JP6563228B2 - 透明導電性フィルム - Google Patents
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Description
特に、ハードコート層における耐エッチング性に優れ、透明導電層のパターン形状を安定的に不可視化することができ、かつ、得られる透明導電性フィルムにおけるアンチブロッキング性に優れた透明導電層形成用積層体およびそれを用いた透明導電性フィルムに関する。
かかるタッチパネルの代表的な形式としては、2枚の透明電極基板をそれぞれの透明電極層が向かい合うように隙間を設けつつ配置してなる抵抗膜式タッチパネルや、透明電極膜と指との間に生じる静電容量の変化を利用する静電容量式タッチパネルが存在する。
特にフィルムセンサーにおいては、ライン状にパターン化された透明導電層を備えた透明導電性フィルム2枚を、それぞれのパターンが互いにクロスするように配置することにより、格子状のパターンが形成されることが多い。
そこで、かかる問題を解決するための技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、透明基材における屈折率調整層が形成されている側とは反対側に、アンチブロッキング性を有する、フィラーを含んだ機能付与層をさらに積層することが記載されている。
より具体的には、近年、スマートフォン等の生産増加に伴い、エッチング処理の迅速化が要求されており、特に、エッチング処理の最終工程である残留したフォトレジストを除去するためのアルカリ処理には、例えば、40℃に加温した5重量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いる場合がある。
このような過酷なアルカリ処理を行った場合、特許文献1に開示されているハードコート基材では機能付与層におけるフィラーが溶けたり、脱落したりしやすく、その結果、安定的に透明導電層のパターン形状を不可視化することが困難になるという問題が見られた。
すなわち、本発明の目的は、ハードコート層における耐エッチング性に優れ、透明導電層のパターン形状を安定的に不可視化することができ、かつ、得られる透明導電性フィルムにおけるアンチブロッキング性に優れた透明導電層形成用積層体およびそれを用いた透明導電性フィルムを提供することにある。
(A)活性エネルギー線硬化性樹脂 100重量部
(B)シリカ微粒子 15〜100重量部
すなわち、本発明の透明導電層形成用積層体であれば、その最裏面であるハードコート層を形成する際に用いるハードコート層形成用組成物が、活性エネルギー線硬化性樹脂に対し、シリカ微粒子を比較的少ない範囲で含むことから、過酷なアルカリ処理を含むエッチング処理を行った場合であっても、ハードコート層におけるシリカ微粒子が溶けたり、脱落したりすることを効果的に抑制することができる(以下、かかる効果を「耐エッチング性」と称する場合がある)。
その結果、ハードコート層の膜厚および屈折率が変化することを抑制することができ、ひいてはハードコート層の光学特性が変化することを抑制できることから、透明導電層のパターン形状を安定的に不可視化することができる。
また、シリカ微粒子を反応性シリカ微粒子とすることで、ハードコート層に対してシリカ微粒子を強固に固定することができることから、より効果的に耐エッチング性を向上させることができる。
また、ハードコート層におけるシリカ微粒子が溶けたり、脱落したりすることを効果的に抑制できることから、ハードコート層の表面においてシリカ微粒子に起因して形成される微細な表面凹凸が効果的に保持される。
その結果、得られる透明導電性フィルムをロール状に巻き取った際に、直接接触するフィルムの表裏面がブロッキングすることを効果的に抑制することができる(以下、かかる効果を「アンチブロッキング性」と称する場合がある)。
このように構成することにより、ハードコート層における透明性を低下させることなく、所定のアンチブロッキング性を得ることができる。
このように構成することにより、中空シリカ微粒子と比較して粒子径を小さくすることができることから、アンチブロッキング性を得るために必要とされる量を配合しているにもかかわらず、ハードコート層の透明性を効果的に保持することができる。
このように構成することにより、ハードコート層におけるシリカ微粒子をより効果的に保護することができることから、さらに効果的に耐エッチング性を向上させることができる。
このように構成することにより、十分な耐エッチング性を得ることができると同時に、アニール処理を施した際に、透明導電層形成用積層体におけるカールの発生を効果的に抑制することができる。
なお、「アニール処理」とは、透明導電性フィルムにおける透明導電層の電気伝導度を向上させるために、透明導電層形成用積層体上に積層された状態の透明導電層を加熱処理により結晶化する処理を意味する。
このように構成することにより、基材フィルムからブリードするオリゴマー成分により光学調整層が汚染されることを効果的に抑制することができるばかりか、アニール処理を施した際に、透明導電層形成用積層体におけるカールの発生を効果的に抑制することができる。
このように構成することにより、第1および第2のハードコート層の形成が容易になるとともに、アニール処理を施した際に、透明導電層形成用積層体におけるカールの発生をより効果的に抑制することができる。
(A)活性エネルギー線硬化性樹脂 100重量部
(B)シリカ微粒子 15〜100重量部
すなわち、本発明の透明導電性フィルムであれば、所定の透明導電層形成用積層体を用いることから、ハードコート層における耐エッチング性に優れ、透明導電層のパターン形状を安定的に不可視化することができ、かつ、優れたアンチブロッキング性を得ることができる。
また、シリカ微粒子を反応性シリカ微粒子とすることで、ハードコート層に対してシリカ微粒子を強固に固定することができることから、より効果的に耐エッチング性を向上させることができる。
このように構成した場合であっても、ハードコート層における耐エッチング性に優れることにより、透明導電層のパターン形状を安定的に不可視化することができる。
本発明の第1の実施形態は、図1(a)に示すように、ハードコート層3aと、基材フィルム4と、光学調整層2と、を順に積層してなる透明導電層形成用積層体10であって、ハードコート層3aが、下記(A)〜(B)成分を含むハードコート層形成用組成物を光硬化してなることを特徴とする透明導電層形成用積層体10である。
(A)活性エネルギー線硬化性樹脂 100重量部
(B)シリカ微粒子 15〜100重量部
なお、図1(a)においては、基材フィルム4の両面にハードコート3(3a、3b)を有する形態の透明導電層形成用積層体10を一例として示しているが、基材フィルム4と、光学調整層2との間のハードコート層3bは省略することができる。
また、光学調整層2についても、高屈折率層2bおよび低屈折率層2aの2層からなる態様を一例として示しているが、1層からなる態様や、3層以上からなる態様の光学調整層2であってもよい。
また、図1(a)において、各層中の粒子は、シリカ微粒子や金属酸化物粒子を示す。
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を適宜参照して、具体的に説明する。
(1)種類
基材フィルムの種類としては、特に制限されるものではなく、光学用基材として公知の基材フィルムを用いることができる。
例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルムを好ましく挙げることができる。
また、透明性およびフィルム強度と柔軟性の両立の観点から、特にPETフィルムであることが好ましい。
また、基材フィルムの膜厚を20〜200μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、基材フィルムの膜厚が20μm未満の値となると、基材フィルムの強度が低下することにより、光学調整層における透明導電層の存在部分と非存在部分とでのアニール処理時の歪みの発生を効果的に抑制することができなくなる場合があるためである。一方、基材フィルムの膜厚が200μmを超えた値となると、基材フィルムにおける透明性等の光学特性が悪化する場合があるためである。
したがって、基材フィルムの膜厚を30〜180μmの範囲内の値とすることがより好ましく、50〜150μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、「アニール処理」とは、透明導電性フィルムにおける透明導電層の電気伝導度を向上させるために、透明導電層形成用積層体上に積層された状態の透明導電層を加熱処理により結晶化する処理を意味する。
図1(a)に示すように、本発明の透明導電層形成用積層体10を構成するにあたり、少なくとも基材フィルム4における光学調整層2が積層された側とは反対側の面に、ハードコート層3aを設けることを特徴とする。
この理由は、かかるハードコート層を設けることにより、透明導電層形成用積層体の製造工程において、基材フィルムに耐擦傷性を付与し、光学特性が低下することを防止することができるほか、基材フィルムをロール状に巻き取った場合に基材フィルム同士が貼りつく現象が発生することを抑制することができるためである(以下、かかる効果を「アンチブロッキング性」と称する場合がある)。
この理由は、かかる第2のハードコート層を有することにより、基材フィルムからブリードするオリゴマー成分により光学調整層が汚染されることを効果的に抑制することができるばかりか、透明導電層形成用積層体におけるカールの発生を効果的に抑制することができるためである。
また、第2のハードコート層が、第1のハードコート層と同じハードコート層形成用組成物を光硬化してなるとともに、第1のハードコート層と同じ膜厚を有することが好ましい。
この理由は、第2のハードコート層をこのように構成することにより、第1および第2のハードコート層の形成が容易になるとともに、アニール処理を施した場合における透明導電層形成用積層体におけるカールの発生をより効果的に抑制することができるためである。
したがって、以下の説明は、第1のハードコート層および第2のハードコート層の両方に共通する内容である。
また、本発明におけるハードコート層は、材料物質として下記(A)〜(B)成分を含むハードコート層形成用組成物を光硬化してなることを特徴とする。
(A)活性エネルギー線硬化性樹脂 100重量部
(B)シリカ微粒子 15〜100重量部
この理由は、ハードコート層を形成する際に用いるハードコート層形成用組成物が、活性エネルギー線硬化性樹脂に対し、シリカ微粒子を比較的少ない範囲で含むことにより、過酷なアルカリ処理を含むエッチング処理を行った場合であっても、ハードコート層におけるシリカ微粒子が溶けたり、脱落したりすることを効果的に抑制することができるためである。
より具体的には、図1(a)に示すように、ハードコート層3aにおけるシリカ微粒子の配合量が少ない場合、樹脂からなるマトリックス部分の存在割合が多くなるため、過酷なアルカリ処理を行った場合であっても、シリカ微粒子がマトリックス部分に効果的に保護され、溶けたり、脱落したりすることを効果的に抑制することができる。
その結果、ハードコート層の膜厚および屈折率が変化することを抑制することができ、ひいてはハードコート層の光学特性が変化することを抑制できる。
一方、図1(b)に示すように、ハードコート層3a´におけるシリカ微粒子の配合量が多い場合、樹脂からなるマトリックス部分の存在割合が少なくなるため、過酷なアルカリ処理を行った場合には、シリカ微粒子がマトリックス部分によって十分に保護されず、溶けたり、脱落したりしやすくなる。
したがって、図1(a)に示すように、ハードコート層3aにおけるシリカ微粒子の配合量が少ない本発明の透明導電層形成用積層体10であれば、光学調整層2の上に形成される透明導電層のパターン形状を安定的に不可視化することができる。
したがって、得られる透明導電性フィルムをロール状に巻き取った際に、直接接触するフィルムの表裏面がブロッキングすることを効果的に抑制することができる。
以下、成分ごとに説明する。
(A)成分は、活性エネルギー線硬化性樹脂である。
かかる(A)成分としての活性エネルギー線硬化性樹脂とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線または電子線等を照射することにより、架橋、硬化する重合性化合物を意味し、例えば、光重合性プレポリマーや光重合性モノマーを挙げることができる。
また、エポキシアクリレート系プレポリマーとしては、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得られる化合物が挙げられる。
また、ウレタンアクリレート系プレポリマーとしては、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得られる化合物が挙げられる。
さらに、ポリオールアクリレート系プレポリマーとしては、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得られる化合物が挙げられる。
なお、これらの重合性プレポリマーは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
かかるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール樹脂やノボラック樹脂等の多価フェノール類にエピクロルヒドリン等でエポキシ化して得られる化合物、直鎖状オレフィン化合物や環状オレフィン化合物を過酸化物等で酸化して得られる化合物等が挙げられる。
なお、これらの光重合性モノマーは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)成分は、シリカ微粒子である。
かかるシリカ微粒子の種類としては、特に制限されるものではないが、中実シリカ微粒子を用いることが好ましい。
この理由は、中実シリカ微粒子であれば、体積平均粒子径が20nm以上となる中空シリカ微粒子と比較して粒子径を小さくすることができることから、アンチブロッキング性を得るために必要とされる量を配合しているにもかかわらず、ハードコート層の透明性を効果的に保持することができるためである。
また、高価な中空シリカ微粒子と比較して、経済的にも有利となる。
なお「中実シリカ微粒子」とは、粒子の内部に空洞を有さないシリカ微粒子を意味する。
この理由は、反応性シリカ微粒子であれば、ハードコート層に対してシリカ微粒子を強固に固定することができることから、より効果的に耐エッチング性を向上させることができるためである。
なお、「反応性シリカ微粒子」とは、重合性不飽和基含有有機化合物が結合したシリカ微粒子であり、シリカ微粒子の表面におけるシラノール基に、該シラノール基と反応し得る官能基を有する重合性不飽和基含有有機化合物を反応させることによって得ることができる。
また、上述した重合性不飽和基としては、例えば、ラジカル重合性のアクリロイル基やメタクリロイル基等が挙げられる。
この理由は、シリカ微粒子の体積平均粒子径(D50)をかかる範囲内の値とすることにより、ハードコート層における透明性を低下させることなく、所定のアンチブロッキング性を得ることができるためである。
すなわち、シリカ微粒子の体積平均粒子径(D50)が10nm未満の値となると、ハードコート層の表面における表面凹凸が過度に小さくなって、アンチブロッキング性を効果的に発現することが困難になる場合があるためである。一方、シリカ微粒子の体積平均粒子径(D50)が100nmを超えた値となると、光の散乱が生じやすくなってハードコート層における透明性が低下しやすくなる場合があるためである。
したがって、シリカ微粒子の体積平均粒子径(D50)を12〜60nmの範囲内の値とすることがより好ましく、14〜30nmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、シリカ微粒子の体積平均粒子径(D50)は、例えば、ゼータ電位測定法により求めることができるほか、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて求めることもでき、さらに、SEM画像を基に求めることもできる。
この理由は、シリカ微粒子の配合量が15重量部未満の値となると、ハードコート層の硬度が不十分になったり、ハードコート層の表面に十分な表面凹凸を形成することが困難になり、アンチブロッキング性や粘着剤層等に対する密着性を得ることが困難になったりする場合があるためである。一方、シリカ微粒子の配合量が100重量部を超えた値となると、過酷なアルカリ処理を含むエッチング処理を行った場合に、ハードコート層におけるシリカ微粒子が溶けたり、脱落したりしやすくなる場合があるためである。
したがって、シリカ微粒子の配合量を、(A)成分としての活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して、20〜70重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、30〜50重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
すなわち、図2には、横軸にシリカ微粒子の配合量(重量部)を採り、左縦軸に透明導電層形成用積層体におけるアルカリ処理前後での反射率変化量(%)を採った特性曲線Aと、右縦軸にアンチブロッキング性(相対値)を採った特性曲線Bが示してある。
なお、透明導電層形成用積層体におけるアルカリ処理前後での反射率変化量およびアンチブロッキング性の具体的な測定方法については、実施例において記載する。
また、透明導電層形成用積層体におけるアルカリ処理前後での反射率変化量(%)は、アルカリ処理によりハードコート層の膜厚または屈折率もしくは両方が変化することにより、ハードコート層の反射率が変化することから、ハードコート層の耐エッチング性の指標となるものであり、反射率変化量が小さい程、耐エッチング性に優れること意味し、0.5%以下の値であれば、実用上、優れた耐エッチング性を有すると判断できる。
4:層表面同士が密着しない
1:層表面同士が密着して動かない
より具体的には、シリカ微粒子の配合量が100重量部以下の範囲では、反射率変化量を安定的に0.5%以下の値とすることができるものの、シリカ微粒子の配合量が100重量部を超えると、急激に反射率変化量が増加して、0.5%を超えてしまうことが理解される。
この急激な反射率変化量の増加は、ハードコート層の表面または層自体がアルカリ処理により崩壊したことによるものであると推定される。
より具体的には、シリカ微粒子の配合量が15重量部未満の範囲では、アンチブロッキング性の値が低いものの、15重量部以上になると、実用上要求される所定のアンチブロッキング性が得られるようになり、40重量部以上になると優れたアンチブロッキング性を安定的に得られるようになることが理解される。
したがって、特性曲線AおよびBからは、耐エッチング性と、アンチブロッキング性とを両立させるためには、シリカ微粒子の配合量を15〜100重量部の範囲内の値とすべきことが理解される。
(C)成分として、フッ素系レベリング剤をさらに含むことが好ましい。
この理由は、フッ素系レベリング剤を含むことにより、ハードコート層におけるシリカ微粒子をより効果的に保護することができることから、さらに効果的に耐エッチング性を向上させることができるためである。
より具体的には、フッ素系レベリング剤が有する撥水性により、ハードコート層におけるシリカ微粒子を、アルカリ処理に用いられるアルカリ成分から効果的に保護することができるためである。
なお、フッ素系レベリング剤の種類としては、従来公知の物を用いることができるが、直鎖のフッ素系レベリング剤と比較して、揮発性が低く熱安定性に優れることから、分岐鎖と二重結合を含む剛直な分子構造のフッ素系レベリング剤が好ましく、このようなフッ素系レベリング剤としては、例えば、ネオス(株)製、フタージェント7602A等を挙げることができる。
この理由は、フッ素系レベリング剤の配合量が0.01重量部未満の値となると、ハードコート層におけるシリカ微粒子を効果的に保護することが困難になり、ひいては耐エッチング性を向上させることが困難になる場合があるためである。一方、フッ素系レベリング剤の配合量が0.2重量部を超えた値となると、ハードコート層の表面自由エネルギーが過度に低い値になってしまい、ハードコート層に要求される粘着剤層等に対する所定の密着性を得ることが困難になる場合があるためである。
したがって、フッ素系レベリング剤の配合量を、(A)成分としての活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して、0.03〜0.18重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、0.05〜0.15重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、活性エネルギー線硬化性樹脂を活性エネルギー線、特に紫外線によって効率的に硬化できることから、所望により(D)成分としての光重合開始剤を併用することも好ましい。
かかる光重合開始剤としては、ラジカル重合型の光重合性プレポリマーや光重合性モノマーに対しては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミン安息香酸エステル等が挙げられる。
なお、これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、光重合開始剤の配合量としては、上述した(A)成分としての活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して、0.2〜10重量部の範囲内の値とすることが好ましく、1〜5重量部の範囲内の値とすることがより好ましい。
また、ハードコート層は、ハードコート層形成用組成物を予め調製し、後述の通り塗布・乾燥し、硬化することにより形成されることが好ましい。
当該組成物は、必要に応じ、適当な溶媒中に活性エネルギー線硬化性樹脂、光重合開始剤、シリカ微粒子、および所望により用いられる各種添加成分を、それぞれ所定の割合で加え、溶解または分散させることにより調製することができる。
なお、各種添加成分としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、(近)赤外線吸収剤、シラン系カップリング剤、光安定剤、レベリング剤、帯電防止剤、消泡剤等が挙げられる。
このようにして調製されたハードコート層形成用組成物の濃度、粘度としては、コーティング可能なものであればよく、特に限定されず、状況に応じて適宜選定することができる。
したがって、通常、得られるハードコート層形成用組成物の膜厚を所定の範囲に調節しやすい観点から、固形分濃度0.05〜30重量%となるように希釈することが好ましく、0.1〜25重量%となるように希釈することがより好ましい。
また、ハードコート層の膜厚を0.5〜5μmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、ハードコート層の膜厚が0.5μm未満の値となると、樹脂の硬化性が低下して十分な耐エッチング性を得ることが困難になるばかりか、アニール処理による基材フィルムの熱収縮に対する保持機能が不十分になり、カールの発生を抑制できなくなる場合があるためである。一方、ハードコート層の膜厚が5μmを超えた値となると、アニール処理によりハードコート層からアウトガスが発生しやすくなる場合があるためである。
したがって、ハードコート層の膜厚を0.8〜4μmの範囲内の値とすることがより好ましく、1〜3μmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
図1(a)に示すように、光学調整層2は、基材フィルム4側から、相対的に屈折率が高い高屈折率層2bと、相対的に屈折率が低い低屈折率層2aと、を順に積層してなることが好ましい。
この理由は、光学調整層をこのような積層構造とすることにより、透明導電層の屈折率と、基材フィルム4の屈折率との差に起因して透明導電層のパターン形状が視認されやすくなることを、効果的に抑制することができるためである。
(1)−1 屈折率
高屈折率層の屈折率を1.6以上の値とすることが好ましい。
この理由は、高屈折率層の屈折率が1.6未満の値となると、低屈折率層との有意な屈折率差が得られなくなり、透明導電層のパターン形状が視認されやすくなる場合があるためである。一方、高屈折率層の屈折率が過度に大きな値になると、高屈折率層の膜が脆くなる場合があるためである。
したがって、高屈折率層の屈折率を1.61〜2の範囲内の値とすることがより好ましく、1.63〜1.8の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、高屈折率層が、材料物質としての金属酸化物微粒子および活性エネルギー線硬化性樹脂を含む組成物の硬化物からなることが好ましい。
この理由は、金属酸化物微粒子および活性エネルギー線硬化性樹脂を含むことにより、高屈折率層における屈折率の調整が容易になるためである。
また、透明性を低下させずに高屈折率化を実現する観点から、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムから選択される少なくとも1種類であることが特に好ましい。
なお、これらの金属酸化物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、金属酸化物微粒子の体積平均粒子径(D50)は、0.005μm〜1μmの範囲内の値とすることが好ましい。
なお、金属酸化物微粒子の体積平均粒子径(D50)は、例えば、ゼータ電位測定法を用いた測定法により求めることができるほか、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて求めることもでき、さらに、SEM画像を基に求めることもできる。
また、高屈折率層に使用される活性エネルギー線硬化性樹脂および光重合開始剤としては、ハードコート層の説明において挙げられたものを適宜使用することができる。
また、金属酸化物微粒子の配合量としては、活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して、20〜2000重量部であることが好ましく、80〜1000重量部であることがより好ましく、150〜400重量部であることがさらに好ましい。
また、高屈折率層は、高屈折率層形成用の組成物を予め調製し、後述の通り塗布・乾燥し、硬化することにより形成されることが好ましい。
当該組成物は、必要に応じ、適当な溶媒中に活性エネルギー線硬化性樹脂、光重合開始剤、金属酸化物微粒子、および所望により用いられる各種添加成分を、それぞれ所定の割合で加え、溶解または分散させることにより調製することができる。
なお、各種添加成分、溶媒、高屈折率層形成用の組成物の濃度、粘度等については、ハードコート層の説明における内容と同様である。
また、高屈折率層の膜厚を20〜130nmとすることが好ましい。
この理由は、高屈折率層の膜厚が20nm未満の値となると、高屈折率層の膜が脆くなり、層の形状を維持できなくなる場合があるためである。一方、高屈折率層の膜厚130nmを超えた値となると、透明導電層のパターン形状が視認されやすくなる場合があるためである。
したがって、高屈折率層の膜厚を23〜120nmとすることがより好ましく、30〜110nmとすることがさらに好ましい。
(2)−1 屈折率
低屈折率層の屈折率を1.45以下の値とすることが好ましい。
この理由は、低屈折率層の屈折率が1.45を超えた値となると、高屈折率層との有意な屈折率差が得られなくなり、透明導電層のパターン形状が視認されやすくなる場合があるためである。一方、低屈折率層の屈折率が過度に小さな値となると、低屈折率層の膜が脆くなる場合があるためである。
したがって、低屈折率層の屈折率を1.3〜1.44の範囲内の値とすることがより好ましく、1.35〜1.43の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、本発明における低屈折率層は、材料物質として下記(a)〜(b)成分を含む低屈折率層形成用組成物を光硬化してなることが好ましい。
(a)活性エネルギー線硬化性樹脂 100重量部
(b)シリカ微粒子 2〜120重量部
この理由は、低屈折率層を形成する際に用いる低屈折率層形成用組成物が、活性エネルギー線硬化性樹脂に対し、シリカ微粒子を比較的少ない範囲で含むことにより、過酷なアルカリ処理を含むエッチング処理を行った場合であっても、低屈折率層におけるシリカ微粒子が溶けたり、脱落したりすることを効果的に抑制することができるためである。
また、活性エネルギー線硬化性樹脂は、硬化により低屈折率層におけるマトリックス部分を構成し、低屈折率層におけるシリカ微粒子をより効果的に保護し、さらに効果的に耐エッチング性を向上させることができる。
以下、成分ごとに説明する。
(a)成分は、活性エネルギー線硬化性樹脂である。
かかる(A)成分としての活性エネルギー線硬化性樹脂としては、ハードコート層の説明において挙げられた光重合性プレポリマーや光重合性モノマーを適宜使用することができる。
この理由は、撥水性樹脂を含有することにより、低屈折率層におけるシリカ微粒子をさらに効果的に保護することができることから、より一段と効果的に耐エッチング性を向上させることができるためである。
また、撥水性樹脂であれば、主な活性エネルギー線硬化樹脂である(メタ)アクリル系紫外線硬化性樹脂と比較して屈折率が低いことから、低屈折率層の屈折率をより容易に所定の範囲にまで低下させることができるためである。
また、かかる撥水性樹脂としては、撥水性を有する樹脂であれば特に制限されるものではなく、従来公知の撥水性樹脂を用いることができる。
より具体的には、撥水性樹脂単体で形成した樹脂膜における表面自由エネルギーが10〜30mN/mの範囲内の値であれば、本発明における撥水性樹脂として好適に使用することができる。
また、中でも、フッ素樹脂を用いることが好ましく、特に反応性フッ素アクリル樹脂が好ましい。
この理由は、フッ素樹脂であれば、低屈折率層におけるシリカ微粒子をより効果的に保護することができることから、さらに効果的に耐エッチング性を向上させることができるためである。
この理由は、撥水性樹脂の含有量が50重量%未満の値となると、低屈折率層におけるシリカ微粒子を効果的に保護することが困難になり、ひいては耐エッチング性を向上させることが困難になる場合があるためである。また、低屈折率層の屈折率を十分に低い値とすることが困難になる場合があるためである。一方、撥水性樹脂の含有量が90重量%を超えた値となると、低屈折率層の表面自由エネルギーが過度に低い値になってしまい、屈折率層に要求される透明導電層等に対する所定の密着性を得ることが困難になる場合があるためである。
したがって、撥水性樹脂の含有量を、(A)成分全体を100重量%とした場合に、60〜85重量%の範囲内の値とすることがより好ましく、70〜80重量%の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
(b)成分は、シリカ微粒子である。
かかるシリカ微粒子の種類としては、特に制限されるものではないが、中空シリカ微粒子を用いることが好ましい。
この理由は、中空シリカ微粒子であれば、内部の中空部分に空気を含むことから、シリカ微粒子全体としての屈折率がさらに低下することになり、少ない配合量であってもより効率的に低屈折率層の屈折率を所定の屈折率に調整することができるためである。
なお、「中空シリカ微粒子」とは、粒子の内部に空洞を有するシリカ微粒子を意味する。
この理由は、反応性シリカ微粒子であれば、低屈折率層に対してシリカ微粒子を強固に固定することができることから、より効果的に耐エッチング性を向上させることができるためである。
なお、「反応性シリカ微粒子」とは、重合性不飽和基含有有機化合物が結合したシリカ微粒子であり、シリカ微粒子の表面におけるシラノール基に、該シラノール基を反応し得る官能基を有する重合性不飽和基含有有機化合物を反応させることによって得ることができる。
また、上述した重合性不飽和基としては、例えば、ラジカル重合性のアクリロイル基やメタクリロイル基等が挙げられる。
この理由は、シリカ微粒子の体積平均粒子径(D50)をかかる範囲内の値とすることにより、低屈折率層における透明性を低下させることなく、所定の屈折率を得ることができるためである。
すなわち、シリカ微粒子の体積平均粒子径(D50)が20nm未満の値となると、特に中空シリカ微粒子の場合、その構造上、粒子内部の空洞部を十分に確保することが困難になり、低屈折率層の屈折率を低下させる効果が不十分になる場合があるためである。一方、シリカ微粒子の体積平均粒子径(D50)が70nmを超えた値となると、光の散乱が生じやすくなって、低屈折率層における透明性が低下しやすくなる場合があるためである。
したがって、シリカ微粒子の体積平均粒子径(D50)を30〜60nmの範囲内の値とすることがより好ましく、40〜50nmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
なお、シリカ微粒子の体積平均粒子径(D50)は、例えば、ゼータ電位測定法により求めることができるほか、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて求めることもでき、さらに、SEM画像を基に求めることもできる。
この理由は、シリカ微粒子の配合量が2重量部未満の値となると、低屈折率層の屈折率を十分に低下させることが困難になったり、低屈折率層の表面に十分な表面凹凸を形成することが困難になり、透明導電層等に対する所定の密着性を得ることが困難になったりする場合があるためである。一方、シリカ微粒子の配合量が120重量部を超えた値となると、過酷なアルカリ処理を含むエッチング処理を行った場合に、低屈折率層におけるシリカ微粒子が溶けたり、脱落したりしやすくなったりする場合があるためである。
したがって、シリカ微粒子の配合量を、(A)成分としての撥水性樹脂を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して、30〜110重量部の範囲内の値とすることがより好ましく、50〜100重量部の範囲内の値とすることがさらに好ましい。
また、低屈折率層は、低屈折率層形成用組成物を予め調製し、後述の通り塗布・乾燥し、硬化させることにより形成される。
当該組成物は、必要に応じ、適当な溶媒中に上述した(A)成分としての活性エネルギー線硬化性樹脂、および(B)成分としてのシリカ微粒子、並びに、光重合開始剤その他の各種添加成分をそれぞれ所定の割合で加え、溶解または分散させることにより調製することができる。
なお、各種添加成分、溶媒、低屈折率層形成用組成物の濃度、粘度等については、ハードコート層の説明における内容と同様である。
また、低屈折率層の膜厚を20〜150nmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、低屈折率層の膜厚をかかる範囲内の値とすることにより、透明導電層のパターン形状をより安定的に不可視化することができると同時に、十分な耐エッチング性を得ることができるためである。
すなわち、低屈折率層の膜厚が20nm未満の値となると、低屈折率層の膜が脆くなり、耐エッチング性が不十分になる場合があるためである。一方、低屈折率層の膜厚が150nmを超えた値となると、透明導電層のパターン形状が視認されやすくなる場合があるためである。
したがって、低屈折率層の膜厚を25〜120nmの範囲内の値とすることがより好ましく、30〜100nmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
本発明の透明導電層形成用積層体は、例えば、下記工程(a)〜(b)を含む製造方法により得ることができる。
(a)基材フィルムの両面にハードコート層を形成する工程
(b)一方のハードコート層上に、光学調整層を形成する工程
以下、これまでの内容と重複する部分は省略し、異なる部分のみを詳述する。
なお、本発明の透明導電層形成用積層体は、基材フィルムの両面にハードコート層を必須の構成要件としていないが、以下の説明においては、基材フィルムの両面にハードコート層を形成した場合を例に挙げて説明する。
基材フィルムの両面に、上述したハードコート層形成用組成物を、従来公知の方法にて塗布し塗膜を形成した後、乾燥し、これに活性エネルギー線を照射して塗膜を硬化させることにより、ハードコート層が形成される。
また、ハードコート層形成用組成物の塗布方法としては、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
さらに、活性エネルギー線としては、例えば、紫外線や電子線等が挙げられる。
また、紫外線の光源としては、高圧水銀ランプ、無電極ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が挙げられ、その照射量は、通常、100〜500mJ/cm2とすることが好ましい。
一方、電子線の光源としては、電子線加速器等が挙げられ、その照射量は、通常、150〜350kVとすることが好ましい。
また、活性エネルギー線を照射する際には、窒素雰囲気下において行うことがより好ましい。
この理由は、窒素雰囲気下において行うことにより、ハードコート層表面の硬化反応が効果的に進み、ハードコート層における耐エッチング性を、さらに効果的に向上させることができるためである。
次いで、形成されたハードコート層上に(ハードコート層を形成しない場合は、基材フィルム上に直接)、高屈折率層を形成する。
すなわち、高屈折率層は、基材フィルム上にハードコート層を形成するのと同様にして、上述した高屈折率層形成用組成物を塗布・乾燥するとともに、活性エネルギー線を照射して硬化させることにより形成することができる。
次いで、形成された高屈折率層上に、さらに低屈折率層を形成する。
すなわち、低屈折率層は、基材フィルム上にハードコート層を形成するのと同様にして、上述した低屈折率層形成用組成物を塗布・乾燥するとともに、活性エネルギー線を照射して硬化させることにより形成することができる。
また、活性エネルギー線を照射する際には、窒素雰囲気下において行うことがより好ましい。
この理由は、窒素雰囲気下において行うことにより、光学調整層表面の硬化反応が効果的に進み、光学調整層、特に最表面層である低屈折率層における耐エッチング性を、さらに効果的に向上させることができるためである。
本発明の第2の実施形態は、図3に示すように、ハードコート層と、基材フィルムと、光学調整層と、透明導電層と、を順に積層してなる透明導電性フィルムであって、ハードコート層が、下記(A)〜(B)成分を含むハードコート層形成用組成物を光硬化してなることを特徴とする透明導電性フィルムである。
(A)活性エネルギー線硬化性樹脂 100重量部
(B)シリカ微粒子 15〜100重量部
以下、本発明の第2の実施形態を、これまでの内容と重複する部分は省略し、異なる部分のみを詳述する。
(1)材料物質
本発明の透明導電性フィルムにおいて、透明導電層の材料物質としては、透明性と導電性とを併せ持つものであれば特に制限されるものではないが、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化錫、インジウム錫酸化物(ITO)、錫アンチモン酸化物、亜鉛アルミニウム酸化物、インジウム亜鉛酸化物等が挙げられる。
また、特に、材料物質としてITOを用いることが好ましい。
この理由は、ITOであれば、適当な造膜条件を採用することで、透明性および導電性に優れた透明導電層を形成することができるためである。
また、透明導電層が、エッチングによりライン状若しくは格子状のようなパターン形状に形成されてなることが好ましい。
また、上述したパターン形状は、透明導電層の存在する部分の線幅と、透明導電層が存在しない部分の線幅とが、略等しいことが好ましい。
さらに、当該線幅は、通常、0.1〜10mmであり、好ましくは、0.2〜5mmであり、特に好ましくは0.5〜2mmである。
なお、上述したライン状若しくは格子状における線幅は一定である場合に限られず、例えば、静電容量式のタッチパネルに要求される形状に連なるもの等を自由に選択することができる。
具体的には、ひし形部分と線部が繰り返し連なったパターン形状等が挙げられ、このようなパターン形状も「ライン状」の範疇に含まれる。
なお、透明導電層をこのように形成した場合、アニール処理を施すことにより、通常、透明導電層のパターン形状が目立ちやすくなるが、図3に示すように基材フィルムの両側にハードコート層を設ける場合、本発明の透明導電性フィルムであれば、透明導電層のパターン形状を不可視化することができる。
また、透明導電層の厚さは、5〜500nmであることが好ましい。
この理由は、透明導電層の厚さが5nm未満の値となると、透明導電層が脆くなるばかりか、十分な導電性が得られなくなる場合があるためである。一方、透明導電層の厚さが500nmを超えた値となると、透明導電層に起因した色味が強くなり、パターン形状が認識されやすくなる場合があるためである。
したがって、透明導電層の厚さは、15〜250nmであることがより好ましく、20〜100nmであることがさらに好ましい。
上述した透明導電層形成用積層体の製造方法における工程(b)で得られた光学調整層に対し、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法、ゾル−ゲル法等の公知の方法により、透明導電層を形成することにより、透明導電性フィルムを得ることができる。
また、スパッタリング法としては、化合物を用いた通常のスパッタリング法、あるいは金属ターゲットを用いた反応性スパッタリング法等が挙げられる。
この際、反応性ガスとして酸素、窒素、水蒸気等を導入したり、オゾン添加やイオンアシスト等を併用したりすることも好ましい。
また、透明導電層は、上述したようにして製膜した後、フォトリソグラフィー法により所定のパターンのレジストマスクを形成した後、公知の方法によりエッチング処理を施すことで、ライン状のパターン等を形成することができる。
なお、エッチング液としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の酸の水溶液等が好ましく挙げられる。
また、エッチング処理の最終工程である残留したフォトレジストを除去するためのアルカリ処理に用いられる液としては、エッチング処理の迅速化の観点から、液温10〜50℃、濃度1〜10重量%、pH13.4〜14.4の強塩基水溶液を用いることが好ましい。
また、好適な強塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化ユウロピウム(II)、水酸化タリウム(I)、グアニジン等が挙げられる。
すなわち、得られた透明導電性フィルムを130〜180℃の温度条件下に0.5〜2時間曝すことが好ましい。
1.ハードコート層形成用組成物の調製
容器内に、(A)成分としての活性エネルギー線硬化性樹脂と、(B)成分としてのシリカ微粒子と、(C)成分としてのレベリング剤と、(D)成分としての光重合開始剤と、を下記組成にて収容した後、溶剤を加えて均一に混合し、固形分濃度22重量%のハードコート層形成用組成物を調製した。
なお、下記組成および表1に示す組成における配合量は、希釈溶剤を除いた純分を表す。
(A)成分:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 100重量部
(B)成分:反応性中実シリカ微粒子 43.2重量部
(体積平均粒子径(D50)15nm)
(C)成分:フッ素系レベリング剤 0.05重量部
(ネオス(株)製、フタージェント7602A)
(D)成分:光重合開始剤 3重量部
(BASFジャパン(株)製、イルガキュア 184)
なお、上述した(B)成分の体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置にて測定した。
また、以下において、上述した(D)成分としての光開始剤を「イルガキュア 184」と称する場合がある。
容器内に、紫外線硬化性樹脂(大日精化工業(株)製、セイカビーム EXF−01L(NS))を100重量部(希釈溶剤を除いた純分を表す。以下同じ。)と、酸化ジルコニウム分散液(CIKナノテック(株)製、ZRMIBK15WT%−F85)を200重量部と、アクリル系レベリング剤(ビックケミー・ジャパン(株)製、BYK−355)を0.05重量部と、光重合開始剤(BASFジャパン(株)製、イルガキュア 907)を3重量部と、を収容した後、溶剤を加えて均一に混合し、固形分濃度1重量%の高屈折率層形成用組成物を調製した。
容器内に、(a)成分としての撥水性樹脂を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂と、(b)成分としてのシリカ微粒子と、(c)成分としてのレベリング剤と、(d)成分としての光重合開始剤と、を下記組成にて収容した後、溶剤を加えて均一に混合し、固形分濃度1重量%の低屈折率層形成用組成物を調製した。
なお、下記組成に示す組成における配合量は、希釈溶剤を除いた純分を表す。
(a)成分:フッ素樹脂を含有する紫外線硬化性アクリル樹脂
100重量部
(フッ素樹脂の種類:反応性フッ素アクリル樹脂、フッ素樹脂の含有量:80重量%、フッ素樹脂単体の硬化樹脂塗膜の表面自由エネルギー:25mN/m)
(b)成分:反応性中空シリカ微粒子 100重量部
(体積平均粒子径(D50)45nm)
(c)成分:アクリル系レベリング剤 0.05重量部
(ビックケミー・ジャパン(株)製、BYK−355)
(d)成分:光重合開始剤 5重量部
(BASFジャパン(株)製、イルガキュア 184)
なお、上述した(b)成分の体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置にて測定した。
基材フィルムとして、膜厚125μmの易接着層付きポリエステルフィルム(帝人デュポン(株)製、PET125KEL86W)を用意した。
次いで、用意した基材フィルムの表面に、ハードコート層形成用組成物をワイヤーバー#8にて塗工した。
次いで、70℃で1分間乾燥させた後、窒素雰囲気下において紫外線照射装置(ジーエスユアサコーポレーション(株)製)を用いて下記条件にて紫外線を照射し、基材フィルムの表面に膜厚2μmのハードコート層を形成した。
また、基材フィルムの反対側の面にも、同様にしてハードコート層を形成した。
光源:高圧水銀灯
照度:150mW/cm2
光量:150mJ/cm2
次いで、形成した一方のハードコート層上に、高屈折率形成用組成物をワイヤーバー#4にて塗工した。
次いで、50℃で1分間乾燥させた後、窒素雰囲気下において紫外線照射装置(ジーエスユアサコーポレーション(株)製)を用いてハードコート層と同じ照射条件にて紫外線を照射し、ハードコート層上に膜厚35nm、屈折率nD=1.65の高屈折率層を形成した。
次いで、形成した高屈折率層上に、低屈折率層形成用の組成物をワイヤーバー#4にて塗工した。
次いで、50℃で1分間乾燥させた後、窒素雰囲気下において紫外線照射装置(ジーエスユアサコーポレーション(株)製)を用いてハードコート層と同じ照射条件にて紫外線を照射し、高屈折率層上に膜厚50nm、屈折率nD=1.37の低屈折率層を形成し、図1(a)に示すような透明導電層形成用積層体を得た。
(1)耐エッチング性の評価
得られた透明導電層形成用積層体における耐エッチング性を評価した。
すなわち、得られた透明導電層形成用積層体の反射率(%)(低屈折率層側)を紫外可視近赤外(UV−vis−NIR)分光光度計(島津製作所(株)製、UV−3600)を用いて、反射角度:8°、サンプリングピッチ:1nm、測定モード:シングルの条件にて測定した。
次いで、透明導電層形成用積層体を、40℃に加温した5重量%の水酸化ナトリウム水溶液に5分間浸漬させてアルカリ処理した後、上述した条件と同条件にて反射率(%)を測定した。
次いで、アルカリ処理前の反射率(%)からアルカリ処理後の反射率(%)を引いて反射率変化量(%)を算出した。得られた結果を表1に示す。
なお、反射率変化量が0.5%以下の値であれば、実用上、優れた耐エッチング性を有すると判断できる。
また、反射率変化量(%)により耐エッチング性を評価できる理由は、エッチング処理によりハードコート層の膜厚または屈折率もしくは両方が変化すると、ハードコート層の反射率が変化するためである。
得られた透明導電層形成用積層体の低屈折率層の表面に対し、パターン化された透明導電層を形成し、その視認性を評価した。
すなわち、得られた透明導電層形成用積層体を縦90mm×横90mmにカットした後、ITOターゲット(酸化錫10重量%、酸化インジウム90重量%)を用いてスパッタリングを行い、低屈折率層上の中央部に縦60mm×横60mmの正方形状、膜厚30nmの透明導電層を形成した。
次いで、得られた透明導電層の表面上に格子状にパターン化されたフォトレジスト膜を形成した。
次いで、室温下にて、10重量%の塩酸に1分間浸漬することによりエッチング処理を行い、透明導電層を格子状にパターン化した。
次いで、40℃に加温した5重量%の水酸化ナトリウム水溶液に5分間浸漬させてアルカリ処理を行い、透明導電層上のフォトレジスト膜を除去し、パターン化された透明導電層を有する透明導電性フィルムを得た。
当該透明導電性フィルムは、線幅2mmのITOからなる線部により1辺が2mmの正方形の空隙が格子状に区画化されたパターン形状を有する30nmの透明導電層を有するものであった。
次いで、得られた透明導電性フィルムを、白色蛍光灯から1mの位置に設置し、透明導電性フィルムに白色蛍光灯を映りこませた状態で、白色蛍光灯が設置されているのと同じ側における透明導電性フィルムから30cmの位置より、目視にて透明導電層のパターン形状を観察し、下記基準に沿って評価した。得られた結果を表1に示す。
○:透明導電層のパターン形状が視認されない
×:透明導電層のパターン形状が視認される
得られた透明導電層形成用積層体におけるアンチブロッキング性を評価した。
すなわち、平坦なガラス板上に、粘着剤などを介さず、ハードコート層が上向きになるように透明導電層形成用積層体を載置した。
次いで、載置した透明導電層形成用積層体の上に、別の透明導電層形成用積層体を重ねて置いた後、手で押し、これら2枚の透明導電層形成用積層体を擦ることで、ハードコート層同士、およびハードコート層と低屈折率層の擦り合わせを行い、下記基準に沿ってアンチブロッキング性を評価した。得られた結果を表1に示す。
○:層表面同士が密着しない
×:層表面同士が密着して動かない
実施例2では、ハードコート層形成用組成物を調製する際に、下記組成としたほかは、実施例1と同様に透明導電層形成用積層体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
なお、下記組成および表1に示す組成における配合量は、希釈溶剤を除いた純分を表す。
(A1)成分:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
99.5重量部
(A2)成分:架橋アクリル系共重合樹脂 0.5重量部
(積水化成品工業(株)製、テクポリマー XX−27LA)
(B)成分:反応性中実シリカ微粒子 100重量部
(体積平均粒子径(D50)15nm)
(C)成分:フッ素系レベリング剤 0.13重量部
(ネオス(株)製、フタージェント7602A)
(D)成分:光重合開始剤 6.7重量部
(BASFジャパン(株)製、イルガキュア 184)
なお、上述した(B)成分の体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置にて測定した。
また、以下において、(A2)成分としての架橋アクリル系共重合体樹脂を「テクポリマー XX−27LA」と称する場合がある。
比較例1では、ハードコート層形成用組成物を調製する際に、下記組成としたほかは、実施例1と同様に透明導電層形成用積層体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
なお、下記組成および表1に示す組成における配合量は、希釈溶剤を除いた純分を表す。
(A)成分:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 100重量部
(B)成分:反応性中実シリカ微粒子 150重量部
(体積平均粒子径(D50)15nm)
(C)成分:フッ素系レベリング剤 0.05重量部
(ネオス(株)製、フタージェント7602A)
(D)成分:光重合開始剤 5重量部
(BASFジャパン(株)製、イルガキュア 184)
なお、上述した(B)成分の体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置にて測定した。
比較例2では、ハードコート層形成用組成物を調製する際に、下記組成としたほかは、実施例1と同様に透明導電層形成用積層体を製造し、評価した。得られた結果を表1に示す。
なお、下記組成および表1に示す組成における配合量は、希釈溶剤を除いた純分を表す。
(A)成分:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 100重量部
(C)成分:フッ素系レベリング剤 0.05重量部
(ネオス(株)製、フタージェント7602A)
(D)成分:光重合開始剤 5重量部
(BASFジャパン(株)製、イルガキュア 184)
その結果、透明導電層のパターン形状を安定的に不可視化することができ、かつ、得られる透明導電性フィルムにおけるアンチブロッキング性に優れた透明導電層形成用積層体を得ることができるようになった。
したがって、本発明の透明導電層形成用積層体およびそれを用いた透明導電性フィルムは、タッチパネルの高品質化に著しく寄与することが期待される。
Claims (9)
- ハードコート層と、基材フィルムと、光学調整層と、を順に積層してなる透明導電層形成用積層体であって、
前記ハードコート層が、下記(A)〜(B)成分を含み、下記(B)成分としてのシリカ微粒子が反応性シリカ微粒子であるハードコート層形成用組成物を光硬化してなることを特徴とする透明導電層形成用積層体。
(A)活性エネルギー線硬化性樹脂 100重量部
(B)シリカ微粒子 15〜100重量部 - 前記(B)成分としてのシリカ微粒子の体積平均粒子径(D50)を10〜100nmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1に記載の透明導電層形成用積層体。
- 前記(B)成分としてのシリカ微粒子が中実シリカ微粒子であることを特徴とする請求項1または2に記載の透明導電層形成用積層体。
- 前記ハードコート層形成用組成物が(C)成分としてフッ素系レベリング剤を含むとともに、当該フッ素系レベリング剤の配合量を、前記(A)としての活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して、0.01〜0.2重量部の範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の透明導電層形成用積層体。
- 前記ハードコート層の膜厚を0.5〜5μmの範囲内の値とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の透明導電層形成用積層体。
- 前記ハードコート層を第1のハードコート層とした場合に、前記基材フィルムと、前記光学調整層との間に、第2のハードコート層を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の透明導電層形成用積層体。
- 前記第2のハードコート層が、前記第1のハードコート層と同じハードコート層形成用組成物を光硬化してなるとともに、前記第1のハードコート層と同じ膜厚を有することを特徴とする請求項6に記載の透明導電層形成用積層体。
- ハードコート層と、基材フィルムと、光学調整層と、透明導電層と、を順に積層してなる透明導電性フィルムであって、
前記ハードコート層が、下記(A)〜(B)成分を含み、下記(B)成分としてのシリカ微粒子が反応性シリカ微粒子であるハードコート層形成用組成物を光硬化してなることを特徴とする透明導電性フィルム。
(A)活性エネルギー線硬化性樹脂 100重量部
(B)シリカ微粒子 15〜100重量部 - 前記透明導電層が、エッチングによりパターン化されていることを特徴とする請求項8に記載の透明導電性フィルム。
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