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JP6583817B2 - 子宮平滑筋における腫瘍の診断マーカー - Google Patents

子宮平滑筋における腫瘍の診断マーカー Download PDF

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Description

本発明は、子宮平滑筋における腫瘍を診断するためのデータを収集する方法や子宮平滑筋における腫瘍の診断用キットに関する。
子宮肉腫は子宮平滑筋から発生する悪性腫瘍であり、比較的早期の症例でも肺や肝臓に転移を起こす極めて悪性度が高い難治性の腫瘍である。子宮平滑筋に由来する腫瘍には、良性である子宮平滑筋腫(子宮筋腫)と、悪性である子宮平滑筋肉腫(子宮肉腫)がある。子宮肉腫は、子宮筋腫と比較しその発症頻度は1%以下であるが、5年生存率が約37%であり、極めて予後不良な腫瘍である。子宮肉腫に対して、既存の化学療法は殆ど延命効果が望めず、有効な治療法は現在、外科的手術以外に確立されていない。
一方、子宮筋腫は良性腫瘍であり、性成熟期女性の30%以上に認められる最も発症頻度の高い腫瘍である。近年、晩婚化や妊娠高齢化といった女性のライフスタイルの変化により、子宮筋腫治療の方法として、妊娠可能な状態で子宮を温存する子宮筋腫摘出手術(子宮核出術)が選択される機会が増えている。
子宮肉腫は子宮筋腫に比較し発症頻度は低いが、両者は発生場所や形状が類似しているため、患者の子宮温存を決定する際には腫瘍の良性若しくは悪性の診断が非常に重要となる。しかしながら、現行の診断は病理標本における分裂細胞数、細胞異型、及び壊死の有無の3要因を元に総合的に判断するという形態学的基準に依っている。
形態学的基準は施設或いは診断した個人により判断が異なる場合があるため、客観性のある信頼性の高い診断法が望まれている。しかし、子宮平滑筋腫と子宮平滑筋肉腫を区別する有用なバイオマーカーは現状存在しない。
現在、最も信頼性の高い子宮筋腫バイオマーカーはMED12遺伝子の突然変異であり、約70%の子宮筋腫に遺伝子変異が検出されるという報告がある(非特許文献1:Science. 2011 Oct 14;334(6053):252-5.)。また、子宮肉腫が発症することにより発現が低下することが見出されているLMP2タンパクの免疫染色による診断が報告されている(非特許文献2:Sci Rep. 2011;1:180.)。しかしこれらの判定方法はいずれも、実際の診断に用いるには客観性及び信頼性に著しく欠ける。
一方、近年、エピジェネティクス(クロマチンへの後天的な修飾により、遺伝子配列の変化を伴わずに遺伝子発現が制御されることに起因する遺伝学又は分子生物学の研究分野)への関心が高まり、がん等の疾患との関連についての研究が進められている。中でも、ゲノムDNA上の遺伝子のメチル化が注目されている。高等真核生物のゲノムDNA配列中に存在する5’−CG−3’DNA(以下、CpG)部位では、グアニン(G)の5’側に位置するシトシン(C)がメチル化修飾される現象が知られており、このCpGのメチル化修飾は、遺伝子発現に影響を及ぼすと考えられている。特にCpG部位に富む領域(CpGアイランド)が遺伝子のプロモーター領域内に存在する場合には、遺伝子発現に対して重要な影響を及ぼす。通常、ゲノム上の多くの遺伝子はこれらのメチル化修飾から保護されているが、何らかの原因により、遺伝子のプロモーター領域に存在するCpGアイランドがメチル化された場合、遺伝子の転写が抑制されることになる。このため、CpGアイランドのメチル化異常によって、例えば、ヒト生体内におけるがん抑制遺伝子の転写が不活性化された場合、細胞増殖の制御が効かなくなり、がんなどの細胞増殖性疾患が進行してしまうことになる。実際、いくつかのがんにおいて、特定の遺伝子におけるメチル化頻度が上昇していることが報告されており、最近では、特定の遺伝子のCpGアイランドのメチル化頻度を、特定のがんの診断に利用する試みがいくつか行われている。例えば、BASP1等の遺伝子のCpGアイランドのメチル化の程度を検出することによって、肝臓がんを診断する方法が知られている(特許文献1:特開2008−245635号公報)。また、子宮がん等の婦人科がんにおいては、hMLH−1、CDKN2A/p16の各遺伝子におけるメチル化頻度が上昇しているとの報告がなされている(非特許文献3:Eur J Gynaecol Oncol. 2009; 30:267-270.)。更に、DCC、GHSR、AJAP1、ZNF560、FERD3L、FLJ23514、BXDC1、HKR1、DRD4、PENK、FAM12B、HIST1H4F、NEF3、SKIP、CX36、EOMES、及び、SORCS3からなる遺伝子群から選ばれる1又は2種以上の遺伝子のCpG部位におけるメチル化の頻度を、子宮体がんの判定に用いる方法が報告されている(特許文献2:特開2011−160711号公報)。しかし、がんにおける遺伝子のメチル化頻度の上昇の程度は遺伝子等によって様々であり、実用的な婦人科がんの診断に耐え得る程度のメチル化頻度の上昇が生じる遺伝子はこれまで知られていない。また、本発明者らはこれまで、子宮筋腫と子宮平滑筋(正常筋層)のゲノムワイドなDNAメチル化解析(DNAメチローム)を行い、DNAメチル化がmRNA発現と比較し、より明確に正常筋層と子宮筋腫を区別できることを見出している(非特許文献4:PLoS One, 8(6): e66632, 2013)が、これは正常筋層と子宮筋腫とを区別するものであり、子宮平滑筋腫と子宮平滑筋肉腫とを区別するものではない。
特開2008−245635号公報 特開2011−160711号公報
Science. 2011 Oct 14;334(6053):252-5. Sci Rep. 2011;1:180. Eur J Gynaecol Oncol. 2009; 30:267-270. PLoS One, 8(6): e66632, 2013
本発明の課題は、子宮平滑筋に生じた腫瘍が良性腫瘍(子宮平滑筋腫)か、悪性腫瘍(子宮平滑筋肉腫)のいずれかであるかを精度よく診断できる診断マーカーを提供することにある。
発明者らはこれまで、子宮筋腫と子宮平滑筋(正常筋層)のゲノムワイドなDNAメチル化解析(DNAメチローム)を行い、DNAメチル化がmRNA発現と比較し、より明確に正常筋層と子宮筋腫を区別できることを見いだしている。これらDNAメチル化が起こった遺伝子からまず、メチル化解析に基づき正常筋層と子宮筋腫とが判別可能かを検討したが、1遺伝子のメチル化レベル(度)を検出しただけでは判別することは難しいことが明らかとなった。そこで、判別精度を保ちつつメチル化解析の労力を最小限にできる遺伝子の組み合わせを検討したところ、ALX1、CBLN1、CORIN、FOXP1、GATA2、IGLON5、NPTX2、NTRK2、PRL、及びSTEAP4の10遺伝子(以下、これらを総称して「本件バイオマーカー遺伝子」ということがある)をコードする領域又は前記各遺伝子の転写制御領域をコードする領域(以下、「本件バイオマーカー遺伝子領域」ということがある)におけるCpG配列のメチル化頻度を測定し、多変量解析を行い、CpGメチル化に関する本件バイオマーカー遺伝子パネルを作製することにより、正常筋層と子宮筋腫とが明瞭に判別できるのみならず、腫瘍が子宮平滑筋腫か子宮平滑筋肉腫のいずれかであるかを判定できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]以下の工程(A)〜(E)を備えたことを特徴とする子宮平滑筋における腫瘍を診断するためのデータを収集する方法。
(A)採取された子宮平滑筋腫、子宮平滑筋肉腫、及び正常子宮平滑筋層の組織からゲノムDNAを抽出する工程;
(B)工程(A)で抽出した各組織のゲノムDNA中の、ALX1、CBLN1、CORIN、FOXP1、GATA2、IGLON5、NPTX2、NTRK2、PRL、及びSTEAP4遺伝子をコードする領域又は前記各遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列のメチル化頻度を測定する工程;
(C)被検体から採取された腫瘍組織からゲノムDNAを抽出する工程;
(D)工程(C)で抽出したゲノムDNA中の、ALX1、CBLN1、CORIN、FOXP1、GATA2、IGLON5、NPTX2、NTRK2、PRL、及びSTEAP4遺伝子をコードする領域又は前記各遺伝子の転写制御領域をコードする領域におけるCpG配列のメチル化頻度を測定する工程;
(E)工程(B)で測定したCpG配列のメチル化頻度、及び工程(D)で測定したCpG配列のメチル化頻度に基づき多変量解析を行い、前記被検体における子宮平滑筋腫及び子宮平滑筋肉腫を診断するためのデータを収集する工程;
[2]多変量解析が階層的クラスタリング解析であることを特徴とする上記[1]記載の方法。
[3]工程(B)及び(D)において、
ALX1遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号1に示されるヌクレオチド配列の144−145番目のヌクレオチド配列であり、
CBLN1遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号2に示されるヌクレオチド配列の146−147番目のヌクレオチド配列であり、
CORIN遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号3に示されるヌクレオチド配列の181−182番目のヌクレオチド配列であり、
FOXP1遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号4に示されるヌクレオチド配列の67−68番目のヌクレオチド配列であり、
GATA2遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号5に示されるヌクレオチド配列の171−172番目のヌクレオチド配列であり、
IGLON5遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号6に示されるヌクレオチド配列の377−378番目のヌクレオチド配列であり、
NPTX2遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号7に示されるヌクレオチド配列の159−160番目のヌクレオチド配列であり、
NTRK2遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号8に示されるヌクレオチド配列の65−66番目のヌクレオチド配列であり、
PRL遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号9に示されるヌクレオチド配列の259−260番目のヌクレオチド配列であり、
STEAP4遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号10に示されるヌクレオチド配列の102−103番目のヌクレオチド配列であることを特徴とする上記[1]又は[2]記載の方法。
[4]ALX1、CBLN1、CORIN、FOXP1、GATA2、IGLON5、NPTX2、NTRK2、PRL、及びSTEAP4遺伝子をコードする領域又は前記各遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列のメチル化頻度を測定するためのプライマー若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする、子宮平滑筋における腫瘍の診断用キット。
[5]ALX1遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号1に示されるヌクレオチド配列の144−145番目のヌクレオチド配列であり、
CBLN1遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号2に示されるヌクレオチド配列の146−147番目のヌクレオチド配列であり、
CORIN遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号3に示されるヌクレオチド配列の181−182番目のヌクレオチド配列であり、
FOXP1遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号4に示されるヌクレオチド配列の67−68番目のヌクレオチド配列であり、
GATA2遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号5に示されるヌクレオチド配列の171−172番目のヌクレオチド配列であり、
IGLON5遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号6に示されるヌクレオチド配列の377−378番目のヌクレオチド配列であり、
NPTX2遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号7に示されるヌクレオチド配列の159−160番目のヌクレオチド配列であり、
NTRK2遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号8に示されるヌクレオチド配列の65−66番目のヌクレオチド配列であり、
PRL遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号9に示されるヌクレオチド配列の259−260番目のヌクレオチド配列であり、
STEAP4遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号10に示されるヌクレオチド配列の102−103番目のヌクレオチド配列であることを特徴とする上記[4]記載のキット。
上記本発明の方法は、医師による子宮平滑筋における腫瘍の診断を補助する方法であって、医師による診断行為を含まない。
また、本発明の実施の他の形態として、子宮平滑筋における腫瘍の診断方法を挙げることができる。
患者の子宮温存を決定する際には腫瘍の良性若しくは悪性の診断が非常に重要となるが、子宮平滑筋腫と子宮平滑筋肉腫を区別する有用なバイオマーカーは存在しなかった。CpGメチル化に関する本件バイオマーカー遺伝子パネルを用いることにより、平滑筋由来の腫瘍が生じた患者が子宮平滑筋腫か、子宮平滑筋肉腫のいずれかを罹患しているかについて精度よく判定することができる。
各18症例の正常筋層検体、及び子宮筋腫検体を用い、ALX1遺伝子のメチル化頻度を解析した結果である。 各18症例の正常筋層検体、及び子宮筋腫検体について、本件バイオマーカー遺伝子領域のCpGメチル化データを取得し、階層的クラスタリングを行った結果である。 12症例の子宮肉腫検体、及び肉腫細胞株4サンプル(ヒト子宮肉腫細胞株SKN、及びヒト卵巣肉腫細胞株RKNをそれぞれ2サンプルずつ)について、COBRA法により本件バイオマーカー遺伝子領域のCpGメチル化データを取得し、図2にて構築した各18症例の正常筋層検体、及び子宮筋腫検体における階層的クラスタリングの結果と共に示した結果である。 新規な2症例(検体X、及びY)について、COBRA法により本件バイオマーカー遺伝子領域のCpGメチル化データを取得し、そのデータを図3にて示した肉腫、筋腫、及び筋層検体のメチル化データに追加して階層的クラスタリングを行った結果である。
本発明の子宮平滑筋における腫瘍を診断するためのデータを収集する方法(以下、「本件収集方法」ということがある)としては、子宮平滑筋腫及び子宮平滑筋肉腫、並びに正常子宮平滑筋層の組織からゲノムDNAを抽出する工程(A);工程(A)で抽出した各組織のゲノムDNA中の本件バイオマーカー遺伝子領域におけるCpG配列(部位)(以下、「本件CpG部位」とも表示する。)がメチル化されている度合い(レベル又は頻度)を測定する工程(B);被検体から採取された腫瘍組織からゲノムDNAを抽出する工程(C);工程(C)で抽出したゲノムDNA中の本件バイオマーカー遺伝子領域におけるCpG配列がメチル化されている頻度を測定する工程(D);工程(B)で測定したメチル化頻度、及び工程(D)で測定したメチル化頻度に基づき多変量解析を行い、前記被検体における子宮平滑筋腫及び子宮平滑筋肉腫を診断するためのデータを収集する工程(E);の工程(A)〜(E)を備えた方法であれば特に制限はされない。子宮平滑筋腫の組織由来の本件CpG部位は、正常子宮平滑筋層の組織由来の本件CpG部位と比べメチル化頻度が変化し、また、子宮平滑筋肉腫組織由来の本件CpG部位は、子宮平滑筋腫の組織由来の本件CpG部位とは異なるメチル化頻度を示すため、上記工程(E)において多変量解析を行い、CpGメチル化に関する本件バイオマーカー遺伝子パネルを作成すると、メチル化頻度を指標とし腫瘍が子宮平滑筋腫か子宮平滑筋肉腫のいずれかであるかを判定することができる。なお、本明細書における本件バイオマーカー遺伝子領域におけるCpG部位とは、ゲノムDNA上で該CpG部位に最も近い位置に存在する遺伝子が、その本件バイオマーカー遺伝子領域の遺伝子であることを意味する。また、本件CpG部位が該遺伝子の近傍に複数存在し、CpGアイランドを形成している場合は、それら複数のCpG部位を子宮平滑筋腫と子宮平滑筋肉腫とを区別するバイオマーカーとして使用することが好ましいが、近傍のCpG部位のメチル化頻度は、相関が見られるとされているため、特定の1カ所のCpG部位のメチル化頻度が増加していれば、該CpG部位が形成するCpGアイランドにおけるメチル化頻度も増加していると評価することができる。
本発明において、「CpG配列がメチル化されている」とは、シトシン(C)の次にグアニン(G)が現れる2塩基配列(CG又はGC配列)において、シトシン塩基5位の炭素がメチル化された状態を意味する。
本件収集方法において被検体の生物種としては、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、サル、ウシ、ブタ、ウマ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、イヌ等の哺乳動物を好適に例示することができ、中でもヒト、マウスをより好適に例示することができ、特にヒトを好適に例示することができる。
上記(A)工程及び(C)工程においてゲノムDNAを抽出する方法としては、組織からゲノムDNAを抽出する方法である限り特に制限されず、例えば、MagNA PureLC DNA Isolation Kit I(ロシュ・ダイアグノスティックス製)やAllprep DNA/RNA mini kit、及びQIAamp DNA FFPE Tissue kit(QIAGEN社製)などの市販品を添付のプロトコールにしたがって用いる方法の他、後述の実施例に記載されているような、フェノール・クロロホルム処理、及びエタノールあるいはイソプロパノール沈殿等を利用した常法(Molecular Cloning第3版Volume1のプロトコール参照)を例示することができる。
上記(B)工程及び(D)工程中において、本件CpG部位のメチル化頻度を測定する方法としては、本件CpG部位のメチル化を検出・定量し得る方法である限り特に制限されず、本件CpG部位のポリヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズし得るポリヌクレオチド(プローブ)の標識物を用いたサザンハイブリダイゼーション法や、メチル化感受性制限酵素を用いて解析する方法や、亜硫酸水素塩(バイサルファイト)処理を利用したバイサルファイト法を例示することができる。上記ポリヌクレオチド(プローブ)のヌクレオチド数としては、本件CpG部位にハイブリダイズし得る限り、特に制限されず、例えば7個以上を例示することができ、特異性の観点からは、15個以上、より好ましくは25個以上を好適に例示することができる。また、上記ポリヌクレオチド(プローブ)の標識物における標識物質としては、ペルオキシダーゼ(例えば、horseradish peroxidase)、アルカリフォスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコ−ス−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、アルコール脱水素酵素、リンゴ酸脱水素酵素、ペニシリナーゼ、カタラーゼ、アポグルコースオキシダーゼ、ウレアーゼ、ルシフェラーゼ若しくはアセチルコリンエステラーゼ等の酵素、フルオレスセインイソチオシアネート、フィコビリタンパク、希土類金属キレート、ダンシルクロライド若しくはテトラメチルローダミンイソチオシアネート等の蛍光物質、緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescence Protein;GFP)、シアン蛍光タンパク質(Cyan Fluorescence Protein;CFP)、青色蛍光タンパク質(Blue Fluorescence Protein;BFP)、黄色蛍光タンパク質(Yellow Fluorescence Protein;YFP)、赤色蛍光タンパク質(Red Fluorescence Protein;RFP)、ルシフェラーゼ(luciferase)等の蛍光タンパク質、H 、14C、125I若しくは131I等の放射性同位体、ビオチン、アビジン、又は化学発光物質を挙げることができる。
上記メチル化感受性制限酵素を用いて解析する方法は、制限酵素の認識配列中のシトシンがメチル化されることで、DNAを切断できなくなる現象を利用したものである。必要な反応時間は、制限酵素の種類により異なるが、1〜数時間程度である。また、これまでは、制限酵素を用いていることから検出可能な配列が限られていたが、現在では、入手可能なメチル化感受性制限酵素は100種類以上あり、認識配列も多彩であるため、本件CpG部位のほとんどを標的とすることが可能である。メチル化感受性制限酵素により処理後、本件CpG部位の切断効率は、サザンハイブリダイゼーションやPCR(polymerase chain reaction)等の方法で解析することができる。
また、上記バイサルファイト処理を利用したバイサルファイト法とは、バイサルファイト処理によって、本件CpG部位における非メチル化シトシンのみをウラシルに変換するバイサルファイト反応を利用した方法であり、現在最も一般的に用いられている方法である。具体的には、以下の(i)〜(iv)の4つの方法等を例示することができる。
(i)バイサルファイトシーケンシング法
サンプルであるゲノムDNAに対してバイサルファイト処理を行うことによって、ゲノムDNAにおける、メチル化修飾を受けたシトシンはそのまま変換せず、非メチル化シトシンのみをウラシルに変換させる。このゲノムDNAについてシーケンス反応を行うと、ウラシルはチミンとして表現されることとなる。バイサルファイト処理前後のゲノムDNAの配列データを比較し、バイサルファイト処理前後のいずれもシトシンである部位はメチル化シトシンであることが分かり、バイサルファイト処理前にシトシンでありバイサルファイト処理後にチミンとなった部位は非メチル化シトシンであることが分かる。
(ii)メチル化特異的PCR(MSP、Methylation-Specific PCR)法
サンプルであるゲノムDNAに対してバイサルファイト処理を行うと、メチル化CpG部位と非メチル化CpG部位とは、異なった塩基配列が生じることとなる。このことを利用して、各々において異なる塩基配列の部位に特異的なPCRプライマーを設計して、PCR産物の有無でメチル化状態を検出する方法である。このMSP法では、バイサルファイト処理をしたDNAをそのまま解析に使うことができるため、短時間で結果を確認することが可能である。
(iii)COBRA(COmbined Bisulfite Restriction Analysis)法
バイサルファイト処理によりDNAメチル化状態依存的に特定の制限酵素認識配列の塩基配列が変化することを利用し、バイサルファイト−PCR後に酵素処理したPCR産物を電気泳動することでメチル化頻度を測定する方法であり、後述の実施例で用いている方法でもある。特定の認識配列におけるメチル化頻度を、PCR産物の切断の有無の量比にて定量的に解析できる。
(iv)HumanMethylation450BeadChip(イルミナ株式会社製)を用いた方法
この方法は、バイサルファイトシーケンシング法の1種であるバイサルファイトパイロシークエンシング法を基盤とした、ゲノムワイドなDNAメチル化(DNAメチローム)解析法である。サンプルから抽出したゲノムDNAについてバイサルファイト処理を行った後、制限酵素によってDNAを断片化し、該DNA断片上の本件CpG部位におけるメチル化頻度(メチル化レベル)を、付属のBeadChipを用いて検出する。このBeadChipには、本件CpG部位を含む約45万個の各CpG部位におけるシトシンがウラシルに変換したDNA配列に特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドプローブ(非メチル検出用プローブ)の標識物と、変換していないDNA配列に特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチドプローブ(メチル検出用プローブ)の標識物がそれぞれ固定されている。それぞれのプローブにハイブリダイズしたDNA断片の量を蛍光で簡便に検出することによって、ゲノムDNA上の本件CpG部位におけるメチル化頻度を測定することができる。本件CpG部位におけるメチル化頻度の好適な指標として、β値を挙げることができる。β値とは、例えば、標識物質が蛍光物質や蛍光タンパク質の場合、測定によって得られた、各CpG部位に対応する非メチル検出用プローブの蛍光値(signal A)、及び、メチル検出用プローブの蛍光値(signal B)について、以下の計算式により算出される値である。
β=(本件CpG部位におけるsignal Bの最大値)/(本件CpG部位におけるsignal Aの最大値+本件CpG部位におけるsignal Bの最大値+100);
この計算式によると、各CpG部位のメチル化頻度が、0(完全非メチル化)〜1(完全メチル化)の範囲で算出されることとなる。
上記(E)工程中における、DNAメチル化頻度に基づき多変量解析を行う方法としては、抽出した各組織のゲノムDNAのメチル化状態の類似度を統計的に解析できる手法であれば特に制限されないが、階層的クラスタリング、自己組織化マッピングあるいは主成分分析等を好適に例示することができ、なかでも一般に広く認識されている階層的クラスタリングを用いることが好ましい。
上記工程(B)及び(D)において、本件CpG部位におけるメチル化の頻度を測定する領域は特に制限されないが、好ましくは、
配列番号1に示されるヌクレオチド配列の144−145番目のヌクレオチド配列、
配列番号2に示されるヌクレオチド配列の146−147番目のヌクレオチド配列、
配列番号3に示されるヌクレオチド配列の181−182番目のヌクレオチド配列、
配列番号4に示されるヌクレオチド配列の67−68番目のヌクレオチド配列、
配列番号5に示されるヌクレオチド配列の171−172番目のヌクレオチド配列、
配列番号6に示されるヌクレオチド配列の377−378番目のヌクレオチド配列、
配列番号7に示されるヌクレオチド配列の159−160番目のヌクレオチド配列、
配列番号8に示されるヌクレオチド配列の65−66番目のヌクレオチド配列、
配列番号9に示されるヌクレオチド配列の259−260番目のヌクレオチド配列、
配列番号10に示されるヌクレオチド配列の102−103番目のヌクレオチド配列、
のメチル化頻度を測定することが好ましい。
上記(E)工程は、「工程(B)において測定した本件CpG部位におけるメチル化の頻度を、DNAメチル化頻度に基づき多変量解析を行い、バイオマーカー遺伝子パネルを作製する工程」である。ここで、上記工程(A)において用いた検体組織と、上記工程(C)において用いた検体組織とは同種の組織であることが好ましい。また、該検体組織は、被検体と同じ生物種のもの(被検体がヒトである場合にはヒトのもの)を用いることが好ましい。
このように、検体組織から抽出したゲノムDNA中の、本件CpG部位におけるメチル化頻度に基づいて、該検体組織が子宮平滑筋腫、子宮平滑筋肉腫、及び子宮平滑筋層のいずれにあたるかを判定することができる。より具体的には、工程(D)において測定した被検体組織におけるメチル化頻度データを、基準となる工程(B)で測定したメチル化頻度データと共に、工程(E)による多変量解析に供することで、前記被検体が子宮平滑筋腫、子宮平滑筋肉腫、及び子宮平滑筋層のいずれにあたるかを区別することができる。
本発明の子宮平滑筋における腫瘍の診断用キット(以下、「本件診断用キット」ということがある)としては、本件バイオマーカー遺伝子領域におけるCpG配列のメチル化頻度を測定するためのプライマー若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えた、子宮平滑筋における腫瘍を診断するためのキットであれば特に制限されず、ここで本件診断用キットは、子宮平滑筋における腫瘍を診断するためのキットに関する用途発明であり、このキットには、一般にこの種の診断キットに用いられる成分、例えば担体、pH緩衝剤、安定剤の他、取扱説明書、子宮平滑筋における腫瘍を診断するための説明書等の添付文書が通常含まれる。
本件診断用キットにおけるプライマーとしては、本件CpG部位のメチル化頻度を測定することができ、かつ、PCRにより増幅可能なプライマーであればよく、例えば、本件CpG部位の上流のヌクレオチド配列の相補配列にアニールするフォワードプライマーと、本件CpG部位の下流のヌクレオチド配列にアニールするリバースプライマーとのプライマーセットや、本件CpG部位の上流のヌクレオチド配列の相補配列にアニールし、かつ本件CpG部位のシトシンで3’末端がアニールするフォワードプライマーと、本件CpG部位の下流のヌクレオチド配列にアニールするリバースプライマーとのプライマーセットや、本件CpG部位の上流のヌクレオチド配列の相補配列にアニールするフォワードプライマーと、本件CpG部位のシトシンで3’末端がアニールするリバースプライマーとのプライマーセットや、本件CpG部位の上流のヌクレオチド配列の相補配列にアニールし、かつ本件CpG部位のシトシンがウラシルに変換された場合にかかるウラシルの部位で3’末端がアニールするフォワードプライマーと、本件CpG部位の下流のヌクレオチド配列にアニールするリバースプライマーとのプライマーセットや、本件CpG部位の上流のヌクレオチド配列の相補配列にアニールするフォワードプライマーと、本件CpG部位のシトシンがウラシルに変換された場合にかかるウラシルの部位で3’末端がアニールするリバースプライマーとのプライマーセットを挙げることができる。また、プライマー配列の長さ、アニーリングする部位等は、DNAの増幅効率や特異性を考慮して適宜選択することができる。例えば、プライマー配列の長さとしては、10〜30塩基を選択することができる。なお、NCBIのデータベースに登録されている本件バイオマーカー遺伝子のヌクレオチド配列の5’末端側を上流とし、3’末端側を下流とする。
本件診断用キットにおけるプローブとしては、本件CpG部位を含むヌクレオチド配列にハイブリダイゼーションするプローブや、本件CpG部位のシトシンがウラシルに変換された上記ヌクレオチド配列にハイブリダイゼーションするプローブを挙げることができ、プローブの長さ、ハイブリダイズする部位等は、ハイブリダイゼーションの効率や特異性を考慮して適宜選択することができる。
本件診断用キットの標識物における標識物質としては、前述したように、ペルオキシダーゼ(例えば、horseradish peroxidase)、アルカリフォスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコ−ス−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、アルコール脱水素酵素、リンゴ酸脱水素酵素、ペニシリナーゼ、カタラーゼ、アポグルコースオキシダーゼ、ウレアーゼ、ルシフェラーゼ若しくはアセチルコリンエステラーゼ等の酵素、フルオレスセインイソチオシアネート、フィコビリタンパク、希土類金属キレート、ダンシルクロライド若しくはテトラメチルローダミンイソチオシアネート等の蛍光物質、緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescence Protein;GFP)、シアン蛍光タンパク質(Cyan Fluorescence Protein;CFP)、青色蛍光タンパク質(Blue Fluorescence Protein;BFP)、黄色蛍光タンパク質(Yellow Fluorescence Protein;YFP)、赤色蛍光タンパク質(Red Fluorescence Protein;RFP)、ルシフェラーゼ(luciferase)等の蛍光タンパク質、H 、14C、125I若しくは131I等の放射性同位体、ビオチン、アビジン、又は化学発光物質を挙げることができる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
[サンプル組織の採取及びDNAの抽出]
山口大学医学部、及び医学部附属病院遺伝子解析研究に関する倫理審査委員会の承認のもと、医学的適応により子宮全摘術を受けた患者より、組織サンプルを得た。用いた検体は、正常筋層18検体、子宮筋腫18検体、及び子宮肉腫12検体だった。また、これとは別にヒト平滑筋肉腫由来細胞株2種(ヒト子宮肉腫細胞株SKN、及びヒト卵巣肉腫細胞株RKN)(独立行政法人医薬基盤研究所 JCRB細胞バンクより購入)を用いた。
組織検体からゲノムDNAを抽出した。組織片10〜30mgを、液体窒素で凍結後、粉砕し粉末状にした。DNA抽出は一般的な方法で行った。粉末状組織片をProteinase K(QIAGEN社製)で処理した後、フェノール/クロロフォルムを用いて抽出を行い、エタノール沈殿で精製した。
[筋腫特異的バイオマーカー候補遺伝子の選定]
出願人はこれまでに、子宮筋腫と正常筋層それぞれ各3検体のDNAメチロームデータをもとに、子宮筋腫特異的にメチル化変異が生じている120遺伝子を抽出している(PLoS One, 8(6): e66632, 2013)。DNAメチル化パターンは組織・細胞種ごとに特異的である。子宮筋腫と子宮肉腫はともに子宮平滑筋に由来するが本質的には異なる腫瘍であるため、出願人は、子宮筋腫特異的にメチル化変異が生じている遺伝子群が子宮筋腫と子宮肉腫とを明確に区別するバイオマーカーとなり得る可能性は高いと考えた。そこで、前記120遺伝子のうち、DNAメチル化解析用プライマーの構築に成功した33遺伝子を子宮筋腫特異的メチル化変異遺伝子の候補として選出した。33遺伝子を表1に示す。
[DNAメチル化頻度の測定]
DNAメチル化頻度の測定には、COBRA法を用いた。ゲノムDNAをバイサルファイト処理した後にバイサルファイト−PCRを行うと、非メチル化シトシンはチミンに変換され、他方、メチル化シトシンはシトシンのままで変換されないという反応が生じる。この反応により、特定の制限酵素認識配列の塩基配列がメチル化状態に依存して変化することを利用し、酵素処理したPCR産物を電気泳動することでメチル化頻度を解析する。
バイサルファイト処理は、EpiTect(R) Bisulfite kit(Qiagen社製)を用い、キット付属の説明書に基づいて行った。1μgのゲノムDNAに対し、バイサルファイト反応を、95℃ 5分間、65℃ 85分間、95℃ 5分間、及び65℃ 175分間の条件で行った。バイサルファイト−PCRは、1/100量のバイサルファイトDNAをテンプレートとし、Biotaq HS DNA polymerase(Bioline社製)を用いて、95℃ 10分間、[95℃ 0.5分間、60℃ 0.5分間、72℃ 0.5分間]×35サイクル、72℃ 7分間の反応条件で行った。制限酵素は配列TCGAを認識するTaqI、及び配列ACGTを認識するHpyCH4IVを使用した。制限酵素処理には半量のPCR産物を使用し、TaqIは37℃、HpyCH4IVは65℃でそれぞれ2時間以上反応した。制限酵素処理したPCR産物はアガロースゲル電気泳動で分離し、メチル化率を算出した。
まずは、表1に記載の遺伝子において、COBRA法による1遺伝子のメチル化解析に基づき、正常筋層と子宮筋腫とを判別可能かを検討したが、1遺伝子のメチル化頻度だけでは多数の症例を明瞭に区別することは難しいことが明らかとなった。1例として各18症例の正常筋層検体、及び子宮筋腫検体を用い、ALX1遺伝子のメチル化頻度を解析した結果を図1に示す。
[筋腫特異的バイオマーカーの選出]
実施例1を踏まえ、筋腫特異的バイオマーカー遺伝子パネルを構築するにあたり、判別精度を保ちつつメチル化解析の労力を最小限にできる遺伝子数を検討した。
子宮筋腫特異的メチル化変異遺伝子の候補として選出した上記33遺伝子について、3症例の子宮筋腫検体を用いて1遺伝子のメチル化頻度をCOBRA法により解析した。その結果、全ての筋腫検体で高メチル化変異或いは低メチル化変異が生じている、17個の遺伝子を筋腫特異的バイオマーカー遺伝子として同定した。更に、子宮筋腫検体を11症例に増やし同様の解析を行い、7割以上の筋腫検体で共通して高メチル化変異あるいは低メチル化変異が生じた10個の遺伝子(ALX1、CBLN1、CORIN、FOXP1、GATA2、IGLON5、NPTX2、NTRK2、PRL、及びSTEAP4)を特定した。
特定した筋腫特異的バイオマーカー遺伝子について、バイサルファイト−PCRに用いたPCRプライマーを表2に示す。表2に示したプライマー配列は、バイサルファイト処理により非メチル化シトシンがウラシル(チミン)に変換された配列を増幅できるように設計したものである。また、本件バイオマーカー遺伝子のバイサルファイト−PCRにて増幅されたゲノム領域のヌクレオチド配列を、配列番号1〜10に示す(配列番号1:ALX1、配列番号2:CBLN1、配列番号3:CORIN、配列番号4:FOXP1、配列番号5:GATA2、配列番号6:IGLON5、配列番号7:NPTX2、配列番号8:NTRK2、配列番号9:PRL、配列番号10:STEAP4)。COBRA法にてメチル化頻度を解析したCpG部位は、以下のとおりである。
配列番号1に示されるヌクレオチド配列の144−145番目のヌクレオチド配列
配列番号2に示されるヌクレオチド配列の146−147番目のヌクレオチド配列
配列番号3に示されるヌクレオチド配列の181−182番目のヌクレオチド配列
配列番号4に示されるヌクレオチド配列の67−68番目のヌクレオチド配列
配列番号5に示されるヌクレオチド配列の171−172番目のヌクレオチド配列
配列番号6に示されるヌクレオチド配列の377−378番目のヌクレオチド配列
配列番号7に示されるヌクレオチド配列の159−160番目のヌクレオチド配列
配列番号8に示されるヌクレオチド配列の65−66番目のヌクレオチド配列
配列番号9に示されるヌクレオチド配列の259−260番目のヌクレオチド配列
配列番号10に示されるヌクレオチド配列の102−103番目のヌクレオチド配列
[DNAメチル化変異子宮筋腫特異的バイオマーカー遺伝子パネルの構築]
各症例のメチル化状態の類似度を測る尺度としてピアソン相関を用い、クラスタリングのアルゴリズムとして平均連結法を採用したクラスタリングを行った。実際の階層的クラスタリングには、オープンリソースソフトであるMultiExperiment Viewer(MeV)を使用し、症例方向のクラスタリングを行った。
各18症例の正常筋層検体、及び子宮筋腫検体における階層的クラスタリングの結果を図2に示す。選出した前述の10遺伝子により、18症例の正常筋層と子宮筋腫がクラスタリングにより完全に異なるクラスターに区別された。一方で、筋腫検体においては樹形図(デンドログラム)の約半分の高さ(点線)で切り取った場合、メチル化パターンが若干異なる3つのサブグループ(L1、L2およびL3)に分類されることも示された。
[クラスタリングによる子宮肉腫検体の分別]
12症例の子宮肉腫検体、及び肉腫細胞株4サンプル(ヒト子宮肉腫細胞株SKN、及びヒト卵巣肉腫細胞株RKNをそれぞれ2サンプルずつ)を、実施例2にて構築した各18症例の正常筋層検体、及び子宮筋腫検体における階層的クラスタリングの結果と共に示した結果を図3に示す。
8症例の肉腫検体と4株の肉腫細胞株は、筋腫・筋層とは異なるクラスターに分別された。一方、4症例の肉腫検体は筋腫のサブグループL2に分別された。筋腫を含まないクラスターに分類された検体のうち、筋層のクラスターに含まれなかったものは肉腫と判断できる。筋腫を含むクラスターに分類された検体のうち、サブグループL1およびL3にクラスタリングされたものは筋腫と判断でき、サブグループL2にクラスタリングされたものは40%の確率で肉種の可能性を持つ検体と判断できる。
[階層的クラスタリングによる子宮肉腫の診断]
追加した新規の症例データが肉腫、筋腫、及び筋層検体を含むどのクラスターに分類されるかを調べることで、その症例が肉腫であるか否かを診断することができる。新規な2症例(検体X、及びY)について、COBRA法により前述の10遺伝子領域のメチル化データを取得し、そのデータを実施例3にて示した肉腫、筋腫および筋層検体のメチル化データに追加して階層的クラスタリングを行った。検体X、及びYは病理診断により、それぞれ子宮筋腫、及び子宮肉腫と診断されている。階層的クラスタリングの結果を図4に示す。
検体X、及びYは階層的クラスタリングにより、それぞれ子宮筋腫、及び子宮肉腫に分別された。これより、本願筋腫特異的バイオマーカー遺伝子パネルは、子宮肉腫の診断に応用可能であることが示された。
本発明によると、子宮平滑筋における腫瘍が良性腫瘍(子宮平滑筋腫)か、悪性腫瘍(子宮平滑筋肉腫)のいずれかであるかを精度よく診断できるため、子宮平滑筋における腫瘍の悪性度をより正確に分類し、効果的な治療が可能となり、QOL(Quality of Life)の向上や医療費削減、及び妊娠可能な子宮温存による少子化問題の解消等の効果が期待される。

Claims (4)

  1. 以下の工程(A)〜(E)を備えたことを特徴とする子宮平滑筋における腫瘍を診断するためのデータを収集する方法。
    (A)採取された子宮平滑筋腫、子宮平滑筋肉腫、及び正常子宮平滑筋層の組織からゲノムDNAを抽出する工程;
    (B)工程(A)で抽出した各組織のゲノムDNA中の、ALX1、CBLN1、CORIN、FOXP1、GATA2、IGLON5、NPTX2、NTRK2、PRL、及びSTEAP4遺伝子をコードする領域又は前記各遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列のメチル化頻度を測定する工程;
    (C)被検体から採取された子宮平滑筋における腫瘍組織からゲノムDNAを抽出する工程;
    (D)工程(C)で抽出したゲノムDNA中の、ALX1、CBLN1、CORIN、FOXP1、GATA2、IGLON5、NPTX2、NTRK2、PRL、及びSTEAP4遺伝子をコードする領域又は前記各遺伝子の転写制御領域をコードする領域におけるCpG配列のメチル化頻度を測定する工程;
    (E)前記被検体における子宮平滑筋腫及び子宮平滑筋肉腫を診断するためのデータを収集するため、工程(D)で測定したCpG配列のメチル化頻度データを、基準となる工程(B)で測定したCpG配列のメチル化頻度データとともに階層的クラスタリングを行う工程;
  2. 工程(B)及び(D)において、
    ALX1遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号1に示されるヌクレオチド配列の144−145番目のヌクレオチド配列であり、
    CBLN1遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号2に示されるヌクレオチド配列の146−147番目のヌクレオチド配列であり、
    CORIN遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号3に示されるヌクレオチド配列の181−182番目のヌクレオチド配列であり、
    FOXP1遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号4に示されるヌクレオチド配列の67−68番目のヌクレオチド配列であり、GATA2遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号5に示されるヌクレオチド配列の171−172番目のヌクレオチド配列であり、
    IGLON5遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号6に示されるヌクレオチド配列の377−378番目のヌクレオチド配列であり、
    NPTX2遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号7に示されるヌクレオチド配列の159−160番目のヌクレオチド配列であり、
    NTRK2遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号8に示されるヌクレオチド配列の65−66番目のヌクレオチド配列であり、PRL遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号9に示されるヌクレオチド配列の259−260番目のヌクレオチド配列であり、STEAP4遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号10に示されるヌクレオチド配列の102−103番目のヌクレオチド配列であることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. ALX1、CBLN1、CORIN、FOXP1、GATA2、IGLON5、NPTX2、NTRK2、PRL、及びSTEAP4遺伝子をコードする領域又は前記各遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列のメチル化頻度を測定するためのプライマー若しくはプローブ、又はそれらの標識物を備えたことを特徴とする、子宮平滑筋における腫瘍の診断用キット。
  4. ALX1遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号1に示されるヌクレオチド配列の144−145番目のヌクレオチド配列であり、
    CBLN1遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号2に示されるヌクレオチド配列の146−147番目のヌクレオチド配列であり、
    CORIN遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号3に示されるヌクレオチド配列の181−182番目のヌクレオチド配列であり、
    FOXP1遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号4に示されるヌクレオチド配列の67−68番目のヌクレオチド配列であり、GATA2遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号5に示されるヌクレオチド配列の171−172番目のヌクレオチド配列であり、
    IGLON5遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号6に示されるヌクレオチド配列の377−378番目のヌクレオチド配列であり、
    NPTX2遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号7に示されるヌクレオチド配列の159−160番目のヌクレオチド配列であり、
    NTRK2遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号8に示されるヌクレオチド配列の65−66番目のヌクレオチド配列であり、PRL遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号9に示されるヌクレオチド配列の259−260番目のヌクレオチド配列であり、STEAP4遺伝子をコードする領域又は前記遺伝子の転写制御領域におけるCpG配列が、配列番号10に示されるヌクレオチド配列の102−103番目のヌクレオチド配列であることを特徴とする請求項記載のキット。
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