以下、本発明の実施形態について、図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る情報処理装置10を含む映像表示システム1の全体概要図である。また、図2は映像表示システム1の構成を示す構成ブロック図である。これらの図に示されるように、映像表示システム1は、情報処理装置10と、操作デバイス20と、中継装置30と、映像表示装置40と、を含んで構成されている。
情報処理装置10は、映像表示装置40が表示すべき映像を供給する装置であって、例えば家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機、パーソナルコンピューター、スマートフォン、タブレット等であってよい。図2に示されるように、情報処理装置10は、制御部11と、記憶部12と、インタフェース部13と、を含んで構成される。
制御部11は、CPU等であって、記憶部12に記憶されているプログラムを実行して各種の情報処理を実行する。なお、本実施形態において制御部11が実行する処理の具体例については、後述する。記憶部12は、RAM等のメモリデバイスを含み、制御部11が実行するプログラム、及び当該プログラムによって処理されるデータを格納する。
インタフェース部13は、操作デバイス20、及び中継装置30との間のデータ通信のためのインタフェースである。情報処理装置10は、インタフェース部13を介して有線又は無線のいずれかで操作デバイス20及び中継装置30のそれぞれと接続される。具体例として、インタフェース部13は、情報処理装置10が供給する映像や音声を中継装置30に送信するために、HDMI(High-Definition Multimedia Interface:登録商標)などのマルチメディアインタフェースを含んでよい。また、中継装置30経由で映像表示装置40から各種の情報を受信したり、制御信号等を送信したりするために、USB等のデータ通信インタフェースを含んでよい。さらにインタフェース部13は、操作デバイス20に対するユーザーの操作入力の内容を示す信号を受信するために、USB等のデータ通信インタフェースを含んでよい。
操作デバイス20は、家庭用ゲーム機のコントローラ等であって、ユーザーが情報処理装置10に対して各種の指示操作を行うために使用される。操作デバイス20に対するユーザーの操作入力の内容は、有線又は無線のいずれかにより情報処理装置10に送信される。なお、操作デバイス20は情報処理装置10の筐体表面に配置された操作ボタンやタッチパネル等を含んでもよい。
中継装置30は、有線又は無線のいずれかにより映像表示装置40と接続されており、情報処理装置10から供給される映像のデータを受け付けて、受け付けたデータに応じた映像信号を映像表示装置40に対して出力する。このとき中継装置30は、必要に応じて、供給された映像データに対して、映像表示装置40の光学系によって生じる歪みを補正する処理などを実行し、補正された映像信号を出力してもよい。なお、中継装置30から映像表示装置40に供給される映像信号は、左目用映像、及び右目用映像の二つの映像を含んでいる。また、中継装置30は、映像データ以外にも、音声データや制御信号など、情報処理装置10と映像表示装置40との間で送受信される各種の情報を中継する。
映像表示装置40は、ユーザーが頭部に装着して使用する映像表示装置であって、中継装置30から入力される映像信号に応じた映像を表示し、ユーザーに閲覧させる。本実施形態では、映像表示装置40は両目での映像の閲覧に対応しており、ユーザーの右目及び左目それぞれの目の前に映像を表示するものとする。図2に示すように、映像表示装置40は、映像表示素子41、光学素子42、モーションセンサー44、及び通信インタフェース45を含んで構成される。
映像表示素子41は、有機EL表示パネルや液晶表示パネルなどであって、中継装置30から供給される映像信号に応じた映像を表示する。本実施形態において映像表示素子41は、左目用映像、及び右目用映像の2つの映像を表示する。なお、映像表示素子41は、左目用映像及び右目用映像を並べて表示する1つの表示素子であってもよいし、それぞれの映像を独立に表示する2つの表示素子によって構成されてもよい。また、公知のスマートフォン等を映像表示素子41として用いてもよい。なお、映像表示素子41は、立体視を実現するために左目用映像及び右目用映像として互いに異なる映像を表示してもよいし、左目用映像及び右目用映像として互いに同じ映像を表示してもよい。
光学素子42は、ホログラムやプリズム、ハーフミラーなどであって、ユーザーの目の前に配置され、映像表示素子41が表示する映像の光を透過又は屈折させて、ユーザーの左右それぞれの目に入射させる。具体的に、映像表示素子41が表示する左目用映像は、光学素子42を経由してユーザーの左目に入射し、右目用映像は光学素子42を経由してユーザーの右目に入射する。これによりユーザーは、映像表示装置40を頭部に装着した状態で、左目用映像を左目で、右目用映像を右目で、それぞれ閲覧することができる。なお、本実施形態において映像表示装置40は、ユーザーが外界の様子を視認することができない非透過型の映像表示装置であるものとする。
モーションセンサー44は、映像表示装置40の位置や向き、動きに関する各種の情報を測定する。例えばモーションセンサー44は、加速度センサー、ジャイロスコープ、又は地磁気センサーなどを含んでよい。モーションセンサー44の測定結果は、中継装置30を経由して情報処理装置10に送信される。情報処理装置10は、映像表示装置40の動きや向きの変化を特定するために、このモーションセンサー44の測定結果を用いることができる。具体的に情報処理装置10は、加速度センサーの測定結果を用いることで、映像表示装置40の鉛直方向に対する傾きや平行移動を検出できる。また、ジャイロスコープや地磁気センサーの測定結果を用いることで、映像表示装置40の回転運動を検出できる。
通信インタフェース45は、中継装置30との間でデータ通信を行うためのインタフェースである。例えば映像表示装置40が中継装置30との間で無線LANやBluetooth(登録商標)などの無線通信によりデータの送受信を行う場合、通信インタフェース45は通信用のアンテナ、及び通信モジュールを含む。
次に、情報処理装置10が実現する機能について図3を用いて説明する。図3に示すように、情報処理装置10は、機能的に、方向取得部51と、対象画像表示制御部52と、拡大画像表示制御部53と、を含む。これらの機能は、制御部11が記憶部12に記憶されたプログラムを実行することにより実現される。このプログラムは、インターネット等の通信ネットワークを介して情報処理装置10に提供されてもよいし、光ディスク等のコンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体に格納されて提供されてもよい。
方向取得部51は、前述したモーションセンサー44の測定結果を用いて、映像表示装置40の向きを示す情報を取得する。具体的に方向取得部51は、一定時間おきにモーションセンサー44の測定結果を取得することによって、取得時点における映像表示装置40の向きを特定する。映像表示装置40はユーザーの頭部に固定された状態で使用されるので、この映像表示装置40の向きは、そのままユーザーの顔の向きに対応することになる。具体例として、映像表示装置40の向きは、垂直方向(上下方向)を回転軸とした回転量を表すヨー角と、左右方向を回転軸とした回転量を表すピッチ角と、前後方向を回転軸とした回転量を表すロール角と、によって表される。この場合、ヨー角及びピッチ角の値は、例えばユーザーが正面を向いた状態の映像表示装置40の向きを基準方向Rとして、この基準方向Rに対する回転量を表すものであってよい。基準方向Rは、映像表示装置40の使用開始時などに決定される方向であってよい。また、ロール角の値は、ユーザーが首を傾けずに左右の目が水平になっている状態を基準状態として、この基準状態からの回転量を表すものであってよい。
なお、ここでは方向取得部51は、映像表示装置40の向きを特定するために映像表示装置40に内蔵されたモーションセンサー44の測定結果を利用することとしたが、これに代えて、またはこれに加えて、他の手段で取得した情報が映像表示装置40の向きの特定に用いられてもよい。例えば情報処理装置10にはカメラが接続され、このカメラによって映像表示装置40を撮像することとしてもよい。方向取得部51は、この撮像画像に含まれる映像表示装置40の位置及び向きを特定することによって、映像表示装置40の向きに関する情報を取得できる。この場合、映像表示装置40の筐体表面に複数の発光素子を設け、これらの発光素子が発する光をカメラで撮像し、その光の位置を特定することにより、方向取得部51はカメラの撮像画像を用いて精度よく映像表示装置40の向きを特定できる。
対象画像表示制御部52は、表示対象となる対象画像Tを生成し、生成した対象画像Tを中継装置30に対して出力することによって映像表示装置40に表示させる。ここでは具体例として、対象画像Tは、全方位カメラなどで実際の風景を撮影して得られるパノラマ画像に基づいて生成された、所定の視野範囲内の様子を示す画像であるものとする。この場合におけるパノラマ画像は、例えば正距円筒図法などのデータフォーマットで生成された、全天球(前後左右上下全ての向き)の景色を含む画像である。なお、ここではパノラマ画像は、右目用画像の生成に用いられる右パノラマ画像と、左目用画像の生成に用いられる左パノラマ画像とを含むものとする。これら二つのパノラマ画像は、例えば左右に並んだ二つの全方位カメラによって実際の風景を撮影することで生成できる。また、視野範囲は、方向取得部51が取得した映像表示装置40の向きを表すヨー角、ピッチ角、及びロール角に応じて全天球の中から決定される範囲である。
具体的に、対象画像表示制御部52は、仮想空間内に球Sを配置するとともに、当該球Sの中心位置に、左右に並んだ2つの仮想カメラC1及びC2を配置する。図4はこの球S及び仮想カメラC1及びC2が配置された仮想空間を天頂方向から見た様子を示している。さらに対象画像表示制御部52は、球Sの内面に左パノラマ画像に基づいて生成されるテクスチャーを貼り付け、仮想カメラC1からこのテクスチャーが貼り付けられた球Sを見た様子を描画することで、左目用画像を生成する。同様に、球Sの内面に右パノラマ画像に基づいて生成されるテクスチャーを貼り付け、仮想カメラC2からこの球Sの内面を見た様子を描画することで、右目用画像を生成する。ここで、仮想カメラC1及びC2の向きは、映像表示装置40の向きに応じて決定されており、この仮想カメラC1及びC2の向きによって描画対象となる視野範囲が定められる。対象画像Tは、このようにして生成された左目用画像及び右目用画像の二つの画像を含んで構成される。この対象画像Tを映像表示装置40が表示することで、ユーザーはパノラマ画像に写っている景色を閲覧できる。
さらに本実施形態では、対象画像表示制御部52は、方向取得部51が取得した映像表示装置40の向きの変化に応じて、表示される対象画像Tをリアルタイムで更新する。より具体的に、対象画像表示制御部52は、映像表示装置40の向きが変化すると、その変化した向きと対応する方向に仮想カメラC1及びC2の向きを変化させる。例えば、映像表示装置40のピッチ角、及びヨー角が変化した場合には、この変化に連動させて仮想カメラC1及びC2双方の撮像方向を変化させる。また、映像表示装置40のロール角が変化した場合には、この変化に連動させて、左右方向に並んだ仮想カメラC1及びC2を球Sの中心を回転中心として傾けさせる。これにより、仮想カメラC1及びC2の視野範囲は映像表示装置40の向きの変化に連動して変化することになる。対象画像表示制御部52は、更新された視野範囲に基づいて球Sの内面の様子を再描画して対象画像Tを更新し、映像表示装置40に表示させる。対象画像表示制御部52は、このような映像表示装置40の向きの変化に応じた対象画像Tの再描画(更新)処理を、所定時間おきに繰り返し実行する。このような制御によれば、ユーザーが現実の景色を見ている場合に自分の顔を動かすと見える景色が変わるのと同じように、対象画像Tを更新することができる。そのため、パノラマ画像の撮影場所に実際にいるかのような臨場感をユーザーに与えることができる。
拡大画像表示制御部53は、対象画像Tの一部を拡大した拡大画像Eを映像表示装置40に表示させる。なお、以下では拡大の対象となる対象画像T内の領域を拡大対象領域Aという。例えば拡大画像表示制御部53は、ユーザーが操作デバイス20に対して拡大表示を指示する操作入力を実行した場合に、その時点で表示されている対象画像T内の拡大対象領域Aを拡大した拡大画像Eを生成し、映像表示装置40に表示させる。このとき、拡大画像Eの拡大率は、予め定められた値であってもよいし、ユーザーが拡大を指示する際の操作量などに応じて決定されてもよい。後者の場合、拡大画像Eの大きさが一定になるように、拡大率が大きくなるほど拡大対象領域Aの大きさを小さくすることとしてもよい。
特に本実施形態において、拡大画像表示制御部53は、拡大画像Eを映像表示装置40の表示領域全体に表示させるのではなく、拡大対象領域Aと重なる一部の領域のみを占有するように拡大画像Eを表示させる。すなわち、拡大画像Eは対象画像Tが表示されている表示領域の全体よりも小さい大きさで、対象画像Tと重なるように表示される。拡大画像Eの周囲の領域には、対象画像Tが表示され続けることになる。
図5及び図6は、ユーザーから見た拡大画像Eの見え方を示す図である。具体的に、図5は拡大画像Eを表示する前の対象画像Tの表示例を示しており、図6は図5の状態からユーザーの指示を受けて拡大画像Eが表示された状態の例を示している。なお、図5の破線は拡大対象領域Aを示している。図6に示されるように、拡大画像Eは対象画像Tの手前に重なるように表示され、拡大画像Eの周囲には図5で表示されていた対象画像Tがそのまま表示されている。なお、この図の例では、拡大対象領域Aの中心は対象画像Tの中心と一致しており、これに対応して拡大画像Eもその中心が対象画像Tの中心に一致するように配置されている。また、図6に示されるように、拡大画像表示制御部53は拡大画像Eを対象画像Tと明確に区別できるようにその外周に沿って枠線を表示してもよい。
図6に例示するような拡大画像Eが表示された状態でユーザーが顔の向きを変化させると、これに連動して対象画像T及び拡大画像Eの双方が更新される。具体的に、対象画像表示制御部52は、対象画像Tだけが表示されていた状態と同様に対象画像Tを更新する。そして、拡大画像表示制御部53は、対象画像Tの変化と連動するように、常に表示中の対象画像Tの中央近傍の拡大対象領域Aを拡大した拡大画像Eを表示する。このような制御によれば、拡大画像E内の表示要素は拡大されているために対象画像T内の表示要素よりも速く移動することになる。しかしながら、拡大画像Eが映像表示装置40の表示領域全体を占めず、その周囲の対象画像Tはこれまでと同様に更新されるので、ユーザーは違和感なく自分の顔の動きに合わせて更新される拡大画像Eを閲覧することができる。
なお、拡大画像Eが表示される際には、対象画像表示制御部52が対象画像Tにブラー処理を施すこととしてもよい。これにより、拡大画像Eが表示されている間は対象画像Tがぼやけて表示されるため、ユーザーが拡大画像Eに注目しやすくなる。
また、拡大画像表示制御部53は、立体映像として拡大画像Eを映像表示装置40に表示させる場合に、拡大画像Eが対象画像Tよりもユーザーに近い位置(奥行き方向に沿ったユーザーからの距離が短い位置)に見えるように制御してもよい。具体的に拡大画像表示制御部53は、映像表示装置40に表示される右目用画像と左目用画像における拡大画像Eの視差が、対象画像Tの視差よりも大きくなるように、右目用画像及び左目用画像それぞれに含まれる拡大画像Eの位置を決定する。図7は、このような表示を実現するための描画方法の一例を説明する図である。ここでは、仮想的な球Sの内側の、球Sの内面よりも仮想カメラC1及びC2に近い位置に、ウィンドウWが配置される。なお、この例におけるウィンドウWの配置位置の極座標は、仮想カメラC1及びC2の視野範囲の中心に位置するように決定される。拡大画像表示制御部53は、拡大対象領域Aを拡大した拡大画像EをこのウィンドウWにテクスチャーとして貼り付ける。この状態で対象画像表示制御部52は、仮想カメラC1及びC2のそれぞれからウィンドウW及び球Sの内面を見た様子を描画することにより、対象画像Tに含まれる右目用画像、及び左目用画像を生成する。これにより、拡大画像Eが対象画像Tよりも手間の近い位置に浮かんでいるように見えるため、ユーザーは違和感なく拡大画像Eを閲覧できる。
また、拡大画像表示制御部53は、映像表示装置40の向きの変化に応じて拡大画像Eを更新する場合に、拡大画像Eの表示位置が安定して見えるように、映像表示装置40の向きのわずかな変化を無視するようにしてもよい。このような制御は、カメラの手ぶれ補正と同様の処理によって実現できる。具体的に拡大画像表示制御部53は、映像表示装置40の向きを示す値(ここではピッチ角、及びヨー角)の変化量が所定の閾値未満の間は、拡大画像Eの表示を更新しないこととしてもよい。また、所定時間おきに取得されるピッチ角、及びヨー角の値に対してローパスフィルタ処理を施すことによって、これらの値が急激に変化しないようにしてもよい。このような制御によれば、ユーザーの意識しないわずかな顔の動きによって、拡大画像Eの表示内容が頻繁に更新されてしまうことを避けることができ、ユーザーが拡大画像Eを見やすくなる。
また、これまでの説明では、拡大対象領域A、及び拡大画像Eの中心は対象画像Tの中心と一致することとした。しかしながら、対象画像T内における拡大対象領域Aの位置、及び拡大画像Eの表示位置は、対象画像Tの中心からずれた位置であってもよい。特に、拡大画像表示制御部53は、映像表示装置40の向きが基準方向Rからずれるにしたがって、拡大対象領域Aが対象画像Tの中心から外周に近づくように制御してもよい。
以下、上述したような拡大対象領域Aの位置の制御例について説明する。ここでは、上下方向に沿ってユーザーが顔の向きを変化させた場合(すなわち、ピッチ角が変化する場合)に、拡大対象領域Aの位置を対象画像Tの中心から上下方向に沿ってずらすこととする。
この例では、映像表示装置40の向きが基準方向Rから変化していない場合、拡大対象領域Aの中心位置は対象画像Tの中心に一致するものとする。一方、ユーザーが顔を上方向、又は下方向に動かした場合、拡大対象領域Aの中心位置は対象画像Tの外周よりに移動する。より具体的に、映像表示装置40のピッチ角がθ°になった場合、拡大対象領域Aの中心位置は、映像表示装置40のピッチ角が(α・θ)°になった場合に表示されるべき対象画像Tの中心位置に一致するように決定される。ここでαは1より大きな補正係数である。
図8及び図9は、この場合の拡大対象領域Aの位置制御を説明するための図であって、パノラマ画像によって表される全天球の景色のうちの、対象画像Tとして表示される範囲、及び拡大対象領域Aとして表示される範囲の一例を示している。これらの図は、いずれもユーザーを横方向から見た場合を示しており、図8はユーザーが顔を水平方向(基準方向R)に向けている状態の例を、図9はユーザーが顔を真上に近い方向に向けている状態の例を、それぞれ示している。図8では、対象画像Tの中心と拡大対象領域Aの中心は一致しているが、図9では、拡大対象領域Aの中心は対象画像Tの中心よりも上側にシフトしている。このように、ユーザーが顔を上に向けるにつれて拡大対象領域Aの中心位置を対象画像Tの上辺よりに移動させることによって、ユーザーは自分の顔を完全に真上に向けなくとも天頂方向の景色を拡大させて閲覧することができる。なお、拡大画像表示制御部53は、ユーザーが顔を下方向に向けた場合にも、上方向に向けた場合と同様に拡大対象領域Aの中心が対象画像Tの下辺よりに遷移するよう制御することとする。一般に人は顔を真上や真下に向けにくいので、このような制御によれば、真上や真下の拡大画像Eを見やすくすることができる。
また、ユーザーが顔を基準方向Rから左右方向に変化させた場合にも、拡大対象領域Aの中心を対象画像Tの中心に対してユーザーが顔を向けた方向に遷移させてよい。このような制御によれば、ユーザーが顔を正面から離れた方向に向けた場合に、その方向の景色を拡大画像Eとして見やすくすることができる。なお、以上の例において、拡大画像表示制御部53は、拡大画像Eの中心が拡大対象領域Aの中心と一致するように拡大画像Eを表示することとする。ただし、これに限らず拡大画像表示制御部53は、拡大画像Eの中心が拡大対象領域Aの中心からずれるように拡大画像Eの対象画像T内における表示位置を決定してもよい。例えば拡大画像表示制御部53は、拡大対象領域Aの中心を対象画像Tの中心からずらした場合にも、拡大画像Eの中心は対象画像Tの中心に一致させた状態を維持することとしてもよい。
なお、拡大画像表示制御部53は、ユーザーが顔を傾けた状態で(すなわち、映像表示装置40のロール角が基準状態から変化した状態で)拡大画像Eを表示する際には、拡大画像Eの水平方向に沿った向きが変化しないように制御してもよい。例えば図7で示したようにウィンドウWを球S内に配置する場合、拡大画像表示制御部53は、映像表示装置40のヨー角及びピッチ角の変化に応じてウィンドウWの極座標を変化させる一方で、映像表示装置40のロール角が変化し、これに連動して仮想カメラC1及びC2を回転させた場合にも、ウィンドウWを回転させずにその向きを維持する。こうすると、対象画像T内における拡大画像Eの表示領域は、顔の傾きと逆向きに、同じ回転量だけ回転して表示されることになる。このような制御によれば、拡大画像Eの向きは映像表示装置40の傾きによらず常に水平方向に沿って維持されることになる。
なお、拡大画像表示制御部53は、例えばユーザーの操作デバイス20に対する指示操作に応じて拡大画像Eの表示を終了する。また、拡大画像表示制御部53は、映像表示装置40の向きが、拡大画像Eの表示を開始した際の向きから所定角度以上変化した場合に、拡大画像Eの表示を終了してもよい。また、対象画像T内に写っている所定のオブジェクトを拡大表示している場合、拡大対象領域Aがこの所定のオブジェクトを含まない位置まで移動した場合に、拡大画像Eの表示を終了してもよい。
以上説明した本実施形態に係る情報処理装置10によれば、拡大画像Eを対象画像Tの表示領域よりも小さい大きさで対象画像Tと重ねて表示することで、拡大画像Eを違和感なくユーザーに提示することができる。
なお、本発明の実施の形態は以上説明したものに限られない。例えば以上の説明では全天球の景色を含んだ静止画像であるパノラマ画像に基づいて対象画像Tを生成することとしたが、これに限らず、対象画像表示制御部52は、時間とともに変化するパノラマ映像に基づいて随時更新される対象画像Tを生成することとしてもよい。また、全天球ではなくより狭い範囲の景色を含むパノラマ画像又はパノラマ映像に基づいて対象画像Tを生成してもよい。
さらに、対象画像表示制御部52が時間とともに変化するパノラマ映像に基づいて生成した対象画像Tを表示する場合、拡大画像表示制御部53は、対象画像Tの変化に応じて拡大対象領域Aを時間とともに移動させてもよい。例えば拡大画像表示制御部53は、対象画像T内に写っている注目オブジェクト(動物や乗り物など、他の背景に対して相対的に移動している被写体)を特定し、この注目オブジェクトを含む領域を拡大対象領域Aとする。このような処理を所定時間おきに繰り返し実行し、拡大対象領域Aの位置をそのつど更新することで、注目オブジェクトを自動的に追尾し、拡大して表示させることができる。
また、対象画像表示制御部52は、現実の景色を表すパノラマ画像から対象画像Tを生成するのではなく、仮想空間内の様子を示す対象画像Tを生成してもよい。この場合、対象画像表示制御部52は、キャラクターや背景などを表す各種のオブジェクトが配置された仮想3次元空間を構築し、その内部に仮想カメラを配置する。そして、この仮想カメラから仮想空間内を見た様子を示す対象画像Tを生成する。この場合にも、前述したパノラマ画像から対象画像Tを生成する例と同様に、対象画像表示制御部52は、左右に並んだ二つの仮想カメラを仮想空間内に配置し、これら二つのカメラのそれぞれから仮想空間内を見た様子を示す画像を生成する。こうすれば、立体視に必要な右目用画像、及び左目用画像を対象画像Tとして生成することができる。さらに対象画像表示制御部52は、映像表示装置40の向きが変化した場合、その変化に連動するように仮想空間内に配置した仮想カメラの向きを変化させ、変化した仮想カメラの向きに基づいて対象画像Tを更新する。これによりユーザーは、あたかも仮想空間内にいるかのように仮想空間内の様子を閲覧することができる。さらにこの場合においても、拡大画像表示制御部53は、仮想空間内の注目オブジェクトが写っている対象画像T内の領域を、拡大対象領域Aとしてもよい。これにより、注目オブジェクトを自動的に追尾し、拡大画像Eとして表示させることができる。
また、以上の説明において中継装置30が実現するとした映像の補正などの処理は、情報処理装置10によって実現されてもよい。逆に、以上の説明において情報処理装置10が実現するとした処理の少なくとも一部は、中継装置30によって実現されてもよい。また、以上の説明において中継装置30が実現するとした処理の一部は、映像表示装置40に内蔵される集積回路によって実現されてもよい。さらに、以上の説明において中継装置30が実現するとした処理の全てが情報処理装置10及び映像表示装置40のいずれかによって実現される場合、中継装置30が存在せずともよい。