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JP6481253B2 - タイヤ用ゴム組成物及びこれを用いる空気入りタイヤ - Google Patents

タイヤ用ゴム組成物及びこれを用いる空気入りタイヤ Download PDF

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JP6481253B2 JP2014034733A JP2014034733A JP6481253B2 JP 6481253 B2 JP6481253 B2 JP 6481253B2 JP 2014034733 A JP2014034733 A JP 2014034733A JP 2014034733 A JP2014034733 A JP 2014034733A JP 6481253 B2 JP6481253 B2 JP 6481253B2
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Description

本発明はタイヤ用ゴム組成物及びこれを用いる空気入りタイヤに関する。
従来、タイヤには、ウェットグリップ性能、ドライグリップ性能の向上、転がり抵抗の低減(低転がり抵抗性)、耐摩耗性等が求められている。このような要求性能について、タイヤのトレッド部を構成するゴム成分にシリカを配合すること等が知られている。
しかし、シリカはゴム成分との親和性が低く、シリカ同士の凝集性が高いため、ゴム成分(例えば、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体)に単にシリカを配合してもシリカがゴム成分中に分散せず、転がり抵抗を低減する効果やウェット性能を向上する効果が十分に得られない。このような問題について、シリカを含むゴム組成物にメルカプトシラン(メルカプト基を有するシランカップリング剤)を配合すること等が知られている。
また、タイヤのなかでも、氷雪路面で使用されることがあるオールシーズンタイヤおよび冬用タイヤでは、ドライグリップ性能、ウェットグリップ性能、耐摩耗性および低転がり抵抗性に加えて、さらに、氷雪路上性能(すなわち氷雪路上での制動性および走行安定性)に優れることが要求される。
本願出願人はこれまでに冬用タイヤに使用できるゴム組成物を提案している(特許文献1)。
特許第4666089号公報
しかし、従来のメルカプトシランを含むゴム組成物は、貯蔵段階や加硫工程前段階の架橋(ゴム焼け)等が生じる場合があり、ゴムの加工性面(例えば、粘度、スコーチ。)に改善の余地があった。
また、ウェット性能及びタイヤの低転がり抵抗性についてはさらなる向上が求められている。これらをより向上させるためは、ゴム成分へのシリカの高配合化および高分散化が必要である。
このようなゴムの加工性、ウェット性能及び低転がり抵抗性の向上に対して、本願発明者は、硫黄含有シランカップリング剤を検討する必要があると考えた。
また、上述のとおりオールシーズン用又は冬用のタイヤにはさらに氷雪路上性能が要求される。このようなゴム組成物にはゴム成分としてガラス転移温度の低い天然ゴムが使用され、これにウェット性能を付与するために、ガラス転移温度の高いゴム成分(例えば、スチレンブタジエンゴム)が併用される。しかし、このような場合ゴム組成物全体のガラス転移温度が高くなり、低温でのゴム硬度が大きくなるため氷雪グリップ性能が低下するという問題がある。
このため、天然ゴムの代わりにガラス転移温度がより低いブタジエンゴムを使用する場合、氷雪路上性能は改善されるものの、ウェット性能を確保することができない。
このように、オールシーズン用又は冬用タイヤは、ガラス転移温度の高いゴム成分とガラス転移温度の低いゴムとを単に併用するだけでは、ウェット性能と氷雪路上性能とをバランスよく兼ね備えることはできない。
そこで、本発明は、上記実情を鑑みて、ウェット性能、低転がり抵抗性、氷雪路上性能に優れたタイヤ用ゴム組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ブタジエンゴムを10〜50質量部含むジエン系ゴム100質量部に対し、シリカを60〜200質量部、硫黄含有シランカップリング剤として下記式(1)で表されるポリシロキサンを上記シリカの含有量の1〜20質量%含有し、上記ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度が−65〜−40℃である、タイヤ用ゴム組成物が、ウェット性能、低転がり抵抗性、氷雪路上性能に優れることを見出し、本願発明を完成させた。
(A)a(B)b(C)c(D)d(R1eSiO(4-2a-b-c-d-e)/2 (1)
[式(1)は平均組成式であり、式(1)中、Aはスルフィド基を含有する2価の有機基を表し、Bは炭素数5〜10の1価の炭化水素基を表し、Cは加水分解性基を表し、Dはメルカプト基を含有する有機基を表し、R1は炭素数1〜4の1価の炭化水素基を表し、a〜eは、0≦a<1、0≦b<1、0<c<3、0<d<1、0≦e<2、0<2a+b+c+d+e<4の関係式を満たす。ただしa、bのいずれか一方は0ではない。]
すなわち、本発明は下記のタイヤ用ゴム組成物及びこれを用いる空気入りタイヤを提供する。
1. ブタジエンゴムを10〜50質量部含むジエン系ゴム100質量部に対し、シリカを60〜200質量部、及び、硫黄含有シランカップリング剤として下記式(1)で表されるポリシロキサンを上記シリカの含有量の1〜20質量%含有し、上記ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度が−65〜−40℃である、タイヤ用ゴム組成物。
(A)a(B)b(C)c(D)d(R1eSiO(4-2a-b-c-d-e)/2 (1)
[式(1)は平均組成式であり、式(1)中、Aはスルフィド基を含有する2価の有機基を表し、Bは炭素数5〜10の1価の炭化水素基を表し、Cは加水分解性基を表し、Dはメルカプト基を含有する有機基を表し、R1は炭素数1〜4の1価の炭化水素基を表し、a〜eは、0≦a<1、0≦b<1、0<c<3、0<d<1、0≦e<2、0<2a+b+c+d+e<4の関係式を満たす。ただしa、bのいずれか一方は0ではない。]
2. 上記ジエン系ゴムが、さらに、変性されていてもよい、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を含み、上記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の量が上記ジエン系ゴム100質量部中の30〜90質量部である上記1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
3. 上記ブタジエンゴム(但し上記ブタジエンゴムから重量平均分子量が6.0×104以下のブタジエンゴムを除く。)を10〜50質量部含む上記ジエン系ゴム(但し上記ジエン系ゴムから重量平均分子量が6.0×104以下のブタジエンゴムを除く。)100質量部に対し、さらに、重量平均分子量が6.0×103〜6.0×104である低分子量ブタジエンゴムを1〜30質量部含む上記1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
4. 上記ブタジエンゴム(但し上記ブタジエンゴムから重量平均分子量が6.0×104以下のブタジエンゴムを除く。)と、重量平均分子量が6.0×103〜6.0×104である低分子量ブタジエンゴムとを含み、
上記低分子量ブタジエンゴムの量が、上記ブタジエンゴム(但し上記ブタジエンゴムから重量平均分子量が6.0×104以下のブタジエンゴムを除く。)及び上記低分子量ブタジエンゴムの合計の20〜40質量%である上記1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
5. 上記ジエン系ゴムがさらに天然ゴムを含み、上記天然ゴムの量が上記ジエン系ゴム100質量部中の5〜40質量部である上記1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
6. さらに、テルペン樹脂を含み、上記テルペン樹脂の量が上記ジエン系ゴム100質量部に対し1〜30質量部である、上記1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
7. 上記テルペン樹脂は軟化点が60〜150℃の芳香族変性テルペン樹脂である上記1〜6のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
8. 上記式(1)中、bが0よりも大きい、上記1〜7のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
9. 上記1〜8のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物をタイヤトレッドに用いた空気入りタイヤ。
10. 冬用タイヤである上記9に記載の空気入りタイヤ。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ウェット性能、低転がり抵抗性、氷雪路上性能に優れる。
本発明の空気入りタイヤは、ウェット性能、低転がり抵抗性、氷雪路上性能に優れる。
図1は、本発明の空気入りタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの部分断面概略図である。
本発明について以下詳細に説明する。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、
ブタジエンゴムを10〜50質量部含むジエン系ゴム100質量部に対し、シリカを60〜200質量部、及び、硫黄含有シランカップリング剤として下記式(1)で表されるポリシロキサンを上記シリカの含有量の1〜20質量%含有し、上記ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度が−65〜−40℃である、タイヤ用ゴム組成物である。
(A)a(B)b(C)c(D)d(R1eSiO(4-2a-b-c-d-e)/2 (1)
[式(1)は平均組成式であり、式(1)中、Aはスルフィド基を含有する2価の有機基を表し、Bは炭素数5〜10の1価の炭化水素基を表し、Cは加水分解性基を表し、Dはメルカプト基を含有する有機基を表し、R1は炭素数1〜4の1価の炭化水素基を表し、a〜eは、0≦a<1、0≦b<1、0<c<3、0<d<1、0≦e<2、0<2a+b+c+d+e<4の関係式を満たす。ただしa、bのいずれか一方は0ではない。]
本発明のタイヤ用ゴム組成物を以下「本発明の組成物」ということがある。また、式(1)で表されるポリシロキサンを「式(1)の平均組成式で表されるポリシロキサン」ということがある。
本発明の組成物は、ジエン系ゴム及びシリカを含むゴム組成物に対して、硫黄含有シランカップリング剤として式(1)の平均組成式で表されるポリシロキサンを使用することによって、ウェット性能、低転がり抵抗性、氷雪路上性能に優れる。
式(1)の平均組成式で表されるポリシロキサンは、シリカをゴム組成物中に多量に配合させることができ、かつ、多量のシリカをゴム組成物中に十分に分散させることができる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物が上記のような効果を達成することについて本願発明者は以下のように考える。
当該硫黄含有シランカップリング剤は、Cで表される加水分解性基、シロキサン構造を有するので、従来のメルカプトシランよりシリカとの親和性、反応性が優れると考えられる。さらに当該硫黄含有シランカップリング剤の分子量が適切な範囲である場合、シリカとの親和性、反応性がより優れることが予想される。
また、当該硫黄含有シランカップリング剤が、Bで表される長鎖(炭素数5〜10)の1価の炭化水素基を1分子中に有する場合、従来のメルカプトシランよりジエン系ゴムとの親和性、反応性が優れると考えられる。
このように当該硫黄含有シランカップリング剤は、シリカに対して、又は、ジエン系ゴム及びシリカ双方に対して、高い親和性、反応性を有し、これによって、本発明の組成物はシリカを高配合、高分散させることが可能である。
その結果、本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ガラス転移温度が非常に低いジエン系ゴムを使用しても、ゴム組成物全体のガラス転移温度が低下することよって生じるウェット性能の低下を補いさらにこれを向上させることができる。
本発明の組成物はこのような理由から、ウェット性能、低転がり抵抗性、氷雪路上性能に優れ、高いウェット性能と氷雪路上性能とを両立させることができるという効果を達成すると考えられる。
なお上記メカニズムは本願発明者の推定であり、上記以外のメカニズムであっても本願請求項に係るタイヤ用ゴム組成物、空気入りタイヤに該当するものは本願発明の範囲内である。
本発明の組成物に含まれるジエン系ゴムについて以下に説明する。
本発明において、ジエン系ゴムはブタジエンゴムを含み、ブタジエンゴムの量はジエン系ゴム100質量部中10〜50質量部である。
ブタジエンゴムについて以下に説明する。
本発明の組成物に含まれるブタジエンゴムは、氷雪路上性能により優れ、耐摩耗性に優れるという観点から、高シスブタジエンゴムであるのが好ましい。高シスブタジエンゴムのシス−1,4−結合含有量は、氷雪路上性能により優れ、耐摩耗性に優れるという観点から、90モル%以上であるのが好ましく、95モル%以上であるのがより好ましい。
ブタジエンゴムは、ウェット性能、低転がり抵抗性により優れ、耐摩耗性に優れるという観点から、重量平均分子量が、6.0×104を超える高分子量ブタジエンゴムを含むのが好ましく、4.0×105を超える高分子量ブタジエンゴムを含むのが好ましい。高分子量ブタジエンゴムの重量平均分子量は、ウェット性能、低転がり抵抗性により優れ、耐摩耗性に優れるという観点から、4.5×105〜1.2×106であるのが好ましく、5.5×105〜1.0×106であるのがより好ましい。
高分子量ブタジエンゴムの量は、低転がり抵抗性、氷雪路上性能により優れ、耐摩耗性により優れるという観点から、ジエン系ゴム100質量部中、10〜50質量部であるのが好ましく、15〜45質量部であるのがより好ましい。
本発明の組成物は、ウェット性能、氷雪路上性能により優れ、これらのバランス、ペイン効果に優れるという観点から、さらに6.0×104以下の低分子量ブタジエンゴムを含むのが好ましい。
この場合、上記ブタジエンゴムから重量平均分子量が6.0×104以下のブタジエンゴムを除く。6.0×104以下のブタジエンゴムの量は、ブタジエンゴムには含まれない。また、この場合、上記ジエン系ゴムから重量平均分子量が6.0×104以下のブタジエンゴムを除く。6.0×104以下のブタジエンゴムの量は、ジエン系ゴムには含まれない。
低分子量ブタジエンゴムの重量平均分子量は、ウェット性能、氷雪路上性能により優れ、これらのバランス、ペイン効果に優れるという観点から、6.0×103〜6.0×104であるのが好ましく、1.0×104〜5.0×104であるのがより好ましい。
本発明の組成物において、ブタジエンゴム(但し上記ブタジエンゴムから重量平均分子量が6.0×104以下のブタジエンゴムを除く。)を10〜50質量部含むジエン系ゴム(但し上記ジエン系ゴムから重量平均分子量が6.0×104以下のブタジエンゴムを除く。)100質量部に対し、さらに、重量平均分子量が6.0×103〜6.0×104である低分子量ブタジエンゴムを含む場合、低分子量ブタジエンゴムの量が、ウェット性能、氷雪路上性能により優れるという観点から、ジエン系ゴム100重量部に対し、1〜30重量部であることが好ましく、5〜25重量部であることがさらに好ましい。
本発明において、低分子量ブタジエンゴムはあらかじめブタジエンゴムとのブレンドした物を使用することができる。当該ブレンド物はその製造について特に制限されない。例えば、本発明のゴム組成物を配合する前にあらかじめシクロヘキサンなどの溶媒中で、ブタジエンゴム(例えば、上記ブタジエンゴムから重量平均分子量が6.0×104以下のブタジエンゴムを除いてもよい。)と低分子量ブタジエンゴム(例えば、重量平均分子量が6.0×103〜6.0×104のもの)とをブレンドする方法が挙げられる。
低分子量ブタジエンゴムの含有量は、ウェット性能、氷雪路上性能により優れ、これらのバランス、加工性に優れるという観点から、ブタジエンゴムの全量の15〜40質量%であるのが好ましく、20〜35質量%であるのがより好ましい。
ジエン系ゴムは、ウェット性能、低転がり抵抗性、氷雪路上性能により優れ、耐摩耗性に優れるという観点から、さらに、変性されていてもよい、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を含むのが好ましい。
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を製造する際に使用される芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン;α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン等の置換スチレンが挙げられる。これらの中でスチレンが好ましい。
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を製造する際に使用される共役ジエンモノマーとしては、例えば、1,3−ブタジエン;2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等の置換ブタジエンが挙げられる。これらの中で2−メチル−1,3−ブタジエン、1,3−ブタジエンが好ましい。
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体が変性されている場合、変性基としては、例えば、水酸基、N−メチルピロリドン基が挙げられる。
水酸基は、第1級、第2級又は第3級のいずれであってもよい。
変性基は、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体が有する、芳香族ビニル単位及び/又は共役ジエン単位に直接又は有機基を介して結合することができる。
変性基は、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体1分子中少なくとも1個存在することができる。
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体は、水酸基含有芳香族ビニル−共役ジエン共重合体であるのが好ましく、水酸基により末端変性されたスチレンブタジエンゴムであるのがより好ましい。
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体はその製造について特に制限されない。芳香族ビニル−共役ジエン共重合体が変性されている場合、その変性の方法について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の量は、ウェット性能、低転がり抵抗性、氷雪路上性能により優れ、それらのバランスに優れるという観点から、ジエン系ゴム100質量部中の、30〜90質量部であるのが好ましく、40〜70質量部であるのがより好ましい。
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体及びブタジエンゴムの合計量は、ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度が適切なものとなり、ウェット性能、低転がり抵抗性、氷雪路上性能により優れ、それらのバランスに優れるという観点から、ジエン系ゴムの60〜100質量%であるのが好ましく、70〜90質量%であるのがより好ましい。
ジエン系ゴムは、ウェット性能、低転がり抵抗性、氷雪路上性能により優れ、それらのバランスと耐摩耗性に優れるという観点から、さらに天然ゴムを含むのが好ましい。天然ゴムは特に制限されない。例えば従来公知のものが挙げられる。
天然ゴムの量は、ウェット性能、低転がり抵抗性、氷雪路上性能により優れ、ウェット性能と氷雪路上性能とのバランス、それらのバランスと耐摩耗性に優れるという観点から、ジエン系ゴム100質量部中の5〜40質量部であるのが好ましく、10〜30質量部であるのがより好ましい。
本発明において、ジエン系ゴム(本発明の組成物がさらに低分子量ブタジエンゴムを含む場合、平均ガラス転移温度を測定するために使用されるジエン系ゴムは低分子量ブタジエンゴムを含む。)の平均ガラス転移温度は−65〜−40℃であり、このような範囲の場合、低温でのゴム硬度を柔軟に維持して氷雪路面に対する凝着性を高くし氷雪グリップ性能を確保することができる。また当該平均ガラス転移温度は、ウェット性能、低転がり抵抗性、氷雪路上性能により優れ、ウェット性能と氷雪路上性能とのバランス、耐摩耗性に優れるという観点から、−65〜−45℃であるのが好ましく、−60〜−50℃であるのがより好ましい。
ここで、ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度とは、ジエン系ゴムを構成する、ブタジエンゴム、ブタジエンゴム以外のジエン系ゴムのそれぞれのTgと各ゴム成分の配合割合との積の合計として算出したガラス転移温度の平均値である。すなわち、n種類(nは2以上の整数)からなるジエン系ゴムにおいて、ブタジエンゴムのTgをT1[℃]、配合割合をW1[質量%]、ブタジエンゴム以外のジエン系ゴムのTgをTi[℃](i=2〜nの整数)、配合割合をWi[質量%](i=2〜nの整数)とするとき、又は、高分子量ブタジエンゴムのTgをT1[℃]、配合割合をW1[質量%]、低分子量ブタジエンゴムのTgをT2[℃]、配合割合をW2[質量%]、ブタジエンゴム以外のジエン系ゴムのTgをTi[℃](i=3〜nの整数)、その配合割合をWi[質量%](i=3〜nの整数)とするとき、このジエン系ゴムの平均ガラス転移温度は、下記式(1)により算出される。
平均ガラス転移温度[℃]=Σ(Ti×Wi)/ΣWi (1)
(ただし、ΣWi=100[質量%]とする。)
各ジエン系ゴムのガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により10℃/分の昇温速度条件によりサーモグラムを測定し、転移域の中点の温度とする。なお、各ジエン系ゴムが油展オイルを含む場合には、油展オイルを除いた状態のゴムのガラス転移温度とする。
本発明の組成物に含有されるシリカは特に限定されず、タイヤ等の用途でゴム組成物に配合されている従来公知の任意のシリカを用いることができる。
シリカとしては、具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。シリカはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
シリカのCTAB吸着比表面積は、ウェット性能と耐摩耗性により優れるという観点から、160m2/gより大きいのが好ましく、170〜230m2/gであるのがより好ましい。ここで、CTAB吸着比表面積は、JIS K6217−3:2001に記載されたCTAB吸着法に従って測定したものである。
本発明において、シリカの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して60〜2000質量部であり、得られるタイヤのウェット性能、低転がり抵抗性、氷雪路上性能により優れ、耐摩耗性、強度が向上する理由から、60〜150質量部であるのがより好ましいく、70〜140質量部であるのがさらに好ましい。
本発明の組成物に含有される硫黄含有シランカップリング剤について以下に説明する。
本発明の組成物に含まれる硫黄含有シランカップリング剤は、下記式(1)で表されるポリシロキサンである。
(A)a(B)b(C)c(D)d(R1eSiO(4-2a-b-c-d-e)/2 (1)
[式(1)は平均組成式であり、式(1)中、Aはスルフィド基を含有する2価の有機基を表し、Bは炭素数5〜10の1価の炭化水素基を表し、Cは加水分解性基を表し、Dはメルカプト基を含有する有機基を表し、R1は炭素数1〜4の1価の炭化水素基を表し、a〜eは、0≦a<1、0≦b<1、0<c<3、0<d<1、0≦e<2、0<2a+b+c+d+e<4の関係式を満たす。ただしa、bのいずれか一方は0ではない。]
本発明において、硫黄含有シランカップリング剤はCを有することによって、シリカとの親和性及び/又は反応性に優れる。
また、硫黄含有シランカップリング剤はDを有することによって、ジエン系ゴムと相互作用及び/又は反応することができ、ウェット性能、低転がり抵抗性、氷雪路上性能、耐摩耗性に優れる。
硫黄含有シランカップリング剤がAを有する場合、ウェット性能、低転がり抵抗性、氷雪路上性能により優れ、耐摩耗性、加工性(特にムーニースコーチ時間の維持・長期化)に優れる。
硫黄含有シランカップリング剤がBを有する場合、ジエン系ゴムとの親和性に優れるのでウェット性能、低転がり抵抗性、氷雪路上性能により優れ、メルカプト基を保護しムーニースコーチ時間が長く加工性に優れる。
本発明の組成物に含有される硫黄含有シランカップリング剤は、その骨格として、シロキサン骨格を有する。シロキサン骨格は直鎖状、分岐状、3次元構造のいずれか又はこれらの組合わせとすることができる。
上記式(1)中、Aはスルフィド基を含有する2価の有機基(以下、スルフィド基含有有機基ともいう)を表す。有機基は例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子を有してもよい炭化水素基とすることができる。
なかでも、下記式(2)で表される基であることが好ましい。
−(CH2n−Sx−(CH2n (2)
上記式(2)中、nは1〜10の整数を表し、なかでも、2〜4の整数であることが好ましい。
上記式(2)中、xは1〜6の整数を表し、なかでも、2〜4の整数であることが好ましい。
上記式(2)中、*は、結合位置を示す。
上記式(2)で表される基の具体例としては、例えば、−CH2−S2−CH2−C24−S2−C24−C36−S2−C36−C48−S2−C48−CH2−S4−CH2−C24−S4−C24−C36−S4−C36−C48−S4−C48などが挙げられる。
上記式(1)中、Bは炭素数5〜10の1価の炭化水素基を表し、その具体例としては、例えば、ヘキシル基、オクチル基、デシル基などが挙げられる。
上記式(1)中、Cは加水分解性基を表し、その具体例としては、例えば、アルコキシ基、フェノキシ基、カルボキシル基、アルケニルオキシ基などが挙げられる。なかでも、下記式(3)で表される基であることが好ましい。
−OR2 (3)
上記式(3)中、R2は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数6〜10のアラルキル基(アリールアルキル基)または炭素数2〜10のアルケニル基を表し、なかでも、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましい。上記炭素数1〜20のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基などが挙げられる。上記炭素数6〜10のアリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、トリル基などが挙げられる。上記炭素数6〜10のアラルキル基の具体例としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基などが挙げられる。上記炭素数2〜10のアルケニル基の具体例としては、例えば、ビニル基、プロぺニル基、ペンテニル基などが挙げられる。
上記式(3)中、*は、結合位置を示す。
上記式(1)中、Dはメルカプト基を含有する有機基を表す。なかでも、下記式(4)で表される基であることが好ましい。
−(CH2m−SH (4)
上記式(4)中、mは1〜10の整数を表し、なかでも、1〜5の整数であることが好ましい。
上記式(4)中、*は、結合位置を示す。
上記式(4)で表される基の具体例としては、−CH2SH、−C24SH、−C36SH、−C48SH、−C510SH、−C612SH、−C714SH、−C816SH、−C918SH、−C1020SHが挙げられる。
上記式(1)中、R1は炭素数1〜4の1価の炭化水素基を表す。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。
上記式(1)中、a〜eは、0≦a<1、0≦b<1、0<c<3、0<d<1、0≦e<2、0<2a+b+c+d+e<4の関係式を満たす。ただしa、bのいずれか一方は0ではない。
ここで、a、bのいずれか一方は0ではないことは、a=0の場合0<bとなり、b=0の場合0<aとなることを意味する。
式(1)の平均組成式で表されるポリシロキサンは、ムーニースコーチ時間が長く加工性が優れる理由から、aが0よりも大きい(0<a)ことが好ましい。すなわち、スルフィド基含有有機基を有する場合が好ましい態様の1つとして挙げられる。なかでも、加工性が優れ、ウェット性能、低転がり抵抗性にもさらに優れるという理由から、0<a≦0.50であることが好ましい。
また、式(1)の平均組成式で表されるポリシロキサンは、ウェット性能、低転がり抵抗性、氷雪路上性能により優れ、耐摩耗性に優れる理由から、aが0であることが好ましい。すなわち、スルフィド基含有有機基を有さない場合が好ましい態様の1つとして挙げられる。
上記式(1)中、bは、ウェット特性、低転がり抵抗性、氷雪路上性能により優れ、メルカプト基を保護しムーニースコーチ時間が長く加工性、耐摩耗性が優れるという理由から、0.10≦b≦0.89であることが好ましい。
上記式(1)中、cは、シリカとの親和性及び/又は反応性に優れ、ウェット特性、低転がり抵抗性、氷雪路上性能より優れ、加工性、耐摩耗性に優れるという理由から、1.2≦c≦2.0であることが好ましい。
上記式(1)中、dは、シリカ及び/又はジエン系ゴムと相互作用及び/又は反応することができ、ウェット性能、低転がり抵抗性、氷雪路上性能に優れ、耐摩耗性、加工性(特にムーニースコーチ時間の維持・長期化)に優れるという理由から、0.10≦d≦0.80であることが好ましい。
上記式(1)の平均組成式で表されるポリシロキサンは、シリカの分散性が良好であり、ウェット性能、低転がり抵抗性、氷雪路上性能により優れ、加工性に優れる理由から、上記式(1)中、Aが上記式(2)で表される基であるのが好ましい。
上記式(1)中のBはウェット特性、低転がり抵抗性、氷雪路上性能がより優れ、メルカプト基を保護しムーニースコーチ時間が長く加工性に優れ、耐摩耗性に優れることから、炭素数8〜10の1価の炭化水素基であるのが好ましい。
上記式(1)中のCは、シリカとの親和性及び/又は反応性に優れ、ウェット特性、低転がり抵抗性、氷雪路上性能がより優れ、耐摩耗性、加工性に優れるという理由から、上記式(3)で表される基であるのが好ましい。
上記式(1)中のDはAの理由と同様の理由から上記式(4)で表される基であるのが好ましい。
ポリシロキサンを製造する方法は特に限定されない。例えば、原料として、メルカプト基を含有する有機基[式(1)中のDに相当する。]及び加水分解性基[式(1)中のCに相当することができる。以下同様。]を有するシランカップリング剤(メルカプト基を有するシランカップリング剤)を少なくとも含む有機ケイ素化合物の組成物を加水分解縮合させることによって製造することができる。当該組成物はさらに、メルカプト基を有するシランカップリング剤以外の別のシランカップリング剤を含むことができる。
別のシランカップリング剤としては、例えば、
i)スルフィド基を含有する2価の有機基[式(1)中のAに相当する。]及び加水分解性基を有するシランカップリング剤(スルフィド基を有するシランカップリング剤)、
ii)炭化数1〜4の1価の炭化水素基[式(1)中のR1に相当する。]及び加水分解性基を有するシランカップリング剤(炭化数1〜4の炭化水素基を有するシランカップリング剤、例えば、アルキルシランカップリング剤)、
iii)炭化数5〜10の1価の炭化水素基[式(1)中のBに相当する。]及び加水分解性基を有するシランカップリング剤(炭化数5〜10の炭化水素基を有するシランカップリング剤、例えば、アルキルシランカップリング剤)が挙げられる。
加水分解性基としては、例えば、上記式(3)で表される基と同様のものが挙げられる。1つのケイ素原子が有する加水分解性基の数は1〜4個とすることができる。
炭素数5〜10、1〜4の炭化水素基は特に制限されない。例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組合わせが挙げられる。炭化水素基は直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、不飽和結合を有することができる。
有機ケイ素化合物は少なくとも1個のケイ素原子を有する。有機ケイ素化合物は1個のケイ素原子を有するのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
スルフィド基を有するシランカップリング剤としては、例えば、下記式(5)で表される有機ケイ素化合物が挙げられる。
炭化数5〜10の炭化水素基を有するシランカップリング剤としては、例えば、下記式(6)で表される有機ケイ素化合物が挙げられる。
メルカプト基を有するシランカップリング剤としては、例えば、下記式(7)で表される有機ケイ素化合物が挙げられる。
炭化数1〜4の炭化水素基を有するシランカップリング剤としては、例えば、下記式(8)で表される有機ケイ素化合物が挙げられる。
第1の好適な態様としては、下記式(6)で表される有機ケイ素化合物と、下記式(7)で表される有機ケイ素化合物とを加水分解縮合する方法が挙げられる。また、第2の好適な態様としては、下記式(5)で表される有機ケイ素化合物と、下記式(6)で表される有機ケイ素化合物と、下記式(7)で表される有機ケイ素化合物とを加水分解縮合する方法が挙げられる。第1、2の好適な態様は、さらに下記式(8)で表される有機ケイ素化合物を使用してもよい。
なかでも、スコーチ性などの加工性が優れる理由から、上記第2の好適な態様であることが好ましい。
また、ウェット性能、低転がり抵抗性がより優れ、耐摩耗性などのタイヤ性能に優れる理由から、上記第1の好適な態様であることが好ましい。
上記式(5)中、R51は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数2〜10のアルケニル基を表し、なかでも、炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましい。上記炭素数1〜20のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、オクタデシル基などが挙げられる。上記炭素数6〜10のアリール基の具体例としては、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基などが挙げられる。炭素数2〜10のアルケニル基の具体例としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ペンテニル基などが挙げられる。
上記式(5)中、R52は炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基を表す。上記炭素数1〜10のアルキル基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基などが挙げられる。上記炭素数6〜10のアリール基の具体例は上記R51と同じである。
上記式(5)中、nの定義および好適な態様は、上記式(2)中のnと同じである。
上記式(5)中、xの定義および好適な態様は、上記式(2)中のxと同じである。
上記式(5)中、yは1〜3の整数を表す。
上記式(5)で表される有機ケイ素化合物の具体例としては、例えば、ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドなどが挙げられる。
上記式(6)中、R61の定義、具体例および好適な態様は、上記R51と同じである。
上記式(6)中、R62の定義、具体例および好適な態様は、上記R52と同じである。
上記式(6)中、zの定義は、上記yと同じである。
上記式(6)中、pは5〜10の整数を表す。pはウェット性能、低転がり抵抗性より優れ、加工性、ジエン系ゴムとの親和性に優れるという観点から、5〜10の整数であるのが好ましい。
上記式(6)で表される有機ケイ素化合物の具体例としては、例えば、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルメチルジメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ペンチルメチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルメチルジメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルメチルジエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルメチルジメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、オクチルメチルジエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルメチルジメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、デシルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
上記式(7)中、R71の定義、具体例および好適な態様は、上記R51と同じである。
上記式(7)中、R72の定義、具体例および好適な態様は、上記R52と同じである。
上記式(7)中、mの定義および好適な態様は、上記式(4)のmと同じである。
上記式(7)中、wの定義は、上記yと同じである。
上記式(7)で表される有機ケイ素化合物の具体例としては、例えば、α−メルカプトメチルトリメトキシシラン、α−メルカプトメチルメチルジメトキシシラン、α−メルカプトメチルトリエトキシシラン、α−メルカプトメチルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
上記式(8)中、R81の定義、具体例および好適な態様は、上記R51と同じである。
上記式(8)中、R82の定義、具体例および好適な態様は、上記R52と同じである。
上記式(8)中、vの定義は、上記yと同じである。
上記式(8)中、qは1〜4の整数を表す。
上記式(8)で表される有機ケイ素化合物の具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルメチルジメトキシシラン、プロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
ポリシロキサンを製造する際に使用される有機ケイ素化合物として、例えば、メルカプト基を有するシランカップリング剤[例えば、式(7)で表される有機ケイ素化合物]及びスルフィド基又はメルカプト基を有するシランカップリング剤以外のシランカップリング剤[例えば、式(6)で表される有機ケイ素化合物及び/又は式(8)で表される有機ケイ素化合物]を併用する際、メルカプト基を有するシランカップリング剤と炭化数5〜10の炭化水素基を有するシランカップリング剤との混合比(モル比)(メルカプト基を有するシランカップリング剤/スルフィド基又はメルカプト基を有するシランカップリング剤以外のシランカップリング剤)は、ウェット性能、低転がり抵抗性により優れ、耐摩耗性、加工性に優れるという観点から、1.1/8.9〜6.7/3.3であるのが好ましく、1.4/8.6〜5.0/5.0であるのがより好ましい。
ポリシロキサンを製造する際に使用される有機ケイ素化合物として、メルカプト基を有するシランカップリング剤[例えば、式(7)で表される有機ケイ素化合物]及びスルフィド基を有するシランカップリング剤[例えば、式(5)で表される有機ケイ素化合物]を併用する際、メルカプト基を有するシランカップリング剤とスルフィド基を有するシランカップリング剤との混合比(モル比)(メルカプト基を有するシランカップリング剤/スルフィド基を有するシランカップリング剤)は、ウェット性能、低転がり抵抗性により優れ、加工性、耐摩耗性に優れるという観点から、2.0/8.0〜8.9/1.1であるのが好ましく、2.5/7.5〜8.0/2.0であるのがより好ましい。
ポリシロキサンを製造する際に使用される有機ケイ素化合物として、メルカプト基を有するシランカップリング剤[例えば、式(7)で表される有機ケイ素化合物]、スルフィド基を有するシランカップリング剤[例えば、式(5)で表される有機ケイ素化合物]、及びスルフィド基又はメルカプト基を有するシランカップリング剤以外のシランカップリング剤[例えば、式(6)で表される有機ケイ素化合物及び/又は式(8)で表される有機ケイ素化合物]を併用する際、メルカプト基を有するシランカップリング剤の量は、前に挙げた3つ(又は4つ)のシランカップリング剤の合計量(モル)の10.0〜73.0%であるのが好ましい。スルフィド基を有するシランカップリング剤の量は、前に挙げた3つ(又は4つ)の合計量中の5.0〜67.0%であるのが好ましい。スルフィド基又はメルカプト基を有するシランカップリング剤以外のシランカップリング剤の量は、前に挙げた3つ(又は4つ)の合計量中の16.0〜85.0%であるのが好ましい。
ポリシロキサンを製造する際には必要に応じて溶媒を用いてもよい。溶媒としては特に限定されないが、具体的にはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール系溶媒などが挙げられる。
また、上記ポリシロキサンを製造する際には必要に応じて触媒を用いてもよい。
本発明において、使用することができる触媒としては例えば、塩酸、酢酸などの酸性触媒;塩化アルミニウム、アルキルスズオキシド、アンモニウムフルオリドなどのルイス酸触媒(ルイス酸触媒の中には上述のとおりスズ、アルミニウムを含むものがあるが、これらはアルコキシ交換反応を生じさせる触媒であるものの、シラノールの縮合反応に寄与するものではない。);水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどのアルカリ金属塩;アルカリ土類金属塩;トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンなどのアミン化合物などが挙げられる。
上記の触媒を使用する場合、ポリシロキサンには触媒由来の金属が分子内に導入される(例えば、ポリシロキサン骨格に金属が導入される。)ことはなく、本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物を通常雰囲気又は高湿環境下においても空気中の湿気で硬化やゲル化が生じることはなく、保存安定性に優れる。
触媒の量は、ウェット性能、低転がり抵抗性により優れ、保存安定性、加工性に優れるという観点から、原料として使用される有機ケイ素化合物100質量部に対して、0.01〜10質量部であるのが好ましく、0.05〜1質量部であるのがより好ましい。
本発明において、硫黄含有シランカップリング剤が有するポリシロキサン骨格には、ケイ素原子以外の金属(例えば、Sn、Ti、Al)は存在しないのが好ましい態様の1つとして挙げられる。硫黄含有シランカップリング剤は例えば、−Si−O−Sn−、−Si−O−Ti−、−Si−O−Al−のような結合をポリシロキサン骨格のなかに有さないのが好ましい。硫黄含有シランカップリング剤が有するポリシロキサン骨格がケイ素原子以外の金属を有さない場合、組成物の保存安定性に優れるからである。
このような金属は、おもにポリシロキサンを製造する際に使用される触媒に起因することが多い。例えば、Sn、Ti、Alを含む触媒を用いることよってポリシロキサン骨格にこれらの金属が導入される場合がある。
本発明において、式(1)の平均組成式で表されるポリシロキサンを製造する際に使用される触媒には、上記のようなポリシロキサン骨格にこれらの金属が導入される可能性がある金属触媒を使用しないのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
本発明において使用される触媒は、式(1)の平均組成式で表されるポリシロキサンに触媒が有する金属(例えば、スズ、チタン、アルミニウム、亜鉛、インジウム)を導入するものではないのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
ポリシロキサンにこのような金属を導入し得る触媒としては、例えば、下記(6)〜(9)からなる群から一種以上選ばれる化合物が挙げられる。
(6)一般式(VI)で表される酸化数2のスズのカルボン酸塩
Sn(OCOR142 (VI)
〔式中、R14は、炭素数2から19の炭化水素基であり、2つのOCOR14は同一でも異なっていても良い。〕
(7)一般式(VII)で表される酸化数4のスズの化合物
15 rSnA4 t1 (4-t-r) (VII)
〔式中、rは1から3の整数、tは1又は2の整数であり、かつt+rは3又は4の整数である。R15は炭素数1から30の脂肪族炭化水素基を示し、複数ある場合は同一でも異なっていてもよく、B1はヒドロキシル基又はハロゲンである。A4は、(a)炭素数2から30のカルボキシル基、(b)炭素数5から30の1,3−ジカルボニル含有基、(c)炭素数3から30のヒドロカルビルオキシ基、及び(d)炭素数1から20の炭化水素基及び/又は炭素数1から20のヒドロカルビルオキシ基で合計三置換(同一でも異なっていても良い)されたシロキシ基から選ばれる基であり、A4が複数ある場合は同一でも異なっていても良い。〕
(8)一般式(VIII)で表される酸化数4のチタン化合物
5 xTiB2 (4-x) (VIII)
〔式中、xは2又は4の整数である。A5は(a)炭素数2から30のヒドロカルビルオキシ基、(b)炭素数1から30のアルキル基及び/又は炭素数1から20のヒドロカルビルオキシ基で合計三置換されたシロキシ基であり、A5が複数ある場合は同一でも異なっていても良い。B2は、炭素数5から30の1,3−ジカルボニル含有基であり、B2が複数ある場合は同一でも異なっていても良い。〕
(9)一般式(IX)で表される酸化数3のアルミニウム化合物
Al(OR163 (IX)
〔式中、R16は炭素数1〜30の炭化水素基である。〕
上記の触媒を使用する場合、ポリシロキサンには触媒由来の金属が分子内に導入され(例えば、ポリシロキサン骨格に金属が導入される。)、このようなポリシロキサンを含有するゴム組成物は空気中の湿気によって加水分解縮合反応を起こし、硬化やゲル化が生じ、保存安定性が悪い。
このような触媒の詳細は、例えば、国際公開2007/119675号に記載されている。
本発明において、式(1)の平均組成式で表されるポリシロキサンの重量平均分子量は、シリカとの親和性に優れることによりウェット性能、低転がり抵抗性、氷雪路上性能により優れ、耐摩耗性に優れ、加工性に優れるという観点から、500〜2300であるのが好ましく、600〜1500であるのがより好ましい。ポリシロキサンの分子量は、トルエンを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で求められた重量平均分子量である。
式(1)の平均組成式で表されるポリシロキサンの酢酸/ヨウ化カリウム/ヨウ素酸カリウム添加−チオ硫酸ナトリウム溶液滴定法によるメルカプト当量は、加硫反応性に優れるという観点から、550〜1900g/molであるのが好ましく、600〜1500g/molであるのがより好ましい。
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、硫黄含有シランカップリング剤の含有量は、上記シリカの含有量の1〜20質量%であり、ウェット性能、低転がり抵抗性、氷雪路上性能により優れ、耐摩耗性、加工性が優れる理由から、2〜20質量%が好ましく、3〜18質量%であることがより好ましく、4〜16質量%であることがさらに好ましく、5〜14質量%であることが特に好ましい。
硫黄含有シランカップリング剤の含有量が、シリカの含有量の20質量%を超える場合、スコーチタイムが短く加工性が悪い。
本発明の組成物はさらにテルペン樹脂を含むことができる。このような場合ウェット性能、氷雪路上性能、低転がり抵抗性能のバランスにより優れる。テルペン樹脂は、テルペンをモノマーとして使用する重合体であればよく、単独重合体、共重合体のいずれでもよい。また例えば芳香族化合物によって変性されていてもよい。
テルペンとしては、例えばα−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、リモネンが挙げられる。
芳香族化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、フェノール類が挙げられる。
テルペン樹脂としては、芳香族変性テルペン樹脂が挙げられる。ジエン系ゴムとの相溶性が良好であるためゴム組成物の0℃のtanδを高くし、ウェット性能、氷雪路上性能、低転がり抵抗性能のバランスにより優れるという理由から、芳香族変性テルペン樹脂が好ましい。
テルペン樹脂(特に芳香族変性テルペン樹脂)の軟化点は、ウェット性能、氷雪路上性能により優れ、耐摩耗性に優れるという観点から、60〜150℃であるのが好ましく、70〜130℃であるのがより好ましい。
テルペン樹脂はその製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。テルペン樹脂はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
テルペン樹脂の量は、ウェット性能、氷雪路上性能、低転がり抵抗性能のバランスにより優れるという観点から、ジエン系ゴム100質量部に対し1〜30質量部であるのが好ましく、3〜20質量部であるのがより好ましい。
本発明の組成物には、必要に応じて、その効果や目的を損なわない範囲でさらに添加剤を含有することができる。添加剤としては、例えば、ジエン系ゴム以外のゴム、式(1)の平均組成式で表されるポリシロキサン以外のシランカップリング剤、シリカ以外の充填剤(例えば、カーボンブラック、クレー、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン)のほか、加硫促進剤、テルペン樹脂以外の樹脂、酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、加工助剤、アロマオイル、プロセスオイル、液状ポリマー、熱硬化性樹脂、加硫剤などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に使用されるものが挙げられる。
本発明の組成物がさらに式(1)の平均組成式で表されるポリシロキサン以外のシランカップリング剤を含む場合、このようなシランカップリング剤としては、具体的には例えば、ケイ素原子を1個有するメルカプトシラン、スルフィドシラン、アミノシランが挙げられる。
メルカプトシランとしては、例えば、C1327O−(CH2CH2O)52(CH2CH2O)Si(CH22SH、C1327O−(CH2CH2O)5](CH2CH2O)2Si(CH22SH:3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
スルフィドシランとしては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィドが挙げられる。
式(1)の平均組成式で表されるポリシロキサン以外のシランカップリング剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の組成物の製造方法は特に限定されず、その具体例としては、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールなど)を用いて、混練する方法などが挙げられる。
また、本発明の組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
本発明の組成物はオールシーズン用又は冬用のタイヤの製造に使用することができる。
次に、本発明の空気入りタイヤについて以下に説明する。
本発明の空気入りタイヤは、本発明のタイヤ用ゴム組成物をタイヤトレッドに用いた空気入りタイヤである。
タイヤ用ゴム組成物は少なくともタイヤトレッドに用いられていればよく、タイヤ用ゴム組成物をタイヤトレッド以外、例えば、ビード部、サイドウォール部に使用することができる。
以下添付の図面を用いて本発明の空気入りタイヤを説明する。
図1は、本発明の空気入りタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの部分断面概略図を示す。本発明の空気入りタイヤは図1に示す態様に限定されるものではない。
図1において、符号1はビード部を表し、符号2はサイドウォール部を表し、符号3はタイヤトレッドを表す。
また、左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、このカーカス層4の端部はビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。
また、タイヤトレッド3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。
また、ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
本発明の空気入りタイヤは、本発明のタイヤ用ゴム組成物を空気入りタイヤのトレッドに用いる以外は特に制限はなく、例えば従来公知の方法に従って製造することができる。また、タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
本発明の空気入りタイヤはオールシーズン用又は冬用のタイヤとして使用することができる。
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。なお、実施例2及び実施例3は、参考例である。
<ポリシロキサン1の製造方法>(9511タイプ、メルカプト高濃度)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた2Lセパラブルフラスコにビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(信越化学工業製 KBE−846)107.8g(0.2mol)、γ―メルカプトプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業製 KBE−803)190.8g(0.8mol)、オクチルトリエトキシシラン(信越化学工業製 KBE−3083)442.4g(1.6mol)、エタノール190.0gを納めた後、室温にて0.5N塩酸37.8g(2.1mol)とエタノール75.6gの混合溶液を滴下した。その後、80℃にて2時間攪拌した。その後、濾過、5%KOH/EtOH溶液17.0gを滴下し80℃で2時間攪拌した。その後、減圧濃縮、濾過することで褐色透明液体のポリシロキサン480.1gを得た。GPCにより測定した結果、平均分子量は840であり、平均重合度は4.0(設定重合度4.0)であった。また、酢酸/ヨウ化カリウム/ヨウ素酸カリウム添加−チオ硫酸ナトリウム溶液滴定法によりメルカプト当量を測定した結果、730g/molであり、設定通りのメルカプト基含有量であることが確認された。以上より、下記平均組成式で示される。
(−C36−S4−C36−)0.071(−C8170.571(−OC251.50(−C36SH)0.286SiO0.75
得られたポリシロキサンをポリシロキサン1とする。
<ポリシロキサン2の製造方法>(9457タイプ、メルカプト高濃度)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた2Lセパラブルフラスコにγ―メルカプトプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業製 KBE−803)190.8g(0.8mol)、オクチルトリエトキシシラン(信越化学工業製 KBE−3083)442.4g(1.6mol)、エタノール162.0gを納めた後、室温にて0.5N塩酸32.4g(1.8mol)とエタノール75.6gの混合溶液を滴下した。その後、80℃にて2時間攪拌した。その後、濾過、5%KOH/EtOH溶液14.6gを滴下し80℃で2時間攪拌した。その後、減圧濃縮、濾過することで無色透明液体のポリシロキサン412.3を得た。GPCにより測定した結果、平均分子量は850であり、平均重合度は4.0(設定重合度4.0)であった。また、酢酸/ヨウ化カリウム/ヨウ素酸カリウム添加−チオ硫酸ナトリウム溶液滴定法によりメルカプト当量を測定した結果、650g/molであり、設定通りのメルカプト基含有量であることが確認された。以上より、下記平均組成式で示される。
(−C8170.667(−OC251.50(−C36SH)0.333SiO0.75
得られたポリシロキサンをポリシロキサン2とする。
<比較ポリシロキサン1の製造方法>
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(0.1mol)を水および濃塩酸水溶液で加水分解し、その後、エトキシメチルポリシロキサン(100g)を添加し、縮合することでポリシロキサンを得た。得られたポリシロキサンを比較ポリシロキサン1とする。
上記比較ポリシロキサン1は、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランのメトキシ基とエトキシメチルポリシロキサンのエトキシ基とが縮合した構造を有する。すなわち、上記比較ポリシロキサン1が有する1価の炭化水素基はメチル基のみである。また、上記比較ポリシロキサン1はスルフィド基を含有する2価の有機基を有さない。
<比較ポリシロキサン2の製造方法>
ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド(0.1mol)を水および濃塩酸水溶液で加水分解し、その後、エトキシメチルポリシロキサン(100g)を添加し、縮合することでポリシロキサンを得た。得られたポリシロキサンを比較ポリシロキサン2とする。
上記比較ポリシロキサン2は、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィドのエトキシ基とエトキシメチルポリシロキサンのエトキシ基とが縮合した構造を有する。すなわち、上記比較ポリシロキサン2が有する1価の炭化水素基はメチル基のみである。また、上記比較ポリシロキサン2はメルカプト基を含有する有機基を有さない。
<タイヤ用ゴム組成物の製造>
下記表に示す成分を同表に示す割合(質量部)で配合した。
具体的には、まず、下記表に示す成分のうち硫黄および加硫促進剤を除く成分を、1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーを用いて10分間混合してから放出し、室温まで冷却してマスターバッチを得た。さらに、上記バンバリーミキサーを用いて、得られたマスターバッチに硫黄および加硫促進剤を混合し、タイヤ用ゴム組成物を得た。
表中、各比較シランカップリング剤、各シランカップリング剤の欄のかっこ内の数値は、その実施例、比較例で使用されたシリカの量に対する各成分の質量%である。
<加硫ゴムの製造>
上記のとおり製造したタイヤ用ゴム組成物(未加硫)を金型(15cm×15cm×0.2cm)中で、160℃で20分間プレス加硫して加硫ゴムを作製した。
<ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度>
下記表に示すジエン系ゴムを同表に示す割合(質量部)で混合し、得られたジエン系ゴム混合物のガラス転移温度(Tg)を、示差熱分析機器を用いて20℃/分の昇温速度で中点法により求めた。
タイヤ用ゴム組成物がさらに重量平均分子量が6.0×103〜6.0×104である低分子量ブタジエンゴムを含む場合(実施例4)、平均ガラス転移温度を測定するために使用されるジエン系ゴムは、重量平均分子量が6.0×103〜6.0×104である低分子量ブタジエンゴムを含むものとする。
なお、硫黄含有シランカップリング剤としての式(1)で表されるポリシロキサンは、ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度に略影響しない。
上記のとおり製造したタイヤ用ゴム組成物、加硫ゴムを用いて以下の評価を行った。結果を下記表に示す。
<tanδ(0℃)>(ウェット性能の指標)
作製した加硫ゴムについて、JIS K6394:2007に準じて、粘弾性スペクトロメーター(岩本製作所社製)を用いて、伸張変形歪率10%±2%、振動数20Hz、温度0℃の条件で、tanδ(0℃)を測定した。
結果は標準例のtanδ(0℃)を100とする指数で表した。指数が大きいほどtanδ(0℃)が大きく、タイヤにしたときにウェット性能に優れる。
<tanδ(60℃)>(低転がり抵抗性の指標)
作製した加硫ゴムについて、JIS K6394:2007に準じて、粘弾性スペクトロメーター(岩本製作所社製)を用いて、伸張変形歪率10%±2%、振動数20Hz、温度60℃の条件で、tanδ(60℃)を測定した。
結果は標準例のtanδ(60℃)を100とする指数で表した。指数が小さいほどtanδ(60℃)が小さく、タイヤにしたときに低転がり抵抗性に優れる。
<弾性率E‘(−10℃)>(氷雪グリップ性能の指標)
得られた加硫ゴムについて、JIS K6394:2007に準じて、粘弾性スペクトロメーター(岩本製作所社製)を用いて、伸張変形歪率10%±0.5%、振動数20Hz、温度−10℃の条件で、E‘(−10℃)を測定した。
結果は、標準例の値の逆数を100とする指数で表した。指数が大きいほど−10℃のE‘が小さく、氷雪グリップ性能が優れることを意味する。
<ペイン効果>(シリカの分散性の指標)
上記のとおり製造したゴム組成物(未加硫ゴム)を160℃、20分間加硫し、得られた加硫ゴムを用いて、ASTM D6204に準拠してRPA2000(α−テクノロジー社製歪せん断応力測定機)で、歪0.56%の歪せん断応力G′(0.56%)と、歪100%の歪せん断応力G′(100%)を測定し、G′(0.56%)とG′(100%)の差(絶対値)を算出した。
結果は標準例の値を100とする指数で表した。指数が小さいほどペイン効果の低減または抑制が良好なこと(シランの分散性が良好であること)を示す。
第1表に示す各成分の詳細は以下のとおりである。
・SBR1(NS530):水酸基で末端を変性した芳香族ビニル−共役ジエン共重合体、日本ゼオン社製Nipol NS530、ゴム成分100質量部に対し油展オイル20質量部を含む油展品、スチレン含有量30質量%、ビニル含有量60質量%、油展オイルを除いた状態のガラス転移温度−25℃、油展オイルを含む状態のガラス転移温度−31℃
・NR:天然ゴム、RSS#3、ガラス転移温度−65℃
・BR1:ブタジエンゴム、日本ゼオン社製Nipol BR1220、シス含有量98質量%、ビニル含有量2質量%、ガラス転移温度−105℃、重量平均分子量4.9×105
・BR2[液状BR入りBR(BR X5000)]:重量平均分子量が5.0×105〜1.0×106である高分子量ブタジエンゴムと重量平均分子量が6.0×103〜6.0×104である低分子量ブタジエンゴムとのブレンド品。低分子量ブタジエンゴムの含有量がブタジエンゴム全量中の20〜40質量%。日本ゼオン社製 BR X5000。(ゴム分71.5質量%、シス−1,4−結合含有量96モル%)
・シリカ:Rhodia社製Zeosil 1165MP、窒素吸着比表面積が160m2/g、CTAB比表面積が159m2/g、DBP吸収量が200ml/100gであり、N2SA/CTABが1.0であるシリカ
・カーボンブラック:ショウブラックN339(CTAB吸着比表面積=90m2/g、キャボットジャパン社製)
・比較シランカップリング剤1:Si363(エボニックデグッサ社製)、[C1327O−(CH2CH2O)52(CH 3 CH2O)Si(CH2 3 SH
・比較シランカップリング剤2:3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM−803、信越化学工業社製)
・比較シランカップリング剤3:上述のとおり合成された比較ポリシロキサン1
・比較シランカップリング剤4:上述のとおり合成された比較ポリシロキサン2
・シランカップリング剤1:上記のとおり製造したポリシロキサン1(9511タイプ)
・シランカップリング剤2:上記のとおり製造したポリシロキサン2(9457タイプ)
・シランカップリング剤3:ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、Si69(エボニックデグッサ社製)
・ステアリン酸:ビーズステアリン酸(日本油脂社製)
・酸化亜鉛:亜鉛華3種(正同化学工業社製)
・老化防止剤:N−フェニル−N′−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン(サントフレックス6PPD、フレキシス社製)
・テルペン系樹脂:スチレン変性テルペン樹脂、YSレジンTO125、ヤスハラケミカル株式会社製、軟化点:125℃
・プロセスオイル:エキストラクト4号S(昭和シェル石油社製)
・加硫促進剤1(CZ):N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(ノクセラーCZ−G、大内新興化学工業社製)
・加硫促進剤2(DPG):1,3−ジフェニルグアニジン(ソクシノールD−G、住友化学工業社製)
・硫黄:金華印油入微粉硫黄(鶴見化学工業社製)
第1表に示す結果から明らかなように、ブタジエンゴムを含まない比較例1は標準例(ブタジエンゴムを含まず、代わりに天然ゴムを含む。)より氷雪路上性能が低かった。ブタジエンゴム、比較シランカップリング剤1、2を含む比較例2、3は標準例よりウェット性能が低かった。ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度が−40℃より高い比較例4は、低転がり抵抗性、氷雪路上性能が低かった。式(1)の平均組成式で表される硫黄含有シランカップリング剤の量がシリカの量の20質量%を超える比較例5は標準例より氷雪路上性能が低かった。シリカの量がジエン系ゴム100質量部に対し60質量部未満である比較例6は、ウェット性能、低転がり抵抗性、氷雪路上性能、ペイン効果が低かった。また、硫黄含有シランカップリング剤を含有しない(硫黄含有シランカップリング剤以外のポリシロキサンを含有する)比較例7および8は、ウェット性能および氷雪路上性能が低かった。
これに対して、実施例1〜6はウェット性能、低転がり抵抗性、氷雪路上性能、ペイン効果に優れる。
比較例2、3と実施例1〜3とは、ガラス転移温度が非常に低いブタジエンゴムを含む(このためウェット性能は標準例より低下すると予想される)。これらを比較すると、比較例2、3のウェット性能は予想どおり標準例より低下する。これに対して、実施例1〜3はウェット性能を低下させることなくさらにこれを向上させる。また、実施例1〜3はペイン効果、氷雪路上性能が比較例2、3より向上代が大きい。
高分子量ブタジエンゴムと低分子量ブタジエンゴムとを併用する場合、ジエン系ゴムがさらに天然ゴムを含む場合、ウェット性能と氷雪路上性能のバランスがさらに高くなる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物がさらにテルペン樹脂を含む場合、ウェット性能により優れる。
このように、本発明のタイヤ用ゴム組成物はペイン効果が高くシリカの分散性に優れ、これによってウェット性能、低転がり抵抗性、氷雪路上性能が優れ、ウェット性能と氷雪路上性能とを高いレベルでバランスさせることができる。
1 ビード部
2 サイドウォール部
3 タイヤトレッド部
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 リムクッション

Claims (9)

  1. ブタジエンゴムを10〜50質量部含むジエン系ゴム100質量部に対し、シリカを60〜200質量部、及び、硫黄含有シランカップリング剤として下記式(1)で表されるポリシロキサンを前記シリカの含有量の1〜20質量%含有し、前記ジエン系ゴムの平均ガラス転移温度が−65〜−40℃である、タイヤ用ゴム組成物。ただし、前記タイヤ用ゴム組成物が重量平均分子量6.0×104以下の低分子量ブタジエンゴムを含む場合、前記ブタジエンゴムの含有量及び前記ジエン系ゴムの含有量には前記重量平均分子量6.0×104以下の低分子量ブタジエンゴムの含有量は含まれない。また、前記タイヤ用ゴム組成物が重量平均分子量6.0×10 4 以下の低分子量ブタジエンゴムを含む場合、前記平均ガラス転移温度を測定するために使用されるジエン系ゴムには前記重量平均分子量6.0×10 4 以下の低分子量ブタジエンゴムが含まれる。
    (A)a(B)b(C)c(D)d(R1eSiO(4-2a-b-c-d-e)/2 (1)
    [式(1)は平均組成式であり、式(1)中、Aは下記式(2)で表される基を表し、Bは炭素数5〜10の1価のアルキル基を表し、Cは加水分解性基を表し、Dは下記式(4)で表される基を表し、R1は炭素数1〜4の1価の炭化水素基を表し、a〜eは、0<a<1、0<b<1、0<c<3、0<d<1、0≦e<2、0<2a+b+c+d+e<4の関係式を満たす。]
    −(CH2n−Sx−(CH2n (2)
    (式(2)中、nは1〜10の整数を表す。xは2〜6の整数を表す。*は、結合位置を示す。)
    −(CH2m−SH (4)
    (式(4)中、mは1〜10の整数を表す。*は、結合位置を示す。)
  2. 前記ジエン系ゴムが、さらに、変性されていてもよい、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を含み、前記芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の量が前記ジエン系ゴム100質量部中の30〜90質量部である請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  3. 重量平均分子量が6.0×103〜6.0×104である低分子量ブタジエンゴムを含み、
    前記重量平均分子量が6.0×103〜6.0×104である低分子量ブタジエンゴムの含有量が、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、1〜30質量部である、請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  4. 重量平均分子量が6.0×103〜6.0×104である低分子量ブタジエンゴムを含み、
    前記重量平均分子量が6.0×103〜6.0×104である低分子量ブタジエンゴムの含有量が、前記ブタジエンゴムの含有量と前記重量平均分子量が6.0×103〜6.0×104である低分子量ブタジエンゴムの含有量との合計の20〜40質量%である、請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  5. 前記ジエン系ゴムがさらに天然ゴムを含み、前記天然ゴムの量が前記ジエン系ゴム100質量部中の5〜40質量部である請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
  6. さらに、テルペン樹脂を含み、前記テルペン樹脂の量が前記ジエン系ゴム100質量部に対し1〜30質量部である、請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
  7. 前記テルペン樹脂は軟化点が60〜150℃の芳香族変性テルペン樹脂である請求項6に記載のタイヤ用ゴム組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物をタイヤトレッドに用いた空気入りタイヤ。
  9. 冬用タイヤである請求項8に記載の空気入りタイヤ。
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