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JP6401103B2 - 内視鏡用対物レンズおよび内視鏡 - Google Patents

内視鏡用対物レンズおよび内視鏡 Download PDF

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Description

本発明は、内視鏡用対物レンズおよびこの内視鏡用対物レンズを備えた内視鏡に関するものである。
従来、医療分野において先端部分に撮像装置が内蔵された長尺の挿入部を被検者の口や鼻等から挿入して体腔内を撮像する挿入型の内視鏡が普及している。このような内視鏡に使用可能な対物レンズとしては例えば下記特許文献1〜3に記載のものが知られている。特許文献1、2にはレンズ枚数が4枚のレンズ系が記載されており、特許文献3にはレンズ枚数が4〜6枚のレンズ系が記載されている。
特開平9−269450号公報 特許第3574484号公報 特開2009−80413号公報
内視鏡は被検者の負担を軽減するために細径化や小型化が望まれていることから、内視鏡用対物レンズに対しても小型な構成が望まれている。さらに、内視鏡用対物レンズには病変の発見率を向上させるため広範囲を観察可能な広角レンズ系であることが求められており、近年ではより広角化が望まれる傾向にある。
しかしながら、特許文献1、2に記載の内視鏡用対物レンズはレンズ系全長が長く、画角が狭い構成となっている。特許文献3に記載の内視鏡用対物レンズは、特許文献1、2に記載の内視鏡用対物レンズより広角であるが、近年ではさらに広角化が図られたレンズ系を要請される場合がある。
また、一般には広角になるほど倍率色収差が大きくなりやすいが、近年の電子内視鏡に搭載されている撮像素子の高画素化を考慮すると、倍率色収差を含めた諸収差が補正されて良好な光学性能を有することも求められる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、小型に構成され、広角でありながら、倍率色収差を含む諸収差が抑えられて良好な光学性能を実現可能な内視鏡用対物レンズ、およびこの内視鏡用対物レンズを備えた内視鏡を提供することを目的とするものである。
本発明の内視鏡用対物レンズは、物体側から順に、前群と、開口絞りと、全体として正の屈折力を有する後群とからなり、前群が、物体側から順に、物体側の面の曲率半径の絶対値よりも像側の面の曲率半径の絶対値が小さい負の屈折力を有する第1レンズと、少なくとも1枚の平行平面板とからなり、後群が、物体側から順に、正の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、負の屈折力を有する第4レンズとから実質的になり、第3レンズと第4レンズは接合されて接合レンズを構成し、接合レンズの接合面は像側に凸面を向けており、下記条件式(1)、(2a)、(3)全てを満足するものである。

−0.9<f/f1≦−0.767 (2a)
−2.9<Dsc/RC<−1 (3)
ただし、
fは全系の焦点距離、
kは前群が有する平行平面板の総数、
iは1からkまでの自然数、
tiは前群の物体側からi番目の平行平面板の光軸上の厚み、
Ndiは前群の物体側からi番目の平行平面板のd線に対する屈折率、
νdiは前群の物体側からi番目の平行平面板のd線基準のアッベ数、
f1は第1レンズの焦点距離、
Dscは開口絞りから接合レンズの接合面までの光軸上の距離、
RCは接合レンズの接合面の曲率半径
である。
本発明の内視鏡用対物レンズにおいては、下記条件式(1−1)を満足することが好ましい。
本発明の内視鏡用対物レンズにおいては、下記条件式(2−1a)を満足することが好ましい。
−0.8<f/f1≦−0.767 (2−1a)
本発明の内視鏡用対物レンズにおいては、下記条件式(3−1)を満足することが好ましい。
−2.7<Dsc/RC<−1.2 (3−1)
本発明の内視鏡用対物レンズにおいては、下記条件式(4)を満足することが好ましく、下記条件式(4−1)を満足することがより好ましい。
ただし、k、i、Ndi、tiの記号の意味は上述したものと同じであり、mmは長さの単位のミリメートルである。
本発明の内視鏡用対物レンズにおいては、下記条件式(5)を満足することが好ましく、下記条件式(5−1)を満足することがより好ましい。
ただし、f、k、i、Ndi、tiの記号の意味は上述したものと同じである。
本発明の内視鏡用対物レンズにおいては、第1レンズおよび最も物体側の平行平面板は、最も物体側の平行平面板より像側の光学部材に対して分離可能に構成されていることが好ましい。
また、本発明の内視鏡用対物レンズにおいては、第1レンズは平面部を有し、平面部と最も物体側の平行平面板とが光軸方向に当接していることが好ましい。その場合は、下記条件式(6)を満足することが好ましく、下記条件式(6−1)を満足することがより好ましい。
0.4<(R2−D2)/f<1 (6)
0.5<(R2−D2)/f<0.85 (6−1)
ただし、
R2:第1レンズの像側のレンズ面の曲率半径
D2:第1レンズと最も物体側の平行平面板との光軸上の空気間隔
本発明の内視鏡用対物レンズにおいては、前群が有する平行平面板は2枚のみとしてもよい。
本発明の内視鏡は、本発明の内視鏡用対物レンズを備えたものである。
なお、上記の「〜から実質的になり」の「実質的に」とは、構成要素として挙げたもの以外に、実質的にパワーを有さないレンズ、絞りやカバーガラス等レンズ以外の光学要素、レンズフランジ、レンズバレル等を含んでもよいことを意図するものである。
なお、上記の屈折力の符号、面形状、曲率半径は、非球面が含まれているものについては近軸領域で考えるものとする。曲率半径の符号は、物体側に凸面を向けた形状のものを正とし、像側に凸面を向けた形状のものを負とすることにする。また、上記の焦点距離はd線(波長587.6nm)に対するものである。
本発明によれば、レンズ枚数を4枚とし、平行平面板を含むレンズ系において、各光学要素の構成を好適に設定し、さらに、平行平面板の材料と厚み、最も物体側のレンズの焦点距離、接合レンズの接合面等に関する条件式を満足するようにしているため、小型に構成され、広角でありながら、倍率色収差を含む諸収差が抑えられて良好な光学性能を実現可能な内視鏡用対物レンズ、およびこの内視鏡用対物レンズを備えた内視鏡を提供することができる。
本発明の実施例1の内視鏡用対物レンズの構成と光路を示す断面図である。 本発明の実施例2の内視鏡用対物レンズの構成と光路を示す断面図である。 本発明の実施例3の内視鏡用対物レンズの構成と光路を示す断面図である。 本発明の実施例4の内視鏡用対物レンズの構成と光路を示す断面図である。 本発明の実施例5の内視鏡用対物レンズの構成と光路を示す断面図である。 図1の内視鏡用対物レンズの一部を分離可能にした一構成例を示す断面図である。 本発明の実施例1の内視鏡用対物レンズの各収差図であり、左から順に、球面収差、非点収差、歪曲収差、倍率色収差を示す。 本発明の実施例2の内視鏡用対物レンズの各収差図であり、左から順に、球面収差、非点収差、歪曲収差、倍率色収差を示す。 本発明の実施例3の内視鏡用対物レンズの各収差図であり、左から順に、球面収差、非点収差、歪曲収差、倍率色収差を示す。 本発明の実施例4の内視鏡用対物レンズの各収差図であり、左から順に、球面収差、非点収差、歪曲収差、倍率色収差を示す。 本発明の実施例5の内視鏡用対物レンズの各収差図であり、左から順に、球面収差、非点収差、歪曲収差、倍率色収差を示す。 本発明の実施形態に係る内視鏡の概略構成を示す図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1〜図5は、本発明の実施形態に係る内視鏡用対物レンズの構成と光路を示す断面図であり、それぞれ後述の実施例1〜5に対応している。図1〜図5に示す例の基本構成や図示方法は同様であるため、以下では主に図1に示す例を参照しながら説明する。図1では、左側が物体側、右側が像側であり、光路は軸上光束2および最大画角の軸外光束3について示し、最大全画角の半値ωも図示している。
この内視鏡用対物レンズは、光軸Zに沿って物体側から順に、全体として負の屈折力を有する前群GFと、開口絞りStと、全体として正の屈折力を有する後群GRとからなる。このように物体側から順に負レンズ群、正レンズ群を配置することでレトロフォーカスタイプの屈折力配置となり、広角化を図ることができる。
図1では後群GRと像面Simとの間に入射面と出射面が平行の光学部材4を配置した例を示している。光学部材4は、光路を折り曲げるための光路変換プリズムおよびフィルタやカバーガラス等を想定したものであり、本発明においては光学部材4を省略した構成も可能である。なお、光路変換プリズムを用いた場合は屈曲光路となるが、理解を容易にするために図1では光路を展開した図を示している。
前群GFは、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズL1と、少なくとも1枚の平行平面板とからなるように構成される。図1の前群GFは、第1レンズL1と、2枚の平行平面板P1、P2とからなる。
第1レンズL1は、物体側の面の曲率半径の絶対値よりも像側の面の曲率半径の絶対値が小さくなるように構成されており、このような形状とすることで広角化に有利となる。
この内視鏡用対物レンズでは開口絞りStより物体側に平行平面板を配置することで、周辺画角の光線が第1レンズL1の物体側の面と交わる点の光軸Zからの高さを低くすることができ、第1レンズL1の小径化に有利となる。また、平行平面板によるF線(波長486.1nm)とC線(波長656.3nm)の光路長差により倍率色収差を補正する効果も得られる。平行平面板は上記作用を持ちながら近軸屈折力が無いため、偏心した場合に光学性能に与える影響はレンズに比べ小さい。具体的には、平行平面板は、平行偏心しても像の劣化が生じることは無く、傾き誤差の許容量はレンズに比べ大きくすることができる。このため、組み立てが容易であり、良好な光学性能の実現に貢献できる。なお、ここでいう平行偏心とは光軸Zに垂直な方向の移動を意味し、傾きとは光軸Zを含む断面内での回転を意味する。
後群GRは全体として正の屈折力を有するレンズ群であり、これにより全系の屈折力を正に保つことが可能となる。後群GRは、物体側から順に、正の屈折力を有する第2レンズL2と、正の屈折力を有する第3レンズL3と、負の屈折力を有する第4レンズL4とから実質的になり、第3レンズL3と第4レンズL4は接合されて接合レンズCEを構成する。
後群GRの正の屈折力を上記のように2つに分割することで、球面収差、歪曲収差の補正に有効となる。また、接合レンズCEを像側に配置することにより、接合レンズCEの接合面での周辺光線の高さが高くなり、倍率色収差と軸上色収差の良好な補正を両立させることが容易となる。
接合レンズCEの接合面は像側に凸面を向けた形状となるように構成される。これにより、非点収差の発生を抑制でき、また、球面収差の補正が容易となる。
この内視鏡用対物レンズは、下記条件式(1)〜(3)全てを満足するように構成される。
−0.9<f/f1<−0.5 (2)
−2.9<Dsc/RC<−1 (3)
ただし、
fは全系の焦点距離、
kは前群が有する平行平面板の総数、
iは1からkまでの自然数、
tiは前群の物体側からi番目の平行平面板の光軸上の厚み、
Ndiは前群の物体側からi番目の平行平面板のd線に対する屈折率、
νdiは前群の物体側からi番目の平行平面板のd線基準のアッベ数、
f1は第1レンズの焦点距離、
Dscは開口絞りから接合レンズの接合面までの光軸上の距離、
RCは接合レンズの接合面の曲率半径
である。
前群GFの物体側からi番目の平行平面板のF線、C線に関する屈折率をそれぞれNFi、NCiとすると、条件式(1)の物理量は以下のように書き換えることができる。
上式からわかるように、条件式(1)は平行平面板によるF線とC線の光路長差を全系の焦点距離で規格化した値の好適な範囲を示すものである。F線の入射瞳位置はC線の入射瞳位置より物体側になるため、第1レンズL1におけるF線の主光線の高さがC線の主光線の高さより低くなる。条件式(1)の下限以下にならないようにすることで、第1レンズL1によって発生する倍率色収差を補正することができ、広角化に有利となる。一般に、高屈折率かつ高分散の光学材料は短波長の光を吸収しやすいという性質、すなわち、着色度が悪いという性質を有するが、条件式(1)の上限以上にならないようにすることで、着色度が悪い材料を避けたり、平行平面板の厚みを薄くしたりすることができ、光学材料の着色による短波長領域の光線の吸収量を抑制することができる。
条件式(2)は第1レンズL1の屈折力に関する式である。条件式(2)の下限以下にならないようにすることで、第1レンズL1の屈折力を抑えることができ、バックフォーカス、レンズ系全長が長くなるのを防ぐことができる。また、条件式(2)の下限以下にならないようにすることで、倍率色収差を抑えることができるとともに、第1レンズL1の平行偏心の許容量、傾き誤差の許容量を大きくすることができる。条件式(2)の上限以上にならないようにすることで、前群GFから後群GRに入射する周辺画角の主光線の光軸Zに対する角度を減じることができ、広角化に有利となる。
条件式(3)は接合レンズCEに関する式である。条件式(3)の下限以下にならないようにすることで、軸上色収差の補正およびレンズ系全長の短縮に有利となり、また、高画角で非点収差が補正過剰になるのを防ぐことができ広角化に有利となる。条件式(3)の上限以上にならないようにすることで、倍率色収差の補正に有利となる。
広角のレンズ系においてレンズ枚数を抑えて小型に構成するためには倍率色収差の補正が重要になる。条件式(1)を満足するように開口絞りStより物体側に配置する平行平面板の厚さおよび分散を適切に選択すること、条件式(2)を満足するように第1レンズL1の屈折力を適切な範囲内に保つこと、条件式(3)を満足するように開口絞りStより像側の接合面の位置と曲率半径を適切に選択すること、の3つの事項によって少ないレンズ枚数で倍率色収差を良好に抑えることができる。
なお、条件式(1)に関する上記効果をさらに高めるためには下記条件式(1−1)を満足することが好ましい。
条件式(2)に関する上記効果をさらに高めるためには下記条件式(2−1)を満足することが好ましい。
−0.8<f/f1<−0.6 (2−1)
条件式(3)に関する上記効果をさらに高めるためには下記条件式(3−1)を満足することが好ましい。
−2.7<Dsc/RC<−1.2 (3−1)
なお、前群GFが有する平行平面板の数は任意に選択可能である。また、同一材料の平行平面板については、厚さの総和が等しければ、近軸諸量、収差図等には何ら影響を与えないため、平行平面板の厚さの総和が重要であり、各々の平行平面板の厚さの比は重要ではない。従って、同一材料の平行平面板については、平行平面板の厚さの総和が維持されていれば、枚数や厚さを自由に変更可能であり、例えば機械部品の構造や配置にとって好適となるように枚数や厚さを適宜変更してもよい。図1の平行平面板P1、P2は同一材料からなるものであり、この図1の2枚の平行平面板P1、P2を1枚の平行平面板P12で置換した例が図5に示す例である。平行平面板P12と平行平面板P1、P2とは同一材料からなり、平行平面板P12の厚さは平行平面板P1、P2の厚さの総和と同じである。
前群GFが有する複数の平行平面板は互いに異なる材料で構成することも可能であり、図2の平行平面板P1、P2は互いに異なる材料からなる。異なる材料の複数の平行平面板については、多少のパラメータを変更して近軸諸量、諸収差を調整することにより各平行平面板の厚さを変更することが可能である。
この内視鏡用対物レンズは、さらに下記条件式(4)を満足することが好ましい。
ただし、k、i、Ndi、tiの記号の意味は上述したものと同じであり、mmは長さの単位のミリメートルである。光学材料における光線の吸収量が問題となるため、条件式(4)は単位を有する式となる。
条件式(4)の下限以下にならないようにすることで、第1レンズL1の有効径を小さくすることができる。条件式(4)の上限以上にならないようにすることで、光学材料の着色による短波長領域の光線の吸収量を抑制することができる。
条件式(4)に関する上記効果をさらに高めるためには下記条件式(4−1)を満足することがより好ましい。
また、この内視鏡用対物レンズは、下記条件式(5)を満足することが好ましい。
ただし、f、k、i、Ndi、tiの記号の意味は上述したものと同じである。
条件式(5)の下限以下にならないようにすることで、歪曲収差を良好に補正することができる。条件式(5)の上限以上にならないようにすることで、レンズ系全長が長くなるのを抑制することができる。
条件式(5)に関する上記効果をさらに高めるためには下記条件式(5−1)を満足することがより好ましい。
また、この内視鏡用対物レンズは、第1レンズL1および最も物体側の平行平面板が、最も物体側の平行平面板より像側の光学部材に対して分離可能な構成とされていることが好ましい。図6にこのように構成した例の断面図を示す。図6に示す内視鏡用対物レンズ1のレンズ構成は、図1に示す内視鏡用対物レンズのものと同じである。図6では理解を容易にするため第1レンズL1〜第4レンズL4、平行平面板P1、P2に斜線を付している。
図6の例では、第1レンズL1と平行平面板P1とが第1レンズユニット10を構成し、平行平面板P2と開口絞りStと第2レンズL2と第3レンズL3と第4レンズL4とが第2レンズユニット20を構成し、第1レンズユニット10と第2レンズユニット20とが内視鏡用対物レンズ1を構成している。
第1レンズユニット10は第1鏡筒11内に固定されており、第2レンズユニット20は第2鏡筒21内に固定されている。平行平面板P2と第2レンズL2の間には間隔調整部材22が配置され、第2レンズL2と第3レンズL3の間には間隔調整部材23が配置されている。第2鏡筒21は第3鏡筒31内に固定されており、第3鏡筒31の像側端部には光路変換プリズム30が当接され、光路変換プリズム30の出射面には固体撮像素子8が接合されている。固体撮像素子8としては例えばCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等を用いることができる。
第1鏡筒11の像側の嵌合部11a内部には第2鏡筒21の物体側の嵌合部21aが嵌合されている。第2鏡筒21の外周には、第1鏡筒11の像側端部と隙間を置いて対向する位置にフランジ部21bが設けられている。第1鏡筒11の像側端部とフランジ部21bの間に接着剤ADが充填され、第1鏡筒11と第2鏡筒21が互いに接着されている。
接着剤ADは、例えば溶剤や熱や光といった外部刺激によって解体可能な接着剤であり、第1鏡筒11は第2鏡筒21に対し分離可能とされている。このような構成を採ることで第1レンズユニット10は第2レンズユニット20に対し分離可能となる。第1レンズL1に汚損や破損が生じた場合には、接着剤ADを解体除去して第1鏡筒11を第2鏡筒21から取り外し、第1レンズユニット10および第1鏡筒11を一体的に交換することが可能である。
最も物体側に配置されて外部に露出する第1レンズL1は、使用に伴って汚損し、また破損する可能性がある。第1レンズL1に汚損や破損が生じた場合に、内視鏡用対物レンズが分離不能に一体に構成されているものでは内視鏡用対物レンズ全体の交換となり、修理費用が嵩む。これに対し、本実施形態のように物体側の一部の光学部材のみが交換可能に構成された内視鏡用対物レンズ1では、交換にかかる費用を抑えることができる。交換される光学部材の数は少ない方がコスト的に有利であり、本実施形態では第1レンズL1と平行平面板P1のみとすることにより、交換される光学部材の数を抑えている。
なお、交換により新たな第1レンズユニット10を第2レンズユニット20に結合する際に微小な偏心が生じる虞がある。しかし、本実施形態では、第1レンズユニット10を構成する2つの光学部材のうち1つを平行平面板としており、上述したように平行平面板の偏心による光学性能への影響はレンズに比べ小さいため、第1レンズユニット10を2つのレンズで構成したものに比べ、交換時の偏心による光学性能の劣化を少なくすることができる。
また、平行平面板P1は第1レンズユニット10の像側を封止することができるため、第1レンズユニット10と第2レンズユニット20とを分離させた際に取り扱いが容易になり、ゴミや汚れ等を除去して清掃することが容易になる。同様に、平行平面板P2は第2レンズユニット20の物体側を封止することができるため、第1レンズユニット10と第2レンズユニット20とを分離させた際に取り扱いが容易になり、メンテナンスが容易になる。また、第2レンズユニット20の最も物体側の光学部材を平行平面板P2としているため、第1レンズユニット10と第2レンズユニット20とを分離させた際に作業者が開口絞りStに接触することを回避できる。
第1レンズL1および最も物体側の平行平面板が、最も物体側の平行平面板より像側の光学部材に対して分離可能な構成とする場合は、前群GFが有する平行平面板は2枚のみとすることが好ましい。このようにした場合は、部品点数を必要最小限に抑えながら、各々の平行平面板により第1レンズL1の像側、第2レンズL2の物体側それぞれを封止することができ、取り扱いが容易になり、メンテナンスが容易になる。
ここで、第1レンズL1は有効径より径方向外側に平面部を有し、平面部と最も物体側の平行平面板とが光軸方向に当接していることが好ましい。図6に示す第1レンズL1はその像側の面に、凹形状のレンズ面L1aより径方向外側に光軸Zに垂直な平面部L1bを有し、平面部L1bと平行平面板P1とが光軸方向に当接した状態で第1レンズL1と平行平面板P1とが接合剤12により接合されて第1鏡筒11内に固定されている。
このように第1レンズL1の平面部L1bと平行平面板P1を当接させた場合は、第1レンズL1の傾きが発生するのを防ぐことができ、製造誤差による性能劣化を軽減できる。また、平面部L1bを全周にわたって設け接合剤12を全周にわたって施した場合には、第1レンズL1の像側のレンズ面L1aと平行平面板P1によって形成される空間Sを他の部材を用いずに封止して気密に保つことができる。内視鏡用対物レンズ1は、例えば外部に露出する第1レンズL1の物体側の面に付着した汚れを除去するための送水などによって冷却されるが、空間Sを気密とすることにより、空間Sへの湿気の浸入を抑制し、結露の発生を抑制することができる。
第1レンズL1の平面部L1bと平行平面板P1を当接させる場合は、下記条件式(6)を満足することが好ましい。
0.4<(R2−D2)/f<1 (6)
ただし、
R2:第1レンズの像側のレンズ面の曲率半径
D2:第1レンズと最も物体側の平行平面板との光軸上の空気間隔
条件式(6)の(R2−D2)が0より大きな値をとれば、第1レンズの像側のレンズ面が球面の場合は平面部L1bと平行平面板P1との当接が可能となる。条件式(6)の下限以下にならないようにすることで、上記当接を行う際の生産性をより高いものとすることができ、また、コストの点でも有利となる。条件式(6)の上限以上にならないようにすることで、第1レンズL1の物体側の面に大きな屈折力を持たせずに第1レンズL1に十分な屈折力を持たせることができ、広角化に有利となる。
以上述べた好ましい構成や可能な構成は、任意の組合せが可能であり、要求される仕様に応じて適宜選択的に採用されることが好ましい。上記構成を適宜採用することにより、小型で、広角でありながら、倍率色収差を含む諸収差が抑えられて良好な光学性能を有する内視鏡用対物レンズを実現することができる。なお、ここでいう広角とは、最大全画角が130°以上のことを意味する。
次に、本発明の内視鏡用対物レンズの数値実施例について説明する。
[実施例1]
実施例1の内視鏡用対物レンズのレンズ構成と光路は図1に示したものであり、その図示方法については上述したとおりであるので、ここでは重複説明を省略する。表1に実施例1の内視鏡用対物レンズの基本レンズデータを示す。表1のSno.の欄には最も物体側の構成要素の面を1番目として像側に向かうに従い順次増加する面番号を示し、Rの欄には各面の曲率半径を示し、Dの欄には各面とその像側直後の面との光軸Z上の間隔を示す。また、Ndの欄には各構成要素のd線(波長587.6nm)に対する屈折率を示し、νdの欄には各構成要素のd線基準のアッベ数を示す。
曲率半径の符号は、物体側に凸面を向けた面形状のものを正とし、像側に凸面を向けた面形状のものを負としている。表1の第7面は開口絞りStに対応する面であり、面番号の欄には面番号と(St)という語句を記載している。表1の第13面〜第16面は光学部材4に対応する面であり、そのうち第13面〜第15面は光路変換プリズムを示す。Dの最下欄の値は光学部材4の像側の面と像面Simとの間隔である。
表1の枠外上部には、物体距離(第1レンズL1の物体側の面から物体までの光軸上の距離)OB、全系の焦点距離f、空気換算長でのバックフォーカスBf、FナンバーFNo.、最大全画角2ωをd線基準で示す。図1の光路、表1のDの最下欄の値、後述の収差図は、物体距離が表1に示す値の場合のものである。
以下に示す各表では、角度の単位には度を用い、長さの単位にはmmを用いているが、光学系は比例拡大又は比例縮小しても使用可能なため他の適当な単位を用いることも可能である。また、以下に示す各表では所定の桁でまるめた数値を記載している。
図7に左から順に、実施例1の内視鏡用対物レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差(ディストーション)、倍率色収差(倍率の色収差)の各収差図を示す。球面収差図では、d線(波長587.6nm)、C線(波長656.3nm)、F線(波長486.1nm)、g線(波長435.8nm)に関する収差をそれぞれ黒の実線、長破線、短破線、灰色の実線で示す。非点収差図では、サジタル方向、タンジェンシャル方向のd線に関する収差をそれぞれ実線、短破線で示す。歪曲収差図ではd線に関する収差を実線で示す。倍率色収差図では、C線、F線、g線に関する収差をそれぞれ長破線、短破線、灰色の実線で示す。球面収差図のFNo.はFナンバーを意味し、その他の収差図のωは半画角を意味する。
上記の実施例1の説明で述べた各データの記号、意味、記載方法は、特に断りがない限り以下の実施例のものについても同様であるため、以下では重複説明を省略する。
[実施例2]
実施例2の内視鏡用対物レンズのレンズ構成図と光路は図2に示したものである。実施例2の内視鏡用対物レンズの基本レンズデータを表2に示し、各収差図を図8に示す。
[実施例3]
実施例3の内視鏡用対物レンズのレンズ構成図と光路は図3に示したものである。実施例3の内視鏡用対物レンズの基本レンズデータを表3に示し、各収差図を図9に示す。
[実施例4]
実施例4の内視鏡用対物レンズのレンズ構成図と光路は図4に示したものである。実施例4の内視鏡用対物レンズの基本レンズデータを表4に示し、各収差図を図10に示す。表4の面番号に*印が付いた面は非球面であり、曲率半径の欄には近軸曲率半径の数値を示している。表5にこれら非球面の非球面係数を示す。表5の非球面係数の数値の「E−n」(n:整数)は「×10−n」を意味する。非球面係数は、下式で表される非球面式における各係数KA、Am(m=4、6、8、10)の値である。
ただし、
Zd:非球面深さ(高さhの非球面上の点から、非球面頂点が接する光軸に垂直な平面に下ろした垂線の長さ)
h:高さ(光軸からのレンズ面までの距離)
C:近軸曲率
KA、Am:非球面係数(m=4、6、8、10)
[実施例5]
実施例5の内視鏡用対物レンズのレンズ構成図と光路は図5に示したものである。実施例5の第1レンズL1〜第4レンズL4は実施例1のものと同じであり、実施例1の2枚の平行平面板P1、P2の代わりに実施例5では1枚の平行平面板P12を用いている。実施例5の内視鏡用対物レンズの基本レンズデータを表6に示し、各収差図を図11に示す。
表7に、実施例1〜5の内視鏡用対物レンズの条件式(1)〜(6)の対応値を示す。表7のデータはd線に対するものである。
以上のデータからわかるように、実施例1〜5の内視鏡用対物レンズは、全系が有するレンズは4枚のみであり、全系が有する平行平面板は1枚または2枚であり、小型に構成され、全画角が130°〜140°の範囲にあり広角のレンズ系を実現しながら、倍率色収差を含む諸収差が良好に補正されて高い光学性能を達成している。
次に、本発明の内視鏡用対物レンズが適用される内視鏡の実施形態について図12を参照しながら説明する。図12にその内視鏡の概略的な全体構成図を示す。図12に示す内視鏡100は、主として、操作部102と、挿入部104と、コネクタ部(不図示)と接続されるユニバーサルコード106とを備える。挿入部104の大半は挿入経路に沿って任意の方向に曲がる軟性部107であり、この軟性部107の先端には湾曲部108が連結され、この湾曲部108の先端には先端部110が連結されている。湾曲部108は、先端部110を所望の方向に向けるために設けられるものであり、操作部102に設けられた湾曲操作ノブ109を回動させることにより湾曲操作が可能となっている。先端部110の内部先端に本発明の実施形態に係る内視鏡用対物レンズ1が配設される。図12では内視鏡用対物レンズ1を概略的に図示している。本実施形態の内視鏡は内視鏡用対物レンズ1を備えているため、先端部110の小型化を図ることが可能であり、広角で、良好な画像を取得することができる。
以上、実施形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、各レンズの曲率半径、面間隔、屈折率、アッベ数、非球面係数は、上記実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得るものである。同様に、前群GFが有する平行平面板の数、厚さ、屈折率も上記実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得るものである。
また、第1レンズL1と最も物体側の平行平面板とが他の光学部材に対して分離可能にした構成について図6を参照しながら説明したが、この構成に用いる機構部材は上記実施形態に限定されず、種々の態様の変更が可能である。
1 内視鏡用対物レンズ
2 軸上光束
3 軸外光束
4 光学部材
8 固体撮像素子
10 第1レンズユニット
11 第1鏡筒
11a、21a 嵌合部
12 接合剤
20 第2レンズユニット
21 第2鏡筒
21b フランジ部
22、23 間隔調整部材
30 光路変換プリズム
31 第3鏡筒
100 内視鏡
102 操作部
104 挿入部
106 ユニバーサルコード
107 軟性部
108 湾曲部
109 湾曲操作ノブ
110 先端部
AD 接着剤
CE 接合レンズ
GF 前群
GR 後群
L1 第1レンズ
L1a レンズ面
L1b 平面部
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
L4 第4レンズ
P1、P2、P12 平行平面板
S 空間
Sim 像面
St 開口絞り
Z 光軸

Claims (14)

  1. 物体側から順に、前群と、開口絞りと、全体として正の屈折力を有する後群とからなり、
    前記前群が、物体側から順に、物体側の面の曲率半径の絶対値よりも像側の面の曲率半径の絶対値が小さい負の屈折力を有する第1レンズと、少なくとも1枚の平行平面板とからなり、
    前記後群が、物体側から順に、正の屈折力を有する第2レンズと、正の屈折力を有する第3レンズと、負の屈折力を有する第4レンズとから実質的になり、
    前記第3レンズと前記第4レンズは接合されて接合レンズを構成し、該接合レンズの接合面は像側に凸面を向けており、
    下記条件式(1)、(2a)、(3)全てを満足することを特徴とする内視鏡用対物レンズ。

    −0.9<f/f1≦−0.767 (2a)
    −2.9<Dsc/RC<−1 (3)
    ただし、
    fは全系の焦点距離、
    kは前記前群が有する前記平行平面板の総数、
    iは1からkまでの自然数、
    tiは前記前群の物体側からi番目の前記平行平面板の光軸上の厚み、
    Ndiは前記前群の物体側からi番目の前記平行平面板のd線に対する屈折率、
    νdiは前記前群の物体側からi番目の前記平行平面板のd線基準のアッベ数、
    f1は前記第1レンズの焦点距離、
    Dscは前記開口絞りから前記接合レンズの前記接合面までの光軸上の距離、
    RCは前記接合レンズの前記接合面の曲率半径
    である。
  2. 下記条件式(4)を満足する請求項1記載の内視鏡用対物レンズ。

    ただし、mmは長さの単位のミリメートルである。
  3. 下記条件式(5)を満足する請求項1または2記載の内視鏡用対物レンズ。
  4. 前記第1レンズおよび最も物体側の前記平行平面板は、該最も物体側の平行平面板より像側の光学部材に対して分離可能に構成されている請求項1から3のいずれか1項記載の内視鏡用対物レンズ。
  5. 前記第1レンズは平面部を有し、該平面部と最も物体側の前記平行平面板とが光軸方向に当接している請求項4記載の内視鏡用対物レンズ。
  6. 下記条件式(6)を満足する請求項5記載の内視鏡用対物レンズ。
    0.4<(R2−D2)/f<1 (6)
    ただし、
    R2:前記第1レンズの像側のレンズ面の曲率半径
    D2:前記第1レンズと最も物体側の前記平行平面板との光軸上の空気間隔
  7. 前記前群が有する平行平面板は2枚のみである請求項4から6のいずれか1項記載の内視鏡用対物レンズ。
  8. 下記条件式(1−1)を満足する請求項1から7のいずれか1項記載の内視鏡用対物レンズ。
  9. 下記条件式(2−1a)を満足する請求項1から8のいずれか1項記載の内視鏡用対物レンズ。
    −0.8<f/f1≦−0.767 (2−1a)
  10. 下記条件式(3−1)を満足する請求項1から9のいずれか1項記載の内視鏡用対物レンズ。
    −2.7<Dsc/RC<−1.2 (3−1)
  11. 下記条件式(4−1)を満足する請求項1から10のいずれか1項記載の内視鏡用対物レンズ。

    ただし、mmは長さの単位のミリメートルである。
  12. 下記条件式(5−1)を満足する請求項1から11のいずれか1項記載の内視鏡用対物レンズ。
  13. 下記条件式(6−1)を満足する請求項6記載の内視鏡用対物レンズ。
    0.5<(R2−D2)/f<0.85 (6−1)
  14. 請求項1から13のいずれか1項記載の内視鏡用対物レンズを備えた内視鏡。
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