JP6431707B2 - 全固体電池用電極層および全固体電池 - Google Patents
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Description
上記問題点を解決すべく、本発明は、イオン伝導性が高く、且つ安定性に優れた全固体電池を得るための電極層およびそのような電極層を含む全固体電池を提供することを目的とする。
[1] 活物質と錯体水素化物固体電解質とを含む電極層であって、前記活物質はチタン酸リチウムを含む電極層。
[2] 前記チタン酸リチウムは、LiTi2O4、Li4Ti5O12およびLi2Ti3O7からなる群より選択される[1]に記載の電極層。
[3] 前記チタン酸リチウムは、Li4Ti5O12である[2]に記載の電極層。
[4] 前記錯体水素化物固体電解質は、LiBH4またはLiBH4と下記式(1)で表されるアルカリ金属化合物との混合物である、[1]〜[3]のいずれかに記載の電極層:
MX (1)
[式(1)中、Mは、リチウム原子、ルビジウム原子およびセシウム原子からなる群より選択されるアルカリ金属原子を表し、Xは、ハロゲン原子またはNH2基を表す。]。
[5] 前記アルカリ金属化合物は、ハロゲン化ルビジウム、ハロゲン化リチウム、ハロゲン化セシウムおよびリチウムアミドからなる群より選択される[4]に記載の電極層。
[6] 前記電極層は正極層であり、前記錯体水素化物固体電解質はLiBH4であり、前記正極層に含まれる全活物質の90重量%以上が、リチウム基準で1.20V〜1.80Vの電極電位を有する活物質である、[1]〜[5]のいずれかに記載の電極層。
[7] 前記電極層は正極層であり、前記錯体水素化物固体電解質は3LiBH4−LiIであり、前記正極層に含まれる全活物質の90重量%以上が、リチウム基準で1.20V〜2.70Vの電極電位を有する活物質である、[1]〜[5]のいずれかに記載の電極層。
[8] 正極層と、負極層と、前記正極層と前記負極層との間に配置されたリチウムイオン伝導性を有する固体電解質層とを具備し、
前記正極層または前記負極層のいずれか一方は、[1]〜[7]のいずれかに記載の電極層である
全固体電池。
[9] 前記負極層が[1]〜[5]のいずれかに記載の電極層である、[8]に記載の全固体電池。
[10] 前記正極層が[1]〜[7]のいずれかに記載の電極層である、[8]に記載の全固体電池。
[11] 前記正極層に含まれる錯体水素化物固体電解質はLiBH4であり、前記正極層にかかる上限充電電圧はリチウム基準で1.55V〜1.80Vである、[10]に記載の全固体電池。
[12] 前記正極層に含まれる錯体水素化物固体電解質は3LiBH4−LiIであり、前記正極層にかかる上限充電電圧はリチウム基準で1.55V〜2.70Vである、[10]に記載の全固体電池。
本発明の1つの実施形態によると、活物質と錯体水素化物固体電解質とを含む電極層であって、活物質がチタン酸リチウムを含む電極層が提供される。この電極層は、好ましくは全固体電池において使用される電極層であり、より好ましくは全固体リチウムイオン二次電池において使用される電極層である。本発明の電極層は、負極層および正極層のいずれにも使用することができ、必要に応じて、導電助剤、結着材等をさらに含有していてもよい。以下、チタン酸リチウム、錯体水素化物固体電解質、および電極層に使用され得るその他の材料を合わせて「電極材料」とも称する。
(1)チタン酸リチウム
本発明の電極層は、活物質としてチタン酸リチウムを含む。チタン酸リチウムとしては、スピネル型のLiTi2O4、スピネル型のLi4Ti5O12、ラムスデライト型のLi2Ti3O7等を用いることができ、好ましくはスピネル型のLi4Ti5O12である。Li4Ti5O12は、Li4/3Ti5/3O4やLi[Li1/6Ti5/6]2O4と表記されることもあり、空間群はFd−3mEである。これにリチウムイオンが挿入されると、岩塩型の構造に変化する特徴を有する。
錯体水素化物固体電解質は、リチウムイオン伝導性を有する錯体水素化物を含む材料であれば、特に限定されない。例えば、錯体水素化物固体電解質は、LiBH4またはLiBH4と下記式(1)で表されるアルカリ金属化合物との混合物である:
MX (1)
[式(1)中、Mは、リチウム原子、ルビジウム原子およびセシウム原子からなる群より選択されるアルカリ金属原子を表し、Xは、ハロゲン原子またはNH2基を表す。]。
上記式(1)におけるXとしてのハロゲン原子は、ヨウ素原子、臭素原子、フッ素原子、塩素原子等であってよい。Xは、ヨウ素原子、臭素原子またはNH2基であることが好ましく、ヨウ素原子またはNH2基であることがより好ましい。
電極層に用いられる導電助剤としては、所望の導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば炭素材料からなる導電助剤を挙げることができる。具体的には、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックおよびカーボンファイバー等を挙げることができる。
電極層に用いられる結着剤としては、一般的にリチウムイオン二次電池の正極層に用いられているものであれば使用することが可能である。例えば、ポリシロキサン、ポリアルキレングリコール、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等を使用することができる。必要に応じて、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の増粘剤も使用することができる。
まず、チタン酸リチウムおよび錯体水素化物固体電解質を含む電極材料を混合する。混合は、アルゴンやヘリウム等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。混合の方法としては、特に限定されるものではないが、ライカイ機、ボールミル、遊星型ボールミル、ビーズミル、自転・公転ミキサー、高速攪拌型の混合装置、タンブラーミキサー等を使用した方法が挙げられる。ただし、遊星型ボールミルを用いた混合に代表されるような、混合時に大きなエネルギーが与えられる手法を用いると、混合のみならずチタン酸リチウムと錯体水素化物が反応する可能性があり、マイルドに混合できるライカイ機、タンブラーミキサー、自転・公転ミキサー等を使用することが好ましい。小さな規模で行う時には、手作業による乳鉢混合が好ましい。混合は乾式で行うことが好ましいが、耐還元性を有する溶媒下で実施することもできる。溶媒を用いる場合には、非プロトン性の非水溶媒が好ましく、より具体的にはテトラヒドロフランやジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等を挙げることができる。
本発明の電極層は、全固体電池の正極層もしくは負極層のいずれか一方に使用することができる。よって、本発明の1つの実施形態によると、上記電極層を具備する全固体電池が提供される。
すなわち、本発明の全固体電池は、正極層と、負極層と、正極層と負極層との間に配置されたリチウムイオン伝導性を有する固体電解質層とを具備し、正極層または負極層のいずれか一方は、上述したチタン酸リチウムおよび錯体水素化物固体電解質を含む電極層である。
(第1実施形態)
本発明の1つの実施形態によると、正極層と、負極層と、正極層と負極層との間に配置されたリチウムイオン伝導性を有する固体電解質層とを具備し、正極層は、上述したチタン酸リチウムおよび錯体水素化物固体電解質を含む電極層である全固体電池が提供される。全固体電池の構成について、図1を参照して説明する。
本発明における全固体電池10は、例えば、全固体リチウムイオン二次電池であり、携帯電話、パソコン、自動車等をはじめとする各種機器において使用することができる。全固体電池10は、正極層1と負極層3との間に固体電解質層2が配置された構造を有する。第1実施形態においては、正極層1として、上述したチタン酸リチウムおよび錯体水素化物固体電解質を共に含む電極層を用いる。
正極層1の構成および作製方法については、上記「1.電極層」の項目で説明した通りである。なお、正極層1に含まれる活物質の電極電位としては、正極層1に使用される錯体水素化物固体電解質の副反応が生じる電位より下であれば、より高い方が電池のエネルギー密度が向上することから、好ましい。
正極層1に含まれる錯体水素化物固体電解質が3LiBH4−LiIである場合、正極層1に含まれる全活物質の90重量%以上がリチウム基準で1.20V〜2.70Vの電極電位を有する活物質であることが好ましく、上記範囲の電極電位を有する活物質が95重量%以上であることがより好ましく、98重量%以上であることがさらに好ましい。
固体電解質層2は、正極層1と負極層3との間に配置されるリチウムイオン伝導性を有する層であり、リチウムイオン伝導性を有する固体電解質から形成される。固体電解質としては、錯体水素化物固体電解質、酸化物系材料、硫化物系材料、高分子系材料、Li3N等を用いることができる。より具体的には、酸化物ガラスであるLi3PO4−Li4SiO4およびLi3BO4−Li4SiO4;ペロブスカイト型酸化物であるLa0.5Li0.5TiO3;NASICON型酸化物であるLi1.3Al0.3Ti1.7(PO4)3およびLi1.5Al0.5Ge1.5(PO4)3;LISICON型酸化物であるLi14Zn(GeO4)4、Li3PO4およびLi4SiO4;ガーネット型酸化物であるLi7La3Zr2O12、Li5La3Ta2O12およびLi5La3Nb2O12;硫化物ガラスまたは硫化物ガラスセラミックである、Li2S−P2S5、80Li2S−20P2S5、70Li2S−27P2S5−3P2O5およびLi2S−SiS2;thio−LISICON型材料であるLi3.25Ge0.25P0.75S4、Li4SiS4、Li4GeS4およびLi3PS4;高いリチウムイオン伝導性を示すLi10GeP2S12;Li3PO4を一部分窒化したLIPONと称される材料である、Li3.3PO3.8N0.22およびLi2.9PO3.3N0.46;ポリマー系材料であるポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリ(シアノエトキシビニル)誘導体(CNPVA)等が挙げられる。中でも、上述の正極層1との間の界面状態が良好となることから、錯体水素化物固体電解質が好ましい。錯体水素化物固体電解質としては、上記「1.電極層、(2)錯体水素化物固体電解質」で述べたものと同様の材料を使用することができる。
負極層3は、少なくとも負極活物質を含有する層であり、必要に応じて、固体電解質、導電助剤、結着材等を含有していてもよい。
本発明の1つの実施形態によると、正極層と、負極層と、正極層と負極層との間に配置されたリチウムイオン伝導性を有する固体電解質層とを具備し、負極層は、上述したチタン酸リチウムおよび錯体水素化物固体電解質を含む電極層である全固体電池が提供される。全固体電池の構成は、上記第1実施形態と同じであるため、図1を再び参照して説明する。第2実施形態においては、負極層3として、上述したチタン酸リチウムおよび錯体水素化物固体電解質を共に含む電極層を用いる。
正極層1は、少なくとも正極活物質を含有する層である。正極層1は、必要に応じて、固体電解質、導電助剤、結着材等を含有していてもよい。
固体電解質層2の構成および作製方法については、上記第1実施形態の「(2)固体電解質層」の項目で説明した通りである。
負極層3の構成および作製方法については、上記「1.電極層」の項目で説明した通りである。
上述した各層を作製して積層し、全固体電池を製造するが、各層の作製方法および積層方法については、特に限定されるものではない。例えば、固体電解質や電極活物質を溶媒に分散させてスラリー状としたものをドクターブレード、スピンコート等により塗布し、それを圧延することにより製膜する方法;真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、レーザーアブレーション法等を用いて成膜および積層を行う気相法;ホットプレスまたは温度をかけないコールドプレスによって粉末を成形し、それを積層していくプレス法等がある。比較的やわらかい錯体水素化物固体電解質や硫化物固体電解質を用いる場合には、各層をプレスによって成形および積層して電池を作製することが特に好ましい。プレス方法としては、加温して行うホットプレスと加温しないコールドプレスとがあるが、固体電解質と活物質の組み合わせによって適切な方を選べばよい。プレスにて各層を一体成型することが好ましく、その際の圧力は、50〜800MPaであることが好ましく、114〜500MPaであることがより好ましい。上記範囲の圧力でプレスを行うことにより、粒子間の空隙が少なく、密着性が良好な層を得ることができるため、イオン導電性の観点から好ましい。必要以上に圧力を高くすることは、高価な材質の加圧装置や成形容器を使用する必要が生じると共に、それらの耐用寿命が短くなることから実用的ではない。
上述した通り、錯体水素化物固体電解質を含む電極層は、充放電時の電圧が高い場合、錯体水素化物が副反応による分解を起こして変質し得る。分解を生じる電圧は、使用する錯体水素化物固体電解質によって異なるが、例えばLiBH4を使用する場合には、リチウム基準で1.80V以下の電圧で充電することが好ましく、上限充電電圧を1.55V〜1.80Vとすることがより好ましい。また、3LiBH4−LiIを使用する場合には、リチウム基準で2.70V以下の電圧で充電することが好ましく、上限充電電圧を1.55V〜2.70Vとすることがより好ましい。上記範囲の電圧で充電することにより、錯体水素化物固体電解質の副反応による分解を防ぐことができる。また、本発明のように電極活物質としてチタン酸リチウムを使用することにより、上記範囲の電圧で充電することが可能である。
また、本発明の他の実施形態によると、上記電極層は正極層であり、正極層における錯体水素化物固体電解質は3LiBH4−LiIであり、正極層にかかる上限充電電圧はリチウム基準で1.55V〜2.70Vである全固体電池が提供される。
(錯体水素化物固体電解質の調製)
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、LiBH4(シグマ・アルドリッチ社製、純度90%)を計り取り、メノウ乳鉢にて粉砕し、錯体水素化物固体電解質(LiBH4)を得た。
活物質Li4Ti5O12(東邦チタニウム社製):錯体水素化物固体電解質(LiBH4):カーボンブラック(シグマ・アルドリッチ社製、純度99.9%)=38:55:7(重量比)とした粉末をグローブボックス内で計り取り、乳鉢にて混合して正極層粉末とした。活物質Li4Ti5O12の電極電位(リチウム基準)は、1.5Vである。
上記で調製した錯体水素化物固体電解質の粉末を直径8mmの粉末錠剤成形機に入れ、圧力143MPaにて円盤状にプレス成形した(錯体水素化物固体電解質層の形成)。成形物を取り出すことなく、上記で調製した正極層粉末を錠剤成形機に入れ、圧力285MPaにて一体成型した。このようにして、正極層(75μm)および錯体水素化物固体電解質層(600μm)が積層された円盤状のペレットを得た。このペレットの正極層の反対側に、厚さ200μm、φ8mmの金属リチウム箔(本城金属社製)を貼り付けてLi負極層とし、SUS304製の電池試験セルに入れて全固体二次電池とした。
上記のように作製した全固体電池について、ポテンショスタット/ガルバノスタット(Bio−Logic製VMP3)を用い、試験温度120℃、カットオフ電圧1.4〜1.7V、0.1Cレートの条件の下で定電流にて放電から充放電を行い、充放電容量を求めた。なお、充電後と放電後にはそれぞれ3分間の休止を設けた。2サイクル目の放電開始直前の開回路電圧は1.67Vであった。また、この時の(Li4Ti5O12の容量)/(Li4Ti5O12の理論容量=175)は96.6%であり、理論値である電極電位よりも少し高い電位で、十分にチタン酸リチウムの容量をほぼ全量引き出せていることがわかる。
1サイクル目のカットオフ電圧を1.1〜2.0Vとし、2サイクル目以降はカットオフ電圧を1.4〜1.7Vとした以外は、充放電試験1と同様に充放電を行い、充放電容量を求めた。充電時に電圧が1.8Vより少し高くなった時点から、大きな不可逆容量が生じた。これは、LiBH4が副反応によって分解していることによると推測される。すなわち、LiBH4にリチウム基準で1.8V以上の電圧をかけると、サイクル試験の初期にLiBH4が副反応によって分解されることに起因する大きな不可逆容量が引き起こされると共に、固体電解質の変質が生じ得ると考えられる。高い電圧で充放電サイクルを繰り返すことによりこのような固体電解質の変質が繰り返し生じると、長期のサイクル試験に対して悪影響を及ぼし得る。従って、実施例1のような構成を有する電池を長期にわたって安定に使用するためには、充電時にリチウム基準で1.8Vを超える電圧がかからないようにすることが好ましいと言える。1および2サイクル目の放電開始直前の開回路電圧は、それぞれ1.83Vおよび1.67Vであった。
(錯体水素化物固体電解質の調製)
アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、LiBH4(シグマ・アルドリッチ社製、純度90%)とLiI(シグマ・アルドリッチ社製、純度99.999%)とを、LiBH4:LiI=3:1のモル比になるようにメノウ乳鉢にて混合した。次に、混合した出発原料を45mLのSUJ−2製ポットに投入し、さらにSUJ−2製ボール(φ7mm、20個)を投入して、ポットを完全に密閉した。このポットを遊星型ボールミル機(フリッチェ製P7)に取り付け、回転数400rpmで5時間メカニカルミリングを行い、錯体水素化物固体電解質(3LiBH4−LiI)を得た。
活物質Li4Ti5O12(東邦チタニウム社製):錯体水素化物固体電解質(3LiBH4−LiI):カーボンブラック(シグマ・アルドリッチ社製、純度99.9%)=27:64:9(重量比)となるように、粉末をグローブボックス内で計り取り、乳鉢にて混合して正極層粉末とした。活物質Li4Ti5O12の電極電位(リチウム基準)は、1.5Vである。
上記で調製した固体電解質および正極層粉末を用いた以外は、実施例1と同様に全固体電池を作製した。
ポテンショスタット/ガルバノスタット(Bio−Logic製VMP3)を用い、試験温度25℃、カットオフ電圧1.1〜2.1V、0.1Cレートの条件の下で定電流にて放電から充放電を行い、充放電容量を求めた。なお、充電後と放電後にはそれぞれ3分間の休止を設けた。2サイクル目の放電開始直前の開回路電圧は1.76Vであった。
(正極層粉末の調製)
正極活物質LiCoO2(日本化学工業製日本化学工業製セルシードC−5H):錯体水素化物固体電解質(LiBH4):カーボンブラック(シグマ・アルドリッチ社製、純度99.9%)=40:60:6(重量比)とした粉末をグローブボックス内で計り取り、乳鉢にて混合して正極層粉末とした。活物質LiCoO2の電極電位(リチウム基準)は、3.95Vである。
上記の正極層粉末を用いた以外は、実施例1と同様に全固体電池を作製した。充放電試験については、充電より試験を開始し、カットオフ電圧を3.2〜4.2Vとした以外は、実施例1と同様に行った。充電時に、1.8V付近から大きな不可逆容量が生じた。1サイクル目の放電開始直前の開回路電圧は3.43Vであった。
(正極層粉末の調製)
正極活物質LiCoO2(日本化学工業製日本化学工業製セルシードC−5H):錯体水素化物固体電解質(3LiBH4−LiI):カーボンブラック(シグマ・アルドリッチ社製、純度99.9%)=40:60:6(重量比)とした粉末をグローブボックス内で計り取り、乳鉢にて混合して正極層粉末とした。活物質LiCoO2の電極電位(リチウム基準)は、3.95Vである。
上記の正極層粉末を用いた以外は、実施例1と同様に全固体電池を作製した。充放電試験については、充電より試験を開始し、カットオフ電圧を3.2〜4.2Vとした以外は、実施例2と同様に行った。充電時に2.70V付近の電圧から、大きな不可逆容量が生じた。1サイクル目の放電開始直前の開回路電圧は3.86Vであった。
(正極層粉末の調製)
正極活物質LiFePO4(SLFP−ES01):錯体水素化物固体電解質(LiBH4):カーボンブラック(シグマ・アルドリッチ社製、純度99.9%)=40:60:6(重量比)とした粉末をグローブボックス内で計り取り、乳鉢にて混合して正極層粉末とした。活物質LiFePO4の電極電位(リチウム基準)は、3.4Vである。
上記の正極層粉末を用いた以外は、実施例1と同様に全固体電池を作製した。充放電試験については、充電より試験を開始し、カットオフ電圧を2.5〜3.8Vとした以外は、実施例1と同様に行った。
一方、本発明の全固体電池は、充電時の大きな不可逆容量を回避でき、充放電サイクルを繰り返しても電池抵抗が増大しにくく、それに伴い放電容量も低下しにくいことが分かる。従って、本発明の全固体電池は、長期にわたって安定に動作可能であると言える。また、本発明の全固体電池は、充放電サイクルを繰り返した後であってもクーロン効率が低下しにくいという利点も有することが分かった。これらの結果より、本発明においては、錯体水素化物によるチタン酸リチウムの還元がほとんど生じないと共に、充放電時の電圧負荷による錯体水素化物固体電解質の副反応による分解が回避できていると言える。
さらに、上述したように、本発明によると、錯体水素化物による正極活物質の還元を懸念することなくリチウムイオン伝導性の高い錯体水素化物を固体電解質として使用することができる。また、活物質と固体電解質との間で良好な界面が形成される結果、界面抵抗が低くなり、電池全体のリチウムイオン伝導性を向上させることもできる。
Claims (5)
- 活物質と錯体水素化物固体電解質とを含む正極層であって、前記活物質はチタン酸リチウムを含み、前記錯体水素化物固体電解質はLiBH 4 であり、前記正極層に含まれる全活物質の90重量%以上が、リチウム基準で1.20V〜1.80Vの電極電位を有する活物質である正極層。
- 前記チタン酸リチウムは、LiTi2O4、Li4Ti5O12およびLi2Ti3O7からなる群より選択される請求項1に記載の正極層。
- 前記チタン酸リチウムは、Li4Ti5O12である請求項2に記載の正極層。
- 正極層と、負極層と、前記正極層と前記負極層との間に配置されたリチウムイオン伝導性を有する固体電解質層とを具備し、
前記正極層は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の正極層である
全固体電池。 - 前記正極層にかかる上限充電電圧はリチウム基準で1.55V〜1.80Vである、請求項4に記載の全固体電池。
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