以下、図を用いて本発明の実施形態について説明する。なお、本実施形態の超音波モータは、デジタルカメラ用のレンズ鏡筒などの駆動用アクチュエータとしてユニット化した直動駆動型モータを例に説明するが、使用用途はこれに限定されない。
まず、図1は、本実施形態の振動型アクチュエータの分解斜視図である。図1に示す振動型アクチュエータは、超音波モータである。ここで、本実施形態において、振動子109に発生する楕円運動により振動子109が移動する方向をX方向と定義する。また、バネ部材107による加圧方向をZ方向と定義する。そして、Z方向において、振動子109が被駆動部101から遠ざかる向きを+Z向き、振動子109が被駆動部101に近づく方向を−Z向きと定義する。さらに、X方向とZ方向に垂直な方向をY方向と定義する。なお、同一部材は同一記号で図示する。
固定台110は、直動駆動型モータのユニットの全体を保持している。被駆動部101は、振動子109が加圧接触する接触面101aを備える。被駆動部101は、2本の固定ビス111で固定台110に固定されている。振動板102は、接触面101aに押圧を伴う加圧接触状態で接触する。圧電素子103は、振動板102に接着剤などにより固着されている。そして、振動板102に圧電素子103が固着された状態で、圧電素子103に電圧を印加することにより、超音波振動を発生させ、振動板102に楕円運動を発生させることができる。本実施形態の超音波モータでは、振動板102と圧電素子103とで振動子109を構成する。
遮断部材115は、圧電素子103の超音波振動を他の部品に伝わらないように遮断し、圧電素子103の超音波振動を減衰させることなく、小基台104への超音波振動の伝播を防ぐ。なお、遮断部材115の材料はフェルト生地が適している。小基台104は、遮断部材115を介して圧電素子103と面接触し、バネ部材107による加圧力を圧電素子103に伝える。
保持部材105は、振動子109の周りの部品を保持する。加圧部材106は、加圧受け部材108の貫通穴部108aに嵌合し、被駆動部101の接触面101aに対して概ね垂直な方向にのみ移動可能に保持される。そして、バネ部材107からの押圧力を、遮断部材115と小基台104を介して振動子109に伝え、振動子109を被駆動部101に加圧接触させる。
バネ部材107は圧縮コイルバネで構成され、一方の端部は加圧受け部材108で固定され、もう一方の端部が加圧部材106に押圧力を伝えることで、振動子109と被駆動部101を加圧接触させる。加圧部材106とバネ部材107が、本実施形態における加圧手段である。加圧受け部材108は、中央に丸穴のあいた円板形状しており、外周側面に形成されたネジ部で保持部材105のネジ部105bにねじ込み固定される。また、中央にあいた丸穴である嵌合穴部108aで、加圧部材106を嵌合保持している。
支持部材114は薄板形状で形成されており、X方向よりもZ方向の方が弱い剛性を有する。振動板102と保持部材105の間に介在し、保持部材105に対して振動板102がZ方向には自由に動けるが、X方向にはガタなく位置を固定できる。支持部材114は、押さえ板113とともに2本の固定ビス112で保持部材105に共締め固定される。また、押さえ板113は、振動子109と所定量の隙間を設けて配置されているため、振動子109が−Z方向に所定量以上移動すると、振動子109は押さえ板113に当接して、それ以上移動できない構成になっている。このように構成することで、押さえ板113は、振動子109が−Z方向に所定量以上移動するのを規制する。
転動ボール116は、保持部材105に形成された溝と天板117に形成された溝との間に介在することで、天板117に対して保持部材105を転動支持する。天板117は、振動子109を保持した保持部材105を、被駆動部101と天板部材117との間で挟み込むことで、保持部材105を転動保持している。また、天板117は4本の固定ビス118で固定台110に固定されている。上述のように、各部材が組込まれ、超音波モータとしてユニット化される。
次に、図2は超音波モータとしてユニット化した各部材を組込んだ状態を示す図である。図2(A)は各部材を組み込んだ状態を+Z方向から見た図であり、図2(B)は−Y方向から見た図である。固定台110には、二本の固定ビス111で被駆動部101が固定されている。さらに、天板117は、四隅を4本の固定ビス118で固定台110に固定されている。天板117の中央には、長方形開口117aが空いており、保持部材105の突出部105cが長方形開口117aから突き出ている。
被駆動部101の上には振動板102が当接している。振動板102は、薄板形状の支持部材114を介して保持部材105に固定されている。そのため、振動板102は、支持部材114の変形により、保持部材105に対してZ方向には自由に動けるが、X方向にはズレなく位置決めを固定できる構成になっている。
そして、振動子109に発生した楕円運動により、振動子109と被駆動部101との間にX方向の相対的な移動が発生した場合、固定台110、被駆動部101、固定ビス111、天板117、固定ビス118が固定部となる。一方、振動子109を含めた、遮断部材115と、小基台104と、固定ネジ112、押さえ板113、支持部材114、加圧部材106、バネ部材107、加圧押さえ108、それらを保持する保持部材105とが可動部となる。すなわち、本実施形態の超音波モータは、駆動源である振動子109が可動する自走式のモータユニットである。なお、実際にレンズ鏡筒等に組み込まれる際は、保持部材105をフォーカス機構やズーム機構に連結して駆動する。
次に、超音波モータの構成部材の詳細について説明する。図3は、振動子と支持部材の接合状態を示す拡大斜視図であり、−Z方向から見た図である。振動板102の中央の接合部102aには、2か所の突起部が形成される。接触部(摺動部)102bは、当該突起部の上端面に形成され、被駆動部101の接触面101aと摩擦接触する面である。また、2か所の接触部102bは同一平面上に形成され、被駆動部101の接触面101aとの当接状態を良好にするため、製造工程時には研磨などにより均一な面に仕上げられる。
一方、図3に示す接合部102aの裏面側(2か所の突起部が形成されている面と反対の面側)には、圧電素子103が接着剤などにより固着されている。なお、接合部102aの裏面と圧電素子103の固着は、固着されればその方法は限定されない。圧電素子103は、複数の圧電素子膜を積層して一体化したものである。そして、この積層された圧電素子103に所望の交流電圧を印加することで励振させ、圧電素子103が固着された振動板102に2つの曲げ振動モードを励起する。このとき、2つの曲げ振動モードの振動位相が所望の位相差となるように設定することで、接触部102bには、矢印で示すような楕円運動が発生する。そして、前述の楕円運動を図1及び図2に示す振動子109で発生させ、被駆動部101の接触面101aに伝達することで、被駆動部101に対して振動子109自身が直動駆動することができる。
次に、振動板102の両端には、支持部材114の両側に形成された一段低い段差部114aと接合するための2か所の接合部102cが形成されている。そして、振動板102は、支持部材114に接合部102cで溶接や接着などにより接合されるが、振動板102と支持部材114が接合されれば、その方法は限定されない。
2か所の接合部102cと接合部102aの間には、2か所の腕部102dが形成され、腕部102dを介して、圧電素子103が固着された接合部102aは支持部材114に固定される。腕部102dは、接合部102aに発生する振動を接合部102cに伝達しにくい構成とするため、接合部102aや接合部102cに対して細い形状となっている。言い換えると、支持部材114は、接合部102aに発生する振動を阻害しないような連結の構成を当該腕部102dによって実現している。振動板102は、薄板形状の支持部材114を介して保持部材105に固定される。これにより、振動板102は、加圧方向であるZ方向には保持部材105に対して自由に移動可能だが、駆動方向であるX方向には保持部材105に対して位置ズレなく固定される。
次に、図4は超音波モータの各部材を組込んだ状態を示す拡大断面図である。図4では、被駆動部101を下側とする図になっている。図4(A)は、図2に示すY軸に垂直な面で加圧部材106の中心を通るような面における断面図である。図4(B)は、図2に示すX軸に垂直な面で加圧部材106の中心を通るような面における断面図である。また、図4(A)、(B)に示す点線201は、振動板102の接触面101aと接触する接触部102bの重心を通過し、当該接触面101aの法線を含む中心線である。
接触部102bは、被駆動部101の接触面101aと当接し、加圧接触状態にある。また、振動板102は、両端の接合部102cが2か所の段差部114aで支持部材114と接合されている。そして、圧電素子103は遮断部材115を介して小基台104に面接触している。
保持部材105には2か所の穴部105aが設けられ、小基台104に形成された2か所の軸部104cが嵌合している。保持部105に設けられた2か所の穴部105aは、X方向には伸びた長穴形状になっており、小基台104が或る程度傾くことができる。小基台104の上側中央には当接部104bが設けられている。この当接部104bは、図4(A)の断面において円弧形状を有し、紙面奥行方向(図4(B)においては左右方向)に延在する円筒の一部からなる形状を有する。そして、この当接部104bには加圧部材106の下端面106aが線接触で接している。
加圧部材106の下端面106aは平面で形成されているため、当接部104bとの線接触部は、図4(A)の紙面奥行方向(図4(B)においては左右方向)に長さを有する線接触となる。従って、図4(A)における断面においては、小基台104が傾き可能な構成となっている。これにより、仮に製造時の寸法誤差や組み立て誤差、また外乱による部材の傾きが生じた場合でも、被駆動部101の当接面101aに振動板102の接触部102bが倣うように小基台104が傾くため、良好な加圧接触状態を保つことができる。
保持部材105にはネジ穴105bが形成されており、加圧受け部材108の外径側面に設けられたネジ部108bがねじ込まれる。ねじ込み量を部品ばらつきに合わせて変えることで、加圧力の調整を行う。加圧受け部材108の中央に形成された嵌合穴108aには、加圧部材106の嵌合軸部106bが嵌合保持されることで、加圧部材106がZ方向にのみ移動可能な構成となっている。
天板117は、固定台110に固定され、バネ部材107のバネ力で振動板102の接触部102bを被駆動部101の接触面101aに加圧接触させたときの反力を受ける役割を担っている。その際、天板117に形成された溝部117aと保持部材105に形成された溝部105dに転動ボール116を挟むことで、保持部材105と天板117とが転動支持されるように構成している。これにより、Z方向の加圧接触の反力を受けながら、X方向に移動する際の摩擦抵抗を極力小さくしている。
また、天板117の溝部117aと保持部材105の溝部105dに転動ボールが挟まれることで、Y方向の位置が決まるように構成されている。本実施形態の超音波モータでは、4つの転動ボール116でバネ部材107のバネ力を受けることで、保持部材105が天板117に対して傾くことなく転動支持している。圧電素子103と小基台104の間には、遮断部材115が挟み込まれている。遮断部材115は、振動を阻害することなく、振動の伝播を遮断する機能を有する材料を用いることで、圧電素子103の超音波振動を阻害することなく、小基台104への振動の伝播を抑える。また、遮断部材115に適した材質として、フェルト生地などが挙げられる。
被駆動部101の接触面101aに接触部102bを加圧接触させるための加圧力を伝えるために、振動子109はZ方向には自由に動ける必要がある。また、フォーカス機構やズーム機構に連結した保持部材105を精度よく駆動するために、振動子109は保持部材105にガタなく保持されている必要がある。そこで、振動子109は、薄板形状で形成された支持部材114を介して保持部材105に固定されている。これにより、Z方向には自由に動け、X方向にはガタなく駆動可能な構成となっている。
図5は、本実施形態の超音波モータの振動子を示す図である。また、図5は振動子109を+Z方向から見た図である。振動板102と圧電素子103が、振動子109を構成し、振動板102と圧電素子103はY方向よりもX方向の方が長い形状をしている。ここで、X方向を長手方向、Y方向と短手方向と定義する。次に、図5を用いて、圧電素子103のフレキブル基板接着面に形成された電極について説明する。第1の電極領域103aと第2の電極領域103bの間の+Y端には、GND電極領域103cが配置されている。また、振動板102は、振動板102と圧電素子103の固着面方向において、圧電素子103に対して、長手方向にも短手方向にもはみ出している。
圧電素子103は脆性材料で割れやすいため、圧電素子103が振動板102からはみ出していると、はみ出した部分が割れやすいという問題がある。そこで、圧電素子103と振動板102との貼りずれ誤差量よりも大きく圧電素子103よりも振動板102がはみ出すように構成する。これにより、圧電素子103は、延性の高い金属製の振動板102に必ず貼りついているため、圧電素子103の割れを軽減することができる。
また圧電素子103に対する振動板102のはみ出し量について、短手方向のはみだし量124よりも長手方向のはみ出し量123の方が、はみ出し量が大きくなるように構成している。長手方向はみ出し部102eは、圧電素子103に対して振動板102が長手方向(X方向)にはみ出した部分である。また、長手方向はみ出し部102eは、振動板102の長手端の両側に位置する。
図6(A)及び(B)は、2つの曲げ振動モードの振動の節と腹、そして自由端の位置を示す図である。図6(A)は、X方向の2次の曲げ振動モードの節と腹の位置を示している。振動板102と圧電素子103は固着されて一体となり振動子109を構成している。圧電素子103に高周波の交流電圧を印加することで、圧電素子103は伸縮するのに対して、振動板102は伸縮しないため、圧電素子103と振動板102の伸縮差により振動子109にX方向の2次の曲げ振動モードを励起する。図6(A)に示す121a、121b、121cは、2次の曲げ振動モードの節位置である。図6(A)に示す122a、122bは、2次の曲げ振動モードの腹位置である。
また振動板102の節位置121a、節位置121b、節位置121cでは、2次の曲げ振動モードによるZ方向の振動は非常に小さい。上述の振動板102の接触部102bは、節位置121aと節位置121bに設けられているため、2次の曲げ振動モードによってZ方向には振動しないが、X方向に振動する。このような位置に接触部102bを設けることで、X方向の2次の曲げ振動モードにより、接触部102bにX方向の振動を起こすように構成している。なお、2次の曲げ振動は、駆動方向に振動する送り振動である。
図6(B)はY方向の1次の曲げ振動モードの節と腹の位置を示す図である。図6(B)に示す121d、121eは、1次の曲げ振動モードの節位置である。図6(B)に示す122cは、1次の曲げ振動モードの腹位置である。節位置121d、節位置121eでは、1次の曲げ振動モードによるZ方向の振動は非常に小さい。一方、腹位置122cでは、1次の曲げ振動モードによるZ方向に大きく振動する。前述の接触部102bは、腹位置122cに設けられているため、1次の曲げ振動モードによってX方向には振動しないが、Z方向には振動する。このような位置に接触部102bを設けることで、Y方向の1次の曲げ振動モードにより、接触部102bにZ方向の振動を起こすように構成している。なお、1次の曲げ振動は、振動子の接触部が押圧方向に振動する突き上げ振動である。
本実施形態の超音波モータの振動子109は、上述の直交する二つの曲げ振動モードを組み合わせて振動板102の接触部102bに楕円振動を発生させている。
次に、図7(A)及び(B)を用いて、2つの曲げ振動モードの歪の大きさを説明する。図7(A)は、2次の曲げ振動モードにおけるX方向の各位置におけるX方向の歪を示すグラフである。図7(A)に示すグラフの横軸は、X方向の位置であり、縦軸はX方向の歪である。X方向の位置が2次の曲げ振動モードの腹位置122aで、X方向の歪は最大値Str1となり、X方向の位置が2次の曲げ振動モードの腹位置122bで、X方向の歪は最小値−Str1となる。腹位置122aと腹位置122bの中間地点121bは節位置であるため、歪はゼロとなる。また、長手方向はみ出し部102eも自由端であるため、歪はゼロとなる。
図7(B)は、1次の曲げ振動モードにおけるY方向の各位置におけるY方向の歪を示すグラフである。図7(B)において、横軸はY方向の位置であり、縦軸はY方向の歪を示す。Y方向の位置が1次の曲げ振動モードの腹位置122cで、Y方向の歪は最大値Str2となる。図7(B)において、長手方向はみ出し部102eは全域に渡っているため、1次の曲げ振動モードによる歪が発生する部位を含んでいる。
ここで図6を用いて、2次の曲げ振動には影響を与えず、1次に曲げ振動の増加を抑制することについて説明する。まず、図6(A)において、長手方向はみ出し部102eには圧電素子103が接合されていないため、圧電素子103との伸縮差による曲げ力は発生しない。しかし、長手方向はみ出し部102eは、2次の曲げ振動モードの自由端に位置するため、図7(A)で説明したように2次の曲げ振動モードによる歪は発生しない。そのため、長手方向はみ出し部102eは圧電素子103と接合されていないが、長手方向はみ出し部102eにより2次の曲げ振動モードの振幅は抑制されない。
図6(B)において、長手方向はみ出し部102eには圧電素子103が接合されていないため、圧電素子103との伸縮差による曲げ力は発生しない。また、長手方向はみ出し部102eは、1次の曲げ振動モードの全域に渡っているため、図7(B)で説明したように1次の曲げ振動モードによる歪が発生する部位を含んでいる。そのため、長手方向はみ出し部102eが圧電素子103と接合されてなく、長手方向はみ出し部102eにより1次の曲げ振動モードの振幅は抑制される。このように、長手方向はみ出し部102eは、2次の曲げ振動モードの振幅には影響を与えず、1次の曲げ振動モードのみ振動振幅を抑制することができる。
次に、図11を用いて、従来の超音波モータの振動子おける、圧電素子103に印加する交流電圧の周波数と、振動板102の接触部102bに発生する楕円振動のX方向の振幅とZ方向の振幅の関係を説明する。図11(A)は、従来の超音波モータの振動子における、圧電素子103に印加する交流電圧の周波数に応じて、振動板102の接触部102bに発生する楕円振動のX方向の振幅とZ方向の振幅が変化していく様子を示したグラフである。図11(B)は、従来の超音波モータの各周波数において発生する楕円振動軌跡と必要最低限のZ方向の振幅での楕円振動軌跡を示した図である。
図11(A)において、横軸は圧電素子103に印加する交流電圧の周波数fであり、縦軸は振動振幅である。H(f)は振動板102の接触部102bに発生する楕円振動のX方向の振幅、V2(f)は振動板102の接触部102bに発生する楕円振動のZ方向の振幅、V0(f)はX方向の振幅H(f)に対して必要最低限のZ方向の振幅である。圧電素子103に印加する交流電圧の周波数f高周波数f1から低周波数f3にスイープするにつれて、X方向の振幅H(f)もZ方向の振幅V2(f)も大きくなる。
特に、Z方向の振幅V2(f)は、X方向の振幅H(f)よりも大きな振幅となる。これは、振動板102の接触部102bに発生するZ方向の振幅は振動子109の1次の曲げ振動モードによって発生するのに対し、X方向の振動は振動子109の2次の曲げ振動モードによって発生している。そのため、次数の小さい1次の曲げ振動モードの方が変形しやすく大振幅となりやすいためである。
一方、Z方向の振動は、振動板102の接触部102bの接触状態と非接触状態を切り替えるための振動であるため、必要以上に大きな振幅で振動しても速度増加につながらず、無駄に電力を消費するだけとなる。そのため、X方向の振幅H(f)に対して必要最低限のZ方向の振幅V0(f)は、X方向の振幅H(f)に比べ小さい。
図11(B)は、従来の超音波モータの高周波数f1、中間周波数f2、低周波数f3で発生する楕円振動軌跡(Generated Elliptic Oscillation)と必要最低限のZ方向の振幅での楕円振動軌跡を示した図である。必要最低限のZ方向の振幅での楕円振動軌跡(Minimal Elliptic Oscillation)は、周波数fが高周波数f1から低周波数f3にスイープしてもそれほど縦長の楕円にはならない。一方、発生する楕円振動軌跡は、周波数fが高周波数f1から低周波数f3にスイープすると非常に縦長の楕円になり、必要以上にZ方向の振幅が大きくなる。
以上のように、従来の超音波モータでは、Z方向の振幅はX方向の振幅に対して小さくて構わないが、Z方向の振幅V2(f)は必要以上に大きく、無駄な電力を消費して超音波モータの駆動効率が低下している。
次に、図8(A)は、本実施形態の超音波モータの振動子おける、圧電素子103に印加する交流電圧の周波数に応じて、振動板102の接触部102bに発生する楕円振動のX方向の振幅とZ方向の振幅が変化を示したグラフである。図8(B)は、本実施形態の超音波モータの各周波数において発生する楕円振動軌跡と必要最低限のZ方向の振幅での楕円振動軌跡を示した図である。
図8(A)において、横軸は圧電素子103に印加する交流電圧の周波数fであり、縦軸は振動振幅である。H(f)は振動板102の接触部102bに発生する楕円振動のX方向の振幅、V(f)は振動板102の接触部102bに発生する楕円振動のZ方向の振幅、V0(f)は、X方向の振幅H(f)に対して必要最低限のZ方向の振幅である。本実施形態の超音波モータでは、図6で説明したように長手方向はみ出し部102eを設けることで、2次の曲げ振動モードの振幅には影響を与えず、1次の曲げ振動モードのみ振幅を抑制する構成としている。そのため、Z方向の振幅V(f)はX方向の振幅H(f)よりも小さく抑えることが可能となる。これにより、Z方向の振幅V(f)は必要最低限のZ方向の振幅V0(f)に近付けることができ、駆動効率の低下を軽減することができる。
図8(B)は本実施形態の超音波モータにおいて、高周波数f1、中間周波数f2、低周波数f3における発生する楕円振動軌跡と必要最低限のZ方向の振幅での楕円振動軌跡を示した図である。周波数fが高周波数f1から低周波数f3にスイープしても、発生する楕円振動軌跡のY方向の振幅V(f)は、必要最低限のZ方向の振幅での楕円振動軌跡のZ方向の振幅V0(f)と略同じ形状となる。したがって、必要以上にZ方向に振幅して無駄な電力を消費することがない。
上述ように、本実施形態の超音波モータでは、長手方向はみ出し部102eを設けることで、2次の曲げ振動モードの振幅には影響を与えず、1次の曲げ振動モードのみ振動振幅を抑制することができる。これにより、必要以上にZ方向に振幅して電力を消費し、超音波モータの駆動効率が低下することを軽減することができる。
次に、図9は本実施形態の超音波モータのフレキシブル基板140を+Z方向から見た図である。121bは、2次の曲げ振動モードの節位置である。122cは1次の曲げ振動モードの腹位置である。第1の銅箔140aは、圧電素子103の第1の電極領域103aと導通する。第2の銅箔140bは、圧電素子103の第2の電極領域103bと導通する。GND銅箔140cは、圧電素子103のGND電極領域103cと導通する。また、GND銅箔140cの部分だけカバーレイ領域140eが切り欠かれているような形状になっている。
フレキシブル基板140は、銅箔の方がベース材よりも剛性が高い。本実施形態の超音波モータのフレキシブル基板140の銅箔140a、銅箔140b、銅箔140cは長手方向(X方向)に3分割されており、短手方向(Y方向)には分割されていない。これにより、フレキブル基板140は長手方向(X方向)には剛性が弱く曲がりやすく、短手方向(Y方向)には剛性が高く曲がりにくい構成としている。
次に、図10は本実施形態の超音波モータの振動子109にフレキシブル基板140が貼りついた状態を+Z方向から見た図である。振動子109にフレキシブル基板140はX方向には中心揃えで配置され、Y方向には圧電素子103のGND電極103c側がフレキシブル基板140の引き出し方向となるように配置される。第1の銅箔140aは圧電素子103の第1の電極領域103aと、第2の銅箔140bは圧電素子103の第2の電極領域103bと、第3の銅箔140cは圧電素子103のGND電極領域103cと導通するように貼り合わせる。
本実施形態の超音波モータのフレキシブル基板140の銅箔140a、銅箔140b、銅箔140cは、長手方向(X方向)には3分割されており、短手方向(Y方向)には分割されていない。そのため、振動子109の長手方向の2次曲げ振動に対しては剛性が弱く曲がりやすく、短手方向の1次曲げ振動に対しては剛性が強く曲がりにくい構成となっている。これにより、2次の曲げ振動モードの振幅には影響を与えず、1次の曲げ振動モードのみ振動振幅を抑制することができる。上述のような構成とすることにより、必要以上にY方向に振幅して無駄な電力を消費し、超音波モータの駆動効率が低下することを軽減することができる。
上述のように、圧電素子103に対して振動板102が全周はみ出しており、短手方向(Y方向)よりも長手方向(X方向)のはみ出し量が大きくなるように構成することにより、駆動効率の低下を軽減した超音波モータを実現することが可能である。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。