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JP6408847B2 - 樹脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、エポキシ樹脂と活性エステル硬化剤とを含む樹脂組成物に関する。
近年、スマートホン及びタブレット等の携帯端末が急速に普及している。この結果、より膨大なデータの通信及び処理を行う必要性が高まっている。データセンター及び情報基地局のサーバー等の設備には、高速伝送に対応することが要求されている。高速伝送を達成するためには、信号ロスを低減する必要がある。このため、装置を構成するプリント配線板等には、誘電特性(誘電率、誘電正接)が低い熱硬化性樹脂が使用されている。
また、例えば、下記の特許文献1に開示されているように、エポキシ樹脂と活性エステル硬化剤とを含む樹脂組成物が知られている。この樹脂組成物では、反応時に極性が高い水酸基がエポキシ樹脂から生成されず、得られる硬化物では、極めて低い誘電正接が発現する。
特開2014−159512号公報
しかし、エポキシ樹脂と活性エステル硬化剤とを含む樹脂組成物では、極性が低いために、プリント配線板の微細配線加工プロセスであるセミアディティブプロセス(SAP)において、適性が低い。具体的には、上記樹脂組成物の硬化物と導体部との密着性が低く、浮きや剥がれが生じやすい。さらに、層間の電気接続のためのレーザービア加工時に、ビア底に樹脂残渣(スミア)が残りやすい。活性エステル硬化剤を用いた樹脂組成物では、誘電正接を低くすることができるものの、硬化物と導体部との高い密着性と、ビア加工時にスミアの残存抑制との双方を達成することが困難である。
本発明の目的は、硬化後の硬化物と導体部との密着性を高めることができ、ビア加工時にスミアの残存を少なくすることができる樹脂組成物を提供することである。
本発明の広い局面によれば、少なくとも1種のエポキシ樹脂と、少なくとも2種の硬化剤とを含み、前記少なくとも2種の硬化剤が、活性エステル硬化剤を含み、樹脂組成物中の全ての前記エポキシ樹脂100重量%に含まれている窒素原子の合計重量%の、樹脂組成物中の全ての前記硬化剤100重量%に含まれている窒素原子の合計重量%に対する比が、1/3以上、1以下である、樹脂組成物が提供される。
本発明に係る樹脂組成物のある特定の局面では、前記少なくとも2種の硬化剤が、前記活性エステル硬化剤以外の硬化剤として、アミノトリアジン変性フェノール硬化剤又はアミノトリアジン変性クレゾール硬化剤を含む。
本発明に係る樹脂組成物のある特定の局面では、樹脂組成物中の全ての前記硬化剤の反応性基の合計数の、樹脂組成物中の前記アミノトリアジン変性フェノール硬化剤及びアミノトリアジン変性クレゾール硬化剤の反応性基の合計数に対する比が、2.5以上、10以下である。
本発明に係る樹脂組成物のある特定の局面では、150℃以上で0.5時間以上硬化させた硬化物の周波数5.8GHzでの誘電正接が0.007以下である。
本発明に係る樹脂組成物のある特定の局面では、前記少なくとも1種のエポキシ樹脂が、エポキシ当量が120以下であるエポキシ樹脂を含む。
本発明に係る樹脂組成物のある特定の局面では、硬化が空気に曝露されない環境下で行われる。
本発明に係る樹脂組成物のある特定の局面では、ビルドアップ配線板に用いられる絶縁材料である。
本発明に係る樹脂組成物は、少なくとも1種のエポキシ樹脂と、少なくとも2種の硬化剤とを含み、上記少なくとも2種の硬化剤が、活性エステル硬化剤を含み、樹脂組成物中の全ての上記エポキシ樹脂100重量%に含まれている窒素原子の合計重量%の、樹脂組成物中の全ての上記硬化剤100重量%に含まれている窒素原子の合計重量%に対する比が、1/3以上、1以下であるので、硬化後の硬化物と導体部との密着性を高めることができ、ビア加工時にスミアの残存を少なくすることができる。
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物を用いた多層基板を模式的に示す部分切欠正面断面図である。
以下、本発明の詳細を説明する。
(樹脂組成物)
本発明に係る樹脂組成物は、少なくとも1種のエポキシ樹脂と、少なくとも2種の硬化剤とを含む。本発明に係る樹脂組成物は、熱硬化性樹脂組成物である。本発明に係る樹脂組成物では、上記少なくとも2種の硬化剤が、活性エステル硬化剤を含む。本発明に係る樹脂組成物中の全ての上記エポキシ樹脂100重量%に含まれている窒素原子の合計重量%の、本発明に係る樹脂組成物中の全ての上記硬化剤100重量%に含まれている窒素原子の合計重量%に対する比(全てのエポキシ樹脂100重量%に含まれている窒素原子の合計重量%/全ての硬化剤100重量%に含まれている窒素原子の合計重量%)は、1/3以上、1以下である。
本発明では、上述した構成が備えられているので、硬化後の硬化物と導体部との密着性を高めることができ、ビア加工時にスミアの残存を少なくすることができる。本発明では、硬化物と導体部との高い密着性と、ビア加工時にスミアの残存抑制との双方を達成することができる。硬化後の硬化物と導体部との密着性を高めることで、浮きや剥がれを抑制し、ハローイングと呼ばれる異常現象の発生を抑制できる。さらに、本発明では、誘電正接を低くすることもできる。
具体的には、エポキシ樹脂と活性エステル硬化剤とを硬化系に用いることで、フェノール硬化剤などの従来の硬化系において樹脂マトリックス中に生成するエポキシ樹脂由来の極性の高い2級水酸基の発生を抑えることにより、誘電正接を低減させる。しかしながら、この低極性樹脂については低極性が故に導体層の銅との密着性が不足したり、導体の層間接続のためのレーザービア形成時のビア底の残渣(スミア)の除去が難しくなったりする。
そこで、銅との親和性の高い窒素原子を樹脂マトリックス内に直接取り込んだ形で導入することで、具体的には窒素原子を含む硬化剤として所定割合処方することで、銅との密着性を向上させることができる。
また、窒素原子を含むエポキシ樹脂について所定割合処方することで、樹脂マトリックス骨格として局所的に取り込まれた窒素原子により微量の極性サイトをつくることができ、このサイトがデスミアの起点となりビア底にスミアが残ることを抑制させることができる。
上記比(全てのエポキシ樹脂100重量%に含まれている窒素原子の合計重量%/全ての硬化剤100重量%に含まれている窒素原子の合計重量%)が1/3未満であると、硬化物の誘電正接が高くなる傾向があり、極性サイトが増えすぎて、硬化物の表面の表面粗さが大きくなる。上記比(全てのエポキシ樹脂100重量%に含まれている窒素原子の合計重量%/全ての硬化剤100重量%に含まれている窒素原子の合計重量%)が1を超えると、スミアが残存しやすくなる。
本発明に係る樹脂組成物は、エポキシ樹脂を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。上記少なくとも1種のエポキシ樹脂は、窒素原子を有するエポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、窒素原子を有するエポキシ樹脂と、窒素原子を有さないエポキシ樹脂とを含んでいてもよい。
上記少なくとも2種の硬化剤は、窒素原子を有する硬化剤のみを含んでいてもよく、窒素原子を有する硬化剤と、窒素原子を有さない硬化剤とを含んでいてもよい。上記硬化剤は、活性エステル硬化剤のみを含んでいてもよく、活性エステル硬化剤と、活性エステル以外の硬化剤とを含んでいてもよい。上記硬化剤は、少なくとも2種の活性エステル硬化剤を含んでいてもよい。上記活性エステル硬化剤は、窒素原子を有する活性エステル硬化剤であってもよく、窒素原子を有さない活性エステル硬化剤であってもよい。上記活性エステル硬化剤は、窒素原子を有する活性エステル硬化剤のみを含んでいてもよく、窒素原子を有さない活性エステル硬化剤のみを含んでいてもよく、窒素原子を有する活性エステル硬化剤と、窒素原子を有さない活性エステル硬化剤とを含んでいてもよい。上記硬化剤は、窒素原子を有する活性エステル硬化剤と、活性エステル硬化剤以外の窒素原子を有する硬化剤とを含んでいてもよく、窒素原子を有する活性エステル硬化剤と、活性エステル硬化剤以外の窒素原子を有さない硬化剤とを含んでいてもよく、窒素原子を有さない活性エステル硬化剤と、活性エステル硬化剤以外の窒素原子を有する硬化剤とを含んでいてもよい。上記硬化剤は、窒素原子を有さない活性エステル硬化剤と、活性エステル硬化剤以外の窒素原子を有する硬化剤とを含むことが好ましい。
本発明に係る樹脂組成物中の全ての上記硬化剤100重量%に含まれている窒素原子の合計重量%は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。上記硬化剤100重量%に含まれている窒素原子の合計重量%が上記下限以上であると、硬化物部と導体部との密着性がより一層高くなり、浮き及び剥がれがより一層生じ難くなり、ハローイングがより一層発生し難くなる。上記硬化剤100重量%に含まれている窒素原子の合計重量%が上記上限以下であると、誘電正接がより一層低くなり、硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなる。
プリント配線板などの絶縁層では、誘電正接が低いことが求められることが多い。本発明に係る樹脂組成物では、硬化物の誘電正接を低くすることができる。本発明に係る樹脂組成物を150℃以上で1時間以上硬化させた硬化物の周波数5.8GHzでの誘電正接は好ましくは0.008以下、より好ましくは0.007以下、更に好ましくは0.006以下である。本発明に係る樹脂組成物を150℃以上で0.5時間以上硬化させた硬化物の周波数10GHzでの誘電正接は好ましくは0.008以下、より好ましくは0.007以下、更に好ましくは0.006以下である。
プリント配線板の導体層(銅)は、絶縁層である熱硬化性樹脂の硬化時に酸化されるリスクがあり、酸化した銅はエッチング液(酸)に弱く、エッチング時に削れやすい。たとえば、樹脂で被覆されている導体層であっても、樹脂と接触している部分の導体が酸化され、レーザービア工程などでハローイング等に繋がる傾向がある。このため、少しでも酸化を軽減することが望まれる。本発明に係る樹脂組成物のある特定の局面では、熱硬化性樹脂組成物の硬化が空気に曝露されない環境下で行われてもよい。
空気に曝露されない環境下の例としては、アルゴンや窒素などの不活性ガスの環境下、又は樹脂の表面をPET等の樹脂フィルムで被覆したままでの環境下が挙げられる。上記の環境下はどちらも組み合わせることも可能である。
本発明に係る樹脂組成物は、電子部品の絶縁封止用途、マザーボード等の多層プリント配線板、ICパッケージ等のビルドアップ配線板等に好適に用いることができる。なかでも、本発明に係る樹脂組成物は、ビルドアップ配線板に好適に用いることができる。
以下、本発明に係る樹脂組成物に用いられる各成分の詳細を説明する。
[エポキシ樹脂]
上記樹脂組成物は、少なくとも1種の硬化剤を含む。
上記樹脂組成物に含まれているエポキシ樹脂は特に限定されない。該エポキシ樹脂として、従来公知のエポキシ樹脂を使用可能である。該エポキシ樹脂は、少なくとも1個のエポキシ基を有する有機化合物をいう。エポキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記エポキシ樹脂としては、イソシアヌル酸骨格エポキシ樹脂、p−アミノフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ樹脂、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
硬化物と導体部との密着性を効果的に高め、ビア加工時にスミアの残存をより一層抑える観点からは、上記少なくとも1種のエポキシ樹脂は、エポキシ当量が120以下であるエポキシ樹脂を含むことが好ましい。
樹脂組成物の全固形分100重量%中、エポキシ樹脂の含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下である。「固形分」とは、エポキシ樹脂と硬化剤と必要に応じて配合される他の固形分との総和をいう。「固形分」とは、不揮発成分であり、成形又は加熱時に揮発しない成分をいう。
上記エポキシ樹脂の全体100重量%中、エポキシ当量が120以下であるエポキシ樹脂の含有量は好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。
[硬化剤]
上記樹脂組成物は、上記エポキシ樹脂を硬化させるために、少なくとも2種の硬化剤を含む。
上記硬化剤としては、シアネートエステル化合物及びシアネートエステル化合物のプレポリマー(シアネートエステル硬化剤)、フェノール化合物(フェノール硬化剤)、アミン化合物(アミン硬化剤)、チオール化合物(チオール硬化剤)、イミダゾール化合物、ホスフィン化合物、酸無水物、活性エステル化合物(活性エステル硬化剤)及びジシアンジアミド等が挙げられる。
本発明では、上記硬化剤として、活性エステル硬化剤を用いる。すなわち、上記少なくとも2種の硬化剤が、活性エステル硬化剤を含む。
上記エポキシ樹脂の全体100重量部に対して、上記硬化剤の全体の含有量は好ましくは80重量部以上、より好ましくは90重量部以上、好ましくは120重量部以下、より好ましくは110重量部以下である。
硬化物と導体部との密着性を効果的に高め、ビア加工時にスミアの残存をより一層抑える観点からは、上記少なくとも2種の硬化剤の全体100重量%中、活性エステル硬化剤の含有量は好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下である。
上記少なくとも2種の硬化剤は、上記活性エステル硬化剤以外の硬化剤として、アミノトリアジン変性フェノール硬化剤又はアミノトリアジン変性クレゾール硬化剤を含むことが好ましい。この場合に、アミノトリアジン変性フェノール硬化剤及びアミノトリアジン変性クレゾール硬化剤の内の一方のみが用いられてもよく、双方が用いられてもよい。
硬化物と導体部との密着性を効果的に高め、ビア加工時にスミアの残存をより一層抑える観点からは、上記少なくとも2種の硬化剤の全体100重量%中、アミノトリアジン変性フェノール硬化剤及びアミノトリアジン変性クレゾール硬化剤の合計の含有量は好ましくは5重量%以上、より好ましくは10重量%以上、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下である。
硬化物と導体部との密着性を効果的に高め、ビア加工時にスミアの残存をより一層抑える観点からは、上記樹脂組成物中の全ての上記硬化剤の反応性基の合計数の、上記樹脂組成物中の上記アミノトリアジン変性フェノール硬化剤及びアミノトリアジン変性クレゾール硬化剤の反応性基の合計数に対する比(全ての硬化剤の反応性基の合計数/アミノトリアジン変性フェノール硬化剤及びアミノトリアジン変性クレゾール硬化剤の反応性基の合計数)は、好ましくは2.5以上、より好ましくは3.3以上、好ましくは10以下、より好ましくは6.7以下である。上記反応性基とは、活性エステル基、水酸基、及びシアナート基等を意味する。
[熱可塑性樹脂]
上記樹脂組成物は熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂及びフェノキシ樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
誘電正接を効果的に低くし、かつ、硬化物と導体部との密着性を効果的に高める観点からは、上記熱可塑性樹脂は、フェノキシ樹脂であることが好ましい。フェノキシ樹脂の使用により、樹脂フィルムの回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性の悪化及び無機充填材の不均一化が抑えられる。また、フェノキシ樹脂の使用により、溶融粘度を調整可能であるために無機充填材の分散性が良好になり、かつ硬化過程で、意図しない領域に樹脂フィルムが濡れ拡がり難くなる。上記樹脂組成物に含まれているフェノキシ樹脂は特に限定されない。上記フェノキシ樹脂として、従来公知のフェノキシ樹脂を使用可能である。上記フェノキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記フェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型の骨格、ビスフェノールF型の骨格、ビスフェノールS型の骨格、ビフェニル骨格、ノボラック骨格、ナフタレン骨格及びイミド骨格などの骨格を有するフェノキシ樹脂等が挙げられる。
上記フェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、新日鐵住金化学社製の「YP50」、「YP55」及び「YP70」、並びに三菱化学社製の「1256B40」、「4250」、「4256H40」、「4275」、「YX6954BH30」及び「YX8100BH30」等が挙げられる。
保存安定性により一層優れた樹脂フィルムを得る観点からは、上記熱可塑性樹脂及び上記フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5000以上、より好ましくは10000以上、好ましくは100000以下、より好ましくは50000以下である。
上記熱可塑性樹脂及び上記フェノキシ樹脂の上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。
上記熱可塑性樹脂及び上記フェノキシ樹脂の含有量は特に限定されない。本発明に係る樹脂組成物に含まれる全固形分100重量%中、上記熱可塑性樹脂及び上記フェノキシ樹脂の含有量は好ましくは2重量%以上、より好ましくは4重量%以上、好ましくは15重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。上記熱可塑性樹脂及び上記フェノキシ樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、樹脂フィルムの回路基板の穴又は凹凸に対する埋め込み性が良好になる。上記熱可塑性樹脂及び上記フェノキシ樹脂の含有量が上記下限以上であると、樹脂組成物のフィルム化がより一層容易になり、より一層良好な絶縁層が得られる。上記フェノキシ樹脂の含有量が上記上限以下であると、硬化物の熱膨張率がより一層低くなる。硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。
[無機充填材]
上記樹脂組成物は、無機充填材を含むことが好ましい。無機充填材の使用により、硬化物の熱による寸法変化がより一層小さくなる。さらに、硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。
上記無機充填材としては、シリカ、タルク、クレイ、マイカ、ハイドロタルサイト、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム及び窒化ホウ素等が挙げられる。
硬化物の表面の表面粗さを小さくし、硬化物と金属層との接着強度をより一層高くし、かつ硬化物の表面により一層微細な配線を形成し、かつ硬化物により良好な絶縁信頼性を付与する観点からは、上記無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましく、シリカであることがより好ましく、溶融シリカであることが更に好ましい。シリカの使用により、硬化物の熱膨張率がより一層低くなり、かつ硬化物の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、硬化物と金属層との接着強度が効果的に高くなる。シリカの形状は球状であることが好ましい。
硬化環境によらず、樹脂の硬化を進め、硬化物のガラス転移温度を効果的に高くし、硬化物の熱線膨張係数を効果的に小さくする観点からは、上記無機充填材は球状シリカであることが好ましい。
上記無機充填材の平均粒径は、好ましくは10nm以上、より好ましくは50nm以上、更に好ましくは150nm以上、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下、特に好ましくは1μm以下である。上記無機充填材の平均粒径が上記下限以上及び上記上限以下であると、粗化処理などにより形成される孔の大きさが微細になり、孔の数が多くなる。この結果、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなる。
上記無機充填材の平均粒径として、50%となるメディアン径(d50)の値が採用される。上記平均粒径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定可能である。
上記無機充填材はそれぞれ、球状であることが好ましく、球状シリカであることがより好ましい。この場合には、硬化物の表面の表面粗さが効果的に小さくなり、更に絶縁層と金属層との接着強度が効果的に高くなる。上記無機充填材がそれぞれ球状である場合には、上記無機充填材それぞれのアスペクト比は好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下である。
上記無機充填材は、表面処理されていることが好ましく、シランカップリング剤により表面処理されていることがより好ましい。これにより、粗化硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなり、かつ硬化物の表面により一層微細な配線が形成され、かつより一層良好な配線間絶縁信頼性及び層間絶縁信頼性を硬化物に付与することができる。
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、メタクリルシラン、アクリルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン、ビニルシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
上記樹脂組成物に含まれる全固形分100重量%中、上記無機充填材の含有量は好ましくは25重量%以上、より好ましくは30重量%以上、更に好ましくは40重量%以上、特に好ましくは50重量%以上、好ましくは99重量%以下、より好ましくは85重量%以下、更に好ましくは80重量%以下、特に好ましくは75重量%以下である。上記無機充填材の合計の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の表面の表面粗さがより一層小さくなり、硬化物と金属層との接着強度がより一層高くなり、かつ硬化物の表面により一層微細な配線が形成されると同時に、この無機充填材量であれば金属銅並に硬化物の熱膨張率を低くすることも可能である。
[硬化促進剤]
上記樹脂組成物は、硬化促進剤を含むことが好ましい。上記硬化促進剤の使用により、硬化速度がより一層速くなる。樹脂フィルムを速やかに硬化させることで、硬化物における架橋構造が均一になると共に、未反応の官能基数が減り、結果的に架橋密度が高くなる。上記硬化促進剤は特に限定されず、従来公知の硬化促進剤を使用可能である。上記硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物、リン化合物、アミン化合物及び有機金属化合物等が挙げられる。
上記イミダゾール化合物としては、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2−フェニル−4−メチル−5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
上記リン化合物としては、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
上記アミン化合物としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジエチレンテトラミン、トリエチレンテトラミン及び4,4−ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
上記有機金属化合物としては、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)及びトリスアセチルアセトナートコバルト(III)等が挙げられる。
上記硬化促進剤の含有量は特に限定されない。上記樹脂組成物に含まれている全固形分100重量%中、上記硬化促進剤の含有量は好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.9重量%以上、好ましくは3.0重量%以下、より好ましくは1.8重量%以下である。上記硬化促進剤の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、樹脂フィルムが効率的に硬化する。上記硬化促進剤の含有量がより好ましい範囲であれば、樹脂組成物の保存安定性がより一層高くなり、かつより一層良好な硬化物が得られる。
[溶剤]
上記樹脂組成物は、溶剤を含まないか又は含む。上記溶剤の使用により、樹脂組成物の粘度を好適な範囲に制御でき、樹脂組成物の塗工性を高めることができる。また、上記溶剤は、上記無機充填材を含むスラリーを得るために用いられてもよい。上記溶剤は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記溶剤としては、アセトン、メタノール、エタノール、ブタノール、2−プロパノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、2−アセトキシ−1−メトキシプロパン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、N−メチル−ピロリドン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン及び混合物であるナフサ等が挙げられる。
上記溶剤の多くは、上記樹脂組成物をフィルム状に成形するときに、除去されることが好ましい。従って、上記溶剤の沸点は好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。上記樹脂組成物における上記溶剤の含有量は特に限定されない。上記樹脂組成物の塗工性などを考慮して、上記溶剤の含有量は適宜変更可能である。
[他の成分]
耐衝撃性、耐熱性、樹脂の相溶性及び作業性等の改善を目的として、上記樹脂組成物には、レベリング剤、難燃剤、カップリング剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、消泡剤、増粘剤、揺変性付与剤及び上述したエポキシ樹脂以外の他の熱硬化性樹脂等を添加してもよい。
上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤等が挙げられる。上記シランカップリング剤としては、ビニルシラン、アミノシラン、イミダゾールシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
上記他の熱硬化性樹脂としては、ポリフェニレンエーテル樹脂、ジビニルベンジルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾオキサゾール樹脂、ビスマレイミド樹脂及びアクリレート樹脂等が挙げられる。
(樹脂フィルム及び積層フィルム)
上述した樹脂組成物は、フィルム状に成形することにより樹脂フィルムとして用いられてもよい。
樹脂フィルムの硬化度をより一層均一に制御する観点からは、上記樹脂フィルムの厚みは好ましくは5μm以上、好ましくは200μm以下である。
上記樹脂組成物をフィルム状に成形する方法としては、例えば、押出機を用いて、樹脂組成物を溶融混練し、押出した後、Tダイ又はサーキュラーダイ等により、フィルム状に成形する押出成形法、溶剤を含む樹脂組成物をキャスティングしてフィルム状に成形するキャスティング成形法、並びに従来公知のその他のフィルム成形法等が挙げられる。なかでも、薄型化に対応可能であることから、押出成形法又はキャスティング成形法が好ましい。フィルムにはシートが含まれる。
上記樹脂組成物をフィルム状に成形し、熱による硬化が進行し過ぎない程度に、例えば90〜200℃で1〜180分間加熱乾燥させることにより、Bステージフィルムである樹脂フィルムを得ることができる。
上述のような乾燥工程により得ることができるフィルム状の樹脂組成物をBステージフィルムと称する。上記Bステージフィルムは、半硬化状態にある半硬化物である。半硬化物は、完全に硬化しておらず、硬化がさらに進行され得る。
上記樹脂フィルムは、プリプレグでなくてもよい。上記樹脂フィルムがプリプレグではない場合には、ガラスクロスなどに沿ってマイグレーションが生じなくなる。また、樹脂フィルムをラミネート又はプレキュアする際に、表面にガラスクロスに起因する凹凸が生じなくなる。また、プリプレグを含まない樹脂フィルムとすることで、硬化物の熱による寸法変化が小さくなり、形状保持性が高くなり、セミアディティブプロセス適性が高くなる。
上記樹脂組成物は、金属箔又は基材と、該金属箔又は基材の表面に積層された樹脂フィルムとを備える積層フィルムを形成するために好適に用いることができる。上記積層フィルムにおける上記樹脂フィルムが、上記樹脂組成物により形成される。上記金属箔は銅箔であることが好ましい。
上記積層フィルムの上記基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリブチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステル樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルムなどのオレフィン樹脂フィルム、及びポリイミド樹脂フィルム等が挙げられる。上記基材の表面は、必要に応じて、離型処理されていてもよい。
上記樹脂組成物及び上記樹脂フィルムを回路の絶縁層として用いる場合、上記樹脂組成物又は上記樹脂フィルムにより形成された絶縁層の厚さは、回路を形成する導体層(金属層)の厚さ以上であることが好ましい。上記絶縁層の厚さは、好ましくは5μm以上、好ましくは200μm以下である。
(プリント配線板)
上記樹脂組成物及び上記樹脂フィルムは、プリント配線板において絶縁層を形成するために好適に用いられる。
上記プリント配線板は、例えば、上記樹脂フィルムを加熱加圧成形することにより得られる。
上記樹脂フィルムに対して、片面又は両面に金属箔を積層できる。上記樹脂フィルムと金属箔とを積層する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、平行平板プレス機又はロールラミネーター等の装置を用いて、加熱しながら又は加熱せずに加圧しながら、上記樹脂フィルムを金属箔に積層可能である。
(銅張り積層板及び多層基板)
上記樹脂組成物及び上記樹脂フィルムは、銅張り積層板を得るために好適に用いられる。上記銅張り積層板の一例として、銅箔と、該銅箔の一方の表面に積層された樹脂フィルムとを備える銅張り積層板が挙げられる。この銅張り積層板の樹脂フィルムが、上記樹脂組成物により形成される。
上記銅張り積層板の上記銅箔の厚さは特に限定されない。上記銅箔の厚さは、1〜50μmの範囲内であることが好ましい。また、上記樹脂フィルムを硬化させた絶縁層と銅箔との接着強度を高めるために、上記銅箔は微細な凹凸を表面に有することが好ましい。凹凸の形成方法は特に限定されない。上記凹凸の形成方法としては、公知の薬液を用いた処理による形成方法等が挙げられる。
上記樹脂組成物及び上記樹脂フィルムは、多層基板を得るために好適に用いられる。上記多層基板の一例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された絶縁層とを備える多層基板が挙げられる。この多層基板の絶縁層が、上記樹脂組成物をフィルム状に成形した樹脂フィルムを用いて上記樹脂フィルムにより形成されている。また、多層基板の絶縁層が、積層フィルムを用いて、上記積層フィルムの上記樹脂フィルムにより形成されていてもよい。上記絶縁層は、回路基板の回路が設けられた表面上に積層されていることが好ましい。上記絶縁層の一部は、上記回路間に埋め込まれていることが好ましい。
上記多層基板では、上記絶縁層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面が粗化処理されていることが好ましい。
粗化処理方法は、従来公知の粗化処理方法を用いることができ特に限定されない。上記絶縁層の表面は、粗化処理の前に膨潤処理されていてもよい。
また、上記多層基板は、上記絶縁層の粗化処理された表面に積層された銅めっき層をさらに備えることが好ましい。
また、上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された絶縁層と、該絶縁層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面に積層された銅箔とを備える多層基板が挙げられる。上記絶縁層及び上記銅箔が、銅箔と該銅箔の一方の表面に積層された樹脂フィルムとを備える銅張り積層板を用いて、上記樹脂フィルムを硬化させることにより形成されていることが好ましい。さらに、上記銅箔はエッチング処理されており、銅回路であることが好ましい。
上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の表面上に積層された複数の絶縁層とを備える多層基板が挙げられる。上記回路基板上に配置された上記複数層の絶縁層の内の少なくとも1層が、上記樹脂組成物をフィルム状に成形した樹脂フィルムを用いて形成される。上記多層基板は、上記樹脂フィルムを用いて形成されている上記絶縁層の少なくとも一方の表面に積層されている回路をさらに備えることが好ましい。
図1に、本発明の一実施形態に係る樹脂組成物を用いた多層基板を模式的に部分切欠正面断面図で示す。
図1に示す多層基板11では、回路基板12の上面12aに、複数層の絶縁層13〜16が積層されている。絶縁層13〜16は、硬化物層である。回路基板12の上面12aの一部の領域には、金属層17が形成されている。複数層の絶縁層13〜16のうち、回路基板12側とは反対の外側の表面に位置する絶縁層16以外の絶縁層13〜15には、上面の一部の領域に金属層17が形成されている。金属層17は回路である。回路基板12と絶縁層13の間、及び積層された絶縁層13〜16の各層間に、金属層17がそれぞれ配置されている。下方の金属層17と上方の金属層17とは、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続の内の少なくとも一方により互いに接続されている。
多層基板11では、絶縁層13〜16が、本発明に係る樹脂組成物をフィルム状に成形した樹脂フィルムを用いて形成されている。本実施形態では、絶縁層13〜16の表面が粗化処理されているので、絶縁層13〜16の表面に図示しない微細な孔が形成されている。また、微細な孔の内部に金属層17が至っている。また、多層基板11では、金属層17の幅方向寸法(L)と、金属層17が形成されていない部分の幅方向寸法(S)とを小さくすることができる。また、多層基板11では、図示しないビアホール接続及びスルーホール接続で接続されていない上方の金属層と下方の金属層との間に、良好な絶縁信頼性が付与されている。
(粗化処理及び膨潤処理)
上記樹脂組成物は、粗化処理又はデスミア処理される硬化物を得るために用いられることが好ましい。上記硬化物には、更に硬化が可能な予備硬化物も含まれる。
上記樹脂組成物を予備硬化させることにより得られた硬化物の表面に微細な凹凸を形成するために、硬化物は粗化処理されることが好ましい。粗化処理の前に、硬化物は膨潤処理されることが好ましい。硬化物は、予備硬化の後、かつ粗化処理される前に、膨潤処理されており、さらに粗化処理の後に硬化されていることが好ましい。ただし、硬化物は、必ずしも膨潤処理されなくてもよい。
上記膨潤処理の方法としては、例えば、エチレングリコールなどを主成分とする化合物の水溶液又は有機溶媒分散溶液などにより、硬化物を処理する方法が用いられる。膨潤処理に用いる膨潤液は、一般にpH調整剤などとして、アルカリを含む。膨潤液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。具体的には、例えば、上記膨潤処理は、40重量%エチレングリコール水溶液等を用いて、処理温度30〜85℃で1〜30分間、硬化物を処理することにより行なわれる。上記膨潤処理の温度は50〜85℃の範囲内であることが好ましい。上記膨潤処理の温度が低すぎると、膨潤処理に長時間を要し、更に硬化物と金属層との接着強度が低くなる傾向がある。
上記粗化処理には、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物などの化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。粗化処理に用いられる粗化液は、一般にpH調整剤などとしてアルカリを含む。粗化液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
上記マンガン化合物としては、過マンガン酸カリウム及び過マンガン酸ナトリウム等が挙げられる。上記クロム化合物としては、重クロム酸カリウム及び無水クロム酸カリウム等が挙げられる。上記過硫酸化合物としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム及び過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
上記粗化処理の方法は特に限定されない。上記粗化処理の方法として、例えば、30〜90g/L過マンガン酸又は過マンガン酸塩溶液及び30〜90g/L水酸化ナトリウム溶液を用いて、処理温度30〜85℃及び1〜30分間の条件で、硬化物を処理する方法が好適である。上記粗化処理の温度は50〜85℃の範囲内であることが好ましい。上記粗化処理の回数は1回又は2回であることが好ましい。
硬化物の表面の算術平均粗さRaは好ましくは50nm以上、好ましくは350nm以下、より好ましくは200nm未満、更に好ましくは100nm未満である。この場合には、硬化物と金属層又は配線との接着強度が高くなり、更に絶縁層の表面により一層微細な配線が形成される。
(デスミア処理)
上記樹脂組成物を予備硬化させることにより得られた硬化物に、貫通孔が形成されることがある。上記多層基板などでは、貫通孔として、ビア又はスルーホール等が形成される。例えば、ビアは、COレーザー等のレーザーの照射により形成できる。ビアの直径は特に限定されないが、60〜80μm程度である。上記貫通孔の形成により、ビア内の底部には、硬化物に含まれている樹脂成分に由来する樹脂の残渣であるスミアが形成されることがある。しかし、上記樹脂組成物の使用により、スミアの残存を少なくすることができる。
上記スミアを除去するために、硬化物の表面は、デスミア処理されることが好ましい。デスミア処理が粗化処理を兼ねることもある。
上記デスミア処理には、上記粗化処理と同様に、例えば、マンガン化合物、クロム化合物又は過硫酸化合物などの化学酸化剤等が用いられる。これらの化学酸化剤は、水又は有機溶剤が添加された後、水溶液又は有機溶媒分散溶液として用いられる。デスミア処理に用いられるデスミア処理液は、一般にアルカリを含む。デスミア処理液は、水酸化ナトリウムを含むことが好ましい。
上記デスミア処理の方法は特に限定されない。上記デスミア処理の方法として、例えば、30〜90g/L過マンガン酸又は過マンガン酸塩溶液及び30〜90g/L水酸化ナトリウム溶液を用いて、処理温度30〜85℃及び1〜30分間の条件で、1回又は2回、硬化物を処理する方法が好適である。上記デスミア処理の温度は50〜85℃の範囲内であることが好ましい。
上記樹脂組成物の使用により、デスミア処理された硬化物の表面の表面粗さが十分に小さくなる。
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
以下の成分を用いた。
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂1:イソシアヌル酸骨格エポキシ樹脂(日産化学社製「TEPIC−SP」、エポキシ当量100g/eq、窒素原子の含有量19重量%)
エポキシ樹脂2:p−アミノフェノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製「630」、エポキシ当量96g/eq、窒素原子の含有量5重量%)
エポキシ樹脂3:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「828EL」、エポキシ当量186g/eq)
エポキシ樹脂4:ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP4032D」、エポキシ等量152g/eq」)
エポキシ樹脂5:ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP4700」、エポキシ等量165g/eq)
エポキシ樹脂6:ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000」、エポキシ当量276g/eq)
(硬化剤)
活性エステル硬化剤1:ナフタレン骨格の活性エステル樹脂(DIC社製「EXB9416」、エステル当量330g/eq」)
活性エステル硬化剤2:ジシクロペンタジエン骨格の活性エステル樹脂(DIC社製「HPC8000」、エステル当量223g/eq)
ATN硬化剤:アミノトリアジン変性フェノールノボラック樹脂(DIC社製「LA1356」、水酸基当量146g/eq、窒素原子の含有量18重量%)
ATCN硬化剤:アミノトリアジン変性クレゾールノボラック樹脂(DIC社製「LA3018」、水酸基当量151g/eq、窒素原子の含有量19重量%)
(硬化促進剤)
2−エチル−4−メチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製「2E4MZ」)
4−ジメチルアミノピリジン(和光純薬工業社製)
(無機充填材)
平均粒径0.5μmシリカ(アドマテックス社製「SO−C2」、表面処理はアミノフェニルシラン処理(信越化学工業社製「KBM573」)
平均粒径1.0μmシリカ(アドマテックス社製「SO−C4」、表面処理はアミノフェニルシラン処理(信越化学工業社製「KBM573」)
(熱可塑性樹脂)
フェノキシ樹脂(ビスフェノールアセトフェノン骨格フェノキシ樹脂、固形分30重量%:三菱化学社製「YX6954」)
(溶剤)※乾燥により除去されるため、表1では記載せず
シクロヘキサノン
(実施例1〜8及び比較例1〜5)
下記の表1に示す配合成分を下記の表1に示す配合量で用いて、以下の手順に従い各々の配合を行った。
シリカを溶剤でスラリー化し、エポキシ樹脂を加えて攪拌機を用いて、1200rpmで60分間撹拌し、未溶解物がなくなったことを確認した。その後、硬化剤を加えて、1200rpmで60分間撹拌し、未溶解物がなくなったことを確認した。その後、フェノキシ樹脂及び硬化促進剤を加えて、1200rpmで30分間撹拌し、樹脂組成物(樹脂ワニス)を得た。
次に、離型処理された透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(リンテック社製「PET5011 550」、厚み50μm)を用意した。このPETフィルムの離型処理面に、アプリケーターを用いて、得られたワニスを乾燥後の厚みが40μmとなるように塗工し、100℃のギアオーブン内で1分間乾燥して、縦200mm×横200mm×厚み40μmの樹脂フィルムの未硬化物(Bステージフィルム)を作製した。結果として、PETフィルムとBステージフィルムとの積層フィルムを得た。
(評価サンプルA(硬化フィルム)の作製)
得られたBステージフィルムをギアオーブン内で190℃で90分硬化させて、縦200mm×横200mm×厚み40μmの硬化フィルムを作製した。
(評価サンプルB(積層体)の作製)
1)ラミネート工程:両面銅張積層板(各面の銅箔の厚み18μm、基板の厚み0.7mm、基板サイズ100mm×100mm、日立化成社製「MCL−E679FG」)を用意した。この両面銅張積層板の銅箔面の両面をメック社製「Cz8101」に浸漬して、銅箔の表面を粗化処理した。粗化処理された銅張積層板の両面に、名機製作所社製「バッチ式真空ラミネーターMVLP−500−IIA」を用いて、積層フィルムをBステージフィルムの表面が銅張積層板面に対向するようにラミネートして、積層構造体を得た。ラミネートの条件は、30秒減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、100℃及び圧力0.8MPaでプレスする条件とした。
2)フィルム剥離工程:Bステージフィルムがラミネートされた銅張積層板において、両側のPETフィルムを剥離した。
3)硬化工程:内部の温度が180℃のギヤオーブン内に積層板を30分間入れ、Bステージフィルムを硬化させて、絶縁層を形成した。
(評価サンプルC(銅箔付き積層体)の作製)
評価サンプルBの作製の2)の工程の後で、銅箔(厚み35μm、三井金属社製)のシャイニー面をCz処理(メック社製「Cz8101」)した箔(表面を1μm程度エッチングした箔)を貼り合せた。
さらに、その銅箔付き基板をギアオーブン内で190℃で90分熱処理し、評価サンプルCを得た。
(評価)
(1)下地銅ピール強度(銅箔ピール強度)の評価
評価サンプルCの積層体の銅箔面側に1cm幅となるように短冊状に切込みを入れた。90°剥離試験機(テスター産業社製「TE−3001」)に基板をセットし、つかみ具で切込みの入った銅箔の端部をつまみあげ、銅箔を20mm剥離して剥離強度を測定した。
(2)レーザーデスミアの評価
評価サンプルBについて、COレーザー(日立ビアメカニクス社製「LC−1K21」)を用いて、上端での直径が60μm、下端(底部)での直径が40μmであるビア(貫通孔)を形成した。このようにして、積層体に樹脂フィルムの半硬化物が積層されており、かつ樹脂フィルムの半硬化物にビア(貫通孔)が形成されている積層体Dを得た。
<デスミア処理>
(a)膨潤処理
80℃の膨潤液(アトテックジャパン社製「スウェリングディップセキュリガントP」)に、得られた積層体Bを入れて、10分間揺動させた。その後、純水で洗浄した。
(b)過マンガン酸塩処理
80℃の過マンガン酸カリウム(アトテックジャパン社製「コンセントレートコンパクトCP」)粗化水溶液に、膨潤処理後の積層体Bを入れて、20分間揺動させた。次に、25℃の洗浄液(アトテックジャパン社製「リダクションセキュリガントP」)を用いて2分間処理した後、純水で洗浄して積層体Eを得た。
積層体Eのビアの底部を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、ビア底の壁面からのスミアの最大長さを測定した。ビア底の残渣の除去性を下記の基準で判定した。
[レーザーデスミア(ビア底の残渣の除去性)の判定基準]
○:スミアの最大長さが3μm未満
△:スミアの最大長さが3μm以上、5μm未満
×:スミアの最大長さが5μm以上
(3)ハローイングの評価
積層体Eについて無電解銅めっき及び電解銅めっきを行い、ビア部にもめっきを充填した。その後、190℃で90分の熱処理した。
得られた基板のビア加工部について表面研磨を行い、ビア部及びその周辺部の銅めっき、樹脂層を下地銅の寸前まで除去した。
研磨後の基板を金属顕微鏡(オリンパス社製「STM6」)を用いて100倍で観察し、ビア周辺部に発生しているリング(ハローイング)のサイズを測長した。ハローイングを下記の基準で判定した。なお、リングは、ビア周辺部において、絶縁層の浮き及び剥がれが生じている部分であり、ハローイング径は、浮き及び剥がれが生じている部分の外径である。
[ハローイングの判定基準]
○○:ハローイング径が60μm以上、120μm未満
○:ハローイング径が120μm以上、200μm未満
△:ハローイング径が200μm以上、400μm未満
×:ハローイング径が400μm以上
(4)誘電正接の評価
評価サンプルAを幅2mm、長さ80mmの大きさに裁断して5枚を重ね合わせて、厚み200μmの積層体を得た。得られた積層体について、関東電子応用開発社製「空洞共振摂動法誘電率測定装置CP521」及びキーサイトテクノロジー社製「ネットワークアナライザーN5224A PNA」を用いて、空洞共振法で常温(23℃)にて、周波数5.8GHz及び10GHzにて誘電正接を測定した。
(5)平均線膨張率の評価
評価サンプルAを、3mm×25mmの大きさに裁断した。熱機械的分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製「EXSTAR TMA/SS6100」)を用いて、引っ張り荷重33mN、昇温速度5℃/分の条件で、裁断された硬化物の25℃から150℃までの平均線膨張率(ppm/℃)を算出した。
(6)粗化後の表面の算術平均粗さRaの評価
評価サンプルBについて、レーザービア加工を行わずにデスミア処理まで施した積層体Fについて、非接触型表面粗計(ビーコインスツルメンツ社製「WYKO NT1100」)を用いて、VSIコンタクトモード、50倍レンズにより測定範囲を121μm×92μmとして、デスミア後の樹脂の表面の表面粗さを算術平均粗さRaを測定した。なお、算術平均粗さRaは、無作為に選んだ測定箇所3点で測定し、測定値の平均値を採用した。上記算術平均粗さは、JIS B0601−1994における値である。
(7)銅めっきピール強度の評価
積層体Fについて無電解銅めっき及び電解銅めっきまで行った積層体Gの銅めっき面側に1cm幅となるように短冊状に切込みを入れた。90°剥離試験機に基板をセットし、つかみ具で切込みの入った銅めっきの端部をつまみあげ、銅めっきを20mm剥離して剥離強度を測定した。
結果を下記の表1に示す。
Figure 0006408847
11…多層基板
12…回路基板
12a…上面
13〜16…絶縁層
17…金属層(配線)

Claims (7)

  1. 少なくとも1種のエポキシ樹脂と、少なくとも2種の硬化剤とを含み、
    前記少なくとも2種の硬化剤が、活性エステル硬化剤を含み、
    樹脂組成物中の全ての前記エポキシ樹脂100重量%に含まれている窒素原子の合計重量%の、樹脂組成物中の全ての前記硬化剤100重量%に含まれている窒素原子の合計重量%に対する比が、1/3以上、1以下である、樹脂組成物。
  2. 前記少なくとも2種の硬化剤が、前記活性エステル硬化剤以外の硬化剤として、アミノトリアジン変性フェノール硬化剤又はアミノトリアジン変性クレゾール硬化剤を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 樹脂組成物中の全ての前記硬化剤の反応性基の合計数の、樹脂組成物中の前記アミノトリアジン変性フェノール硬化剤及びアミノトリアジン変性クレゾール硬化剤の反応性基の合計数に対する比が、2.5以上、10以下である、請求項2に記載の樹脂組成物。
  4. 150℃以上で0.5時間以上硬化させた硬化物の周波数5.8GHzでの誘電正接が0.007以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  5. 前記少なくとも1種のエポキシ樹脂が、エポキシ当量が120以下であるエポキシ樹脂を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  6. 硬化が空気に曝露されない環境下で行われる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  7. ビルドアップ配線板に用いられる絶縁材料である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
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