以下、図面を参照しつつ、本開示の典型的な実施形態を説明する。まず、図1〜図9を参照して、第1実施形態を説明する。
図1は、第1実施形態の眼科撮影装置1が有する光学系を示している。本第1実施形態において、眼科撮影装置1は、走査型レーザー検眼鏡(Scanning Laser Opthalmoscope:SLO)を基本構成とする。なお、眼科撮影装置1は、光干渉断層計(OCT:Optical Coherence Tomography)、視野計などの他の眼科装置と一体化された装置であってもよい。
一例として、眼科撮影装置1は、撮影光学系2を主に備える。また、第1実施形態の眼科撮影装置1には、回転板ユニット30が設けられている。まず、撮影光学系2について説明する。撮影光学系2は、被検眼Eの眼底Erに光を投光すると共に、「投光された光に伴い眼底Erの各位置から発せられる光」を受光素子25で受光する。詳細は後述するが、眼科撮影装置1は、受光素子25の受光結果に基づいて、眼底画像を取得(撮影)する。撮影光学系2は、投光光学系3と、受光光学系4と、を有している。撮影光学系2は、後述する駆動機構50(図7参照)によって、被検眼Eの左右方向(矢印X方向)、上下方向(矢印Y方向)、前後方向(矢印Z方向)、の各方向へ移動される。
投光光学系3は、被検眼Eの眼底Erにおける撮影範囲の各位置へ、光(照明光、又は、励起光)を投光する。本第1実施形態において、投光光学系3には、レーザー光出射部11、穴開きミラー12、レンズ13、レンズ14、走査部15、および、対物レンズ光学系16が含まれる。
レーザー光出射部11は、撮影光学系2の光源である。レーザー光出射部11は、例えば、少なくとも第1波長(波長790nm付近)のレーザー光と第2波長(波長490nm付近)のレーザー光とを出射してもよい。もちろん、レーザー光出射部11は、単色光のみを出射してもよい。本第1実施形態において、レーザー光出射部11は、2種類のレーザー光を同時に出射することも、一方だけを出射することもできる。
レーザー光出射部11からのレーザー光は、「中央に開口部を有する穴開きミラー12」の開口部を通り、レンズ13およびレンズ14を透過した後、走査部15に向かう。走査部15によって反射された光束は、対物レンズ光学系16を通過した後、被検眼Eの眼底Erで集光される。レーザー光出射部11から眼底Erに対してレーザー光が照射されることに伴って、眼底Erから光が発せられる。例えば、レーザー光は、眼底Erで散乱あるいは反射される。その結果、眼底Erで散乱あるいは反射された光(以下、眼底反射光という)が、瞳孔から出射される。また、レーザー光は、眼底Erに存在する蛍光物質を励起する場合がある。その結果、眼底Erに存在する蛍光物質から発せられた蛍光が、瞳孔から出射される場合がある。
なお、本第1実施形態において、レンズ13は、「駆動機構13aによって、光軸L1方向へ移動可能」に構成されている。レンズ13の位置に応じて、撮影光学系2の視度が変わる。このため、本第1実施形態では、正視眼に対する被検眼Eの視度の誤差が、「レンズ13の位置が調節されること」によって、矯正(軽減)される。なお、レンズ14を変位することによって、被検眼Eの視度の誤差を矯正してもよい。
走査部15は、「レーザー光によって眼底を走査するために、レーザー光出射部11から導かれたレーザー光」の進行方向を変える(レーザー光を偏向する)ユニットである。本第1実施形態において、走査部15は、レゾナントスキャナ15aと、ガルバノミラー15bと、を有している。
なお、走査部15としては、例えば、反射ミラー(ガルバノミラー、ポリゴンミラー、レゾナントスキャナ)の他、光の進行(偏向)方向を変える音響光学素子(AOM)等が用いられてもよい。
本第1実施形態において、レゾナントスキャナ15aは、被検眼Eの眼底に投光されるレーザー光を、所定の方向へ偏向する。図1に示すように、レゾナントスキャナ15aを経た光は、ガルバノミラー15bへ向かう。本第1実施形態では、「モータ15c(図7参照)によって、レゾナントスキャナ15aが回転されること」で、眼底Erにおけるレーザー光の照射位置(スキャン位置)が、水平方向(即ち、X方向)に移動する。
また、本第1実施形態において、ガルバノミラー15bは、レゾナントスキャナ15aを経たレーザー光を、更に、レゾナントスキャナ15aとは異なる方向に偏向する。図1に示すように、ガルバノミラー15bを経た光は、対物レンズ光学系16へ向かう。本第1実施形態では、「モータ15d(図7参照)によって、ガルバノミラー15bが回転されること」で、眼底Erにおけるレーザー光の照射位置が、垂直方向(即ち、Y方向)に移動する。このように、本第1実施形態の走査部15は、レゾナントスキャナ15aによる眼底ErのX方向の走査と、ガルバノミラー15bによるY方向の走査とによって、レーザー光によって眼底Erを2次元的に走査する。
対物レンズ光学系16は、走査部15を経たレーザー光を、瞳位置を通過するように導光する。本第1実施形態において、対物レンズ光学系16は、第1凸レンズ16aおよび第2凸レンズ16bを有している。図1に示すように、対物レンズ光学系16では、これらのレンズが、直列的に配置されている。なお、対物レンズ光学系16のレンズの数は、上記構成に限定されない。対物レンズ光学系16は、3枚以上のレンズを含む対物レンズ系であってもよい。また、対物レンズ光学系16の各レンズは、収差補正の必要に応じて、「非球面レンズ、および、複数のレンズで構成される複合レンズ」等であってもよい。
第1凸レンズ16aは、対物レンズ光学系16のレンズの中で、被検眼の最も近くに配置される。第2凸レンズ16bは、第1凸レンズ16aよりも走査部15側に配置される。図1に示すように、本第1実施形態では、第1凸レンズ16aとして、走査部15側に凸面を向ける平凸レンズが用いられている。第2凸レンズ16bとして、両凸レンズが用いられている。しかしながら、これらのレンズ形状は例示に過ぎず、それぞれが正のパワーを有していればよい。
本第1実施形態において、対物レンズ光学系16を通過したレーザー光は、対物レンズ光学系16の光軸L3上の一点(以下、「旋回点」と称す)を経て、眼底Erに照射される。本第1実施形態において、旋回点の位置は、「対物レンズ光学系16を介して、走査部15(例えば、レゾナントスキャナ15aとガルバノミラー15bとの中間点)と光学的に共役な位置」となる。このため、対物レンズ光学系16を通過したレーザー光の主光線は、走査部15の動作に伴って、旋回点を中心に旋回される。その結果、眼底Erがレーザー光によって二次元的に走査される。「レーザー光の旋回点と被検眼Eの瞳位置とを、予め一致させておくこと」によって、虹彩でのケラレが抑制されるので、レーザー光が眼底に良好に導光される。結果として、眼底画像が良好に撮影される。
また、本第1実施形態の眼科撮影装置1は、対物レンズ光学系16の各レンズを移動するレンズ移動機構(画角切換機構、撮影画角調節機構)17を有している。レンズ移動機構17は、対物レンズ光学系16の各レンズを、それぞれ任意の移動量で移動することができる。なお、説明の便宜上、本第1実施形態では、レンズ移動機構17は、単体のデバイスとして説明される。しかし、レンズ移動機構17の構成は、これに限定されない。例えば、レンズ移動機構17として、「それぞれが一枚のレンズを移動する、複数個のデバイス」が用いられてもよい。
本第1実施形態では、「対物レンズ光学系16における各レンズの配置が、レンズ移動機構17によって変更されること」で、「投光光学系3から投光されるレーザー光の照射範囲、即ち、眼科撮影装置1(又は撮影光学系2)における撮影画角」が変更される。本第1実施形態の眼科撮影装置1は、撮影画角を、「第1画角と、第1画角よりも広い第2画角との、少なくとも2種類」の間で切り換えることができる。「本第1実施形態における、撮影画角が第1画角であるときの、各レンズ16aおよび16bの配置」を図2Aに示す。「本第1実施形態における、撮影画角が第2画角であるときの、各レンズ16aおよび16bの配置」を、図2Bに示す。以下、「撮影画角が第1画角であるときの、眼科撮影装置1の状態」を、狭角撮影モードと称する。「撮影画角が第2画角であるときの、眼科撮影装置1の状態」を、広角撮影モードと称する。
図2A,Bに示すように、本第1実施形態では、「レーザー光の照射範囲が変更されても、眼科撮影装置1に対する旋回点の位置等が維持される」ように、後述する制御部90によって、対物レンズ光学系16の各レンズが配置される。本第1実施形態では、一例として、「『第1凸レンズ16a及び第2凸レンズ16bが、光軸L3に沿って、互いに同じ方向に変位されること』によって、撮影画角が、第1画角および第2画角に相互に変更される場合」を示す(図2A,図2B参照)。
例えば、本第1実施形態において、撮影画角を第1画角から第2画角に広げる場合、2つの凸レンズ16aおよび16bのそれぞれが、光軸L3に沿って、被検眼E側に近づけられる(図2A→図2B)。また、本第1実施形態では、第2凸レンズ16bが、第1凸レンズ16aよりも大きく移動される。つまり、2つの凸レンズ16aおよび16bは、「撮影画角が第2画角である場合、互いのレンズ間隔が、撮影画角が第1画角である場合に比して狭くなる」ように移動される。これにより、撮影画角が第2画角である場合、「各凸レンズ16aおよび16bへ入射するレーザー光」の入射高さが、「撮影画角が第1画角である場合」よりも高くなる。その結果として、撮影画角が第2画角である場合、2つの凸レンズ16aおよび16bの収束作用は、「撮影画角が第1画角である場合」に比して大きくなり、撮影画角が第1画角に比して広がる。また、本第1実施形態では、「撮影画角を第2画角とするために、第1凸レンズ16aを、第2凸レンズ16bよりも小さな変位で移動すること」によって、旋回点が、「撮影画角が第1画角である場合」に比して第1凸レンズ16aに近づけられる。その結果として、本装置では、撮影画角が第1画角から第2画角に切り換わる前後で、被検眼に対する旋回点の位置が維持される。
一方、本第1実施形態において、撮影画角を第2画角から第1画角に狭める場合、対物レンズ光学系16の各レンズが、撮影画角を広げる場合とは反対の向きに移動される(図2B→図2A)。その結果、撮影画角が第1画角である場合、2つの凸レンズ16aおよび16bへ入射するレーザー光の入射高さが、「撮影画角が第2画角である場合」よりも低くされる。これにより、撮影画角が第1画角である場合、各凸レンズ16aおよび16bの収束作用は、「撮影画角が第2画角である場合」に比して小さくなり、撮影画角が第2画角に比して狭められる。また、このとき、「撮影画角を第1画角とするために、第1凸レンズ16aが、第2凸レンズ16bよりも少ない変位量で、走査部15側へ移動されること」によって、旋回点が、「撮影画角が第2画角である場合」に比して、第1凸レンズ16aから遠ざかる。その結果として、本装置では、撮影画角が第2画角から第1画角に切り換わる前後で、被検眼に対する旋回点の位置が維持される。
このように、本第1実施形態の眼科撮影装置1では、撮影画角が第1画角である場合と第2画角である場合とで、「被検眼に対する、レーザー光の旋回点の位置」が維持される。このため、撮影画角を変えたときに、「『被検眼Eの瞳近傍に、旋回点が位置する』ように、装置と被検眼Eとの位置関係の調節をやり直す必要性」が小さくなる。つまり、本第1実施形態の眼科撮影装置1は、撮影画角の異なる眼底画像を、被検眼Eと装置との位置関係を一定にして撮影できる。従って、本第1実施形態の眼科撮影装置1は、撮影画角の異なる眼底画像を、良好に撮影できる。
ところで、「被検眼に対する旋回点の位置が、一定に維持される」という条件下では、対物レンズ光学系16の撮影画角に伴って、撮影光学系2の視度が変化する。「旋回点の位置が一定であるときの、各撮影画角に対応する視度(D)」は、図3のグラフにて模式的に示される。すなわち、縦軸を視度(D)、横軸を撮影画角としたグラフにおいて、各撮影画角に対応する視度(D)は、「負の値(D)を最小値に持つ、下に凸の曲線」で示される。図3に示すように、2つの凸レンズ16aおよび16bを含む対物レンズ光学系16は、互いに異なる2つの撮影画角において、同一の視度(D)を持つ。例えば、撮影画角がθ1の場合と、θ2(θ1<θ2)の場合とのそれぞれで、対物レンズ光学系16による視度が0(D)となる。
そこで、例えば、眼科撮影装置1では、「狭角撮影モードのとき(即ち、撮影画角が第1画角のとき、図2A参照)の視度と、広角撮影モードのとき(即ち、撮影画角が第2画角のとき、図2B参照)の視度とが、一定の値(例えば、0(D))となる」ように、第1画角と第2画角とが設定されていても良い。この場合、眼科撮影装置(眼科装置)1では、撮影画角が第1画角と第2画角との間で切り替わる場合に、「被検眼に対する旋回点の位置とともに、撮影光学系2の視度が維持される」ように、レンズ移動機構17によって、2つの凸レンズ16aおよび16bが配置される。
図4に、「『撮影画角を、約50°の第1画角と約110°の第2画角との間で切り換える』ときに、視度と旋回点の位置とを維持できる」ような各凸レンズ16aおよび16bの焦点距離と、各凸レンズ16aおよび16bの配置とを、一例として示す。図4に示す例では、第1凸レンズ16aの焦点距離は、42.6mmであり、第2凸レンズ16bの焦点距離は、70.5mmである。
撮影画角が第1画角(約50°)であるとき、第2凸レンズ16bは、走査部15(本第1実施形態では、レゾナントスキャナ15aとガルバノミラー15bとの中間点)から115.3mm、被検眼E側に離れて配置される。また、第1凸レンズ16aは、第2凸レンズ16bから更に、66.5mm被検眼E側に離れて配置される。その結果として、旋回点の位置が、第1凸レンズ16aから被検眼E側に31.1mm離れた位置となる。つまり、「撮影画角を50°とした場合の、走査部15から旋回点までの距離」は、212.9mmとなる。また、対物レンズ光学系16による視度は、0(D)となる。
一方、撮影画角が第2画角(約110°)であるとき、第2凸レンズ16bは、走査部15から177.1mm、被検眼E側に離れて配置される。また、第1凸レンズ16aは、第2凸レンズ16bから更に、4.8mm被検眼E側に離れて配置される。その結果として、旋回点の位置が、第1凸レンズ16aから被検眼E側に30.9mm離れた位置となる。つまり、「撮影画角を110°とした場合の、走査部15から旋回点までの距離」は、212.8mmとなる。
このように、図4の例では、撮影画角が第1画角(約50°)である場合と、撮影画角が第2画角(約110°)である場合とで、「走査部15から旋回点までの距離」が、略同一になる。また、「撮影画角が第2画角(約110°)となる」ように、各凸レンズ16aおよび16bを上記のように配置したとき、対物レンズ光学系16の視度は0(D)となる。よって、図4の例では、撮影画角が第1画角(約50°)である場合と、撮影画角が第2画角(約110°)である場合とで、撮影光学系2の視度が維持される。なお、撮影画角が変更されるときに維持される視度は、0(D)でなくてもよい。例えば、「第1画角および第2画角での視度が、−2Dとなる」ように、図4に示した各パラメーターを設定することもできる。また、各レンズ16aおよび16bの焦点距離、および、具体的な位置は、図4に例示したものに限定されない。各レンズ16aおよび16bの焦点距離、および、具体的な位置は、設定される撮影画角等に応じて、適宜求めることができる。
このように、撮影画角が第1画角と第2画角との間で切り替わる前後で、被検眼に対する旋回点の位置とともに、撮影光学系2の視度が維持される。これにより、撮影画角の切り換え後に、視度を調節する必要性が小さくなる。よって、撮影画角の異なる眼底画像を、一層良好に撮影できる。
なお、眼科撮影装置1は、「撮影画角が第1画角と第2画角との間で切り替わる場合に、撮影光学系2の視度が維持されない」ように構成されてもよい。この場合、眼科撮影装置1は、例えば、撮影光学系2に設けられた視度補正機構を利用してもよい。より具体的には、「撮影画角が、第1画角と第2画角との間で切り換わること」に伴う視度の変化を、「『投光光学系3と受光光学系4との共通の光路上にある、少なくとも1つのレンズ(例えば、レンズ13)』を変位すること」によって補正されてもよい。レンズ13を変位することで視度の変化を補正する場合は、レンズ13および駆動機構13aが、視度補正機構として機能する。
なお、本第1実施形態では、「レンズ移動機構17によって、対物レンズ光学系16の各レンズが移動されること」によって、撮影光学系2における撮影画角が切り換わる。これに代えて、例えば、眼科撮影装置1は、「互いに異なる撮影画角を撮影光学系2に設定する、複数の対物レンズ光学系」と、「複数の対物レンズ光学系の一つを、レーザー光の光路上に択一的に配置する」ための画角切換機構と、を備えてもよい。但し、「『被検眼Eの前方に配置される対物レンズ光学系を切り換えること』で、撮影画角を切り換える装置」よりも、本第1実施形態のような、「1つの光学系に含まれるレンズ(本第1実施形態では、対物レンズ光学系16の各レンズ)の位置を移動する装置」のほうが、装置をコンパクトに構成しやすい。
次に、受光光学系4について説明する。受光光学系4は、「投光光学系3からのレーザー光の投光に伴う、眼底Erからの光(即ち、通常撮影時には眼底反射光、蛍光撮影時においは眼底Erで発生した蛍光)」を受光する。本第1実施形態の受光光学系4は、「投光光学系3の光軸(光路)L1上に配置された、穴開きミラー12から対物レンズ光学系16までの各部材」を、投光光学系3と共用している。また、本第1実施形態の受光光学系4は、レンズ22、ピンホール板23、レンズ24、および、受光素子25、を含む。
被検眼Eの眼底にレーザー光が照射される場合、レーザー光に基づいて眼底Erで反射または出射された光は、前述した投光光学系3を逆に辿り、穴開きミラー12で反射され、レンズ22へ導かれる。なお、被検眼Eの瞳位置と穴開きミラー12の開口部とは、光学的に共役な関係にある。レンズ22の下流側では、眼底Erからの光は、ピンホール板23のピンホールにおいて焦点を結び、レンズ24を介して受光素子25によって受光される。なお、本第1実施形態では、受光素子25として、可視域及び赤外域に感度を持つAPD(アバランシェフォトダイオード)が用いられている。
回転板ユニット30は、「受光素子25によって受光される光」の波長を選択する。回転板ユニット30は、回転板31、パルスモータ32、および、センサ33、を含む。
回転板31は、「眼底Erで発生した蛍光を観察するための、複数種類のバリアフィルタ」を有している。回転板31は、「光軸L2に対して、回転板31の板面が直交する」ように置かれている。また、回転軸から離れた回転板31の一部を、受光光学系4の光軸L2が通過する。回転板31は、パルスモータ32によって回転される。ここで、図5に示すように、回転板31には、フィルタ31b、フィルタ32c、及び開口部31dが設けられている。フィルタ31b、フィルタ32c、及び開口部31dは、いずれも、「回転板31が回転された場合に、受光光学系4の撮影領域Lzが通過する軌跡」の上に配置される。このため、回転板31が回転することで、受光光学系4の撮影領域Lzには、フィルタ31b、フィルタ32c、及び開口部31dのいずれかがセットされる。なお、回転板31は、センサ33によって検出される回転角度に基づいて、「セットされるフィルタの種類」等が調節される。
フィルタ31bは、赤外蛍光撮影用のバリアフィルタである。フィルタ31bは、図6Aに示す分光特性を持つ。フィルタ31bは、例えば、赤外蛍光撮影の一つであるICG(indocyanine−green−fundus−angiography)撮影に用いることができる。ICG撮影は、インドシアニングリーンを蛍光眼底造影剤として用いる蛍光撮影である。本第1実施形態の眼科撮影装置1では、第1光(波長790nm付近)をレーザー光出射部11から照射することによって撮影を行う。なお、ICG撮影は、主として、脈絡膜血管の観察に用いられる。
フィルタ31cは、可視蛍光撮影用のバリアフィルタである。フィルタ31cは、図6Bに示す分光特性を持つ。フィルタ31cは、例えば、「第2波長のレーザー光(可視域のレーザー光)が眼底に照射される、FAF(fundus−auto−fluorescence:自発蛍光)撮影」に用いることができる。なお、ここで例示する自発蛍光撮影は、「網膜色素上皮のリポフスチンが、第2光(波長490nm付近)の照射時に、自発蛍光(波長500nm付近〜波長750nm付近)を示す」という原理を利用している。なお、「発光させたい蛍光物質の蛍光特性に合わせて、光源とフィルタとを設けること」で、例示したもの以外の蛍光物質を励起させて眼底を撮影することもできる。
開口部31dは、例えば、「被検眼Eと装置との位置あわせ時、および、通常の眼底観察の際」に、撮影領域Lz上に置かれる。このとき、開口部31dは、眼底Erからのほぼ全ての光を通し、受光素子25に導く。なお、本第1実施形態において、開口部31dの大きさは、受光光学系4の撮影領域Lzの大きさに略一致するように設計されている。
図7は、本第1実施形態における眼科撮影装置1の制御系を示すブロック図である。眼科撮影装置1の主な制御は、制御部90によって行われる。制御部90は、「眼科撮影装置1の各部の制御処理と、測定結果の演算処理とを行う電子回路」を有する処理装置(眼科用画像処理装置)である。
本第1実施形態において、制御部90は、HDD(ハードディスク)95、画像処理IC96、レーザー光出射部11、駆動機構13a,レゾナントスキャナ駆動用モータ15c、ガルバノミラー駆動用モータ15d、レンズ移動機構17、受光素子25、パルスモータ32、駆動機構50、操作部60、および、モニタ(表示媒体,表示装置)70等に接続される。
また、制御部90は、CPU(表示制御部,撮影画角調節機構)91と、ROM92と、RAM(記憶部)93とを備えている。CPU91は、「眼科撮影装置1に関する各種の処理」を実行するための処理装置である。ROM92は、制御プログラムおよび固定データ等が格納された、不揮発性の記憶装置である。RAM93は、書き換え可能な揮発性の記憶装置である。RAM93には、例えば、「眼科撮影装置1による被検眼Eの撮影および測定に用いられる一時データ」が格納される。
HDD95は、書き換え可能な不揮発性の記憶装置である。HDD95には、少なくとも「後述する撮影表示処理を、制御部90に実行させるためのプログラム」が、格納されている。また、HDD95には、眼科撮影装置1によって撮影される眼底画像(眼底撮影画像)が保存される。
画像処理IC96は、受光素子25からの受光信号に基づいて、「『撮影光学系2を用いて撮影される眼底画像』の画像データ」を生成する処理装置である。ここで、「走査部15の駆動に伴って、眼底Erがレーザー光によって二次元的に走査される場合」、受光素子25は、「眼底Erにおける、レーザー光の走査位置」に対応する眼底反射光を、逐次受光する。その結果、受光素子25からの受光信号が、画像処理IC96に逐次出力される。本第1実施形態の画像処理IC96では、入力された受光信号が画像データに変換されて、この画像データが図示しないバッファに蓄積される。このため、画像処理IC96に、1フレーム分(眼底画像1枚分)の受光信号が入力された場合、1フレーム分の画像データが、画像処理IC96のバッファに蓄積される。
操作部60には、「検者に操作される、スイッチ等の入力装置」が配設されている。本第1実施形態では、入力装置として、ジョイスティック60aと、撮影スイッチ60bと、撮影画角切換スイッチ60cと、撮影モード切換スイッチ60d等の各種スイッチと、が用意されている。
ジョイスティック60aは、「検者が眼底Erの撮影範囲を指定する」ために操作される入力装置である。制御部90は、ジョイスティック60aの操作に応じて、駆動機構50を駆動して、眼科撮影装置1を被検眼Eに対して移動する。なお、このように、撮影光学系2の位置調整は、「制御部90が駆動機構50を駆動すること」によって行われてもよい。これに代えて、眼科撮影装置1は、例えば、検者の手動入力を受け付ける駆動機構を備えていてもよい。すなわち、この駆動機構は、「検者が撮影光学系2の位置を手動で移動して、撮影光学系2の位置調整を行う」ための機構である。
撮影スイッチ60bは、眼底画像を撮影(キャプチャ)するために操作されるスイッチである。
撮影画角切換スイッチ60cは、「撮影光学系2の撮影画角(撮影範囲)を切り換える」ために操作されるスイッチである。本第1実施形態では、撮影画角切換スイッチ60cを通じて、少なくとも2種類の範囲(第1画角と第2画角)から、撮影範囲の大きさが、検者によって選択される。制御部90は、対物レンズ光学系16に含まれる各レンズを、撮影画角切換スイッチ60cへの操作に応じて配置する。本第1実施形態では、第1画角が選択される場合、「対物レンズ光学系16の各レンズが、図2Aに示した配置にセットされる」ように、制御部90がレンズ移動機構17を駆動する。一方、第2画角が選択される場合、「対物レンズ光学系16の各レンズが、図2Bに示した配置にセットされる」ように、制御部90がレンズ移動機構17を駆動する。これによって、本第1実施形態では、「撮影画角が第1画角である場合と第2画角である場合とで、旋回点の位置が維持される」ように、対物レンズ光学系16の各レンズ16a〜16cが配置される。
撮影モード切換スイッチ60dは、「制御部90で実行される眼科撮影装置1の撮影モードを、マニュアル撮影モード、FAF撮影モード、および、IGC撮影モードの中で切り換える」ためのスイッチである。詳細は後述するが、マニュアルモードは、赤外光の眼底反射光で、眼底を観察するモードである。FAF撮影モードは、眼底Erで発せられる自発蛍光を観察するモードである。また、IGC撮影モードは、「眼底Erに投与された蛍光造影剤からの蛍光」を観察するモードである。撮影モード切換スイッチ60dを操作した場合、新たに設定される撮影モードに応じて、「レーザー光出射部11から出力される光の波長、および、光軸の通過領域にセットされるバリアフィルタ」が切り替わる。
モニタ70は、「『眼科撮影装置1によって撮影された被検眼Eの画像、および、各種の測定結果』を表示するためのディスプレイ」を有する表示装置である。
次に、以上のような構成を有する眼科撮影装置1の動作を説明する。
まず、検者は、撮影モード切換スイッチ60dを操作して、マニュアル撮影モードを選択する。これにより、制御部90は、パルスモータ32を駆動して、「回転板31の開口部31dが、光軸L2に位置する」ように、回転板31の回転角度を調節する。また、マニュアル撮影モードが選択されることで、制御部90は、撮影光学系2を、「レーザー光出射部11から第1波長のレーザー光(赤外光)が照射される」という点灯状態に設定する。これにより、この後に行われる撮影光学系2の位置あわせを、検者が、「眼底反射光によって撮影された画像」を見ながら行うことができる。眼底反射光によって撮影された画像を用いると、蛍光撮影された画像に比べて撮影状態を把握しやすくなるので、検者によって位置あわせが良好に行われやすい。
次に、検者は、撮影光学系2のアライメントを行い、眼科撮影装置1を用いて撮影画像を撮影する。図示は省略するが、本第1実施形態では、少なくとも「アライメント処理が実行されて、撮影画像の撮影が完了するまでの間」、制御部90によって、走査部15が継続的に駆動されている。つまり、レーザー光によって、眼底Erが、所定の手順で継続的に走査されている。
次に、検者は、「眼底反射光を用いて撮影されるライブ画像(眼底観察画像)」の観察を行い、撮影画像を装置に取得させる。このときの眼科撮影装置1の動作を、図8のフローチャートを参照して説明する。なお、ここでいうライブ画像には、「撮影のタイミングと同時に(つまり、リアルタイムで)表示される眼底画像」だけでなく、「撮影のタイミングから若干のラグ(例えば、数m秒、数秒)を経て表示される眼底画像」も含まれる。
本第1実施形態の眼科撮影装置1では、眼底画像の撮影と表示とが、撮影表示処理によって行われる。撮影表示処理では、初めに、S11およびS12の処理が、CPU91によって実行される。これにより、眼科撮影装置1で撮影される眼底画像が、モニタ70の表示領域Dに表示される。
S11の処理において、CPU91は、画像処理IC96から、1フレーム分の眼底画像の画像データを取得する(S11)。例えば、本第1実施形態では、「画像処理IC96のバッファに蓄積された画像データを、RAM93に転送すること」によって、画像データが取得される。なお、「画像処理IC96のバッファに、1フレーム分の画像データが蓄積される」まで、本処理は待機される。
次に、CPU91は、第1表示制御処理を実行する(S12)。第1表示制御処理(S12)において、CPU96は、「眼科撮影装置1で新たに取得された、1フレーム分の眼底画像」を、第1表示領域D1に表示する(図9参照)。後述するように、本処理は、眼底撮影画像の撮影が完了するまで、繰り返し実行される。その結果、第1表示領域D1には、連続する眼底画像を含むライブ画像(観察画像,第1ライブ画像)が、第1表示制御処理(S12)によって逐次表示される。このため、検者は、「第1表示領域D1の表示内容を確認しながら、ジョイスティック60aを操作すること」によって、所望の撮影画像が得られるように、撮影光学系2の位置を調整することができる。なお、本第1実施形態において、「ジョイスティック60aの操作に応じて行われる、撮影光学系2の移動処理(駆動機構50の駆動制御)」は、制御部90よって、撮影表示処理と並列的に行われてもよい。あるいは、この「撮影光学系2の移動処理」は、「画像処理IC96から画像データを取得する際の待機時間に、制御部90において適宜実行される、図示しない処理」であっても良い。
なお、「モニタ70における第1表示領域D1のピクセル数(いわゆるデバイスピクセルの数)」よりも、「S11の処理によって取得される眼底画像」のピクセル数(いわゆる画像ピクセルの数)が多い場合も考えられる。この場合、第1表示処理(S12)では、例えば、「眼底画像を第1表示領域D1のピクセル数に応じて圧縮(縮小)する処理」が、CPU91によって行われてもよい。
次に、CPU91は、「第1表示領域D1に表示される眼底画像の一部(第2部分画像)を、第1表示領域D1とは異なる領域で表示する」ための処理を行う(S13〜S17)。
まず、CPU91は、「注目範囲Cの設定操作を受け付けたか否か」を判定する(S13)。注目範囲Cとは、「第1表示領域D1に表示される眼底画像の中で(又は、眼底画像によって示される眼底Erの領域の中で)、画像処理が行われる範囲」である。注目範囲Cの設定操作は、例えば、「マウス等のポインティングデバイス等を用いて、注目範囲Cを設定したい眼底画像上の位置を、検者が指定すること」によって行われてもよい。なお、本第1実施形態において、注目範囲Cの設定には、注目範囲Cを新たに設けることのほか、注目範囲Cの設定位置を移動すること、および、注目範囲Cの縦横のサイズを変更することも含む。
本第1実施形態では、「検者によって、注目範囲Cの設定操作が初めて行われるまで」は、S13では、「注目範囲Cの設定操作を受け付けていない」と判定される(S13:No)。この場合、CPU91は、注目範囲Cを設定することなく、S15の処理を実行する。
一方、S13の処理において、注目範囲Cの設定操作を受け付けたと判定された場合(S13:Yes)、CPU91は、設定操作によって検者から指定された範囲に、注目範囲Cを設定する(S14)。例えば、本第1実施形態では、CPU91は、「眼底画像の撮影範囲における、注目範囲Cの占める位置」を示す位置情報を、RAM93に記憶する。次に、CPU91は、S15の処理を実行する。
このように、本第1実施形態では、注目範囲Cについては、検者からの指示があった場合に設けられるものとして説明する。しかし、注目範囲Cの設定は、これに限定されない。例えば、検者からの指示に関わらず、CPU91が、眼底画像の所定の範囲に注目範囲Cを設定してもよい。また、本第1実施形態では、注目範囲Cを設けるか否かだけでなく、注目範囲Cの位置および大きさ等についても、検者からの指示に応じてCPU91が設定するものとして説明する。しかし、注目範囲Cの設定は、これに限定されない。例えば、眼科撮影装置1(あるいはCPU91)は、「眼底画像に対して常に一定の位置(例えば、眼底画像の中心領域)に、注目範囲Cが設定される」ように構成されてもよい。
S15の処理において、CPU91は、「注目範囲Cが設けられているか否か」を判定する(S15)。前述したように、注目範囲Cの設定操作が少なくとも一度行われている場合、既に注目範囲Cが設けられている。この場合、CPU91は、S16の処理を実行する(S15:Yes)。
S16の処理において、CPU91は、第2部分画像の画像データを取得する(S16)。本第1実施形態において、第2部分画像の画像データは、「眼底画像全体を示す画像データから、注目範囲を示すデータをCPU91が抽出すること」によって、生成および取得される。なお、本第1実施形態では、CPU91は、眼底画像全体を示す画像データから、「予めS14の処理で取得された、注目範囲Cの位置情報」に基づいて、第2部分画像の画像データを抽出できる。
次に、CPU91は、第2表示制御処理を実行する(S17)。第2表示制御処理(S17)において、CPU91は、「S16の処理によって画像データが取得された、第2部分画像」を、第2表示領域D2に表示する(図9参照)。第1表示制御処理(S12)と同様に、第2表示制御処理は、眼底撮影画像の撮影が完了するまで、繰り返し実行される。よって、第2表示制御処理(S17)によって、第2表示領域D2には、連続する第2部分画像を含む第2ライブ画像が表示される。
すなわち、CPU91は、第1ライブ画像と第2ライブ画像とを、モニタ70に、並べて表示する。
なお、本第1実施形態において、第2ライブ画像は、第1ライブ画像と同期して表示されるものとして説明する。しかし、表示態様は、これに限られない。表示態様は、例えば、「第1ライブ画像および第2ライブ画像の一方が表示され続け、他方の表示と非表示とが、数秒間隔で切り換わる」ような態様であってもよい。また、第1ライブ画像と第2ライブ画像とが、交互に表示されてもよい。
すなわち、CPU91は、第1ライブ画像と第2ライブ画像との少なくとも一方を、モニタ70に表示するように構成されていてもよい。
また、本第1実施形態の第2表示制御処理(S17)において、CPU91は、「第1ライブ画像上の注目範囲Cよりも拡大された、第2ライブ画像」を表示する。例えば、本第1実施形態では、「眼底画像が表示される第1表示領域D1」と同じサイズの第2表示領域D2に、第2ライブ画像の表示が行われる(図9参照)。これにより、検者は、注目範囲Cの観察を、第2ライブ画像を用いて、いっそう容易に行うことができる。
また、前述したように、「眼科撮影装置1で取得される眼底画像」のピクセル数(画像ピクセルの数)が、第1表示領域D1のピクセル数(デバイスピクセルの数)と比べて多く、眼科撮影装置1で取得される眼底画像の圧縮画像が、第1ライブ画像として表示されている場合が考えられる。このような場合に、第2表示制御処理(S17)では、第2ライブ画像が、第1ライブ画像よりも高い解像度で表示されてもよい。なお、本第1実施形態でいう解像度は、画像における眼底組織の分解能と相関がある。この場合、眼底画像における注目範囲Cが、第2表示領域D2では、第1表示領域D1よりも詳細に表示される。よって、検者は、注目範囲Cの詳細な観察を良好に行うことができる。
次に、CPU91は、判別表示処理を実行する(S18)。S18の処理が実行されることによって、第2ライブ画像が第2表示領域D2に表示される場合に、第1ライブ画像上で、注目範囲Cとその他の領域との判別表示が行われる。判別表示は、「検者による、注目範囲Cとその他の領域との判別」を助ける表示であれば良い。本第1実施形態では、判別表示の一例として、第1表示領域D1上(第1ライブ画像上)で、注目範囲Cが線で囲まれる(図9参照)。判別表示の態様は、他にも、たとえば、「注目範囲Cを、周囲の領域よりも濃く、又は、薄く表示する」ような態様、および、「注目範囲Cに網掛けを付す」ような態様も含むされる。
次に、CPU91は、「撮影画像の撮影操作(本第1実施形態では、撮影スイッチ60bの操作)を受け付けたか否か」を判定する(S19)。撮影操作を受け付けていなければ(S19:No)、CPU91は、S11からS19までの処理を繰り返し実行する。一方、S19の処理によって、検者からの撮影操作を受け付けている場合(S19:Yes)、CPU91は、S20の撮影処理を実行する。撮影処理(S20)によって、CPU91は、眼底撮影画像を取得する。この撮影処理は、例えば、「CPU91が、画像処理IC96から新たに眼底画像を取得して、取得した眼底画像を、眼底撮影画像としてHDD95等に記憶する」という処理であってもよい。なお、画像処理ICから取得される眼底画像は、複数枚であってもよい。あるいは、眼底撮影画像は、「連続して撮影された複数枚の眼底画像」の加算平均画像等であってもよい。本第1実施形態では、撮影処理(S20)の後、撮影表示処理は終了する。
ここで、S15の処理に戻って説明を続ける。注目範囲Cの設定操作が一度も行われていなければ、S15の処理において、CPU91は、「注目範囲Cは設定されていない」と判定する。この場合、CPU91は、S16からS18の処理をスキップして、S19以降の処理を行う。よって、注目範囲Cの設定操作が検者によって行われるまでは、第2ライブ画像は、表示領域Dに表示されない。
なお、以上の説明では、「眼底反射光を用いて撮影された撮影画像」が取得される場合について説明した。これに代えて、「眼底からの蛍光を用いて撮影された撮影画像」を取得することもできる。この場合、例えば、検者は、「眼底反射光を用いて撮影された観察画像(第1ライブ画像および第2ライブ画像)」を見ながら、撮影光学系2の位置あわせが行われた段階で、撮影モード切換スイッチ60dを操作して、撮影モードを、「眼底からの蛍光を用いて撮影されるモード(FAF撮影モード、IGG撮影モード)」に切り換える。その後、検者は、撮影スイッチ60bを操作する。
以上説明したように、本第1実施形態の眼科撮影装置1によれば、逐次実行される第1表示制御処理(S12)によって、連続する複数の眼底画像を含む第1ライブ画像が、モニタ70に表示される。これにより、例えば、「眼底画像の撮影範囲に存在する特徴部位(例えば、乳頭、黄斑、病変部、血管、等)に対する、検者の確認漏れ」が抑制される。また、本第1実施形態の眼科撮影装置1によれば、「眼底画像に対する注目範囲Cの設定操作が、検者によって事前に行われている」と、第2表示制御処理(S17)によって、「眼底画像から注目範囲として抽出された、第2部分画像」が生成される。連続する複数の第2部分画像を含む第2ライブ画像も、モニタ70に表示される。その結果、検者は、「第2ライブ画像として表示される、眼底画像の一部分(本第1実施形態では、注目範囲C)」に存在する特徴部位を、容易に、詳細に観察することができる。従って、眼科撮影装置1では、検者が、眼底画像のライブ画像を用いて、眼底画像の撮影範囲を漏れなく詳細に観察しやすい。
また、例えば、レーザー光の旋回点の位置が、被検眼Eの瞳位置からズレている場合、装置からの光の一部が、虹彩によって遮断され(ケラレ)てしまう場合がある。この場合、眼底画像の外縁部等が、ケラレた光の影響を受けてしまうことがある。このことは、眼底画像の一部を含む第2ライブ画像のみが表示される場合、検者によって確認されない可能性がある。よって、「検者が、第2ライブ画像のみを確認して、眼底画像全体の撮影画像を取得する」と、「外縁部等を観察し難い眼底画像」が得られてしまうおそれがある。これに対し、本第1実施形態の眼科撮影装置1では、眼底画像を含む第1ライブ画像が、第2ライブ画像と共に表示される。このため、「眼底画像の外縁部等が、ケラレた光の影響を受けているか否か」を、検者が容易に確認できる。このため、検者は、第1および第2ライブ画像を確認しながら、「所望の撮影画像が得られるように、撮影光学系2を位置あわせした状態」で、撮影画像の取得を装置に実行させることができる。よって、本第1実施形態の眼科撮影装置1では、良好な眼底の画像の撮影を行うことができる。
また、本第1実施形態の眼科撮影装置1では、「第2部分画像が抽出される、眼底画像の注目範囲C」が、検者からの指示に基づいて設定される(S14)。「眼底画像における、検者が所望する範囲」を、第2ライブ画像として表示できる。その結果、検者による眼底の観察が、一層良好に行われやすい。
また、本第1実施形態の眼科撮影装置1では、第2表示領域D2に第2ライブ画像が表示される場合、第1表示領域D1の第1ライブ画像上で、注目範囲Cとその他の領域との判別表示が行われる(S18)。これにより、眼底画像と第2部分画像との対応関係を、検者が理解しやすい。
なお、第1実施形態では、「注目範囲Cが、眼底画像の表示範囲(又は撮影範囲)に対して、一定の位置に設定される場合」について説明した。例えば、第1実施形態の眼科撮影装置1では、「アライメント操作によって、眼底Erにおける光学系の撮影範囲が変更される」前と後とで、第1表示領域D1上での注目範囲Cの位置は変わらない。しかし、注目範囲Cは、眼底画像の表示範囲に対して一定の位置に設定されなくてもよい。例えば、「眼底画像によって示される、眼底Erの一定の位置」に、注目範囲Cが設定されてもよい。この場合、例えば、「被検眼Eの固視微動等によって、眼底Erにおける撮影範囲が移動される」と、第1表示領域D1上の注目範囲Cは、眼底Er上の一定位置を追跡する。一例として、次のような上記第1実施形態の変形例を示す。この変形例では、CPU91は、「眼底画像の一部から、テンプレート画像を取得すること」によって、注目範囲Cの設定処理(S14)を行ってもよい。テンプレート画像としては、「眼科撮影装置1によって予め取得された眼底画像」から抽出された画像が用いられる。
また、CPU91は、「各タイミングで第1表示領域D1に表示される眼底画像」から、「テンプレート画像と相関の高い画像領域」を特定する。これによって、「第2表示領域D2として抽出される画像領域」の移動が検出される。CPU91は、その検出結果に応じて、「眼底画像から、第2部分画像として抽出される領域」を補正し、補正された領域に第2表示制御処理(S17)を行ってもよい。これにより、「被検眼Eの固視微動等によって、眼底Erにおける撮影範囲が移動された場合」でも、第2表示領域D2に、「テンプレート画像に含まれる一定の部位」が表示される。
次に、図10〜図13を参照して、本開示の第2実施形態について説明する。上述したように、第1実施形態の眼科撮影装置1は、連続的する複数のライブ画像を、モニタ70の第1表示領域D1に表示する。また、眼科撮影装置1は、「第1表示領域D1に表示される眼底画像」の第2部分画像を含む第2ライブ画像を、モニタ70の第2表示領域D2に表示する。
これに対し、第2実施形態の眼科撮影装置100は、「互いに異なる『画像の解像度』を有する、第1眼底画像と第2眼底画像と」を取得して、第1眼底画像および第2眼底画像の合成画像をモニタ70へ表示する。なお、本第2実施形態において、第1眼底画像は、撮影光学系2の撮影画角を第2画角にして(即ち、広角撮影モードで)撮影された眼底画像である。第2眼底画像(第1部分画像)は、撮影光学系2の撮影画角を第1画角にして(狭角撮影モードで)、第1眼底画像の一部に関して撮影された画像である。
前述したように、第1眼底画像と第2眼底画像とは、同一の受光素子(本実施形態では、受光素子25)からの受光信号に基づいて形成される。第2実施形態において、広角の第1眼底画像は、100°以上180°以下(より好ましくは、120°以下)の撮影画角で撮影された画像であってもよい。また、挟角の第2眼底画像は、30°以上75°以下(好ましくは、40°以上、55°以下)の撮影画角で撮影された画像であってもよい。本第2実施形態において、第2眼底画像は、撮影画角が第1眼底画像よりも狭い分だけ、高い解像度を持つ。以下の説明では、第1眼底画像の観察画像と撮影画像とを、それぞれ、観察画像(広)、撮影画像(広)と記し、第2眼底画像の観察画像と撮影画像とを、それぞれ、観察画像(狭)、撮影画像(狭)と記す。
第2実施形態の眼科撮影装置100は、たとえば、第1実施形態の眼科撮影装置1と同一の光学系を有する。また、眼科撮影装置100は、たとえば、「第1実施形態の眼科撮影装置1の制御系と、おおよそ同じ制御系」を有する。但し、眼科撮影装置100では、少なくとも「『眼底画像の撮影時に実行される処理』を規定する制御プログラム」が、第1実施形態の眼科撮影装置1と異なっている。
以下、図10〜図12のフローチャートを参照して、「眼底画像の撮影時における、眼科撮影装置100の動作」を説明する。
はじめに、CPU91は、「撮影光学系2の撮影画角(撮影倍率)が第1画角か、それとも第1画角よりも広角の第2画角か」を判定する(S21)。例えば、本第2実施形態では、CPU91は、この判定を、「撮影画角切換スイッチ60cの操作に応じて予め設定されている撮影画角(撮影倍率,光学倍率)」に基づいて、実施する。
撮影画角が第2画角であると判定される場合(S21:第2画角)、CPU91は、「S22以降の、広角撮影モードでの処理」を実行する。S22の処理によって、CPU91は、「撮影操作を受け付けたか否か」を判定する(S22)。CPU91は、撮影操作を受け付けたと判定した場合(S22:Yes)、画像処理IC96から、1フレーム分の画像データを取得する(S23)。これによって、「広画角(本第2実施形態では第2画角)の眼底画像」の画像データが取得される。この画像データは、以降の処理によって、撮影画像(広)としてモニタ70に表示される。本第2実施形態では、S23の処理によって取得される「撮影画像(広)の画像データ」は、新たに撮影画像(広)の撮影が行われるまでの間、一時的にRAM93に記憶される。なお、CPU91は、S23の処理によって取得される「撮影画像の画像データ」を、不揮発性の記憶装置(例えば、HDD95)にも保存することができる。S23の処理の後、CPU91は、第1表示制御処理を実行する(S25)。
一方、CPU91は、撮影操作を受け付けていないと判定した場合(S21:No)、画像処理IC96から、1フレーム分の画像データを取得する(S24)。この画像データは、以降の処理によって、観察画像(広)としてモニタ70に表示される(S24)。本第2実施形態では、S24の処理によって取得される「観察画像(広)の画像データ」は、新たに観察画像(広)の撮影が行われるまでの間、一時的にRAM93に記憶される。S23の処理の後、CPU91は、第1表示制御処理を実行する(S25)。
広角撮影モードでは、第1表示制御処理(S25)において、モニタ70の表示制御が行われる。第1表示制御処理(S25)において、CPU91は、S23の処理またはS24の処理で取得される画像データを用いて、モニタ70の表示を制御する(S25)。ここで、図12を参照して、広角撮影モードにおける第1表示制御処理(S25)について説明する。第1表示制御処理(S25)では、まず、CPU91は、「撮影画像(広)を表示するか否か」の判定を行う(S31)。本第2実施形態では、撮影画像(広)がS23の処理によって予め取得されていれば、撮影画像(広)を表示する旨の判定が、CPU91によってなされる(S31:Yes)。一方、撮影画像(広)が予め取得されていなければ、撮影画像(広)を表示しない旨の判定が、CPU91によってなされる(S31:No)。S31の処理によって、撮影画像(広)を表示しないと判定された場合(S31:No)、「直前のS24の処理によって取得された、観察画像(広)の画像データ」を用いて、モニタ70の表示処理が行われる。つまり、この場合、観察画像(広)を含むライブ画像の表示が行われる。ここで、CPU91は、本第2実施形態では、「予め狭角撮影モードで撮影画像(狭)が撮影(取得)されているか否か」を判定する(S32)。
撮影画像(狭)が予め取得されていなければ(S32:No)、CPU91は、観察画像(広)をモニタ70の表示領域Dへ表示する(S33)。
一方、撮影画像(狭)が予め取得されていれば(S32:Yes)、CPU91は、観察画像(広)と、撮影画像(狭)との位置合わせを行う(S34)。本第2実施形態において、CPU91は、「第1眼底画像(観察画像(広)または撮影画像(広))と、第2眼底画像(観察画像(狭)または撮影画像(狭))との位置あわせ(マッチング処理)」を、例えば、両画像の相関関係を利用して行うことができる(例えば、パターンマッチング等)。これにより、「固視微動等によって、第1眼底画像と第2眼底画像との撮影範囲の位置関係が一定でない場合」であっても、後述する両画像の画像処理を適正に行うことができる。また、「第2眼底画像が、第1眼底画像の一定の位置に含まれる場合」、「第1眼底画像における、第2眼底画像の撮影範囲(即ち、注目範囲C)」を示す情報に基づいて、CPU91は、画像の位置あわせを行うこともできる。
すなわち、CPU91は、「眼底画像上での第2眼底画像に対応する画像領域」と、第2眼底画像とを、画像処理によってマッチングし、画像間の位置ずれを補正することができる。
本第2実施形態において、第1眼底画像と第2眼底画像とは、撮影画角が互いに異なるものの、同じピクセル数で撮影されている。そこで、本第2実施形態では、第1眼底画像と第2眼底画像との位置あわせを行う場合に、第1眼底画像および第2眼底画像のそれぞれの拡大縮小倍率が、CPU91によって調節される。例えば、本第2実施形態では、「第1眼底画像における注目範囲Cが、第2眼底画像の大きさと一致する」ような第1眼底画像の拡大画像に対して、第2眼底画像の位置あわせが行われる。なお、第1眼底画像および第2眼底画像のそれぞれの拡大縮小倍率は、例えば、第1眼底画像の撮影画角(又は、撮影倍率)と、第2眼底画像の撮影画角(又は、撮影倍率)とから求めることができる。
S34の位置あわせ処理の完了後、CPU91は、合成画像表示処理を実行する(S35)。合成画像表示処理(S35)において、CPU91は、「事前に位置あわせされた第1眼底画像と第2眼底画像とを、画像処理によって合成すること」によって得らた合成画像を、モニタ70へ表示する。本第2実施形態では、CPU91は、「位置あわせに用いた第1眼底画像の拡大画像と第2眼底画像と」の合成画像を、モニタ70に表示する。第1眼底画像と第2眼底画像とを合成する画像処理としては、各種の画像処理の手法を用いることができる。例えば、「第1眼底画像と第2眼底画像との加算によって合成画像を取得する手法」を用いることができる。また、「第1眼底画像の注目範囲Cを、第2眼底画像によって置き換える手法」を用いることができる。
S31の処理に戻って説明する。本第2実施形態では、「撮影画像(広)を表示する」と判定された場合も(S31:Yes)、CPU91は、「撮影画像(狭)が予め取得されているか否か」を判定する(S36)。撮影画像(狭)が予め取得されていなければ(S36:No)、RAM93に格納されている撮影画像(広)が、CPU91によって、モニタ70の表示領域Dへ表示される(S38)。一方、撮影画像(狭)が予め取得されていれば(S31:Yes)、CPU91は、撮影画像(広)と、撮影画像(狭)との位置合わせを行い(S38)、「撮影画像(広)と、撮影画像(狭)との合成画像」を、表示領域Dに表示する(S35)。このように、本第2実施形態では、「RAM93に撮影画像(広)が予め記憶されている場合」、合成画像の第1画像部分には、RAM93内の撮影画像(広)が用いられる。このように、本第2実施形態では、「撮影光学系2を用いて、第1眼底画像の撮影画像が予め取得されている場合」、合成画像における第1眼底画像部分において、撮影画像が継続的に表示される。
なお、CPU91は、撮影画像(広)と撮影画像(狭)との合成画像を、モニタ70に表示するだけでなく、プリンタ等を用いて印刷媒体に印刷することで、印刷媒体上に表示してもよい。
S26の処理では、本処理を終了するか否かが、CPU91によって判定される(S26)。例えば、CPU91は、処理を終了する旨の指示を検者から受け付けた場合に、本処理を終了する(S30:Yes)。一方、終了しないと判定された場合(S30:No)、CPU91は、処理をS21から繰り返す。
S21に戻って説明を続ける。撮影画角が第1画角であると判定される場合(S21:第1画角)、CPU91は、狭角撮影モードでの処理(S27〜S29、S40)を実行する。
まず、CPU91は、S27〜S29の処理を実行し、第2眼底画像(観察画像(狭)または撮影画像(狭))を取得する。はじめに、CPU91は、「撮影操作を受け付けたか否か」を判定する(S27)。撮影操作を受け付けたとCPU91によって判定される場合(S27:Yes)、CPU91は、画像処理IC96から、1フレーム分の画像データを、撮影画像(狭)の画像データとして取得する(S28)。撮影画像(狭)の画像データは、新たに撮影画像(狭)の撮影が行われるまでの間、一時的にRAM93に記憶される。S28の処理の後、CPU91は、第2表示制御処理を実行する(S40)。
一方、撮影操作を受け付けていないとCPU91によって判定される場合(S27:No)、CPU91は、画像処理IC96から、1フレーム分の画像データを、撮影画像(狭)の画像データとして取得する(S29)。これによって、「狭画角(本第2実施形態では第1画角)の眼底画像」の画像データが取得される。観察画像(狭)の画像データは、新たに観察画像(狭)の撮影が行われるまでの間、一時的にRAM93に記憶される。S23の処理の後、CPU91は、第2表示制御処理を実行する(S40)。
狭角撮影モードでは、第2表示制御処理(S40)によって、モニタ70の表示制御が行われる。第2表示制御処理(S40)では、「S28の処理またはS29の処理で取得される、第2眼底画像の画像データ」を用いて、モニタ70の表示が制御される。本第2実施形態の第2制御処理(S40)では、第1表示制御処理(S25)の各処理に準じた処理が行われる。具体的には、図12に示すフローチャートの各ステップにおいて、「『撮影画像(広)と撮影画像(狭)とを互いに読み替える』と共に、『観察画像(広)と観察画像(狭)とを互いに読み替えた処理』」が、第2制御処理(S40)では実行される。第2制御処理(S40)の実行後、図10に戻って、CPU91は、S26の処理を実行する。
第2実施形態の眼科撮影装置100によれば、「『第1眼底画像(眼底画像)および第2眼底画像(第1部分画像)のうちの一方の画像』が、予め取得(撮影)されている場合」に、CPU91は、新たに他方の画像を取得(撮影)すると、「第1眼底画像と第2眼底画像との合成画像」を、モニタ70の表示領域Dに表示する。ここで、合成画像は、「『第2眼底画像と対応する、第1眼底画像の画像領域(本第2実施形態では、注目範囲C)』に、第2眼底画像が、画像処理によって合成されたもの」である。本第2実施形態において、合成画像は、第1眼底画像と同じ撮影画角を持つ。よって、検者は、合成画像を通じて、眼底の広範囲を観察できる。また、第2眼底画像は、第1眼底画像よりも高い画像の解像度を有する。よって、「『合成画像における第2眼底画像部分』の画像の解像度が、第1眼底画像部分の画像の解像度と比べて高い状態」で、合成画像がモニタ70に表示される。これによって、検者は、「合成画像における、第2眼底画像が合成されている領域」を通じて、眼底Erを詳細に観察できる。また、合成画像では、「第2眼底画像と対応する第1眼底画像の画像領域」に、第2眼底画像が合成されている。このため、検者が観察を行いやすい。従って、請求項1の画像処理装置によれば、検者は、モニタ70に表示される合成画像を通じて、眼底Erの状態を良好に把握することができる。
なお、本第2実施形態では、「第1眼底画像部分の『画像の解像度』と比べて、第2眼底画像部分の『画像の解像度』が高い状態」での表示が、「合成画像全体が、デフォルトの表示倍率でモニタ70に表示される場合」に、行われてもよい。また、「合成画像全体が、デフォルトの表示倍率に比べて高倍率で表示される場合」に、上記の表示が行われてもよい。例えば、「表示領域Dのデバイスピクセル数が、少なくとも第1眼底画像部分の画像のピクセル数よりも多い場合」、合成画像全体の全体表示において、第2眼底画像部分を、第1眼底画像部分よりも高い解像度で表示するとができる。
また、「第1眼底画像部分の『画像の解像度』と比べて、第2眼底画像部分の『画像の解像度』が高い状態」での表示は、「合成画像の一部又は全部が、デフォルトの表示倍率に比べて高倍率で、モニタ70に表示される場合」に行われてもよい。この場合、「CPU91は、第1の表示倍率と、第1の表示倍率よりも大きな第2の表示倍率との、少なくとも2種類の表示倍率」で、合成画像を表示する。
また、CPU91は、「表示倍率を、第1の表示倍率から『第1の表示倍率よりも大きな第2の表示倍率』へと変更する場合」に、合成画像の第2眼底画像部分を、第1の表示倍率のときよりも高解像度で表示する。この場合、CPU91は、第1の表示倍率による表示領域と、第2の表示倍率による表示領域とを、同一画面にて並ぶようにで設定してもよい。この場合、例えば、CPU91は、第1の表示倍率の合成画像と、第2の表示倍率による第2眼底画像とを、同一画面上で並べて表示し得る。
また、CPU91は、「一つの表示領域に、複数の表示倍率による合成画像を切り替えて表示する」ように構成されていてもよい。この場合、CPU91は、「『合成画像における、第2眼底画像が合成された領域』が、第2の表示倍率にて表示される場合」、「『合成画像における、第2眼底画像が合成されていない周辺領域(つまり、第1眼底画像の領域)』が、第2の表示倍率で表示される場合」と比べて、高解像度で合成画像(あるいは、「合成画像における、第2眼底画像が合成された領域」)を表示する。
また、本第2実施形態の眼科撮影装置100によれば、「第1表示制御処理(S25)又は第2表示制御処理(S40)において、合成画像が生成される場合」、第1眼底画像と第2眼底画像との位置あわせ(マッチング)が行われる。その結果、眼科撮影装置100では、適正な合成画像が得られる。
また、本第2実施形態の眼科撮影装置100によれば、「『第1眼底画像における注目範囲Cが、第2眼底画像の大きさと一致する』ような第1眼底画像の拡大画像」に対して、第2眼底画像が、画像処理によって合成されている。これにより、「『眼底画像の撮影範囲に含まれる、眼底の各部位』が、第2眼底画像によって隠されてしまうこと」を抑制しながら、眼底の各部位を合成画像上に表示できる。よって、検者は、眼底における特徴部位を、合成画像を通じて、漏れなく観察できる。
また、眼科撮影装置100によれば、CPU91は、「第1眼底画像および第2眼底画像のうち、CPU91あるいはレンズ移動機構17によって設定されている撮影光学系2の撮影画角(光学倍率)に応じた一方の画像」を、ライブ画像として表示する。
また、眼科撮影装置100によれば、「第1眼底画像および第2眼底画像のうち、撮影光学系2の撮影画角に応じた一方の画像」の観察画像が撮影される際、他方の画像の撮影画像が予め取得されている場合、その撮影画像と、一方の画像を含むライブ画像とが、CPU91によって合成されて、モニタ70に表示される。これにより、検者は、合成画像を通じて、第1眼底画像および第2眼底画像を、ほぼリアルタイムで観察することができる。
すなわち、CPU91は、「第1眼底画像および第2眼底画像のうち、『CPU91あるいはレンズ移動機構17によって設定されている、撮影光学系2の撮影画角(光学倍率)』とは異なる撮影画角によって予め取得された他方の画像」と、前記一方の画像のライブ画像とを、合成して表示する。
なお、第2実施形態の眼科撮影装置100では、「合成画像を形成する第1眼底画像および第2眼底画像が、いずれも眼底からの眼底反射光を用いて撮影された画像である場合」について説明した。これに代えて、第1眼底画像および第2眼底画像の少なくとも一方は、眼底からの蛍光を用いて撮影された蛍光画像であってもよい。
なお、上記第2実施形態においては、対物レンズ光学系16の配置を切り換えることによって、画角の異なる2種類の眼底画像(第1眼底画像および第2眼底画像)を撮影する場合について説明した。しかし、画角の異なる2種類の眼底画像を取得する手法は、これに限られない。例えば、「撮影光学系2の走査部15(上記各実施形態では、レゾナントスキャナ15a及びガルバノミラー15b)の振れ角を調節すること」によって、画角の異なる2種類の眼底画像を撮影することができる。このとき、例えば、第2眼底画像を撮影するときにおける走査部材の走査速度を、第1眼底画像を撮影する場合よりも遅くしてもよい。これにより、第2眼底画像の撮影時には、「眼底Erの単位長さあたりの走査」で取得されるピクセルの数が、第1眼底画像の撮影時よりも多くなる。このため、このような装置では、上記第2実施形態と同様の効果が得られる。また、上記第2実施形態においては、撮影画角の切り替えが、「対物レンズ光学系16のレンズ配置の切り換え」ではなく、「装置の撮影画角を広角化する広角レンズアタッチメント」の着脱によって行われてもよい。
また、上記第2実施形態においては、眼科撮影装置1によって、第1眼底画像と第2眼底画像(第1部分画像)との合成画像を生成する場合について説明した。合成画像の生成手法は、必ずしもこれに限られない。例えば、汎用のコンピュータ(例えば、パーソナルコンピュータ)によって、合成画像を生成してもよい。この場合、例えば、コンピュータのハードディスク等に、「『上記実施形態の眼科撮影装置1によって実行される撮影表示処理の、S34およびS35の処理』を、コンピュータのプロセッサに実行させる解析プログラム」を用意(記憶)すればよい。この場合も、上記実施形態の眼科撮影装置1と同様に、第1眼底画像と第2眼底画像(第1部分画像)との合成画像を生成できる。
また、上記各実施形態においては、「眼底Erからの反射光を用いて眼底画像を撮影する場合」と、「眼底Erで発生した蛍光を用いて眼底画像を撮影する場合」とで、共通の受光素子25を用いる場合について説明した。これに代えて、「それぞれの場合に応じて、異なる受光素子25を用いること」もできる。例えば、ハーフミラー等を用いて受光光学系4の光路を分岐し、それぞれの光路の先に受光素子を設け、各受光素子を用いて同時に撮影を行うことができる。「それぞれの受光素子として、異なる受光特性を有する素子を配置すること」で、複数の波長による撮影を同時に行うことができる。
また、上記各実施形態では、制御部90は、「対物レンズ光学系16が持つ各レンズ」の位置制御を行うと説明した。しかし、各レンズの位置の設定手法は、これに限定されない。例えば、「対物レンズ光学系16の各レンズの配置を、互いに連動させる」ように構成されたレンズ移動機構17が、撮影光学系2における撮影画角の変更時に、レーザー光の旋回点を維持してもよい。
また、上記実施形態では、「対物レンズ光学系16が、2つのレンズ(第1凸レンズ16a、第2凸レンズ16b)で構成される場合」について説明した。しかし、対物レンズ光学系16は、3つ以上のレンズで構成されてもよい。「対物レンズ光学系16が、3つのレンズによって構成される例」として、前述の第1凸レンズ16a、及び第2凸レンズ16bに加えて、負のパワーを持つレンズが、第2凸レンズ16bよりも走査部15側に設けられていてもよい。例えば、図14AおよびBに示すように、負のパワーを持つレンズとして、凹レンズ16cが設けられてもよい。
図14AおよびBの例において、凹レンズ16cは、走査部15側に凹面を向けて配置される。また、図14AおよびBの例において、凹レンズ16cには平凹レンズが用いられている。しかし、凹レンズ16cは、これに限られない。凹レンズ16cは、例えば、両凹レンズ、凹メニスカスレンズ、非球面レンズ、複合レンズであってもよい。
走査部側に凹面を向ける凹レンズ16cによって、「凹レンズ16cの中心以外を通過する、走査部15側からのレーザー光」は、凹レンズ16cが無い場合よりも、光軸L3から離間する向きに屈折される。よって、「凹レンズ16cが無い場合よりも、走査部15に近い位置」で、レーザー光の高さを所要の高さに設定することができる。つまり、一定の撮影画角が得られるときに、2つの凸レンズ16aおよび16bのそれぞれを、「凹レンズ16cが無い場合よりも、走査部15側に近い位置」に配置できる。よって、図14AおよびBの例では、凹レンズ16cが無い場合に比して、対物レンズ光学系16の全長が短縮され得る。従って、眼科撮影装置100がコンパクトに構成され易い。
図14AおよびBの例では、撮影光学系2の撮影画角が、第1画角となる場合(図14A参照)と、第2画角となる場合(図14B参照)とで、2つの凸レンズ16aおよび16bは、レンズ移動機構17によって、図2AおよびBに示した例と同様に変位される。このとき、凹レンズ16cは、2つの凸レンズ16aおよび16bと共に変位されてもよい。例えば、「撮影画角が第1画角である場合と第2画角である場合とで、被検眼に対する旋回点の位置とともに、視度が維持される」ように、2つの凸レンズ16aおよび16b、および凹レンズ16cが、レンズ移動機構17によって配置されてもよい。
前述したように、対物レンズ光学系16が、2つの凸レンズ16aおよび16bを含む場合、「『2つの凸レンズ16aおよび16bの設計値に応じた、特定の画角』同士で、撮影画角が切り換わるとき(例えば、図4参照)」以外は、被検眼に対する旋回点の位置と視度とが、撮影画角の切り換えの前後で維持されない。これに対し、図14AおよびBの例では、2つの凸レンズ16aおよび16bの変位によって生じる視度の変化を、凹レンズ16cの変位(移動)によって打ち消すことができる。よって、図2AおよびBの例では、撮影画角が特定の画角同士で切り替わる場合以外でも、良好な眼底画像が撮影されやすい。なお、凹レンズ16cの位置は、「各レンズ16a〜16cの焦点距離、および、所要の撮影画角」等に基づいて、適宜定めることができる。また、凹レンズ16cは、光軸L3上で、固定的に配置されていてもよい。
また、上記実施形態の構成において、視度補正部が、投光光学系3および受光光学系4の共通の光路上(例えば、走査部15からレーザー光出射部11までの間)に設けられてもよい。視度補正部は、「撮影画角に伴う対物レンズ光学系16による視度の変化」を補正する機能、または、「正視眼に対する被検眼Eの視度の誤差」を矯正する機能を有する。具体例として、図15を参照して視度補正部18を説明する。視度補正部18は、「走査部15とレーザー光出射部11との間で、撮影光学系2の光路長を調節すること」によって、視度補正を行う。視度補正部18は、例えば、2枚のミラー18aおよび18bと、図示しない駆動部とを有していてもよい。駆動部は、2枚のミラー18aおよび18bの位置関係を維持したまま、2枚のミラー18aおよび18bを、矢印s方向に移動する。その結果、「投光光学系3および受光光学系4の共通部分」の光路長が変更される。
また、「上記実施形態では、被検眼に対する旋回点の位置が維持されるように、撮影画角を変更する」ために、第1凸レンズ16a及び第2凸レンズ16bが、光軸L3に沿って互いに同じ方向に変位する場合について説明した。しかし、第1凸レンズ16a及び第2凸レンズ16bの変位は、これに限られない。「被検眼に対する旋回点の位置を維持しつつ、撮影画角を切り換える場合」、少なくとも第2凸レンズ16bは、光軸L3に沿って、「撮影画角の拡大または縮小」と対応する方向に変位されてもよい。より詳細には、撮影画角が広がる場合、少なくとも第2凸レンズ16bは、「走査部15から被検眼Eへ向かう方向」へ変位されてもよい。また、撮影画角が狭められる場合、少なくとも第2凸レンズ16bは、「被検眼Eから走査部15へ向かう方向」へ変位されてもよい。この場合、対物レンズ光学系16の設計値、および所要の撮影画角(第1撮影画角と第2撮影画角)の値によっては、第1凸レンズ16aは、第2凸レンズ16bと同方向に変位される場合だけでなく、第2凸レンズ16bとは反対方向へ変位される場合も考えられる。
上記実施形態では、撮影光学系2における撮影画角が、「第1画角と、第1画角よりも広い第2画角との、2段階」に切り換えられる場合について説明した。しかし、撮影光学系2における撮影画角は、2段階よりも多くの段階に切り換えられてもよい。また、撮影画角は、段階的にではなく、連続的に切り換えられてもよい。これらの場合、撮影画角が任意の二値間で変更される場合に、上記実施形態の技術が適用されうる。
また、上記実施形態において、眼科撮影装置1について、「レーザー光によって眼底を2次元的に走査するSLO装置」として説明した。しかし、眼科撮影装置1の構成は、これに限られない。例えば、眼科撮影装置(眼底撮影装置)1は、いわゆるラインスキャンSLOであってもよい。この場合、走査部15の動作に基づいて、ライン状のレーザー光束が、眼底上で一次元的に走査される。また、眼科撮影装置1は、眼底カメラであってもよい。
また、本開示は、被検眼の眼底を撮影する走査型レーザー検眼鏡に関するともいえる。
本実施形態の眼科用画像処理装置を、以下の装置として表現することも可能である。
すなわち、第1の眼科用画像処理装置は、被検眼の眼底に光を投光すると共に投光された光に伴う眼底からの光を受光素子で受光することによって、眼底画像を撮影する撮影光学系を備え、前記表示制御部は、前記受光素子からの受光信号に基づいて眼底画像と、前記眼底画像の一部が抽出された第2部分画像とを生成し、連続する複数の前記眼底画像からなる第1ライブ画像と、連続する複数の第2部分画像からなる第2ライブ画像を、前記表示装置において並べて表示させる。
第2の眼科用画像処理装置は、第1の眼科用画像処理装置において、前記表示制御部は、前記第2ライブ画像を、前記第1ライブ画像において前記眼底画像の一部に対応する領域よりも拡大して表示させる。
第3の眼科用画像処理装置は、第1の眼科用画像処理装置において、前記表示制御部は、前記眼底画像において検者からの指示に基づいて定められた範囲を前記第2部分画像として表示する。
第4の眼科用画像処理装置は、第1の眼科用画像処理装置において、前記表示制御部は、前記第2部分画像として抽出される眼底画像の一部に対応する領域と、他の領域との判別表示を、前記第1ライブ画像において行う。
第5の眼科用画像処理装置は、被検眼の眼底に光を投光すると共に投光された光に伴う眼底からの光を受光素子で受光することによって、眼底画像を撮影する撮影光学系を備え、前記表示制御部は、前記撮影光学系を用いて撮影される眼底画像と共に、その眼底画像に含まれる注目範囲が撮影された第2部分画像を前記表示装置に表示させ、前記眼底画像および前記第2部分画像の少なくとも一方を、ライブ画像として表示する。
第6の眼科用画像処理装置は、眼底画像、および、前記眼底画像の一部に関して撮影された部分画像であって、前記眼底画像よりも高解像度な第1部分画像が記憶される記憶部と、前記第1部分画像に対応する前記眼底画像上の画像領域に対して前記第1部分画像を合成し、前記眼底画像と前記第1部分画像との合成画像を表示媒体に表示させる表示制御部と、を有している。
第7の眼科用画像処理装置は、第1の眼科用画像処理装置において、前記表示制御部は、第1の表示倍率と第1の表示倍率よりも大きな第2の表示倍率にて前記合成画像の一部又は全部を表示可能であり、前記合成画像において前記第1部分画像が合成された第1部分画像領域が前記第2の表示倍率にて表示される場合は、前記合成画像において第1部分画像が合成されていない周辺領域が前記第2の表示倍率で表示される場合と比べて高解像度での表示が行われる。