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JP6493324B2 - 静電潜像現像用トナー - Google Patents

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Description

本発明は、静電潜像現像用トナーに関し、特にカプセルトナーに関する。
カプセルトナーに含まれるトナー粒子は、コアと、コアの表面に形成されたシェル層(カプセル層)とを備える。コアをシェル層で覆うことで、トナーの耐熱保存性を向上させることができる。特許文献1に記載されるトナーでは、トナーコア(コア粒子)及びシェル層(被覆層)がそれぞれ、ポリエステル樹脂を含有する。
特開2009−14757号公報
トナーコアにポリエステル樹脂を含有させることで、十分なトナーの低温定着性を確保し易くなる。しかし、ポリエステル樹脂は、強い負帯電性を有する。このため、トナーコアがポリエステル樹脂を含有する場合には、トナーコアの負帯電性が強くなる傾向がある。特許文献1に開示される技術だけでは、耐熱保存性、低温定着性、正帯電性、及び電荷保持性に優れる静電潜像現像用トナーを提供することは困難である。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、耐熱保存性、低温定着性、正帯電性、及び電荷保持性に優れる静電潜像現像用トナーを提供することを目的とする。
本発明に係る静電潜像現像用トナーは、複合コアと、前記複合コアの表面を部分的に覆うシェル層とを備えるトナー粒子を、複数含む。前記複合コアは、ポリエステル樹脂を含有するトナーコアと、それぞれ第1樹脂を含有する複数の樹脂粒子との複合体である。前記複数の樹脂粒子はそれぞれ、前記トナーコアの表面に付着している。前記シェル層は、第2樹脂を含有する膜である。前記第1樹脂のガラス転移点は、前記第2樹脂のガラス転移点よりも10℃以上高い。前記複数の樹脂粒子の各々の粒子径は、前記シェル層の厚さの1.5倍以上である。前記樹脂粒子の量は、前記トナーコア100質量部に対して0.3質量部以上2.0質量部以下である。レーザードップラー方式の電気泳動法で測定される、前記樹脂粒子のpH4のゼータ電位は正の値を示す。
本発明によれば、耐熱保存性、低温定着性、正帯電性、及び電荷保持性に優れる静電潜像現像用トナーを提供することが可能になる。
本発明の実施形態に係る静電潜像現像用トナーに含まれるトナー粒子(特に、トナー母粒子)の断面構造の一例を示す図である。 図1に示されるトナー母粒子の表面の一部を拡大して示す図である。
本発明の実施形態について説明する。なお、粉体(より具体的には、トナーコア、トナー母粒子、外添剤、又はトナー等)に関する評価結果(形状又は物性などを示す値)は、何ら規定していなければ、粉体から平均的な粒子を相当数選び取って、それら平均的な粒子の各々について測定した値の個数平均である。
粉体の個数平均粒子径は、何ら規定していなければ、顕微鏡を用いて測定された1次粒子の円相当径(ヘイウッド径:粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の個数平均値である。また、粉体の体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、ベックマン・コールター株式会社製の「コールターカウンターマルチサイザー3」を用いてコールター原理(細孔電気抵抗法)に基づき測定した値である。また、円形度(=粒子の投影面積と等しい円の周囲長/粒子の周囲長)の測定値は、何ら規定していなければ、フロー式粒子像分析装置(シスメックス株式会社製「FPIA(登録商標)−3000」)を用いて、相当数(例えば、3000個)の粒子について測定した値の個数平均である。
ガラス転移点(Tg)は、何ら規定していなければ、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて「JIS(日本工業規格)K7121−2012」に従って測定した値である。示差走査熱量計で測定された2回目昇温時の吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)において、比熱の変化点(ベースラインの外挿線と立ち下がりラインの外挿線との交点)の温度(オンセット温度)が、Tg(ガラス転移点)に相当する。また、軟化点(Tm)は、何ら規定していなければ、高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)を用いて測定した値である。高化式フローテスターで測定されたS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)において、「(ベースラインストローク値+最大ストローク値)/2」となる温度が、Tm(軟化点)に相当する。また、酸価の測定値は、何ら規定していなければ、「JIS(日本工業規格)K0070−1992」に従って測定した値である。
SP値(溶解度パラメーター)は、何ら規定していなければ、Fedorsの計算方法(R.F.Fedors,「Polymer Engineering and Science」,1974年,第14巻,第2号,p147−154)に従って算出した値(単位:(cal/cm31/2、温度:25℃)である。SP値は、式「SP値=(E/V)1/2」(E:分子凝集エネルギー[cal/mol]、V:分子容[cm3/mol])で表される。
疎水性の強さ(又は、親水性の強さ)は、例えば水滴の接触角(水の濡れ易さ)で表すことができる。水滴の接触角が大きいほど疎水性が強い。
帯電性の強さは、何ら規定していなければ、摩擦帯電し易さに相当する。例えばトナーは、日本画像学会から提供される標準キャリア(アニオン性:N−01、カチオン性:P−01)と混ぜて攪拌することで、摩擦帯電させることができる。摩擦帯電させる前と後とでそれぞれ、例えばKFM(ケルビンプローブフォース顕微鏡)でトナー粒子の表面電位を測定し、摩擦帯電の前後での電位の変化が大きい部位ほど帯電性が強いことになる。
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。また、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。また、アクリロイル(CH2=CH−CO−)及びメタクリロイル(CH2=C(CH3)−CO−)を包括的に「(メタ)アクリロイル」と総称する場合がある。
本実施形態に係るトナーは、例えば正帯電性トナーとして、静電潜像の現像に好適に用いることができる。本実施形態のトナーは、複数のトナー粒子(それぞれ後述する構成を有する粒子)を含む粉体である。トナーは、1成分現像剤として使用してもよい。また、混合装置(例えば、ボールミル)を用いてトナーとキャリアとを混合して2成分現像剤を調製してもよい。高画質の画像を形成するためには、キャリアとしてフェライトキャリアを使用することが好ましい。また、長期にわたって高画質の画像を形成するためには、キャリアコアと、キャリアコアを被覆する樹脂層とを備える磁性キャリア粒子を使用することが好ましい。キャリア粒子に磁性を付与するためには、磁性材料(例えば、フェライトのような強磁性物質)でキャリアコアを形成してもよいし、磁性粒子を分散させた樹脂でキャリアコアを形成してもよい。また、キャリアコアを被覆する樹脂層中に磁性粒子を分散させてもよい。樹脂層を構成する樹脂の例としては、フッ素樹脂(より具体的には、PFA又はFEP等)、ポリアミドイミド樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、及びフェノール樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂が挙げられる。高画質の画像を形成するためには、2成分現像剤におけるトナーの量は、キャリア100質量部に対して、5質量部以上15質量部以下であることが好ましい。キャリア粒子の粒子径は、20μm以上120μm以下であることが好ましく、25μm以上80μm以下であることがより好ましい。なお、2成分現像剤に含まれる正帯電性トナーは、キャリアとの摩擦により正に帯電する。
本実施形態に係るトナーは、例えば電子写真装置(画像形成装置)において画像の形成に用いることができる。以下、電子写真装置による画像形成方法の一例について説明する。
まず、電子写真装置の像形成部(帯電装置及び露光装置)が、画像データに基づいて感光体(例えば、感光体ドラムの表層部)に静電潜像を形成する。次に、形成された静電潜像を、トナーを含む現像剤を用いて現像する。現像工程では、感光体の近傍に配置された現像スリーブ(例えば、現像装置内の現像ローラーの表層部)上のトナー(例えば、キャリア又はブレードとの摩擦により帯電したトナー)を静電潜像に付着させて、感光体上にトナー像を形成する。そして、続く転写工程では、感光体上のトナー像を中間転写体(例えば、転写ベルト)に転写した後、さらに中間転写体上のトナー像を記録媒体(例えば、紙)に転写する。その後、電子写真装置の定着装置(定着方式:加熱ローラー及び加圧ローラーによるニップ定着)によりトナーを加熱及び加圧して、記録媒体にトナーを定着させる。その結果、記録媒体に画像が形成される。例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの4色のトナー像を重ね合わせることで、フルカラー画像を形成することができる。なお、転写方式は、感光体上のトナー像を、中間転写体を介さず、記録媒体に直接転写する直接転写方式であってもよい。また、定着方式は、ベルト定着方式であってもよい。
本実施形態に係るトナーは、次に示す構成(以下、基本構成と記載する)を有する静電潜像現像用トナーである。
(トナーの基本構成)
静電潜像現像用トナーが、複合コアと、複合コアの表面を部分的に覆うシェル層とを備えるトナー粒子を、複数含む。複合コアは、ポリエステル樹脂を含有するトナーコアと、それぞれ第1樹脂を含有する複数の樹脂粒子との複合体である。複数の樹脂粒子はそれぞれ、トナーコアの表面に付着している。以下、トナーコアの表面に付着した上記複数の樹脂粒子をそれぞれ、コア外添粒子と記載する場合がある。シェル層は、第2樹脂を含有する膜である。第1樹脂のガラス転移点は、第2樹脂のガラス転移点よりも10℃以上高い。すなわち、第1樹脂のガラス転移点Tg1(単位:℃)と第2樹脂のガラス転移点Tg2(単位:℃)とは、式「Tg1≧Tg2+10」の関係を満たす。複数の樹脂粒子(コア外添粒子)の各々の粒子径は、シェル層の厚さの1.5倍以上である。すなわち、シェル層の厚さが10nmである場合には、複数のコア外添粒子がそれぞれ、15nm以上の粒子径を有する。樹脂粒子(コア外添粒子)の量は、トナーコア100質量部に対して0.3質量部以上2.0質量部以下である。レーザードップラー方式の電気泳動法で測定される、樹脂粒子(コア外添粒子)のpH4のゼータ電位は正の値を示す。
上記基本構成で規定される要件(粒子径、ガラス転移点、及びゼータ電位に関する要件)を満たす樹脂粒子(以下、対象粒子と記載する)に加えて、上記基本構成で規定される要件を満たさない粒子(他の粒子)が、トナーコアに外添されていてもよい。ただし、トナーコアに外添されている粒子(トナーコアの表面に付着している粒子)のうち、50個数%以上が対象粒子であることが好ましく、90個数%以上が対象粒子であることがより好ましく、100個数%が対象粒子であることが特に好ましい。
シェル層の厚さは、市販の画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いてトナー粒子の断面のTEM(透過型電子顕微鏡)撮影像を解析することによって計測できる。なお、1つのトナー粒子においてシェル層の厚さが均一でない場合には、均等に離間した4箇所(詳しくは、トナー粒子の断面の略中心で直交する2本の直線を引き、それら2本の直線がシェル層と交差する4箇所)の各々でシェル層の厚さを測定し、得られた4つの測定値の算術平均を、そのトナー粒子の評価値(シェル層の厚さ)とする。
上記基本構成において、ガラス転移点及びゼータ電位の各々の測定方法は、後述する実施例と同じ方法又はその代替方法である。
シェル層の表面に外添剤が付着していてもよいし、シェル層で覆われていないトナーコアの表面領域に外添剤が付着していてもよい。なお、必要がなければ外添剤を割愛してもよい。以下、外添剤が付着する前のトナー粒子を、トナー母粒子と記載する。また、シェル層を形成するための材料を、シェル材料と記載する。
トナーコアにポリエステル樹脂を含有させることで、十分なトナーの低温定着性を確保し易くなる。しかし、ポリエステル樹脂は、強い負帯電性を有する。このため、トナーコアがポリエステル樹脂を含有する場合には、トナーコアの負帯電性が強くなる傾向がある。上記基本構成を有するトナーでは、レーザードップラー方式の電気泳動法で測定される、樹脂粒子(コア外添粒子)のpH4のゼータ電位が正の値を示す。こうしたコア外添粒子をトナーコアの表面に付着させることで、十分なトナーの正帯電性を確保し易くなる。
発明者は、トナーコア100質量部に対して0.3質量部以上2.0質量部以下の量だけ、上記樹脂粒子(コア外添粒子)をトナーコアの表面に付着させることで、十分なトナーの耐熱保存性、低温定着性、正帯電性、及び電荷保持性を確保し易くなることを見出した。ただし、コア外添粒子の粒子径及びガラス転移点はそれぞれ、以下に示すような条件を満たさなければならない。
上記基本構成を有するトナーでは、シェル層の厚さの1.5倍以上の粒子径を有する樹脂粒子(コア外添粒子)をトナーコアの表面に付着させることで、十分なトナーの耐熱保存性を確保し易くなる。シェル層に比べてコア外添粒子が十分大きな粒子径を有することで、トナー粒子間でコア外添粒子がスペーサーとして機能し、トナーの凝集が抑制されると考えられる。また、コア外添粒子がシェル層の表面よりもトナー粒子の外側に向けて突出することで、2成分現像剤において、トナー粒子のコア外添粒子がキャリアと摩擦し易くなると考えられる。耐熱保存性、低温定着性、及び正帯電性に優れるトナーを得るためには、シェル層の厚さが10nm以上40nm以下であり、複数の樹脂粒子(コア外添粒子)の各々の粒子径が30nm以上100nm以下であることが好ましい。コア外添粒子の粒子径が大き過ぎると、複合コアからコア外添粒子が脱離し易くなる傾向がある。
上記基本構成を有するトナーでは、第1樹脂(コア外添粒子を構成する樹脂)のガラス転移点が、第2樹脂(シェル層を構成する樹脂)のガラス転移点よりも10℃以上高い。シェル層に比べて十分高いガラス転移点を有する樹脂粒子(コア外添粒子)をトナーコアの表面に付着させることで、トナーの電荷減衰を抑制し易くなる。未だ原理の解明には至っていないものの、発明者の推測では、第1樹脂(コア外添粒子を構成する樹脂)のガラス転移点が十分高いことで、電荷減衰の大きいトナーコアの影響が緩和(又は、遮断)されて、トナーが電荷減衰しにくくなると考えられる。トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図りつつトナーの電荷減衰を好適に抑制するためには、第1樹脂(コア外添粒子を構成する樹脂)のガラス転移点が70℃以上120℃以下であり、第2樹脂(シェル層を構成する樹脂)のガラス転移点が60℃以上80℃以下であることが好ましい。
トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図るためには、シェル層が、複合コアの表面領域のうち樹脂粒子が存在しない領域を選択的に覆っていることが好ましい。複合コアの表面領域のうち樹脂粒子が存在しない領域(以下、非コア外添領域と記載する場合がある)の全体を、シェル層が覆っていてもよい。シェル層が非コア外添領域の全体を覆う場合には、シェル層の被覆率が概ね樹脂粒子(コア外添粒子)の量によって決まるため、シェル層の被覆率を調整し易くなる。また、トナー粒子からのシェル層の脱離を抑制するためには、樹脂粒子(コア外添粒子)の底部がトナーコアに埋め込まれており、トナーコアと樹脂粒子(コア外添粒子)との隙間にシェル層が入り込んでいることが好ましい。トナーコアと樹脂粒子(コア外添粒子)との間にシェル層が存在することにより、トナー粒子からのシェル層の脱離が抑制されると考えられる。
トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図るためには、トナーコアの表面におけるシェル層の被覆率が面積割合で70%以上95%以下であることが好ましい。トナーコアの表面が比較的高い被覆率でシェル層に覆われることで、十分なトナーの耐熱保存性を確保し易くなる。シェル層の被覆率(単位:%)は、式「シェル層の被覆率=100×コア被覆領域の面積/トナーコアの表面領域の面積」で表される。式中、「トナーコアの表面領域の面積」は、コア被覆領域の面積とコア露出領域の面積との合計に相当する。「コア被覆領域」は、トナーコアの表面領域のうちシェル層が覆う領域に、「コア露出領域」は、トナーコアの表面領域のうちシェル層で覆われていない領域に、それぞれ相当する。シェル層の被覆率が100%であることは、トナーコアの表面全域がシェル層で覆われていることを意味する。シェル層の被覆率は、電子顕微鏡でトナー粒子(例えば、予め染色されたトナー粒子)の表面を撮影し、得られた撮影像を、市販の画像解析ソフトウェアを用いて解析することで、測定できる。シェル層の被覆率は、外添処理後に測定してもよい。外添剤を避けて測定を行ってもよいし、トナー母粒子に付着した外添剤を除去してから測定を行ってもよい。溶剤(例えば、アルカリ溶液)を用いて外添剤を溶解させて除去してもよいし、超音波洗浄機を用いてトナー粒子から外添剤を取り除いてもよい。
シェル層中、コア外添粒子の近傍には、部分的に強度の弱い部位(破壊され易い部位)が形成され易い。シェル層中に、こうした破壊点(破壊され易い部位)が存在することで、シェル層が70%以上の面積割合でトナーコアの表面を覆っていても、十分なトナーの低温定着性を確保し易くなる。
以下、図1及び図2を参照して、前述の基本構成を有するトナーに含まれるトナー粒子(特に、トナー母粒子)の一例について説明する。
図1に示されるトナー母粒子10は、トナーコア11と、トナーコア11の表面を部分的に覆うシェル層12とを備える。ただし、トナーコア11の表面には、図2に示すように、複数の樹脂粒子13(それぞれコア外添粒子)が付着している。トナーコア11とその表面に付着した樹脂粒子13とが、複合体(複合コア)を構成している。シェル層12は、複数の膜から構成される。シェル層12のうち、樹脂粒子13に接触する膜は、その接触箇所から樹脂粒子13の周囲に広がっている。シェル層12は、複合コアの表面領域のうち樹脂粒子13が存在しない領域を選択的に覆っている。樹脂粒子13の頂部は、シェル層12には覆われておらず、シェル層12から露出している。樹脂粒子13の底部はトナーコア11に埋め込まれている。例えば、トナーコア11の粉体と樹脂粉体(詳しくは、複数の樹脂粒子13を含む粉体)とを一緒に攪拌することで、樹脂粒子13の一部(底部)がトナーコア11の表層部に埋め込まれ、物理的な力でトナーコア11の表面に樹脂粒子13が付着(物理的結合)する。トナーコア11と樹脂粒子13との隙間にシェル層12が入り込んでいる。樹脂粒子13の粒子径は、シェル層12の厚さの1.5倍以上である。樹脂粒子13は、シェル層12の表面よりもトナー粒子の外側に向けて突出している。樹脂粒子13の形状は、例えば球状である。ただし、樹脂粒子13の形状は、粒子状であれば任意である。
シェル層を好適な形態にするためには、トナー母粒子の円形度が0.965以上0.975以下であることが好ましい。
トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図るためには、トナーコアの体積中位径(D50)が4μm以上9μm以下であることが好ましい。
以下、トナー粒子の構成の好適な例について説明する。トナーコアは、結着樹脂を含有する。トナーコアは、必要に応じて、結着樹脂以外に、内添剤(例えば、離型剤、着色剤、電荷制御剤、及び磁性粉の少なくとも1つ)を含有していてもよい。
[トナーコア]
(結着樹脂)
トナーコアでは、一般に、成分の大部分(例えば、85質量%以上)を結着樹脂が占める。このため、結着樹脂の性質がトナーコア全体の性質に大きな影響を与えると考えられる。結着樹脂として複数種の樹脂を組み合わせて使用することで、結着樹脂の性質(より具体的には、水酸基価、酸価、Tg、又はTm等)を調整することができる。結着樹脂がエステル基、水酸基、エーテル基、酸基、又はメチル基を有する場合には、トナーコアはアニオン性になる傾向が強くなり、結着樹脂がアミノ基又はアミド基を有する場合には、トナーコアはカチオン性になる傾向が強くなる。
結着樹脂としては、ポリエステル樹脂が好ましく、アルコール成分として1種以上のビスフェノール類を含むポリエステル樹脂が特に好ましい。ポリエステル樹脂は、1種以上の多価アルコールと1種以上の多価カルボン酸とを縮重合させることで得られる。ポリエステル樹脂を合成するためのアルコールとしては、例えば以下に示すような、2価アルコール(より具体的には、脂肪族ジオール類又はビスフェノール類等)又は3価以上のアルコールを好適に使用できる。ポリエステル樹脂を合成するためのカルボン酸としては、例えば以下に示すような、2価カルボン酸又は3価以上のカルボン酸を好適に使用できる。
脂肪族ジオール類の好適な例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、α,ω−アルカンジオール(より具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、又は1,12−ドデカンジオール等)、2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
ビスフェノール類の好適な例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、又はビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
3価以上のアルコールの好適な例としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
2価カルボン酸の好適な例としては、芳香族ジカルボン酸(より具体的には、フタル酸、テレフタル酸、又はイソフタル酸等)、α,ω−アルカンジカルボン酸(より具体的には、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、又は1,10−デカンジカルボン酸等)、アルキルコハク酸(より具体的には、n−ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、又はイソドデシルコハク酸等)、アルケニルコハク酸(より具体的には、n−ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、又はイソドデセニルコハク酸等)、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、又はシクロヘキサンジカルボン酸が挙げられる。
3価以上のカルボン酸の好適な例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、又はエンポール三量体酸が挙げられる。
トナーコアの結着樹脂としてポリエステル樹脂を使用する場合、十分なトナーコアの強度及びトナーの定着性を確保するためには、ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)が1000以上2000以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の分子量分布(数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率Mw/Mn)は9以上21以下であることが好ましい。
また、トナーコアは、ポリエステル樹脂に加えて、ポリエステル樹脂以外の樹脂をさらに含有してもよい。ポリエステル樹脂以外の結着樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル酸系樹脂(より具体的には、アクリル酸エステル重合体又はメタクリル酸エステル重合体等)、オレフィン系樹脂(より具体的には、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂等)、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、N−ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、又はウレタン樹脂のような熱可塑性樹脂が好ましい。また、これら各樹脂の共重合体、すなわち上記樹脂中に任意の繰返し単位が導入された共重合体(より具体的には、スチレン−アクリル酸系樹脂又はスチレン−ブタジエン系樹脂等)も、結着樹脂として好適に使用できる。
(着色剤)
トナーコアは、着色剤を含有していてもよい。着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。画像形成に適したトナーを得るためには、着色剤の量が、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましい。
トナーコアは、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。黒色着色剤として、後述する磁性粉を用いてもよい。
トナーコアは、イエロー着色剤(より具体的には、ナフトールイエロー、モノアゾイエロー、ジアゾイエロー、ジスアゾイエロー、又はアントラキノン化合物等)、マゼンタ着色剤(より具体的には、キナクリドン化合物、ナフトール化合物、カーミン6B、又はモノアゾレッド等)、又はシアン着色剤(より具体的には、フタロシアニンブルー、又はアントラキノン化合物等)のようなカラー着色剤を含有していてもよい。
(離型剤)
トナーコアは、離型剤を含有していてもよい。離型剤は、例えば、トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の量が、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
トナーコア中の離型剤としてはワックスが好ましい。ワックスの例としては、エステルワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フッ素樹脂ワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、又はモンタンワックスが挙げられる。トナーの定着性及び耐オフセット性を向上させるためには、エステルワックスが好ましい。エステルワックスとしては、天然エステルワックス(例えば、カルナウバワックス、又はライスワックス)、又は合成エステルワックスが挙げられる。トナーコアが結着樹脂としてポリエステル樹脂を含有する場合には、トナーコアが、離型剤として、エステルワックス(例えば、カルナウバワックス)、又はポリエチレンワックスを含有することが特に好ましい。1種類の離型剤を単独で使用してもよいし、複数種の離型剤を併用してもよい。
(電荷制御剤)
トナーコアは、電荷制御剤を含有していてもよい。電荷制御剤は、例えば、トナーの帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電可能か否かの指標になる。
トナーコアに負帯電性の電荷制御剤(より具体的には、有機金属錯体又はキレート化合物等)を含有させることで、トナーコアのアニオン性を強めることができる。また、トナーコアに正帯電性の電荷制御剤(より具体的には、ピリジン、ニグロシン、又は4級アンモニウム塩等)を含有させることで、トナーコアのカチオン性を強めることができる。ただし、トナーにおいて十分な帯電性が確保される場合には、トナーコアに電荷制御剤を含有させる必要はない。
(磁性粉)
トナーコアは、磁性粉を含有していてもよい。磁性粉の材料としては、例えば、強磁性金属(より具体的には、鉄、コバルト、ニッケル、又はこれら金属の1種以上を含む合金等)、強磁性金属酸化物(より具体的には、フェライト、マグネタイト、又は二酸化クロム等)、又は強磁性化処理が施された材料(より具体的には、熱処理により強磁性が付与された炭素材料等)を好適に使用できる。1種類の磁性粉を単独で使用してもよいし、複数種の磁性粉を併用してもよい。
トナーコアに十分な磁性を均一に付与するためには、磁性粉の粒子径は、0.1μm以上1.0μm以下であることが好ましい。また、磁性粉からの金属イオン(例えば、鉄イオン)の溶出を抑制するためには、表面処理剤(より具体的には、シランカップリング剤又はチタネートカップリング剤等)で磁性粉(詳しくは、磁性粉に含まれる各磁性粒子の表面)を処理することが好ましい。
[コア外添粒子]
前述の基本構成を有するトナーでは、トナー粒子が、複合コアと、複合コアの表面を覆うシェル層とを備える。複合コアでは、複数のコア外添粒子(それぞれ第1樹脂を含有する樹脂粒子)がそれぞれトナーコアの表面に付着している。
第1樹脂(コア外添粒子を構成する樹脂)は、ビニル化合物に由来する繰返し単位を含むことが好ましい。トナーに付与すべき性能に応じた官能基を有するビニル化合物を重合させて樹脂粒子(詳しくは、第1樹脂を含有する樹脂粒子)を得ることによって、容易かつ的確に、トナーに所望の性能を付与することができる。なお、樹脂において、ビニル化合物に由来する繰返し単位は、炭素二重結合「C=C」により付加重合していると考えられる。ビニル化合物は、ビニル基(CH2=CH−)、又はビニル基中の水素が置換された基を有する化合物である。ビニル化合物の例としては、エチレン、プロピレン、ブタジエン、塩化ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、又はスチレンが挙げられる。
トナーの正帯電性を向上させるためには、第1樹脂(コア外添粒子を構成する樹脂)が、(メタ)アクリロイル基含有4級アンモニウム化合物に由来する1種以上の繰返し単位を含む樹脂であることが好ましい。(メタ)アクリロイル基含有4級アンモニウム化合物の好適な例としては、(メタ)アクリルアミドアルキルトリメチルアンモニウム塩(より具体的には、(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド等)、又は(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリメチルアンモニウム塩(より具体的には、2−(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド等)が挙げられる。
トナーの正帯電性を向上させるためには、第1樹脂(コア外添粒子を構成する樹脂)が、(メタ)アクリルアミドアルキルトリメチルアンモニウム塩に由来する1種以上の繰返し単位と、アクリル酸系モノマーに由来する1種以上の繰返し単位(例えば、メタクリル酸メチル及びアクリル酸ブチルの各々に由来する2種類の繰返し単位)とを含む樹脂であることが特に好ましい。例えば、第1樹脂が1種以上の(メタ)アクリルアミドアルキルトリメチルアンモニウム塩と1種以上のアクリル酸系モノマーとの共重合体である場合には、アクリル酸系モノマーの量に対する(メタ)アクリルアミドアルキルトリメチルアンモニウム塩の量(配合比率)を増やすほど、第1樹脂のガラス転移点(Tg)が高くなる傾向がある。
アクリル酸系モノマーの好適な例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの好適な例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、又は(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの好適な例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、又は(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが挙げられる。
[シェル層]
前述の基本構成を有するトナーでは、トナーコアとその表面に付着した樹脂粒子とが、複合体(複合コア)を構成する。シェル層は、複合コアの表面を覆っている。例えば、液中で複合コアとシェル材料とを化学的に反応させることで、複合コアの表面にシェル層が結合する。シェル層は、粒状感のない膜であってもよいし、粒状感のある膜であってもよい。シェル材料として樹脂粒子を使用した場合、材料(樹脂粒子)が完全に溶けて膜状の形態で硬化すれば、シェル層として、粒状感のない膜が形成されると考えられる。他方、材料(樹脂粒子)が完全に溶けずに膜状の形態で硬化すれば、シェル層として、樹脂粒子が2次元的に連なった形態を有する膜(粒状感のある膜)が形成されると考えられる。例えば液中でトナーコアの表面に樹脂粒子を付着させて、液を加熱することで、樹脂粒子を溶かして膜化することができる。ただし、乾燥工程で加熱されて、又は外添工程で物理的な衝撃力を受けて、樹脂粒子の膜化が進行してもよい。シェル層全体が一体的に形成されるとは限らない。シェル層は、単一の膜であってもよいし、互いに離間して存在する複数の膜(島)の集合体であってもよい。
シェル層は、第2樹脂を含有する膜である。第2樹脂としては、例えば熱可塑性樹脂が好ましい。トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図るためには、シェル層が、実質的に熱可塑性樹脂のみから構成される膜であることが特に好ましい。
高温高湿環境においても十分なトナーの帯電性を確保するためには、複数のコア外添粒子がそれぞれ、シェル層よりも強い帯電性を有し、かつ、シェル層の疎水性が、それらコア外添粒子の各々の疎水性よりも強いことが好ましい。
トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図るためには、第2樹脂(シェル層を構成する樹脂)が、スチレン系モノマー(より具体的には、スチレン等)に由来する1種以上の繰返し単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(より具体的には、アクリル酸ブチル等)に由来する1種以上の繰返し単位とを含む樹脂であることが好ましい。例えば、第2樹脂が1種以上のスチレン系モノマーと1種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体である場合には、スチレン系モノマーの量に対する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの量(配合比率)を増やすほど、第2樹脂のガラス転移点(Tg)が低くなる傾向がある。
シェル層が十分強い疎水性と適度な強度とを有するためには、そのシェル層を構成する第2樹脂に含まれる繰返し単位のうち最も高いモル分率を有する繰返し単位が、スチレン系モノマーに由来する繰返し単位であることが好ましい。
空気中の水分がシェル層の表面に吸着することを十分抑制するためには、そのシェル層を構成する第2樹脂に含まれる全ての繰返し単位のうち、親水性官能基を有する繰返し単位の割合が、10質量%以下であることが好ましく、0質量%であることが特に好ましい。親水性官能基は、酸基(より具体的には、カルボキシル基又はスルホ基等)、水酸基、及びこれらの塩(より具体的には、−COONa、−SO3Na、又は−ONa等)である。
スチレン系モノマーの好適な例としては、スチレン、アルキルスチレン(より具体的には、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、又は4−tert−ブチルスチレン等)、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、又はp−クロロスチレンが挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの好適な例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、又は(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。
[外添剤]
トナー母粒子の表面に外添剤(詳しくは、複数の外添剤粒子を含む粉体)を付着させてもよい。例えば、トナー母粒子(粉体)と外添剤(粉体)とを一緒に攪拌することで、外添剤粒子の一部(底部)がトナー母粒子の表層部に埋め込まれ、物理的な力でトナー母粒子の表面に外添剤が付着(物理的結合)する。外添剤は、例えばトナーの流動性又は取扱性を向上させるために使用される。トナー粒子からの外添剤粒子の脱離を抑制しながら外添剤の機能を十分に発揮させるためには、外添剤の量(複数種の外添剤粒子を使用する場合には、それら外添剤粒子の合計量)が、トナー母粒子100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
外添剤粒子としては、無機粒子が好ましく、シリカ粒子、又は金属酸化物(より具体的には、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、又はチタン酸バリウム等)の粒子が特に好ましい。ただし、外添剤粒子として、脂肪酸金属塩(より具体的には、ステアリン酸亜鉛等)のような有機酸化合物の粒子、又は樹脂粒子を使用してもよい。1種類の外添剤粒子を単独で使用してもよいし、複数種の外添剤粒子を併用してもよい。
外添剤粒子は、表面処理されていてもよい。例えば、外添剤粒子としてシリカ粒子を使用する場合、表面処理剤によりシリカ粒子の表面に疎水性及び/又は正帯電性が付与されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、カップリング剤(より具体的には、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、又はアルミネートカップリング剤等)、又はシリコーンオイル(より具体的には、ジメチルシリコーンオイル等)を好適に使用できる。シランカップリング剤として、シラン化合物(より具体的には、メチルトリメトキシシラン、又はアミノシラン等)を使用してもよいし、シラザン化合物(より具体的には、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)等)を使用してもよい。シリカ基体(未処理のシリカ粒子)の表面が表面処理剤で処理されると、シリカ基体の表面に存在する多数の水酸基(−OH)が部分的に又は全体的に、表面処理剤に由来する官能基に置換される。その結果、表面処理剤に由来する官能基(詳しくは、水酸基よりも疎水性及び/又は正帯電性の強い官能基)を表面に有するシリカ粒子が得られる。
[トナーの製造方法]
前述の基本構成を有するトナーを容易かつ好適に製造するためには、例えば、次に示すトナーコア準備工程、コア外添工程、及びシェル層形成工程を含むトナーの製造方法が好ましい。
(トナーコア準備工程)
トナーコアの作製方法の好適な例としては、粉砕法又は凝集法が挙げられる。これらの方法は、結着樹脂中に内添剤を良好に分散させ易い。
粉砕法の一例では、まず、結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、及び離型剤を混合する。続けて、得られた混合物を、溶融混練装置(例えば、1軸又は2軸の押出機)を用いて溶融混練する。続けて、得られた溶融混練物を粉砕及び分級する。これにより、トナーコアが得られる。粉砕法は、凝集法よりも容易にトナーコアを作製できることが多い。
凝集法の一例では、まず、結着樹脂、離型剤、及び着色剤の各々の微粒子を含む水性媒体中で、これらの微粒子を所望の粒子径になるまで凝集させる。これにより、結着樹脂、離型剤、及び着色剤を含有する凝集粒子が形成される。続けて、得られた凝集粒子を加熱して、凝集粒子に含有される成分を合一化させる。これにより、所望の粒子径を有するトナーコアが得られる。
(コア外添工程)
トナーコアの表面に、第1樹脂粒子(実質的に第1樹脂からなる樹脂粒子)を固定化する。第1樹脂は、例えば、(メタ)アクリロイル基含有4級アンモニウム化合物に由来する1種以上の繰返し単位を含む樹脂である。トナーコアの表面に第1樹脂粒子を固定化する方法の例としては、混合装置(より具体的には、日本コークス工業株式会社製のFMミキサー、日本コークス工業株式会社製のマルチパーパスミキサ、又はホソカワミクロン株式会社製のナウターミキサー(登録商標)等)を用いて、トナーコア(粉体)と樹脂粉体(詳しくは、複数の第1樹脂粒子を含む粉体)とを混合する方法が挙げられる。トナーコア(粉体)と樹脂粉体とを一緒に攪拌することで、第1樹脂粒子の底部がトナーコアの表層部に埋め込まれる。その結果、複合コア(トナーコアと第1樹脂粒子との複合体)が得られる。
なお、FMミキサーは、温度調節用ジャケット付きの混合槽を備え、混合槽内に、デフレクタと、温度センサーと、上羽根と、下羽根とをさらに備える。FMミキサーを用いて、混合槽内に投入された材料(より具体的には、粉体又はスラリー等)を混合する場合、下羽根の回転により、混合槽内の材料が旋回しながら上下方向に流動する。これにより、混合槽内に材料の対流が生じる。上羽根は、高速回転して、材料に剪断力を与える。FMミキサーは、材料に剪断力を与えることで、強力な混合力で材料を混合することを可能にしている。
(シェル層形成工程)
次に、得られた複合コアの表面にシェル層を形成する。以下、シェル層の形成方法の好適な例について説明する。なお、シェル層形成時におけるトナーコア成分(特に、結着樹脂及び離型剤)の溶解又は溶出を抑制するためには、水性媒体中でシェル層を形成することが好ましい。水性媒体は、水を主成分とする媒体(より具体的には、純水、又は水と極性媒体との混合液等)である。水性媒体は溶媒として機能してもよい。水性媒体中に溶質が溶けていてもよい。水性媒体は分散媒として機能してもよい。水性媒体中に分散質が分散していてもよい。水性媒体中の極性媒体としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール又はエタノール等)を使用できる。水性媒体の沸点は約100℃である。
まず、イオン交換水に酸性物質(例えば、p−トルエンスルホン酸水溶液)を加えて、弱酸性(例えば、3以上5以下から選ばれるpH)の水性媒体を調製する。続けて、その水性媒体に複合コアとシェル材料とを添加する。添加順序は任意であり、複合コアよりも先にシェル材料を添加してもよいし、複合コアとシェル材料とを同時に添加してもよい。シェル材料としては、例えば、第2樹脂粒子(実質的に第2樹脂からなる樹脂粒子)のサスペンションを添加する。第2樹脂は、例えば、スチレン系モノマーに由来する1種以上の繰返し単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する1種以上の繰返し単位とを含む樹脂である。第1樹脂粒子は第2樹脂粒子よりも強い正帯電性を有する。また、第2樹脂粒子の疎水性は、第1樹脂粒子の疎水性よりも強い。
なお、所望の厚さを有するシェル層を形成するために適したシェル材料の添加量は、例えば複合コアの比表面積に基づいて算出できる。また、重合促進剤を液中に添加してもよい。
複合コアの表面に均一にシェル材料を付着させるためには、シェル材料を含む液中に複合コアを高度に分散させることが好ましい。液中に複合コアを高度に分散させるために、液中に界面活性剤を含ませてもよいし、強力な攪拌装置(例えば、プライミクス株式会社製「ハイビスディスパーミックス」)を用いて液を攪拌してもよい。複合コアがアニオン性を有する場合には、同一極性を有するアニオン界面活性剤を使用することで、複合コアの凝集を抑制できる。界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩、又は石鹸を使用できる。
続けて、複合コア及びシェル材料を含む液を攪拌しながら液の温度を所定の速度(例えば、0.05℃/分以上3.5℃/分以下から選ばれる速度)で所定の保持温度(例えば、40℃以上95℃以下から選ばれる温度)まで上昇させる。さらに、液を攪拌しながら液の温度を上記保持温度に所定の時間(例えば、30分間以上4時間以下から選ばれる時間)保つ。液の温度を高温に保っている間(又は、昇温中)に、複合コアとシェル材料との間で固定化(シェル層の形成)が進行すると考えられる。シェル材料がトナーコアと結合することで、シェル層が形成される。加熱により液中で第2樹脂粒子が溶ける(又は、変形する)ことで、樹脂膜(シェル層)が形成される。液中で複合コアの表面にシェル層が形成されることで、トナー母粒子の分散液が得られる。なお、第1樹脂粒子(コア外添粒子)は、粒子状の形態を維持したまま、トナーコアの表面に残る。シェル層の厚さが、第1樹脂粒子(コア外添粒子)の2/3倍以下になるまで、シェル材料(第2樹脂粒子)の膜化を進行させる。第2樹脂粒子が十分に膜化することで、トナー母粒子が得られる。得られたトナー母粒子においては、トナーコアと第1樹脂粒子(コア外添粒子)との隙間にシェル層(樹脂膜)が入り込んでいると考えられる。
上記のように、液中で複合コアの表面に第2樹脂粒子を付着させて、液を加熱することで、第2樹脂粒子を溶かして(又は、変形させて)膜化することができる。ただし、乾燥工程で加熱されて、又はシェル外添工程で物理的な衝撃力を受けて、第2樹脂粒子の膜化が進行してもよい。
続けて、例えば水酸化ナトリウムを用いてトナー母粒子の分散液を中和する。続けて、トナー母粒子の分散液を、例えば常温(約25℃)まで冷却する。続けて、例えばブフナー漏斗を用いて、トナー母粒子の分散液をろ過する。これにより、トナー母粒子が液から分離(固液分離)され、ウェットケーキ状のトナー母粒子が得られる。続けて、例えば、水中へのトナー母粒子の分散と、得られた分散液のろ過とを繰り返して、トナー母粒子を洗浄する。続けて、洗浄されたトナー母粒子を乾燥する。トナー母粒子の乾燥には、例えば、スプレードライヤー、流動層乾燥機、真空凍結乾燥機、又は減圧乾燥機を用いることができる。その後、必要に応じて、トナー母粒子に対する外添(シェル外添工程)を行ってもよい。シェル外添工程では、例えば混合機(より具体的には、日本コークス工業株式会社製のFMミキサー等)を用いてトナー母粒子と外添剤(例えば、シリカ粒子)とを混合して、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させる。なお、乾燥工程でスプレードライヤーを用いる場合には、外添剤(例えば、シリカ粒子)の分散液をトナー母粒子に噴霧することで、乾燥工程とシェル外添工程とを同時に行うことができる。こうして、トナー粒子を多数含むトナーが得られる。
なお、上記トナーの製造方法の内容及び順序はそれぞれ、要求されるトナーの構成又は特性等に応じて任意に変更することができる。例えば、シェル材料を、一度に液に添加してもよいし、複数回に分けて液に添加してもよい。外添工程の後で、トナーを篩別してもよい。また、必要のない工程は割愛してもよい。例えば、市販品をそのまま材料として用いることができる場合には、市販品を用いることで、その材料を調製する工程を割愛できる。また、液のpHを調整しなくても、シェル層を形成するための反応が良好に進行する場合には、pH調整工程を割愛してもよい。また、外添剤が不要であれば、シェル外添工程を割愛してもよい。トナー母粒子の表面に外添剤を付着させない(シェル外添工程を割愛する)場合には、トナー母粒子がトナー粒子に相当する。樹脂を合成するための材料としては、必要に応じて、モノマーに代えてプレポリマーを使用してもよい。また、所定の化合物を得るために、原料として、その化合物の塩、エステル、水和物、又は無水物を使用してもよい。効率的にトナーを製造するためには、多数のトナー粒子を同時に形成することが好ましい。同時に製造されたトナー粒子は、互いに略同一の構成を有すると考えられる。
本発明の実施例について説明する。表1に、実施例又は比較例に係るトナーTA−1〜TA−8及びTB−1〜TB−5(それぞれ静電潜像現像用トナー)を示す。また、表1に示されるトナーの製造に用いられるコア外添粒子(樹脂粒子SB−1〜SB−5)を、表2に示す。
Figure 0006493324
Figure 0006493324
以下、トナーTA−1〜TA−8及びTB−1〜TB−5の製造方法、評価方法、及び評価結果について、順に説明する。なお、誤差が生じる評価においては、誤差が十分小さくなる相当数の測定値を得て、得られた測定値の算術平均を評価値とした。また、個数平均1次粒子径(平均円相当径)は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影した粒子投影像から求めた。また、Tg(ガラス転移点)の測定方法は、次に示すとおりであった。
<Tgの測定方法>
測定装置として、示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いた。測定装置を用いて試料の吸熱曲線を測定することにより、試料のTg(ガラス転移点)を求めた。具体的には、試料(例えば、樹脂)約10mgをアルミ皿(アルミニウム製の容器)に入れて、そのアルミ皿を測定装置の測定部にセットした。また、リファレンスとして空のアルミ皿を使用した。吸熱曲線の測定では、測定部の温度を、測定開始温度25℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温させた(RUN1)。その後、測定部の温度を200℃から25℃まで10℃/分の速度で降温させた。続けて、測定部の温度を再び25℃から200℃まで10℃/分の速度で昇温させた(RUN2)。RUN2により、試料の吸熱曲線(縦軸:熱流(DSC信号)、横軸:温度)を得た。得られた吸熱曲線から、試料のTgを読み取った。吸熱曲線中、比熱の変化点(ベースラインの外挿線と立ち下がりラインの外挿線との交点)の温度(オンセット温度)が試料のTg(ガラス転移点)に相当する。
[材料の準備]
(シェル材料:サスペンションSAの準備)
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコを温度30℃のウォーターバスにセットし、フラスコ内にイオン交換水815mLとカチオン界面活性剤(花王株式会社製「コータミン(登録商標)24P」、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド25質量%水溶液)75mLとを入れた。その後、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を80℃に昇温させた。続けて、80℃のフラスコ内容物に2種類の液(第1の液及び第2の液)をそれぞれ5時間かけて滴下した。第1の液は、スチレン68mLと、アクリル酸n−ブチル12mLとの混合液であった。第2の液は、過硫酸カリウム0.5gをイオン交換水30mLに溶かした溶液であった。続けて、フラスコ内の温度を80℃にさらに2時間保って、フラスコ内容物を重合させた。その結果、固形分濃度8質量%の樹脂粒子のサスペンション(以下、サスペンションSAと記載する)が得られた。得られたサスペンションSAに含まれる樹脂粒子に関して、個数平均1次粒子径は31nmであり、Tgは71℃であった。
(コア外添粒子:樹脂粒子SB−1の準備)
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコを温度30℃のウォーターバスにセットし、フラスコ内にイオン交換水790mLとカチオン界面活性剤(花王株式会社製「コータミン24P」、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド25質量%水溶液)30mLとを入れた。その後、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を80℃に昇温させた。続けて、80℃のフラスコ内容物に2種類の液(第3の液及び第4の液)をそれぞれ5時間かけてフラスコ内に滴下した。第3の液は、メタクリル酸メチル90mLと、アクリル酸n−ブチル40mLと、(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド20mLとの混合液であった。第4の液は、過硫酸カリウム0.5gをイオン交換水30mLに溶かした溶液であった。続けて、フラスコ内の温度を80℃にさらに2時間保って、フラスコ内容物を重合させた。その結果、樹脂粒子のサスペンション(多数の樹脂粒子を含む液)が得られた。続けて、遠心分離機を用いて、液中の樹脂粒子を沈降させた。その後、上澄み液を除去し、残った樹脂粒子を乾燥した。その結果、樹脂粒子の粉体(樹脂粒子SB−1)が得られた。
(コア外添粒子:樹脂粒子SB−2の準備)
樹脂粒子SB−2の作製方法は、第3の液として、メタクリル酸メチル90mLとアクリル酸n−ブチル40mLと(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド20mLとの混合液の代わりに、メタクリル酸メチル100mLとアクリル酸n−ブチル30mLと(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド20mLとの混合液を使用した以外は、樹脂粒子SB−1の作製方法と同じであった。
(コア外添粒子:樹脂粒子SB−3の準備)
樹脂粒子SB−3の作製方法は、イオン交換水の量を790mLから785mLに変更し、第3の液として、メタクリル酸メチル90mLとアクリル酸n−ブチル40mLと(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド20mLとの混合液の代わりに、メタクリル酸メチル75mLとアクリル酸n−ブチル60mLと(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド20mLとの混合液を使用した以外は、樹脂粒子SB−1の作製方法と同じであった。
(コア外添粒子:樹脂粒子SB−4の準備)
樹脂粒子SB−4の作製方法は、カチオン界面活性剤(コータミン24P)の量を30mLから75mLに変更し、第3の液として、メタクリル酸メチル90mLとアクリル酸n−ブチル40mLと(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド20mLとの混合液の代わりに、メタクリル酸メチル100mLとアクリル酸n−ブチル30mLと(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド20mLとの混合液を使用した以外は、樹脂粒子SB−1の作製方法と同じであった。
(コア外添粒子:樹脂粒子SB−5の準備)
樹脂粒子SB−5の作製方法は、イオン交換水の量を790.0mLから871.2mLに変更し、カチオン界面活性剤(コータミン24P)の量を30mLから20mLに変更し、第3の液として、メタクリル酸メチル90mLとアクリル酸n−ブチル40mLと(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライド20mLとの混合液の代わりに、スチレン72.8mLとアクリル酸n−ブチル6.0mLとの混合液を使用した以外は、樹脂粒子SB−1の作製方法と同じであった。
上記のようにして得られた樹脂粒子SB−1〜SB−5(それぞれ粉体)に関して、個数平均1次粒子径(平均円相当径)と、ガラス転移点(Tg)と、pH4のゼータ電位との各々の測定結果は、表2に示すとおりであった。例えば、樹脂粒子SB−1に関して、個数平均1次粒子径は62nmであり、ガラス転移点(Tg)は86℃であり、pH4のゼータ電位は+20mVであった。個数平均1次粒子径(平均円相当径)は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影した粒子投影像から求めた。樹脂粒子SB−1〜SB−5(それぞれ粉体)はそれぞれ、シャープな粒度分布を有し、表2に示す「粒子径」±1nmの粒子径(円相当径)を有する樹脂粒子のみを実質的に含んでいた。ガラス転移点(Tg)の測定方法は、前述した示差走査熱量測定であった。ゼータ電位の測定方法は、以下のとおりであった。
<ゼータ電位の測定方法>
イオン交換水99.9gに、試料(樹脂粒子)1gと、ノニオン界面活性剤(花王株式会社製「エマルゲン(登録商標)120」、成分:ポリオキシエチレンラウリルエーテル)の濃度10質量%水溶液0.1gとを入れた。続けて、その液に対して、超音波液体混合装置(アズワン株式会社販売「スーパーソニックVS−F100」、高周波出力:最大100W、発振周波数:50kHz)を用いて3分間の超音波処理を行って、液中に樹脂粒子を分散させた。続けて、1Nの塩酸を用いて、樹脂粒子の分散液のpHを4に調整し、樹脂粒子を含むpH4の分散液を得た。続けて、得られたpH4の分散液を測定対象として、電気泳動法(より詳しくは、レーザードップラー方式の電気泳動法)により、樹脂粒子のゼータ電位を測定した。詳しくは、温度23℃かつpH4の分散液中の樹脂粒子のゼータ電位を、レーザードップラー方式のゼータ電位計(大塚電子株式会社製「ELSZ−1000」)を用いて測定した。1つの試料につき3回測定し、得られた3つの測定値の算術平均を、その試料の評価値(ゼータ電位)とした。
[トナーの製造方法]
(トナーコアの作製)
ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物(詳しくは、ビスフェノールAを骨格にしてエチレンオキサイドを付加したアルコール)に、多官能基を有する酸(詳しくは、テレフタル酸)を反応させることにより、ポリエステル樹脂を合成した。その結果、水酸基価20mgKOH/g、酸価40mgKOH/g、Tm(軟化点)90℃、Tg(ガラス転移点)49℃、SP値11.2(cal/cm31/2のポリエステル樹脂が得られた。
上記のようにして得たポリエステル樹脂100質量部と、着色剤(C.I.ピグメントブルー15:3、成分:銅フタロシアニン顔料)5質量部と、離型剤(合成エステルワックス:日油株式会社製「ニッサンエレクトール(登録商標)WEP−3」)5質量部とを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて混合した。
続けて、得られた混合物を、2軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて溶融混練した。続けて、得られた混練物を冷却した後、粉砕機(フロイント・ターボ株式会社製「ターボミル」)を用いて粉砕した。続けて、得られた粉砕物を、分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ−LABO型」)を用いて分級した。その結果、体積中位径(D50)6μm、円形度0.93、Tg(ガラス転移点)51℃、Tm(軟化点)91℃のトナーコアが得られた。
(コア外添)
上記のようにして得たトナーコア1000gと、表1に示す種類及び量の樹脂粒子(各トナーに定められた、表1に示される樹脂粒子SB−1〜SB−5のいずれか)とを、回転速度4000rpmの条件で、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて10分間混合した。例えば、トナーTA−1の製造では、1000gのトナーコアと、10gの樹脂粒子SB−1とを混合した。また、トナーTA−4の製造では、1000gのトナーコアと、20gの樹脂粒子SB−1とを混合した。また、トナーTA−8の製造では、1000gのトナーコアと、10gの樹脂粒子SB−2とを混合した。
このタイミングでの外添処理(トナーコアと樹脂粒子との混合)が、「コア外添」に相当する。コア外添により、添加した樹脂粒子(樹脂粒子SB−1〜SB−5のいずれか)の全てがトナーコアの表面に付着した。その結果、複合コア(表面に樹脂粒子が付着したトナーコア)が得られた。
(シェル層形成工程)
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコを準備し、フラスコをウォーターバスにセットした。続けて、フラスコ内にイオン交換水300mLを入れて、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を30℃に保った。続けて、フラスコ内に濃度1mol/Lのp−トルエンスルホン酸水溶液を加えて、フラスコ内容物のpHを4に調整した。
続けて、フラスコ内に、表1に示す量のシェル材料(前述の手順で調製したサスペンションSA)を添加した。例えば、トナーTA−1の製造では、シェル材料(サスペンションSA)を37.0g添加した。また、トナーTA−7の製造では、シェル材料(サスペンションSA)を74.0g添加した。
続けて、フラスコ内に、前述の手順で作製した複合コア300gを添加し、フラスコ内容物を十分攪拌した。続けて、フラスコ内にイオン交換水300mLを追加し、フラスコ内容物を回転速度(攪拌羽根)100rpmで攪拌しながら1℃/分の速度で50℃まで昇温させた。そして、フラスコ内の温度が50℃になった時点で、温度50℃の、濃度0.5モル/Lのリン酸水素二ナトリウム水溶液20gと濃度10質量%のアニオン界面活性剤(花王株式会社製「エマール(登録商標)0」、成分:ラウリル硫酸ナトリウム)水溶液10gとの混合液(予め加熱された温度50℃の液)をフラスコ内に加えた。さらに、フラスコ内容物を回転速度(攪拌羽根)100rpmで攪拌しながら1.0℃/分の速度でフラスコ内容物を昇温させた。そして、トナー母粒子の円形度が0.965に達した時点で、その昇温を止めるとともに、フラスコ内に冷水を入れて、フラスコ内容物を室温(約25℃)まで急冷した。その結果、液中で複合コアの表面にシェル層が形成され、トナー母粒子の分散液が得られた。得られたトナー母粒子では、複合コアの表面領域のうち樹脂粒子が存在しない領域を選択的に、シェル層(スチレン−アクリル酸系樹脂の膜)が覆っていた。
(洗浄工程)
上記のようにして得られたトナー母粒子の分散液を、ブフナー漏斗を用いてろ過(固液分離)した。その結果、ウェットケーキ状のトナー母粒子が得られた。その後、得られたウェットケーキ状のトナー母粒子をイオン交換水に再分散させた。さらに、分散とろ過とを5回繰り返して、トナー母粒子を洗浄した。
(乾燥工程)
続けて、洗浄されたトナー母粒子(粉体)を、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させて、トナー母粒子のスラリーを得た。続けて、連続式表面改質装置(フロイント産業株式会社製「コートマイザー(登録商標)」)を用いて、熱風温度45℃かつブロアー風量2m3/分の条件で、スラリー中のトナー母粒子を乾燥させた。その結果、乾燥したトナー母粒子(粉体)が得られた。
(シェル外添)
続けて、UMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて、上記のようにして得たトナー母粒子200gと、正帯電性シリカ粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL(登録商標)REA90」、内容:表面処理により正帯電性が付与された乾式シリカ粒子、個数平均1次粒子径:20nm)3gとを、5分間混合した。これにより、トナー母粒子の表面に外添剤が付着した。その後、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別を行った。その結果、多数のトナー粒子を含むトナー(トナーTA−1〜TA−8及びTB−1〜TB−5)が得られた。
上記のようにして得られたトナーTA−1〜TA−8及びTB−1〜TB−5に関して、コア外添粒子(複合コアを構成する樹脂粒子)の粒子径と、シェル層の厚さ(シェル厚)と、シェル層(詳しくは、シェル層を構成する樹脂)のガラス転移点(Tg)との各々の測定結果は、表1に示すとおりであった。また、コア外添粒子の粒子径(S1)をシェル層の厚さ(S2)で除した値RS(=S1/S2)は、表3に示すとおりであった。また、コア外添粒子を構成する樹脂のガラス転移点(Tg1)から、シェル層を構成する樹脂のガラス転移点(Tg2)を減算した値ΔTg(=Tg1−Tg2)は、表3に示すとおりであった。
Figure 0006493324
例えば、トナーTA−1に関しては、コア外添粒子の個数平均1次粒子径(S1)が62nmであり、シェル層の厚さ(S2)が20nmであり、コア外添粒子を構成する樹脂のガラス転移点(Tg1)が86℃であり、シェル層を構成する樹脂のガラス転移点(Tg2)が71℃であった。トナーTA−1では、コア外添粒子の個数平均1次粒子径(S1)が、シェル層の厚さ(S2)の3.1倍であった。トナーTA−1では、コア外添粒子を構成する樹脂のガラス転移点(Tg1)が、シェル層を構成する樹脂のガラス転移点(Tg2)よりも15℃高かった。
コア外添粒子の個数平均1次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影した粒子投影像から求めた。コア外添粒子の粒子径は、添加時の粒子径(表2参照)と同じであった。ガラス転移点(Tg)の測定方法は、前述した示差走査熱量測定であった。シェル層の厚さの測定方法は、以下のとおりであった。
<シェル層の厚さの測定方法>
試料(トナー)を常温硬化性のエポキシ樹脂中に分散させ、温度40℃の雰囲気で2日間硬化させて硬化物を得た。得られた硬化物を、四酸化オスミウムを用いて染色した後、ダイヤモンドナイフを備えたウルトラミクロトーム(ライカマイクロシステムズ株式会社製「EM UC6」)を用いて切り出し、薄片試料を得た。続けて、得られた薄片試料の断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)(日本電子株式会社製「JSM−6700F」)を用いて撮影した。
画像解析ソフトウェア(三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いてTEM撮影像を解析することで、シェル層の厚さを計測した。具体的には、トナー粒子の断面の略中心で直交する2本の直線を引き、それら2本の直線上の、シェル層と交差する4箇所の長さを測定した。続けて、測定された4箇所の長さの算術平均値を、測定対象である1個のトナー粒子のシェル層の厚さとした。試料(トナー)に含まれる20個のトナー粒子についてそれぞれシェル層の厚さを測定し、20個の個数平均値を試料(トナー)の評価値(シェル層の厚さ)とした。
なお、シェル層の厚さが薄い場合には、TEM撮影像上でのトナーコアとシェル層との境界が不明瞭になるため、シェル層の厚さの測定が困難な場合がある。このような場合には、TEMと電子エネルギー損失分光法(EELS)とを組み合わせてトナーコアとシェル層との境界を明確にすることにより、シェル層の厚さを測定した。具体的には、TEM撮影像中で、EELSを用いてシェル層に含まれる特徴的な元素のマッピングを行った。
[評価方法]
各試料(トナーTA−1〜TA−8及びTB−1〜TB−5)の評価方法は、以下のとおりである。
(耐熱保存性)
試料(トナー)3gを容量20mLのポリエチレン製容器に入れて密閉し、密閉された容器にタッピング処理を5分間行った。続けて、容器を、58℃に設定された恒温器内に3時間静置した。その後、恒温器から取り出したトナーを室温(約25℃)まで冷却して、評価用トナーを得た。
続けて、得られた評価用トナーを、質量既知の目開き106μmの篩に載せた。そして、トナーを含む篩の質量を測定し、篩上のトナーの質量(篩別前のトナーの質量)を求めた。続けて、その篩をパウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)にセットし、パウダーテスターのマニュアルに従い、レオスタッド目盛り5の条件で30秒間、篩を振動させ、評価用トナーを篩別した。そして、篩別後に、トナーを含む篩の質量を測定することで、篩上に残留したトナーの質量(篩別後のトナーの質量)を求めた。篩別前のトナーの質量と篩別後のトナーの質量とから、次の式に基づいて残存率(単位:質量%)を求めた。
残存率=100×篩別後のトナーの質量/篩別前のトナーの質量
残存率が20質量%以下であれば◎(非常に良い)と評価し、残存率が20質量%超40質量%以下であれば○(良い)と評価し、残存率が40質量%を超えれば×(良くない)と評価した。
(低温定着性)
現像剤用キャリア(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製の「TASKalfa5550ci」用キャリア)100質量部と、試料(トナー)10質量部とを、ボールミルを用いて30分間混合して、2成分現像剤を調製した。ただし、トナーTB−5の評価では、現像剤用キャリアとして、負帯電性トナー用キャリア(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製の「Anesis6016」用キャリア)を使用した。
評価機としては、Roller−Roller方式の加熱加圧型の定着装置(ニップ幅8mm)を有するプリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5200DN」を改造して定着温度を変更可能にした評価機)を用いた。上述のようにして調製した2成分現像剤を評価機の現像装置に投入し、試料(補給用トナー)を評価機のトナーコンテナに投入した。
温度20℃かつ湿度65%RHの環境下、上記評価機を用いて、評価用紙(モンディ社製「ColorCopy(登録商標)」、A4サイズ、坪量90g/m2)に、線速200mm/秒、トナー載り量1.0mg/cm2の条件で、大きさ25mm×25mmのソリッド画像(詳しくは、未定着のトナー像)を形成した。続けて、画像が形成された紙を評価機の定着装置に通した。ニップ通過時間は40m秒であった。
最低定着温度の評価では、定着温度の設定範囲が120℃以上160℃以下であった。詳しくは、定着装置の定着温度を120℃から2℃ずつ上げて、ソリッド画像(トナー像)を紙に定着できる最低温度(最低定着温度)を測定した。トナーを定着させることができたか否かは、以下に示すような折擦り試験で確認した。詳しくは、定着装置に通した評価用紙を、画像を形成した面が内側となるように折り曲げ、布帛で被覆した1kgの真鍮製の分銅を用いて、折り目上の画像を5往復摩擦した。続けて、紙を広げ、紙の折り曲げ部(ソリッド画像が形成された部分)を観察した。そして、折り曲げ部のトナーの剥がれの長さ(剥がれ長)を測定した。剥がれ長が1mm以下となる定着温度のうちの最低温度を、最低定着温度とした。
最低定着温度が134℃以下であれば◎(非常に良い)と評価し、最低定着温度が134℃超144℃以下であれば○(良い)と評価し、最低定着温度が144℃を超えれば×(良くない)と評価した。評価基準値(134℃及び144℃)は、シェル層を備えないトナー粒子(非カプセルトナー粒子)の最低定着温度(124℃)に基づいて設定した。
(帯電量)
温度20℃かつ湿度65%RHの環境下において、フェライトキャリア(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製の「FS−C5100DN」用キャリア)100質量部と、試料(トナー)6質量部とを、ボールミルを用いて30分間混合して、評価用現像剤を得た。その後、Q/mメーター(トレック社製「MODEL 210HS」)を用いて、次に示す方法で評価用現像剤中のトナーの帯電量を測定した。なお、トナーTB−5の評価では、評価用現像剤を調製するためのキャリアとして、負帯電性トナー用キャリア(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製の「Anesis6016」用キャリア)を使用した。
<現像剤中のトナーの帯電量の測定方法>
Q/mメーターの測定セルに現像剤(キャリア及びトナー)0.10gを投入し、投入された現像剤のうちトナーのみを篩(金網)を介して10秒間吸引した。そして、式「吸引されたトナーの総電気量(単位:μC)/吸引されたトナーの質量(単位:g)」に基づいて、現像剤中のトナーの帯電量(単位:μC/g)を算出した。
帯電量が10μC/g以上であれば◎(非常に良い)と評価し、帯電量が3μC/g以上10μC/g未満であれば○(良い)と評価し、帯電量が3μC/g未満であれば×(良くない)と評価した。
(電荷減衰特性)
試料(トナー)の電荷減衰定数αは、静電気拡散率測定装置(株式会社ナノシーズ製「NS−D100」)を用いて、JIS(日本工業規格)C 61340−2−1−2006に準拠した方法で測定した。以下、試料(トナー)の電荷減衰定数の測定方法について詳述する。
測定セルに試料(トナー)を入れた。測定セルは、内径10mm、深さ1mmの凹部が形成された金属製のセルであった。スライドガラスを用いてトナーを上から押し込み、セルの凹部にトナーを充填した。セルの表面においてスライドガラスを往復移動させることによって、セルから溢れたトナーを除去した。トナーの充填量は0.04g以上0.06g以下であった。
続けて、試料(トナー)が充填された測定セルを、温度32.5℃、湿度80%RHの環境下で12時間静置した。続けて、接地させた測定セルを静電気拡散率測定装置内に置き、コロナ放電によってトナーにイオンを供給して、トナーを帯電させた。帯電時間は0.5秒間であった。そして、コロナ放電終了後0.7秒経過した後から、トナーの表面電位を連続的に測定した。測定された表面電位と、式「V=V0exp(−α√t)」とに基づいて、電荷減衰定数(電荷減衰速度)αを算出した。式中、Vは表面電位[V]、V0は初期表面電位[V]、tは減衰時間[秒]をそれぞれ示す。
電荷減衰定数が0.015以下であれば◎(非常に良い)と評価し、電荷減衰定数が0.015超0.025以下であれば○(良い)と評価し、電荷減衰定数が0.025を超えれば×(悪い)と評価した。
[評価結果]
トナーTA−1〜TA−8及びTB−1〜TB−5の各々の評価結果を、表4に示す。表4は、低温定着性(最低定着温度)、耐熱保存性(残存率)、帯電量、及び電荷減衰特性(電荷減衰定数)の各々の測定値を示している。
Figure 0006493324
トナーTA−1〜TA−8(実施例1〜8に係るトナー)はそれぞれ、前述の基本構成を有していた。詳しくは、トナーTA−1〜TA−8はそれぞれ、複合コアと、複合コアの表面を部分的に覆うシェル層とを備えるトナー粒子を、複数含んでいた。複合コアは、ポリエステル樹脂を含有するトナーコアと、それぞれ第1樹脂(詳しくは、メタクリル酸メチルとアクリル酸n−ブチルと(3−アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロライドとの共重合体)を含有する複数の樹脂粒子(コア外添粒子)との複合体であった。複数の樹脂粒子(コア外添粒子)はそれぞれ、トナーコアの表面に付着していた。シェル層は、第2樹脂(詳しくは、スチレン−アクリル酸系樹脂)を含有する膜であった。第1樹脂のガラス転移点(Tg1)は、第2樹脂のガラス転移点(Tg2)よりも10℃以上高かった(表3参照)。複数の樹脂粒子(コア外添粒子)の各々の粒子径は、シェル層の厚さの1.5倍以上であった(表3参照)。樹脂粒子(コア外添粒子)の量は、トナーコア100質量部に対して0.3質量部以上2.0質量部以下であった(表1参照)。例えば、トナーTA−1では、樹脂粒子(コア外添粒子)の量が、トナーコア100質量部に対して1.0質量部(詳しくは、1000gのトナーコアに対して10gの樹脂粒子SB−1)であった。レーザードップラー方式の電気泳動法で測定される、樹脂粒子(樹脂粒子SB−1又はSB−2)のpH4のゼータ電位は正の値(>0mV)を示した(表2参照)。
トナーTA−1〜TA−8ではそれぞれ、シェル層が概ね図2に示されるような形態を有していた。
表4に示されるように、トナーTA−1〜TA−8はそれぞれ、耐熱保存性、低温定着性、正帯電性、及び電荷保持性(電荷減衰特性)に優れていた。
本発明に係る静電潜像現像用トナーは、例えば複写機、プリンター、又は複合機において画像を形成するために用いることができる。
10 トナー母粒子
11 トナーコア
12 シェル層
13 樹脂粒子

Claims (6)

  1. 複合コアと、前記複合コアの表面を部分的に覆うシェル層とを備えるトナー粒子を、複数含み、
    前記複合コアは、ポリエステル樹脂を含有するトナーコアと、それぞれ第1樹脂を含有する複数の樹脂粒子との複合体であり、
    前記複数の樹脂粒子はそれぞれ、前記トナーコアの表面に付着しており、
    前記シェル層は、第2樹脂を含有する膜であり、
    前記第1樹脂のガラス転移点は、前記第2樹脂のガラス転移点よりも10℃以上高く、
    前記複数の樹脂粒子の各々の粒子径は、前記シェル層の厚さの1.5倍以上であり、
    前記樹脂粒子の量は、前記トナーコア100質量部に対して0.3質量部以上2.0質量部以下であり、
    レーザードップラー方式の電気泳動法で測定される、前記樹脂粒子のpH4のゼータ電位は正の値を示し、
    前記シェル層は、前記複合コアの表面領域のうち前記樹脂粒子が存在しない領域を選択的に覆っている、静電潜像現像用トナー。
  2. 前記樹脂粒子の底部は前記トナーコアに埋め込まれており、
    前記トナーコアと前記樹脂粒子との隙間に前記シェル層が入り込んでいる、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
  3. 前記シェル層の厚さは、10nm以上40nm以下であり、
    前記複数の樹脂粒子の各々の粒子径は、30nm以上100nm以下である、請求項1又は2に記載の静電潜像現像用トナー。
  4. 前記第2樹脂は、熱可塑性樹脂であり、
    前記シェル層は、実質的に前記熱可塑性樹脂のみから構成される膜である、請求項1〜のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
  5. 前記トナーコアの表面における前記シェル層の被覆率は面積割合で70%以上95%以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
  6. 前記第1樹脂は、(メタ)アクリロイル基含有4級アンモニウム化合物に由来する1種以上の繰返し単位を含む樹脂であり、
    前記第2樹脂は、スチレン系モノマーに由来する1種以上の繰返し単位と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する1種以上の繰返し単位とを含む樹脂である、請求項1〜のいずれか一項に記載の静電潜像現像用トナー。
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