JP6587090B2 - 転削工具 - Google Patents
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Description
刃先交換式エンドミルは、円柱状をなし、軸線回りに回転させられる工具本体と、工具本体の外周に形成された複数のインサート取付座に着脱可能に装着され、該工具本体の外周から径方向外側へ向けて突出する切れ刃を有する切削インサートと、を備えている。また、工具本体の外周には、軸線方向に沿う先端から基端側へ向かうに従い漸次軸線回りのうち工具回転方向とは反対側へ向けて延びる切屑排出溝が、周方向に互いに間隔をあけて複数条形成されている。切屑排出溝の工具回転方向を向く壁面には、該切屑排出溝に沿って複数のインサート取付座が配列しており、これらのインサート取付座にそれぞれ切削インサートが装着される。
そこで、特許文献1では、切屑排出溝に配列する複数の切削インサートの切れ刃のレイアウトライン(切屑排出溝に沿って列をなす各切削インサートの切れ刃の所定の点を繋いだ想像線)を、一定の傾斜とせず、不均一な傾斜としている。
また特許文献2では、各切屑排出溝のレイアウトラインの傾斜パターンを、刃列パターンA、Bの2種類設けている。
上述のような構成により、切削加工時に生じる自励振動を抑えて、びびり振動を抑制するようにしている。
具体的に、特許文献1では、周方向に互いに間隔をあけて配置される複数の切削インサートの切れ刃同士が、周方向に均等ピッチ(等分割)で配置されており、このため加工中に生じる振動の再生振動の位相差が前記切れ刃同士で等しくなり、自励振動が生じやすい。また、特許文献2では、レイアウトラインの傾斜パターンが2種類のみであり、切屑排出溝が3条以上設けられる場合においては、同じ傾斜パターンのレイアウトラインが複数存在することとなって、振動抑制効果が得られにくくなる場合がある。
すなわち、本発明の転削工具は、円柱状をなし、軸線回りに回転させられる工具本体と、前記工具本体の外周に形成され、軸線方向の先端から基端側へ向かうに従い漸次軸線回りのうち工具回転方向とは反対側へ向けて延びる切屑排出溝と、前記工具本体の外周から径方向外側へ向けて突出する切れ刃を有し、前記切屑排出溝の前記工具回転方向を向く壁面に、該切屑排出溝に沿って配列する複数の切削インサートと、を備え、前記切屑排出溝は、前記工具本体の外周において周方向に互いに間隔をあけて少なくとも4条以上設けられ、前記軸線に垂直な横断面視で、周方向に隣り合う一対の前記切屑排出溝に配置された前記切削インサートの各切れ刃と、前記軸線と、を繋ぐ一対の仮想直線間に形成される中心角を角度θとして、少なくとも、前記切屑排出溝に沿って配列する複数の前記切削インサートのうち軸線方向の最も先端側に位置する1段目の切削インサートが表れる前記横断面視、及び、前記1段目の切削インサートの軸線方向の基端側に隣り合う2段目の切削インサートが表れる前記横断面視において、軸線回りにそれぞれ形成される複数の前記角度θの中に、最も大きい角度θmaxが1つと、最も小さい角度θminが1つと、前記角度θmax及び前記角度θmin以外の角度θが2つ以上、それぞれ含まれ、前記1段目の前記角度θmaxと、前記2段目の前記角度θmaxとが、互いに異なることを特徴とする。
また本発明の転削工具は、円柱状をなし、軸線回りに回転させられる工具本体と、前記工具本体の外周に形成され、軸線方向の先端から基端側へ向かうに従い漸次軸線回りのうち工具回転方向とは反対側へ向けて延びる切屑排出溝と、前記工具本体の外周から径方向外側へ向けて突出する切れ刃を有し、前記切屑排出溝の前記工具回転方向を向く壁面に、該切屑排出溝に沿って配列する複数の切削インサートと、を備え、前記切屑排出溝は、前記工具本体の外周において周方向に互いに間隔をあけて少なくとも4条以上設けられ、前記軸線に垂直な横断面視で、周方向に隣り合う一対の前記切屑排出溝に配置された前記切削インサートの各切れ刃と、前記軸線と、を繋ぐ一対の仮想直線間に形成される中心角を角度θとして、少なくとも、前記切屑排出溝に沿って配列する複数の前記切削インサートのうち軸線方向の最も先端側に位置する1段目の切削インサートが表れる前記横断面視、及び、前記1段目の切削インサートの軸線方向の基端側に隣り合う2段目の切削インサートが表れる前記横断面視において、軸線回りにそれぞれ形成される複数の前記角度θの中に、最も大きい角度θmaxが1つと、最も小さい角度θminが1つと、前記角度θmax及び前記角度θmin以外の角度θが2つ以上、それぞれ含まれ、前記1段目の前記角度θminと、前記2段目の前記角度θminとが、互いに異なることを特徴とする。
また本発明の転削工具は、円柱状をなし、軸線回りに回転させられる工具本体と、前記工具本体の外周に形成され、軸線方向の先端から基端側へ向かうに従い漸次軸線回りのうち工具回転方向とは反対側へ向けて延びる切屑排出溝と、前記工具本体の外周から径方向外側へ向けて突出する切れ刃を有し、前記切屑排出溝の前記工具回転方向を向く壁面に、該切屑排出溝に沿って配列する複数の切削インサートと、を備え、前記切屑排出溝は、前記工具本体の外周において周方向に互いに間隔をあけて少なくとも4条以上設けられ、前記軸線に垂直な横断面視で、周方向に隣り合う一対の前記切屑排出溝に配置された前記切削インサートの各切れ刃と、前記軸線と、を繋ぐ一対の仮想直線間に形成される中心角を角度θとして、少なくとも、前記切屑排出溝に沿って配列する複数の前記切削インサートのうち軸線方向の最も先端側に位置する1段目の切削インサートが表れる前記横断面視、及び、前記1段目の切削インサートの軸線方向の基端側に隣り合う2段目の切削インサートが表れる前記横断面視において、軸線回りにそれぞれ形成される複数の前記角度θの中に、最も大きい角度θmaxが1つと、最も小さい角度θminが1つと、前記角度θmax及び前記角度θmin以外の角度θが2つ以上、それぞれ含まれ、前記1段目の前記角度θmax及び前記角度θmin以外の前記角度θと、前記2段目の前記角度θmax及び前記角度θmin以外の前記角度θとが、互いに異なることを特徴とする。
つまり、各切れ刃の再生振動の位相を互いに異なるように設定することができ、これにより、再生振動ベクトルを平均化したときにゼロに近づけることが可能になる。従って、切削加工時の自励振動を顕著に抑制することができる。
一方、本発明では、同じ横断面視に表れる角度θの数が4つ以上となり、たとえ数が多くなっても、これらの角度θを少なくとも3種類以上(θmax、θmin、及びそれ以外のθ)の、互いに異なる値に設定するという特別な構成を用いたことにより、顕著な振動抑制効果が得られる。
またこれにより、高精度な切削加工を安定して維持することができ、被削材の加工面を安定的に高品位なものとすることができる。また、振動抑制効果が十分に得られることから、切削の加工速度を高めることが可能になり、加工効率の向上が期待できる。
このように、各切れ刃で生じる再生振動の位相差が互いに異なるもの(つまり位相差がバラバラ)となるため、再生振動ベクトルを平均化したときにゼロにより近づけることができる。従って、切削加工時の自励振動が格別顕著に抑制される。
このように、軸線方向の複数の段(切削インサートの段)の中で、すべての角度θが互いに異なっていると、ロバスト性を効果的に付与することができる(ロバストネスをより最適化できる)。従って、さらなる自励振動防止の効果が期待できる。
また、本発明の転削工具において、前記1段目の切削インサートが表れる前記横断面視において、軸線回りに形成される複数の前記角度θ(角度θ1)のうち、最も小さい角度θmin(角度θ1min)と、前記2段目の切削インサートが表れる前記横断面視において、軸線回りに形成される複数の前記角度θ(角度θ2)のうち、最も小さい角度θmin(角度θ2min)とが、互いに同じ一対の前記切屑排出溝同士の間に配置されることが好ましい。
なお、本明細書でいう「レイアウトライン」とは、切屑排出溝に沿って列をなす各切削インサートの切れ刃の所定の点(例えば工具本体の外周から突出する切れ刃のうち軸線方向の先端)同士を繋いだ想像線(仮想の弦巻線)を指す。
また、「リード」とは、軸線回りに沿う単位角度あたりの(又は周方向の単位長さ(周長)あたりの)、軸線方向へ向けた変位量を指しており、具体的には、工具本体の外周を平面状の展開図(横軸が周方向、縦軸が軸線方向)として表したときの、レイアウトラインの「傾き」に相当するものである。
また、切屑排出溝内において1、2段目の切削インサート同士の周方向の間隔が極端に大きくなると、1段目の切削インサートと2段目の切削インサートとの間に大きな段差ができて、切屑排出性に影響するおそれがある。
このような不具合を、本発明の上記構成によれば顕著に防止することができる。
詳しくは、例えば上記構成とは異なり、角度θmaxの周方向の両隣に、2番目に大きい角度θと3番目に大きい角度θが配置されたりすると、これとは周方向の反対側に位置する領域においては、周方向に隣り合う切屑排出溝同士が密集配置されることとなり、工具全体として回転バランスがとりにくくなる場合がある。また、角度θminの周方向の両隣に、2番目に小さい角度θと3番目に小さい角度θが配置されたりすると、これとは周方向の反対側に位置する領域においては、周方向に隣り合う切屑排出溝同士の間隔が大きくなり過ぎて、やはり工具全体として回転バランスがとりにくくなる場合がある。
このような不具合を、本発明の上記構成によれば顕著に防止することができる。
また、本発明の転削工具において、前記横断面視において軸線回りに形成される複数の前記角度θのうち、最も小さい角度θminの周方向の両側に隣接して、最も大きい角度θmaxと、2番目に大きい角度θが配置されることとしてもよい。
また、本発明の転削工具において、前記横断面視における軸線回りに、最も大きい角度θmax、最も小さい角度θmin、2番目に大きい角度θ、及び2番目に小さい角度θが、この順に並んで配置されることとしてもよい。
これにより、転削工具の回転バランスをとりやすくなる。具体的には、工具の重心を、回転中心である軸線上に一致させたり、軸線に接近配置することが可能になる。
これにより、工具の回転バランスを良好に維持しつつ、1段目の切削インサートと2段目の切削インサートの干渉を格別顕著に抑制することが可能になる。
なお、所定の切屑排出溝に沿って配列する複数の切削インサートのレイアウトラインは、1段目の切削インサートを含むすべての切削インサート同士において一定のリードで形成されていてもよい。
本実施形態の刃先交換式エンドミル1は、不図示の工作機械の主軸に着脱可能に装着され、軸線O回りに回転させられつつ、軸線Oに交差する向きに送りをあたえられることにより、金属材料等の被削材に溝加工や肩加工などの切削加工(転削加工)を施すものである。
本明細書においては、工具本体2の軸線O方向(図2における上下方向)のうち、工作機械の主軸に装着されるシャンク部2aから、被削材に切り込む刃部2bへ向かう向き(図2における下側)を先端側といい、刃部2bからシャンク部2aへ向かう向き(図2における上側)を基端側という。
また、軸線Oに直交する方向を径方向といい、径方向のうち、軸線Oに接近する向きを径方向の内側といい、軸線Oから離間する向きを径方向の外側という。
また、軸線O回りに周回する方向を周方向といい、周方向のうち、切削時に主軸により工具本体2が回転させられる向きを工具回転方向Tといい、これとは反対の回転方向を、工具回転方向Tとは反対側(反工具回転方向)という。
工具本体2は、鋼材等からなり、軸線Oを中心とした概略円柱状をなしている。工具本体2は、工作機械の主軸に取り付けられる基端側部分がシャンク部2aとされ、切削インサート5が配設される先端側部分が刃部2bとされている。図示の例では、シャンク部2aのうち刃部2bに隣接する先端部に、工具本体2において最も大径となるフランジ部2cが形成されている。また、シャンク部2aは、フランジ部2cから基端側へ向けて離間するに従い漸次縮径している。
切屑排出溝3は、工具本体2の先端から基端側に向かうに従い漸次周方向に向かって捩れて延びている。切屑排出溝3は、工具本体2の外周において螺旋状に延びており、周方向に互いに間隔をあけて複数条形成されている。工具本体2の外周に設けられる切屑排出溝3の数は、少なくとも4条以上であり、好ましくは6条以下である。ただし、7条以上設けられていてもよい。
工具本体2の外周に形成される切屑排出溝3の数は、奇数であってもよいし、偶数であってもよい。なお、より好ましくは、切屑排出溝3の数は偶数である。
切屑排出溝3において工具回転方向Tを向く壁面には、切削インサート5の形状に対応する凹状をなすインサート取付座4が複数形成されている。切屑排出溝3内において、複数のインサート取付座4は、該切屑排出溝3の延在方向に沿って配列している。これらのインサート取付座4には、クランプネジによって切削インサート5がそれぞれ着脱可能に取り付けられる。
切削インサート5は、超硬合金等の硬質材料により形成されており、多角形板状をなしている。本実施形態で示される例では、切削インサート5が四角形板状をなしており、また片面タイプとされている。ただしこれに限定されるものではなく、切削インサート5は、三角形又は五角形以上の多角形板状であってもよく、また両面タイプ(表裏反転対称形状)であってもよい。
なお、本明細書でいう「インサート軸線に交差する一対の多角形面」とは、インサート軸線が直接的にこれら多角形面に交差している構成に限らず、例えば本実施形態のように、インサート軸線が、一対の多角形面に開口する貫通孔(クランプネジが挿通される孔)内に位置しつつも、該インサート軸線がこれら多角形面の中心(仮想中心)を貫いている構成を含んでいる。
また、外周面は、一対の多角形面の周縁同士を、インサート軸線方向に沿うように繋いでいる。
本実施形態では、切削インサート5が四角形板状をなしており、一方の多角形面の周縁に、辺部及びコーナ部の組が4つ形成されているのに対応して、該周縁に沿って4つの切れ刃6が形成されている。
なお、切屑排出溝3内に配列する複数の切削インサート5のうち、工具本体2の最も先端側に位置する1段目のインサート取付座4に装着された切削インサート5については、前記所定の切れ刃6を工具本体2の外周から径方向外側へ向けて突出しつつ、前記所定の切れ刃6とは異なる他の切れ刃6を、工具本体2の先端面から先端側へ向けて突出して配置される。
なお、本実施形態の例では、切削インサート5の一方の多角形面が概ね1つの平面からなり、この平面内に外周刃(切れ刃6)が位置していることから、上記ねじれ角がアキシャルレーキ角(軸方向すくい角)に相当する。
本実施形態では、各切削インサート5の外周刃のラジアルレーキ角が、0°となっている。ただしこれに限定されるものではなく、切削インサート5の外周刃のラジアルレーキ角は、正(ポジティブ)角であってもよいし、0°以外の負(ネガティブ)角であってもよい。
つまり、1〜4段目の切削インサート5の不等ピッチが、5〜8段目の切削インサート5及び9〜12段目の切削インサート5において、それぞれ繰り返されている。
また、「リード」とは、軸線O回りに沿う単位角度あたりの(又は周方向の単位長さ(周長)あたりの)、軸線O方向へ向けた変位量を指しており、具体的には図5に示されるように、工具本体2の外周を平面状の展開図(横軸が周方向、縦軸が軸線O方向)として表したときの、レイアウトラインの「傾き」に相当するものである。
なお、本実施形態では、複数の切屑排出溝3のうち、上記所定の切屑排出溝3(Flute5)が、1つのみ設けられているが、これに限定されるものではなく、前記所定の切屑排出溝3は、複数設けられていてもよい。
本明細書では、図3(a)(b)及び図4(a)(b)に示される軸線Oに垂直な横断面視において、周方向に隣り合う一対の切屑排出溝3に配置された切削インサート5の各切れ刃6と、軸線Oと、を繋ぐ一対の仮想直線間に形成される中心角を、角度θとする。
より詳しくは、図3(a)に示される1段目の切削インサート5が表れる横断面視、及び、図3(b)に示される2段目の切削インサート5が表れる横断面視において、軸線O回りにそれぞれ形成される複数の角度θ(角度θ11〜15及び角度θ21〜25)が、互いにすべて異なっている。
より詳しくは、切屑排出溝3に沿って配列する複数の切削インサート5のうち、3段以上(具体的には1〜4段目)の切削インサート5(の外周刃6)が表れる各横断面視(図3(a)(b)及び図4(a)(b))において、軸線O回りにそれぞれ形成される複数の角度θ(角度θ11〜15、角度θ21〜25、角度θ31〜35及び角度θ41〜45)が、互いにすべて異なっている。
そして、5〜8段目の角度θ51〜55、角度θ61〜65、角度θ71〜75及び角度θ81〜85は、1〜4段目の角度θ11〜15、角度θ21〜25、角度θ31〜35及び角度θ41〜45に、この順に対応しているとともに、対応する一組の角度θ同士が、互いに同一値とされている。
そして、9〜12段目の角度θ91〜95、角度θ101〜105、角度θ111〜115及び角度θ121〜125は、1〜4段目の角度θ11〜15、角度θ21〜25、角度θ31〜35及び角度θ41〜45に、この順に対応しているとともに、対応する一組の角度θ同士が、互いに同一値とされている。
従って、以下の説明では、1〜4段目の切削インサート5の配置について詳しく述べ、5〜8段目の切削インサート5の配置、及び9〜12段目の切削インサート5の配置については、1〜4段目のものと同様であるので、その説明を省略する。
図3(a)に示される1段目の切削インサート5が表れる横断面視において、軸線O回りに形成される複数の角度θ1(角度θ11〜θ15)のうち、Flute5の切削インサート5とFlute1の切削インサート5の間に形成される角度θ11が、最も大きい角度θ1maxとなっている。
また、この角度θ11(角度θ1max)から、角度θ13、角度θ15、角度θ14、角度θ12の順に、角度が小さくされている。
従って、角度θ11〜θ15のうち、Flute1の切削インサート5とFlute2の切削インサート5の間に形成される角度θ12が、最も小さい角度θ1minとなっている。
また、この角度θ21(角度θ2max)から、角度θ23、角度θ25、角度θ24、角度θ22の順に、角度が小さくされている。
従って、角度θ21〜θ25のうち、Flute1の切削インサート5とFlute2の切削インサート5の間に形成される角度θ22が、最も小さい角度θ2minとなっている。
また、この角度θ31(角度θ3max)から、角度θ33、角度θ35、角度θ34、角度θ32の順に、角度が小さくされている。
従って、角度θ31〜θ35のうち、Flute1の切削インサート5とFlute2の切削インサート5の間に形成される角度θ32が、最も小さい角度θ3minとなっている。
また、この角度θ41(角度θ4max)から、角度θ43、角度θ45、角度θ44、角度θ42の順に、角度が小さくされている。
従って、角度θ41〜θ45のうち、Flute1の切削インサート5とFlute2の切削インサート5の間に形成される角度θ42が、最も小さい角度θ4minとなっている。
また、本実施形態では、切屑排出溝3の数が5条とされているが、本発明の切屑排出溝3は少なくとも4条以上であればよく、よって4条の場合には、切削インサート5が表れる横断面視において、軸線O回りに、最も大きい角度θmax、最も小さい角度θmin、2番目に大きい角度θ、及び2番目に小さい角度θが、この順に並んで配置される。
具体的には、横断面視において軸線O回りに形成される複数の角度θのうち、中央値よりも大きい角度θと、中央値よりも小さい角度θとが隣接配置されて組をなし、この組の平均値が、他の角度θの組の平均値と近似した値となることが好ましい。
すなわち、図6に示されるグラフのように、工具本体2の外周に設けられる複数の切屑排出溝3の、各切屑排出溝3に沿って配列する複数の切削インサート5のレイアウトラインが、すべて一定のリードとされていなくてもよい。
以上説明した本実施形態の刃先交換式エンドミル1では、少なくとも、軸線O方向の最も先端側に位置する1段目の切削インサート5(の切れ刃6)が表れる横断面視において軸線O回りに形成されるすべての角度θ(角度θ1)、及び、1段目の切削インサート5の軸線O方向の基端側に隣り合う2段目の切削インサート5(の切れ刃6)が表れる横断面視において軸線O回りに形成されるすべての角度θ(角度θ2)の中にそれぞれ、最も大きい角度θmax(角度θ1max、角度θ2max)が1つと、最も小さい角度θmin(角度θ1min、角度θ2min)が1つと、角度θmax及び角度θmin以外の角度θが2つ以上含まれている。
つまり、各切れ刃6の再生振動の位相を互いに異なるように設定することができ、これにより、再生振動ベクトルを平均化したときにゼロに近づけることが可能になる。従って、切削加工時の自励振動を顕著に抑制することができる。
一方、本実施形態では、同じ横断面視に表れる角度θの数が4つ以上となり、たとえ数が多くなっても、これらの角度θを少なくとも3種類以上(θmax、θmin、及びそれ以外のθ)の、互いに異なる値に設定するという特別な構成を用いたことにより、顕著な振動抑制効果が得られるようになっている。
またこれにより、高精度な切削加工を安定して維持することができ、被削材の加工面を安定的に高品位なものとすることができる。また、振動抑制効果が十分に得られることから、切削の加工速度を高めることが可能になり、加工効率の向上が期待できる。
すなわちこの場合、工具本体2の軸線O方向の同一位置(同じ段)において、周方向に互いに間隔をあけて設けられた複数の切削インサート5同士が、周方向に不等ピッチ(不等分割)で配置されるとともに、互いにすべて値が異なる種々の角度θで配列する。
このように、各切れ刃6で生じる再生振動の位相差が互いに異なるもの(つまり位相差がバラバラ)となるため、再生振動ベクトルを平均化したときにゼロにより近づけることができる。従って、切削加工時の自励振動が格別顕著に抑制される。
このように、軸線O方向の複数の段(切削インサート5の段)の中で、すべての角度θが互いに異なっていると、ロバスト性を効果的に付与することができる(ロバストネスをより最適化できる)。従って、さらなる自励振動防止の効果が期待できる。
従って、振動抑制効果がより格別顕著なものとなる。
また、所定の切屑排出溝3(Flute5)の基準レイアウトライン上に、該切屑排出溝3内で隣り合う切削インサート5同士の個々のレイアウトラインが、少なくとも2つ以上一致していることによっても、上記同様の作用効果が得られる。
これにより、各切屑排出溝3内において1、2段目の切削インサート5同士の周方向の間隔を所定範囲内に収めることが可能になり、これらの切削インサート5同士が周方向に極端に接近したり離間したりして配置される事態を回避できる。
また、切屑排出溝3内において1、2段目の切削インサート5同士の周方向の間隔が極端に大きくなると、1段目の切削インサート5と2段目の切削インサート5との間に大きな段差ができて、切屑排出性に影響するおそれがある。
このような不具合を、本実施形態の上記構成によれば顕著に防止することができる。
なお、この作用効果についても、1、2段目のみで奏功されるわけではなく、上述同様に、1〜4段目においても奏功されるものであり、さらに5〜8段目及び9〜12段目においても奏功される。
詳しくは、例えば上記構成とは異なり、角度θmaxの周方向の両隣に、2番目に大きい角度θと3番目に大きい角度θが配置されたりすると、これとは周方向の反対側に位置する領域においては、周方向に隣り合う切屑排出溝3同士が密集配置されることとなり、工具全体として回転バランスがとりにくくなる場合がある。また、角度θminの周方向の両隣に、2番目に小さい角度θと3番目に小さい角度θが配置されたりすると、これとは周方向の反対側に位置する領域においては、周方向に隣り合う切屑排出溝3同士の間隔が大きくなり過ぎて、やはり工具全体として回転バランスがとりにくくなる場合がある。
このような不具合を、本実施形態の上記構成によれば顕著に防止することができる。
これにより、刃先交換式エンドミル1の回転バランスをとりやすくなる。具体的には、工具の重心を、回転中心である軸線O上に一致させたり、軸線Oに接近配置することが可能になる。
これにより、工具の回転バランスを良好に維持しつつ、1段目の切削インサート5と2段目の切削インサート5の干渉を格別顕著に抑制することが可能になる。
なお、この作用効果についても、1、2段目のみで奏功されるわけではなく、上述同様に、1〜4段目においても奏功されるものであり、さらに5〜8段目及び9〜12段目においても奏功される。
すなわちこの場合、軸線O回りに形成される角度θの数も偶数となり、周方向に隣接配置される大きい角度θと小さい角度θの組(ペア)を、もれなく作ることができる。従って、大きい角度θと小さい角度θの組の平均値を、もれなく互いに近似させることが可能になり、回転バランスをとりやすくなる。
なお、この場合、切屑排出溝3の数は、4条又は6条が好ましい。6条以下の場合に、回転バランスをとりやすくなるという効果がより顕著に得られやすい。ただし、8条以上の偶数であってもよい。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
すなわち、本発明の特別な技術的特徴は、少なくとも、1段目の複数の角度θの中に、最も大きい角度θmaxが1つと、最も小さい角度θminが1つと、角度θmax及び角度θmin以外の角度θが2つ以上含まれ、かつ、2段目の複数の角度θの中に、最も大きい角度θmaxが1つと、最も小さい角度θminが1つと、角度θmax及び角度θmin以外の角度θが2つ以上含まれる点にある。
従って、例えば、1段目の複数の角度θと、2段目の複数の角度θとが、互いに対応する角度θ同士(角度θmax同士、角度θmin同士、2番目に大きい角度θ同士、2番目に小さい角度θ同士、及び、それ以外の角度θ同士のうち、少なくとも1組以上)において、同一値に設定されていてもよい。また、1、2段目を含む3段以上の場合についても同様である。
2 工具本体
3 切屑排出溝
5 切削インサート
6 切れ刃
O 軸線
T 工具回転方向
θ 角度
θmax 最も大きい角度
θmin 最も小さい角度
Claims (13)
- 円柱状をなし、軸線回りに回転させられる工具本体と、
前記工具本体の外周に形成され、軸線方向の先端から基端側へ向かうに従い漸次軸線回りのうち工具回転方向とは反対側へ向けて延びる切屑排出溝と、
前記工具本体の外周から径方向外側へ向けて突出する切れ刃を有し、前記切屑排出溝の前記工具回転方向を向く壁面に、該切屑排出溝に沿って配列する複数の切削インサートと、を備え、
前記切屑排出溝は、前記工具本体の外周において周方向に互いに間隔をあけて少なくとも4条以上設けられ、
前記軸線に垂直な横断面視で、周方向に隣り合う一対の前記切屑排出溝に配置された前記切削インサートの各切れ刃と、前記軸線と、を繋ぐ一対の仮想直線間に形成される中心角を角度θとして、
少なくとも、前記切屑排出溝に沿って配列する複数の前記切削インサートのうち軸線方向の最も先端側に位置する1段目の切削インサートが表れる前記横断面視、及び、前記1段目の切削インサートの軸線方向の基端側に隣り合う2段目の切削インサートが表れる前記横断面視において、軸線回りにそれぞれ形成される複数の前記角度θの中に、最も大きい角度θmaxが1つと、最も小さい角度θminが1つと、前記角度θmax及び前記角度θmin以外の角度θが2つ以上、それぞれ含まれ、
前記1段目の前記角度θmaxと、前記2段目の前記角度θmaxとが、互いに異なることを特徴とする転削工具。 - 円柱状をなし、軸線回りに回転させられる工具本体と、
前記工具本体の外周に形成され、軸線方向の先端から基端側へ向かうに従い漸次軸線回りのうち工具回転方向とは反対側へ向けて延びる切屑排出溝と、
前記工具本体の外周から径方向外側へ向けて突出する切れ刃を有し、前記切屑排出溝の前記工具回転方向を向く壁面に、該切屑排出溝に沿って配列する複数の切削インサートと、を備え、
前記切屑排出溝は、前記工具本体の外周において周方向に互いに間隔をあけて少なくとも4条以上設けられ、
前記軸線に垂直な横断面視で、周方向に隣り合う一対の前記切屑排出溝に配置された前記切削インサートの各切れ刃と、前記軸線と、を繋ぐ一対の仮想直線間に形成される中心角を角度θとして、
少なくとも、前記切屑排出溝に沿って配列する複数の前記切削インサートのうち軸線方向の最も先端側に位置する1段目の切削インサートが表れる前記横断面視、及び、前記1段目の切削インサートの軸線方向の基端側に隣り合う2段目の切削インサートが表れる前記横断面視において、軸線回りにそれぞれ形成される複数の前記角度θの中に、最も大きい角度θmaxが1つと、最も小さい角度θminが1つと、前記角度θmax及び前記角度θmin以外の角度θが2つ以上、それぞれ含まれ、
前記1段目の前記角度θminと、前記2段目の前記角度θminとが、互いに異なることを特徴とする転削工具。 - 円柱状をなし、軸線回りに回転させられる工具本体と、
前記工具本体の外周に形成され、軸線方向の先端から基端側へ向かうに従い漸次軸線回りのうち工具回転方向とは反対側へ向けて延びる切屑排出溝と、
前記工具本体の外周から径方向外側へ向けて突出する切れ刃を有し、前記切屑排出溝の前記工具回転方向を向く壁面に、該切屑排出溝に沿って配列する複数の切削インサートと、を備え、
前記切屑排出溝は、前記工具本体の外周において周方向に互いに間隔をあけて少なくとも4条以上設けられ、
前記軸線に垂直な横断面視で、周方向に隣り合う一対の前記切屑排出溝に配置された前記切削インサートの各切れ刃と、前記軸線と、を繋ぐ一対の仮想直線間に形成される中心角を角度θとして、
少なくとも、前記切屑排出溝に沿って配列する複数の前記切削インサートのうち軸線方向の最も先端側に位置する1段目の切削インサートが表れる前記横断面視、及び、前記1段目の切削インサートの軸線方向の基端側に隣り合う2段目の切削インサートが表れる前記横断面視において、軸線回りにそれぞれ形成される複数の前記角度θの中に、最も大きい角度θmaxが1つと、最も小さい角度θminが1つと、前記角度θmax及び前記角度θmin以外の角度θが2つ以上、それぞれ含まれ、
前記1段目の前記角度θmax及び前記角度θmin以外の前記角度θと、前記2段目の前記角度θmax及び前記角度θmin以外の前記角度θとが、互いに異なることを特徴とする転削工具。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の転削工具であって、
前記横断面視において、軸線回りに形成される複数の前記角度θが、互いにすべて異なっていることを特徴とする転削工具。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載の転削工具であって、
前記1段目の前記切削インサートが表れる前記横断面視における各角度θと、前記2段目の前記切削インサートが表れる前記横断面視における各角度θとを合わせたすべての前記角度θが、互いに異なることを特徴とする転削工具。 - 請求項1〜5のいずれか一項に記載の転削工具であって、
前記横断面視において、前記角度θmaxが1つと、前記角度θminが1つと、前記角度θmax及び前記角度θmin以外の角度θが2つ以上含まれる前記切削インサートの段が、軸線方向に3段以上設けられることを特徴とする転削工具。 - 請求項1〜6のいずれか一項に記載の転削工具であって、
前記1段目の切削インサートが表れる前記横断面視において、軸線回りに形成される複数の前記角度θ(角度θ1)のうち、最も大きい角度θmax(角度θ1max)と、
前記2段目の切削インサートが表れる前記横断面視において、軸線回りに形成される複数の前記角度θ(角度θ2)のうち、最も大きい角度θmax(角度θ2max)とが、互いに同じ一対の前記切屑排出溝同士の間に配置されることを特徴とする転削工具。 - 請求項1〜7のいずれか一項に記載の転削工具であって、
前記1段目の切削インサートが表れる前記横断面視において、軸線回りに形成される複数の前記角度θ(角度θ1)のうち、最も小さい角度θmin(角度θ1min)と、
前記2段目の切削インサートが表れる前記横断面視において、軸線回りに形成される複数の前記角度θ(角度θ2)のうち、最も小さい角度θmin(角度θ2min)とが、互いに同じ一対の前記切屑排出溝同士の間に配置されることを特徴とする転削工具。 - 請求項1〜8のいずれか一項に記載の転削工具であって、
前記横断面視において軸線回りに形成される複数の前記角度θのうち、最も大きい角度θmaxと、最も小さい角度θminとが、周方向に隣接配置されることを特徴とする転削工具。 - 請求項1〜9のいずれか一項に記載の転削工具であって、
前記横断面視において軸線回りに形成される複数の前記角度θのうち、最も大きい角度θmaxの周方向の両側に隣接して、最も小さい角度θminと、2番目に小さい角度θが配置されることを特徴とする転削工具。 - 請求項1〜10のいずれか一項に記載の転削工具であって、
前記横断面視において軸線回りに形成される複数の前記角度θのうち、最も小さい角度θminの周方向の両側に隣接して、最も大きい角度θmaxと、2番目に大きい角度θが配置されることを特徴とする転削工具。 - 請求項1〜11のいずれか一項に記載の転削工具であって、
前記横断面視における軸線回りに、最も大きい角度θmax、最も小さい角度θmin、2番目に大きい角度θ、及び2番目に小さい角度θが、この順に並んで配置されることを特徴とする転削工具。 - 請求項1〜12のいずれか一項に記載の転削工具であって、
複数の前記切屑排出溝のうち、所定の前記切屑排出溝に沿って配列する複数の前記切削インサートのレイアウトラインが、少なくとも2段目以降に配置される切削インサート同士において一定のリードとされていることを特徴とする転削工具。
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