《第1の実施形態》
以下、本発明の第1の実施形態に係る流体制御装置111について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る流体制御装置111の天面側から視た流体制御装置111の外観斜視図である。図2は、図1に示す流体制御装置111の底面側から視た流体制御装置111の外観斜視図である。図3は、図1に示す流体制御装置111の分解斜視図である。図4は、図3に示す天板21の中央部の正面図である。図5は、図3に示す可動板24の中央部の正面図である。図6は、図3に示す底板23の中央部の正面図である。図7は、図3に示す天板21、可動板24及び底板23を接合したバルブ12の中央部の正面図である。図8は、図1に示すS−S線における断面図である。
流体制御装置111は、図1〜図3に示すように、バルブ12と圧電ブロア13と制御部14(図8参照)とを備えている。バルブ12は、図1、図3に示すように、流体制御装置111の天面側に配置されている。圧電ブロア13は、図2、図3に示すように、流体制御装置111の底面側に配置されている。バルブ12と圧電ブロア13とは互いに積層した状態で貼付されている。
バルブ12は、流体の流れを一方向にする機能を有している。バルブ12は、バルブ室40が内部に設けられた円筒容器状である。バルブ12は、図1、図3に示すように、天板21と、側壁板22と、底板23と、可動板24とを備えている。
なお、バルブ12は、本発明のバルブの一例に相当する。また、圧電ブロア13は、本発明のブロアの一例に相当する。天板21は、本発明の第1の板の一例に相当する。底板23は、本発明の第2の板の一例に相当する。
天板21と、側壁板22と、底板23とは、金属で構成されている。天板21と、側壁板22と、底板23とは、例えばステンレススチール(SUS)で構成される。
可動板24は、樹脂で構成されている。ここで、可動板24は、透明であることが好ましい。可動板24は、例えば半透明なポリイミドで構成される。
天板21は、バルブ12の天面側に配置されている。側壁板22は、天板21と底板23との間に設けられている。底板23は、バルブ12の底面側に設けられている。天板21と側壁板22と底板23とは互いに積層した状態で貼付されている。可動板24は、バルブ12の内部空間、即ちバルブ室40に設けられている。
天板21は、円板状である。側壁板22は、天面側から視て円環状である。底板23は、円板状である。天板21と側壁板22と底板23の外周径は、互いに一致している。
バルブ室40は、円柱状である。バルブ室40は、側壁板22の中央に所定の直径で設けられている。可動板24は、天面側から視て概略円板状である。可動板24は、側壁板22の厚みよりも薄い厚みに設定されている。
本実施形態では、側壁板22の厚み(バルブ室40の高さ)は、40μm以上50μm以下であり、可動板24の厚みは、5μm以上10μm以下に設定されている。また、可動板24は、圧電ブロア13からの吐出風によってバルブ室40の内部で上下動自在に可動するよう、極めて軽い質量に設定されている。
可動板24の外周径は、側壁板22におけるバルブ室40の開口径とほとんど一致しており、若干の隙間が空くように微小に小さく設定されている。そして、可動板24の外周の一部には、突起部25を設けている(図3参照)。
また、側壁板22の内周の一部には、突起部25が微小な隙間を空けた状態で嵌り込む切欠部26を設けている(図3参照)。このため、可動板24はバルブ室40の内部で、回転不能かつ上下動自在に保持される。
天板21の中央には、所定配列で並べられた複数の第1通気孔41が設けられている。また、底板23の中央には、所定配列で並べられた複数の第2通気孔43及び複数の補助孔49が設けられている。また、可動板24の中央には、所定配列で並べられた複数の第3通気孔42が設けられている。したがって、バルブ室40は、第1通気孔41を介して外部に通じるとともに、第2通気孔43を介してブロア室45に通じる。
ここで、複数の第1通気孔41と複数の第2通気孔43とは、互いに対向しないように配列されている。複数の補助孔49と複数の第1通気孔41とは、互いに対向するように配列されている。各補助孔49は、天板21のバルブ室40とは逆側の主面を正面視して、各第1通気孔41と重なる。また、各補助孔49の中心軸と各第1通気孔41の中心軸とは一致している。
さらに、複数の第3通気孔42と複数の第1通気孔41とは、互いに対向しないように配列されている。複数の第3通気孔42と複数の補助孔49とは、互いに対向しないように配列されている。複数の第3通気孔42と複数の第2通気孔43とは、互いに対向するように配列されている。
また、底板23は、図6に示すように、複数の縁部50を有する。各縁部50は各補助孔49を囲む。各縁部50は、天板21のバルブ室40とは逆側の主面を正面視して、各第1通気孔41と重なる。
次に、圧電ブロア13は、圧電素子33への電圧印加により屈曲変形する振動体36を用いたポンプの一種である。圧電ブロア13は、図2、図3に示すように、ブロア室45が内部に設けられた円筒容器状である。
圧電ブロア13は、振動調整板54と、側壁板31と、振動板32と、圧電素子33と、を備えている。振動調整板54と、側壁板31と、振動板32とは、金属で構成されている。振動調整板54と、側壁板31と、振動板32とは、例えばステンレススチールで構成される。
側壁板31は、底板23と振動板32との間に配置されている。振動板32は、側壁板31と圧電素子33との間に配置されている。圧電素子33は、圧電ブロア13の底面側に配置されている。側壁板31は、底板23の底面に積層した状態で貼付されている。また、側壁板31と振動板32と圧電素子33とは互いに積層した状態で貼付されている。
振動調整板54は、底板23の振動領域の調整のために設けている。具体的には、振動調整板54は、底板23と側壁板31との間に配置した状態で貼付されている。振動調整板54は、天面側から視て円環状である。
振動調整板54の中央には、ブロア上室55が所定の開口径で設けられている。ブロア上室55は、ブロア下室48よりも開口径が小さい。ブロア上室55及びブロア下室48は、ブロア室45を構成する。また、振動体36は、ブロア室45が半径aとなるよう形成されている。また、振動調整板54と側壁板31とは、互いの外周径が互いに一致している。
なお、この振動調整板54が底板23に設けられることにより、底板23の外周部付近で剛性を部分的に高めることができる。これにより、底板23をブロア上室55に面する中央部付近のみで振動させ、底板23の外周部付近でほとんど振動が生じない状態にすることができる。
したがって、底板23の振動が生じる範囲を、振動調整板54におけるブロア上室55の開口径によって設定することができる。これにより、底板23の振動領域や構造共振周波数を、底板23の板厚や外周径などを変更せずに容易に調整することができる。
なお、流体振動や可動板24の振動には、底板23の中央部付近の振動が主体的に寄与するため、底板23の外周部付近が振動しなくても、バルブ12の応答性の向上や吸引流量の増大といった効果は十分に得ることができる。
側壁板31は、天面側から視て円環状である。側壁板31の中央には、ブロア下室48が所定の開口径で設けられている。
また、振動板32は、外周部34と、複数の梁部35と、振動体36と、を備えている。外周部34は円環状である。振動体36は円板状である。振動体36は、外周部34の開口内に、外周部34との間に隙間を空けた状態で配置されている。複数の梁部35は、外周部34と振動体36との間の隙間に設けられ、振動板32の周方向に沿って延び、振動体36と外周部34との間を連結している。
したがって、振動体36は、梁部35を介して中空に支持されており、厚み方向に上下動自在となっている。外周部34と振動体36との間の隙間部分(開口部)は吸入孔46として設けられている。
なお、側壁板31および振動板32の外周部34は、互いの外周径および開口径が互いに一致している。側壁板31および振動板32の外周径は、バルブ12の外周径よりも一定寸法だけ小さく設定している。
圧電素子33は、天面側から視て振動体36よりも半径が小さい円板状である。圧電素子33は、振動体36の底面に貼り付けられている。圧電素子33は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスから構成されている。圧電素子33は、圧電材料で構成されるため、応答性に優れる。そのため、圧電素子33は、高周波駆動を実現できる。
圧電素子33の両主面には、図示していない電極が形成されており、この電極を介して制御部14から駆動電圧が印加される。圧電素子33は、印加される駆動電圧に応じて面方向に伸縮する圧電性を有している。
したがって、圧電素子33に駆動電圧が印加されると、圧電素子33が面方向に伸縮し、振動体36には同心円状の屈曲振動が生じる。この屈曲振動によって、振動体36を弾性支持する梁部35にも振動が生じ、これにより振動体36が上下に変位するように振動する。このように圧電素子33と振動体36とは、アクチュエータ37を構成し、一体的に振動する。
制御部14は、例えばマイクロコンピュータで構成される。制御部14は、本実施形態において、圧電素子33の駆動周波数をブロア室45の共振周波数に調整する。ブロア室45の共振周波数とは、ブロア室45の中心部で発生した圧力振動と、その圧力振動が外周部側に伝搬して反射し、再びブロア室45の中心部に到達する圧力振動とが、共振する周波数のことである。
このように調整すると、平面方向の中心部付近が屈曲振動の腹となり、平面方向の外周部付近が屈曲振動の節となる。すなわち、ブロア室45において、平面方向に定在波状の圧力分布が生じることになる。
これにより、ブロア室45の平面方向の中心部に対向して設けられている第2通気孔43の近傍では、流体の圧力変動が大きくなり、ブロア室45の平面方向の外周部に対向して設けられている吸入孔46の近傍では、流体の圧力変動がほとんどなくなる。
したがって、吸入孔46をブロア室45の平面方向の外周部に連通させておけば、吸入孔46に弁などを設けなくても、吸入孔46を介した圧力損失がほとんど生じなくなる。したがって、吸入孔46を任意の形状やサイズとすることができ、流体の流量を大きく稼ぐことなどが可能になる。
なお、圧電素子33は、本発明の駆動体の一例に相当する。底板23と振動調整板54と側壁板31とは、本発明の筐体の一例を構成する。
次に、圧電ブロア13が駆動している間における、流体制御装置111の空気の流れを説明する。
図9は、図1に示す圧電ブロア13が駆動している間における、流体制御装置111の空気の流れを示す側面断面図である。図10は、図9(A)に示す瞬間における、補助孔49周辺の空気の流れを示す拡大断面図である。図9、図10に示す矢印は、空気の流れを示している。
図8に示す状態において、制御部14が1次モードの周波数(基本波)の交流駆動電圧を圧電素子33の両主面の電極に印加すると、圧電素子33は伸縮し、振動体36を1次モードの共振周波数fで同心円状に屈曲振動させる。これにより、図9(A)(B)に示すように、アクチュエータ37が屈曲変形してブロア室45の体積が周期的に変化する。
なお、ブロア室45の半径aと振動体36の共振周波数fとは、ブロア室131を通過する空気の音速をcとし、第1種ベッセル関数J0(k0)=0の関係を満たす値をk0としたとき、0.8×(k0c)/(2π)≦af≦1.2×(k0c)/(2π)の関係を満たす。
本実施形態において、共振周波数fは、21kHzである。空気の音速cは、340m/sである。k0は、2.40である。第1種ベッセル関数J0(x)は、以下の数式で示される。
また、ブロア室45の各点の圧力変化分布u(r)は、ブロア室45の中心軸Cからの距離をrとしたとき、u(r)=J0(k0r/a)の式で表される。
図9(A)に示すように、振動体36が底面側に屈曲する際には、ブロア室45の圧力が減少し、バルブ室40において可動板24は底板23側に引き寄せられて底板23に接触する。
これにより、可動板24は第1通気孔41を開く。そのため、外部の空気が第1通気孔41を介してバルブ室40へ吸引され、第3通気孔42及び第2通気孔43を介してブロア室45へ吸引される。
また、図9(B)に示すように、振動体36が天面側に屈曲する際には、ブロア室45の圧力が増加し、第2通気孔43からバルブ室40に向けて吐出風が生じる。この吐出風により、可動板24が天面側に押されて天板21に接触する。
これにより、可動板24は第1通気孔41を塞ぐ。そのため、ブロア室45の空気が第2通気孔43を介してバルブ室40へ吸引されるが、バルブ室40から外部への空気の流れが阻止される。
さらに、バルブ12では、アクチュエータ37の振動が圧電ブロア13から直接伝搬することや、空気を介して間接的に伝わることによって天板21に振動が生じる。
これにより、天板21も厚み方向に上下動するように弾性変形する。図9(B)に示すように、アクチュエータ37が天面側に屈曲してブロア室45の空気を第2通気孔43からバルブ室40に吐出する際に、天板21はアクチュエータ37と同様に天面側に屈曲する。これにより、バルブ室40の体積が増加する。
一方、図9(A)に示すように、アクチュエータ37が底面側に屈曲する際には、図9(B)に示した状態からの反作用で天板21は底面側に屈曲する。これにより、バルブ室40の体積が減少する。
したがって、バルブ室40において可動板24が底面側に引き寄せられる際の移動距離および移動時間が短縮されたものになる。これにより、可動板24が空気圧の変動に追従することが可能になり、バルブ12が応答性の高いものになる。
なお、アクチュエータ37の振動が圧電ブロア13から直接伝搬することや、空気を介して間接的に伝わることによって、底板23を振動させることもある。
また、af=(k0c)/(2π)である場合、振動体36の振動の節Fが、ブロア室131の圧力振動の節と一致し、圧力共振が生じる。さらに、0.8×(k0c)/(2π)≦af≦1.2×(k0c)/(2π)の関係を満たす場合でも、振動体36の振動の節Fが、ブロア室45の圧力振動の節とほぼ一致する。
圧電ブロア13は、例えば鼻水や痰などの粘度の高い液体を吸引する用途に使用される。長期駆動に伴う圧電素子の破損を防ぐためには、圧電素子の振動速度は2m/s以下とする必要がある。鼻水や痰の吸引には20kPa以上の圧力が必要なため、圧電ブロア13には、10kPa/(m/s)以上の圧力振幅が必要である。圧力振幅は、afが130m/sであるときに最大となる。そこから±20%ずれても、圧力振幅は、10kPa/(m/s)以上得られる。
そのため、0.8×(k0c)/(2π)≦af≦1.2×(k0c)/(2π)の関係を満たす場合、圧電ブロア13は、鼻水や痰などの粘度の高い液体を吸引する用途に使用することが可能な、高い吸引圧力および高い吸引流量を実現できる。
ここで、圧電ブロア13が駆動している間、図9(A)に示す瞬間には、図10に示すように、第1通気孔41に対向する可動板24の領域が、第1通気孔41からバルブ室40への吸引風によって、補助孔49側へ変形する。これにより、天板21と可動板24との隙間hが大きくなる。すなわち、底板23が補助孔49を有さない場合と比べて、バルブ12の流路抵抗が小さくなり、空気の流量が増大する。
したがって、流体制御装置111のバルブ12によれば、圧電ブロア13に吸引される空気の流量をできるだけ低下させずに通過させることができる。そのため、図7に示すように、天板21の4つの第1通気孔41と底板23の4つの補助孔49とがX方向またはY方向へズレないよう精密に位置合わせを行う必要がある。
そこで、バルブ12では底板23は、図7に示すように、天板21のバルブ室40とは逆側の主面を正面視して、第1通気孔41と重なり、補助孔49を囲む縁部50を有する。また、可動板24が透明である。
そのため、可動板24を挟んで天板21及び底板23を貼り合わせる時、製造者は、天板21の4つの第1通気孔41から縁部50を覗いて、X方向またはY方向へズレないよう4つの補助孔49の位置を微調整できる。すなわち、製造者は、天板21及び底板23を容易に位置合わせできる。
したがって、流体制御装置111のバルブ12によれば、可動板24を挟んだ天板21及び底板23の位置ズレを容易に検査することができる。
なお、前記実施形態では、可動板24は透明であるが、これに限るものではない。実施の際、可動板24が透明でなくても、超音波などを天板21のバルブ室40とは逆側から照射することでも、製造者は、X方向またはY方向へズレないよう4つの補助孔49の位置を微調整できる。
≪第2の実施形態≫
次に、本発明の第2の実施形態に係る流体制御装置211について説明する。
図11は、本発明の第2の実施形態に係る流体制御装置211に備えられる底板223の中央部の正面図である。図12は、天板21、可動板24及び図11に示す底板223を接合したバルブ212の中央部の正面図である。図13は、図11に示す流体制御装置211に備えられる圧電ブロア13が駆動している間における、補助孔249周辺の空気の流れを示す拡大断面図である。図13に示す矢印は、空気の流れを示している。
流体制御装置211が流体制御装置111と相違する点は、底板223が、補助孔249の間を区切る桟部248X,248Yを有する点である。その他の点については同じであるため、説明を省略する。
この構成においても、圧電ブロア13が駆動している間、図13に示すように、第1通気孔41に対向する可動板24の領域が、第1通気孔41からバルブ室40への吸引風によって、補助孔249側へ変形する。これにより、天板21と可動板24との隙間hが大きくなる。すなわち、底板223が補助孔249を有さない場合と比べて、バルブ212の流路抵抗が小さくなり、空気の流量が増大する。
したがって、流体制御装置211のバルブ212によれば、圧電ブロア13から吸引される空気の流量をできるだけ低下させずに通過させることができる。そのため、図12に示すように、天板21の4つの第1通気孔41と底板223の8つの補助孔249とがX方向またはY方向へズレないよう精密に位置合わせを行う必要がある。
そこで、バルブ212では底板223は、図7に示すように、天板21のバルブ室40とは逆側の主面を正面視して、第1通気孔41と重なり、補助孔249を囲む縁部250を有する。縁部250は、補助孔249の間を区切る桟部248X,248Yを含む。また、可動板24は透明である。
そのため、可動板24を挟んで天板21及び底板223を貼り合わせる時、製造者は、天板21の4つの第1通気孔41から桟部248X,248Y(縁部250の一部)を覗いて、X方向またはY方向へズレないよう8つの補助孔249の位置を微調整できる。すなわち、製造者は、天板21及び底板223を容易に位置合わせできる。
したがって、流体制御装置211及びバルブ212によれば、可動板24を挟んだ天板21及び底板223の位置ズレを容易に検査することができる。
なお、前記実施形態では、可動板24は透明であるが、これに限るものではない。実施の際、可動板24が透明でなくても、超音波などを天板21のバルブ室40とは逆側から照射することでも、製造者は、X方向またはY方向へズレないよう8つの補助孔249の位置を微調整できる。
また、この構成では、各補助孔249の間に桟部248があるため、図13に示すように可動板24が桟部248に接触する。そのため、桟部248は、可動板24の変形を抑制する。よって、吸引風が急激に大きくなった場合など、可動板24が破損することを防止できる。これにより、バルブ212及び流体制御装置211の耐久性が向上する。
≪第3の実施形態≫
以下、本発明の第3実施形態に係る流体制御装置311について説明する。
図14は、本発明の第3実施形態に係る流体制御装置311の外観斜視図である。図15は、図14に示す流体制御装置311の外観斜視図である。図16は、図14に示す振動板141及び圧電素子47の外観斜視図である。図15及び図16は、流体制御装置311の底面側から見た図である。図17は、図14に示す流体制御装置311のU−U線の断面図である。図18は、図14に示す流体制御装置311を1次モードの周波数(基本波)で動作させた時における流体制御装置311のU−U線の断面図である。
流体制御装置311が流体制御装置111と相違する主な点は、前述のバルブ12が圧電ブロア300の吸引孔324に装着されている点である。
まず、流体制御装置311は、圧電ブロア300と、吐出弁80と、吸引弁に相当するバルブ12と、を備える。吐出弁80は圧電ブロア300の吐出孔124に装着されている。バルブ12は圧電ブロア300の吸引孔324に装着されている。バルブ12の全ての第2通気孔43は圧電ブロア300の吸引孔324に連通している。
圧電ブロア300は、上から順に、筐体17、振動板141、圧電素子47、及び筐体317を備え、それらが順に積層された構造を有している。
なお、この実施形態では、圧電素子47が本発明の「駆動体」に相当する。
振動板141は、円板状であり、例えばステンレススチール(SUS)から構成されている。例えば振動板141の厚みは、0.6mmである。例えば吐出孔124の直径は、0.6mmである。
振動板141は、図16に示すように、前述の振動板32と同じ形状である。振動板141は、前述の振動板32と同じ様に、外周部134と、複数の梁部135と、振動体136と、を備えている。振動板141は、開口部62を有する。開口部62は、振動体136を囲むよう、振動板141のほぼ全周にわたって形成されている。
ここで、外周部134は円環状である。振動体136は円板状である。振動体136は、外周部134の開口内に、外周部134との間に隙間を空けた状態で配置されている。複数の梁部135は、外周部134と振動体136との間の隙間に設けられ、振動板141の周方向に沿って延び、振動体136と外周部134との間を連結している。
したがって、振動体136は、梁部135を介して中空に支持されており、厚み方向に上下動自在となっている。
振動板141は、第1主面141Aと第2主面141Bとを有する。振動板141の第2主面141Bは、筐体17の先端に接合している。これにより、振動板141は、筐体17とともに振動体136を振動体136の厚み方向から挟んで円柱形状のブロア室131を構成する。また、振動板141および筐体17は、ブロア室131が半径aとなるよう形成されている。例えば本実施形態においてブロア室131の半径aは、6.1mmである。
ブロア室131は、振動板141の第2主面141Bを正面視して、開口部62より内側の空間(より正確には、全ての開口部62を結んで構成される円環より内側の空間)を指す。そのため、振動板141の第2主面141Bにおける開口部62より内側の領域(より正確には、全ての開口部62を結んで構成される円環より内側の領域)は、ブロア室131の底面を構成する。振動板141は例えば、金属板に対して打ち抜き加工を施すことにより形成される。
圧電素子47は、円板形状であり、例えばチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスから構成されている。圧電素子47の両主面には、電極が形成されている。圧電素子47は、振動板141のブロア室131とは逆側の第1主面141Aに接合されており、印加された交流電圧に応じて伸縮する。圧電素子47及び振動体136は、アクチュエータ70を構成する。
筐体17は、下方が開口した断面コ字状に形成されている。筐体17の先端は、振動板141に接合している。筐体17は、例えば金属から構成されている。
筐体17は、振動板141の第2主面141Bに対向する円板状の天板部18と、天板部18に接続する円環状の側壁部19と、を有する。天板部18の一部は、ブロア室131の天面を構成する。
なお、この実施形態では、ブロア室131が本発明の「第1ブロア室」に相当する。
天板部18は、ブロア室131の中央部をブロア室131の外部と連通させる円柱状の吐出孔124を有する。ブロア室131の中央部とは、振動板141の第1主面141Aを正面視して圧電素子47と重なる部分である。天板部18には、ブロア室131の外部から吐出孔124を介して内部へ気体が流れることを防ぐ吐出弁80が設けられている。
次に、筐体317は、上方が開口した断面コ字状に形成されている。筐体317の先端は、振動板141の第1主面141Aに接合している。筐体317は、例えば金属から構成されている。
これにより、筐体317は、アクチュエータ70とともに振動体136を振動体136の厚み方向から挟んで円柱形状のブロア室331を構成する。また、振動板141および筐体317は、ブロア室331が半径aとなるよう形成されている。すなわち、ブロア室331は、ブロア室131と同じ半径aを有している。
本実施形態において振動板141の開口部62は、ブロア室131の外周をブロア室331の外周と連通させる。開口部62は、ブロア室331を囲むよう、振動板141のほぼ全周にわたって形成されている。そのため、アクチュエータ70の吸引孔324側の面における開口部62より内側の領域(より正確には、全ての開口部62を結んで構成される円環より内側の領域)は、ブロア室331の底面を構成する。
筐体317は、振動板141の第1主面141Aに対向する円板状の天板部318と、天板部318に接続する円環状の側壁部319と、を有する。天板部318の一部は、ブロア室331の天面を構成する。
なお、この実施形態では、筐体17及び筐体317が本発明の「筐体」を構成する。また、ブロア室131が本発明の「第1ブロア室」に相当し、ブロア室331が本発明の「第2ブロア室」に相当する。
天板部318は、ブロア室331の中央部を筐体317の外部と連通させる円柱状の吸引孔324を有する。ブロア室331の中央部とは、振動板141の第1主面141Aを正面視して圧電素子47と重なる部分である。例えば吸引孔324の直径は、0.6mmである。
以下、流体制御装置311の動作時における空気の流れについて説明する。
図18は、図13に示す流体制御装置311を1次モードの周波数(基本波)で動作させた時における流体制御装置311のU−U線の断面図である。図18(A)は、ブロア室131の容積が最も増大し、ブロア室331の容積が最も減少したときの図であり、図18(B)は、ブロア室131の容積が最も減少し、ブロア室331の容積が最も増大したときの図である。ここで、図中の矢印は、空気の流れを示している。
図17に示す状態において、1次モードの周波数(基本波)の交流駆動電圧が圧電素子47の両主面の電極に印加されると、圧電素子47は、伸縮し、振動体136を1次モードの共振周波数fで同心円状に屈曲振動させる。
同時に、天板部18は、アクチュエータ70の屈曲振動に伴うブロア室131の圧力変動により、アクチュエータ70の屈曲振動に伴って(この実施形態では振動位相が180°遅れて)1次モードで同心円状に屈曲振動する。
天板部318も、アクチュエータ70の屈曲振動に伴うブロア室331の圧力変動により、アクチュエータ70の屈曲振動に伴って(この実施形態では振動位相が180°遅れて)1次モードで同心円状に屈曲振動する。
これにより、図18(A)(B)に示すように、ブロア室131、331の体積が周期的に変化する。
なお、ブロア室131の半径aと振動板141の共振周波数fとは、ブロア室131を通過する空気の音速をcとし、第1種ベッセル関数J0(k0)=0の関係を満たす値をk0としたとき、0.8×(k0c)/(2π)≦af≦1.2×(k0c)/(2π)の関係を満たす。
さらに、ブロア室331の半径aと振動板141の共振周波数fとも、0.8×(k0c)/(2π)≦af≦1.2×(k0c)/(2π)の関係を満たす。本実施形態において、共振周波数fは、21kHzである。空気の音速cは、340m/sである。k0は、2.40である。
また、ブロア室131の各点の圧力変化分布u(r)は、ブロア室131の中心軸Cからの距離をrとしたとき、u(r)=J0(k0r/a)の式で表される。ブロア室331の各点の圧力変化分布u(r)も、u(r)=J0(k0r/a)の式で表される。
図18(A)に示すように、振動板141が圧電素子47側へ屈曲すると、天板部18は圧電素子47とは逆側へ屈曲し、ブロア室131の容積が増大する。さらに、天板部318は圧電素子47側へ屈曲し、ブロア室331の容積が減少する。
このとき、ブロア室131の中央部の圧力が低下するため、吐出弁80が閉じる。また、ブロア室331の中央部の圧力が増加するため、バルブ12が閉じる。これにより、ブロア室331の中央部の空気が開口部62を介してブロア室131に吸引される。
図18(B)に示すように、振動板141がブロア室131側へ屈曲すると、天板部18は圧電素子47側へ屈曲し、ブロア室131の容積が減少する。さらに、天板部318は圧電素子47とは逆側へ屈曲し、ブロア室331の容積が増大する。
このとき、ブロア室131の中央部の圧力が増加するため、吐出弁80が開き、ブロア室131の中央部の空気が吐出孔124を介して筐体17の外部へ吐出される。また、このとき、ブロア室331の中央部の圧力が低下するため、バルブ12が開く。これにより、圧電ブロア300外部の空気が吸引孔324を介してブロア室331内に吸引される。
以上のように、圧電ブロア300は、アクチュエータ70の駆動時、吸引孔324を介して筐体317の外部をブロア室331へ吸引し、ブロア室131の空気を吐出孔124を介して筐体17の外部へ吐出する。
また、圧電ブロア300では、振動板141の振動に伴い天板部18、318が振動するため、実質的に振動振幅を増すことができる。これにより、本実施形態の圧電ブロア300は、吸引圧力と吸引流量を増加させることができる。
ここで、図18(A)(B)に示すように、ブロア室331の容積が減少した時にブロア室131の容積が増大し、ブロア室131の容積が減少した時にブロア室331の容積が増大する。すなわち、ブロア室131の容積とブロア室331の容積とは、逆位相で変化する。
そのため、ブロア室131の外周の空気とブロア室331の外周の空気とはアクチュエータ70の駆動時、開口部62を介して移動する。よって、ブロア室131の外周の圧力とブロア室331の外周の圧力とはアクチュエータ70の駆動時、開口部62を介して相殺され、常に大気圧(節)となる。
そして、af=(k0c)/(2π)である場合、振動板141の振動の節Fが、ブロア室131の圧力振動の節とブロア室331の圧力振動の節とに一致し、圧力共振が生じる。さらに、0.8×(k0c)/(2π)≦af≦1.2×(k0c)/(2π)の関係を満たす場合でも、振動板141の振動の節Fが、ブロア室131の圧力振動の節とブロア室331の圧力振動の節とに、ほぼ一致する。
圧電ブロア300は、例えば鼻水や痰などの粘度の高い液体を吸引する用途に使用される。長期駆動に伴う圧電素子の破損を防ぐためには、圧電素子の振動速度は2m/s以下とする必要がある。鼻水や痰の吸引には20kPa以上の圧力が必要なため、圧電ブロア300には、10kPa/(m/s)以上の圧力振幅が必要である。圧力振幅は、afが130m/sであるときに最大となる。そこから±20%ずれても、圧力振幅は、10kPa/(m/s)以上得られる。
そのため、0.8×(k0c)/(2π)≦af≦1.2×(k0c)/(2π)の関係を満たす場合、圧電ブロア300は、吐出孔124及び吸引孔324の両方から、高い吸引圧力および高い吸引流量を実現できる。圧電ブロア300は、消費電力を増加させることなく、1つの駆動体でほぼ2倍の吸引圧力を生じさせることができる。
また、流体制御装置311は前述のバルブ12を備える。そのため、流体制御装置311は、流体制御装置111と同様に、可動板24を挟んだ天板21及び底板23の位置ズレを容易に検査することができる。
≪その他の実施形態≫
なお、前記実施形態では流体として空気を用いているが、これに限るものではない。当該流体が、空気以外の気体にも適用できる。
また、前記実施形態では、バルブや圧電ブロアを構成する各板はSUSから構成されているが、これに限るものではない。例えば、アルミニウム、チタン、マグネシウム、銅などの他の材料から構成してもよい。
また、前記実施形態ではブロアの駆動源として圧電素子を設けたが、これに限るものではない。例えば、電磁駆動でポンピング動作を行うブロアとして構成されていても構わない。
また、前記実施形態では、圧電素子はチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスから構成されているが、これに限るものではない。例えば、ニオブ酸カリウムナトリウム系及びアルカリニオブ酸系セラミックス等の非鉛系圧電体セラミックスの圧電材料などから構成してもよい。
また、前記実施形態ではユニモルフ型の圧電振動子を使用しているが、これに限るものではない。振動体36の両面に圧電素子33を貼着したバイモルフ型の圧電振動子を使用してもよい。同様に、振動体136の両面に圧電素子47を貼着したバイモルフ型の圧電振動子を使用してもよい。
また、前記実施形態では円板状の圧電素子33、47、円板状の振動体36、136を用いたが、これに限るものではない。例えば、これらの形状が矩形や多角形であってもよい。
また、前記実施形態では、k0が2.40の条件を用いたが、これに限るものではない。5.52、8.65、11.79、14.93など、k0は、J0(k0)=0の関係を満たす値であれば良い。
また、前記実施形態では、1次モードの周波数で圧電ブロアの振動板を屈曲振動させたが、これに限るものではない。実施の際は、複数の振動の腹を形成する、3次モード以上の奇数次の振動モードで振動板を屈曲振動させても良い。
また、前記実施形態では、ブロア室45、131、331の形状が円柱形状であるが、これに限るものではない。実施の際は、ブロア室の形状が正角柱形状であっても良い。この場合、ブロア室の半径aの代わりに、ブロア室の中心軸Cからブロア室の外周Fまでの最短距離aを使用する。
また、前記第3実施形態では、バルブ12の全ての第2通気孔43は圧電ブロア300の吸引孔324に接続しているが、これに限るものではない。実施の際、バルブ212の全ての第2通気孔43が圧電ブロア300の吸引孔324に接続していてもよい。
最後に、前述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、前述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。