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JP6497998B2 - 封止用シートおよびパッケージの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、封止用シートおよびパッケージに関する。
熱硬化後の25℃における引張弾性率が1×107〜1×109Paであるシートが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2009−91389号公報
図17、図18に示すように、デバイス実装体502およびデバイス実装体502上に配置されたシート状の熱硬化性組成物511を有する積層体531を加圧して、基板522、基板522に実装された電子デバイス523および電子デバイス523を覆う熱硬化性組成物511を有する封止体532を形成する工程、封止体532を加熱する工程などを有する方法などにより、パッケージを製造できる。デバイス実装体502は、基板522および基板522に実装された電子デバイス523を有する。
熱硬化性組成物511を硬化させる工程の後に熱硬化性組成物511を硬化させることにより形成された硬化物が熱収縮するため、基板522に反りが生じることがある。基板522の反りは搬送不良を引き起こす。
基板522の反りを低減する技術として、熱硬化性組成物511中の無機充填剤の含有量を高めることにより、硬化物の線膨張係数を基板522の線膨張係数に近づける技術がある。しかしながら、無機充填剤の含有量を高めることにより硬化物の貯蔵弾性率が増加するため、依然として基板522に反りが生じることがある。
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、基板の反りを低減できる封止用シートを提供することである。また、本発明の目的は、基板の反りを低減できるパッケージの製造方法を提供することである。
本発明は封止用シートに関する。封止用シートがシート状をなす熱硬化性組成物を備える。熱硬化性組成物が無機充填剤および残余成分を含む。残余成分がアクリルポリマーを含む。残余成分中のアクリルポリマーの含有量は65重量%以上である。熱硬化性組成物中の無機充填剤の含有量は55体積%以上である。熱硬化性組成物を硬化させることにより得られる硬化物の25℃における貯蔵弾性率は5×10Pa〜5×10Paである。
残余成分中のアクリルポリマーの含有量は65重量%以上、熱硬化性組成物中の無機充填剤の含有量は55体積%以上であることにより、熱硬化性組成物を硬化させることにより得られる硬化物の25℃における貯蔵弾性率を5×10Pa以下とすることが可能で、しかも硬化物の線膨張係数を基板の線膨張係数に近づけることができる。したがって、基板の反りを効果的に低減できる。
本発明はまた、デバイス実装体およびデバイス実装体上に配置された熱硬化性組成物を備える積層体を加圧する工程を含むパッケージの製造方法に関する。デバイス実装体が、基板および基板に実装された電子デバイスを備える。
実施形態1に係る封止用シートの概略断面図である。 硬化物の断面のTEM観察像である。下段の観察像は、上段の観察像の部分拡大像である。 硬化物の断面のAFM位相像である。海島構造を鮮明に示すために、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリルポリマーおよび硬化促進剤を有し、フィラーおよび顔料を有さない熱硬化性組成物を硬化して得られた硬化物を観察した。 硬化物の断面のTEM観察像である。海島構造を鮮明に示すために、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリルポリマーおよび硬化促進剤を有し、フィラーおよび顔料を有さない熱硬化性組成物を硬化して得られた硬化物を観察した。 積層体などの概略断面図である。 積層体を熱プレスする工程の概略断面図である。 構造体の概略断面図である。 パッケージの概略断面図である。 SAWフィルタ製造工程の概略断面図である。 SAWフィルタ製造工程の概略断面図である。 SAWフィルタ製造工程の概略断面図である。 SAWフィルタ製造工程の概略断面図である。 SAWフィルタ製造工程の概略断面図である。 変形例1に係る封止用シートの概略断面図である。 試験用積層体の正面概略図である。 試験用積層体の正面概略図である。 パッケージ製造工程の概略断面図である。 パッケージ製造工程の概略断面図である。
以下に実施形態を掲げ、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
[実施形態1]
(封止用シート1)
封止用シート1について説明する。
図1に示すように、封止用シート1がシート状をなす熱硬化性組成物11を備える。封止用シート1がセパレーター12をさらに備える。具体的には、封止用シート1が、セパレーター12およびセパレーター12上に配置された熱硬化性組成物11を備える。セパレーター12としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどが挙げられる。セパレーター12は、好ましくは離型処理が施されたものである。
熱硬化性組成物11は、無機充填剤および残余成分を含む。
残余成分としては、樹脂成分、硬化促進剤、顔料などが挙げられる。
樹脂成分としては、アクリルポリマー、熱硬化性樹脂などが挙げられる。
熱硬化性組成物11において、アクリルポリマーと熱硬化性樹脂が相溶していることが好ましい。相溶していると、熱硬化性樹脂の偏析やアクリルポリマーの偏析が生じないので、基板の反りを低減できる。なお、アクリルポリマーと熱硬化性樹脂が相溶しているとは、透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察される観察像において、アクリルポリマーと熱硬化性樹脂の相分離構造が観察されないことをいう。
アクリルポリマーは、可とう性が得やすく、エポキシ樹脂との分散性が良好であるから好ましい。なかでも、熱可塑性アクリルポリマーが好ましい。
アクリルポリマーとしては、特に限定されるものではなく、炭素数30以下、特に炭素数4〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステルの1種又は2種以上を成分とする重合体(アクリル共重合体)などが挙げられる。アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、へプチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ラウリル基、トリデシル基、テトラデシル基、ステアリル基、オクタデシル基、又はドデシル基などが挙げられる。
また、重合体を形成する他のモノマーとしては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸若しくはクロトン酸などの様なカルボキシル基含有モノマー、無水マレイン酸若しくは無水イタコン酸などの様な酸無水物モノマー、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル若しくは(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレートなどの様なヒドロキシル基含有モノマー、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート若しくは(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などの様なスルホン酸基含有モノマー、又は2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどの様な燐酸基含有モノマーが挙げられる。なかでも、エポキシ樹脂と反応して、熱硬化性組成物11の粘度を高くできる観点から、カルボキシル基含有モノマー、グリシジル基(エポキシ基)含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマーうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。
アクリルポリマーは、官能基を有することが好ましい。海島構造を容易に形成できるという理由から、官能基としては、カルボキシル基(−COOH)、エポキシ基、水酸基、アミノ基、メルカプト基が好ましく、カルボキシル基がより好ましい。
アクリルポリマーの酸価は、好ましくは1mgKOH/g以上、より好ましくは3mgKOH/g以上、さらに好ましくは10mgKOH/g以上である。1mgKOH/g以上であると、ドメイン部を小さくすることが可能で、熱硬化性組成物11の流動を規制できる。一方、アクリルポリマーの酸価は、好ましくは100mgKOH/g以下、より好ましくは60mgKOH/g以下、さらに好ましくは50mgKOH/g以下、特に好ましくは40mgKOH/g以下である。100mgKOH/g以下であると、熱硬化性組成物11の保存安定性を比較的良好に保つことができる。
なお、酸価は、JIS K 0070−1992に規定される中和滴定法で測定できる。
アクリルポリマーの重量平均分子量は、好ましくは40万以上、より好ましくは50万以上である。40万以上であると、アクリルポリマーの粘度が低すぎないため、取り扱いが容易である。一方、アクリルポリマーの重量平均分子量は、好ましくは200万以下、より好ましくは150万以下である。200万以下であると、アクリルポリマーの粘度が高すぎないため、取り扱いが容易である。
なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値である。
アクリルポリマーのTgは、好ましくは−70℃以上、より好ましくは−60℃以上、さらに好ましくは−50℃以上である。−70℃以上であると、成型温度における熱硬化性組成物11の貯蔵弾性率が低すぎないため、熱硬化性組成物11の流動を制御しやすい。一方、アクリルポリマーのTgは、好ましくは20℃以下、より好ましくは0℃以下である。20℃以下であると、成型温度における熱硬化性組成物11の貯蔵弾性率が高すぎないため、熱硬化性組成物11の流動を制御しやすい。
本明細書において、アクリルポリマーのガラス転移温度は、Fox式により求めた理論値をいう。
また、ガラス転移温度を求める他の方法として、示差走査熱量計(DSC)によって測定される最大熱吸収ピーク時の温度により、アクリルポリマーのガラス転移温度を求める方法もある。具体的には、測定する試料を示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント社製の「Q−2000」)を用い、予測される試料のガラス転移温度(予測温度)より約50℃高い温度で10分加熱した後、予測温度より50℃低い温度まで冷却して前処理し、その後、窒素雰囲気下、昇温速度5℃/分にて昇温して吸熱開始点温度を測定し、これをガラス転移温度とする。
残余成分中のアクリルポリマーの含有量は65重量%以上である。好ましくは70重量%以上、より好ましくは75重量%以上である。一方、残余成分中のアクリルポリマーの含有量は、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下である。
熱硬化性樹脂としては特に限定されないが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではない。例えば、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂などの各種のエポキシ樹脂を用いることができる。これらエポキシ樹脂は単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。
エポキシ樹脂の反応性を確保する観点からは、エポキシ当量150〜250、軟化点もしくは融点が50〜130℃の常温で固形のものが好ましい。なかでも、信頼性の観点から、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂がより好ましい。また、熱硬化性組成物11に可撓性を付与できるという理由から、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。
フェノール樹脂は、エポキシ樹脂との間で硬化反応を生起するものであれば特に限定されるものではない。例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ビフェニルアラルキル樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂、レゾール樹脂などが用いられる。これらフェノール樹脂は単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
フェノール樹脂としては、エポキシ樹脂との反応性の観点から、水酸基当量が70〜250、軟化点が50〜110℃のものを用いることが好ましい。硬化反応性が高いという観点から、フェノールノボラック樹脂を好適に用いることができる。また、信頼性の観点から、フェノールアラルキル樹脂やビフェニルアラルキル樹脂のような低吸湿性のものも好適に用いることができる。
エポキシ樹脂とフェノール樹脂の配合割合は、硬化反応性という観点から、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、フェノール樹脂中の水酸基の合計が0.7〜1.5当量となるように配合することが好ましく、より好ましくは0.9〜1.2当量である。
残余成分中の熱硬化性樹脂の含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは17重量%以上、特に好ましくは20重量%以上である。一方、残余成分中の熱硬化性樹脂の含有量は、好ましくは55重量%以下、より好ましくは45重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下、特に好ましくは25重量%以下である。
硬化促進剤としては、エポキシ樹脂とフェノール樹脂の硬化を進行させるものであれば特に限定されず、例えば、2−メチルイミダゾール(商品名;2MZ)、2−ウンデシルイミダゾール(商品名;C11−Z)、2−ヘプタデシルイミダゾール(商品名;C17Z)、1,2−ジメチルイミダゾール(商品名;1.2DMZ)、2−エチル−4−メチルイミダゾール(商品名;2E4MZ)、2−フェニルイミダゾール(商品名;2PZ)、2−フェニル−4−メチルイミダゾール(商品名;2P4MZ)、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール(商品名;1B2MZ)、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール(商品名;1B2PZ)、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール(商品名;2MZ−CN)、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール(商品名;C11Z−CN)、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト(商品名;2PZCNS−PW)、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン(商品名;2MZ−A)、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン(商品名;C11Z−A)、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン(商品名;2E4MZ−A)、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物(商品名;2MA−OK)、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(商品名;2PHZ−PW)、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(商品名;2P4MHZ−PW)などのイミダゾール系硬化促進剤が挙げられる(いずれも四国化成工業(株)製)。
なかでも、硬化促進能力が良好であり高Tgの硬化物が得られるという理由からイミダゾール系硬化促進剤が好ましく、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンがより好ましく、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールがさらに好ましい。
硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂の合計100重量部に対して、好ましくは0.2重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上、さらに好ましくは0.8重量部以上である。硬化促進剤の含有量は、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂の合計100重量部に対して、好ましくは5重量部以下、より好ましくは2重量部以下である。
顔料としては特に限定されず、カーボンブラックなどが挙げられる。
無機充填剤としては、例えば、石英ガラス、タルク、シリカ(溶融シリカや結晶性シリカなど)、アルミナ(酸化アルミニウム)、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化珪素などが挙げられる。なかでも、熱膨張係数を良好に低減できるという理由から、シリカが好ましい。シリカとしては、流動性に優れるという理由から、溶融シリカが好ましく、球状溶融シリカがより好ましい。また、熱伝導率が高いという理由から、熱伝導性フィラーが好ましく、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウムがより好ましい。なお、無機充填剤としては、電気絶縁性のものが好ましい。
無機充填剤として、シリカ、アルミナなどを併用してもよい。
無機充填剤の平均粒子径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上である。0.5μm以上であると、熱硬化性組成物11の可撓性、柔軟性を得易い。フィラーの平均粒子径は、好ましくは30μm以下、より好ましくは10μm以下である。30μm以下であると、フィラーを高充填し易い。
なお、平均粒子径は、例えば、母集団から任意に抽出される試料を用い、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することにより導き出すことができる。
無機充填剤として、シランカップリング剤により予め処理された表面処理無機充填剤を使用することが好ましい。これにより、無機充填剤の樹脂成分に対する濡れ性を向上可能で、無機充填剤の分散性を高めることができる。無機充填剤として、表面処理無機充填剤とシランカップリング剤により予め処理されていない未処理無機充填剤を使用することが好ましい。
シランカップリング剤としては、例えば、メタクリロキシ基またはアクリロキシ基を有する化合物を好適に使用できる。メタクリロキシ基およびアクリロキシ基は熱硬化性樹脂と非反応である。メタクリロキシ基またはアクリロキシ基を有する化合物をシランカップリング剤として用いることにより、シランカップリング剤と熱硬化性樹脂が反応することによる熱硬化性組成物11の最低粘度の上昇を抑制できる。
メタクリロキシ基またはアクリロキシ基を有する化合物は、好ましくは炭素数1〜6のアルコキシ基をさらに有する。炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基などを挙げることができる。
メタクリロキシ基またはアクリロキシ基を有する化合物としては、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシオクチルトリメトキシシラン、メタクリロキシオクチルトリエトキシシランなどを挙げることができる。なかでも、反応性とコストの観点から、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
無機充填剤の粒度分布において、ピークAおよびピークBが少なくとも存在することが好ましい。具体的には、0.01μm〜10μmの粒径範囲にピークAが存在し、1μm〜100μmの粒径範囲にピークBが存在することが好ましい。ピークBを形成する無機充填剤の間に、ピークAを形成する無機充填剤を充填することが可能となるため、無機充填剤を高充填できる。
ピークAは0.1μm以上の粒径範囲に存在することがより好ましい。ピークAは1μm以下の粒径範囲に存在することがより好ましい。
ピークBは3μm以上の粒径範囲に存在することがより好ましい。ピークBは10μm以下の粒径範囲に存在することがより好ましい。
無機充填剤の粒度分布において、ピークAおよびピークB以外のピークCなどが存在してもよい。
なお、無機充填剤の粒度分布は、以下の方法で測定できる。
無機充填剤の粒度分布の測定方法
熱硬化性組成物11をるつぼに入れ、強熱して熱硬化性組成物11を灰化させる。得られた灰分を純水中に分散させて10分間超音波処理し、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、「LS 13 320」;湿式法)を用いて粒度分布(体積基準)を求める。
熱硬化性組成物11中の無機充填剤の含有量は、55体積%以上、より好ましくは60体積%以上、さらに好ましくは70体積%以上である。無機充填剤の含有量を高めることにより、硬化物の線膨張係数を基板の線膨張係数に近づけることが可能である。一方、熱硬化性組成物11中の無機充填剤の含有量は、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。85体積%以下であると、シート状に成型しやすい。
無機充填剤の含有量は、「重量%」を単位としても説明できる。代表的にシリカの含有量について、「重量%」を単位として説明する。
シリカの比重は通常、2.2g/cmであるので、シリカの含有量(重量%)の好適範囲は例えば以下のとおりである。
すなわち、熱硬化性組成物11中のシリカの含有量は、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上である。一方、熱硬化性組成物11中のシリカの含有量は、好ましくは90重量%以下、より好ましくは85重量%以下である。
アルミナの比重は通常、3.9g/cmであるので、アルミナの含有量(重量%)の好適範囲は例えば以下のとおりである。
すなわち、熱硬化性組成物11中のアルミナの含有量は、好ましくは72重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは87重量%以上である。一方、熱硬化性組成物11中のアルミナの含有量は、好ましくは95重量%以下、より好ましくは93重量%以下である。
熱硬化性組成物11を硬化させることにより得られる硬化物の25℃における貯蔵弾性率は5×10Pa〜5×10Paである。5×10Pa以下であることにより、硬化物を常温に戻すことにより生じる応力を小さくすることが可能で、基板の反りを低減できる。また、リフロー加熱により発生する基板の反りも低減可能である。5×10Pa以上であることにより、電子デバイスを良好に封止できる。
硬化物の25℃における貯蔵弾性率は、好ましくは9×10Pa以上である。一方、硬化物の25℃における貯蔵弾性率は、好ましくは1×10Pa以下、より好ましくは5×10Pa以下である。
なお、貯蔵弾性率は実施例に記載の方法で測定できる。
硬化物の貯蔵弾性率は、アクリルポリマーの含有量、無機充填剤の含有量などによりコントロールできる。
硬化物のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上である。硬化物のTgは、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下である。
なお、Tgは実施例に記載の方法で測定できる。
硬化物のTgは、架橋密度によりコントロールできる。例えば、分子中に官能基数の多い熱硬化性樹脂を使用することによりTgを高めることができる。
硬化物のTg以下における線膨張係数(CTE1)は、好ましくは20ppm/K以下、より好ましくは17ppm/K以下である。20ppm/K以下であると、基板の反りを効果的に低減できる。一方、硬化物のCTE1の下限は特に限定されない。例えば、硬化物のCTE1は、5ppm/K以上、8ppm/K以上などである。
なお、線膨張係数は実施例に記載の方法で測定できる。
熱硬化性組成物11を硬化させることにより得られる硬化物が、好ましくは海島構造を備える。
図2に、硬化物を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察して得られた観察像を示す。上段の左に配置された観察像において、観察像の上部に、マトリックス部(以下、「海相」ともいう)である色の濃い部分と、ドメイン部(以下、「島相」ともいう)である色の薄い部分を確認できる。上段の右に配置された観察像においても、観察像の上部に、マトリックス部である色の濃い部分と、ドメイン部である色の薄い部分を確認できる。なお、円形の物体はフィラーである。
図2に示すように、硬化物は、マトリックス部およびドメイン部を含む海島構造を備える。マトリックス部は、ドメイン部より柔らかい。硬化物は、マトリックス部中に分散されたフィラーを備える。
なお、硬化物は、例えば、熱硬化性組成物11を150℃、1時間で加熱することにより得られる。
マトリックス部およびドメイン部の柔らかさは、例えば、原子間力顕微鏡(AFM)によって知ることができる。
図3において、色の薄い部分(黒色でない部分)が、位相の遅れが小さい部分である。位相の遅れが小さい部分は吸着性が低く、硬い。一方、色の濃い部分が、位相の遅れが大きい部分である。位相の遅れが大きい部分は、吸着性が高く、柔らかい。
ドメイン部およびドメイン部より柔らかいマトリックス部を含む海島構造を形成可能であることにより、流動を制御することが可能で、基板と電子デバイスとの間の空間に入り込む熱硬化性組成物11の量を低減できる。
マトリックス部は、アクリルポリマーを主成分として含む。ドメイン部は、熱硬化性樹脂を主成分として含む。
硬化物についてのAFMの観察結果と透過型電子顕微鏡(TEM)の観察結果とを照らし合わせることにより、マトリックス部がアクリルポリマーを主成分として含むことを明らかにできる。ドメイン部が熱硬化性樹脂を主成分として含むことを明らかにできる。
参考として、図4に、図3で使用された硬化物のTEM観察像を示す。色の濃い部分が、低輝度領域であり、アクリルポリマーを主成分として含む部分である。
アクリルポリマーの官能基の種類、アクリルポリマーの含有量などを調整することにより、ドメイン部およびドメイン部より柔らかいマトリックス部を含む海島構造を形成可能な熱硬化性組成物11を得ることができる。
アクリルポリマーの含有量を増量することにより、ドメイン部より柔らかいマトリックス部を容易に形成できる。
ドメイン部の最大粒径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.03μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上である。0.01μm以上であると、熱硬化性組成物11の流動を規制できる。一方、ドメイン部の最大粒径は、好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下、さらに好ましくは3μm以下、さらに好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.8μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下である。5μm以下であると、チキソトロピー性様の作用を付与することが可能となり、熱硬化性組成物11の流動を規制できる。
ドメイン部の最大粒径は、アクリルポリマーの官能基の量によりコントロールできる。例えば、官能基量が多いアクリルポリマーを配合することにより、ドメイン部の最大粒径を小さくできる。熱硬化性樹脂とアクリルポリマーの相溶性もドメイン部の最大粒径に影響を与える。ただし、アクリルポリマーの官能基の量がより大きな影響を与える。
なお、ドメイン部の最大粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察される観察像において、ドメイン部の輪郭上の2点間の距離のうち最大の距離である。ドメイン部の最大粒径は、100個のドメイン部を観察することで得られる測定値を平均することで算出できる。複数のドメイン部が集合又は凝集して存在している場合は、輪郭が連続しているものを一つのドメイン部として取り扱う。
封止用シート1の製造方法は特に限定されず、例えば、適当な溶剤に熱硬化性組成物11を形成するための樹脂などを溶解、分散させてワニスを調整し、このワニスをセパレーター12上に所定厚みとなる様に塗布して塗布膜を形成した後、塗布膜を所定条件下で乾燥させることにより、封止用シート1を得ることができる。塗布方法としては特に限定されず、例えば、ロール塗工、スクリーン塗工、グラビア塗工などが挙げられる。また、乾燥条件としては、例えば乾燥温度70〜160℃、乾燥時間1〜30分間の範囲内で行われる。また、セパレーター12とは異なるセパレーター上にワニスを塗布して塗布膜を形成し、塗布膜を乾燥させて熱硬化性組成物11を形成した後、セパレーター12上に熱硬化性組成物11を貼り合わせる方法も好適である。溶剤としては、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエンなどを挙げることができる。
熱硬化性組成物11は、混練押出により製造することも好ましい。これにより、シート状に容易に成形でき、ボイドが少なく、厚みが均一な熱硬化性組成物11が得られる。混練押出により製造する方法としては、例えば、前記各成分(例えば、無機充填剤、アクリルポリマーなど)を混練して得られる混練物をシート状に塑性加工する方法が好ましい。混練押出により製造することにより、無機充填剤を高充填できる。
具体的には、熱硬化性樹脂、硬化促進剤、アクリルポリマーおよび無機充填剤などをミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機などの公知の混練機で溶融混練することにより混練物を調製し、得られた混練物をシート状に塑性加工する。混練条件として、温度の上限は、140℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましい。温度の下限は、上述の各成分の軟化点以上であることが好ましく、例えば30℃以上、好ましくは50℃以上である。混練の時間は、好ましくは1〜30分である。また、混練は、減圧条件下(減圧雰囲気下)で行うことが好ましく、減圧条件下の圧力は、例えば、1×10−4〜0.1kg/cmである。
溶融混練後の混練物は、冷却することなく高温状態のままで塑性加工することが好ましい。塑性加工方法としては特に制限されず、平板プレス法、Tダイ押出法、スクリューダイ押出法、ロール圧延法、ロール混練法、インフレーション押出法、共押出法、カレンダー成形法などが挙げられる。塑性加工温度としては上述の各成分の軟化点以上が好ましく、エポキシ樹脂の熱硬化性および成形性を考慮すると、例えば40〜150℃、好ましくは50〜140℃、さらに好ましくは70〜120℃である。
熱硬化性組成物11の厚みは特に限定されないが、好ましくは100μm以上、より好ましくは150μm以上である。また、熱硬化性組成物11の厚みは、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1000μm以下である。
封止用シート1はパッケージを製造するために使用される。パッケージは電子デバイスを備える。電子デバイスとしては、センサー、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、SAW(Surface Acoustic Wave)チップ、半導体素子、コンデンサ、抵抗などが挙げられる。センサーとしては、圧力センサー、振動センサーなどが挙げられる。半導体素子としては、半導体チップ、IC(集積回路)、トランジスタなどが挙げられる。
パッケージは、例えば、基板、基板に実装された電子デバイスおよび電子デバイスを覆う保護部を備える。基板としては、例えば、プリント配線基板、LTCC(Low Temperature Co−fired Ceramics)基板(低温同時焼成セラミック基板)、セラミック基板、シリコン基板、金属基板などが挙げられる。保護部は、熱硬化性組成物11を硬化させることにより形成される。
パッケージとして、中空パッケージを例示できる。中空パッケージでは、電子デバイスと基板との間に、空間が設けられている。中空パッケージとしては、例えば、センサーパッケージ、MEMSパッケージ、SAWフィルタなどが挙げられる。
封止用シート1を用いてパッケージを製造する方法としては、例えば、熱硬化性組成物11に電子デバイスを埋め込む方法がある。
(パッケージの製造方法)
図5に示すように、パッケージの製造方法は、積層体331を加圧する工程を含む。積層体331が、デバイス実装体302およびデバイス実装体302上に配置された熱硬化性組成物11を備える。積層体331が熱硬化性組成物11上に配置されたセパレーター12をさらに備える。デバイス実装体302が、基板322および基板322に実装された電子デバイス323を備える。積層体331を加圧する工程は、下側加熱板341および上側加熱板342で積層体331を加圧するステップを含む。
図6に示すように、積層体331を加圧する工程により封止体332を得る。封止体332は、基板322、基板322に実装された電子デバイス323および電子デバイス323を覆う熱硬化性組成物11を備える。パッケージの製造方法が、封止体332を加熱する工程をさらに含む。封止体332を加熱する工程により構造体333を得る。
図7に示すように、構造体333は、基板322、基板322に実装された電子デバイス323および電子デバイス323を覆う保護部326を備える。パッケージの製造方法が、構造体333を電子デバイス323毎に分ける工程をさらに含む。構造体333を電子デバイス323毎に分ける工程によりパッケージ334を得る。
図8に示すように、パッケージ334は、基板322、基板322に実装された電子デバイス323および電子デバイス323を覆う保護部326を備える。
以下では、パッケージの製造方法のうち、SAWフィルタの製造方法を代表として取り上げて説明する。
(SAWフィルタの製造方法)
図9に示すように、積層体31は下側加熱板41と上側加熱板42の間に配置されている。積層体31は、デバイス実装体2、デバイス実装体2上に配置された熱硬化性組成物11および熱硬化性組成物11上に配置されたセパレーター12を備える。
デバイス実装体2は、基板22および基板22に実装されたSAWチップ23を備える。所定の櫛形電極が形成された圧電結晶を公知の方法でダイシングして個片化することによりSAWチップ23を得ることができる。フリップチップボンダー、ダイボンダーなどの公知の装置を用いて、基板22にSAWチップ23を固定できる。SAWチップ23と基板22は、バンプなどの突起電極24を介して電気的に接続されている。また、SAWチップ23と基板22との間に、SAWフィルタ表面での表面弾性波の伝播を阻害しないように中空部25が配置されている。SAWチップ23と基板22との間の距離(以下、中空部25の幅ともいう)は適宜設定でき、一般的には10μm〜100μm程度である。つまり、デバイス実装体2は、基板22、基板22上に配置された突起電極24および突起電極24上に配置されたSAWチップ23を備える。
図10に示すように、下側加熱板41および上側加熱板42を用いて平行平板方式で積層体31を熱プレスして、封止体32を形成する。
熱プレスの温度は、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上である。40℃以上であると、しっかり封止することができる。熱プレスの温度は、好ましくは150℃以下、より好ましくは90℃以下、さらに好ましくは80℃以下である。150℃以下であると、熱プレスで成型する前に、硬化反応が過度に進行しないため、しっかり封止することができる。
積層体31を熱プレスする圧力は、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.5MPa以上、さらに好ましくは1MPa以上である。また、積層体1を熱プレスする圧力は、好ましくは10MPa以下、より好ましくは8MPa以下である。10MPa以下であると、SAWチップ23に大きな損傷を与えることがない。
熱プレスする時間は、好ましくは0.3分以上、より好ましくは0.5分以上である。また、熱プレスする時間は、好ましくは10分以下、より好ましくは5分以下である。
熱プレスは減圧雰囲気下で行うことが好ましい。減圧雰囲気下で熱プレスすることにより、ボイドを低減することが可能で、凹凸を良好に埋めることができる。減圧条件としては、圧力が、例えば、0.01kPa〜5kPa、好ましくは、0.1Pa〜100Paである。
積層体31を熱プレスすることで得られた封止体32は、基板22、基板22に実装されたSAWチップ23およびSAWチップ23を覆う熱硬化性組成物11を備える。封止体32上に、セパレーター12が配置されている。
図11に示すように、セパレーター12を剥離する。
封止体32を加熱することにより熱硬化性組成物11を硬化させて、構造体33を形成する。
加熱温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上である。一方、加熱温度の上限は、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。加熱時間は、好ましくは10分以上、より好ましくは30分以上である。一方、加熱時間の上限は、好ましくは180分以下、より好ましくは120分以下である。加圧雰囲気下で封止体32を加熱することが好ましく、圧力は好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.5MPa以上である。一方、上限は好ましくは10MPa以下、より好ましくは5MPa以下である。封止体32を大気圧下で加熱することも好ましい。
図12に示すように、構造体33は、基板22、基板22に実装されたSAWチップ23およびSAWチップ23を覆う保護部26を備える。
図13に示すように、構造体33を個片化(ダイシング)してSAWフィルタ34を得る。SAWフィルタ34は、基板22、基板22に実装されたSAWチップ23およびSAWチップ23を覆う保護部26を備える。SAWチップ23と基板22との間に空間が設けられている。
SAWフィルタ34上にバンプを形成し、これを別途の基板(図示せず)に実装してもよい。SAWフィルタ34の基板への実装には、フリップチップボンダーやダイボンダーなどの公知の装置を用いることができる。
(変形例1)
図14に示すように、変形例1の封止用シート1が、セパレーター12、セパレーター12上に配置された熱硬化性組成物11および熱硬化性組成物11上に配置されたセパレーター13を備える。セパレーター13としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどが挙げられる。セパレーター13は、好ましくは離型処理が施されたものである。
(変形例2)
変形例2では、熱硬化性組成物11は複数の層を含む多層構造を備える。
(変形例3)
実施形態1では、平行平板方式で積層体331を加圧するが、変形例3では、ラミネータを用いて積層体331を加圧する。
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている材料や配合量などは、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
[熱硬化性シートの作製]
熱硬化性シートを作製するために使用した成分について説明する。
エポキシ樹脂:新日鐵化学社製のYSLV−80XY(ビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキン当量:200g/eq.、軟化点:80℃)
フェノール樹脂:群栄化学社製のLVR−8210DL(ノボラック型フェノール樹脂、水酸基当量:104g/eq.、軟化点:60℃)
アクリルポリマー:根上工業社製のHME−2006M(カルボキシル基含有のアクリル酸エステル共重合体、重量平均分子量:約60万、Tg:−35℃、酸価:32mgKOH/g)
無機充填剤1:電気化学工業社製のFB−5SDC(球状シリカ、平均粒径5μm)
無機充填剤2:アドマテックス社製のSC220G−SMJ(平均粒径0.5μmのシリカを3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランで表面処理したもの。)
カーボンブラック:三菱化学社製の#20
硬化促進剤:四国化成工業社製の2PHZ−PW(2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール)
表1に記載の配合比に従い、各成分を溶剤としてのメチルエチルケトンに溶解、分散させ、濃度90重量%のワニスを得た。このワニスを、シリコーン離型処理された厚さが38μmの離型処理ポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布した後、110℃で5分間乾燥させた。これにより、厚さ42μmのシートを得た。このシートを5枚積層することにより、厚さ210μmの熱硬化性シートを得た。
[硬化物の作製]
加熱オーブンを用いて、150℃、1時間で熱硬化性シートを加熱して硬化させることにより硬化物を得た。
[観察用サンプルの作製]
無機充填剤1、無機充填剤2およびカーボンブラックを配合しない点以外は、熱硬化性シートと同様の方法で、観察用シートを作製した。加熱オーブンを用いて、150℃、1時間で観察用シートを加熱して硬化させることにより観察用サンプルを得た。
観察用サンプルを作成した理由は、海島構造を観察するためである。硬化物を観察することにより海島構造を確認できるが、観察用サンプルを観察することにより海島構造を容易に確認できる。
[評価]
熱硬化性シート、硬化物、観察用サンプルについて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
(TEM観察)
熱硬化性シートの切断面をTEMで観察することにより、相分離の有無を確認した。
(硬化物の25℃における引張貯蔵弾性率)
硬化物から、長さ40mm、幅10mm、厚さ200μmの短冊状の試験片をカッターナイフで切り出した。試験片について、固体粘弾性測定装置(RSAIII、レオメトリックサイエンティフィック(株)製)を用いて、−50℃〜300℃における貯蔵弾性率を測定した。測定条件は、周波数1Hz、昇温速度10℃/minとした。
(硬化物のTg)
硬化物から、長さ40mm、幅10mm、厚さ200μmの短冊状の試験片をカッターナイフで切り出した。試験片について、固体粘弾性測定装置(RSAIII、レオメトリックサイエンティフィック(株)製)を用いて、−50℃〜300℃における貯蔵弾性率を測定した。測定条件は、周波数1Hz、昇温速度10℃/minとした。さらに、tanδ(G’’(損失弾性率)/G’(貯蔵弾性率))の値を算出することによりTgを得た。
(CTE1)
硬化物から、長さ15mm、幅5mm、厚さ200μmの測定試料を切り出した。測定試料を熱機械分析装置(リガク社製のTMA8310)のフィルム引張測定用治具にセットした後、−50℃〜300℃の温度域で、引張荷重2g、昇温速度5℃/分の条件下におき、50℃〜70℃での膨張率からCTE1を算出した。
(観察用サンプルの相分離)
観察用サンプルの切断面をTEMで観察することにより、相分離の有無を確認した。
(観察用サンプルのAFM観察)
観察用サンプルの切断面をAFMで観察することにより、海相について、熱硬化性樹脂およびアクリルポリマーのうちどちらが主成分であるのかを確認した。島相について、熱硬化性樹脂およびアクリルポリマーのうちどちらが主成分であるのかを確認した。
[評価]
熱硬化性シートを用いて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
(反り量)
図15に示すように、アルミナ基板122(京セラ社製のアルミナ基板、縦102mm×横102mm×厚み0.2mm)およびアルミナ基板122上に配置された熱硬化性シート111(縦102mm×横102mm×厚み0.21mm)を有する試験用積層体91を、瞬時真空積層装置(ミカドテクノス社製、VS008−1515)を用いて、90℃、0.2Paの条件で加熱プレスした。加熱プレス後、乾燥機(ESPEC社製のSTH−120)を用いて試験用積層体91を150℃、1時間加熱し、熱硬化性シート111を硬化させた。かかる加熱後に試験用積層体91を室温(25℃)で1時間放置した。図16に示すように、試験用積層体91を机201上に置き、試験用積層体91の角と机201の間の距離301を定規で測定した。
(中空部への樹脂浸入量)
アルミニウム櫛形電極を有する以下の仕様のSAWチップを下記ボンディング条件にてセラミック基板に実装して、セラミック基板およびセラミック基板に実装されたSAWチップを有するSAWチップ実装基板を作製した。SAWチップとセラミック基板との間のギャップ幅は、20μmであった。
<SAWチップ>
チップサイズ:1.2mm角(厚さ150μm)
バンプ材質:Au(高さ20μm)
バンプ数:6バンプ
チップ数:100個(10個×10個)
<ボンディング条件>
装置:パナソニック電工(株)製
ボンディング条件:200℃、3N、1sec、超音波出力2W
SAWチップ実装基板上に熱硬化性シートを配置することにより、積層体を得た。以下に示す加熱加圧条件下で、平行平板方式で積層体を真空プレスして、封止体を得た。
<真空プレス条件>
温度:60℃
加圧力:4MPa
真空度:1.6kPa
プレス時間:1分
大気圧に開放した後、熱風乾燥機中で、150℃、1時間の条件で封止体を加熱して、構造体を得た。セラミック基板と保護部の界面を劈開し、KEYENCE社製、商品名「デジタルマイクロスコープ」(200倍)により、SAWチップとセラミック基板との間の中空部への樹脂の浸入量を測定した。樹脂浸入量は、SAWチップの端部から中空部へ浸入した樹脂の最大到達距離を測定し、これを樹脂浸入量とした。樹脂浸入量が150μm以下であった場合を「○」と判定した。150μmを超えていた場合を「×」と判定した。
1 封止用シート
2 デバイス実装体
11 熱硬化性組成物
12 セパレーター
13 セパレーター
22 基板
23 SAWチップ
24 突起電極
25 中空部
26 保護部
31 積層体
32 封止体
33 構造体
34 中空パッケージ
41 下側加熱板
42 上側加熱板
302 デバイス実装体
322 基板
323 電子デバイス
326 保護部
331 積層体
332 封止体
333 構造体
334 パッケージ

Claims (2)

  1. シート状をなす熱硬化性組成物を備え、
    前記熱硬化性組成物が無機充填剤および残余成分を含み、
    前記残余成分がアクリルポリマーを含み、
    前記残余成分中の前記アクリルポリマーの含有量は65重量%以上であり、
    前記熱硬化性組成物中の前記無機充填剤の含有量は55体積%以上であり、
    前記熱硬化性組成物を硬化させることにより得られる硬化物の25℃における貯蔵弾性率は5×10Pa〜5×10Paである封止用シート。
  2. 基板および前記基板に実装された電子デバイスを備えるデバイス実装体、並びに前記デバイス実装体上に配置されたシート状の熱硬化性組成物を備える積層体を加圧する工程を含み、
    前記熱硬化性組成物が無機充填剤および残余成分を含み、
    前記残余成分がアクリルポリマーを含み、
    前記残余成分中の前記アクリルポリマーの含有量は65重量%以上であり、
    前記熱硬化性組成物中の前記無機充填剤の含有量は55体積%以上であり、
    前記熱硬化性組成物を硬化させることにより得られる硬化物の25℃における貯蔵弾性率は5×10Pa〜5×10Paである
    パッケージの製造方法。
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