まず図1を参照して、本発明の一実施の形態における部品実装装置について説明する。部品実装装置1は基板2に部品3(図2)を実装する機能を有し、通信ネットワーク4を介して接続される他装置(図示せず)やホストコンピュータ5とともに部品実装システムを構成する。以下、基板2の搬送方向をX方向、X方向と水平面内において直交する方向をY方向、水平面内に対して直交する方向をZ方向と定義する。また、図1において紙面左側を上流、紙面右側を下流と定義する。
基台6の略中央には、基板搬送機構7が配置されている。基板搬送機構7はX方向に並行して延びた1対の搬送レール8を備えており、実装対象となる基板2を上流側から受け取り、X方向に搬送して所定の実装作業位置に位置決めする。搬送レール8の上部には押さえ部材9が設けられている。押さえ部材9は、後述する基板支持機構28によって持ち上げられた基板2の相対向する2辺の側端部を上方から押さえる。
基板搬送機構7のY方向における両側には、それぞれ部品供給部10が配置されている。部品供給部10には、複数のテープフィーダ11がX方向に並列して配置されている。テープフィーダ11は、キャリアテープに保持された部品3を間欠送りして、後述する実装ヘッド14による部品取り出し位置まで供給する。
基台6のX方向における一端部にはY軸ビーム12が設けられており、Y軸ビーム12には2基のX軸ビーム13がY方向に移動自在に結合されている。2基のX軸ビーム13には、実装ヘッド14がX方向へ移動自在に装着されている。実装ヘッド14は、Y軸ビーム12とX軸ビーム13の駆動により水平方向に移動する。
図2において、実装ヘッド14は複数の単位実装ヘッド14aを備えている。単位実装ヘッド14aは、下端部に部品3を吸着可能な吸着ノズル15を有している。吸着ノズル15は、その上方に設けられたノズル昇降機構16の駆動によって昇降する。実装ヘッド14は、テープフィーダ11から供給される部品3を吸着ノズル15によって吸着して取り出し、実装作業位置に位置決めされた基板2に実装する。
実装ヘッド14には高さセンサ17が取り付けられている。高さセンサ17は、レーザ変位系など計測軸方向の変位を非接触で測定可能な計測器であり、実装ヘッド14と一体となって水平移動することができる。高さセンサ17は、実装作業位置に基板2が位置決めされた状態において、基板2の上面にレーザ光を投射し、その反射光(矢印a)を受光する。これにより、高さセンサ17は、基板2にレーザ光が入射した位置の高さ(Z方向における位置)を測定する。測定結果は、基板2の上面の反りを測定する際に用いられる。
図1において、X軸ビーム13の下面には、実装ヘッド14と一体となって移動する基板認識カメラ18が設けられている。基板認識カメラ18は、実装作業位置に位置決めされた基板2のマーク(図示せず)を撮像する。基板搬送機構7と部品供給部10の間には部品認識カメラ19が配設されている。部品供給部10から部品3を取り出した実装ヘッド14が部品認識カメラ19の上方に移動することで、部品認識カメラ19は吸着ノズル15に吸着された部品3を下方から撮像する。
次に図3を参照して、基板搬送機構7の構造について説明する。図3(a)において、基板搬送機構7は前述した1対の搬送レール8と、搬送レール8の内側において基板2の搬送方向に沿って設けられた搬送ベルト20を含んで構成される。図3(b)において、搬送ベルト20は搬送レール8の両端部に配置された2つのプーリ21と、モータ22の駆動プーリ23に調帯されている。搬送ベルト20は、モータ22の駆動によって搬送レール8に沿って移動する。これにより、搬送ベルト20上に載置された基板2は下流に向けて搬送される。なお、図3では押さえ部材9の図示を省略している。
図4(a)において、搬送ベルト20の内側には上下方向に延伸したクランプ部24が昇降自在に設けられている。クランプ部24は、押さえ部材9によって基板2の両側部を上方から押さえる際、基板2の両側部に下方から当接する。これにより、基板2の両側部は押さえ部材9とクランプ部24でクランプされる。
図3(a)において、基板搬送機構7による基板2の搬送経路には、実装ヘッド14の移動可能な範囲に対応して実装ステージ[S]が設定されている。基板2は、実装ステージ[S]に搬入された後、停止範囲[R]にその前端面2aが入るように搬送・位置決めされる。搬送レール8には、停止範囲[R]の上流端の位置に第1の基板停止センサ25が配置され、停止範囲[R]の下流端の位置に第2の基板停止センサ26が配置されている。目標停止位置Eは、停止範囲[R]の略中央位置に設定されている。さらに、搬送レール8には、第1の基板停止センサ25の上流側に基板減速センサ27が配置されている。
基板減速センサ27、第1の基板停止センサ25、第2の基板停止センサ26は、何れも透過型の光学センサである。各センサ25〜27は、各々から投射される検査光軸(矢印b1,b2,b3)が搬送ベルト20上を搬送される基板2に入射するように、搬送レール8に埋め込まれている。搬送ベルト20上を搬送される基板2の前端面2aが、基板減速センサ27、第1の基板停止センサ25、第2の基板停止センサ26から投射される検査光軸を通過することで、各センサ25〜27は基板2の前端面2aを検出する。各センサ25〜27による検出信号は、部品実装装置1が備える制御部40(図7)に送信される。
基板減速センサ27が基板2の前端面2aを検出すると、制御部40はモータ22に減速指令を発し、これにより基板2の搬送速度が減速される。第1の基板停止センサ25が前端面2aを検出すると、制御部40はモータ22に停止命令を発し、これにより基板2が停止する。第2の基板停止センサ26が前端面2aを検出すると、制御部40は基板2がオーバーランして停止範囲[R]を超えたと判断する。
このように、光学センサ方式を用いて基板2を搬送する形態下では、搬送ベルト20の汚れや経時的な劣化等に起因して、搬送方向における基板2の停止位置のばらつきが避けられない。そのため、目標停止位置Eを基準に搬送方向における所定の誤差を許容した停止範囲[R]が設定される。制御部40は、第1の基板停止センサ25が前端面2aを検出し、かつ、第2の基板停止センサ26が前端面2aを検出しない場合は、基板2は停止範囲[R]に停止したと判断する。
基板搬送機構7の略中央であって、実装ステージ[S]に対応する位置には、図3(b)及び図4に示す基板支持機構28が設けられている。基板支持機構28は、水平な板状の下受けベース部29と、下受けベース部29を昇降させるベース部昇降機構30を含んで構成される。下受けベース部29の上面は、銅板等の磁性体により被覆されている。
下受けベース部29の上面には、基板2に下方から当接して下受け支持する複数の下受けピン31が着脱自在に立設されている。図3(b)において、下受けピン31は、下受けベース部29に当接する基部32と、基部32の上方に延出した軸部33と、軸部33の上端部に設けられ横方向に延出した円形の鍔部34と、鍔部34の上方に延出したピン形状の当接部35を含んで構成される。基部32はマグネット部材36を内蔵しており、このマグネット部材36の引磁力によって基部32は下受けベース部29に固定される。
基板2が停止範囲[R]に停止した状態で、下受けベース部29が上昇することで(図4(b)に示す矢印c)、下受けピン31の当接部35が基板2に当接する。そして、下受けベース部29がさらに上昇することで、基板2の両側部が押さえ部材9の下面に接触する。また、下受けベース部29が上昇する過程で、クランプ部24は下受けベース部29によって押し上げられ、基板2に下方から当接する。これにより、基板2は実装作業位置において押さえ部材9とクランプ部24によってクランプされるとともに、下受けピン31によって下受け支持された状態となる。このように、基板支持機構28は、基板搬送機構7によって搬送されて所定の停止範囲[R]内に停止した基板2に対して昇降自在な下受けピン31によって下方から基板2を下受け支持する。
本実施の形態では、下受け支持対象の基板2として、基板2の表裏をなす第1の面2b、第2の面2cのうち、一方の面に部品3が実装された実装基板が含まれる。本実施の形態では、第1の面2bを下受けピン31によって下受け支持される下受け面、第2の面2cを実装対象面として説明する。
図5は、下受け面に複数の種類の部品3(DIP型部品3a、チップ型部品3b)が実装された基板2の平面図を示している。前工程において下受け面に複数の部品3が実装された基板2の実装対象面に部品3を実装する場合、実装済みの部品3との干渉が生じないように下受けピン31の配置を決定する必要がある。すなわち、オペレータは実装済みの部品3を避けた基板2の所定の部位に当接部35が当接するように、下受けベース部29に対する下受けピン31の位置を決定する。なお、下受けピン31の配置は、基板2が目標停止位置Eに正確に停止した状態を前提として決定される。
また、オペレータは、基板2を安定して下受け支持できるように、下受けピン31を下受けベース部29に適切に配置する必要がある。しかしながら、図5に示す基板2のように、複数の部品3が高密度で実装されている場合、一部の下受けピン31(31A)は実装済みの部品3と隣接する位置に配置せざるを得ない。そのため、基板2が停止範囲[R]内に停止しても、基板2の前端面2aが目標停止位置Eからずれた位置で停止した場合、基板2を下受けピン31によって下受け支持すると、次のような問題が生じる。
図6を参照して、基板2が目標停止位置Eに正確に停止した場合と、そうでない場合とに分けて説明する。便宜上、基板2に実装されている部品3を「実装済み部品」と称する。図6(a)は、目標停止位置Eに正確に停止した基板2を示している。この位置で停止した基板2に対して、図6(b)に示すように下受けピン31が上昇すると(矢印d)、当接部35は実装済み部品3*に干渉せず下受け面に当接する。
図6(c)は、前端面2aが目標停止位置Eに対して上流側に所定量x1だけずれているが、停止範囲[R]内に停止した基板2を示している。この位置で停止した基板2に対して、図6(d)に示すように下受けピン31が上昇すると(矢印e)、当接部35が実装済み部品3*に干渉する。そして、この状態で下受けベース部29がさらに上昇すると、下受けピン31は実装済み部品3*を介して基板2を突き上げる。この突き上げ時の荷重により、実装済み部品3*は損傷するおそれがある。また、基板2の両側部は押さえ部材9とクランプ部24によってクランプされているので、基板2は上に凸の反り変形が生じる。
このように、上に凸の反り変形を生じた基板2に対して実装動作を実行すると、吸着ノズル15に保持された部品3が基板2に押しつけられて損傷するおそれがある。また、実装対象面における実装対象となる部品3の実装点が下受け面における実装済み部品3*の上方に位置する場合、下受けピン31によって突き上げられた実装済み部品3*が部品実装時の荷重により損傷するおそれがある。本実施の形態における部品実装装置1は、実装済み部品3*が下受けピン31によって突き上げられた状態のまま実装動作が実行される事態を未然に防ぐことを目的の一つとしている。
次に図7を参照して、制御系の構成について説明する。部品実装装置1が備える制御部40は、記憶部41、機構駆動部42、認識処理部43、反り測定部44、仮想高さ算出部45、判定部46を含んで構成される。また、制御部40は、基板搬送機構7、Y軸ビーム12、X軸ビーム13、実装ヘッド14、ノズル昇降機構16、高さセンサ17、基板認識カメラ18、部品認識カメラ19、ベース部昇降機構30、表示部47と接続されている。
記憶部41は、実装データ48、部品データ49、高さ測定データ50、下受けピン配置データ51等を記憶する。実装データ48は、基板2に部品3を実装するためのデータであり、例えば、部品3の実装点のXY座標、部品3の実装角度等の情報を含む。部品データ49は、部品3に関する情報を含むデータであり、例えば、部品3のサイズ、形状、吸着ノズル15が下降して基板2に部品3を搭載する際の下降ストローク、すなわち部品3の実装高さに関する情報を含む。
高さ測定データ50は、図8(a)に示すように、基板2の実装対象面に設定された基板反りを測定するための基板反り用測定箇所S1〜S9のXY座標、下受け面(第1の面2b)に既に実装された部品3(実装済み部品3*)が下受けピン31によって突き上げられていないかを確認するための部品突き上げ確認用測定箇所T1〜T4のXY座標を含む。基板反り用測定箇所S1〜S9は、基板2の上面の反りを測定するために設定された箇所である。高さセンサ17は、基板反り用測定箇所S1〜S9にレーザ光を投射し、その反射光を受光することで基板2の高さを測定する。
部品突き上げ確認用測定箇所T1〜T4は、基板2が下受けピン31によって下受け支持された状態において、下受け面に実装された部品3(実装済み部品3*)が下受けピン31によって突き上げられていないかを確認するために設定された箇所である。高さセンサ17は、基板反り用測定箇所S1〜S9に加えて、部品突き上げ確認用測定箇所T1〜T4の基板2の高さも測定する。高さセンサ17は、下受けピン31によって下受け支持された状態における基板2の実装対象面(第1の面2b)に設定された基板反り用測定箇所S1〜S9と、下受けピン31による部品突き上げ確認用測定箇所T1〜T4の基板2の高さを測定する高さ測定手段となっている。
次に、部品突き上げ確認用測定箇所T1〜T4を設定する一例について説明する。図8(b)は、基板2の下受け面に実装された部品3(DIP型部品3a、チップ型部品3b)と、下受けピン31と、測定箇所S1〜S9、T1〜T4の位置関係を示す。例えば、部品3b1は、下受けピン31A(厳密には当接部35)ときわめて接近した位置に実装されている。前端面2aが停止範囲[R]内であっても、目標停止位置Eからずれて停止した基板2を下受けピン31Aによって下受け支持した時、このような部品3b1は、当該下受けピン31Aと干渉して突き上げられるおそれがある。オペレータは、この部品3b1のように、下受けピン31Aによって突き上げられるおそれがある部品3の実装位置に対応する実装対象面上に部品突き上げ確認用測定箇所を設定する。このように、部品突き上げ確認用測定箇所T1〜T4は、下受け面としての第1の面2bに実装された部品3に下受けピン31が干渉するおそれがある箇所に設定される。また、下受けピン31によって突き上げられるおそれがある実装済みの部品3であるか否かは、実装済みの部品3と下受けピン31(当接部35)との隣接距離に基づいて判断する。
なお、基板反り用測定箇所S1〜S9は、実装済みの部品3と下受けピン31との干渉が発生しないと想定される箇所、言い換えれば実装済みの部品3と下受けピン31の隣接距離が大きい箇所を選択することが好ましい。これにより、基板2を下受け支持した際に実装済みの部品3と下受けピン31が干渉している場合であっても、その影響を極力抑えて基板2の反りをより正確に測定することができる。
下受けピン配置データ51は、下受けベース部29に対する個々の下受けピン31の位置情報を示すデータであり、基板2の品種ごとに準備される。
機構駆動部42は、制御部40によって制御されて、基板搬送機構7、Y軸ビーム12、X軸ビーム13、実装ヘッド14、ノズル昇降機構16、ベース部昇降機構30を駆動する。これにより、基板2を搬送して停止範囲[R]内に停止させる搬送・停止作業、基板2に部品3を実装する実装作業が実行される。
認識処理部43は、基板認識カメラ18と部品認識カメラ19により取得した撮像データを認識処理することで基板2のマークと部品3を検出する。基板2のマークと部品3の検出結果は、基板2に対して実装ヘッド14を位置合わせする際に用いられる。
反り測定部44は、基板反り用測定箇所S1〜S9の高さの測定結果に基づいて基板2の上面の反りを測定する。より具体的に説明すると、図9(a)に示すように、反り測定部44は、高さセンサ17によって測定された基板反り用測定箇所S1〜S9の基板2の高さを演算処理することで、個々の基板反り用測定箇所S1〜S9における基準面2dからのZ方向における変位量hを求める。基準面2dとは、反りや変形のない平坦な基板2が搬送ベルト20上を搬送される状態における基板2の実装対象面をさす。そして、反り測定部44は基板反り用測定箇所S1〜S9における変位量hに基づいて、基板2の上面の形状を近似する近似曲面52を算出する(図9(b))。
図9(b)において、近似曲面52は、基板反り用測定箇所S1〜S9における基準面2dからの変位量hに基づいて、基板2の上面の全体の反りや変形の傾向を解析して数式化したものである。近似曲面52は、全ての箇所がXYZ座標系により表されるようになっている。
仮想高さ算出部45は、近似曲面52を参照して部品突き上げ確認用測定箇所T1〜T4の仮想高さを算出する。図9(b)を用いて部品突き上げ確認用測定箇所T1を例に挙げると、仮想高さ算出部45は当該箇所T1に対応する実装対象面のXY座標(xt1,yt1)から、近似曲面52のXY座標における変位量hであるZ座標(zt1)を算出する。このZ座標(zt1)が、部品突き上げ確認用測定箇所T1の仮想高さの値となる。このように、基板反り用測定箇所S1〜S6の測定結果に基づいて算出された近似曲面52を用いることで、個々の部品突き上げ確認用測定箇所T1〜T4の仮想高さを算出することができる。すなわち、仮想高さ算出部45は基板反り用測定箇所S1〜S6における測定結果に基づいて、部品突き上げ確認用測定箇所T1〜T4の仮想高さを算出する。
判定部46は、部品突き上げ確認用測定箇所T1〜T4の仮想高さと、高さセンサ17によって実際に測定して得られた高さである実測高さとの差に基づいて、下受けピン31が実装済み部品3*に干渉しているか否か、言い換えれば実装済み部品3*が下受けピン31によって突き上げられているか否かを判定する。
ここで図10を参照して、判定部46による判定方法の詳細を説明する。図10(a)は、部品突き上げ確認用測定箇所T1に対応する下受け面の所定の位置に実装された実装済み部品3*が下受けピン31に干渉した状態を示す。図10(b)は、図10(a)に示す基板2の近似曲面52である。図10(a),(b)に示すように、高さセンサ17によって部品突き上げ確認用測定箇所T1を実際に測定して得られた高さである実測高さ(基準面2dからのZ方向における変位量h1)と、近似曲面52に基づいて算出される仮想高さ(基準面2dからのZ方向における変位量h2)との間には、下受けピン31による突き上げに起因した差haが生じる。判定部46は、この差haが所定以上あるか否かに基づいて下受けピン31の干渉の有無を判定する。この差haが所定以上ある場合に、制御部40は下受けピン31が実装済み部品3*に干渉していると判断する。このように、判定部46は、部品突き上げ確認用測定箇所T1〜T4の仮想高さと、高さ測定手段によって部品突き上げ確認用測定箇所T1〜T4を実際に測定して得られた高さである実測高さとの差が所定以上あるか否かを判定する。
表示部47はモニタなどの表示装置であり、部品3が実装された基板2を生産するために必要な案内画面や、生産中に何らかのエラーが発生した場合にオペレータに対してエラー報知するための画面等を表示する。
本実施の形態における部品実装装置1は以上のように構成される。次に図11のフローチャートと図12〜14に示す動作説明図を参照して、基板2の表裏をなす2面のうち、既に部品3が実装された第1の面2bの反対面である第2の面2cに部品3を実装する部品実装方法について説明する。まず、図12(a)に示すように、基板搬送機構7は基板2を上流側から搬入する。そして、基板搬送機構7は第1の面2bを下向きにした姿勢の基板2を下流側へ搬送する(矢印f)(ST1:搬送工程)。
次いで、制御部40は基板搬送機構7を制御して、基板2を停止範囲[R]内に停止させるための停止動作を実行する(ST2:基板停止工程)。すなわち、図12(b)に示すように、基板2が継続して下流側へ搬送される過程において(矢印g)、基板減速センサ27が基板2の前端面2aを検出したならば、制御部40はモータ22を制御して、基板2の搬送速度を予め設定された停止用速度に減速する。次いで図12(c)に示すように、基板2が継続して下流側へ搬送される過程において(矢印i)、第1の基板停止センサ25が基板2の前端面2aを検出したならば、制御部40はモータ22の駆動を停止させる。すなわち、この工程(ST2)では、第1の面2bを下向きにした姿勢の基板2を搬送して所定の停止範囲[R]内に入るように基板2を停止させる。
モータ22の駆動を停止させた後、制御部40は、第1の基板停止センサ25と第2の基板停止センサ26による基板2の前端面2aの検出の有無に基づいて、基板2の実際の停止位置が停止範囲[R]内か否かを判定する(ST3:第1の判定工程)。すなわち、図12(d)に示すように、第1の基板停止センサ25が基板2の前端面2aを検出し、かつ、第2の基板停止センサ26が基板2の前端面2aを検出しないとき、制御部40は基板2の実際の停止位置が停止範囲[R]内であると判断する。また、図12(e)に示すように、第2の基板停止センサ26が基板2の前端面2aを検出したとき、制御部40は基板2の実際の停止位置が停止範囲[R]を超えたと判断する。なお、基板2は前端面2aが停止範囲[R]に入る前に停止してしまう場合もあり得る。すなわち、第1の基板停止センサ25が基板2の前端面2aを検出しないとき、制御部40は基板2の実際の停止位置が停止範囲[R]でないと判断する。
(ST3)で停止範囲[R]内でないと判定したとき、基板2の停止位置の調整動作が実行される(ST4:停止位置調整工程)。すなわち、図12(f)に示すように、制御部40はモータ22を駆動させ、前端面2aが基板減速センサ27よりも上流側に位置するように基板2を戻す(矢印j)。次いで、基板搬送機構7は基板2を下流側へ再び搬送する。そして、制御部40は前述のとおり、基板減速センサ27、基板停止センサ25による基板2の前端面2aの検出結果に基づいて基板2の停止動作を実行する。その後、(ST3)に戻って、制御部40は基板2の実際の停止位置が停止範囲[R]内か否かを判定する。
(ST3)で基板2の実際の停止位置が停止範囲[R]内であると判定したとき、基板支持機構28によって基板2の下受け支持が実行される(ST5:下受け支持工程)。すなわち、下受けベース部29は基板2に対して上昇する。そして、下受けベース部29が上昇する過程で、基板2の下受け面(第1の面2b)が下受けピン31によって下受け支持されるとともに、基板2の両側部が押さえ部材9とクランプ部24によってクランプされる。すなわち、この工程(ST5)では、停止範囲[R]内に停止した基板2に対して昇降自在な下受けピン31によって下方から基板2を下受け支持する。
次いで図13(a)に示すように、高さセンサ17は、下受けピン31によって下受け支持された状態における基板2の実装対象面(第2の面2c)に設定された基板反り用測定箇所S1〜S9と、部品突き上げ確認用測定箇所T1〜T4の基板2の高さを測定する(ST6:測定工程)。基板反り用測定箇所S1〜S9と部品突き上げ確認用測定箇所T1〜T4の測定順序は任意である。また、高さセンサ17は基板反り用測定箇所S1〜S9と部品突き上げ確認用測定箇所T1〜T4を区別することなく、実際に測定した測定箇所に近い測定箇所を適宜選択して測定してもよい。図8(a)に示す基板2を例に挙げると、高さセンサ17はS1,S2,S3,T2,S6,S5,T1,S4,S7,T3,S8,T4,S9の順で測定してもよい。これにより、高さ測定の作業タクトが向上する。
次いで、反り測定部44は、基板反り用測定箇所S1〜S9の高さの測定結果に基づいて、近似曲面52を算出する(ST7:近似曲面算出工程)。次いで、仮想高さ算出部45は近似曲面52を参照して、個々の部品突き上げ確認用測定箇所T1〜T5に対応するZ座標を算出する。すなわち、この工程(ST8)では、基板反り用測定箇所S1〜S9の高さの測定結果に基づいて部品突き上げ確認用測定箇所T1〜T5の仮想高さを算出する。
次いで、判定部46は仮想高さ算出工程(ST8)において算出された部品突き上げ確認用測定箇所T1〜T4の仮想高さと、測定工程(ST6)において部品突き上げ確認用測定箇所T1〜T4を実際に測定して得られた実測高さとの差が所定以上あるか否かを判定する(ST9:第2の判定工程)。ここでは、個々の部品突き上げ確認用測定箇所T1〜T4ごとに判定する。
(ST9)で仮想高さと実測高さとの差が所定以上ないと判定した場合、制御部40は下受けピン31による実装済み部品3*の突き上げがないものと判断する。次いで、実装ヘッド14による部品実装動作が実行される(ST10:実装工程)。すなわち、実装ヘッド14はテープフィーダ11から部品3を取り出した後、基板2の上方まで移動する。次いで図13(b)に示すように、吸着ノズル15は基板2に対して下降し(矢印k)、基板2の実装対象面に部品3を実装する。このとき、制御部40は近似曲面52を参照して部品3の実装高さの補正量を算出し、その補正量に基づいてノズル昇降機構16の駆動を制御する。このように(ST10)では、第2の判定工程(ST9)における判定の結果、仮想高さと実測高さとの差が所定以上ない場合、基板2に部品3を実装する。
また、(ST9)で仮想高さと実測高さとの差が所定以上あると判定した場合、基板2の下受け支持を解除するための動作が実行される(ST11:下受け支持解除工程)。すなわち、図14(a)に示すように、下受けベース部29は基板2に対して下降する(矢印l)。そして、下受けベース部29が下降する過程で、押さえ部材9とクランプ部24による基板2の両側部のクランプが解除され、次いで搬送ベルト20上に基板2が載置される。その後、下受けベース部29がさらに下降することで、基板2の下受け面から下受けピン31の当接部35が離れる。すなわち、この工程(ST11)では、第2の判定工程(ST9)において、仮想高さと実測高さとの差が所定以上あると判定された場合は、下受けピン31による基板2の下受け支持を解除する。これにより、下受けピン31と実装済み部品3*が干渉した状態で部品3が基板2に実装される事態を回避して、実装品質の低下を抑制することができる。
次いで、制御部40は特定の基板2を対象として下受け支持を解除した回数が所定回数に達したか否かを判断する(ST12:第3の判定工程)。解除した回数が所定回数に達していない場合は、(ST4)に戻って基板2の停止位置の調整動作が再び実行される。具体的な動作は前述のとおりであるため説明を省略する。すなわち、停止位置調整工程(ST4)では、下受け支持解除工程(ST11)において基板2の下受け支持を解除した後、基板2の停止位置を調整する。
また、下受け支持解除工程(ST11)において特定の基板2の下受け支持を解除した回数が所定回数に達した場合、制御部40は表示部47を介してエラー報知する(ST13:報知工程)。解除回数が所定回数以上発生した場合、下受けベース部29に対する下受けピン31の位置がずれていること等が想定される。したがって、エラー報知を承けたオペレータは生産を中断させ、下受けピン31の位置がずれていないか等を検査する。このように、制御部40と表示部47は、オペレータにエラー報知する報知手段としても機能する。なお、エラー報知の構成は上記に限られず、例えば警告灯を点灯させるようにしてもよい。
次に図15のフローチャートを参照して、部品実装方法の変形例について説明する。なお、既に説明した工程については同じステップナンバーを付し、詳細な説明を省略する。本実施の形態で説明した部品実装方法と、以下に説明する変形例とでは、エラー報知(ST13)を行う前に以下の工程が新たに加わる点で相違する。すなわち、(ST12)において、基板2の受け支持を解除した回数が所定回数に達したと判定された後、図14(b)に示すように、基板搬送機構7によって基板2を上流側に予め戻した状態で、基板認識カメラ18が仮想高さと実装高さとの差が所定以上あると判定された部品突き上げ確認用測定箇所T1〜T4に対応する下受けピン31を撮像する(ST14:撮像工程)。次いで、認識処理部43は撮像データを認識処理することにより、下受けピン31の位置を特定する。そして、制御部40は下受けピン配置データ51に基づいて、特定した下受けピン31が下受けベース部29に対して位置ずれを起こしていないかを判定する(ST15:第4の判定工程)。その後、制御部40は表示部47を介してエラー報知するとともに、判定結果を表示する(ST13)。これにより、オペレータは下受けピン31が実装済み部品3*に干渉した原因を容易に究明することができる。
本発明はこれまで説明した実施の形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することができる。例えば、反り測定部44、仮想高さ算出部45、判定部46の機能をホストコンピュータ5に備えさせてもよい。また、ホストコンピュータ5が備える記憶部に実装データ48等の各種データを記憶させておき、必要に応じて部品実装装置1が各種データを読み込むようにしてもよい。さらに、下受けピン31は鍔部34を省略する等して簡素化した構造でもよい。