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JP6556314B2 - 多孔性の金属箔を備える電子顕微鏡試料支持体 - Google Patents

多孔性の金属箔を備える電子顕微鏡試料支持体 Download PDF

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Description

本発明は、電子顕微鏡試料支持体、そのような電子顕微鏡試料支持体を製造する方法、そのような電子顕微鏡試料支持体を使用する撮像の方法、及びそのような撮像の方法を実施するように動作可能な装置に関する。
電子顕微鏡技法は、標本を撮像するために使用することができる。そのような技法によれば、標本を「照らす」ために電子のビームが使用される。電子線中に標本が存在すると、そのビームが変化する。試料により誘起されるビームに対する変化を検査し、標本の拡大画像を生成することができる。
電子線によって照らすために、標本は、そのビームの中で適切に支持されなければならない。電子線を形成する電子は、高エネルギーを有することが多く、対象物、例えば検査用の標本を、電子線内の所定の位置で標本を保持する支持体と共に衝撃する(bombarding)ことは、支持体及び/又は標本に、物理的、化学的、及び/又は電気的な変化をもたらす場合があることを理解されたい。そのような変化は、電子顕微鏡技法の使用を介して得られる画像の解像度を含む、結果に影響を及ぼす場合がある。
知られている標本支持体の特徴のいくつかに対処することができる、電子顕微鏡法で使用するための標本支持体を実現することが望まれる。
したがって、第1の態様は、支持部材と、多孔性領域を備える金属箔とを備え、支持部材が、金属箔に構造上の安定性を与えるように構成され、金属箔の多孔性領域が、電子顕微鏡試料を受け入れるように構成される、電子顕微鏡試料支持体を提供する。
第1の態様は、例えばナノスケール粒子を含む標本の、電子顕微鏡写真中の情報内容が、電子線が誘起した個々の粒子の運動、電子線によって誘起される標本上への電荷蓄積、及び/又は標本支持体、例えばカーボン基板の化学変換によって制限される可能性があることを認める。そのような現象は、図1〜図3に、概略的に図示される。
上に記載された現象は、極低温度で標本を調査するため透過電子顕微鏡法が使用される、極低温電子顕微鏡法としても知られる、電子低温顕微鏡法に関して、特に関連がある場合がある。電子低温顕微鏡技法は、凍結した、水和生物標本の調査に特に有用となり得る。以前に言及されたものなどの現象の結果として情報内容が損失することによって、そのような凍結した水和生物試料に関して、特にそのような試料の画像の3D再構成に関して、電子低温顕微鏡法によって集められた画像の解像度が制限される場合がある。知られている技法は、利用可能な情報が制限される結果として、個々の粒子の角度配置の精度に制限を課し、それによって、約500kDa未満などのより小さい粒子が信頼性高く位置合わせできない。
第1の態様は、電子顕微鏡法で金属グリッド支持体を使用することが知られ、多孔性のカーボンフィルムを使用することが知られているが、分析のために標本を支持する微細な多孔性金属箔を使用することには、第1の例で、結果として得られる画像に有害な可能性がある構造であると思われるにもかかわらず、利点がある場合があると認める。特に、金
属箔中に設けられる孔の領域中に試料を収容することは、金属箔が電子線に対して透過性でなく、入射電子線に適切でない干渉を引き起こす可能性があるので、より不十分な画像をもたらすことになると考えられる可能性がある。結果として、典型的には、多孔性のカーボン基板が使用されてきた。それらの基板は、例えば金属グリッドにより支持され、金属グリッドは、標本支持体に機械的安定性を加え、必要に応じて試料から電子を「伝導して」取り去るように動作可能である。
第1の態様による試料支持体は、例えば、入射電子線内に正しく位置合わせされる場合、金属箔中の孔の領域中に配置される試料に十分な2次電子を提供することを可能にするように選択される特性を有する、金属箔を含む。そのような2次電子は、次いで、入射電子線へ曝している期間に試料に蓄積された正の電荷を中性化することができる。適切に選択された金属の電子の産出は、箔の孔の領域中に試料又は標本が経験する帯電効果を最小化するように働くことができる。さらに、金属は、電子線があるときに、実質的に不活性で非反応性であるように選択することができる。適切に選択された金属の非反応性の性質によって、箔の機械的な変形を最小化することができる。
第1の態様の多孔性箔を記載するために金属という語が使用されてきたが、下でさらに概説されるように、実質的に金属の特性を有する材料、例えば適切に選択された半導体材料も使用できることを理解されたい。典型的には、金属とは、立方cm当たり10e21より大きい自由電荷担体濃度を有する任意の材料であると考えることができる。
1つの実施形態では、金属箔は、支持部材とオーミック接触(ohmic contact)するよ
うに配置される。すなわち、金属箔と支持部材との間の接点が非整流接合として働き、したがって箔と支持体との間で任意の自由電子が容易に運動することを可能にし、支持体を電子線に曝すことの結果として生じる可能性がある帯電効果を改善する。
1つの実施形態では、金属箔は、材料中の任意の特定の原子に密に束縛されない可動電子の大部分を有する金属を含む。この種の材料は、典型的なアモルファスカーボンよりも導電性である。すなわち、いくつかの実施形態では、金属は、高い導電性金属を含むことができる。したがって、箔用に高い導電性金属を設けることによって、箔内の電子の比較的自由な運動が可能になり、このことによって、支持体を電子線に曝すことの結果として生じる可能性がある帯電効果を改善することができる。
1つの実施形態では、金属箔は、箔への各々の電子の入射毎に、箔により放出される電子の高い全収率を有する金属を含む。したがって、高エネルギー電子線へ曝すことによって、標本又は試料領域上に入ることができる電子の生成を可能にし、したがって、試料を電子線に曝すことの結果として生じる可能性がある帯電効果を改善することができる。
1つの実施形態では、金属箔は、高い機械的安定性を有する金属を含む。金属箔は、入射電子線に曝す期間に、試料の運動を、結果として得られる画像について求められる空間解像度の逆数未満へと、減らすのに十分な選択された厚さにおける機械的強度を有する金属を含むことができる。したがって、箔は、支持部材にわたって延在するとき、自己支持するように構成することができる。金属箔は、適切なヤング率を有するように選択した場合、本質的に比較的薄いにもかかわらず、支持部材の側面間の長さにわたり比較的強固であり得るようにすることができる。さらに、適切な機械的安定性を有する箔材料を選択することによって、多孔性金属箔に対する化学変化又は電荷の不均衡によって引き起こされる機械的歪みの任意の効果に対処することができる。すなわち、材料が堅くなれば、電荷の不均衡が箔の物理的な湾曲を引き起こす可能性が低くなる。物理的な湾曲を改善することは、試料の顕微鏡画像の動きにより引き起こされるぼけを改善する助けとなり得る。
1つの実施形態では、金属箔は、非反応性の金属を含む。したがって、高エネルギー電子線に曝すことによって、金属箔中にほとんど化学変化が生じない可能性があり、したがって、化学変化が多孔性金属箔に引き起こす機械的歪みの任意の効果を改善することができる。
1つの実施形態では、金属箔は、生物電子顕微鏡試料と適合性のある金属を含む。したがって、材料の選択は、標本との反応が最小化されるようなものであってよい。特に、いくつかの実施形態で、金属箔は、生物学的物質と反応をほとんど示さないように選択することができる。
1つの実施形態では、金属箔は、金、プラチナ、パラジウム、ハフニウム、又はロジウム金属箔のうちの少なくとも1つを含む。したがって、そのような材料及び同様の材料は、それらが適切な粒度を有し、酸化物を形成せず、所望のヤング率、2次電子収率、又は他の同様の望ましい及び/又は調整可能な性質を有するので選択することができる。
いくつかの実施形態では、金属箔中の個々の孔(pore)は、それらが、電子顕微鏡の入射電子線により調べられる面積に比較可能となるように寸法設定される。したがって、電子顕微鏡のビームは、単一の孔の全体を見るように動作可能とすることができる。いくつかの実施形態では、各孔(pore)又は穴(hole)は、単一の穴の中の、対象となる複数の電子顕微鏡試料の同時撮像を可能にするように寸法設定される。いくつかの実施形態では、各孔は、入射電子顕微鏡電子線のサイズよりも小さいように寸法設定される。したがって、入射線は、孔の中に収容される試料をカバーするように、穴若しくは孔を囲む金属箔の領域上に延在する又は重複するように配置することができる。金属箔上でビームが重複することは、箔上の入射電子線の結果として生成される2次電子による、試料の均一な電荷の中性化を確実にすることの役に立つことができる。1つの実施形態では、金属箔の多孔性領域は、複数の穴を含む金属の層を備える。多孔性領域は、支持部材によって所定の位置に保持される金属箔の実質的に全てにわたり延在することができる。いくつかの実施形態では、箔の領域のみが穴を含むことができる。これらの穴は、多孔性領域中に、規則的又は不規則に配置することができる。いくつかの実施形態では、これらの穴は、サイズが実質的に均一であってよい。いくつかの実施形態では、穴のサイズが、箔にわたって変化する場合がある。すなわち、複数の多孔性領域が金属箔上に設けられ、各々が異なる孔サイズを有することができる。或いは、異なるサイズの孔を、金属フィルムの多孔性領域にわたって設けることができる。したがって、いくつかの条件を単一のグリッド上で試験することができる。
1つの実施形態では、穴は、少なくとも1つの電子顕微鏡試料を受け入れるように寸法設定される。したがって、支持体により所定の位置に保持される試料が照射されるとき、少なくとも1つの試料を、調べている電子線により見ることができる。すなわち、1つの実施形態では、金属箔は、電子顕微鏡試料の少なくとも最小寸法であるように選択された厚さを有する。
1つの実施形態では、支持部材は、実質的に環状の要素を備える。その環の断面形状は、例えば、実質的に円形、楕円形、矩形、又は三角形であってよい。したがって、金属箔は、前記環状の要素にわたって延在することができる。
1つの実施形態では、支持部材は、複数の離隔された支持要素を備える。1つの実施形態では、複数の離隔された支持要素は、メッシュを形成するように配置される。したがって、支持部材は、グリッド状構造を支持する環状の要素を備えることができる。そのグリッド状構造は、次いで、隣接するメッシュ要素間で、金属箔を支持することができる。そのようなグリッドは、金属箔にさらなる構造的安定性を提供することができる。1つの実
施形態では、金属箔の多孔性領域は、メッシュの領域にわたって延在するように配置される。
1つの実施形態では、支持部材及び支持要素が金属を含む。1つの実施形態では、金属は、金、プラチナ、パラジウム、又はハフニウムのうちの少なくとも1つを含む。したがって、支持体は、金属であってよく、又は支持構造物を高エネルギー電子線に曝すとき生じる可能性がある、帯電、化学及び/又は他の同様の運動が誘起するプロセスを最小化するように選択することができる金属特性を有することができる。
1つの実施形態では、支持部材、支持要素、及び金属箔が、全て同じ金属から形成される。したがって、試料支持体を形成する主な構成要素は、実質的に同じ熱膨張係数(TEC, thermal expansion coefficient)を有する材料から形成される。結果として、金属
箔中に誘起される応力、歪み、伸張、又は裂けは、軽減することができる。ここで、これらの変化は、試料支持体が、例えば液体窒素温度に下げられたとき経験するような、温度の変化により誘起される。箔が張力を受けるように支持体が製造される場合、試料支持体及び/又は支持要素の熱係数を金属箔の熱係数と一致させることが、箔に対する損傷並びに箔と試料支持体及び/又は支持要素との間の相対運動の可能性を軽減させる助けとなり得る。さらに、支持構成要素間のそのような熱的一致は、温度範囲にわたり膜の曲げ剛性を保つための冷却期間に、金属箔の膜中の規定の量の張力を維持するために望ましい場合があることを理解されたい。
1つの実施形態では、支持体は、グラフェン層をさらに備える。いくつかの実施形態では、そのグラフェン層が薄いフィルムを備えることができる。したがって、入射電子線に対し実質的に透過性とすることができるグラフェン層が設けられる。
1つの実施形態では、グラフェン層は、金属箔の多孔性領域中の孔にわたって延在するように構成される。グラフェンの透過性の性質の結果として、前記試料支持体中にそのような層を設けることによって、さらなる構造的安定性を可能にし、一方、結果として得られる画像の品質を劣化させないことができる。
1つの実施形態では、グラフェン層は、金属箔とオーミック接触するように構成される。したがって、試料支持体中にグラフェン層を設けることの影響は最小化することができ、多孔性金属箔の利点が維持される。
1つの実施形態では、グラフェン層は、電子顕微鏡試料を支持するように構成される。したがって、金属箔中の孔にわたって延在することができるグラフェン層は、その上に試料を支持する又はグラフェンが試料を囲む若しくは囲繞するように、試料を含む薄い層を形成する表面として使用することができる。グラフェンの連続層によって、より均一な試料を含む構造物の作成を可能にすることができる。
1つの実施形態では、金属箔の多孔性領域中の穴は、電子顕微鏡法を使用して検査される、放射線感受性材料を受け入れるように構成される。検査される試料は、多孔性金属箔の孔の上、下、又は中に位置することができる。放射線感受性材料は、タンパク質を含んでよい。そのタンパク質は、電子顕微鏡プロセスにより実質的に破壊される可能性がある。1つの実施形態では、放射線感受性材料は、生物材料を含む。1つの実施形態では、生物材料は、ガラス状の氷の中で、前記金属箔の前記多孔性領域中に支持される。したがって、氷の構造物は、対象の試料又は標本の撮像を邪魔しないことができる。
いくつかの実施形態では、試料支持体は、電子低温顕微鏡試料支持体を含む。本明細書に記載される問題のいくつかは、電子低温顕微鏡法分野に特に関係がある可能性があり、
したがって、態様及び実施形態の試料支持体は、そのような分野に特に応用範囲を見いだすことができる。
第2の態様は、電子顕微鏡試料支持体を製造する方法を提供する。方法は、支持部材及び多孔性領域を備える金属箔を用意するステップと、支持部材を、金属箔に構造上の安定性を与えるように構成するステップと、金属箔の多孔性領域を電子顕微鏡試料を受け入れるように構成するステップとを含む。
1つの実施形態では、金属箔を形成するステップが、テンプレート上の金属堆積を含むことができる。
1つの実施形態では、金属箔を形成するステップが、金属堆積後にテンプレートの除去を含むことができる。
1つの実施形態では、方法は、金属箔を支持部材とオーミック接触するように配置するステップを含む。
1つの実施形態では、金属箔は、高い導電性を有する金属を含む。
1つの実施形態では、金属箔は、高い2次電子生成収率を有する金属を含む。
1つの実施形態では、金属箔は、高い機械的安定性を有する金属を含む。
1つの実施形態では、金属箔は、非反応性の金属を含む。
1つの実施形態では、金属箔は、生物電子顕微鏡試料と適合性のある金属を含む。
1つの実施形態では、金属箔は、金、プラチナ、パラジウム、又はハフニウム金属箔のうちの少なくとも1つを含む。
1つの実施形態では、金属箔の多孔性領域は、複数の穴を含む金属の層を備える。
1つの実施形態では、方法は、少なくとも1つの電子顕微鏡試料を受け入れるように寸法設定される穴を設けるステップを含む。
1つの実施形態では、方法は、電子顕微鏡試料の少なくとも最小寸法の厚さを有する金属箔を選択するステップを含む。
1つの実施形態では、支持部材は、実質的に環状のディスクを備える。
1つの実施形態では、支持部材は、複数の離隔された支持要素を備える。
1つの実施形態では、方法は、メッシュを形成するように複数の離隔された支持体を配置するステップを含む。
1つの実施形態では、方法は、金属箔の多孔性領域がメッシュの領域にわたって延在するように、金属箔の多孔性領域を配置するステップを含む。
1つの実施形態では、支持部材及び支持要素が金属を含む。
1つの実施形態では、金属は、金、プラチナ、パラジウム、又はハフニウムのうちの少なくとも1つを含む。
1つの実施形態では、支持体、支持要素、及び金属箔のうちの2又は3以上が、実質的に一致する熱膨張係数を有する1又は2以上の材料を含む。1つの実施形態では、支持体、支持要素、及び金属箔のうちの2又は3以上が、同じ材料を含み、実質的に一致する熱膨張係数を有する。
1つの実施形態では、方法は、グラフェン層を設けるステップをさらに含む。
1つの実施形態では、方法は、グラフェン層を、金属箔の多孔性領域中の孔にわたって延在するように構成するステップを含む。
1つの実施形態では、方法は、グラフェン層を金属箔とオーミック接触するように構成するステップを含む。
1つの実施形態では、方法は、グラフェン層を電子顕微鏡試料を支持するように構成するステップを含む。
1つの実施形態では、方法は、金属箔の多孔性領域中の穴を、電子顕微鏡法を使用して検査される放射線感受性材料を受け入れるように構成するステップを含む。
1つの実施形態では、放射線感受性材料は、生物材料を含む。
1つの実施形態では、方法は、生物材料を、ガラス状の氷の中で、前記金属箔の前記多孔性領域中に支持するステップを含む。
第3の態様は、電子顕微鏡試料を第1の態様による支持体上に構成するステップと、支持体を顕微鏡の電子線中に配置するステップと、分析のために画像データを集めるステップとを含む、電子顕微鏡試料を撮像する方法を提供する。
第4の態様は、試料の電子顕微鏡画像を提供するように動作可能な撮像装置を提供し、撮像装置は、第1の態様による支持体上に取り付けられた電子顕微鏡試料と、支持体上に入射されるように配置される顕微鏡の電子線と、分析のために画像データを集めるように動作可能な収集デバイスとを備える。
さらなる詳細で好ましい態様が、添付の独立請求項及び従属請求項中に記載される。従属請求項の特徴は、適宜及び請求項中に明示的に記載されるもの以外の組合せで、独立請求項の特徴と組み合わせることができる。
装置の特徴が機能を提供するように動作可能であると記載される場合、これは、その機能を提供する装置の機能、又はその機能を提供するように適合若しくは構成される装置の機能を含むことを理解されたい。すなわち本発明は以下に関する。
(1)支持部材と、
多孔性領域を備える金属箔と
を備え、
前記支持部材が前記金属箔に構造上の安定性を与えるように構成され、前記金属箔の前記多孔性領域が電子顕微鏡試料を受け入れるように構成される、電子顕微鏡試料支持体。
(2)金属箔が支持部材とオーミック接触するように配置される、上記(1)に記載の電子顕微鏡試料支持体。
(3)金属箔が高い導電性を有する金属を含む、上記(1)又は(2)に記載の電子顕微鏡試料支持体。
(4)金属箔が高い2次電子生成収率を有する金属を含む、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の電子顕微鏡試料支持体。
(5)金属箔が高い機械的安定性を有する金属を含む、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の電子顕微鏡試料支持体。
(6)金属箔が非反応性の金属を含む、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の電子顕微鏡試料支持体。
(7)金属箔が生物電子顕微鏡試料と適合性のある金属を含む、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の電子顕微鏡試料支持体。
(8)金属箔が金、プラチナ、パラジウム、ロジウム、又はハフニウム金属箔のうちの少なくとも1つを含む、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の電子顕微鏡試料支持体。
(9)金属箔の多孔性領域が複数の穴を含む金属の層を備える、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の電子顕微鏡試料支持体。
(10)穴の各々が、少なくとも1つの電子顕微鏡試料を受け入れるように寸法設定される、上記(9)に記載の電子顕微鏡試料支持体。
(11)金属箔が電子顕微鏡試料の少なくとも最小寸法であるように選択された厚さを有する、上記(1)〜(10)のいずれかに記載の電子顕微鏡試料支持体。
(12)支持部材が複数の離隔された支持要素を備える、上記(1)〜(11)のいずれかに記載の電子顕微鏡試料支持体。
(13)複数の離隔された支持要素がメッシュを形成するように配置される、上記(12)に記載の電子顕微鏡試料支持体。
(14)金属箔の多孔性領域が複数の離隔された支持要素の領域にわたって延在するように配置される、上記(11)又は(12)に記載の電子顕微鏡試料支持体。
(15)支持部材が金属を含む、上記(1)〜(14)のいずれかに記載の電子顕微鏡試料支持体。
(16)金属が、金、プラチナ、パラジウム、ロジウム、又はハフニウムのうちの少なくとも1つを含む、上記(15)に記載の電子顕微鏡試料支持体。
(17)支持体がグラフェン層をさらに備える、上記(1)〜(16)のいずれかに記載の電子顕微鏡試料支持体。
(18)グラフェン層が金属箔の多孔性領域中の孔にわたって延在するように構成される、上記(17)に記載の電子顕微鏡試料支持体。
(19)グラフェン層が金属箔とオーミック接触するように構成される、上記(17)又は(18)に記載の電子顕微鏡試料支持体。
(20)グラフェン層が電子顕微鏡試料を支持するように構成される、上記(17)〜(19)のいずれかに記載の電子顕微鏡試料支持体。
(21)多孔性領域中の孔が、電子顕微鏡法を使用して検査される放射線感受性材料を受け入れるように構成される、上記(1)〜(20)のいずれかに記載の電子顕微鏡試料支持体。
(22)電子顕微鏡試料支持体を製造する方法であって、
支持部材及び多孔性領域を備える金属箔を用意するステップと、
前記支持部材を、前記金属箔に構造上の安定性を与えるように構成するステップと、
前記金属箔の前記多孔性領域を電子顕微鏡試料を受け入れるように構成するステップとを含む、方法。
(23)上記(1)〜(21)のいずれかに記載の支持体上に電子顕微鏡試料を構成するステップと、
前記支持体を顕微鏡の電子線中に配置するステップと、
分析のために画像データを集めるステップと
を含む、電子顕微鏡試料を撮像する方法。
(24)試料の電子顕微鏡画像を提供するように動作可能な撮像装置であって、
上記(1)〜(21)のいずれかに記載の支持体上に取り付けられた電子顕微鏡試料と、
前記支持体上に入射されるように配置される顕微鏡の電子線と、
分析のために画像データを集めるように動作可能な収集デバイスと
を備える、装置。
本発明の実施形態は、添付図面を参照して、ここでさらに記載されることになる。
ガラス状の氷の中の、電子線が誘起した粒子の運動を概略的に図示した図である。 電子線が誘起した試料の電荷蓄積を概略的に図示した図である。 電子線が誘起した、支持基板の化学変換を概略的に図示した図である。 1つの実施形態による、電子顕微鏡支持体を概略的に図示する、断面、平面、及び側面図である。 図4aに示される電子顕微鏡支持体の部分を、より詳細に、概略的に図示する図である。 1つの実施形態によるデバイスの光学画像及び電子画像を示す図である。 例示的な電子顕微鏡支持体中のガラス状の氷の中の、金粒子の運動を測定する1つの実験の結果を示す図である。 1つの実施形態による支持体を使用して撮像された標本の比較例を示す図である。 従来型のアモルファスカーボングリッド支持体と比較した配置による金のグリッド支持体の運動が減少した様子を図示する、実験結果を示す図である。 様々な顕微鏡支持体構造物を使用し、氷の中で集められたデータについて、初期位置からの平均の80Sリボソーム変位を、時間/電子流束量に対するプロットとして図示した実験結果を示す図である。
例えばナノスケール粒子を含む標本の、電子顕微鏡写真中の情報内容が、電子線が誘起した個々の粒子の運動、電子線によって誘起される標本上への電荷蓄積、及び/又は標本支持体、例えばカーボン基板の化学変換によって制限される可能性があることが認められている。そのような現象は、図1〜図3に、概略的に図示される。
図1は、ガラス状の氷の中の、電子線が誘起した粒子の運動を概略的に図示する。図1は、粒子、この例ではガラス状の氷の中に埋め込まれたタンパク質を図示する。試料は、電子線で照射される。ビームを形成する電子は、これらの試料と衝突するとき、又はこれらの試料を通過するとき、タンパク質試料に伝えられるエネルギーを有する。撮像期間に、調査されている粒子は、電子線での照射の際に、回転及び平行移動の両方で動き、結果として得られるキャプチャされる画像にぼけを生じさせる可能性があることを理解されたい。
図2は、電子線が誘起した試料の電荷蓄積を概略的に図示する。図2は、金属グリッドのバーの間で支持されるアモルファスカーボン基板中の穴の中に形成されるガラス状の氷の中で、所定の位置に保持される、やはりタンパク質である試料を概略的に示す。(この例では、金属グリッド及びアモルファスカーボン基板から形成される)試料及び支持体を電子線を形成する高エネルギー電子で照射することによって、試料及び/又は支持体の部分を形成する電子の切り離し又は運動を引き起こす可能性がある。結果として生じる電子の運動又は変位によって、試料及び基板上に働く電気力を導入する場合がある試料帯電をもたらして、電子線の偏向による粒子移動及び画像のぼけを引き起こす可能性がある。
図3は、電子線が誘起した、支持基板の化学変換を概略的に図示する。図3に示される配置では、粒子、この例ではタンパク質が、ガラス状の氷の中に埋め込まれる。そのガラス状の氷は、カーボン基板中に形成される穴の中に形成される。試料は、電子線で照射される。高エネルギー電子線での照射は、ビームを形成する電子が、カーボン基板中の化学結合を破壊するように働く結果となる場合があり、このことが、次いで、基板の密度及び形状を変える可能性がある。基板の密度及び形状の変化は、機械的な応力及び運動を誘起し、氷層の「ドーム形成」を引き起こす場合がある。粒子を支持する氷層のドーム形成は、結果として得られる電子顕微鏡画像のぼけを引き起こす場合がある。
極低温EM用の現在の試料支持体及び基板は、典型的には、好適な材料から形成される「グリッド」と呼ばれる金属メッシュディスクを備える。その好適な材料は、金属を含む
ことができる。グリッドは、典型的には、穴のあるアモルファスカーボンの薄い層でカバーされる。グリッドは、規則的な配列の穴を有することができる。穴のあるアモルファスカーボンの薄い層は、規則的な配列の穴を備えることができる。不規則な「レース状の(lacey)」カーボン基板を使用することもできる。極低温EMの場合、アモルファスカー
ボン中に形成された穴の中に試料を封止するために、ガラス状の氷を使用することが多いことを理解されたい。図2及び図3に示されるように、氷は絶縁体であり、アモルファスカーボンは不良で高度に変動する導体であるから、両方が、電子線を偏向させ、試料上に強い静電力を加えることができる、かなりの可動表面電荷を蓄積する。さらに、アモルファスカーボンが高エネルギー電子線によって照射される場合、アモルファスカーボンは、密度、したがって、アモルファスカーボン支持体材料の形状を変える可能性がある化学変化を受け、それによって試料中の個々の粒子の移動を引き起こす可能性がある。
概要
実施形態をより詳細に議論する前に、最初に概要を提供することにする。本明細書に記載される態様及び実施形態は、上に記載された電子顕微鏡法に使用される支持体についての問題の各々を改善、減少、又は解消できる、超安定な試料支持体を提供することができる。
図4aは、1つの実施形態による、電子顕微鏡支持体の断面、平面、及び側面図を概略的に図示する。図4aは、この例では、実質的に環状の部材である支持要素、並びに金属グリッド及び金属グリッドの隣接するトラス間に延在する金属箔を備える、電子顕微鏡試料支持体を図示する。金属箔は、多孔性領域を備える。支持要素は、多孔性金属箔に構造上の安定性を与えるように構成される。金属箔の多孔性領域は、電子顕微鏡試料を受け入れるように構成される。いくつかの実施形態では、電子顕微鏡支持体は、金のメッシュグリッド上に取り付けられた穴のあいた金箔を備える。
図4bは、図4aに示される電子顕微鏡支持体の部分を、より詳細に、概略的に図示する。特に、図4bは、グリッド上につるされた穴のある箔膜の拡大図を示す。図4bの差込み図が、支持構造物を詳細に示す。
図5a〜図5cは、1つの実施形態によるデバイスの光学画像及び電子画像を示す。各画像の尺度が示される。図5aは、1つの実施形態によるデバイスの領域の低倍率光学画像を示す。示される実施形態は、穴のある金のつるされた薄い箔がかぶさった、3mmの金の金属メッシュ「グリッド」を備える。
図5bは、図5aに示されたデバイスのより高い倍率の画像であり、個々のグリッド矩形を示す。規則的な配列の穴を、グリッド支持体間の薄い金箔中に見ることができる。
図5cは、図5aの実施形態の箔中の、個々の穴の透過電子顕微鏡写真である。示される穴は、氷の薄い層の中に埋め込まれた70Sリボソームを含む試料を含む。
態様及び実施形態による支持体の様々なパラメータは、対象の電子顕微鏡用途の範囲に好適な支持体を構築するために変えることができることを理解されたい。特に、本明細書に挙げられるものを含むパラメータは、対象の標本に好適な支持体を提供するために調整することができる。
材料の選択
図4及び図5に示された実施形態では、多孔性金属箔及び支持構造物の両方について、金が好適な金属材料であると選択される。図4及び図5の実施形態の支持構造物は、それ自体が環状の支持体上に取り付けられる、グリッドの形をとる。金は高度に導電性であり
(アモルファスカーボンの約1400μΩcmと比較される、2.3μΩcmの抵抗率)、金のグリッドの頂部上に穴のあいた金箔を配置することによって、熱膨張係数に不連続性のない、連続する電気的接地平面を生成する。
さらに、金の基板から生成される2次電子の数は、カーボン基板、又は実際には多くの他の候補となる金属からのものよりはるかに多い。生成される2次電子の数は、支持体の設計で重要な点となる場合がある。というのは、電子顕微鏡の電子線が基板に当たるとき生成される2次電子は、標本上の任意の正の表面電荷を中性化する働きをするからである。
金は、カーボンと同様の機械的安定性を有する。金のヤング率は、アモルファスカーボンのものに比較可能であり、金では79GPaカーボンでは約100GPaである。対照的に、金は、化学変化を受けず、したがって電子線の中でより安定である。
材料特性のこの組合せが、金を、標本支持体を形成する穴のあいた箔に特に好適である金属にすることを理解されたい。同様の特性を有する他の金属、例えば、プラチナ、パラジウム、ロジウム、又はハフニウムは、やはり好適な基板である。
金箔の厚さ
穴のあいた金属箔層の厚さ(図4bではt)は、本明細書に記載される態様及び実施形態による支持体の、調整可能なパラメータである。金属箔の最小厚は、蒸着される金属粒子のサイズによって設定される。金箔を例にする。標本支持体の金箔は、十分な機械的安定性及び均一な電気伝導率を実現するために、金の粒子よりも厚い必要がある。穴のあいた金属箔、例えば金箔の厚さは、箔の中の穴を充たし、それらの穴の中の定位置に標本を保持する、例えば氷の厚さにも影響を及ぼす。最大の金属箔厚は、所望の氷の厚さに応じて選択することができ、氷の厚さは、今度は、標本粒子寸法により設定される。そのような要因を考慮に入れることによって、1つの例では、穴のあいた金箔は約500Å又は対象の標本粒子の直径のいずれか大きい方であるべきである。
穴のアスペクト比
金属箔中の穴のアスペクト比(図4のt/d)に関連して支持体を設計するときに現実的な制限が存在する場合がある。それらの制限は、例えば、製造における現実的な制約及び対象の電子顕微鏡の視野のサイズによって規定することができる。いくつかの実施形態では、顕微鏡の電子線を金属箔中の穴を均一に照らすように配置することができ、その穴が、標本を封止できる氷、並びに金属箔中の穿孔の縁部を包含する又は囲む、金属、例えば金の「リング」を含むように、穴の直径(d)を、対象の電子顕微鏡の視野と一致するように選択することができる。1つの実施形態では、最適な直径は、選択される撮像倍率における上記の基準に一致する最小サイズにより与えられる。典型的には、より大きい穴は、増加した電荷及びビームが誘起した運動から影響を受ける可能性がある。というのは、より大きい穴が、絶縁する氷のより広い領域を含むからである。例えば、現在の電子顕微鏡における典型的な撮像条件で、39,000Xの倍率及び1.2μmのビーム径において、最適な箔の穿孔穴サイズは、およそ1μmに等しいdであると計算することができる。
グラフェンデバイス
いくつかの実施形態によれば、試料支持体は、グラフェン層をさらに備えることができる。そのような実施形態では、グラフェンの層は、支持基板の中に組み込むことができる。そのようなグラフェン層は、グラフェン層が穴のあいた金属箔層の頂部に置かれるように配置することができる。いくつかの実施形態では、グラフェン層は、支持グリッドと穴のあいた金属箔との間に位置するように配置することができる。
グラフェン層が表面電荷の増大をさらに減少させるために働くことができるように、グラフェン層を支持体中に設けることができる。そのさらなる減少は、グラフェンの導電特性の結果として起こることができる。グラフェンが組み込まれる実施形態によれば、グラフェンは、金属箔とオーミック接触するように配置される。グラフェンもまた、支持体とオーミック接触してよい。グラフェン層が基板の機械的強度を増加するために働くように、グラフェン層を支持体中に設けることができる。
グラフェンの層が金属箔の上に設けられる支持体配置では、分析のために、1又は2以上の試料又は標本を含む実質的に均一な被覆が、前記グラフェン層にわたって延在するように配置できるように、グラフェン層を設けることができる。そのような配置によって、1又は2以上の試料を含む被覆層の厚さの制御を可能にすることができる。そのような配置では、被覆、例えばタンパク質の試料を含む氷の層の厚さは、金属箔の厚さと独立して制御することができる。
グラフェンの層が金属箔の下に設けられる支持体配置では、分析のため1又は2以上の試料を含む物質をグラフェンにより金属フィルム中の穴又は孔の中に支持できるように、グラフェン層を配置することができる。
支持体及び/又は分析のための試料の機械的安定性を改善するように、いくつかの実施形態による支持体中にグラフェン層を設けることができる。
さらに、生物試料を検査するときにそのような層を含むことが有用となり得るように、好適なグラフェンを選択することができる。というのは、そのことによって、支持体上にタンパク質の制御された堆積を可能にすることができるからである。
製造方法
本明細書に記載される態様及び実施形態による試料支持体を構築するために、様々な製造方法を採用できることが理解されよう。単に例として、1つの実施形態によるデバイスの1つの実施形態を作り出すために、頂部上に、穴のあいたアモルファスカーボンのつるされた層を有する金のグリッドをテンプレートとして使用することができる。レース状カーボン、ナノポーラスポリカーボネート、及び他のパターン形成されたプラスチックを含む、他のタイプのテンプレートを使用できることを理解されたい。
次いで、つるされたテンプレート上に、金が蒸着される。テンプレートは、その後、デバイスを低エネルギー酸素/アルゴンプラズマに曝すことにより除去される。プラズマが全てのカーボン含有材料と非常に強く反応するが、金には影響を及ぼさないように、プラズマを調整することができる。そのような配置によって、実質的に全てのテンプレート層の選択的除去が可能になり、純金のメッシュグリッドに直接付着される穴のあいた純金箔が残る。
図6は、例示的な電子顕微鏡支持体中のガラス状の氷の中の、金粒子の運動を測定する1つの実験の結果を示す。金粒子を撮像することにより、1つの実施形態による超安定な試料支持体上で撮像すると、試料の運動が減ることを示すことができる。図6の左側パネルは、典型的な基板上の氷の中の試料についての典型的な運動軌道(赤線)対我々の超安定グリッド上の氷の中の試料についての典型的な運動軌道(黒線)を図示する。図6の右側パネルは、1つの実施形態による支持体を使用するとき決定される、5つの個別の試料の軌道を示す。運動は、試料が位置決めすることができる精度未満である、すなわち、時点毎に1オングストローム未満であることが理解できる。図6の右のパネル上の尺度は、画素単位の変位であることに留意されたい。
支持体の実験的な使用
1つの実施形態による超安定な試料支持体上に準備された試料及び標本は、電子線の中に置かれると、帯電が減ることを示すことが見いだされた。「ビースウォーム効果」は、低倍率の画像の粒度におけるゆらぎであり、表面帯電の結果である。典型的な支持体での「ビースウォーム効果(bee-swarm effect)」を、1つの実施形態による超安定基板を使用したときに経験した効果と比較して、効果が非常に減少したこと、本明細書に記載された態様及び実施形態による支持体を使用すると、試料/標本の帯電が減少する可能性があることを示したことが見いだされた。
撮像期間に、電子顕微鏡の電子線が、いくつかの場合にガラス状の氷の中に封止される標本を含む多孔性の穴の全周の周りの金属を照らすように、実施形態を設計することができる。そのようは配置によって、金属箔による、2次電子の均一な生成を可能にすることができる。これらの2次電子は、箔の孔の中の氷内部及び氷の表面上に生成される正の電荷を中性化することができる。電子線が穴に対して偏心して配置されるとき、電子線は、孔の全周の周りの金属、例えば金に触れず、結果として得られる画像中にぼけが見られる可能性がある。そのぼけは、標本が経験する任意の帯電現象を中性化するのに、金属、例えば金箔からの2次電子が重要であることを表す場合がある。
標準的なEM基板と比較して、いくつかの実施形態による超安定支持体上に準備された試料及び標本は、粒子の運動が減っており、帯電効果が減ることを表す。粒子の運動が減ることによってぼけが減ることに起因して、各結果として得られる画像中のコントラストが増加する。粒子の運動が減ることは、例えば、高い機械的安定性、電荷増大の減少に起因する氷にかかる力の減少、及び穴のあいた箔膜中に応力を誘起する支持体中の化学変化の解消の結果である可能性がある。帯電効果が減ることにより、電荷が誘起する電子線のレンズ効果が減少することによって、画像の位相コントラストをさらに改善することができる。
図7a及び図7bは、1つの実施形態による支持体を使用して撮像された標本の比較例を示す。特に、図7a及び図7bは、(a)標準的な穴のあるカーボングリッド、及び(b)1つの実施形態による支持体上の、同じタンパク質試料の同じ数の画像を使用して作られた3D電子密度マップを示す。タンパク質試料のアルファヘリックスは、図7bにおいて、電子密度の円柱状の領域として明瞭に分解される。図7a及び図7bに撮像された、分子量450kDaの8面体タンパク質である、アポフェリチンの直径は、120Åである。3D画像を構築するための、複数のアポフェリチン画像の位置合わせには、1/10Å以上の解像度における情報を必要とする。従来型グリッド上の極低温EMを使用すると、アポフェリチンの3D構造を決定することは可能でなかった(図7a)。1つの実施形態による支持体を使用することにより得られた画像を使用すると、アポフェリチンの3D再構成が生成された(図7b)。そのような画像は、本明細書に記載された態様及び実施形態による試料支持体が、その周波数が約1/10Å以上である空間情報における電子顕微鏡写真中の情報内容が著しく改善されるようなものである場合があることを実証する。
態様及び実施形態による試料支持体は、電子顕微鏡法中の粒子の運動及び/又は試料の帯電を減らし、したがって電子顕微鏡写真から得られる情報内容を改善することができる。適切に設計され構築された支持体は、例えば生物試料の3D再構成中の、粒子毎の解像度の増加及び角度配置の精度の向上をもたらすことができる。このことが、EM技法を使用して以前に可能であったものよりも、より小さくより困難なタンパク質の構造の決定を可能にすることができる。
図8a及び図8bは、従来型のアモルファスカーボングリッド支持体と比較した、配置による金のグリッド支持体の垂直運動が減少した様子を図示する実験結果を示す。一般的に、図8a及び図8bは、従来型のアモルファスカーボングリッドと比較したときの、高エネルギー電子照射下の金のグリッドの動きが減少した様子をグラフィカルに図示する。図8a及び図8bのプロット中に示される各点は、例えばカーボン基板(上側の点及び線)又は金の基板(下側の点及び線)の中の特定の穴の、電子照射前のその初期位置に対するr.m.s.垂直変位を表す。各実線は、1つのグリッドの複数の正方形中の複数の穴についての平均変位である。図8aから、従来型のアモルファスカーボングリッドが、典型的な極低温EM照明条件(300keV、16e/°A2/s及び80K)下で、グリッドの平面に垂直な大きい程度の運動を呈することを見ることができる。図8aに示される下側の点及び曲線は、金のグリッドに対する同じ測定を表す。
図8bは、典型的なガラス状の氷の薄い層が存在するときの、アモルファスカーボングリッド支持体(上側の点及び線)及び金の支持体(下側の点及び線)に関して実施された、類似の測定及び分析を含む。氷なしのグリッドに対して、垂直運動が約1/2に減り、全体的に、運動が本質的により複雑になることを見ることができる。両方の場合で、従来型のアモルファスカーボングリッドの使用と比較して、金のグリッドについて、第1の16e/°A2の照射期間の、グリッドの垂直運動に、平均で1/50の減少がある。
図9a〜図9dは、様々な顕微鏡支持体構造物を使用し、氷の中で集められたデータについて、初期位置からの平均の80Sリボソーム変位を、時間/電子流束量に対するプロットとして図示した実験結果を示す。具体的には、図9aは、アモルファスカーボンの連続層により支持される試料に関し、図9bは、支持層なしの、アモルファスカーボンの穴のあいた支持膜上の試料に関し、図9cは、グラフェン基板上に支持される試料に関し、図9dは、金の基板上の支持されない氷上の試料に関する。全てのプロット(図9a〜図9d)は、同じ尺度を有する。各点(点線)は、単一のグリッドからの数千個の粒子の2乗平均(RMS, root mean squared)変位を表し、粒子の位置は、一定の電子線照射(
300keV、16e−/Å2/s)の下の、5フレーム移動平均を使用して測定された。図9a〜図9dの実線は、運動の2つの位相への直線当てはめである。誤差棒は、再現実験の平均の標準誤差を表す(図9a、図9b、図9dに関しては3つの別個のグリッド、図9cについては4つの別個のグリッド)。
本発明の例示的な実施形態が、添付図面を参照して、本明細書で詳細に開示されてきたが、本発明は、厳密には実施形態に制限されないこと、並びに添付の請求項及びそれらの等価物により規定される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更形態及び修正形態が当業者によりその中に達成できることが理解される。
この発明をもたらした仕事は、欧州連合の第7次研究枠組計画(FP7/2007〜2013)/ERC 助成協定第261151号の下、欧州研究会議からの資金を受けた。

Claims (19)

  1. メッシュを形成するように配置される複数の離隔された支持要素を備える支持部材と、
    多孔性領域を備える金属箔と
    を備える電子顕微鏡試料支持体であって、
    前記支持部材、支持要素、及び金属箔が、全て同一の金属から形成され、前記支持部材が、前記金属箔に構造上の安定性を与えるように構成され、前記金属箔の前記多孔性領域が電子顕微鏡試料を受け入れるように構成され、前記支持体が、前記金属箔とオーミック接触するグラフェン層をさらに備える、前記電子顕微鏡試料支持体。
  2. グラフェン層が、金属箔の多孔性領域中の孔にわたって延在するように構成される、請求項1に記載の電子顕微鏡試料支持体。
  3. グラフェン層が、電子顕微鏡試料を支持するように構成される、請求項1又は2に記載の電子顕微鏡試料支持体。
  4. グラフェン層が、グラフェンの連続層を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の電子顕微鏡試料支持体。
  5. グラフェン層が、試料支持体にさらなる構造上の安定性を提供する、請求項1〜4のいずれかに記載の電子顕微鏡試料支持体。
  6. グラフェン層が、受け入れた電子顕微鏡試料を、支持する、囲む、又は囲繞するように構成される、請求項1〜5のいずれかに記載の電子顕微鏡試料支持体。
  7. 金属箔が、支持部材とオーミック接触するように配置される、請求項1に記載の電子顕微鏡試料支持体。
  8. 金属箔が、高い導電性を有する金属;高い2次電子生成収率を有する金属;高い機械的安定性を有する金属;非反応性の金属;及び生物電子顕微鏡試料と適合性のある金属のうち1又は2以上を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の電子顕微鏡試料支持体。
  9. 金属箔が金、プラチナ、パラジウム、ロジウム、又はハフニウム金属箔のうちの少なくとも1つを含む、請求項1〜8のいずれかに記載の電子顕微鏡試料支持体。
  10. 金属箔の多孔性領域が複数の穴を含む金属の層を備える、請求項1〜9のいずれかに記載の電子顕微鏡試料支持体。
  11. 穴の各々が、少なくとも1つの電子顕微鏡試料を受け入れるように寸法設定される、請求項10に記載の電子顕微鏡試料支持体。
  12. 金属箔が電子顕微鏡試料の少なくとも最小寸法であるように選択された厚さを有する、請求項1〜11のいずれかに記載の電子顕微鏡試料支持体。
  13. 金属箔の多孔性領域が複数の離隔された支持要素の領域にわたって延在するように配置される、請求項1〜12のいずれかに記載の電子顕微鏡試料支持体。
  14. 支持部材が金属を含む、請求項1〜13のいずれかに記載の電子顕微鏡試料支持体。
  15. 金属が、金、プラチナ、パラジウム、ロジウム、又はハフニウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項14に記載の電子顕微鏡試料支持体。
  16. 多孔性領域中の孔が、電子顕微鏡法を使用して検査される放射線感受性材料を受け入れるように構成される、請求項1〜15のいずれかに記載の電子顕微鏡試料支持体。
  17. 電子顕微鏡試料支持体を製造する方法であって、
    メッシュを形成するように配置される複数の離隔された支持要素を備える支持部材及び多孔性領域を備える金属箔を用意するステップであって、前記支持部材、支持要素、及び金属箔が、全て同一の金属から形成されるステップと、
    前記支持部材を、前記金属箔に構造上の安定性を与えるように構成するステップと、
    前記金属箔の前記多孔性領域を電子顕微鏡試料を受け入れるように構成するステップと、
    前記金属箔とオーミック接触するグラフェン層を用意するステップとを含む、
    前記方法。
  18. 請求項1〜16のいずれかに記載の支持体上に電子顕微鏡試料を構成するステップと、
    前記支持体を顕微鏡の電子線中に配置するステップと、
    分析のために画像データを集めるステップと
    を含む、電子顕微鏡試料を撮像する方法。
  19. 試料の電子顕微鏡画像を提供するように動作可能な撮像装置であって、
    請求項1〜16のいずれかに記載の支持体上に取り付けられた電子顕微鏡試料と、
    前記支持体上に入射されるように配置される顕微鏡の電子線と、
    分析のために画像データを集めるように動作可能な収集デバイスと
    を備える、前記装置。
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