JP6579360B2 - ギヤの製造方法 - Google Patents
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Description
ウォームホイールは、たとえば、金属製の芯金(スリーブ)の外周に、射出成形(インサート成形)等によって円環状の樹脂部材を形成後、樹脂部材の外周に切削加工等によって歯を形成することによって製造される。樹脂部材は、例えば、ポリアミド(PA6、PA66、PA46等)、ポリフェニレンサルファイト(PPS)等の樹脂を用いて形成される。
金属製のスリーブ部には、歯部の回り止めのためにインボリュートスプライン加工が必要であるが、これがコスト増大の要因となっている。また、近年、環境負荷軽減の要求に基づいて自動車用部品の軽量化が求められており、電動パワーステアリング装置の減速機もその例外ではない。ウォームホイールのスリーブ部は金属製であり、電動パワーステアリング装置の全重量に占める比率が高い。そのため、必要な機械的強度および剛性を保持した上で、より軽量な材料の使用が必要である。
そこで、本発明の目的は、スリーブ部に要求される機械的強度・剛性および寸法安定性と、歯形成部に要求される耐摩耗性とを両立できる、スリーブ部および歯形成部が同一の樹脂で形成されたギヤの製造方法を提供することである。
この構成によれば、ポリアミド樹脂とフィラーとの混練時および射出成形時に、カルボジイミド結合を有する化合物の作用によって、ポリアミド樹脂の末端カルボキシル基(−COOH)と末端アミノ基(−NH2)との脱水縮合反応が進行する。これにより、予め重合によって形成された複数のポリアミド樹脂の高分子鎖が連鎖的につながり、原料樹脂の分子量が高められる。そのため、フィラーによる樹脂の摩耗・剥離を抑制できるので、歯形成部に要求される耐摩耗性を達成することができる。また、原料樹脂がフィラーを含有しているので、スリーブ部に要求される機械的強度・剛性および寸法安定性を達成することもできる。これにより、割れや耐久寿命不足等の懸念が少なく、コストも低減でき、さらに金属製のスリーブ部を使用した場合に比べて軽量化を図ることもできる。
潤滑剤によって、原料樹脂の分子間の滑り効果を得ることができるので、ギヤの成形時の粘度を低減することができる。そのため、原料樹脂の分子量が高くても比較的低い温度で成形できるので、成形時の樹脂の熱分解を抑制することができる。その結果、原料樹脂の分子量を高く維持したまま成形できるので、原料樹脂の機械的強度や耐摩耗性を良好に維持することができる。
本発明のギヤ(20)の製造方法では、前記原料樹脂(26)は、その総量に対して15質量%〜50質量%のガラス繊維を前記フィラー(40)として含有していてもよい(請求項4)。
この範囲でガラス繊維が配合されていることによって、歯形成部の摩耗の発生因子であるガラス繊維の量を抑えながら、スリーブ部には十分な機械的強度・剛性を確保することができる。
この範囲の径を有するガラス繊維を配合することによって、ガラス繊維とポリアミド樹脂との接触面積を比較的大きくできるので、スリーブ部の機械的強度および剛性を良好に向上させることができる。すなわち、より少ないガラス繊維の量でスリーブ部の機械的強度等を確保できるため、歯形成部の摩耗の発生因子であるガラス繊維の量を抑え、歯形成部の耐摩耗性を向上させることができる。また、ガラス繊維の径が小さいほど相手攻撃性が低いため、樹脂を摩耗・剥離させる影響が小さく、この点においても歯形成部の耐摩耗性を向上させることができる。
この範囲でカルボジイミド結合を有する化合物が配合されていることによって、数平均分子量Mnが30,000以上の原料樹脂を良好に得ることができる。一方、カルボジイミド結合を有する化合物が過量でないので、混練中の樹脂圧力(粘度)の増大、発熱および当該発熱に伴う、ポリアミド樹脂およびカルボジイミドの熱分解、フィラーの集束劣化による樹脂との密着強度の低下等のリスクを軽減することもできる。
図1は、本発明の一実施形態に係るインターミディエイトシャフト5が組み込まれた電動パワーステアリング装置1の概略図である。
電動パワーステアリング装置1は、ハンドル2と一体回転可能に連結されたステアリングシャフト3、ステアリングシャフト3に自在継手4を介して連結されたインターミディエイトシャフト5、インターミディエイトシャフト5に自在継手6を介して連結されたピニオンシャフト7、およびピニオンシャフト7のピニオン歯7aに噛み合うラック歯8aを有して、自動車の左右方向に延びる転舵軸としてのラックバー8を備えている。
ラックバー8は、車体に固定されるラックハウジング10内に、図示しない複数の軸受を介して直線往復動自在に支持されている。ラックバー8の両端部はラックハウジング10の両側へ突出し、各端部にはそれぞれタイロッド11が結合されている。
ハンドル2が操作されてステアリングシャフト3が回転されると、その回転が、ピニオン歯7aおよびラック歯8aによって自動車の左右方向に沿うラックバー8の直線運動に変換されて操向輪12の転舵が達成される。
トーションバー13には、両軸3a、3b間の相対回転変位量から操舵トルクを検出するためのトルクセンサ14が設けられており、トルクセンサ14のトルク検出結果がECU(Electric Control Unit:電子制御ユニット)15に与えられる。
減速機18は、電動モータ17により回転駆動される入力軸としてのウォームシャフト19(小歯車)と、ウォームシャフト19に噛み合うとともにステアリングシャフト3の出力軸3bに一体回転可能に連結される本発明のギヤの一例としてのウォームホイール20(大歯車)とを備えている。
ウォームホイール20は、中心に貫通孔21を有する円環状に形成されている。貫通孔21には、ステアリングシャフト3の出力軸3b(図1参照)が挿入される。
ウォームホイール20は、一体物の樹脂成形品で構成されており、貫通孔21から同心円状にスリーブ部22および歯形成部23を含む。スリーブ部22および歯形成部23は、互いに樹脂の連続層として形成されている。この実施形態では、スリーブ部22は、円環状の領域として定義され、歯形成部23は、スリーブ部22の周囲領域である円環状の領域として定義される。歯形成部23の外周には、周方向に沿って複数の歯24が刻まれている。ここで、2つの領域(この実施形態では、スリーブ部22と歯形成部23)が連続層を形成している構成とは、2つの領域の間に物理的な境界面がないことを意味する。たとえば、樹脂材料の相違による材料相の結晶粒界等の境界は、スリーブ部22と歯形成部23との間に存在していてもよい。一方、物理的な境界面は、たとえば、金属製または樹脂製のスリーブ部の外周に歯形成部を別途射出成形したときに、当該スリーブ部と歯形成部との間に現れることがある。なお、図2では、明瞭化のため、スリーブ部22と歯形成部23との間に架空の境界25を示している。
図3は、ウォームホイール20の製造のフロー図である。図4は、原料樹脂26の調製に関連する工程を説明するための図である。図5は、カルボジイミド41による脱水縮合の反応機構を示す図である。
ウォームホイール20を製造するには、まず、ウォームホイール20を構成する原料樹脂26を調製する(S1)。原料樹脂26の調製には、たとえば、図4に示す混練機27を使用する。
本体28は、メインフィーダ32、シリンダ33、スクリュー34およびノズル35を備え、メインフィーダ32とノズル35との間(メインフィーダ32の下流側)には、サイドフィーダ36が取り付けられている。本体28としては、特に制限されず、たとえば、二軸(多軸)押出機、一軸押出機等の公知の混練機を使用できる。
そして、原料樹脂26を調製するには、まず、ポリアミド樹脂39および任意の添加剤を、共通の投入箇所としてのメインフィーダ32を介してシリンダ33に供給する。ポリアミド樹脂39および任意の添加剤は、それぞれ単体でタンク29に投入して供給してもよいし、攪拌機37で混合(ドライブレンド、マスターバッチ化)してから供給してもよい。
また、任意の添加剤としては、好ましくは、潤滑剤を配合する。潤滑剤によって、原料樹脂26の分子間の滑り効果を得ることができるので、ウォームホイール20の成形時の粘度を低減することができる。そのため、原料樹脂26の分子量が高くても比較的低い温度で成形できるので、成形時の樹脂の熱分解を抑制することができる。その結果、原料樹脂26の分子量を高く維持したまま成形できるので、原料樹脂26の機械的強度や耐摩耗性を良好に維持することができる。
次に、フィラー40およびカルボジイミド結合を有する化合物(以下、単に「カルボジイミド」という)41を、共通の投入箇所としてのサイドフィーダ36を介して、シリンダ33に同時に供給する。
そして、シリンダ33内を移送中のポリアミド樹脂39および必要により加えた添加剤からなる混練物に、フィラー40およびカルボジイミド41が加えられ、さらに混練する。カルボジイミド41の供給から当該混練物をノズル35から射出するまでの時間(カルボジイミド41の混練時間)は、たとえば、1秒間〜1分間であってもよい。したがって、サイドフィーダ36のノズル35からの距離は、当該混練時間を目安に設定すればよい。
ウォームホイール20の製造に関して、次の工程は、スリーブ部22および歯形成部23の一体成形である(図3のS2)。この工程では、図示しない金型を準備し、この金型内に、図4の工程で得られた原料樹脂26(ペレット)を溶融させて射出する。金型は、複数のウォームホイール20が円筒状に連なった円筒構造物になるように成形する型を有していてもよい。その後、一定時間冷却して原料樹脂26を固化させた後、一体成形されたウォームホイール20の円筒構造物を金型から取り出す。そして、当該円筒構造物から円板状のウォームホイール20を一つずつ切り出す。
以上の方法によれば、ポリアミド樹脂39とフィラー40との混練途中(ポリアミド樹脂39とフィラー40との混練開始時)でカルボジイミド41を供給することによって、混練時および射出成形時に、カルボジイミド41の作用によって、図5に示すように、ポリアミド樹脂39(図5では、ポリアミド66)の末端カルボキシル基(−COOH)と末端アミノ基(−NH2)との脱水縮合反応を進行させることができる。これにより、予め重合によって形成された複数のポリアミド樹脂39の高分子鎖を、連鎖的につなげることができ、樹脂の分子量を高めることができる。たとえば、当該反応後の原料樹脂26の数平均分子量Mnを、30,000以上にまで高めることができる。
また、カルボジイミド41が供給されるまでは、ポリアミド樹脂39は連鎖反応しておらず分子量も高くない状態(たとえば、Mn=20,000程度)である。この状態ではポリアミド樹脂39の粘度も比較的低いので、このポリアミド樹脂39とフィラー40とを混練することによって、フィラー40をポリアミド樹脂39全体に良好に分散させることができる。
たとえば、本発明は、前述のウォームホイール20以外の各種ギヤに適用することもできる。
また、本体28は、図6に示すように、サイドフィーダ36を二つ備えていてもよい。たとえば、サイドフィーダ36は、第1サイドフィーダ36aと、第1サイドフィーダ36aよりも下流側の第2サイドフィーダ36bとを含んでいてもよい。この場合、メインフィーダ32からポリアミド樹脂39の単体を供給し、第1サイドフィーダ36aからフィラー40を供給し、第2サイドフィーダ36bからカルボジイミド41を供給してもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
<実施例1>
図4で示した構成の混練機27において、旭化成ケミカルズ株式会社製のポリアミド66(「1402S」数平均分子量Mn=23,000)を64.7質量%、日東紡績株式会社製のガラス繊維(「CS3PE−455S」)を33.3質量%、および日清紡ケミカル株式会社製のカルボジイミド(カルボジライト(登録商標)「HMV−15CA」)を2質量%の割合で混練し、原料樹脂を得た。そして、その原料樹脂を用いて試験用サンプルを成形した。なお、ポリアミド66をメインフィーダ32に投入し、ガラス繊維およびカルボジイミドはサイドフィーダ36に投入した。
<参考例1>
数平均分子量Mn=27,000のポリアミド66を使用したこと、ガラス繊維を15質量%にしたこと、およびカルボジイミドを添加しなかったこと以外は、実施例1と同じ条件で試験用サンプルを作製した。
<参考例2>
カルボジイミドを添加しなかったこと以外は、実施例1と同じ条件で試験用サンプルを作製した。
<市販品1>
旭化成ケミカルズ社製のポリアミド66(レオナ(登録商標)非強化グレード「1502S」)を用いて試験用サンプルを成形した。ガラス繊維およびカルボジイミドは添加しなかった。
<市販品2>
デュポン社製のポリアミド66(ザイテル(登録商標)「E51HSB NC010」)を用いて試験用サンプルを成形した。ガラス繊維およびカルボジイミドは添加しなかった。
<市販品3>
市販品1に、ラインケミージャパン株式会社製の芳香族カルボジイミド(「スタバックゾール(登録商標)P400」)を1質量%添加して試験用サンプルを成形した。ガラス繊維は添加しなかった。
<評価試験>
(1)数平均分子量Mn
参考例2を除く試験用サンプルについて、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって数平均分子量Mnを測定した。結果を図7に示す。図7の実施例1と参考例1の比較から、ポリアミド66とカルボジイミドとを混練することによって、30,000以上の数平均分子量Mnを達成できることが分かった。さらに、実施例1と市販品1,2との比較から、カルボジイミドをサイドフィーダ36に投入することで、一般的な市販品1,2では達成し得ないレベルにまで分子量が高まっていることが分かった。
(2)引張強度
実施例1、参考例1および参考例2について、JIS K 7161に準拠して引張強度を測定した。結果を図8に示す。図8から、カルボジイミドを投入しても(実施例1)、カルボジイミドを添加しない場合(参考例2)と同等の優れた引張強度(機械的強度)を達成できることが分かった。
(3)摩擦摩耗試験
実施例1、参考例1,2および市販品1,3について、鈴木式摩擦摩耗試験を実施し、摩耗重量(g)を測定した。結果を図9および図10に示す。なお、試験の条件は、次の通りとした。
・グリース潤滑
・試験温度:RT
・駆動−停止による断続接触
図9から、カルボジイミドによって高分子量化された実施例1では、カルボジイミドを添加していない参考例1および2に比べて耐摩耗性に優れていることが分かった。
Claims (6)
- メインフィーダと、前記メインフィーダの下流側に取り付けられたサイドフィーダとを備える混練機で、ポリアミド樹脂、フィラーおよびカルボジイミド結合を有する化合物を含有する原料樹脂を混練する工程と、
前記混練によって得られた前記原料樹脂を用いて、スリーブ部および歯形成部を含むギヤを、前記スリーブ部および前記歯形成部が一体的に成形されるように成形する工程とを含み、
前記ポリアミド樹脂が前記メインフィーダから前記混練機内に投入され、
前記カルボジイミド結合を有する化合物が前記サイドフィーダから前記混練機内に投入され、かつ前記フィラーと同時または前記フィラーの供給箇所よりも下流側で投入される、ギヤの製造方法。 - 前記原料樹脂は、潤滑剤をさらに含有している、請求項1に記載のギヤの製造方法。
- 前記潤滑剤が、金属石鹸である、請求項2に記載のギヤの製造方法。
- 前記原料樹脂は、その総量に対して15質量%〜50質量%のガラス繊維を前記フィラーとして含有している、請求項1〜3のいずれか一項に記載のギヤの製造方法。
- 前記原料樹脂は、6μm〜15μmの径を有するガラス繊維を前記フィラーとして含有している、請求項1〜4のいずれか一項に記載のギヤの製造方法。
- 前記原料樹脂の総量に対して0.5質量%〜4質量%のカルボジイミド結合を有する化合物が配合されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のギヤの製造方法。
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