分となることから、触媒中の前記メタロケイ酸塩を指して「触媒活性成分」ということがある。
なお、アルミナ等の、酸点を有するバインダーを使用した場合には、前記全体酸量及び外表面酸量の測定方法では、メタロケイ酸塩の酸量と共にバインダーの酸量も含んだ合計値として測定される。その場合はバインダー由来の酸量を別法により求め、その値を差し引くことによってバインダー由来の酸量を含まない全体酸量及び外表面酸量を求めることが可能である。前記バインダーの酸量は、27Al−NMRにおいてメタロケイ酸塩の酸点に由来する4配位Alのピーク強度からメタロケイ酸塩の全体酸量を求め、アンモニア昇温脱離法により求まるメタロケイ酸塩の全体酸量とバインダー由来の酸量の合計値から差し引く方法で求められる。
本発明のメタロケイ酸塩は、適宜シリル化処理、水蒸気処理、熱処理、酸処理、及びイオン交換から選ばれる少なくとも1つ以上の処理を施して用いてもよい。このうち、好ましくは水蒸気処理と、シリル化処理、熱処理、酸処理、イオン交換から選ばれる少なくとも1つ以上の処理とを併用したものであり、より好ましくは水蒸気処理と、シリル化処理、イオン交換から選ばれる少なくとも1つ以上の処理とを併用したものであり、さらに好ましくは水蒸気処理及びシリル化処理を併用したものである。以下、これらの処理方法について述べる。
本発明のメタロケイ酸塩をシリル化処理する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を適宜用いることができ、具体的には液相シリル化や気相シリル化等を行うことができる。
以下、シリル化処理を、液相シリル化を例に取り、具体的に説明する。
アルコキシシラン類としては、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等;の4級アルコキシシラン、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリエトキシエチルシラン等;の3級アルコキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシジエチルシラン等;の2級アルコキシシラン、メトキシトリメチルシラン、メトキシトリエチルシラン、エトキシトリメチルシラン、エトキシトリエチルシラン等;の1級アルコキシシランが用いられる。好ましくは2級以上のアルコキシシランであり、より好ましくは3級以上のアルコキシシランであり、さらに好ましくは4級アルコキシシランである。
シラザン類としては、具体的には、ヘキサメチルジシラザン、ジプロピルテトラメチルジシラザン、ジフェニルテトラメチルジシラザン、テトラフェニルジメチルジシラザン等が挙げられ、ヘキサメチルジシラザンが好ましい。
で好ましい。
時間以上であり、より好ましくは1時間以上である。また触媒の性能を阻害しない限りにおいて処理時間の上限は特にないが、通常24時間以下である。処理時間を上記の範囲とすることで、前記メタロケイ酸塩の外表面酸点のシリル化被覆が進行し、外表面酸量が十分に減少する点で好ましい。
本発明のメタロケイ酸塩の水蒸気処理方法は、特に限定されるものではないが、本発明の効果を損なわない範囲において水蒸気を含む気体に接触させることができる。具体的には水蒸気、空気又は不活性ガスで希釈した水蒸気、エチレン及びエタノールから選ばれる少なくとも1つとともに水蒸気を含む反応雰囲気、または水蒸気を生成する反応雰囲気等に接触させる方法などが挙げられる。水蒸気を生成する反応とは、エタノールの脱水反応のように脱水が起こって水蒸気を生成する反応のことである。なお、条件によって水蒸気が部分的に液体の水として存在しても構わないが、前記メタロケイ酸塩に一様な水蒸気処理効果を与えるために、全体が水蒸気の状態で存在していることが好ましい。
前記メタロケイ酸塩の水蒸気処理時間は、特に限定されるものではないが、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上であり、より好ましくは1時間以上である。また触媒活性を著しく阻害しない限りにおいては処理時間の上限はないが、通常24時間以下である。水蒸気処理温度及び水蒸気濃度により、処理時間は適宜調整することができる。
前記有機物としては、特に限定されないが、メタロケイ酸塩の水熱合成時に使用する構
造規定剤、及び反応によって生成するコーク等が挙げられる。これら有機物は、水熱合成後のメタロケイ酸塩(以下、焼成前メタロケイ酸塩ということがある)に水蒸気処理を行った後、空気焼成等の燃焼工程を経て除去することもできる。または空気等の酸素含有ガスで希釈した水蒸気で処理することにより、有機物を除去しながら水蒸気処理することもできる。
アルカリ土類金属を含む化合物の量は、特に限定されないが、前記メタロケイ酸塩に対して通常、0.5質量%以上、好ましくは3質量%以上、通常45質量%以下、好ましくは40質量%以下である。
本発明のメタロケイ酸塩を熱処理する方法は、特に限定されるものではないが、具体的には、前記メタロケイ酸塩を、空気及び不活性ガスから選ばれる少なくとも1つの雰囲気下で高温処理する方法や、エチレン及びエタノールから選ばれる少なくとも1つを含む混合ガス雰囲気下で高温処理する方法などが挙げられる。
前記メタロケイ酸塩の熱処理では、水蒸気処理と同様、その骨格内の前記T原子の脱離による全酸量の減少により、メタロケイ酸塩の細孔内部におけるコーク生成が抑制され、分子の結晶内拡散性が向上するため、プロピレンよりも大きい分子の直鎖ブテンの生成が相対的に促進されているものと推測される。
熱処理の際に使用するガス種としては、ヘリウム、窒素、空気等を使用することができる。
なお、前記熱処理は上記のメタロケイ酸塩を製造する際に行われる焼成と同時に行っても別個に分けて行ってもよい。前記熱処理は骨格内の前記T原子の脱離等を目的とするため比較的高温で行われ、特に限定はされないが、具体的には、上記の焼成と熱処理を別個に行なう場合であれば、前記熱処理は、通常、前記焼成よりも高い温度で行なわれる。
熱処理の時間は、特に限定されるものではないが、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1.0時間以上である。また触媒活性を著しく阻害しない限りにおいては処理時間の上限はないが、通常24時間以下である。熱処理温度により、処理時間は適宜調整することができる。
本発明のメタロケイ酸塩の酸処理の方法は、特に限定されるものではないが、具体的には、酸性水溶液を用いる方法が挙げられる。
前記酸性水溶液に用いる酸の種類としては、特に限定されるものではないが、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸などの無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸、シュウ酸、マロン酸などのジカルボン酸などを使用することができる。これらのうち好ましいのは
、硫酸、硝酸、塩酸である。
酸処理の温度としては、特に限定されるものではないが、常圧においては通常室温から100℃、耐圧容器内では100℃以上で行うことも可能であり、通常40℃以上、好ましく60℃以上、より好ましくは80℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下である。酸処理の温度を上記の範囲とすることで、骨格構造の崩壊を抑制しながら、短時間で効率的に前記T原子を骨格から除去することができる。
酸性水溶液中に、シリル化剤を添加することにより、酸処理とシリル化処理を同時に行うこともできる。その際に用いるシリル化剤は、前記シリル化剤と同じである。
本発明の製造方法は、エチレン及びエタノールから選ばれる少なくとも1つ(以下、本発明の原料)と、上記AEI型構造のメタロケイ酸塩を含む触媒を接触させることにより、プロピレン及び直鎖ブテンを製造する。以下、本発明の製造方法について説明する。
本発明の原料であるエチレンは特に限定されるものではない。例えば、石油供給源から接触分解法または蒸気分解法により製造されるエチレン、石炭のガス化により得られる水素/CO混合ガスを原料としてフィッシャートロプシュ合成を行うことにより得られるエチレン、エタンの脱水素または酸化脱水素で得られるエチレン、メタセシス反応およびホモロゲーション反応により得られるエチレン、MTO(Methanol to Olefin)反応によって得られるエチレン、エタノールの脱水反応から得られるエチレン、メタンの酸化カップリングで得られるエチレン、その他の公知の各種方法により得られるエチレンを任意に用いることができる。このとき各種製造方法に起因するエチレン以外の化合物を任意に混合した状態のものをそのまま用いてもよいし、精製したエチレンを用いてもよいが、好ましくは精製したエチレンである。
エタノールは、本発明のメタロケイ酸塩に存在する酸点により、容易に脱水されてエチ
レンに変換される。そのため、反応器に原料としてエタノールを直接導入してもよい。以下、エタノールを原料とする製造方法については、脱水により変換されたエチレンを基準とし、エチレンを原料とする製造方法と同様に扱うこととする。
本発明の製造方法においては、通常、エチレン及びエタノールから選ばれる少なくとも1種の原料を反応器中で触媒と接触させ、プロピレンと直鎖ブテンを製造する。用いる反応器の形態は特に限定されないが、通常連続式の固定床反応器や流動床反応器が選ばれる。本発明の製造方法においては、転化率の変動に伴い、プロピレン及び直鎖ブテンの選択率が変動する傾向にあるため、プロピレンと直鎖ブテンを一定の割合で製造するためには、流動床反応器が好ましい。
なお、流動床反応器に前述の触媒を充填する際、触媒層の温度分布を小さく抑えるために、石英砂、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ等の反応に不活性な粒状物を、触媒と
混合して充填しても良い。この場合、石英砂等の反応に不活性な粒状物の使用量には特に限定されない。なお、粒状物は、触媒との均一混合性の面から、触媒と同程度の粒径であることが好ましい。
前記反応器に供給する全供給成分中のエチレンの濃度(即ち、基質濃度)に関して特に制限はないが、通常5モル%以上であり、通常90モル%以下、好ましくは70モル%以下である。基質濃度を上記範囲にすることで、芳香族化合物やパラフィン類の生成を抑制することができ、プロピレン及び直鎖ブテンの収率を向上させることができる。また反応速度を維持できるため、触媒量を抑制することができ、反応器の大きさも抑制可能となる。
なおエタノールを原料として用いる場合は、上記の通り、エタノールは脱水により直ちにエチレン変換されるため、供給したエタノールは、同モルのエチレンを用いたときと同様の取扱うことができる。
r-1以下である。空間速度を前記範囲に設定することで、反応器出口ガス中の未反応エチレンの割合を減らすことができ、また芳香族化合物やパラフィン類等の副生成物を減らすことができるため、プロピレン及び直鎖ブテンの収率を向上させることができる点で好ましい。
ここで言う空間速度(WHSV)とは、触媒(触媒活性成分)の重量当たりの反応原料であるエチレンの流量(重量/時間)である。ここでの触媒重量とは、触媒の造粒・成形に使用する不活性成分やバインダーを含まない触媒活性成分の重量である。
エチレン転化率(%)=〔[反応器入口エチレン(mol/Hr)−反応器出口エチレ
ン(mol/Hr)]/反応器入口エチレン(mol/Hr)〕×100
なおエタノールは、触媒と接触すると容易に脱水されてエチレンに変換されることから、本発明においてエタノールを原料として使用する場合、供給したエタノールが反応器入口で全てエチレンに変換されたとみなし、反応器入口エチレン(mol/Hr)として扱うことで、上記の式よりエチレン転化率を算出する。
尚、パラフィンは炭素数1から4のパラフィンの合計、芳香族化合物はベンゼン、トルエン、キシレンの合計、C5+は前記芳香族化合物を除いた炭素数5以上の炭化水素の合計である。
・ブテン選択率(%)=〔反応器出口ブテン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/[反応器出口総カーボンモル流量(mol/Hr)−反応器出口エチレン由来カーボンモル流量(mol/Hr)]〕×100
・C5+選択率(%)=〔反応器出口C5+由来カーボンモル流量(mol/Hr)/[反応器出口総カーボンモル流量(mol/Hr)−反応器出口エチレン由来カーボンモル流量(mol/Hr)]〕×100
・芳香族化合物選択率(%)=〔反応器出口芳香族化合物由来カーボンモル流量(mol/Hr)/[反応器出口総カーボンモル流量(mol/Hr)−反応器出口エチレン由来カーボンモル流量(mol/Hr)]〕×100
ブテン類中の各異性体の比率は、下記の各式により算出される。
・1‐ブテン比率(%)=〔反応器出口1‐ブテン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/反応器出口ブテン由来カーボンモル流量(mol/Hr)〕×100
・cis‐2‐ブテン比率(%)=〔反応器出口cis‐2‐ブテン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/反応器出口ブテン由来カーボンモル流量(mol/Hr)〕×100
・イソブテン比率(%)=〔反応器出口イソブテン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/反応器出口ブテン由来カーボンモル流量(mol/Hr)〕×100
・プロピレン収率(%)=エチレン転化率(%)×プロピレン選択率(%)/100
・直鎖ブテン収率(%)=エチレン転化率(%)×直鎖ブテン選択率(%)/100
・直鎖ブテン選択率(%)=ブテン選択率(%)×〔1‐ブテン比率+trans‐2‐ブテン比率+cis‐2‐ブテン比率(%)〕/100
例えば、固定床反応器で反応を行う場合には、複数個の反応器を並列に備え、エチレン
の転化率が上記の好ましい範囲から低下した際には、触媒と反応原料との接触を停止し、該触媒を再生工程に供する。固定床反応器においては、反応時間及び再生時間を適宜調整する、すなわち、運転における反応工程と再生工程とを切り替える時間を適宜調整することにより、上記の好ましい範囲のエチレン転化率で連続的に運転することができる。
また、流動床反応器で反応を行う場合には、反応器に対して触媒の再生器を付設し、反応器から抜き出した触媒を連続的に再生器に送り、再生器において再生された触媒を連続的に反応器に戻しながら、反応を行うことが好ましい。触媒の反応器内での滞留時間と再生器内での滞留時間を適宜調整することにより、上記の好ましい範囲のエチレン転化率で連続的に運転することができる。
再生方法は特に限定されるものではないが、具体的には例えば、空気、窒素、水蒸気、水素等を用いて再生することができ、水素を用いて再生することが好ましい(例えば、特開2011−78962号公報に記載の方法に準じて再生することができる)。
また、高いエチレン転化率を長時間維持するための方法としては、特開2011‐79818号公報記載の水素雰囲気下でエチレンを反応させることにより、触媒へのコーク蓄積を抑制する方法も挙げられる。
この混合ガス中には通常エチレンが含まれるが、この混合ガス中のエチレンはその少なくとも一部を反応器にリサイクルして反応原料として再利用することが好ましい。
尚、副生成物としては炭素数が5以上のオレフィン類、パラフィン類、芳香族化合物が挙げられる。
よりポリブテン−1や、オキソ反応によりアミルアルコール等が製造できる。
1M水酸化ナトリウム水溶液123g、N,N‐ジメチル‐3,5‐ジメチルピペリジウムハイドロキサイド水溶液(21.8質量%)32.9gを順に、水8.2gに溶解し、Y型ゼオライトCBV720(SiO2/Al2O3比 30、ZEOLYST社製)1
4.4gを加えて、30分間撹拌した。さらに、コロイダルシリカSI−30(SiO2
30質量%、Na 0.3質量%、日揮触媒化成社製)14.8gを加え、ゲル状反応液(以下、原料ゲルということがある)とし、2時間撹拌した。前記原料ゲルを1000mlのオートクレーブに仕込み、自圧下、150rpmで撹拌しながら、135℃で7日間、水熱合成反応に供した。得られた生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させた。
った。また、走査電子顕微鏡より、一次粒子径はおよそ800nmであった。
水熱合成により得られたアルミノケイ酸塩(焼成前アルミノケイ酸塩)を、空気流通下580℃で6時間焼成を行い、Na型のアルミノケイ酸塩を得た。
1M水酸化ナトリウム水溶液123g、ホウ酸0.742g、N,N‐ジメチル‐3,5‐ジメチルピペリジウムハイドロキサイド水溶液(21.8質量%)32.9gを順に、水7.9gに溶解し、Y型ゼオライトCBV720(SiO2/Al2O3比 30、ZE
OLYST社製)14.4gを加えて、30分間撹拌した。さらに、コロイダルシリカSI−30(SiO2 30質量%、Na 0.3質量%、日揮触媒化成社製)14.8g
を加え、ゲル状反応液とし、2時間撹拌した。前記原料ゲルを1000mlのオートクレーブに仕込み、自圧下、150rpmで撹拌しながら、160℃で4日間、水熱合成反応に供した。得られた生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させた。
生成物のXRDパターンから、得られた生成物はAEI型構造を有するボロアルミノケイ酸塩であることを確認した。蛍光X線分析より、SiO2/Al2O3比は19であった
。
水熱合成により得られたボロアルミノケイ酸塩を、空気流通下580℃で6時間焼成を行い、Na型のボロアルミノケイ酸塩を得た。
10質量%水酸化ナトリウム水溶液4.00g、N,N‐ジメチル‐3,5‐ジメチルピペリジウムハイドロキサイド水溶液(25.0質量%)1.91gを順に、水5.79gに溶解し、H-Y型ゼオライト(SiO2/Al2O3比 5、触媒化成工業社製)0.33
5gを加えて、30分間撹拌した。さらに、フュームドシリカ(Aerosil200)0.965を加え、ゲル状反応液とし、2時間撹拌した。前記原料ゲルを100mlのオートクレーブに仕込み、自圧下、15rpmで撹拌しながら、135℃で7日間、水熱合成反応に供した。得られた生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させた。
生成物のXRDパターンから、得られた生成物はAEI型構造を有するアルミノケイ酸塩であることを確認した(ANA型構造を不純物として含む)。蛍光X線分析より、SiO2/Al2O3比は10であった。水熱合成により得られたアルミノケイ酸塩を、空気流
通下580℃で6時間焼成を行い、Na型のアルミノケイ酸塩を得た。
水酸化ナトリウム2.1g、N,N,N‐トリメチル‐1‐アダマンタンアンモニウムハイドロキサイド水溶液(25質量%)47.3gを順次、水89.6gに溶解し、水酸化アルミニウム(酸化アルミニウム換算で50〜57質量%)4.3gを加えて、撹拌した。次いで、SI−30(SiO2 30質量%,Na 0.3質量%,日揮触媒化成社
製)111gを加え、2時間撹拌した。さらに、加えたSiO2に対して2質量%のCH
A型アルミノケイ酸塩を種結晶として加えてさらに攪拌した。この原料ゲルを1000mlのオートクレーブに仕込み、自圧下、250rpmで攪拌しながら、160℃で20時間の水熱合成を行った。生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させた。生成物のXRDパターンから、CHA型構造を有することを確認した。蛍光X線分析より、SiO2
/Al2O3比は26であった。また、走査電子顕微鏡より、一次粒子径はおよそ50nmであった。
水熱合成により得られたアルミノケイ酸塩を、空気流通下580℃で6時間焼成を行い、Na型のアルミノケイ酸塩を得た。このアルミノケイ酸塩を1Mの硝酸アンモニウム水溶液を用いて、80℃で1時間のイオン交換を2回行い、100℃で乾燥させた。その後、空気流通下、500℃で6時間焼成し、プロトン型のアルミノケイ酸塩を得た。
調製例1で得られたAEI型構造のアルミノケイ酸塩1gを800℃で、50%水蒸気(水蒸気/窒素=50/50(体積/体積))流通下、5時間処理することにより、水蒸気処理されたAEI型構造のアルミノケイ酸塩を得た。これを触媒として、エチレンを原料として、プロピレン及び直鎖ブテンの合成反応を行った。前記の反応には、常圧固定床流通反応装置を用い、内径6mmの石英反応管に、上記触媒100mgと石英砂400mgの混合物を充填した。エチレン及び窒素を、エチレンの空間速度が0.36Hr-1で、エチレン30体積%と窒素70体積%となるように反応器に供給し、350℃、0.1MPaでプロピレン及び直鎖ブテンの合成反応を実施し、反応器出口ガスをガスクロマトグラフィーにより分析を行った。分析の結果、プロピレン及び直鎖ブテンの合計の選択率が70%以上であり、かつ直鎖ブテン/プロピレンが最大となった0.83時間後の反応成績を表1に示した。
調製例1で得られたAEI型構造のアルミノケイ酸塩0.50gを6Mの硫酸水溶液25gを用いて、100℃で20時間の酸処理を行い、濾過により固液を分離し、固形分を100℃で乾燥させた。次いで、800℃で、50%水蒸気(水蒸気/窒素=50/50(体積/体積))流通下、5時間処理することにより、酸処理及び水蒸気処理されたAEI型構造のアルミノケイ酸塩を得た。この触媒を実施例1と同様の反応器に充填し、同様の反応条件にてプロピレン及び直鎖ブテンの合成反応を行い、プロピレン及び直鎖ブテンの合計の選択率が70%以上であり、かつ直鎖ブテン/プロピレンが最大となった0.83時間後の反応成績を表1に示した。
調製例2で得られたAEI型構造のボロアルミノケイ酸塩0.50gに対して、含水量
が16重量%となるように調湿処理を行い、溶媒としてトルエン10ml、ジエトキシジ
メチルシラン2.5mlを加えて、撹拌しながら100℃で2時間加熱処理を行った。反
応終了後、濾過により固液を分離し、固形分を100℃で乾燥させた。次いで、800℃
で、50%水蒸気(水蒸気/空気=50/50(体積/体積))流通下、5時間処理する
ことにより、シリル化処理及び水蒸気処理されたAEI型構造のボロアルミノケイ酸塩を
得た。この触媒を実施例1と同様の反応器に充填し、同様の反応条件にてプロピレン及び
直鎖ブテンの合成反応を行い、プロピレン及び直鎖ブテンの合計の選択率が70%以上で
あり、かつ直鎖ブテン/プロピレンが最大となった0.83時間後の反応成績を表1に示
した。
実施例3で得られたシリル化処理及び水蒸気処理されたAEI型構造のボロアルミノケ
イ酸塩を、反応温度を325℃とした以外は実施例1と同様の反応条件にてプロピレン及
び直鎖ブテンの合成反応を行い、プロピレン及び直鎖ブテンの合計の選択率が70%以上
であり、かつ直鎖ブテン/プロピレンが最大となった0.83時間後の反応成績を表1に
示した。
実施例3で得られたシリル化処理及び水蒸気処理されたAEI型構造のボロアルミノケ
イ酸塩を、反応温度を400℃とした以外は実施例1と同様の反応条件にてプロピレン及
び直鎖ブテンの合成反応を行い、プロピレン及び直鎖ブテンの合計の選択率が70%以上
であり、かつ直鎖ブテン/プロピレンが最大となった0.83時間後の反応成績を表1に
示した。
調製例3で得られたAEI型構造(ANA型構造を不純物として含む)のアルミノケイ酸塩を、実施例1と同様の反応器に充填し、同様の反応条件にてプロピレン及び直鎖ブテンの合成反応を行い、プロピレン及び直鎖ブテンの合計の選択率が70%以上であり、かつ直鎖ブテン/プロピレンが最大となった0.83時間後の反応成績を表1に示した。
調製例4で得られたCHA型構造のアルミノケイ酸塩2.0gに対して、含水量が21質量%となるように調湿処理を行い、溶媒としてトルエン20ml、シリル化剤としてテトラエトキシシラン5mlを加えて、攪拌しながら70℃で4時間加熱処理を行った。反応終了後、濾過によって固液を分離し、固形分を100℃で乾燥させることにより、シリル化されたCHA型のアルミノケイ酸塩を得た。これを触媒として用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、同様の反応条件にてプロピレン及び直鎖ブテンの合成反応を実施した。分析の結果、プロピレン及び直鎖ブテンの合計の選択率が70%以上であり、かつ直鎖ブテン/プロピレンが最大となった2.08時間後の反応成績を表1に示した。
これより、AEI型構造を有するメタロケイ酸塩を触媒として用いることで、プロピレンと直鎖ブテンの両方を同時に、高選択率で得られることがわかった。
CHA型構造を有するメタロケイ酸塩を用いることで、高い選択率でプロピレンが得られた。これはその細孔内にエチレンが入り反応するが、CHA型構造の小さい細孔径と、その空洞内のコークの生成により、炭素数の多い炭化水素、具体的には炭素数4以上の炭化水素の結晶内拡散性が低く、プロピレンが優先的に結晶外へ排出されたためと考えられる。
Claims (8)
- エチレン及びエタノールから選ばれる少なくとも1種の原料を触媒と接触させてプロピ
レン及び直鎖ブテンを製造する方法であって、前記触媒の活性成分が、アルミニウム、ガ
リウム及び鉄から選ばれる少なくとも1種の元素を含むメタロケイ酸塩であり、かつその
構造がInternational Zeolite Association(IZA)で規定されるコードでAEIで
あることを特徴とするプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法。 - 前記触媒の活性成分が、更にホウ素を含むメタロケイ酸塩であることを特徴とする請求
項1に記載のプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法。 - 前記メタロケイ酸塩が、構成原子としてアルミニウムを含有するアルミノケイ酸塩であ
ることを特徴とする請求項1又は2に記載のプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法。 - 前記メタロケイ酸塩が、シリル化処理をされたものであることを特徴とする請求項1〜
3のいずれか1項に記載のプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法。 - 前記メタロケイ酸塩が、水蒸気処理及び熱処理から選ばれる少なくとも1つの処理をさ
れたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロピレン及び直
鎖ブテンの製造方法。 - 前記メタロケイ酸塩が、酸処理されたものであることを特徴とする請求項1〜5のいず
れか1項に記載のプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法。 - 前記原料を前記触媒に接触させてプロピレン及び直鎖ブテンを含む混合物を得る工程を
有し、該工程におけるエチレン転化率が50%以上であることを特徴とする請求項1〜6
のいずれか1項に記載のプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法。 - 前記プロピレン及び直鎖ブテンを含む混合物を得る工程における、プロピレンに対する
直鎖ブテンの質量比(直鎖ブテン/プロピレン)が0.1以上であることを特徴とする請
求項7に記載のプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法。
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