JP6567379B2 - リチウム二次電池の充放電方法 - Google Patents
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Description
このようなリチウム二次電池は、正極と負極との間でリチウムイオンを移動させて充放電を行う。リチウム二次電池の正極活物質は、現在、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)等のリチウム含有金属酸化物、またはリン酸鉄リチウム(LiFePO4)等のリン酸金属リチウムが実用化され、または商品化を目指して開発が進められている。
負極活物質は、グラファイトなどの炭素材料またはチタン酸リチウム(Li4Ti5O12)が用いられ、これら活物質を含む正極と負極の間には、内部短絡を防止するためのセパレータが介在されている。セパレータは、一般的にポリオレフィンからなる微孔性薄膜が使用されている。
しかしながら、負極活物質に金属リチウムを用いるリチウム二次電池は充放電の繰り返しにおいて、負極の金属リチウム表面からリチウムがデンドライト状に成長し、デンドライト状のリチウムが正極と負極の間に介在したセパレータを貫通して正極に達し、内部短絡を起こす課題があった。
このようなことから、例えば特許文献1には正極の主活物質としてLiCoO2を、副活物質として初期から放電可能な材料、例えば二酸化マンガン、を用いる非水電解質二次電池が記載されている。
特許文献1の第2頁左上欄には、リチウムのデンドライト状の成長のメカニズムが記載されている。デンドライト状の成長の主な要因は、1)電池組立直後の負極の金属リチウムの表面に炭酸リチウムまたは水酸化リチウムのような不活性被膜が形成されていること、2)正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO2)を用いた場合、充放電サイクルが充電から始まり、初回の充電時において、正極から放出されたリチウムイオン(Li+)が負極の金属リチウム表面にリチウムとして還元析出し、負極の金属リチウム表面に形成された不活性被膜が除去されないこと、である。負極の金属リチウム表面の不活性被膜が除去されないと、リチウムが負極の金属リチウム表面に不均一に析出し、その後の充放電サイクルの充電時に、負極表面に析出するリチウムがデンドライト状に成長し、セパレータを貫通して正極に達し、内部短絡を起こす。
本発明は、前記課題を解決し、リチウム二次電池に組込んだ時に初回から放電が可能で、充放電の繰り返しにおいて負極の金属リチウム表面からリチウムがデンドライト状に成長するのを抑制しつつ、充放電時に高い安定性を示すことによって、リチウム二次電池の高容量化と充放電サイクル特性の向上とを同時に達成することが可能なリチウム二次電池用正極活物質を提供する。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な一般式Li4Mn5-xM1xO12(ここで、M1はCo、Ni、Fe、Cu、Mg、Zn、Al、CrおよびGaからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上の元素、xは0≦x<5、である)にて表されるリチウムマンガン系複合酸化物を第1の活物質として含み、
前記第1の活物質は、前記正極活物質の総量に対して1質量%以上40質量%以下の割合で含有することを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質が提供される。
また、本発明によると、金属リチウムを負極活物質として含む負極を備えたリチウム二次電池に用いる正極活物質であって、
リチウムを吸蔵および放出することが可能な一般式Li4M25O12(ここで、M2はCo、Ni、Fe、CuおよびCrからなる群より選ばれた少なくとも1つ以上の元素である)にて表されるリチウム遷移金属複合酸化物を第1の活物質として含み、
前記第1の活物質は、前記正極活物質の総量に対して1質量%以上40質量%以下の割合で含有することを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質が提供される。
前記正極活物質は、リチウムを吸蔵および放出することが可能な一般式Li4Mn5-xM1xO12(ここで、M1はCo、Ni、Fe、Cu、Mg、Zn、Al、CrおよびGaからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上の元素、xは0≦x<5、である)にて表されるリチウムマンガン系複合酸化物を第1の活物質として含み、
前記第1の活物質は、前記正極活物質の総量に対して1質量%以上40質量%以下の割合で含有し、
前記負極は、金属リチウムを負極活物質として含むことを特徴とするリチウム二次電池が提供される。
前記正極活物質は、リチウムを吸蔵および放出することが可能な一般式Li4M25O12(ここで、M2はCo、Ni、Fe、CuおよびCrからなる群より選ばれた少なくとも1つ以上の元素である)にて表されるリチウム遷移金属複合酸化物を第1の活物質として含み、
前記第1の活物質は、前記正極活物質の総量に対して1質量%以上40質量%以下の割合で含有し、
前記負極は、金属リチウムを負極活物質として含むことを特徴とするリチウム二次電池が提供される。
実施形態に係るリチウム二次電池用正極活物質は、金属リチウムを負極活物質として含む負極を備えたリチウム二次電池に用いる正極活物質であって、リチウムを吸蔵および放出することが可能な一般式Li4Mn5-xM1xO12(ここで、M1はCo、Ni、Fe、Cu、Mg、Zn、Al、CrおよびGaからなる群より選ばれた少なくとも1つ以上の元素、xは0≦x<5である)にて表されるリチウムマンガン系複合酸化物を第1の活物質として含む。第1の活物質は、前記正極活物質の総量に対して1質量%以上40質量%以下の割合で含有する。
Li4Mn5O12+3Li++3e-⇔Li7Mn5O12 …(1)
なお、前記式(1)において右方向の反応が放電反応、左方向の反応が充電反応である。
従って、前述したリチウム二次電池の組立後の充放電を放電から始めることが可能であること、正極括物質中のリチウムマンガン系複合酸化物の含有割合を規定することによって、初回放電において、負極の金属リチウム表面からのリチウムイオンの放出量を著しく増大できる。負極の金属リチウム表面からのリチウムイオンの放出は、電池組立直後の負極の金属リチウム表面に形成された炭酸リチウムまたは水酸化リチウムのような不活性被膜を破壊して除去できる。初回放電後の充電において、リチウムマンガン系複合酸化物を含む正極活物質からリチウムイオンが放出され、当該リチウムイオンは負極の金属リチウム表面でリチウムを還元析出する。この還元析出において、金属リチウム表面は不活性被膜が除去されているため、リチウムは金属リチウム表面に偏って析出することなく、金属リチウム表面に均一に析出する。その結果、充放電の繰り返しにおいて、負極の金属リチウム表面からリチウムがデンドライト状に成長するのを抑制して、リチウムのデンドライト状の成長に伴う負極と正極間の内部短絡を防止できる。それ故、単位重量当たりの電気量が3.86Ah/gと大きい特徴を持つ金属リチウムを負極活物質として安全に使用できるため、リチウム二次電池の高容量化を実現することができる。
実施形態に係るリチウムマンガン系複合酸化物、例えばLi4Mn5O12は、前記式(1)の充放電反応に示すように初回放電後の充放電において、汎用の正極活物質、例えばコバルト酸リチウム(LiCoO2)と同様に充放電の繰り返しに伴うリチウムの吸蔵・放出による膨張・収縮が小さく、安定した結晶構造を維持することができる。その結果、リチウム二次電池の充放電サイクル特性を向上することができる。
別の実施形態に係るリチウム二次電池用正極活物質は、金属リチウムを負極活物質として含む負極を備えたリチウム二次電池に用いる正極活物質であって、リチウムを吸蔵および放出することが可能な一般式Li4M25O12(ここで、M2はCo、Ni、Fe、CuおよびCrからなる群より選ばれた少なくとも1つ以上の元素である)にて表されるリチウム遷移金属複合酸化物を第1の活物質として含む。第1の活物質は、正極活物質の総量に対して1質量%以上40質量%以下の割合で含有する。
Li4Ni5O12+3Li++3e-⇔Li7Ni5O12 …(2)
なお、前記式(1)において右方向の反応が放電反応、左方向の反応が充電反応である。
従って、前述したリチウム二次電池の組立後の充放電を放電から始めることが可能であること、正極括物質中のリチウム遷移金属複合酸化物の含有割合を規定することによって、初回放電において、負極の金属リチウム表面からのリチウムイオンの放出量を著しく増大できる。負極の金属リチウム表面からのリチウムイオンの放出は、電池組立直後の負極の金属リチウム表面に形成された炭酸リチウムまたは水酸化リチウムのような不活性被膜を破壊して除去できる。初回放電後の充電において、リチウム遷移金属複合酸化物を含む正極活物質からリチウムイオンが放出され、当該リチウムイオンは負極の金属リチウム表面でリチウムを還元析出する。この還元析出において、金属リチウム表面は不活性被膜が除去されているため、リチウムは金属リチウム表面に偏って析出することなく、金属リチウム表面に均一に析出する。その結果、充放電の繰り返しにおいて、負極の金属リチウム表面からリチウムがデンドライト状に成長するのを抑制して、リチウムのデンドライト状の成長に伴う負極と正極間の内部短絡を防止できる。それ故、単位重量当たりの電気量が3.86Ah/gと大きい特徴を持つ金属リチウムを負極活物質として安全に使用できるため、リチウム二次電池の高容量化を実現することができる。
別の実施形態に係るリチウム遷移金属複合酸化物、例えばLi4Ni5O12は、前記式(2)の充放電反応に示すように初回放電後の充放電において、汎用の正極活物質、例えばコバルト酸リチウム(LiCoO2)と同様に充放電の繰り返しに伴うリチウムの吸蔵・放出による膨張・収縮が小さく、安定した結晶構造を維持することができる。その結果、リチウム二次電池の充放電サイクル特性を向上することができる。
次に、実施形態に係るリチウム二次電池の構成及び充放電条件について説明する。
<正極>
正極は、例えば正極集電体と、当該正極集電体の一方または両方の面に形成された正極層とを備える。正極層は、例えば正極活物質、導電材および結着剤を含む。
実施形態において、正極活物質はリチウムを吸蔵および放出することが可能な一般式Li4Mn5-xMxO12にて表されるリチウムマンガン系複合酸化物を第1の活物質として含む。一般式中のM1はCo、Ni、Fe、Cu、Mg、Zn、Al、CrおよびGaからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上の元素、xは0≦x<5、である。M1の元素の内Co、Ni、Feを用いることが好ましい。リチウムマンガン系複合酸化物は、x=0の場合、すなわちMnが前記元素M1で置換されない形態の場合、Li4Mn5O12で表わされる。一般式で表わされるリチウムマンガン系複合酸化物は、通常、スピネル型である。スピネル型のリチウムマンガン系複合酸化物は、結晶構造またはその寸法を変化させることなく、リチウムイオンを吸蔵および放出することが可能である。つまり、スピネル型のリチウムマンガン系複合酸化物は、結晶構造またはその寸法がリチウムイオンの吸蔵および放出の影響を受けに難い特性を有する。その結果、リチウム二次電池の充放電サイクル特性を向上できる。
マンガン化合物およびリチウム化合物を所定のモル量で秤量する。秤量したマンガン化合物およびリチウム化合物を十分に混合・撹拌して試料を調製する。得られた試料をさらに粉砕・撹拌する。粉砕・撹拌した試料を例えば篩を用いて所望の粒径(例えばメッシュ)に分級する。
粉砕・撹拌および分級した試料を酸素リッチの雰囲気中で焼成する。得られた焼成物を例えば篩を用いて分級することにより所望の粒径(例えばメッシュ)を有するLi4Mn5O12を合成する。
なお、Co、Ni、Fe、Cu、Mg、Zn、Al、CrおよびGaからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上の元素でMnを置換したリチウムマンガン系複合酸化物を合成するには、原料の混合において前記元素の化合物をマンガン化合物およびリチウム化合物と共に所定のモル量で秤量すればよい。
導電材は、特に限定されるものではなく、公知または市販のものを使用することができる。導電材は、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボンブラック、カーボンナノチューブ、炭素繊維、活性炭、黒鉛等が挙げられる。
結着剤は、特に限定されるものではなく、公知または市販のものを使用することができる。結着剤は、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレンープロピレン共重合体、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリル樹脂等が挙げられる。
なお、正極は例えば次に示す方法で作製することができる。前述した正極活物質、導電材および結着剤を溶剤に分散させて正極スラリーを調製する。つづいて、正極スラリーを正極集電体の一方または両方の面に塗布した後、乾燥して正極層を形成して正極を作製する。
溶剤は、特に限定されるものではなく、リチウム二次電池で一般に用いられる溶剤を用いることができる。溶剤は、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等が挙げられる。なお、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いる場合には、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶剤に用いることが好ましい。
<負極>
負極は、例えば負極集電体と、当該負極集電体の一方または両方の面に形成された負極活物質である金属リチウムとを備える。
負極集電体は、特に限定されるものではなく、公知または市販のものを使用することができる。負極集電体は、例えば銅または銅合金からなる圧延箔、電解箔、多孔体等を用いることができる。
<非水電解質>
非水電解質は、液体状の場合、非水溶媒及び電解質を含む。
非水溶媒は、主成分として環状カーボネート及び鎖状カーボネートを含有する。環状カーボネートは、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、およびブチレンカーボネート(BC)の群から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。鎖状カーボネートは、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)の群から選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。
電解質は、特に限定されるものではなく、リチウム二次電池で一般に用いられるリチウム塩の電解質を用いることができる。例えば、LiPF6、LiAsF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CmF2m+1SO2)(CnF2m+1SO2)、ここでm,nは1以上の整数、LiC(CqF2p+1SO2)(CqF2p+1SO2)(CrF2r+1SO2),ここでp、q、rは1以上の整数、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム等を用いることができる。これらの電解質は、一種類で使用してもよく、または二種類以上組み合わせて使用してもよい。また、この電解質は非水溶媒に対して0.1モル/L以上1.5モル/L以下、好ましくは0.5モル/L以上1.5モル/L以下の濃度で溶解することが望ましい。
<セパレータ>
セパレータは、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂の微多孔膜または不織布を用いることができる。微多孔膜または不織布は単層であっても、多層構造であってもよい。特に、ポリイミド樹脂を基材とした三次元構造が好ましい。
<充放電条件>
リチウム二次電池の組立後の充放電条件は、放電から始める。
実施形態に係るリチウム二次電池の形状は特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、角型等が挙げられる。
電極群3は、図2に示すように正極4と負極5とそれら正極4、負極5の間に介在されたセパレータ6とを負極5が最外層に位置するように複数積層した構造を有する。
正極4は、正極集電体42と当該集電体42の両面にそれぞれ形成された正極層41,41とから構成されている。正極層41,41は、例えば正極活物質、導電材および結着剤を含む。実施形態において、正極活物質はリチウムを吸蔵および放出することが可能な一般式Li4Mn5-xM1xO12(ここで、M1はCo、Ni、Fe、Cu、Mg、Zn、Al、CrおよびGaからなる群から選ばれる少なくとも1つ以上の元素、xは0≦x<5、である)にて表されるリチウムマンガン系複合酸化物を第1の活物質として含む。別の実施形態において、正極活物質は一般式Li4M25O12(ここで、M2はCo、Ni、Fe、CuおよびCrからなる群より選ばれた少なくとも1つ以上の元素である)にて表されるリチウム遷移金属複合酸化物を第1の活物質として含む。第1の活物質は、正極活物質の総量に対し1質量%以上40質量%以下の割合で含有する。
負極5は、例えば図2に示すように負極集電体52の左側面から延出した負極リード53を有する。各負極リード53は、外装体2内において先端側で互いに束ねられ、接合されている。負極端子8は、一端が負極リード53の接合部に接合され、かつ他端が外装体2の封止部を通して外部に延出している。
以下、本発明は実施例を詳細に説明する。
(実施例1〜8および比較例1〜4)
[リチウムマンガン複合酸化物(Li4Mn5O12)の合成]
Mn3O4(高純度化学研究所、純度99.9%) 11.4g(0.05mol)、およびLiCO3(和光純薬工業、和光特級)4.65g(0.063mol、Liが5質量%増となる量)を秤量し、50mLのスクリュー管に入れ、自転公転ミキサー(泡とり練太郎)で2000rpm、10分撹拌して試料を調製した。当該試料をジルコニア製ボール(ボールの直径:5mm、重量:40g、個数:約100個)と共に80mLのジルコニア製容器に入れ、遊星ボールミル(Fritch社、PULVERISETTE)にて回転数250rpmで30分間粉砕・撹拌を5回繰り返した。30分間の撹拌毎に5分間の休止時間を入れた。
前記方法で合成された第1の活物質であるリチウムマンガン複合酸化物(Li4Mn5O12)1質量%と第2の活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO2)99質量%とを混合して正極活物質を調製した。つづいて、正極活物質に導電材としてアセチレンブラック6.7質量%、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)4.4質量%をそれぞれ添加して混合し、当該混合物に溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)を添加して塗布可能な粘度まで正極スラリーを調製した。次いで、アルミニウム箔表面に正極スラリーを塗工量が120g/m2となるよう塗布し、100℃で乾燥した。その後、電極密度が3.3g/ccになるまでプレス加工して正極1を作製した。
[正極2〜5,9〜11の作製]
第1の活物質であるリチウムマンガン複合酸化物(Li4Mn5O12)が正極活物質の総量に対して0質量%、0.5質量%、5質量%、20質量%、30質量%、40質量%、50質量%の割合で含有する正極活物質を用いた以外、前記正極1の作製方法と同様な方法により正極2〜5,9〜11をそれぞれ作製した。なお、第1の活物質が正極活物質の総量に対して50質量%以下である正極2〜5,9〜11の形態において、残りの正極活物質である第2の活物質はコバルト酸リチウム(LiCoO2)である。
第1の活物質である20質量%のリチウムマンガン複合酸化物(Li4Mn5O12)と第2の活物質である80質量%のマンガン酸リチウム(LiMn2O4)、リン酸鉄リチウム、またはニッケルコバルトマンガン酸リチウムとを混合した正極活物質を用いた以外、前記正極1の作製方法と同様な方法により正極6〜8を作製した。
[正極12の作製]
第1の活物質である40質量%の二酸化マンガン(MnO2)と第2の活物質である60質量%のコバルト酸リチウム(LiCoO2)とを混合した正極活物質を用いた以外、前記正極1の作製方法と同様な方法により正極12を作製した。
[評価セルの組立]
前記各正極を作用極として用いて3極式評価セルを組立てた。評価セルは、両端封止円筒形状を有する例えばポリプロピレンからなる外装体を備えている。外装体内には、各正極から切出した円形の作用極と当該作用極より寸法の大きい円形の対極とがそれら作用極と対極の間にセパレータを挟んで配置している。すなわち、作用極、セパレータおよび対極は積層され、その積層方向は外装体の円筒部と平行している。参照極は、矩形板状をなし、外装体内に作用極、セパレータおよび対極の上方に近接して当該矩形板状表面が前記積層方向と平行するように配置されている。
作用極および対極の各端子は、外装体の対向する封止部からそれぞれ外部に延出されている。参照極の端子は、外装体の円筒部から外部に延出されている。非水電解液は、前記外装体内にその内部全体を満たすように収容されている。前述した作用極、対極および参照極のそれぞれの端子には、電源(試験装置)と接続するためのリード線が取付けられている。後述する充放電サイクル試験では、作用極および対極から導出されるリード線を介し所定電流を流した。また、作用極および参照極から導出されるリード線を介し電圧測定を行った。
前記対極および参照極は、金属リチウムから作った。セパレータは、微多孔質ポリエチレン膜を使用した。非水電解液は、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)の混合非水溶媒(体積比、EC:EMC:DMC−2:5:3)にLiPF6を1.3モル/L溶解させて調製した。
なお、下記表1に示すように実施例1〜8は、それぞれ正極1〜8を作用極として用いた3極式評価セルであり、比較例1〜4はそれぞれ正極9〜12を作用極として用いた3極式評価セルである。
実施例1〜8および比較例1〜4の評価セルに対し、以下の充放電条件で充放電サイクル試験を行った。
(充放電条件)
初回:2.5Vまで0.1C放電(1回)
活性化:4.3Vまで0.1C充電、2.5Vまで0.1C放電(4回)
サイクル:4.3Vまで0.5C充電、2.5Vまで0.5C放電(l00回)
充放電サイクル試験において、100サイクル目の放電容量、放電容量維持率および電池エネルギーを測定した。その結果を下記表1に示す。
なお、放電容量維持率は下記(i)式から求めた。電池エネルギーは、下記(ii)式から求めた。
=(100サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量)×100 …(i)
電池エネルギー(mWh)
=100サイクル目の放電容量(mAh/g)×活物質量(g)×平均放電電圧 …(ii)
また、第2の活物質としてコバルト酸リチウムの代わりにマンガン酸リチウムを含む正極6、リン酸鉄リチウムを含む正極7、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムを含む正極8を作用極として用いた実施例6〜8の評価セルでも、コバルト酸リチウムを含む正極3を作用極として用いた実施例3の評価セルと同等の特性が得られた。
これは、比較例1の評価セルの組立後の充放電において、初回放電が可能なLi4Mn5O12がゼロであるため、実質的に初回から充電が開始される。その結果、負極の金属リチウム表面からのリチウムイオンの放出が起こらないため、充放電サイクル時にリチウムのデンドライト状の成長によって100サイクル目の放電容量が低くなったものと推定される。また、比較例2の評価セルの組立後の充放電において、初回から放電から開始されるものの、初回放電が可能なリチウムマンガン系複合酸化物(Li4Mn5O12)の配合量が少ないため、負極の金属リチウム表面からのリチウムイオンの放出量が少なくなる。その結果、充放電サイクル時にリチウムのデンドライト状の成長によって100サイクル目の放電容量が低くなったものと推定される。さらに、比較例3の評価セルの組立後の充放電において、初回から放電から開始されるものの、初回放電が可能なリチウムマンガン系複合酸化物(Li4Mn5O12)の配合量が多いため、平均放電電圧が低くなる。その結果、100サイクル目の放電容量が実施例1と同等にもかかわらず電池エネルギーが低くなったものと推定される。
これは、充放電条件において、放電時のカットオフ電圧を二酸化マンガンの崩壊が生じる2.5Vまで下げたため、100サイクル目の放電容量および電池エネルギーが低くなったものと推定される。
仮に、放電時のカットオフ電圧を二酸化マンガンが崩壊しない電圧まで上げると、二酸化マンガンは初回放電後において充放電に関与しなくなるため、正極活物質に占める二酸化マンガン量に相当する容量が低下して、高い容量のセルを得ることができなくなる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]金属リチウムを負極活物質として含む負極を備えたリチウム二次電池に用いる正極活物質であって、
リチウムを吸蔵および放出することが可能な一般式Li 4 Mn 5−x M1 x O 12 (ここで、M1はCo、Ni、Fe、Cu、Mg、Zn、Al、CrおよびGaからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上の元素、xは0≦x<5、である)にて表されるリチウムマンガン系複合酸化物を第1の活物質として含み、
前記第1の活物質は、前記正極活物質の総量に対して1質量%以上40質量%以下の割合で含有することを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質。
[2]前記リチウムマンガン系複合酸化物は、Li 4 Mn 5 O 12 であることを特徴とする[1]のリチウム二次電池用正極活物質。
[3]前記第1の活物質は、前記正極活物質の総量に対して1質量%以上40質量%以下の割合で含有し、残りの正極活物質である第2の活物質はリチウム含有金属酸化物(前記リチウムマンガン系複合酸化物を除く)またはリン酸金属リチウムであることを特徴とする[1]または[2]のリチウム二次電池用正極活物質。
[4]前記第1の活物質は、前記正極活物質の総量に対して1質量%以上40質量%以下の割合で含有し、残りの正極活物質である第2の活物質はコバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム(LiMnO 2 、またはLiMn 2 O 4 )、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムおよびリン酸鉄リチウムの群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする[1]または[2]のリチウム二次電池用正極活物質。
[5]金属リチウムを負極活物質として含む負極を備えたリチウム二次電池に用いる正極活物質であって、
リチウムを吸蔵および放出することが可能な一般式Li 4 M2 5 O 12 (ここで、M2はCo、Ni、Fe、CuおよびCrからなる群より選ばれた少なくとも1つ以上の元素である)にて表されるリチウム遷移金属複合酸化物を第1の活物質として含み、
前記第1の活物質は、前記正極活物質の総量に対して1質量%以上40質量%以下の割合で含有することを特徴とするリチウム二次電池用正極活物質。
[6]前記第1の活物質は、前記正極活物質の総量に対して1質量%以上40質量%以下の割合で含有し、残りの正極活物質である第2の活物質はリチウム含有金属酸化物(前記リチウム遷移金属複合酸化物を除く)またはリン酸金属リチウムであることを特徴とする[5]のリチウム二次電池用正極活物質。
[7]正極活物質を含む正極、負極、セパレータおよび非水電解質を備えたリチウム二次電池であって、
前記正極活物質は、リチウムを吸蔵および放出することが可能な一般式Li 4 Mn 5−x M1 x O 12 (ここで、M1はCo、Ni、Fe、Cu、Mg、Zn、Al、CrおよびGaからなる群より選ばれる少なくとも1つ以上の元素、xは0≦x<5、である)にて表されるリチウムマンガン系複合酸化物を第1の活物質として含み、
前記第1の活物質は、前記正極活物質の総量に対して1質量%以上40質量%以下の割合で含有し、
前記負極は、金属リチウムを負極活物質として含むことを特徴とするリチウム二次電池。
[8]前記リチウムマンガン系複合酸化物は、Li 4 Mn 5 O 12 であることを特徴とする[7]のリチウム二次電池。
[9]前記第1の活物質は、前記正極活物質の総量に対して1質量%以上40質量%以下の割合で含有し、残りの正極活物質である第2の活物質はリチウム含有金属酸化物(前記リチウムマンガン系複合酸化物を除く)またはリン酸金属リチウムであることを特徴とする[7]または[8]のリチウム二次電池。
[10]前記第1の活物質は、前記正極活物質の総量に対して1質量%以上40質量%以下の割合で含有し、残りの正極活物質である第2の活物質はコバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム(LiMnO 2 、またはLiMn 2 O 4 )、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムおよびリン酸鉄リチウムの群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする[7]または[8]のリチウム二次電池。
[11]正極活物質を含む正極、負極、セパレータおよび非水電解質を備えたリチウム二次電池であって、
前記正極活物質は、リチウムを吸蔵および放出することが可能な一般式Li 4 M2 5 O 12 (ここで、M2はCo、Ni、Fe、CuおよびCrからなる群より選ばれた少なくとも1つ以上の元素である)にて表されるリチウム遷移金属複合酸化物を第1の活物質として含み、
前記第1の活物質は、前記正極活物質の総量に対して1質量%以上40質量%以下の割合で含有し、
前記負極は、金属リチウムを負極活物質として含むことを特徴とするリチウム二次電池。
[12]前記第1の活物質は、前記正極活物質の総量に対して1質量%以上40質量%以下の割合で含有し、残りの正極活物質である第2の活物質はリチウム含有金属酸化物(前記リチウム遷移金属複合酸化物を除く)またはリン酸金属リチウムであることを特徴とする[11]のリチウム二次電池。
Claims (3)
- 金属リチウムを負極活物質として含む負極と、正極活物質を含む正極と、セパレータと、非水電解質とを備えたリチウム二次電池の充放電方法であって、
前記正極活物質は、リチウムを吸蔵および放出することが可能なLi 4 Mn 5 O 12 にて表される第1の活物質と前記第1の活物質と異なる、リチウムを吸蔵および放出することが可能な第2の活物質とからなり、前記第1の活物質が前記第1および第2の活物質の総量に対して1質量%以上40質量%以下の割合で含有し、
前記リチウム二次電池の組み立て後の充放電を放電から始め、放電後に充放電を繰り返すことを特徴とするリチウム二次電池の充放電方法。 - 前記第2の活物質はリチウム含有金属酸化物またはリン酸金属リチウムであることを特徴とする請求項1記載のリチウム二次電池の充放電方法。
- 前記第2の活物質はコバルト酸リチウム、LiMnO2、LiMn2O4、ニッケルコバルトマンガン酸リチウムおよびリン酸鉄リチウムの群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1または2記載のリチウム二次電池の充放電方法。
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